説明

基板洗浄方法、基板洗浄装置、およびそれを用いた電子デバイスの製造方法

【課題】配線の抵抗のバラツキを少なくすることによって、電子デバイスの品質を安定させ、ランニングコストが安価な基板洗浄装置を提供する。
【解決手段】基板8を保持して回転させる基板保持部4と、基板8に対して洗浄液等を吐出させる吐出ノズル3とを備えたチャンバー2と、洗浄液が収容される供給タンク23と、供給タンク23から吐出ノズル3へ洗浄液を供給するための配管35及び圧送機構のポンプ20と、チャンバー2で基板8の洗浄処理が行われた後の洗浄液を供給タンク23へ戻す戻り配管37と、供給タンク23へアンモニアを供給させるアンモニア供給源19とを備え、チャンバー2において基板8を洗浄処理する毎に、アンモニア供給源19から供給タンク23へアンモニアを供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドライエッチング処理によって基板の表面に生成付着した反応物を除去するための基板の洗浄装置およびこれを用いた洗浄方法に関するものである。洗浄される基板は、半導体基板、液晶表示装置用ガラス基板、プラズマディスプレイ用ガラス基板等が含まれる。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路装置の高集積化、高機能化及び高速化に伴って、導電膜や絶縁膜パターン加工時には、多くの場合ドライエッチング技術が採用される。ドライエッチング技術では、パターン加工後にパターン周辺にドライエッチングガスやフォトレジスト及び被加工膜等に起因して、反応生成物(側壁保護膜またはポリマー残渣等)が生成されることが知られている。このような反応生成物が、例えば配線パターン(下層配線)に付着すると、配線パターンに腐食等が生じて電子デバイスの信頼性が損なわれる可能性ある。また、反応生成物が、絶縁膜に形成されたビアホールの底面に付着すると、接合不良を起こしたり、ビアコンタクト抵抗の増大を招く可能性がある。したがって、反応生成物を除去することは、高品質な半導体を得るためには極めて重要なことである。
【0003】
反応生成物を除去する洗浄方法には、特許文献1に開示されたような方法がある。特許文献1に開示された洗浄方法は、被処理基板を有機系洗浄液に浸漬する洗浄工程、または、基板に回転を加えながら洗浄液をシャワー状に噴霧、吐出または連続的あるいは間欠的に滴下する洗浄工程の後、基板を薬液で乾燥させる乾燥工程を経て、洗浄が完了する。前記有機系洗浄液は、有機溶剤の水溶液に絶縁膜に対してエッチング作用を有するフッ素化合物が添加された洗浄液が、一般的に多く用いられる。
【0004】
このように、フッ素化合物を含んだ有機系洗浄液は、フッ素化合物が水溶液中で解離して生成するフッ酸によって、酸化膜をエッチングすることができる。エッチング時のエッチング量は、有機系洗浄液のフッ酸濃度によって左右されるが、フッ素化合物1%の有機洗浄液であるならば、一般的には洗浄時間10分でSiO2膜が0.1〜2nm程度エッチングされる。
【0005】
また、反応物を除去する洗浄時間は、洗浄対象物である電子デバイスによって決められており、反応物を除去することが可能である理由はエッチングによる反応物の溶け込み、または反応物下部からのリフトオフであるため、エッチング量が異なると反応物の除去能力に有意差が生じる。エッチング量が大きい場合、反応物を除去する以上に、他の導電膜や絶縁膜がエッチングされてしまう不具合が生じるため、酸化膜のエッチング量が規格最大値以上の場合は、有機系洗浄液を廃液せざるを得ない。
【0006】
また、通常の有機系洗浄液は、洗浄力が低いため、洗浄前に腐食性のあるアルカリ系溶液による基板処理を行う必要がある。
【0007】
また、有機系洗浄液は高価であるため、洗浄処理を1回行った後、フィルターを通して浄化し、再使用している。
【特許文献1】特開平11−260789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上記従来の構成では、有機系洗浄液にフッ素化合物を含んでいるため、フッ素化合物が水溶液中で解離して生成するフッ酸の濃度が時間とともに上昇し、エッチング量が時間とともに上昇してしまう。よって、エッチング量を安定させることができないという問題がある。以下その理由について説明する。
【0009】
図7は、有機系洗浄液による導電膜、絶縁膜のエッチングレートの時間的推移を示す特性図である。図7において、縦軸は酸化膜に対するエッチング量、横軸は時間(エッチング処理日)を示している。また、図7(a)は基板処理された基板をエッチングした場合のエッチング量の推移を示し、図7(b)は基板処理をしなかった基板をエッチングした場合のエッチング量の推移を示している。
【0010】
図7(a)に示すように、常時基板処理を行い、エッチングレート測定のための基板を洗浄した場合、時間(日数)とともにエッチング量が大幅に上昇していくため、短周期で定期的に洗浄液を交換しないとエッチング量を安定させることができない。図7(a)に示す場合では、1週間毎に洗浄液を交換していた。
【0011】
また、図7(b)に示すように、常時基板処理を行わず、エッチングレート測定のための基板を洗浄する場合、図7(a)に比べてエッチング量の上昇度は低いものの、洗浄液交換からの時間経過とともにエッチング量が徐々に大きくなることが分かる。よって、定期的に洗浄液を交換しないと、エッチング量を安定させることができない。
【0012】
このように、エッチング量を安定させることができず、反応物除去能力を一定にすることができないため、電子デバイスの品質にバラツキが生じてしまう。また、エッチング量をある程度安定させるために、洗浄液を定期的に交換しないといけないため、ランニングコストがアップしてしまう。
【0013】
