説明

基板処理装置

【課題】低温での酸化膜形成において、ウエハ面内の膜厚均一性を向上させた基板処理装置を提供する。
【解決手段】複数枚の基板を収容して処理する反応管と、前記反応管内を加熱するヒータと、前記反応管内で前記複数枚の基板を所定の間隔で積層し配列させて保持する基板保持具と、前記反応管内の前記複数枚の基板が配列される基板配列領域に対応する領域に配置され、該領域の基板配列方向における複数箇所から前記反応管内に、酸素含有ガスと水素含有ガスとを混合させて供給するガス供給ノズルと、前記反応管内を排気する排気口と、前記反応管内の圧力が大気圧よりも低い所定の圧力となるように制御する圧力制御部と、を有することを特徴とする基板処理装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の基板を処理する基板処理装置、及び該基板処理装置を用いて基板を処理する工程を有する半導体装置の製造方法に関し、特に、基板の表面を酸化処理する酸化装置、及び該酸化装置を用いて基板を酸化処理する工程を有するIC等の半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1に、基板処理装置としての、半導体装置の製造装置(半導体製造装置)の斜視図を示す。図1に示す基板処理装置は、ウエハカセットを搭載するカセットストッカ1と、ウエハを積層するように搭載するボート3と、カセットストッカ1に搭載されたウエハカセットとボート3との間でウエハの移載を行うウエハ移載機2と、ボート3を熱処理炉5内に搬入、及び搬出するボートエレベータ7と、加熱手段(ヒータ)を備えた熱処理炉5と、を備えている。
【0003】
特許文献1には、図1に示す基板処理装置の熱処理炉の反応管内に、ウエハを積層したボートを挿入した後、大気圧未満の状態で、該ボートの上方、及び側方から、水素含有ガスと酸素含有ガスとを独立に供給して、ウエハ表面を酸化し、シリコン酸化膜を形成する技術が開示されている。この酸化方法により、従来の水蒸気を用いたPYRO酸化等に比較し、良質の酸化膜が得られ、また、面方位の異なる基板表面の酸化速度差を大幅に縮小することができる。しかし、特許文献1に示す熱処理炉の反応管は、上部にガス供給機構を有するため、製作が容易でなく、また、製作コストやメンテナンスコストも高くなる。
特許文献1に示す熱処理炉を改良するため、本件出願人は、図6に示すように、反応管内にウエハを積層したボートを挿入した後、該ボートの側方から、水素含有ガスと酸素含有ガスとを独立に供給する方式を提案した。これにより、従来に比べ優れたウエハ面内の酸化膜厚均一性やウエハ間の酸化膜厚均一性を得ることが可能となった。この方式は、800〜1000℃の比較的高い温度で酸化処理する工程で使用することができる。
【0004】
しかし、最近のデバイス構造の3次元化やメタル化等により、より低温での酸化膜形成に対する要求が高まっている。高温において優れた膜厚均一性を実現した図6の方式を使用して、低温酸化、例えば750℃で成膜した結果を図7、図8に示す。図7は、図6に示す熱処理炉において、図6に示す水素供給ノズル41〜44及び酸素供給ノズル45を用いた場合の、酸化膜厚を示す実験結果データである。図7において、横軸は、垂直方向のウエハ位置を示しており、#20など番号の小さい方が下部(ボトム付近)、#120など番号の大きい方が上部(トップ付近)である。また、縦軸は、酸化膜厚(単位:オングストローム)を示しており、成膜速度により左右される。白丸印(○)は、水素ガス(H)を1250sccm(standard cc/min)、酸素ガス(O)を5000sccm供給した場合である。黒丸印(●)は、水素ガス(H)を1000sccm、酸素ガス(O)を4000sccm供給した場合である。四角印(□)は、水素ガス(H)を750sccm、酸素ガス(O)を3000sccm供給した場合である。三角印(△)は、水素ガス(H)を500sccm、酸素ガス(O)を2000sccm供給した場合である。バツ印(×)は、水素ガス(H)を250sccm、酸素ガス(O)を1000sccm供給した場合である。
【0005】
