基板処理装置および方法
【課題】基板を回転させながら基板に処理液を供給して該基板に対して所定の処理を施す基板処理装置および方法において、基板表面への処理液の再付着を効果的に防止する。
【解決手段】基板Wの下面周縁部に当接しつつ基板Wを支持する支持部7が複数個、スピンベース5の周縁部に上方に向けて突設され、この複数個の支持部7によって基板Wの下面と対向するスピンベース5から離間させた状態で基板Wが水平に支持されている。スピンベース5はモータ3により回転される。また、基板Wの上面と雰囲気遮断板9の対向面9aとの間に形成される空間に対向面9aに設けられた複数のガス噴出口9bから不活性ガスを噴出する。基板Wに働く遠心力より基板Wの下面と支持部7との間に発生する摩擦力が大きくなる押圧支持条件が満たされるように制御して、支持部7に押圧させた基板Wをスピンベース5に保持させながら回転させる。
【解決手段】基板Wの下面周縁部に当接しつつ基板Wを支持する支持部7が複数個、スピンベース5の周縁部に上方に向けて突設され、この複数個の支持部7によって基板Wの下面と対向するスピンベース5から離間させた状態で基板Wが水平に支持されている。スピンベース5はモータ3により回転される。また、基板Wの上面と雰囲気遮断板9の対向面9aとの間に形成される空間に対向面9aに設けられた複数のガス噴出口9bから不活性ガスを噴出する。基板Wに働く遠心力より基板Wの下面と支持部7との間に発生する摩擦力が大きくなる押圧支持条件が満たされるように制御して、支持部7に押圧させた基板Wをスピンベース5に保持させながら回転させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、光ディスク用基板などの各種基板に処理液を供給して該基板に対して洗浄処理などの処理を施す基板処理装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の基板処理装置として、半導体ウエハ等の基板を鉛直軸回りに回転自在に支持された円盤状の回転ベース部材上に支持し、基板を回転させながら薬液等の処理液を基板の上下面に供給して基板を処理する基板処理装置がある(特許文献1参照)。この特許文献1に記載の基板処理装置においては、基板は保持部材として回転ベース部材の外周端部付近に設けられた複数本、例えば3本のチャックピンによって基板を位置決めして支持するようにしている。これにより、回転ベース部材からの回転力を基板に伝達させて基板を水平方向に規制しつつ回転させることができる。そして、基板の上下面の中心に処理液を供給するとともに基板を回転させることで処理液が遠心力で基板の外周側へ広げられ、基板の上下面全面に対する処理を行っている。ここで、基板の周縁から飛散した処理液は回転ベース部材の周囲に配置された飛散防止用のカップ等に当たって跳ね返り基板に再付着することがある。このため、これを防止するために基板上面に近接して遮断部材を配置して基板上面側の空間を制限するとともに、この制限された空間に窒素ガス等の不活性ガスを導入している。また、基板下面側についても同様にして遮断部材としての回転ベース部材と基板下面側との間に形成される空間に不活性ガスを導入して基板下面側への処理液の再付着を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−176795号公報(第4頁−第6頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、基板の外周端部付近に保持部材としてチャックピンを設けて基板を水平方向に位置決めして支持する方式では、処理中に基板表面を伝って径方向外側へ向かう処理液が直接、チャックピンに当たって跳ね返り、基板外に排出されずに基板表面に再付着することがある。また、回転ベース部材が回転されることで回転ベース部材に上方に向けて植設されたチャックピンが基板端面の周囲の気流を乱れさせることとなる。その結果、処理中に飛散したミスト状の処理液が基板と遮断部材(または回転ベース部材)との間に形成される空間に巻き込まれて侵入して基板表面に再付着することがあった。さらに、基板がチャックピンによって保持される保持部分の処理を行うために処理途中に基板のチャックを開閉(基板保持を解除)させることがあるが、この場合は特に基板の径方向外側に向かう処理液をチャックピンで跳ね返らせ易くなる。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板を回転させながら基板に処理液を供給して該基板に対して所定の処理を施す基板処理装置および方法において、基板表面への処理液の再付着を効果的に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかる基板処理装置は、基板を回転させながら基板に処理液を供給して所定の処理を施す基板処理装置であって、上記目的を達成するため、鉛直軸回りに回転自在に設けられた回転部材と、回転部材を回転させる回転手段と、回転部材に上方に向けて設けられ、基板の周縁より内側で基板の下面に当接するように配置され、基板を回転部材から離間させて支持する少なくとも3個以上の支持部材を有する支持手段と、基板の上面に気体を供給することによって基板を支持部材に押圧させて基板を回転部材に保持させる押圧手段とを備え、基板に働く遠心力よりも大きい摩擦力が基板の下面と支持部材との間に発生する押圧支持条件が満たされるように、押圧手段および回転手段が制御され、摩擦力は、押圧手段により供給される気体の流量を増加させると増大し、遠心力は、回転手段により回転される回転部材の回転数を増加させると増大することを特徴としている。
【0007】
また、この発明にかかる基板処理方法は、基板を回転させながら基板に処理液を供給して所定の処理を施す基板処理方法であって、上記目的を達成するため、回転部材に上方に向けて設けられた少なくとも3個以上の支持部材を基板の周縁より内側で基板の下面に当接させることにより基板を回転部材から離間させて支持する工程と、基板の上面に気体を供給することによって基板を支持部材に押圧することで、基板を回転部材に保持させる工程と、回転部材を鉛直軸回りに回転させることにより基板を回転させる工程と、基板に働く遠心力よりも大きい摩擦力が基板の下面と支持部材との間に発生する押圧支持条件が満たされるように回転部材の回転数および気体の供給流量を制御する工程とを備え、摩擦力は、基板の上面に供給される気体の流量を増加させると増大し、遠心力は、回転部材の回転数を増加させると増大することを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明(基板処理装置および方法)では、基板がその周縁より内側で下面に当接する少なくとも3個以上の支持部材によって離間して支持されるとともに、押圧手段から基板の上面に供給される気体によって支持部材に押圧されて回転部材に保持される。そして、回転手段が回転部材を回転させることで支持部材に押圧された基板は支持部材と基板との間に発生する摩擦力で支持部材に支持されながら、回転部材とともに回転することとなる。ここで、支持部材と基板との間に発生する摩擦力は、押圧手段により供給される気体の流量を増加させると増大する。また、基板に働く遠心力は、回転手段により回転される回転部材の回転数を増加させると増大する。そして、基板に働く遠心力よりも大きい摩擦力が基板の下面と支持部材との間に発生する押圧支持条件が満たされるように、押圧手段による気体の供給流量および回転手段による回転部材の回転数が制御される。したがって、基板は回転中に径方向へと飛び出すことなく、回転部材に保持されて回転する。このように基板を回転部材に保持させることで基板の外周端部に接触して基板を保持する保持部材(例えば、チャックピン等)を不要とすることができる。このため、基板の回転により基板表面を伝って径方向外側に向かう処理液が直接に保持部材に当たって基板表面へ跳ね返ることがない。また、基板の外周端部付近の気流を乱す要因がないことから処理液ミストの基板表面側への巻き込みを軽減することができる。これにより、基板表面への処理液の再付着を効果的に防止することができる。
【0009】
また、この発明にかかる基板処理装置は、基板を回転させながら基板に処理液を供給して所定の処理を施す基板処理装置であって、上記目的を達成するため、鉛直軸回りに回転自在に設けられた回転部材と、回転部材を回転させる回転手段と、回転部材に上方に向けて設けられ、基板の下面に当接して該基板を回転部材から離間させて支持する少なくとも3個以上の支持部材を有する支持手段と、基板の上面に気体を供給することによって基板を支持部材に押圧させて基板を回転部材に保持させる押圧手段とを備え、押圧手段は、基板の上面周縁部に配置され処理液で処理される上面処理領域よりも内側の非処理領域に気体を供給し、支持部材は、非処理領域に対応する基板の下面に当接して基板を支持し、基板が支持部材上で滑ることなく支持部材に対して押圧されて回転部材に保持されながら回転される押圧支持条件が満たされるように、押圧手段および回転手段が制御されることを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明では、基板がその上面周縁部に配置された上面処理領域よりも内側の非処理領域に対応する下面に当接する少なくとも3個以上の支持部材によって離間して支持されるとともに、押圧手段から基板の上面の非処理領域に供給される気体によって支持部材に押圧されて回転部材に保持される。つまり、押圧手段が気体を供給する基板の上面の領域(非処理領域)に対応する下面に、支持部材が当接している。そして、回転手段が回転部材を回転させることで支持部材に押圧された基板は支持部材と基板との間に発生する摩擦力で支持部材に支持されながら、回転部材とともに回転することとなる。このとき、基板が支持部材上で滑ることなく支持部材に対して押圧されて回転部材に保持されながら回転される押圧支持条件が満たされるように、押圧手段および回転手段が制御される。したがって、基板は回転中に径方向へと飛び出すことなく、回転部材に保持されて回転する。このように基板を回転部材に保持させることで基板の外周端部に接触して基板を保持する保持部材(例えば、チャックピン等)を不要とすることができる。このため、基板の回転により基板表面を伝って径方向外側に向かう処理液が直接に保持部材に当たって基板表面へ跳ね返ることがない。また、基板の外周端部付近の気流を乱す要因がないことから処理液ミストの基板表面側への巻き込みを軽減することができる。これにより、基板表面への処理液の再付着を効果的に防止することができる。
【0011】
また、押圧支持条件は、基板に働く遠心力よりも大きい摩擦力が基板の下面と支持部材との間に発生する条件であり、摩擦力は、押圧手段により供給される気体の流量を増加させると増大し、遠心力は、回転手段により回転される回転部材の回転数を増加させると増大するとしてもよい。このように構成された発明では、支持部材と基板との間に発生する摩擦力は、押圧手段により供給される気体の流量を増加させると増大する一方、基板に働く遠心力は、回転手段により回転される回転部材の回転数を増加させると増大する。そして、基板に働く遠心力よりも大きい摩擦力が基板の下面と支持部材との間に発生する押圧支持条件が満たされるように、押圧手段および回転手段が制御されるため、基板は回転中に径方向へと飛び出すことなく、回転部材に保持されて回転する。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、基板はその下面に当接する支持部材によって回転部材から離間して支持されるとともに、基板の上面に気体が供給されることで支持部材に押圧されて回転部材に保持される。したがって、基板の外周端部に接触して基板を保持する保持部材を不要とすることができる。このため、基板の回転により基板表面を伝って径方向外側に向かう処理液が直接に部材に当たって処理液を跳ね返らせることがない。また、基板の外周端部付近の気流を乱す要因がないことからミスト状の処理液が基板表面側への巻き込みを軽減することができる。これにより、基板表面への処理液の再付着を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】図1に示す基板処理装置のスピンベースを上方から見た平面図である。
【図3】図1に示す基板処理装置の雰囲気遮断板の底面図である。
【図4】図1に示す基板処理装置の支持部の構成を示す部分断面図である。
【図5】図1に示す基板処理装置の押圧支持の条件を説明するための図である。
【図6】本発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。
【図7】図5の基板処理装置の平面図である。
【図8】図5に示す基板処理装置の雰囲気遮断板の底面図である。
【図9】図5に示す基板処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明にかかる基板処理装置の第3実施形態を示す図である。
【図11】図10の基板処理装置の部分断面図である。
【図12】図10に示す基板処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図13】図6に示す基板処理装置の変形態様を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
図1は本発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。この基板処理装置は、半導体ウエハ等の基板Wの表面に化学薬品または有機溶剤等の薬液や純水またはDIW等のリンス液(以下、「処理液」という)を供給して基板Wに対して薬液処理、リンス処理を施した後にスピン乾燥を行う装置である。この基板処理装置では、基板Wの下面に対して処理液を供給して、その下面の処理を行うことができ、また基板Wの下面に対して処理液を供給することにより、基板Wの下面から基板Wの周端面を伝ってその上面(デバイス形成面)に処理液を回り込ませて基板Wの上面周縁部の処理(ベベル処理)を行うことができる。さらに、基板Wの上面に対して処理液を供給して、その上面の処理を行うことができる。
【0015】
この基板処理装置は、中空の回転軸1が、モータ3の回転軸に連結されており、このモータ3の駆動により鉛直軸J回りに回転可能となっている。この回転軸1の上端部には、スピンベース5が一体的にネジなどの締結部品によって連結されている。したがって、モータ3の駆動によりスピンベース5が鉛直軸J回りに回転可能となっている。また、スピンベース5の周縁部付近には、基板Wの下面周縁部に当接しつつ基板Wを支持する支持部7が複数個、スピンベース5から上方に向けて突出して設けられている。そして、複数個の支持部7によってスピンベース5から所定の間隔離間させた状態で基板Wが水平に支持されている。このように、この実施形態ではスピンベース5が本発明の「回転部材」に相当している。
【0016】
図2はスピンベース5を上方から見た平面図である。スピンベース5には、その中心部に開口が設けられるとともに、その周縁部付近には支持部7が複数個(この実施形態では12個)設けられている。そして、12個の支持部7が鉛直軸Jを中心として30度ずつの等角度間隔で放射状に配置されている。ここで、基板Wを水平支持するためには、支持部7の個数は少なくとも3個以上であればよいが、支持部7が基板Wの下面に当接する部分を処理するためには、支持部7を基板Wの下面に対して離当接自在に構成するとともに、処理中に少なくとも1回以上、支持部7を基板Wの下面から離間させるのが望ましい。そのため、支持部7が基板Wの下面に当接する部分をも含めて基板Wの下面を処理するためには少なくとも4個以上の支持部7が必要とされ、実施形態である12個の倍数の24個としてもより安定し、問題なく実施できる。なお、支持部7の構成および動作については後で詳述する。
【0017】