本発明は上記問題点に鑑み、有機系洗浄液を再使用しながら、エッチング量を常に一定にして反応物除去能力を一定にすることにより、配線の抵抗のバラツキを少なくすることによって電子デバイスの品質を安定させ、ランニングコストが安価な基板洗浄方法を提供することを目的とする。また、その方法に好適な基板洗浄装置を提供することを目的とする。さらに、それらの方法および装置を使って実現可能な電子デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するため本発明の基板洗浄装置は、ドライエッチング処理によって基板の表面に付着した反応物を、除去することが可能な基板洗浄装置であって、前記基板を保持して回転させる基板保持部と、前記基板に対して洗浄液、純水、有機溶剤、窒素を吐出させる吐出ノズルとを備えたチャンバーと、前記洗浄液が収容される供給タンクと、前記供給タンクから前記吐出ノズルへ前記洗浄液を供給するための配管及び圧送機構と、前記チャンバーで前記基板の洗浄処理が行われた後の洗浄液を前記供給タンクへ戻す戻り配管と、前記供給タンクへアンモニアを供給させるアンモニア供給部とを備え、前記チャンバーにおいて前記基板を洗浄処理する毎に、前記アンモニア供給部から前記供給タンクへアンモニアが供給されるものである。
【0015】
また、本発明の基板洗浄方法は、ドライエッチング処理によって基板の表面に付着した反応物を除去するための洗浄工程を含んだ基板洗浄方法において、前記基板を洗浄するプロセスチャンバーと、前記プロセスチャンバー内に前記基板を保持させる基板保持部と、前記基板保持部を回転させる回転機構部と、前記プロセスチャンバー内の上部にライン状に配置されかつ洗浄液、純水、有機溶剤、窒素を吐出する吐出ノズルを少なくとも1個以上設けたノズル機構部と、前記洗浄液が収容される供給タンクと、前記供給タンクから前記吐出ノズルへ洗浄液を供給するための配管及び圧送機構とを有した基板洗浄装置を駆動させて、前記基板に回転を加えながら、前記洗浄液を連続または間欠にシャワー状に噴霧及び吐出させる洗浄を行い、前記基板を乾燥させ、前記チャンバーにおいて前記基板を洗浄処理する毎に、前記供給タンクへアンモニアを供給するものである。
【0016】
また、本発明の第1構成の電子デバイスの製造方法は、前記基板上に金属導電膜を形成する第1の工程と、レジストパターンをマスクとして前記金属導電膜に対してドライエッチングを行って、前記金属導電膜に金属配線部を形成する第2の工程と、酸化プラズマによるアッシング処理を行って、前記レジストパターンを除去する第3の工程と、前記金属配線部を洗浄する第4の工程とを備え、前記第4の工程において、請求項2から11のいずれかに記載の洗浄方法によって前記基板を洗浄するものである。
【0017】
また、本発明の第2構成の電子デバイスの製造方法は、前記基板上に形成された導電膜のパターン上に絶縁膜を形成する第1の工程と、レジストパターンをマスクとして前記絶縁膜に対してドライエッチングを行って、前記絶縁膜に開口部を形成する第2の工程と、酸化プラズマによるアッシング処理を行って、前記レジストパターンを除去する第3の工程と、前記開口部を洗浄する第4の工程とを備え、前記第4の工程において、請求項2から11に記載の洗浄方法によって前記基板を洗浄するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、エッチング量を常に一定にして反応物除去能力を一定にすることにより、配線の抵抗のバラツキを少なくすることができ、電子デバイスの品質を安定させることができる。また、ランニングコストを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の基板洗浄方法は、1回の基板を処理する前に前記供給タンクの容量に対して一定量の洗浄液を廃液する第1の工程と、前記プロセスチャンバー内で前記基板を洗浄液で洗浄する第2の工程と、前記基板を乾燥させる第3の工程とを備えており、前記第2の工程において、前記プロセスチャンバーで使用済みの洗浄液を前記供給タンクに戻し、前記供給タンクに戻された洗浄液はフィルタを通して前記プロセスチャンバーへ送ることが可能であるとともに、前記プロセスチャンバーから廃液された洗浄液の量に相当する量の新しい洗浄液を、前記供給タンクに供給する方法としてもよい。この基板洗浄方法によると、定期毎の洗浄液の交換を無くし、洗浄液の反応物除去能力を一定にすることができる。
【0020】
また、洗浄液の成分として、フッ化化合物、有機溶剤、水を含み、前記フッ化化合物の濃度が0.001〜10重量%、前記有機溶剤が単独でも2種類以上組み合わせて使用でき、濃度は通常1〜70重量%で構成してもよい。
【0021】
また、前記基板の一定処理回数毎に、一定量のアンモニア水を前記供給タンクにポンプまたは気体圧送にて供給する方法としてもよい。これにより、洗浄液の成分であるフッ化化合物の水溶液中で生成するフッ酸濃度を一定にすることによって、洗浄液の反応物除去能力を一定にすることができる。
【0022】
また、一定の時間毎に一定量のアンモニア水を、前記供給タンクにポンプまたは気体圧送にて供給する方法としてもよい。これにより、洗浄液の成分であるフッ化化合物の水溶液中で生成するフッ酸濃度を一定にすることによって、洗浄液の反応物除去能力を一定にすることができる。
【0023】
また、前記基板の一定処理回数毎かつ一定時間毎に、一定量のアンモニア水を前記供給タンクにポンプまたは気体圧送にて供給する方法としてもよい。これにより、洗浄液の成分であるフッ化化合物の水溶液中で生成するフッ酸濃度を一定にすることによって、洗浄液の反応物除去能力を一定にすることができる。
【0024】
また、前記供給タンクの洗浄液を循環する配管から分岐された配管に対して、フッ酸濃度計を設けて常にフッ酸濃度をモニタリングし、一定のフッ酸濃度となるようにアンモニア水の投入量を制御する方法としてもよい。
【0025】
また、前記プロセスチャンバー内のパージ、前記供給タンク内の空間のパージ、洗浄液を、アンモニアガスもしくは窒素及びアンモニアの混合ガスで圧送させ、前記ガスの流量はマスフローコントローラにて流量制御される方法としてもよい。
