説明

基板処理装置、濾材の再生方法及び記憶媒体

【課題】乾燥処理に用いられるガス中のパーティクルを除去する濾材に対して、当該濾材をガスの流れる流路上に配置した状態のまま、この濾材に付着した付着物を除去することが可能な基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板処理装置1は乾燥ガス発生部23にて乾燥用のガスを発生させ、このガスを濾材31に通流させてパーティクルを除去した後、処理部にて液体の付着した基板Wと接触させて、基板Wの乾燥処理を行う。濾材加熱部は、乾燥処理時には、乾燥ガスの温度を露点以上に維持するために濾材31を第1の温度に加熱し、濾材31の再生処理時には、濾材31に付着した付着物を気化させて除去するため当該濾材31を第1の温度よりも高い第2の温度に加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体が付着した基板に、有機物を含む乾燥用のガスを接触させて、この基板を乾燥させる処理を行う基板処理装置及びこの装置にて用いられる濾材の再生方法に係る。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス用の半導体ウエハやフラットパネルディスプレイ用のガラス基板などの基板を処理する工程においては、薬液やリンス液(洗浄液)等の液体が貯留された処理槽に処理対象の基板を順次浸漬して洗浄を行う洗浄処理が広く採用されている。また洗浄処理後には、有機溶剤である例えばIPA(イソプロピルアルコール、沸点82.4℃)などの揮発性の有機物を含む乾燥用のガスを、例えば180℃〜200℃程度に加熱し、これを洗浄液から引き上げた基板に吹き付けるなどして基板表面の液体を除去する乾燥処理を行いウォーターマークの発生を防止している。
【0003】
このとき乾燥用のガスは、基板の再汚染を防ぐために、ガス中に含まれるパーティクルなどの汚染物質をフィルターなどにより除去してから基板へと供給される(例えば特許文献1)。上述のようにフィルターを通流するガスが190℃前後の高温に加熱されている場合には、フィルターには例えば焼結金属などからなる多孔質の濾材からなるメタルフィルター(金属フィルター)やセラミックフィルターなどの耐熱性を備えたものが採用される。
【0004】
ここで上述のIPAを含む乾燥用のガスは、例えば窒素雰囲気中に噴霧した霧状のIPAを加熱、蒸発させることなどにより得られるが、原料となる液体のIPA中には、IPAよりも沸点の高い有機物(以下、高沸点有機物という)などの不純物が微量に含まれていることがある。こうした不純物は、IPAと共に蒸発して下流側へと流れていくが、その一部は細孔内への吸着などにより例えばメタルフィルターにトラップされて付着物となる。さらに、例えば乾燥用のガスを発生、供給するための配管系統に予め付着している有機物などについても、乾燥用のガス中に気化してメタルフィルターまで流され、ここでトラップされて付着物となる場合があることが分かっている。
【0005】
このようにメタルフィルターに高沸点有機物などがトラップされ、その蓄積量が増えていくと、やがて飽和状態となり、トラップされていた付着物の下流側への流出が始まって基板の汚染源となってしまう。特に、近年のナノメータレベルにまで高集積化の進んだ半導体デバイスなどにおいては、有機物残渣などによる汚染は半導体デバイスの性能を低下させる大きな要因となる。このため従来、高沸点有機物の流出が始まるタイミングを乾燥処理プロセスに用いられるメタルフィルターの寿命と考えて当該寿命を予め把握しておき、寿命に達する前にメタルフィルターの交換を行うメンテナンスが行われている。
【0006】
しかしながらこうしたメンテナンスは、洗浄処理を行う装置全体を停止して乾燥用のガスの供給系統を開放、復帰する作業が必要となることから、装置の稼働率を低下させる要因の一つとなっている。また元来、パーティクル除去を目的として設けられているメタルフィルターの寿命を高沸点有機物の流出タイミングに基づいて判断しているため、パーティクルの捕集能力はまだ十分に残っているにもかかわらず、メタルフィルターを新たなものに交換しなければならないといった非効率なケースが発生する場合もある。
【0007】
ここで特許文献2には、超臨界流体などの高圧流体を用いて洗浄処理やレジスト剥離処理、乾燥処理などの基板の表面処理を行う装置において、高圧流体の供給配管路上にフィルターを設けて当該高圧流体中に含まれるパーティクルを除去する一方、必要に応じてこの高圧流体を逆流させることにより、高圧流体の供給側に堆積したパーティクルを逆洗し、装置外へと排出する技術が記載されているが、ガス中に含まれる高沸点有機物のフィルターへの付着、その後の流出といった問題には全く着目されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−75067号公報:0020段落、図1
【特許文献2】特開2007−234862号公報:0051段落、0055段落〜0057段落、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、乾燥処理に用いられるガス中のパーティクルを除去する濾材に対して、当該濾材をガスの流れる流路上に配置した状態のまま、この濾材に付着した付着物を除去することが可能な基板処理装置、この装置に装着される濾材の再生方法及びこの方法を記憶した記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る基板処理装置は、液体の付着した基板に乾燥用のガスを接触させて、この基板を乾燥させる乾燥処理を行う基板処理装置において、
温度調整機能を備え、流体を加熱して乾燥用のガスを得るための乾燥ガス発生部と、
この乾燥ガス発生部で得られた乾燥用のガスに含まれるパーティクルを除去するための濾材と、
この濾材を加熱する濾材加熱部と、
前記濾材を通流した乾燥用のガスを用いて前記乾燥処理を行う処理部と、
乾燥処理時には、前記処理部へ供給される乾燥ガスの温度を露点温度以上に維持するために前記濾材を第1の温度に加熱し、前記濾材の再生処理時には、濾材に付着した付着物を気化させて除去するために当該濾材を前記第1の温度よりも高い第2の温度に加熱するように前記濾材加熱部を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
前記基板処理装置は、以下の各特徴を備えてもよい。
(a)前記濾材は、金属製またはセラミック製であること。
(b)前記濾材は濾材収納部に収納され、前記濾材加熱部はこの濾材収納部を加熱するヒーターを含み、前記制御部は、濾材の再生処理時における前記ヒーターの発熱量を乾燥処理時よりも大きくするように制御すること。
