説明

基板周縁部の不要物除去装置及び半導体製造装置並びに基板周縁部の不要物除去方法

【課題】ウェハープロセスの過程でウェハーの周縁部に付着した不要物を効率的に除去する。
【解決手段】チャンバ30内の基板ステージ31上にウェハー20を載置する。配管38の供給口38aからヘリウムガスをチャンバ30内に導入し、プラズマ発生手段によりヘリウムガスのプラズマP1を生成する。続いて処理ガス供給用のノズル33から塩素ガスを導入して塩素ガスのプラズマP2を生成する。排気装置による排気速度を調節して、ウェハー20の周縁部で塩素ガスの濃度を高く制御し、この塩素ガスのプラズマP2でウェハー20の周縁部を包み込み、そこに付着した不要物をエッチング除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェハーなどの半導体基板や液晶基板などの周縁部に付着した不要物をドライエッチングにより効率的に除去する方法及び装置、並びに半導体製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高密度に集積化された半導体メモリや半導体デバイスはウェハープロセス技術により製造される。ウェハープロセス技術は、ディスク状の半導体基板(ウェハー)に不純物を打ち込むイオン注入工程や、半導体基板に所定のパターンの薄膜を形成する成膜工程など様々な工程が含まれる。例えば成膜工程では、フォトリソグラフィ技術を併用してウェハーの表面に所定パターンで薄膜が形成される。この工程中に行われるスパッタリングやCVDによる薄膜形成では、事前にウェハーの表面に所定パターンの開口をもつマスキング層が形成されその全体を覆うように薄膜が積層されるが、マスキング層が形成しにくいウェハーの周縁部にも薄膜やその断片が付着することが多い。
【0003】
ウェハーの周縁部はデバイスなどが形成される本来の基板面の外側の領域であるから最終的にはダイシング工程で除去されるが、種々の工程中に周縁部に被着した薄膜をそのまま残しておくとウェハーのハンドリングや後工程で剥がれることがある。特に、シリコンウェハーなどは衝撃を受けたときに割れやすいため、外周縁を面取りするベベリング処理を行うのが通常である。このベベリング処理によって面取りされた周縁部には薄膜も不均一に付着しやすく、また剥がれやすいものとなっている。こうした薄膜やその断片がウェハーの周縁部から不用意に剥がれて飛散し、あるいは基板面に付着したりすると、プロセスラインの清浄度劣化や設備汚染の原因となり歩留りを低下させてしまう。
【0004】
こうした弊害を防ぐために、従来から成膜工程の後処理としてウェハーの周縁部に付着した薄膜の残片などの不要物の除去が行われている。例えば特許文献1記載のように、ウェハーを回転しながらその周縁部にエッチング処理液を供給して不要な被着物を除去し、あるいは特許文献2記載のように、周縁部に研磨用のフィルムを押し当てて不要物を研磨除去するなどの手法が知られている。
【特許文献1】特開2006−237063号公報
【特許文献2】特開2003−163188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で知られる手法ではエッチング処理液を必要とする湿式処理であるため、設備コストやランニングコストがかかるだけでなく、ウェハーの限られた領域だけに処理液を供給することが困難である。さらに、不要物を除去した後には処理液を完全になくすために洗浄や乾燥処理も不可欠となり、工程数が増えて効率の点でも問題がある。また、特許文献2の手法はドライ処理ではあるが、特許文献1の手法と同様、ウェハーを回転させることが必要で、さらに研磨フィルムの送り機構や研磨フィルムをウェハーの所要部分に押し当てる機構なども不可欠で、装置自体の製造コストが高くなる。また、研磨で除去された細片がウェハーの別の部位に再付着しやすいという欠点もある。
【0006】
本発明は上記背景を考慮してなされたもので、ウェハーのベベル領域などのような、基板の周縁部に付着した不要物を効率的に除去することができるようにした基板周縁部の不要物除去方法及び装置、並びに半導体製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するにあたり、基板の周縁部に処理液の供給やツールの接触を要せずに、しかも基板を回転させることなく不要物を除去するようにしたもので、本発明装置は、基板を収容するチャンバと、前記チャンバ内に処理ガスを供給するとともに、前記チャンバ内における前記処理ガスの濃度が前記基板の周縁部で高くなるように制御するガス濃度制御手段と、前記処理ガスをプラズマ化して前記チャンバ内にプラズマを発生させるプラズマ発生手段とを備え、前記基板の周縁部に付着した不要物を前記プラズマによりエッチング除去することを特徴とする。
【0008】
チャンバ内における処理ガスの濃度が基板周縁部で高くなるように制御する手段の一つとして、基板の周縁部から中心部に向けて処理ガスを供給する処理ガス供給手段と、基板の中心部から周縁部に向けて処理ガスを排気する排気手段とを用いることができる。また、基板の一方の面に向けて処理ガスを供給し、前記一方の面から他方の面に向けて処理ガスを排気することもまた、処理ガスの濃度を基板周縁部で高くする上で効果的である。
【0009】
本発明のプラズマ発生手段には誘導結合型のものが用いられ、チャンバ内あるいはチャンバ外に設けたアンテナに高周波電流を供給してチャンバ内に処理ガスのプラズマを発生させることができる。チャンバ内に処理ガスを供給した後、プラズマ発生手段により処理ガスのプラズマを直接的に発生させることも可能であるが、処理ガスの供給に先立って基板を全体的に覆うように不活性ガスを供給し、不活性ガスを媒体にして事前にプラズマを発生させ、その後に基板の周縁部で濃度が高くなるように処理ガスを導入して処理ガスのプラズマを発生させることも可能である。
【0010】
上記のように不活性ガスを併用して処理ガスのプラズマを発生させる手法では、不活性ガスの存在により処理ガスが基板の中心部に到達しにくくなり、基板の周縁部でその濃度を高くする上で効果的であるが、処理を継続してゆく間には処理ガスの濃度が基板の中心部側でも徐々に高くなってゆき、基板の中心部側にエッチング領域が広がる傾向をもつ。これを防ぐには、不活性ガス及び処理ガスの導入及びプラズマの発生を断続させてエッチングを中断し、中断の間に排気だけを行って基板の中心部側に拡散した処理ガスを十分に排気しておくことが有効な手段となり、これによれば、断続的に行うエッチングの処理回数に応じてエッチングの範囲を加減できるという機能も同時に達成される。
