説明

基板洗浄方法及び基板洗浄装置

【課題】基板の被洗浄面の半径方向に沿った各位置(領域)における洗浄強度を考慮して、基板の全被洗浄面をより均一な洗浄強度でスクラブ洗浄できるようにする。
【解決手段】ロール状洗浄部材24の外周面を回転中の基板Wの被洗浄面に所定の接触幅で接触させて該被洗浄面をスクラブ洗浄する基板洗浄方法であって、洗浄部材24によるスクラブ洗浄中の全過程の少なくとも一部において、洗浄部材24の軸線Oが基板Wの回転中心線Oから接触幅の0.14〜0.5倍離れたオフセット洗浄位置に該洗浄部材24を配置してスクラブ洗浄を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転中の基板の被洗浄面にロールブラシやロールスポンジ等のロール状洗浄部材を接触させて被洗浄面をロール状洗浄部材でスクラブ洗浄する基板洗浄方法及び基板洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの高集積化が益々進む中、製品の高い歩留まりを実現するため、基板の全表面(表面及び/または裏面)を高度に洗浄する洗浄技術の開発が強く要求されている。例えば、絶縁膜の平坦化、STI(Shallow Trench Isolation)、Wプラグの形成、銅多層配線の形成等のために行われるCMP工程では、研磨処理後の基板表面に残留する残留物を有効に除去するために、接触式のスクラブ洗浄が広く採用されている。一方、デバイスの寸法が微細になると、研磨処理後に露出した金属配線等が薬液のエッチング力や機械力を受けて化学腐食や電気化学腐食を起こすことがあり、デバイスの信頼性に大きな悪影響を及ぼすと懸念されている。このため、基板の表面(被洗浄面)に残留する残留物を有効に除去でき、かつデバイスに与える悪影響を最小限に抑制できるようにした適切な洗浄技術の開発が望まれている。
【0003】
CMP装置は、一般に、半導体ウェーハ等の基板とロールブラシやロールスポンジ等のロール状洗浄部材を共に回転させながら、基板の被洗浄面に洗浄部材を所定の圧力で接触させて被洗浄面を洗浄部材でスクラブ洗浄するように構成されている。スクラブ洗浄は、一般に、洗浄部材の軸心を通る線(軸線)と基板の回転中心を通る線(回転中心線)とが互いに直交する位置に洗浄部材を配置して行われる(特許文献1,2参照)。
【0004】
しかし、ロールブラシやロールスポンジ等のロール状洗浄部材を該洗浄部材の軸線が基板の回転中心線と互いに直交する位置に配置して、例えば基板表面(被洗浄面)のスクラブ洗浄を行うと、基板の中心部では洗浄部材と基板表面との接触密度が高く、基板の周辺部では洗浄部材と基板表面との接触密度が低くなる。その結果、接触密度の差による基板表面の全面における洗浄強度の不均一が生じ、要求される洗浄性能を満たすことが困難となり、基板表面に局部的に配線腐食等が発生することを防止する上でも不利となる。
【0005】
図1及び図2は、ロール状洗浄部材としてロールブラシを用いた、従来の基板洗浄装置の概要を示す。図1及び図2に示すように、この基板洗浄装置には、基板Wの表面(上面)側に位置して、基板Wの表面に接触して該表面にスクラブ洗浄する上部ロールブラシ(ロール状洗浄部材)10と、基板Wの表面に洗浄液を供給する上部洗浄液供給ノズル12が備えられている。また、基板Wの裏面(下面)側に位置して、基板Wの裏面に接触して該裏面にスクラブ洗浄する下部ロールブラシ(ロール状洗浄部材)14と、基板Wの裏面に洗浄液を供給する下部洗浄液供給ノズル16が備えられている。
【0006】
上部ロールブラシ10及び下部ロールブラシ14として、図3に詳細に示すように、外周面に円柱状の多数のノジュール(突起)18aが設けられ、このノジュール18aの突出端面が基板Wの被洗浄面との接触面(接触幅:Li)となるロールブラシ18が用いられている。
【0007】
上部ロールブラシ10は、該ロールブラシ10の軸心を通る線(軸線)Oが基板Wの回転中心を通る線(回転中心線)Oと互いに直交する位置に配置されている。そして、上部洗浄液供給ノズル12から基板Wの表面に洗浄液を供給しながら上部ロールブラシ10を基板Wの表面に所定の圧力で接触させ、同時に、軸線Oを中心に上部ロールブラシ10を、回転中心線Oを中心に基板Wをそれぞれ回転(自転)させることで、基板Wの表面をスクラブ洗浄するように構成されている。
【0008】
同様に、下部ロールブラシ14は、該ロールブラシ14の軸心を通る線(軸線)Oが基板Wの回転中心を通る線(回転中心線)Oと互いに直交する位置に配置されている。そして、下部洗浄液供給ノズル16から基板Wの裏面に洗浄液を供給しながら下部ロールブラシ14を基板Wの裏面に所定の圧力で接触させ、同時に、軸線Oを中心に下部ロールブラシ14を、回転中心線Oを中心に基板Wをそれぞれ回転(自転)させることで、基板Wの裏面をスクラブ洗浄するように構成されている。
【0009】
この例の場合、基板Wの表面と裏面は、同一条件で洗浄されるので、以下、上部ロールブラシ10として、図3に示すロールブラシ18を使用して基板Wの表面を洗浄する場合について説明する。
【0010】
基板Wの表面の各点をロールブラシ18のノジュール18aが通過する時の単位時間あたりの擦り長さを算出し、基板Wの表面の円周方向に沿った位置(半径r)の平均値を洗浄強度R(m/s)とすると、この洗浄強度Rによって、基板Wの全表面における洗浄均一性を評価できると考えられる。この基板Wの表面の半径rにおける洗浄強度Rは、下記の式で表される、
【0011】
【数1】

【0012】
ここに、nは、ロールブラシの円周方向に沿って該ロールブラシに設けられているノジュールの数、Liは、ロールブラシの接触幅(この例の場合、図3に示すように、ノジュール18aの直径)、Rは、ロールブラシの半径、Vrwは、円周方向に沿ったノジュールの表面と基板の表面との相対速度の平均値であり、下記の式で求められる。
【数2】

ここに、Vrw(θ)は、円周方向各位置で、下記の式で求められる。
【0013】
【数3】

ここに、Vは、ノジュールの表面の速度ベクトル、Vは、基板表面(被洗浄面)の速度ベクトルである。
【0014】
図4に、ロールブラシ18(上部ロールブラシ10)の回転速度を100rpmの一定となし、基板Wの回転速度を、それぞれ50rpm、100rpm及び200rpmと変更して、基板Wの表面をロールブラシ18で洗浄した時における洗浄強度Rと基板の半径rとの関係を示す。図4から、何れの洗浄条件においても、基板Wの中心近傍領域に洗浄強度Rの高いピークが見られ、ピークの高さは、洗浄強度Rの平坦値(洗浄強度Rがほぼ一定になる値)の6〜30倍になり、洗浄強度Rのピーク領域の範囲は、基板Wの半径約25mm以内であることが判る。これは、洗浄強度Rを洗浄強度Rの平坦値に合わせて基板Wの表面の洗浄を行うと、基板Wの表面の半径約25mm以内の領域に洗浄強度が集中して配線腐食が発生しうることを示唆している。