【0026】
また、前記供給タンクから前記ノズル機構部へ洗浄液を供給するための配管にヒータを有し、洗浄液成分または反応生成物が析出しない第1の温度に設定された前記供給タンク内の洗浄液を、前記吐出ノズルを介してプロセスチャンバーに吐出する場合、前記ヒータによって前記洗浄液を第2の温度にされる方法としてもよい。これにより、有機系洗浄液供給タンク内及び循環によるアンモニアの揮発を防ぎ、洗浄液の反応物除去能力を一定にすることができる。
【0027】
また、洗浄液供給タンク内に常に窒素を供給させ、前記供給タンク内の圧力を増大させる方法としてもよい。これにより、有機系洗浄液の成分であるフッ化化合物の水溶液中で生成するアンモニアが揮発するのを抑制することができる。
【0028】
(実施の形態1)
図1Aは実施の形態1に係る基板洗浄装置の構成を示す説明図であり、図1Bは図1Aの要部を示す説明図である。
【0029】
基板洗浄装置は、ドライエッチング処理やアッシング処理後の基板表面に付着している反応物を除去するための装置である。例えば、配線をパターン形成する工程において配線膜を選択的に除去するためのエッチング処理や、このエッチング処理に使用されたレジストパターンを除去するためのレジストアッシング処理の後に、除去されずに残ったレジスト残渣等の反応物を除去するための装置である。また、ビアホールをパターン形成する工程において、絶縁膜を選択的に除去するためのエッチング処理や、このエッチング処理に使用したレジストパターンを除去するためのレジストアッシング処理の後に、除去されずに残ったビアホール内のレジスト残渣等の反応物を除去するための装置である。
【0030】
まず、基板洗浄装置の構成について説明する。
【0031】
図1Aにおいて、レジスト残渣等の反応物を除去するため、基板を洗浄するためのプロセスチャンバー2と、プロセスチャンバー2に有機系洗浄液を供給するための有機系洗浄液供給タンク23とを備えている。なお、図1Bにおけるプロセスチャンバー2は、図1Aの矢印Aに示す方向から見た状態を示している。また、図1Bはプロセスチャンバー2内部の概略構成を図示している。
【0032】
プロセスチャンバー2は、基板8を略垂直に保持する基板保持部4と、基板保持部4に保持された基板8の表面に、有機系洗浄液または純水を供給させる吐出ノズル機構部1と,基板洗浄後の乾燥工程に使用する窒素またはIPA(イソプロピルアルコール)を供給させる吐出ノズル機構部9とを備えている。IPAや有機系洗浄液を圧送させるための窒素は、窒素供給源13aから供給される。また、基板保持部4は、直接基板8を保持するが、基板8を収納するカセット毎に保持する構造でも良い。
【0033】
また、プロセスチャンバー2は、洗浄後の有機系洗浄液や純水などを排出させるための排出口13を設け、チャンバー2内で処理される液体によって、各用途別のドレインに選別される。純水を排水させる場合は、廃液切替開閉弁58を開くことによって純水用ドレイン38から排水される。同様に有機系洗浄液を排水させる場合は、廃液切替開閉弁59を開くことによって洗浄液用ドレイン39から排水される。同様にIPAを排水させる場合は、廃液切替開閉弁60を開くことによってIPA用有機系ドレイン40から排水される。
【0034】
吐出ノズル機構部1は、図1Aに示すように、基板8の幅方向に沿って複数の吐出ノズル3を並べて備えている。吐出ノズル3からは、均一に一定量の液が吐出される。
【0035】
吐出ノズル機構部9は、図1Bに示すように、吐き出しノズル機構部1の近くに配されており、基板8の幅方向に沿って複数の吐出ノズル10を並べて備えている。また、吐出ノズル10からは、均一に一定量の液が吐出される。また、吐出ノズル機構部1および9は、図1Bに示すように、プロセスチャンバー2の内側に並設されている。また、複数の吐出ノズル3と吐出ノズル10は、その並設方向が互いに平行になるように配されている(図1Aにおいては、便宜上、吐出ノズル機構部1と吐出ノズル3のみ図示した)。
【0036】
吐出ノズル3から供給される有機系洗浄液は、水(H2O),有機溶剤,フッ素化合物を成分に含む薬液である。有機系洗浄液に使用されるフッ素化合物は、例えばフッ化水素、酸性フッ化アンモニウム、フッ化アンモニウム等が含有されているものが使用でき、何ら限定されるものではない。上記水溶性フッ素化合物の濃度は、通常0.001〜10重量%であり、好ましくは0.005〜5重量%である。本実施の形態に使用されるフッ素化合物は、1重量%のフッ化アンモニウムである。本実施の形態に使用される有機溶剤は各種多様であるが、単独でも2種類以上組み合わせて使用でき、濃度は通常1〜70重量%であり、好ましくは5〜50重量%である。有機溶剤の材料、濃度については、各デバイスのプロセス及びドライエッチング、アッシングの条件等から決定すればよい。本実施の形態の有機系洗浄液のPH値については、特に制限はなく、通常PH3〜12の範囲で使用すればよい。
【0037】
基板保持部4は、プロセスチャンバー2内に配され、ベアリング5を介して回転機構部7に保持されている。また、回転機構部7は、モータ6により回転駆動力が与えられて回転駆動し、基板保持部4を回転させることができる。また、基板保持部4は、基板8を保持することができる。よって、基板保持部4は、基板8を保持してモータ6及び回転機構部7によって回転駆動されることで、基板8を矢印Bに示す方向へ回転させることができる。
【0038】
洗浄液供給タンク23は、例えば20リットル以下の容量で構成され、タンク内循環用配管34、吐出ノズル用配管35、チャンバー2からの戻り用配管36および37、有機系洗浄液供給源用配管42、タンク内パージ用配管44および45を備える。なお、図中、洗浄液供給タンク23内の点線は、洗浄液の液面を示している。
【0039】
また、洗浄液供給タンク23から吐出ノズル3へ洗浄液が供給される際は、ポンプ20によって、脈動無く大流量で送ることが可能である。
