説明

基板

【課題】比較的シンプルな構成により基板と半導体素子との間の半田接合部の耐久性を向上させること。
【解決手段】基板1は、表面及び裏面の少なくとも一方に半導体素子を半田により接合するように構成される。ここで、半導体素子を接合する部位は、凹部2となっており、他の部位である外周縁部3よりも低い面となっている。凹部2は、外周縁部3の内側の部分である。基板1は、ガラス繊維層11を樹脂層12で覆うことにより形成される。半導体素子を接合する凹部2の面2aは、外周縁部3の面3aに比べてガラス繊維層11に近接している。基板1の凹部2の中の最薄部の厚さは、ガラス繊維層11の厚さよりも大きい。この基板1に適用される半導体素子は、ランドグリッドアレイの素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体素子を半田により接合して実装するために使用される基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂製のプリント基板に半導体素子を半田により接合して実装したランドグリッドアレイ(LGA)型の半導体装置が知られている。この種の半導体装置では、温度変動や経年変化に起因して、半田接合部が破断するおそれがあり、耐用年数が短くなる懸念があった。この半田接合部の破断は、半導体素子と樹脂製プリント基板との熱膨張差に起因するものであり、半田へのストレスの蓄積により、半田に疲労破壊が発生することによるものである。
【0003】
また、半導体装置については、一般に出荷前の信頼性試験の一つとして、所定のサイクルで加熱処理及び冷却処理を繰り返し実施することが行われている。このとき、半導体装置では、基板と半導体素子との間で熱による膨張量・収縮量が異なることから、両者の間に応力に起因する剥離や亀裂が発生し、半導体装置として高い信頼性を実現することが難しくなっている。
【0004】
そこで、上記課題に対処するために、例えば、下記の特許文献1に記載される半導体装置が提案されている。この半導体装置は、基板と、基板の上面に接合される半導体素子と、基板に第1の接着剤を介して接着されると共に半導体素子が内部に位置する開口部が形成されてなる枠状部材と、半導体素子及び枠状部材の上部を覆うように配設され、第2の接着剤により接着されるプレート状部材とを備える。そして、この半導体装置は、枠状部材が、加熱時における基板の熱膨張による変形及びプレート状部材の熱膨張による変形を共に阻止し得る剛性を有するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−284097号公報
【特許文献2】特開2009−289914号公報
【特許文献3】特開平08−236898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に記載の半導体装置では、基板と半導体素子以外に、枠状部材やプレート状部材を設けなければならず、それらを第1及び第2の接着剤で接合しなければならない。このため、構成部品数が増え、それらを接着するための工程数も増えることになった。
【0007】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、比較的シンプルな構成により基板と半導体素子との間の半田接合部の耐久性を向上させることを可能とした基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、表面及び裏面の少なくとも一方に半導体素子を半田により接合するように構成した基板であって、半導体素子を接合する部位が他の部位よりも低い面となっていることを趣旨とする。
【0009】
上記発明の構成によれば、半導体素子を接合する部位が他の部位よりも低い面となっているので、その低い面の部分では、他の部位と比べて熱膨張量が小さくなる。従って、その低い面の部分に半導体素子を半田により接合した場合に、基板と半導体素子との間の熱膨張差が少なくなる。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、他の部位が外周縁部であり、半導体素子を接合する部位が外周縁部よりも内側の部分であることを趣旨とする。
【0011】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、外周縁部を含む面が最も長い辺を持つ面となるため、基板の熱膨張量が相対的に大きくなる。一方、半導体素子を接合する部位が外周縁部より内側の部分の面であるため、基板の熱膨張量が相対的に小さくなる。
【0012】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、ガラス繊維層を樹脂層で覆うことにより形成され、半導体素子を接合する部位の面が、他の部位の面に比べてガラス繊維層に近接していることを趣旨とする。
【0013】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、ガラス繊維層は樹脂層に比べて熱膨張が少なく、半導体素子を接合する部位の面が、他の部位の面に比べてガラス繊維層に近接している。従って、基板と半導体素子との半田による接合部では、基板と半導体素子との間の熱膨張差が更に少なくなる。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、ガラス繊維層を樹脂層で覆うことにより形成され、最薄部の厚さが、ガラス繊維層の厚さよりも大きいことを趣旨とする。
【0015】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、基板の最薄部の厚さが、ガラス繊維層の厚さよりも大きいので、基板と半導体素子との半田による接合部分では、基板の強度が確保される。
【0016】
上記目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、半導体素子は、ランドグリッドアレイの素子であることを趣旨とする。
