説明

基板処理装置

【課題】一括して処理することの出来る基板の枚数を減らすことなく、隣接する基板間へのガスの供給を安価に促進させると共に、処理ガスの希釈を抑制する基板処理装置を提供する。
【解決手段】積層された基板10を収容して処理する処理室2と、処理室2の内壁に沿うように基板の積層方向に延在されて処理室内に処理ガスを供給する1本以上の処理ガス供給ノズル22a(22b)と、処理室2の内壁に沿うように基板の積層方向に延在されるとともに基板の周方向に沿って前記処理ガス供給ノズルを両方から挟むように設けられ処理室内2に不活性ガスを供給する一対の不活性ガス供給ノズル22c(22d)と、前記不活性ガス供給ノズルに設けられた不活性ガス噴出口24c(24d)と、処理室2内を排気する排気ライン7aとを有し、前記不活性ガス噴出口は、処理室2の内壁と基板10の外周部との間の空間に不活性ガスを噴射するように開口されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する工程を有する基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばDRAM等の半導体装置の製造工程の一工程として、基板上に薄膜を形成する基板処理工程が実施されてきた。かかる基板処理工程は、水平姿勢で多段に積層された基板を収納して処理する処理室と、処理室内に処理ガスを供給する処理ガス供給ノズルと、処理室内を排気する排気ラインと、を有する基板処理装置により実施されてきた。そして、複数の基板を支持した基板保持具を処理室内に搬入し、排気ラインにより処理室内を排気しつつ処理ガス供給ノズルから処理室内にガスを供給することにより、各基板の間にガスを通過させて基板上に薄膜を形成していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の基板処理工程においては、各基板の中心付近までガスが流れにくく、各基板の外周付近と中心付近とではガスの供給量に差異が生じてしまい、基板処理の面内均一性が低下してしまう場合があった。例えば、基板の外周付近に形成される薄膜が、基板の中心付近に形成される薄膜に比べて厚くなってしまう場合があった。
【0004】
各基板の中心付近へのガスの供給を促すため、基板保持具により支持される各基板の周縁と処理室の内壁との間にリング状の整流板をそれぞれ設ける方法も考えられる。しかしながら、かかる方法では、基板保持具へ基板を移載する基板移載機構と整流板とが干渉(接触)してしまう場合があった。かかる干渉を避けるために基板の積層ピッチを広く確保すると、一括して処理することの出来る基板の枚数が少なくなってしまう場合があった。また、リング状の整流板を供えた基板保持具は、その構造の複雑さから破損もしやすく、高価であった。
【0005】
また、各基板の中心付近へのガスの供給を促すため、処理室内に、処理ガス供給ノズルを両方から挟むように一対の不活性ガスノズルを設ける方法も考えられる。すなわち、処理ガス供給ノズルから供給する処理ガスを、一対の不活性ガスノズルから供給する不活性ガスで挟み込むことにより、各基板の中心付近への処理ガスの供給を促す方法も考えられる。しかしながら、かかる方法では、基板に供給される処理ガスが不活性ガスにより希釈されてしまい、成膜レートが低下してしまう場合があった。
【0006】
本発明は、一括して処理することの出来る基板の枚数を減らすことなく、各基板の中心付近へのガスの供給を促進させると共に、処理ガスの希釈を抑制することが可能な基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、水平姿勢で多段に積層された基板を収容して処理する処理室と、前記処理室の内壁に沿うように基板の積層方向に延在されて前記処理室内に処理ガスを供給する1本以上の処理ガス供給ノズルと、前記処理室の内壁に沿うように基板の積層方向に延在されるとともに基板の周方向に沿って前記処理ガス供給ノズルを両方から挟むように設けられ前記処理室内に不活性ガスを供給する一対の不活性ガス供給ノズルと、前記不活性ガス供給ノズルに設けられた不活性ガス噴出口と、前記処理室内を排気する排気ラインと、を有し、前記不活性ガス噴出口は、前記処理室の内壁と基板の外周部との間の空間に不活性ガスを噴射するように開口されている基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる基板処理装置によれば、一括して処理することの出来る基板の枚数を減らすことなく、各基板の中心付近へのガスの供給を促進させると共に、処理ガスの希釈をすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
上述したように、上述の基板処理工程においては、各基板の中心付近までガスが流れにくく、各基板の外周付近と中心付近とではガスの供給量に差異が生じてしまい、基板処理の面内均一性が低下してしまう場合があった。例えば、アミン系のHf原料ガスとOガスとを基板上に供給して形成されるHf酸化膜(HfO膜)や、アミン系のZr原料ガスとOガスとを基板上に供給して形成されるZr酸化膜(ZrO膜)等においては、基板の外周付近に形成される膜が、基板の中心付近に形成される膜に比べて薄くなってしまう場合があった。
【0010】
隣接する基板間へのガスの供給を促すため、基板保持具により支持される各基板の周縁と処理室の内壁との間にリング状の整流板をそれぞれ設ける方法も考えられる。図6は、かかる整流板が設けられた基板保持具の概略構成図である。各基板の周縁を囲うようにリング状の整流板を設けることにより、整流板に処理ガスの一部の膜を付着させ、基板の外周付近に形成される膜を薄くすることが可能となる。なお、図7は、整流板を有さない基板保持具の概略構成図である。
【0011】
しかしながら、かかる方法では、基板保持具へ基板を移載する基板移載機構と整流板とが干渉(接触)してしまう場合があった。かかる干渉を避けるために基板の積層ピッチを広く確保すると、一括して処理することの出来る基板の枚数が少なくなり、基板処理の生産性が低下してしまう場合があった。また、リング状の整流板を供えた基板保持具は、その構造の複雑さから破損もしやすく、高価であった。
【0012】
また、各基板の中心付近へのガスの供給を促すため、処理ガス供給ノズルを両方から挟むような一対の不活性ガスノズルを処理室内に設ける方法も考えられる。図5は、処理ガス供給ノズル22a’23a’を両方から挟むような一対の不活性ガスノズル22c’23d’を処理室4’内に設けた処理炉の水平断面図である。処理ガス供給ノズル22a’23a’には噴出口23a’,23b’が、不活性ガスノズル22c’23d’には噴出口23c’,23d’が、それぞれ基板としてのウエハ10’の中心に向けてガスを噴出するようにそれぞれ設けられている。係る構成によれば、としての噴出口23a’,23b’から供給された処理ガスのガス流(図中実線で示す矢印)が、としての噴出口23c’,23d’から供給された不活性ガス流(図中破線で示す矢印)により両側から挟みこまれてその流路が制限され、各ウエハ10’の中心付近へのガスの供給が促される。
【0013】
しかしながら、かかる方法では、ウエハ10’に供給される処理ガスが不活性ガスにより希釈されてしまい、成膜レートが低下してしまう場合があった。
