基板処理装置および処理液温度測定方法
【課題】基板に供給される処理液の温度を精度良く測定することができる基板処理装置および処理液温度測定方法を提供すること。
【解決手段】ノズル5から吐出された処理液は、ウエハWの上面に供給される。放射温度計6によって、ウエハWの上面を流れる処理液の温度が検出される。ノズル5から実際に処理液を吐出させ、その処理液の温度を放射温度計6により検出したときの放射検出値が、当該処理液の温度を熱電対温度計により測定したときの熱電対検出値に対応付けて、メモリに記憶されている。この放射検出値と、熱電対検出値とに基づいて、当該処理液に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式が作成される。放射温度計6の検出値を、当該処理液に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式で補正することにより、当該処理液の温度が算出される。
【解決手段】ノズル5から吐出された処理液は、ウエハWの上面に供給される。放射温度計6によって、ウエハWの上面を流れる処理液の温度が検出される。ノズル5から実際に処理液を吐出させ、その処理液の温度を放射温度計6により検出したときの放射検出値が、当該処理液の温度を熱電対温度計により測定したときの熱電対検出値に対応付けて、メモリに記憶されている。この放射検出値と、熱電対検出値とに基づいて、当該処理液に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式が作成される。放射温度計6の検出値を、当該処理液に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式で補正することにより、当該処理液の温度が算出される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液を用いて基板を処理する基板処理装置、および基板に供給される処理液の温度を測定する処理液温度測定方法に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置の製造工程では、半導体ウエハや液晶表示パネル用ガラス基板などの基板の表面に処理液による処理を施すために、基板を1枚ずつ処理する枚葉型の基板処理装置が用いられることがある。
この枚葉型の基板処理装置は、処理対象の基板をほぼ水平に保持しつつ、その基板を回転させるスピンチャックと、スピンチャックによって回転される基板の表面に処理液を供給するためのノズルとを備えている。処理液の活性度合は処理液の温度に大きく依存する。そのため、ノズルから吐出される処理液の温度が不適正であると、基板処理に処理不良が生じるおそれがある。とくに、処理液の温度が室温と異なる場合(たとえば室温よりも高い場合)には、処理液の温度を管理することが重要である。
【0003】
そこで、従来から、ノズルから吐出される処理液の温度を温度計により検出することが提案されている。特許文献1では、基板の表面に供給される処理液の温度を、熱電対温度計によって検出する構成が提案されている。また、特許文献2では、洗浄処理中に、基板の表面に処理液を供給しつつ基板を回転させ、その基板上の処理液の液膜の表面温度を、放射温度計によって検出する構成が提案されている。
【特許文献1】特開2005−217226号公報
【特許文献2】特開平11−165114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
温度計の検出値の履歴は、たとえば、基板処理装置に備えられるコンピュータによって、ログファイルとして記録しておくことができる。基板処理に処理不良が生じた場合、オペレータは、そのログファイルに記録されている温度計の検出値履歴を参照することができる。これにより、処理不良の原因が処理液の温度異常にあるか否かを把握することができる。
【0005】
また、温度計の検出値を常時監視しておき、その検出値が予め定める温度範囲を逸脱した場合に、警報を出力することが考えられる。これにより、処理液の温度異常をオペレータに報知することができるから、処理不良の発生を抑制したり予防したりすることができる。
熱電対温度計は、熱伝達を利用して温度を検出する温度計である。熱電対温度計による温度検出は、そのセンサ部分を検出対象の温度まで加熱/冷却することによって達成される。そのため、熱電対温度計の応答時間(検出開始から、検出値が検出対象の温度に一致するまでの時間)は比較的長い。したがって、ノズルから吐出される処理液の温度を精度良く検出するには、十分に長い検出時間が必要である。
【0006】
しかしながら、基板処理における液処理時間は短縮傾向にある。そのため、各液処理における処理液吐出時間は短く、十分な検出時間を確保できない場合が多い。そのため、特許文献1のように、熱電対温度計によって処理液温度を検出する場合、その検出精度が不十分であるおそれがある。
一方、放射温度計は、検出対象の表面から放射される赤外線などの光線の強度を検出し、これらの光線の強度および検出対象の放射率に基づいて検出対象の温度を検出する温度計である。この放射温度計は、一般的に応答時間が短い。
【0007】
しかしながら、放射温度計は、周囲の環境変化(周囲の雰囲気の湿度変化など)や検出対象の表面状態などの影響を受け易い。そのため、特許文献2のように放射温度計によって基板上の処理液の液膜の温度を検出する場合は、処理室内の湿度変化や処理液の液膜表面の影響を大きく受けてしまい、検出誤差を生じるおそれがある。そればかりでなく、或る種類の処理液に対応する放射率に設定した放射温度計で別の種類の処理液の温度を検出する場合も、検出誤差を生じるおそれがある。
【0008】
このように、特許文献1および特許文献2のいずれの構成においても、処理液温度の検出精度が悪かった。
そして、処理液温度の検出精度が悪いと、ログファイルに記録される検出値が実際の処理液の温度履歴と異なるおそれがある。この場合、基板処理不良が発生しても、その原因が処理液の温度異常にあるのか否かを把握することができない。また、処理液温度の検出精度が悪いと、温度計の検出値を監視しても、処理液の温度異常を精度良く検出することができない。そのため、基板処理不良が発生しているのに警報が出力されなかったり、逆に、基板処理不良が生じていないのに警報が出力されたりするおそれがある。むろん、処理液温度の検出精度が悪いと、基板に対して適正に温度制御された処理液を供給できなくなるおそれがあるから、基板処理品質が悪くなるおそれがある。
【0009】
そこで、この発明の目的は、基板に供給される処理液の温度を精度良く測定することができ、これにより、基板に適正な温度の処理液を用いた処理を施すことができる基板処理装置を提供することである。
また、この発明の他の目的は、基板に供給される処理液の温度を精度良く測定することができる処理液温度測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、処理液を用いて基板(W)を処理する基板処理装置(1;60;70;100)であって、基板に処理液を供給するための処理液供給手段(5,15,16,17,18,19,20;5,79,80,83,84,94,96;5,103,105,106,110,112)と、前記処理液供給手段から基板に供給される処理液の温度を検出するための放射温度計(6)と、前記処理液供給手段から処理液を供給しつつ、その処理液の温度を前記放射温度計により検出したときの検出値を、前記処理液の現実の温度に対応付けて記憶した記憶手段(32)と、前記記憶手段に記憶された前記検出値および前記現実の温度に基づいて、前記処理液の温度に関する補正量(38)を作成する補正量作成手段(31,S30)と、前記放射温度計の検出値を、前記補正量作成手段により作成された補正量によって補正して、前記処理液の温度を算出する処理液温度算出手段(31,S15;31,S45)とを含む、基板処理装置である。
【0011】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、特許請求の範囲を実施形態に限定する趣旨ではない。以下、この項において同じ。
この構成によれば、処理液供給手段から基板に供給される処理液の温度が、放射温度計によって検出される。そして、この放射温度計の検出値を、当該処理液に関する補正量によって補正して、当該処理液の温度が算出される。
【0012】
実際に処理液供給手段から処理液を供給しつつ、その処理液の温度を放射温度計により検出したときの検出値が、当該処理液の現実の温度に対応付けて、記憶手段に記憶されている。そして、この記憶手段に記憶された放射温度計の検出値と、現実の温度とに基づいて、当該処理液に関する補正量が作成される。その補正量によって放射温度計の検出値を補正するので、これにより、処理液の温度を精度良く測定することができる。これにより、適正温度の処理液を用いた処理を基板に施すことができる。
【0013】
請求項2記載の発明は、前記処理液供給手段から基板に供給される処理液の温度を検出するための接触式温度計(21)をさらに含み、前記記憶手段は、前記処理液供給手段から処理液を供給しつつ、その処理液の温度を前記放射温度計により検出したときの検出値を、当該処理液の温度を接触式温度計により検出したときの検出値に対応付けて記憶した手段(32)を含み、前記補正量作成手段は、前記記憶手段に記憶された前記放射温度計の検出値および前記接触式温度計の検出値に基づいて、前記補正量を作成する手段(31,S30)を含む、請求項1記載の基板処理装置である。
【0014】
この構成によれば、記憶手段には、実際に前記処理液供給手段から処理液を吐出しつつ、その処理液の温度を前記放射温度計により検出したときの検出値が、当該処理液の温度を接触式温度計により検出したときの検出値に対応付けて記憶されている。接触式温度計による温度検出が、接触式温度計の応答時間よりも長い時間にわたって実行される場合、接触式温度計の検出値は、処理液の現実の温度を実質的に表わす。
【0015】
なお、接触式温度計として、熱電対温度計、抵抗温度計、サーミスタ温度計、半導体温度計などを例示することができる。
請求項3に記載のように、前記処理液供給手段が、基板に向けて処理液を吐出するノズル(5)を備えている場合は、前記接触式温度計は、前記ノズルの管壁(26)内を流通する処理液の温度を検出するものであってもよい。
【0016】
また、請求項4に記載のように、前記処理液供給手段が、基板に向けて処理液を吐出するノズル(5)を備え、かつ前記基板処理装置が前記ノズルから吐出された処理液を受け止めるための容器(22)をさらに含んでいる場合は、前記接触式温度計は、前記容器に貯留された処理液の温度を検出するものであってもよい。
請求項5記載の基板処理装置は、基板を水平姿勢に保持する基板保持手段(4)と、前記基板保持手段に保持される基板を回転させる基板回転手段(8)と、前記基板回転手段によって回転される基板の回転数を設定するための回転数設定手段(34)とをさらに含み、前記記憶手段は、前記処理液供給手段から処理液を供給し、かつ前記基板回転手段により基板を回転させつつ、その処理液の温度を前記放射温度計により検出したときの検出値を、前記処理液の現実の温度、およびそのときの基板の回転数に対応付けて記憶した手段(32)を含み、前記補正量作成手段は、前記記憶手段に記憶された前記放射温度計の前記検出値、前記現実の温度、および前記回転数に基づいて、前記回転数設定手段によって設定された回転数に対応する前記補正量を作成する手段(31;S30)を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0017】
この構成によれば、基板が水平姿勢に保持されつつ、回転数設定手段によって設定される回転数で回転される。基板に処理液が供給されると、基板の表面に処理液の液膜が形成される。この液膜の表面温度が放射温度計によって検出される。処理液の液膜の内部温度は基板の温度の影響を受けるので、厳密に言えば、液膜の表面と、液膜の内部(とくに基板表面の近くの部分)との間には温度差が生じている。この温度差は液膜の厚さに依存する。そして、液膜の厚さは基板の回転数に依存する。なぜなら、基板の回転数に応じて液膜に作用する遠心力が変化し、これに伴って、液膜の厚みが変化するからである。したがって、基板の回転数を考慮して放射温度計の検出値を補正すれば、基板に接している処理液の温度を一層高精度に求めることができる。
【0018】
そこで、請求項5の構成によれば、記憶手段には、放射温度計の検出値が、現実の温度および基板の回転数に対応付けて記憶されている。そして、放射温度計の検出値、現実の温度および基板の回転数に基づいて、回転数設定手段によって設定された回転数に対応する補正量が作成される。そして、その補正量で放射温度計の検出値を補正して処理液の温度を算出する。これにより、処理液の温度(とくに基板表面に接している処理液の温度)を、より一層精度良く測定することができる。
【0019】
記憶手段には、放射温度計の検出値が、所定個数の離散的な回転数値に対応して記憶されていてもよい。回転数設定手段によって設定された回転数に該当するデータが記憶手段に記憶されていない場合には、たとえば、記憶手段に記憶されているデータに対応した補正量に対する線形補間演算を行うことで、当該回転数に対応した補正量を算出できる。
請求項6記載の発明は、基板を水平姿勢に保持する基板保持手段(4)と、前記処理液供給手段から供給される処理液の供給流量を設定するための供給流量設定手段(34)とをさらに含み、前記記憶手段は、前記処理液供給手段から処理液を供給しつつ、その処理液の温度を前記放射温度計により検出したときの検出値を、前記処理液の現実の温度、および前記処理液の供給流量に対応付けて記憶した手段(32)を含み、前記補正量作成手段は、前記記憶手段に記憶された前記放射温度計の前記検出値、前記現実の温度、および前記供給流量に基づいて、前記供給流量設定手段によって設定された処理液の供給流量に対応する前記補正量を作成する手段(31)を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0020】
この構成によれば、基板が水平姿勢に保持される。基板に処理液が供給されると、基板の表面に処理液の液膜が形成される。この液膜の表面温度が放射温度計によって検出される。この場合、処理液の液膜の内部温度は基板の温度の影響を受けるので、厳密に言えば、液膜の表面と、液膜の内部(とくに基板表面の近くの部分)との間には温度差が生じている。この温度差は液膜の厚さに依存する。そして、液膜の厚さは基板上に供給される処理液の供給流量に依存する。したがって、処理液の供給流量を考慮して放射温度計の検出値を補正すれば、基板に接している処理液の温度を一層高精度に求めることができる。
【0021】
そこで、請求項6の構成によれば、記憶手段には、放射温度計の検出値が、現実の温度および処理液の供給流量に対応付けて記憶されている。そして、放射温度計の検出値、現実の温度および処理液の供給流量に基づいて、供給流量設定手段によって設定された処理液の供給流量に対応する補正量が作成される。そして、基板処理時における処理液の供給流量に対応する補正量で放射温度計の検出値を補正して処理液の温度を算出する。これにより、処理液の温度(とくに基板表面に接している処理液の温度)を、より一層精度良く測定することができる。
【0022】
記憶手段には、放射温度計の検出値が、所定個数の離散的な処理液供給流量値に対応して記憶されていてもよい。実際の処理液供給流量に該当するデータが記憶手段に記憶されていない場合には、たとえば、記憶手段に記憶されているデータに対応する補正量に対する線形補間演算を行うことで、当該処理液供給流量に対応した補正量を算出できる。
請求項7記載の発明は、前記処理液供給手段は、基板に向けて処理液を吐出するためのノズル(5)と、第1温度の低温処理液を供給するための第1処理液供給管(83)と、前記第1温度よりも高い第2温度の高温処理液を供給するための第2処理液供給管(84)と、前記第1処理液供給管および前記第2処理液供給管に接続されて、前記第1処理液供給管からの前記低温処理液と、前記第2処理液供給管からの前記高温処理液とを混合した処理液を、前記ノズルに供給する混合部(79)と、前記混合部で生成された処理液を前記ノズルに供給する処理液供給管(80)と、前記第1処理液供給管から前記混合部に供給される低温処理液と、前記第2処理液供給管から前記混合部に供給される高温処理液との間の流量比を変更するための流量比変更手段(94,96)とをさらに含み、前記基板処理装置は、前記処理液温度算出手段によって求められた温度に基づいて、前記供給流量比変更手段を制御する流量比変更制御手段(31)をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0023】
この構成によれば、第1処理液供給管から混合部に供給される低温処理液と、第2処理液供給管から混合部に供給される高温処理液との間の流量比を変更することにより、ノズルから吐出される処理液の温度を調節することができる。放射温度計の検出値を補正した値に基づいて、混合部に供給される低温処理液と高温処理液との間の流量比を変更するので、ノズルから吐出される処理液を所望の温度に正確に保つことができる。そのため、適正温度に正確に調整された処理液を基板に供給することができ、これにより、処理不良の発生をより効果的に防止することができる。
【0024】
請求項8記載の発明は、前記処理液供給手段は、基板に向けて処理液を吐出するためのノズル(5)と、第1薬液原液を供給するための第1薬液原液供給管(105)と、第1薬液原液と異なる種別の第2薬液原液を供給するための第2薬液原液供給管(106)と、前記第1薬液原液供給管および前記2薬液原液供給管に接続されて、前記第1薬液原液からの第1薬液原液と、前記2薬液原液供給管からの第2薬液原液とを混合した処理液を、前記ノズルに供給する混合部(103)と、前記混合部で生成された処理液を前記ノズルに供給する処理液供給管と、前記第1薬液原液供給管から前記混合部に供給される第1薬液原液と、前記第2薬液原液から前記混合部に供給される第2薬液原液との間の流量比を変更するための流量比変更手段(110,112)とをさらに含み、前記基板処理装置は、前記処理液温度算出手段によって求められた温度に基づいて、前記供給流量比変更手段を制御する流量比変更制御手段(31)をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0025】
この構成によれば、混合部において、第1薬液原液と第2薬液原液とを混合させて処理液が作成される。混合部で作成された処理液が、ノズルから基板に向けて吐出される。第1薬液原液と第2薬液原液とが混合により発熱反応を生じる場合、第1薬液原液供給管から混合部に供給される薬液と、第2薬液原液供給管から混合部に供給される第2薬液原液との間の流量比を変更することにより、ノズルから吐出される処理液の温度を調節することができる。放射温度計の検出値を補正した値に基づいて、混合部に供給される第1薬液原液と第2薬液原液との間の流量比を調節するので、ノズルから吐出される処理液を所望の温度に正確に保つことができる。そのため、基板に、所望の温度に正確に調整された処理液を供給することができ、これにより、処理不良の発生をより効果的に防止することができる。たとえば、第1薬液原液と第2薬液原液との組み合わせは、硫酸と過酸化水素水との組み合わせであってもよい。なお、「薬液原液」とは、混合前の薬液を意味しており、市場から調達された薬液をそのまま用いることを意味しているわけではない。
【0026】
請求項9記載の発明は、基板(W)に供給される処理液の温度を測定する処理液温度測定方法であって、処理液供給手段(5,15,16,17,18,19,20;5,79,80,83,84,94,96;5,103,105,106,110,112)から基板に供給される処理液の温度を、放射温度計を用いて検出する第1検出ステップ(S11;S41)と、前記処理液供給手段から基板に処理液を供給する供給ステップ(S22)と、前記供給ステップと並行して実行され、前記処理液供給手段から基板に供給される処理液の温度を、前記放射温度計を用いて検出する第2検出ステップ(S23)と、前記処理液供給手段から基板(DW)に供給される処理液の温度を、接触式温度計を用いて検出する第3検出ステップ(S24)と、前記第2検出ステップにおける前記放射温度計の検出値を、前記第3検出ステップにおける前記接触式温度計の検出値に対応付けて記憶手段に記憶する記憶ステップ(26)と、前記記憶手段に記憶された前記各検出値に基づいて、前記処理液供給手段から供給される処理液に対応する前記放射温度計の検出値の補正量を作成する補正量作成ステップ(S30)と、前記第1検出ステップにおける前記放射温度計の検出値を前記補正量によって補正して、当該処理液供給手段から供給される処理液の温度を算出する算出ステップ(S15;S45)とを含む、処理液温度測定方法である。
【0027】
この発明の方法によれば、処理液供給手段から基板に供給される処理液の温度が、放射温度計によって検出される。そして、この放射温度計の検出値を、当該処理液に関する補正量によって補正して、当該処理液の温度が算出される。
この方法では、前記処理液供給手段から実際に処理液を吐出しつつ、その処理液の温度を放射温度計により検出したときの検出値が、当該処理液の温度を接触式温度計により検出したときの検出値に対応付けて記憶手段に記憶される。接触式温度計による温度検出が、接触式温度計の応答時間よりも長い時間にわたって実行される場合、接触式温度計の検出値は、処理液の現実の温度を実質的に表わす。そして、この記憶手段に記憶された放射温度計の検出値と、現実の温度とに基づいて、当該処理液に関する補正量が作成される。その補正量によって放射温度計の検出値を補正するので、これにより、処理液の温度を精度良く測定することができる。
【0028】
前記第3検出ステップは、前記供給ステップおよび前記第2検出ステップと並行して実行されていてもよい。
請求項10記載の発明は、前記供給ステップと並行して実行され、基板を所定の回転数で回転させる回転ステップ(S21)をさらに含み、前記記憶ステップは、前記放射温度計による検出値を、前記接触式温度計による検出値および前記回転数に対応付けて前記記憶手段に記憶するステップ(S26)を含み、前記補正量作成ステップは、前記記憶手段に記憶された前記各検出値に基づいて、基板の回転数に対応する前記補正量を作成するステップ(S30)を含む、請求項9記載の処理液温度測定方法である。
【0029】
この発明の方法によれば、請求項5に関連して述べた作用効果と同様な作用効果を達成することができる。
請求項11記載の発明は、前記記憶ステップは、前記放射温度計による検出値を、前記接触式温度計による検出値、および前記供給ステップにおける前記処理液供給手段から供給される処理液の供給流量に対応付けて前記記憶手段に記憶するステップを含み、前記補正量作成ステップは、前記記憶手段に記憶された前記各検出値に基づいて、処理液の供給流量に対応する前記補正量を作成するステップを含む、請求項9記載の処理液温度測定方法である。
【0030】
この発明の方法によれば、請求項6に関連して述べた作用効果と同様な作用効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の構成を示す模式図である。
【図2】図1に示すノズルの断面図である。
【図3】図1に示す基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】放射検出値−熱電対検出値対応データベースの一例を示す図である。
【図5】図4に示す放射検出値−熱電対検出値対応データベースの内容を表すグラフである。
【図6】図1に示す基板処理装置における処理液供給動作の流れを示すフローチャートである。
【図7】図6に示す処理液温度測定処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】図1に示す基板処理装置におけるデータベース作成処理のための構成を説明するための図である。
