説明

変速比制御装置及び変速比制御方法

【課題】四節リンク機構として構成された無段変速機の入力側の動力源を始動して、当該動力源からの駆動力が無段変速機から出力される状態になるまでの時間を短縮可能な変速比制御装置を提供すること。
【解決手段】四節リンク機構式の無段変速機における変速比を制御する変速比制御装置は、動力源が停止した状態で車両が走行中に動力源を始動するとき、動力源の始動制御と並行して、無段変速機における変速比が目標値となるよう偏心量を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速比制御装置及び変速比制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車用駆動システムとして、特許文献1に示されるように、エンジンとトランスミッションとモータジェネレータを組み合わせ、トランスミッションの駆動軸と被駆動軸とを、駆動軸に設けられた偏心体駆動装置と被駆動軸に設けられたワンウェイ・クラッチとにより接続し、トランスミッションの駆動軸にエンジンの出力を導入すると共に、モータジェネレータをクラッチを介して、トランスミッションの入力側、または、ワンウェイ・クラッチの出力側に選択的に接続可能とし、あるいは、トランスミッションの入力側とワンウェイ・クラッチの出力側の両方に同時に接続可能に構成したハイブリッド型の駆動システムが知られている。
【0003】
この駆動システムでは、エンジンの駆動力だけを利用したエンジン走行、モータジェネレータの駆動力だけを利用したEV走行、エンジンの駆動力とモータジェネレータの駆動力の両方を利用したパラレル走行を行うことができる。なお、モータジェネレータでエンジンを始動させることができる。
【0004】
この駆動システムで用いられるトランスミッションは、駆動軸の回転運動を揺動運動に変換し、更に揺動運動を回転運動に変換して被駆動軸から出力する方式のIVT(Infinity Variable Transmission)と呼ばれる無段変速機である。当該方式の変速機では、クラッチを使用せずに変速比を無段階に変更できると共に、変速比の最大値を無限大に設定することができる。なお、当該変速機において、変速比が無限大に設定されたときの出力回転数はゼロである。
【0005】
図6は、IVTと呼ばれる無段変速機の一部の構成を軸線方向から見た側断面図である。図6に示す無段変速機は、内燃機関等の動力源からの回転動力を受けることで入力中心軸線O1の周りを回転する入力軸101と、入力軸101と一体回転する偏心ディスク104と、入力側と出力側を結ぶ連結部材130と、出力側に設けられたワンウェイクラッチ120とを備える。
【0006】
偏心ディスク104は、第1支点O3を中心とした円形形状に形成されている。第1支点O3は、入力中心軸線O1に対して変更可能な偏心量r1を保ちつつ、入力中心軸線O1の周りに入力軸101と共に回転するように設定されている。したがって、偏心ディスク104は、偏心量r1を保った状態で、入力中心軸線O1の周りを入力軸101が回転するに伴って偏心回転するように設けられている。
【0007】
偏心ディスク104は、図6に示すように、外周側円板105と、入力軸101に一体形成された内周側円板108とで構成されている。内周側円板108は、入力軸101の中心軸線である入力中心軸線O1に対して一定の偏心距離だけ中心を偏倚させた肉厚円板として形成されている。外周側円板105は、第1支点O3を中心にした肉厚円板として形成されており、その中心(第1支点O3)を外れた位置に中心を持つ第1円形孔106を有している。そして、この第1円形孔106の内周に回転可能に内周側円板108の外周が嵌っている。
【0008】
また、内周側円板108には、入力中心軸線O1を中心とすると共に周方向の一部が内周側円板108の外周に開口した第2円形孔109が設けられており、その第2円形孔109の内部にピニオン110が回転自在に収容されている。ピニオン110の歯は、第2円形孔109の外周の開口を通して、外周側円板105の第1円形孔106の内周に形成した内歯歯車107に噛み合っている。
【0009】
このピニオン110は、入力軸101の中心軸線である入力中心軸線O1と同軸に回転するように設けられている。即ち、ピニオン110の回転中心と入力軸101の中心軸線である入力中心軸線O1とが一致している。ピニオン110は、直流モータ及び減速機構によって構成される図示しないアクチュエータにより、第2円形孔109の内部で回転させられる。通常時は、入力軸101の回転と同期させてピニオン110を回転させ、同期する回転数を基準として、ピニオン110に入力軸101の回転数を上回るか下回るかする回転数を与えることにより、ピニオン110を入力軸101に対して相対回転させる。例えば、ピニオン110およびアクチュエータの出力軸が互いに連結されるように配置し、アクチュエータの回転が入力軸101の回転に対して回転差が生じる場合には、その回転差に減速比をかけた分だけ入力軸101とピニオン110の相対角度が変化する減速機構(例えば遊星歯車)を用いることで実現できる。この際、アクチュエータと入力軸101の回転差がなく同期している場合には偏心量r1は変化しない。
【0010】
従って、ピニオン110を回すことにより、ピニオン110の歯が噛合している内歯歯車107つまり外周側円板105が内周側円板108に対して相対回転し、それにより、ピニオン110の中心(入力中心軸線O1)と外周側円板105の中心(第1支点O3)との間の距離(つまり偏心ディスク104の偏心量r1)が変化する。
【0011】