【0014】
そこで発明者等は、一括して処理することの出来る基板の枚数を減らすことなく、各基板の中心付近へのガスの供給を促進させると共に、処理ガスの希釈を抑制して成膜レートの低下を回避する方法について鋭意研究を行った。その結果、処理室内に処理ガスを供給する際に処理ガスの両側から不活性ガスを同時に流すと共に、不活性ガスを処理室の内壁と基板の外周部との間の空間に噴射することにより、上述の課題を解決できるとの知見を得た。本発明は、発明者等が得たかかる知見を基になされた発明である。
【0015】
<本発明の第1の実施形態>
以下に、本発明の第1の実施形態を図面に即して説明する。
【0016】
(1)基板処理装置の構成
まず、半導体装置の製造工程の一工程としての基板処理工程を実施する基板処理装置101の構成例について説明する。図8は、本実施形態にかかる基板処理装置101の斜透視図である。
【0017】
図8に示すように、本実施形態にかかる基板処理装置101は筐体111を備えている。シリコン等からなるウエハ(基板)10を筐体111内外へ搬送するには、複数のウエハ10を収納するウエハキャリア(基板収納容器)としてのカセット110が使用される。筐体111内側の前方には、カセットステージ(基板収納容器受渡し台)114が設けられている。カセット110は、図示しない工程内搬送装置によってカセットステージ114上に載置され、また、カセットステージ114上から筐体111外へ搬出されるように構成されている。
【0018】
カセット110は、工程内搬送装置によって、カセット110内のウエハ10が垂直姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように、カセットステージ114上に載置される。カセットステージ114は、カセット110を筐体111の後方に向けて縦方向に90°回転させ、カセット110内のウエハ10を水平姿勢とさせ、カセット110のウエハ出し入れ口を筐体111内の後方を向かせることが可能なように構成されている。
【0019】
筐体111内の前後方向の略中央部には、カセット棚(基板収納容器載置棚)105が設置されている。カセット棚105は、複数段、複数列にて複数個のカセット110を保管するように構成されている。カセット棚105には、後述するウエハ移載機構125の搬送対象となるカセット110が収納される移載棚123が設けられている。また、カセットステージ114の上方には、予備カセット棚107が設けられ、予備的にカセット110を保管するように構成されている。
【0020】
カセットステージ114とカセット棚105との間には、カセット搬送装置(基板収納容器搬送装置)118が設けられている。カセット搬送装置118は、カセット110を保持したまま昇降可能なカセットエレベータ(基板収納容器昇降機構)118aと、カセット110を保持したまま水平移動可能な搬送機構としてのカセット搬送機構(基板収納容器搬送機構)118bと、を備えている。これらカセットエレベータ118aとカセット搬送機構118bとの連係動作により、カセットステージ114、カセット棚105、予備カセット棚107、移載棚123の間で、カセット110を相互に搬送するように構成されている。
【0021】
カセット棚105の後方には、ウエハ移載機構(基板移載機構)125が設けられている。ウエハ移載機構125は、ウエハ10を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置(基板移載装置)125aと、ウエハ移載装置125aを昇降させるウエハ移載装置エレベータ(基板移載装置昇降機構)125bと、を備えている。なお、ウエハ移載装置125aは、ウエハ10を水平姿勢で保持するツイーザ(基板移載用治具)125cを備えている。これらウエハ移載装置125aとウエハ移載装置エレベータ125bとの連係動作により、ウエハ10を移載棚123上のカセット110内からピックアップして後述するボート(基板保持具)11へ装填(チャージング)したり、ウエハ10をボート11から脱装(ディスチャージング)して移載棚123上のカセット110内へ収納したりするように構成されている。
【0022】
筐体111の後部上方には、処理炉202が設けられている。処理炉202の下端部に
は開口が設けられている。かかる開口は、炉口シャッタ(炉口開閉機構)147により開閉されるように構成されている。なお、処理炉202の構成については後述する。
【0023】
処理炉202の下方には、ボート11を昇降させて処理炉202内外へ搬送させる昇降機構としてのボートエレベータ(基板保持具昇降機構)115が設けられている。ボートエレベータ115の昇降台には、連結具としてのアーム128が設けられている。アーム128上には、ボート11を垂直に支持するとともに、ボートエレベータ115によりボート11が上昇したときに処理炉202の下端部を気密に閉塞する蓋体としてのシールキャップ9が水平姿勢で設けられている。
【0024】
ボート11は複数本の保持部材を備えており、複数枚(例えば、50枚〜150枚程度)のウエハ10を、水平姿勢で、かつその中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に保持するように構成されている。ボート11の詳細な構成については後述する。
【0025】
カセット棚105の上方には、供給ファンと防塵フィルタとを備えたクリーンユニット134aが設けられている。クリーンユニット134aは、清浄化した雰囲気であるクリーンエアを筐体111の内部に流通させるように構成されている。
【0026】
また、ウエハ移載装置エレベータ125bおよびボートエレベータ115側と反対側である筐体111の左側端部には、クリーンエアを供給するよう供給フアンと防塵フィルタとを備えたクリーンユニット(図示せず)が設置されている。図示しない前記クリーンユニットから吹き出されたクリーンエアは、ウエハ移載装置125a、ボート11を流通した後に、図示しない排気装置に吸い込まれて、筐体111の外部に排気されるように構成されている。
【0027】
(2)基板処理装置の動作
次に、本実施形態にかかる基板処理装置101の動作について説明する。
【0028】
まず、カセット110が、図示しない工程内搬送装置によって、ウエハ10が垂直姿勢となりカセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように、カセットステージ114上に載置される。その後、カセット110は、カセットステージ114によって、筐体111の後方に向けて縦方向に90°回転させられる。その結果、カセット110内のウエハ10は水平姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口は筐体111内の後方を向く。
【0029】
次に、カセット110は、カセット搬送装置118によって、カセット棚105ないし予備カセット棚107の指定された棚位置へ自動的に搬送されて受け渡されて一時的に保管された後、カセット棚105ないし予備カセット棚107から移載棚123に移載されるか、もしくは移載棚123に直接搬送される。
【0030】