【0015】
また、ロールブラシ18のノジュール18aの直径(接触幅:Li)を3mm、6mm、10mm及び15mmに変化させて洗浄する時の、洗浄強度Rと基板の半径rとの関係を算出した時の結果を図5に示す。図5から、何れの条件においても、洗浄集中領域が基板の中心部近傍に存在するが、接触幅の減少に従って、洗浄強度Rのピークの高さとピークの幅は小さくなることが判る。表1に洗浄強度Rが該洗浄強度Rの平坦値より20%上昇する時の基板Wの半径位置と接触幅の関係を示す。表1から、実用的な接触幅の範囲(例えば3〜10mm)では、洗浄強度Rが該洗浄強度Rの平坦値より20%以上上昇する時の基板Wの半径位置と接触幅との比(r/Li)は、8倍以内程度であることが判る。
【0016】
【表1】

【0017】
ロール状洗浄部材によって基板の表面(被洗浄面)を洗浄する時に基板の全表面に亘る洗浄が不均一となるのを緩和するために、ロールブラシやロールスポンジ等のロール状洗浄部材の形状に改良を加えること、例えば、ロールブラシの外周面に、密度や面積がロールブラシの長手方向に沿って異なるように突起(ノジュール)を形成したり(特許文献3参照)、ロールブラシの外径を変化させたりする(特許文献4参照)ことなどが種々提案されている。しかし、何れの提案でも、ロールブラシそのものを、基板との相対位置が変化しないように研磨装置に取り付けているため、ロールブラシや基板の回転条件によって、洗浄強度の被洗浄面上の分布を任意に調整できないと考えられる。
【0018】
基板を該基板の回転(自転)に伴って水平面内でロール状洗浄部材と平行に往復移動させるようにした洗浄装置(引用文献5参照)が提案されている。更に、上部ロールブラシと下部ロールブラシとを、その軸線を基板の回転中心線に対して平行かつ該回転中心線と直交する方向にずらして配置するようにした洗浄装置(引用文献6参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特許第4023907号明細書
【特許文献2】特許第3854085号明細書
【特許文献3】特開2001−358110号公報
【特許文献4】米国特許第特7185384号明細書
【特許文献5】特開2000−77379号公報
【特許文献6】特許第2887095号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、引用文献1〜6に記載の洗浄装置は、ノジュールとの接触幅及び接触頻度を考慮して、基板の被洗浄面の半径方向に沿った各位置(領域)における洗浄強度を考慮したものではない。このため、たとえ基板の表面(被洗浄面)をロール状洗浄部材と平行に往復移動させながら基板の被洗浄面を洗浄したり、更には、上部ロールブラシと下部ロールブラシとを、その軸線を基板の回転中心線に対して平行かつ該回転中心線と直交する方向にずらして配置したとしても、基板の被洗浄面の全面をより均一な洗浄強度でスクラブ洗浄することは困難であると考えられる。
【0021】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、基板の被洗浄面の半径方向に沿った各位置(領域)における洗浄強度を考慮して、基板の全被洗浄面をより均一な洗浄強度でスクラブ洗浄することができるようにした基板洗浄方法及び基板洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
請求項1に記載の発明は、ロール状洗浄部材の外周面を回転中の基板の被洗浄面に所定の接触幅で接触させて該被洗浄面をスクラブ洗浄する基板洗浄方法であって、前記洗浄部材によるスクラブ洗浄中の全過程の少なくとも一部において、前記洗浄部材の軸線が基板の回転中心線から前記接触幅の0.14〜0.5倍離れたオフセット洗浄位置に該洗浄部材を配置してスクラブ洗浄を行うことを特徴とする基板洗浄方法である。
【0023】
このように、スクラブ洗浄中の全過程の少なくとも一部において、オフセット洗浄位置にロール状洗浄部材を配置してスクラブ洗浄を行うことで、基板の被洗浄面の中心部が集中して洗浄されることを緩和し、しかも、オフセット洗浄位置を、洗浄部材の軸線が基板の回転中心線から接触幅の0.14〜0.5倍離れた位置とすることで、基板の被洗浄面の中心部が洗浄されなくなることを防止することができる。
【0024】
請求項2に記載の発明は、ロール状洗浄部材の外周面を回転中の基板の被洗浄面に所定の接触幅で接触させて該被洗浄面をスクラブ洗浄する基板洗浄方法であって、前記洗浄部材によるスクラブ洗浄中に、前記洗浄部材の軸線と基板の回転中心線とが互いに交わる位置の近傍で、前記洗浄部材を基板の被洗浄面と平行に前記接触幅の16倍以内の移動幅の範囲内で往復移動させることを特徴とする基板洗浄方法である。
【0025】
このように、洗浄部材の軸線と基板の回転中心線とが互いに交わる位置の近傍で、洗浄部材を基板の被洗浄面と平行に接触幅の16倍以内の移動幅の範囲内で往復移動させてスクラブ洗浄を行うことで、基板の被洗浄面の各領域における洗浄強度が該洗浄強度の平坦値より20%以上上昇することを抑制することができる。
【0026】
請求項3に記載の発明は、前記洗浄部材の移動速度を、前記洗浄部材の軸線と基板の回転中心線とが互いに交わる位置を該洗浄部材が最も速い速度で通過するように制御することを特徴とする請求項2記載の基板洗浄方法である。
【0027】
これにより、洗浄部材の軸線と基板の回転中心線とが互いに交わる位置及び該位置の近傍を洗浄部材が通過する時間を短くして、基板の被洗浄面を該被洗浄面の全面に亘ってより均一に洗浄することができる。
【0028】
請求項4に記載の発明は、前記洗浄部材の移動速度を、前記洗浄部材の軸線と基板の回転中心線とが互いに交わる位置から該洗浄部材が離れる距離に反比例し、最大移動速度と最小移動速度の比が3〜11となるように制御することを特徴とする請求項2または3記載の基板洗浄方法である。
これにより、洗浄部材の移動速度に依存して変化する洗浄強度を基板の全被洗浄面に亘ってより均一にすることができる。
【0029】
請求項5に記載の発明は、ロール状洗浄部材の外周面を回転中の基板の被洗浄面に接触させて該被洗浄面をスクラブ洗浄する基板洗浄方法であって、前記洗浄部材を複数の洗浄位置にそれぞれ所定時間停滞させてスクラブ洗浄を行い、前記複数の洗浄位置の内の少なくとも1つの洗浄位置は、前記洗浄部材の軸線が基板の回転中心線から離れた位置に前記洗浄部材が位置するオフセット洗浄位置であることを特徴とする基板洗浄方法である。