【0011】
本発明は、特に一般的なシリコンウェハーのように、ディスク形状をもつ基板を対象とする装置に効果的に用いることができる。この場合、円筒状の周壁をもつチャンバが用いられ、チャンバの中央部には基板載置用の基板ステージが設けられる。そして、処理ガスはチャンバの周壁から基板の周縁部に向かい、基板の中心に関して回転対称となる少なくとも3箇所から導入される。また、基板ステージをチャンバ内で昇降自在とし、処理ガスのプラズマと基板との相対位置を調節できるようにしておくことが実用的である。
【0012】
さらに、基板周縁部のエッチングの進行度合をリアルタイムで監視できるように、本発明装置にはLIF(Laser Induced Fluorescence:レーザー誘起蛍光)法によるエッチング監視装置を組み合わせることも可能である。また本発明装置は、基板上に所望の薄膜を形成する薄膜作成装置に組み合わせて利用することもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、成膜工程などによって基板の周縁部に付着した不要物をチャンバ内のプラズマの作用によって除去することができるから、基板を回転させながらその周縁部に処理液や研磨剤を供給し、あるいは研磨フィルムを押し当てて機械的に研磨除去する手法と比較して、簡便かつ効率的に作業を行うことができる。また、本発明装置の処理対象となる基板としては、シリコンウェハーなどのようなディスク状をした基板だけでなく、チャンバ内における処理ガスの分布濃度をエッチング対象物の形状に合わせて制御すれば、液晶パネル用などの矩形状をした基板であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
半導体基板となるシリコン製のウェハーに、その厚み方向に延びたダマシン配線を形成する際に用いられる金属膜作成用の半導体製造装置の内部構造の概略を図1に平面的に示す。ワークとなるウェハーには、ダマシン配線の形成パターンに対応した一定深さの溝が形成され、密閉構造をもったカセット容器2に例えば25枚ずつ収納されている。カセット容器2はそれぞれ搬送室3に隣接したカセット台にセットされる。外気から空間的に遮断された搬送室3には、カセット容器2からウェハーを一枚ずつ取り出して搬送室3内でその長手方向に搬送する搬送機構5が設けられている。搬送機構5でカセット容器3から取り出されたウェハーは、搬送室3内の一端側に設けられた回転ステージ6にセットされ、以後に行われる処理に適した回転姿勢となるように調節された後、搬送機構5によってチャックされロード室7aに搬送される。
【0015】
ロード室7aに搬入されたウェハーは、共通搬送室9内に設けられた多関節型のロボットアームを用いた搬送機構10により成膜処理モジュール12、ウェハー周縁部のエッチング処理モジュール14の順に搬送される。なお、搬送室3とロード室7a、さらにはロード室7aと共通搬送室9との連通部には互いに隣接する両室間を気密に遮断するゲートバルブが設けられ、ウェハーの搬送時にそれぞれの室内の真空度が極端に劣化することがないようにしてある。
【0016】
また、成膜処理モジュール12、ウェハー周縁部のエッチング処理モジュール14と共通搬送室9との連通部にはゲートバルブが設けられ、ウェハーの搬入・搬出時に各チャンバ内のガス圧環境が大きく変動しないようにしてある。なお、これらのモジュール12,14は装置の高さ方向で位置が異なるが、搬送機構10は予め決められたプログラムにしたがって自動的に昇降してウェハーの搬送を行う。
【0017】
成膜処理モジュール12は、例えば、薄膜原料を高温中で反応させて基板上に成膜するCVD装置が挙げられる。このようなCVD装置としては、例えば、有機金属を用いて成膜を行う有機金属化学気相蒸着法 (Metal Organic Chemical Vapor Deposition、MOCVD)が挙げられる。なお、成膜処理モジュール12としては、特許第3692326号公報で知られるような薄膜作製装置を採用することも可能である。この薄膜作製装置では、チャンバ内に被エッチング材料として銅板が設けられ、チャンバ内に生じた塩素ガスのプラズマによるエッチング作用によって銅板から前駆体(CuCl)を生成させ、この前駆体を還元反応により銅イオンにしてウェハーの表面に堆積させる。これによりウェハーの表面全体に銅の薄膜が積層され、ダマシン配線パターンに応じて予め形成された溝を埋めるように銅が堆積される。この成膜反応は次式で表されることが知られている。
2Cu+Cl → 2CuCl → 2Cu↓+Cl
【0018】
成膜処理後のウェハー20は、概念的に図12に示すように、基板20の表面とそれに連なるベベル領域22に全体的に銅の薄膜が堆積している。ダマシン配線部21は、ウェハー20の表面に形成された溝内の部分だけであるため、表面全体を覆っている薄膜とベベル領域22に付着した薄膜とは不要物23,24となる。ウェハー表面の不要物23は、CMP装置(Chemical Mechanical Polishing)で効率的に除去することができる。
【0019】
CMP装置は、ウェハー20の表面に積層された銅の薄膜をスラリーを併用して化学・機械的に平面的に研磨除去する装置で、ウェハー20の表面については溝内に堆積した銅だけをダマシン配線部21として残すことができるが、ベベル領域22は平坦な表面から傾斜しているため、ポリシング用のパッドを適切に押し当てることが困難で、ベベル領域22を含むウェハー20の周縁部に残存する不要物24については効果的に除去することができない。なお、上記のようなウェハープロセス技術が適用されるウェハー20に対しては、ベベル領域22と平坦な表面との境界から内側に例えば1〜5mm程度のマージンdが決められ、このマージンdに含まれる領域は基板面として用いないようにしている。
【0020】
