説明

基板処理装置及び基板処理方法

【課題】基板を処理する処理液の膜厚を均一にすることが可能な基板処理装置及び基板処理方法を提供することにある。
【解決手段】半導体ウェーハWを保持して回転駆動される回転テーブル16と、先端部に処理液を半導体ウェーハに向けて噴射する上部ノズル体51及び斜方ノズル体71と、制御装置7と、を有し、上部ノズル体51は、噴射する処理液の温度及び濃度を調整可能な第1温度調整ユニット61及び第1濃度調整ユニット62を具備し、斜方ノズル体71は、噴射する処理液の温度及び濃度を調整可能な第3温度調整ユニット76及び第2濃度調整ユニット77を具備し、制御装置7は、上部ノズル体51及び斜方ノズル体71から噴射する処理液の温度及び濃度の少なくとも一方を調整することで半導体ウェーハW上の処理液の液膜の膜厚を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は基板を処理する基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体装置の製造工程においては、円盤状の半導体ウェーハ等の基板に回路パターンを形成するための成膜プロセスやフォトプロセスがある。これらのプロセスでは基板を回転テーブルに保持して回転させる、いわゆるスピン処理装置等の基板処理装置を用いて基板を処理するということが行なわれている。また、基板を回転させずに、ころ等で基板を搬送しながら基板処理を行う基板処理装置も知られている。
【0003】
上記スピン処理装置を用いて基板を処理する場合には、例えば、基板を薬液であるエッチング液などの処理液で処理した後、同じく処理液としての純水などのリンス液でリンス処理を行う。次いで、回転テーブルを高速回転させることで、上記基板に付着残留した洗浄液を除去する乾燥処理が行なわれる。
【0004】
上記スピン処理装置は、周知のように処理槽を有し、この処理槽内にはカップ体が設けられている。このカップ体内には駆動源によって回転駆動される上記回転テーブルが設けられている。この回転テーブルには上記基板の外周部を保持する複数の保持部材が周方向に沿って所定間隔で設けられ、これらの保持部材によって上記基板が回転テーブルに対して着脱可能に保持される。
【0005】
従って、回転テーブルに基板を保持し、この回転テーブルを回転させて基板に処理液を供給すれば、この基板を処理することができる。また、処理後に回転テーブルを高速回転させれば、基板を乾燥処理することができる。
【0006】
なお、処理液を供給して基板を処理する処理としては、ケミカル処理、物理処理、置換処理、乾燥処理等が知られている。例えば、基板のリンス処理ではミスト状の液滴を基板に供給し、液滴と基板が衝突する際のエネルギを用いて基板上の処理液をリンス液に置換するとともに、汚染物を基板から除去する物理処理が用いられる。このリンス処理により基板から汚染物を除去後、さらに回転テーブルを回転させて汚染物を含む処理液を基板外に排出させて基板を乾燥処理する方法が知られている。
【0007】
このようなリンス処理後の乾燥処理中に基板上表面に液滴の発生を防止するために、液膜形成用回転数で基板を回転させて基板の上面に洗浄液を供給し、液膜を基板の上面全体に形成する処理装置及び処理方法も知られている(例えば特許文献1参照)。また、基板に供給する液量を制御するものも知られている。
【0008】
さらに、基板の周囲の雰囲気が基板の周縁部に巻き込まれることを抑制するために、遮蔽板の周縁部にスポンジ部材を対向させるとともに、空間を窒素ガス雰囲気に維持する処理装置及び処理方法も知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−17461号公報
【特許文献2】特開2008−166574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した基板処理装置及び基板処理方法では以下の問題があった。即ち、基板を物理洗浄ツールを用いて処理する際に、基板上の液膜の厚さを制御することができない、という問題がある。
【0011】
特に、液膜形成用回転数で基板を回転させて液膜を形成した場合、基板の中心側(内側)と周辺部(外側)とでは、回転速度が異なる。このため、回転の中心部と周辺部とで基板に供給された処理液に対して作用する遠心力に差が生じる。つまり、基板の中心部よりも周辺部の方が処理液に対して作用する遠心力が大きくなる。
【0012】
基板上の遠心力が異なることから、基板上の液膜の厚みも異なることとなる。このため、基板の内外側で液膜の膜厚が不均一となり、基板の全面を液膜の膜厚を均一として処理することが困難であった。また、回転速度を調整することで、基板全面を膜厚一定で処理するためには、長い時間をかけて処理を行う必要がある。