図8は、図6に示す熱処理炉において水素供給ノズル41〜44及び酸素供給ノズル45を用いた場合の、酸化膜厚の面内均一性を示す実験結果データ(面内レンジデータ)である。図8において、横軸は、図7と同様の垂直方向のウエハ位置を示している。また、縦軸は、面内レンジ(ウエハエッジ部の膜厚平均値−ウエハ中心の膜厚値)(単位:オングストローム)を示しており、プラス側は成膜状態(膜厚ウエハ面内マップ)が凹型(すり鉢形状)、マイナス側は成膜状態が凸型(砲台形状)であることを意味する。つまり、縦軸は、ウエハの面内膜厚のバラツキ、すなわち、膜厚面内均一性を示す。白丸印(○)、黒丸印(●)、四角印(□)、三角印(△)、バツ印(×)は、図7と同様の意味である。
【0006】
図8の面内レンジデータから、800〜1000℃の高温酸化処理と同様のガス流量条件、例えば白丸印(○)のH/O=1250/5000sccmでは、膜厚ウエハ面内マップが砲台形状となる傾向が強く、ウエハ面内の膜厚差が大きくなることが分かる。これは、水素含有ガスと酸素含有ガスとを独立に供給した場合、低温では反応速度が遅く、ウエハ表面上をガスが水平方向に拡散する過程で、徐々に反応が進むためである。これを回避するために、ガス流量を少なくしてガス流速を遅くすれば、図8のガス流量依存データから分かるように、膜厚ウエハ面内マップが砲台形状となる傾向は緩和されていく。しかし、ガス流量を少なくすると、図7から分かるように、酸化速度が落ち、スループットが低下するというデメリットがあるため、ガス流量を少なくすることは良い策ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願2009−138577
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、図6に示すような水素供給ノズル及び酸素供給ノズルを備えた熱処理炉を用いても、低温での酸化膜形成において、ウエハ面内の膜厚均一性が不十分であるといった課題があった。
本発明の目的は、低温での酸化膜形成において、ウエハ面内の膜厚均一性を向上させた基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明では、酸素含有ガスと水素含有ガスとを、ガス供給ノズル内で混合して加熱した後、反応管内へ供給し、低温においても基板面内の酸化膜厚均一性を向上させるようにした。
本発明の代表的な構成は、次のとおりである。
複数枚の基板を収容して処理する反応管と、
前記反応管内を加熱するヒータと、
前記反応管内で前記複数枚の基板を所定の間隔で積層し配列させて保持する基板保持具と、
前記反応管内の前記複数枚の基板が配列される基板配列領域に対応する領域に配置され、該領域の基板配列方向における複数箇所から前記反応管内に、酸素含有ガスと水素含有ガスとを混合させて供給するガス供給ノズルと、
前記反応管内を排気する排気口と、
前記反応管内の圧力が大気圧よりも低い所定の圧力となるように制御する圧力制御部と、を有することを特徴とする基板処理装置。
このとき、前記ガス供給ノズルの内部に、酸素含有ガスと水素含有ガスとを混合させるバッファエリアが設けられ、該バッファエリアの容積は、前記ガス供給ノズル内部の他のエリアの容積よりも大きくなるように構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
上記の基板処理装置によれば、酸素含有ガスと水素含有ガスとを、ガス供給ノズル内で混合して加熱した後、反応管内へ供給するので、低温においても基板面内の酸化膜厚均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る基板処理装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る基板処理装置の熱処理炉の垂直断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る基板処理装置のガス供給ノズルの拡大図である。
【図4】本発明の実施形態に係るガス供給ノズルから流出するガスの様子を示す図である。
【図5】参考例に係るガス供給ノズルから流出するガスの様子を示す図である。
【図6】参考例に係る基板処理装置の熱処理炉の垂直断面図である。
【図7】参考例に係るウエハの成膜速度を示す図である。
【図8】参考例に係るウエハの膜厚面内均一性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図2を参照して、本発明の実施形態における基板処理装置としてのバッチ式縦型半導体製造装置(酸化装置)を説明する。図2は、実施形態にかかる熱処理炉(酸化炉)の構成を例示する断面概略図である。図2には、ウエハの最大積載数が例えば120枚の場合の基板処理装置の熱処理炉5の装置構成例を示している。
