説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】基板表面上の液膜を蒸発乾燥させることなく当該液膜を薄膜化する。
【解決手段】リンス工程においてDIW供給部から低温DIWを基板表面に供給して基板および液膜の温度が雰囲気の露点以下に調整し、基板表面上に形成された液膜を薄膜化する間(薄膜形成工程)、液膜および基板の温度が雰囲気の露点以下となっているため、基板表面上の液膜が蒸発乾燥することなく当該液膜を所望の厚さに薄膜化することができる。凍結工程を実行する際に冷却高湿度窒素ガスを凍結用冷媒として用いているが、単にDIWの凝固点よりも低い温度まで冷やされた冷却ガスを用いるのではなく、水蒸気を飽和した高湿度状態のものを用いることで冷却高湿度窒素ガスの露点を凍結膜の温度とほぼ同一温度に調整している。したがって、液膜の薄膜化から凍結膜の形成に切り替わる際、凍結前の液膜が蒸発乾燥するのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板(以下、単に「基板」という)に薄い液膜を形成するとともに当該薄い液膜を凍結する基板処理装置および基板処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの電子部品の製造工程では、基板の表面に成膜やエッチングなどの処理を繰り返し施して微細パターンを形成していく工程が含まれる。ここで、微細加工を良好に行うためには基板表面を清浄な状態に保つ必要があり、必要に応じて基板表面に対して洗浄処理が行われる。そして、洗浄処理後に、基板表面に付着しているDIW(deionized Water:脱イオン水)などの液体を除去して基板を乾燥させる必要がある。この乾燥時における重要な課題のひとつが基板表面に形成されているパターンを倒壊させずに基板乾燥を行うことである。この課題を解消する方法として昇華乾燥技術が近年注目されている。この昇華乾燥技術は、例えば特許文献1や特許文献2に記載されているように、基板表面に付着するDIWなどの液体を処理室内で凍結させた後に、その処理室内を減圧して凍結膜を昇華させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−242930号公報(図2)
【特許文献2】特開平4−331956号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、昇華乾燥では昇華させる凍結膜の量、つまり氷膜の厚さが乾燥に要する時間(タクトタイム)を決める重要なファクターのひとつとなっている。すなわち、氷膜を薄くすることで乾燥に要する時間を短縮することができる。したがって、凍結処理を実行する前に基板表面に付着する液膜を薄膜化することが考えられる。例えば液膜が形成された基板表面を上方に向けた姿勢、つまり略水平姿勢で基板を保持するとともに当該基板を高回転スピンさせることで液膜を薄膜化することができる。しかしながら、液膜が薄くなるにしたがって液膜が蒸発乾燥しやすくなるため、単に基板を回転させることのみによって達成し得る薄膜化にも一定の限界があり、基板処理に要するタクトタイムの短縮化にとって大きな障害のひとつとなっている。
【0005】
この発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、基板表面上の液膜を蒸発乾燥させることなく当該液膜を薄膜化することができる基板処理装置および基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかる基板処理装置は、上記目的を達成するため、表面に液膜が形成された基板を保持する基板保持手段と、基板保持手段に保持された基板を回転させて基板の表面上に形成された液膜を薄膜化する基板回転手段と、液膜が形成された基板の表面に接する雰囲気の露点と、液膜および基板の温度との少なくとも一方を調整する調整手段と、基板の表面上の液膜を凍結させて凍結膜を形成する凍結手段とを備え、調整手段は、基板回転手段により液膜を薄膜化する間、液膜および基板の温度が雰囲気の露点以下となるように、調整することを特徴としている。
【0007】
また、この発明にかかる基板処理方法は、上記目的を達成するため、表面に液膜が形成された基板を回転させて基板の表面上に形成された液膜を薄膜化する第1工程と、 第1工程により薄膜化された液膜を凍結させる第2工程とを備え、第1工程を実行する間、液膜および基板の温度が基板の表面に接する雰囲気の露点以下となるように、雰囲気の露点と、液膜および基板の温度との少なくとも一方を調整することを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明(基板処理装置および基板処理方法)では、液膜が形成された基板の表面に接する雰囲気の露点と、液膜および基板の温度との少なくとも一方が調整可能となっている。そして、上記調整により、基板を回転させて基板の表面上に形成された液膜を薄膜化する間、液膜および基板の温度が雰囲気の露点以下となっている。このため、液膜を構成する液体が雰囲気中に蒸発するのが防止される。
【0009】
液膜および基板の温度を雰囲気の露点以下に調整するために、例えば雰囲気の露点以下の液体を供給することによって、基板の表面に供給して液膜を形成するとともに液膜の薄膜化前に液膜および基板の温度を雰囲気の露点以下に低下させてもよい。また、液膜の薄膜化を行っている間、雰囲気に液膜を構成する液体の蒸気を飽和状態に含有する第1気体を供給して雰囲気の露点を上昇させてもよい。さらに、これらを組み合わせてもよい。
【0010】
また、液膜の凍結中においては液膜と凍結膜が混在する状態が存在するが、液体の凝固点よりも低い温度を有し、しかも液体の蒸気を飽和状態に含有する気体冷媒や第2気体(以下「気体冷媒等」という)を基板の表面に供給して凍結処理を行うと、雰囲気露点の低下が抑制されて液膜および基板の温度を下回るのが防止される。特に、液膜の薄膜化から凍結手段による凍結膜形成に切り替わる際、気体冷媒等の供給流量をゼロから連続的または段階的に増大させるのが好適である。というのも、このように構成することで、雰囲気の露点が急激に低下するのが防止されて基板および液膜の温度が液膜を構成する液体の凝固点以下となる前に雰囲気の露点が基板および液膜の温度を下回り、蒸発乾燥が発生するのを防止することができるからである。
【0011】
また、気体冷媒等の代わりに、液体の凝固点よりも低い温度を有し、しかも液体に対して不溶性の液状冷媒を基板の表面に供給してもよい。この場合、液状冷媒が液膜全体を覆うため、凍結中の液膜の蒸発乾燥が効果的に防止される。
【0012】
また、液体の凝固点よりも低い温度を有する冷媒を基板の裏面に供給して液膜を凍結してもよい。もちろん、基板裏面への冷媒の供給と、基板表面への気体冷媒等や液状冷媒の供給を併用してもよい。
【0013】
さらに、基板保持手段に保持された基板の表面と対して対向手段を対向させて雰囲気を形成してもよい。この場合、雰囲気が対向手段により規定されて周辺雰囲気が基板と対向手段とに挟まれた雰囲気に流れ込むのが防止され、雰囲気の露点を正確に調整することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、基板の表面上に形成された液膜を薄膜化する間、液膜および基板の温度が雰囲気の露点以下となるように、雰囲気の露点と液膜および基板の温度との少なくとも一方が調整されるため、基板表面上の液膜が蒸発乾燥することなく当該液膜を薄膜化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】図1の基板処理装置の制御構成を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態にかかる基板処理装置の動作を模式的に示す図である。
【図4】第1実施形態にかかる基板処理装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】水、氷の蒸気圧曲線である。
【図6】本発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。
【図7】本発明にかかる基板処理装置の第3実施形態を示す図である。