【0013】
そこで本発明は、基板を処理する処理液の膜厚を均一にすることが可能な基板処理装置及び基板処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、処理液により基板を処理する基板処理装置であって、上記処理液を上記基板に供給する処理液供給手段と、この処理液供給手段によって上記基板に供給された処理液の膜厚を検出する膜厚検出手段と、この膜厚検出手段の検出に基いて上記基板上の処理液の膜厚を制御する制御手段と、を具備したことを特徴とする基板処理装置にある。
【0015】
上記処理液供給手段から供給される上記処理液の物性値を調整する調整ユニットをさらに具備し、上記制御手段は、上記膜厚検出手段が検出する処理液の厚さに基づいて上記調整ユニットにより上記処理液の物性値を制御することが好ましい。
【0016】
上記処理液供給手段は複数設けられ、上記調整ユニットは、上記複数の処理液供給手段にそれぞれ設けられ、上記制御手段は、上記複数の調整ユニットにより上記物性値をそれぞれ調整した上記処理液を上記複数の処理液供給手段から上記基板上に供給することが好ましい。
【0017】
上記調整ユニットは、上記処理液の液温及び濃度の少なくとも一方を調整可能に形成され、上記制御手段は、上記調整ユニットにより上記処理液の液温及び濃度の少なくとも一方を調整することで、上記処理液の膜厚を制御することが好ましい。
【0018】
この発明は、処理液供給手段から供給された処理液により基板を処理する基板処理方法であって、上記処理液供給手段から上記基板に上記処理液を供給する工程と、上記基板に供給された上記処理液の膜厚を検出する工程と、上記検出された上記処理液の膜厚に基いて上記基板上の処理液の厚さを制御する工程と、を具備することを特徴とする基板処理方法にある。
【0019】
上記処理液供給手段から供給される上記処理液の物性値を調整することで、上記処理液の厚さを制御することが好ましい。
【0020】
上記処理液供給手段は複数設けられ、上記複数の処理液供給手段から供給される上記処理液の物性値をそれぞれ調整することで、上記処理液の厚さを制御することが好ましい。
【0021】
上記物性値は上記処理液の液温及び濃度の少なくとも一方であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、処理液の温度及び濃度の少なくとも一方を調整することで、処理液の粘度を調整し、半導体ウェーハ上の液膜の膜厚を均一にすることができるから、処理液による半導体ウェーハの処理を均一化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施の形態に係る基板処理槽を用いた処理装置の構成を模式的に示す説明図。
【図2】同基板処理槽の構成を示す断面図。
【図3】同基板処理槽に用いる処理液の温度と粘度の関係の一例を示す説明図。
【図4】同基板処理槽に用いる処理液の粘度と液膜厚さの関係の一例を示す説明図。
【図5】同基板処理槽に用いる処理液の温度による液膜厚さとパーティクル除去率の関係の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は基板処理装置100を示す。基板処理装置100は、枚葉式の半導体ウェーハ(基板)Wの処理装置である。基板処理装置100は、カセットステーション101を有する。このカセットステーション101はカセット102に未処理の半導体ウェーハWが収容されたローダ部103と、後述するようにリンス処理された半導体ウェーハWをカセット102に回収するアンローダ部104とを備えている。
【0025】
カセットステーション101には受け渡しユニット105が隣接して設けられている。この受け渡しユニット105には2つの基板処理槽1が設けられている。
【0026】
受け渡しユニット105にはX、Y及びθ方向に駆動されるロボット106を備えている。このロボット106は処理前の半導体ウェーハWと処理後の半導体ウェーハWを別々に扱い一対のアーム107を有し、一方のアーム107によってローダ部103のカセット102に収容された未処理の半導体ウェーハWを取り出して基板処理槽1に供給する。基板処理槽1に供給された半導体ウェーハWはここで洗浄処理及び乾燥処理がなされる。
【0027】
基板処理槽1で処理された半導体ウェーハWは上記ロボット106の他方のアーム107によって取り出され、カセットステーション101のアンローダ部104のカセット102に収納される。
【0028】
ローダ部103に収納された半導体ウェーハW全てが基板処理槽1により処理され、アンローダ部104に収容されたら、アンローダ部104を次工程の処理を行う装置へと搬送させる。