【図9】データベース作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置のメモリに記憶される放射検出値−熱電対検出値対応データベースを示す図である。
【図11】図10に示す放射検出値−熱電対検出値対応データベースの内容を表すグラフである。
【図12】第2実施形態に係る基板処理装置における処理液温度測定処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】本発明の第3実施形態に係る基板処理装置のプリディスペンスポッドの断面図である。
【図14】第4実施形態に係る基板処理装置の構成を示す模式図である。
【図15】図14に示す基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図16】図14に示す基板処理装置における処理液供給動作の流れを示すフローチャートである。
【図17】本発明の第5実施形態に係る基板処理装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1の構成を示す模式図である。この基板処理装置1は、処理液を用いて、基板の一例である半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」という。)におけるデバイス形成領域側の表面から汚染物質を除去するための洗浄処理や、ウエハWのデバイス形成領域側の表面に塗布されたレジスト膜を剥離するレジスト剥離処理を実行するための枚葉式の装置である。基板処理装置1は、処理液として、薬液やDIW(deionized water)を用いることができる。
【0033】
基板処理装置1は、隔壁2により区画された処理室3内に、ウエハWをほぼ水平に保持して回転させるためのスピンチャック(基板保持手段)4と、スピンチャック4に保持されたウエハWの表面(上面)に向けて処理液を供給するためのノズル5と、ウエハWの表面に供給される処理液の温度を検出するための放射温度計6と、スピンチャック4の周囲を取り囲み、ウエハWから流下または飛散する薬液やDIWを受け止めるためのカップ7とを備えている。
【0034】
スピンチャック4は、スピンモータ(基板回転手段)8と、このスピンモータ8の回転駆動力によって鉛直軸線まわりに回転される円盤状のスピンベース9と、スピンベース9の周縁部の複数箇所にほぼ等間隔で設けられ、ウエハWをほぼ水平な姿勢で挟持するための複数個の挟持部材10とを備えている。これにより、スピンチャック4は、複数個の挟持部材10によってウエハWを挟持した状態で、スピンモータ8の回転駆動力によってスピンベース9を回転させることにより、そのウエハWを、ほぼ水平な姿勢を保った状態で、スピンベース9とともに鉛直軸線まわりに回転させることができる。
【0035】
なお、スピンチャック4としては、挟持式のものに限らず、たとえば、ウエハWの裏面を真空吸着することにより、ウエハWを水平な姿勢で保持し、さらにその状態で鉛直な回転軸線まわりに回転することにより、その保持したウエハWを回転させることができる真空吸着式のもの(バキュームチャック)が採用されてもよい。
ノズル5は、たとえば連続流の状態で処理液を吐出するストレートノズルであり、スピンチャック4の上方でほぼ水平に延びるアーム11の先端に取り付けられている。このアーム11は、スピンチャック4の側方でほぼ鉛直に延びたアーム支持軸12に支持されている。アーム支持軸12には、ノズル駆動機構13が結合されており、このノズル駆動機構13の駆動力によって、アーム支持軸12を回動させて、アーム11を揺動させることができるようになっている。
【0036】
なお、ノズル5は、いわゆるスキャンノズルの形態である必要はなく、スピンチャック4に対して固定的に配置された構成であってもよい。
ノズル5には、薬液供給源からの薬液が供給される薬液供給管15と、DIW供給源からのDIWが供給されるDIW供給管16とが接続されている。薬液供給源から薬液供給管15に供給される薬液として、SC1(アンモニア過酸化水素水混合液)、SC2(塩酸過酸化水素水混合液)、SPM(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水混合液)、フッ酸、バファードフッ酸(Buffered HF:フッ酸とフッ化アンモニウムとの混合液)などを例示することができる。薬液は、薬液供給源において所定の高温(たとえば常温(25℃))に温度調節されている。また、DIWは、DIW供給源において所定の高温(たとえば85℃)に温度調節されている。
【0037】
薬液供給管15の途中部には、薬液供給管15を開閉するための第1開閉バルブ17と、薬液供給管15を流通する薬液の流量を調節するための第1流量調節バルブ18とが、ノズル5側からこの順で介装されている。DIW供給管16の途中部には、DIW供給管16を開閉するための第2開閉バルブ19と、DIW供給管16を流通するDIWの流量を調節するための第2流量調節バルブ20とが、ノズル5側からこの順で介装されている。第2開閉バルブ19が閉じられた状態で、第1開閉バルブ17が開かれると、薬液供給源からの薬液が、薬液供給管15を通してノズル5に供給され、ノズル5から吐出される。第1開閉バルブ17が閉じられた状態で、第2開閉バルブ19が開かれると、DIW供給源からのDIWが、DIW供給管16を通してノズル5に供給され、ノズル5から吐出される。また、ノズル5に関連して、ノズル5のケーシング26(図2参照)内を流通する処理液の温度を検出する接触式温度計の一例としての熱電対温度計21が設けられている。
【0038】
ノズル5が、処理室3内におけるスピンチャック4の側方にある退避位置(図1に破線で図示)にある状態では、有底容器からなるプリディスペンスポッド(容器)22がその開口を上方に向けた状態で配置されている。プリディスペンスの際には、ノズル5を退避位置に位置させた状態で、ノズル5からプリディスペンスポッド22に向けて処理液(薬液またはDIW)を吐出(排出)させることにより、薬液供給管15に残った薬液またはDIW供給管16に残ったDIWを排除する。ノズル5から吐出された処理液は、プリディスペンスポッド22により受け止められる。プリディスペンスポッド22の底部には廃液配管23が接続されており、この廃液配管23は、廃液を処理するための廃液設備へと延びている。プリディスペンスポッド22により受け止められた処理液は、廃液配管23を通って廃液設備へと送られる。
【0039】
放射温度計6は、検出対象から放射される赤外線の強度を測定して、その検出対象の温度を測定する赤外線放射温度計である。放射温度計6は、スピンチャック4の上方で、ウエハW(スピンチャック4に保持されたウエハW)の回転軸線(中心軸線)と周縁との間の所定の中間位置(たとえば、ウエハWの回転軸線から、そのウエハWの半径の半分に相当する距離を隔てた位置)が検出対象になるように配置されている。ノズル5から吐出された処理液は、ウエハWの上面(表面)の回転中心に供給され、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの上面を周縁部に向けて拡がる。そのため、ウエハWの上面の全域が処理液によって覆われる。すなわち、ウエハWの上面に処理液の液膜が形成される。そして、そのウエハW上の処理液の液膜の温度、より詳しくは液膜の表面温度が、放射温度計6によって検出される。
【0040】
図2は、ノズル5の断面図である。ノズル5は、円筒状のケーシング(管壁)26を備えている。ケーシング26の内部には、処理液が流通する処理液流通路28が形成されている。ケーシング26は、その先端部分に、処理液を外部空間に向けて吐出するための吐出口27を有している。
熱電対温度計21は、温度計本体29と、温度計本体29に接続されるプローブ30とを備えている。プローブ30では、熱電対素線(図示せず)および絶縁材(図示せず)は、シースなどの金属保護管(図示せず)内に収納されている。プローブ30の先端部分に設けられた熱電対素線の接点を、そのセンサ部分としている。プローブ30はケーシング26を貫通し、その先端部分が処理液流通路28に進入している。これにより、ノズル5内を流通する処理液の温度を、熱電対温度計21によって検出することができる。熱電対温度計21による温度検出では、検出対象の温度までセンサ部分を加熱/冷却する必要があり、そのため、熱電対温度計21の応答時間(検出開始から、検出値が検出対象の温度に一致するまでの時間)が比較的長い。そして、熱電対温度計21による温度検出のための検出時間が、熱電対温度計21の応答時間よりも長い場合、熱電対温度計21の検出値は、現実の処理液の温度を実質的に表わしている。
【0041】
図3は、基板処理装置1の電気的構成を示すブロック図である。
基板処理装置1は、CPU(補正量作成手段、処理液温度算出手段、流量比変更制御手段)31およびメモリ(記憶手段)32を含む構成のコンピュータ33を備えている。このコンピュータ33には、スピンモータ8、ノズル駆動機構13、第1開閉バルブ17、第1流量調節バルブ18、第2開閉バルブ19および第2流量調節バルブ20が、制御対象として接続されている。
【0042】
また、コンピュータ33には、放射温度計6から出力される検出値、および熱電対温度計21から出力される検出値が入力されるようになっている。
また、コンピュータ33には、基板処理の内容を規定するレシピ35を入力するためのレシピ入力キー(回転数設定手段、供給流量設定手段)34が接続されている。レシピ入力キー34は、オペレータが操作可能な位置に配置されている。オペレータは、レシピ入力キー34を操作して、基板処理の条件を規定するレシピ35を作成することができる。基板処理の条件としては、処理液の種類、処理液供給時間、処理液の供給流量(ノズル5から吐出される処理液の流量)、ウエハWの回転数(スピンチャック4の回転数)、処理の順序を例示できる。レシピ入力キー34の操作により入力されたレシピ35は、コンピュータ33のメモリ32に保持される。レシピ35の作成は、必ずしもレシピ入力キー34の操作によって行われる必要はなく、パーソナルコンピュータその他の適当な処理装置で別途作成されたレシピ35をメモリ32にダウンロードして格納するようにしてもよい。
【0043】
また、メモリ32には、ログファイル36が保持される。ログファイル36は、コンピュータ33の利用履歴を記憶するためのファイルである。ログファイル36には、実行された処理の内容や、種々のセンサの検出値などが記憶されるようになっている。この実施形態では、ログファイル36に、放射温度計6の検出値(以下、「放射検出値」という。)を補正した値が記録される。
【0044】
さらに、メモリ32には、放射検出値−熱電対検出値対応データベース37と、放射検出値−熱電対検出値対応式(補正量)38とが記憶されている。放射検出値−熱電対検出値対応データベース37は、ノズル5から実際に処理液を吐出させ、その処理液の温度を放射温度計6によって検出したときにおける放射検出値と、当該処理液の温度を熱電対温度計21によって検出したときの熱電対温度計21の検出値(以下、「熱電対検出値」という。)との対応関係を表わすものである。放射検出値−熱電対検出値対応式38は、放射検出値を、現実の処理液の温度に近似する値に補正するためのものである。メモリ32には、放射検出値−熱電対検出値対応式38が複数設けられている。各放射検出値−熱電対検出値対応式38は、処理液の種類(薬液かDIW)およびウエハWの所定の回転数に対応付けられている。
【0045】
図4は、放射検出値−熱電対検出値対応データベース37の一例を示す図である。放射検出値−熱電対検出値対応データベース37には、後述するデータベース作成処理(実験)においてノズル5から実際に処理液を吐出させたときに取得されたデータが格納されている。より具体的には、処理液の放射検出値と、当該処理液の種類(薬液またはDIW)と、当該処理液の熱電対検出値と、その処理液吐出時におけるダミーウエハDWの回転数(スピンチャック4の回転数)とが対応付けられて記憶されている。データベース作成処理では、放射温度計6および熱電対温度計21による処理液温度検出が、ノズル5から吐出される処理液の温度を変えて、複数回実行される。たとえば、図4では、上段のグループの放射検出値および熱電対検出値と、中段のグループの放射検出値および熱電対検出値とは、それぞれ、データベース作成処理において、互いに異なる温度の処理液を検出対象にしている(図5も併せて参照)。図4では、データベース作成処理におけるスピンチャック4の回転数として、500rpm、700rpmまたは1000rpmの3種類が例示されている。
【0046】
図5は、放射検出値−熱電対検出値対応データベース37の内容を表すグラフである。このグラフに示されるプロット(「▲」または「■」)は、放射検出値−熱電対検出値対応データベース37に記憶されている放射検出値(放射温度計検出値(x))と、熱電対検出値(熱電対検出値(y))との間の対応関係を表わしている。図5(a)はスピンチャック4の回転数(ダミーウエハDWの回転数)がたとえば500rpmである場合を示し、図5(b)はスピンチャック4の回転数がたとえば1000rpmである場合を示している。また、図5(a)および図5(b)の「▲」は、処理液として薬液が用いられる場合を示し、図5(a)および図5(b)の「■」は、処理液としてDIWが用いられる場合を示す。これらのプロットに近似する一次関数を、たとえば最小二乗法によって求め、熱電対検出値(y)を放射検出値(放射温度計検出値(x))の一次関数で表す。この一次関数式が、放射検出値−熱電対検出値対応式38である。この放射検出値−熱電対検出値対応式38は、処理液の種類およびウエハWの回転数(スピンチャック4の回転数)の両方に対応している。放射検出値−熱電対検出値対応式38を表わす直線グラフを、図5(a)および図5(b)中にそれぞれ示す。図5(a)に太線で示すのが、処理液種類「薬液」およびウエハWの回転数「500rpm」に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38であり、図5(a)に細線で示すのが、処理液種類「DIW」およびウエハWの回転数「500rpm」に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38である。図5(b)に太線で示すのが、処理液種類「薬液」およびウエハWの回転数「1000rpm」に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38であり、図5(b)に細線で示すのが、処理液種類「DIW」およびウエハWの回転数「1000rpm」に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38である。
【0047】
次に、ウエハWの洗浄処理について説明する。洗浄処理の開始時には、ノズル5は退避位置(図1に破線で図示)に位置している。
洗浄処理に際しては、搬送ロボット(図示せず)によって、処理室3に処理対象のウエハWが搬入されてくる。ウエハWは、その表面を上方に向けて、スピンチャック4に保持される。なお、スピンチャック4へのウエハWの受け渡し時には、ウエハWの搬入を阻害しないように、ノズル5は、カップ7の側方の退避位置に退避されている。
【0048】
ウエハWがスピンチャック4に保持されると、コンピュータ33は、スピンモータ8を駆動して、レシピ35で設定された液処理回転数(たとえば1000rpm)でスピンチャック4を回転させる。スピンチャック4の回転に伴って、スピンチャック4に保持されたウエハWも液処理回転数(たとえば1000rpm)で回転される。
さらに、コンピュータ33は、ノズル駆動機構13を制御して、ノズル5を、カップ7の側方の退避位置からウエハWの上方に向けて移動させる。そして、ノズル5は、その吐出口がウエハWの上面の回転中心を向く位置で停止される。この状態でコンピュータ33によって第1開閉バルブ17が開かれることにより、ノズル5からウエハWの上面の回転中心に向けて処理液が吐出される。まず、ウエハWに薬液処理が施される。
【0049】
図6は、ノズル5からの処理液供給動作をより詳細に説明するためのフローチャートである。この実施形態ではノズル5から高温の処理液が吐出される。この場合、処理液の活性度合は処理液の温度に依存する。まず、ノズル5から処理液として薬液が吐出される場合を例に挙げて説明する。
CPU31は、薬液の供給タイミングになると(ステップS1でYES)、レシピ35に規定された供給流量の薬液がノズル5から吐出されるように、第1流量調節バルブ18の開度を制御する。さらに、CPU31は、第2開閉バルブ19を閉じた状態で、第1開閉バルブ17を開く(ステップS2)。これにより、薬液供給源からの薬液が、薬液供給管15を通してノズル5に供給される。そして、ノズル5からウエハWの上面の回転中心に向けて薬液が吐出される。
【0050】
ノズル5から吐出された薬液は、ウエハWの上面の回転中心に供給され、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの上面を周縁部に向けて拡がる。そのため、ウエハWの上面の全域が薬液によって覆われる。すなわち、ウエハWの上面に薬液の液膜が形成される。そして、薬液の液膜の表面温度が放射温度計6によって検出される。また、CPU31は、放射検出値を、放射検出値−熱電対検出値対応式38によって補正して、ウエハWの上面に供給される薬液の温度を算出する(S3:処理液温度測定処理)。
【0051】
そして、その算出値(放射検出値を補正した値)がログファイル36に記録される(ステップS4)。放射温度計6による薬液の温度の検出、および算出値(放射検出値を補正した値)のログファイル36への記録は、薬液の供給停止タイミング(具体的には、レシピ35により設定された薬液供給時間の満了)になるまで続行される(ステップS5)。
薬液の供給停止タイミングになると(ステップS5でYES)、CPU31は、第1開閉バルブ17を閉じる(ステップS6)。そして、コンピュータ33は、ノズル駆動機構13を制御して、ノズル5をウエハWの上方から、退避位置まで移動させる。これにより、薬液の吐出動作が終了する。次に、ウエハWにリンス処理が施される。
【0052】
再び図6を参照して、CPU31は、DIWの供給タイミングになると(ステップS1でYES)、ノズル5から吐出されるDIWの流量がレシピ35に規定された流量になるように、第2流量調節バルブ20の開度を制御する。さらに、CPU31は、第1開閉バルブ17を閉じた状態で、第2開閉バルブ19を開く(ステップS2)。これにより、DIW供給源からのDIWが、DIW供給管16を通してノズル5に供給される。そして、ノズル5からウエハWの上面の回転中心に向けてDIWが吐出される。
【0053】
ノズル5から吐出されたDIWは、ウエハWの上面の回転中心に供給され、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの上面を周縁部に向けて拡がる。そのため、ウエハWの上面の全域がDIWによって覆われる。すなわち、ウエハWの上面にDIWの液膜が形成される。そして、DIWの液膜の表面温度が放射温度計6によって検出される。また、CPU31は、放射検出値を、放射検出値−熱電対検出値対応式38によって補正して、ウエハWの上面に供給されるDIWの温度を算出する(S3:処理液温度測定処理)。
【0054】
そして、その算出値(放射検出値を補正した値)がログファイル36に記録される(ステップS4)。放射温度計6によるDIWの温度の検出、および算出値(放射検出値を補正した値)のログファイル36への記録は、DIWの供給停止タイミング(具体的には、レシピ35により設定されたDIW供給時間の満了)になるまで続行される(ステップS5)。
【0055】
DIWの供給停止タイミングになると(ステップS5でYES)、CPU31は、第2開閉バルブ19を閉じる(ステップS6)。そして、コンピュータ33は、ノズル駆動機構13を制御して、ノズル5をウエハWの上方から、退避位置まで移動させる。これにより、DIWの吐出動作が終了する。
リンス処理の終了後、コンピュータ33はスピンモータ8を駆動して、ウエハWの回転速度を予め定める乾燥速度(たとえば、3000rpm)まで加速する。これにより、ウエハWに付着しているDIWが遠心力によって振り切られる。そして、乾燥時間の経過後、コンピュータ33はスピンモータ8を駆動して、スピンチャック4の回転を停止する。その後、搬送ロボット(図示せず)によってウエハWが搬出される。
【0056】
図7は、図6のステップS3に示す処理液温度測定処理の流れを示すフローチャートである。以下では、薬液処理中における処理液温度測定処理について説明するが、リンス処理中における処理液温度測定処理も同様である。そのため、リンス処理中における処理液温度測定処理についての説明は省略する。
薬液処理中は、ウエハWの上面に形成される薬液の液膜の表面温度が、放射温度計6によって検出される(ステップS11)。具体的には、ウエハWの上面における回転軸線と周縁との間の中間位置にある液膜の表面温度が、放射温度計6によって検出される。そして、CPU31は、放射温度計6から出力される検出値(放射検出値)を取得する(ステップS12)。また、CPU31は、メモリ32に記憶されたレシピ35を参照し(ステップS13)、設定されている回転数を取得する。
【0057】
そして、CPU31は、メモリ32に記憶された複数の放射検出値−熱電対検出値対応式38のうち、洗浄処理においてノズル5から吐出される処理液の種類(薬液)と、レシピ35に設定された回転数(たとえば1000rpm)との双方に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38を取得する(ステップS14)。そして、この放射検出値−熱電対検出値対応式38を用いて検出値を補正して、薬液の温度を算出する(ステップS15)。この算出値(放射検出値を補正した値)が、薬液の温度として、ログファイル36に記録される(図6のステップS4)。
【0058】
次に、放射検出値−熱電対検出値対応式38の作成について説明する。オペレータは、基板処理装置1を用いて実験を行い、放射検出値−熱電対検出値対応データベース37を作成する。そして、この放射検出値−熱電対検出値対応データベース37に基づいて、放射検出値−熱電対検出値対応式38がコンピュータ33によって自動的に作成される。この放射検出値−熱電対検出値対応データベース37を作成する処理(以下、「データベース作成処理」という。)は、たとえば、数ヶ月に1回の頻度で行われる。
【0059】
図8は、基板処理装置1におけるデータベース作成処理のための構成を説明するための図である。
薬液供給管15には、複数の薬液供給源(図8ではたとえば3つ)が接続されている。薬液供給管15には、複数の薬液供給源から互いに異なる温度の薬液が供給されるようになっている。各薬液供給源は、薬液供給管15に開閉バルブ40,41,42を介して接続されている。各開閉バルブ40,41,42は、コンピュータ33に制御対象として接続されている。薬液供給用の開閉バルブ40,41,42のうち1つのバルブだけを開状態にするとともに、その開状態にあるバルブを他のバルブに変更することにより、薬液供給管15に供給される薬液の温度を変更することができるようになっている。
【0060】
DIW供給管16には、複数のDIW供給源が接続されている。DIW供給管16には、複数のDIW供給源から互いに異なる温度のDIWが供給されるようになっている。これら複数のDIW供給源からDIW供給管16に供給されるDIWの温度は、それぞれ異なっている。各DIW供給源は、DIW供給管16に開閉バルブ45,46,47を介して接続されている。各開閉バルブ45,46,47は、コンピュータ33に制御対象として接続されている。DIW供給用の開閉バルブ45,46,47のうち1つのバルブだけを開状態にするとともに、その開状態にあるバルブを他のバルブに変更することにより、DIW供給管16に供給されるDIWの温度を変更することができるようになっている。