【図8】本発明にかかる基板処理装置の第4実施形態を示す図である。
【図9】本発明にかかる基板処理装置の第5実施形態を示す図である。
【図10】本発明にかかる基板処理装置の第6実施形態を示す図である。
【図11】図10の基板処理装置の制御構成を示すブロック図である。
【図12】第6実施形態にかかる基板処理装置の動作を模式的に示す図である。
【図13】第6実施形態にかかる基板処理装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図14】本発明にかかる基板処理装置の第7実施形態を示す図である。
【図15】本発明にかかる基板処理装置の第8実施形態を示す図である。
【図16】本発明にかかる基板処理装置の第9実施形態を示す図である。
【図17】本発明にかかる基板処理装置の第10実施形態を示す図である。
【図18】本発明にかかる基板処理装置の第11実施形態を示す図である。
【図19】本発明にかかる基板処理装置の第12実施形態を示す図である。
【図20】本発明にかかる基板処理装置の第13実施形態を示す図である。
【図21】本発明にかかる基板処理装置の第14実施形態を示す図である。
【図22】本発明にかかる基板処理装置の第15実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図であり、図2は図1の基板処理装置の制御構成を示すブロック図である。この基板処理装置は半導体ウエハ等の基板Wの表面Wfをリンス処理する枚葉式の基板処理装置であり、当該リンス処理後にリンス液膜を薄膜化するとともに、当該液膜を凍結した後で昇華乾燥により基板Wを乾燥させる。
【0017】
この基板処理装置は、基板Wに対して基板処理を施す処理空間をその内部に有する処理チャンバー1と、装置全体を制御する制御ユニット5とを備えている。この処理チャンバー1内には、スピンチャック2と、2種類の吐出ノズル3、4とが設けられている。スピンチャック2は、基板Wの表面Wfを上方に向けて略水平姿勢に保持した状態で、基板Wを回転させるものであり、本発明の「基板保持手段」として機能する。また、2種類の吐出ノズルとして、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfに向けて低温、例えば1゜C冷却されたDIWをリンス液として吐出するDIW吐出ノズル3と、同基板表面Wfに向けて凍結用窒素ガス、昇華乾燥用窒素ガスおよび常温窒素ガスを吐出するガス吐出ノズル4とが設けられている。
【0018】
上記スピンチャック2の中心軸21の上端部には、円板状のスピンベース23がネジなどの締結部品によって固定されている。この中心軸21はモータを含むチャック回転機構22の回転軸に連結されている。そして、制御ユニット5からの動作指令に応じてチャック回転機構22が駆動されると、中心軸21に固定されたスピンベース23が回転中心A0を中心に回転する。
【0019】
スピンベース23の周縁部付近には、基板Wの周縁部を把持するための複数個のチャックピン24が立設されている。チャックピン24は、円形の基板Wを確実に保持するために3個以上設けてあればよく、スピンベース23の周縁部に沿って等角度間隔で配置されている。各チャックピン24のそれぞれは、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持部と、基板支持部に支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持部とを備えている。各チャックピン24は、基板保持部が基板Wの外周端面を押圧する押圧状態と、基板保持部が基板Wの外周端面から離れる解放状態との間を切り替え可能に構成されている。
【0020】
そして、スピンベース23に対して基板Wが受渡しされる際には、各チャックピン24を解放状態とし、基板Wに対してリンス処理を行う際には、各チャックピン24を押圧状態とする。各チャックピン24を押圧状態とすると、各チャックピン24は基板Wの周縁部を把持して、基板Wがスピンベース23から所定間隔を隔てて略水平姿勢に保持されることとなる。これにより、基板Wは、その表面Wfを上方に向け、裏面Wbを下方に向けた状態で保持される。なお、この実施形態では、基板Wの表面Wfに微細パターンが形成されており、表面Wfがパターン形成面となっている。
【0021】
DIW吐出ノズル3をスキャン駆動するための駆動源として、スピンチャック2の周方向外側にノズル駆動用回転モータ31が設けられている。この回転モータ31には回転軸33が接続され、この回転軸33には第1アーム35が水平方向に延びるように接続されており、この第1アーム35の先端に上記DIW吐出ノズル3が取り付けられている。そして、制御ユニット5からの動作指令に応じて第1アーム駆動機構61が作動して回転モータ31を駆動させる。これにより第1アーム35が回転軸33回りに揺動することとなる。
【0022】
このDIW吐出ノズル3にはDIW供給部71が接続されている。このDIW供給部71はDIW貯留部711および熱交換器712を有しており、熱交換器712はDIW貯留部711から供給される常温DIWをその凝固点近傍温度まで冷却する。すなわち、DIW供給部71は凝固点近傍温度(本実施形態では、約1゜C)まで冷却された低温DIW(図中の「Cool DIW」)を供給可能となっている。
【0023】
また、吐出ノズル4をスキャン駆動するための駆動源として、スピンチャック2の周方向外側にノズル駆動用回転モータ41が設けられている。この回転モータ41には回転軸43が接続され、この回転軸43には第2アーム45が水平方向に延びるように接続されており、この第2アーム45の先端に上記吐出ノズル4が取り付けられている。そして、制御ユニット5からの動作指令に応じて第2アーム駆動機構62が作動して回転モータ41を駆動させる。これにより第2アーム45が回転軸43回りに揺動することとなる。
【0024】
この吐出ノズル4では、ガス供給管4Aにガス供給管4Bが挿通された、いわゆる二重管構造を有している。そして、ガス供給管4Aに対して窒素ガス供給部72の窒素ガス貯留部721が直接接続されており、常温(RT)の窒素ガス(図中の「常温N2ガス」)がそのままガス供給管4Aを介してノズル4から基板表面Wfに向けて吐出される。また、ガス供給管4Bに対して窒素ガス供給部72の熱交換器722、723が接続されている。これらのうち一方の熱交換器722は窒素ガス貯留部721から供給される常温窒素ガスを冷却し、これによって水蒸気を飽和した高湿度状態で、しかもDIWの凝固点よりも低い温度まで冷やされた冷却高湿度窒素ガス(図中の「Cold wet N2ガス」)が生成され、凍結用冷媒としてガス供給管4Bに供給されてノズル4から基板表面Wfに向けて吐出される。なお、この実施形態では、冷却高湿度窒素ガスの露点を冷却高湿度窒素ガスにより凍結する凍結膜(氷膜)の温度とほぼ同一の−20゜Cに調整している。なお、凍結膜の温度(−20゜C)は本願発明者の実測結果である。
【0025】
また、他方の熱交換器723は窒素ガス貯留部721から供給される常温窒素ガスを冷却し、これによって凍結膜(氷膜)の温度(本実施形態では−20゜C)よりも低い露点を有する昇華乾燥用窒素ガス、例えば露点が−70゜Cの冷却乾燥窒素ガス(図中の「Cold dry N2ガス」)が生成され、昇華乾燥用ガスとしてガス供給管4Bに供給されてノズル4から基板表面Wfに向けて吐出される。このようにガス吐出ノズル4に対し、冷却高湿度窒素ガス(Cold wet N2ガス)および冷却乾燥窒素ガス(Cold dry N2ガス)をそれぞれ供給可能となっており、それぞれを独立して供給したり、両者を混合して供給可能となっている。
【0026】
次に上記のように構成された基板処理装置の動作について図3ないし図5を参照しながら説明する。図3は第1実施形態にかかる基板処理装置の動作を模式的に示す図である。また、図4は第1実施形態にかかる基板処理装置の動作を示すタイミングチャートである。さらに、図5は水、氷の蒸気圧曲線である。この装置では、基板搬入時には、全ノズル3、4はスピンチャック2の上方空間から側方に退避されており、基板Wとの干渉が防止されている。そして、基板表面Wfを上方に向けた状態で表面Wfがフッ酸等の薬液処理が施された基板Wが装置内に搬入され、スピンチャック2に保持される。なお、処理チャンバー1内には、例えば半導体製造工場などにおいて一般的に使用されているダウンフロー(湿度40%〜50%の室温のダウンフロー)が常時供給されているため、基板Wの表面Wfに接する雰囲気SPの露点は約10゜Cとなっている。