カセット110が移載棚123に移載されると、ウエハ10は、ウエハ移載装置125aのツイーザ125cによって、ウエハ出し入れ口を通じてカセット110からピックアップされ、ウエハ移載装置125aとウエハ移載装置エレベータ125bとの連係動作によって移載室124の後方にあるボート11に装填(チャージング)される。ボート11にウエハ10を受け渡したウエハ移載機構125は、カセット110に戻り、次のウエハ10をボート11に装填する。
【0031】
予め指定された枚数のウエハ10がボート11に装填されると、炉口シャッタ147によって閉じられていた処理炉202の下端部の開口が、炉口シャッタ147によって開放される。続いて、シールキャップ9がボートエレベータ115によって上昇されることに
より、処理対象のウエハ10群を保持したボート11が処理炉202内へ搬入(ローディング)される。ローディング後は、処理炉202内にてウエハ10に任意の処理が実施される。かかる処理については後述する。処理後は、ウエハ10およびカセット110は、上述の手順とは逆の手順で筐体111の外部へ払出される。
【0032】
(3)処理炉の構成
続いて、本実施形態にかかる基板処理装置の処理炉202の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の処理炉の垂直断面図である。図2は、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の処理炉の水平断面図である。なお、本実施形態にかかる処理炉202は、図1に示されているようにCVD装置(バッチ式縦形ホットウオール形減圧CVD装置)として構成されている。
【0033】
(プロセスチューブ)
処理炉202は、中心線が垂直になるように縦向きに配されて筐体111によって固定的に支持された縦形のプロセスチューブ1を備えている。プロセスチューブ1は、インナチューブ2とアウタチューブ3とを備えている。インナチューブ2およびアウタチューブ3は、石英(SiO)や炭化珪素(SiC)等の耐熱性の高い材料によって、円筒形状にそれぞれ一体成形されている。
【0034】
インナチューブ2は、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。インナチューブ2内には、基板保持具としてのボート11によって水平姿勢で多段に積層されたウエハ10を収納して処理する処理室4が形成されている。インナチューブ2の下端開口は、ウエハ10群を保持したボート11を出し入れするための炉口5を構成している。したがって、インナチューブ2の内径は、ウエハ10群を保持したボート11の最大外径よりも大きくなるように設定されている。アウタチューブ3は、インナチューブ2に対して大きめに相似し、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されており、インナチューブ2の外側を取り囲むように同心円に被せられている。インナチューブ2とアウタチューブ3との間の下端部は、円形リング形状に形成されたマニホールド6によってそれぞれ気密に封止されている。マニホールド6は、インナチューブ2およびアウタチューブ3についての保守点検作業や清掃作業のために、インナチューブ2およびアウタチューブ3に着脱自在に取り付けられている。マニホールド6が筐体111に支持されることにより、プロセスチューブ1は垂直に据え付けられた状態になっている。
【0035】
(排気ライン)
マニホールド6の側壁の一部には、処理室4内の雰囲気を排気する排気ラインとしての排気管7aが接続されている。マニホールド6と排気管7aとの接続部には、処理室4内の雰囲気を排気する排気口7が形成されている。排気管7a内は、排気口7を介して、インナチューブ2とアウタチューブ3との間に形成された隙間からなる排気路8内に連通している。なお、排気路8の横断面形状は、一定幅の円形リング形状になっている。排気管7aには、上流から順に、圧力センサ7d、圧力調整バルブとしてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ7b、真空排気装置としての真空ポンプ7cが設けられている。真空ポンプ7cは、処理室4内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。APCバルブ7bおよび圧力センサ7dには、圧力制御部236が電気的に接続されている。圧力制御部236は、処理室4内の圧力が所望のタイミングにて所望の圧力となるように、圧力センサ7dにより検出された圧力に基づいてAPCバルブ7bの開度を制御するように構成されている。
【0036】
(基板保持具)
マニホールド6には、マニホールド6の下端開口を閉塞するシールキャップ9が垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ9は、アウタチューブ3の外径
と同等以上の円盤形状に形成されており、プロセスチューブ1の外部に垂直に設備されたボートエレベータ115によって水平姿勢で垂直方向に昇降されるように構成されている。
【0037】
シールキャップ9上には、ウエハ10を保持する基板保持具としてのボート11が垂直に立脚されて支持されるようになっている。ボート11は、上下で一対の端板12、13と、端板12、13間に垂直に設けられた複数本の保持部材14とを備えている。端板12、13及び保持部材14は、例えば石英(SiO)や炭化珪素(SiC)等の耐熱性材料からなる。各保持部材14には、多数条の保持溝15が長手方向に等間隔に設けられている。各保持部材14は、保持溝15が互いに対向するように設けられている。ウエハ10の円周縁が複数本の保持部材14における同一の段の保持溝15内にそれぞれ挿入されることにより、複数枚のウエハ10は水平姿勢かつ互いに中心を揃えた状態で多段に積層されて保持されるように構成されている。
【0038】
また、ボート11とシールキャップ9との間には、上下で一対の補助端板16、17が複数本の補助保持部材18によって支持されて設けられている。各補助保持部材18には、多数条の保持溝19が設けられている。保持溝19には、例えば石英(SiO)や炭化珪素(SiC)等の耐熱性材料からなる円板形状をした複数枚の断熱板216が、水平姿勢で多段に装填されるように構成されている。断熱板216によって、後述するヒータユニット20からの熱がマニホールド6側に伝わりにくくなるように構成されている。
【0039】
シールキャップ9の処理室4と反対側には、ボートを回転させる回転機構254が設けられている。回転機構254の回転軸255は、シールキャップ9を貫通してボート11を下方から支持している。回転軸255を回転させることで処理室4内にてウエハ10を回転させることが可能なように構成されている。シールキャップ9は、上述のボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されており、これによりボート11を処理室4内外に搬送することが可能となっている。
【0040】
回転機構254及びボートエレベータ115には、駆動制御部237が電気的に接続されている。駆動制御部237は、回転機構254及びボートエレベータ115が所望のタイミングにて所望の動作をするよう制御するように構成されている。