この場合、ピニオン110の回転によって、ピニオン110の中心(入力中心軸線O1)に外周側円板105の中心(第1支点O3)を一致させることができるように設定されており、両中心を一致させることにより、偏心ディスク104の偏心量r1を「ゼロ」に設定できる。
【0012】
また、ワンウェイクラッチ120は、入力中心軸線O1から離れた出力中心軸線O2の周りを回転する出力部材(クラッチインナー)121と、外部から回転方向の動力を受けることで出力中心軸線O2の周りを揺動するリング状の入力部材(クラッチアウター)122と、入力部材122および出力部材121を互いにロック状態または非ロック状態にするために入力部材122と出力部材121の間に挿入された複数のローラ(係合部材)123とを有する。なお、ワンウェイクラッチ120には、出力部材121の断面における辺数と同数のローラ123が設けられている。
【0013】
ワンウェイクラッチ120の入力部材122から出力部材121への動力(トルク)の伝達は、入力部材122の正方向(図6中矢印RD1方向)の回転速度が出力部材121の正方向の回転速度を超えた条件でのみ行われる。つまり、ワンウェイクラッチ120では、入力部材122の回転速度が出力部材121の回転速度より高くなったときに初めてローラ123を介しての噛み合い(ロック)が発生し、入力部材122の揺動動力が出力部材121の回転運動に変換される。
【0014】
入力部材122の周方向の1箇所には張り出し部124が設けられており、その張り出し部124に、出力中心軸線O2から離間した第2支点O4が設けられている。そして、入力部材122の第2支点O4上にピン125が配置され、このピン125によって、連結部材130の先端(他端部)132が入力部材122に回転自在に連結されている。
【0015】
連結部材130は、一端側にリング部131を有し、そのリング部131の円形開口133の内周が、ベアリング140を介して、偏心ディスク104の外周に回転自在に嵌合されている。従って、このように連結部材130の一端が偏心ディスク104の外周に回転自在に連結されると共に、連結部材130の他端が、ワンウェイクラッチ120の入力部材122上に設けられた第2支点O4に回動自在に連結されることにより、図7に示すように、入力中心軸線O1、第1支点O3、出力中心軸線O2、第2支点O4の4つの節を回動点とする四節リンク機構が構成される。
【0016】
図7は、四節リンク機構として構成された無段変速機の駆動力伝達原理の説明図である。この四節リンク機構では、入力軸101から偏心ディスク104に与えられる回転運動が、連結部材130を介して、ワンウェイクラッチ120の入力部材122に対して該入力部材122の揺動運動として伝えられ、その入力部材122の揺動運動が出力部材121の回転運動に変換される。偏心ディスク104を回転させる入力軸101が1回転すると、ワンウェイクラッチ120の入力部材122は1往復揺動する。図7に示すように、偏心ディスク104の偏心量r1の値に関係なく、ワンウェイクラッチ120の入力部材122の揺動周期は常に一定である。入力部材122の揺動角速度ω2は、偏心ディスク104(入力軸101)の回転角速度ω1と偏心量r1によって決まる。
【0017】
その際、ピニオン110、ピニオン110を収容する第2円形孔109を備えた内周側円板108、内周側円板108を回転可能に収容する第1円形孔106を備えた外周側円板105、アクチュエータなどにより構成された変速比可変機構112の前記ピニオン110をアクチュエータで動かすことにより、偏心ディスク104の偏心量r1を変化させることができる。そして、偏心量r1を変更することで、ワンウェイクラッチ120の入力部材122の揺動角度θ2を変更することができ、それにより、入力軸101の回転数に対する出力部材121の回転数の比(変速比:レシオi)を変えることができる。即ち、入力中心軸線O1に対する第1支点O3の偏心量r1を調節することで、偏心ディスク104からワンウェイクラッチ120の入力部材122に伝えられる揺動運動の揺動角度θ2を変更し、それにより、入力軸101に入力される回転動力が、偏心ディスク104および連結部材130を介してワンウェイクラッチ120の出力部材121に回転動力として伝達される際の変速比を変更することができる。
【0018】
図8(a)〜(d)及び図9(a)〜(c)は、図6に示した無段変速機における変速比可変機構112による変速原理の説明図である。図8及び図9に示すように、変速比可変機構112のピニオン110を回転させて、内周側円板108に対して外周側円板105を回転させることにより、偏心ディスク104の入力中心軸線O1(ピニオン110の回転中心)に対する偏心量r1を調節することができる。
【0019】
例えば、図8(a)及び図9(a)に示すように、偏心ディスク104の偏心量r1を「大」にした場合は、ワンウェイクラッチ120の入力部材122の揺動角度θ2を大きくすることができるので、小さな変速比iを実現することができる。また、図8(b)及び図9(b)に示すように、偏心ディスク104の偏心量r1を「中」にした場合は、ワンウェイクラッチ120の入力部材122の揺動角度θ2を「中」にすることができるので、中くらいの変速比iを実現することができる。また、図8(c)及び図9(c)に示すように、偏心ディスク104の偏心量r1を「小」にした場合は、ワンウェイクラッチ120の入力部材122の揺動角度θ2を小さくすることができるので、大きな変速比iを実現することができる。また、図8(d)に示すように、偏心ディスク104の偏心量r1を「ゼロ」にした場合は、ワンウェイクラッチ120の入力部材122の揺動角度θ2を「ゼロ」にすることができるので、変速比iを「無限大(∞)」にすることができる。