【0030】
このように、洗浄部材の軸線が基板の回転中心線から離れたオフセット洗浄位置に洗浄部材を位置させて洗浄することで、基板の中心部に洗浄強度が集中することを緩和することができる。
【0031】
請求項6に記載の発明は、前記オフセット洗浄位置を複数有し、前記洗浄部材が前記各オフセット洗浄位置に停滞する滞在時間が各オフセット洗浄位置と基板の回転中心線との距離に比例することを特徴とする請求項5記載の基板洗浄方法である。
これにより、基板の被洗浄面を該被洗浄面の全面に亘ってより均一に洗浄することができる。
【0032】
請求項7に記載の発明は、前記洗浄部材の外周面には、基板の被洗浄面に接触する複数のノジュールが、前記洗浄部材の中心部から外方に向かうに従って、分布が密となるように配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の基板洗浄方法である。
これによって、基板の中心部に洗浄強度が集中することを、洗浄部材自体によって緩和することができる。
【0033】
請求項8に記載の発明は、ロール状洗浄部材の外周面を回転中の基板の被洗浄面に所定の接触幅で接触させてスクラブ洗浄する洗浄装置であって、前記洗浄部材の軸線が基板の回転中心線から前記接触幅の0.14〜0.5倍離れたオフセット洗浄位置に該洗浄部材を移動させストッパを介して停止させる移動機構と、前記ストッパの位置を調整するストッパ位置調整部を有することを特徴とする基板洗浄装置である。
【0034】
これにより、洗浄部材の停止位置をストッパによって機械的に規制することで再現性を良くし、しかもストッパ位置調整部によって、ストッパの位置を容易かつ迅速に調整することができる。
【0035】
請求項9に記載の発明は、ロール状洗浄部材の外周面を回転中の基板の被洗浄面に所定の接触幅で接触させてスクラブ洗浄する洗浄装置であって、前記洗浄部材の軸線と基板の回転中心線とが互いに交わる位置の近傍で、前記洗浄部材を基板の被洗浄面と平行に前記接触幅の16倍以内の移動幅の範囲内で往復移動させる往復移動機構を有することを特徴とする基板洗浄装置である。
【0036】
請求項10に記載の発明は、前記往復移動機構は、前記洗浄部材の移動速度を制御する制御部を有することを特徴とする請求項9記載の基板洗浄装置である。
【0037】
請求項11に記載の発明は、前記往復移動機構は、枢軸を介して一端を回転自在に支承した前記洗浄部材を、該枢軸を中心に揺動させるように構成されていることを特徴とする請求項9または10記載の基板洗浄装置である。
【0038】
これにより、洗浄部材の基端のみに駆動機構を設けて、構造の簡単化を図ることができる。しかも、洗浄強度が基板の被洗浄面の中心部で弱く、外周部で弱くなるように、洗浄部材の自由端側の押付け圧力を調整することができる。
【0039】
請求項12に記載の発明は、ロール状洗浄部材の外周面を回転中の基板の被洗浄面に接触させて該被洗浄面をスクラブ洗浄する基板洗浄装置であって、前記洗浄部材を、前記洗浄部材の軸線が基板の回転中心線と互いに交わる位置に該洗浄部材が位置する洗浄位置と、前記洗浄部材の軸線が基板の回転中心線から離れた位置に該洗浄部材が位置する、少なくとも1つのオフセット洗浄位置との間を往復移動させて各洗浄位置に所定時間停滞させる往復移動機構を有することを特徴とする基板洗浄装置である。
【0040】
請求項13に記載の発明は、前記往復移動機構は、前記洗浄部材を前記各洗浄位置に位置決めして停止させる、位置調整可能なストッパを有することを特徴とする請求項12記載の基板洗浄装置である。
これにより、洗浄部材の停止位置をストッパによって機械的に規制することで再現性を良くし、しかもストッパの位置を容易かつ迅速に調整することができる。
【0041】
請求項14に記載の発明は、前記オフセット洗浄位置は複数設けられ、各オフセット洗浄位置に前記洗浄部材が停滞する滞在時間を、各オフセット洗浄位置と基板の回転中心線との距離に比例するように制御することを特徴とする請求項12または13記載の基板洗浄装置である。
【0042】
請求項15に記載の発明は、前記洗浄部材の外周面には、基板の被洗浄面に接触する複数のノジュールが、前記洗浄部材の中心部から外方に向かうに従って、分布が密となるように配置されていることを特徴とする請求項8乃至13のいずれかに記載の基板洗浄装置である。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、ロール状洗浄部材と基板の被接触面との接触密度を調整して洗浄強度を該被接触面の全面に亘って均等化させ、これによって、基板の中心部近傍に洗浄強度が集中して局部配線の腐食や表面荒れ等が生じることを防止しつつ、洗浄効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】従来の基板洗浄装置の概要を示す平面図である。
【図2】従来の基板洗浄装置の概要を示す縦断正面図である。
【図3】従来の基板洗浄装置及び本発明の各実施形態の基板洗浄装置にロール状洗浄部材として使用されるロールブラシと基板の被洗浄面とを示す要部拡大断面図である。
【図4】図1及び図2に示す基板洗浄装置を使用し、ロールブラシの回転速度を一定となし、基板の回転速度を50rpm、100rpm及び200rpmと変更して、基板の表面をロールブラシで洗浄した時における洗浄強度と基板の半径との関係を示すグラフである。
【図5】図1及び図2に示す基板洗浄装置を使用し、ロールブラシと基板の表面との接触幅を3mm、6mm、10mm及び15mmに変化させて洗浄する時の洗浄強度と基板の半径との関係を示すグラフである。
【図6】本発明の実施形態の基板洗浄装置を示す平面図である。
【図7】本発明の実施形態の基板洗浄装置を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施形態の基板洗浄装置を示す縦断正面図である。
【図9】本発明の実施形態の基板洗浄装置を示す縦断側面図である。
【図10】図6乃至図9に示す基板洗浄装置における上部ロールブラシと基板との関係を示す平面図である。
【図11】図6乃至図9に示す基板洗浄装置を使用し、上部ロールブラシの軸線の基板の回転中心線からのオフセット量と接触幅との比を0,0.27,0.68,1.37及び2.74に変化させて基板の表面の洗浄する時における洗浄強度と基板の半径との関係を示すグラフである。
【図12】本発明の他の実施形態の基板洗浄装置を示す平面図である。
【図13】本発明の他の実施形態の基板洗浄装置を示す斜視図である。
【図14】本発明の他の実施形態の基板洗浄装置を示す縦断正面図である。
【図15】図12乃至図14に示す基板洗浄装置における上部ロールブラシと基板との第1の関係を示す平面図である。