また、この基板処理装置は、図1に示すようにスピンベース5に対向して配置され、基板Wの上面側の雰囲気を遮断するための雰囲気遮断板9と、該雰囲気遮断板9と基板Wの上面との間に形成される空間SPに窒素ガス等の不活性ガスを供給するガス供給部21(本発明の「気体供給部」に相当)を備えている。そして、ガス供給部21から基板Wの上面に向けて空間SPに不活性ガスを供給することによって、基板Wを支持部7に押圧させて基板Wをスピンベース5に保持させることが可能となっている。なお、支持部7に押圧させた基板Wをスピンベース5に保持させながら回転することのできる条件については後で詳述する。
【0018】
この雰囲気遮断板9は、中空を有する筒状の支持軸11の下端部に一体回転可能に取り付けられている。この支持軸11には、図示を省略する遮断駆動機構が連結されており、遮断駆動機構のモータを駆動することにより支持軸11とともに雰囲気遮断板9がスピンベース5の回転軸と同軸に設けられた鉛直軸J回りに回転されるように構成されている。制御部80は、遮断駆動機構のモータをモータ3と同期するように制御することで、スピンベース5と同じ回転方向および同じ回転速度で雰囲気遮断板9を回転駆動させることができる。また、遮断駆動機構の昇降駆動用アクチュエータ(例えばエアシリンダーなど)を作動させることで雰囲気遮断板9をスピンベース5に近接させたり、逆に離間させることが可能となっている。
【0019】
図3は雰囲気遮断板9の底面図である。この雰囲気遮断板9は基板Wの径より若干大きく、その中心部に開口を有している。雰囲気遮断板9はスピンベース5の上方に配置されて、その下面(底面)が基板Wの上面と対向する対向面9aとなっている。この対向面9aには複数のガス噴出口9bが開口している。そして、複数のガス噴出口9bはスピンベース5に設けられた支持部7に対応する位置に、詳しくは支持部7の回転軌跡Ta(図2)上に鉛直軸Jを中心とする円周に沿って等間隔に配列されている。これらのガス噴出口9bは、雰囲気遮断板9の内部のガス流通空間9cに連通している。なお、ガス噴出口は複数の開口に限らず、単一の開口、例えば、鉛直軸Jを中心として同心円状に全周にわたってリング状に開口したのものであってもよい。但し、複数のガス噴出口9bとした方が、ガス噴出圧の均一性を得る点で有利である。このように、この実施形態では雰囲気遮断板9が本発明の「板状部材」に、ガス噴出口9bが本発明の「気体噴出口」に相当している。
【0020】
図1に戻って説明を続ける。この雰囲気遮断板9の内部に形成されたガス流通空間9cにガスを供給するために、ガス流通空間9cは配管25を介してガス供給部21に連通接続されている。この配管25には制御部80により開閉制御される開閉弁23が介装されている。このため、制御部80が開閉弁23を開にすることでガス供給部21からガス流通空間9cに窒素ガス等の不活性ガスが供給されて、複数のガス噴出口9bから基板Wの上面に向けて不活性ガスが噴出される。また、複数のガス噴出口9bは支持部7の回転軌跡Ta上に配置されるように雰囲気遮断板9の対向面9aに設けられて、略鉛直方向に不活性ガスを噴出するように形成されている。
【0021】
そして、複数のガス噴出口9bの各々から均一に不活性ガスを噴出されることで、基板Wはスピンベース5に上方に向けて突出して設けられた各支持部7に均等に押圧される。これにより、基板Wはスピンベース5に水平に保持される。ここで、基板Wの下面に支持部7が当接する部分に対応する基板Wの上面側に直接に不活性ガスを供給しているので、基板Wをスピンベース5に確実に、しかも必要最小限のガス供給量で効率良く保持させることができる。なお、複数のガス噴出口9bからの不活性ガスは支持部7の回転軌跡Ta上に供給する場合に限らず、支持部7の回転軌跡Taよりも径方向内側あるいは外側に供給するようにしてもよい。
【0022】
雰囲気遮断板9の中心の開口および支持軸11の中空部には、上部洗浄ノズル12が同軸に設けられ、その下端部のノズル口12aからスピンベース5に押圧保持された基板Wの上面の回転中心付近に薬液、リンス液等の処理液を供給できるように構成されている。この上部洗浄ノズル12は、配管13に連通接続されている。この配管13は、基端部において分岐しており、一方の分岐配管13aには薬液供給源31が接続され、他方の分岐配管13bにはリンス液供給源33が接続されている。各分岐配管13a、13bには開閉弁15、17が介装されており、装置全体を制御する制御部80による開閉弁15、17の開閉制御によって上部洗浄ノズル12から基板Wの上面に薬液とリンス液とを選択的に切換えて供給することができる。
【0023】
また、支持軸11の中空部の内壁面と、上部洗浄ノズル12の外壁面との間の隙間は、気体供給路18となっている。この気体供給路18は、開閉弁19を介装した配管27を介して気体供給源35に連続接続されている。そして、上部洗浄ノズル12による薬液処理およびリンス処理を行った後、制御部80による開閉弁19の開閉制御によって気体供給路18を介して基板Wの上面と雰囲気遮断板9の対向面9aとの間の空間SPに清浄な空気や不活性ガス等の気体を供給することによって、基板Wの乾燥処理を行うことが可能となっている。
【0024】
回転軸1の中空部には、本発明の「下面側処理液供給手段」に相当する下部洗浄ノズル41が同軸に設けられ、その上端部のノズル口41aから基板Wの下面の回転中心付近に処理液を供給できるように構成されている。この下部洗浄ノズル41は、配管43に連通接続されている。この配管43は、基端部において分岐しており、一方の分岐配管43aには薬液供給源31が接続され、他方の分岐配管43bにはリンス液供給源33が接続されている。各分岐配管43a、43bには開閉弁45、47が介装されており、装置全体を制御する制御部80による開閉弁45、47の開閉制御によって下部洗浄ノズル41から基板Wの下面に薬液とリンス液とを選択的に切換えて供給することができる。
【0025】
また、回転軸1の内壁面と下部洗浄ノズル41の外壁面との間の隙間は、円筒状の気体供給路48を形成している。この気体供給路48は、開閉弁49を介装した配管51を介して気体供給源35に連続接続されていて、制御部80による開閉弁49の開閉制御によって気体供給路48を介して基板Wの下面とスピンベース5の対向面との間の空間に清浄な空気や不活性ガス等の気体を供給することができる。
【0026】
次に、支持部7の構成および動作について説明する。図4は支持部の構成を示す部分断面図である。なお、上記複数の支持部7はいずれも同一構成を有しているため、ここではひとつの支持部7の構成についてのみ図面を参照しつつ説明する。図4に示すように、支持部7はスピンベース5の一部が上方に向けて凸状に延出した延出部5aの内部に設けられている。この支持部7は、基板Wの下面周縁部に離当接可能にスピンベース5の延出部5aの上面に埋設されたフィルム71と、上下方向に移動可能に支持されてフィルム71の下面側に開口した円筒状凹部の上底面に離当接してフィルム71の上面中央部を押上可能となっている可動ロッド73と、この可動ロッド73を上下動させるモータ等の駆動部75とを備えている。なお、駆動部75にはモータに限らず、エアシリンダ等のアクチュエータ全般を用いてもよい。
【0027】
上記した構成を有する支持部7では、駆動部75が制御部80からの駆動信号によって図示省略する駆動連結部を介して可動ロッド73を上昇駆動させることにより、可動ロッド73の先端部がフィルム71の円筒状凹部の上底面に当接してそのままフィルム71の上面中央部を押上げる。これにより、スピンベース5の上面側に埋設されているフィルム71の上面がスピンベース5の延出部5aの上面から突出する。このため、複数の支持部7のフィルム71の全て(若しくは少なくとも3個以上)を突出させることで、フィルム71を基板Wの下面と当接させつつ基板Wをスピンベース5の延出部5aの上面から離間(例えば、1mm程度)させて水平支持することが可能となる(図4)。
【0028】
一方で、駆動部75が可動ロッド73を下降駆動させると、可動ロッド73の先端部はフィルム71の円筒状凹部の上底面から離間されて、フィルム71の上面をスピンベース5の延出部5aの上面と同一平面内に収容する。このため、突出させた複数の支持部7のフィルム71のうち少なくとも3個を残して、その一部を下降させることで、下降させたフィルム71を基板Wの下面から離間させることが可能となる。なお、このようなフィルム71は、可撓性を有するとともに処理液に対する耐腐食性を有する樹脂により成形される。好ましくは、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)等のフッ素樹脂が用いられる。このように、この実施形態ではフィルム71が本発明の「支持部材」に、駆動部75が本発明の「駆動手段」に相当している。
【0029】
ここで、基板Wの下面に処理液を供給して基板Wの周端面を伝ってその上面に処理液を回り込ませて基板Wの上面周縁部を処理(ベベル処理)する場合における、処理液が上面周縁部に回り込んで処理される上面処理領域TRと、雰囲気遮断板9の対向面9aに設けられたガス噴出口9bから噴出される不活性ガスの供給位置および支持部7の配設位置との位置関係について説明する。ガス噴出口9bから基板Wの上面に向けて略鉛直方向に噴出される不活性ガスは、処理液が上面周縁部に回り込んで処理される上面処理領域TRより内側の非処理領域NTRに供給される。一方で、支持部7は不活性ガスが供給される非処理領域NTRに対応する基板Wの下面側に当接して支持するようにスピンベース5の周縁部に設けられている。このように構成することで、処理液の非処理領域NTRへの侵入を防止するとともに、基板Wの径方向における周端面からの処理液の回り込み幅を均一にすることができる。ここで、雰囲気遮断板9の対向面9aの周縁は、処理液の回り込みを阻害させることのないよう上面処理領域TRに対応して対向面が段差状に上方に後退している。
【0030】
次に、支持部7に押圧させた基板Wをスピンベース5に保持させながら回転することのできる条件について図5を参照しつつ説明する。基板Wをその下面に当接する支持部7に押圧支持させる方式では、基板Wの上面と雰囲気遮断板9の対向面9aとの間に形成される空間SPに不活性ガスを供給することで空間SPの内部圧力を高めて基板Wを支持部7に押圧させている。つまり、基板Wの外周端部に当接して保持するチャックピン等の保持部材がなく基板Wを高速回転させると基板Wが径方向外側に飛び出してしまうおそれがある。これは、空間SPに供給された不活性ガスが基板Wを回転させるほど基板外に排出され易くなって空間SPの内部圧力が低下することに加えて、基板Wの回転により基板Wに働く遠心力が、回転数が高くなるほど大きくなる(回転数の2乗に比例)からである。
【0031】
そのため、支持部7に押圧させた基板Wをスピンベース5に保持させながら回転させるために、次の不等式、つまり、
(基板Wに働く遠心力F1)<(基板Wの下面と支持部7との間に発生する摩擦力F2)
を満たす範囲内で装置の条件を設定する必要がある。基板Wに働く遠心力F1は径方向外向きに作用するのに対し、基板Wの下面と支持部7との間に発生する摩擦力F2は遠心力F1とは逆向きの径方向内向きに作用する。ここで、遠心力は一般にmrω2(m:質量、r:回転中心から質点(m)までの半径、ω:角速度)で表され、基板Wに働く遠心力F1を決定付ける装置側のパラメータとしては、スピンベース5の回転数R、スピンベース5の回転軸Jに対する基板Wの物理的な中心までの径方向の距離D(以下、「偏心量」という)および基板Wの質量がある。また、基板Wの下面と支持部7との間に発生する摩擦力F2は、基板Wと支持部7との間の摩擦係数(静摩擦係数)μと基板Wに作用する垂直抗力Nとの積μNにより決定される。
【0032】
そこで、本願発明者は、上記不等式を満たすように次の5つの装置側の制御因子の閾値を実験により求めた。すなわち、(1) スピンベース5の回転数R、(2)偏心量D、(3)ガス流量V、(4) 基板Wの上面と雰囲気遮断板9の対向面9aとの間の距離G(以下、「ギャップ」という)、(5)基板Wおよび雰囲気遮断板9の面ブレ、基板Wと雰囲気遮断板9との平行度の以上5つのパラメータの閾値を求めた。ここで、ガス流量Vは空間SPに供給される不活性ガスの総流量を意味し、気体供給路18およびガス噴出口9bから基板Wの上面に向けて供給されるガス流量をいう。また、基板Wおよび雰囲気遮断板9の面ブレとは、基板Wおよび雰囲気遮断板9をそれぞれ回転軸J回りに回転させたときに基板Wの表面および対向面9aが垂直方向に振れる振れ幅をいう。また、基板Wと雰囲気遮断板9との平行度とは、基板Wの上面と対向面9aとの間の平行度をいう。
【0033】
実験には、直径300mmのシリコン基板を用いており、基板Wの質量および摩擦係数μを決定する基板側材質はほぼ一定となる。一方で、摩擦係数μは支持部7の材質によって大きく異なる。基板Wの下面に当接する支持部7の材質にSiC、グラッシーカーボン、アルミナ等を用いた場合には、摩擦係数μは比較的大きくなる一方、フッ素樹脂系の材料を用いた場合には、摩擦係数μは比較的小さくなる。ここで、フッ素樹脂系の材料としては、例えばPCTEF(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PVC(ポリ塩化ビニル)等が用いられる。また、Oリングに使用される耐薬性、弾性を備えた材料としてカルレッツ(登録商標)あるいはパーフロを用いると、摩擦係数μはSiC、グラッシーカーボン、アルミナ等の材料群と、PCTEF、PVDF、PEEK、PVC等からなる材料群との中間の数値をとる。
【0034】
上記した3種類の材料群を用いて装置側の各パラメータの閾値を求めたところ、表1〜表3に示す結果が得られた。表1は、支持部7の材質にSiC、グラッシーカーボン、アルミナ等を用いた場合の結果を、表2は、支持部7の材質にPCTEF、PVDF、PEEK、PVC等を用いた場合の結果を、さらに表3は、支持部7の材質にカルレッツあるいはパーフロを用いた場合の結果を示す。そして、これら表1〜表3に示す条件の範囲内で使用することによって、基板Wを支持部7上で滑らせることなく安定して処理を行うことができる。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
表1〜表3に示すように、基板Wと支持部7との間の摩擦係数μが小さくなるほど、回転数Rを小さくするとともに、ガス流量Vの増大とギャップGを狭めることで空間SPの内部圧力を高める必要があることが分かる。これは、回転数Rが高くなるほど遠心力F1が増大するとともに、空間SP内の不活性ガスの排出が促進され空間SPの内部圧力が低下、つまり、基板Wに作用する垂直抗力Nが減少して摩擦力F2が小さくなるからである。この実施形態では、ガス流量をマスフローコントローラ等の流量制御手段で微細に調整することは勿論、遮断駆動機構の昇降駆動用アクチェータを0.01mm単位でパルス制御することで雰囲気遮断板9と基板Wのギャップの微調整を可能とすることにより、押圧支持条件を精密にコントロールして装置の汎用性を高めている。
【0038】
次に、上記のように構成された基板処理装置の動作について説明する。具体的には基板Wの下面側に処理液を供給して基板Wの下面および基板Wの下面から基板Wの周端面を伝ってその上面に処理液を回り込ませて基板Wの上面周縁部の処理する場合について説明する。この基板処理装置では、図示を省略する基板搬送ロボットにより未処理の基板Wが基板処理装置に搬送され、デバイス形成面を上にして裏面側で支持部7上に載置されると、制御部80が装置各部を以下のように制御して薬液処理、リンス処理、および乾燥処理を実行する。なお、基板搬送ロボットによる基板Wの搬送を行う際には、雰囲気遮断板9、支持軸11および上部洗浄ノズル12は一体的にスピンベース5の上方に離間退避している。
【0039】
上記のようにして基板Wが支持部7に載置されると、雰囲気遮断板9、支持軸11および上部洗浄ノズル12を一体的に降下させて雰囲気遮断板9を基板Wに近接配置させる。そして、開閉弁23を開にしてガス供給部21からの不活性ガスを雰囲気遮断板9の対向面9aに設けられた複数のガス噴出口9bから噴出させるとともに、気体供給路18から基板Wの上面中央部に向けて不活性ガスを供給する。これにより、雰囲気遮断板9の対向面9aと基板Wの上面との間に形成される空間SPの内部圧力が高められ、基板Wはその下面に当接する支持部7に押圧されてスピンベース5に保持される。さらに、基板Wの上面は雰囲気遮断板9の対向面9aによって、ごく近接した状態で塞がれることになる。ここで、複数のガス噴出口9bから均等に不活性ガスを噴出させることで、基板Wは各支持部7に均等に押圧されて水平支持される。