【0041】
(ヒータユニット)
アウタチューブ3の外部には、プロセスチューブ1内を全体にわたって均一または所定の温度分布に加熱する加熱機構としてのヒータユニット20が、アウタチューブ3を包囲するように設けられている。ヒータユニット20は、基板処理装置101の筐体111に支持されることにより垂直に据え付けられた状態になっており、例えばカーボンヒータ等の抵抗加熱ヒータとして構成されている。
【0042】
プロセスチューブ1内には、温度検出器としての図示しない温度センサが設置されている。ヒータユニット20と温度センサとには、温度制御部238が電気的に接続されている。温度制御部238は、処理室4内の温度が所望のタイミングにて所望の温度分布となるように、前記温度センサにより検出された温度情報に基づいてヒータユニット20への通電具合を制御するように構成されている。
【0043】
(処理ガス供給ノズル、不活性ガス供給ノズル)
インナチューブ2の側壁の排気口7とは180度反対側の位置には、チャンネル形状の予備室21が、インナチューブ2の側壁からインナチューブ2の径方向外向きに突出して垂直方向に長く延在するように形成されている。予備室21の側壁はインナチューブ2の側壁の一部を構成している。また、予備室21の内壁は処理室4の内壁の部を形成するよ
うに構成されている。予備室21の内部には、予備室21の内壁(すなわち処理室4の内壁)に沿うようにウエハ10の積層方向に延在されて処理室4内に処理ガスを供給する処理ガス供給ノズル22a,22bが設けられている。また、予備室21の内部には、予備室21の内壁(すなわち処理室4の内壁)に沿うようにウエハ10の積層方向に延在されるとともにウエハ10の周方向に沿って処理ガス供給ノズル22a,22bを両方から挟むように設けられ、処理室4内に不活性ガスを供給する一対の不活性ガス供給ノズル22c,22dが設けられている。
【0044】
処理ガス供給ノズル22a,22bの上流側端部である処理ガス導入口部23a,23b、及び不活性ガス供給ノズル22c,22dの上流側端部である不活性ガス導入口部23c,23dは、それぞれ、マニホールド6の側壁をマニホールド6の径方向外向きに貫通してプロセスチューブ1の外部に突出している。
【0045】
処理ガス導入口部23a,23bには、処理ガス供給ラインとしての処理ガス供給管25a,25bがそれぞれ接続されている。処理ガス供給管25aには、上流側から順に、例えば液体原料としてのTEMAH(Hf[NCH、テトラキスメチルエチルアミノハフニウム)を気化させたガス等の処理ガスを供給する処理ガス供給源28a、流量制御装置としてのMFC(マスフローコントローラ)27a、及び開閉バルブ26aがそれぞれ設けられている。また、処理ガス供給管25bには、上流側から順に、例えばO(オゾン)ガス等の処理ガスを供給する処理ガス供給源28b、流量制御装置としてのMFC(マスフローコントローラ)27b、及び開閉バルブ26bがそれぞれ設けられている。
【0046】
また、不活性ガス導入口部23c,23dには、不活性ガス供給ラインとしての不活性ガス供給管25c,25dがそれぞれ接続されている。不活性ガス供給管25c,25dには、上流側から順に、例えばNガス、Arガス、Heガス等の不活性ガスを供給する不活性ガス供給源28c,28d、流量制御装置としてのMFC(マスフローコントローラ)27c,27d、及び開閉バルブ26c,26dがそれぞれ設けられている。
【0047】
MFC27a,27b,27c,27d及び開閉バルブ26a,26b,26c,26dには、ガス供給・流量制御部235が電気的に接続されている。ガス供給・流量制御部235は、後述する各ステップで処理室4内に供給するガスの種類が所望のタイミングにて所望のガス種となるよう、また、供給するガスの流量が所望のタイミングにて所望の量となるよう、さらには、不活性ガスに対する処理ガスの濃度が所望のタイミングにて所望の濃度となるよう、MFC27a,27b,27c,27d及び開閉バルブ26a,26b,26c,26dを制御するように構成されている。
【0048】
処理室4内における処理ガス供給ノズル22a,22bの筒部には、複数個の処理ガス噴出口24a,24bが垂直方向に配列するように設けられ、処理室4内における不活性ガス供給ノズル22c,22dの筒部には、複数個の不活性ガス噴出口24c,24dが垂直方向に配列するように設けられている。処理ガス噴出口24a,24b、不活性ガス噴出口24c,24dの個数は、例えばボート11に保持されたウエハ10の枚数と一致するように構成されている。各処理ガス噴出口24a,24b、及び各不活性ガス噴出口24c,24dの高さ位置は、例えばボート11に保持された上下で隣り合うウエハ10間の空間に対向するようにそれぞれ設定されている。なお、各処理ガス噴出口24a,24b、及び各不活性ガス噴出口24c,24dの口径は、各ウエハ10へのガスの供給量が均一になるようにそれぞれ異なる大きさに設定されていてもよい。
【0049】
インナチューブ2の側壁であって予備室21とは180度反対側の位置、すなわち排気口7側の位置には、スリット状の貫通孔である排気口25が垂直方向に細長く開設されて
いる。処理室4内と排気路8内とは排気口25を介して連通している。従って、処理ガス供給ノズル22a,22bの処理ガス噴出口24a,24bから処理室4内に供給された処理ガス、及び不活性ガス供給ノズル22c,22dの処理ガス噴出口24a,24bから処理室4内に供給された処理ガスは、排気口25を介して排気路8内へと流れた後、排気口7を介して排気管7a内に流れ、処理炉202外へと排出されるように構成されている。
【0050】
なお、図2に示すように、処理ガス供給ノズル22aと排気口25とを結ぶ直線、及び処理ガス供給ノズル22bと排気口25とを結ぶ直線は、それぞれ、ウエハ10の中心付近を通るように構成されている。なお、処理ガス噴出口24a,24bの向きは、これらの直線とほぼ平行に設定されている。すなわち、処理ガス噴出口24a,24bは、ウエハ10の中心に向けて処理ガスを供給するように開口されている。また、不活性ガス供給ノズル22cと排気口25とを結ぶ直線、及び不活性ガス供給ノズル22cと排気口25とを結ぶ直線は、処理ガス供給ノズル22aと排気口25とを結ぶ直線、及び処理ガス供給ノズル22bと排気口25とを結ぶ直線をそれぞれ両側から挟むように構成されている。なお、不活性ガス噴出口24c,24dの向きは、これらの直線よりも外側に開いた向きに設定されていている。そして、不活性ガス噴出口24c,24dは、ウエハ10の中心方向ではなく、処理室4の内壁とウエハ10の外周部との間の空間(隙間)に不活性ガスを噴射するように開口されている。なお、予備室21の側壁は、不活性ガス噴出口24c,24dの向きと略平行になるように構成されている。
【0051】
