説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】ノズルから吐出した液滴のミストをノズルの周囲の部位に付着するのを防いで、清浄度を保つことができる基板処理装置および基板処理方法を提供する。
【解決手段】基板に対して液滴のミストを供給して前記基板を洗浄処理する基板処理装置1は、液滴のミストを吐出する二流体ノズル21,22と、二流体ノズル21,22を囲って二流体ノズルから吐出する液滴のミストの飛散を防止するカバー30を有しており、カバー30の先端外周部70は、二流体ノズル21,22から吐出する液滴のミストを基板Wに供給するための開口部90を有し、先端外周部70と基板Wとの間には隙間Gが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置および基板処理方法に関し、特に処理対象物である例えば半導体ウェーハ等の基板を洗浄する基板処理装置および基板処理方法に関する
【背景技術】
【0002】
基板処理装置は、例えば半導体ウェーハ等の基板の製造工程において基板に対して薬液等の液体を供給して処理を行う。基板が回転テーブルに保持されており、処理ノズルがアームに取り付けられており、アームとともに処理ノズルが移動することで処理液が基板に供給される構造が、特許文献1に開示されている。
【0003】
このような従来の基板処理装置は、基板上の汚染物質を洗浄するためにスプレー洗浄技術を用いており、スプレー洗浄技術では基板に供給する液滴と基板の衝突により発生する圧力や液体の流れにより、基板上の汚染物質の除去を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007―103825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の従来の基板処理装置、特に回転テーブルを用いたスピン方式の半導体ウェーハの洗浄装置では、ウェーハ上のパターンの配線が微細化しているので、パターンに付着したパーティクルの直径はますます小さくなっている。このため、基板上のパーティクルを効率よく洗浄するためには、液体と気体を供給することで高い洗浄力を持った二流体ノズルが使用されている。二流体ノズルから発生する洗浄時の液滴のミストは、スピンカップ周りやチャンバー内壁等のノズルの周囲部位に付着し、洗浄後に基板を乾燥する時に、その洗浄時にノズルの周囲部位に付着した液滴のミストが飛散して、ウェーハ上に付着するリスクがある。
【0006】
また、二流体ノズルから吐出した洗浄用の液滴のミストが、二流体ノズルに対して再度付着する現象が発生し易く、二流体ノズルに再付着した洗浄時の液滴のミストの付着液が、ウェーハ上に垂れ落ちてウェーハを汚染するリスクがある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、ノズルから吐出した液滴のミストをノズルの周囲の部位に付着するのを防いで、清浄度を保つことができる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の基板処理装置は、基板に対して液滴のミストを供給して前記基板を洗浄処理する基板処理装置であって、
前記液滴のミストを吐出するノズルと、
前記ノズルを囲って前記ノズルから吐出する前記液滴のミストの飛散を防止するカバーと、を有しており、
前記カバーの先端外周部は、前記ノズルから吐出する前記液滴のミストを前記基板に供給するための開口部を有し、前記先端外周部と前記基板との間には隙間が形成されることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、ノズルから吐出した液滴のミストをノズルの周囲の部位に付着するのを防いで、清浄度を保つことができる。
【0010】
本発明の基板処理装置では、前記基板側から離れた前記カバーの上部位置には、前記カバー内の前記ノズルの上部側にパージガスを供給するパージガス導入部が設けられていることを特徴とする。上記構成によれば、ノズルの上部側にパージガスを供給するので、ノズルから吐出する液滴のミストが、ノズルに付着しないようにすることができる。これにより、ノズルから基板側にミストが落下するのを防ぐことができる。
【0011】
本発明の基板処理装置では、前記カバーの前記先端外周部側の下部位置には、前記カバー内の前記ノズルの下部側にパージガスを供給するパージガス導入部が設けられていることを特徴とする。上記構成によれば、ノズルの下部側にパージガスを供給するので、液滴のミストが隙間を通じてカバーの外部に流出するのを防ぐことができ、飛散ミストが外部からノズルに再付着することを防止できる。これにより、ノズルから基板側にミストが落下するのを防ぐことができる。