【0040】
それに続いて、モータ3を駆動してスピンベース5と一体に基板Wを回転させる。支持部7に押圧された基板Wは支持部7と基板Wとの間に発生する摩擦力で支持部7に支持されながら、スピンベース5とともに回転することとなる。このとき、図示を省略する遮断駆動機構のモータを駆動させることにより雰囲気遮断板9を鉛直軸J回りにスピンベース5の回転数とほぼ同一の回転数で同一方向に回転させる。これにより、基板Wと雰囲気遮断板9との間に回転に伴う余分な気流が発生するのを防止することができる。このように、この実施形態ではモータ3と遮断駆動機構のモータとで本発明の「回転手段」が構成されている。
【0041】
そして、基板Wの回転開始とともに、制御部80は、開閉弁45を開にして薬液供給源31からの薬液を下部洗浄ノズル41のノズル口41aから基板Wの下面中心部に向けて供給する。これにより、基板Wの下面中心部に供給された薬液は、基板Wの回転に伴う遠心力によって下面全体に拡がり、基板Wの下面全面に対する薬液処理が行われる。ここで、薬液処理中に各支持部7を基板Wの下面から少なくとも1回以上、離間させることで支持部7と基板Wの当接部分にも薬液を回り込ませて当該部分を処理することができる。この場合、例えば、12個の支持部7を順に1個ずつ離間させるようにしてもよいし、少なくとも3個の支持部7を基板Wの下面に当接させる限りにおいて2個以上の支持部7を一度に離間させるようにしてもよい。なお、気体供給路18からの不活性ガスの供給により基板Wの下面中心部における下部洗浄ノズル41のノズル口41aからの薬液の噴射圧に対抗させることができる。
【0042】
基板Wの下面を伝って基板Wの径方向外側に向かった薬液は基板Wの上面へ回り込む薬液を除いて基板Wの外側に飛散するが、この実施形態では基板Wの外周端部を保持するチャックピン等の保持部材がないことから、基板Wの径方向外側に向かう薬液が基板表面に跳ね返ってくることがない。また、基板の外周端部付近の気流を乱す要因がないことから処理液ミストの基板表面側への巻き込みが軽減される。このため、基板Wの上面側の非処理領域NTR(上面処理領域TRより内側の領域)に薬液が跳ね返って、非処理領域(例えば、半導体ウエハにあってはデバイス形成領域)NTRが腐食されるのを防止することができる。また、処理液ミストの巻き込みを防止することで基板表面へのパーティクル付着を抑制することができる。
【0043】
また、基板Wの下面中心部に供給された薬液の一部は、基板Wの中心部から周縁部へと伝わり、基板Wの周端面を回り込んで基板Wの上面周縁部へと至る。そして、基板Wの上面周縁部が上面処理領域TRとして、くまなく処理されることになる。このように、この実施形態では基板Wの外周端部を保持するチャックピン等の保持部材がないことから、処理液の回り込み量が不均一となることがない。したがって、基板Wの外周端部の保持に起因する処理むらを防止することができる。
【0044】
薬液処理を所定時間行った後、基板Wおよび雰囲気遮断板9の回転を継続しつつ、制御部80は開閉弁45を閉にして薬液供給源31からの薬液の供給を停止して、代わって開閉弁47を開にする。これにより、下部洗浄ノズル41のノズル口41aからリンス液(純水、DIW等)が、基板Wの下面中心部に向けて供給されることになる。この状態で、基板Wの下面中心部に供給されたリンス液は基板Wの下面全体に拡がり、基板Wに付着している薬液をリンス液で洗い落とすリンス処理が行われる。また、基板Wの下面中心部に供給されたリンス液は基板Wの周端面を回り込むことによって基板Wの上面周縁部TRに付着した薬液も残らず洗い流される。こうして、薬液処理後の基板Wの下面、周端面および上面周縁部に存在する薬液を洗い流すことができる。
【0045】
その後、リンス処理を所定時間行った後、制御部80は開閉弁47を閉にしてリンス処理を終了する。次に制御部80はモータ3および遮断駆動機構のモータを高速回転させることで、基板Wおよび雰囲気遮断板9の回転が加速され、その表面に付着する液成分が遠心力で振り切られる。この乾燥処理の間、基板Wの上面と雰囲気遮断板9の対向面9aとの間の空間SPへの不活性ガスの供給と併せて制御部80は開閉弁49を開にして気体供給路48から所定流量の不活性ガスを基板Wの下面とスピンベース5の対向面との間の空間に導入する。その結果、基板Wを取り囲む周囲の空間は速やかに不活性ガスによって置換されるので、空間内に残留する薬液雰囲気によって基板Wが汚染されることがない。また、不所望な酸化膜が基板Wの上下面に成長することがない。
【0046】
乾燥処理の後、制御部80はモータ3の駆動を停止して基板Wの回転を停止させるとともに遮断駆動機構のモータの駆動を停止して雰囲気遮断板9の回転を停止させる。そして、開閉弁19および開閉弁23を閉にして空間SPへのガス供給を停止することで、基板Wの押圧支持を解除する。その後、雰囲気遮断板9が上方へ移動させられ、基板搬送ロボットによって処理済の基板Wが搬出される。
【0047】
以上のように、この実施形態によれば、基板Wは、その下面に当接する支持部7に離間して支持されるとともに、その上面に供給される不活性ガスによって支持部7に押圧されることで、スピンベース5に保持される。そして、基板Wは支持部7との間に発生する摩擦力で支持部7に支持されてスピンベース5とともに回転される。このように基板Wを保持することで、基板Wの外周端部に接触して基板Wを保持するチャックピン等の保持部材を不要とすることができる。このため、基板Wの回転により基板表面を伝って径方向外側に向かう処理液が直接にチャックピン等の保持部材に当たって基板表面へ跳ね返ることがない。また、基板Wの外周端部付近の気流を乱す要因がないことからミスト状の処理液の基板表面側への巻き込みを軽減することができる。これにより、基板表面への処理液の再付着を効果的に防止することができる。
【0048】
また、基板Wの下面側に支持部7を当接させて支持するとともに、その上面側に不活性ガスを供給することで基板Wを保持しているので、基板Wの上面周縁部(上面処理領域)TRへの処理液の回り込みを阻害させることなく、基板Wの上面周縁部TRへの処理液の回り込み量を均一にすることができる。また、基板Wの上面処理領域TRより内側の非処理領域NTRに不活性ガスを供給することで薬液の非処理領域NTRへの侵入を防止して、基板Wの径方向における周端面からの処理液の回り込み幅を均一にすることができる。
【0049】
また、支持部7を基板Wの下面から離当接可能に構成するとともに、基板Wの下面に処理液を供給しつつ処理中に少なくとも1回以上、各支持部7を基板Wの下面から離間させているので、支持部7が基板Wの下面に当接する部分にも処理液を回り込ませて基板Wの下面全体を処理することができる。
【0050】
<第2実施形態>
図6は本発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。また、図7は図6の基板処理装置の平面図である。この第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、基板Wの上面周縁部に処理液を供給するための処理液供給ノズル6がさらに追加的に設けられている点、および処理液供給ノズル6の追加に伴い雰囲気遮断板90の構成が一部変更となっている点であり、その他の構成は基本的に第1実施形態と同様である。したがって、支持部7に押圧させた基板Wをスピンベース5に保持させながら回転することのできる条件については第1実施形態で説明したパラメータ範囲内で使用することにより、基板Wを滑らせることなく安定した処理を行うことが可能となっている。以下においては同一構成については同一符号を付して説明を省略し、相違点を中心に本実施形態の特徴について説明する。
【0051】
この実施形態では、基板Wの上面周縁部の処理が、基板Wの下面に供給され基板Wの周端面を伝って基板Wの上面側に回り込ませた処理液によるものではなく、基板Wの上面に対向配置する処理液供給ノズル6から供給する処理液によるものとなっている。この処理液供給ノズル6は、スピンベース5の上方であって雰囲気遮断板9の側方に配置されることで、基板Wの上面周縁部に処理液を供給可能になっている。すなわち、処理液供給ノズル6には、その内部に薬液供給管61とリンス液供給管63が配設され、各供給管61、63の下端部から基板Wの上面周縁部に対して、それぞれ薬液、リンス液を供給できるように構成されている。ここで、薬液供給管61は配管14を介して薬液供給源31と接続される一方、リンス液供給管63が配管22を介してリンス液供給源33と接続されている。また、配管14、22にはそれぞれ、開閉弁16、20が介装されており、制御部80が開閉弁16、20を制御することで処理液供給ノズル6に供給される薬液およびリンス液の流量を調整可能となっている。
【0052】
また、処理液供給ノズル6は1本のアーム65(図7)の先端側に固着されている。一方、アーム65の基端部には、ノズル移動機構67が連結されている。そして、制御部80からの制御指令に応じてノズル移動機構67が作動することでアーム65を回転軸心P回りに揺動駆動させることが可能である。これにより、処理液供給ノズル6は、基板Wに対向して基板Wの上面周縁部に処理液を供給する対向位置(図7の実線で示す位置)と、供給位置から側方に退避した退避位置(図7の破線で示す位置)との間を移動することができる。このように、この実施形態では処理液供給ノズル6が本発明の「上面側処理液供給手段」に相当している。
【0053】
図8は、図6に示す基板処理装置の雰囲気遮断板90の底面図である。この雰囲気遮断板90が第1実施形態にかかる基板処理装置の雰囲気遮断板9と相違する点は、雰囲気遮断板90の外縁の一部がコ字状に中心部に向けて窪んだ窪部90aを有している点、および窪部90aの周囲のガス噴出口90bから不活性ガスを基板Wの上面側へ向けて下向きかつ外向きに噴出できるようになっている点である。これにより、処理液供給ノズル6が窪部90aに入り込むことにより、処理液供給ノズル6を基板Wの上面周縁部(上面処理領域)TRと対向する対向位置に配置することを可能としている。ここで、雰囲気遮断板90が基板Wの上面を広範囲に塞ぐようにするため、窪部90aおよび処理液供給ノズル6は基板Wの上面周縁部TRに処理液を供給する上で必要最小限の大きさで構成される。また、ガス噴出口90bから不活性ガスを下向きかつ外向きに噴出させることで、処理液供給ノズル6が対向位置にあるときに処理液が基板Wの上面の非処理領域(上面処理領域TRより内側の領域)NTRに入り込むのを防止するとともに、処理液供給ノズル6が退避位置にあるときに薬液雰囲気が基板Wの上面と雰囲気遮断板90との間に形成される空間SPに侵入するのを防止することができる。なお、その他の構成は基本的に第1実施形態にかかる基板処理装置の雰囲気遮断板9と同様であるので説明を省略する。
【0054】
次に、上記のように構成された基板処理装置の動作について図9を参照しつつ詳述する。図9は、図6の基板処理装置の動作を示すフローチャートである。先ず図示省略する基板搬送ロボットにより未処理の基板Wが基板処理装置に搬送され、デバイス形成面を上にして裏面側で支持部7上に載置されると、制御部80は雰囲気遮断板90を降下させて雰囲気遮断板90を基板Wに近接配置させる(ステップS1)。そして、開閉弁23を開にしてガス供給部21からの不活性ガスを雰囲気遮断板90の対向面9aに設けられた複数のガス噴出口9b、90bから噴出させるとともに、気体供給路18から基板Wの上面中央部に向けて不活性ガスを供給することで、基板Wを支持部7に押圧させてスピンベース5に保持させる(ステップS2)。
【0055】
次に、制御部80はノズル移動機構67を作動させることで処理液供給ノズル6を対向位置に位置決めする(ステップS3)。それに続いて、制御部80は雰囲気遮断板90は停止させたままでモータ3を駆動してスピンベース5と一体に基板Wを回転させる(ステップS4)。続いて、開閉弁16を開にして処理液供給ノズル6から薬液を基板Wの上面周縁部TRに供給する(ステップS5)。これにより、薬液は基板Wの上面周縁部TRの全周にわたって基板Wの端部から所定幅に均一に供給され、基板Wの上面周縁部TRに対する薬液処理が行われる。薬液処理後、制御部80は開閉弁20を開にして、処理液供給ノズル6からリンス液を基板Wの上面周縁部TRに供給する(ステップS6)。これにより、基板Wの上面周縁部TRに付着している薬液がリンス液で洗い落とされる。
【0056】
こうして、基板Wの上面周縁部TRへの薬液処理およびリンス処理が完了すると、制御部80はノズル移動機構67を作動させることで処理液供給ノズル6を退避位置に位置決めする(ステップS7)。続いて、基板Wの下面を処理することになるが、ここで制御部80は遮断駆動機構のモータを駆動して雰囲気遮断板90をスピンベース5の回転数とほぼ同一の回転数で同一方向に雰囲気遮断板90を回転させる(ステップS8)のが望ましい。これにより、基板Wと雰囲気遮断板9との間に回転に伴う余分な気流が発生するのを防止して薬液雰囲気の巻き込みや薬液の跳ね返りが防止される。
【0057】
そして、制御部80は開閉弁45を開にして薬液供給源31からの薬液を下部洗浄ノズル41のノズル口41aから基板Wの下面中心部に向けて供給する(ステップS9)。これにより、基板Wの下面中心部に供給された薬液は、基板Wの回転に伴う遠心力によって下面全体に拡がり、基板Wの下面全面に対する薬液処理が行われる。なお、基板Wの下面に対する薬液処理は基板Wの上面周縁部TRに対する薬液処理中に、または基板Wの上面周縁部TRに対する薬液処理のタイミングと一部が重複するように行うようにしてもよい。こうして、薬液処理を所定時間行った後、基板Wの回転を継続しつつ、制御部80は開閉弁45を閉にして薬液供給源31からの薬液の供給を停止して薬液を振り切って基板外に排液する。
【0058】
こうして、薬液の液切りが完了すると、制御部80は開閉弁47を開にすることで基板Wの下面に対するリンス処理を行う(ステップS10)。なお、基板Wの下面に対するリンス処理についても、基板Wの上面周縁部TRに対するリンス処理中に、または基板Wの上面周縁部TRに対するリンス処理のタイミングと一部が重複するように行うようにしてもよい。そして、リンス処理を所定時間行った後、制御部80は開閉弁47を閉にしてリンス液の供給を停止してリンス液を振り切って基板外に排液する。
【0059】
次に、基板Wの上面と雰囲気遮断板90の対向面9aとの間の空間SPへの不活性ガスの供給と併せて制御部80は開閉弁49を開にして気体供給路48から所定流量の不活性ガスを基板Wの下面とスピンベース5の対向面との間の空間に導入する。そして、モータ3および遮断駆動機構のモータを高速回転させることにより残留するリンス液を飛ばして、乾燥処理が行われる(ステップS11)。
【0060】
基板Wの乾燥処理が終了すると、制御部80は遮断駆動機構を制御して雰囲気遮断板90の回転を停止させる(ステップS12)とともに、モータ3を制御して基板Wの回転を停止させる(ステップS13)。そして、開閉弁19および開閉弁23を閉にして空間SPへのガス供給を停止することで、基板Wの押圧支持を解除する(ステップS14)。その後、雰囲気遮断板90が上方へ移動させられ、基板搬送ロボットによって処理済の基板Wが搬出される。これにより、一連の薬液処理およびリンス処理の動作が終了する。
【0061】
以上のように、この実施形態によれば、基板Wの外周端部に接触して基板Wを保持するチャックピン等の保持部材を不要とすることで、第1実施形態と同様にして基板表面への処理液の再付着を効果的に防止することができる。また、処理液供給ノズル6から直接に処理液を基板Wの上面周縁部(上面処理領域)TRに供給しているので、以下の利点が得られる。すなわち、基板Wの下面に供給される処理液を基板の周端面から回り込ませて基板Wの上面周縁部TRの処理を行うに比べて、基板Wの径方向における周端面からの処理幅の制御が容易である。このため、基板Wの径方向における周端面からの処理幅を自由に、しかも高精度に制御することができる。また、半導体ウエハ等の基板Wにノッチ部分がある場合でも、ノッチ部分の処理幅の均一性を良好にすることができる。