【0061】
また、データベース作成処理に際しては、スピンチャック4に、ウエハWに代えてダミーウエハDWが保持される。このダミーウエハDWは、その形状、サイズおよび材質が、ウエハWと共通している。
図9は、データベース作成処理の流れを示すフローチャートである。この実施形態では、データベース作成処理中に、放射検出値−熱電対検出値対応式38を作成するための対応式作成処理が実行される。
【0062】
データベース作成処理の開始に先立って、オペレータは、データベース作成処理における作成対象になる放射検出値−熱電対検出値対応式38に対応する処理液の種類、およびスピンチャック4の回転数を設定する。たとえばレシピ入力キー34の操作により、データベース作成処理における処理液の種類、処理液の供給流量(ノズル5から吐出される処理液の流量)、スピンチャック4の回転数などを設定することができるようになっている。
【0063】
なお、データベース作成処理におけるスピンチャック4の回転数は、洗浄処理において実際に使用される回転数(この実施形態では、たとえば、500rpm、700rpm、1000rpmなど)であることが望ましい。これにより、洗浄処理において実際に使用される回転数に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38を作成することができる。以下、オペレータが、データベース作成処理においてノズル5から吐出される処理液として薬液を設定し、また、データベース作成処理におけるスピンチャック4の回転数として1000rpmを設定した場合を例に挙げて説明する。
【0064】
データベース作成処理に際しては、搬送ロボット(図示せず)によって、処理室3にダミーウエハDWが搬入されてくる。
そして、ダミーウエハDWがスピンチャック4に保持されると、コンピュータ33は、スピンモータ8を駆動して、レシピ入力キー34の操作によって設定された回転数でスピンチャック4を回転させる(ステップS21)。スピンチャック4の回転に伴って、スピンチャック4に保持されたダミーウエハDWも、スピンチャック4と同じ回転数で回転される。
【0065】
さらに、コンピュータ33は、ノズル駆動機構13を制御してノズル5をダミーウエハDWの上方に移動させる。そして、ノズル5は、その吐出口がダミーウエハDWの上面の回転中心を向く位置で停止される。
ダミーウエハDWの回転数が設定された回転数まで達すると、コンピュータ33は、第1開閉バルブ17を開ける(ステップS22)。このとき、開閉バルブ40,41,42のうち所望の1つが開状態にされている。これにより、薬液供給源から所定の温度の薬液が薬液供給管15を通してノズル5に与えられ、ノズル5からダミーウエハDWの回転中心に向けて薬液が吐出される。ノズル5から吐出された薬液は、ダミーウエハDWの上面(表面)の回転中心に供給され、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ダミーウエハDWの上面を周縁部に向けて拡がる。そのため、ダミーウエハDWの上面の全域が薬液によって覆われる。すなわち、ダミーウエハDWの上面に薬液の液膜が形成される。
【0066】
そして、その薬液の液膜の表面温度が、放射温度計6によって検出される(ステップS23)。このとき、ダミーウエハDWの上面における回転軸線と周縁との間の所定の中間位置にある液膜の表面温度が検出対象になる。また、熱電対温度計21によって、ノズル5の管壁(ケーシング26)内を流通する薬液の温度が検出される(ステップS24)。この熱電対温度計21による測定時間(検出時間)として、当該熱電対温度計21の応答時間よりも十分に長い時間(たとえば、5分間)が設けられている。
【0067】
そして、測定時間が経過すると(ステップS25でYES)、放射温度計6による検出値と熱電対温度計21による検出値とが、そのときの処理液の種類およびそのときのダミーウエハDWの回転数に対応付けて、メモリ32の放射検出値−熱電対検出値対応データベース37に記憶される(ステップS26)。その後、コンピュータ33は、第1開閉バルブ17を閉じる(ステップS27)。このデータベース作成処理では、かかる放射温度計6および熱電対温度計21を用いた薬液の温度検出が、ノズル5から吐出される薬液の温度を変えて複数回(予め定められた回数)実行される。
【0068】
そして、放射温度計6および熱電対温度計21を用いた温度検出の回数が、予め定められた回数に達していない場合は(ステップS28でNO)、コンピュータ33は、開閉バルブ40,41,42のうち開状態のバルブ(たとえばバルブ40)を閉じ、他のバルブ(たとえばバルブ41)を開く。これにより、ノズル5から吐出される薬液の温度が変更される(ステップS29)。その後、ステップS22の処理に戻る。
【0069】
一方、放射温度計6および熱電対温度計21を用いた温度検出の回数が、予め定められた回数に達した場合は(ステップS28でYES)、CPU31は、放射検出値−熱電対検出値対応データベース37に記憶された放射検出値および熱電対検出値に基づいて、放射検出値−熱電対検出値対応式38を作成し(ステップS30)、その放射検出値−熱電対検出値対応式38をメモリ32に記憶する。その後、データベース作成処理は終了する。
【0070】
以上によりこの実施形態によれば、ノズル5から吐出されて、ウエハWの上面を流れる処理液の温度が、放射温度計6によって検出される。そして、この放射温度計6の検出値を、当該処理液に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38で補正して、当該処理液の温度が算出される。
ノズル5から実際に処理液を吐出させ、その処理液の温度を放射温度計6により検出したときの放射検出値が、当該処理液の温度を熱電対温度計21により測定したときの熱電対検出値に対応付けて、メモリ32に記憶されている。そして、このメモリ32に記憶された放射温度計6の検出値と、熱電対温度計21の検出値とに基づいて、当該処理液に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38が作成される。その放射検出値−熱電対検出値対応式38によって、放射温度計6の検出値を補正するので、これにより、処理液の温度を精度良く測定することができる。
【0071】
また、オペレータは、基板処理に処理不良が生じた場合、ログファイル36に記録されている算出値を参照する。これにより、処理不良の原因が処理液の温度異常にあるか否かを正確に把握することができる。
また、処理液の液膜の内部温度はウエハWの温度の影響を受けるので、厳密に言えば、ウエハW上の処理液の液膜の表面と、液膜の内部との間には温度差が生じている。この温度差は、ウエハWの回転数の変化に伴って変化する。なぜなら、ウエハWの回転数が変化すると、ウエハW上の処理液の液膜に作用する遠心力が変化し、これに伴って、処理液の液膜の厚みが変化するからである。また、ウエハWの回転数の変化に伴って、処理液の拡散速度や回転による風による放熱量も変化する。そして、液膜厚み、拡散速度および放熱量のバランスにより、ウエハW上の処理液の液膜の表面と液膜の内部との間に温度差が生じるものと考えられる。そのため、放射検出値−熱電対検出値対応式を、ウエハWの回転数を考慮したものにしておかないと、放射検出値がウエハW上における処理液の液膜内の温度から大きくずれるおそれがある。
【0072】
そこで、この実施形態では、メモリ32には、ノズル5から実際に処理液を吐出させ、その処理液の温度を放射温度計6により検出したときの放射検出値が、当該処理液の種類、当該処理液の温度を熱電対温度計21により測定したときの熱電対検出値、およびその処理液吐出時におけるダミーウエハDWの回転数(スピンチャック4の回転数)に対応付けて記憶されている。そして、放射検出値、処理液の種類、熱電対検出値およびダミーウエハDWの回転数に基づいて、処理液の種類およびウエハWの回転数の双方に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38が複数作成される。そして、洗浄処理においてノズル5から吐出される処理液の種類およびレシピ35に設定された回転数の双方に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38で放射検出値を補正し、処理液の温度を算出する。これにより、ウエハWの上面に供給される処理液の温度を、より一層精度良く測定することができる。
【0073】
図10は、本発明の第2実施形態に係る基板処理装置のメモリ32に記憶される放射検出値−熱電対検出値対応データベース51を示す図である。図10に示す放射検出値−熱電対検出値対応データベース51が、図4に示す放射検出値−熱電対検出値対応データベース37と相違する点は、ノズル5から実際に処理液を吐出させ、その処理液の温度を放射温度計6により検出したときの放射検出値が、当該処理液の種類、当該処理液の温度を熱電対温度計21により測定したときの熱電対検出値、およびノズル5から吐出される処理液の供給流量に対応付けてメモリ32に記憶されている点である。言い換えれば、放射検出値−熱電対検出値対応データベース51では、放射検出値および熱電対検出値が、データベース作成処理におけるダミーウエハDWの回転数(スピンチャック4の回転数)ではなく、データベース作成処理においてノズル5から吐出される処理液の供給流量に対応付けられている。たとえば、図10では、データベース作成処理における処理液の供給流量として、0.5L/min、1.0L/minまたは2.0L/minの3種類が例示されている。
【0074】
図11は、放射検出値−熱電対検出値対応データベース51の内容を表すグラフである。このグラフに示されるプロット(「▲」または「■」)は、放射検出値−熱電対検出値対応データベース51に記憶されている放射検出値(放射温度計検出値(x))と、熱電対検出値(熱電対検出値(y))との間の対応関係を表わしている。図11(a)は、処理液の供給流量がたとえば0.5L/minである場合を示し、図11(b)は、処理液の供給流量がたとえば2.0L/minである場合を示している。また、図11(a)および図11(b)の「▲」は、処理液として薬液が用いられる場合を示し、図11(a)および図11(b)の「■」は、処理液としてDIWが用いられる場合を示す。これらのプロットに近似する一次関数を、たとえば最小二乗法によって求め、熱電対検出値(y)を放射検出値(放射温度計検出値(x))の一次関数で表す。この一次関数式が、放射検出値−熱電対検出値対応式52である。この放射検出値−熱電対検出値対応式52は、処理液の種類および処理液の供給流量の双方に対応している。すなわち、メモリ32には、複数の放射検出値−熱電対検出値対応式52が記憶されており、各放射検出値−熱電対検出値対応式52は、処理液の所定の種類(薬液かDIW)および所定の処理液の供給流量に対応付けられている。放射検出値−熱電対検出値対応式52を表わす直線グラフを、図11(a)および図11(b)中にそれぞれ示す。図11(a)に太線で示すのが、処理液種類「薬液」および処理液の供給流量「0.5L/min」に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式52であり、図11(a)に細線で示すのが、処理液種類「DIW」および処理液の供給流量「0.5L/min」に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式52である。図11(b)に太線で示すのが、処理液種類「薬液」および処理液の供給流量「2.0L/min」に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式52であり、図11(b)に細線で示すのが、処理液種類「DIW」および処理液の供給流量「2.0L/min」に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式52である。
【0075】
図12は、第2実施形態に係る基板処理装置における処理液温度測定処理の流れを示すフローチャートである。
洗浄処理中は、ウエハWの上面に形成される処理液の液膜の表面温度が、放射温度計6によって検出される(ステップS41)。具体的には、ウエハWの上面における回転軸線と周縁との間の中間位置にある液膜の表面温度が、放射温度計6によって検出される。そして、CPU31は、放射温度計6から出力される検出値(放射検出値)を取得する(ステップS42)。また、CPU31は、レシピ35を参照し(ステップS43)、設定されている処理液の供給流量をチェックする。
【0076】
そして、CPU31は、メモリ32に記憶された複数の放射検出値−熱電対検出値対応式52のうち、洗浄処理においてノズル5から吐出される処理液の種類と、レシピ35に設定された供給流量(たとえば2.0L/min)との両方に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式52を取得する(ステップS44)。そして、この放射検出値−熱電対検出値対応式52を用いて検出値を補正して、処理液の温度を算出する(ステップS45)。この算出された温度が、処理液の温度として、ログファイル36に記憶される。
【0077】
ウエハW上の処理液の液膜の表面と液膜の内部との間に生じる温度差は、処理液の供給流量の変化に伴って変化する。なぜなら、ノズル5から吐出される処理液の供給流量が変化すると、処理液の液膜の厚みが変化するからである。そのため、放射検出値−熱電対検出値対応式を、処理液の供給流量を考慮したものにしておかないと、放射検出値がウエハW上における処理液の液膜内の温度から大きくずれるおそれがある。
【0078】
そこで、この第2実施形態では、メモリ32には、ノズル5から実際に処理液を吐出させ、その処理液の温度を放射温度計6により検出したときの放射検出値が、当該処理液の種類、当該処理液の温度を熱電対温度計21により測定したときの熱電対検出値、および当該処理液の供給流量に対応付けて記憶されている。そして、放射検出値、処理液の種類、熱電対検出値および供給流量に基づいて、処理液の種類および供給流量の両方に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式52が複数作成される。そして、洗浄処理においてノズル5から吐出される処理液の種類およびレシピ35に設定された供給流量の双方に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式52で放射検出値を補正して処理液の温度を算出する。これにより、処理液の温度を、より一層精度良く測定することができる。
【0079】
図13は、本発明の第3実施形態に係る基板処理装置60のプリディスペンスポッド61の断面図である。この第3実施形態において、図1〜図9に示す第1実施形態に示された各部に対応する部分には、図1〜図9と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。
このプリディスペンスポッド61は、図1に示すプリディスペンスポッド22に代えて用いられる。
【0080】
プリディスペンスポッド61は、有底のカップ62を備えている。カップ62は、その開口を上方に向けた状態で配置されている。カップ62は、円筒状の外壁部63と、外壁部63の下端縁部を覆う水平な底部64と、外壁部63の内側において底部64から上方に立ち上がった円筒状の内壁部65とを一体的に備えている。内壁部65の上端は、上下方向に関して、外壁部63の上端よりも低く形成されている。内壁部65の周囲は、外壁部63によって取り囲まれている。底部64の上面および内壁部65の内周によって、処理液を貯留するための貯留溝66が区画されている。貯留溝66の底部には、この貯留溝66に貯留された処理液を廃液設備(図示せず)に廃棄するための第1廃液管68が接続されている。第1廃液管68の途中部には、第1廃液管68を開閉するための廃液バルブ69が介装されている。また、底部64の上面、内壁部65の外周および外壁部63の内周によって、処理液を廃棄するための廃棄溝67が区画されている。廃棄溝67の底部には、この廃棄溝67に貯留された処理液を廃液設備(図示せず)に廃棄するための第2廃液管59が接続されている。
【0081】
廃液バルブ69が閉じられた状態で、ノズル5からプリディスペンスポッド61の貯留溝66に向けて処理液が吐出(排出)される。処理液は、貯留溝66に受け止められて、この貯留溝66に貯留される。そして、貯留溝66が満杯になると、貯留溝66から溢れた処理液が廃棄溝67に流れ込み、廃棄溝67の底部から第2廃液管59を通して廃液設備へと廃液される。また、廃液バルブ69が開かれると、貯留溝66に貯留されていた処理液が、第1廃液管68を通して廃液設備へと廃液される。
【0082】
熱電対温度計21のプローブ30はカップ62の(底部64の)の壁を貫通し、その先端部分が貯留溝66内に進入している。そして、貯留溝66に処理液が貯留された状態では、プローブ30の先端部分が処理液中に位置する。これにより、貯留溝66に貯留された処理液の温度を、熱電対温度計21によって検出することができる。そして、この熱電対温度計21の熱電対検出値が、放射検出値−熱電対検出値対応データベース37に格納される。
【0083】
この第3実施形態では、データベース作成処理における熱電対温度計21を用いた温度検出の対象は、プリディスペンスポッド61(の貯留溝66)に貯留された処理液である。データベース作成処理において、ダミーウエハDWへの処理液の吐出中は、ノズル5をスピンチャック4の上方に配置する必要がある。そして、ノズル5が、スピンチャック4の側方の退避位置にあるときだけ、プリディスペンスポッド61に向けて処理液を吐出(排出)することができる。そのため、この第3実施形態では、放射温度計6による処理液の温度検出と、熱電対温度計21による処理液の温度検出とを、同時に実行することはできない。そのため図9におけるダミーウエハDWの搬入に先立って、またはダミーウエハDWの搬入後に、退避位置にあるノズル5からプリディスペンスポッド61に向けて処理液が吐出(排出)される。プリディスペンスポッド61(の貯留溝66)に処理液が貯留され、この処理液の温度が熱電対温度計21を用いて検出される。
【0084】
図14は、第4実施形態に係る基板処理装置70の構成を示す模式図である。この第4実施形態において、図1〜図9に示す第1実施形態に示された各部に対応する部分には、図1〜図9と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。
基板処理装置70は、処理装置本体71と、処理液キャビネット72とを備えている。処理装置本体71には、ウエハWを1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理部73が複数(図14では2つのみ図示)備えられている。各基板処理部73は、スピンチャック4と、ノズル5と、放射温度計6と、カップ7とを備えている。
【0085】
処理液キャビネット72には、薬液原液供給源74,75と、希釈液供給源76,77と、基板処理部73と同数の処理液供給部78とが設けられている。
薬液原液供給源74は、薬液原液としてのアンモニア(NH4OH)を供給し、薬液原液供給源75は、薬液原液としての過酸化水素水(H2O2)を供給する。また、希釈液供給源76は、希釈液としての常温(第1温度。たとえば25℃)のDIW(低温処理液)を供給し、希釈液供給源77は、希釈液としての高温(第2温度。たとえば80℃)のDIW(高温処理液。図14に示す「HOT DIW」)を供給する。むろん、薬液原液および希釈液の種類および数は一例であり、別の種類の薬液原液および希釈液が用いられてもよい。なお、「原液」とは、混合部79で混合される前の薬液を意味するものとする。
【0086】
処理液供給部78は、基板処理部73に1対1に対応付けられており、対応する基板処理部73に、調整済みのSC1(薬液)を処理液として供給するものである。SC1とは、アンモニア過酸化水素水(APM:ammonia-hydrogen peroxide mixture)であり、アンモニア、過酸化水素水および水(DIW)を所定の混合比(たとえば、アンモニア:過酸化水素水:水=1:4:20)で混合して調製される薬液である。
【0087】
各処理液供給部78は、SC1を生成するための混合部79と、混合部79とノズル5との間に接続され、混合部79によって生成されたSC1をノズル5に供給するための処理液供給管80とを備えている。処理液供給管80の途中部には、処理液供給管80を開閉するための開閉バルブ99が介装されている。
各混合部79には、アンモニア供給管81、過酸化水素水供給管82、第1DIW供給管(第1処理液供給管)83および第2DIW供給管(第2処理液供給管)84が接続されている。アンモニア供給管81は、薬液原液供給源74に接続されたアンモニア集合管85に共通して分岐接続されている。各アンモニア供給管81の途中部には、アンモニア供給管81を開閉するための開閉バルブ89と、アンモニア供給管81を流通するアンモニアの流量を調節するためのアンモニア用流量調節バルブ90とが、混合部79側からこの順で介装されている。
【0088】
過酸化水素水供給管82は、薬液原液供給源75に接続された過酸化水素水集合管86に共通して分岐接続されている。各過酸化水素水供給管82の途中部には、過酸化水素水供給管82を開閉するための開閉バルブ91と、過酸化水素水供給管82を流通する過酸化水素水の流量を調節するための過酸化水素水用流量調節バルブ92とが、混合部79側からこの順で介装されている。
【0089】
第1DIW供給管83は、希釈液供給源76に接続された第1DIW集合管87に共通して分岐接続されている。各第1DIW供給管83の途中部には、第1DIW供給管83を開閉するための開閉バルブ93と、第1DIW供給管83を流通するDIWの流量を調節するための第1DIW用流量調節バルブ(流量比変更手段)94とが、混合部79側からこの順で介装されている。
【0090】
第2DIW供給管84は、希釈液供給源77に接続された第2DIW集合管88に共通して分岐接続されている。各第2DIW供給管84の途中部には、第2DIW供給管84を開閉するための開閉バルブ95と、第2DIW供給管84を流通するDIWの流量を調節するための第2DIW用流量調節バルブ(流量比変更手段)96とが、混合部79側からこの順で介装されている。
【0091】
第1DIW用流量調節バルブ94および第2DIW用流量調節バルブ96の開度をそれぞれ調節することにより、混合部79に導入される常温のDIWと高温のDIWとの間の流量比を調節することができ、これにより、混合部79で生成されるSC1の温度、すなわち、ノズル5から吐出されるSC1の温度を調節することができるようになっている。しかも、第1DIW用流量調節バルブ94の開度を所定量だけ拡げる(窄める)とともに、第2DIW用流量調節バルブ96の開度を同量だけ窄める(拡げる)ことにより、混合部79で生成されるSC1の混合比を変えずに、そのSC1の温度だけを変えることができる。
【0092】
図15は、基板処理装置70の電気的構成を示すブロック図である。基板処理装置70が、基板処理装置1と相違する点は、コンピュータ33に、開閉バルブ89,91,93,95,99、アンモニア用流量調節バルブ90、過酸化水素水用流量調節バルブ92、第1DIW用流量調節バルブ94および第2DIW用流量調節バルブ96が、制御対象として接続されている点である。
【0093】
また、コンピュータ33のメモリ32には、第1実施形態の場合と同様、複数の放射検出値−熱電対検出値対応式38が記憶されている。各放射検出値−熱電対検出値対応式38は、処理液の所定の種類(この場合、SC1)およびウエハWの所定の回転数に対応付けられている。
