説明

基板処理装置および原料補充方法

【課題】固体原料を使用する基板処理装置において、原料供給用タンクを装置から外すことなく原料供給用タンクに原料を補充することができる基板処理装置および原料補充方法を提供する。
【解決手段】固体原料を保持する第1の原料容器270と、該第1の原料容器と第1の配管を介して接続され固体原料が補充される第2の原料容器260と、該第2の原料容器と処理室を接続する第2の配管230と、少なくとも第1の原料容器及び第1の配管を加熱可能な加熱手段283と、少なくとも第1の原料容器及び第2の原料容器の内部の圧力を調整可能な圧力調整手段とを設け、第1の原料容器から第2の原料容器へ固体原料を補充する際には、固体原料を気体原料へ変態させて補充するように加熱手段及び圧力調整手段を制御するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の基板を処理するための基板処理装置および基板処理装置の原料タンクに原料を補充する原料補充方法に関し、例えば半導体ウエハに対して絶縁膜の形成、ドーパントの拡散、アニールあるいはCVVなどの熱処理を行う基板処理装置に利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハの表面に薄膜を形成する場合、内部にウエハ載置部を備えた反応炉を有する基板処理装置が使用される。反応炉には原料ガス等を導入するパイプが結合されており、原料を収納した原料供給用タンクからパイプを経由して原料ガスが反応炉内に導入される。
【0003】
従来、基板処理装置による薄膜形成でAlCl3のような常温において固体である物質を原料として使用し外部より反応炉内へ供給する場合、固体原料を収納したタンクを設け、該タンク内で原料を昇華させ、パイプを通して反応炉へ原料ガスとして供給するようにしており、原料が固体の場合には、原料供給用タンクへ原料を補充する手段がなかった。
【0004】
そのため、原料供給用タンク内の固体原料がなくなると、空になった原料供給用タンクを装置から外して固体原料が充分に充填されている原料供給用タンクと交換することが行なわれている。なお、原料ガスを外部より反応炉内に供給してウエハ表面に成膜を行なうことが可能な基板処理装置に関する発明としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。
【特許文献1】特開2007−42703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来技術にあっては、原料供給用タンクの交換のために空になった原料供給用タンクを基板処理装置から外した際に、供給用パイプ内に大気(空気)が入り込んで原料ガスが汚染され、成膜再開直後のカセットのウエハが不良となるおそれがある。また、交換の際に供給用パイプ内に残留する原料ガスが大気中へ漏れ出すため、原料物質が生物にとって有害な物質である場合には環境汚染が発生するおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、固体原料を使用する基板処理装置において、原料供給用タンクを装置から外すことなく原料供給用タンクに原料を補充することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するため、基板を収容可能な処理室と、前記基板への処理に用いる気体原料を、固体原料を昇華させて生成し、前記処理室へ供給する原料供給システムと、制御部と、を有する基板処理装置であって、前記原料供給システムは、前記固体原料を保持する第1の原料容器と、前記第1の原料容器と第1の配管を介して接続され、前記第1の原料容器から前記固体原料が補充される第2の原料容器と、前記第2の原料容器と前記処理室を接続する第2の配管と、少なくとも前記第1の原料容器及び前記第1の配管を加熱可能な加熱手段と、少なくとも前記第1の原料容器及び前記第2の原料容器の内部の圧力を調整可能な圧力調整手段と、を有し、前記制御部は、前記第1の原料容器から前記第2の原料容器へ前記固体原料を補充する際には、前記固体原料を前記気体原料へ変態させて補充するように前記加熱手段及び前記圧力調整手段を制御するようにしたものである。
【0008】
ここで、前記固体原料を前記気体原料へ変態させる際の前記第1の原料容器の加熱温度と前記第1の配管の加熱温度は同一であって、前記固体原料の昇華温度以上とするのが望ましい。また、前記第1の原料容器と前記第2の原料容器とは、前記第1の配管の他に第3の配管によっても接続されるように構成すると良い。これにより、第2の原料容器での未捕集の原料を第1の原料容器へ回収することが可能となる。なお、前記第1の配管は前記第1の原料容器と前記第2の原料容器の上面に接続され、前記第3の配管は前記第1の原料容器と前記第2の原料容器の下面に接続された構成とすることができる。
【0009】