【0020】
図10に示すように、ワンウェイクラッチ120の入力部材122の揺動周期は、偏心ディスク104の偏心量r1の値に関係なく常に一定である。図6は側断面図であるため、同図には入力軸101、偏心ディスク104、連結部材130及びワンウェイクラッチ120が一組のみ示されているが、IVTには、入力中心軸線O1に沿って複数組が配列されている。但し、各組における偏心ディスク104は、それぞれ第1支点O3を中心とした円形形状に形成されており、各第1支点O3が入力中心軸線O1の周りに周方向に等間隔で位置するように配置されている。このため、各偏心ディスク104が偏心量r1を保った状態で入力中心軸線O1の周りを偏心回転することにより、ワンウェイクラッチ120の入力部材122にもたらされる揺動運動は、図11に示すように、一定の位相で順番に起こる。
【0021】
1つの連結部材130による駆動が終了した後は、入力部材122の回転速度が出力部材121の回転速度より低下すると共に、他の連結部材130の駆動力によってローラ123によるロックが解除されて、フリーな状態(空転状態)に戻る。これが、連結部材130の数だけ順番に行われることで、揺動運動が一方向の回転運動に変換される。そのため、出力部材121の回転速度を超えたタイミングの入力部材122の動力のみが出力部材121に順番に伝えられ、ほぼ平滑に均された回転動力が出力部材121に与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特表2005−502543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
上記駆動システムでは、車両の走行形態がEV走行からエンジン走行又はパラレル走行に切り替わる際、停止していたエンジンを始動する必要がある。エンジンを始動する際、四節リンク機構として構成された無段変速機の変速比可変機構112における偏心量r1は「ゼロ」に設定される。すなわち、エンジンを始動するときの変速比iは「無限大(∞)」に設定される。エンジン始動後、偏心量r1を変更することによって変速比iが調整され、ワンウェイクラッチ120の入力部材122の正方向の回転速度が出力部材121の正方向の回転速度を超えると、エンジンからの駆動力が出力部材121に伝達される。このように、上記駆動システムでは、EV走行からエンジン走行又はパラレル走行に切り替わる際、エンジンの駆動力が出力部材121に伝達するまでには、ある程度の時間を要する。
【0024】
本発明の目的は、四節リンク機構として構成された無段変速機の入力側の動力源を始動して、当該動力源からの駆動力が無段変速機から出力される状態になるまでの時間を短縮可能な変速比制御装置及び変速比制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、請求項1に記載の発明の変速比制御装置は、動力源(例えば、実施の形態での内燃機関203)からの回転動力を受けることで入力中心軸線(例えば、実施の形態での入力中心軸線O1)の周りを回転する入力軸(例えば、実施の形態での入力軸101)と、前記入力中心軸線に対する偏心量(例えば、実施の形態での偏心量r1)を変更可能な第1支点(例えば、実施の形態での第1支点O3)をそれぞれの中心に有して、該偏心量を保ちつつ前記入力中心軸線の周りを前記入力軸と共に回転する偏心ディスク(例えば、実施の形態での偏心ディスク104)と、前記入力中心軸線から離れた出力中心軸線(例えば、実施の形態での出力中心軸線O2)の周りを回転する出力部材(例えば、実施の形態での出力部材121)と、外部から回転方向の動力を受けることで前記出力中心軸線の周りを揺動する入力部材(例えば、実施の形態での入力部材122)と、前記入力部材及び前記出力部材を互いにロック状態又は非ロック状態にする係合部材(例えば、実施の形態でのローラ123)と、を有し、前記入力部材の正方向の回転速度が前記出力部材の正方向の回転速度を上回ったとき、前記入力部材に入力された回転動力を前記出力部材に伝達し、それにより前記入力部材の揺動運動を前記出力部材の回転運動に変換するワンウェイクラッチ(例えば、実施の形態でのワンウェイクラッチ120)と、一端が前記偏心ディスクの外周に前記第1支点を中心に回転自在に連結され、他端が前記ワンウェイクラッチの前記入力部材上の前記出力中心軸線から離間した位置に設けられた第2支点(例えば、実施の形態での第2支点O4)に回動自在に連結されることで、前記入力軸から前記偏心ディスクに与えられる回転運動を、前記ワンウェイクラッチの前記入力部材に対し当該入力部材の揺動運動として伝える連結部材(例えば、実施の形態での連結部材130)と、前記入力中心軸線に対する前記第1支点の偏心量を調節することで、前記偏心ディスクから前記ワンウェイクラッチの前記入力部材に伝えられる揺動運動の揺動角度を変更するアクチュエータを有し、それにより、前記入力軸に入力される回転動力が前記偏心ディスク及び前記連結部材を介して前記ワンウェイクラッチの出力部材に回転動力として伝達される際の変速比を変更すると共に、前記偏心量がゼロに設定可能とされることで前記変速比を無限大に設定する変速比可変機構(例えば、実施の形態での変速比可変機構112)と、を有する四節リンク機構式の無段変速機(例えば、実施の形態での無段変速機(BD)205)を備えた車両において前記変速比を制御する変速比制御装置(例えば、実施の形態でのマネジメントECU217)であって、前記動力源が停止した状態で前記車両が走行中に前記動力源を始動するとき、前記動力源の始動制御と並行して、前記無段変速機における前記変速比が目標値となるよう前記偏心量を調整することを特徴としている。