【0012】
本発明の基板処理装置では、前記カバーは、前記カバーの前記上部位置から前記先端外周部にかけて、徐々に広がるように形成され、前記カバー内には、複数の前記ノズルから吐出する前記液滴のミストが互いに衝突する位置に複数の前記ノズルが固定されており、前記パージガス導入部は、各ノズルに対応して設けられていることを特徴とする。上記構成によれば、各ノズルに対応してパージガスを確実に供給できる。
【0013】
本発明の基板処理方法は、基板に対して液滴のミストを供給して前記基板を洗浄処理する基板処理方法であって、
カバーによりノズルを囲って、前記ノズルから吐出する前記液滴のミストの飛散を前記カバーにより防止し、
前記ノズルから吐出する前記液滴のミストを、前記カバーの先端外周部に形成された開口部を通じて前記基板に供給し、前記先端外周部と前記基板との間には隙間が形成されていることを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、ノズルから吐出した液滴のミストをノズルの周囲の部位に付着するのを防いで、清浄度を保つことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ノズルから吐出した液滴のミストをノズルの周囲の部位に付着するのを防いで、清浄度を保つことができる基板処理装置および基板処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の基板処理装置の実施形態1を示す図である。
【図2】図1に示す基板処理装置の処理ユニットの構成例を示す図である。
【図3】スプレーノズルの内部構造例を詳しく示す図である。
【図4】図3のスプレーノズルユニットの内部構造例を詳しく示す図である。
【図5】本発明の実施形態2の基板処理装置のスプレーノズルユニットを示す図である。
【図6】図5の示すスプレーノズルユニットの構造をさらに詳しく示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
(実施形態1)
図1は、本発明の基板処理装置の実施形態1を示している。
【0019】
図1に示す基板処理装置1は、カセットステーション2と、ロボット3と、複数の処理ユニット4,4を備えている。
【0020】
基板処理装置1は、枚葉式の基板処理を行う装置であり、カセットステーション2は、複数のカセット5,5を有しており、各カセット5は複数枚の基板Wを収容している。基板としては、例えば半導体ウェーハ基板である。
【0021】
ロボット3は、カセットステーション2と複数の処理ユニット4,4の間に配置されている。ロボット3は、各カセット5に収容されている基板Wを処理ユニット4側に搬送する。また、ロボット3は、処理ユニット4側の処理後の基板Wを、別のカセット5に搬送して戻す。各処理ユニット4は、基板Wを保持して回転させて、液滴を供給することにより、例えば基板Wの表面を洗浄処理する。
【0022】
図2は、図1に示す基板処理装置1の処理ユニット4の構成例を示している。
【0023】
図2に示す枚葉式の処理ユニット4は、処理対象物である基板Wのスピン洗浄機であり、スプレーノズルユニット10と、基板保持部11と、ノズル操作部12と、ダウンフロー用のフィルタ付きファン13と、カップ14と、処理室15と、制御部100を有する。
【0024】
図2に示す基板保持部11は、円板のベース部材17と、回転軸18と、モータ19を有している。ベース部材17は回転テーブルであり、基板Wはベース部材17の上部において、複数のチャックピン16によりベース部材17から浮かせた状態で着脱可能に固定(チャック)される。複数のチャックピン16は、ベース部材17の円周方向に沿って、例えば120度毎に3つ設けられている。
【0025】
図2に示す処理室15内には、スプレーノズルユニット10とカップ14とベース部材17とモータ19の回転軸18が収容されている。回転軸18の先端部にはベース部材17が固定されている。モータ19が制御部100の指令により動作することで、ベース部材17はR方向に連続回転することができる。
【0026】
図2に示すカップ14は、基板保持部11の周囲に設けられており、基板Wの面に供給された液滴と気体を、排出部15Hから、処理室15の外部に排出して回収できるようになっている。処理室15は、処理室15に基板を出し入れするためのシャッター15Sを有している。
【0027】
図2〜図4を参照して、スプレーノズルユニット10の構造について説明する。