【0029】
次に、図2を用いて、基板処理槽1について説明する。基板処理槽1内には、カップ体2が配置されている。このカップ体2は、基板処理槽1の底板上に設けられた下カップ3と、この下カップ3に対して図示しない上下駆動機構により上下動可能に設けられた上カップ4とからなる。
【0030】
下カップ3の底壁には、周方向に所定間隔で複数の排出管5が接続されている。これら排出管5は排気ポンプ6に連通している。また、基板処理槽1には、制御装置7が設けられている。排気ポンプ6はこの制御装置(制御手段)7によって発停及び回転数が制御可能に形成されている。
【0031】
カップ体2の下面側にはベース板8が配置されている。このベース板8には、上記下カップ3と対応する位置に取付孔9が形成されている。この取付孔9には駆動手段を構成する制御モータ11の固定子12の上端部が嵌入固定されている。制御モータ11は、制御装置7によって発停及び回転数が制御可能に構成されている。
【0032】
固定子12は筒状に形成されている。固定子12の内部には、同じく筒状の回転子13が回転自在に嵌挿されている。この回転子13の上端面には筒状の連結体14が下端面を接触させて一体的に固定されている。この連結体14の下端には固定子12の内径寸法よりも大径な鍔部15が設けられている。この鍔部15は固定子12の上端面に摺動自在に接触しており、それによって回転子13の回転を阻止することなくこの回転子13が固定子12から抜け落ちるのを防止している。
【0033】
下カップ3には回転子13と対応する部分に通孔3aが形成され、連結体14は通孔3aからカップ体2内に突出している。この連結体14の上端には回転テーブル16が取付けられている。この回転テーブル16の周辺部には周方向に所定間隔、この実施の形態では60度間隔で6本(2本のみ図示)の円柱状の保持部材17が図示しない駆動機構によって回転可能に設けられている。
【0034】
上記保持部材17の上端面には、この保持部材17の回転中心から偏心した位置にテーパ面を有する支持ピン18が設けられている。回転テーブル16には、基板としての半導体ウェーハWが周縁部の下面を上記支持ピン18のテーパ面に当接するよう供給される。その状態で上記保持部材17を回転させれば、支持ピン18が偏心回転するから、回転テーブル16に供給された半導体ウェーハWは、上記支持ピン18によって保持される。
【0035】
上記回転テーブル16は乱流防止カバー21によって覆われている。この乱流防止カバー21は上記回転テーブル16の外周面を覆う外周壁22と、上面を覆う上面壁23とを有し、外周壁22は上側が小径部22a、下側が大径部22bに設けられている。この乱流防止カバー21は回転テーブル16を回転させたときに、回転テーブル16の上面で乱流が発生するのを防止するように設けられている。上カップ4の上面は開口しており、その内周面にはリング状部材25が設けられている。
【0036】
回転テーブル16に未処理の半導体ウェーハWを供給するとき、及び、乾燥処理された半導体ウェーハWを取り出すときには、上カップ4が後述するごとく下降させられる。
【0037】
基板処理槽1の上部壁には開口部31が設けられている。この開口部31にはULPAやHEPAなどのファン・フィルタユニット32が設けられている。このファン・フィルタユニット32はクリーンルーム内の空気をさらに清浄化して基板処理槽1内に導入するもので、その清浄空気の導入量は上記ファン・フィルタユニット32の駆動部33を上記制御装置7によって制御して行う。つまり、上記駆動部33により、ファン・フィルタユニット32のファン(不図示)の回転数を制御することで、基板処理槽1内への清浄空気の供給量を制御可能に設けられている。
【0038】
基板処理槽1の一側には出し入れ口34が開口形成されている。この出し入れ口34は、基板処理槽1の一側に上下方向にスライド可能に設けられたシャッタ35によって開閉される。このシャッタ35は圧縮空気で作動するシリンダ36によって駆動される。つまり、上記シリンダ36には圧縮空気の流れを制御する制御弁37が設けられ、この制御弁37を制御装置7によって切換え制御することで、シャッタ35を上下動可能に設けられている。
【0039】
回転テーブル16に保持された半導体ウェーハWの上方には、洗浄処理時に半導体ウェーハWの上面に処理液を供給するとともに、半導体ウェーハW上に処理液の液膜を形成する第1の処理液供給手段である上部ノズル体51、及び、第2の処理液供給手段である斜方ノズル体71が配置されている。
【0040】
上部ノズル体51は水平に配置されたアーム体52の先端に設けられた第1取付部材53に取付けられている。