【0026】
さらに、請求項2に記載の発明の変速比制御装置では、前記車両の走行モードには、前記車両の動力性能が異なる2つのモードが設けられ、動力性能が高い方のモードが選択されているときに、前記動力源が停止した状態で前記車両が走行中に前記動力源を始動する際、前記動力源の始動制御と並行して、前記無段変速機における前記変速比が目標値となるよう前記偏心量を調整することを特徴としている。
【0027】
さらに、請求項3に記載の発明の変速比制御装置では、動力性能が低い方のモードが選択されているときに、前記動力源が停止した状態で前記車両が走行中に前記動力源を始動する際、前記動力源への要求出力が所定値以上であれば、前記動力源の始動制御と並行して、前記無段変速機における前記変速比が目標値となるよう前記偏心量を調整することを特徴としている。
【0028】
さらに、請求項4に記載の発明の変速比制御装置では、前記動力源が停止した状態で前記車両が走行中に前記動力源を始動する際、前記動力源への要求出力が所定値以上であれば、前記動力源の始動制御と並行して、前記無段変速機における前記変速比が目標値となるよう前記偏心量を調整することを特徴としている。
【0029】
さらに、請求項5に記載の発明の変速比制御装置では、前記動力源の回転数が目標回転数に到達する前に前記変速比が前記目標値となるよう前記偏心量を調整することを特徴としている。
【0030】
さらに、請求項6に記載の発明の変速比制御方法では、動力源(例えば、実施の形態での内燃機関203)からの回転動力を受けることで入力中心軸線(例えば、実施の形態での入力中心軸線O1)の周りを回転する入力軸(例えば、実施の形態での入力軸101)と、前記入力中心軸線に対する偏心量(例えば、実施の形態での偏心量r1)を変更可能な第1支点(例えば、実施の形態での第1支点O3)をそれぞれの中心に有して、該偏心量を保ちつつ前記入力中心軸線の周りを前記入力軸と共に回転する偏心ディスク(例えば、実施の形態での偏心ディスク104)と、前記入力中心軸線から離れた出力中心軸線(例えば、実施の形態での出力中心軸線O2)の周りを回転する出力部材(例えば、実施の形態での出力部材121)と、外部から回転方向の動力を受けることで前記出力中心軸線の周りを揺動する入力部材(例えば、実施の形態での入力部材122)と、前記入力部材及び前記出力部材を互いにロック状態又は非ロック状態にする係合部材(例えば、実施の形態でのローラ123)と、を有し、前記入力部材の正方向の回転速度が前記出力部材の正方向の回転速度を上回ったとき、前記入力部材に入力された回転動力を前記出力部材に伝達し、それにより前記入力部材の揺動運動を前記出力部材の回転運動に変換するワンウェイクラッチ(例えば、実施の形態でのワンウェイクラッチ120)と、一端が前記偏心ディスクの外周に前記第1支点を中心に回転自在に連結され、他端が前記ワンウェイクラッチの前記入力部材上の前記出力中心軸線から離間した位置に設けられた第2支点(例えば、実施の形態での第2支点O4)に回動自在に連結されることで、前記入力軸から前記偏心ディスクに与えられる回転運動を、前記ワンウェイクラッチの前記入力部材に対し当該入力部材の揺動運動として伝える連結部材(例えば、実施の形態での連結部材130)と、前記入力中心軸線に対する前記第1支点の偏心量を調節することで、前記偏心ディスクから前記ワンウェイクラッチの前記入力部材に伝えられる揺動運動の揺動角度を変更するアクチュエータを有し、それにより、前記入力軸に入力される回転動力が前記偏心ディスク及び前記連結部材を介して前記ワンウェイクラッチの出力部材に回転動力として伝達される際の変速比を変更すると共に、前記偏心量がゼロに設定可能とされることで前記変速比を無限大に設定する変速比可変機構(例えば、実施の形態での変速比可変機構112)と、を有する四節リンク機構式の無段変速機(例えば、実施の形態での無段変速機(BD)205)を備えた車両において前記変速比を制御する変速比制御方法であって、前記動力源が停止した状態で前記車両が走行中に前記動力源を始動するとき、前記動力源の始動制御と並行して、前記無段変速機における前記変速比が目標値となるよう前記偏心量を調整することを特徴としている。
【0031】
さらに、請求項7に記載の発明の変速比制御方法では、前記車両の走行モードには、前記車両の動力性能が異なる2つのモードが設けられ、動力性能が高い方のモードが選択されているときに、前記動力源が停止した状態で前記車両が走行中に前記動力源を始動する際、前記動力源の始動制御と並行して、前記無段変速機における前記変速比が目標値となるよう前記偏心量を調整することを特徴としている。
【0032】
さらに、請求項8に記載の発明の変速比制御方法では、動力性能が低い方のモードが選択されているときに、前記動力源が停止した状態で前記車両が走行中に前記動力源を始動する際、前記動力源への要求出力が所定値以上であれば、前記動力源の始動制御と並行して、前記無段変速機における前記変速比が目標値となるよう前記偏心量を調整することを特徴としている。
【0033】
さらに、請求項9に記載の発明の変速比制御方法では、前記動力源が停止した状態で前記車両が走行中に前記動力源を始動する際、前記動力源への要求出力が所定値以上であれば、前記動力源の始動制御と並行して、前記無段変速機における前記変速比が目標値となるよう前記偏心量を調整することを特徴としている。
【0034】