【0017】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、半導体素子が、ランドグリッドアレイの素子であることから、半田をボール状にしたボールグリッドアレイの素子よりも、半田の接合部が薄いことか、この発明が有効となる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、基板に凹部を設けるだけの比較的シンプルな構成により基板と半導体素子との間の半田接合部の耐久性を向上させることができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に対し、基板と半導体素子との間の半田接合部の耐久性を更に向上させることができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に対し、基板と半導体素子との間の半田接合部の耐久性を更に向上させることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、基板の耐久性を確保することができる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、ランドグリッドアレイ型の半導体素子に有効な基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】一実施形態に係り、基板を示す平面図。
【図2】同実施形態に係り、基板を示す正面図。
【図3】同実施形態に係り、図1に示す基板の鎖線四角の部分を拡大して示す斜視断面図。
【図4】比較例に係り、凹部を形成しない従来の基板を簡略的に示す断面図。
【図5】同実施形態に係り、凹部を形成した基板を簡略的に示す断面図。
【図6】同実施形態に係り、LGA素子と基板との接合前の関係を示す分解拡大断面図。
【図7】同実施形態に係り、LGA素子と基板との接合後の関係を示す拡大断面図。
【図8】同実施形態に係り、凹部を形成しない従来の基板及びLGA素子等を示す分解拡大断面図。
【図9】別の実施形態に係り、基板を示す正面図。
【図10】別の実施形態に係り、基板を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の基板を具体化した一実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。図1に、基板1を平面図により示す。図2に、基板1を正面図により示す。図3に、図1に示す基板1の鎖線四角S1の部分を拡大して斜視断面図により示す。
【0025】
図1〜3に示すように、この実施形態の基板1は、平面視で正方形をなし、その表面に半導体素子を半田により接合するように構成される。この実施形態では、半導体素子として、ランドグリッドアレイの素子(以下「LGA素子」と言う。)が適用されるようになっている。すなわち、基板1において、複数のLGA素子を接合するための部位が、凹部2となっており、その部位が他の部位よりも低い面を有している。ここで、「他の部位」は、基板1の外周縁部3であり、四角枠形状をなしている。そして、LGA素子を接合する凹部2が外周縁部3よりも内側の部分となっている。図1に示すように、凹部2には、LGA素子を接合するための多数のプリント基板パターン4が形成されている。
【0026】
図3に示すように、この基板1は、ガラス繊維層11を樹脂層12で覆うことにより形成される。ガラス繊維層11として、凹部2の面2aが、外周縁部3の面3aに比べてガラス繊維層11に近接している。ここで、基板1は、ガラス繊維層11を樹脂層12で覆うことにより形成されるが、凹部2の中の最薄部の厚さは、ガラス繊維層11の厚さよりも樹脂層12の分だけ大きくなっている。
【0027】
図4に、比較例に係り凹部を形成しない従来の基板21を簡略的に断面図により示す。図5に、凹部2を形成した本実施形態の基板1を簡略的に断面図により示す。図4,5のそれぞれにおいて、常温時の基板21,1の状態を実線で示し、高温時の基板21,1の状態を2点鎖線で示す。
【0028】
凹部を形成しない従来の基板21では、図4に2点鎖線で示すように、高温時に表層の樹脂層12が連続的に伸びる。このため、半田により接合されて実装されるLGA素子(図示略)の変形量と基板21の変形量との差が大きくなり、半田接合部へのストレスが大きくなる。
【0029】
これに対し、凹部2を形成した本実施形態の基板1では、図5に2点鎖線(細線)で示すように、凹部2の部分で表層の樹脂層12の連続的な伸びが小さくなる。図5に2点鎖線(太線)で示す従来の基板21の伸びと比較すると、本実施形態の基板1の伸びが少ないことが分かる。このため、半田により接合されて実装されるLGA素子(図示略)の熱膨張量(変形量)と基板1の熱膨張量(変形量)との差が小さくなり、半田へのストレスが減少する。
【0030】
図6に、LGA素子5と基板1との接合前の関係を分解拡大断面図により示す。図7に、同じくLGA素子5と基板1との接合後の関係を拡大断面図により示す。図6,7に示すように、この実施形態では、基板1の凹部2の面2a上に形成されたプリント基板パターン4上に、LGA素子1の電極部6が、半田7を介して接合されるようになっている。
【0031】
ここで、基板1の凹部2の深さの決定方法について以下に説明する。図8に、凹部を形成しない従来の基板21及びLGA素子5等を分解拡大断面図により示す。図8において、位置P1は、LGA素子5が半田7によりプリント基板パターン4に接合された場合の、常温時におけるLGA素子5の基準となる一端面の位置を示す。高温時には、位置P1を基準とすると、2点鎖線で示すように、LGA素子5は寸法L1だけ伸びる。これに対し、高温時に、基板21は、位置P1を基準とすると、寸法L1よりも大きい寸法L2だけ伸びることとなり、その違いは明らかである。