【0027】
基板搬入が完了すると、制御ユニット5がメモリ(図示省略)に記憶されているプログラムにしたがって装置各部を制御して、リンス工程、薄膜形成工程、凍結工程、昇華乾燥工程および結露防止工程をこの順序で実行する。これらの工程のうちリンス工程では、DIW吐出ノズル3を基板Wの回転中心AO上方の回転中心位置へ移動させるとともに、チャック回転機構22を駆動させてスピンチャック2と基板Wとを例えば300rpmで一体的に回転させる。そして、DIW吐出ノズル3から低温DIW(Cool DIW)を例えば10秒間だけ基板表面Wfに供給する。基板表面に供給された低温DIWには、基板Wの回転に伴う遠心力が作用し、低温DIWが基板Wの径方向外向きに均一に広げられて基板表面Wfに対するリンス処理が実行される。リンス処理を実行している間に、図4に示すように、基板Wの温度は常温(RT)から徐々に低温DIWと同一温度に達する。このように、本実施形態では、雰囲気SPの露点(10゜C)より低い低温DIW(1゜C)を基板表面Wfに供給することで、リンス工程が完了した時点、つまり薄膜形成工程の直前時点で基板表面Wf上の液膜11および基板Wの温度は雰囲気SPの露点以下となっている。また、このように低温DIWを用いることで液膜11の温度を凝固点に近づけることができ、後述する凍結処理に要する時間を短縮することも可能となる。
【0028】
上記リンス工程に続く薄膜形成工程では、低温DIWの供給が停止されて基板Wおよび液膜11の温度は数度程度高くなるものの、液膜11および基板Wの温度は雰囲気SPの露点以下のままであり、液膜11の蒸発乾燥は生じず、液膜11を所望厚みに薄膜化することができる。より具体的には、リンス工程が完了すると、液膜11および基板Wの温度が雰囲気SPの露点以下の状態で基板Wを300rpm〜1200rpmで回転させたままDIW吐出ノズル3からのDIW供給を停止するとともにDIW吐出ノズル3をスピンチャック2の上方空間から側方に退避移動させる。基板表面Wf上のDIWの一部は基板W外に振り切られ、基板表面Wfの全体に所定の厚みを有する液膜(水膜)11が形成される(図3(b))。なお、液膜11の厚みについては、基板Wの回転数を制御することで任意の値に調整することができ、しかも液膜11および基板Wの温度が雰囲気SPの露点以下となっているため、薄膜形成工程を行っている間に液膜11が蒸発乾燥することを確実に防止することができる。
【0029】
こうして液膜11の薄膜化が完了する直前より、第2アーム45を回動させてガス吐出ノズル4を基板Wの回転中心AO上方の回転中心位置へ移動させて凍結工程を実行する。すなわち、熱交換器722により常温窒素ガスを冷却して水蒸気を飽和した高湿度状態で、しかもDIWの凝固点よりも低い温度まで冷やされた冷却高湿度窒素ガス(Cold wet N2ガス)を生成し、ノズル4から基板表面Wfに供給する。これにより、基板表面Wf全面に冷却高湿度窒素ガスを供給して液膜11を凍結させて凍結膜12を形成する(図3(c))。この第1実施形態では、図4に示すように、薄膜形成工程の後半より冷却高湿度窒素ガスを供給しているが、その流量はゼロから連続的に増加させており、雰囲気SPの露点が急激に低下するのを防止している。これは、基板Wおよび液膜11の温度が液膜11を構成するDIWの凝固点以下となる前に雰囲気SPの露点が基板Wおよび液膜11の温度を下回り、蒸発乾燥が発生するのを防止するためである。つまり、液膜11および基板Wの温度が雰囲気SPの露点以下となっている状態で液膜11の凍結が開始されるように冷却高湿度窒素ガス(Cold wet N2ガス)の流量調整が行われている。また、第1実施形態では、冷却高湿度窒素ガスを用いているため、凍結膜12の形成途中、つまり液膜11と凍結膜12が混在する状態においても、雰囲気SPの露点は基板Wおよび凍結膜12の温度とほぼ同一となり、凍結工程中にDIWの蒸発乾燥が確実に防止されて所望厚みの凍結膜12が基板表面Wf全体に均一に形成される。
【0030】
基板表面Wf全体に凍結膜12が形成されて凍結工程が完了すると、熱交換器722からのノズル4への冷却高湿度窒素ガスの供給流量を減少させつつ、熱交換器723からノズル4への冷却乾燥窒素ガス(Cold dry N2ガス)の供給を開始する。このように第1実施形態では、冷却高湿度窒素ガスと冷却乾燥窒素ガスとを同時供給するタイミングが存在しているが、そのタイミングでは冷却高湿度窒素ガスの供給流量を連続的に減少させる一方、冷却乾燥窒素ガスの供給流量を連続的に増大させており、雰囲気SPの露点及び温度が急激に変化するのを防止しつつ昇華乾燥を効果的に行う露点まで低下させている。
【0031】
このように冷却乾燥窒素ガスの供給により雰囲気SPの露点が低下してくると、凍結膜12は時間経過とともに昇華していく。これは、冷凍庫内の氷がどんどん小さくなっていく現象と同一である。すなわち、第1実施形態では雰囲気SPの露点を−70゜C程度としており、雰囲気SP中の水蒸気の分圧は図5に示すように約0.7Pa(5.25×10−3Torr)程度にまで低下している。これに対し、凍結膜12および基板Wの温度は冷却乾燥窒素ガスの温度よりも高く、本願発明者が実測したところ−20゜C程度となっている。これは、基板Wの裏面が常温雰囲気に面しており、基板裏面から基板表面Wfへの熱移動により凍結膜12の温度低下が抑制されていることに起因すると考えられる。ただし、基板表面Wfには冷却乾燥窒素ガスが継続して供給されているため、凍結膜12が液相に変わることはなく、昇華乾燥用の冷却乾燥窒素ガスの温度Tg(本実施形態では−70゜C)とDIWの凝固点との間の温度Ts(本実施形態では−20゜C)となる。したがって、温度Tsでの凍結膜12の蒸気圧(昇華圧)、例えば−20゜Cで約100Paに対し、凍結乾燥用窒素ガス中の水蒸気の分圧は上記したように0.7Pa程度と非常に低く、この蒸気圧差を埋めるように昇華蒸発が生じる。しかも本実施形態では、冷却乾燥窒素ガスは継続して供給されるため、雰囲気SPでの冷却乾燥窒素ガス中の水蒸気の分圧が凍結膜12の蒸気圧よりも低いという状況が維持されて昇華乾燥が進行していく。しかも、昇華により発生した水蒸気成分は冷却乾燥窒素ガスの気流に乗って基板表面Wfから取り除かれるため、凍結膜12から昇華して発生した水蒸気成分が液相や固相に戻り基板表面Wfに再付着するのを確実に防止することができる。このように、本実施形態では、処理チャンバー1内を大気圧に維持したまま凍結膜12が液相を経由することなく気相に昇華されるとともに冷却乾燥窒素ガスと一緒に基板表面Wfから除去されて基板Wが乾燥される(図3(d))。
【0032】
基板表面Wfから凍結膜12が完全に除去されて昇華乾燥工程が完了した時点では基板Wの温度はDIWの凝固点以下となっており、低温状態のまま基板Wを搬出すると、基板全面に結露が発生してしまう。そこで、本実施形態では昇華乾燥工程の完了後に結露防止工程を実行している。この結露防止工程では、ノズル4からの冷却乾燥窒素ガス(Cold dry N2ガス)の吐出が停止されるのと入れ替えに窒素ガス貯留部721からノズル4に常温窒素ガスの供給が開始される(図3(e))。このように常温窒素ガスが基板表面Wfに供給されることで基板Wの温度が常温付近まで戻される。このため、基板Wに結露が発生するのを確実に防止することができる。なお、結露防止工程は後で説明する実施形態においても同様に実行される。
【0033】
最後に、基板回転を停止するとともに、第2アーム45を回動させてノズル4、4Bをスピンチャック2の上方空間から側方に退避移動させた後に、処理チャンバー1から処理済の基板Wが搬出される。
【0034】
以上のように、この実施形態では、薄膜形成工程を実行する前のリンス工程においてDIW供給部71から低温DIWを基板表面Wfに供給して基板Wおよび液膜11の温度が雰囲気SPの露点以下に調整され、基板表面Wf上に形成された液膜11を薄膜化する間(薄膜形成工程)、液膜11および基板Wの温度が雰囲気SPの露点以下となっている。したがって、基板表面Wf上の液膜11が蒸発乾燥することなく当該液膜11を所望の厚さに薄膜化することができる。