【0040】
また、洗浄液供給タンク23内の有機系洗浄液の循環は、供給切替開閉弁54を開き、供給切替開閉弁55を閉じ、ポンプ20を駆動させ、フィルタ21を介して循環させる方式を用い、有機系洗浄液自体のパーティクル、発塵を防いでいる。
【0041】
また、洗浄液供給タンク23は、供給開閉弁63を開き、ショットポンプ22を動作させることで、アンモニア水供給源19からアンモニア水が供給されるように構成されている。アンモニア水を供給する目的については後で述べる。
【0042】
また、洗浄液供給タンク23の外側にはヒータブロック24を備え、PID制御(PID:Proportional Integral Difference)により有機系洗浄液の液温度を可変させたり、液温度を一定に保っている。
【0043】
また、洗浄液供給タンク23には、洗浄液供給位置の上限レベルセンサ25、下限レベルセンサ26が設けられている。洗浄液供給下限センサ26が、洗浄液供給位置の下限レベルを検出すると、自動で供給切替開閉弁62を介して有機系洗浄液供給源16から有機系洗浄液が供給される。なお、有機系洗浄液の供給は、窒素供給源13bから供給される窒素によって圧送される。
【0044】
また、洗浄液供給タンク23の空間27内の気体を排気させる場合は、窒素供給源13から配管44を介して、空間27に窒素を供給させる。空間27は、窒素が供給されることによって内部の気体が配管45へ押し出され、配管45を介して、排気部64から外部へ排気させることができる。
【0045】
有機系洗浄液供給源16は、例えば自動有機系洗浄液供給ラインや、200リットルタンクからの供給ラインや、キャニスターからの供給ラインなどで構成されている。有機系洗浄液には、引火性の特性を持つ洗浄液もあり、防爆対策として、窒素による空間27のパージを配管44,45を通して行っている。
【0046】
HF濃度計15は、プロセスチャンバー2に供給される洗浄液中の、フッ酸の濃度を計測する。
【0047】
IPA供給源11、窒素供給源13a、純水供給源14、窒素供給源13bにそれぞれ接続される配管31,32,33,44には、流量計71〜74が配されており、各供給源から供給される液体あるいは気体の流量を測定している。
【0048】
以下、動作について説明する。
【0049】
図1Aに示すように、回転機構部7に基板8を保持させて、モータ6を駆動させることにより、基板8を保持した回転機構部7が矢印Bに示す方向へ回転される。
【0050】
次に、吐出ノズル3に有機系洗浄液を供給させる場合は、供給切替開閉弁54を閉じ、供給切替開閉弁55を開き、ポンプ20を駆動させる。これにより、有機系洗浄液供給タンク23から有機系洗浄液が汲み出され、フィルタ21を介して、吐き出しノズル3に供給される。吐き出しノズル3に供給される有機系洗浄液は、回転されている基板8に対して噴射されて、基板8の洗浄が行われる。
【0051】
また、図1A及び図1Bにおいて、基板8に付着した有機系洗浄液を除去する場合は、純水供給切替開閉弁53を開き、純水供給源14から配管33を介して、吐出ノズル3および10に純水を供給させる。吐出ノズル3および10から、回転している基板8に対して純水を噴射させることで、基板8に付着した有機系洗浄液が除去される。
【0052】
また、配管35、プロセスチャンバー2内の有機系洗浄液を追い出す場合は、供給切替開閉弁52を開き、窒素供給源13aから配管35を介して吐き出しノズル3へ窒素を供給させることによって、配管35内の有機系洗浄液が吐き出しノズル3を介してプロセスチャンバー2内へ吐き出される。さらに、吐き出しノズル3及び窒素供給路12からプロセスチャンバー2内へ窒素が供給されることにより、プロセスチャンバー2内の有機系洗浄液は、排出口13から排出される。
【0053】
また、基板8を乾燥させる場合は、供給切替開閉弁51を開き、IPA供給源(IPAタンク)11からIPAを導出し、吐出ノズル3に供給する。吐き出しノズル3から基板8へIPAを噴射させることにより、基板8を乾燥させることができる。なお、IPAは、窒素供給源13aから供給される窒素によって圧送される。
【0054】
なお、プロセスチャンバー2内において、ベアリング5からの発塵を防ぐために、窒素を回転機構部7側に向けて流す必要がある。よって、プロセスチャンバー2内は、常時、窒素雰囲気である。
【0055】
上記のような基板洗浄装置によって、有機系洗浄液を再使用して反応物を除去するシーケンスの一例を図2に示す。なお、以下の説明において、図1に記載の構成を一部参照している。
【0056】
図2A及び図2Bにおいて、R1〜R10は反応物除去のシーケンスを示し、それとともに各シーケンスに対応したプロセスチャンバー2内の様子を模式的に示した。また、図2A及び図2Bにおいて、ステップR4〜R8に対応するプロセスチャンバー2の模式図において、基板8を円形で図示しているが、これは回転している基板8の回転軌跡を示しており、実際には基板8は平板状である。
【0057】
図2Aにおいて、基板を洗浄処理する前の第1のシーケンスとして、ステップR1「窒素圧送による配管・プロセスチャンバー内の洗浄」、ステップR2「有機系洗浄液を一定量廃液」、ステップR3「窒素圧送による配管・プロセスチャンバー内の洗浄液の追い出し」のステップの順番で、洗浄液供給タンク23の容量に対して一定量の有機系洗浄液を廃液する。廃液された有機系洗浄液の量に相当する量の新規の有機系洗浄液を、有機系洗浄液供給源16から洗浄液供給タンク23に供給させる。
【0058】
具体的には、図2Aに示すように、ステップR1では、窒素供給源13aから吐き出しノズル3に供給される窒素によって、プロセスチャンバー2内を洗浄する。次に、ステップR2では、有機系洗浄液を洗浄液供給タンク23から吐き出しノズル3へ供給する。吐き出しノズル3から噴射される有機系洗浄液によって、プロセスチャンバー2内が洗浄される。次に、ステップR3では、窒素供給源13aから吐き出しノズル3に供給される窒素によって、配管およびプロセスチャンバー2内に残っている有機系洗浄液を、排出口13から追い出す。