【図16】図12乃至図14に示す基板洗浄装置を使用し、それぞれの洗浄位置(3位置)に上部ロールブラシを等時間停滞させて基板の表面を洗浄する場合(等配分)と、上部ロールブラシを停滞させる時間を変化させて基板の表面を洗浄する場合(分布配分)における洗浄強度と基板の半径との関係を示すグラフである。
【図17】図12乃至図14に示す基板洗浄装置を使用し、それぞれの洗浄位置(2位置)に上部ロールブラシを等時間停滞させて基板の表面を洗浄するた場合(等配分)と、上部ロールブラシを停滞させる時間を変化させて基板の表面を洗浄する場合(分布配分)における洗浄強度と基板の半径との関係を示すグラフである。
【図18】図12乃至図14に示す基板洗浄装置における上部ロールブラシと基板との第2の関係を示す平面図である。
【図19】図12乃至図14に示す基板洗浄装置を使用し、移動係数の常数を、0.05,0.1,0.3,0.5,1.0及び1.5と変化させて基板の表面を洗浄する時の洗浄強度と基板の半径との関係を示すグラフである。
【図20】図12乃至図14に示す基板洗浄装置を使用し、移動係数の常数を、0.05,0.1,0.3,0.5,1.0及び1.5と変化させて基板の表面を洗浄する時の基板の回転中心から上部ロールブラシまでの距離(オフセット量)と速度係数比との関係を示すグラフである。
【図21】本発明の更に他の実施形態の基板洗浄装置を示す平面図である。
【図22】本発明の更に他の実施形態の基板洗浄装置を示す斜視図である。
【図23】本発明の実施形態の基板洗浄装置における上部ロールブラシと基板との他の関係を示す平面図である。
【図24】本発明の実施形態の基板洗浄装置における上部ロールブラシと基板との他の関係を示す縦断正面図である。
【図25】本発明の実施形態の基板洗浄装置を備えた研磨装置の平面配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下の各例では、ロール状洗浄部材として、図3に示す、外周面に多数のノジュール(突起)18aを設けて該ノジュール18aの突出端面を基板Wの被洗浄面と接触面(接触幅:Li)としたロールブラシ18を使用している。また、同一または相当する部材には、同一符号を付して重複した説明を省略する。
【0046】
図6乃至図9は、本発明の実施形態の基板洗浄装置20aを示す。この基板洗浄装置20aは、半導体ウェーハ等の基板Wの周縁部を挟持して該基板Wを水平に保持する複数(図示では計4個)の回転ローラ22を備えており、回転ローラ22で水平に保持された基板Wは、回転ローラ22の回転(自転)に伴って、基板Wの中心を回転中心として該回転中心を通る線(回転中心線)Oを中心に回転するようになっている。
【0047】
回転ローラ22で保持された基板Wの表面(上面)側に位置して、基板Wの表面に接触して該表面をスクラブ洗浄する上部ロールブラシ(ロール状洗浄部材)24と、基板Wの表面に洗浄液を供給する上部洗浄液供給ノズル26が備えられている。この上部ロールブラシ24として、図3に示す、外周面に多数の円柱状のノジュール(突起)18aを設けたロールブラシ18(接触幅:Li)が使用されている。上部ロールブラシ24の回転軸28は、上部ロールブラシ24の軸心を通る線(軸線)Oを中心に上部ロールブラシ24を回転(自転)させる駆動モータ30に連結されている。
【0048】
回転ローラ22で保持された基板Wの側方に位置して、移動機構としての走行用シリンダ32と、この走行用シリンダ32の作動に伴って走行ガイド34をガイドとして上部ロールブラシ24の軸心Oと水平面内で直交する方向に走行する走行体36が配置され、この走行体36の上面に昇降用シリンダ38が垂直に立設されている。そして、この昇降用シリンダ38の上方に延びるシリンダロッドの上端に上記駆動モータ30が連結されている。更に、走行ガイド34の走行方向に沿った所定位置には、走行体36の端面に当接して該走行体36の走行を停止させ、これによって、上部ロールブラシ24の回転ローラ22で保持された基板Wの該基板Wの回転中心線Oと水平面で直交する方向の位置決めを行うストッパ40が配置されている。このストッパ40は、この例では、ボルト42の頭部で構成され、ボルト42の締め付け量を調整することで、ストッパ40の位置決めを行うようになっている。これにより、ボルト42によって、ストッパ40の位置を調整するストッパ位置調整部が構成されている。
【0049】
ストッパ40は、上部ロールブラシ24の軸心Oが基板Wの回転中心線Oから上記接触幅Li(図3参照)の0.14〜0.5倍離れたオフセット洗浄位置に上部ロールブラシ24を停止させる位置に配置される。つまり、上部ロールブラシ24の軸心Oが基板Wの回転中心線Oからのオフセット量Δは、上記接触幅Li(図3参照)の0.14〜0.5倍(Δ=0.14〜0.5Li)に設定されている。そして、ストッパ40の位置は、ボルト(ストッパ位置調整部)42によって、容易に調整される。
【0050】
回転ローラ22で保持された基板Wの裏面(下面)側に位置して、基板Wの裏面に接触して該裏面をスクラブ洗浄する下部ロールブラシ(ロール状洗浄部材)50と、基板Wの裏面に洗浄液を供給する下部洗浄液供給ノズル52が備えられている。この下部ロールブラシ52として、図3に示す、外周面に多数の円柱状のノジュール(突起)18aを設けたロールブラシ18が使用されている。
【0051】
下部ロールブラシ52の回転軸54は従動プーリ56が、下部ロールブラシ52の下方に配置された駆動モータ58には駆動プーリ60はそれぞれ固定され、両プーリ56,60間には、ベルト62が掛け渡されている。これによって、駆動モータ58の駆動に伴って、下部ロールブラシ50は、その軸心を通る線(軸線)Oを中心に回転(自転)するようになっている。更に、駆動モータ58の下方に位置して、該駆動モータ58及び下部ロールブラシ50を一体に昇降させる昇降用シリンダ64が配置されている。
【0052】
この例では、前述の上部ロールブラシ24と同様に、下部ロールブラシ50の軸心Oが基板Wの回転中心線Oからオフセット量Δ(Δ=0.14〜0.5Li)だけ離れたオフセット洗浄位置に下部ロールブラシ50が位置してスクラブ洗浄を行うようになっている。
【0053】
なお、この例では、下部ロールブラシ50の軸心Oが基板Wの回転中心線Oからオフセット量Δ(Δ=0.14〜0.5Li)だけ離れたオフセット洗浄位置に下部ロールブラシ50が位置してスクラブ洗浄を行うようになっているが、例えば基板Wの裏面の洗浄度がそれ程要求されない場合には、下部ロールブラシ50の軸心Oが基板Wの回転中心線Oと交わる位置に下部ロールブラシ50が位置するようにしてもよい。更に、前述の上部ロールブラシ24と同様に、下部ロールブラシ50を基板Wの回転中心線Oと平面上で直交する方向に移動自在に構成し、ストッパ等を介して、下部ロールブラシ50の位置決めを行って、所定のスクラブ洗浄位置に停止させるように構成しても良い。