さらに、請求項10に記載の発明の変速比制御方法では、前記動力源の回転数が目標回転数に到達する前に前記変速比が前記目標値となるよう前記偏心量を調整することを特徴としている。
【発明の効果】
【0035】
請求項1〜5に記載の発明の変速比制御装置及び請求項6〜10に記載の変速比制御方法によれば、動力源からの駆動力が無段変速機から出力される状態になるまでの時間を短縮できる。
請求項2に記載の発明の変速比制御装置及び請求項7に記載の変速比制御方法によれば、車両の走行モードに応じて、動力源の始動時における無段変速機の変速比の制御を変えることができる。
請求項3〜4に記載の発明の変速比制御装置及び請求項8〜9に記載の変速比制御方法によれば、動力源への要求出力に応じて、動力源の始動時における無段変速機の変速比の制御を変えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】パラレル方式のHEVの内部構成を示すブロック図
【図2】図1に示したHEVが備えるマネジメントECU217の動作を示すフローチャート
【図3】内燃機関203の高応答始動制御時と通常始動制御時の、BD205における変速比i、内燃機関203の回転数Ne、及びBD205を構成するワンウェイクラッチ120の入力部材122の揺動運動の変化をそれぞれ示すグラフ
【図4】内燃機関203を高応答始動制御する際のマネジメントECU217の動作を示すフローチャート
【図5】内燃機関203を通常始動制御する際のマネジメントECU217の動作を示すフローチャート
【図6】IVTと呼ばれる無段変速機の一部の構成を軸線方向から見た側断面図
【図7】四節リンク機構として構成された無段変速機の駆動力伝達原理の説明図
【図8】(a)〜(d)は、図6に示した無段変速機における変速比可変機構112による変速原理の説明図
【図9】(a)〜(c)は、図6に示した無段変速機における変速比可変機構112による変速原理の説明図
【図10】図6に示した無段変速機構において、入力軸と共に等速回転する偏心ディスクの偏心量r(変速比i)を「大」、「中」、「小」と変化させた場合の、入力軸の回転角度θとワンウェイクラッチ120の入力部材122の揺動角速度ω2の関係を示す図
【図11】図6に示した無段変速機構において、複数の連結部材130によって入力側(入力軸101や偏心ディスク104)から出力側(ワンウェイクラッチ120の出力部材121)へ動力が伝達される際の出力の取り出し原理を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係る変速比制御装置及び変速比制御方法の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下説明する変速比制御装置では、上記説明したIVT(Infinity Variable Transmission)と呼ばれる無段変速機(以下「BD」とも表記する)を用いられ、当該無段変速機における偏心量r1を調整することで変速比iを制御する。また、以下の説明では、無段変速機の入力側の動力源を、車両の駆動源である内燃機関として説明する。本実施形態では、内燃機関の出力がそのまま無段変速機に入力される。また、無段変速機の出力側には、クラッチを介して車両の駆動源としての電動機が設けられている。
【0038】
本実施形態の変速比制御装置は、HEV(Hybrid Electrical Vehicle:ハイブリッド電気自動車)に搭載される。HEVは、電動機及び内燃機関を備え、車両の走行状態に応じて電動機及び/又は内燃機関の駆動力によって走行する。HEVには、大きく分けてシリーズ方式とパラレル方式の2種類がある。シリーズ方式のHEVは、電動機の動力によって走行する。内燃機関は発電のためだけに用いられ、内燃機関の動力によって発電機で発電された電力は蓄電器に充電されるか、電動機に供給される。
【0039】
パラレル方式のHEVは、電動機及び内燃機関のいずれか一方又は双方の動力によって走行する。以下、電動機の駆動力だけを利用した走行を「EV走行」といい、内燃機関の駆動力だけを利用した走行を「エンジン走行」といい、電動機の駆動力と内燃機関の駆動力の両方を利用した走行を「パラレル走行」という。
【0040】
なお、上記両方式を複合したシリーズ/パラレル方式のHEVも知られている。当該方式では、車両の走行状態に応じてクラッチを切断又は締結する(断接する)ことによって、駆動力の伝達系統をシリーズ方式及びパラレル方式のいずれかの構成に切り替える。特に低速走行時にはクラッチを切断してシリーズ方式の構成とし、特に中高速走行時にはクラッチを締結してパラレル方式の構成とする。
【0041】
図1は、パラレル方式のHEVの内部構成を示すブロック図である。図1に示すように、パラレル方式のHEV(以下、単に「車両」という)は、電動機(Mot)201と、内燃機関(ENG)203と、上記説明した四節リンク機構の無段変速機(BD)205と、ディファレンシャルギア207と、クラッチ209と、車速センサ211と、回転数センサ213と、モード選択部215と、マネジメントECU(MG ECU)217とを備え、本実施形態の変速比制御装置を構成する。なお、図1中の点線の矢印は値データを示し、実線は指示内容を含む制御信号を示す。
【0042】
電動機201は、車両が走行するための動力を発生する。電動機201の出力は、クラッチ209及びディファレンシャルギア207を介して車軸221L,221Rに伝達される。内燃機関203は、車両が走行するための動力を発生する。内燃機関203出力はBD205に入力される。
【0043】