【0062】
また、この実施形態においても、基板Wの下面に処理液を供給しつつ処理中に少なくとも1回以上、各支持部7を基板Wの下面から離間させることで、支持部7が基板Wの下面に当接する部分にも処理液を回り込ませて基板Wの下面全体を処理することができる。
【0063】
また、この実施形態では、処理液供給ノズル6から薬液とリンス液を基板Wに供給しているが、薬液とリンス液のそれぞれについて別個にノズルを設けるようにしてもよい。なお、この場合でも各ノズルの大きさを共通にして交互に各ノズルを雰囲気遮断板90の側方に配置させることで、一箇所の窪部90aを設けることで雰囲気遮断板90を構成することができる。
【0064】
<第3実施形態>
図10は、本発明にかかる基板処理装置の第3実施形態を示す図である。また、図11は図10の基板処理装置の部分断面図である。この第3実施形態は、基板Wの上面周縁部に処理液を供給するための処理液供給ノズルが追加的に設けられている点については第2実施形態と共通するが、基板Wの上面側処理液供給時に第2実施形態では雰囲気遮断板90を回転させることができなかったのに対し、この第3実施形態では雰囲気遮断板を回転させることが可能となっている点が異なる。この相違により雰囲気遮断板の構成が一部異なる他は基本的に第1および第2実施形態と同様の構成である。したがって、支持部7に押圧させた基板Wをスピンベース5に保持させながら回転することのできる条件については第1実施形態で説明したパラメータ範囲内で使用することにより、基板Wを滑らせることなく安定した処理を行うことが可能となっている。以下においては同一構成については同一符号を付して説明を省略し、相違点を中心に本実施形態の特徴について説明する。
【0065】
この実施形態では、雰囲気遮断板91が基板Wの平面サイズよりも小さな円形の対向面91aを有している。そのため、対向面91aと基板Wの上面とを平行して対向させた際に、基板Wの上面周縁部が対向面91aに塞がれることなく露出する。この雰囲気遮断板91はちょうど、対向面91aを下面として上方にいくに従って横断面のサイズが徐々に小さくなっている円錐台形状の下部と、該円錐台の上面を横断面とする円柱形状の上部とを連結した形状をしている。具体的には、雰囲気遮断板91の下部周縁は全周にわたって対向面91aから上方にいくに従って回転軸J側に近づくように傾斜した傾斜面91bを形成している。また、雰囲気遮断板91の上部周縁、つまり傾斜面91bから上方は、ほぼ垂直に立ち上がった側面91cを形成している。
【0066】
処理液供給ノズル8は下端部から薬液またはリンス液が選択的に供給することが可能となっている。また、処理液供給ノズル8は図示省略するノズル移動機構と接続され、ノズル移動機構を駆動することで、雰囲気遮断板91の側面91cに近接する近接位置(図11に示す位置)と、雰囲気遮断板91から側方(あるいは上方)に退避した退避位置に位置決めされる。処理液供給ノズル8は側面が雰囲気遮断板91の側面91cと平行して対向するように、例えば鉛直方向に伸びる円筒形状に構成され、ノズル8が近接位置に位置決めされた際に、傾斜面91bに向けて処理液が吐出可能となっている。
【0067】
雰囲気遮断板91の対向面91aは疎水性を有する疎水面となっている一方で、傾斜面91bは親水性を有する親水面となっている。そのため、傾斜面91bに供給された処理液は、傾斜面91bに沿って流下する。そして、傾斜面91bの下端に達した処理液は、疎水面である対向面91aに回り込むことなく、基板Wの上面周縁部に流下する。具体的には、雰囲気遮断板91から流下する処理液は、傾斜面91bを基板Wに向けて延長したときの基板Wの上面との交線よりも外側の上面処理領域TRに供給され、基板Wの回転に伴う遠心力を受けて基板Wの周縁に向かって流れ、基板Wの周端面を伝って流下する。このため、処理液供給ノズル8から処理液を吐出しつつ基板Wを回転させることで、基板Wの上面周縁部を全周にわたって均一に処理することができる。
【0068】
次に、上記のように構成された基板処理装置の動作について図12を参照しつつ説明する。図12は、図10の基板処理装置の動作を示すフローチャートである。基板Wがデバイス形成面を上にして裏面側で支持部7上に載置されると、制御部80は雰囲気遮断板91を降下させて雰囲気遮断板91を基板Wに近接配置させる(ステップS21)。そして、不活性ガスを複数のガス噴出口9bから噴出させるとともに、気体供給路18から基板Wの上面中央部に向けて不活性ガスを供給することで、基板Wを支持部7に押圧させてスピンベース5に保持させる(ステップS22)。
【0069】
次に、制御部80はノズル移動機構を駆動して処理液供給ノズル8を雰囲気遮断板91の側面91cに近接する近接位置に位置決めする(ステップS23)。それに続いて、モータ3を駆動して基板Wを回転させる(ステップS24)とともに、遮断駆動機構のモータを駆動して雰囲気遮断板91を鉛直軸J回りにスピンベース5の回転数とほぼ同一の回転数で同一方向に回転させる(ステップS25)。続いて、処理液供給ノズル8から雰囲気遮断板91の傾斜面91bに薬液を供給する。供給された薬液は傾斜面91bを流下して回転する基板Wの上面周縁部TRに供給され、基板Wの端部から所定の処理幅に基板Wの全周にわたって均一な薬液処理が行われる(ステップS26)。
【0070】
ここで、雰囲気遮断板91の対向面91aは疎水面であることから、対向面91aに薬液が回り込むことはなく、また、雰囲気遮断板91と基板Wの上面との間に形成される空間SPに供給された不活性ガスが径方向外側に流れ出ることで、上面中央部の非処理領域NTRに薬液雰囲気が侵入することがない。さらに、基板Wと雰囲気遮断板91とが同期回転されることで、余分な気流が発生するのを防止して基板周辺の薬液雰囲気の巻き込みや跳ね返りによる薬液の非処理領域NTRへの侵入が防止される。
【0071】
また、基板Wの上面への薬液供給と同時に、あるいは基板Wの上面への薬液供給後に下部洗浄ノズル41からも薬液を供給することで基板Wの下面全体に対する薬液処理を実行する(ステップS27)。こうして、基板Wの上面周縁部TRおよび下面に対する薬液処理を所定時間行った後、薬液の供給を停止して薬液を振り切って基板外に排液する。薬液の液切りが完了すると、処理液供給ノズル8からリンス液を基板Wの上面周縁部に供給する(ステップS28)。これにより、基板Wの上面周縁部TRに付着している薬液がリンス液で洗い落とされる。また、基板Wの上面へのリンス液供給と同時に、あるいは基板Wの上面へのリンス液供給後に下部洗浄ノズル41からもリンス液を供給することで基板Wの下面全体に対するリンス処理を実行する(ステップS29)。
【0072】
基板Wの上面周縁部TRへのリンス液供給後、制御部80はノズル移動機構を駆動して処理液供給ノズル8を退避位置に位置決めする(ステップS30)。続いて、制御部80は基板Wの上面と雰囲気遮断板91の対向面9aとの間の空間SPへの不活性ガスの供給と併せて開閉弁49を開にして気体供給路48から所定流量の不活性ガスを基板Wの下面とスピンベース5の対向面との間の空間に導入する。そして、モータ3および遮断駆動機構のモータを高速回転させることで、基板Wおよび雰囲気遮断板91に付着する液成分を遠心力で振り切り乾燥させる(ステップS31)。
【0073】
基板Wの乾燥処理が終了すると、制御部80は遮断駆動機構を制御して雰囲気遮断板91の回転を停止させる(ステップS32)とともに、モータ3を制御して基板Wの回転を停止させる(ステップS33)。そして、開閉弁19および開閉弁23を閉にして空間SPへのガス供給を停止することで、基板Wの押圧支持を解除する(ステップS34)。その後、雰囲気遮断板91が上方へ移動させられ、処理済の基板Wが搬出される。
【0074】
以上のように、この実施形態によれば、基板Wの外周端部に接触して基板Wを保持するチャックピン等の保持部材を不要とすることで、先の実施形態と同様にして基板表面への処理液の再付着を効果的に防止することができる。また、処理液供給ノズル8から雰囲気遮断板91の傾斜面91bを伝って処理液を流下させて基板Wの上面周縁部(上面処理領域)TRに供給しているので、基板Wの全周にわたって処理幅を均一にすることができる。すなわち、処理液は親水面である傾斜面91bに沿って流下して基板Wの周端面から一定の範囲に供給され疎水面である対向面91aに回り込むことがないので、処理幅にばらつきが生じることがない。しかも、基板Wとともに雰囲気遮断板91を回転させながら処理液を基板Wの上面周縁部TRに供給することができるので、上面中央部(非処理領域NTR)への処理液の巻き込みや跳ね返りを効果的に防止することができる。
【0075】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、基板Wの下面、周端面および上面周縁部を洗浄する基板処理装置に対して本発明を適用しているが、これに限定されない。例えば、基板の上下面の両面に対して、またはどちらか一方面のみに対して洗浄処理、エッチング処理、現像処理などの基板処理を基板Wを回転させながら行う基板処理装置全般に適用可能である。
【0076】
また、上記実施形態では、支持部7はスピンベース5の周縁部の一部を凸状に上方に向けて延出させた延出部5aに設けているが、スピンベース5の一部を上方に延出させることなく、支持部7自体をスピンベース5の上面から上方に突出させて構成するようにしてもよい。また、スピンベース5の一部を上方に延出させることなく、スピンベース5の上面に支持部7を埋設させて、フィルム71のみをスピンベース5の上面から突出させるように構成してもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、支持部7の回転軌跡Ta上に不活性ガスが略鉛直方向に噴出されるように雰囲気遮断板9、90の対向面9aにガス噴出口9bを設けているが、これに限定されない。例えば、支持部7の回転軌跡Taより内側にガス噴出口9bを設けて、支持部7の回転軌跡Ta上に向けて下向きかつ外側に不活性ガスを噴出させるようにしてもよい。
【0078】
また、上記第2実施形態では、処理液供給ノズル6を雰囲気遮断板90の外縁の窪部90aに入り込ませることで基板Wの上面周縁部(上面処理領域)TRと対向させているが、これに限定されない。図13に示すように、雰囲気遮断板90の周縁部に処理液供給ノズル6が挿入可能な上下方向に貫通する貫通孔9eを設けて該貫通孔9eにノズル6の下端部を対向面9aと面一の位置まで挿入させて上面周縁部TRと対向させてもよい(図13(a))。また、貫通孔9eの内壁にガス流通空間90cに連通するガス導入口9dを設けると、処理液供給ノズル6を貫通孔9eから抜き出して退避させた際に貫通孔9eの上下の開口から不活性ガスが噴出させることができる(図13(b))。
【0079】
このような構成によれば、ノズル6を貫通孔9eから抜き出すことで、基板Wとともに雰囲気遮断板90を回転させることができる。このため、雰囲気遮断板90に付着する処理液を振り切るとともに、基板Wと雰囲気遮断板9との間に回転に伴う余分な気流が発生するのを防止することができる。その結果、基板Wと雰囲気遮断板90との間の空間SPへの薬液雰囲気の巻き込みや薬液の跳ね返りが防止される。
【0080】
また、処理液供給時にはノズル6は貫通孔9eに挿入されているため、基板処理中に処理液が飛散してノズル6に向けて跳ね返ってくるような場合でも、処理液は雰囲気遮断板90の対向面9aに遮られてノズル6に大量の処理液が付着することがない。このため、ノズル移動時においてノズル6から処理液が落ちて基板Wあるいは基板周辺部材に付着して悪影響を及ぼすことが防止される。その結果、ノズル6の洗浄も不要となり、装置のスループットを向上させることができる。
【0081】
また、この実施形態によれば、ノズル6を雰囲気遮断板9から離れ退避させた際にも、貫通孔9eの上下の開口から不活性ガスが噴出されているので、処理液が貫通孔9eに入り込み基板Wに処理液が跳ね返ることがない。このため、基板Wの上面中央部(非処理領域NTR)に形成されるデバイス形成面が腐食するのを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、光ディスク用基板などを含む基板全般の表面に対して洗浄処理などの処理を施す基板処理装置および方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0083】
3…モータ(回転手段)、5…スピンベース(回転部材)、6…処理液供給ノズル、9,90,91…雰囲気遮断板(押圧手段)、9a,91a…対向面、9b、90b…ガス噴出口、21…ガス供給部(押圧手段)、41…下部洗浄ノズル、71…フィルム(支持部材)、75…駆動部、NTR…非処理領域、J…鉛直軸、Ta…回転軌跡、TR…上面周縁部(上面処理領域)、W…基板
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、光ディスク用基板などの各種基板に処理液を供給して該基板に対して洗浄処理などの処理を施す基板処理装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の基板処理装置として、半導体ウエハ等の基板を鉛直軸回りに回転自在に支持された円盤状の回転ベース部材上に支持し、基板を回転させながら薬液等の処理液を基板の上下面に供給して基板を処理する基板処理装置がある(特許文献1参照)。この特許文献1に記載の基板処理装置においては、基板は保持部材として回転ベース部材の外周端部付近に設けられた複数本、例えば3本のチャックピンによって基板を位置決めして支持するようにしている。これにより、回転ベース部材からの回転力を基板に伝達させて基板を水平方向に規制しつつ回転させることができる。そして、基板の上下面の中心に処理液を供給するとともに基板を回転させることで処理液が遠心力で基板の外周側へ広げられ、基板の上下面全面に対する処理を行っている。ここで、基板の周縁から飛散した処理液は回転ベース部材の周囲に配置された飛散防止用のカップ等に当たって跳ね返り基板に再付着することがある。このため、これを防止するために基板上面に近接して遮断部材を配置して基板上面側の空間を制限するとともに、この制限された空間に窒素ガス等の不活性ガスを導入している。また、基板下面側についても同様にして遮断部材としての回転ベース部材と基板下面側との間に形成される空間に不活性ガスを導入して基板下面側への処理液の再付着を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−176795号公報(第4頁−第6頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、基板の外周端部付近に保持部材としてチャックピンを設けて基板を水平方向に位置決めして支持する方式では、処理中に基板表面を伝って径方向外側へ向かう処理液が直接、チャックピンに当たって跳ね返り、基板外に排出されずに基板表面に再付着することがある。また、回転ベース部材が回転されることで回転ベース部材に上方に向けて植設されたチャックピンが基板端面の周囲の気流を乱れさせることとなる。その結果、処理中に飛散したミスト状の処理液が基板と遮断部材(または回転ベース部材)との間に形成される空間に巻き込まれて侵入して基板表面に再付着することがあった。さらに、基板がチャックピンによって保持される保持部分の処理を行うために処理途中に基板のチャックを開閉(基板保持を解除)させることがあるが、この場合は特に基板の径方向外側に向かう処理液をチャックピンで跳ね返らせ易くなる。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板を回転させながら基板に処理液を供給して該基板に対して所定の処理を施す基板処理装置および方法において、基板表面への処理液の再付着を効果的に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかる基板処理装置は、基板を回転させながら基板に処理液を供給して所定の処理を施す基板処理装置であって、上記目的を達成するため、鉛直軸回りに回転自在に設けられた回転部材と、回転部材を回転させる回転手段と、回転部材に上方に向けて設けられ、基板の周縁より内側で基板の下面に当接するように配置され、基板を回転部材から離間させて支持する少なくとも3個以上の支持部材を有する支持手段と、基板の上面に気体を供給することによって基板を支持部材に押圧させて基板を回転部材に保持させる押圧手段とを備え、基板に働く遠心力よりも大きい摩擦力が基板の下面と支持部材との間に発生する押圧支持条件が満たされるように、押圧手段および回転手段が制御され、摩擦力は、押圧手段により供給される気体の流量を増加させると増大し、遠心力は、回転手段により回転される回転部材の回転数を増加させると増大することを特徴としている。