【0054】
この例に基板洗浄装置20aよれば、まず回転ローラ22で基板Wを水平に保持する。一方、上部ロールブラシ24にあっては、走行用シリンダ32を作動して走行体36を走行させ該走行体36をストッパ40に当接させることで、上部ロールブラシ24の位置決めを行う。そして、回転ローラ22を回転(自転)させることで、基板Wをその中心の回転中心軸Oを中心に、例えば100rpm程度の回転速度で回転(自転)させる。
【0055】
この状態で、基板Wの表面にあっては、上部洗浄液供給ノズル26から基板Wの表面(上面)に洗浄液を供給し、同時に、上部ローラブラシ24を、その軸心Oを中心に回転させながら下降させて基板Wの表面に接触させ、これによって、該表面の上部ローラブラシ24によるスクラブ洗浄を行う。このスクラブ洗浄時、上部ロールブラシ24は、図3に示すように、上部ロールブラシ24として使用されるロールブラシ18に設けられているノジュール18aの上端面において、接触幅Liで基板Wの表面と接触する。
【0056】
基板Wの裏面にあってもほぼ同様に、下部洗浄液供給ノズル52から基板Wの裏面(下面)に洗浄液を供給し、同時に、下部ローラブラシ50を、その軸心Oを中心に回転させながら上昇させて基板Wの裏面に接触させ、これによって、該裏面の下部ローラブラシ50によるスクラブ洗浄を行う。
【0057】
そして、スクラブ洗浄が終了した後、上部ロールブラシ24を上昇させ、下部ロールブラシ50を下降させた後、上部洗浄液供給ノズル26及び下部洗浄液供給ノズル52からの洗浄液の供給を停止し、更に回転ローラ22、上部ロールブラシ24及び下部ロールブラシ50の回転を停止させる、
【0058】
ここに、上部ロールブラシ24の軸線O、更には下部ロールブラシ50の軸線Oの基板Wの回転中心線Oからのオフセット量Δを接触幅(この例では、ノジュール18aの直径)Liの0.14〜0.5倍に設定している。これは、以下の理由による。
【0059】
つまり、図10に示すように、上部ロールブラシ24の軸線Oの基板Wの回転中心線Oからのオフセット量hと接触幅(ノジュールの直径)Li(図3参照)との比(h/Li)を0,0.27,0.68,1.37及び2.74に変化させて上部ロールブラシ24で基板Wの表面の洗浄する時における前記洗浄強度Rと基板Wの半径rとの関係を算出した結果を図11に示す。また、オフセット量hと接触幅Liとの比(h/Li)を、0,0.14,0.27,0.41,0.50,0.55,0.68,1.37,2.74,4.11,4.79及び5.48に変化させて上部ロールブラシ24で基板Wの表面の洗浄した時における前記洗浄強度Rの標準偏差の相対値(均一性)1σを算出した結果を表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
図11から、オフセット量hと接触幅Liの比(h/Li)が0.5以下(h/Li<0.5)の場合、基板の中心部の洗浄強度が集中する範囲は狭くなり、均一性1σは小さくなり、オフセット量hと接触幅Liの比(h/Li)を0.5以上(h/Li>0.5)にすると、基板の中心部の洗浄強度が集中する特異点がなくなり、均一性1σは更に小さくなるが、基板の中心部に洗浄が出来ない領域が現れることが判る。また、表2から、オフセット量hと接触幅Liの比(h/Li)を0.14以上(h/Li>0.14)とすることで、均一性1σに対する効果が現れることが判る。従って、ロールブラシの位置を固定して洗浄する場合、オフセット量hと接触幅Liの比(h/Li)は、0.14以上0.50以下であることが望ましい。
【0062】
図12乃至図14は、本発明の他の実施形態に係る基板洗浄装置20bを示す。この基板洗浄装置20bは、正逆回転及び回転速度が制御可能な走行用モータ70と、この走行用モータ70の出力軸と走行体36とを結ぶボールねじ等の直動機構72と、走行用モータ70を制御する制御部74によって構成されて、回転ローラ22で保持した基板Wの回転中心線Oと水平面内で直交する方向に走行体36を上部ロールブラシ24と共に往復移動させる往復移動機構76を備えている。これによって、走行用モータ70の正転に伴って、走行体36は、上部ロールブラシ24と共に、例えば図12の右方向に移動し、走行用モータ70の逆転に伴って、走行体36は、上部ロールブラシ24と共に、例えば図12の左方向に移動する。走行体36の移動速度、停止位置及び停滞(停止)時間は、制御部74で走行用モータ70の回転速度及び回転方向を制御することで制御される。
【0063】
この例では、上部ロールブラシ24の軸心Oが基板Wの回転中心線Oと交差する洗浄位置と、上部ロールブラシ24の軸心Oが基板Wの回転中心線Oからオフセット量Δだけオフセットしたオフセット洗浄位置の少なくとも2つの洗浄位置の間を上部ロールブラシ24が往復移動するように、往復移動機構76を介して、走行体36が往復移動する。
【0064】
次に、この基板洗浄装置20bによる基板Wの表面の洗浄処理について説明する。
先ず、第1の洗浄処理では、図15に示す、上部ロールブラシ24の軸心Oと基板Wの回転中心線Oとのオフセット量hが0mmの第1洗浄位置(中央洗浄位置)、オフセット量hが、例えば10mmの第1オフセット洗浄位置、及びオフセット量hが、例えば20mmの第2オフセット洗浄位置の3つの洗浄位置に上部ロールブラシ24を位置させて基板Wの表面を洗浄する。つまり、上部ロールブラシ24を第1洗浄位置(中央洗浄位置)に位置させて所定時間基板Wの表面を洗浄した後、上部ロールブラシ24を第1オフセット洗浄位置に位置させて所定時間基板Wの表面を洗浄し、しかる後、上部ロールブラシ24を第2オフセット洗浄位置に位置させて所定時間基板Wの表面を洗浄する。そして、上部ロールブラシ24を第1オフセット洗浄位置に位置させて所定時間基板Wの表面を洗浄し、しかる後、上部ロールブラシ24を第1洗浄位置(中央洗浄位置)に位置させて所定時間基板Wの表面を洗浄する。以降、この洗浄処理を繰り返す。
【0065】