【0035】
また、凍結工程を実行する際に冷却高湿度窒素ガス(Cold wet N2ガス)を凍結用冷媒として用いているが、単にDIWの凝固点よりも低い温度まで冷やされた冷却ガスを用いるのではなく、水蒸気を飽和した高湿度状態のものを用いることで冷却高湿度窒素ガスの露点を凍結膜(氷膜)12の温度とほぼ同一温度に調整している。したがって、液膜11の凍結が進行している途中、つまり液膜11の薄膜化から凍結膜12の形成に切り替わる際、凍結前の液膜11が蒸発乾燥するのを防止することができる。
【0036】
さらに、DIWの凝固点に近い低温DIWを用いて液膜11を形成しているので、凍結工程を実行する際、既に液膜11の温度が凝固点に近づいているため、凍結処理に要する時間を短縮することが可能となり、常温DIWをリンス液として用いる場合に比べてタクトタイムをさらに短縮することができる。
【0037】
このように第1実施形態では、チャック回転機構22がスピンチャック2に保持された基板Wを回転させて液膜11の薄膜化を実行しており、本発明の「基板回転手段」として機能している。また、DIW供給部71が凝固点近傍温度(本実施形態では、約1゜C)まで冷却された低温DIW(Cool DIW)を供給して基板Wおよび液膜11の温度を雰囲気SPの露点以下に低下させており、本発明の「調整手段」として機能している。また、窒素ガス供給部72は、水蒸気を飽和した高湿度状態で、しかもDIWの凝固点よりも低い温度まで冷やした冷却高湿度窒素ガス(Cold wet N2ガス)を基板表面Wfに供給して凍結処理を実行しており、本発明の「凍結手段」および「表面冷媒供給部」として機能している。また、冷却高湿度窒素ガス(Cold wet N2ガス)が本発明の「気体冷媒」に相当している。
【0038】
図6は本発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。この第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、凍結用冷媒の種類である。すなわち、第2実施形態では、凍結用冷媒としてDIWの凝固点よりも低い温度を有し、しかもDIWに対して不溶性の液状冷媒、例えばHFE(Hydrofluoroether:ハイドロフルオロエーテル)液を主成分とするHFE液、より具体的には住友スリーエム株式会社製の商品名ノベック(登録商標)7100(凝固点:−135゜C)を凍結用冷媒として用いている。なお、HFE液としては、同製の商品名ノベック(登録商標)シリーズのHFE、つまりノベック7200、ノベック7300などを用いることができる。
【0039】
この第2実施形態では、図6に示すように、HFE液供給部73が設けられている。このHFE液供給部73は、HFE液貯留部と熱交換器とを有している。そして、HFE液供給部73では、熱交換器がHFE液貯留部から供給されるHFE液をDIWの凝固点よりも低い温度、本実施形態では−20゜Cまで冷却し、その冷却HFE液(図中の「Cold HFE液」)が生成されて図示を省略するノズルから基板表面Wfに向けて供給される。これにより液膜11が凍結されて凍結膜12が形成される。このように、第2実施形態では、HFE液供給部73が本発明の「凍結手段」および「表面冷媒供給部」として機能している。なお、その他の構成は基本的に第1実施形態と同一である。
【0040】
このように構成された基板処理装置においても、第1実施形態と同様に、基板表面Wfを上方に向けた状態で表面Wfがフッ酸等の薬液処理が施された基板Wが装置内に搬入され、スピンチャック2に保持される。このとき、基板Wの表面Wfに接する雰囲気SPの露点は約10゜Cとなっている。そして、基板搬入が完了すると、制御ユニット5がメモリ(図示省略)に記憶されているプログラムにしたがって装置各部を制御して、リンス工程、薄膜形成工程、凍結工程、昇華乾燥工程および結露防止工程をこの順序で実行する。すなわち、リンス工程でDIW吐出ノズル3から低温DIW(Cool DIW)を基板表面Wfに供給してリンス処理を行った後、薄膜形成工程を実行して液膜11を所望厚みに薄膜化する。
【0041】
液膜11の薄膜化が完了する直前より冷却HFE液(Cold HFE液)を基板表面Wfに供給して凍結工程を開始する。この第2実施形態では、冷却HFE液の供給により液膜11および基板Wは急速に冷却されて液膜11の凍結が直ちに開始される。また、HFE液はDIWに対して不溶であるため、冷却HFE液の供給により雰囲気SPの露点が変化することなく、一定であり、液膜11の凍結が進行している途中、つまり液膜11の薄膜化から凍結膜12の形成に切り替わる際、基板Wおよび液膜11の温度は雰囲気SPの露点以下となっている。しかも、基板表面Wfに供給された冷却HFE液は基板Wの回転に伴う遠心力により基板表面Wf全体に行き渡り、液膜11および凍結膜12を全面的に覆って雰囲気SPから遮断する。したがって、液膜11の薄膜化から凍結膜12の形成に切り替わる際に凍結前の液膜11が蒸発乾燥するのを効果的に防止することができる。
【0042】
基板表面Wf全体に凍結膜12が形成されると、HFE液供給部73からの冷却HFE液の供給流量をゼロまで減少させつつ、窒素ガス供給部72からの冷却乾燥窒素ガス(Cold dry N2ガス)の供給を開始して昇華乾燥を行う。この昇華乾燥工程では、基板表面Wfに供給されたHFE液が基板Wの回転に伴って振り切られた後で第1実施形態と同様に昇華乾燥される。
【0043】
以上のように、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、薄膜形成工程を実行する前のリンス工程においてDIW供給部71から低温DIWを基板表面Wfに供給して基板Wおよび液膜11の温度が雰囲気SPの露点以下に調整しているので、基板表面Wf上の液膜11が蒸発乾燥することなく当該液膜11を所望の厚さに薄膜化することができる。また、第2実施形態では、凍結用冷媒として液状冷媒を用いているため、凍結処理に要する時間を短縮することができるとともに、凍結前の液膜11が蒸発乾燥するのを効果的に防止することができる。さらに、凍結工程中に雰囲気SPに含まれる水蒸気が冷却HFE液に接触して結露が発生することがあるが、当該結露は冷却HFE液とともに基板Wから排出されて基板Wへの付着は確実に防止される。なお、この点に関しては、冷却HFE液を用いる他の実施形態においても全く同様である。
【0044】
図7は本発明にかかる基板処理装置の第3実施形態を示す図である。この第3実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は凍結用冷媒の供給位置である。すなわち、第3実施形態では、基板表面Wfに凍結用冷媒を供給する代わりに、凍結用冷媒として冷却窒素ガス(図中の「Cold N2ガス」)を裏面冷媒供給部74からガス供給管25およびノズル27(図1参照)を介して基板Wの裏面Wbに供給している。すなわち、裏面冷媒供給部74では、熱交換器(図示省略)により常温窒素ガスを冷却してDIWの凝固点よりも低い温度まで冷やされた冷却窒素ガス(Cold N2ガス)を生成し、ノズル27から基板裏面Wbに供給する。これにより、基板裏面Wb全面に冷却窒素ガスを供給して基板Wを介して液膜11を凍結させて凍結膜12を形成する。このように第3実施形態では、裏面冷媒供給部74が本発明の「凍結手段」として機能している。
【0045】
このように構成された基板処理装置においても、第1実施形態と同様に、基板表面Wfを上方に向けた状態で表面Wfがフッ酸等の薬液処理が施された基板Wが装置内に搬入され、スピンチャック2に保持される。このとき、基板Wの表面Wfに接する雰囲気SPの露点は約10゜Cとなっている。そして、基板搬入が完了すると、制御ユニット5がメモリ(図示省略)に記憶されているプログラムにしたがって装置各部を制御して、リンス工程、薄膜形成工程、凍結工程、昇華乾燥工程および結露防止工程をこの順序で実行する。すなわち、リンス工程でDIW吐出ノズル3から低温DIW(Cool DIW)を基板表面Wfに供給してリンス処理を行った後、薄膜形成工程を実行して液膜11を所望厚みに薄膜化する。