図16は、基板処理装置70における処理液供給動作の流れを示すフローチャートである。
【0094】
CPU31は、処理液の供給タイミングになると(ステップS51でYES)、第1DIW用流量調節バルブ94および第2DIW用流量調節バルブ96の開度を、レシピ35によって設定された処理液温度に基づく開度に制御する。さらに、CPU31は、開閉バルブ99を開く(ステップS52)。これにより、混合部79からの処理液が、処理液供給管80を通してノズル5に供給される。そして、ノズル5からウエハWの上面の回転中心に向けて処理液が吐出される。
【0095】
ノズル5から吐出された処理液は、ウエハWの上面(表面)の回転中心に供給され、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの上面を周縁部に向けて拡がる。そのため、ウエハWの上面の全域が処理液によって覆われる。すなわち、ウエハWの上面に処理液の液膜が形成される。そして、処理液の液膜の表面温度が放射温度計6によって検出される。また、CPU31は、放射検出値を、ノズル5から吐出される処理液の種類(薬液)と、レシピ35に設定された回転数との双方に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38によって補正して、ウエハWの上面に供給される処理液の温度を算出する(S53:処理液温度測定処理)。また、CPU31は、レシピ35を参照し、設定されている処理液温度をチェックする。
【0096】
そして、CPU31は、ステップS53における算出値が、レシピ35によって設定された処理液温度と相違していると(ステップS54でNO)、第1DIW用流量調節バルブ94および第2DIW用流量調節バルブ96の開度を調節して、レシピ35によって設定された処理液温度に算出値が近づくように制御する(ステップS55)。CPU31による第1DIW用流量調節バルブ94および第2DIW用流量調節バルブ96の開度の調節は、ステップS53における算出値がレシピ35によって設定された処理液温度と一致する(ステップS54でYES)まで継続して実行される。その後、放射温度計6による処理液の温度は、処理液の供給停止タイミング(具体的には、レシピ35により設定された処理液供給時間の満了)になると(ステップS56でYES)、CPU31は、開閉バルブ99を閉じる(ステップS57)。
【0097】
この第4実施形態によれば、第1DIW供給管83から混合部79に供給される常温のDIWと、第2DIW供給管84から混合部79に供給される高温のDIWとの間の流量比を変更することにより、ノズル5から吐出されるSC1の温度を調節することができる。放射検出値を補正した値に基づいて、混合部79に供給される常温のDIWと高温のDIWとの間の流量比を変更するので、ノズル5から吐出されるSC1を所望の温度に正確に保つことができる。
【0098】
また、複数の基板処理部73において、ウエハWの上面に、同じ液温に温度調節されたSC1を供給することができる。これにより、基板処理部73間における処理のばらつきを抑制または防止することができる。
図17は、本発明の第5実施形態に係る基板処理装置100の構成を示す模式図である。
【0099】
この第5実施形態において、図14〜図16に示す第4実施形態に示された各部に対応する部分には、図14〜図16と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。
第5実施形態に係る基板処理装置100が、第4実施形態に係る基板処理装置70と大きく相違する点は、処理液供給部78から基板処理部73に供給される処理液がSPMである点である。処理液キャビネット72は、薬液原液供給源74,75および希釈液供給源76,77に代えて、第1薬液原液としての硫酸(H2SO4)を供給する薬液原液供給源101と、第2薬液原液としての過酸化水素水(H2O2)を供給する薬液原液供給源102とを備えている。なお、「薬液原液」とは、混合部103で混合される前の薬液を意味するものとする。
【0100】
また、コンピュータ33のメモリ32には、第4実施形態の場合と同様、複数の放射検出値−熱電対検出値対応式38が記憶されている。各放射検出値−熱電対検出値対応式38は、処理液の所定の種類(この場合、SPM)およびウエハWの所定の回転数に対応付けられている。
各処理液供給部78は、SPMを生成するための混合部103と、混合部103とノズル5との間に接続され、混合部103によって生成された所定温度のSPMをノズル5に供給するための処理液供給管104とを備えている。処理液供給管104の途中部には、処理液供給管104を開閉するための開閉バルブ115が介装されている。
【0101】
混合部103には、硫酸供給管(第1薬液原液供給管)105および過酸化水素水供給管(第2薬液原液供給管)106が接続されている。硫酸供給管105は、薬液原液供給源101に接続された硫酸集合管107に共通して分岐接続されている。各硫酸供給管105の途中部には、硫酸供給管105を開閉するための開閉バルブ109と、硫酸供給管105を流通する硫酸の流量を調節するための硫酸用流量調節バルブ(流量比変更手段)110とが、混合部103側からこの順で介装されている。
【0102】
過酸化水素水供給管106は、薬液原液供給源102に接続された過酸化水素水集合管108に共通して分岐接続されている。各過酸化水素水供給管106の途中部には、過酸化水素水供給管106を開閉するための開閉バルブ111と、過酸化水素水供給管106を流通する過酸化水素水の流量を調節するための過酸化水素水用流量調節バルブ(流量比変更手段)112とが、混合部103側からこの順で介装されている。
【0103】
硫酸は、薬液原液供給源101において所定の高温(50℃)に温度調節されている。一方、過酸化水素水供給管106に供給される過酸化水素水は、常温(約25℃)程度の液温を有している。
開閉バルブ109が開かれると、硫酸供給管105からの硫酸が混合部103に流入する。また、開閉バルブ111が開かれると、過酸化水素水供給管106からの過酸化水素水が混合部103に流入する。混合部103内に流入した硫酸および過酸化水素水は混合される。この混合によって、硫酸と過酸化水素水とが十分に反応し、多量のペルオキソ一硫酸(H2SO5)を含むSPMが作成される。そして、開閉バルブ115が開かれると、混合部103で作成されたSPMは、ノズル5から吐出され、スピンチャック4に保持されたウエハWの上面に供給される。SPMは、硫酸と過酸化水素水との反応時に生じる反応熱により、硫酸の液温以上に昇温する。硫酸と過酸化水素水との混合比に依存するが、ウエハWの表面上では約80〜約130℃に達する。
【0104】
混合部103で生成されるSPMの温度は、硫酸と過酸化水素水との混合比、すなわち、硫酸供給管105を流通する硫酸と、過酸化水素水供給管106を流通する過酸化水素水との間の流量比に依存している。一般的に、硫酸と過酸化水素水との混合比は1:4程度であるが、これよりも過酸化水素水の混合割合を高めることにより、混合部103で生成されるSPMの温度は、この温度よりも高くなる。
【0105】
硫酸用流量調節バルブ110および過酸化水素水用流量調節バルブ112の開度をそれぞれ調節することにより、混合部103に導入される硫酸と過酸化水素水との間の流量比を調節することができ、これにより、混合部103で生成されるSPMの温度、すなわち、ノズル5から吐出されるSPMの温度を調節することができるようになっている。
SPMによるウエハWの処理時には、開閉バルブ109および開閉バルブ111が開かれて、ノズル5から回転中のウエハWの表面に向けてSPMが吐出される。SPMは、ウエハW上で遠心力を受け、ウエハWの全域へと拡がり、ウエハWの上面にSPMの液膜が形成される。そして、液膜の表面温度が放射温度計6によって検出される。また、CPU31は、放射検出値を、メモリ32に記憶された放射検出値−熱電対検出値対応式38によって補正して、ウエハWの上面に供給されるSPMの温度を算出する。また、CPU31は、レシピ35を参照し、設定されているSPMの温度を取得する。
【0106】
そして、CPU31は、放射検出値を補正した値が、レシピ35によって設定されたSPMの温度と相違していると、硫酸用流量調節バルブ110および過酸化水素水用流量調節バルブ112の開度を調節して、その補正値が、レシピ35によって設定されたSPMの温度に近づくように制御する。
この第5実施形態によれば、混合部103において、硫酸と過酸化水素水とを混合させてSPMが作成され、そのSPMが、ノズル5からウエハWに向けて吐出される。硫酸と過酸化水素水との組み合わせは、混合により発熱反応を生じさせるものであるので、硫酸供給管105から混合部103に供給される硫酸と、過酸化水素水供給管106から混合部103に供給される過酸化水素水との間の流量比を変更することにより、ノズル5から吐出されるSPMの温度を調節することができる。放射検出値を補正した値に基づいて、混合部103に供給される硫酸と過酸化水素水との間の流量比を調節するので、ノズル5から吐出されるSPMを所望の温度に正確に保つことができる。
【0107】
また、複数の基板処理部73において、ノズル5から吐出されるSPMの温度を共通にすることができる。これにより、基板処理部73間における処理のばらつきを抑制または防止することができる。
以上、この発明の5つの実施形態について説明してきたが、この発明は他の形態でも実施することができる。
【0108】
前述の第1〜第3実施形態では、ウエハWに供給される処理液として薬液およびDIWの2種類が用いられる場合を例にとって説明したが、複数種類の薬液がウエハWの上面に選択的に供給される場合であってもよい。その場合、その薬液の種類に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38がメモリ32に記憶される。
また、前述の第1〜第5実施形態において、常温のDIWおよび高温(たとえば80℃)のDIWのように処理液種類が同じで温度が大きく異なる場合は、異なる処理液として取り扱うことができる。この例では、常温のDIWに対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38および高温のDIWに対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38が、それぞれメモリ32に記憶される。また、処理液種類が同じであって、その濃度が大きく異なる場合も、異なる処理液として取り扱うことができる。
【0109】
また、前述の第1〜第5実施形態では、ウエハWに供給される処理液が1つのノズル5から吐出する場合を例にとって説明したが、処理液の種類に応じてノズルが個別に設けられていてもよい。
たとえば、前記の第4実施形態では、希釈液としてDIWを用いる場合を例にとって説明したが、DIWに限らず、炭酸水、イオン水、オゾン水、還元水(水素水)または磁気水などを希釈液として用いることもできる。
【0110】
また、第1〜第5実施形態において、放射検出値を補正した後の値に基づいて処理液の温度を常時監視しておき、その温度が予め定める温度範囲を逸脱した場合に、警報を出力することもできる。これにより、処理液の温度異常を精度良く検出することができ、処理不良の発生を抑制または防止することができる。
また、第1〜第5実施形態において、接触式温度計として、熱電対温度計21の他、抵抗温度計、サーミスタ温度計、半導体温度計などを例示することができる。また、放射温度計6は、赤外線放射温度計に限られず、検出対象から放射される可視光線の強度に基づいて検出対象の温度を検出するタイプのものであってもよい。
【0111】
また、第1、第3〜第5実施形態において、洗浄処理時に、メモリ32にレシピ35に設定された回転数に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38が記憶されていない場合には、当該回転数に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38を、線形補完により求めることもできる。
また、第2実施形態において、洗浄処理時に、メモリ32にレシピ35に設定された供給流量に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式52が記憶されていない場合には、当該供給流量に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式52を、線形補完により求めることもできる。
【0112】
また、第1、第3〜第5実施形態において、データベース作成処理時における処理液の種類の設定やスピンチャック4の回転数の設定は、オペレータの操作により設定されるものでなく、メモリ22に、データベース作成処理時における処理液の種類やスピンチャック4の回転数が予め記憶されていてもよい。
また、第2実施形態において、データベース作成処理時における処理液の種類の設定や処理液の供給流量の設定は、オペレータの操作により設定されるものでなく、メモリ22に、データベース作成処理時における処理液の種類や処理液の供給流量が予め記憶されていてもよい。
【0113】
また、第1〜第5実施形態において、データベース作成処理時にスピンチャック4にダミーウエハDWでなくウエハWが保持されていてもよい。この場合、ノズル5から吐出された薬液によって、ウエハWの上面の全域が覆われる。そして、ウエハWの上面を流れる処理液の温度が放射温度計6によって検出され、この検出値がメモリ32の放射検出値−熱電対検出値対応データベース37,51に記憶されていてもよい。
【0114】
また、第1〜第5実施形態において、対応式作成処理が、データベース作成処理から独立して実行されていてもよい。たとえば、洗浄処理時中に、CPU31が、放射検出値−熱電対検出値対応データベース37に記憶された放射検出値および熱電対検出値に基づいて放射検出値−熱電対検出値対応式38を作成するものであってもよい。
また、第1〜第5実施形態において、メモリ32の放射検出値−熱電対検出値対応データベースに、ノズル5から実際に処理液を吐出させ、その処理液の温度を放射温度計6により検出したときの放射検出値が、当該処理液の種類、当該処理液の温度を熱電対温度計21により測定したときの熱電対検出値、その処理液吐出時におけるダミーウエハDW(ウエハW)の回転数、および処理液の吐出時における処理液の供給流量に対応付けて格納されていてもよい。そして、CPU31は、放射検出値−熱電対検出値対応データベースに記憶された放射検出値および熱電対検出値に基づいて、ダミーウエハDW(ウエハW)の回転数、およびその処理液の吐出時における処理液の供給流量に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式を作成するものであってもよい。
【0115】
また、放射検出値を補正するための補正量は、放射検出値−熱電対検出値対応式に限らず、このような放射検出値−熱電対検出値対応式に対応したテーブルデータであってもよい。すなわち、補正前の放射検出値と補正後の放射検出値とを対応付けたテーブルデータを補正量として用いて、放射検出値の補正を行うようにしてもよい。さらに、放射検出値の補正は、一次関数によって行う必要もなく、放射検出値−熱電対検出値対応データベースに格納されたデータを近似可能な非線形関数に従って放射検出値を補正するようにしてもよい。
【0116】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0117】
1 基板処理装置
4 スピンチャック(基板保持手段)
5 ノズル
6 放射温度計
8 スピンモータ(基板回転手段)
15 薬液供給管
16 DIW供給管
17 第1開閉バルブ
18 第1流量調節バルブ
19 第2開閉バルブ
20 第2流量調節バルブ
21 熱電対温度計(接触式温度計)
22 プリディスペンスポッド(容器)
26 ケーシング(管壁)
31 CPU(補正量作成手段、処理液温度算出手段、流量比変更制御手段)
32 メモリ(記憶手段)
34 レシピ入力キー(回転数設定手段、流量設定手段)
37 放射検出値−熱電対検出値対応式(補正量)
60 基板処理装置
70 基板処理装置
79 混合部
80 処理液供給管
83 第1DIW供給管(第1処理液供給管)
84 第2DIW供給管(第2処理液供給管)
94 第1DIW用流量調節バルブ(流量比変更手段)
96 第2DIW用流量調節バルブ(流量比変更手段)
100 基板処理装置
103 混合部
105 硫酸供給管(第1薬液原液供給管)
106 過酸化水素水供給管(第2薬液原液供給管)
110 硫酸用流量調節バルブ(流量比変更手段)
112 過酸化水素水用流量調節バルブ(流量比変更手段)
W ウエハ(基板)
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液を用いて基板を処理する基板処理装置、および基板に供給される処理液の温度を測定する処理液温度測定方法に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置の製造工程では、半導体ウエハや液晶表示パネル用ガラス基板などの基板の表面に処理液による処理を施すために、基板を1枚ずつ処理する枚葉型の基板処理装置が用いられることがある。
この枚葉型の基板処理装置は、処理対象の基板をほぼ水平に保持しつつ、その基板を回転させるスピンチャックと、スピンチャックによって回転される基板の表面に処理液を供給するためのノズルとを備えている。処理液の活性度合は処理液の温度に大きく依存する。そのため、ノズルから吐出される処理液の温度が不適正であると、基板処理に処理不良が生じるおそれがある。とくに、処理液の温度が室温と異なる場合(たとえば室温よりも高い場合)には、処理液の温度を管理することが重要である。
【0003】
そこで、従来から、ノズルから吐出される処理液の温度を温度計により検出することが提案されている。特許文献1では、基板の表面に供給される処理液の温度を、熱電対温度計によって検出する構成が提案されている。また、特許文献2では、洗浄処理中に、基板の表面に処理液を供給しつつ基板を回転させ、その基板上の処理液の液膜の表面温度を、放射温度計によって検出する構成が提案されている。
【特許文献1】特開2005−217226号公報
【特許文献2】特開平11−165114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
温度計の検出値の履歴は、たとえば、基板処理装置に備えられるコンピュータによって、ログファイルとして記録しておくことができる。基板処理に処理不良が生じた場合、オペレータは、そのログファイルに記録されている温度計の検出値履歴を参照することができる。これにより、処理不良の原因が処理液の温度異常にあるか否かを把握することができる。
【0005】
また、温度計の検出値を常時監視しておき、その検出値が予め定める温度範囲を逸脱した場合に、警報を出力することが考えられる。これにより、処理液の温度異常をオペレータに報知することができるから、処理不良の発生を抑制したり予防したりすることができる。
熱電対温度計は、熱伝達を利用して温度を検出する温度計である。熱電対温度計による温度検出は、そのセンサ部分を検出対象の温度まで加熱/冷却することによって達成される。そのため、熱電対温度計の応答時間(検出開始から、検出値が検出対象の温度に一致するまでの時間)は比較的長い。したがって、ノズルから吐出される処理液の温度を精度良く検出するには、十分に長い検出時間が必要である。
【0006】
しかしながら、基板処理における液処理時間は短縮傾向にある。そのため、各液処理における処理液吐出時間は短く、十分な検出時間を確保できない場合が多い。そのため、特許文献1のように、熱電対温度計によって処理液温度を検出する場合、その検出精度が不十分であるおそれがある。
一方、放射温度計は、検出対象の表面から放射される赤外線などの光線の強度を検出し、これらの光線の強度および検出対象の放射率に基づいて検出対象の温度を検出する温度計である。この放射温度計は、一般的に応答時間が短い。
【0007】
しかしながら、放射温度計は、周囲の環境変化(周囲の雰囲気の湿度変化など)や検出対象の表面状態などの影響を受け易い。そのため、特許文献2のように放射温度計によって基板上の処理液の液膜の温度を検出する場合は、処理室内の湿度変化や処理液の液膜表面の影響を大きく受けてしまい、検出誤差を生じるおそれがある。そればかりでなく、或る種類の処理液に対応する放射率に設定した放射温度計で別の種類の処理液の温度を検出する場合も、検出誤差を生じるおそれがある。
【0008】
このように、特許文献1および特許文献2のいずれの構成においても、処理液温度の検出精度が悪かった。
そして、処理液温度の検出精度が悪いと、ログファイルに記録される検出値が実際の処理液の温度履歴と異なるおそれがある。この場合、基板処理不良が発生しても、その原因が処理液の温度異常にあるのか否かを把握することができない。また、処理液温度の検出精度が悪いと、温度計の検出値を監視しても、処理液の温度異常を精度良く検出することができない。そのため、基板処理不良が発生しているのに警報が出力されなかったり、逆に、基板処理不良が生じていないのに警報が出力されたりするおそれがある。むろん、処理液温度の検出精度が悪いと、基板に対して適正に温度制御された処理液を供給できなくなるおそれがあるから、基板処理品質が悪くなるおそれがある。
【0009】
そこで、この発明の目的は、基板に供給される処理液の温度を精度良く測定することができ、これにより、基板に適正な温度の処理液を用いた処理を施すことができる基板処理装置を提供することである。
また、この発明の他の目的は、基板に供給される処理液の温度を精度良く測定することができる処理液温度測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、処理液を用いて基板(W)を処理する基板処理装置(1;60;70;100)であって、基板に処理液を供給するための処理液供給手段(5,15,16,17,18,19,20;5,79,80,83,84,94,96;5,103,105,106,110,112)と、前記処理液供給手段から基板に供給される処理液の温度を検出するための放射温度計(6)と、前記処理液供給手段から処理液を供給しつつ、その処理液の温度を前記放射温度計により検出したときの検出値を、前記処理液の現実の温度に対応付けて記憶した記憶手段(32)と、前記記憶手段に記憶された前記検出値および前記現実の温度に基づいて、前記処理液の温度に関する補正量(38)を作成する補正量作成手段(31,S30)と、前記放射温度計の検出値を、前記補正量作成手段により作成された補正量によって補正して、前記処理液の温度を算出する処理液温度算出手段(31,S15;31,S45)とを含む、基板処理装置である。
【0011】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、特許請求の範囲を実施形態に限定する趣旨ではない。以下、この項において同じ。
この構成によれば、処理液供給手段から基板に供給される処理液の温度が、放射温度計によって検出される。そして、この放射温度計の検出値を、当該処理液に関する補正量によって補正して、当該処理液の温度が算出される。
【0012】
実際に処理液供給手段から処理液を供給しつつ、その処理液の温度を放射温度計により検出したときの検出値が、当該処理液の現実の温度に対応付けて、記憶手段に記憶されている。そして、この記憶手段に記憶された放射温度計の検出値と、現実の温度とに基づいて、当該処理液に関する補正量が作成される。その補正量によって放射温度計の検出値を補正するので、これにより、処理液の温度を精度良く測定することができる。これにより、適正温度の処理液を用いた処理を基板に施すことができる。
【0013】