さらに、望ましくは、前記第1の原料容器は、内部に第1の原料容器から第1の配管を介して供給される気体原料を捕集するための構造を形成する隔壁を有するように構成する。そして、その最適な構造はラビリンス構造である。また、第2の原料容器には1バッチのウエハの処理に必要な量の固体原料が保持され、1バッチのウエハの処理が終了するごとに第1の原料容器から第2の原料容器へ固体原料を補充するようにするのが望ましい。その他の望ましい実施の形態は、以下の説明で明らかにされる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、固体原料を使用する基板処理装置において、原料供給用タンクを装置から外すことなく原料供給用タンクに原料を補充することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
本発明を実施するための最良の形態において、基板処理装置は、一例として、半導体装置(IC)の製造方法における処理工程を実施する半導体製造装置として構成されている。尚、以下の説明では、基板処理装置として基板に酸化、拡散処理やCVD処理などを行なう縦型の装置(以下、単に処理装置という)を適用した場合について述べる。図1には、本発明が適用された基板処理装置の一実施形態が斜透視図として示されている。
【0013】
図1に示されている基板処理装置100は、単結晶シリコン等からなる被処理基板としてのウエハ(基板)200を収納するウエハキャリアとしてのカセット110および反応炉としての処理炉202を有する筐体111を備えている。筐体111の正面壁111aの下方にはメンテナンス可能なように設けられた開口部としての正面メンテナンス口103が開設され、この正面メンテナンス口を開閉する正面メンテナンス扉が建て付けられている。メンテナンス扉には、カセット搬入搬出口が筐体111内外を連通するように開設されており、カセット搬入搬出口は開閉機構であるフロントシャッタによって開閉されるようになっている。カセット搬入搬出口に対応して筐体111内側にはカセットステージ(基板収容器受渡し台)114が設置されている。ウエハを収納したカセット110は、図示しない工程内搬送装置によってカセットステージ114上に搬入され、かつまた、カセットステージ114上から搬出されるようになっている。
【0014】
また、カセットステージ114は、工程内搬送装置によって、カセット110内のウエハ200が垂直姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように載置される。さらに、カセットステージ114は、カセット110を筐体後方へ右回り縦方向に90°回転し、カセット110内のウエハ200が水平姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が筐体後方を向くように動作可能に構成されている。
【0015】
筐体111内の前後方向の略中央部には、カセット棚(基板収容器載置棚)105が設置されており、カセット棚105は複数段複数列にて複数個のカセット110を保管するように構成されている。カセット棚105にはウエハ移載機構125の搬送対象となるカセット110が収納される移載棚123が設けられている。また、カセットステージ114の上方には予備カセット棚107が設けられ、予備的にカセット110を保管するように構成されている。
【0016】
カセットステージ114とカセット棚105との間には、カセット搬送装置118が設置されている。カセット搬送装置118は、カセット110を保持したまま昇降可能なカセットエレベータ(基板収容器昇降機構)118aと搬送機構としてのカセット搬送機構118bとで構成されており、カセットエレベータ118aとカセット搬送機構118bとの連続動作により、カセットステージ114、カセット棚105、予備カセット棚107との間で、カセット110を搬送するように構成されている。
【0017】
カセット棚105の後方には、ウエハ移載機構125が設置されており、ウエハ移載機構125は、ウエハ200を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置125aおよびウエハ移載装置125aを昇降させるためのウエハ移載装置エレベータ(基板移載装置昇降機構)125bとで構成されている。ウエハ移載装置エレベータ125bは、耐圧筐体111の右側端部に設置されている。これら、ウエハ移載装置エレベータ125bおよびウエハ移載装置125aの連続動作により、ウエハ移載装置125aのツイーザ(基板保持体)をウエハ200の載置部として、ボート(基板保持具)217に対してウエハ200を装填(チャージング)および脱装(ディスチャージング)するように構成されている。
【0018】
筐体111の後部上方には、処理炉202が設けられている。処理炉202の下端部は、炉口シャッタ(炉口開閉機構)147により開閉されるように構成されている。
【0019】