(c)前記濾材の再生処理時に、濾材に付着した付着物の気化物を排出するために当該濾材にパージガスを供給するパージガス供給部を備えたこと。
(d)前記パージガス供給部は、パージガスを介して前記濾材を加熱する前記濾材加熱部を兼用するために温度調整機能を備えたこと。
(e)前記パージガス供給部の温度調整機能は、前記乾燥ガス発生部の温度調整機能を共用していること。
(f)前記濾材と処理部との間に設けられた排気路と、前記濾材を通過したガスが流れる流路を、前記処理部側と当該排気路側との間で切り替える流路切替部とを備え、前記制御部は、前記濾材の再生処理時には、当該濾材を通過したパージガスの流出先を前記排気路側に切り替えること。
(g)前記乾燥用のガスは有機溶剤の蒸気と不活性ガスとの混合ガスであること。
(h)前記有機溶剤はイソプロピルアルコールであること。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基板の乾燥処理時には、この乾燥処理に用いる乾燥用のガス中に含まれるパーティクルを除去するための濾材を、当該乾燥用のガスの露点温度以上の第1の温度に加熱し、この濾材の再生処理時には、前記濾材を第1の温度よりも高い第2の温度に加熱するので、当該濾材をガスの流れる流路上に配置した状態のまま、この濾材に付着した付着物を気化させて除去することが可能となる。この結果、濾材の交換などのために乾燥用のガスの供給系統を開放、復旧する作業が必要なくなり、装置を停止させる期間を短縮して稼働率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に係るウエハ洗浄装置の横断平面図である。
【図2】上記ウエハ洗浄装置の内部構成を示す縦断側面図である。
【図3】上記ウエハ洗浄装置に設けられた処理部の内部構成を示す一部破断斜視図である。
【図4】上記処理部に設けられている洗浄・乾燥ユニットの構成を示す縦断側面図である。
【図5】上記処理部に設けられているIPA蒸気発生ユニットの構成を示す説明図である。
【図6】上記IPA蒸気発生ユニットに設けられているフィルターユニットの構成を示す縦断側面図である。
【図7】上記IPA蒸気発生ユニット並びにフィルターユニットの作用を示す説明図である。
【図8】実施例及び参考例に係る実験結果を示すスマススペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明に係る基板処理装置をバッチ式のウエハ洗浄装置に適用した実施の形態について説明する。図1は本実施の形態に係るウエハ洗浄装置1の平面図、図2はその縦断側面図、図3はその斜視図を表している。これらの図に向かって左側を手前とすると、ウエハ洗浄装置1は、筐体100内に、FOUP8の搬入出が行われる搬入出部11と、当該搬入出部11内に搬入されたFOUP8と後段の処理部13との間でウエハWを受け渡すにあたって、ウエハWの位置調整や姿勢変換などを行うインターフェース部12と、ウエハWの液処理並びに乾燥処理を実行する処理部13とを、手前側からこの順に設けた構成となっている。
【0015】
例えば複数枚のウエハWを収納したFOUP8が、ウエハ洗浄装置1の設置されている工場の例えば天井に配設された搬送路を走行するOHT(Overhead Hoist Transport)と呼ばれる搬送ロボットにより搬送される場合において、搬入出部11は、OHT(図示せず)と当該装置1との間でのFOUP8の受け渡しを行うと共に、ウエハWに対する処理が実行されている期間中、ウエハWが取り出されて空となったFOUP8を保管する役割を果たす。
【0016】
搬入出部11は、OHTとの間でFOUP8の受け渡しを行うロードポート111と、搬入出部11内に設けられ、当該搬入出部11内に搬入されたFOUP8を搬送する第1のリフター114a、114bと、ウエハWが取り出されて空となったFOUP8を保管するストック領域116と、を備えている。
【0017】
ロードポート111は、ウエハ洗浄装置1の前面に設けられ、例えば4個のFOUP8を幅方向に一列に載置可能な載置台として構成されている。図3に示すように、各FOUP8が載置される載置領域には、前後方向にスライド可能に構成された載置台112が設けられており、当該ロードポート111上に載置されたFOUP8を、ウエハ洗浄装置1の前面に開口する開口部113を介してロードポート111側と搬入出部11の内部との間で移動させることができる。本例では例えば搬入出部11の前面に向かって右手側に設けられた2つの載置台112を備えたロードポート111が搬入出部11内へのFOUP8の搬入用に用いられ、左手側の2つの載置台112を備えたロードポート111が搬入出部11からのFOUP8の搬出用に用いられる。また図2に示した118は、各開口部113を開閉する開閉扉である。
【0018】
搬入出部11内部の左右両側壁には、上下方向並びに前後方向に移動自在に構成された第1のリフター114a、114bが設けられており、これら第1のリフター114a、114bは、搬入出部11内にスライドした載置台112上の位置と、後段のインターフェース部12とのアクセス位置と、空のFOUP8を保管するストック領域116との間でFOUP8を搬送する役割を果たす。図1、図2に示すように、本実施の形態に係る第1のリフター114a、114bは、同時に2つのFOUP8のトップフランジを把持してこれらを搬送することができる。本例では正面から見て左手側のロードポート111から搬入された2つのFOUP8は、左手の側壁に設けられた第1のリフター114aにより搬送され、また右手側のロードポート111から搬入された2つのFOUP8は、左手の側壁に設けられた第1のリフター114bによって搬送されるようになっている。
【0019】
図2に示すように搬入出部11の上方側の空間は、搬入出部11の後段に設けられているインターフェース部12の上方まで奥側に向かって伸びだしており、この空間はウエハWが取り出されて空となったFOUP8を保管するストック領域116となっている。ストック領域116の底部には、例えば前後方向に4列、左右方向に4行の合計16個のFOUP8を載置可能な保持台115が設けられている。ストック領域116の天井側にはFOUP8のトップフランジを把持する把持部を上下方向に昇降可能、前後左右方向に移動可能に構成してなる第2のリフター117が設けられている。第2のリフター117は、例えば既述の第1のリフター114a、114bによって保持台115の最前列に搬送されたFOUP8を、保持台115上の任意の載置位置に移動させることができる。ここでストック領域116には、ウエハWを収納した状態のFOUP8を載置してもよいことは勿論である。
【0020】