ディファレンシャルギア207は、電動機201及び/又は内燃機関203から伝達された駆動力を車両左右の車軸221L、221Rに分配する。クラッチ209は、電動機201からディファレンシャルギア207までの駆動力伝達経路を開閉する。クラッチ209はマネジメントECU217によって制御される。
【0044】
車速センサ211は、車両の走行速度(車速)を検出する。車速センサ211によって検出された車速を示す信号は、マネジメントECU217に送られる。回転数センサ213は、内燃機関203の回転数(BD205の入力回転数)Neを検出する。
【0045】
モード選択部215は、車両の走行に関する複数のモードの内、ドライバによって選択されたモードをマネジメントECU217に通知する。本実施形態の車両には、通常ドライブモード及び動力重視モードの2つのモードが用意されている。通常ドライブモードは、一般走行用のモードである。また、動力重視モードは、内燃機関203の高回転域をフルに用いてドライバがスポーツ走行等を楽しむことができるモードである。
【0046】
マネジメントECU217は、電動機201、内燃機関203及びBD205等の統括制御を行う。また、マネジメントECU217には、車速センサ211からの信号(車速を示す信号)、回転数センサ213からの信号(内燃機関203の回転数Neを示す信号)、ドライバによって操作されるアクセルペダルの開度(AP開度)を示す信号、及びモード選択部215によって選択されたモードを示す信号が入力される。マネジメントECU217は、車両がEV走行中、AP開度及び車速に基づいて内燃機関203を始動する必要があると判断すると、モード選択部215で選択されたモードに応じた処理を行う。
【0047】
図2は、図1に示したHEVが備えるマネジメントECU217の動作を示すフローチャートである。図2に示すように、車両がEV走行中、マネジメントECU217は、AP開度及び車速に基づいて内燃機関203を始動する必要があるかを判断する(ステップS101)。ステップS101で内燃機関203を始動する必要があるとマネジメントECU217が判断した場合は、ステップS103に進む。ステップS103では、マネジメントECU217は、モード選択部215によって選択されたモードが動力重視モードか否かを判断し、動力重視モードでない場合、すなわち、通常ドライブモードの場合にはステップS105に進み、動力重視モードの場合にはステップS107に進む。
【0048】
ステップS105では、マネジメントECU217は、AP開度及び車速に基づいて導出される要求出力が所定値より大きい(要求出力>所定値)か否かを判断し、要求出力>所定値の場合はステップS107に進み、要求出力≦所定値の場合はステップS109に進む。ステップS107では、マネジメントECU217は、内燃機関203を高応答に始動するための制御を行う。この高応答始動制御の詳細については、図4を参照して後述する。一方、ステップS109では、マネジメントECU217は、従来から行われている通常の方法で内燃機関203を始動するための制御を行う。この通常始動制御の詳細については、図5を参照して後述する。
【0049】
上記説明したフローチャートにおいて、ステップS101で始動する必要がないとマネジメントECU217が判断した場合、又は、ステップS107若しくはS109の処理を終了すると、マネジメントECU217は、図2に示したメインルーチンの処理を終了する。
【0050】
図3は、内燃機関203の高応答始動制御時と通常始動制御時の、BD205における変速比i、内燃機関203の回転数Ne、及びBD205を構成するワンウェイクラッチ120の入力部材122の揺動運動の変化をそれぞれ示すグラフである。なお、図3中の実線で示す各変化は高応答始動制御時を示し、点線は通常始動制御時を示す。また、車両は一定の速度で走行している。
【0051】
以下、高応答始動制御時のマネジメントECU217の動作について、図3及び図4を参照して説明する。図4は、内燃機関203を高応答始動制御する際のマネジメントECU217の動作を示すフローチャートである。図4に示すように、マネジメントECU217は、変速比iが目標値に近づくようBD205における偏心量r1の調整と、内燃機関203の始動制御とを同時に行う(ステップS201)。なお、変速比iの目標値に応じた偏心量は、マネジメントECU217が、AP開度、車速、及び内燃機関203の目標回転数Netに基づいて導出する値である。
【0052】
次に、マネジメントECU217は、内燃機関203の回転数Neがアイドリング可能な回転数(以下「アイドリング回転数」という)Neiに到達したか否かに応じて、内燃機関203の始動が完了したか否かを判断する(ステップS203)。ステップS203において、内燃機関203の回転数Neがアイドリング回転数Neiに到達すると内燃機関203の始動が完了したと判断し、ステップS205に進む。
【0053】
ステップS205では、マネジメントECU217は、内燃機関203の回転数Neが要求出力に応じた目標回転数Netになるよう内燃機関203を制御する。なお、目標回転数Netは、内燃機関203の燃料消費率が最も良い運転点を結んだ線(BSFCボトムライン)上の運転点の回転数であることが望ましい。また、ステップS205では、ステップS201における偏心量r1の調整によって変速比iが目標値に到達していなければ、マネジメントECU217は、ステップS201から継続して偏心量r1を調整し続けても良い。
【0054】