【0041】
アーム体52の基端は軸線を垂直にして配置された回転軸55の上端部に連結されている。この回転軸55の下端は回転駆動源56の出力軸57に連結されている。回転駆動源56は制御装置7によって上記回転軸55の回転角度及び回転速度を制御可能に設けられている。
【0042】
揺動するアーム体52の先端に設けられた上部ノズル体51は回転テーブル16に保持され半導体ウェーハWの径方向一端側の外方から中心を通過して径方向他端の外方にわたる間で揺動駆動される。
【0043】
上部ノズル体51の揺動軌跡の移動速度である揺動速度は、半導体ウェーハWの周辺部から中心部に向かうときは次第に増加し、中心部から周辺部に向かうときは次第に減速するよう制御される。
【0044】
上部ノズル体51は、処理液を供給する供給源が接続された第1の供給管58と、ガスを供給する供給源が接続された第2の供給管59と、を備えている。上部ノズル体51は、その先端から処理液をミストにて半導体ウェーハW上に噴射(供給)可能に設けられている。即ち、上部ノズル体51は、そのミスト状の処理液を半導体ウェーハWに供給し、処理液と半導体ウェーハWが衝突する際のエネルギを用いて半導体ウェーハW上に物理処理が可能に設けられている。
【0045】
第1の供給管58のその中途部には、第1電磁弁60、及び、処理液の物性値を調整可能な調整ユニットが設けられている。第1の供給管58の中途部には、調整ユニットとして、例えば、処理液の温度を調整可能な第1温度調整ユニット61と、処理液の濃度を調整可能な第1濃度調整ユニット62が設けられている。このような調整ユニットは、処理液の物性値を調整することで、処理液の液膜の膜厚を調整可能に設けられている。
【0046】
第2の供給管59の中途部には、第2電磁弁63及び第2温度調整ユニット64が設けられている。なお、上部ノズル体51に接続された第1,第2の供給管58、59は、例えば、アーム体52、回転駆動源56及び出力軸57内部に設けられ、上部ノズル体51に接続されている。
【0047】
第1の供給管58は、純水(以下「水」)、過酸化水素水やアンモニア加水やAPM等(SC−1)、及び、レジスト剥離を行うエッチング液等の処理液を上部ノズル体51に供給する。第1電磁弁60は、制御装置7に接続されており、この制御装置7により第1の供給管58の流路の開閉が可能に設けられている。
【0048】
第1温度調整ユニット61は、制御装置7に接続されている。第1温度調整ユニット61は、供給源から供給された処理液の温度を調整可能に形成された、流体(液体)加熱用のヒータが用いられる。
【0049】
第1濃度調整ユニット62は、制御装置7に接続されている。第1濃度調整ユニット62は、処理液の濃度を調整可能に設けられている。具体的には、第1濃度調整ユニット62には、液体を供給する複数の供給源が接続されている。第1濃度調整ユニット62は、これら供給源のいずれか一つから水が供給されるとともに、他の供給源から処理を行う薬液が供給される。第1濃度調整ユニット62は、これら水と薬液との比率を変えて混合することで、濃度を調整して処理液を上部ノズル体51に供給する。
【0050】
第2の供給管59は、供給源から供給された窒素ガスを上部ノズル体51に供給する。第2電磁弁63は、制御装置7に接続されており、この制御装置7により第2の供給管59の流路の開閉が可能に設けられている。
【0051】
第2温度調整ユニット64は、制御装置7に接続されている。第2温度調整ユニット64は、供給源から供給された窒素ガスの温度を調整可能に形成された、流体(ガス)加熱用のヒータが用いられる。なお、供給源から供給されるガスは、窒素ガスでなくともよく、例えば、アルゴンガスであってもよい。
【0052】
斜方ノズル体71は、半導体ウェーハWの主面に向って半導体ウェーハWの斜め上方に設けられた第2取付部材72に取付けられている。なお、第2取付部材72は、斜方ノズル体71が半導体ウェーハWの主面に向って処理液を噴射可能に、斜方ノズル体71を取付可能に形成されている。
【0053】
斜方ノズル体71は、処理液を供給する供給源が接続された第3の供給管74を備えている。第3の供給管74は、その中途部に、第3電磁弁75、及び、処理液の物性値を調整可能な調整ユニットが設けられている。第3の供給管74の中途部には、調整ユニットとして、第3温度調整ユニット76及び第3濃度調整ユニット77が設けられている。このような調整ユニットは、処理液の物性値を調整することで、処理液の液膜の膜厚を調整可能に形成されている。なお、第3の供給管74は、例えば、第2取付部材72内部に設けられ、斜方ノズル体71に接続されている。
【0054】