【0013】
図2に示すとおり、本実施形態にかかる基板処理装置の熱処理炉5は、加熱源としての抵抗加熱ヒータ9を有している。ヒータ9は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることで垂直に据え付けられている。ヒータ9の内側には、ヒータ9と同心円状に、円筒形状の反応管10が配設されている。反応管10内には、基板を処理する処理室(反応室)4が形成され、基板保持具としてのボート3が搬入されるように構成されている。ボート3は、複数枚の基板としてのシリコンウエハ等のウエハ6を、略水平状態で隙間をもって鉛直方向に複数段に保持するように構成されている。以下の説明では、ボート3内の最上段のウエハ支持位置を#120とし、最下段のウエハ支持位置を#1と表す。また、ボート3内の最下段からn段目の支持位置に保持されるウエハ6をウエハ#nと表す。なお、本明細書では、処理対象である製品基板としての製品ウエハを便宜上、単にウエハ、または処理ウエハと呼ぶ。
【0014】
反応管10の上部は、密閉構造となっており、前記特許文献1の反応管に設けられていた、水素含有ガスや酸素含有ガスの供給機構は、設けられていない。
反応管10の下方は、ボート3を挿入するために開放されている。反応管10の開放部分は、シールキャップ13により密閉されるように構成されている。シールキャップ13上には、ボート3を下方から支持する断熱キャップ12が設けられている。断熱キャップ12は、シールキャップ13を貫通するように設けられた回転軸15を介して、回転機構14に取り付けられている。回転機構14は、回転軸15を介して、断熱キャップ12、ボート3を回転させることで、ボート3に支持されたウエハ6を回転させるように構成されている。
【0015】
反応管10の側方下部には、水素含有ガスとしての水素(H)ガスと、酸素含有ガスとしての酸素(O)ガスとを混合して、処理室4内の側方からウエハ6に対して供給するガス供給ノズル8が、反応管10の側壁を貫通するように接続されている。ガス供給ノズル8は、複数枚のウエハが配列されるウエハ配列領域に対応する領域、すなわち反応管10内においてウエハ配列領域と対向しウエハ配列領域を取り囲む円筒状の領域に配置されている。ガス供給ノズル8は、本実施形態では長さの異なる複数本(図2では4本)のL字型のノズルにより構成されており、それぞれが反応管10内において反応管10の側壁の内壁に沿って立ち上がっている。ガス供給ノズル8を構成する複数本のノズルは、ウエハ配列方向に対して長さがそれぞれ異なっていることで、HガスとOガスの混合ガスは、ウエハ配列領域に対応する領域の複数箇所(本実施形態では12箇所)から反応管10内に供給され、ウエハ配列方向(垂直方向)の反応室4内の混合ガスの濃度を調節することが可能となっている。なお、ガス供給ノズル8は、ウエハ6よりも、反応管10の側壁の内壁に近い側に内壁に沿って設けられている。
【0016】
ガス供給ノズル8を構成する複数本のノズルの先端の上面は、それぞれ閉塞しており、それぞれのノズル側面に少なくとも1つのガス噴出孔が設けられている。図2において、ガス供給ノズル8からウエハ6側に伸びる矢印が、各ガス噴出孔からのHガスとOガスの混合ガスの噴出方向を示しており、各矢印の根元部分が各ガス噴出孔を示している。すなわち、ガス噴出孔はウエハ側を向いており、処理室4内の側方から水平方向に(ウエハの主面に沿う方向に)、ウエハ6に向けてHガスとOガスの混合ガスを噴出するように構成されている。
本実施形態の場合、各ノズルには、それぞれ3つのガス噴出孔が設けられ、これら複数(本実施形態では12個)のガス噴出孔は、それぞれ等間隔に設けられている。ガス噴出孔をこのように設けることで、ウエハ配列方向においてきめ細かく制御されたHガスとOガスの混合ガスを供給することが可能となっている。
【0017】
図2に示すように、本実施形態の場合、ガス供給ノズル8は、最も長さの長いガス供給ノズル81を含め、4本のガス供給ノズル81、82、83、84より構成されている。図3に、例えばガス供給ノズル82の拡大図を模式的に示す。他のガス供給ノズル81、83、84も略同様の形状である。図3に示すように、ガス供給ノズル82は、複数のガス噴出孔82fを有するバッファエリア82gと、バッファエリア82g以外の運搬エリア82hとを有する。図3の例では、ガス噴出孔82fは、7箇所設けられている。他のガス供給ノズル81、83、84のそれぞれにも同数のガス噴出孔が設けられる場合、ガス噴出孔は合計28個、それぞれ等間隔に設けられることとなる。バッファエリア82gの容積は、ガス供給ノズル82内部の他のエリア82hの容積よりも大きいことが好ましい。