以下、通常始動制御時のマネジメントECU217の動作について、従来技術ではあるが本実施形態との比較のため、図3及び図5を参照して説明する。図5は、内燃機関203を通常始動制御する際のマネジメントECU217の動作を示すフローチャートである。図5に示すように、マネジメントECU217は、BD205における変速比iが無限大(∞)であるかを判断し(ステップS301)、無限大でなければステップS303に進み、無限大であればステップS305に進む。ステップS303では、マネジメントECU217は、変速比iが無限大になるよう偏心量r1を調整する。
【0055】
ステップS305では、マネジメントECU217は、内燃機関203の始動制御を行う。次に、マネジメントECU217は、内燃機関203の回転数Neがアイドリング回転数Neiに到達したか否かに応じて、内燃機関203の始動が完了したか否かを判断する(ステップS307)。ステップS307において、内燃機関203の回転数Neがアイドリング回転数Neiに到達すると内燃機関203の始動が完了したと判断し、ステップS309に進む。ステップS309では、マネジメントECU217は、内燃機関203の回転数Neが要求出力に応じた目標回転数Netになるよう内燃機関203を制御すると共に、変速比iが目標値に近づくようBD205における偏心量r1を調整する。
【0056】
このように、本実施形態によれば、車両がEV走行中に内燃機関203を始動する際、高応答始動制御では、BD205における変速比iの制御と、内燃機関203の回転数Neを目標回転数までNetまで上げていく制御とが並行して行われる。なお、変速比iが目標値となるまでの偏心量r1の調整は、内燃機関203の回転数Neが目標回転数Netに到達するまでに行われる。すなわち、内燃機関203の回転数Neが目標回転数Netに到達するまでに変速比iが目標値となるようBD205が制御される。
【0057】
このため、図3に示すように、内燃機関203からの駆動力が車軸221L,221Rに伝達されるタイミング(動力伝達タイミング)が、通常始動制御時には時間t2であるのに対し、高応答始動制御時には時間t1と早い。なお、BD205を用いた本実施形態の変速比制御装置において、内燃機関203からの駆動力が車軸221L,221Rに伝達されるタイミングは、BD205のワンウェイクラッチ120の入力部材122の正方向の回転速度が出力部材121の正方向の回転速度を超えたときである。図3には、出力部材121の正方向の回転速度が「アプトプット回転速度」と示されている。
【0058】
なお、本実施形態では、変速比制御装置が搭載される車両をパラレル方式のHEVと説明したが、この形態の車両に限られない。例えば、当該変速比制御装置は、内燃機関のみを駆動源として備えた車両であっても、駆動源として電動機の他に内燃機関を複数備えた車両であっても良い。但し、車両であっても、内燃機関から駆動軸の間に設けられるトランスミッションとしてBD205が用いられる。なお、内燃機関のみを駆動源として備えた車両の場合、上記説明した「EV走行中」は「コースティング走行(惰性走行)中」と読み替える。
【0059】
また、本実施形態では、図2のステップS103に示したように、動力重視モードが選択されていれば高応答始動制御が行われる。しかし、車両に重力重視モードが用意されていなければ、マネジメントECU217は、ステップS101を終了すると、ステップS103を行わずにステップS105に進む。また、マネジメントECU217は、ステップS103でモード選択部215によって選択されたモードが動力重視モードでない、すなわち、通常ドライブモードと判断した場合、ステップS105を行わずにステップS109に進んでも良い。
【符号の説明】
【0060】
101 入力軸
104 偏心ディスク
110 ピニオン
112 変速比可変機構
120 ワンウェイクラッチ
121 出力部材
122 入力部材
123 ローラ(係合部材)
130 連結部材
131 一端部(リング部)
132 他端部
133 円形開口
140 ベアリング
201 電動機(Mot)
203 内燃機関(ENG)
205 無段変速機(BD)
207 ディファレンシャルギア
209 クラッチ
211 車速センサ
213 回転数センサ
215 モード選択部
217 マネジメントECU(MG ECU)
221L,221R 車軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源からの回転動力を受けることで入力中心軸線の周りを回転する入力軸と、
前記入力中心軸線に対する偏心量を変更可能な第1支点をそれぞれの中心に有して、該偏心量を保ちつつ前記入力中心軸線の周りを前記入力軸と共に回転する偏心ディスクと、
前記入力中心軸線から離れた出力中心軸線の周りを回転する出力部材と、外部から回転方向の動力を受けることで前記出力中心軸線の周りを揺動する入力部材と、前記入力部材及び前記出力部材を互いにロック状態又は非ロック状態にする係合部材と、を有し、前記入力部材の正方向の回転速度が前記出力部材の正方向の回転速度を上回ったとき、前記入力部材に入力された回転動力を前記出力部材に伝達し、それにより前記入力部材の揺動運動を前記出力部材の回転運動に変換するワンウェイクラッチと、
一端が前記偏心ディスクの外周に前記第1支点を中心に回転自在に連結され、他端が前記ワンウェイクラッチの前記入力部材上の前記出力中心軸線から離間した位置に設けられた第2支点に回動自在に連結されることで、前記入力軸から前記偏心ディスクに与えられる回転運動を、前記ワンウェイクラッチの前記入力部材に対し当該入力部材の揺動運動として伝える連結部材と、