【0028】
図3は、スプレーノズルユニット10の内部構造例を示す図である。図4は、図3のスプレーノズルユニット10の内部構造例を詳しく示す図である。
【0029】
図2に示すように、スプレーノズルユニット10は、基板Wの上部に配置されており、制御部100の指令によりノズル操作部12が動作すると、スプレーノズルユニット10はZ方向(上下方向)とX方向(基板Wの半径方向)に移動して、微細な液滴のミストを、基板Wの面Sに渡って吐出することができる。
【0030】
図2と図3に示すように、スプレーノズルユニット10は、本体部20と、カバー30と、第1ノズル部21と第2ノズル部22と、パージガス導入部23,24を有している。図4は、スプレーノズルユニット10の本体部20と、カバー30と、第1ノズル部21と第2ノズル部22と、パージガス導入部23,24を拡大して示している。
【0031】
図3と図4に示すように、本体部20は、例えば円筒状の部材であり、本体部20は図2に示すノズル操作部12に対して機械的に接続されており、ノズル操作部12が動作すると、スプレーノズルユニット10の本体部20はZ方向(上下方向)とX方向に移動可能である。
【0032】
図3と図4に示すように、カバー30は、本体部20に対して固定されており、カバー30の中心軸Dは、本体部20の中心軸と一致している。カバー30は、上部位置である小径部分80と、下部位置である大径部分81を有している。カバー30の直径は、上部位置である小径部分80から下部位置である大径部分81に向かって下方向Z1に沿って、徐々に大きくなるように形成されている、いわゆるラッパ状の部材である。
【0033】
図4に示すように、カバー30の小径部分80の開口部82には、本体部20の下部がはめ込まれて固定されている。カバー30の大径部分81には、X方向に平行な方向に沿って半径方向外方向に先端外周部70が形成されている。この先端外周部70は、開口部90を有している。この開口部90は、例えば円形断面を有しており、開口部90は基板Wの面Sに面している。このように、カバー30の小径部分80は、本体部20により閉鎖されているが、カバー30の大径部分81は、開口部90を有していて開放されている。
【0034】
図4に示す先端外周部70は、大径部分81の円周方向に沿って切れ目なく形成されている。X方向は基板Wの面方向と平行であり、先端外周部70と基板Wの面Sとの間には、狭い隙間(ギャップともいう)Gが形成されている。隙間Gは、先端外周部70が基板Wの面Sに接触しないようにして、しかもカバー30内に吐出した液滴のミストが、カバー30の外部に漏れないような、距離に設定されている。この先端外周部70は、基板Wの面Sとの間に、所定の値の隙間Gを形成するための隙間形成部分ともいえる部分である。本体部20とカバー30は、例えば金属およびテフロン(登録商標)等の樹脂により作られている。
【0035】
図3と図4に示すように、第1ノズル部21と第2ノズル部22が、カバー30の内周面44R側に近接して配置されている。本体部20の下部には、取り付け部材45Tが固定されている。この取り付け部材45Tは、カバー30内に配置されており、中央部46Rと、第1腕部47と第2腕部48を有している。
【0036】
第1ノズル部21は、取り付け部材45Tの第1腕部47に固定され、第2ノズル部22は、取り付け部材45Tの第2腕部48に固定されている。これらの第1ノズル部21と第2ノズル部22は、保持部材としての本体部20と取り付け部材45Tにより一体型に保持されている。このように、第1ノズル部21と第2ノズル部22が一体的に保持されていることにより、第1ノズル部21と第2ノズル部22の移動に際して、ノズル部同士の位置のずれを生じない。
【0037】
図4に示すように、第1ノズル部21と第2ノズル部22は、共に二流体ノズル構造であり、それぞれ第1通路31と第2通路32を有している。ウェーハ上のパターンの配線が微細化しているので、パターンに付着したパーティクルの直径はますます小さくなっている。このため、パーティクルを効率よく洗浄するために、通常の純水を噴射するノズルに比べて高い洗浄力を持った二流体ノズルが使用される。
【0038】
図4に示す第1ノズル部21と第2ノズル部22の第1通路31と第2通路32は、ノズル軸Lに対して同軸になるように形成されている。第1通路31は断面円形であり、第2通路32は第1通路31の周囲に形成されている。
【0039】
液体が第1通路31を通って噴射口31Bから噴射される際に、気体が第2通路32を通って噴射口32Bから噴射されることで、液体は液滴のミストとして生成されて、粒径の微細な液滴を生成できる。