図2に示すように成膜処理されたウェハー20は、搬送機構10により共通搬送室9を経て、ウェハー周縁部のエッチング処理モジュール14に搬送される。このエッチング処理モジュール14は、CMP装置では除去できないウェハー周縁部の不要物24を除去するためのもので、ここでまずウェハー20の周縁部に付着した不要物24の除去処理が行われる。処理後のウェハーは搬送機構10により共通搬送室9、ロード室7bを経て、搬送室3内の搬送機構5によって所定のカセット容器2に戻される。カセット容器2は、さらにCMP装置(Chemical Mechanical Polishing)に搬送される。CMP装置では、カセット容器2からウェハー20が順次に取り出され、ウェハー20の表面に残存した不要物23の除去処理が行われる。こうしてダマシン配線部21だけが形成されたウェハー20が得られる。なお、様々なプロセスモジュール間でウェハーを自動搬送する技術は、例えば特開2006−165174号公報で公知である。
【0021】
エッチング処理モジュール14は概念的に図2及び図3のように構成される。チャンバ30はそれぞれ絶縁性の円筒状の周壁30aと、周壁30aの上下端部を気密に塞ぐ隔壁となるトッププレート30b及びベースプレート30cとからなる。なお、チャンバ30内にワークとなるウェハー20を共通搬送室9から搬入し、搬出するための連通部及びゲートバルブについては図示を省略した。
【0022】
チャンバ30内には、周壁30aの中央に位置するように基板ステージ31が設けられ、その上面に共通搬送室9から搬入されたウェハー20が表面を上にして載置される。このとき、ロボットアームによってウェハー20の中心が周壁30aの中心と一致するように位置決めされる。基板ステージ31は、ベローズ36aを含む昇降装置36によって上下方向に移動自在である。昇降装置36により基板ステージ31を移動させることによって、チャンバ30内に発生されるプラズマに対して適切な位置にウェハー20を移動させることができる。
【0023】
ベースプレート30cの中央部には、排気装置に接続された排気口32が設けられ、排気バルブの調節により単位時間あたりの排気量が調節できるようになっている。なお、図示の例では基板ステージ31の外径がウェハー20の外径よりも大きくしてあるが、ウェハー20の外径よりも基板ステージ31の外径を小さくしてウェハー20の周縁部を基板ステージ31から突出させておけば、その突出部分を全体的にエッチング用のプラズマに曝すことができるため、部分的にはウェハー20の裏面側も同時にエッチング処理することが可能となる。
【0024】
図3に示すように、基板ステージ31の中心に関して回転対称となる8箇所にエッチング用の処理ガスをチャンバ31内に導入するノズル33が設けられている。これらのノズル33は、基板ステージ31の上面から同じ高さ位置でチャンバ30内に突出し、周壁30aの外壁に固定された共通配管37に接続されている。共通配管37にボンベなどの供給源から処理ガスを供給することにより、チャンバ30内にはノズル33を通して処理ガスが導入される。チャンバ30内に供給される処理ガスの流量は、共通配管37と処理ガスの供給源との間に設けられたバルブの調節により適宜に調節することが可能である。なお、CuやTa等の金属膜のエッチングには例えば塩素ガスが好適であり、本実施形態ではこの塩素ガスと、ヘリウムガスやアルゴンガス等の不活性ガスとの混合ガスが用いられ、その混合比は適宜に調節可能である。
【0025】
トッププレート30bにはコイルアンテナ35が設けられている。このコイルアンテナ35は例えば図示のように3ターンのコイル形状を有し、ウェハー20の上方に全体的に均一なプラズマを発生させるためのプラズマ発生手段を構成する。チャンバ30内のガス圧を適切な範囲に調節し、コイルアンテナ35に例えば13.5MHz程度の高周波電流を供給すると、チャンバ30内には導入された処理ガスのプラズマが発生する。なお、コイルアンテナ35のターン数はチャンバ30内に発生させるプラズマのプロファイルに応じて変えることができ、必ずしも3ターンのものに限られない。
【0026】
処理ガスを導入するノズル33の上方、かつ基板ステージ31の中央部に対面するように、チャンバ30内に不活性ガスを供給するリング状の配管38が設けられている。配管38には、基板ステージ31に向かって不活性ガスを供給する供給口38aが開けられ、供給源からの不活性ガスをチャンバ30内に導入することができる。不活性ガスの供給源と配管38との間にはバルブが設けられ、処理ガスと同様、チャンバ30内に導入する不活性ガスの流量は調節できるようにしてある。
【0027】
処理ガスと不活性ガスとの供給回路系の概略を図4に示す。処理ガスの供給源40とチャンバ30との間にバルブ41が設けられ、同様に不活性ガスの供給源42とチャンバ30との間にバルブ43が設けられている。これらのバルブ41,43には応答性に優れたものが用いられそれぞれチャンバ30内へのガスの流量を調節する。排気口32を通してチャンバ30から処理ガス及び不活性ガスを排気する排気手段として排気装置44が設けられ、この排気装置44とチャンバ30との間に設けられた排気バルブ45は、単位時間あたりの排気量を調節する。
【0028】
チャンバ30内あるいは排気経路の適宜の位置には、例えば電離真空計などの真空計46が設けられ、チャンバ30内のガス圧を測定し、測定されたガス圧に比例した電気信号をコントローラ48に入力する。コントローラ48は、真空計46からの電気信号のほか、予め設定された設定入力値や、適宜のタイミングで入力される外部信号に応じ、バルブ41,43及び排気バルブ45に制御信号を送る。例えば、チャンバ30内のガス圧が初期設定値に対して増減していることが真空計46で検出された場合には、排気バルブ45の開閉を制御してチャンバ30内のガス圧が初期設定値になるようにフィードバック制御する。
【0029】
上記構成によるエッチング処理モジュール14により、ウェハー20の周縁部に不要物として付着している銅の薄膜をエッチング処理する場合の作用について、図5〜図7を参照して説明する。なお、ここではエッチング用の処理ガスとして塩素ガスを用い、不活性ガスとしてヘリウムガスを用いる。エッチング対象となるウェハー20を基板ステージ31の所定位置に載置した後、チャンバ30内を初期設定ガス圧k0まで排気する。初期設定ガス圧k0は、チャンバ30内に不要なガスが残らないように、例えば10−5Torrオーダーの高真空に設定される。チャンバ30内が初期設定ガス圧k0に達した後、コントローラ48にエッチング処理開始の外部操作信号が入力されると、コントローラ48からの制御信号を受けてバルブ41が開き調節される。バルブ41の開度は予めコントローラ48に設定した設定流量n1に対応して調節される。なお、チャンバ30内のガス圧が初期設定ガス圧k0に達したことが真空計46で検出されたときに自動的にバルブ41に制御信号を入力することもできる。