第3の供給管74は、水、SC−1及びレジスト剥離剤等の処理液を斜方ノズル体71に供給可能に形成されている。第3電磁弁75は、制御装置7に接続されており、この制御装置7により、第3の供給管74の流路の開閉が可能に形成されている。
【0055】
第3温度調整ユニット76は、制御装置7に接続されている。第3温度調整ユニット76は、供給源から供給された処理液の温度を調整可能に設けられ、流体(液体)加熱用のヒータが用いられる。
【0056】
第3濃度調整ユニット77は、制御装置7に接続されている。第3濃度調整ユニット77は、処理液の濃度を調整可能に設けられている。具体的には、第3濃度調整ユニット77には、液体を供給する複数の供給源が接続されている。第3濃度調整ユニット77は、これら供給源のひとつから水が供給されるとともに、他の供給源から処理を行う薬液が供給される。第3濃度調整ユニット77は、これら水と薬液との比率を変えて混合することで、濃度を調整して処理液を斜方ノズル体71に供給する。
【0057】
また、基板処理槽1内には、回転テーブル16の上方に配置され、上部ノズル体51及び斜方ノズル体71により半導体ウェーハW全体に供給された処理液の液膜の膜厚を測定(モニタ)可能な膜厚検出手段であるカメラ80が設けられている。このカメラ80は、制御装置7に接続されるとともに、モニタした液膜の膜厚情報を制御装置7に送信可能に設けられている。カメラ80は、半導体ウェーハW上の膜厚の変化に伴う光の干渉現象を認識し、この情報に基いて制御装置7により半導体ウェーハW上の膜厚を定量化する方法等により、膜厚が検出される。
【0058】
なお、カメラ80は、半導体ウェーハW全体の液膜の膜厚をモニタ可能としたが、例えば、定点カメラを用いても良い。但し、カメラ80に定点カメラを用いる場合には、カメラ80を移動可能とし、異なる定点をモニタ可能な構成とするか、又は、複数の定点カメラを設ける構成とする。また、カメラでなく他のセンサ類であってもよい。
【0059】
制御装置7は、上述したように、排気ポンプ6、制御モータ11、駆動部33、制御弁37、第1〜第3電磁弁60、63、75、第1〜第3温度調整ユニット61、64、76、第1、第3濃度調整ユニット62、77、及び、カメラ80に、それぞれ信号線Sを介して接続されている。制御装置7は、これら信号線Sを介して接続された各構成品をそれぞれ独立して制御可能に構成されている。
【0060】
制御装置7は、主要な機能として、半導体ウェーハ(基板)W上の液膜の膜厚を検出し、処理液の物性値を基板の各位置で制御し、半導体ウェーハW上に処理液を噴射して半導体ウェーハW上の液膜の膜厚を制御する制御機能を有している。なお、制御装置7は、他の機能も適宜有している。
【0061】
詳しく説明すると、この制御機能は、半導体ウェーハW上の液膜の膜厚を、カメラ80により測定した膜厚の情報を基に解析して検出する。この検出した膜厚を所定の膜厚とするために、上部ノズル体51及び斜方ノズル体71から噴射する処理液の処理液の温度及び濃度の少なくとも一方を第1、第3温度調整ユニット61、76及び第1,3濃度調整ユニット62、77を用いて調整する。調整した処理液を上部ノズル体51及び斜方ノズル体71からそれぞれ噴射(供給)させて、処理液の膜厚を制御する機能である。
【0062】
このように構成された基板処理装置100の基板処理槽1によって半導体ウェーハWの上面のリンス処理の動作説明を行う。
まず、ロボット106の一方のアーム107により、ローダ部103のカセット102から基板処理槽1に基板が搬入され、回転テーブル16に半導体ウェーハWが供給さる。回転テーブル16に供給された半導体ウェーハWは、保持部材17の支持ピン18により保持される。
【0063】
制御装置7は、この状態で回転テーブル16を回転させると、上部ノズル体51及び斜方ノズル体71から処理液を供給させる。ここでのリンス処理は、例えば、半導体ウェーハW上面のエッチング処理等の前処理の後に、前処理時に使用した処理液や発生するパーティクルをリンス処理を行う処理液(以下「リンス液」)で置換・除去する。また、リンス処理後には、半導体ウェーハWを回転テーブル16により回転させるとともに、リンス液の供給を停止させて、半導体ウェーハWの上面を乾燥させる乾燥処理を行う。
【0064】
リンス液には、例えば水が用いられる。このため、制御装置7は、第1、第3濃度調整ユニット62、77の水を給水する供給源から水を吐出させるとともに、他の処理液の供給を停止させる。即ち、リンス液(処理液)として水を供給源から上部ノズル体51及び斜方ノズル体71に供給するとともに、これらノズル体51、71から、ミスト状のリンス液を噴射させ、半導体ウェーハW上にリンス液を供給する。
【0065】