図1、図2に示すように、インターフェース部12は、ウエハ洗浄装置1の筐体100内を、前後並びに上面の隔壁101、102によって搬入出部11及び処理部13から区画して形成される空間である。このインターフェース部12内の空間は、隔壁103によってさらに2つに分割され、第1、第2のインターフェース室120a、120bが形成されている。第1のインターフェース室120aは、処理前のウエハWを処理部13へ向けて搬送するための空間であり、当該第1のインターフェース室120aには、ウエハ取り出しアーム121と、ノッチアライナー123と、第1の姿勢変換装置124とが設けられている。
【0021】
ウエハ取り出しアーム121はFOUP8からウエハWを取り出す役割を果たしており、手前側から見て左右方向に移動自在、上下方向に昇降自在、並びに回転自在に構成されている。ノッチアライナー123は、ウエハ取り出しアーム121によって取り出された各ウエハWを複数のプレート上にて1枚ずつ支持して回転させ、各ウエハWに設けられた例えばノッチの位置をフォトセンサなどにより検知し、ウエハW間でノッチ位置を合わせることによりウエハWの位置決めを行う役割を果たす。
【0022】
第1の姿勢変換装置124は、ノッチアライナー123にて位置決めされた各ウエハWの側周の対向する両端部を把持し、これらウエハWを水平状態で上下方向に棚状に並べて保持した後、ウエハW同士の間隔を調整し、次いで図2に模式的に示すように、各ウエハWの両端部を把持したまま、棚状に並べられたウエハWを90度転動させることにより、各ウエハWの姿勢を垂直姿勢に変換する機能を備えている。図2においては、水平姿勢のウエハWを実線で示し、垂直姿勢のウエハWを破線で示してある。
【0023】
これに対して、隔壁103で区画されたもう一方の第2のインターフェース室120bは、処理部13にて処理を終えたウエハWをFOUP8へ向けて搬送するための空間であり、受け渡しアーム126と、第2の姿勢変換装置125と、ウエハ収納アーム122とを備えている。
【0024】
受け渡しアーム126は、処理部13にて処理された後のウエハWを垂直状態のまま受け取って搬送する役割を果たし、第2の姿勢変換装置125は既述の第1の姿勢変換装置124とは反対に、垂直状態の姿勢で並んでいるウエハWを水平状態に姿勢を変換する機能を備えている。またウエハ収納アーム122は、既述のウエハ取り出しアーム121とほぼ同様に構成されており、第2の姿勢変換装置125にて水平状態に姿勢変換されたウエハWを搬入出部11側で待機しているFOUP8内に収納する役割を果たす。
【0025】
また、各インターフェース室120a、12bと、既述の搬入出部11との間の隔壁101には開閉扉127が設けられている。これら開閉扉127は、当該開閉扉127と対向するように搬入出部11内に載置されたFOUP8の側面に設けられた蓋体を取り外して下方側へと退避することができる。
【0026】
次に処理部13は、例えばインターフェース部12から搬送されてきたウエハWに付着しているパーティクルや有機物汚染を除去する第1の処理ユニット131と、ウエハWに付着している金属汚染を除去する第2の処理ユニット133と、ウエハWに形成された化学酸化膜を除去すると共に乾燥処理を実行する洗浄・乾燥ユニット4と、これら処理ユニット131、133、4間でウエハWを搬送する搬送アーム136と、この搬送アーム136に設けられているウエハ保持用のチャックを洗浄するチャック洗浄ユニット135と、を備えている。
【0027】
図1、図3に示すように、処理部13内には、洗浄・乾燥ユニット4、第2の処理ユニット133、第1の処理ユニット131、チャック洗浄ユニット135が、手前側からこの順に直線状に配置されている。搬送アーム136は、上下方向に昇降自在且つ、回転自在に構成され、また、これらのユニット4、133、131、135に沿って設けられた搬送軌道137にガイドされて前後方向に移動することができる。搬送アーム136は、各処理ユニット4、133、131間並びにインターフェース部12との間で、ウエハWの搬送、受け渡しを行う役割を果たし、垂直姿勢で並んだウエハWを例えば50枚搬送することができる。
【0028】
第1、第2の処理ユニット131、133は、薬液、例えばAPM(Ammonium hydroxide-hydrogen Peroxide-Mixture)溶液(アンモニア、過酸化水素水及び純水の混合溶液)やHPM(HCl-hydrogen Peroxide-Mixture)溶液(塩酸、過酸化水素水及び純水の混合溶液)等を満たすことが可能な処理槽として構成されている。これら処理ユニット131、133は、搬送アーム136との間で一括してウエハWの受け渡しを行い、これらウエハWを薬液内に浸漬させるためのウエハボート134、132を備えている。
【0029】
一方洗浄・乾燥ユニット4は、ウエハW表面に形成された化学酸化膜を、薬液、例えばフッ化水素酸にて除去する処理と、IPA蒸気と窒素ガスとを混合した乾燥用のガスを用いてウエハW表面に付着した液体を乾燥させる処理との2つの処理を1つのユニット内にて連続して実行することが可能であり、他の2つの処理ユニット132、134とは異なる構成となっているので、図4に示した縦断側面を用いて説明しておく。図4は、洗浄・乾燥ユニット4の縦断側面を搬送アーム136側から見た様子を示している。
【0030】
洗浄・乾燥ユニット4は、例えばフッ化水素酸などの薬液や純水などの洗浄液を貯留する洗浄槽42と、この洗浄槽42の上方位置に、当該洗浄槽42内の空間と連通して設けられた乾燥室41と、これら乾燥室41と洗浄槽42との連通部を開閉可能に構成されたシャッター43と、複数例えば50枚のウエハWを保持してこれらのウエハWを洗浄槽42内の空間と41内の空間との間で上下方向に移動可能に保持するウエハボート413と、を備えている。
【0031】
洗浄槽42は、例えば石英部材やポリプロピレンなどからなり、上面が開口した内槽421と、この内槽421の上端部外周領域に配設され、内槽421からオーバーフローした洗浄液を受け止める外槽422と、この外槽422のさらに外周領域に配設された排気室424と、前記内槽421内の下部領域に、図4に向かって左右両側に設けられ、不図示の薬液供給部から供給された洗浄液や薬液を内槽421内のウエハWに向かって噴射する液供給ノズル423と、を備えている。図中、451は内槽421の底部に設けられた第1の排液路、452は外槽422の底部に設けられた第2の排液路、453は排気室424の底部に設けられた排気路であり、各排液路451、452、排気路453には開閉バルブが介設されている。
【0032】