ここに、それぞれの洗浄位置に上部ロールブラシ24を等時間停滞させて基板Wの表面を洗浄する場合(等配分)、つまり第1洗浄位置(中央洗浄位置)での上部ロールブラシ24の洗浄時間(停滞時間):t、第1オフセット洗浄位置での上部ロールブラシ24の洗浄時間(停滞時間):t、及び第2オフセット洗浄位置での上部ロールブラシ24の洗浄時間(停滞時間):tを全て等しくした場合(t=t=t)と、それぞれの洗浄位置に上部ロールブラシ24を停滞させる時間を変化させて基板Wの表面を洗浄する場合(分布配分)、つまり第1洗浄位置での上部ロールブラシ24の洗浄時間(停滞時間):t、第1オフセット洗浄位置での上部ロールブラシ24の洗浄時間(停滞時間):t、及び第2オフセット洗浄位置での上部ロールブラシ24の洗浄時間(停滞時間):tを、オフセット量hに応じて、1:2:3の割合で変化させた場合(t:t:t=1:2:3)の上記洗浄強度Rc基板Wの半径rとの関係を算出した結果を図16に示す。また、この時の洗浄強度Rの標準偏差の相対値(均一性)1σを算出した結果を表3に示す。
【0066】
【表3】

【0067】
この図16及び表3から、いずれの場合も、基板の中心部に洗浄強度が集中することを大幅に抑制できることが判る。特に、上部ロールブラシ24の洗浄時間(停滞時間)を均一に配分した場合(等配分)に比べ、上部ロールブラシ24の洗浄時間(停滞時間)を、オフセット量hに応じて変化させて配分した場合(分布配分)の方が、基板Wの表面(被洗浄面)の全面に亘る均一な洗浄強度が得られ、洗浄強度均一性1σを等配分の65%から分布配分の35%に向上できることが判る。上部ロールブラシ24を各洗浄位置に移動させる際、調整の時間を省くために、上部ロールブラシ24を基板Wの表面から離すことなく移動させることが好ましい。
【0068】
第2の洗浄処理では、図15に示す、上部ロールブラシ24の軸心Oと基板Wの回転中心線Oとのオフセット量hが0mmの第1洗浄位置(中央洗浄位置)と、オフセット量hが、例えば20mmの第2オフセット洗浄位置の2つの洗浄位置に上部ロールブラシ24を位置させて基板Wの表面を洗浄する。
【0069】
ここに、それぞれの洗浄位置に上部ロールブラシ21の等時間に停止させて基板Wの表面を洗浄する場合(等分布)、つまり第1洗浄位置での上部ロールブラシ24の洗浄時間(停滞時間):tと第2オフセット洗浄位置での上部ロールブラシ24の洗浄時間(停滞時間):tとを等しくした場合(t=t)と、それぞれの洗浄位置に上部ロールブラシ24を停滞させる時間を変化させて基板Wの表面を洗浄する場合(分布配分)、つまり第1洗浄位置での上部ロールブラシ24の洗浄時間(停滞時間):tと第2オフセット洗浄位置での上部ロールブラシ24の洗浄時間(停滞時間):tとを、オフセット量hに応じて、1:2に変化(比例)させた場合(t:t=1:2)の上記洗浄強度Rc基板Wの半径rとの関係を算出した結果を図17に示す。また、この時の洗浄強度Rの標準偏差の相対値(均一性)1σを算出した結果を表4に示す。
【0070】
【表4】

この図17及び表4から、いずれの場合も、基板の中心部に洗浄強度が集中することを大幅に抑制できることが判る。特に、上部ロールブラシ24の洗浄時間(停滞時間)を均一に配分した場合(等配分)に比べ、上部ロールブラシ24の洗浄時間(停滞時間)を、オフセット量hに応じて、比例配分(1:2)した場合(分布配分)の方が、基板Wの表面(被洗浄面)の全面に亘る均一な洗浄強度が得られ、洗浄強度均一性1σを等一配分の89%から分布配分の70%に向上できることが判る。
【0071】
このように、洗浄位置を2つすると、洗浄強度の被洗浄面の全面に亘る均一性の面では洗浄位置を3つとして場合に及ばないものの、オフセット洗浄位置の数が少ないため、構造的に簡素化することができる。
【0072】
第3の洗浄処理では、図18に示すように、保持ローラ20で保持した基板Wの回転中心線Oを中心として、この左右に等間隔な移動幅pの範囲内で上部ロールブラシ24を連続して往復移動させて基板Wの表面を洗浄する。この上部ロールブラシ24の移動範囲pは、上記図3に示す接触幅Liの16倍以内(p<16Li)に設定されている。
【0073】
これは、前述の表1に示すように、上部ロールブラシ10の軸心Oが基板Wの回転中心線Oと交差する位置に上部ロールブラシ10を配置し、この上部ロールブラシ10として使用されるロールブラシ18のノジュール18aの直径(接触幅:Li)を3mm、6mm、10mm及び15mmに変化させて基板の表面を洗浄した時、実用的な接触幅(ノジュール18aの直径)の範囲(例えば3〜10mm)では、洗浄強度Rが洗浄強度Rの平坦値より20%以上上昇する時の基板Wの半径位置と接触幅の比は8倍以内程度であることに基づく。つまり、移動幅pを接触幅Liの16倍以内に設定することで、洗浄強度Rが洗浄強度Rの平坦値より20%以上上昇することを抑制することができる。
【0074】
この例では、移動幅pは、例えば40mm(p=40mm)に設定されており、上部ロールブラシ24の移動中に上部ロールブラシ24が基板表面の各位置に接触する時間を変化させるために、上部ロールブラシ24の移動速度を、基板の回転中心を通過するときが最も速く、基板の回転中心から離れるに従って順次遅くするように調整している。つまり、上部ロールブラシ24の移動速度の速度係数V(無次元)は、下記の式で表わされる。
【0075】
【数4】

ここに、Vは、移動係数の常数で、xは、基板の回転中心から上部ロールブラシまでの距離(オフセット量)である。
【0076】
ここで、移動係数の常数Vを、0.05,0.1,0.3,0.5,1.0及び1.5と変化させて基板Wの表面を洗浄する時の洗浄強度Rを算出した時の該洗浄強度Rと基板Wの半径との関係を図19に、基板Wの回転中心から上部ロールブラシ24までの距離(オフセット量)と速度係数比(λ=Vmax/V)との関係を図20にそれぞれ示す。
【0077】
図20から、x(オフセット量)=0の時の最大速度係数Vmaxと最小速度係数Vの比λ(=Vmax/V)は、それぞれ20.4,10.8,4.3,3.0,2.0,1.7であることが判る。この最大速度係数比(λ=Vmax/V)における洗浄強度Rの標準偏差の相対値(均一性)1σを算出した結果を表5に示す
【0078】
【表5】

【0079】
この表5から、いずれの場合も、基板の中心部に洗浄強度が集中することを大幅に抑制することができ、特に、最大移動速度と最小移動速度の比(最大速度係数比:λ)を2〜11、好ましくは、3〜11とすることで、標準偏差の相対値(均一性)1σを40%以下に抑制することができ、速度係数の常数Vが0.3の時の標準偏差の相対値(均一性)1σは最も小さく、29%となることが判る。
【0080】
以上のVは速度係数であり、実際に洗浄している時の移動速度U(移動幅pを1回通過する場合)を以下に求める。ここで、上部ロールブラシ24の移動速度U=V×1(m/s)とすれば、上部ロールブラシ24が移動幅pを通過する時間τは下記の式で求められる。
【0081】
【数5】

【0082】
実際のプロセス処理時間(移動幅pを1回通過する時間)をtとすると、
=τ×U/t
になる。
【0083】