請求項2記載の発明は、前記処理液供給手段から基板に供給される処理液の温度を検出するための接触式温度計(21)をさらに含み、前記記憶手段は、前記処理液供給手段から処理液を供給しつつ、その処理液の温度を前記放射温度計により検出したときの検出値を、当該処理液の温度を接触式温度計により検出したときの検出値に対応付けて記憶した手段(32)を含み、前記補正量作成手段は、前記記憶手段に記憶された前記放射温度計の検出値および前記接触式温度計の検出値に基づいて、前記補正量を作成する手段(31,S30)を含む、請求項1記載の基板処理装置である。
【0014】
この構成によれば、記憶手段には、実際に前記処理液供給手段から処理液を吐出しつつ、その処理液の温度を前記放射温度計により検出したときの検出値が、当該処理液の温度を接触式温度計により検出したときの検出値に対応付けて記憶されている。接触式温度計による温度検出が、接触式温度計の応答時間よりも長い時間にわたって実行される場合、接触式温度計の検出値は、処理液の現実の温度を実質的に表わす。
【0015】
なお、接触式温度計として、熱電対温度計、抵抗温度計、サーミスタ温度計、半導体温度計などを例示することができる。
請求項3に記載のように、前記処理液供給手段が、基板に向けて処理液を吐出するノズル(5)を備えている場合は、前記接触式温度計は、前記ノズルの管壁(26)内を流通する処理液の温度を検出するものであってもよい。
【0016】
また、請求項4に記載のように、前記処理液供給手段が、基板に向けて処理液を吐出するノズル(5)を備え、かつ前記基板処理装置が前記ノズルから吐出された処理液を受け止めるための容器(22)をさらに含んでいる場合は、前記接触式温度計は、前記容器に貯留された処理液の温度を検出するものであってもよい。
請求項5記載の基板処理装置は、基板を水平姿勢に保持する基板保持手段(4)と、前記基板保持手段に保持される基板を回転させる基板回転手段(8)と、前記基板回転手段によって回転される基板の回転数を設定するための回転数設定手段(34)とをさらに含み、前記記憶手段は、前記処理液供給手段から処理液を供給し、かつ前記基板回転手段により基板を回転させつつ、その処理液の温度を前記放射温度計により検出したときの検出値を、前記処理液の現実の温度、およびそのときの基板の回転数に対応付けて記憶した手段(32)を含み、前記補正量作成手段は、前記記憶手段に記憶された前記放射温度計の前記検出値、前記現実の温度、および前記回転数に基づいて、前記回転数設定手段によって設定された回転数に対応する前記補正量を作成する手段(31;S30)を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0017】
この構成によれば、基板が水平姿勢に保持されつつ、回転数設定手段によって設定される回転数で回転される。基板に処理液が供給されると、基板の表面に処理液の液膜が形成される。この液膜の表面温度が放射温度計によって検出される。処理液の液膜の内部温度は基板の温度の影響を受けるので、厳密に言えば、液膜の表面と、液膜の内部(とくに基板表面の近くの部分)との間には温度差が生じている。この温度差は液膜の厚さに依存する。そして、液膜の厚さは基板の回転数に依存する。なぜなら、基板の回転数に応じて液膜に作用する遠心力が変化し、これに伴って、液膜の厚みが変化するからである。したがって、基板の回転数を考慮して放射温度計の検出値を補正すれば、基板に接している処理液の温度を一層高精度に求めることができる。
【0018】
そこで、請求項5の構成によれば、記憶手段には、放射温度計の検出値が、現実の温度および基板の回転数に対応付けて記憶されている。そして、放射温度計の検出値、現実の温度および基板の回転数に基づいて、回転数設定手段によって設定された回転数に対応する補正量が作成される。そして、その補正量で放射温度計の検出値を補正して処理液の温度を算出する。これにより、処理液の温度(とくに基板表面に接している処理液の温度)を、より一層精度良く測定することができる。
【0019】
記憶手段には、放射温度計の検出値が、所定個数の離散的な回転数値に対応して記憶されていてもよい。回転数設定手段によって設定された回転数に該当するデータが記憶手段に記憶されていない場合には、たとえば、記憶手段に記憶されているデータに対応した補正量に対する線形補間演算を行うことで、当該回転数に対応した補正量を算出できる。
請求項6記載の発明は、基板を水平姿勢に保持する基板保持手段(4)と、前記処理液供給手段から供給される処理液の供給流量を設定するための供給流量設定手段(34)とをさらに含み、前記記憶手段は、前記処理液供給手段から処理液を供給しつつ、その処理液の温度を前記放射温度計により検出したときの検出値を、前記処理液の現実の温度、および前記処理液の供給流量に対応付けて記憶した手段(32)を含み、前記補正量作成手段は、前記記憶手段に記憶された前記放射温度計の前記検出値、前記現実の温度、および前記供給流量に基づいて、前記供給流量設定手段によって設定された処理液の供給流量に対応する前記補正量を作成する手段(31)を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0020】
この構成によれば、基板が水平姿勢に保持される。基板に処理液が供給されると、基板の表面に処理液の液膜が形成される。この液膜の表面温度が放射温度計によって検出される。この場合、処理液の液膜の内部温度は基板の温度の影響を受けるので、厳密に言えば、液膜の表面と、液膜の内部(とくに基板表面の近くの部分)との間には温度差が生じている。この温度差は液膜の厚さに依存する。そして、液膜の厚さは基板上に供給される処理液の供給流量に依存する。したがって、処理液の供給流量を考慮して放射温度計の検出値を補正すれば、基板に接している処理液の温度を一層高精度に求めることができる。
【0021】
そこで、請求項6の構成によれば、記憶手段には、放射温度計の検出値が、現実の温度および処理液の供給流量に対応付けて記憶されている。そして、放射温度計の検出値、現実の温度および処理液の供給流量に基づいて、供給流量設定手段によって設定された処理液の供給流量に対応する補正量が作成される。そして、基板処理時における処理液の供給流量に対応する補正量で放射温度計の検出値を補正して処理液の温度を算出する。これにより、処理液の温度(とくに基板表面に接している処理液の温度)を、より一層精度良く測定することができる。
【0022】
記憶手段には、放射温度計の検出値が、所定個数の離散的な処理液供給流量値に対応して記憶されていてもよい。実際の処理液供給流量に該当するデータが記憶手段に記憶されていない場合には、たとえば、記憶手段に記憶されているデータに対応する補正量に対する線形補間演算を行うことで、当該処理液供給流量に対応した補正量を算出できる。
請求項7記載の発明は、前記処理液供給手段は、基板に向けて処理液を吐出するためのノズル(5)と、第1温度の低温処理液を供給するための第1処理液供給管(83)と、前記第1温度よりも高い第2温度の高温処理液を供給するための第2処理液供給管(84)と、前記第1処理液供給管および前記第2処理液供給管に接続されて、前記第1処理液供給管からの前記低温処理液と、前記第2処理液供給管からの前記高温処理液とを混合した処理液を、前記ノズルに供給する混合部(79)と、前記混合部で生成された処理液を前記ノズルに供給する処理液供給管(80)と、前記第1処理液供給管から前記混合部に供給される低温処理液と、前記第2処理液供給管から前記混合部に供給される高温処理液との間の流量比を変更するための流量比変更手段(94,96)とをさらに含み、前記基板処理装置は、前記処理液温度算出手段によって求められた温度に基づいて、前記供給流量比変更手段を制御する流量比変更制御手段(31)をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0023】
この構成によれば、第1処理液供給管から混合部に供給される低温処理液と、第2処理液供給管から混合部に供給される高温処理液との間の流量比を変更することにより、ノズルから吐出される処理液の温度を調節することができる。放射温度計の検出値を補正した値に基づいて、混合部に供給される低温処理液と高温処理液との間の流量比を変更するので、ノズルから吐出される処理液を所望の温度に正確に保つことができる。そのため、適正温度に正確に調整された処理液を基板に供給することができ、これにより、処理不良の発生をより効果的に防止することができる。
【0024】
請求項8記載の発明は、前記処理液供給手段は、基板に向けて処理液を吐出するためのノズル(5)と、第1薬液原液を供給するための第1薬液原液供給管(105)と、第1薬液原液と異なる種別の第2薬液原液を供給するための第2薬液原液供給管(106)と、前記第1薬液原液供給管および前記2薬液原液供給管に接続されて、前記第1薬液原液からの第1薬液原液と、前記2薬液原液供給管からの第2薬液原液とを混合した処理液を、前記ノズルに供給する混合部(103)と、前記混合部で生成された処理液を前記ノズルに供給する処理液供給管と、前記第1薬液原液供給管から前記混合部に供給される第1薬液原液と、前記第2薬液原液から前記混合部に供給される第2薬液原液との間の流量比を変更するための流量比変更手段(110,112)とをさらに含み、前記基板処理装置は、前記処理液温度算出手段によって求められた温度に基づいて、前記供給流量比変更手段を制御する流量比変更制御手段(31)をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0025】
この構成によれば、混合部において、第1薬液原液と第2薬液原液とを混合させて処理液が作成される。混合部で作成された処理液が、ノズルから基板に向けて吐出される。第1薬液原液と第2薬液原液とが混合により発熱反応を生じる場合、第1薬液原液供給管から混合部に供給される薬液と、第2薬液原液供給管から混合部に供給される第2薬液原液との間の流量比を変更することにより、ノズルから吐出される処理液の温度を調節することができる。放射温度計の検出値を補正した値に基づいて、混合部に供給される第1薬液原液と第2薬液原液との間の流量比を調節するので、ノズルから吐出される処理液を所望の温度に正確に保つことができる。そのため、基板に、所望の温度に正確に調整された処理液を供給することができ、これにより、処理不良の発生をより効果的に防止することができる。たとえば、第1薬液原液と第2薬液原液との組み合わせは、硫酸と過酸化水素水との組み合わせであってもよい。なお、「薬液原液」とは、混合前の薬液を意味しており、市場から調達された薬液をそのまま用いることを意味しているわけではない。
【0026】
請求項9記載の発明は、基板(W)に供給される処理液の温度を測定する処理液温度測定方法であって、処理液供給手段(5,15,16,17,18,19,20;5,79,80,83,84,94,96;5,103,105,106,110,112)から基板に供給される処理液の温度を、放射温度計を用いて検出する第1検出ステップ(S11;S41)と、前記処理液供給手段から基板に処理液を供給する供給ステップ(S22)と、前記供給ステップと並行して実行され、前記処理液供給手段から基板に供給される処理液の温度を、前記放射温度計を用いて検出する第2検出ステップ(S23)と、前記処理液供給手段から基板(DW)に供給される処理液の温度を、接触式温度計を用いて検出する第3検出ステップ(S24)と、前記第2検出ステップにおける前記放射温度計の検出値を、前記第3検出ステップにおける前記接触式温度計の検出値に対応付けて記憶手段に記憶する記憶ステップ(26)と、前記記憶手段に記憶された前記各検出値に基づいて、前記処理液供給手段から供給される処理液に対応する前記放射温度計の検出値の補正量を作成する補正量作成ステップ(S30)と、前記第1検出ステップにおける前記放射温度計の検出値を前記補正量によって補正して、当該処理液供給手段から供給される処理液の温度を算出する算出ステップ(S15;S45)とを含む、処理液温度測定方法である。
【0027】
この発明の方法によれば、処理液供給手段から基板に供給される処理液の温度が、放射温度計によって検出される。そして、この放射温度計の検出値を、当該処理液に関する補正量によって補正して、当該処理液の温度が算出される。
この方法では、前記処理液供給手段から実際に処理液を吐出しつつ、その処理液の温度を放射温度計により検出したときの検出値が、当該処理液の温度を接触式温度計により検出したときの検出値に対応付けて記憶手段に記憶される。接触式温度計による温度検出が、接触式温度計の応答時間よりも長い時間にわたって実行される場合、接触式温度計の検出値は、処理液の現実の温度を実質的に表わす。そして、この記憶手段に記憶された放射温度計の検出値と、現実の温度とに基づいて、当該処理液に関する補正量が作成される。その補正量によって放射温度計の検出値を補正するので、これにより、処理液の温度を精度良く測定することができる。
【0028】
前記第3検出ステップは、前記供給ステップおよび前記第2検出ステップと並行して実行されていてもよい。
請求項10記載の発明は、前記供給ステップと並行して実行され、基板を所定の回転数で回転させる回転ステップ(S21)をさらに含み、前記記憶ステップは、前記放射温度計による検出値を、前記接触式温度計による検出値および前記回転数に対応付けて前記記憶手段に記憶するステップ(S26)を含み、前記補正量作成ステップは、前記記憶手段に記憶された前記各検出値に基づいて、基板の回転数に対応する前記補正量を作成するステップ(S30)を含む、請求項9記載の処理液温度測定方法である。
【0029】
この発明の方法によれば、請求項5に関連して述べた作用効果と同様な作用効果を達成することができる。
請求項11記載の発明は、前記記憶ステップは、前記放射温度計による検出値を、前記接触式温度計による検出値、および前記供給ステップにおける前記処理液供給手段から供給される処理液の供給流量に対応付けて前記記憶手段に記憶するステップを含み、前記補正量作成ステップは、前記記憶手段に記憶された前記各検出値に基づいて、処理液の供給流量に対応する前記補正量を作成するステップを含む、請求項9記載の処理液温度測定方法である。
【0030】
この発明の方法によれば、請求項6に関連して述べた作用効果と同様な作用効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の構成を示す模式図である。
【図2】図1に示すノズルの断面図である。
【図3】図1に示す基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】放射検出値−熱電対検出値対応データベースの一例を示す図である。
【図5】図4に示す放射検出値−熱電対検出値対応データベースの内容を表すグラフである。
【図6】図1に示す基板処理装置における処理液供給動作の流れを示すフローチャートである。
【図7】図6に示す処理液温度測定処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】図1に示す基板処理装置におけるデータベース作成処理のための構成を説明するための図である。
【図9】データベース作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置のメモリに記憶される放射検出値−熱電対検出値対応データベースを示す図である。
【図11】図10に示す放射検出値−熱電対検出値対応データベースの内容を表すグラフである。
【図12】第2実施形態に係る基板処理装置における処理液温度測定処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】本発明の第3実施形態に係る基板処理装置のプリディスペンスポッドの断面図である。
【図14】第4実施形態に係る基板処理装置の構成を示す模式図である。
【図15】図14に示す基板処理装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図16】図14に示す基板処理装置における処理液供給動作の流れを示すフローチャートである。
【図17】本発明の第5実施形態に係る基板処理装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1の構成を示す模式図である。この基板処理装置1は、処理液を用いて、基板の一例である半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」という。)におけるデバイス形成領域側の表面から汚染物質を除去するための洗浄処理や、ウエハWのデバイス形成領域側の表面に塗布されたレジスト膜を剥離するレジスト剥離処理を実行するための枚葉式の装置である。基板処理装置1は、処理液として、薬液やDIW(deionized water)を用いることができる。
【0033】
基板処理装置1は、隔壁2により区画された処理室3内に、ウエハWをほぼ水平に保持して回転させるためのスピンチャック(基板保持手段)4と、スピンチャック4に保持されたウエハWの表面(上面)に向けて処理液を供給するためのノズル5と、ウエハWの表面に供給される処理液の温度を検出するための放射温度計6と、スピンチャック4の周囲を取り囲み、ウエハWから流下または飛散する薬液やDIWを受け止めるためのカップ7とを備えている。
【0034】
スピンチャック4は、スピンモータ(基板回転手段)8と、このスピンモータ8の回転駆動力によって鉛直軸線まわりに回転される円盤状のスピンベース9と、スピンベース9の周縁部の複数箇所にほぼ等間隔で設けられ、ウエハWをほぼ水平な姿勢で挟持するための複数個の挟持部材10とを備えている。これにより、スピンチャック4は、複数個の挟持部材10によってウエハWを挟持した状態で、スピンモータ8の回転駆動力によってスピンベース9を回転させることにより、そのウエハWを、ほぼ水平な姿勢を保った状態で、スピンベース9とともに鉛直軸線まわりに回転させることができる。
【0035】
なお、スピンチャック4としては、挟持式のものに限らず、たとえば、ウエハWの裏面を真空吸着することにより、ウエハWを水平な姿勢で保持し、さらにその状態で鉛直な回転軸線まわりに回転することにより、その保持したウエハWを回転させることができる真空吸着式のもの(バキュームチャック)が採用されてもよい。
ノズル5は、たとえば連続流の状態で処理液を吐出するストレートノズルであり、スピンチャック4の上方でほぼ水平に延びるアーム11の先端に取り付けられている。このアーム11は、スピンチャック4の側方でほぼ鉛直に延びたアーム支持軸12に支持されている。アーム支持軸12には、ノズル駆動機構13が結合されており、このノズル駆動機構13の駆動力によって、アーム支持軸12を回動させて、アーム11を揺動させることができるようになっている。
【0036】
なお、ノズル5は、いわゆるスキャンノズルの形態である必要はなく、スピンチャック4に対して固定的に配置された構成であってもよい。
ノズル5には、薬液供給源からの薬液が供給される薬液供給管15と、DIW供給源からのDIWが供給されるDIW供給管16とが接続されている。薬液供給源から薬液供給管15に供給される薬液として、SC1(アンモニア過酸化水素水混合液)、SC2(塩酸過酸化水素水混合液)、SPM(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水混合液)、フッ酸、バファードフッ酸(Buffered HF:フッ酸とフッ化アンモニウムとの混合液)などを例示することができる。薬液は、薬液供給源において所定の高温(たとえば常温(25℃))に温度調節されている。また、DIWは、DIW供給源において所定の高温(たとえば85℃)に温度調節されている。
【0037】
薬液供給管15の途中部には、薬液供給管15を開閉するための第1開閉バルブ17と、薬液供給管15を流通する薬液の流量を調節するための第1流量調節バルブ18とが、ノズル5側からこの順で介装されている。DIW供給管16の途中部には、DIW供給管16を開閉するための第2開閉バルブ19と、DIW供給管16を流通するDIWの流量を調節するための第2流量調節バルブ20とが、ノズル5側からこの順で介装されている。第2開閉バルブ19が閉じられた状態で、第1開閉バルブ17が開かれると、薬液供給源からの薬液が、薬液供給管15を通してノズル5に供給され、ノズル5から吐出される。第1開閉バルブ17が閉じられた状態で、第2開閉バルブ19が開かれると、DIW供給源からのDIWが、DIW供給管16を通してノズル5に供給され、ノズル5から吐出される。また、ノズル5に関連して、ノズル5のケーシング26(図2参照)内を流通する処理液の温度を検出する接触式温度計の一例としての熱電対温度計21が設けられている。
【0038】
ノズル5が、処理室3内におけるスピンチャック4の側方にある退避位置(図1に破線で図示)にある状態では、有底容器からなるプリディスペンスポッド(容器)22がその開口を上方に向けた状態で配置されている。プリディスペンスの際には、ノズル5を退避位置に位置させた状態で、ノズル5からプリディスペンスポッド22に向けて処理液(薬液またはDIW)を吐出(排出)させることにより、薬液供給管15に残った薬液またはDIW供給管16に残ったDIWを排除する。ノズル5から吐出された処理液は、プリディスペンスポッド22により受け止められる。プリディスペンスポッド22の底部には廃液配管23が接続されており、この廃液配管23は、廃液を処理するための廃液設備へと延びている。プリディスペンスポッド22により受け止められた処理液は、廃液配管23を通って廃液設備へと送られる。
【0039】
放射温度計6は、検出対象から放射される赤外線の強度を測定して、その検出対象の温度を測定する赤外線放射温度計である。放射温度計6は、スピンチャック4の上方で、ウエハW(スピンチャック4に保持されたウエハW)の回転軸線(中心軸線)と周縁との間の所定の中間位置(たとえば、ウエハWの回転軸線から、そのウエハWの半径の半分に相当する距離を隔てた位置)が検出対象になるように配置されている。ノズル5から吐出された処理液は、ウエハWの上面(表面)の回転中心に供給され、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの上面を周縁部に向けて拡がる。そのため、ウエハWの上面の全域が処理液によって覆われる。すなわち、ウエハWの上面に処理液の液膜が形成される。そして、そのウエハW上の処理液の液膜の温度、より詳しくは液膜の表面温度が、放射温度計6によって検出される。
【0040】
図2は、ノズル5の断面図である。ノズル5は、円筒状のケーシング(管壁)26を備えている。ケーシング26の内部には、処理液が流通する処理液流通路28が形成されている。ケーシング26は、その先端部分に、処理液を外部空間に向けて吐出するための吐出口27を有している。
熱電対温度計21は、温度計本体29と、温度計本体29に接続されるプローブ30とを備えている。プローブ30では、熱電対素線(図示せず)および絶縁材(図示せず)は、シースなどの金属保護管(図示せず)内に収納されている。プローブ30の先端部分に設けられた熱電対素線の接点を、そのセンサ部分としている。プローブ30はケーシング26を貫通し、その先端部分が処理液流通路28に進入している。これにより、ノズル5内を流通する処理液の温度を、熱電対温度計21によって検出することができる。熱電対温度計21による温度検出では、検出対象の温度までセンサ部分を加熱/冷却する必要があり、そのため、熱電対温度計21の応答時間(検出開始から、検出値が検出対象の温度に一致するまでの時間)が比較的長い。そして、熱電対温度計21による温度検出のための検出時間が、熱電対温度計21の応答時間よりも長い場合、熱電対温度計21の検出値は、現実の処理液の温度を実質的に表わしている。
【0041】
図3は、基板処理装置1の電気的構成を示すブロック図である。