内槽421は、当該内槽421の全体を覆う筐体部44内に配置されており、この筐体部44は、図3に示すように第2の処理ユニット133の手前側に配設されている。筐体部44は仕切板443によって上部空間441と下部空間442とに上下に分割されており、上部空間441は洗浄槽42を格納する一方、下部空間442は各排液路451、452、排気路453からの排液並びに排気をユニット4外へと排出する役割を果たす。図中、上部空間441、下部空間442に各々設けられた444、445は排気窓、下部空間442に設けられた446は廃液口である。
【0033】
乾燥室41は、下面が開口すると共に縦断面がU字状に形成され、例えば石英部材やポリプロピレンなどからなるフード状の乾燥室本体411により構成されており、その開口部を洗浄槽42側の開口部と対向させて連通部を形成するように洗浄槽42の上方位置に配置されている。そして乾燥室41内の下部領域には、乾燥室41内に乾燥用のガスを供給するために、例えば上方へ向けて開口する供給孔を複数備えたIPA蒸気供給ノズル412と、乾燥室41から乾燥ガスを排出するための排気管414とが設けられている。
【0034】
乾燥室本体411は、不図示の昇降手段によって昇降可能に構成されており、図4に示すように当該乾燥室本体411の開口部を洗浄槽42側の開口部と対向させて、気密な空間を形成する下方位置と、図3に示すようにこの下方位置より上方側に退避して搬送アーム136との間でウエハWの受け渡しを行う上方位置との間を昇降することができる。またウエハボート413についても不図示の昇降手段により、乾燥室41内と洗浄槽42内との間を昇降可能に構成されており、当該乾燥室41に保持した複数枚のウエハWを、図4に実線で示した位置と一点鎖線で示した位置との間で昇降させることができるようになっている。
【0035】
また互いに連通する開口部を備えた乾燥室41と洗浄槽42との中間の高さ位置には、例えば図4に向かって左右方向に水平方向に移動することにより、乾燥室41-洗浄槽42間の連通部を開閉するためのシャッター43が設けられている。
【0036】
図5は、上述の乾燥室41にウエハWの乾燥用のガスであるIPA蒸気を供給するためのIPA蒸気発生ユニット2の構成を示している。IPA蒸気発生ユニット2は、IPA及び窒素の各供給系統から供給されたIPA及び窒素の混合流体よりIPA蒸気を発生させる乾燥ガス発生部である蒸気発生部23を備えている。このIPA蒸気発生ユニット2は、図1に示すように例えば洗浄・乾燥ユニット4の背面側に設けられている。
【0037】
図5に示すようにIPAの供給系統は、例えば外部のIPA供給源21から液体IPAを受け入れて一時的に貯留する中間タンクであるIPAタンク211と、所定量の液体IPAをIPAタンク211から下流側へと払い出す供給制御部212と、液体IPA中に含まれるパーティクルなどを除去するフィルター213と、をこの順にIPA供給路214a、214b上に介設した構成となっている。ここで供給制御部212は例えば往復動式のポンプPと開閉バルブV1とを備えている。
【0038】
一方、窒素の供給系統は、例えば外部に設けられた窒素供給源22より所定量の窒素を受け入れる供給制御部221と、窒素ガス中に含まれるパーティクルを除去するフィルター222とを窒素供給路223上にこの順に介設した構成となっており、供給制御部221には開閉バルブV2とマスフローコントローラMとが設けられている。IPA供給路214b及び窒素供給路223は共通の二流体ノズル25に接続されており、二流体ノズル25を流れる窒素ガス雰囲気中に液体IPAを霧状に噴霧して得られたIPAと窒素との混合流体を、混合流体供給路251を介して後段の蒸気発生部23へ向けて送り出すようになっている。
【0039】
蒸気発生部23は、二流体ノズル25より供給された霧状のIPAと窒素ガスとの混合流体を加熱して、ウエハWの乾燥用のガスであるIPA蒸気を発生させる役割を果たす。蒸気発生部23は、例えば5つの小室に区切られた本体容器231の各室内に、IPAと窒素ガスとの混合流体を加熱するための加熱部である加熱ユニット234を配置した構成となっている。各加熱ユニット234は、例えば直棒状に形成されたハロゲンランプ232と、このハロゲンランプ232の周囲に、当該ハロゲンランプ232から径方向に離間した位置に配置されると共に、ハロゲンランプ232の長手方向に螺旋状に伸びるスパイラル管233と、を備えている。
【0040】
スパイラル管233は、ハロゲンランプ232からの輻射熱を吸収しやすくするために例えば黒色に塗装されたステンレス製の配管部材にて形成されている。またスパイラル管233は、長手方向に隣り合って配置された配管同士が互いに接触するように螺旋が形成されており、ハロゲンランプ232の輻射熱がスパイラル管233同士の隙間から外方へと漏れにくい構成となっている。また本体容器231の各小室には、不図示の窒素ガス供給源より窒素ガスが供給されていて、当該加熱雰囲気に、例えば外部雰囲気からIPA蒸気などが侵入するのを防止している。
【0041】
各加熱ユニット234のスパイラル管233は、混合流体を通流させる1本の流路を形成するように、互いに直列に接続されると共に、上流側の一端は混合流体供給路251に接続され、下流側の他端は、乾燥室41にIPA蒸気を供給するためのIPA蒸気供給路241に接続されている。直列に配置された5つの加熱ユニット234のうち、例えば上流側の2つは、混合流体中の霧状のIPAを蒸発させる役割を果たし、例えば残る3つの加熱ユニット234は、IPAを蒸発させて得られたIPA蒸気と窒素ガスとの混合流体(以下、単にIPA蒸気という)を、IPA蒸気の露点温度よりも高い例えば150〜200℃の範囲の例えば190℃まで昇温して過熱状態とすることにより、IPAの凝縮を防止する役割を果たしている。
ここでIPA蒸気を発生させる機器の構成は、ハロゲンランプ232とスパイラル管233とを備えた上述の蒸気発生部23の例に限定されるものではなく、例えば液体IPAに窒素ガスをバブリングして発生させたIPAと窒素ガスとの混合気体を加熱することなどによりIPA蒸気を発生させてもよい。
【0042】
各加熱ユニット234には、不図示の温度検出部が設けられており、各スパイラル管233を流れる混合流体の例えば出口温度を検出することができる。そして、これらの温度検出結果は後述の制御部5に出力され、各ハロゲンランプ232への電力供給を行う電力供給部235に供給電力の調整量としてフィードバックされて各加熱ユニット234の温度調整が行われるようになっている。
【0043】
蒸気発生部23にて発生したIPA蒸気は、IPA蒸気供給路241を通って既述の洗浄・乾燥ユニット4の乾燥室41内に設けられたIPA蒸気供給ノズル412に供給される。このIPA蒸気供給路241にはフィルターユニット3が介設されており、IPA蒸気中に含まれるパーティクルなどを除去してから当該IPA蒸気が乾燥用のガスとして乾燥室41へと供給される。
【0044】