【0030】
ヘリウムガス(不活性ガス)を導入するときのチャンバ30内の設定ガス圧k1は予めコントローラ48に設定されており、コントローラ48はこの設定ガス圧k1となるように排気バルブ45の開度調節を行う。なお、設定ガス圧k1は500mtorr程度である。ヘリウムガスの導入を開始してからチャンバ30内のガス圧が設定ガス圧k1に達するまでの時間はほぼ一定しているから、適度なマージンを見込んだ例えば30秒程度の時間t1(図6参照)の経過後、コントローラ48からの信号を受けてコイルアンテナ35に高周波電流が供給される(電力2.5kW〜3.5kW程度)。なお、時間t1の計時に代えて、真空計46の測定ガス圧が設定ガス圧k1に達したことをもってコイルアンテナ35に電流を流してもよい。
【0031】
コイルアンテナ35に高周波電流が流されることによって、チャンバ30内にはヘリウムガスのプラズマが生成される。ヘリウムガスは、図2に示すようにウェハー20の上方からウェハー20の中央部に向かって導入されるから、図7に破線で示すように、チャンバ30内ではウェハー20を全体的に覆う濃度分布となっている。したがって、図8に示すようにヘリウムガスのプラズマP1はウェハー20の表面を全体的に覆うプロファイルとなる。なお、ヘリウムガスのプラズマP1は、銅などの金属に対してほとんどエッチング作用を及ぼすことはない。プラズマP1の発生後、時間t2が経過した時点でコントローラ48はバルブ43に制御信号を送りバルブ43の開度調節を行う。これにより予め設定された流量n2で塩素ガス(処理ガス)がチャンバ30内に導入される。なお、排気バルブ45は真空計46からの信号を監視しており、チャンバ30内のガス圧は設定ガス圧k1に保たれる。
【0032】
塩素ガスは、8箇所のノズル33により、ヘリウムガスよりもウェハー20の表面に近い位置からウェハー20の中心部に向かって導入されるが、ウェハー20の中央部はすでにヘリウムガスでリッチであること、また排気口32が基板ステージ31の下方に設けられ、基板ステージ31の外周から下向きに伸びたスカート部31aによって、排気経路が基板ステージ31の外周から下向きに制限されていることから、ノズル33からウェハー20の表面に向かいしかも周縁部から中央部に向けて供給された塩素ガスは、ウェハー20の周縁部には到達するが、中央部に達する前にウェハー20の表面上では中央部から周縁部へと流れ、そしてウェハー20の表面側から裏面側へ向かって排気される。したがって図7に実線で示すように、塩素ガスはウェハー20の周縁部で濃度が高く、ウェハー20の中心部では濃度が低い状態となる。このように、基板ステージ31の上面に対してノズル33を配置するとともに、基板ステージ31の上面よりも下側に排気口32を配置した構造、さらには基板ステージ31の外周縁から周壁30aの内壁とほぼとなるようにスカート部31を延設した構造は、塩素ガスの濃度をウェハー20の周縁部で高くするガス濃度制御手段の一部にもなっている。
【0033】
また、塩素ガスが導入された時点ではすでにヘリウムガスのプラズマP1が安定的に生成しているため、ウェハー20の周縁部に塩素ガスが高濃度で局在化している状態下ではヘリウムガスのプラズマP1で塩素ガスが活性化され、図8に示すように、ウェハー20の周縁部を取り囲むようにドーナツ状の塩素ガスのプラズマP2が局所的に生成される。こうしてウェハー20の周縁部がプラズマP2に曝されると、プラズマP2で活性化された塩素ガスのエッチング作用によりベベル領域22を含むウェハー20の周縁部に付着した不要物24(銅の薄膜)は前駆体(CuCl)の形になって除去され、塩素ガス及びヘリウムガスとともに排気口32を通してチャンバ30外に排気される。そして、塩素ガスのプラズマP2がウェハー20の周縁部に局在化している間はウェハー20の中心部に形成されたダマシン配線部21にはほとんどエッチング作用が及ぶことはない。
【0034】
このエッチング処理が行われている間、ノズル33からは連続的に塩素ガスが導入されていることから、塩素ガスの濃度はウェハー20の表面全体を覆うように徐々に均一化する傾向を示す。したがって、エッチング処理の時間が長くなるとウェハー20の中央部にも塩素ガスが分布するようになり、ダマシン配線部21でもエッチングが行われる懸念が生じる。
【0035】
このため、塩素ガスの導入が行われた時点から5秒程度の一定時間t3が経過した時点で、コイルアンテナ35への電流供給を断ち、プラズマP1、P2をオフ状態にする。同時にバルブ41,43を全閉し、ヘリウムガス及び塩素ガスの供給を停止させる。この段階でエッチング処理が完了していない場合には、引き続き2回目のエッチング処理を行う。2回目のエッチング処理は1回目と同様、まず排気バルブ45を全開して時間t4(100秒程度)高速排気を行い、チャンバ30内を再び高真空の初期設定ガス圧k0まで排気する。以後は、全く同じ手順の繰り返しによりエッチングを行えばよい。
【0036】
このように断続的にエッチング処理を繰り返すことによって、ウェハー20の中心部には損傷を与えることなく、ウェハー20の周縁部に付着した不要物だけを効果的にエッチング処理することが可能となる。なお、一連のエッチング処理の繰り返し回数は、ウェハー20のベベル領域からどの程度内側までエッチング処理を必要とするか、あるいは不要物として付着した薄膜の膜厚などに応じて設定すればよい。
【0037】