このように、リンス液を半導体ウェーハW上に噴射することで、半導体ウェーハW上にリンス液の液膜が形成される。半導体ウェーハW上に形成されたリンス液の液膜の膜厚をカメラ80により検出する。制御装置7は、この膜厚の検出情報を受信すると、膜厚の解析を行うと共に、解析した半導体ウェーハWの膜厚と、予め設定されたリンス処理時の最適な膜厚(以下「所定膜厚」として説明。)と、を比較する。制御装置7は、膜厚が所定膜厚でない場合には、第1温度調整ユニット61及び第3温度調整ユニット76を調整し、処理液の温度を制御する。
【0066】
制御装置7は、半導体ウェーハW上の液膜の膜厚が回転テーブル16の回転等により部分的に異なる場合には、部分的に異なる膜厚を均一とするために、上部ノズル体51及び斜方ノズル体71から噴射する処理液の温度をそれぞれ制御する。これにより、制御装置7は、半導体ウェーハW上のリンス液の温度を異ならせる。また、制御装置7は、所定膜厚とするために、必要に応じて上部ノズル体51を移動させることで、噴射位置を変更する制御を行なう。
【0067】
ここで、処理液の温度と処理液の膜厚の関係を、図3、4を用いて説明する。図3に示すグラフは、縦軸は粘性係数[cP]を、横軸は温度[K]をそれぞれ示しており、水の温度と粘性係数(粘度)の関係を示すグラフである。図4に示すグラフは、縦軸は液膜厚さ(膜厚)を、横軸は粘性係数を示しており、ある回転数で回転する半導体ウェーハW上での流体の粘度と液膜厚さの関係の一例を示している。
【0068】
なお、図4に示すグラフの膜厚及び粘性係数は、半導体ウェーハWの回転数や使用する流体等の各条件により適宜異なるため、その単位は[a.u.]とする。なお、「a.u.」とは、「arbitrary unit」であり、任意単位を示す。
【0069】
図3に示すように、水の粘性係数は、温度が増加すると粘度は低下し、温度が低下すると粘度は増加する。また、他の流体の粘性係数も、温度の増減に伴って粘度が増減する。
【0070】
温度の増減により粘度も増減すると、膜厚も変化する。図4に示すように、回転テーブル16の回転数を任意の回転数一定とした場合には、水の粘度が増加すると、半導体ウェーハW上の液膜の膜厚も増加する。
【0071】
処理液の温度が増減することで、粘度が増減するため、制御装置7は、膜厚が所定膜厚であって均一となるように使用する処理液の粘度の増減を調整する。なお、半導体ウェーハWの回転数及び処理液の物性値等の情報は、予め制御装置7に接続された記憶部(不図示)等に記憶されており、制御装置7は、所定膜厚とするために記憶部に記憶された物性値等の情報に基いて、膜厚を調整する。
【0072】
このように、制御装置7は、半導体ウェーハWのリンス液の膜厚を、第1、第3温度調整ユニット61、76を調整することで、リンス液の温度を変化させて膜厚を調整し、半導体ウェーハWのパーティクル等の汚染物質の除去に最適な膜厚でリンス処理を行う。
【0073】
制御装置7は、半導体ウェーハWのリンス処理終了後、処理液の供給を停止させる。合わせて制御装置7は、半導体ウェーハWを回転させてリンス液を飛散させとともに、乾燥処理の雰囲気下に半導体ウェーハWを維持させることで、半導体ウェーハWの乾燥処理を行う。乾燥処理終了後、半導体ウェーハWを、他方のアーム107により、回転テーブル16からアンローダ部104のカセット102に搬入することで、半導体ウェーハWのリンス処理が終了する。
【0074】
このように温度調整を行ったリンス液により半導体ウェーハWをリンス処理することで、半導体ウェーハW上の膜厚を所定の膜厚とすることができるため、膜厚を均一とし、汚染除去の制御性を向上させることが可能となる。
【0075】
図5を用いて詳しく説明する。図5に示すグラフは、リンス液の温度による半導体ウェーハW上の膜厚とパーティクル除去率の関係を示す図である。図5に示すように、例えば、温度によって変化する膜厚が変化することで、半導体ウェーハW上のパーティクルの除去率は変化する。なお、このパーティクルの除去率は、使用するリンス液、回転テーブル16の回転数及び除去するパーティクルによって変更するため、任意単位として説明する。
【0076】
図5に示すように、温度を調整して膜厚を調整することで、パーティクルの除去率が異なるため、予めパーティクルの除去率が最適となるリンス条件を記憶部等に記憶させておく。この記憶されたリンス条件に基いて、制御装置7は、カメラ80により検出した膜厚を、最適なリンス条件となる所定の膜厚へと調整することで、リンス処理において、最適なリンス処理を行うこととなる。
【0077】
次に、リンス処理又は他処理において、半導体ウェーハWの処理液として、水だけでなく、薬液を用いた処理時の膜厚調整について説明する。