処理炉202の下方にはボート217を処理炉202に昇降させる昇降機構としてのボートエレベータ115が設けられ、ボートエレベータ115の昇降台に連結された連結具としてのアーム128には蓋体としてのシールキャップ219が水平に据え付けられており、シールキャップ219はボート217を垂直に支持し、処理炉202の下端部を閉塞可能なように構成されている。
【0020】
ボート217は複数本の保持部材を備えており、複数枚(例えば、50枚〜150枚程度)のウエハ200をその中心を揃えて垂直方向に整列させた状態で、それぞれ水平に保持するように構成されている。
【0021】
図1に簡略化して示されているように、カセット棚105の上方には、清浄化した雰囲気であるクリーンエアを供給するよう供給ファン及び防塵フィルタで構成されたクリーンユニット134aが設けられておりクリーンエアを前記筐体111の内部に流通させるように構成されている。
【0022】
また、図1に簡略化して示されているように、ウエハ移載装置エレベータ125bおよびボートエレベータ115側と反対側である筐体111の左側端部には、クリーンエアを供給するよう供給ファンおよび防塵フィルタで構成されたクリーンユニット134bが設置されており、クリーンユニット134bから吹き出されたクリーンエアは、ウエハ移載装置125a、ボート217を流通した後に、図示しない排気装置に吸い込まれて、筐体111の外部に排気されるようになっている。
【0023】
次に、本実施形態の基板処理装置の動作について説明する。
【0024】
図1に示されているように、カセット110がカセットステージ114に供給されるに先立って、カセット搬入搬出口がフロントシャッタによって開放される。その後、カセット110はカセット搬入搬出口から搬入され、カセットステージ114の上にウエハ200が垂直姿勢であって、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように載置される。その後、カセット110は、カセットステージ114によって、カセット110内のウエハ200が水平姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が筐体後方を向くように、筐体後方へ右回り縦方向に90°回転させられる。
【0025】
次に、カセット110は、カセット棚105ないし予備カセット棚107の指定された棚位置へカセット搬送装置118によって自動的に搬送されて受け渡され、一時的に保管された後、カセット棚105ないし予備カセット棚107からカセット搬送装置118によって移載棚123に移載されるか、もしくは直接移載棚123に搬送される。
【0026】
カセット110が移載棚123に移載されると、ウエハ200はカセット110からウエハ移載装置125aのツイーザによってウエハ出し入れ口を通じてピックアップされ、後方にあるボート217に装填(チャージング)される。ボート217にウエハ200を受け渡したウエハ移載装置125aは移載棚123上のカセット110に戻り、次のウエハ200をボート217に装填する。
【0027】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217に装填されると、炉口シャッタ147によって閉じられていた処理炉202の下端部が、炉口シャッタ147によって開放される。続いて、ウエハ200群を保持したボート217はシールキャップ219がボートエレベータ115によって上昇されることにより、処理炉202内へ搬入(ローディング)されて行く。
【0028】
ローディング後は、処理炉202にてウエハ200に成膜など所定の処理が実施される。処理後は、上述の逆の手順で、ウエハ200がカセット110に戻されてから筐体111の外部へ搬出される。
【0029】
図2〜図4は、本実施形態の基板処理装置で用いられる縦型の処理炉202の概略構成図であり、図2は処理炉の縦断面図、図3は処理炉の横断面図、図4は処理炉のノズルを説明するための図で、(A)は概略図、(B)は部分拡大図である。
【0030】
この実施例の処理炉202は、加熱装置(加熱手段)としてのヒータ207の内側に、被処理基板であるウエハ200を収納する反応容器としての反応管203が設けられ、この反応管203の下端には、例えばステンレス等よりなるマニホールド209が係合されている。さらに、反応管203の下端開口は蓋体であるシールキャップ219により気密部材であるOリング220を介して気密に閉塞され、少なくとも、反応管203、マニホールド209、及びシールキャップ219により処理室201が形成されている。
【0031】
マニホールド209は、保持部材としてのヒータベース221に固定されている。反応管203の下端部およびマニホールド209の上部開口端部には、それぞれ環状のフランジが設けられ、これらのフランジ間には気密部材(以下Oリング)220が配置され、両者の間は気密にシールされている。
【0032】