このため、図2に示すように、処理ガスと不活性ガスとを処理室4内へ同時に供給するようにすると、処理ガス供給ノズル22a,22bの処理ガス噴出口24a,24bから処理室4内に供給された処理ガスのガス流(図中実線で示す矢印)は、不活性ガス供給ノズル22c,22dの不活性ガス噴出口24c,24dから処理室4内に供給された不活性ガスのガス流(図中実線で示す矢印)によって両側から挟まれて、その流路が制限されることとなる。例えば、ウエハ10の周縁と処理室4との間の空間へ不活性ガスが供給されると、かかる領域の圧力が相対的に高くなり、ウエハ10の周縁と処理室4との間の隙間へ処理ガスが流れ込んでしまうことが抑制される。その結果、各ウエハ10の中心付近への処理ガスの供給が促進され、各ウエハ10の外周付近と中心付近とにおける処理ガスの供給量がより均一化される。また、ウエハ10の周縁と処理室4との間の隙間において処理ガスが不活性ガスによって希釈され、ウエハ10の外周付近において膜が過剰に厚く形成されることが抑制される。
【0052】
また、不活性ガス供給ノズル22c,22dの不活性ガス噴出口24c,24dは、ウエハ10の中心方向ではなく、処理室4の内壁とウエハ10の外周部との間の空間に不活性ガスを噴射するように開口されている。そのため、不活性ガス供給ノズル22c,22dの不活性ガス噴出口24c,24dから処理室4内に供給された不活性ガスは、主に、ウエハ10の周縁と処理室4との間の空間へ流れ、ウエハ10群が保持されている領域にはほとんど流れない。その結果、ウエハ10に供給される処理ガスの不活性ガスによる希釈が抑制され、成膜レートの低下が回避される。
【0053】
(コントローラ)
ガス供給・流量制御部235、圧力制御部236、駆動制御部237、及び温度制御部238は、操作部、入出力部をも構成し、基板処理装置全体を制御する主制御部239に電気的に接続されている。これら、ガス供給・流量制御部235、圧力制御部236、駆動制御部237、温度制御部238、及び主制御部239は、コントローラ240として構成されている。
【0054】
(4)基板処理工程
次に、上述の基板処理装置101により実施される半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、処理ガスとしてTEMAHガス及びOガスを用いてALD法によりHfO膜を成膜する例を説明する。下記の説明において、基板処理装置101を構成する各部の動作は、コントローラ240によって制御される。
【0055】
CVD(Chemical Vapor Deposition)法の一つであるALD(Atomic Layer Deposition)法は、ある成膜条件(温度、時間等)の下で、成膜に用いる少なくとも2種類の互いに反応する処理ガスを1種類ずつ交互に基板上に供給し、1原子単位で基板上に吸着させ、表面反応を利用して成膜を行う手法である。このとき、膜厚の制御は、反応性ガスを供給するサイクル数で行う(例えば、成膜速度が1Å/サイクルとすると、20Åの膜を形成する場合、20サイクル行う)。例えばALD法によりHfO膜を形成する場合、TEMAH(Hf[NCH、テトラキスメチルエチルアミノハフニウム)ガスとO(オゾン)ガスとを用いて、180〜250℃の低温で高品質の成膜が可能である。
【0056】
まず、上述したように処理対象のウエハ10群をボート11に装填して処理室4内に搬入する。ボート11を処理室4内に搬入した後、以下に示す4つのステップ(ステップ1〜4)を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数繰り返す。なお、以下のステップ1〜4を実行する間、回転機構254を回転させることで、ウエハ10表面へ供給されるガスの流量をより均一化させることが可能となる。
【0057】
(ステップ1)
処理ガス供給管25aの開閉バルブ26a、及び排気管7aのAPCバルブ7bを共に開け、真空ポンプ7cにより処理室4内を排気しつつ、処理ガス供給ノズル22aの処理ガス噴出口24aから処理ガスとしてのTEMAHガスを処理室4内に供給する。
【0058】
この際、同時に、不活性ガス供給管25c,25dの開閉バルブ26c,26dを開け、不活性ガス供給ノズル22c,22dの不活性ガス噴出口24c,24dから不活性ガスとしてのNガスをそれぞれ処理室4内に供給する。その結果、処理ガス供給ノズル22aの処理ガス噴出口24aから処理室4内に供給されたTEMAHガスは、不活性ガス供給ノズル22c,22dの不活性ガス噴出口24c,24dから処理室4内に供給されたNガスによって両側から挟まれて、その流路が制限されることとなる。例えば、ウエハ10の周縁と処理室4との間の隙間へ不活性ガスが供給されると、かかる領域の圧力が相対的に高くなり、ウエハ10の周縁と処理室4との間の隙間へTEMAHガスが流れ込んでしまう(逃げてしまう)ことが抑制されることとなる。その結果、各ウエハ10の中心付近へのTEMAHガスの供給が促進され、各ウエハ10の外周付近と中心付近とにおけるTEMAHガスの供給量がより均一化される。また、ウエハ10の周縁と処理室4との間の隙間においてTEMAHガスがNガスによって希釈され、ウエハ10の外周付近において膜が過剰に厚く形成されることが抑制される。
【0059】
また、不活性ガス供給ノズル22c,22dの不活性ガス噴出口24c,24dは、ウエハ10の中心方向ではなく、処理室4の内壁とウエハ10の外周部との間の空間にNガスを噴射する。そのため、不活性ガス供給ノズル22c,22dの不活性ガス噴出口24c,24dから処理室4内に供給されたNガスは、主に、ウエハ10の周縁と処理室4との間の空間へ流れ、ウエハ10群が保持されている領域にはほとんど流れない。その結果、ウエハ10に供給されるTEMAHガスのNガスによる希釈が抑制され、成膜レートの低下が回避される。
【0060】
なお、不活性ガス供給ノズル22c,22dは、処理ガス供給ノズル22aからTEMAHガスを供給する際に、処理ガス供給ノズル22aから供給されるTEMAHガスの流
量以上の流量でNガスを供給するようにすることが好ましい。すなわち、不活性ガス供給ノズル22cの不活性ガス噴出口24cから供給されるNガスの流量、及び不活性ガス供給ノズル22dの不活性ガス処理ガス噴出口24dから供給されるNガスの流量が、それぞれ、処理ガス供給ノズル22aの処理ガス噴出口24aから供給されるTEMAHガスの流量以上になるようにすることが好ましい。TEMAHガスの流量及びNガスの流量は、MFC27a,27c,27dによりそれぞれ制御する。その結果、各ウエハ10の中心付近へのTEMAHガスの供給がさらに促進される。また、ウエハ10の周縁と処理室4との間の隙間においてNガスによるTEMAHガスの希釈が更に促進される。
【0061】
ステップ1においては、APCバルブ7bの開度を適正に調整して、処理室4内の圧力が20〜900Paの範囲であって、例えば50Paになるように制御する。TEMAHガスにウエハ10を晒す時間は例えば30〜180秒間である。ヒータユニット20の温度は、ウエハ10の温度が180〜250℃の範囲であって、例えば250℃になるよう設定する。TEMAHガスを処理室4内に供給することによって、TEMAHガスのガス分子がウエハ10上の下地膜などの表面部分と表面反応(化学吸着)する。
【0062】
(ステップ2)
処理ガス供給管25aの開閉バルブ26aを閉め、処理室4内へのTEMAHガスの供給を停止する。このとき、排気管7aのAPCバルブ7bは開いたままとし、真空ポンプ7cにより処理室4内を例えば20Pa以下となるまで排気し、残留するTEMAHガスを処理室4内から排除する。また、不活性ガス供給管25c,25dの開閉バルブ26c,28dを開けてNガスを処理室4内へ供給すると、残留するTEMAHガスを処理室4内から排除する効果が更に高まる。