以上説明したように、本実施形態ではノズル33から塩素ガスを供給するのに先立ち、ノズル33とは別の、配管38の供給口38aからヘリウムガスの供給を実行してヘリウムガスのプラズマP1を発生させた状態で塩素ガスの供給を行うようにしている。また、その一方で排気装置44によって、塩素ガスがウェハー20の中央部に達する前に、ウェハー20の周縁部及びその近傍に滞留する塩素ガス等を強制的に排気できるような構造にしている。これらガス供給・排気等の制御によって、チャンバ30内における塩素ガスの濃度がウェハー20の周縁部で局所的に高くなるように制御することが可能となる。これにより、ウェハー20の周縁部を覆う塩素ガスのプラズマを局在的に発生させることが可能となり、ウェハー20の中央部側にプラズマダメージ(エッチング等)を発生させず、ウェハー20の周縁部に付着した不要物を選択的にかつ確実に除去することができる。なお、上述した実施形態では、塩素ガスと不活性ガスとを別々に供給する装置構造としたが、この場合、例えば不活性ガスを希釈ガスとして塩素ガスと不活性ガスとの混合ガスを同時に供給するようにしてもよく、不活性ガスを希釈ガス及びキャリアガスとして、不活性ガスに塩素ガスを混合し、これをチャンバ内に供給するようにしてもよい。あるいは、不活性ガスのプラズマを予め生成させなくても、ウェハー20の中央部に処理ガスが達しないように処理ガス(または処理ガスと不活性ガスとを混合した混合ガス)の供給と排気とを制御し、これによってウェハー20の周縁部で処理ガスの濃度が高い状態となるようにし、この状態で処理ガスのプラズマを発生させることにより、ウェハー20の周縁部に付着した不要物だけを選択的にエッチング除去してもよい。
【0038】
ウェハー20の周縁部のエッチング幅W(図8参照)は、エッチング処理の繰り返し回数を増やすことによって順次に広げることが可能である。したがって、外径寸法や、マージンdが異なるウェハー20についても同一装置で対応できる利点がある。また、コイルアンテナ35への投入電力を大きくするとエッチング幅Wが狭まり、プラズマP2がウェハー20の周縁部に強く局在化する傾向を示すことが確認された。
【0039】
上記エッチング処理モジュール14を用いることにより、成膜処理モジュール12で積層されたウェハー周縁部の不要物が、この金属膜作成装置による同じ工程内で効率的に除去することができる。しかも、不要物の除去にあたってはウェハー20をチャンバ30内で回転させずに済み、またスラリーその他の処理液を必要としないから、設備コストやランニングコストを低く抑えることができる。また、処理ガスとして成膜処理モジュール12で用いられている塩素ガスを利用することができるから、このようなモジュール化は構造的にも有利でコスト面での負担も軽減される。
【0040】
もちろん、上記エッチング処理モジュール14は、上述した銅あるいは、タンタル、アルミニウムなどの導電性金属膜のエッチングに限られない。ウェハープロセス中ではウェハーの表面に各種の絶縁膜を成膜することも多く、こうした絶縁膜もウェハーの周縁部に付着したままであると後工程で同様に悪影響が生じる。絶縁膜に対してはCFなどのフッ素系のガスが処理ガスとして効果的に用いることができるので、同様のエッチング処理モジュールを用い、そのチャンバ内にフッ素系の処理ガスを導入してプラズマを生成すれば、ウェハーの周縁部に付着した絶縁膜を不要物としてエッチング除去することができる。また、フォトリソグラフィではレジストとしてポリマーが用いられるが、このようなポリマーに対してはOガス又はこのOガスにフロンガスを混合した混合ガス等がエッチング用の処理ガスとして効果的に使用できるので、やはり同様のエッチング処理モジュールを利用して周縁部に付着したポリマーをエッチング除去することができる。
【0041】
また、ウェハー周縁部にCu等の金属膜、この金属膜上にさらにポリマー等が付着している場合には、まず、処理ガスとしてOガスを用いて発生させた酸素プラズマによりポリマーの除去を行う。次いで、処理ガスとして塩素ガスを用いて発生させた塩素プラズマによりウェハー周縁部の金属膜を除去する。このような場合には、処理ガスの選択により、積層された不要物に対して、段階的な処理により確実に不要物を除去することが可能となる。さらに、このようにウェハー周縁部の金属膜やポリマー等を除去する場合、その後処理として、処理ガスとしてHガスを用いて水素プラズマを発生させ、この水素プラズマによりウェハー周縁部に残留する処理ガス成分(O又はCl)を除去するのが好ましい。これにより、ウェハー周縁部に対する不要物除去の処理に起因して付着する処理ガス成分を除去することが可能となり、このような処理ガス成分のウェハー周縁部への残留を確実に防止することができる。
【0042】
なお、金属系の不要物に対しては塩素ガス、ポリマー系の不要物に対しては酸素ガスを用いるのが好ましいが、このような処理ガスの種類等については、特にこれらに限定されず、例えば、ウェハーの周縁部に付着している不要物の成分に応じて、これらのガスを所定の比率で混合してもよいし、あるいは不要物を除去し易い別のガスを用いて処理を行うようにしてもよい。また、このようなウェハー周縁部への段階的な処理については、1つのチャンバでガス種を切り替えて実行してもよいし、あるいは複数のチャンバでそれぞれ異なる処理ガスを用いて実行してもよい。
【0043】
こうしてウェハー20の周縁部に付着した不要物(銅の薄膜)を除去した後は、前述のようにそのウェハー20をCMP装置に導入してウェハー20の表面にダマシン配線部21だけが残るように処理すればよい。上述した実施形態では、成膜処理モジュール12で成膜したウェハー20をウェハー周縁部のエッチング処理モジュール14に搬送し、ウェハー20の周縁部に付着した不要物を除去してからCMP装置でウェハー表面の不要物23を除去するようにしたが、勿論これに限定されない。例えば、成膜処理後のウェハー20をCMP装置に導入し、ウェハー表面側のCMP処理を行った後で、本発明のエッチング処理モジュール14によって、CMP処理できなかったウェハー周縁部に残る不要物をエッチング処理により除去するようにしてもよい。なお、CMP装置が小型化され、あるいは簡易型のコンパクト化されたものが実現できるようになれば、これをモジュール化して図1に破線13で示すように半導体製造装置に組み込むこともでき、さらに製造効率を高めることが可能となる。
【0044】
また、ウェハー20の表面に平面的な金属配線を所定パターンで形成した際には、CMP装置の代わりにウェハー20の表面からフォトレジストなどのマスキング層を除去するためのモジュールが用いられる。しかし、このようなモジュールを用いる場合でもベベル領域22をマスキング層で確実に覆っておくことが難しいため、同様にウェハー20の周縁部には不要物24が残存しやすい。したがって、このような半導体製造装置においても、不要物24をその工程内で除去できるように本発明を用いたエッチング処理モジュール14を用いるのが好適である。