基板処理装置1は、CPU(補正量作成手段、処理液温度算出手段、流量比変更制御手段)31およびメモリ(記憶手段)32を含む構成のコンピュータ33を備えている。このコンピュータ33には、スピンモータ8、ノズル駆動機構13、第1開閉バルブ17、第1流量調節バルブ18、第2開閉バルブ19および第2流量調節バルブ20が、制御対象として接続されている。
【0042】
また、コンピュータ33には、放射温度計6から出力される検出値、および熱電対温度計21から出力される検出値が入力されるようになっている。
また、コンピュータ33には、基板処理の内容を規定するレシピ35を入力するためのレシピ入力キー(回転数設定手段、供給流量設定手段)34が接続されている。レシピ入力キー34は、オペレータが操作可能な位置に配置されている。オペレータは、レシピ入力キー34を操作して、基板処理の条件を規定するレシピ35を作成することができる。基板処理の条件としては、処理液の種類、処理液供給時間、処理液の供給流量(ノズル5から吐出される処理液の流量)、ウエハWの回転数(スピンチャック4の回転数)、処理の順序を例示できる。レシピ入力キー34の操作により入力されたレシピ35は、コンピュータ33のメモリ32に保持される。レシピ35の作成は、必ずしもレシピ入力キー34の操作によって行われる必要はなく、パーソナルコンピュータその他の適当な処理装置で別途作成されたレシピ35をメモリ32にダウンロードして格納するようにしてもよい。
【0043】
また、メモリ32には、ログファイル36が保持される。ログファイル36は、コンピュータ33の利用履歴を記憶するためのファイルである。ログファイル36には、実行された処理の内容や、種々のセンサの検出値などが記憶されるようになっている。この実施形態では、ログファイル36に、放射温度計6の検出値(以下、「放射検出値」という。)を補正した値が記録される。
【0044】
さらに、メモリ32には、放射検出値−熱電対検出値対応データベース37と、放射検出値−熱電対検出値対応式(補正量)38とが記憶されている。放射検出値−熱電対検出値対応データベース37は、ノズル5から実際に処理液を吐出させ、その処理液の温度を放射温度計6によって検出したときにおける放射検出値と、当該処理液の温度を熱電対温度計21によって検出したときの熱電対温度計21の検出値(以下、「熱電対検出値」という。)との対応関係を表わすものである。放射検出値−熱電対検出値対応式38は、放射検出値を、現実の処理液の温度に近似する値に補正するためのものである。メモリ32には、放射検出値−熱電対検出値対応式38が複数設けられている。各放射検出値−熱電対検出値対応式38は、処理液の種類(薬液かDIW)およびウエハWの所定の回転数に対応付けられている。
【0045】
図4は、放射検出値−熱電対検出値対応データベース37の一例を示す図である。放射検出値−熱電対検出値対応データベース37には、後述するデータベース作成処理(実験)においてノズル5から実際に処理液を吐出させたときに取得されたデータが格納されている。より具体的には、処理液の放射検出値と、当該処理液の種類(薬液またはDIW)と、当該処理液の熱電対検出値と、その処理液吐出時におけるダミーウエハDWの回転数(スピンチャック4の回転数)とが対応付けられて記憶されている。データベース作成処理では、放射温度計6および熱電対温度計21による処理液温度検出が、ノズル5から吐出される処理液の温度を変えて、複数回実行される。たとえば、図4では、上段のグループの放射検出値および熱電対検出値と、中段のグループの放射検出値および熱電対検出値とは、それぞれ、データベース作成処理において、互いに異なる温度の処理液を検出対象にしている(図5も併せて参照)。図4では、データベース作成処理におけるスピンチャック4の回転数として、500rpm、700rpmまたは1000rpmの3種類が例示されている。
【0046】
図5は、放射検出値−熱電対検出値対応データベース37の内容を表すグラフである。このグラフに示されるプロット(「▲」または「■」)は、放射検出値−熱電対検出値対応データベース37に記憶されている放射検出値(放射温度計検出値(x))と、熱電対検出値(熱電対検出値(y))との間の対応関係を表わしている。図5(a)はスピンチャック4の回転数(ダミーウエハDWの回転数)がたとえば500rpmである場合を示し、図5(b)はスピンチャック4の回転数がたとえば1000rpmである場合を示している。また、図5(a)および図5(b)の「▲」は、処理液として薬液が用いられる場合を示し、図5(a)および図5(b)の「■」は、処理液としてDIWが用いられる場合を示す。これらのプロットに近似する一次関数を、たとえば最小二乗法によって求め、熱電対検出値(y)を放射検出値(放射温度計検出値(x))の一次関数で表す。この一次関数式が、放射検出値−熱電対検出値対応式38である。この放射検出値−熱電対検出値対応式38は、処理液の種類およびウエハWの回転数(スピンチャック4の回転数)の両方に対応している。放射検出値−熱電対検出値対応式38を表わす直線グラフを、図5(a)および図5(b)中にそれぞれ示す。図5(a)に太線で示すのが、処理液種類「薬液」およびウエハWの回転数「500rpm」に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38であり、図5(a)に細線で示すのが、処理液種類「DIW」およびウエハWの回転数「500rpm」に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38である。図5(b)に太線で示すのが、処理液種類「薬液」およびウエハWの回転数「1000rpm」に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38であり、図5(b)に細線で示すのが、処理液種類「DIW」およびウエハWの回転数「1000rpm」に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38である。
【0047】
次に、ウエハWの洗浄処理について説明する。洗浄処理の開始時には、ノズル5は退避位置(図1に破線で図示)に位置している。
洗浄処理に際しては、搬送ロボット(図示せず)によって、処理室3に処理対象のウエハWが搬入されてくる。ウエハWは、その表面を上方に向けて、スピンチャック4に保持される。なお、スピンチャック4へのウエハWの受け渡し時には、ウエハWの搬入を阻害しないように、ノズル5は、カップ7の側方の退避位置に退避されている。
【0048】
ウエハWがスピンチャック4に保持されると、コンピュータ33は、スピンモータ8を駆動して、レシピ35で設定された液処理回転数(たとえば1000rpm)でスピンチャック4を回転させる。スピンチャック4の回転に伴って、スピンチャック4に保持されたウエハWも液処理回転数(たとえば1000rpm)で回転される。
さらに、コンピュータ33は、ノズル駆動機構13を制御して、ノズル5を、カップ7の側方の退避位置からウエハWの上方に向けて移動させる。そして、ノズル5は、その吐出口がウエハWの上面の回転中心を向く位置で停止される。この状態でコンピュータ33によって第1開閉バルブ17が開かれることにより、ノズル5からウエハWの上面の回転中心に向けて処理液が吐出される。まず、ウエハWに薬液処理が施される。
【0049】
図6は、ノズル5からの処理液供給動作をより詳細に説明するためのフローチャートである。この実施形態ではノズル5から高温の処理液が吐出される。この場合、処理液の活性度合は処理液の温度に依存する。まず、ノズル5から処理液として薬液が吐出される場合を例に挙げて説明する。
CPU31は、薬液の供給タイミングになると(ステップS1でYES)、レシピ35に規定された供給流量の薬液がノズル5から吐出されるように、第1流量調節バルブ18の開度を制御する。さらに、CPU31は、第2開閉バルブ19を閉じた状態で、第1開閉バルブ17を開く(ステップS2)。これにより、薬液供給源からの薬液が、薬液供給管15を通してノズル5に供給される。そして、ノズル5からウエハWの上面の回転中心に向けて薬液が吐出される。
【0050】
ノズル5から吐出された薬液は、ウエハWの上面の回転中心に供給され、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの上面を周縁部に向けて拡がる。そのため、ウエハWの上面の全域が薬液によって覆われる。すなわち、ウエハWの上面に薬液の液膜が形成される。そして、薬液の液膜の表面温度が放射温度計6によって検出される。また、CPU31は、放射検出値を、放射検出値−熱電対検出値対応式38によって補正して、ウエハWの上面に供給される薬液の温度を算出する(S3:処理液温度測定処理)。
【0051】
そして、その算出値(放射検出値を補正した値)がログファイル36に記録される(ステップS4)。放射温度計6による薬液の温度の検出、および算出値(放射検出値を補正した値)のログファイル36への記録は、薬液の供給停止タイミング(具体的には、レシピ35により設定された薬液供給時間の満了)になるまで続行される(ステップS5)。
薬液の供給停止タイミングになると(ステップS5でYES)、CPU31は、第1開閉バルブ17を閉じる(ステップS6)。そして、コンピュータ33は、ノズル駆動機構13を制御して、ノズル5をウエハWの上方から、退避位置まで移動させる。これにより、薬液の吐出動作が終了する。次に、ウエハWにリンス処理が施される。
【0052】
再び図6を参照して、CPU31は、DIWの供給タイミングになると(ステップS1でYES)、ノズル5から吐出されるDIWの流量がレシピ35に規定された流量になるように、第2流量調節バルブ20の開度を制御する。さらに、CPU31は、第1開閉バルブ17を閉じた状態で、第2開閉バルブ19を開く(ステップS2)。これにより、DIW供給源からのDIWが、DIW供給管16を通してノズル5に供給される。そして、ノズル5からウエハWの上面の回転中心に向けてDIWが吐出される。
【0053】
ノズル5から吐出されたDIWは、ウエハWの上面の回転中心に供給され、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの上面を周縁部に向けて拡がる。そのため、ウエハWの上面の全域がDIWによって覆われる。すなわち、ウエハWの上面にDIWの液膜が形成される。そして、DIWの液膜の表面温度が放射温度計6によって検出される。また、CPU31は、放射検出値を、放射検出値−熱電対検出値対応式38によって補正して、ウエハWの上面に供給されるDIWの温度を算出する(S3:処理液温度測定処理)。
【0054】
そして、その算出値(放射検出値を補正した値)がログファイル36に記録される(ステップS4)。放射温度計6によるDIWの温度の検出、および算出値(放射検出値を補正した値)のログファイル36への記録は、DIWの供給停止タイミング(具体的には、レシピ35により設定されたDIW供給時間の満了)になるまで続行される(ステップS5)。
【0055】
DIWの供給停止タイミングになると(ステップS5でYES)、CPU31は、第2開閉バルブ19を閉じる(ステップS6)。そして、コンピュータ33は、ノズル駆動機構13を制御して、ノズル5をウエハWの上方から、退避位置まで移動させる。これにより、DIWの吐出動作が終了する。
リンス処理の終了後、コンピュータ33はスピンモータ8を駆動して、ウエハWの回転速度を予め定める乾燥速度(たとえば、3000rpm)まで加速する。これにより、ウエハWに付着しているDIWが遠心力によって振り切られる。そして、乾燥時間の経過後、コンピュータ33はスピンモータ8を駆動して、スピンチャック4の回転を停止する。その後、搬送ロボット(図示せず)によってウエハWが搬出される。
【0056】
図7は、図6のステップS3に示す処理液温度測定処理の流れを示すフローチャートである。以下では、薬液処理中における処理液温度測定処理について説明するが、リンス処理中における処理液温度測定処理も同様である。そのため、リンス処理中における処理液温度測定処理についての説明は省略する。
薬液処理中は、ウエハWの上面に形成される薬液の液膜の表面温度が、放射温度計6によって検出される(ステップS11)。具体的には、ウエハWの上面における回転軸線と周縁との間の中間位置にある液膜の表面温度が、放射温度計6によって検出される。そして、CPU31は、放射温度計6から出力される検出値(放射検出値)を取得する(ステップS12)。また、CPU31は、メモリ32に記憶されたレシピ35を参照し(ステップS13)、設定されている回転数を取得する。
【0057】
そして、CPU31は、メモリ32に記憶された複数の放射検出値−熱電対検出値対応式38のうち、洗浄処理においてノズル5から吐出される処理液の種類(薬液)と、レシピ35に設定された回転数(たとえば1000rpm)との双方に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38を取得する(ステップS14)。そして、この放射検出値−熱電対検出値対応式38を用いて検出値を補正して、薬液の温度を算出する(ステップS15)。この算出値(放射検出値を補正した値)が、薬液の温度として、ログファイル36に記録される(図6のステップS4)。
【0058】
次に、放射検出値−熱電対検出値対応式38の作成について説明する。オペレータは、基板処理装置1を用いて実験を行い、放射検出値−熱電対検出値対応データベース37を作成する。そして、この放射検出値−熱電対検出値対応データベース37に基づいて、放射検出値−熱電対検出値対応式38がコンピュータ33によって自動的に作成される。この放射検出値−熱電対検出値対応データベース37を作成する処理(以下、「データベース作成処理」という。)は、たとえば、数ヶ月に1回の頻度で行われる。
【0059】
図8は、基板処理装置1におけるデータベース作成処理のための構成を説明するための図である。
薬液供給管15には、複数の薬液供給源(図8ではたとえば3つ)が接続されている。薬液供給管15には、複数の薬液供給源から互いに異なる温度の薬液が供給されるようになっている。各薬液供給源は、薬液供給管15に開閉バルブ40,41,42を介して接続されている。各開閉バルブ40,41,42は、コンピュータ33に制御対象として接続されている。薬液供給用の開閉バルブ40,41,42のうち1つのバルブだけを開状態にするとともに、その開状態にあるバルブを他のバルブに変更することにより、薬液供給管15に供給される薬液の温度を変更することができるようになっている。
【0060】
DIW供給管16には、複数のDIW供給源が接続されている。DIW供給管16には、複数のDIW供給源から互いに異なる温度のDIWが供給されるようになっている。これら複数のDIW供給源からDIW供給管16に供給されるDIWの温度は、それぞれ異なっている。各DIW供給源は、DIW供給管16に開閉バルブ45,46,47を介して接続されている。各開閉バルブ45,46,47は、コンピュータ33に制御対象として接続されている。DIW供給用の開閉バルブ45,46,47のうち1つのバルブだけを開状態にするとともに、その開状態にあるバルブを他のバルブに変更することにより、DIW供給管16に供給されるDIWの温度を変更することができるようになっている。
【0061】
また、データベース作成処理に際しては、スピンチャック4に、ウエハWに代えてダミーウエハDWが保持される。このダミーウエハDWは、その形状、サイズおよび材質が、ウエハWと共通している。
図9は、データベース作成処理の流れを示すフローチャートである。この実施形態では、データベース作成処理中に、放射検出値−熱電対検出値対応式38を作成するための対応式作成処理が実行される。
【0062】
データベース作成処理の開始に先立って、オペレータは、データベース作成処理における作成対象になる放射検出値−熱電対検出値対応式38に対応する処理液の種類、およびスピンチャック4の回転数を設定する。たとえばレシピ入力キー34の操作により、データベース作成処理における処理液の種類、処理液の供給流量(ノズル5から吐出される処理液の流量)、スピンチャック4の回転数などを設定することができるようになっている。
【0063】
なお、データベース作成処理におけるスピンチャック4の回転数は、洗浄処理において実際に使用される回転数(この実施形態では、たとえば、500rpm、700rpm、1000rpmなど)であることが望ましい。これにより、洗浄処理において実際に使用される回転数に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38を作成することができる。以下、オペレータが、データベース作成処理においてノズル5から吐出される処理液として薬液を設定し、また、データベース作成処理におけるスピンチャック4の回転数として1000rpmを設定した場合を例に挙げて説明する。
【0064】
データベース作成処理に際しては、搬送ロボット(図示せず)によって、処理室3にダミーウエハDWが搬入されてくる。
そして、ダミーウエハDWがスピンチャック4に保持されると、コンピュータ33は、スピンモータ8を駆動して、レシピ入力キー34の操作によって設定された回転数でスピンチャック4を回転させる(ステップS21)。スピンチャック4の回転に伴って、スピンチャック4に保持されたダミーウエハDWも、スピンチャック4と同じ回転数で回転される。
【0065】
さらに、コンピュータ33は、ノズル駆動機構13を制御してノズル5をダミーウエハDWの上方に移動させる。そして、ノズル5は、その吐出口がダミーウエハDWの上面の回転中心を向く位置で停止される。
ダミーウエハDWの回転数が設定された回転数まで達すると、コンピュータ33は、第1開閉バルブ17を開ける(ステップS22)。このとき、開閉バルブ40,41,42のうち所望の1つが開状態にされている。これにより、薬液供給源から所定の温度の薬液が薬液供給管15を通してノズル5に与えられ、ノズル5からダミーウエハDWの回転中心に向けて薬液が吐出される。ノズル5から吐出された薬液は、ダミーウエハDWの上面(表面)の回転中心に供給され、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ダミーウエハDWの上面を周縁部に向けて拡がる。そのため、ダミーウエハDWの上面の全域が薬液によって覆われる。すなわち、ダミーウエハDWの上面に薬液の液膜が形成される。
【0066】
そして、その薬液の液膜の表面温度が、放射温度計6によって検出される(ステップS23)。このとき、ダミーウエハDWの上面における回転軸線と周縁との間の所定の中間位置にある液膜の表面温度が検出対象になる。また、熱電対温度計21によって、ノズル5の管壁(ケーシング26)内を流通する薬液の温度が検出される(ステップS24)。この熱電対温度計21による測定時間(検出時間)として、当該熱電対温度計21の応答時間よりも十分に長い時間(たとえば、5分間)が設けられている。
【0067】
そして、測定時間が経過すると(ステップS25でYES)、放射温度計6による検出値と熱電対温度計21による検出値とが、そのときの処理液の種類およびそのときのダミーウエハDWの回転数に対応付けて、メモリ32の放射検出値−熱電対検出値対応データベース37に記憶される(ステップS26)。その後、コンピュータ33は、第1開閉バルブ17を閉じる(ステップS27)。このデータベース作成処理では、かかる放射温度計6および熱電対温度計21を用いた薬液の温度検出が、ノズル5から吐出される薬液の温度を変えて複数回(予め定められた回数)実行される。
【0068】
そして、放射温度計6および熱電対温度計21を用いた温度検出の回数が、予め定められた回数に達していない場合は(ステップS28でNO)、コンピュータ33は、開閉バルブ40,41,42のうち開状態のバルブ(たとえばバルブ40)を閉じ、他のバルブ(たとえばバルブ41)を開く。これにより、ノズル5から吐出される薬液の温度が変更される(ステップS29)。その後、ステップS22の処理に戻る。
【0069】
一方、放射温度計6および熱電対温度計21を用いた温度検出の回数が、予め定められた回数に達した場合は(ステップS28でYES)、CPU31は、放射検出値−熱電対検出値対応データベース37に記憶された放射検出値および熱電対検出値に基づいて、放射検出値−熱電対検出値対応式38を作成し(ステップS30)、その放射検出値−熱電対検出値対応式38をメモリ32に記憶する。その後、データベース作成処理は終了する。
【0070】
以上によりこの実施形態によれば、ノズル5から吐出されて、ウエハWの上面を流れる処理液の温度が、放射温度計6によって検出される。そして、この放射温度計6の検出値を、当該処理液に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38で補正して、当該処理液の温度が算出される。
ノズル5から実際に処理液を吐出させ、その処理液の温度を放射温度計6により検出したときの放射検出値が、当該処理液の温度を熱電対温度計21により測定したときの熱電対検出値に対応付けて、メモリ32に記憶されている。そして、このメモリ32に記憶された放射温度計6の検出値と、熱電対温度計21の検出値とに基づいて、当該処理液に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38が作成される。その放射検出値−熱電対検出値対応式38によって、放射温度計6の検出値を補正するので、これにより、処理液の温度を精度良く測定することができる。
【0071】
また、オペレータは、基板処理に処理不良が生じた場合、ログファイル36に記録されている算出値を参照する。これにより、処理不良の原因が処理液の温度異常にあるか否かを正確に把握することができる。
また、処理液の液膜の内部温度はウエハWの温度の影響を受けるので、厳密に言えば、ウエハW上の処理液の液膜の表面と、液膜の内部との間には温度差が生じている。この温度差は、ウエハWの回転数の変化に伴って変化する。なぜなら、ウエハWの回転数が変化すると、ウエハW上の処理液の液膜に作用する遠心力が変化し、これに伴って、処理液の液膜の厚みが変化するからである。また、ウエハWの回転数の変化に伴って、処理液の拡散速度や回転による風による放熱量も変化する。そして、液膜厚み、拡散速度および放熱量のバランスにより、ウエハW上の処理液の液膜の表面と液膜の内部との間に温度差が生じるものと考えられる。そのため、放射検出値−熱電対検出値対応式を、ウエハWの回転数を考慮したものにしておかないと、放射検出値がウエハW上における処理液の液膜内の温度から大きくずれるおそれがある。
【0072】
そこで、この実施形態では、メモリ32には、ノズル5から実際に処理液を吐出させ、その処理液の温度を放射温度計6により検出したときの放射検出値が、当該処理液の種類、当該処理液の温度を熱電対温度計21により測定したときの熱電対検出値、およびその処理液吐出時におけるダミーウエハDWの回転数(スピンチャック4の回転数)に対応付けて記憶されている。そして、放射検出値、処理液の種類、熱電対検出値およびダミーウエハDWの回転数に基づいて、処理液の種類およびウエハWの回転数の双方に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38が複数作成される。そして、洗浄処理においてノズル5から吐出される処理液の種類およびレシピ35に設定された回転数の双方に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38で放射検出値を補正し、処理液の温度を算出する。これにより、ウエハWの上面に供給される処理液の温度を、より一層精度良く測定することができる。
【0073】