【0007】
また、この発明にかかる基板処理方法は、基板を回転させながら基板に処理液を供給して所定の処理を施す基板処理方法であって、上記目的を達成するため、回転部材に上方に向けて設けられた少なくとも3個以上の支持部材を基板の周縁より内側で基板の下面に当接させることにより基板を回転部材から離間させて支持する工程と、基板の上面に気体を供給することによって基板を支持部材に押圧することで、基板を回転部材に保持させる工程と、回転部材を鉛直軸回りに回転させることにより基板を回転させる工程と、基板に働く遠心力よりも大きい摩擦力が基板の下面と支持部材との間に発生する押圧支持条件が満たされるように回転部材の回転数および気体の供給流量を制御する工程とを備え、摩擦力は、基板の上面に供給される気体の流量を増加させると増大し、遠心力は、回転部材の回転数を増加させると増大することを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明(基板処理装置および方法)では、基板がその周縁より内側で下面に当接する少なくとも3個以上の支持部材によって離間して支持されるとともに、押圧手段から基板の上面に供給される気体によって支持部材に押圧されて回転部材に保持される。そして、回転手段が回転部材を回転させることで支持部材に押圧された基板は支持部材と基板との間に発生する摩擦力で支持部材に支持されながら、回転部材とともに回転することとなる。ここで、支持部材と基板との間に発生する摩擦力は、押圧手段により供給される気体の流量を増加させると増大する。また、基板に働く遠心力は、回転手段により回転される回転部材の回転数を増加させると増大する。そして、基板に働く遠心力よりも大きい摩擦力が基板の下面と支持部材との間に発生する押圧支持条件が満たされるように、押圧手段による気体の供給流量および回転手段による回転部材の回転数が制御される。したがって、基板は回転中に径方向へと飛び出すことなく、回転部材に保持されて回転する。このように基板を回転部材に保持させることで基板の外周端部に接触して基板を保持する保持部材(例えば、チャックピン等)を不要とすることができる。このため、基板の回転により基板表面を伝って径方向外側に向かう処理液が直接に保持部材に当たって基板表面へ跳ね返ることがない。また、基板の外周端部付近の気流を乱す要因がないことから処理液ミストの基板表面側への巻き込みを軽減することができる。これにより、基板表面への処理液の再付着を効果的に防止することができる。
【0009】
また、この発明にかかる基板処理装置は、基板を回転させながら基板に処理液を供給して所定の処理を施す基板処理装置であって、上記目的を達成するため、鉛直軸回りに回転自在に設けられた回転部材と、回転部材を回転させる回転手段と、回転部材に上方に向けて設けられ、基板の下面に当接して該基板を回転部材から離間させて支持する少なくとも3個以上の支持部材を有する支持手段と、基板の上面に気体を供給することによって基板を支持部材に押圧させて基板を回転部材に保持させる押圧手段とを備え、押圧手段は、基板の上面周縁部に配置され処理液で処理される上面処理領域よりも内側の非処理領域に気体を供給し、支持部材は、非処理領域に対応する基板の下面に当接して基板を支持し、基板が支持部材上で滑ることなく支持部材に対して押圧されて回転部材に保持されながら回転される押圧支持条件が満たされるように、押圧手段および回転手段が制御されることを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明では、基板がその上面周縁部に配置された上面処理領域よりも内側の非処理領域に対応する下面に当接する少なくとも3個以上の支持部材によって離間して支持されるとともに、押圧手段から基板の上面の非処理領域に供給される気体によって支持部材に押圧されて回転部材に保持される。つまり、押圧手段が気体を供給する基板の上面の領域(非処理領域)に対応する下面に、支持部材が当接している。そして、回転手段が回転部材を回転させることで支持部材に押圧された基板は支持部材と基板との間に発生する摩擦力で支持部材に支持されながら、回転部材とともに回転することとなる。このとき、基板が支持部材上で滑ることなく支持部材に対して押圧されて回転部材に保持されながら回転される押圧支持条件が満たされるように、押圧手段および回転手段が制御される。したがって、基板は回転中に径方向へと飛び出すことなく、回転部材に保持されて回転する。このように基板を回転部材に保持させることで基板の外周端部に接触して基板を保持する保持部材(例えば、チャックピン等)を不要とすることができる。このため、基板の回転により基板表面を伝って径方向外側に向かう処理液が直接に保持部材に当たって基板表面へ跳ね返ることがない。また、基板の外周端部付近の気流を乱す要因がないことから処理液ミストの基板表面側への巻き込みを軽減することができる。これにより、基板表面への処理液の再付着を効果的に防止することができる。
【0011】
また、押圧支持条件は、基板に働く遠心力よりも大きい摩擦力が基板の下面と支持部材との間に発生する条件であり、摩擦力は、押圧手段により供給される気体の流量を増加させると増大し、遠心力は、回転手段により回転される回転部材の回転数を増加させると増大するとしてもよい。このように構成された発明では、支持部材と基板との間に発生する摩擦力は、押圧手段により供給される気体の流量を増加させると増大する一方、基板に働く遠心力は、回転手段により回転される回転部材の回転数を増加させると増大する。そして、基板に働く遠心力よりも大きい摩擦力が基板の下面と支持部材との間に発生する押圧支持条件が満たされるように、押圧手段および回転手段が制御されるため、基板は回転中に径方向へと飛び出すことなく、回転部材に保持されて回転する。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、基板はその下面に当接する支持部材によって回転部材から離間して支持されるとともに、基板の上面に気体が供給されることで支持部材に押圧されて回転部材に保持される。したがって、基板の外周端部に接触して基板を保持する保持部材を不要とすることができる。このため、基板の回転により基板表面を伝って径方向外側に向かう処理液が直接に部材に当たって処理液を跳ね返らせることがない。また、基板の外周端部付近の気流を乱す要因がないことからミスト状の処理液が基板表面側への巻き込みを軽減することができる。これにより、基板表面への処理液の再付着を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】図1に示す基板処理装置のスピンベースを上方から見た平面図である。
【図3】図1に示す基板処理装置の雰囲気遮断板の底面図である。
【図4】図1に示す基板処理装置の支持部の構成を示す部分断面図である。
【図5】図1に示す基板処理装置の押圧支持の条件を説明するための図である。
【図6】本発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。
【図7】図5の基板処理装置の平面図である。
【図8】図5に示す基板処理装置の雰囲気遮断板の底面図である。
【図9】図5に示す基板処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明にかかる基板処理装置の第3実施形態を示す図である。
【図11】図10の基板処理装置の部分断面図である。
【図12】図10に示す基板処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図13】図6に示す基板処理装置の変形態様を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
図1は本発明にかかる基板処理装置の第1実施形態を示す図である。この基板処理装置は、半導体ウエハ等の基板Wの表面に化学薬品または有機溶剤等の薬液や純水またはDIW等のリンス液(以下、「処理液」という)を供給して基板Wに対して薬液処理、リンス処理を施した後にスピン乾燥を行う装置である。この基板処理装置では、基板Wの下面に対して処理液を供給して、その下面の処理を行うことができ、また基板Wの下面に対して処理液を供給することにより、基板Wの下面から基板Wの周端面を伝ってその上面(デバイス形成面)に処理液を回り込ませて基板Wの上面周縁部の処理(ベベル処理)を行うことができる。さらに、基板Wの上面に対して処理液を供給して、その上面の処理を行うことができる。
【0015】
この基板処理装置は、中空の回転軸1が、モータ3の回転軸に連結されており、このモータ3の駆動により鉛直軸J回りに回転可能となっている。この回転軸1の上端部には、スピンベース5が一体的にネジなどの締結部品によって連結されている。したがって、モータ3の駆動によりスピンベース5が鉛直軸J回りに回転可能となっている。また、スピンベース5の周縁部付近には、基板Wの下面周縁部に当接しつつ基板Wを支持する支持部7が複数個、スピンベース5から上方に向けて突出して設けられている。そして、複数個の支持部7によってスピンベース5から所定の間隔離間させた状態で基板Wが水平に支持されている。このように、この実施形態ではスピンベース5が本発明の「回転部材」に相当している。
【0016】
図2はスピンベース5を上方から見た平面図である。スピンベース5には、その中心部に開口が設けられるとともに、その周縁部付近には支持部7が複数個(この実施形態では12個)設けられている。そして、12個の支持部7が鉛直軸Jを中心として30度ずつの等角度間隔で放射状に配置されている。ここで、基板Wを水平支持するためには、支持部7の個数は少なくとも3個以上であればよいが、支持部7が基板Wの下面に当接する部分を処理するためには、支持部7を基板Wの下面に対して離当接自在に構成するとともに、処理中に少なくとも1回以上、支持部7を基板Wの下面から離間させるのが望ましい。そのため、支持部7が基板Wの下面に当接する部分をも含めて基板Wの下面を処理するためには少なくとも4個以上の支持部7が必要とされ、実施形態である12個の倍数の24個としてもより安定し、問題なく実施できる。なお、支持部7の構成および動作については後で詳述する。
【0017】
また、この基板処理装置は、図1に示すようにスピンベース5に対向して配置され、基板Wの上面側の雰囲気を遮断するための雰囲気遮断板9と、該雰囲気遮断板9と基板Wの上面との間に形成される空間SPに窒素ガス等の不活性ガスを供給するガス供給部21(本発明の「気体供給部」に相当)を備えている。そして、ガス供給部21から基板Wの上面に向けて空間SPに不活性ガスを供給することによって、基板Wを支持部7に押圧させて基板Wをスピンベース5に保持させることが可能となっている。なお、支持部7に押圧させた基板Wをスピンベース5に保持させながら回転することのできる条件については後で詳述する。
【0018】
この雰囲気遮断板9は、中空を有する筒状の支持軸11の下端部に一体回転可能に取り付けられている。この支持軸11には、図示を省略する遮断駆動機構が連結されており、遮断駆動機構のモータを駆動することにより支持軸11とともに雰囲気遮断板9がスピンベース5の回転軸と同軸に設けられた鉛直軸J回りに回転されるように構成されている。制御部80は、遮断駆動機構のモータをモータ3と同期するように制御することで、スピンベース5と同じ回転方向および同じ回転速度で雰囲気遮断板9を回転駆動させることができる。また、遮断駆動機構の昇降駆動用アクチュエータ(例えばエアシリンダーなど)を作動させることで雰囲気遮断板9をスピンベース5に近接させたり、逆に離間させることが可能となっている。
【0019】
図3は雰囲気遮断板9の底面図である。この雰囲気遮断板9は基板Wの径より若干大きく、その中心部に開口を有している。雰囲気遮断板9はスピンベース5の上方に配置されて、その下面(底面)が基板Wの上面と対向する対向面9aとなっている。この対向面9aには複数のガス噴出口9bが開口している。そして、複数のガス噴出口9bはスピンベース5に設けられた支持部7に対応する位置に、詳しくは支持部7の回転軌跡Ta(図2)上に鉛直軸Jを中心とする円周に沿って等間隔に配列されている。これらのガス噴出口9bは、雰囲気遮断板9の内部のガス流通空間9cに連通している。なお、ガス噴出口は複数の開口に限らず、単一の開口、例えば、鉛直軸Jを中心として同心円状に全周にわたってリング状に開口したのものであってもよい。但し、複数のガス噴出口9bとした方が、ガス噴出圧の均一性を得る点で有利である。このように、この実施形態では雰囲気遮断板9が本発明の「板状部材」に、ガス噴出口9bが本発明の「気体噴出口」に相当している。
【0020】
図1に戻って説明を続ける。この雰囲気遮断板9の内部に形成されたガス流通空間9cにガスを供給するために、ガス流通空間9cは配管25を介してガス供給部21に連通接続されている。この配管25には制御部80により開閉制御される開閉弁23が介装されている。このため、制御部80が開閉弁23を開にすることでガス供給部21からガス流通空間9cに窒素ガス等の不活性ガスが供給されて、複数のガス噴出口9bから基板Wの上面に向けて不活性ガスが噴出される。また、複数のガス噴出口9bは支持部7の回転軌跡Ta上に配置されるように雰囲気遮断板9の対向面9aに設けられて、略鉛直方向に不活性ガスを噴出するように形成されている。
【0021】
そして、複数のガス噴出口9bの各々から均一に不活性ガスを噴出されることで、基板Wはスピンベース5に上方に向けて突出して設けられた各支持部7に均等に押圧される。これにより、基板Wはスピンベース5に水平に保持される。ここで、基板Wの下面に支持部7が当接する部分に対応する基板Wの上面側に直接に不活性ガスを供給しているので、基板Wをスピンベース5に確実に、しかも必要最小限のガス供給量で効率良く保持させることができる。なお、複数のガス噴出口9bからの不活性ガスは支持部7の回転軌跡Ta上に供給する場合に限らず、支持部7の回転軌跡Taよりも径方向内側あるいは外側に供給するようにしてもよい。
【0022】
雰囲気遮断板9の中心の開口および支持軸11の中空部には、上部洗浄ノズル12が同軸に設けられ、その下端部のノズル口12aからスピンベース5に押圧保持された基板Wの上面の回転中心付近に薬液、リンス液等の処理液を供給できるように構成されている。この上部洗浄ノズル12は、配管13に連通接続されている。この配管13は、基端部において分岐しており、一方の分岐配管13aには薬液供給源31が接続され、他方の分岐配管13bにはリンス液供給源33が接続されている。各分岐配管13a、13bには開閉弁15、17が介装されており、装置全体を制御する制御部80による開閉弁15、17の開閉制御によって上部洗浄ノズル12から基板Wの上面に薬液とリンス液とを選択的に切換えて供給することができる。
【0023】
また、支持軸11の中空部の内壁面と、上部洗浄ノズル12の外壁面との間の隙間は、気体供給路18となっている。この気体供給路18は、開閉弁19を介装した配管27を介して気体供給源35に連続接続されている。そして、上部洗浄ノズル12による薬液処理およびリンス処理を行った後、制御部80による開閉弁19の開閉制御によって気体供給路18を介して基板Wの上面と雰囲気遮断板9の対向面9aとの間の空間SPに清浄な空気や不活性ガス等の気体を供給することによって、基板Wの乾燥処理を行うことが可能となっている。