【0040】
図3と図4に示すように、第1ノズル部21の第1通路31と第2ノズル部22の第1通路31は、液体供給部41に対して、配管42とバルブ43を介して接続されている。同様にして、第1ノズル部21の第2通路32と第2ノズル部22の第2通路32は、気体供給部44に対して、配管45とバルブ46を介して接続されている。これにより、制御部100の指令によりバルブ43を開けることにより、第1ノズル部21の第1通路31と第2ノズル部22の第1通路31には、液体供給部41から液体を供給する。また、制御部100の指令によりバルブ46を開けることにより、第1ノズル部21の第2通路32と第2ノズル部22の第2通路32には、気体供給部44から気体を供給する。従って、第1ノズル部21では、微細化された液滴のミストが生成されると共に、第2ノズル部22では、微細化された液滴のミストが生成される。
【0041】
液体供給部41は、液体の一例である純水を供給する。気体供給部44は、気体の一例である窒素ガスを供給する。
【0042】
図4に示すように、第1ノズル部21のノズル軸Lと第2ノズル部22のノズル軸Lは、交差角度θで交差されている。すなわち、図3に示すように、第1ノズル部21と第2ノズル部22は、第1ノズル部21の噴射口31Bと第2ノズル部22の噴射口31Bが、互いに近づくようにして傾斜して取り付け部材45により一体型に保持されている。
【0043】
このように、第1ノズル部21のノズル軸Lと第2ノズル部22のノズル軸Lが、交差角度θで交差されていることにより、第1ノズル部21から噴出されて微細化された液滴のミストと第2ノズル部22から噴出されて微細化された液滴のミストが、衝突領域(噴霧緩衝領域)において衝突されることにより、液滴同士を衝突させて更なる微細化を行う。これにより、更なる微細化された液滴が生成できる。このように更なる微細化された液滴は、その粒径が微細に制御されており、液滴は基板Wの面Sに到達するようになっている。
【0044】
この交差角度θは、望ましくは90度以上で180度未満であるが、90度未満であっても基板Wの微細なパターン倒壊等のダメージを十分に防止できる。交差角度θは、より望ましくは120度〜160度の範囲に設定されることで、基板Wの微細なパターン倒壊等のダメージを発生させることなく、基板W上の汚染物質を除去できる微細な液滴を生成することができる。
【0045】
図4に示すように、第1ノズル部21と第2ノズル部22は、カバー30の内周面44R内において、中心軸Dを中心として180度反対の位置に配置されているが、第1ノズル部21と第2ノズル部22は、カバー30の小径部分80と大径部分81のほぼ中間位置に対応して配置されている。
【0046】
図4に示すように、パージガス導入部23,24が、カバー20の外周面50側に固定されている。これらのパージガス導入部23,24は、中心軸Dを中心として180度反対の位置に配置されている。パージガス導入部23は、カバー20の小径部分80と第1ノズル部21の間の位置に配置され、パージガス導入部24は、カバー20の小径部分80と第2ノズル部22の間の位置に配置されている。すなわち、パージガス導入部23,24は、第1ノズル部21と第2ノズル部22の上部位置に配置されている。
【0047】
図4に示すように、パージガス導入部23はノズル穴23Hに接続され、パージガス導入部24はノズル穴24Hに接続されている。これらのノズル穴23H、24Hは、カバー30に形成されており、ノズル穴23H、24Hは、配管51とバルブ52を介してパージガス供給部53に接続されている。
【0048】
これにより、図3に示す制御部100の指令によりバルブ52を開けることにより、パージガス導入部23のノズル穴23Hとパージガス導入部24のノズル穴24Hには、パージガス供給部53からパージガスを供給する。このパージガスは、図4に示す第1ノズル部21と第2ノズル部22から吐出する液滴のミストが、第1ノズル部21の噴射口31B、32Bと第2ノズル部22の噴射口31B、32Bに付着するのを防止するために、カバー30内であって第1ノズル部21と第2ノズル部22の上部位置から吐出するようになっている。従って、このパージガスは、液滴のミストがノズル部に付着しないようするためのミスト付着防止用気体である。
【0049】
図4に示すように、パージガス導入部23のノズル穴23Hとパージガス導入部24のノズル穴24Hから吐出するパージガスの吐出方向Vは、第1ノズル部21と第2ノズル部22のノズル軸Lと、好ましくは平行になっている。
【0050】