【0063】
(ステップ3)
排気管7aのAPCバルブ7bを開いたまま、処理ガス供給管25bの開閉バルブ26bを開け、真空ポンプ7cにより処理室4内を排気しつつ、処理ガス供給ノズル22bの噴出口24bから処理ガスとしてのOガスを処理室4内に供給する。
【0064】
この際、不活性ガス供給管25c,25dの開閉バルブ26c,28dを開けたままとし、不活性ガス供給ノズル22c,22dの不活性ガス噴出口24c,24dから処理室4内に不活性ガスとしてのNガスをそれぞれ供給する。その結果、処理ガス供給ノズル22bの噴出口24bから処理室4内に供給されたOガスは、不活性ガス供給ノズル22c,22dの不活性ガス噴出口24c,24dから処理室4内に供給されたNガスによって両側から挟まれて、その流路が制限されることとなる。例えば、ウエハ10の周縁と処理室4との間の隙間へ不活性ガスが供給されると、かかる領域の圧力が相対的に高くなり、ウエハ10の周縁と処理室4との間の隙間へOガスが流れ込んでしまう(逃げてしまう)ことが抑制されることとなる。その結果、各ウエハ10の中心付近へのOガスの供給が促進され、各ウエハ10の外周付近と中心付近とにおけるOガスの供給量がより均一化される。また、ウエハ10の周縁と処理室4との間の隙間においてOガスがNガスによって希釈され、ウエハ10の外周付近において膜が過剰に厚く形成されることが抑制される。
【0065】
また、不活性ガス供給ノズル22c,22dの不活性ガス噴出口24c,24dは、ウエハ10の中心方向ではなく、処理室4の内壁とウエハ10の外周部との間の空間にNガスを噴射する。そのため、不活性ガス供給ノズル22c,22dの不活性ガス噴出口24c,24dから処理室4内に供給されたNガスは、主に、ウエハ10の周縁と処理室4との間の空間へ流れ、ウエハ10群が保持されている領域にはほとんど流れない。その結果、ウエハ10に供給されるOガスのNガスによる希釈が抑制され、成膜レートの
低下が回避される。
【0066】
なお、不活性ガス供給ノズル22c,22dは、処理ガス供給ノズル22bからOガスを供給する際に、処理ガス供給ノズル22bから供給されるOガスの流量以上の流量でNガスを供給するようにすることが好ましい。すなわち、不活性ガス供給ノズル22cの不活性ガス噴出口24cから供給されるNガスの流量、及び不活性ガス供給ノズル22dの不活性ガス処理ガス噴出口24dから供給されるNガスの流量が、それぞれ、処理ガス供給ノズル22bの噴出口24bから供給されるOガスの流量以上になるようにすることが好ましい。Oガスの流量及びNガスの流量は、MFC27b,27c,27dによりそれぞれ制御する。その結果、ウエハ10間へのOガスの供給がより促進され、各ウエハ10の中心付近までOガスがより流れやすくなる。また、ウエハ10の周縁と処理室4との間の隙間においてNガスによるOガスの希釈が更に促される。
【0067】
ステップ3においては、APCバルブ7bの開度を適正に調整して処理室4内の圧力を20〜900Paの範囲であって、例えば50Paになるように制御する。Oガスにウエハ10を晒す時間は例えば10〜300秒間である。ヒータユニット20の温度は、ウエハ10の温度が180〜250℃の範囲であって、例えば250℃になるよう設定する。Oガスを供給することで、ウエハ10の表面に化学吸着しているTEMAHガスとOガスとが表面反応して、ウエハ10上にHfO膜が成膜される。
【0068】
(ステップ4)
処理ガス供給管25bの開閉バルブ26bを閉め、処理室4内へのOガスの供給を停止する。このとき排気管7aのAPCバルブ7bは開いたままとし、真空ポンプ7cにより処理室4内を20Pa以下となるまで排気し、残留するOガスを処理室4内から排除する。また、不活性ガス供給管25c,25dの開閉バルブ26c,26dを開けてNガスを処理室4内へ供給すると、残留するOガスを処理室4内から排除する効果が更に高まる。
【0069】
そして、上述したステップ1〜4を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことによりウエハ10上に所定の膜厚のHfO膜を成膜する。その後、処理後のウエハ10群を保持したボート11を処理室4内から搬出して本実施形態にかかる基板処理工程を終了する。
【0070】
(5)本実施形態にかかる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0071】
本実施形態によれば、上述のステップ1において、処理ガス供給ノズル22aの処理ガス噴出口24aから処理室4内に供給されたTEMAHガスは、不活性ガス供給ノズル22c,22dの不活性ガス噴出口24c,24dから処理室4内に供給されたNガスによって両側から挟まれて、その流路が制限される。例えば、ウエハ10の周縁と処理室4との間の隙間へNガスが供給されると、かかる領域の圧力が相対的に高くなり、ウエハ10の周縁と処理室4との間の隙間へTEMAHガスが流れ込んでしまうことが抑制される。その結果、各ウエハ10の中心付近へのTEMAHガスの供給が促進され、各ウエハ10の外周付近と中心付近とにおけるTEMAHガスの供給量がより均一化される。また、ウエハ10の周縁と処理室4との間の隙間においてTEMAHガスがNガスによって希釈され、ウエハ10の外周付近において膜が過剰に厚く形成されることが抑制される。
【0072】
また、本実施形態によれば、不活性ガス供給ノズル22c,22dの不活性ガス噴出口24c,24dは、ウエハ10の中心方向ではなく、処理室4の内壁とウエハ10の外周部との間の空間にNガスを噴射する。そのため、不活性ガス供給ノズル22c,22d
の不活性ガス噴出口24c,24dから処理室4内に供給されたNガスは、主に、ウエハ10の周縁と処理室4との間の空間へ流れ、ウエハ10群が保持されている領域にはほとんど流れない。その結果、ウエハ10に供給されるTEMAHガスのNガスによる希釈が抑制され、成膜レートの低下を回避できる。
【0073】
なお、本実施形態において、不活性ガス供給ノズル22c,22dが、処理ガス供給ノズル22aからTEMAHガスを供給する際に、処理ガス供給ノズル22aから供給されるTEMAHガスの流量以上の流量でNガスを供給するようにすると、各ウエハ10の中心付近へのTEMAHガスの供給がさらに促進される。また、ウエハ10の周縁と処理室4との間の隙間においてNガスによるTEMAHガスの希釈がさらに促進され、ウエハ10の外周付近においてHfO膜が過剰に厚く形成されることがさらに抑制される。
【0074】
また、本実施形態によれば、処理ガス供給ノズル22bの噴出口24bから処理室4内に供給されたOガスは、不活性ガス供給ノズル22c,22dの不活性ガス噴出口24c,24dから処理室4内に供給されたNガスによって両側から挟まれて、その流路が制限される。例えば、ウエハ10の周縁と処理室4との間の隙間へNガスが供給されると、かかる領域の圧力が相対的に高くなり、ウエハ10の周縁と処理室4との間の隙間へOガスが流れ込んでしまうことが抑制される。その結果、各ウエハ10の中心付近へのOガスの供給が促進され、各ウエハ10の外周付近と中心付近とにおけるOガスの供給量がより均一化される。また、ウエハ10の周縁と処理室4との間の隙間においてOガスがNガスによって希釈され、ウエハ10の外周付近において膜が過剰に厚く形成されることが抑制される。