【0046】
液膜11の薄膜化が完了する直前より冷却窒素ガス(Cold N2ガス)を基板裏面Wbに供給して凍結工程を開始する。この第3実施形態では、基板表面Wfへの凍結用冷媒(冷却高湿度窒素ガス)の供給を行っていないため、凍結工程中も雰囲気SPの露点が変化することなく、一定であり、液膜11の凍結が進行している途中、つまり液膜11の薄膜化から凍結膜12の形成に切り替わる際、基板Wおよび液膜11の温度は雰囲気SPの露点以下となっている。したがって、液膜11の薄膜化から凍結膜12の形成に切り替わる際に凍結前の液膜11が蒸発乾燥するのを効果的に防止することができる。
【0047】
なお、基板表面Wf全体に凍結膜12が形成されると、裏面冷媒供給部74からの冷却窒素ガスの供給流量を減少させつつ、窒素ガス供給部72からの冷却乾燥窒素ガス(Cold dry N2ガス)の供給を開始して昇華乾燥を行う。
【0048】
以上のように、第3実施形態においても、第1実施形態と同様に、薄膜形成工程を実行する前のリンス工程においてDIW供給部71から低温DIWを基板表面Wfに供給して基板Wおよび液膜11の温度が雰囲気SPの露点以下に調整しているので、基板表面Wf上の液膜11が蒸発乾燥することなく当該液膜11を所望の厚さに薄膜化したり、凍結処理に要する時間を短縮することができる。また、第3実施形態では、凍結用冷媒を基板裏面Wbに供給しているため、上記したように凍結前の液膜11が蒸発乾燥するのを効果的に防止することができる。なお、第3実施形態では、凍結用冷媒として冷却窒素ガスを用いているが、冷却HFE液などの液体冷媒を用いてもよい。
【0049】
上記第1ないし第3実施形態では、基板表面Wfまたは基板裏面Wbに凍結用冷媒を供給して凍結処理を実行しているが、凍結用冷媒の供給態様はこれらに限定されるものではなく、次のような供給態様を採用してもよい。例えば図8に示すように基板表面Wfに冷却高湿度窒素ガス(Cold wet N2ガス)を供給するとともに、基板裏面Wbに冷却窒素ガス(Cold N2ガス)または冷却HFE液(Cold HFE液)を供給してもよい(第4実施形態)。また、図9に示すように基板表面Wfに冷却HFE液(Cold HFE液)を供給するとともに、基板裏面Wbに冷却窒素ガス(Cold N2ガス)または冷却HFE液(Cold HFE液)を供給してもよい(第5実施形態)。
【0050】
また、上記第1ないし第5実施形態では、ノズル4から基板表面Wfに凍結用冷媒や昇華乾燥用ガスを供給しているが、次に説明する実施形態のように遮断部材を基板表面Wfに対向配置させて雰囲気SPを規定してもよく。これにより、周辺雰囲気の巻込みを防止することができる。
【0051】
また、上記第1実施形態では、二重管構造のノズル4を採用しているが、ノズル構成はこれに限定されるものではなく、従来より多用されている種々のノズルを用いたり、ノズル本数を追加配置してもよい。
【0052】
図10は本発明にかかる基板処理装置の第6実施形態を示す図であり、図11は図10の基板処理装置の制御構成を示すブロック図である。この第6実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、遮断部材9を設けている点、当該遮断部材9を用いて雰囲気SPを規定しながら薄膜形成工程、凍結工程、昇華乾燥工程および結露防止工程を実行している点、ならびに常温高湿度窒素ガスを用いて薄膜形成工程を実行している点である。なお、その他の構成は第1実施形態と基本的に同一であるため、同一構成については同一符号を付して構成説明を省略する。
【0053】
この第6実施形態では、スピンチャック2の上方に、中心部に開口を有する円盤状の遮断部材9が設けられている。遮断部材9は、その下面(底面)が基板表面Wfと略平行に対向する基板対向面となっており、その平面サイズは基板Wの直径と同等以上の大きさに形成されている。遮断部材9は略円筒形状を有する支持軸91の下端部に略水平に取り付けられ、支持軸91は水平方向に延びるアーム92により基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転可能に保持されている。また、アーム92には、遮断部材回転機構93と遮断部材昇降機構94が接続されている。
【0054】
遮断部材回転機構93は、制御ユニット5からの動作指令に応じて支持軸91を基板Wの中心を通る鉛直軸回りに回転させる。また、遮断部材回転機構93は、スピンチャック2に保持された基板Wの回転に応じて基板Wと同じ回転方向でかつ略同じ回転速度で遮断部材9を回転させるように構成されている。
【0055】
また、遮断部材昇降機構94は、制御ユニット5からの動作指令に応じて、遮断部材9をスピンベース23に近接して対向させたり、逆に離間させることが可能となっている。具体的には、制御ユニット5は遮断部材昇降機構94を作動させることで、基板処理装置に対して基板Wを搬入出させる際には、スピンチャック2の上方の離間位置(図10に示す位置)に遮断部材9を上昇させる。その一方で、基板Wに対して所定の処理を施す際には、スピンチャック2に保持された基板Wの表面Wfのごく近傍に設定された対向位置まで遮断部材9を下降させる。
【0056】
支持軸91は中空に仕上げられ、その内部に遮断部材9の開口に連通したガス供給路95が挿通されている。ガス供給路95は窒素ガス供給部72に接続されており、常温窒素ガス(図中の「常温N2ガス」)および常温高湿度窒素ガス(図中の「常温 wet N2ガス」)が供給される。この窒素ガス供給部72は、第1実施形態と同様に、熱交換器722、723を有しており、冷却高湿度窒素ガス(Cold wet N2ガス)および冷却乾燥窒素ガス(Cold dry N2ガス)を供給可能となっている。また、窒素ガス貯留部721から熱交換器722、723を通さずに常温窒素ガスが結露防止用ガスとしてガス供給路95に供給可能となっている。さらに、窒素ガス供給部72では加湿器724が設けられて加湿器724を介してガス供給路95と接続されている。このため、窒素ガス貯留部721から供給される常温窒素ガスに水蒸気が飽和水蒸気圧に達するまで加えられて常温高湿度窒素ガスが作成され、ガス供給路95に供給される。
【0057】
また、ガス供給路95の内部には、遮断部材9の開口に連通したガス供給管96が挿通されており、ガス供給管96の下端にノズル97が結合されている。ガス供給管96は熱交換器722、723に接続されており、冷却高湿度窒素ガス(Cold wet N2ガス)および冷却乾燥窒素ガス(Cold dry N2ガス)が供給される。このように温度および湿度が互いに異なる4種類の窒素ガス、つまり常温窒素ガス、冷却高湿度窒素ガス、冷却乾燥窒素ガスおよび常温高湿度窒素ガスを窒素ガス供給部72から遮断部材9を介して基板表面Wfに供給可能となっている。
【0058】
次に、上記のように構成された基板処理装置の動作について図12および図13を参照しつつ説明する。図12は第6実施形態にかかる基板処理装置の動作を模式的に示す図である。また、図13は第6実施形態にかかる基板処理装置の動作を示すタイミングチャートである。この装置では、図12(a)に示すように、基板搬入時には、遮断部材9はスピンチャック2の上方の離間位置に退避して基板Wとの干渉を防止しており、基板表面Wfを上方に向けた状態で表面Wfがフッ酸等の薬液処理が施された基板Wが装置内に搬入され、スピンチャック2に保持される。
【0059】
基板搬入が完了すると、制御ユニット5がメモリ(図示省略)に記憶されているプログラムにしたがって装置各部を制御して、リンス工程、薄膜形成工程、凍結工程、昇華乾燥工程および結露防止工程をこの順序で実行する。これらの工程のうちリンス工程では、DIW吐出ノズル3を基板Wの回転中心AO上方の回転中心位置へ移動させるとともに、チャック回転機構22を駆動させてスピンチャック2とともに基板Wを例えば300rpmで回転させる。この第6実施形態では、図11に示すようにDIW供給部71AのDIW貯留部711から供給される常温(RT)のDIWをそのままリンス液としてノズル3に供給可能となっている。そして、リンス工程では、制御ユニット5はチャック回転機構22を駆動させてスピンチャック2とともに基板Wを例えば300rpmで回転させるとともに、DIW吐出ノズル3から常温DIWを例えば10秒間だけ基板表面Wfに供給する。基板表面に供給されたDIWには、基板Wの回転に伴う遠心力が作用し、当該常温DIWが基板Wの径方向外向きに均一に広げられて基板表面Wfに対するリンス処理が実行される。このリンス処理を実行している間に、図13に示すように、基板Wの温度は常温(RT)となっており、雰囲気SPの露点(10゜C)より高くなっている。