【0059】
次に、図2Aに示すように、第2のシーケンスとして、R4「基板をプロセスチャンバー内に挿入」、R5「基板を有機系洗浄液で洗浄」、R6「窒素圧送による配管・プロセスチャンバー内の有機系洗浄液の追い出し」の順番で、プロセスチャンバー2内の基板8を有機系洗浄液で洗浄する。
【0060】
具体的には、まずステップR4において、基板4をプロセスチャンバー2内の基板保持部4に保持させ、モータ6を駆動させることにより回転機構部7が基板保持部4を回転させる。次に、ステップR5において、洗浄液供給タンク23から吐出ノズル3を介して吐出した有機系洗浄液は、基板8を洗浄後、プロセスチャンバー2の排出口13からのドレイン36を通り、切替開閉弁57が開かれることにより洗浄液供給タンク23に戻る。また、プロセスチャンバー2に通されて汚れた有機系洗浄液の液中パーティクルは、洗浄液供給タンク23の循環用の配管34を経由されることにより、フィルター21で除去される。次に、ステップR6において、窒素供給源13aから吐き出しノズル3へ窒素を供給させることにより、配管およびプロセスチャンバー2内の有機系洗浄液を排出口13から追い出す。
【0061】
次に、図2Bに示すように、第3のシーケンスとして、R7「基板の純水洗浄」、R8「基板のIPA乾燥」、R9「基板をチャンバー外へ取り出す」の順番で、基板8を乾燥させ、チャンバーから取り出す。基板8を取り出した後、R10「窒素圧送による配管・プロセスチャンバー内の洗浄」によって、配管およびチャンバー内を洗浄する。
【0062】
具体的には、図2Bに示すように、ステップR7において、純水供給源14から吐き出しノズル10へ純水を供給し、基板8に噴射させる。これにより、基板8に残留付着した有機系洗浄液を洗い流すことができる。洗浄後の純水は、排出口13から排出される。次に、ステップR8において、IPA供給源11から吐き出しノズル10へIPAを供給し、基板8に噴射させる。これにより、基板8を乾燥させることができる。噴射後のIPAは排出口13から排出される。次に、ステップR9において、基板保持部4に保持された基板8を、プロセスチャンバー2内から取り出す。次に、ステップ10において、窒素供給源13aから吐き出しノズル10へ窒素を供給し、配管およびプロセスチャンバー2内を洗浄する。
【0063】
上記シーケンスで処理を行えば、定期毎の洗浄液の交換を行わずに、洗浄液を再使用しながら洗浄することが可能である。
【0064】
しかしながら、有機系洗浄液の導電膜、絶縁膜に対するエッチングレートは上昇していく傾向にある。そこで本発明者らは、有機系洗浄液のエッチングレートが上昇する現象に対し、有機系洗浄液の組成からメカニズムを検討した。本実施の形態の有機系洗浄液はフッ素化合物、純水を含んでいることから、フッ素化合物の水溶液中での反応平衡式は、次のようになる。但し、フッ素化合物を代表例としてフッ化アンモニウムとしている。
【0065】
【数1】

【0066】
窒素は純水に溶け込みやすい性質があり、窒素が純水に溶け込むと純水に含むアンモニアは押し出され、気体として揮発する。アンモニアが気体として揮発していくと、(3)式の平衡は右方向に移動する。したがって、(3)式のアンモニアNH3(liquid)が少なくなっていくため、(2)式の平衡は右方向へ移動する。同様に(2)式のアンモニア水NH4OHが少なくなっていくため、(1)式の平衡も右方向へ移動する。その結果、フッ酸濃度が大きくなるためエッチングレートは上昇していくと考えられる。
【0067】
図2A及び図2Bに示す洗浄シーケンスにおいて、窒素が使われることが多い。すなわち、ステップR2及びR5に示すように有機系洗浄液を圧送させる際に気体の窒素を多用したり、図1Aに示すベアリング5からの発塵を防ぐために、窒素の気流を回転機構部7側に向けて流していたり、プロセスチャンバー2内が常時窒素雰囲気であることなどを考慮すると、処理回数と共にエッチングレートは上昇する。
【0068】
また、有機系洗浄液タンク23内においても、空間27のパージ、有機系洗浄液供給源16からの有機系洗浄液の圧送は、気体の窒素が使用されるのが主である。さらに、有機系洗浄液が洗浄液供給タンク23内を循環することから、有機系洗浄液がタンク23内の主な気体の窒素に触れてしまい、基板8の洗浄処理をしていないにもかかわらず、時間が経過するにつれてエッチングレートが上昇してしまう。
【0069】
そこで本発明者らは、上記(1)式の有機系洗浄液中の右方向への反応を抑制することが、エッチングレートを一定にさせる施策と考え、1回の処理毎に洗浄液供給タンク23にアンモニア水を供給することを考案した。アンモニア水が補充されることによって、(1)式は左方向への反応が進み、平衡状態となることを期待してのことである。
【0070】
アンモニア水の濃度は化学反応式からの必要十分条件として、「フッ素化合物の濃度×フッ素化合物」に対するアンモニアの係数比(mol比)以上の濃度があれば、化学平衡定数が1(完全に解離)でも問題無い。係数とは(1)、(2)、(3)の平衡式で各化学式に係っている数字であり、フッ素化合物を例えばフッ化アンモニウムとすれば(1)式からフッ化アンモニウム、アンモニア水の係数は1であるので、フッ化アンモニウムに対するアンモニア水の係数比kは1となる。フッ化アンモニウムを1%とした有機系洗浄液であれば、
1% × k = 1%
のアンモニア水が必要である。
【0071】
有機系洗浄液の成分に純水が含まれており、市販のアンモニア水の濃度が約30%であることから、タンク23内の有機系洗浄液を全交換後、計算上、アンモニア水濃度が1%となるようにアンモニア水を供給する。アンモニア水の供給において、1ショット約10ミリリットルのショットポンプを用い、アンモニア水の供給量を微調整可能とする。1回の処理に対し、図2AのR2ステップにおいて有機系洗浄液が一定量廃液されるため、タンク23に新しい有機系洗浄液を補充するとともに、アンモニア水供給源19からアンモニア水を供給する。