また、バッファエリア82gの基板配列方向における単位長さあたりの容積は、ガス供給ノズル82の他のエリアである運搬エリア82hの前記基板配列方向における単位長さあたりの容積よりも大きいことが好ましい。また、バッファエリア82gの内径は、運搬エリア82hの内径よりも大きいことが好ましい。また、バッファエリア82gは、運搬エリア82hよりも太いことが好ましい。また、バッファエリア82gは、バッファエリア82g内で酸素含有ガスと水素含有ガスとを反応させて、原子状酸素を含む酸化種を生成するように構成されることが好ましい。
【0018】
図4に模式的に示すように、本実施形態では、ボート3の最上部に対応するガス供給ノズル81、すなわち、最も長さの長いガス供給ノズル81のガス噴出孔の大きさ、つまり開口面積(孔径)を、最上部のガス噴出孔の大きさを最大にし、最下部のガス噴出孔の大きさを最小にし、最上部と最下部の間のガス噴出孔の大きさを、それらの中間の大きさとしている。また、他のノズル82、83、84のガス噴出孔の大きさは、すべて同じ大きさとしている。なお、図4の例では、ガス噴出孔は4つ設けられている。他のガス供給ノズル82、83、84のそれぞれにも同数のガス噴出孔が設けられる場合、ガス噴出孔は、合計16個、それぞれ等間隔に設けられることとなる。
図4においては、ガス供給ノズル81の複数のガス噴出孔のうち、最上部のガス噴出孔81aの大きさ(孔径)が最大であり、下方のガス噴出孔81b、81c、81dの大きさ(孔径)は、次第に小さくなっており、最下部のガス噴出孔81dの大きさが最小となっている。このため、図4に模式的に示すように、最上部のガス噴出孔81aからの混合ガスの噴出流量が最大となり、下方のガス噴出孔81b、81c、81dからの混合ガスの噴出流量は、次第に小さくなっており、最下部のガス噴出孔81dからの混合ガスの噴出流量が最小となっている。
【0019】
しかしながら、図4に模式的に示すように、ウエハ6間に流入する混合ガスの流量は、均等となっている。(図4では、ボート最上部にはダミーウエハが搭載されている。)ウエハ6間に流入する混合ガスの流量が均等となる理由は、上部のガス噴出孔から噴出した混合ガスは、その一部が、ボート上部の空間にも拡散するためである。この傾向は、上部にあるガス噴出孔、すなわち、ボート上部の空間に近いガス噴出孔ほど、強くなる。この現象は、水素ガスのような軽く拡散しやすいガスで特に強く生じると考えられ、アンモニア(NH)ガスやメタン(CH)ガス等では、あまり強くは認められないものである。
したがって、ボート3の最上部に対応するガス供給ノズル81のガス噴出孔の大きさ(孔径)を、最上部のガス噴出孔の大きさを最大にするように構成しない場合(後述する図5の場合)は、上部のガス噴出孔から噴出した混合ガスの一部が、ボート上部の空間に拡散し、その結果、ウエハ6間に流入する混合ガスの流量が上方の位置ほど少なくなり、膜厚の面内均一性が悪化する。
【0020】
図5は、ボート3の最上部に対応するガス供給ノズル81、すなわち、最も長さの長いガス供給ノズル81の複数のガス噴出孔の大きさ(孔径)を、すべて同じ大きさにした場合の模式図である。この場合、複数のガス噴出孔85a、85b、85c、85dからの混合ガスの噴出流量は、均等になる。しかし、図5に模式的に示すように、ウエハ6間に流入する混合ガスの流量は、上方の位置ほど、少なくなる。したがって、膜厚の面内均一性が悪化することになる。
ガス供給ノズル81、82、83、84のガス噴出孔の孔径は、各ガス供給ノズルにそれぞれ5つのガス噴出孔が設けられる場合、例えば、ガス供給ノズル81のガス噴出孔の孔径を、上から順に、Φ0.8mm、Φ0.75mm、Φ0.7mm、Φ0.65mm、Φ0.6mmとし、ガス供給ノズル82、83、84のガス噴出孔の孔径を、すべて一定値のΦ0.7mmとすることができる。なお、この場合、ガス噴出孔は、合計20個、それぞれ等間隔に設けられることとなる。
【0021】
図2に示すように、ガス供給ノズル8には、水素ガス供給ラインとしての水素供給管80bと、酸素ガス供給ラインとしての酸素供給管80aとが、並列に接続されている。図2の例では、水素供給管80bに、酸素供給管80aが合流するように接続されている。