【0024】
回転軸1の中空部には、本発明の「下面側処理液供給手段」に相当する下部洗浄ノズル41が同軸に設けられ、その上端部のノズル口41aから基板Wの下面の回転中心付近に処理液を供給できるように構成されている。この下部洗浄ノズル41は、配管43に連通接続されている。この配管43は、基端部において分岐しており、一方の分岐配管43aには薬液供給源31が接続され、他方の分岐配管43bにはリンス液供給源33が接続されている。各分岐配管43a、43bには開閉弁45、47が介装されており、装置全体を制御する制御部80による開閉弁45、47の開閉制御によって下部洗浄ノズル41から基板Wの下面に薬液とリンス液とを選択的に切換えて供給することができる。
【0025】
また、回転軸1の内壁面と下部洗浄ノズル41の外壁面との間の隙間は、円筒状の気体供給路48を形成している。この気体供給路48は、開閉弁49を介装した配管51を介して気体供給源35に連続接続されていて、制御部80による開閉弁49の開閉制御によって気体供給路48を介して基板Wの下面とスピンベース5の対向面との間の空間に清浄な空気や不活性ガス等の気体を供給することができる。
【0026】
次に、支持部7の構成および動作について説明する。図4は支持部の構成を示す部分断面図である。なお、上記複数の支持部7はいずれも同一構成を有しているため、ここではひとつの支持部7の構成についてのみ図面を参照しつつ説明する。図4に示すように、支持部7はスピンベース5の一部が上方に向けて凸状に延出した延出部5aの内部に設けられている。この支持部7は、基板Wの下面周縁部に離当接可能にスピンベース5の延出部5aの上面に埋設されたフィルム71と、上下方向に移動可能に支持されてフィルム71の下面側に開口した円筒状凹部の上底面に離当接してフィルム71の上面中央部を押上可能となっている可動ロッド73と、この可動ロッド73を上下動させるモータ等の駆動部75とを備えている。なお、駆動部75にはモータに限らず、エアシリンダ等のアクチュエータ全般を用いてもよい。
【0027】
上記した構成を有する支持部7では、駆動部75が制御部80からの駆動信号によって図示省略する駆動連結部を介して可動ロッド73を上昇駆動させることにより、可動ロッド73の先端部がフィルム71の円筒状凹部の上底面に当接してそのままフィルム71の上面中央部を押上げる。これにより、スピンベース5の上面側に埋設されているフィルム71の上面がスピンベース5の延出部5aの上面から突出する。このため、複数の支持部7のフィルム71の全て(若しくは少なくとも3個以上)を突出させることで、フィルム71を基板Wの下面と当接させつつ基板Wをスピンベース5の延出部5aの上面から離間(例えば、1mm程度)させて水平支持することが可能となる(図4)。
【0028】
一方で、駆動部75が可動ロッド73を下降駆動させると、可動ロッド73の先端部はフィルム71の円筒状凹部の上底面から離間されて、フィルム71の上面をスピンベース5の延出部5aの上面と同一平面内に収容する。このため、突出させた複数の支持部7のフィルム71のうち少なくとも3個を残して、その一部を下降させることで、下降させたフィルム71を基板Wの下面から離間させることが可能となる。なお、このようなフィルム71は、可撓性を有するとともに処理液に対する耐腐食性を有する樹脂により成形される。好ましくは、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)等のフッ素樹脂が用いられる。このように、この実施形態ではフィルム71が本発明の「支持部材」に、駆動部75が本発明の「駆動手段」に相当している。
【0029】
ここで、基板Wの下面に処理液を供給して基板Wの周端面を伝ってその上面に処理液を回り込ませて基板Wの上面周縁部を処理(ベベル処理)する場合における、処理液が上面周縁部に回り込んで処理される上面処理領域TRと、雰囲気遮断板9の対向面9aに設けられたガス噴出口9bから噴出される不活性ガスの供給位置および支持部7の配設位置との位置関係について説明する。ガス噴出口9bから基板Wの上面に向けて略鉛直方向に噴出される不活性ガスは、処理液が上面周縁部に回り込んで処理される上面処理領域TRより内側の非処理領域NTRに供給される。一方で、支持部7は不活性ガスが供給される非処理領域NTRに対応する基板Wの下面側に当接して支持するようにスピンベース5の周縁部に設けられている。このように構成することで、処理液の非処理領域NTRへの侵入を防止するとともに、基板Wの径方向における周端面からの処理液の回り込み幅を均一にすることができる。ここで、雰囲気遮断板9の対向面9aの周縁は、処理液の回り込みを阻害させることのないよう上面処理領域TRに対応して対向面が段差状に上方に後退している。
【0030】
次に、支持部7に押圧させた基板Wをスピンベース5に保持させながら回転することのできる条件について図5を参照しつつ説明する。基板Wをその下面に当接する支持部7に押圧支持させる方式では、基板Wの上面と雰囲気遮断板9の対向面9aとの間に形成される空間SPに不活性ガスを供給することで空間SPの内部圧力を高めて基板Wを支持部7に押圧させている。つまり、基板Wの外周端部に当接して保持するチャックピン等の保持部材がなく基板Wを高速回転させると基板Wが径方向外側に飛び出してしまうおそれがある。これは、空間SPに供給された不活性ガスが基板Wを回転させるほど基板外に排出され易くなって空間SPの内部圧力が低下することに加えて、基板Wの回転により基板Wに働く遠心力が、回転数が高くなるほど大きくなる(回転数の2乗に比例)からである。
【0031】
そのため、支持部7に押圧させた基板Wをスピンベース5に保持させながら回転させるために、次の不等式、つまり、
(基板Wに働く遠心力F1)<(基板Wの下面と支持部7との間に発生する摩擦力F2)
を満たす範囲内で装置の条件を設定する必要がある。基板Wに働く遠心力F1は径方向外向きに作用するのに対し、基板Wの下面と支持部7との間に発生する摩擦力F2は遠心力F1とは逆向きの径方向内向きに作用する。ここで、遠心力は一般にmrω2(m:質量、r:回転中心から質点(m)までの半径、ω:角速度)で表され、基板Wに働く遠心力F1を決定付ける装置側のパラメータとしては、スピンベース5の回転数R、スピンベース5の回転軸Jに対する基板Wの物理的な中心までの径方向の距離D(以下、「偏心量」という)および基板Wの質量がある。また、基板Wの下面と支持部7との間に発生する摩擦力F2は、基板Wと支持部7との間の摩擦係数(静摩擦係数)μと基板Wに作用する垂直抗力Nとの積μNにより決定される。
【0032】
そこで、本願発明者は、上記不等式を満たすように次の5つの装置側の制御因子の閾値を実験により求めた。すなわち、(1) スピンベース5の回転数R、(2)偏心量D、(3)ガス流量V、(4) 基板Wの上面と雰囲気遮断板9の対向面9aとの間の距離G(以下、「ギャップ」という)、(5)基板Wおよび雰囲気遮断板9の面ブレ、基板Wと雰囲気遮断板9との平行度の以上5つのパラメータの閾値を求めた。ここで、ガス流量Vは空間SPに供給される不活性ガスの総流量を意味し、気体供給路18およびガス噴出口9bから基板Wの上面に向けて供給されるガス流量をいう。また、基板Wおよび雰囲気遮断板9の面ブレとは、基板Wおよび雰囲気遮断板9をそれぞれ回転軸J回りに回転させたときに基板Wの表面および対向面9aが垂直方向に振れる振れ幅をいう。また、基板Wと雰囲気遮断板9との平行度とは、基板Wの上面と対向面9aとの間の平行度をいう。
【0033】
実験には、直径300mmのシリコン基板を用いており、基板Wの質量および摩擦係数μを決定する基板側材質はほぼ一定となる。一方で、摩擦係数μは支持部7の材質によって大きく異なる。基板Wの下面に当接する支持部7の材質にSiC、グラッシーカーボン、アルミナ等を用いた場合には、摩擦係数μは比較的大きくなる一方、フッ素樹脂系の材料を用いた場合には、摩擦係数μは比較的小さくなる。ここで、フッ素樹脂系の材料としては、例えばPCTEF(ポリテトラフルオロエチレン)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PVC(ポリ塩化ビニル)等が用いられる。また、Oリングに使用される耐薬性、弾性を備えた材料としてカルレッツ(登録商標)あるいはパーフロを用いると、摩擦係数μはSiC、グラッシーカーボン、アルミナ等の材料群と、PCTEF、PVDF、PEEK、PVC等からなる材料群との中間の数値をとる。
【0034】
上記した3種類の材料群を用いて装置側の各パラメータの閾値を求めたところ、表1〜表3に示す結果が得られた。表1は、支持部7の材質にSiC、グラッシーカーボン、アルミナ等を用いた場合の結果を、表2は、支持部7の材質にPCTEF、PVDF、PEEK、PVC等を用いた場合の結果を、さらに表3は、支持部7の材質にカルレッツあるいはパーフロを用いた場合の結果を示す。そして、これら表1〜表3に示す条件の範囲内で使用することによって、基板Wを支持部7上で滑らせることなく安定して処理を行うことができる。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
表1〜表3に示すように、基板Wと支持部7との間の摩擦係数μが小さくなるほど、回転数Rを小さくするとともに、ガス流量Vの増大とギャップGを狭めることで空間SPの内部圧力を高める必要があることが分かる。これは、回転数Rが高くなるほど遠心力F1が増大するとともに、空間SP内の不活性ガスの排出が促進され空間SPの内部圧力が低下、つまり、基板Wに作用する垂直抗力Nが減少して摩擦力F2が小さくなるからである。この実施形態では、ガス流量をマスフローコントローラ等の流量制御手段で微細に調整することは勿論、遮断駆動機構の昇降駆動用アクチェータを0.01mm単位でパルス制御することで雰囲気遮断板9と基板Wのギャップの微調整を可能とすることにより、押圧支持条件を精密にコントロールして装置の汎用性を高めている。
【0038】
次に、上記のように構成された基板処理装置の動作について説明する。具体的には基板Wの下面側に処理液を供給して基板Wの下面および基板Wの下面から基板Wの周端面を伝ってその上面に処理液を回り込ませて基板Wの上面周縁部の処理する場合について説明する。この基板処理装置では、図示を省略する基板搬送ロボットにより未処理の基板Wが基板処理装置に搬送され、デバイス形成面を上にして裏面側で支持部7上に載置されると、制御部80が装置各部を以下のように制御して薬液処理、リンス処理、および乾燥処理を実行する。なお、基板搬送ロボットによる基板Wの搬送を行う際には、雰囲気遮断板9、支持軸11および上部洗浄ノズル12は一体的にスピンベース5の上方に離間退避している。
【0039】
上記のようにして基板Wが支持部7に載置されると、雰囲気遮断板9、支持軸11および上部洗浄ノズル12を一体的に降下させて雰囲気遮断板9を基板Wに近接配置させる。そして、開閉弁23を開にしてガス供給部21からの不活性ガスを雰囲気遮断板9の対向面9aに設けられた複数のガス噴出口9bから噴出させるとともに、気体供給路18から基板Wの上面中央部に向けて不活性ガスを供給する。これにより、雰囲気遮断板9の対向面9aと基板Wの上面との間に形成される空間SPの内部圧力が高められ、基板Wはその下面に当接する支持部7に押圧されてスピンベース5に保持される。さらに、基板Wの上面は雰囲気遮断板9の対向面9aによって、ごく近接した状態で塞がれることになる。ここで、複数のガス噴出口9bから均等に不活性ガスを噴出させることで、基板Wは各支持部7に均等に押圧されて水平支持される。
【0040】
それに続いて、モータ3を駆動してスピンベース5と一体に基板Wを回転させる。支持部7に押圧された基板Wは支持部7と基板Wとの間に発生する摩擦力で支持部7に支持されながら、スピンベース5とともに回転することとなる。このとき、図示を省略する遮断駆動機構のモータを駆動させることにより雰囲気遮断板9を鉛直軸J回りにスピンベース5の回転数とほぼ同一の回転数で同一方向に回転させる。これにより、基板Wと雰囲気遮断板9との間に回転に伴う余分な気流が発生するのを防止することができる。このように、この実施形態ではモータ3と遮断駆動機構のモータとで本発明の「回転手段」が構成されている。
【0041】
そして、基板Wの回転開始とともに、制御部80は、開閉弁45を開にして薬液供給源31からの薬液を下部洗浄ノズル41のノズル口41aから基板Wの下面中心部に向けて供給する。これにより、基板Wの下面中心部に供給された薬液は、基板Wの回転に伴う遠心力によって下面全体に拡がり、基板Wの下面全面に対する薬液処理が行われる。ここで、薬液処理中に各支持部7を基板Wの下面から少なくとも1回以上、離間させることで支持部7と基板Wの当接部分にも薬液を回り込ませて当該部分を処理することができる。この場合、例えば、12個の支持部7を順に1個ずつ離間させるようにしてもよいし、少なくとも3個の支持部7を基板Wの下面に当接させる限りにおいて2個以上の支持部7を一度に離間させるようにしてもよい。なお、気体供給路18からの不活性ガスの供給により基板Wの下面中心部における下部洗浄ノズル41のノズル口41aからの薬液の噴射圧に対抗させることができる。
【0042】
基板Wの下面を伝って基板Wの径方向外側に向かった薬液は基板Wの上面へ回り込む薬液を除いて基板Wの外側に飛散するが、この実施形態では基板Wの外周端部を保持するチャックピン等の保持部材がないことから、基板Wの径方向外側に向かう薬液が基板表面に跳ね返ってくることがない。また、基板の外周端部付近の気流を乱す要因がないことから処理液ミストの基板表面側への巻き込みが軽減される。このため、基板Wの上面側の非処理領域NTR(上面処理領域TRより内側の領域)に薬液が跳ね返って、非処理領域(例えば、半導体ウエハにあってはデバイス形成領域)NTRが腐食されるのを防止することができる。また、処理液ミストの巻き込みを防止することで基板表面へのパーティクル付着を抑制することができる。
【0043】
また、基板Wの下面中心部に供給された薬液の一部は、基板Wの中心部から周縁部へと伝わり、基板Wの周端面を回り込んで基板Wの上面周縁部へと至る。そして、基板Wの上面周縁部が上面処理領域TRとして、くまなく処理されることになる。このように、この実施形態では基板Wの外周端部を保持するチャックピン等の保持部材がないことから、処理液の回り込み量が不均一となることがない。したがって、基板Wの外周端部の保持に起因する処理むらを防止することができる。
【0044】
薬液処理を所定時間行った後、基板Wおよび雰囲気遮断板9の回転を継続しつつ、制御部80は開閉弁45を閉にして薬液供給源31からの薬液の供給を停止して、代わって開閉弁47を開にする。これにより、下部洗浄ノズル41のノズル口41aからリンス液(純水、DIW等)が、基板Wの下面中心部に向けて供給されることになる。この状態で、基板Wの下面中心部に供給されたリンス液は基板Wの下面全体に拡がり、基板Wに付着している薬液をリンス液で洗い落とすリンス処理が行われる。また、基板Wの下面中心部に供給されたリンス液は基板Wの周端面を回り込むことによって基板Wの上面周縁部TRに付着した薬液も残らず洗い流される。こうして、薬液処理後の基板Wの下面、周端面および上面周縁部に存在する薬液を洗い流すことができる。
【0045】
その後、リンス処理を所定時間行った後、制御部80は開閉弁47を閉にしてリンス処理を終了する。次に制御部80はモータ3および遮断駆動機構のモータを高速回転させることで、基板Wおよび雰囲気遮断板9の回転が加速され、その表面に付着する液成分が遠心力で振り切られる。この乾燥処理の間、基板Wの上面と雰囲気遮断板9の対向面9aとの間の空間SPへの不活性ガスの供給と併せて制御部80は開閉弁49を開にして気体供給路48から所定流量の不活性ガスを基板Wの下面とスピンベース5の対向面との間の空間に導入する。その結果、基板Wを取り囲む周囲の空間は速やかに不活性ガスによって置換されるので、空間内に残留する薬液雰囲気によって基板Wが汚染されることがない。また、不所望な酸化膜が基板Wの上下面に成長することがない。
【0046】