【0060】
リンス工程が完了すると、基板Wを300rpmで回転させたままDIW吐出ノズル3からのDIW供給を停止するとともにDIW吐出ノズル3を基板Wから離間した退避位置に移動させる。これと入替えに、遮断部材9が対向位置まで降下され、基板表面Wfに近接配置される。これにより、基板表面Wfが遮断部材9の基板対向面に近接した状態で覆われ、雰囲気SPが規定されるとともに基板Wの周辺雰囲気から遮断される。そして、この状態(遮断部材9を基板Wに近接した状態)のまま、薄膜形成工程、凍結工程、昇華乾燥工程および結露防止工程がこの順序で実行される。
【0061】
薄膜形成工程では、基板Wを高速回転させることで基板表面Wf上の常温DIWの一部は基板W外に振り切られ、基板表面Wfの全体に所定の厚みを有する液膜(水膜)11が形成される(図12(b))。なお、液膜11の厚みについては、基板Wの回転数を制御することで任意の値に調整することができる。また、この第6実施形態では、薄膜形成工程を実行している間、常温高湿度窒素ガス(常温 wet N2ガス)が窒素ガス供給部72から遮断部材9を介して基板表面Wfに供給される。これによって、基板表面Wfと遮断部材9とに挟まれた雰囲気SPの露点が常温(RT)まで引き上げられて基板Wおよび液膜11の温度とほぼ同一となる。その結果、薄膜形成工程を行っている間に液膜11が蒸発乾燥することを確実に防止することができる。
【0062】
こうして液膜11の薄膜化が完了する直前より、常温高湿度窒素ガスの供給流量をゼロまで減少させながら冷却高湿度窒素ガス(Cold wet N2ガス)の供給を開始する。この冷却高湿度窒素ガスの供給により基板Wおよび液膜11の温度が低下するとともに雰囲気SPの露点も低下する。ここで、冷却高湿度窒素ガスの供給流量を急激に高めることで凍結工程の短縮化を図ることも考えられるが、この場合、雰囲気SPの露点低下が基板Wおよび液膜11の温度低下よりも大きくなり、雰囲気SPの露点が基板Wおよび液膜11の温度よりも低下してしまい液膜11の蒸発乾燥が発生する可能性がある。そこで、第6実施形態では、冷却高湿度窒素ガスの供給流量を連続的に所定値まで増加させることで、雰囲気SPの露点低下速度と基板Wおよび液膜11の温度低下速度とをほぼ一致させ、これによって液膜11の蒸発乾燥を防止している(図12(c))。これは第1実施形態での冷却高湿度窒素ガスの流量制御と同様の趣旨である。
【0063】
基板表面Wf全体に凍結膜12が形成されて凍結工程が完了すると、熱交換器722からのガス供給管96への冷却高湿度窒素ガスの供給流量を減少させつつ、熱交換器723からガス供給管96への冷却乾燥窒素ガス(Cold dry N2ガス)の供給を開始する。このように第6実施形態では、冷却高湿度窒素ガスと冷却乾燥窒素ガスとを同時供給するタイミングが存在しているが、これも第1実施形態での流量制御と同様の趣旨である。
【0064】
このように冷却乾燥窒素ガスの供給により雰囲気SPの露点が低下してくると、凍結膜12は時間経過とともに昇華して基板表面Wfに対する昇華乾燥処理が進行していく。しかも、昇華により発生した水蒸気成分は冷却乾燥窒素ガスの気流に乗って基板表面Wfから取り除かれるため、凍結膜12から昇華して発生した水蒸気成分が液相や固相に戻り基板表面Wfに再付着するのを確実に防止することができる。このように、本実施形態では、処理チャンバー1内を大気圧に維持したまま凍結膜12が液相を経由することなく気相に昇華されるとともに冷却乾燥窒素ガスと一緒に基板表面Wfから除去されて基板Wが乾燥される(図12(d))。
【0065】
基板表面Wfから凍結膜12が完全に除去されて昇華乾燥工程が完了した時点では基板Wの温度はDIWの凝固点以下となっており、低温状態のまま基板Wを搬出すると、基板全面に結露が発生してしまう。そこで、第1実施形態と同様に、昇華乾燥工程の完了後に結露防止工程を実行している(図12(e))。そして、最後に、基板Wおよび遮断部材9の回転を停止するとともに、遮断部材9がスピンチャック2の上方の離間位置に退避した後に、処理チャンバー1から処理済の基板Wが搬出される。
【0066】
以上のように、第6実施形態では、薄膜形成工程を実行する際、雰囲気SPに常温高湿度窒素ガス(常温 wet N2ガス)を供給して雰囲気SPの露点を引き上げて基板Wおよび液膜11の温度が雰囲気SPの露点以下となるように調整しているので、基板表面Wf上の液膜11が蒸発乾燥することなく当該液膜11を所望の厚さに薄膜化することができる。また、第6実施形態では、遮断部材9の基板対向面を基板表面Wfに近接させて雰囲気SPを規定しており、周辺雰囲気が雰囲気SPに流れ込むのを防止することができ、雰囲気SPの露点を正確に調整することができる。
【0067】
なお、第6実施形態では、遮断部材9を基板表面Wfに対向して配置して雰囲気SPを規定しており、本発明の「対向手段」に相当している。また、窒素ガス供給部72により常温窒素ガスに水蒸気を含有させて常温高湿度窒素ガスを生成し、当該常温高湿度窒素ガスを雰囲気SPに供給して雰囲気SPの露点を上昇させており、常温高湿度窒素ガスが本発明の「第1気体」に相当している。また、窒素ガス供給部72により冷却高湿度窒素ガス(Cold wet N2ガス)を生成し、当該冷却高湿度窒素ガスを雰囲気SPに供給して凍結処理を行っており、冷却高湿度窒素ガスが本発明の「第2気体」に相当している。さらに、窒素ガス供給部72が本発明の「調整手段」、「凍結手段」および「表面冷媒供給部」として機能している。
【0068】
図14は本発明にかかる基板処理装置の第7実施形態を示す図である。この第7実施形態が第6実施形態と大きく相違する点は、凍結用冷媒の種類である。すなわち、第7実施形態では、第2実施形態と同様に、凍結用冷媒としてDIWの凝固点よりも低い温度を有し、しかもDIWに対して不溶性の液状冷媒、例えばHFE(Hydrofluoroether:ハイドロフルオロエーテル)液を主成分とするHFE液を凍結用冷媒として用いている。
【0069】
この第7実施形態では、図14に示すように、HFE液供給部73が設けられている。このHFE液供給部73は、HFE液貯留部と熱交換器とを有している。そして、HFE液供給部73では、熱交換器がHFE液貯留部から供給されるHFE液をDIWの凝固点よりも低い温度、本実施形態では−20゜Cまで冷却し、その冷却HFE液(図中の「Cold HFE液」)が生成されて遮断部材9を介して基板表面Wfに向けて供給される。これにより液膜11が凍結されて凍結膜12が形成される。このように、第7実施形態では、HFE液供給部73が本発明の「凍結手段」および「表面冷媒供給部」として機能している。なお、その他の構成は基本的に第6実施形態と同一である。
【0070】
このように構成された基板処理装置においても、第6実施形態と同様に、基板表面Wfを上方に向けた状態で表面Wfがフッ酸等の薬液処理が施された基板Wが装置内に搬入され、スピンチャック2に保持される。そして、基板搬入が完了すると、制御ユニット5がメモリ(図示省略)に記憶されているプログラムにしたがって装置各部を制御して、リンス工程、薄膜形成工程、凍結工程、昇華乾燥工程および結露防止工程をこの順序で実行する。すなわち、リンス工程でDIW吐出ノズル3から常温DIWを基板表面Wfに供給してリンス処理を行った後、薄膜形成工程を実行して液膜11を所望厚みに薄膜化する。
【0071】