水素供給管80bは、複数本(本実施形態では4本)の配管により構成されており、複数本のガス供給ノズル8のそれぞれに接続されている。水素供給管80bには、上流側から順に、水素ガス供給源(図示せず)、開閉バルブ96b、流量制御手段(流量制御器)としてのマスフローコントローラ(MFC)95b、及び開閉バルブ94bが設けられている。なお、開閉バルブ96b、マスフローコントローラ95b、及び開閉バルブ94bは、水素供給管80bを構成する複数本の配管のそれぞれに設けられており、ガス供給ノズル8を構成する複数本のノズル毎に独立してHガスの流量を制御できるようになっている。主に、水素供給管80b、開閉バルブ96b、開閉バルブ94b、マスフローコントローラ95bにより、水素含有ガス供給系(還元性ガス供給系)としての水素ガス供給系が構成される。
【0022】
酸素供給管80aは、複数本(本実施形態では4本)の配管により構成されており、複数本のガス供給ノズル8のそれぞれに接続されている。酸素供給管80aには、上流側から順に、酸素ガス供給源(図示せず)、開閉バルブ96a、流量制御手段(流量制御器)としてのマスフローコントローラ(MFC)95a、及び開閉バルブ94aが設けられている。なお、開閉バルブ96a、マスフローコントローラ95a、及び開閉バルブ94aは、酸素供給管80aを構成する複数本の配管のそれぞれに設けられており、ガス供給ノズル8を構成する複数本のノズル毎に独立してOガスの流量を制御できるようになっている。主に、酸素供給管80a、開閉バルブ96a、開閉バルブ94a、マスフローコントローラ95aにより、酸素含有ガス供給系(酸化性ガス供給系)としての酸素ガス供給系が構成される。
【0023】
なお、酸素ガス供給系、水素ガス供給系には、それぞれ、不活性ガス供給系としての窒素ガス供給系(図示せず)が接続されており、窒素ガス供給系は、不活性ガスとしての窒素(N)ガスを、酸素供給管80a、水素供給管80bを介して処理室4内に供給できるように構成されている。窒素ガス供給系は、主に窒素供給管(図示せず)、開閉バルブ(図示せず)、マスフローコントローラ(図示せず)により構成される。
【0024】
反応管10の側方下部には、処理室内を排気するガス排気口11が設けられている。ガス排気口11には、ガス排気ラインとしてのガス排気管50が接続されている。ガス排気管50には、上流側から順に、圧力調整手段(圧力制御器)としてのAPC(Auto Pressure Controller)51と、排気手段(排気装置)としての真空ポンプ52とが設けられている。主に、ガス排気口11、ガス排気管50、APC51、真空ポンプ52により排気系が構成される。
【0025】
抵抗加熱ヒータ9、マスフローコントローラ95a,95b、開閉バルブ94a,94b,96a,96b、APC51、真空ポンプ52、及び回転機構14などの基板処理装置の各部は、制御手段(制御部)としてのコントローラ100に接続されており、コントローラ100は基板処理装置の各部の動作を制御するように構成されている。コントローラ100は、CPU、メモリ、HDD等の記憶装置、FPD等の表示装置、キーボードやマウス等の入力装置を備えたコンピュータとして構成されている。
【0026】
次に、上述の酸化装置の酸化炉を使用して、半導体装置の製造工程の1工程として、基板としてのウエハに酸化処理を施す方法について説明する。尚、以下の説明において、酸化装置を構成する各部の動作はコントローラ100により制御される。
基板移載機2により、1バッチ分(例えば120枚)のウエハ6を、ボート3に移載(ウエハチャージ)した後、ヒータ9により加熱状態を維持された熱処理炉5の処理室4内に、複数枚のウエハ6を装填したボート3を搬入(ボートロード)し、シールキャップ13により反応管10内を密閉する。次に、真空ポンプ52により反応管10内を真空引きし、APC51により反応管10内圧力(炉内圧力)が大気圧よりも低い所定の処理圧力となるよう制御する。回転機構14により、ボート3が所定の回転速度で回転するようにする。また、処理室4内温度(炉内温度)を昇温させ、炉内温度が所定の処理温度となるよう制御する。
【0027】