シールキャップ219には、ボート支持台218を介して基板保持部材としてのボート217が立設され、ボート支持台218はボート217を保持する保持体となっている。そして、ボート217はボート支持台218に支持された状態で保持処理室201に挿入される。ボート217には、バッチ処理される複数のウエハ200が水平姿勢で管軸方向に多段に積載される。ヒータ207は処理室201に挿入されたウエハ200を所定の温度に加熱する。
【0033】
処理室201へは複数種類、ここでは2種類のガスを供給する供給経路としての2本のガス供給管232a、232bが設けられている。ガス供給管232a、232bの端部は、マニホールド209の下部を貫通するように設けられており、ガス供給管232bは、処理室201内でガス供給管232aと合流して、2本のガス供給管232a、232bが一本の多孔ノズル233の下端部に連通されている。ノズル233は、処理室201内にほぼ垂直に設けられ、その上端部は、ガス供給管232bから供給される原料ガスの分解温度以上の領域に延在するように配置されている。
【0034】
一方、ガス供給管232bが処理室201内でガス供給管232aと合流する箇所は、原料ガスの分解温度未満の領域であり、ウエハ200およびウエハ付近の温度よりも低い温度の領域である。ここでは、第1のガス供給管232aからは、流量制御手段としての第1のマスフローコントローラ241及び開閉弁である第1のバルブ251を介し、更に後述する処理室201内に設置された多孔ノズル233を通して、処理室201に反応ガスとして例えばオゾン(O3)が供給される。オゾンガスを供給しているのは、AlO膜を成膜する場合を想定しているためであり、オゾンガスの代わりに、H2OやH2+CO2ガス等を供給しても良い。
【0035】
また、第2のガス供給管232bの他端には、固体原料を収納した原料供給用タンク260が接続されており、この原料供給用タンク260で昇華された原料ガスとして例えばAlCl3ガスが第2のバルブ252、及び、先に述べた多孔ノズル233を介して処理室201上部に供給される。原料供給用タンク260からマニホールド209までのガス供給管232bには、再固化による管内壁への原料の付着を防止するため、ヒータ281が巻回され、ガス供給管232bを加熱可能に構成されている。ガス供給管232bの途中には、不活性ガスのライン232cが開閉バルブ253を介して第2のバルブ252の下流側に接続され、ガス供給管232aの途中には、不活性ガスのライン232dが開閉バルブ254を介して第1のバルブ251の下流側に接続されている。
【0036】
さらに、原料供給用タンク260には、原料補充用配管230を介して原料補充用タンク270が接続され、原料補充用配管230の途中には開閉バルブ250が設けられているとともに、原料供給用タンク260および原料補充用タンク270には加熱用のヒータ282,283が設けられている。また、原料補充用タンク270には、途中に開閉バルブ257を有する排気管236が接続され排気管236の他端は真空ポンプ246に接続されており、真空ポンプ246によって原料補充用タンク270内を減圧することができるように構成されている。
【0037】
なお、原料供給用タンク260にも、途中に開閉バルブを有し他端が真空ポンプ246が接続された排気管を接続するように構成しても良い。また、原料供給用タンク260と原料補充用タンク270との間には1本の配管230のみ設けるようにしても良いが、原料供給用タンク260内に残留した原料を原料補充用タンク270に回収するための回収用配管235とバルブ256を別途設けるように構成しても良い。その場合、配管230は原料供給用タンク260と原料補充用タンク270の上面に接続し、配管235は原料供給用タンク260と原料補充用タンク270の下面に接続するとよい。さらに、これらの配管230,235の周囲にもヒータを設けるのが望ましい。
【0038】
処理室201は、ガスを排気するガス排気管231により開閉バルブ255を介して排気手段である真空ポンプ246に接続され、真空排気可能に構成されている。尚、このバルブ255は弁を開閉して処理室201の真空排気・真空排気停止ができる上、弁開度を調節して圧力を調整することが可能な開閉弁である。
【0039】
ノズル233は、反応管203の下部より上部にわたりウエハ200の積載方向に沿って配設されている。そして、このノズル233には、図4に示すように、ガスを放出する複数のガス供給孔238bが設けられている。
【0040】
反応管203内の中央部には複数枚のウエハ200を多段に同一間隔で載置するボート217が設けられており、このボート217はボートエレベータ機構115(図1参照)により反応管203に出入りできるようになっている。また処理の均一性を向上する為にボート217を回転するための回転装置(回転手段)であるボート回転機構227が設けてあり、このボート回転機構227によってボート支持台218に保持されたボート217を回転するようになっている。
【0041】