【0032】
図6,7に示すように、基板1に凹部2を設ける理由は、凹部2の面2aの伸びを、LGA素子5の伸びと等しくするためである。ここで、基板1において、表面に一番近いガラス繊維層11の厚さ方向の中心C1を起点にすると、高温時の基板1の伸びは、斜線M1に沿って変化することとなる。つまり、ガラス繊維層11の中心C1から基板21の表面へ向けて、基板21の伸びが徐々に大きくなる。従って、LGA素子5の伸び(寸法L1)と基板21の伸びが等しくなるのは、斜線M1上の位置P2であることが分かる。よって、基板21の表面から、斜線M1上の位置P2までの垂直方向の寸法L3が、基板1の凹部2の深さとなる。但し、この凹部2の深さは、ガラス繊維層11に達しない、樹脂層12の範囲内で決定されることとなる。
【0033】
以上説明したこの実施形態の基板1によれば、LGA素子5を接合する部位が他の部位よりも低い面2aとなっているので、その低い面2aの部分では、他の部位と比べて熱膨張量が小さくなる。従って、その低い面2aの部分にLGA素子5を半田7により接合した場合に、基板1とLGA素子5との間の熱膨張差が少なくなる。これにより、半田7へのストレスの蓄積を軽減することができ、半田7の疲労破壊の発生を防止することができる。このため、基板1に凹部2を設けるだけの比較的シンプルな構成により基板1とLGA素子5との間の半田接合部の耐久性を向上させることができる。
【0034】
また、この実施形態では、基板1において、外周縁部3を含む面3aが最も長い辺を持つ面となるため、この外周縁部3にて基板1の熱膨張量が相対的に大きくなる。一方、LGA素子5を接合する部位、すなわち凹部2は、外周縁部3より内側の部分の面2aを有するため、この部分で基板1の熱膨張量が相対的に小さくなる。この意味で、基板1とLGA素子5との間の半田接合部の耐久性を更に向上させることができる。
【0035】
また、この実施形態の基板1では、ガラス繊維層11は樹脂層12に比べて熱膨張が少なく、LGA素子5を接合する部位の面2aが、他の部位の面3aに比べてガラス繊維層11に近接している。従って、基板1とLGA素子5との半田による接合部では、基板1とLGA素子5との間の熱膨張差が更に少なくなる。この意味で、基板1とLGA素子5との間の半田接合部の耐久性を更に向上させることができる。
【0036】
更に、この実施形態の基板1では、凹部2における基板1の最薄部の厚さが、ガラス繊維層11の厚さよりも大きいので、基板1とLGA素子5との半田7による接合部分では、基板1の強度が確保される。このため、基板1の耐久性を確保することができる。
【0037】
この実施形態の基板1によれば、LGA素子5が接合されるので、半田をボール状にしたボールグリッドアレイの素子よりも、半田7の接合部が薄いことから、この発明の基板1が有効となる。すなわち、基板1とLGA素子5との間で熱膨張差が大きいと、LGA素子を半田により接合した場合に、半田7の接合部が薄くて、破断のおそれが高くなる。これに対し、この実施形態の基板1によれば、上記のように基板1とLGA素子5との間で熱膨張差が少なくなるので、半田の接合部が薄くても、この破断を有効に防止することができるのである。よって、LGA素子5に有効な基板1を得ることができる。
【0038】
なお、この発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
【0039】
(1)前記実施形態では、図1,2に示すように、基板1の表面に凹部2を設けたが、図9に示すように、基板1の表面及び裏面に凹部2を設けることもできる。
【0040】
(2)前記実施形態では、図1に示すように、基板1に一段の凹部2を設けたが、図10に示すように、基板1に一段目の凹部2と二段目の凹部8とを設けることもできる。
【0041】
(3)前記実施形態では、半導体素子として、ランドグリッドアレイの素子(LGA素子)5を適用できる基板1に具体化したが、ボールグリッドアレイの素子を適用できる基板に具体化することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
この発明は、半導体装置の構成要素として利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 基板
2 凹部
2a 面
3 外周縁部
3a 面
5 LGA素子(半導体素子)
7 半田
8 凹部
11 ガラス繊維層
12 樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面及び裏面の少なくとも一方に半導体素子を半田により接合するように構成した基板であって、
前記半導体素子を接合する部位が他の部位よりも低い面となっていることを特徴とする基板。
【請求項2】
前記他の部位が外周縁部であり、前記半導体素子を接合する部位が前記外周縁部よりも内側の部分であることを特徴とする請求項1に記載の基板。
【請求項3】
ガラス繊維層を樹脂層で覆うことにより形成され、前記半導体素子を接合する部位の面が、前記他の部位の面に比べて前記ガラス繊維層に近接していることを特徴とする請求項1に記載の基板。
【請求項4】
ガラス繊維層を樹脂層で覆うことにより形成され、最薄部の厚さが、前記ガラス繊維層の厚さよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の基板。
【請求項5】
前記半導体素子は、ランドグリッドアレイの素子であることを特徴する請求項1に記載の基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−59806(P2012−59806A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199714(P2010−199714)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】