次に、上述した基板処理装置1の処理ユニット4を用いて、例えば基板Wの面Sを洗浄する洗浄処理について、図2〜図4を参照して説明する。
【0051】
図2に示す処理対象物である基板Wは、ベース部材17の上部に対して複数のチャックピン16により、ベース部材17から浮かせた状態で着脱可能に固定されている。制御部100の指令によりモータ19を作動させることで、ベース部材17とともに基板WをR方向に回転される。
【0052】
図2に示す制御部100の指令によりバルブ43を開けることにより、第1ノズル部21の第1通路31と第2ノズル部22の第1通路31には、液体供給部41から液体を供給する。また、制御部100の指令によりバルブ46を開けることにより、第1ノズル部21の第2通路32と第2ノズル部22の第2通路32には、気体供給部44から気体を供給する。
【0053】
図3に示すように、液体が第1通路31を通って噴射口31Bから噴射される際に、気体が第2通路32を通って噴射口32Bから噴射されることで、液体はミスト化されて、粒径の微細な液滴のミストを生成できる。つまり、液体は気体によりミスト化されて、第1ノズル部21では、微細化された(ミスト化された)液滴が生成されると同時に、第2ノズル部22では、微細化された(ミスト化された)液滴が生成される。
【0054】
しかも、第1ノズル部21から噴出されて微細化された液滴と第2ノズル部22から噴出されて微細化された液滴を、衝突領域において衝突および分裂させることにより、更なる微細化を行うことができる。このように更なる微細化により生成された液滴は、基板Wの面Sに到達する。
【0055】
このように、純水等の液体は、第1ノズル部21と第2ノズル部22から噴出されることで第1段階の微細化された液滴のミストが生成され、さらにこの液滴のミストは、衝突領域において、液滴同士を衝突および分裂させて第2段階の更なる微細化された液滴が生成できる。この液滴が基板Wの面Sに供給されることで、粒径が微細に制御された液滴は、基板Wの微細なパターン倒壊等のダメージを発生させることなく基板W上のパターンに付着した汚染物質を除去できる。
【0056】
上述したように、第1ノズル部21と第2ノズル部22から液滴をミスト化して吐出する際に、カバー30が第1ノズル部21のノズル先端部と第2ノズル部22のノズル先端部を覆っており、カバー30の先端外周部70が基板Wの面Sとの間に狭い隙間Gを保つように、スプレーノズルユニット10がX方向に移動される。
【0057】
第1ノズル部21と第2ノズル部22から噴出されることで微細化された液滴のミストは、カバー30の外部に出ないようにしている。すなわち、カバー30は、ミスト吐出し部である第1ノズル部21と第2ノズル部22を、カバー30の外部雰囲気である図2に示す処理室15内の雰囲気から切り離している。これにより、液滴のミストが、図2に示す処理室15の内壁、処理室15内の基板保持部11と、ノズル操作部12と、ダウンフロー用のフィルタ付きファン13と、カップ14等の各要素に付着するのを防ぐことができる。従って、処理室15内の各要素から基板Wにミストが飛散して付着することを防ぐことができ、処理室15内の清浄度を簡単にかつ確実に保つことができる。
【0058】
しかも、図3と図4に示すように、図3に示す制御部100の指令によりバルブ52を開けることにより、パージガス導入部23のノズル穴23Hとパージガス導入部24のノズル穴24Hには、パージガス供給部53からパージガスを供給する。このパージガスは、図4に示す第1ノズル部21と第2ノズル部22から吐出する液滴のミストが、第1ノズル部21の噴射口31B、32Bと第2ノズル部22の噴射口31B、32Bに付着するのを防止するために、カバー20内であって第1ノズル部21と第2ノズル部22の上部位置から吐出するようになっている。
【0059】
図4に示すように、パージガス導入部23のノズル穴23Hとパージガス導入部24のノズル穴24Hから吐出するパージガスの吐出方向Vは、第1ノズル部21と第2ノズル部22のノズル軸Lと、好ましくは平行になっている。これにより、第1ノズル部21と第2ノズル部22から液滴がミスト化して吐出しても、液滴のミストをパージガスで覆うことにより、ミストが第1ノズル部21と第2ノズル部22に付着するのを防止することができる。ミストが第1ノズル部21と第2ノズル部22に付着しないので、ミストが第1ノズル部21と第2ノズル部22から基板Wに対して飛散して落下により付着することを防げる。パージガスを吐出することで、第1ノズル部21と第2ノズル部22からの液滴のミストが飛散して第1ノズル部21と第2ノズル部22に跳ね返ることを防ぐことができる。また、パージガスを吐出することで、第1ノズル部21と第2ノズル部22からのミストが第1ノズル部21と第2ノズル部22に互いにかかることを防止できる。さらに、第1ノズル部21と第2ノズル部22からのミストが基板で跳ね返って第1ノズル部21と第2ノズル部22に付着することを防止できる。