制御部(制御手段)であるコントローラ280は、マスフローコントローラ241、第1,第2のバルブ251、252、開閉バルブ250、253、254、255、ヒータ207、真空ポンプ246、ボート回転機構227、図示省略のボート昇降機構に接続されており、マスフローコントローラ241の流量調整、第1,第2のバルブ251、252、開閉バルブ250、253、254の開閉動作、開閉バルブ255の開閉及び圧力調整動作、ヒータ207の温度調節、真空ポンプ246の起動・停止、ボート回転機構227の回転速度調節、ボート昇降機構の昇降動作制御等が行われる。
【0042】
ここで、上記原料供給用タンク260の好適な構造および材質について説明する。図5および図6に、原料供給用タンク260の構造の一例が示されている。このうち、図5はタンクの内部構造の概念を示す正面断面図、図6は一部分解斜視図である。
【0043】
図5に示すように、この実施例の原料供給用タンク260は、密閉容器261内に隔壁262a,262b,262cを設けたラビリンス構造を有し、容器261の周囲には恒温槽263が設けられている。尚、ラビリンス構造とすることで、捕集しやすく(表面積を増加させるため)且つ放出しやすくなるという効果が得られる。図示しないが恒温槽263はヒータおよび冷却パイプを備えている。密閉容器261の上蓋261aには配管230と232bの端部が貫通するように接続されており、配管230より導入されたガスは隔壁262a,262b,262cによって形成される迷路を蛇行しながら移動する間に再固化して容器内に捕集されるようになっている。上蓋261aと側壁との間はOリング264によってシールされている。図5のような隔壁262a,262b,262cを容器内に設ける代わりに、図6のように径の異なる円筒状の隔壁262で段差を有する渦巻状の流路を形成した構造としても良い。
【0044】
原料供給用タンク260の材質は収納する原料や使用温度、耐久性等によって異なる。例えば、原料としてAlCl3(塩化アルミニウム)を収納し最大温度160℃まで保証すれば良い場合には、タンクの側壁及び底壁をアルミ製とし、蓋をSUS(ステンレス)製、Oリング264として樹脂製のものを使用して構成することができる。
【0045】
側壁及び底壁をアルミ製としているのは、配管230より導入されたAlCl3ガスが分解してClが壁面に付着して反応しても生成されるのはAlCl3となるためである。ただし、容器全体がアルミ製であると強度が不足するため、蓋はステンレス製とするのが望ましい。許容最大温度が160℃であるのは、OリングにH2Oが付着していた場合、AlCl3が分解してHClが生成され、OリングがHClによって腐食されてガス漏れが生じるおそれがあるためである。
【0046】
アルミ製の側壁や樹脂製のOリングを使用する代わりに、容器全体及びOリングとしてすべてSUS(ステンレス)製のものを使用してタンクを構成することも可能である。その場合、最大使用温度は220℃となる。
【0047】
次に、上記原料供給用タンク260が空になった場合の固体原料の補充の手順を、図7を用いて説明する。
【0048】
原料供給用タンク260へ原料を補充する場合、バルブ250を開いた状態で、まず原料供給用タンク260および原料補充用タンク270内を常温にて減圧する(ステップS1)。減圧時の温度範囲は20〜40℃であって、最適値は30℃である。また、減圧後のタンク内圧力の範囲は共に4〜6torrであって、最適値は5torrである。
【0049】
続いて、原料補充用タンク270および配管230を加熱してタンク内温度を上昇させる(ステップS2)。タンク270の目標温度は190〜200℃であって、最適値は190℃である。一方、原料供給用タンク260は加熱せずに、減圧時と同じ温度範囲は20〜40℃を保持する。タンク260の温度の最適値は30℃である。また、加熱中のタンク内圧力範囲は共に4〜6torrであって、最適値は5torrである。
【0050】
次に、上記ステップS2で昇温した状態を保持して、原料補充用タンク270内の原料(AlCl3)を昇華させる(ステップS3)。すると、原料の昇華によってタンク270内の圧力が上昇する。昇華中のタンク270の温度範囲は190〜200℃であって、最適値は190℃である。また、昇華中のタンク内圧力の範囲は900〜1050torrであって、最適値は950torrである。一方、原料補充用タンク270の加熱中の原料供給用タンク260は同じ温度範囲20〜40℃を保持する。タンク260の温度の最適値は30℃である。また、タンク270の加熱中のタンク260内は減圧状態4〜6torrを保持する。タンク260内の圧力の最適値は5torrである。
【0051】
上記状態を保持すると、原料補充用タンク270内で昇華して発生した原料ガスが配管230を通って原料供給用タンク260へ移動し、低温の原料供給用タンク260内で再固化して捕集される(ステップS4)。この間、タンク260内の圧力は当初4〜6torr、最適値5torrであり、その後ガスの導入と共に高くなる。その後、原料補充用タンク270内の圧力と原料供給用タンク260内の圧力とが平衡状態となって、原料供給用タンク260への原料の捕集が一旦完了する(ステップS5)。