上部ノズル体51及び斜方ノズル体71からミスト状に噴射させる処理液に水以外の薬液が混合している場合には、制御装置7は所定の膜厚となるように、第1、第3濃度調整ユニット61、76の薬液の混合比率を調整することで、処理液の濃度を変更することが可能となる。
【0078】
一般的に水と薬液との物性値の一である粘度は異なることから、水と混合する薬液の量を調整して処理液の濃度を調整することで、処理液の粘度が変化する。このように処理液の濃度を調整することで、図4に示すように、半導体ウェーハWの液膜の厚さを調整することが可能となる。
【0079】
即ち、制御装置7により第1、第3濃度調整ユニット61、76による処理液の濃度を調整することで、所定の膜厚とすることが可能となる。これにより、上述の水を用いたリンス処理と同様に、最適な膜厚とするとともに、半導体ウェーハW上の液膜を均一とすることが可能となる。
【0080】
なお、用いる処理液の種類や、処理条件によっては、処理液の濃度だけでなく、第1、第3温度調整ユニット61、76により、処理液の温度及び濃度の両方を調整することで、処理液の粘度を制御する。
【0081】
このように構成された基板処理槽1を用いた基板処理装置100によれば、制御装置7は、カメラ80により検出した処理液の膜厚に基いて、第1、第3温度調整ユニット61、76、及び/又は、第1、第3濃度調整ユニット62、77を制御することで処理液の温度及び/又は濃度を調整する。処理液の温度及び/又は濃度を調整することで、半導体ウェーハWの中心側であっても外周側であっても所定の膜厚にすることが可能となる。即ち、制御装置7は、複数のノズル体51,71から噴射する処理液の温度及び濃度の少なくとも一方をそれぞれ調整することで、半導体ウェーハW上の処理液の粘度を異ならせることが可能となり、半導体ウェーハW上の膜厚を均一とすることが可能となる。
【0082】
なお、従来技術である回転テーブル16の回転速度により膜厚を調整する場合には、半導体ウェーハWの各位置で、回転速度が異なることから、その膜厚が異なる。このため、上部ノズル体等により処理液を噴射する位置を変更させる必要がある。また、回転テーブル16の回転速度により膜厚を調整する場合には、一般的な流速分布から、最表面側では流速が大きく、半導体ウェーハW表面では流速が略0と見なされる。即ち、半導体ウェーハW上の処理液の移動は、液膜表面が主となる。このため、回転テーブル16の回転速度により調整される膜厚は、液膜の表面付近の処理液によって調整されることとなる。
【0083】
しかし、粘度により液膜を調整することで、流体速度による調整でなくなることから、回転テーブル16の回転数で調整が難しい半導体ウェーハW側での調整も可能となる。
【0084】
上述したように本実施の形態に係る基板処理装置100によれば、処理液の温度及び濃度の少なくとも一方を調整することで、処理液の粘度を調整し、半導体ウェーハW上の液膜の膜厚を均一にすることができるから、処理液による半導体ウェーハ(基板)Wの処理を均一化することが可能となる。
【0085】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。上述した例では、基板処理槽1を用いてリンス処理時における処理液の液膜の制御について具体的に説明したが、これに限られない。例えば、リンス処理時でなくエッチング処理時において、処理液の液膜の制御にも用いることが可能である。
【0086】
また、上述した例では、処理液の温度及び粘度の少なくとも一方を調整することで、膜厚を調整するとしたが、これに回転テーブル16の回転数(回転速度)も考慮させてもよい。即ち、回転速度による膜厚の調整を加えることで、温度、濃度及び回転速度の調整により液膜を制御可能となる。特に、回転速度による膜厚の調整は、流体速度による調整であって、粘度による膜厚の調整とは、その調整の特徴が異なるため、より広い調整の範囲を得ることが可能となる。
【0087】
さらに、上述した例では、基板処理装置100は、ローダ部103、基板処理槽1及びアンローダ部104間で半導体ウェーハWを移動させるとともに、回転テーブル16を有し、半導体ウェーハWを回転させる基板処理槽1で半導体ウェーハWの処理を行う構成としたが、例えば、ころ等により半導体ウェーハWを搬送し、ある位置で半導体ウェーハWに処理を行う処理装置であってもよい。
【0088】
また、上述した例では、複数のノズル体として、上部ノズル体51及び斜方ノズル体71を有する構成としたが、他にもノズル体を有する構成としてもよい。また、リンス処理に使用する純水のみを噴射可能なノズル体を有する構成であってもよい。このノズル体の場合には、濃度調整を行う調整ユニットを設ける必要はなく、温度調整用の調整ユニットのみを設ける構成でよい。さらに、複数のノズル体でなく、単数、例えば、上部ノズル体51のみを有する構成であってもよい。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0089】