【0060】
このように、二流体ノズルの上部側にパージガスを供給するので、二流体ノズルから吐出する液滴のミストが、二流体ノズルに付着しないようにすることができる。これにより、二流体ノズルから基板側にミストが落下するのを防ぐことができる。
【0061】
(実施形態2)
次に、図5と図6を参照して、本発明の別の実施形態2を説明する。
【0062】
図5は、本発明の実施形態2の基板処理装置のスプレーノズルユニット10Aを示し、図6は、図5の示すスプレーノズルユニット10Aの構造をさらに詳しく示している。
【0063】
図5と図6に示すスプレーノズルユニット10Aの構成要素が、図3と図4に示すスプレーノズルユニット10の構成要素と実質的に同じである箇所には、同じ符号を記してその説明を援用する。
【0064】
図5と図6に示すスプレーノズルユニット10Aの構成要素が、図3と図4に示すスプレーノズルユニット10の構成要素と異なるのは、パージガス導入部23A,24Aがカバー30に対して設けられている位置である。すなわち、図3と図4に示すスプレーノズルユニット10では、パージガス導入部23A,24Aがカバー30の上部位置である小径部分80側に設けられ、パージガス導入部23A,24Aはそれぞれ対応する第1ノズル部21と第2ノズル部22よりも上部位置に設けられている。
【0065】
これに対して、図5と図6に示すスプレーノズルユニット10Aでは、パージガス導入部23A,24Aがカバー30の下部位置である大径部分81側に設けられ、パージガス導入部23A,24Aはそれぞれ対応する第1ノズル部21と第2ノズル部22よりも下部位置に設けられている。図6に示すように、パージガス導入部23のノズル穴23Hとパージガス導入部24のノズル穴24Hは、カバー30の先端外周部70の付近に形成されている。
【0066】
パージガス導入部23Aのノズル穴23Hとパージガス導入部24Aのノズル穴24Hには、パージガス供給部53からパージガスを供給する。このパージガスは、図6に示す第1ノズル部21と第2ノズル部22から吐出する液滴のミストが、カバー30の先端外周部70と基板Wの面Sとの隙間Gからカバー30の外部に流出することを、より確実に防止することができる。これにより、ミストがカバー30の隙間Gからカバー30の外部である処理室内に漏れることを確実に防ぐことができ、ミストが図2に示す処理室15の内壁と、処理室15内の基板保持部11と、ノズル操作部12と、ダウンフロー用のフィルタ付きファン13と、カップ14等の各要素に付着することを防ぐことができる。従って、処理室15内の各要素から基板Wにミストが飛散して落下し再付着することを防ぐことができ、処理室15内の清浄度を簡単にしかも確実に保つことができる。
【0067】
パージガス導入部23Aのノズル穴23Hとパージガス導入部24Aのノズル穴24Hから第1ノズル部21と第2ノズル部22の下にパージガスを供給することにより、吐出面に気流の層を形成することができる。微細パターンの洗浄においては、吐出液の圧力が高いとパターン倒れのリスクが大きくなるが、ウェーハ上に液膜が生成されている状態では液膜が緩衝材になるが、ウェーハ回転数を高くした場合や乾燥に移行する瞬間において、液膜が薄くなるため、液膜緩衝材の液量が十分に得られない。そこで、上記の気流の層が液膜緩衝材の代役を勤めることで、ダメージの少ない洗浄を得ることが可能となる。
【0068】
二流体ノズルの下部側にパージガスを供給するので、液滴のミストが隙間を通じてカバーの外部に流出するのを防ぐことができ、飛散ミストが外部から二流体ノズルに再付着することを防止できる。これにより、二流体ノズルから基板側にミストが落下するのを防ぐことができる。パージガスを吐出することで、第1ノズル部21と第2ノズル部22からの液滴のミストが飛散して第1ノズル部21と第2ノズル部22に跳ね返ることを防ぐことができる。また、パージガスを吐出することで、第1ノズル部21と第2ノズル部22からのミストが第1ノズル部21と第2ノズル部22に互いにかかることを防止できる。さらに、第1ノズル部21と第2ノズル部22からのミストが基板で跳ね返って第1ノズル部21と第2ノズル部22に付着することを防止できる。
【0069】