図6に示すようにフィルターユニット3は、濾材収納部である例えば円筒形状のフィルタースリーブ32内に、濾材であるカートリッジ式のメタルフィルター31を配置、固定した構造となっている。メタルフィルター31は、例えば円環形状の金属部材からなるフランジシート部312と、例えば濾材である多孔質の焼結金属から構成されると共に、先端が閉塞された円筒状の濾材部311と、を備えている。フランジシート部312は、フィルタースリーブ32側のフランジ321に固定され、このフランジシート部312を基端側とすると、このフランジシート部312には、複数本の濾材部311が、当該基端部から先端部へ向けて伸びるように固定されている。フィルターユニット3内を流れるIPA蒸気は、基端部側から先端部側へ向けてメタルフィルター31の濾材を通過し、ここでパーティクルが濾過されることになる。
【0045】
さらにこのメタルフィルター31には、背景技術にて説明したように、IPA蒸気中に微量に含まれる高沸点有機物などの不純物が、例えばメタルフィルター31の濾材を構成する焼結金属の細孔内に吸着してトラップされることも分かっている。
【0046】
IPA蒸気供給路241及びフィルタースリーブ32の外面にはテープヒーター243、33が捲回されており、その内部を通流するIPA蒸気の温度を例えば蒸気発生部23の出口温度と同じ温度に維持できるようになっている。例えばフィルターユニット3の出口側のIPA蒸気供給路241には、熱電対などからなる温度検出部244が設けられており、IPA蒸気の温度の検出結果が後述の制御部5に出力され、各テープヒーター243、33への電力供給を行う電力供給部26に供給電力の調整量としてフィードバックされて温度調整が行われる。
【0047】
さらにフィルターユニット3の下流側のIPA蒸気供給路241には、開閉バルブV3が設けられており、これらフィルターユニット3と開閉バルブV3との間の位置には、開閉バルブV4を備えた排気路242が接続されている。これらの開閉バルブV3、V4を開閉することによって、フィルターユニット3を通過したガスの行き先を、乾燥室41側と排気路242側との間で切り替えることができる。排気路242は例えば工場の除害設備に接続されている。
【0048】
以上の構成を備えたウエハ洗浄装置1は、図1、図5に示すように制御部5と接続されている。制御部5は例えば図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部には当該ウエハ洗浄装置1の作用、つまり、搬入出部11内にFOUP8を搬入し、ウエハWを取り出して各種の液処理を実行してから、再度ウエハWをFOUP8内に収納して当該FOUP8を搬出するまでの動作に係わる制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0049】
さらに制御部5の記憶部には、上述のようにウエハWに対して洗浄処理を実行する動作に係わる制御のプログラムに加えて、フィルターユニット3内のメタルフィルター31に付着した付着物である高沸点有機物をパージする動作を実行するプログラムが記憶されている。高沸点有機物のパージにおいては、フィルターユニット3を通流するガスをウエハWの乾燥用のガスからメタルフィルター31のパージ用のガスに切り替えると共に、当該パージ用のガスの温度が乾燥用のガスの温度よりも高くなるように温度調整が行われるようになっているが、この切り替え前後における各部の作用については後述の作用説明にて詳しく説明する。
【0050】
以上に説明した構成を備えたウエハ洗浄装置1の作用について説明すると、例えばウエハWを25枚ずつ収納したFOUP8が搬送ロボットなどによって搬送され、右手側のロードポート111のいずれかの載置台112上に載置されると、開閉扉118が開き載置台112がスライドして、FOUP8を搬入出部11内に搬入する。第1のリフター114aはFOUP8を載置台112から持ち上げて、図2に示すように当該FOUP8をインターフェース部12側の開閉扉127と対向する位置に移動させる。
【0051】
FOUP8は、開閉扉127によって蓋体が取り外され、このFOUP8内にウエハ取り出しアーム121が進入してウエハWを取り出し、第1のインターフェース室120a内へとウエハWが搬入される。ウエハWが取り出されて空となったFOUP8は、蓋体が閉じられ、第1のリフター114aによってストック領域116まで搬送され、ウエハWの処理が終わるまで保管される。
【0052】
第1のインターフェース室120a内に搬入されたウエハWは、ノッチアライナー123にて位置決めされ、第1の姿勢変換装置124にて間隔調整、姿勢変換された後、インターフェース部12内に進入してきた搬送アーム136に受け渡される。搬送アーム136に保持されたウエハWは、第1の処理ユニット131のウエハボート132に受け渡され、処理槽に満たされたAPM溶液内に浸漬されて、パーティクルや有機物汚染が除去された後、洗浄液例えば純水によって洗浄される。
【0053】
第1の処理ユニット131での一次洗浄を終えたウエハWは再び搬送アーム136に受け渡され、第2の処理ユニット133のウエハボート134に受け渡されて薬液例えばHPM溶液に浸漬されて金属汚染が除去され、純水によって洗浄される。この二次洗浄を終えたウエハWは再度搬送アーム136に受け渡され、洗浄・乾燥ユニット4に搬送される。
【0054】
二次洗浄を終えたウエハWが搬送アーム136にて搬送されてくると、洗浄・乾燥ユニット4は乾燥室本体411を上昇させ、またシャッター43を閉とした状態で待機しており、搬送アーム136から洗浄・乾燥ユニット4のウエハボート413にウエハWが受け渡される。そして搬送アーム136が退避すると、シャッター43を開き、ウエハボート413を下降させて、洗浄槽42内にウエハWを搬入すると共に、乾燥室本体411を降下させて洗浄槽42と乾燥室41とからなる密閉空間を形成する。
【0055】
その後、液供給ノズル423から薬液例えば例えばフッ化水素酸を供給してウエハWを薬液洗浄し、次いで液供給ノズル423から供給される液体を純水に切り替えて薬液と置換後、洗浄処理を実行する。ウエハWの洗浄を終えたら、ウエハボート413を上昇させて、ウエハWをウエハボート413内に搬送する。次いでシャッター43を閉じて乾燥室41内を洗浄槽42及び外気から遮断し、IPA蒸気供給ノズル412より乾燥室41内に乾燥用のガスであるIPA蒸気が供給される。
【0056】
乾燥室41内に供給されたIPA蒸気は、図4に矢印で示すように乾燥室本体411の両側壁の内面に沿って上方に向けて流れた後、乾燥室本体411の頂部にて流れ方向が下方側に変わり下降して、排気管414から外部へと排出されるので、ウエハWに均一に乾燥用のガスを接触させてウエハW表面を均一に乾燥させることができる。
【0057】