乾燥処理の後、制御部80はモータ3の駆動を停止して基板Wの回転を停止させるとともに遮断駆動機構のモータの駆動を停止して雰囲気遮断板9の回転を停止させる。そして、開閉弁19および開閉弁23を閉にして空間SPへのガス供給を停止することで、基板Wの押圧支持を解除する。その後、雰囲気遮断板9が上方へ移動させられ、基板搬送ロボットによって処理済の基板Wが搬出される。
【0047】
以上のように、この実施形態によれば、基板Wは、その下面に当接する支持部7に離間して支持されるとともに、その上面に供給される不活性ガスによって支持部7に押圧されることで、スピンベース5に保持される。そして、基板Wは支持部7との間に発生する摩擦力で支持部7に支持されてスピンベース5とともに回転される。このように基板Wを保持することで、基板Wの外周端部に接触して基板Wを保持するチャックピン等の保持部材を不要とすることができる。このため、基板Wの回転により基板表面を伝って径方向外側に向かう処理液が直接にチャックピン等の保持部材に当たって基板表面へ跳ね返ることがない。また、基板Wの外周端部付近の気流を乱す要因がないことからミスト状の処理液の基板表面側への巻き込みを軽減することができる。これにより、基板表面への処理液の再付着を効果的に防止することができる。
【0048】
また、基板Wの下面側に支持部7を当接させて支持するとともに、その上面側に不活性ガスを供給することで基板Wを保持しているので、基板Wの上面周縁部(上面処理領域)TRへの処理液の回り込みを阻害させることなく、基板Wの上面周縁部TRへの処理液の回り込み量を均一にすることができる。また、基板Wの上面処理領域TRより内側の非処理領域NTRに不活性ガスを供給することで薬液の非処理領域NTRへの侵入を防止して、基板Wの径方向における周端面からの処理液の回り込み幅を均一にすることができる。
【0049】
また、支持部7を基板Wの下面から離当接可能に構成するとともに、基板Wの下面に処理液を供給しつつ処理中に少なくとも1回以上、各支持部7を基板Wの下面から離間させているので、支持部7が基板Wの下面に当接する部分にも処理液を回り込ませて基板Wの下面全体を処理することができる。
【0050】
<第2実施形態>
図6は本発明にかかる基板処理装置の第2実施形態を示す図である。また、図7は図6の基板処理装置の平面図である。この第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、基板Wの上面周縁部に処理液を供給するための処理液供給ノズル6がさらに追加的に設けられている点、および処理液供給ノズル6の追加に伴い雰囲気遮断板90の構成が一部変更となっている点であり、その他の構成は基本的に第1実施形態と同様である。したがって、支持部7に押圧させた基板Wをスピンベース5に保持させながら回転することのできる条件については第1実施形態で説明したパラメータ範囲内で使用することにより、基板Wを滑らせることなく安定した処理を行うことが可能となっている。以下においては同一構成については同一符号を付して説明を省略し、相違点を中心に本実施形態の特徴について説明する。
【0051】
この実施形態では、基板Wの上面周縁部の処理が、基板Wの下面に供給され基板Wの周端面を伝って基板Wの上面側に回り込ませた処理液によるものではなく、基板Wの上面に対向配置する処理液供給ノズル6から供給する処理液によるものとなっている。この処理液供給ノズル6は、スピンベース5の上方であって雰囲気遮断板9の側方に配置されることで、基板Wの上面周縁部に処理液を供給可能になっている。すなわち、処理液供給ノズル6には、その内部に薬液供給管61とリンス液供給管63が配設され、各供給管61、63の下端部から基板Wの上面周縁部に対して、それぞれ薬液、リンス液を供給できるように構成されている。ここで、薬液供給管61は配管14を介して薬液供給源31と接続される一方、リンス液供給管63が配管22を介してリンス液供給源33と接続されている。また、配管14、22にはそれぞれ、開閉弁16、20が介装されており、制御部80が開閉弁16、20を制御することで処理液供給ノズル6に供給される薬液およびリンス液の流量を調整可能となっている。
【0052】
また、処理液供給ノズル6は1本のアーム65(図7)の先端側に固着されている。一方、アーム65の基端部には、ノズル移動機構67が連結されている。そして、制御部80からの制御指令に応じてノズル移動機構67が作動することでアーム65を回転軸心P回りに揺動駆動させることが可能である。これにより、処理液供給ノズル6は、基板Wに対向して基板Wの上面周縁部に処理液を供給する対向位置(図7の実線で示す位置)と、供給位置から側方に退避した退避位置(図7の破線で示す位置)との間を移動することができる。このように、この実施形態では処理液供給ノズル6が本発明の「上面側処理液供給手段」に相当している。
【0053】
図8は、図6に示す基板処理装置の雰囲気遮断板90の底面図である。この雰囲気遮断板90が第1実施形態にかかる基板処理装置の雰囲気遮断板9と相違する点は、雰囲気遮断板90の外縁の一部がコ字状に中心部に向けて窪んだ窪部90aを有している点、および窪部90aの周囲のガス噴出口90bから不活性ガスを基板Wの上面側へ向けて下向きかつ外向きに噴出できるようになっている点である。これにより、処理液供給ノズル6が窪部90aに入り込むことにより、処理液供給ノズル6を基板Wの上面周縁部(上面処理領域)TRと対向する対向位置に配置することを可能としている。ここで、雰囲気遮断板90が基板Wの上面を広範囲に塞ぐようにするため、窪部90aおよび処理液供給ノズル6は基板Wの上面周縁部TRに処理液を供給する上で必要最小限の大きさで構成される。また、ガス噴出口90bから不活性ガスを下向きかつ外向きに噴出させることで、処理液供給ノズル6が対向位置にあるときに処理液が基板Wの上面の非処理領域(上面処理領域TRより内側の領域)NTRに入り込むのを防止するとともに、処理液供給ノズル6が退避位置にあるときに薬液雰囲気が基板Wの上面と雰囲気遮断板90との間に形成される空間SPに侵入するのを防止することができる。なお、その他の構成は基本的に第1実施形態にかかる基板処理装置の雰囲気遮断板9と同様であるので説明を省略する。
【0054】
次に、上記のように構成された基板処理装置の動作について図9を参照しつつ詳述する。図9は、図6の基板処理装置の動作を示すフローチャートである。先ず図示省略する基板搬送ロボットにより未処理の基板Wが基板処理装置に搬送され、デバイス形成面を上にして裏面側で支持部7上に載置されると、制御部80は雰囲気遮断板90を降下させて雰囲気遮断板90を基板Wに近接配置させる(ステップS1)。そして、開閉弁23を開にしてガス供給部21からの不活性ガスを雰囲気遮断板90の対向面9aに設けられた複数のガス噴出口9b、90bから噴出させるとともに、気体供給路18から基板Wの上面中央部に向けて不活性ガスを供給することで、基板Wを支持部7に押圧させてスピンベース5に保持させる(ステップS2)。
【0055】
次に、制御部80はノズル移動機構67を作動させることで処理液供給ノズル6を対向位置に位置決めする(ステップS3)。それに続いて、制御部80は雰囲気遮断板90は停止させたままでモータ3を駆動してスピンベース5と一体に基板Wを回転させる(ステップS4)。続いて、開閉弁16を開にして処理液供給ノズル6から薬液を基板Wの上面周縁部TRに供給する(ステップS5)。これにより、薬液は基板Wの上面周縁部TRの全周にわたって基板Wの端部から所定幅に均一に供給され、基板Wの上面周縁部TRに対する薬液処理が行われる。薬液処理後、制御部80は開閉弁20を開にして、処理液供給ノズル6からリンス液を基板Wの上面周縁部TRに供給する(ステップS6)。これにより、基板Wの上面周縁部TRに付着している薬液がリンス液で洗い落とされる。
【0056】
こうして、基板Wの上面周縁部TRへの薬液処理およびリンス処理が完了すると、制御部80はノズル移動機構67を作動させることで処理液供給ノズル6を退避位置に位置決めする(ステップS7)。続いて、基板Wの下面を処理することになるが、ここで制御部80は遮断駆動機構のモータを駆動して雰囲気遮断板90をスピンベース5の回転数とほぼ同一の回転数で同一方向に雰囲気遮断板90を回転させる(ステップS8)のが望ましい。これにより、基板Wと雰囲気遮断板9との間に回転に伴う余分な気流が発生するのを防止して薬液雰囲気の巻き込みや薬液の跳ね返りが防止される。
【0057】
そして、制御部80は開閉弁45を開にして薬液供給源31からの薬液を下部洗浄ノズル41のノズル口41aから基板Wの下面中心部に向けて供給する(ステップS9)。これにより、基板Wの下面中心部に供給された薬液は、基板Wの回転に伴う遠心力によって下面全体に拡がり、基板Wの下面全面に対する薬液処理が行われる。なお、基板Wの下面に対する薬液処理は基板Wの上面周縁部TRに対する薬液処理中に、または基板Wの上面周縁部TRに対する薬液処理のタイミングと一部が重複するように行うようにしてもよい。こうして、薬液処理を所定時間行った後、基板Wの回転を継続しつつ、制御部80は開閉弁45を閉にして薬液供給源31からの薬液の供給を停止して薬液を振り切って基板外に排液する。
【0058】
こうして、薬液の液切りが完了すると、制御部80は開閉弁47を開にすることで基板Wの下面に対するリンス処理を行う(ステップS10)。なお、基板Wの下面に対するリンス処理についても、基板Wの上面周縁部TRに対するリンス処理中に、または基板Wの上面周縁部TRに対するリンス処理のタイミングと一部が重複するように行うようにしてもよい。そして、リンス処理を所定時間行った後、制御部80は開閉弁47を閉にしてリンス液の供給を停止してリンス液を振り切って基板外に排液する。
【0059】
次に、基板Wの上面と雰囲気遮断板90の対向面9aとの間の空間SPへの不活性ガスの供給と併せて制御部80は開閉弁49を開にして気体供給路48から所定流量の不活性ガスを基板Wの下面とスピンベース5の対向面との間の空間に導入する。そして、モータ3および遮断駆動機構のモータを高速回転させることにより残留するリンス液を飛ばして、乾燥処理が行われる(ステップS11)。
【0060】
基板Wの乾燥処理が終了すると、制御部80は遮断駆動機構を制御して雰囲気遮断板90の回転を停止させる(ステップS12)とともに、モータ3を制御して基板Wの回転を停止させる(ステップS13)。そして、開閉弁19および開閉弁23を閉にして空間SPへのガス供給を停止することで、基板Wの押圧支持を解除する(ステップS14)。その後、雰囲気遮断板90が上方へ移動させられ、基板搬送ロボットによって処理済の基板Wが搬出される。これにより、一連の薬液処理およびリンス処理の動作が終了する。
【0061】
以上のように、この実施形態によれば、基板Wの外周端部に接触して基板Wを保持するチャックピン等の保持部材を不要とすることで、第1実施形態と同様にして基板表面への処理液の再付着を効果的に防止することができる。また、処理液供給ノズル6から直接に処理液を基板Wの上面周縁部(上面処理領域)TRに供給しているので、以下の利点が得られる。すなわち、基板Wの下面に供給される処理液を基板の周端面から回り込ませて基板Wの上面周縁部TRの処理を行うに比べて、基板Wの径方向における周端面からの処理幅の制御が容易である。このため、基板Wの径方向における周端面からの処理幅を自由に、しかも高精度に制御することができる。また、半導体ウエハ等の基板Wにノッチ部分がある場合でも、ノッチ部分の処理幅の均一性を良好にすることができる。
【0062】
また、この実施形態においても、基板Wの下面に処理液を供給しつつ処理中に少なくとも1回以上、各支持部7を基板Wの下面から離間させることで、支持部7が基板Wの下面に当接する部分にも処理液を回り込ませて基板Wの下面全体を処理することができる。
【0063】
また、この実施形態では、処理液供給ノズル6から薬液とリンス液を基板Wに供給しているが、薬液とリンス液のそれぞれについて別個にノズルを設けるようにしてもよい。なお、この場合でも各ノズルの大きさを共通にして交互に各ノズルを雰囲気遮断板90の側方に配置させることで、一箇所の窪部90aを設けることで雰囲気遮断板90を構成することができる。
【0064】
<第3実施形態>
図10は、本発明にかかる基板処理装置の第3実施形態を示す図である。また、図11は図10の基板処理装置の部分断面図である。この第3実施形態は、基板Wの上面周縁部に処理液を供給するための処理液供給ノズルが追加的に設けられている点については第2実施形態と共通するが、基板Wの上面側処理液供給時に第2実施形態では雰囲気遮断板90を回転させることができなかったのに対し、この第3実施形態では雰囲気遮断板を回転させることが可能となっている点が異なる。この相違により雰囲気遮断板の構成が一部異なる他は基本的に第1および第2実施形態と同様の構成である。したがって、支持部7に押圧させた基板Wをスピンベース5に保持させながら回転することのできる条件については第1実施形態で説明したパラメータ範囲内で使用することにより、基板Wを滑らせることなく安定した処理を行うことが可能となっている。以下においては同一構成については同一符号を付して説明を省略し、相違点を中心に本実施形態の特徴について説明する。
【0065】
この実施形態では、雰囲気遮断板91が基板Wの平面サイズよりも小さな円形の対向面91aを有している。そのため、対向面91aと基板Wの上面とを平行して対向させた際に、基板Wの上面周縁部が対向面91aに塞がれることなく露出する。この雰囲気遮断板91はちょうど、対向面91aを下面として上方にいくに従って横断面のサイズが徐々に小さくなっている円錐台形状の下部と、該円錐台の上面を横断面とする円柱形状の上部とを連結した形状をしている。具体的には、雰囲気遮断板91の下部周縁は全周にわたって対向面91aから上方にいくに従って回転軸J側に近づくように傾斜した傾斜面91bを形成している。また、雰囲気遮断板91の上部周縁、つまり傾斜面91bから上方は、ほぼ垂直に立ち上がった側面91cを形成している。
【0066】
処理液供給ノズル8は下端部から薬液またはリンス液が選択的に供給することが可能となっている。また、処理液供給ノズル8は図示省略するノズル移動機構と接続され、ノズル移動機構を駆動することで、雰囲気遮断板91の側面91cに近接する近接位置(図11に示す位置)と、雰囲気遮断板91から側方(あるいは上方)に退避した退避位置に位置決めされる。処理液供給ノズル8は側面が雰囲気遮断板91の側面91cと平行して対向するように、例えば鉛直方向に伸びる円筒形状に構成され、ノズル8が近接位置に位置決めされた際に、傾斜面91bに向けて処理液が吐出可能となっている。
【0067】
雰囲気遮断板91の対向面91aは疎水性を有する疎水面となっている一方で、傾斜面91bは親水性を有する親水面となっている。そのため、傾斜面91bに供給された処理液は、傾斜面91bに沿って流下する。そして、傾斜面91bの下端に達した処理液は、疎水面である対向面91aに回り込むことなく、基板Wの上面周縁部に流下する。具体的には、雰囲気遮断板91から流下する処理液は、傾斜面91bを基板Wに向けて延長したときの基板Wの上面との交線よりも外側の上面処理領域TRに供給され、基板Wの回転に伴う遠心力を受けて基板Wの周縁に向かって流れ、基板Wの周端面を伝って流下する。このため、処理液供給ノズル8から処理液を吐出しつつ基板Wを回転させることで、基板Wの上面周縁部を全周にわたって均一に処理することができる。
【0068】
次に、上記のように構成された基板処理装置の動作について図12を参照しつつ説明する。図12は、図10の基板処理装置の動作を示すフローチャートである。基板Wがデバイス形成面を上にして裏面側で支持部7上に載置されると、制御部80は雰囲気遮断板91を降下させて雰囲気遮断板91を基板Wに近接配置させる(ステップS21)。そして、不活性ガスを複数のガス噴出口9bから噴出させるとともに、気体供給路18から基板Wの上面中央部に向けて不活性ガスを供給することで、基板Wを支持部7に押圧させてスピンベース5に保持させる(ステップS22)。
【0069】