【0075】
また、本実施形態によれば、不活性ガス供給ノズル22c,22dの不活性ガス噴出口24c,24dは、ウエハ10の中心方向ではなく、処理室4の内壁とウエハ10の外周部との間の空間にNガスを噴射する。そのため、不活性ガス供給ノズル22c,22dの不活性ガス噴出口24c,24dから処理室4内に供給されたNガスは、主に、ウエハ10の周縁と処理室4との間の空間へ流れ、ウエハ10群が保持されている領域にはほとんど流れない。その結果、ウエハ10に供給されるOガスのNガスによる希釈が抑制され、成膜レートの低下を回避できる。
【0076】
なお、本実施形態において、不活性ガス供給ノズル22c,22dが、処理ガス供給ノズル22aからOガスを供給する際に、処理ガス供給ノズル22bから供給されるOガスの流量以上の流量でNガスを供給するようにすると、各ウエハ10の中心付近へのOガスの供給がさらに促進される。また、ウエハ10の周縁と処理室4との間の隙間においてNガスによるOガスの希釈がさらに促進され、ウエハ10の外周付近においてHfO膜が過剰に厚く形成されることがさらに抑制される。
【0077】
また、本実施形態によれば、ウエハ10の周縁と処理室4との間の隙間へのTEMAHガスやOガスの流入が抑制されるため、処理室4の側壁(インナチューブ2の側壁)への成膜や原料成分の付着や、処理室4内での異物の発生が抑制される。そして、基板処理装置101のメンテナンスサイクルが伸び、基板処理装置101の生産性を向上させることが可能となる。
【0078】
また、本実施形態のステップ3,4において、不活性ガス供給管25c,25dの開閉バルブ26c,26dを開けてNガスを処理室4内へ供給するようにすれば、残留するTEMAHガスやOガスを処理室4内から排除する効果が更に高まる。その結果、ステップ3,4の実行に要する時間が短縮され、基板処理の生産性を高めることが可能となる。
【0079】
また、本実施形態によれば、ボート11により支持される各ウエハ10の周縁と処理室4の内壁との間に、リング状の整流板をそれぞれ設ける必要がない。そのため、ウエハ10の積層ピッチを広く確保する必要がなくなり、一括して処理することの出来る基板の枚数が少なくなってしまうことを抑制できる。その結果、基板処理の生産性を向上させることが出来る。
【0080】
また、本実施形態によれば、ボート11により支持される各ウエハ10の周縁と処理室4の内壁との間に、リング状の整流板をそれぞれ設ける必要がない。そのため、ボート11の生産コスト、及び基板処理コストを低減させることが可能となる。
【0081】
<本発明の第2の実施形態>
以下に、本発明の第2の実施形態を、図3を参照しながら説明する。本実施形態では、処理室4内に整流板31c,31dを有するように構成されている点が、上述の実施形態と異なる。その他の構成は上述の実施形態と同じである。
【0082】
整流板31c,31dは、不活性ガス噴出口としての不活性ガス噴出口24c,24dより処理室4の内側(ウエハ10側)である不活性ガス供給ノズル22c,22dの外側に鉛直方向に延在するように設けられている。具体的には、整流板31cは、不活性ガス供給ノズル22cとウエハ10との間に鉛直方向に延在するように、また、不活性ガス噴出口24cの向きと略平行になるように設けられている。整流板31dは、不活性ガス供給ノズル22dとウエハ10との間に鉛直方向に延在するように、また、不活性ガス処理ガス噴出口24dの向きと略平行になるように設けられている。整流板31cと予備室21の側壁との間には、不活性ガス噴出口24cから供給された不活性ガスの流れを誘導するガス流路が形成され、整流板31dと予備室21の側壁との間には、不活性ガス処理ガス噴出口24dから供給された不活性ガスの流れを誘導するガス流路が形成されている。整流板31c,31dは、不活性ガス供給ノズル22c,22dに取り付けてもよいし、インナチューブ2の内壁などに直接取り付けてもよい。
【0083】
このように構成することで、ウエハ10群が保持されている領域への不活性ガスの流入が更に抑制される。その結果、ウエハ10に供給される処理ガスの不活性ガスによる希釈が抑制され、成膜レートの低下が更に回避される。
【0084】
<本発明の第3の実施形態>
以下に、本発明の第3の実施形態を、図4を参照しながら説明する。本実施形態にかかる処理室4は、排気口25の代わりに、処理ガスを排気する処理ガス排気口35と、不活性ガスを排気する不活性ガス排気口35c,35dと、をそれぞれ有する点が、上述の実施形態と異なる。その他の構成は上述の実施形態と同じである。
【0085】
処理ガス排気口35は、上述の排気口25と同様に構成されている。すなわち、処理ガス排気口35は、インナチューブ2の側壁であって予備室21とは180度反対側の位置、すなわち排気口7側の位置に、スリット状の貫通孔として垂直方向に細長く開設されている。また、不活性ガス排気口35c,35dは、処理ガス排気口35を両側から挟む位置に、スリット状の貫通孔として垂直方向に細長くそれぞれ開設されている。
【0086】
このように構成することで、処理ガス噴出口24a,24bから供給された処理ガスが処理ガス排気口35からそれぞれ排気され、また、不活性ガス噴出口24c,24dから供給された不活性ガスが不活性ガス排気口35c,35dからそれぞれ排気される。その結果、処理ガス排気口35、不活性ガス排気口35c,35d付近におけるガス流がそれぞれスムーズとなる。
【0087】
<本発明の他の実施形態>
上述の実施形態では、処理室4内に処理ガスを供給する1本以上の処理ガス供給ノズル22a,22bと、処理ガス供給ノズル22a,22bを両方から挟むように設けられ処理室4内に不活性ガスを供給する一対の不活性ガス供給ノズル22c,22dと、をそれぞれ個別に有していた。そして、処理ガス供給ノズル22aから供給する処理ガス(例えばTEMAHガス)と、処理ガス供給ノズル22bから供給する処理ガス(例えばOガス)とを、それぞれ不活性ガス供給ノズル22c,22dからの不活性ガスによって両側から挟んでいた。
【0088】
しかしながら、本発明はかかる実施形態に限定されない。すなわち1本以上の処理ガス供給ノズルから供給される複数種の処理ガスのうち、いずれか一種の処理ガスの供給量の面内均一性のみが基板処理の面内均一性に影響する場合(他の処理ガスの供給量の面内均一性が基板処理の面内均一性にあまり影響しない場合)には、基板処理の面内均一性に影響する処理ガスのみを不活性ガスによって両側から挟むこととし、基板処理の面内均一性にあまり影響しない処理ガスは不活性ガスによって両側から挟まないこととしてもよい。
【0089】
この場合、1本以上の処理ガス供給ノズルのうち少なくとも1本の処理ガス供給ノズル(基板処理の面内均一性にあまり影響しない処理ガスを供給する処理ガス供給ノズル)は、他の処理ガス供給ノズル(基板処理の面内均一性に影響する処理ガスを供給する処理ガス供給ノズル)から処理ガスを供給する際に、該他の処理ガス供給ノズルから供給される処理ガスの流量以上の流量で不活性ガスを供給するように構成されていてもよい。