【0072】
循環及び供給配管34から分岐された配管41には、フッ酸濃度計15が配されており、解離されたフッ酸濃度が常に測定される。フッ酸濃度が安定するように、1回処理毎のアンモニア水の流量を供給する。解離されたフッ酸濃度が低く、フッ酸濃度が測定できない場合は、酸化膜のエッチング量を測定して供給量を決定せざるを得ない。
【0073】
図3は、前記方法にてアンモニア水を供給して処理した場合の、酸化膜のエッチング量の推移を示す特性図である。図3(a)は基板処理を行った基板に対して、本実施の形態の洗浄処理を実施した場合の、エッチング量の時間的推移である。図3(b)は基板処理を行わなかった基板に対して、本実施の形態の洗浄処理を実施した場合の、エッチング量の時間的推移である。
【0074】
図3に示すように、アンモニア水を供給することにより、図7と比較して酸化膜のエッチング量の上昇が抑制できていることが分かる。なお、タンク23内の有機系洗浄液を全交換後のアンモニア水の供給量は、洗浄液の特性を変更しないために、洗浄液の液量に対して1%以下とする。更に、フッ化アンモニウムの化学平衡定数は小さいことが分かっているので、アンモニア水の濃度を低く(例えば0.2%)しても、同様にエッチングレートの上昇を抑制することが、実験により確認できた。
【0075】
なお、上記構成では、1回の処理毎にアンモニア水を供給する構成としたが、一定の処理回数毎に行ってもよい。
【0076】
よって、基板における導電膜や絶縁膜に対するエッチング量が常に一定であれば、配線抵抗のバラツキは発生せず、電子デバイスの歩留まりは安定するとともに、品質が安定する。
【0077】
また、洗浄液交換後の時間を基準にして、洗浄液交換からの経過時間に対し、エッチング量が増大することは既知の事実であり、図3(b)に示すように、1回の処理毎にアンモニア水を供給する代わりに一定の経過時間に対してアンモニア水を供給する手法であっても、同様な効果が得られる。図3(b)においては基板処理をしない場合でのエッチング量推移を示しているが、一定の経過時間の間に基板処理を行っても行わなくても同様な効果が得られる。
【0078】
また、一定の処理回数毎と一定の経過時間毎の両方に対し、アンモニア水を供給してもよい。エッチングレートの上昇率は、洗浄液の成分、洗浄装置の処理レシピ、装置構造によって生じるアンモニアの揮発量に左右されるため、アンモニア水の補充量は実験を繰り返して決定する必要がある。但し、フッ酸濃度計をモニタリングし、測定結果をフィードバックすることができれば、フッ酸濃度の上昇に応じてアンモニア水を供給することができる。
【0079】
上記のような基板洗浄装置による基板洗浄方法を、電子デバイスの製造方法に採用することができる。例えば、基板上に金属導電膜を形成する第1の工程と、レジストパターンをマスクとして金属導電膜に対してドライエッチングを行って、金属導電膜に金属配線部を形成する第2の工程と、酸化プラズマによるアッシング処理を行ってレジストパターンを除去する第3の工程と、金属配線部を洗浄する第4の工程とを有する製造方法において、第4の工程に、上記のような基板洗浄方法を適用すれば、歩留まり及び品質が安定した電子デバイスを製造することができる。
【0080】
また、基板上に形成された導電膜のパターン上に絶縁膜を形成する第1の工程と、レジストパターンをマスクとして前記絶縁膜に対してドライエッチングを行って絶縁膜に開口部を形成する第2の工程と、酸化プラズマによるアッシング処理を行ってレジストパターンを除去する第3の工程と、開口部を洗浄する第4の工程とを有する電子デバイス製造方法において、第4の工程に、上記のような基板洗浄方法を適用すれば、歩留まり及び品質が安定した電子デバイスを製造することができる。
【0081】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る基板洗浄方法について、図面を参照しながら説明する。図4は実施の形態2に係る基板洗浄装置の構成を示すブロック図である。
【0082】
前述の実施の形態1では、(数1)における(3)式のアンモニアガスが揮発性であることから、結果的に(1)式のアンモニア水が不足する可能性があるために、アンモニア水を補充することによってフッ酸濃度を安定させ、導電膜、絶縁膜のエッチング量が一定にさせていた。
【0083】
一方、実施の形態2においては、洗浄液中のアンモニアの揮発を防止すれば、(1)式のアンモニア水が不足せず平衡状態にすることが可能であることに着目した。アンモニアが揮発しやすい理由は、プロセスチャンバー2内のパージや、洗浄液供給タンク23内の空間27のパージや、洗浄液などを圧送する不活性ガスとして用いられる窒素が洗浄液に溶け込み、アンモニアを液中から気体に追い出してしまうためである。
【0084】
実施の形態2は、プロセスチャンバー2内のパージ、洗浄液供給タンク内の空間27のパージ、薬液を圧送させる不活性ガスとして、窒素の代わりにアンモニアガスを使った。アンモニアガスは、マスフローコントローラ83、86,89で流量が制御される。
【0085】
図4において、有機系洗浄液供給タンク23内、循環用配管34内、プロセスチャンバー2と供給タンクを結ぶ配管35、36,37内の大気が、アンモニアで充満されると、有機系洗浄液に気体のアンモニアが溶け込んで、液中のアンモニアが気体として揮発されてしまっても、有機系洗浄液内のアンモニアの濃度は変化しない。
【0086】
したがって、(3)式の反応が進行しなければ、(2)式の反応も進行せず、(1)式のアンモニア水は減らないため、結果として(1)式は平衡状態となる。これにより、フッ酸濃度が上昇しないため、エッチング量の上昇は見られない。実施の形態1と同様に、フッ酸濃度が安定していれば、導電膜、絶縁膜に対するエッチング量は常に一定であるため、配線抵抗のバラツキは発生せず、電子デバイスの歩留まりが安定するとともに、品質が安定する。