図10は、本発明の第2実施形態に係る基板処理装置のメモリ32に記憶される放射検出値−熱電対検出値対応データベース51を示す図である。図10に示す放射検出値−熱電対検出値対応データベース51が、図4に示す放射検出値−熱電対検出値対応データベース37と相違する点は、ノズル5から実際に処理液を吐出させ、その処理液の温度を放射温度計6により検出したときの放射検出値が、当該処理液の種類、当該処理液の温度を熱電対温度計21により測定したときの熱電対検出値、およびノズル5から吐出される処理液の供給流量に対応付けてメモリ32に記憶されている点である。言い換えれば、放射検出値−熱電対検出値対応データベース51では、放射検出値および熱電対検出値が、データベース作成処理におけるダミーウエハDWの回転数(スピンチャック4の回転数)ではなく、データベース作成処理においてノズル5から吐出される処理液の供給流量に対応付けられている。たとえば、図10では、データベース作成処理における処理液の供給流量として、0.5L/min、1.0L/minまたは2.0L/minの3種類が例示されている。
【0074】
図11は、放射検出値−熱電対検出値対応データベース51の内容を表すグラフである。このグラフに示されるプロット(「▲」または「■」)は、放射検出値−熱電対検出値対応データベース51に記憶されている放射検出値(放射温度計検出値(x))と、熱電対検出値(熱電対検出値(y))との間の対応関係を表わしている。図11(a)は、処理液の供給流量がたとえば0.5L/minである場合を示し、図11(b)は、処理液の供給流量がたとえば2.0L/minである場合を示している。また、図11(a)および図11(b)の「▲」は、処理液として薬液が用いられる場合を示し、図11(a)および図11(b)の「■」は、処理液としてDIWが用いられる場合を示す。これらのプロットに近似する一次関数を、たとえば最小二乗法によって求め、熱電対検出値(y)を放射検出値(放射温度計検出値(x))の一次関数で表す。この一次関数式が、放射検出値−熱電対検出値対応式52である。この放射検出値−熱電対検出値対応式52は、処理液の種類および処理液の供給流量の双方に対応している。すなわち、メモリ32には、複数の放射検出値−熱電対検出値対応式52が記憶されており、各放射検出値−熱電対検出値対応式52は、処理液の所定の種類(薬液かDIW)および所定の処理液の供給流量に対応付けられている。放射検出値−熱電対検出値対応式52を表わす直線グラフを、図11(a)および図11(b)中にそれぞれ示す。図11(a)に太線で示すのが、処理液種類「薬液」および処理液の供給流量「0.5L/min」に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式52であり、図11(a)に細線で示すのが、処理液種類「DIW」および処理液の供給流量「0.5L/min」に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式52である。図11(b)に太線で示すのが、処理液種類「薬液」および処理液の供給流量「2.0L/min」に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式52であり、図11(b)に細線で示すのが、処理液種類「DIW」および処理液の供給流量「2.0L/min」に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式52である。
【0075】
図12は、第2実施形態に係る基板処理装置における処理液温度測定処理の流れを示すフローチャートである。
洗浄処理中は、ウエハWの上面に形成される処理液の液膜の表面温度が、放射温度計6によって検出される(ステップS41)。具体的には、ウエハWの上面における回転軸線と周縁との間の中間位置にある液膜の表面温度が、放射温度計6によって検出される。そして、CPU31は、放射温度計6から出力される検出値(放射検出値)を取得する(ステップS42)。また、CPU31は、レシピ35を参照し(ステップS43)、設定されている処理液の供給流量をチェックする。
【0076】
そして、CPU31は、メモリ32に記憶された複数の放射検出値−熱電対検出値対応式52のうち、洗浄処理においてノズル5から吐出される処理液の種類と、レシピ35に設定された供給流量(たとえば2.0L/min)との両方に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式52を取得する(ステップS44)。そして、この放射検出値−熱電対検出値対応式52を用いて検出値を補正して、処理液の温度を算出する(ステップS45)。この算出された温度が、処理液の温度として、ログファイル36に記憶される。
【0077】
ウエハW上の処理液の液膜の表面と液膜の内部との間に生じる温度差は、処理液の供給流量の変化に伴って変化する。なぜなら、ノズル5から吐出される処理液の供給流量が変化すると、処理液の液膜の厚みが変化するからである。そのため、放射検出値−熱電対検出値対応式を、処理液の供給流量を考慮したものにしておかないと、放射検出値がウエハW上における処理液の液膜内の温度から大きくずれるおそれがある。
【0078】
そこで、この第2実施形態では、メモリ32には、ノズル5から実際に処理液を吐出させ、その処理液の温度を放射温度計6により検出したときの放射検出値が、当該処理液の種類、当該処理液の温度を熱電対温度計21により測定したときの熱電対検出値、および当該処理液の供給流量に対応付けて記憶されている。そして、放射検出値、処理液の種類、熱電対検出値および供給流量に基づいて、処理液の種類および供給流量の両方に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式52が複数作成される。そして、洗浄処理においてノズル5から吐出される処理液の種類およびレシピ35に設定された供給流量の双方に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式52で放射検出値を補正して処理液の温度を算出する。これにより、処理液の温度を、より一層精度良く測定することができる。
【0079】
図13は、本発明の第3実施形態に係る基板処理装置60のプリディスペンスポッド61の断面図である。この第3実施形態において、図1〜図9に示す第1実施形態に示された各部に対応する部分には、図1〜図9と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。
このプリディスペンスポッド61は、図1に示すプリディスペンスポッド22に代えて用いられる。
【0080】
プリディスペンスポッド61は、有底のカップ62を備えている。カップ62は、その開口を上方に向けた状態で配置されている。カップ62は、円筒状の外壁部63と、外壁部63の下端縁部を覆う水平な底部64と、外壁部63の内側において底部64から上方に立ち上がった円筒状の内壁部65とを一体的に備えている。内壁部65の上端は、上下方向に関して、外壁部63の上端よりも低く形成されている。内壁部65の周囲は、外壁部63によって取り囲まれている。底部64の上面および内壁部65の内周によって、処理液を貯留するための貯留溝66が区画されている。貯留溝66の底部には、この貯留溝66に貯留された処理液を廃液設備(図示せず)に廃棄するための第1廃液管68が接続されている。第1廃液管68の途中部には、第1廃液管68を開閉するための廃液バルブ69が介装されている。また、底部64の上面、内壁部65の外周および外壁部63の内周によって、処理液を廃棄するための廃棄溝67が区画されている。廃棄溝67の底部には、この廃棄溝67に貯留された処理液を廃液設備(図示せず)に廃棄するための第2廃液管59が接続されている。
【0081】
廃液バルブ69が閉じられた状態で、ノズル5からプリディスペンスポッド61の貯留溝66に向けて処理液が吐出(排出)される。処理液は、貯留溝66に受け止められて、この貯留溝66に貯留される。そして、貯留溝66が満杯になると、貯留溝66から溢れた処理液が廃棄溝67に流れ込み、廃棄溝67の底部から第2廃液管59を通して廃液設備へと廃液される。また、廃液バルブ69が開かれると、貯留溝66に貯留されていた処理液が、第1廃液管68を通して廃液設備へと廃液される。
【0082】
熱電対温度計21のプローブ30はカップ62の(底部64の)の壁を貫通し、その先端部分が貯留溝66内に進入している。そして、貯留溝66に処理液が貯留された状態では、プローブ30の先端部分が処理液中に位置する。これにより、貯留溝66に貯留された処理液の温度を、熱電対温度計21によって検出することができる。そして、この熱電対温度計21の熱電対検出値が、放射検出値−熱電対検出値対応データベース37に格納される。
【0083】
この第3実施形態では、データベース作成処理における熱電対温度計21を用いた温度検出の対象は、プリディスペンスポッド61(の貯留溝66)に貯留された処理液である。データベース作成処理において、ダミーウエハDWへの処理液の吐出中は、ノズル5をスピンチャック4の上方に配置する必要がある。そして、ノズル5が、スピンチャック4の側方の退避位置にあるときだけ、プリディスペンスポッド61に向けて処理液を吐出(排出)することができる。そのため、この第3実施形態では、放射温度計6による処理液の温度検出と、熱電対温度計21による処理液の温度検出とを、同時に実行することはできない。そのため図9におけるダミーウエハDWの搬入に先立って、またはダミーウエハDWの搬入後に、退避位置にあるノズル5からプリディスペンスポッド61に向けて処理液が吐出(排出)される。プリディスペンスポッド61(の貯留溝66)に処理液が貯留され、この処理液の温度が熱電対温度計21を用いて検出される。
【0084】
図14は、第4実施形態に係る基板処理装置70の構成を示す模式図である。この第4実施形態において、図1〜図9に示す第1実施形態に示された各部に対応する部分には、図1〜図9と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。
基板処理装置70は、処理装置本体71と、処理液キャビネット72とを備えている。処理装置本体71には、ウエハWを1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理部73が複数(図14では2つのみ図示)備えられている。各基板処理部73は、スピンチャック4と、ノズル5と、放射温度計6と、カップ7とを備えている。
【0085】
処理液キャビネット72には、薬液原液供給源74,75と、希釈液供給源76,77と、基板処理部73と同数の処理液供給部78とが設けられている。
薬液原液供給源74は、薬液原液としてのアンモニア(NH4OH)を供給し、薬液原液供給源75は、薬液原液としての過酸化水素水(H2O2)を供給する。また、希釈液供給源76は、希釈液としての常温(第1温度。たとえば25℃)のDIW(低温処理液)を供給し、希釈液供給源77は、希釈液としての高温(第2温度。たとえば80℃)のDIW(高温処理液。図14に示す「HOT DIW」)を供給する。むろん、薬液原液および希釈液の種類および数は一例であり、別の種類の薬液原液および希釈液が用いられてもよい。なお、「原液」とは、混合部79で混合される前の薬液を意味するものとする。
【0086】
処理液供給部78は、基板処理部73に1対1に対応付けられており、対応する基板処理部73に、調整済みのSC1(薬液)を処理液として供給するものである。SC1とは、アンモニア過酸化水素水(APM:ammonia-hydrogen peroxide mixture)であり、アンモニア、過酸化水素水および水(DIW)を所定の混合比(たとえば、アンモニア:過酸化水素水:水=1:4:20)で混合して調製される薬液である。
【0087】
各処理液供給部78は、SC1を生成するための混合部79と、混合部79とノズル5との間に接続され、混合部79によって生成されたSC1をノズル5に供給するための処理液供給管80とを備えている。処理液供給管80の途中部には、処理液供給管80を開閉するための開閉バルブ99が介装されている。
各混合部79には、アンモニア供給管81、過酸化水素水供給管82、第1DIW供給管(第1処理液供給管)83および第2DIW供給管(第2処理液供給管)84が接続されている。アンモニア供給管81は、薬液原液供給源74に接続されたアンモニア集合管85に共通して分岐接続されている。各アンモニア供給管81の途中部には、アンモニア供給管81を開閉するための開閉バルブ89と、アンモニア供給管81を流通するアンモニアの流量を調節するためのアンモニア用流量調節バルブ90とが、混合部79側からこの順で介装されている。
【0088】
過酸化水素水供給管82は、薬液原液供給源75に接続された過酸化水素水集合管86に共通して分岐接続されている。各過酸化水素水供給管82の途中部には、過酸化水素水供給管82を開閉するための開閉バルブ91と、過酸化水素水供給管82を流通する過酸化水素水の流量を調節するための過酸化水素水用流量調節バルブ92とが、混合部79側からこの順で介装されている。
【0089】
第1DIW供給管83は、希釈液供給源76に接続された第1DIW集合管87に共通して分岐接続されている。各第1DIW供給管83の途中部には、第1DIW供給管83を開閉するための開閉バルブ93と、第1DIW供給管83を流通するDIWの流量を調節するための第1DIW用流量調節バルブ(流量比変更手段)94とが、混合部79側からこの順で介装されている。
【0090】
第2DIW供給管84は、希釈液供給源77に接続された第2DIW集合管88に共通して分岐接続されている。各第2DIW供給管84の途中部には、第2DIW供給管84を開閉するための開閉バルブ95と、第2DIW供給管84を流通するDIWの流量を調節するための第2DIW用流量調節バルブ(流量比変更手段)96とが、混合部79側からこの順で介装されている。
【0091】
第1DIW用流量調節バルブ94および第2DIW用流量調節バルブ96の開度をそれぞれ調節することにより、混合部79に導入される常温のDIWと高温のDIWとの間の流量比を調節することができ、これにより、混合部79で生成されるSC1の温度、すなわち、ノズル5から吐出されるSC1の温度を調節することができるようになっている。しかも、第1DIW用流量調節バルブ94の開度を所定量だけ拡げる(窄める)とともに、第2DIW用流量調節バルブ96の開度を同量だけ窄める(拡げる)ことにより、混合部79で生成されるSC1の混合比を変えずに、そのSC1の温度だけを変えることができる。
【0092】
図15は、基板処理装置70の電気的構成を示すブロック図である。基板処理装置70が、基板処理装置1と相違する点は、コンピュータ33に、開閉バルブ89,91,93,95,99、アンモニア用流量調節バルブ90、過酸化水素水用流量調節バルブ92、第1DIW用流量調節バルブ94および第2DIW用流量調節バルブ96が、制御対象として接続されている点である。
【0093】
また、コンピュータ33のメモリ32には、第1実施形態の場合と同様、複数の放射検出値−熱電対検出値対応式38が記憶されている。各放射検出値−熱電対検出値対応式38は、処理液の所定の種類(この場合、SC1)およびウエハWの所定の回転数に対応付けられている。
図16は、基板処理装置70における処理液供給動作の流れを示すフローチャートである。
【0094】
CPU31は、処理液の供給タイミングになると(ステップS51でYES)、第1DIW用流量調節バルブ94および第2DIW用流量調節バルブ96の開度を、レシピ35によって設定された処理液温度に基づく開度に制御する。さらに、CPU31は、開閉バルブ99を開く(ステップS52)。これにより、混合部79からの処理液が、処理液供給管80を通してノズル5に供給される。そして、ノズル5からウエハWの上面の回転中心に向けて処理液が吐出される。
【0095】
ノズル5から吐出された処理液は、ウエハWの上面(表面)の回転中心に供給され、ウエハWの回転による遠心力を受けて、ウエハWの上面を周縁部に向けて拡がる。そのため、ウエハWの上面の全域が処理液によって覆われる。すなわち、ウエハWの上面に処理液の液膜が形成される。そして、処理液の液膜の表面温度が放射温度計6によって検出される。また、CPU31は、放射検出値を、ノズル5から吐出される処理液の種類(薬液)と、レシピ35に設定された回転数との双方に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38によって補正して、ウエハWの上面に供給される処理液の温度を算出する(S53:処理液温度測定処理)。また、CPU31は、レシピ35を参照し、設定されている処理液温度をチェックする。
【0096】
そして、CPU31は、ステップS53における算出値が、レシピ35によって設定された処理液温度と相違していると(ステップS54でNO)、第1DIW用流量調節バルブ94および第2DIW用流量調節バルブ96の開度を調節して、レシピ35によって設定された処理液温度に算出値が近づくように制御する(ステップS55)。CPU31による第1DIW用流量調節バルブ94および第2DIW用流量調節バルブ96の開度の調節は、ステップS53における算出値がレシピ35によって設定された処理液温度と一致する(ステップS54でYES)まで継続して実行される。その後、放射温度計6による処理液の温度は、処理液の供給停止タイミング(具体的には、レシピ35により設定された処理液供給時間の満了)になると(ステップS56でYES)、CPU31は、開閉バルブ99を閉じる(ステップS57)。
【0097】
この第4実施形態によれば、第1DIW供給管83から混合部79に供給される常温のDIWと、第2DIW供給管84から混合部79に供給される高温のDIWとの間の流量比を変更することにより、ノズル5から吐出されるSC1の温度を調節することができる。放射検出値を補正した値に基づいて、混合部79に供給される常温のDIWと高温のDIWとの間の流量比を変更するので、ノズル5から吐出されるSC1を所望の温度に正確に保つことができる。
【0098】
また、複数の基板処理部73において、ウエハWの上面に、同じ液温に温度調節されたSC1を供給することができる。これにより、基板処理部73間における処理のばらつきを抑制または防止することができる。
図17は、本発明の第5実施形態に係る基板処理装置100の構成を示す模式図である。
【0099】
この第5実施形態において、図14〜図16に示す第4実施形態に示された各部に対応する部分には、図14〜図16と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。
第5実施形態に係る基板処理装置100が、第4実施形態に係る基板処理装置70と大きく相違する点は、処理液供給部78から基板処理部73に供給される処理液がSPMである点である。処理液キャビネット72は、薬液原液供給源74,75および希釈液供給源76,77に代えて、第1薬液原液としての硫酸(H2SO4)を供給する薬液原液供給源101と、第2薬液原液としての過酸化水素水(H2O2)を供給する薬液原液供給源102とを備えている。なお、「薬液原液」とは、混合部103で混合される前の薬液を意味するものとする。
【0100】
また、コンピュータ33のメモリ32には、第4実施形態の場合と同様、複数の放射検出値−熱電対検出値対応式38が記憶されている。各放射検出値−熱電対検出値対応式38は、処理液の所定の種類(この場合、SPM)およびウエハWの所定の回転数に対応付けられている。
各処理液供給部78は、SPMを生成するための混合部103と、混合部103とノズル5との間に接続され、混合部103によって生成された所定温度のSPMをノズル5に供給するための処理液供給管104とを備えている。処理液供給管104の途中部には、処理液供給管104を開閉するための開閉バルブ115が介装されている。
【0101】
混合部103には、硫酸供給管(第1薬液原液供給管)105および過酸化水素水供給管(第2薬液原液供給管)106が接続されている。硫酸供給管105は、薬液原液供給源101に接続された硫酸集合管107に共通して分岐接続されている。各硫酸供給管105の途中部には、硫酸供給管105を開閉するための開閉バルブ109と、硫酸供給管105を流通する硫酸の流量を調節するための硫酸用流量調節バルブ(流量比変更手段)110とが、混合部103側からこの順で介装されている。
【0102】
過酸化水素水供給管106は、薬液原液供給源102に接続された過酸化水素水集合管108に共通して分岐接続されている。各過酸化水素水供給管106の途中部には、過酸化水素水供給管106を開閉するための開閉バルブ111と、過酸化水素水供給管106を流通する過酸化水素水の流量を調節するための過酸化水素水用流量調節バルブ(流量比変更手段)112とが、混合部103側からこの順で介装されている。
【0103】
硫酸は、薬液原液供給源101において所定の高温(50℃)に温度調節されている。一方、過酸化水素水供給管106に供給される過酸化水素水は、常温(約25℃)程度の液温を有している。
開閉バルブ109が開かれると、硫酸供給管105からの硫酸が混合部103に流入する。また、開閉バルブ111が開かれると、過酸化水素水供給管106からの過酸化水素水が混合部103に流入する。混合部103内に流入した硫酸および過酸化水素水は混合される。この混合によって、硫酸と過酸化水素水とが十分に反応し、多量のペルオキソ一硫酸(H2SO5)を含むSPMが作成される。そして、開閉バルブ115が開かれると、混合部103で作成されたSPMは、ノズル5から吐出され、スピンチャック4に保持されたウエハWの上面に供給される。SPMは、硫酸と過酸化水素水との反応時に生じる反応熱により、硫酸の液温以上に昇温する。硫酸と過酸化水素水との混合比に依存するが、ウエハWの表面上では約80〜約130℃に達する。
【0104】
混合部103で生成されるSPMの温度は、硫酸と過酸化水素水との混合比、すなわち、硫酸供給管105を流通する硫酸と、過酸化水素水供給管106を流通する過酸化水素水との間の流量比に依存している。一般的に、硫酸と過酸化水素水との混合比は1:4程度であるが、これよりも過酸化水素水の混合割合を高めることにより、混合部103で生成されるSPMの温度は、この温度よりも高くなる。
【0105】
硫酸用流量調節バルブ110および過酸化水素水用流量調節バルブ112の開度をそれぞれ調節することにより、混合部103に導入される硫酸と過酸化水素水との間の流量比を調節することができ、これにより、混合部103で生成されるSPMの温度、すなわち、ノズル5から吐出されるSPMの温度を調節することができるようになっている。
SPMによるウエハWの処理時には、開閉バルブ109および開閉バルブ111が開かれて、ノズル5から回転中のウエハWの表面に向けてSPMが吐出される。SPMは、ウエハW上で遠心力を受け、ウエハWの全域へと拡がり、ウエハWの上面にSPMの液膜が形成される。そして、液膜の表面温度が放射温度計6によって検出される。また、CPU31は、放射検出値を、メモリ32に記憶された放射検出値−熱電対検出値対応式38によって補正して、ウエハWの上面に供給されるSPMの温度を算出する。また、CPU31は、レシピ35を参照し、設定されているSPMの温度を取得する。
【0106】
そして、CPU31は、放射検出値を補正した値が、レシピ35によって設定されたSPMの温度と相違していると、硫酸用流量調節バルブ110および過酸化水素水用流量調節バルブ112の開度を調節して、その補正値が、レシピ35によって設定されたSPMの温度に近づくように制御する。
この第5実施形態によれば、混合部103において、硫酸と過酸化水素水とを混合させてSPMが作成され、そのSPMが、ノズル5からウエハWに向けて吐出される。硫酸と過酸化水素水との組み合わせは、混合により発熱反応を生じさせるものであるので、硫酸供給管105から混合部103に供給される硫酸と、過酸化水素水供給管106から混合部103に供給される過酸化水素水との間の流量比を変更することにより、ノズル5から吐出されるSPMの温度を調節することができる。放射検出値を補正した値に基づいて、混合部103に供給される硫酸と過酸化水素水との間の流量比を調節するので、ノズル5から吐出されるSPMを所望の温度に正確に保つことができる。