このときIPA蒸気を供給するIPA蒸気発生ユニット2においては、図7(a)に示すように、IPA供給路214bの開閉バルブV1及び窒素供給路223の開閉バルブV2並びにIPA蒸気供給路241の開閉バルブV3を開として(同図中に「O」と示してある。以下同じ)、蒸気発生部23に霧状のIPAと窒素ガスとの混合流体を供給し、蒸気発生部23にてIPAを蒸発、過熱してIPA蒸気を発生させ、フィルターユニット3内のメタルフィルター31にてIPA蒸気に含まれるパーティクルを除去した後、当該IPA蒸気が乾燥室41のIPA蒸気供給ノズル412に供給されている。蒸気発生部23及びフィルターユニット3の出口でのIPA蒸気の温度は、例えば190℃となるように、スパイラル管233やテープヒーター243、33への供給電力が調整されている。ここで排気路242の開閉バルブV4は「閉」となっており(同図中に「S」と示してある。以下同じ)、IPA蒸気は排気路242側へは流れない。また図7(a)、図7(b)においては二流体ノズル25やテープヒーター243などの記載を省略してある。
【0058】
このようにIPA蒸気の温度を予め190℃に加熱した状態で、メタルフィルター31に通流させることにより、メタルフィルター31はIPA蒸気によって加熱され、当該IPA蒸気とほぼ同じ温度(本発明の第1の温度に相当する)まで加熱される。言い換えると、IPA蒸気の温度調整を行うIPA蒸気発生ユニット2のハロゲンランプ232や、IPA蒸気供給路241を覆うテープヒーター243は、IPA蒸気によってメタルフィルター31を第1の温度に加熱する濾材加熱部としての役割も果たしている。これと同時に、フィルタースリーブ32に設けられたテープヒーター33から供給される熱についても、フィルタースリーブ32内を流れるIPA蒸気を介してメタルフィルター31へと供給されることから、メタルフィルター31は当該テープヒーター33によっても第1の温度に加熱されているともいえる。この観点においては、フィルターユニット3に設けられたテープヒーター33についてもメタルフィルター31を第1の温度に加熱する濾材加熱部の役割を果たしていることになる。
【0059】
そしてメタルフィルター31にIPA蒸気を通過させる際に、当該IPA蒸気中に高沸点有機物などの不純物が含まれていると、不純物がメタルフィルター31の細孔内などにトラップされてメタルフィルター31に蓄積されていくことになる。またフィルターユニット3の上流側の配管系統212、223、233、241、251に有機物などの付着物が付着している場合にも当該付着物がIPA蒸気によって下流側へと流れメタルフィルター31にてトラップ、蓄積されていく。
【0060】
ウエハWの処理の説明に戻ると、乾燥室41内での乾燥処理を終えると、乾燥室41内の雰囲気を例えば窒素ガスで置換し、次いで乾燥室本体411を上昇させてウエハWをウエハボート413から搬送アーム136へと受け渡す。次いでこれらのウエハWは第2のインターフェース室120b内の受け渡しアーム126に受け渡され、第2の姿勢変換装置125にて垂直状態から水平状態への姿勢変換がなされる。こうした動作と並行して、例えば手前側から見て左手に設けられた第1のリフター114bは、ストック領域116で保管されているFOUP8を第2のインターフェース室120b側の開閉扉127に対向する位置まで搬送し、開閉扉127にてFOUP8の蓋体を取り外した状態で待機させる。
【0061】
ウエハ収納アーム122は第2の姿勢変換装置125からFOUP8内にウエハWを搬入し、ウエハWの収納を終えたら蓋体を閉じ、第1のリフター114bにてFOUP8を搬送する。このとき搬入出部11内には、正面から見て左手のロードポート111の載置台112がスライドして待機しており、第1のリフター114bはこの載置台112上にFOUP8を載置する。そして開閉扉118を開き、載置台112をスライドさせてFOUP8をロードポート111上に位置させると、処理後のウエハWを収納した当該FOUP8は搬送ロボットによって次の工程へと搬送されていく。本実施の形態に係るウエハ洗浄装置1では、以上に述べた動作が連続的に実行され、例えば1時間に数百枚のウエハWの処理が行われる。
【0062】
以上に説明した動作において、フィルターユニット3のメタルフィルター31にトラップされた高沸点有機物などが蓄積されていくと、やがて飽和状態となって下流側の乾燥室41へ向けて流出し、ウエハWの汚染源となってしまう。そこで本実施の形態に係るウエハ洗浄装置1は、予め設定したタイミングにてフィルターユニット3に通流させるガスを乾燥用のガスであるIPA蒸気からパージ用のガスに切り替え、濾材であるメタルフィルター31を昇温してメタルフィルター31に付着した高沸点有機物を気化させて当該フィルター31から除去し、パージガスと共にIPA蒸気発生ユニット2の系外へと排出する、メタルフィルター31の再生処理を実行することができる。
【0063】
この再生処理の一例について説明すると、本例では図7(b)に示すように、窒素供給路223の開閉バルブV2及び排気路242の開閉バルブV4を「開」とする一方、IPA供給路214bの開閉バルブV1及びIPA蒸気供給路241の開閉バルブV3を「閉」として流路を切り替え、窒素供給源22から供給された窒素ガスのみが、IPAを含まない状態で蒸気発生部23にて加熱された後、パージ用のガスとしてフィルターユニット3を通流し、排気路242へと排出される。そして蒸気発生部23のハロゲンランプ232やIPA蒸気供給路241、フィルターユニット3に設けられたテープヒーター243、33の発熱量を大きくすることにより、パージ用のガスの温度を、乾燥用のガスの温度よりも高い、例えば240℃に加熱する。
【0064】
この場合においてもIPA蒸気の温度を予め240℃に加熱した状態で、メタルフィルター31に通流させることにより、メタルフィルター31はIPA蒸気によって加熱され、当該IPA蒸気とほぼ同じ温度(本発明の第2の温度に相当する)まで加熱される。そしてこれと同時に既述のように、メタルフィルター31は、フィルターユニット3に設けられたテープヒーター33によっても第2の温度に加熱されているといえる。
【0065】
そしてこのように乾燥処理時の第1の温度(例えば190℃)よりも高い第2の温度(例えば240℃)までメタルフィルター31を加熱することにより、高沸点有機物が気化して、パージガスと共に排気路242から装置外へと排出される。以上の作用から分かるように、本実施の形態に係るIPA蒸気発生ユニット2は、パージガス供給部及びその温度調整機能を兼ね備えていることになる。
【0066】
このとき、乾燥室41へと接続されたIPA蒸気供給路241は開閉バルブV3にて閉止されているので、高沸点有機物を含むパージ用のガスは乾燥処理の行われる乾燥室41側へは流れず、当該パージ動作に起因するウエハWの汚染を防止することができる。従って排気路242は、フィルターユニット3の出口にできるだけ近い位置にてIPA蒸気供給路241から分岐させることが好ましい。