その後、ガス供給ノズル8から、混合されたOガスとHガスを、処理室4内に供給する。すなわち、開閉バルブ94a,96aを開くことで、マスフローコントローラ95aで流量制御されたOガスを、酸素供給管80aを介してガス供給ノズル8内に供給する。また、開閉バルブ94b,96bを開くことで、マスフローコントローラ95bで流量制御されたHガスを、水素供給管80bを介してガス供給ノズル8内に供給する。ガス供給ノズル8内に供給されたOガスとHガスは、ガス供給ノズル8内、特にバッファエリア内で混合され、また、ヒータ9の熱により加熱されて、OガスとHガスが予備反応を起こし、酸化種である原子状酸素が生成された状態になる。その後、前記バッファエリア内で混合され加熱されたOガスとHガスは、ウエハ配列領域に対応する領域の複数箇所から、処理室4内に供給される。したがって、ガス噴出孔からガスが出たときに、酸化種である原子状酸素が、ある程度生成されている。このとき、ガス供給ノズル8の上部のガス噴出孔から噴出するOガスとHガスの混合ガスの流量を多くするのが好ましい。このようにすると、ウエハ6間に流入する混合ガスの流量を均等にすることができる。
このように、OガスとHガスの混合ガスは、処理室4内におけるウエハ配列領域に対応する領域の複数箇所から供給される。処理室4内に供給されたOガスとHガスの混合ガスは、処理室4内を流下してウエハ配列領域の一端(上端)側とは反対側の他端(下端)側に設けられたガス排気口11より排気される。
【0028】
このとき、OガスとHガスとがヒータ9により加熱された減圧の処理室4内で反応することによりH,O,OH等の中間生成物が生じる。これら中間生成物のうち、酸化膜形成に直接寄与する代表的な中間生成物は原子状酸素Oであり、H,OH等の中間生成物は、酸化膜成長に関する表面反応には直接関与しない。すなわち、OガスとHガスとが反応することにより生じた中間生成物のうち、原子状酸素Oが反応種(酸化種)として作用することでウエハ6に酸化処理が施され、ウエハ6表面に酸化膜としてのシリコン酸化膜(SiO膜)が形成される。
【0029】
このときの処理条件(酸化処理条件)例としては、
処理温度(処理室内温度):300〜750℃、好ましくは、500〜700℃
処理圧力(処理室内圧力):1〜1000Pa、
酸素ガス供給流量:2000〜5000sccm、
水素ガス供給流量:200〜2000sccm、
であり、それぞれの処理条件を、それぞれの範囲内のある値で一定に維持することでウエハ6に酸化処理がなされる。酸素ガスと水素ガスの供給流量比(酸素ガス流量/水素ガス流量)は、0.6以上20以下であり、好ましくは0.65〜10である。
【0030】
ウエハ6の酸化処理が終了すると、開閉バルブ94a,94b,96a,96bを閉じ、処理室4内へのOガス、Hガスの供給を停止して、反応管10内に対し真空引きや不活性ガスによるパージ等を行うことにより、反応管10内の残留ガスを除去する。その後、炉内圧力を大気圧に戻し、炉内温度を所定の温度まで降温した後、処理済ウエハ6を支持したボート3を処理室4内から搬出(ボートアンロード)し、ボート6に支持された全ての処理済ウエハ6が冷えるまで、ボート3を所定位置で待機させる。待機させたボート3に保持された処理済ウエハ6が所定温度まで冷却されると、基板移載機2により処理済ウエハ6を回収(ウエハディスチャージ)する。このようにして、ウエハ6に対して酸化処理を施す一連の処理が終了する。
【0031】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
また、上述した実施形態では、ボートの上部に対応するガス供給ノズル8のガス噴出孔の開口面積を変えるようにしたが、ボートの上部に限らず、センター領域やボトム領域においても、ボート上のウエハ積層ピッチが変化するところなど、ウエハの周囲の空間領域が他の領域と比べて変化している箇所において、ガス供給ノズル8のガス噴出孔の開口面積を変えるようにしてもよい。
【0032】
上述したように、本発明の一態様によれば、第1の発明として、
複数枚の基板を収容して処理する反応管と、
前記反応管内を加熱するヒータと、
前記反応管内で前記複数枚の基板を所定の間隔で積層し配列させて保持する基板保持具と、
前記反応管内の前記複数枚の基板が配列される基板配列領域に対応する領域に配置され、該領域の基板配列方向における複数箇所から前記反応管内に、酸素含有ガスと水素含有ガスとを混合させて供給するガス供給ノズルと、
前記反応管内を排気する排気口と、
前記反応管内の圧力が大気圧よりも低い所定の圧力となるように制御する圧力制御部と、を有することを特徴とする基板処理装置が提供される。
このように、ガス供給ノズル内で酸素含有ガスと水素含有ガスとを混合させて供給する場合は、ガス噴出孔からガスが出てウエハ表面上をガスが水平方向に拡散する際、既にある程度、予備反応(酸化種である原子状酸素が生成されること)が進んでいるので、水素含有ガスと酸素含有ガスとを独立に供給する場合に比べて、ウエハ周辺部における、酸化種である原子状酸素の濃度を高くすることができ、また、成膜速度も向上する。