【0052】
次に、バルブ250を開いたまま原料補充用タンク270の温度を降下させる(ステップS6)。降温中のタンク270の目標温度範囲は20〜40℃であって、最適値は30℃である。この間、タンク270と260内の圧力は同一のまま徐々に低下する。そして、原料補充用タンク270の温度が目標の温度範囲20〜40℃、最適値30℃に下がった時点で配管230の途中のバルブ250を閉じ、代わって回収用配管235の途中のバルブ256を開いてタンク260内の未捕集の原料ガスを原料補充用タンク270に回収する(ステップS7)。その後、原料供給用タンク260内が所望の充填量に達するまで上記ステップS2〜S7を繰り返し実行して終了する。
【0053】
なお、上記回収用配管235を設けない設備では、ステップS2〜S6を繰り返してタンク260への原料の補充を行なうようにしても良い。原料供給用タンク260への原料の1回の補充は、最低限、1バッチのウエハに所望の成膜を行なえるだけの量の原料を充填できるようにするのが望ましい。従って、ステップS1〜S7の1回の実行で所望量の原料の充填が可能な場合にはステップS2〜S7を繰り返さなくてもよい。
【0054】
原料としてのAlCl3は常温、大気圧では固体状態であり、その昇華曲線(温度−蒸気圧特性)は図8に示すようになる。上記ステップS2,S3における原料補充用タンク270の加熱、減圧は、内部のAlCl3が図8に示す昇華曲線よりも下側の状態になるように行なわれる。一方、上記ステップS4,S5における原料供給用タンク260の温度と圧力の制御は、内部のAlCl3が図8に示す昇華曲線よりも上側の状態になるように行なわれる。このような各タンクの温度と圧力の制御によって、タンク270内で昇華したAlCl3が配管230を介してタンク260へ移動し、そこで再固化して捕集されることとなる。
【0055】
なお、原料供給用タンク260内へのAlCl3の補充が終了すると、タンク270との配管のバルブがすべて閉じられて、原料供給用タンク260がヒータ282によって加熱され、昇華したAlCl3が反応炉202へ供給されてウエハへの成膜が行なわれる。成膜の際の制御は本発明と直接関係しないので、詳しい説明は省略する。
【0056】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、前記実施形態では、原料供給用タンク260と原料補充用タンク270とを1:1の関係で設けたものを説明したが、本発明はそれに限定されず、図9のように、複数の原料供給用タンク260に対して1つの原料補充用タンク270を共通に設け、各原料供給用タンク260をそれぞれ別個の配管を介して共通の原料補充用タンク270に接続するように構成しても良い。
【0057】
また、前記実施形態では、原料補充用タンク270内で固体原料を昇華して気体の状態で配管を介して原料供給用タンク260へ補充するようにしたものを説明したが、原料補充用タンク270内で固体原料を融解させて液体の状態で原料供給用タンク260へ補充するように構成することも可能である。実施形態で使用したAlCl3も圧力が高ければ液化するので可能である。
【0058】
ただし、液体状態のAlCl3は固化し易く取り扱いが難しいので、AlCl3を原料として使用する場合には実施形態のように固体から昇華させて原料供給用タンク260へ補充するようにすることで取り扱いが容易となる。他の原料の場合には液化して補充できる場合がある。従って、本発明は、固体原料を使用する場合に広く利用することができる。
[付記]
本出願は、以下のような発明を含んでいる。
(1)基板を収容する処理室と、
前記基板への処理に用いる気体原料を固体原料を昇華させて生成し、前記処理室に供給する原料供給システムと、
制御部と、
を有する基板処理装置であって、
前記原料供給システムは、
前記固体原料を保持する第1の原料容器と、
前記第1の原料容器と第1の配管を介して接続され、前記第1の原料容器から前記固体原料を補充される第2の原料容器と、
前記第2の原料容器と前記処理室を接続する第2の配管と、
少なくとも前記第1の原料容器及び前記第1の配管を加熱する加熱ユニットと、
少なくとも前記第1の原料容器及び前記第2の原料容器の内部の圧力を調整する圧力調整ユニットと、
を有し、
前記制御部は、前記第1の原料容器から前記第2の原料容器に前記固体原料を補充する際には前記固体原料を前記気体原料へ変態させて補充するように前記加熱ユニット及び前記圧力調整ユニットを制御する基板処理装置。
(2)(1)であって、前記制御部は、
前記第1の原料容器の内部の圧力を減圧し、前記第1の原料容器の内部を前記第2の原料容器より高い所定の温度に加熱することで、前記固体原料を昇華させて気体原料へ変態させるように前記加熱ユニット及び前記圧力調整ユニットを制御し、
前記第1の配管を所定の温度に加熱し、前記第2の原料容器の内部の圧力を減圧することで前記気体原料を前記第2の原料容器に捕集するように前記加熱ユニット及び前記圧力調整ユニットを制御する基板処理装置。