【0067】
本実施の形態に係るウエハ洗浄装置1によれば以下の効果がある。ウエハWの乾燥処理時には、この乾燥処理に用いるIPA蒸気中に含まれるパーティクルを除去するためのメタルフィルター31を、当該IPA蒸気の露点温度以上の第1の温度に加熱し、このメタルフィルター31の再生処理時には、前記メタルフィルター31を第1の温度よりも高い第2の温度に加熱するので、当該メタルフィルター31をIPA蒸気供給路241上に配置した状態のまま、メタルフィルター31に付着した高沸点有機物などの付着物を気化させて除去することが可能となる。この結果、メタルフィルター31の交換などのために乾燥用のガスの配管系統212、223、233、241、251を開放したり、復旧したりする作業が必要なくなり、ウエハ洗浄装置1を停止させる期間を短縮して稼働率を向上させることができる。
【0068】
ここで上述の例では、IPA蒸気発生ユニット2にて予め加熱されたIPA蒸気やパージガスの持つ熱を利用する手法と、フィルターユニット3に設けられたテープヒーター33を利用する手法との2種類の手法を用いて、メタルフィルター31を乾燥処理時の第1の温度と、再生処理時の第2の温度とに切り替えて加熱しているが、いずれか一方の手法によりメタルフィルター31を加熱してもよい。例えばテープヒーター33に替えてフィルターユニット3を例えば断熱材で覆い、IPA蒸気発生ユニット2またはIPA蒸気供給路241を覆うテープヒーター243から供給される熱量にてメタルフィルター3の温度を調整してもよい。またこれとは反対に、各種ガスは前述の第1、第2の温度よりも低い温度にてフィルターユニット3へと流入させ、フィルターユニット3のテープヒーター33の発熱量によりメタルフィルター3の温度をこれら第1、第2の温度に調整してもよい。
【0069】
またメタルフィルター31を加熱する手法は、上述の2種類に限定されるものではなく、例えばメタルフィルター31自体に電力を印加して、メタルフィルター31の抵抗発熱により、当該メタルフィルター31を第1の温度と第2の温度とに切り替えて加熱してもよい。このほか、パージ用のガスは、窒素ガスに限らず、例えばアルゴンガスなどの不活性ガスでもよい。
【0070】
そしてメタルフィルター31の温度を第1の温度から第2の温度に上昇させることにより、当該メタルフィルター31から除去可能な付着物は、上述の高沸点有機物の例に限定されない。例えば処理部13からの雰囲気が逆流して酸、アルカリ系の物質がメタルフィルター31に付着した場合などにおいても、この付着物を乾燥処理時の第1の温度より高い第2の温度にて気化させて除去する場合も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0071】
このほか、上述の実施の形態においては乾燥用のガスとして有機溶剤であるIPAの蒸気と不活性ガスである窒素ガスとの混合ガスを用いた例を示したが、乾燥用のガスとして利用可能なガスはこの例に限られるものではなく、例えばアセトンなど他の有機溶剤と不活性ガスとの混合ガスを採用してもよい。さらには、窒素ガスなどの不活性ガスを単独で乾燥用のガスとしてもよく、この場合にも当該乾燥用のガス中に不純物が含まれている場合には、メタルフィルター31に付着物が付着する場合がある。
【0072】
さらに、IPA蒸気発生ユニット2内に配置され、第1の温度から第2の温度へと温度を上昇させることにより再生可能な濾材は、金属製である既述のメタルフィルター31の例に限定されるものではなく、例えばセラミック製のフィルターであってもよい。この場合にもセラミック製のフィルターを第1の温度から第2の温度へと昇温することにより、当該フィルターに付着した高沸点有機物などの付着物を気化させて、パージガスと共に排出することができる。
【0073】
またメタルフィルター31のパージは、例えばウエハ洗浄装置1にてウエハWの処理をしていないタイミングにて例えば数時間、数日間隔で行ったり、また洗浄・乾燥ユニット4にて予め設定した回数の処理を実行する毎に行ったりしてもよい。またウエハ洗浄装置1にてウエハWの処理を実行している場合であっても、例えばウエハWの乾燥処理を実行しており、乾燥室41へのIPA蒸気の供給を実行しているタイミングでは図7(a)の状態、乾燥室41へのIPA蒸気の供給を実行していないタイミングでは図7(b)の状態といったように、乾燥用のガスの供給とパージ実行とを切り替えながらウエハ洗浄装置1を稼動させてもよい。
【0074】
この他、本例ではパージ用のガスの供給系統並びにその温度調整を行う濾材加熱部を、乾燥用のガスのものと共用する構成としたが、例えばフィルターユニット3の上流側のIPA蒸気供給路241にパージガス供給専用の温度調整部を備えた配管を接続し、乾燥用のガスとは別の系統からパージガスを供給してもよいことは勿論である。
【実施例】
【0075】
(実験)
実際に稼動しているウエハ洗浄装置のIPA蒸気発生ユニットにおける使用済みのメタルフィルター31、及び実験用のIPA蒸気発生ユニット内にてIPA蒸気を通流させたメタルフィルター31を各々採取して、各メタルフィルター31に付着している物質を分析した。分析にあたっては、ダイナミックヘッドスペース法式のGC-MS(Gas Chromatography-Mass Spectrometer;Agilent Technology社製6890-5973N)を利用した。
A.実験条件
(参考例) IPA蒸気を通流させていない新品のメタルフィルター31に付着している成分を分析した。
(実施例1) 実際に稼動しているウエハ洗浄装置における使用済みのIPA蒸気発生ユニット内のメタルフィルター31に付着している成分を分析した。
(実施例2) 実験用のIPA蒸気発生ユニット内にてIPA蒸気を約半年程度通流させた後、メタルフィルター31に付着している成分を分析した。
【0076】
B.実験結果
(参考例)の結果を図8(a)、(実施例1)の結果を図8(b)、(実施例2)の結果を図8(c)に各々示す。各図の横軸はガスクロマトグラフのリテンションタイムを示し、縦軸は各リテンションタイムにて検出された物質の存在度(abundance)を示している。
【0077】