次に、制御部80はノズル移動機構を駆動して処理液供給ノズル8を雰囲気遮断板91の側面91cに近接する近接位置に位置決めする(ステップS23)。それに続いて、モータ3を駆動して基板Wを回転させる(ステップS24)とともに、遮断駆動機構のモータを駆動して雰囲気遮断板91を鉛直軸J回りにスピンベース5の回転数とほぼ同一の回転数で同一方向に回転させる(ステップS25)。続いて、処理液供給ノズル8から雰囲気遮断板91の傾斜面91bに薬液を供給する。供給された薬液は傾斜面91bを流下して回転する基板Wの上面周縁部TRに供給され、基板Wの端部から所定の処理幅に基板Wの全周にわたって均一な薬液処理が行われる(ステップS26)。
【0070】
ここで、雰囲気遮断板91の対向面91aは疎水面であることから、対向面91aに薬液が回り込むことはなく、また、雰囲気遮断板91と基板Wの上面との間に形成される空間SPに供給された不活性ガスが径方向外側に流れ出ることで、上面中央部の非処理領域NTRに薬液雰囲気が侵入することがない。さらに、基板Wと雰囲気遮断板91とが同期回転されることで、余分な気流が発生するのを防止して基板周辺の薬液雰囲気の巻き込みや跳ね返りによる薬液の非処理領域NTRへの侵入が防止される。
【0071】
また、基板Wの上面への薬液供給と同時に、あるいは基板Wの上面への薬液供給後に下部洗浄ノズル41からも薬液を供給することで基板Wの下面全体に対する薬液処理を実行する(ステップS27)。こうして、基板Wの上面周縁部TRおよび下面に対する薬液処理を所定時間行った後、薬液の供給を停止して薬液を振り切って基板外に排液する。薬液の液切りが完了すると、処理液供給ノズル8からリンス液を基板Wの上面周縁部に供給する(ステップS28)。これにより、基板Wの上面周縁部TRに付着している薬液がリンス液で洗い落とされる。また、基板Wの上面へのリンス液供給と同時に、あるいは基板Wの上面へのリンス液供給後に下部洗浄ノズル41からもリンス液を供給することで基板Wの下面全体に対するリンス処理を実行する(ステップS29)。
【0072】
基板Wの上面周縁部TRへのリンス液供給後、制御部80はノズル移動機構を駆動して処理液供給ノズル8を退避位置に位置決めする(ステップS30)。続いて、制御部80は基板Wの上面と雰囲気遮断板91の対向面9aとの間の空間SPへの不活性ガスの供給と併せて開閉弁49を開にして気体供給路48から所定流量の不活性ガスを基板Wの下面とスピンベース5の対向面との間の空間に導入する。そして、モータ3および遮断駆動機構のモータを高速回転させることで、基板Wおよび雰囲気遮断板91に付着する液成分を遠心力で振り切り乾燥させる(ステップS31)。
【0073】
基板Wの乾燥処理が終了すると、制御部80は遮断駆動機構を制御して雰囲気遮断板91の回転を停止させる(ステップS32)とともに、モータ3を制御して基板Wの回転を停止させる(ステップS33)。そして、開閉弁19および開閉弁23を閉にして空間SPへのガス供給を停止することで、基板Wの押圧支持を解除する(ステップS34)。その後、雰囲気遮断板91が上方へ移動させられ、処理済の基板Wが搬出される。
【0074】
以上のように、この実施形態によれば、基板Wの外周端部に接触して基板Wを保持するチャックピン等の保持部材を不要とすることで、先の実施形態と同様にして基板表面への処理液の再付着を効果的に防止することができる。また、処理液供給ノズル8から雰囲気遮断板91の傾斜面91bを伝って処理液を流下させて基板Wの上面周縁部(上面処理領域)TRに供給しているので、基板Wの全周にわたって処理幅を均一にすることができる。すなわち、処理液は親水面である傾斜面91bに沿って流下して基板Wの周端面から一定の範囲に供給され疎水面である対向面91aに回り込むことがないので、処理幅にばらつきが生じることがない。しかも、基板Wとともに雰囲気遮断板91を回転させながら処理液を基板Wの上面周縁部TRに供給することができるので、上面中央部(非処理領域NTR)への処理液の巻き込みや跳ね返りを効果的に防止することができる。
【0075】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、基板Wの下面、周端面および上面周縁部を洗浄する基板処理装置に対して本発明を適用しているが、これに限定されない。例えば、基板の上下面の両面に対して、またはどちらか一方面のみに対して洗浄処理、エッチング処理、現像処理などの基板処理を基板Wを回転させながら行う基板処理装置全般に適用可能である。
【0076】
また、上記実施形態では、支持部7はスピンベース5の周縁部の一部を凸状に上方に向けて延出させた延出部5aに設けているが、スピンベース5の一部を上方に延出させることなく、支持部7自体をスピンベース5の上面から上方に突出させて構成するようにしてもよい。また、スピンベース5の一部を上方に延出させることなく、スピンベース5の上面に支持部7を埋設させて、フィルム71のみをスピンベース5の上面から突出させるように構成してもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、支持部7の回転軌跡Ta上に不活性ガスが略鉛直方向に噴出されるように雰囲気遮断板9、90の対向面9aにガス噴出口9bを設けているが、これに限定されない。例えば、支持部7の回転軌跡Taより内側にガス噴出口9bを設けて、支持部7の回転軌跡Ta上に向けて下向きかつ外側に不活性ガスを噴出させるようにしてもよい。
【0078】
また、上記第2実施形態では、処理液供給ノズル6を雰囲気遮断板90の外縁の窪部90aに入り込ませることで基板Wの上面周縁部(上面処理領域)TRと対向させているが、これに限定されない。図13に示すように、雰囲気遮断板90の周縁部に処理液供給ノズル6が挿入可能な上下方向に貫通する貫通孔9eを設けて該貫通孔9eにノズル6の下端部を対向面9aと面一の位置まで挿入させて上面周縁部TRと対向させてもよい(図13(a))。また、貫通孔9eの内壁にガス流通空間90cに連通するガス導入口9dを設けると、処理液供給ノズル6を貫通孔9eから抜き出して退避させた際に貫通孔9eの上下の開口から不活性ガスが噴出させることができる(図13(b))。
【0079】
このような構成によれば、ノズル6を貫通孔9eから抜き出すことで、基板Wとともに雰囲気遮断板90を回転させることができる。このため、雰囲気遮断板90に付着する処理液を振り切るとともに、基板Wと雰囲気遮断板9との間に回転に伴う余分な気流が発生するのを防止することができる。その結果、基板Wと雰囲気遮断板90との間の空間SPへの薬液雰囲気の巻き込みや薬液の跳ね返りが防止される。
【0080】
また、処理液供給時にはノズル6は貫通孔9eに挿入されているため、基板処理中に処理液が飛散してノズル6に向けて跳ね返ってくるような場合でも、処理液は雰囲気遮断板90の対向面9aに遮られてノズル6に大量の処理液が付着することがない。このため、ノズル移動時においてノズル6から処理液が落ちて基板Wあるいは基板周辺部材に付着して悪影響を及ぼすことが防止される。その結果、ノズル6の洗浄も不要となり、装置のスループットを向上させることができる。
【0081】
また、この実施形態によれば、ノズル6を雰囲気遮断板9から離れ退避させた際にも、貫通孔9eの上下の開口から不活性ガスが噴出されているので、処理液が貫通孔9eに入り込み基板Wに処理液が跳ね返ることがない。このため、基板Wの上面中央部(非処理領域NTR)に形成されるデバイス形成面が腐食するのを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、光ディスク用基板などを含む基板全般の表面に対して洗浄処理などの処理を施す基板処理装置および方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0083】
3…モータ(回転手段)、5…スピンベース(回転部材)、6…処理液供給ノズル、9,90,91…雰囲気遮断板(押圧手段)、9a,91a…対向面、9b、90b…ガス噴出口、21…ガス供給部(押圧手段)、41…下部洗浄ノズル、71…フィルム(支持部材)、75…駆動部、NTR…非処理領域、J…鉛直軸、Ta…回転軌跡、TR…上面周縁部(上面処理領域)、W…基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を回転させながら前記基板に処理液を供給して所定の処理を施す基板処理装置において、
鉛直軸回りに回転自在に設けられた回転部材と、
前記回転部材を回転させる回転手段と、
前記回転部材に上方に向けて設けられ、前記基板の周縁より内側で前記基板の下面に当接するように配置され、前記基板を前記回転部材から離間させて支持する少なくとも3個以上の支持部材を有する支持手段と、
前記基板の上面に気体を供給することによって前記基板を前記支持部材に押圧させて前記基板を前記回転部材に保持させる押圧手段と
を備え、
前記基板に働く遠心力よりも大きい摩擦力が前記基板の下面と前記支持部材との間に発生する押圧支持条件が満たされるように、前記押圧手段および前記回転手段が制御され、
前記摩擦力は、前記押圧手段により供給される気体の流量を増加させると増大し、
前記遠心力は、前記回転手段により回転される前記回転部材の回転数を増加させると増大することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
基板を回転させながら前記基板に処理液を供給して所定の処理を施す基板処理装置において、
鉛直軸回りに回転自在に設けられた回転部材と、
前記回転部材を回転させる回転手段と、
前記回転部材に上方に向けて設けられ、前記基板の下面に当接して該基板を前記回転部材から離間させて支持する少なくとも3個以上の支持部材を有する支持手段と、
前記基板の上面に気体を供給することによって前記基板を前記支持部材に押圧させて前記基板を前記回転部材に保持させる押圧手段と
を備え、
前記押圧手段は、前記基板の上面周縁部に配置され前記処理液で処理される上面処理領域よりも内側の非処理領域に前記気体を供給し、
前記支持部材は、前記非処理領域に対応する前記基板の下面に当接して前記基板を支持し、
前記基板が前記支持部材上で滑ることなく前記支持部材に対して押圧されて前記回転部材に保持されながら回転される押圧支持条件が満たされるように、前記押圧手段および前記回転手段が制御されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
前記押圧支持条件は、前記基板に働く遠心力よりも大きい摩擦力が前記基板の下面と前記支持部材との間に発生する条件であり、
前記摩擦力は、前記押圧手段により供給される気体の流量を増加させると増大し、
前記遠心力は、前記回転手段により回転される前記回転部材の回転数を増加させると増大する請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
基板を回転させながら前記基板に処理液を供給して所定の処理を施す基板処理方法において、
回転部材に上方に向けて設けられた少なくとも3個以上の支持部材を前記基板の周縁より内側で前記基板の下面に当接させることにより前記基板を前記回転部材から離間させて支持する工程と、
前記基板の上面に気体を供給することによって前記基板を前記支持部材に押圧することで、前記基板を前記回転部材に保持させる工程と、
前記回転部材を鉛直軸回りに回転させることにより前記基板を回転させる工程と、
前記基板に働く遠心力よりも大きい摩擦力が前記基板の下面と前記支持部材との間に発生する押圧支持条件が満たされるように前記回転部材の回転数および前記気体の供給流量を制御する工程と
を備え、
前記摩擦力は、前記基板の上面に供給される気体の流量を増加させると増大し、
前記遠心力は、前記回転部材の回転数を増加させると増大することを特徴とする基板処理方法。
【請求項1】
基板を回転させながら前記基板に処理液を供給して所定の処理を施す基板処理装置において、
鉛直軸回りに回転自在に設けられた回転部材と、
前記回転部材を回転させる回転手段と、
前記回転部材に上方に向けて設けられ、前記基板の周縁より内側で前記基板の下面に当接するように配置され、前記基板を前記回転部材から離間させて支持する少なくとも3個以上の支持部材を有する支持手段と、
前記基板の上面に気体を供給することによって前記基板を前記支持部材に押圧させて前記基板を前記回転部材に保持させる押圧手段と
を備え、
前記基板に働く遠心力よりも大きい摩擦力が前記基板の下面と前記支持部材との間に発生する押圧支持条件が満たされるように、前記押圧手段および前記回転手段が制御され、
前記摩擦力は、前記押圧手段により供給される気体の流量を増加させると増大し、
前記遠心力は、前記回転手段により回転される前記回転部材の回転数を増加させると増大することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
基板を回転させながら前記基板に処理液を供給して所定の処理を施す基板処理装置において、
鉛直軸回りに回転自在に設けられた回転部材と、
前記回転部材を回転させる回転手段と、
前記回転部材に上方に向けて設けられ、前記基板の下面に当接して該基板を前記回転部材から離間させて支持する少なくとも3個以上の支持部材を有する支持手段と、
前記基板の上面に気体を供給することによって前記基板を前記支持部材に押圧させて前記基板を前記回転部材に保持させる押圧手段と
を備え、
前記押圧手段は、前記基板の上面周縁部に配置され前記処理液で処理される上面処理領域よりも内側の非処理領域に前記気体を供給し、
前記支持部材は、前記非処理領域に対応する前記基板の下面に当接して前記基板を支持し、
前記基板が前記支持部材上で滑ることなく前記支持部材に対して押圧されて前記回転部材に保持されながら回転される押圧支持条件が満たされるように、前記押圧手段および前記回転手段が制御されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
前記押圧支持条件は、前記基板に働く遠心力よりも大きい摩擦力が前記基板の下面と前記支持部材との間に発生する条件であり、
前記摩擦力は、前記押圧手段により供給される気体の流量を増加させると増大し、
前記遠心力は、前記回転手段により回転される前記回転部材の回転数を増加させると増大する請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
基板を回転させながら前記基板に処理液を供給して所定の処理を施す基板処理方法において、
回転部材に上方に向けて設けられた少なくとも3個以上の支持部材を前記基板の周縁より内側で前記基板の下面に当接させることにより前記基板を前記回転部材から離間させて支持する工程と、
前記基板の上面に気体を供給することによって前記基板を前記支持部材に押圧することで、前記基板を前記回転部材に保持させる工程と、
前記回転部材を鉛直軸回りに回転させることにより前記基板を回転させる工程と、
前記基板に働く遠心力よりも大きい摩擦力が前記基板の下面と前記支持部材との間に発生する押圧支持条件が満たされるように前記回転部材の回転数および前記気体の供給流量を制御する工程と
を備え、
前記摩擦力は、前記基板の上面に供給される気体の流量を増加させると増大し、
前記遠心力は、前記回転部材の回転数を増加させると増大することを特徴とする基板処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−68000(P2010−68000A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284676(P2009−284676)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【分割の表示】特願2004−362178(P2004−362178)の分割
【原出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【分割の表示】特願2004−362178(P2004−362178)の分割
【原出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
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