液膜11の薄膜化が完了する直前より冷却HFE液(Cold HFE液)を基板表面Wfに供給して凍結工程を開始する。この第7実施形態では、冷却HFE液の供給により液膜11および基板Wは急速に冷却されて液膜11の凍結が直ちに開始される。また、HFE液はDIWに対して不溶であるため、冷却HFE液の供給により雰囲気SPの露点への影響はなく、更に常温高湿度窒素ガスの供給も継続されているため、液膜11の凍結が進行している途中、つまり液膜11の薄膜化から凍結膜12の形成に切り替わる際、基板W及び液膜11の温度は雰囲気SPの露点以下となっている。しかも、基板表面Wfに供給された冷却HFE液は基板Wの回転に伴う遠心力により基板表面Wf全体に行き渡り、液膜11および凍結膜12を全面的に覆って雰囲気SPから遮断する。したがって、液膜11の薄膜化から凍結膜12の形成に切り替わる際に凍結前の液膜11が蒸発乾燥するのを効果的に防止することができる。なお第7実施形態では、図14に示すように、冷却HFE液の供給期間中に常温高湿度窒素ガス(常温 wet N2ガス)を基板表面Wfに向けて供給して雰囲気SPの露点が低下するのを抑制しているが、同供給期間中において常温高湿度窒素ガスに代えて冷却高湿度窒素ガス(Cold wet N2ガス)を供給するように構成してもよい。また、このように冷却HFE液の供給期間中に常温高湿度窒素ガスや冷却高湿度窒素ガスを基板表面Wfに供給する点に関しては、後で説明する第10実施形態(図17)、第12実施形態(図19)および第15実施形態(図22)においても同様である。
【0072】
基板表面Wf全体に凍結膜12が形成されると、HFE液供給部73からの冷却HFE液及び常温高湿度窒素ガスの供給流量をゼロまで減少させつつ、窒素ガス供給部72からの冷却乾燥窒素ガス(Cold dry N2ガス)の供給を開始して昇華乾燥を行う。この昇華乾燥工程では、基板表面Wfに供給されたHFE液が基板Wの回転に伴って振り切られた後で第6実施形態と同様に昇華乾燥される。
【0073】
以上のように、第7実施形態においても、第6実施形態と同様に、常温高湿度窒素ガス(常温 wet N2ガス)の供給により雰囲気SPの露点を引き上げて基板Wおよび液膜11の温度が雰囲気SPの露点以下となるように調整しているので、基板表面Wf上の液膜11が蒸発乾燥することなく当該液膜11を所望の厚さに薄膜化することができる。また、遮断部材9を利用することで周辺雰囲気が雰囲気SPに流れ込むのを防止することができ、雰囲気SPの露点を正確に調整することができる。さらに、凍結用冷媒として液状冷媒を用いているため、凍結処理に要する時間を短縮することができるとともに、凍結前の液膜11が蒸発乾燥するのを効果的に防止することができる。
【0074】
図15は本発明にかかる基板処理装置の第8実施形態を示す図である。この第8実施形態が第6実施形態と大きく相違する点は、凍結用冷媒の供給位置である。すなわち、第8実施形態では、基板表面Wfに凍結用冷媒を供給する代わりに、凍結用冷媒として冷却窒素ガス(図中の「Cold N2ガス」)を裏面冷媒供給部74からノズル27(図10参照)を介して基板Wの裏面Wbに供給している。すなわち、裏面冷媒供給部74では、熱交換器(図示省略)により常温窒素ガスを冷却してDIWの凝固点よりも低い温度まで冷やされた冷却窒素ガス(Cold N2ガス)を生成し、ガス供給管25およびノズル27(図10参照)を介して基板裏面Wbに供給する。これにより、基板裏面Wb全面に冷却窒素ガスを供給して基板Wを介して液膜11を凍結させて凍結膜12を形成する。このように第8実施形態では、裏面冷媒供給部74が本発明の「凍結手段」として機能している。
【0075】
このように構成された基板処理装置においても、第6実施形態と同様に、基板表面Wfを上方に向けた状態で表面Wfがフッ酸等の薬液処理が施された基板Wが装置内に搬入され、スピンチャック2に保持される。そして、基板搬入が完了すると、制御ユニット5がメモリ(図示省略)に記憶されているプログラムにしたがって装置各部を制御して、リンス工程、薄膜形成工程、凍結工程、昇華乾燥工程および結露防止工程をこの順序で実行する。すなわち、リンス工程でDIW吐出ノズル3から常温DIWを基板表面Wfに供給してリンス処理を行った後、常温高湿度窒素ガス(常温 wet N2ガス)の供給により雰囲気SPの露点を引き上げた状態で薄膜形成工程を実行して液膜11を所望厚みに薄膜化する。
【0076】
液膜11の薄膜化が完了する直前より冷却窒素ガス(Cold N2ガス)を基板裏面Wbに供給して凍結工程を開始する。この第8実施形態では、常温高湿度窒素ガスの供給が継続され、しかも基板表面Wfへの凍結用冷媒(冷却高湿度窒素ガス)の供給を行っていないため、冷却窒素ガスの供給により基板Wおよび液膜11の温度が急激に低下し、液膜11の凍結が進行している途中、つまり液膜11の薄膜化から凍結膜12の形成に切り替わる際、基板Wおよび液膜11の温度は雰囲気SPの露点以下となっている。したがって、液膜11の薄膜化から凍結膜12の形成に切り替わる際に凍結前の液膜11が蒸発乾燥するのを効果的に防止することができる。このように第8実施形態では、基板裏面Wbに冷却窒素ガスを供給して凍結工程を行っている間、遮断部材9を介して常温高湿度窒素ガスを基板表面Wfに供給しているが、この点については後で説明する第13実施形態(図20)においても同様である。
【0077】
なお、基板表面Wf全体に凍結膜12が形成されると、裏面冷媒供給部74からの冷却窒素ガスの供給流量及び基板表面Wfへの常温高湿度窒素ガスの供給流量をゼロまで減少させつつ、窒素ガス供給部72からの冷却乾燥窒素ガス(Cold dry N2ガス)の供給を開始して昇華乾燥を行う。
【0078】
以上のように、第8実施形態においても、第6実施形態と同様に、常温高湿度窒素ガス(常温 wet N2ガス)の供給により雰囲気SPの露点を引き上げて基板Wおよび液膜11の温度が雰囲気SPの露点以下となるように調整しているので、基板表面Wf上の液膜11が蒸発乾燥することなく当該液膜11を所望の厚さに薄膜化することができる。また、遮断部材9を利用することで周辺雰囲気が雰囲気SPに流れ込むのを防止することができ、雰囲気SPの露点を正確に調整することができる。さらに、第8実施形態では、凍結用冷媒を基板裏面Wbに供給しているため、上記したように凍結前の液膜11が蒸発乾燥するのを効果的に防止することができる。なお、第8実施形態では、凍結用冷媒として冷却窒素ガスを用いているが、冷却HFE液などの液体冷媒を用いてもよい。
【0079】
上記第6ないし第8実施形態では、基板表面Wfまたは基板裏面Wbに凍結用冷媒を供給して凍結処理を実行しているが、凍結用冷媒の供給態様はこれらに限定されるものではなく、次のような供給態様を採用してもよい。例えば図16に示すように基板表面Wfに冷却高湿度窒素ガス(Cold wet N2ガス)を供給するとともに、基板裏面Wbに冷却窒素ガス(Cold N2ガス)または冷却HFE液(Cold HFE液)を供給してもよい(第9実施形態)。また、図17に示すように基板表面Wfに冷却HFE液(Cold HFE液)を供給するとともに、基板裏面Wbに冷却窒素ガス(Cold N2ガス)または冷却HFE液(Cold HFE液)を供給してもよい(第10実施形態)。
【0080】
上記第6ないし第10実施形態では、DIW供給部71Aから常温DIWをリンス液として基板表面Wfに供給しているが、第1ないし第5実施形態と同様に、DIW供給部71Aに代えてDIW貯留部711および熱交換器712を有するDIW供給部71を設け、低温DIW(図中の「Cool DIW」)をリンス液として供給するように構成してもよい。例えば図18(第11実施形態)、図19(第12実施形態)、図20(第13実施形態)、図21(第14実施形態)および図22(第15実施形態)に示すように、約1゜Cまで冷却された低温DIWを用いてリンス処理を行うことによって、リンス工程が完了した時点での基板表面Wf上の液膜11および基板Wの温度は雰囲気SPの露点以下となっている。そして、上記リンス工程に続く薄膜形成工程では、低温DIWの供給が停止されるとともに常温高湿度窒素ガス(常温 wet N2ガス)が基板表面Wfに供給されて基板Wおよび液膜11の温度は数度程度高くなるものの、液膜11および基板Wの温度は雰囲気SPの露点以下のままであり、しかも常温高湿度窒素ガスの供給により雰囲気SPは飽和状態となっているため、液膜11の蒸発乾燥は生じず、液膜11を所望厚みに薄膜化することができる。これらの第11ないし第15実施形態では、DIW供給部71および窒素ガス供給部72が本発明の「調整手段」として機能している。