【0107】
また、複数の基板処理部73において、ノズル5から吐出されるSPMの温度を共通にすることができる。これにより、基板処理部73間における処理のばらつきを抑制または防止することができる。
以上、この発明の5つの実施形態について説明してきたが、この発明は他の形態でも実施することができる。
【0108】
前述の第1〜第3実施形態では、ウエハWに供給される処理液として薬液およびDIWの2種類が用いられる場合を例にとって説明したが、複数種類の薬液がウエハWの上面に選択的に供給される場合であってもよい。その場合、その薬液の種類に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38がメモリ32に記憶される。
また、前述の第1〜第5実施形態において、常温のDIWおよび高温(たとえば80℃)のDIWのように処理液種類が同じで温度が大きく異なる場合は、異なる処理液として取り扱うことができる。この例では、常温のDIWに対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38および高温のDIWに対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38が、それぞれメモリ32に記憶される。また、処理液種類が同じであって、その濃度が大きく異なる場合も、異なる処理液として取り扱うことができる。
【0109】
また、前述の第1〜第5実施形態では、ウエハWに供給される処理液が1つのノズル5から吐出する場合を例にとって説明したが、処理液の種類に応じてノズルが個別に設けられていてもよい。
たとえば、前記の第4実施形態では、希釈液としてDIWを用いる場合を例にとって説明したが、DIWに限らず、炭酸水、イオン水、オゾン水、還元水(水素水)または磁気水などを希釈液として用いることもできる。
【0110】
また、第1〜第5実施形態において、放射検出値を補正した後の値に基づいて処理液の温度を常時監視しておき、その温度が予め定める温度範囲を逸脱した場合に、警報を出力することもできる。これにより、処理液の温度異常を精度良く検出することができ、処理不良の発生を抑制または防止することができる。
また、第1〜第5実施形態において、接触式温度計として、熱電対温度計21の他、抵抗温度計、サーミスタ温度計、半導体温度計などを例示することができる。また、放射温度計6は、赤外線放射温度計に限られず、検出対象から放射される可視光線の強度に基づいて検出対象の温度を検出するタイプのものであってもよい。
【0111】
また、第1、第3〜第5実施形態において、洗浄処理時に、メモリ32にレシピ35に設定された回転数に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38が記憶されていない場合には、当該回転数に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式38を、線形補完により求めることもできる。
また、第2実施形態において、洗浄処理時に、メモリ32にレシピ35に設定された供給流量に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式52が記憶されていない場合には、当該供給流量に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式52を、線形補完により求めることもできる。
【0112】
また、第1、第3〜第5実施形態において、データベース作成処理時における処理液の種類の設定やスピンチャック4の回転数の設定は、オペレータの操作により設定されるものでなく、メモリ22に、データベース作成処理時における処理液の種類やスピンチャック4の回転数が予め記憶されていてもよい。
また、第2実施形態において、データベース作成処理時における処理液の種類の設定や処理液の供給流量の設定は、オペレータの操作により設定されるものでなく、メモリ22に、データベース作成処理時における処理液の種類や処理液の供給流量が予め記憶されていてもよい。
【0113】
また、第1〜第5実施形態において、データベース作成処理時にスピンチャック4にダミーウエハDWでなくウエハWが保持されていてもよい。この場合、ノズル5から吐出された薬液によって、ウエハWの上面の全域が覆われる。そして、ウエハWの上面を流れる処理液の温度が放射温度計6によって検出され、この検出値がメモリ32の放射検出値−熱電対検出値対応データベース37,51に記憶されていてもよい。
【0114】
また、第1〜第5実施形態において、対応式作成処理が、データベース作成処理から独立して実行されていてもよい。たとえば、洗浄処理時中に、CPU31が、放射検出値−熱電対検出値対応データベース37に記憶された放射検出値および熱電対検出値に基づいて放射検出値−熱電対検出値対応式38を作成するものであってもよい。
また、第1〜第5実施形態において、メモリ32の放射検出値−熱電対検出値対応データベースに、ノズル5から実際に処理液を吐出させ、その処理液の温度を放射温度計6により検出したときの放射検出値が、当該処理液の種類、当該処理液の温度を熱電対温度計21により測定したときの熱電対検出値、その処理液吐出時におけるダミーウエハDW(ウエハW)の回転数、および処理液の吐出時における処理液の供給流量に対応付けて格納されていてもよい。そして、CPU31は、放射検出値−熱電対検出値対応データベースに記憶された放射検出値および熱電対検出値に基づいて、ダミーウエハDW(ウエハW)の回転数、およびその処理液の吐出時における処理液の供給流量に対応する放射検出値−熱電対検出値対応式を作成するものであってもよい。
【0115】
また、放射検出値を補正するための補正量は、放射検出値−熱電対検出値対応式に限らず、このような放射検出値−熱電対検出値対応式に対応したテーブルデータであってもよい。すなわち、補正前の放射検出値と補正後の放射検出値とを対応付けたテーブルデータを補正量として用いて、放射検出値の補正を行うようにしてもよい。さらに、放射検出値の補正は、一次関数によって行う必要もなく、放射検出値−熱電対検出値対応データベースに格納されたデータを近似可能な非線形関数に従って放射検出値を補正するようにしてもよい。
【0116】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0117】
1 基板処理装置
4 スピンチャック(基板保持手段)
5 ノズル
6 放射温度計
8 スピンモータ(基板回転手段)
15 薬液供給管
16 DIW供給管
17 第1開閉バルブ
18 第1流量調節バルブ
19 第2開閉バルブ
20 第2流量調節バルブ
21 熱電対温度計(接触式温度計)
22 プリディスペンスポッド(容器)
26 ケーシング(管壁)
31 CPU(補正量作成手段、処理液温度算出手段、流量比変更制御手段)
32 メモリ(記憶手段)
34 レシピ入力キー(回転数設定手段、流量設定手段)
37 放射検出値−熱電対検出値対応式(補正量)
60 基板処理装置
70 基板処理装置
79 混合部
80 処理液供給管
83 第1DIW供給管(第1処理液供給管)
84 第2DIW供給管(第2処理液供給管)
94 第1DIW用流量調節バルブ(流量比変更手段)
96 第2DIW用流量調節バルブ(流量比変更手段)
100 基板処理装置
103 混合部
105 硫酸供給管(第1薬液原液供給管)
106 過酸化水素水供給管(第2薬液原液供給管)
110 硫酸用流量調節バルブ(流量比変更手段)
112 過酸化水素水用流量調節バルブ(流量比変更手段)
W ウエハ(基板)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を用いて基板を処理する基板処理装置であって、
基板に処理液を供給するための処理液供給手段と、
前記処理液供給手段から基板に供給される処理液の温度を検出するための放射温度計と、
前記処理液供給手段から処理液を供給しつつ、その処理液の温度を前記放射温度計により検出したときの検出値を、前記処理液の現実の温度に対応付けて記憶した記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記検出値および前記現実の温度に基づいて、前記処理液の温度に関する補正量を作成する補正量作成手段と、
前記放射温度計の検出値を、前記補正量作成手段により作成された補正量によって補正して、前記処理液の温度を算出する処理液温度算出手段とを含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記処理液供給手段から基板に供給される処理液の温度を検出するための接触式温度計をさらに含み、
前記記憶手段は、前記処理液供給手段から処理液を供給しつつ、その処理液の温度を前記放射温度計により検出したときの検出値を、当該処理液の温度を接触式温度計により検出したときの検出値に対応付けて記憶した手段を含み、
前記補正量作成手段は、前記記憶手段に記憶された前記放射温度計の検出値および前記接触式温度計の検出値に基づいて、前記補正量を作成する手段を含む、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記処理液供給手段は、基板に向けて処理液を吐出するノズルを備えており、
前記接触式温度計は、前記ノズルの管壁内を流通する処理液の温度を検出するものである、請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記処理液供給手段は、基板に向けて処理液を吐出するノズルを備えており、
前記基板処理装置は、前記ノズルから吐出された処理液を受け止めるための容器をさらに含み、
前記接触式温度計は、前記容器に貯留された処理液の温度を検出するものである、請求項2記載の基板処理装置。
【請求項5】
基板を水平姿勢に保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持される基板を回転させる基板回転手段と、
前記基板回転手段によって回転される基板の回転数を設定するための回転数設定手段とをさらに含み、
前記記憶手段は、前記処理液供給手段から処理液を供給し、かつ前記基板回転手段により基板を回転させつつ、その処理液の温度を前記放射温度計により検出したときの検出値を、前記処理液の現実の温度、およびそのときの基板の回転数に対応付けて記憶した手段を含み、
前記補正量作成手段は、前記記憶手段に記憶された前記放射温度計の前記検出値、前記現実の温度、および前記回転数に基づいて、前記回転数設定手段によって設定された回転数に対応する前記補正量を作成する手段を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
基板を水平姿勢に保持する基板保持手段と、
前記処理液供給手段から供給される処理液の供給流量を設定するための供給流量設定手段とをさらに含み、
前記記憶手段は、前記処理液供給手段から処理液を供給しつつ、その処理液の温度を前記放射温度計により検出したときの検出値を、前記処理液の現実の温度、および前記処理液の供給流量に対応付けて記憶した手段を含み、
前記補正量作成手段は、前記記憶手段に記憶された前記放射温度計の前記検出値、前記現実の温度、および前記供給流量に基づいて、前記供給流量設定手段によって設定された処理液の供給流量に対応する前記補正量を作成する手段を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記処理液供給手段は、
基板に向けて処理液を吐出するためのノズルと、
第1温度の低温処理液を供給するための第1処理液供給管と、
前記第1温度よりも高い第2温度の高温処理液を供給するための第2処理液供給管と、
前記第1処理液供給管および前記第2処理液供給管に接続されて、前記第1処理液供給管からの前記低温処理液と、前記第2処理液供給管からの前記高温処理液とを混合した処理液を、前記ノズルに供給する混合部と、
前記混合部で生成された処理液を前記ノズルに供給する処理液供給管と、
前記第1処理液供給管から前記混合部に供給される低温処理液と、前記第2処理液供給管から前記混合部に供給される高温処理液との間の流量比を変更するための流量比変更手段とを含み、
前記基板処理装置は、前記処理液温度算出手段によって求められた温度に基づいて、前記供給流量比変更手段を制御する流量比変更制御手段をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記処理液供給手段は、
基板に向けて処理液を吐出するためのノズルと、
第1薬液原液を供給するための第1薬液原液供給管と、
第1薬液原液と異なる種別の第2薬液原液を供給するための第2薬液原液供給管と、
前記第1薬液原液供給管および前記2薬液原液供給管に接続されて、前記第1薬液原液からの第1薬液原液と、前記2薬液原液供給管からの第2薬液原液とを混合した処理液を、前記ノズルに供給する混合部と、
前記混合部で生成された処理液を前記ノズルに供給する処理液供給管と、
前記第1薬液原液供給管から前記混合部に供給される第1薬液原液と、前記第2薬液原液から前記混合部に供給される第2薬液原液との間の流量比を変更するための流量比変更手段とをさらに含み、
前記基板処理装置は、前記処理液温度算出手段によって求められた温度に基づいて、前記供給流量比変更手段を制御する流量比変更制御手段をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
基板に供給される処理液の温度を測定する処理液温度測定方法であって、
処理液供給手段から基板に供給される処理液の温度を、放射温度計を用いて検出する第1検出ステップと、
前記処理液供給手段から基板に処理液を供給する供給ステップと、
前記供給ステップと並行して実行され、前記処理液供給手段から基板に供給される処理液の温度を、前記放射温度計を用いて検出する第2検出ステップと、
前記処理液供給手段から基板に供給される処理液の温度を、接触式温度計を用いて検出する第3検出ステップと、
前記第2検出ステップにおける前記放射温度計の検出値を、前記第3検出ステップにおける前記接触式温度計の検出値に対応付けて記憶手段に記憶する記憶ステップと、
前記記憶手段に記憶された前記各検出値に基づいて、前記処理液供給手段から供給される処理液に対応する前記放射温度計の検出値の補正量を作成する補正量作成ステップと、
前記第1検出ステップにおける前記放射温度計の検出値を前記補正量によって補正して、当該処理液供給手段から供給される処理液の温度を算出する算出ステップとを含む、処理液温度測定方法。
【請求項10】
前記供給ステップと並行して実行され、基板を所定の回転数で回転させる回転ステップをさらに含み、
前記記憶ステップは、前記放射温度計による検出値を、前記接触式温度計による検出値および前記回転数に対応付けて前記記憶手段に記憶するステップを含み、
前記補正量作成ステップは、前記記憶手段に記憶された前記各検出値に基づいて、基板の回転数に対応する前記補正量を作成するステップを含む、請求項9記載の処理液温度測定方法。
【請求項11】
前記記憶ステップは、前記放射温度計による検出値を、前記接触式温度計による検出値、および前記供給ステップにおける前記処理液供給手段から供給される処理液の供給流量に対応付けて前記記憶手段に記憶するステップを含み、
前記補正量作成ステップは、前記記憶手段に記憶された前記各検出値に基づいて、処理液の供給流量に対応する前記補正量を作成するステップを含む、請求項9記載の処理液温度測定方法。
【請求項1】
処理液を用いて基板を処理する基板処理装置であって、
基板に処理液を供給するための処理液供給手段と、
前記処理液供給手段から基板に供給される処理液の温度を検出するための放射温度計と、
前記処理液供給手段から処理液を供給しつつ、その処理液の温度を前記放射温度計により検出したときの検出値を、前記処理液の現実の温度に対応付けて記憶した記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記検出値および前記現実の温度に基づいて、前記処理液の温度に関する補正量を作成する補正量作成手段と、
前記放射温度計の検出値を、前記補正量作成手段により作成された補正量によって補正して、前記処理液の温度を算出する処理液温度算出手段とを含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記処理液供給手段から基板に供給される処理液の温度を検出するための接触式温度計をさらに含み、
前記記憶手段は、前記処理液供給手段から処理液を供給しつつ、その処理液の温度を前記放射温度計により検出したときの検出値を、当該処理液の温度を接触式温度計により検出したときの検出値に対応付けて記憶した手段を含み、
前記補正量作成手段は、前記記憶手段に記憶された前記放射温度計の検出値および前記接触式温度計の検出値に基づいて、前記補正量を作成する手段を含む、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記処理液供給手段は、基板に向けて処理液を吐出するノズルを備えており、
前記接触式温度計は、前記ノズルの管壁内を流通する処理液の温度を検出するものである、請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記処理液供給手段は、基板に向けて処理液を吐出するノズルを備えており、
前記基板処理装置は、前記ノズルから吐出された処理液を受け止めるための容器をさらに含み、
前記接触式温度計は、前記容器に貯留された処理液の温度を検出するものである、請求項2記載の基板処理装置。
【請求項5】
基板を水平姿勢に保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持される基板を回転させる基板回転手段と、
前記基板回転手段によって回転される基板の回転数を設定するための回転数設定手段とをさらに含み、
前記記憶手段は、前記処理液供給手段から処理液を供給し、かつ前記基板回転手段により基板を回転させつつ、その処理液の温度を前記放射温度計により検出したときの検出値を、前記処理液の現実の温度、およびそのときの基板の回転数に対応付けて記憶した手段を含み、
前記補正量作成手段は、前記記憶手段に記憶された前記放射温度計の前記検出値、前記現実の温度、および前記回転数に基づいて、前記回転数設定手段によって設定された回転数に対応する前記補正量を作成する手段を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
基板を水平姿勢に保持する基板保持手段と、
前記処理液供給手段から供給される処理液の供給流量を設定するための供給流量設定手段とをさらに含み、
前記記憶手段は、前記処理液供給手段から処理液を供給しつつ、その処理液の温度を前記放射温度計により検出したときの検出値を、前記処理液の現実の温度、および前記処理液の供給流量に対応付けて記憶した手段を含み、
前記補正量作成手段は、前記記憶手段に記憶された前記放射温度計の前記検出値、前記現実の温度、および前記供給流量に基づいて、前記供給流量設定手段によって設定された処理液の供給流量に対応する前記補正量を作成する手段を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記処理液供給手段は、
基板に向けて処理液を吐出するためのノズルと、
第1温度の低温処理液を供給するための第1処理液供給管と、
前記第1温度よりも高い第2温度の高温処理液を供給するための第2処理液供給管と、
前記第1処理液供給管および前記第2処理液供給管に接続されて、前記第1処理液供給管からの前記低温処理液と、前記第2処理液供給管からの前記高温処理液とを混合した処理液を、前記ノズルに供給する混合部と、
前記混合部で生成された処理液を前記ノズルに供給する処理液供給管と、
前記第1処理液供給管から前記混合部に供給される低温処理液と、前記第2処理液供給管から前記混合部に供給される高温処理液との間の流量比を変更するための流量比変更手段とを含み、
前記基板処理装置は、前記処理液温度算出手段によって求められた温度に基づいて、前記供給流量比変更手段を制御する流量比変更制御手段をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記処理液供給手段は、
基板に向けて処理液を吐出するためのノズルと、
第1薬液原液を供給するための第1薬液原液供給管と、
第1薬液原液と異なる種別の第2薬液原液を供給するための第2薬液原液供給管と、
前記第1薬液原液供給管および前記2薬液原液供給管に接続されて、前記第1薬液原液からの第1薬液原液と、前記2薬液原液供給管からの第2薬液原液とを混合した処理液を、前記ノズルに供給する混合部と、
前記混合部で生成された処理液を前記ノズルに供給する処理液供給管と、
前記第1薬液原液供給管から前記混合部に供給される第1薬液原液と、前記第2薬液原液から前記混合部に供給される第2薬液原液との間の流量比を変更するための流量比変更手段とをさらに含み、
前記基板処理装置は、前記処理液温度算出手段によって求められた温度に基づいて、前記供給流量比変更手段を制御する流量比変更制御手段をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
基板に供給される処理液の温度を測定する処理液温度測定方法であって、
処理液供給手段から基板に供給される処理液の温度を、放射温度計を用いて検出する第1検出ステップと、
前記処理液供給手段から基板に処理液を供給する供給ステップと、
前記供給ステップと並行して実行され、前記処理液供給手段から基板に供給される処理液の温度を、前記放射温度計を用いて検出する第2検出ステップと、
前記処理液供給手段から基板に供給される処理液の温度を、接触式温度計を用いて検出する第3検出ステップと、
前記第2検出ステップにおける前記放射温度計の検出値を、前記第3検出ステップにおける前記接触式温度計の検出値に対応付けて記憶手段に記憶する記憶ステップと、
前記記憶手段に記憶された前記各検出値に基づいて、前記処理液供給手段から供給される処理液に対応する前記放射温度計の検出値の補正量を作成する補正量作成ステップと、
前記第1検出ステップにおける前記放射温度計の検出値を前記補正量によって補正して、当該処理液供給手段から供給される処理液の温度を算出する算出ステップとを含む、処理液温度測定方法。
【請求項10】
前記供給ステップと並行して実行され、基板を所定の回転数で回転させる回転ステップをさらに含み、
前記記憶ステップは、前記放射温度計による検出値を、前記接触式温度計による検出値および前記回転数に対応付けて前記記憶手段に記憶するステップを含み、
前記補正量作成ステップは、前記記憶手段に記憶された前記各検出値に基づいて、基板の回転数に対応する前記補正量を作成するステップを含む、請求項9記載の処理液温度測定方法。
【請求項11】
前記記憶ステップは、前記放射温度計による検出値を、前記接触式温度計による検出値、および前記供給ステップにおける前記処理液供給手段から供給される処理液の供給流量に対応付けて前記記憶手段に記憶するステップを含み、
前記補正量作成ステップは、前記記憶手段に記憶された前記各検出値に基づいて、処理液の供給流量に対応する前記補正量を作成するステップを含む、請求項9記載の処理液温度測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−211092(P2011−211092A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79525(P2010−79525)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
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