【0087】
また、不活性ガスであるアンモニアガスの濃度は、有機系洗浄液から生成する液中のアンモニアを揮発させないための量だけ必要であるため、窒素とアンモニアの混合ガスでも同様な効果が得られる。
【0088】
また、アンモニアは窒素と比較して刺激臭のある危険性の高い物質であるため、洗浄液供給タンク23からプロセスチャンバー2までの配管34,35、プロセスチャンバー2内のパージは窒素を使用し、洗浄液供給タンク用の配管85,45、洗浄液供給タンクの循環用配管34、プロセスチャンバーから使用した洗浄液を供給開閉弁88を介して洗浄液供給タンク23に戻すまでの配管36,37は、アンモニアガス、あるいは窒素とアンモニアの混合ガスを使用してもよい。
【0089】
(実施の形態3)
図5は、実施の形態3に係る基板洗浄装置の構成を示すブロック図である。
【0090】
実施の形態3は、前述の実施の形態2と同様に、アンモニアの揮発を防止すれば、前述の(数1)における(1)式のアンモニア水が不足せず、平衡状態にすることが可能であることに着目した。そのために、図5に示すように、洗浄液供給タンク23の下部に冷凍機92を設置し、直接洗浄液供給タンク23を冷やす構成とした。冷凍機92の冷凍方式は、直接膨張方式とチラー方式の2種類があるが、どちらでも良い。
【0091】
図5に示すように、冷凍機92を設けることにより、洗浄液供給タンク23内の液温度は10度から常温まで調整可能で、PID制御によって温度制御される。洗浄液供給タンク23内の有機系洗浄液が低温であれば、窒素が液体へ溶け込むのを減少させることができる。
【0092】
これにより、有機系洗浄液で生成されるアンモニア水は減らないため、結果として(1)式は平衡状態となり、フッ酸濃度が上昇しない。但し、プロセスチャンバー2内での基板8の洗浄は、常温以上で処理するのが望ましいため、配管35にインラインヒータ91を設けて、有機系洗浄液を加熱させている。
【0093】
なお、上記内容での一番の懸念は、洗浄液を低温にした際の影響であるが、洗浄液成分または反応生成物が析出される洗浄液でないことが望ましく、洗浄液をどこまで低温にできるかは実験を繰り返し見極める必要がある。但し、フッ酸濃度を安定させ、導電膜、絶縁膜に対するエッチング量を常に一定にさせて、配線抵抗のバラツキを発生せず、電子デバイスの歩留まりを安定させる手法であることは確かである。
【0094】
(実施の形態4)
図6は、実施の形態4に係る基板洗浄装置の構成を示すブロック図である。
【0095】
実施の形態4においては、前述の実施の形態3と同様に、アンモニアガスの揮発を防止すれば、前述の(数1)における(1)式のアンモニア水が不足せず、平衡状態にすることが可能であることに着目した。そのために、図6に示すように開閉弁93を設けて、開閉弁93を閉じることにより、タンク内の空間27における窒素の圧力を高くする構成を採用した。
【0096】
気体側の圧力が上がると、当然気体側の分子数が増えるので、この気体が窒素であっても、洗浄液中で生成されたアンモニアは大気に逃げることができないため、揮発は抑制される。
【0097】
通常、洗浄液供給タンク23内のパージの圧力は0.1〜0.2MPaであるが、本実施の形態ではパージの圧力を高くして(0.3〜0.4MPa)酸化膜のエッチング量を観測すると、前述の実施の形態1〜3の結果と同様に、エッチング量の上昇が抑制していることが確認できた。よって、配線抵抗のバラツキが小さくなり、電子デバイスの品質を安定させることができる。
【0098】
但し、洗浄液の特性によっては引火性が有る洗浄液もあるが、アンモニア濃度が変わらないように一定時間毎開閉弁93を開いて空間27のパージを行えば問題ない。
【0099】
また、基板洗浄中はプロセスチャンバー2内にも高圧がかかる。しかし、有機系洗浄液による洗浄時間のみ高圧がかかり、純水洗浄、IPA乾燥は圧力が各ドレインに抜け、有機系洗浄液による洗浄時間は長時間行われないため、問題はない。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、基板の表面に生成付着した反応物を除去するための洗浄方法等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1A】本発明の実施の形態1に係る基板洗浄装置の構成を示すブロック図
【図1B】基板洗浄装置の構成を示す要部ブロック図
【図2A】実施の形態1における基板洗浄方法のシーケンスを示すフローチャート、及びチャンバーの動作を示す模式図
【図2B】実施の形態1における基板洗浄方法のシーケンスを示すフローチャート、及びチャンバーの動作を示す模式図
【図3】実施の形態1における有機系洗浄液の基板洗浄方法を用いた場合の酸化膜のエッチング量の推移を示す特性図
【図4】実施の形態2に係る基板洗浄装置の構成を示すブロック図
【図5】実施の形態3に係る基板洗浄装置の構成を示すブロック図
【図6】実施の形態4に係る基板洗浄装置の構成を示すブロック図
【図7】従来の有機系洗浄液の基板洗浄方法を用いた場合の酸化膜のエッチング量の推移を示す特性図
【符号の説明】
【0102】
1 吐出ノズル機構部
2 プロセスチャンバー
3 吐出ノズル
4 基板保持部
5 ベアリング
6 モータ
7 回転機構部
8 基板
9 吐出ノズル機構部
10 吐出ノズル
11 IPA供給源
12 窒素供給源
13 排出口
14 純水供給源
15 HF濃度計
16 洗浄液供給源
19 アンモニア水供給源
20 洗浄液吐出・タンク内循環用ポンプ
21 フィルタ
22 アンモニア水吐出用ポンプ
23 有機系洗浄液用供給用タンク
24 ヒータ
25 上限センサー
26 下限センサー