本発明は、上記実施形態に限定されない。例えば、図3に示す第1ノズル部21と第2ノズル部22は、取り付け部材45Tにより一体化して固定されている。しかし、これに限らず、第1ノズル部21と第2ノズル部22は、カバー30の内周面44Rに固定しても良い。ノズルは二流体ノズルに限定されない。
【0070】
図4と図6に示すカバー内に保持されるノズル部の数は2つの限らず3つ以上であっても良く、ノズル部の数を増やすことにより、より大量の微細な液滴を生成して、基板Wに供給できる。
【0071】
ノズル部に供給される気体としては、窒素ガスに限らず、圧縮エアーや、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等であっても良い。パージガスとしては、窒素ガスに限らず、圧縮エアーや、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等であっても良い。
【0072】
また、図4と図6に示す本発明の各実施形態を、組み合わせて、カバー30の上部位置にパージガス導入部23,24を設けるとともに、カバー30の下部位置にパージガス導入部23A,24Aを設けるようにしても良い。
【0073】
さらに、本発明の実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。例えば、本発明の実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 基板処理装置
4,4A 処理ユニット
10,10A スプレーノズルユニット
11 基板保持部
12 ノズル操作部
15 処理室
16 チャックピン
17 ベース部材
18 回転軸
19 モータ
21 第1ノズル部
22 第2ノズル部
31 第1通路
32 第2通路
41 液体供給部
42,45 配管
43,46 バルブ
44 気体供給部
44R カバーの内周面
45T 取り付け部材
53 パージガス供給部
70 カバーの先端外周部
80 カバーの小径部分(上部位置)
81 カバーの大径部分(下部位置)
90 開口部
L ノズル軸
W 基板(処理対象物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して液滴のミストを供給して前記基板を洗浄処理する基板処理装置であって、
前記液滴のミストを吐出するノズルと、
前記ノズルを囲って前記ノズルから吐出する前記液滴のミストの飛散を防止するカバーと、を有しており、
前記カバーの先端外周部は、前記ノズルから吐出する前記液滴のミストを前記基板に供給するための開口部を有し、前記先端外周部と前記基板との間には隙間が形成されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記基板側から離れた前記カバーの上部位置には、前記カバー内の前記ノズルの上部側にパージガスを供給するパージガス導入部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記カバーの前記先端外周部側の下部位置には、前記カバー内の前記ノズルの下部側にパージガスを供給するパージガス導入部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記カバーは、前記カバーの前記上部位置から前記先端外周部にかけて、徐々に広がるように形成され、前記カバー内には、複数の前記ノズルから吐出する前記液滴のミストが互いに衝突する位置に複数の前記ノズルが固定されており、
前記パージガス導入部は、各前記ノズルに対応して設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つの項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
基板に対して液滴のミストを供給して前記基板を洗浄処理する基板処理方法であって、
カバーによりノズルを囲って、前記ノズルから吐出する前記液滴のミストの飛散を前記カバーにより防止し、
前記ノズルから吐出する前記液滴のミストを、前記カバーの先端外周部に形成された開口部を通じて前記基板に供給し、前記先端外周部と前記基板との間には隙間が形成されていることを特徴とする基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−54823(P2011−54823A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203442(P2009−203442)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】