(3)(1)であって、前記固体原料を昇華させて前記気体原料へ変態させる際の前記第1の原料容器の加熱温度と前記第1の配管の加熱温度は同じであって、固体原料の昇華温度以上である基板処理装置。
(4)(1)であって、前記第1の原料容器及び前記第2の原料容器は、前記第1の配管に加えて、第3の配管によっても接続される基板処理装置。
(5)(4)であって、前記制御部は、前記第2の原料容器内に捕集されなかった前記気体原料を前記第3の配管を通って前記第1の原料容器に回収するように前記加熱ユニットと前記圧力調整ユニットを制御する基板処理装置。
(6)(4)であって、前記第1の配管は前記第1の原料容器及び前記第2の原料容器の上面に接続され、前記第3の配管は前記第1の原料容器及び前記第2の原料容器の下面に接続される基板処理装置。
(7)(1)であって、前記第1の原料容器は内部に原料捕集構造を有する基板処理装置。
(8)(1)であって、前記原料捕集構造は、ラビリンス構造である基板処理装置。
(9)(1)であって、前記固体原料はAlCl3である基板処理装置。
(10)(1)であって、前記制御部は、前記固体原料を昇華させて前記気体原料へ変態させる際に、前記第1の原料容器の加熱温度と前記第1の配管を190〜200℃に加熱するように前記加熱ユニットを制御する基板処理装置。
(11)(1)であって、前記第2の原料容器には1バッチの処理に必要な量の固体原料が保持される基板処理装置。
(12)(1)であって、前記制御部は、所定のバッチ数ごとに前記第1の原料容器から前記第2の原料容器へ前記固体原料を補充する基板処理装置。
(13)基板を収容する処理室と、
前記処理室に所望の気体原料を供給する原料供給システムと、
制御部と、
を有する基板処理装置であって、
前記原料供給システムは、
固体原料を保持する第1の原料容器と、
前記第1の原料容器と第1の配管を介して接続され、前記第1の原料容器から前記固体原料を補充される第2の原料容器と、
前記第2の原料容器と前記処理室を接続する第2の配管と、
少なくとも前記基板、前記第1の原料容器、前記第2の原料容器、前記第1の配管及び前記第2の配管を加熱する加熱ユニットと、
少なくとも前記処理室、前記第1の原料容器及び前記第2の原料容器の内部の圧力を調整する圧力調整ユニットと、
を有し、
前記制御部は、前記第2の原料容器を加熱することで前記第2の原料容器内の前記固体原料を昇華して生成した気体原料を前記処理室へ供給し、前記基板に所望の処理を行うように前記加熱ユニット及び前記圧力調整ユニットを制御し、
所定の基板処理バッチ数ごとに、前記第1の原料容器内の前記固体原料を前記気体原料へ変態させて前記第2の原料容器内に補充するように前記加熱ユニット及び前記圧力調整ユニットを制御する基板処理装置。
(14)(1)又は(13)に記載の基板処理装置を複数備える基板処理システムであって、
全ての基板処理装置は同じ1つの第1の原料容器に接続される基板処理システム。
(15)固体原料を保持する第1の原料容器の内部の圧力を減圧する第1の工程と、
第1の原料容器の内部を所定の温度に加熱して前記固体原料を昇華させて気体原料へ変態させる第2の工程と、
前記第1の原料容器と配管を介して接続される第2の原料容器の内部の圧力をすることで前記気体原料を第2の原料容器に捕集する第3の工程と、
前記第1の原料容器の内部を所定の温度に降温する第4の工程と、
を有し、所定回数だけ第1の工程〜第4の工程を繰り返すことで第1の原料容器から第2の原料容器に原料を補充する原料補充方法。
(16)(15)であって、前記第2の工程〜前記第4の工程において、前記配管を前記第2の工程における前記第1の原料容器の内部の温度と同じ温度に加熱する原料補充方法。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に適用される基板処理装置の一実施形態を示す斜透視図である。
【図2】実施形態の基板処理装置で用いられる縦型の処理炉の一例の概略構成を示す縦断面図である。
【図3】図2の処理炉の内部構造を示す横断面図である。
【図4】図2の処理炉のノズルを説明するための図であり、(A)は概略図、(B)は部分拡大図である。
【図5】原料供給用タンクの内部構造の概略を示す正面断面図である。
【図6】原料供給用タンク260の構造を示す一部分解斜視図である。
【図7】原料供給用タンクへの固体原料の補充の手順を示すフローチャートである。
【図8】AlCl3の昇華曲線を示す温度−蒸気圧特性図である。
【図9】本発明に適用される基板処理装置の一実施形態を示す斜透視図である。
【符号の説明】
【0060】
100…基板処理装置
110…カセット
111…筐体
115…ボートエレベータ
118…カセット搬送装置
118a…カセットエレベータ
125…ウエハ移載機構
200…ウエハ
201…処理室
202…処理炉
203…反応管
207…ヒータ
209…マニホールド
217…ボート