27 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライエッチング処理によって、基板の表面に付着した反応物を除去することが可能な基板洗浄装置であって、
前記基板を保持して回転させる基板保持部と、前記基板に対して洗浄液、純水、有機溶剤、窒素を吐出させる吐出ノズルとを備えたチャンバーと、
前記洗浄液が収容される供給タンクと、
前記供給タンクから前記吐出ノズルへ前記洗浄液を供給するための配管及び圧送機構と、
前記チャンバーで前記基板の洗浄処理が行われた後の洗浄液を前記供給タンクへ戻す戻り配管と、
前記供給タンクへアンモニアを供給させるアンモニア供給部とを備え、
前記チャンバーにおいて前記基板を洗浄処理する毎に、前記アンモニア供給部から前記供給タンクへアンモニアを供給することを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項2】
ドライエッチング処理によって基板の表面に付着した反応物を除去するための洗浄工程を含んだ基板洗浄方法において、
前記基板を洗浄するプロセスチャンバーと、前記プロセスチャンバー内に前記基板を保持させる基板保持部と、前記基板保持部を回転させる回転機構部と、前記プロセスチャンバー内の上部にライン状に配置されかつ洗浄液、純水、有機溶剤、窒素を吐出する吐出ノズルを少なくとも1個以上設けたノズル機構部と、前記洗浄液が収容される供給タンクと、前記供給タンクから前記吐出ノズルへ洗浄液を供給するための配管及び圧送機構とを有した基板洗浄装置を駆動させて、
前記基板に回転を加えながら、前記洗浄液を連続または間欠にシャワー状に噴霧及び吐出させる洗浄を行い、前記基板を乾燥させ、
前記チャンバーにおいて前記基板を洗浄処理する毎に、前記供給タンクへアンモニアを供給することを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項3】
1回の基板を処理する前に前記供給タンクの容量に対して一定量の洗浄液を廃液する第1の工程と、
前記プロセスチャンバー内で前記基板を洗浄液で洗浄する第2の工程と、
前記基板を乾燥させる第3の工程とを備えており、
前記第2の工程において、前記プロセスチャンバーで使用済みの洗浄液を前記供給タンクに戻し、前記供給タンクに戻された洗浄液はフィルタを通して前記プロセスチャンバーへ送ることが可能であるとともに、
前記プロセスチャンバーから廃液された洗浄液の量に相当する量の新しい洗浄液を、前記供給タンクに供給する請求項2記載の基板洗浄方法。
【請求項4】
前記洗浄液の成分として、フッ化化合物、有機溶剤、水を含み、前記フッ化化合物の濃度が0.001〜10重量%、前記有機溶剤が単独でも2種類以上組み合わせて使用でき、濃度は通常1〜70重量%である請求項2から請求項3に記載の基板洗浄方法。
【請求項5】
前記基板の一定処理回数毎に、一定量のアンモニア水を前記供給タンクにポンプまたは気体圧送にて供給する請求項2から請求項4に記載の基板洗浄方法。
【請求項6】
一定の時間毎に一定量のアンモニア水を、前記供給タンクにポンプまたは気体圧送にて供給する請求項2から請求項4に記載の基板洗浄方法。
【請求項7】
前記基板の一定処理回数毎かつ一定時間毎に、一定量のアンモニア水を前記供給タンクにポンプまたは気体圧送にて供給する請求項2から請求項4記載の基板洗浄方法。
【請求項8】
前記供給タンクの洗浄液を循環する配管から分岐された配管に対して、フッ酸濃度計を設けて常にフッ酸濃度をモニタリングし、一定のフッ酸濃度となるようにアンモニア水の投入量を制御する請求項2から請求項7記載の基板洗浄方法。
【請求項9】
前記プロセスチャンバー内のパージ、前記供給タンク内の空間のパージ、洗浄液を、アンモニアガスもしくは窒素及びアンモニアの混合ガスで圧送させ、前記ガスの流量はマスフローコントローラにて流量制御される請求項2から請求項8に記載の基板洗浄方法。
【請求項10】
前記供給タンクから前記ノズル機構部へ洗浄液を供給するための配管にヒータを有し、
洗浄液成分または反応生成物が析出しない第1の温度に設定された前記供給タンク内の洗浄液を、前記吐出ノズルを介してプロセスチャンバーに吐出する場合、前記ヒータによって前記洗浄液を第2の温度に調節される請求項2から請求項9に記載の基板洗浄方法。
【請求項11】
洗浄液供給タンク内に常に窒素を供給させ、前記供給タンク内の圧力を増大させる請求項2から請求項10に記載の基板洗浄方法。
【請求項12】
前記基板上に金属導電膜を形成する第1の工程と、
レジストパターンをマスクとして前記金属導電膜に対してドライエッチングを行って、前記金属導電膜に金属配線部を形成する第2の工程と、
酸化プラズマによるアッシング処理を行って、前記レジストパターンを除去する第3の工程と、
前記金属配線部を洗浄する第4の工程とを備え、
前記第4の工程において、請求項2から11のいずれかに記載の洗浄方法によって前記基板を洗浄することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項13】
前記基板上に形成された導電膜のパターン上に絶縁膜を形成する第1の工程と、
レジストパターンをマスクとして前記絶縁膜に対してドライエッチングを行って、前記絶縁膜に開口部を形成する第2の工程と、
酸化プラズマによるアッシング処理を行って、前記レジストパターンを除去する第3の工程と、
前記開口部を洗浄する第4の工程とを備え、
前記第4の工程において、請求項2から11に記載の洗浄方法によって前記基板を洗浄することを特徴とする電子デバイスの製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−207941(P2007−207941A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23683(P2006−23683)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】