以上の移動速度Uは、移動幅pを1回通過する場合の値(時間)である。プロセスに応じて同じ処理時間で移動幅をM回が必要とする場合、上部ロールブラシ24の移動速度Uは、M×U(U=M×U)となる。
【0084】
図21乃至図22は、本発明の更に他の実施形態の基板洗浄装置20cを示す。この基板洗浄装置20cの前記基板洗浄装置20bと異なる点は、走行体36を走行させる第1走行用シリンダ80と、第1走行用シリンダ80を走行体36と共に走行させる第2走行用シリンダ82によって、往復移動機構84を構成している点にある。走行体36は、走行ガイド86にガイドされて走行するように構成され、この走行ガイド86に沿った位置には、走行体36の端面に当接して該走行体36の移動を停止させる一対のストッパ88a,88bが配置されている。更に、第1走行用シリンダ80は、走行ガイド90にガイドされて走行するように構成され、この走行ガイド90に沿った位置には、第1走行用シリンダ80の端面に当接して該第1走行用シリンダ80の移動を停止させる一対のストッパ92a,92bが配置されている。これらの各ストッパ88a,88b,92a,92bは、ボルトで構成され、該ボルトの締め付け量を調整することで、走行体36及び第1走行用シリンダ80の左右の停止位置を調整できるようになっている。
【0085】
そして、この例では、走行体36を一方のストッパ88aに当接する位置から他方のストッパ88bに当接する位置まで走行させることで、上部ロールブラシ24を第1オフセット洗浄位置(位置B)から中央洗浄位置(位置A)に移動させ、第1走行用シリンダ80を走行体36と共に一方のストッパ92aに当接する位置から他方のストッパ92bに当接する位置まで走行させることで、上部ロールブラシ24を第2オフセット洗浄位置(位置C)から第1オフセット洗浄位置(位置B)に移動させて、基板Wの表面をスクラブ洗浄するように構成されている。
【0086】
このように、上部ロールブラシ24の停止位置(洗浄位置)をストッパ88a,88b,92a,92bによって機械的に規制することで再現性を良くし、しかもストッパ88a,88b,92a,92bを、例えばボルト等で構成することで、ストッパ88a,88b,92a,92bの位置を容易かつ迅速に調整することができる。
【0087】
なお、上記各例においては、移動の前後に互いに平行となるように上部ロールブラシ24を横移動させるようにしているが、図23に示すように、上部ロールブラシ24の一端を枢軸94を介して揺動自在に支承し、この枢軸94を中心に上部ロールブラシ24を基板Wと平行に水平方向に揺動させるようにしてもよい。このように、上部ロールブラシ24を枢軸94を中心に揺動させても、上部ロールブラシ24を横移動させるようにした場合と同様な効果が得られ、例えば基板Wとして300mmの半導体ウェーハを使用した場合、上部ロールブラシ24の片側揺動角度を約10°とすることで、図10に示すオフセット量hを20mmとした場合とほぼ同等な効果を得ることができる。しかも、上部ロールブラシ24の一端(基端)のみに駆動機構を設けることで、構造の簡単化を図ることができる。
【0088】
また、図24に示すように、上部ロールブラシ24の自由端側に可変荷重Wfを加える機構を設けることで、上部ロールブラシ24の長手方向に沿って傾斜した押付け圧を形成し、基板Wの中心部より外周部の方が高い押付け圧とすることで、基板Wの上面に対するより均一な洗浄強度を得ることができる。
【0089】
図25は、本発明の実施形態の基板洗浄装置20aを備えた研磨装置を示す。図25に示すように、この研磨装置は、基板を搬入・搬出するロード・アンロード部100、基板表面を研磨して平坦化する研磨部102、研磨後の基板を洗浄する洗浄部104及び基板を搬送する基板搬送部106を備えている。ロード・アンロード部100は、半導体ウェーハ等の基板をストックする複数(図示では3個)の基板カセットを載置するフロントロード部108と、第1搬送ロボット110を備えている。
【0090】
研磨部102には、この例では、4つの研磨ユニット112が備えられ、基板搬送部106は、互いに隣接した2つの研磨ユニット間で基板の搬送を行う第1リニアトランスポータ114a及び第2トランスポータ114bから構成されている。洗浄部104は、粗洗浄を行う、本発明の実施形態に係る2つの基板洗浄装置20a、スピンドライ方式を採用して仕上げ洗浄を行う仕上げ洗浄装置118及び乾燥ユニット120を有している。更に、第1リニアトランスポータ114a、第2トランスポータ114b及び洗浄部104の間に位置して第2搬送ロボット122が配置されている。
【0091】
なお、この例では、図6乃至図9に示す基板洗浄装置20aを使用して研磨後の基板を洗浄するようにしているが、この基板洗浄装置20aの代わりに、図12乃至図14に示す基板洗浄装置20b、または図21及び図22に示す基板洗浄装置20cを使用してもよい。
【0092】
この研磨装置にあっては、フロントロード部108に搭載された基板カセットから第1搬送ロボット110で取り出された基板は、第1リニアトランスポータ114a、または第1リニアトランスポータ114a及び第2リニアトランスポータ114bを介して、研磨部102の少なくとも1つの研磨ユニット112に搬送される。そして、研磨ユニット112で研磨された基板は、第2搬送ロボット122で洗浄部104に搬送され、洗浄部104の基板洗浄装置20a及び仕上げ洗浄装置118で順次洗浄され、乾燥ユニット120で乾燥された後、第1搬送ロボット110でフロントロード部108に搭載された基板カセットに戻される。
【0093】
上記各実施形態おいては、ロール状洗浄材(上部ロールブラシ24及び下部ロールブラシ50)として、図3に示す、外周面に多数の円柱状のノジュール18aを有するロールブラシ18を使用しているが、このノジュール18aは、ロールブラシ18の中心部から外方に向かうに従って、分布が密となるように配置されていることが好ましく、これによって、基板の中心部に洗浄強度が集中することを、ロールブラシ18自体によって緩和することができる。
【0094】
また、上記各実施形態おいては、上部ロールブラシ24のみを基板Wと平行に移動させるようにしているが、上部ロールブラシ24と上部洗浄液供給ノズル26と一体に移動させるようにしても良い。このように上部ロールブラシ24と上部洗浄液供給ノズル26と一体に移動させることにより、基板Wの表面に洗浄液をより均一に供給することができる。
【0095】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。例えば、本発明の基板洗浄装置は、電解めっき装置や無電解めっき装置の基板洗浄装置にも適用できる。また、ロール状洗浄材として、ノジュールのないロールブラシを使用することができ、更にロール状洗浄部材を回転させることなく、基板の被洗浄面をスクラブ洗浄するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0096】