【0090】
例えば、TEMAHガスの供給量の面内均一性が基板処理の面内均一性に大きく影響する一方で、Oガスの供給量の面内均一性が基板処理の面内均一性にあまり影響しない場合には、TEMAHガスのみをNガスによって両側から挟むこととし、OガスはNガスによって両側から挟まないこととしてもよい。そして、不活性ガス供給ノズル22c及び処理ガス供給ノズル22bは、処理ガス供給ノズル22aからTEMAHガスを供給する際に、処理ガス供給ノズル22aから供給されるTEMAHガスの流量以上の流量でNガスをそれぞれ供給するように構成してもよい。そして、不活性ガス供給ノズル22dを設けないこととすれば、基板処理装置の構造を簡素化することが可能となり、基板処理コストを低減させることが可能となる。
【0091】
<本発明のさらに他の実施形態>
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0092】
例えば、ガス導入ノズルに開設する噴出口の個数は、処理するウエハの枚数に一致させるに限らず、処理するウエハの枚数に対応して増減することができる。例えば、噴出口は上下で隣り合うウエハ同士間にそれぞれ対向して配置するに限らず、二枚や三枚置きに配設してもよい。
【0093】
インナチューブの側壁に開設する排気孔は一連の長孔に形成するに限らず、複数個の長孔や円形孔および多角形孔等に形成してもよいし、インナチューブの上下において孔径を増減してもよい。
【0094】
前記実施の形態では処理がウエハに施される場合について説明したが、処理対象はホトマスクやプリント配線基板、液晶パネル、コンパクトディスクおよび磁気ディスク等であってもよい。
【0095】
上述の実施形態では、ALD法による膜の堆積について説明したが、本発明はALDに
限らずCVD法による膜の堆積にも好適に適用可能である。さらに、本発明にかかる基板処理方法は酸化膜形成方法や拡散方法等の基板処理方法全般に適用することができる。
【0096】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0097】
本発明の一態様によれば、水平姿勢で多段に積層された基板を収容して処理する処理室と、
前記処理室の内壁に沿うように基板の積層方向に延在されて前記処理室内に処理ガスを供給する1本以上の処理ガス供給ノズルと、
前記処理室の内壁に沿うように基板の積層方向に延在されるとともに基板の周方向に沿って前記処理ガス供給ノズルを両方から挟むように設けられ前記処理室内に不活性ガスを供給する一対の不活性ガス供給ノズルと、
前記不活性ガス供給ノズルに設けられた不活性ガス噴出口と、
前記処理室内を排気する排気ラインと、を有し、
前記不活性ガス噴出口は、前記処理室の内壁と基板の外周部との間の空間に不活性ガスを噴射するように開口されている
ことを特徴とする基板処理装置。
【0098】
好ましくは、前記処理室内に整流板を有する。
【0099】
好ましくは、前記不活性ガス噴出口より前記処理室の内側(基板側)である前記不活性ガスノズルの外面に整流板を有する。
【0100】
好ましくは、前記不活性ガスが前記処理室の内壁と基板の外周部との間の空間に前記不活性ガスを誘導する整流板を有する。
【0101】
好ましくは、前記処理室は、前記処理ガスを排気する処理ガス供給口と、前記不活性ガスを排気する不活性ガス排気口と、をそれぞれ有する。
【0102】
好ましくは、前記不活性ガス供給ノズルは、前記処理ガス供給ノズルから処理ガスを供給する際に、該処理ガス供給ノズルから供給される処理ガスの流量以上の流量で不活性ガスを供給する。
【0103】
好ましくは、前記1本以上の処理ガス供給ノズルのうち少なくとも1本の処理ガス供給ノズルは、他の処理ガス供給ノズルから処理ガスを供給する際に、該他の処理ガス供給ノズルから供給される処理ガスの流量以上の流量で不活性ガスを供給する。
【0104】
本発明の他の態様によれば、水平姿勢で多段に積層された基板を処理室内に搬入する工程と、前記処理室の内壁に沿うように基板の積層方向に延在された1本以上の処理ガス供給ノズルから前記処理室内に処理ガスを供給するとともに、前記処理室の内壁に沿うように基板の積層方向に延在されるとともに基板の周方向に沿って前記処理ガス供給ノズルを両方から挟むように設けられた一対の不活性ガス供給ノズルから前記処理室の内壁と基板の外周部との間の空間に不活性ガスを噴射して基板を処理する工程と、処理後の基板を前記処理室から搬出する工程と、を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる基板処理装置の処理炉の垂直断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態にかかる基板処理装置の処理炉の水平断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態にかかる基板処理装置の処理炉の水平断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態にかかる基板処理装置の処理炉の水平断面図である。
【図5】処理ガス供給ノズルを両方から挟むような一対の不活性ガスノズルを処理室内に設けた処理炉の水平断面図である。
【図6】リング状の整流板が設けられた基板保持具の概略構成図である。
【図7】整流板を有さない基板保持具の概略構成図である。
【図8】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0106】
4 処理室
7a 排気管(排気ライン)
10 ウエハ(基板)
22a 処理ガス供給ノズル
22b 処理ガス供給ノズル
24a 処理ガス噴出口
24b 処理ガス噴出口
22c 不活性ガス供給ノズル
22d 不活性ガス供給ノズル
24c 不活性ガス噴出口
24d 不活性ガス噴出口
101 基板処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平姿勢で多段に積層された基板を収容して処理する処理室と、
前記処理室の内壁に沿うように基板の積層方向に延在されて前記処理室内に処理ガスを供給する1本以上の処理ガス供給ノズルと、
前記処理室の内壁に沿うように基板の積層方向に延在されるとともに基板の周方向に沿って前記処理ガス供給ノズルを両方から挟むように設けられ前記処理室内に不活性ガスを供給する一対の不活性ガス供給ノズルと、
前記不活性ガス供給ノズルに設けられた不活性ガス噴出口と、
前記処理室内を排気する排気ラインと、を有し、
前記不活性ガス噴出口は、前記処理室の内壁と基板の外周部との間の空間に不活性ガスを噴射するように開口されている
ことを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−118462(P2010−118462A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290104(P2008−290104)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】