【0045】
本発明のエッチング処理モジュール14は、ウェハー20の周縁部に処理ガスを高濃度で分布させてプラズマを局在化させるものであるが、ウェハー20の周縁部にプラズマを局在化させるには、そのほかにチャンバ内に温度勾配をもたせ、あるいはプラズマそのものの分布を制御することでも実現することができる。したがって、このような手法と本発明装置で用いられている手法との複合により、所望のプラズマ分布を得るための制御に自由度をもたせることが可能となる。
【0046】
図9に示す実施形態では、チャンバ30のトッププレート30b上に1ターンのコイル形状を有するコイルアンテナ35を設けている。このコイルアンテナ35は、そのループ形状がウェハー20の外形輪郭形状と一致している。コイルアンテナ35はプラズマ発生手段として用いられ、上述した実施形態と同様にチャンバ30内における処理ガスの濃度をウェハー20の周縁部で高くなるように制御した状態で、コイルアンテナ35に例えば13.5MHz程度の高周波電流を供給すると、処理ガスの導入下でチャンバ30内に誘導結合型のプラズマが発生する。これにより、処理ガスのプラズマPは、基本的にプラズマエネルギーが高いトッププレート近傍でドーナツ状の分布をもって生成される。
【0047】
図示のように、ディスク形状の外形輪郭形状をもったウェハー20に対してはドーナツ状の分布をもつプラズマPを発生させるのが有利で、その意味では円形のループ形状をもつコイルアンテナ35自体、プラズマ発生手段であると同時にプラズマ分布制御手段にもなっている。このように、チャンバ30内における処理ガスの濃度をウェハー20の周縁部近傍で高くなるように制御した状態でドーナツ状の分布をもつ処理ガスのプラズマPを発生させて、この処理ガスのプラズマPにウェハー20の周縁部を曝すことにより、ウェハー20の周縁部に付着している不要物だけをより効率よく、かつより選択的に除去することができる。なお、このような装置構造の場合、ヘリウムガスなどの不活性ガスをチャンバ30内に供給し、不活性ガスのドーナツ状の分布をもつプラズマPを発生させた状態で、そこに塩素ガスなどの処理ガスを別途供給することにより、ウェハー20の周縁部に付着した不要物だけを選択的に除去することができる。場合によっては、不活性ガスのプラズマを予め生成させなくても、ウェハー20の中央部に処理ガスが到達しないように処理ガス(または処理ガスと不活性ガスとの混合ガス)の供給と排気とを制御し、これによってウェハー20の周縁部で処理ガスの濃度が高い状態となるようにし、この状態でドーナツ状の分布をもつプラズマを発生させることにより、ウェハー20の周縁部に付着した不要物だけを選択的に除去することができる。
【0048】
なお、処理ガスのプラズマPは、チャンバ30のガス圧及び、コイルアンテナ35に供給される電力の調節により安定的に発生させることができるが、このドーナツ状のプラズマPに対してエッチング処理対象エリアとなるウェハー20の周縁部だけを効果的に曝すことができるように、基板ステージ31はベローズ36aを含む昇降装置36によって上下方向に移動自在に支持されている。図示のように昇降装置36で基板ステージ31の位置調整を行うことにより、ドーナツ状をした処理ガスのプラズマPの上縁部分を利用してウェハー20の中央部を処理ガスのプラズマPに曝すことなくその周縁部だけを処理ガスのプラズマPに曝すことができるようになる。そして上述したように、ウェハー20の周縁部が処理ガスのプラズマPに曝されると、処理ガスのプラズマPで活性化された処理ガスのエッチング作用によりベベル領域22を含むウェハー20の周縁部に付着した不要物24(銅の薄膜)は前駆体(CuCl)の形になって除去され、処理ガスとともに排気口32を通してチャンバ30外に排気される。こうして処理ガスのプラズマPとウェハー周縁部との相対位置を調整することによって、ウェハー20の周縁部だけをプラズマPに曝し、不要物の除去に要する時間の短縮化を図って、スループットを向上させることができる。
【0049】
さらに、図10に本発明装置に効果的に利用することができるコイルアンテナ35の別の形態を示す。上述した実施形態と同様に、トッププレート30bの上面に、互いにループ径が異なる2本の単ループ型のコイルアンテナ35a,35bが設けられ、それぞれ個別に高周波電源に接続される。一方のコイルアンテナ35aのループ径S1は12インチ、他方のコイルアンテナ35bのループ径S2は8インチとなっており、これらのコイルアンテナ35a,35bはチャンバ30に収容されるウェハー20の外径に応じて選択使用される。
【0050】
チャンバ30内における処理ガスの濃度をウェハー20の周縁部で高くなるように制御した状態で、コイルアンテナ35aに高周波電流を供給すると、外径12インチのウェハー20の外形輪郭に倣った分布をもつ処理ガスのプラズマPを生成することができる。この処理ガスのプラズマPは、チャンバ30内に層状に整列された外径12インチのウェハー20の周縁部を一体的に包み込み、ベベル領域を含む周縁部に付着した不要物は一斉にエッチング除去される。チャンバ30内に収容するウェハー20の外径が8インチである場合には、円筒状のプラズマPの径を小さくするためにコイルアンテナ35bを使用すればよい。さらに外径が異なるウェハーにも対応できるようにするには、その外径に応じたループ径をもつコイルアンテナを増設しておけばよい。このような実施形態では、コイルアンテナ35a,35bのいずれを使用するかによって処理ガスのプラズマPの分布が変わることになるから、コイルアンテナの選択手段もプラズマ分布制御手段の一つとして作用することになる。なお、高周波電源をそれぞれのコイルアンテナごとに設ける代わりに、スイッチングにより一方のコイルアンテナだけに電流供給を行うことも可能である。
【0051】