18 ロールブラシ
18a ノジュール(突起)
20a,20b,20c 基板洗浄装置
22 回転ローラ
24 上部ロールブラシ(ロール状洗浄部材)
26 上部洗浄液供給ノズル
30 駆動モータ
32 走行用シリンダ(移動機構)
36 走行体
38 昇降用シリンダ
40 ストッパ
42 ボルト(ストッパ位置調整部)
50 下部ロールブラシ(ロール状洗浄部材)
52 下部洗浄液供給ノズル
58 駆動モータ
62 ベルト
64 昇降用シリンダ
70 走行用モータ
72 直動機構
74 制御部
76 往復移動機構
80,82 走行用シリンダ
84 往復移動機構
88a,88b,92a,92b ストッパ
94 枢軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状洗浄部材の外周面を回転中の基板の被洗浄面に所定の接触幅で接触させて該被洗浄面をスクラブ洗浄する基板洗浄方法であって、
前記洗浄部材によるスクラブ洗浄中の全過程の少なくとも一部において、前記洗浄部材の軸線が基板の回転中心線から前記接触幅の0.14〜0.5倍離れたオフセット洗浄位置に該洗浄部材を配置してスクラブ洗浄を行うことを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項2】
ロール状洗浄部材の外周面を回転中の基板の被洗浄面に所定の接触幅で接触させて該被洗浄面をスクラブ洗浄する基板洗浄方法であって、
前記洗浄部材によるスクラブ洗浄中に、前記洗浄部材の軸線と基板の回転中心線とが互いに交わる位置の近傍で、前記洗浄部材を基板の被洗浄面と平行に前記接触幅の16倍以内の移動幅の範囲内で往復移動させることを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項3】
前記洗浄部材の移動速度を、前記洗浄部材の軸線と基板の回転中心線とが互いに交わる位置を該洗浄部材が最も速い速度で通過するように制御することを特徴とする請求項2記載の基板洗浄方法。
【請求項4】
前記洗浄部材の移動速度を、前記洗浄部材の軸線と基板の回転中心線とが互いに交わる位置から該洗浄部材が離れる距離に反比例し、最大移動速度と最小移動速度の比が3〜11となるように制御することを特徴とする請求項2または3記載の基板洗浄方法。
【請求項5】
ロール状洗浄部材の外周面を回転中の基板の被洗浄面に接触させて該被洗浄面をスクラブ洗浄する基板洗浄方法であって、
前記洗浄部材を複数の洗浄位置にそれぞれ所定時間停滞させてスクラブ洗浄を行い、
前記複数の洗浄位置の内の少なくとも1つの洗浄位置は、前記洗浄部材の軸線が基板の回転中心線から離れた位置に前記洗浄部材が位置するオフセット洗浄位置であることを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項6】
前記オフセット洗浄位置を複数有し、前記洗浄部材が前記各オフセット洗浄位置に停滞する滞在時間が各オフセット洗浄位置と基板の回転中心線との距離に比例することを特徴とする請求項5記載の基板洗浄方法。
【請求項7】
前記洗浄部材の外周面には、基板の被洗浄面に接触する複数のノジュールが、前記洗浄部材の中心部から外方に向かうに従って、分布が密となるように配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項8】
ロール状洗浄部材の外周面を回転中の基板の被洗浄面に所定の接触幅で接触させてスクラブ洗浄する洗浄装置であって、
前記洗浄部材の軸線が基板の回転中心線から前記接触幅の0.14〜0.5倍離れたオフセット洗浄位置に該洗浄部材を移動させストッパを介して停止させる移動機構と、
前記ストッパの位置を調整するストッパ位置調整部を有することを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項9】
ロール状洗浄部材の外周面を回転中の基板の被洗浄面に所定の接触幅で接触させてスクラブ洗浄する洗浄装置であって、
前記洗浄部材の軸線と基板の回転中心線とが互いに交わる位置の近傍で、前記洗浄部材を基板の被洗浄面と平行に前記接触幅の16倍以内の移動幅の範囲内で往復移動させる往復移動機構を有することを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項10】
前記往復移動機構は、前記洗浄部材の移動速度を制御する制御部を有することを特徴とする請求項9記載の基板洗浄装置。
【請求項11】
前記往復移動機構は、枢軸を介して一端を回転自在に支承した前記洗浄部材を、該枢軸を中心に揺動させるように構成されていることを特徴とする請求項9または10記載の基板洗浄装置。
【請求項12】
ロール状洗浄部材の外周面を回転中の基板の被洗浄面に接触させて該被洗浄面をスクラブ洗浄する基板洗浄装置であって、
前記洗浄部材を、前記洗浄部材の軸線が基板の回転中心線と互いに交わる位置に該洗浄部材が位置する洗浄位置と、前記洗浄部材の軸線が基板の回転中心線から離れた位置に該洗浄部材が位置する、少なくとも1つのオフセット洗浄位置との間を往復移動させて各洗浄位置に所定時間停滞させる往復移動機構を有することを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項13】
前記往復移動機構は、前記洗浄部材を前記各洗浄位置に位置決めして停止させる、位置調整可能なストッパを有することを特徴とする請求項12記載の基板洗浄装置。
【請求項14】
前記オフセット洗浄位置は複数設けられ、各オフセット洗浄位置に前記洗浄部材が停滞する滞在時間を、各オフセット洗浄位置と基板の回転中心線との距離に比例するように制御することを特徴とする請求項12または13記載の基板洗浄装置。
【請求項15】
前記洗浄部材の外周面には、基板の被洗浄面に接触する複数のノジュールが、前記洗浄部材の中心部から外方に向かうに従って、分布が密となるように配置されていることを特徴とする請求項8乃至13のいずれかに記載の基板洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−181644(P2011−181644A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43784(P2010−43784)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】