【0081】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記各実施形態では、リンス液としてDIWを用いているが、他の液体を用いてもよい。また、リンス液の供給態様もノズル供給に限定されるものではなく、例えば遮断部材9から供給するように構成してもよい。また、各種ガスや液状冷媒(冷却HFE液)の供給態様も上記実施形態に限定されるものではなく、例えば第6ないし第15実施形態において、遮断部材9を用いることなく、第1ないし第5実施形態と同様に、ノズルから基板表面Wfに常温高湿度窒素ガス、冷却高湿度窒素ガスなどを供給するように構成してもよい。
【0082】
また、上記各実施形態では、常温高湿度窒素ガス、冷却高湿度窒素ガス、冷却乾燥窒素ガスなどを同一の窒素ガス貯留部から供給されて互いに温度や湿度を異ならせた窒素ガスを用いているが、各種ガスとしては窒素ガスに限定されず、空気や他の不活性ガスを用いることも可能である。
【0083】
また、上記各実施形態の基板処理装置は、DIW貯留部711および窒素ガス貯留部721をいずれも装置内部に内蔵しているが、リンス液およびガスの供給源については装置の外部に設けられてもよく、例えば工場内に既設のリンス液やガスの供給源を利用するようにしてもよい。また、これらを冷却するための既設設備がある場合には、該設備によって冷却されたリンス液やガスを利用するようにしてもよい。
【0084】
また、上記第1、第6、第9、第11、第14実施形態では、冷却高湿度窒素ガス(Cold wet N2ガス)の供給流量をゼロから連続的に増大させて雰囲気SPの露点が急激に低下するのを防止しているが、供給流量を段階的に増大させても同様の作用効果が得られる。
【0085】
また、上記各実施形態の基板処理装置は、周縁部に当接するチャックピン24によって保持するものであるが、基板の保持方法はこれに限定されるものではなく、他の方法で基板を保持する装置にも、本発明を適用することが可能である。
【0086】
さらに、上記実施形態では、基板処理装置に昇華乾燥手段を装備してリンス処理後の基板を乾燥させているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、基板表面に付着する液膜を薄膜化した後で凍結させる基板処理装置に適用することができる。また、基板処理装置内で前処理工程の薬液処理手段を組み込み、薬液処理から凍結処理(あるいは乾燥処理)までの一連の処理を装置内で続けて行うように構成する装置にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などを含む基板全般の表面に凍結膜を形成する基板処理装置および基板処理方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0088】
2…スピンチャック(基板保持手段)
9…遮断部材(対向手段)
11…液膜
12…凍結膜
22…チャック回転機構(基板回転手段)
71…DIW供給部(調整手段)
72…窒素ガス供給部(調整手段、凍結手段、表面冷媒供給部)
73…HFE液供給部(凍結手段、表面冷媒供給部)
74…裏面冷媒供給部(凍結手段)
SP…雰囲気
W…基板
Wb…基板裏面
Wf…基板表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に液膜が形成された基板を保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持された前記基板を回転させて前記基板の表面上に形成された前記液膜を薄膜化する基板回転手段と、
前記液膜が形成された前記基板の表面に接する雰囲気の露点と、前記液膜および前記基板の温度との少なくとも一方を調整する調整手段と、
前記基板の表面上の液膜を凍結させて凍結膜を形成する凍結手段とを備え、
前記調整手段は、前記基板回転手段により前記液膜を薄膜化する間、前記液膜および前記基板の温度が前記雰囲気の露点以下となるように、調整することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記調整手段は、前記雰囲気の露点以下の液体を前記基板の表面に供給することによって、前記液膜を形成するとともに前記液膜の薄膜化前に前記液膜および前記基板の温度を前記雰囲気の露点以下に低下させる請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記凍結手段は、前記液体の凝固点よりも低い温度を有し、しかも前記液体の蒸気を飽和状態に含有する気体冷媒を前記基板の表面に供給する表面冷媒供給部を備える請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記基板回転手段による前記液膜の薄膜化から前記凍結手段による凍結膜形成に切り替わる際、前記表面冷媒供給部は前記気体冷媒の供給流量をゼロから連続的または段階的に増大させる請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記凍結手段は、前記液体の凝固点よりも低い温度を有し、しかも前記液体に対して不溶性の液状冷媒を前記基板の表面に供給する表面冷媒供給部を備える請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記凍結手段は、前記液体の凝固点よりも低い温度を有する冷媒を前記基板の裏面に供給する裏面冷媒供給部を備える請求項2ないし5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記調整手段は、前記雰囲気に前記液膜を構成する液体の蒸気を飽和状態に含有する第1気体を供給して前記雰囲気の露点を上昇させる請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記凍結手段は、前記液体の凝固点よりも低い温度を有し、しかも前記液体の蒸気を飽和状態に含有する第2気体を前記基板の表面に供給する表面冷媒供給部を備える請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記基板回転手段による前記液膜の薄膜化から前記凍結手段による凍結膜形成に切り替わる際、前記調整手段は前記第1気体の供給流量を連続的または段階的に減少させる一方、前記表面冷媒供給部は前記第2気体の供給流量をゼロから連続的または段階的に増大させる請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記凍結手段は、前記液体の凝固点よりも低い温度を有し、しかも前記液体に対して不溶性の液状冷媒を前記基板の表面に供給する表面冷媒供給部を備える請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記凍結手段は、前記液体の凝固点よりも低い温度を有する冷媒を前記基板の裏面に供給する裏面冷媒供給部を備える請求項7ないし10のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記基板保持手段に保持された前記基板の表面と対向して前記雰囲気を形成する対向手段をさらに備える請求項1ないし11のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項13】
表面に液膜が形成された基板を回転させて前記基板の表面上に形成された前記液膜を薄膜化する第1工程と、
前記第1工程により薄膜化された前記液膜を凍結させる第2工程とを備え、
前記第1工程を実行する間、前記液膜および前記基板の温度が前記基板の表面に接する雰囲気の露点以下となるように、前記雰囲気の露点と、前記液膜および前記基板の温度との少なくとも一方を調整することを特徴とする基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−71401(P2011−71401A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222344(P2009−222344)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】