1…基板処理槽、2…カップ体、3…下カップ、3a…通孔、4…上カップ、5…排出管、6…排気ポンプ、7…制御装置(制御手段)、8…ベース板、9…取付け孔、11…制御モータ、12…固定子、13…回転子、14…連結体、15…鍔部、16…回転テーブル、17…保持部材、18…支持ピン、21…乱流防止カバー、22…外周壁、22a…小径部、22b…大径部、23…上面壁、25…リング状部材、31…開口部、32…ファン・フィルタユニット、33…駆動部、34…出し入れ口、35…シャッタ、36…シリンダ、37…制御弁、51…上部ノズル体(処理液供給手段)、52…アーム体、53…取付部材、55…回転軸、56…回転駆動源、57…出力軸、58…第1の供給管、59…第2の供給管、60…第1電磁弁、61…第1温度調整ユニット、62…第1濃度調整ユニット、63…第2電磁弁、64…第2温度調整ユニット、71…斜方ノズル体(処理液供給手段)、72…第3取付部材、74…第3の供給管、75…第3電磁弁、76…第3温度調整ユニット、77…第3濃度調整ユニット、80…カメラ(膜厚検出手段)、100…処理装置、101…カセットステーション、102…カセット、103…ローダ部、104…アンローダ部、105…ユニット、106…ロボット、107…アーム、W…基板(半導体ウェーハ)、S…信号線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液により基板を処理する基板処理装置であって、
上記処理液を上記基板に供給する処理液供給手段と、
この処理液供給手段によって上記基板に供給された処理液の膜厚を検出する膜厚検出手段と、
この膜厚検出手段の検出に基いて上記基板上の処理液の膜厚を制御する制御手段と、
を具備したことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
上記処理液供給手段から供給される上記処理液の物性値を調整する調整ユニットをさらに具備し、
上記制御手段は、上記膜厚検出手段が検出する処理液の厚さに基づいて上記調整ユニットにより上記処理液の物性値を制御することを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
上記処理液供給手段は複数設けられ、
上記調整ユニットは、上記複数の処理液供給手段にそれぞれ設けられ、
上記制御手段は、上記複数の調整ユニットにより上記物性値をそれぞれ調整した上記処理液を上記複数の処理液供給手段から上記基板上に供給することを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
上記調整ユニットは、上記処理液の液温及び濃度の少なくとも一方を調整可能に形成され、
上記制御手段は、上記調整ユニットにより上記処理液の液温及び濃度の少なくとも一方を調整することで、上記処理液の膜厚を制御することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
処理液供給手段から供給された処理液により基板を処理する基板処理方法であって、
上記処理液供給手段から上記基板に上記処理液を供給する工程と、
上記基板に供給された上記処理液の膜厚を検出する工程と、
上記検出された上記処理液の膜厚に基いて上記基板上の処理液の厚さを制御する工程と、
を具備することを特徴とする基板処理方法。
【請求項6】
上記処理液供給手段から供給される上記処理液の物性値を調整することで、上記処理液の厚さを制御することを特徴とする請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
上記処理液供給手段は複数設けられ、
上記複数の処理液供給手段から供給される上記処理液の物性値をそれぞれ調整することで、上記処理液の厚さを制御することを特徴とする請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項8】
上記物性値は上記処理液の液温及び濃度の少なくとも一方であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−239013(P2010−239013A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86941(P2009−86941)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】