図8(a)に示す(参考例)の結果によれば、リテンションタイムが40分までの範囲において、検出強度のピークは殆ど観察されず、メタルフィルター31には有機物が付着していない状態であることが分かる。これに対して図8(b)、図8(c)の(実施例1、2)の結果によれば、(実施例1)ではリテンションタイムが数分〜30分付近までの幅広い領域に多数のピークが観察され、また(実施例2)ではリテンションタイムが10分〜20分程度の領域に多数のピークが観察されている。また、マススペクトロメーターによる同定結果によれば、これらの各ピークは有機物であることを確認している。このことから、IPA蒸気を通流させると、メタルフィルター31には多種類の有機物が付着することが分かる。そしてメタルフィルター31には、リテンションタイムが10分以上の、一般的に沸点が高いと予想される領域においても多数種類の有機物が検出されており、メタルフィルター31には比較的高沸点の有機物も付着している。これらのことから、IPA蒸気発生ユニット2内のメタルフィルター31に付着した付着物は、IPA蒸気を通流させたときのい第1の温度よりも高い第2の温度に加熱することにより気化して、メタルフィルター31から除去し、当該フィルター31を再生することが可能となる。
【符号の説明】
【0078】
V1〜V4
開閉バルブ
W ウエハ
1 ウエハ洗浄装置
11 搬入出部
第1のリフター
116 ストック領域
117 第2のリフター
12 インターフェース部
13 処理部
131 第1の処理ユニット
133 第2の処理ユニット
135 チャック洗浄ユニット
136 搬送アーム
2 IPA蒸気発生ユニット
23 蒸気発生部
3 フィルターユニット
31 メタルフィルター
311 濾材部
4 洗浄・乾燥ユニット
41 乾燥室
412 IPA蒸気供給ノズル
42 洗浄槽
5 制御部
8 FOUP

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の付着した基板に乾燥用のガスを接触させて、この基板を乾燥させる乾燥処理を行う基板処理装置において、
温度調整機能を備え、流体を加熱して乾燥用のガスを得るための乾燥ガス発生部と、
この乾燥ガス発生部で得られた乾燥用のガスに含まれるパーティクルを除去するための濾材と、
この濾材を加熱する濾材加熱部と、
前記濾材を通流した乾燥用のガスを用いて前記乾燥処理を行う処理部と、
乾燥処理時には、前記処理部へ供給される乾燥ガスの温度を露点温度以上に維持するために前記濾材を第1の温度に加熱し、前記濾材の再生処理時には、濾材に付着した付着物を気化させて除去するために当該濾材を前記第1の温度よりも高い第2の温度に加熱するように前記濾材加熱部を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記濾材は、金属製またはセラミック製であることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記濾材は濾材収納部に収納され、
前記濾材加熱部はこの濾材収納部を加熱するヒーターを含み、
前記制御部は、濾材の再生処理時における前記ヒーターの発熱量を乾燥処理時よりも大きくするように制御することを特徴とする請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記濾材の再生処理時に、濾材に付着した付着物の気化物を排出するために当該濾材にパージガスを供給するパージガス供給部を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記パージガス供給部は、パージガスを介して前記濾材を加熱する前記濾材加熱部を兼用するために温度調整機能を備えたことを特徴とする請求項4記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記パージガス供給部の温度調整機能は、前記乾燥ガス発生部の温度調整機能を共用していることを特徴とする請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記濾材と処理部との間に設けられた排気路と、前記濾材を通過したガスが流れる流路を、前記処理部側と当該排気路側との間で切り替える流路切替部とを備え、前記制御部は、前記濾材の再生処理時には、当該濾材を通過したパージガスの流出先を前記排気路側に切り替えることを特徴とする請求項4ないし6のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記乾燥用のガスは有機溶剤の蒸気と不活性ガスとの混合ガスであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記有機溶剤はイソプロピルアルコールであることを特徴とする請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
液体の付着した基板に有機物を含む乾燥用のガスを接触させて、この基板を乾燥させる乾燥処理を行う基板処理装置に設けられた濾材の再生方法において、
温度調整を行いながら、前記有機物を含む流体を加熱して乾燥用のガスを得る工程と、
この工程で得られた乾燥用のガスに含まれるパーティクルを濾材にて除去する工程と、
この濾材を通流した乾燥用のガスを基板の処理部に供給して乾燥処理を行う工程と、
乾燥処理時には、前記処理部へ供給される乾燥ガスの温度を露点温度以上に維持するために前記濾材を第1の温度に加熱する工程と、
前記濾材の再生処理時には、濾材に付着した付着物を気化させるために当該濾材を前記第1の温度よりも高い第2の温度に加熱する工程と、を含むことを特徴とする濾材の再生方法。
【請求項11】
前記濾材は濾材収納部に収納され、この濾材収納部は、当該濾材収納部を加熱するヒーターを備え、前記濾材を第2の温度に加熱する加熱する工程においては、濾材の再生処理時における前記ヒーターの発熱量を乾燥処理時よりも大きくすることを特徴とする請求項10に記載の濾材の再生方法。
【請求項12】
前記基板処理装置は、前記濾材の再生処理時に濾材に付着した付着物の気化物を排出するために当該濾材にパージガスを供給する、当該パージガスの温度調整機能を備えたパージガス供給部を備え、前記濾材を第2の温度に加熱する加熱する工程においては、このパージガス供給部から供給されたパージガスを介して前記濾材を加熱することを特徴とする請求項10または11に記載の濾材の再生方法。
【請求項13】
液体の付着した基板に有機物を含む乾燥用のガスを接触させて、この基板を乾燥させる乾燥処理を行う基板処理装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、請求項10ないし12のいずれか一つに記載された濾材の再生方法を実施するようにステップ群が組まれていることを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−212293(P2010−212293A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53925(P2009−53925)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】