【0033】
好ましくは第2の発明として、前記第1の発明の基板処理装置であって、
前記ガス供給ノズルの内部に、酸素含有ガスと水素含有ガスとを混合させるバッファエリアが設けられ、該バッファエリアの容積は、前記ガス供給ノズル内部の他のエリアの容積よりも大きいことを特徴とする基板処理装置が提供される。
また好ましくは、第2の発明において、前記バッファエリアの前記基板配列方向における単位長さあたりの容積が、前記ノズルの内部の他のエリアの前記基板配列方向における単位長さあたりの容積よりも大きい基板処理装置が提供される。
また好ましくは、第2の発明において、前記ノズルの前記バッファエリアに対応する部分の内径は、前記ノズルの前記他のエリアに対応する部分の内径よりも大きい基板処理装置が提供される。
また好ましくは、第2の発明において、前記ノズルの前記バッファエリアに対応する部分は、前記ノズルの前記他のエリアに対応する部分よりも太い基板処理装置が提供される。
以上のようにすると、酸素含有ガスと水素含有ガスを、より確実に混合し加熱することができる。
【0034】
また好ましくは、第2の発明において、前記バッファエリアは、前記バッファエリア内で酸素含有ガスと水素含有ガスとを反応させて、原子状酸素を含む酸化種を生成するように構成される基板処理装置が提供される。
【0035】
また好ましくは、第1の発明又は第2の発明において、前記ガス供給ノズルは複数本設けられる基板処理装置が提供される。
また好ましくは、前記ガス供給ノズルは複数本設けられ、それぞれの長さが異なる基板処理装置が提供される。
このようにすると、複数の基板間における膜厚均一性を向上することができる。
【0036】
また好ましくは、第1の発明又は第2の発明において、前記反応管内の温度が300〜750℃の温度となるように制御する温度制御部をさらに有する基板処理装置が提供される。
また好ましくは、第1の発明又は第2の発明において、前記反応管内の温度が500〜700℃の温度となるように制御する温度制御部をさらに有する基板処理装置が提供される。
また好ましくは、第1の発明又は第2の発明において、前記圧力制御部は、前記反応管内の圧力が1〜1000Paの圧力となるように制御するよう構成される基板処理装置が提供される。
【符号の説明】
【0037】
1…カセットストッカ、2…ウエハ移載機、3…ボート、4…処理室、5…熱処理炉、6…ウエハ、7…ボートエレベータ、8…ガス供給ノズル、9…ヒータ、10…反応管、11…ガス排気口、12…断熱キャップ、13…シールキャップ、14…回転機構、50…ガス排気管、51…APC、52…真空ポンプ、80a…酸素供給管、80b…水素供給管、82g…バッファエリア、82h…運搬エリア、94a…開閉バルブ、95a…MFC、96a…開閉バルブ、94b…開閉バルブ、95b…MFC、96b…開閉バルブ、100…コントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の基板を収容して処理する反応管と、
前記反応管内を加熱するヒータと、
前記反応管内で前記複数枚の基板を所定の間隔で積層し配列させて保持する基板保持具と、
前記反応管内の前記複数枚の基板が配列される基板配列領域に対応する領域に配置され、該領域の基板配列方向における複数箇所から前記反応管内に、酸素含有ガスと水素含有ガスとを混合させて供給するガス供給ノズルと、
前記反応管内を排気する排気口と、
前記反応管内の圧力が大気圧よりも低い所定の圧力となるように制御する圧力制御部と、を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記ガス供給ノズルの内部に、酸素含有ガスと水素含有ガスとを混合させるバッファエリアが設けられ、該バッファエリアの容積は、前記ガス供給ノズル内部の他のエリアの容積よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−187884(P2011−187884A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54441(P2010−54441)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】