さらに図11に示す実施形態は、LIF(Laser Induced Fluorescence:レーザー誘起蛍光)法によるエッチング監視装置を組み合わせたものである。LIF法は、レーザー光の照射を受けて励起された分子,原子,イオンなどが下位準位に戻るときに蛍光を発する現象を利用してこれらの存在を検出する手法である。ウェハーの周縁部から不要物が処理ガスのプラズマによってエッチング除去されている間には、ウェハーの周縁部近傍には不要物が解離した状態で存在しているから、その種類に応じた適切な波長のレーザー光をその周囲に照射すると蛍光を確認することができる。この蛍光をCCDカメラで撮影すれば、エッチング処理の進行状況をリアルタイムで観察することが可能となる。
【0052】
図11において、チャンバ30の周壁30aに透明窓52a,52bが設けられ、透明窓52aを通してレーザー照射器53からのレーザー光55がチャンバ内に照射される。レーザー照射器53は例えば半導体レーザーダイオードから放射されたレーザー光を、紙面に対して垂直な縦長の方向の帯状に整形してウェハー20の表面を横切るように照射する。他方の窓52bにはレーザー光の吸収体56が設けられているため、チャンバ外にレーザー光が洩れ出ることはない。なお、吸収体56の変わりに受光器を用い、レーザー光のパワーを監視することもできる。
【0053】
同図に示すように、紙面と垂直な方向に幅広なレーザー光55は、ウェハー20の周縁部を左右2箇所で横切るが、その近傍が監視エリアA1,A2となる。これらの監視エリアA1,A2が画角内に収まるように、CCDカメラ57によって撮影が行われる。なお、監視エリアA1,A2のいずれか一方だけを撮影するのであれば、もっと画角の狭いCCDカメラを用いることもでき、また監視エリアA1,A2の近くから個別のCCDカメラでそれぞれ撮影することも可能である。
【0054】
エッチング処理が進行している過程では、レーザー光55が横切る監視エリアA1,A2内にもウェハー20の周縁部から除去された直後の不要物が解離状態で存在しているから、これらが排気口32方向に移動してレーザー光55の照射範囲から外れるまでの間、蛍光を発する。その発光の様子がCCDカメラ57でリアルタイムで撮影される。CCDカメラ57からの画像信号は信号処理装置58によって周知の画像信号処理が行われ、モニタ59に画像表示される。エッチング処理を開始した後、モニタ59で画像観察を行うと、開始の段階では発光が多く観察され、エッチング処理が進行してウェハー20から不要物が除去されると発光が観察されなくなる。したがって、モニタ59の画面上で発光が観察されなくなった時点でエッチング処理を完了すればよい。なお、エッチング処理が断続的に複数回繰り返して行われる場合には、プラズマP2が生成されている間だけ監視を行うようにしてもよい。
【0055】
また、判定装置60を用いることによりエッチング処理が完了したことを自動的に識別することも可能である。判定装置60は、信号処理回路58からの画像信号を画像処理して一画面ごとに蛍光による発光量を数値化し、その変化を時間経過とともに監視する。そして、発光量が予め設定した閾値レベル以下になったときにエッチング処理の終了を報知する。こうして得られた報知信号に応答して例えばコイルアンテナへの給電を断つことにより、自動的にエッチング処理を終了させることができる。
【0056】
また、前述のようにウェハー周縁部からエッチング除去される不要物の種類には、ポリマー,金属,絶縁物などがあるが、さらにエッチング用の処理ガスとして用いたOガスやClガスがウェハー20の周縁部に残留することがある。これらの不要物や残留ガスの種類によっては、そのエッチングの進行状況をLIF法で効果的に監視するにはレーザー光の波長を変更することが好ましい。例えば同一のチャンバ30内でウェハー20の周縁部に付着したポリマーを不要物としてOガスを用いたプラズマエッチングで除去した後、さらにCuを不要物としてClガスを用いたプラズマエッチングで除去し、さらに後処理としてウェハー20の周縁部に残存するOガスやClガス成分を水素ガスのプラズマで除去する場合には、それぞれのエッチング処理に応じてレーザー照射器50から放射されるレーザー光の波長を除去する不要物の種類に応じて変更するのがよい。さらに、不要物の種類に応じて発光波長が異なるので、CCDカメラ57でノイズを除去した高感度の撮影を行うには、不要物の発光波長を含む狭帯域の光を透過するフィルタを通してCCDカメラ57で撮影できるようにしておくことが効果的である。
【0057】
以上、図示した実施形態をもとに本発明について説明してきたが、本発明を実施する上では、プラズマP2によりウェハーの周縁部を包み込むことができれば、ウェハーの表裏を逆にしてエッチング処理を行ってもよい。また、コイルアンテナをベースプレート側に設け、ベースプレート側から処理ガスを導入してトッププレート側から排気を行うようにしたり、円筒状のチャンバを横置き配置にすることも可能である。さらに本発明は、必ずしもベベル領域に付着した不要物の除去だけでなく、ウェハープロセス中の様々な局面で、例えばマージンdの領域に付着した不要物を除去する際にも等しく適用することができる。
【0058】
図2及び図3に示すように、述した実施形態ではコイルアンテナ35として3ターンのループ形状のものを用いているため、ウェハー20の全体を均一に覆うプラズマを生成させることができる。したがって、不活性ガスに代えて製膜用の処理ガスをチャンバ内に導入してプラズマを生成させることによって製膜装置としても兼用することも可能である。また、本発明装置は必ずしもディスク状のウェハー20だけでなく、例えば矩形状をした液晶基板の周縁部に沿って処理ガスを高濃度で分布させることによって、矩形状基板の一端縁に付着した不要物の除去にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明を用いたエッチング処理モジュールを備えた金属膜作成装置の概略図である。
【図2】本発明装置の一実施形態を示す概略縦断面図である。
【図3】本発明装置の一実施形態の概略横断面図である。
【図4】本発明装置に用いられるガス供給回路系の概略図である。
【図5】本発明装置によるエッチング処理手順を示すフローチャートである。
【図6】エッチング処理のタイミングチャート図である。
【図7】チャンバ内の相対ガス濃度を示す説明図である。
【図8】ヘリウムガスプラズマと塩素ガスプラズマの分布を示す概念図である。
【図9】本発明装置の別の実施形態を示す概略図である。
【図10】本発明装置に適用可能なコイルアンテナの別の形態を示す説明図である。