218…ボート支持台
219…シールキャップ
220…Oリング
230…原料補充用配管
231…ガス排気管
232a…第1のガス供給管
232b…第2のガス供給管
232c,232d…不活性ガスライン
233…ノズル
241…マスフローコントローラ
246…真空ポンプ
250〜257…バルブ
260…原料供給用タンク
261…密閉容器
262…隔壁
263…恒温槽
227…ボート回転機構
270…原料補充用タンク
280…コントローラ(制御部)
281〜283…ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容可能な処理室と、
前記基板への処理に用いる気体原料を、固体原料を昇華させて生成し、前記処理室へ供給する原料供給システムと、
制御部と、
を有する基板処理装置であって、
前記原料供給システムは、
前記固体原料を保持する第1の原料容器と、
前記第1の原料容器と第1の配管を介して接続され、前記第1の原料容器から前記固体原料が補充される第2の原料容器と、
前記第2の原料容器と前記処理室を接続する第2の配管と、
少なくとも前記第1の原料容器及び前記第1の配管を加熱可能な加熱手段と、
少なくとも前記第1の原料容器及び前記第2の原料容器の内部の圧力を調整可能な圧力調整手段と、
を有し、
前記制御部は、前記第1の原料容器から前記第2の原料容器へ前記固体原料を補充する際には、前記固体原料を前記気体原料へ変態させて補充するように前記加熱手段及び前記圧力調整手段を制御する基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記制御部は、
前記第1の原料容器の内部の圧力を減圧し、前記第1の原料容器の内部を前記第2の原料容器より高い所定の温度に加熱することで、前記固体原料を昇華させて気体原料へ変態させるように前記加熱手段及び前記圧力調整手段を制御し、
前記第1の配管を所定の温度に加熱し、前記第2の原料容器の内部の圧力を減圧することで前記気体原料を前記第2の原料容器に捕集するように前記加熱手段及び前記圧力調整手段を制御する基板処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の基板処理装置であって、前記第1の原料容器は、内部に原料を捕集する構造を形成する隔壁を有する基板処理装置。
【請求項4】
基板を収容可能な処理室と、
前記処理室に所望の気体原料を供給する原料供給システムと、
制御部と、
を有する基板処理装置であって、
前記原料供給システムは、
固体原料を保持する第1の原料容器と、
前記第1の原料容器と第1の配管を介して接続され、前記第1の原料容器から前記固体原料が補充される第2の原料容器と、
前記第2の原料容器と前記処理室を接続する第2の配管と、
少なくとも前記基板、前記第1の原料容器、前記第2の原料容器、前記第1の配管及び前記第2の配管を加熱可能な加熱手段と、
少なくとも前記処理室、前記第1の原料容器及び前記第2の原料容器の内部の圧力を調整可能な圧力調整手段と、
を有し、
前記制御部は、前記第2の原料容器を加熱することで前記第2の原料容器内の前記固体原料を昇華して生成した気体原料を前記処理室へ供給し、前記基板に所望の処理を行うように前記加熱手段及び前記圧力調整手段を制御し、
所定の基板処理バッチ数ごとに、前記第1の原料容器内の前記固体原料を前記気体原料へ変態させて前記第2の原料容器内へ補充するように前記加熱手段及び前記圧力調整手段を制御する基板処理装置。
【請求項5】
固体原料を保持する第1の原料容器と、
前記第1の原料容器と第1の配管を介して接続され、前記第1の原料容器から前記固体原料が補充される第2の原料容器と、
少なくとも前記基板、前記第1の原料容器、前記第2の原料容器及び前記第1の配管を加熱可能な加熱手段と、
少なくとも前記第1の原料容器及び前記第2の原料容器の内部の圧力を調整可能な圧力調整手段と、を有する原料供給システムにおける原料補充方法であって、
固体原料を保持する第1の原料容器の内部の圧力を減圧する第1の工程と、
第1の原料容器の内部を所定の温度に加熱して前記固体原料を昇華させて気体原料へ変態させる第2の工程と、
前記第2の原料容器の内部の圧力を減圧することで前記第1の原料容器から前記第1の配管を介して移動された前記気体原料を第2の原料容器に捕集する第3の工程と、
前記第1の原料容器の内部を所定の温度に降温する第4の工程と、
を有し、所定回数だけ第1の工程〜第4の工程を繰り返すことで前記第1の原料容器から前記第2の原料容器へ原料を補充する原料補充方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−40695(P2010−40695A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200584(P2008−200584)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】