【図11】エッチング監視装置を併用した実施形態の概略横断面図である。
【図12】ウェハーのベベル領域を含む周縁部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0060】
14 エッチング処理モジュール
20 ウェハー
21 ダマシン配線部
22 ベベル領域
23,24 不要物
30 チャンバ
31 基板ステージ
32 排気口
33 ノズル
35 コイルアンテナ
38 配管(ヘリウムガス供給用)
41,43 バルブ
45 排気バルブ
46 真空計
53 レーザー照射器
57 カメラ
58 信号処理装置
59 モニタ
60 判定装置
P1,P2 プラズマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容するチャンバと、前記チャンバ内に処理ガスを供給するとともに、前記チャンバ内における前記処理ガスの濃度が前記基板の周縁部で高くなるように制御するガス濃度制御手段と、前記処理ガスをプラズマ化して前記チャンバ内にプラズマを発生させる誘導結合型のプラズマ発生手段とを備え、前記基板の周縁部に付着した不要物を前記プラズマによりエッチング除去することを特徴とする基板周縁部の不要物除去装置。
【請求項2】
前記ガス濃度制御手段は、前記チャンバ内に前記処理ガスを供給する処理ガス供給手段と、前記処理ガス供給手段による前記処理ガスの供給に先行して前記基板を全体的に覆うように不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段とを含み、前記プラズマ発生手段により前記不活性ガスのプラズマを発生させた後に前記処理ガス供給手段により前記処理ガスの供給を行って基板周縁部を覆う処理ガスのプラズマを発生させることを特徴とする請求項1記載の基板周縁部の不要物除去装置。
【請求項3】
前記ガス濃度制御手段は、前記不活性ガス供給手段及び前記処理ガス供給手段を制御して不活性ガス及び処理ガスの供給を断続させるとともに、不活性ガスの供給の断続に同期して前記プラズマ発生手段がプラズマの発生を断続させることを特徴とする請求項2記載の基板周縁部の不要物除去装置。
【請求項4】
前記ガス濃度制御手段はチャンバ内の処理ガスを排気する排気手段を含み、前記処理ガス供給手段は、前記基板の一方の面に基板の周縁部から中央部に向けて処理ガスを供給し、前記排気手段は、前記基板の中央部から周縁部に向かい、さらに基板の一方の面から他方の面へと向かう排気経路で処理ガスを排気することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の基板周縁部の不要物除去装置。
【請求項5】
前記プラズマ発生手段は、前記基板の外形輪郭形状に倣ったループ状のコイルアンテナを含み、前記チャンバ内における前記処理ガスの濃度が前記基板の周縁部で相対的に高い状態で前記処理ガスのプラズマを発生させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の基板周縁部の不要物除去装置。
【請求項6】
前記コイルアンテナは、互いにループサイズが異なり、ループの中心が前記基板の中心と略一致するように配置された複数本のコイルアンテナで構成され、前記チャンバ内に収容される前記基板のサイズに応じて前記複数本のコイルアンテナの少なくとも一つが選択して用いられることを特徴とする請求項5記載の基板周縁部の不要物除去装置。
【請求項7】
前記チャンバが円筒状の周壁を有するとともに前記周壁の中央にディスク形状をした前記基板が載置される基板ステージが設けられ、前記処理ガスは前記周壁から基板の周縁部に向かって少なくとも基板の中心に関して回転対称となる複数箇所から導入されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の基板周縁部の不要物除去装置。
【請求項8】
前記基板を載置する基板ステージが前記チャンバ内で昇降自在であることを特徴とする請求項7記載の基板周縁部の不要物除去装置。
【請求項9】
前記基板の周縁部近傍にレーザー光を照射するレーザー照射手段と、前記基板の周縁部から離脱した不要物の解離物が前記レーザー光の照射を受けて発光する状態を撮影する撮像手段と、この撮像手段からの画像情報に基づいてエッチング処理の終了を確認する確認手段とを備えたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の基板周縁部の不要物除去装置。
【請求項10】
基板上に所望の薄膜を形成する薄膜作製装置と、請求項1〜9のいずれか記載の基板周縁部の不要物除去装置と、前記薄膜作製装置から前記薄膜を形成した基板を前記不要物除去装置に搬送する基板搬送装置とを備えていることを特徴とする半導体製造装置。
【請求項11】
基板をチャンバ内に収容し、前記チャンバ内に処理ガスを供給するとともに、前記チャンバ内における前記処理ガスの濃度が前記基板の周縁部で高くなるように制御した状態で前記処理ガスをプラズマ化して前記チャンバ内にプラズマを発生させ、前記基板の周縁部に付着した不要物を前記プラズマによりエッチング除去することを特徴とする基板周縁部の不要物除去方法。
【請求項12】
前記チャンバ内への処理ガスの供給に先行して前記基板を全体的に覆うように不活性ガスを供給し、前記不活性ガスのプラズマを発生させた後に前記処理ガスの供給を行って基板周縁部を覆う処理ガスのプラズマを発生させることを特徴とする請求項11記載の基板周縁部の不要物除去方法。
【請求項13】
前記不活性ガス及び前記処理ガスの供給を断続させるとともに、不活性ガスの供給の断続に同期してプラズマの発生を断続させることを特徴とする請求項12記載の基板周縁部の不要物除去方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−177512(P2008−177512A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12029(P2007−12029)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(506239658)株式会社フィズケミックス (37)
【Fターム(参考)】