前記入力中心軸線に対する前記第1支点の偏心量を調節することで、前記偏心ディスクから前記ワンウェイクラッチの前記入力部材に伝えられる揺動運動の揺動角度を変更するアクチュエータを有し、それにより、前記入力軸に入力される回転動力が前記偏心ディスク及び前記連結部材を介して前記ワンウェイクラッチの出力部材に回転動力として伝達される際の変速比を変更すると共に、前記偏心量がゼロに設定可能とされることで前記変速比を無限大に設定する変速比可変機構と、
を有する四節リンク機構式の無段変速機を備えた車両において前記変速比を制御する変速比制御装置であって、
前記動力源が停止した状態で前記車両が走行中に前記動力源を始動するとき、前記動力源の始動制御と並行して、前記無段変速機における前記変速比が目標値となるよう前記偏心量を調整することを特徴とする変速比制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の変速比制御装置であって、
前記車両の走行モードには、前記車両の動力性能が異なる2つのモードが設けられ、
動力性能が高い方のモードが選択されているときに、前記動力源が停止した状態で前記車両が走行中に前記動力源を始動する際、前記動力源の始動制御と並行して、前記無段変速機における前記変速比が目標値となるよう前記偏心量を調整することを特徴とする変速比制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の変速比制御装置であって、
動力性能が低い方のモードが選択されているときに、前記動力源が停止した状態で前記車両が走行中に前記動力源を始動する際、前記動力源への要求出力が所定値以上であれば、前記動力源の始動制御と並行して、前記無段変速機における前記変速比が目標値となるよう前記偏心量を調整することを特徴とする変速比制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の変速比制御装置であって、
前記動力源が停止した状態で前記車両が走行中に前記動力源を始動する際、前記動力源への要求出力が所定値以上であれば、前記動力源の始動制御と並行して、前記無段変速機における前記変速比が目標値となるよう前記偏心量を調整することを特徴とする変速比制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の変速比制御装置であって、
前記動力源の回転数が目標回転数に到達する前に前記変速比が前記目標値となるよう前記偏心量を調整することを特徴とする変速比制御装置。
【請求項6】
動力源からの回転動力を受けることで入力中心軸線の周りを回転する入力軸と、
前記入力中心軸線に対する偏心量を変更可能な第1支点をそれぞれの中心に有して、該偏心量を保ちつつ前記入力中心軸線の周りを前記入力軸と共に回転する偏心ディスクと、
前記入力中心軸線から離れた出力中心軸線の周りを回転する出力部材と、外部から回転方向の動力を受けることで前記出力中心軸線の周りを揺動する入力部材と、前記入力部材及び前記出力部材を互いにロック状態又は非ロック状態にする係合部材と、を有し、前記入力部材の正方向の回転速度が前記出力部材の正方向の回転速度を上回ったとき、前記入力部材に入力された回転動力を前記出力部材に伝達し、それにより前記入力部材の揺動運動を前記出力部材の回転運動に変換するワンウェイクラッチと、
一端が前記偏心ディスクの外周に前記第1支点を中心に回転自在に連結され、他端が前記ワンウェイクラッチの前記入力部材上の前記出力中心軸線から離間した位置に設けられた第2支点に回動自在に連結されることで、前記入力軸から前記偏心ディスクに与えられる回転運動を、前記ワンウェイクラッチの前記入力部材に対し当該入力部材の揺動運動として伝える連結部材と、
前記入力中心軸線に対する前記第1支点の偏心量を調節することで、前記偏心ディスクから前記ワンウェイクラッチの前記入力部材に伝えられる揺動運動の揺動角度を変更するアクチュエータを有し、それにより、前記入力軸に入力される回転動力が前記偏心ディスク及び前記連結部材を介して前記ワンウェイクラッチの出力部材に回転動力として伝達される際の変速比を変更すると共に、前記偏心量がゼロに設定可能とされることで前記変速比を無限大に設定する変速比可変機構と、
を有する四節リンク機構式の無段変速機を備えた車両において前記変速比を制御する変速比制御方法であって、
前記動力源が停止した状態で前記車両が走行中に前記動力源を始動するとき、前記動力源の始動制御と並行して、前記無段変速機における前記変速比が目標値となるよう前記偏心量を調整することを特徴とする変速比制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載の変速比制御方法であって、
前記車両の走行モードには、前記車両の動力性能が異なる2つのモードが設けられ、
動力性能が高い方のモードが選択されているときに、前記動力源が停止した状態で前記車両が走行中に前記動力源を始動する際、前記動力源の始動制御と並行して、前記無段変速機における前記変速比が目標値となるよう前記偏心量を調整することを特徴とする変速比制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の変速比制御方法であって、
動力性能が低い方のモードが選択されているときに、前記動力源が停止した状態で前記車両が走行中に前記動力源を始動する際、前記動力源への要求出力が所定値以上であれば、前記動力源の始動制御と並行して、前記無段変速機における前記変速比が目標値となるよう前記偏心量を調整することを特徴とする変速比制御方法。
【請求項9】
請求項6に記載の変速比制御方法であって、
前記動力源が停止した状態で前記車両が走行中に前記動力源を始動する際、前記動力源への要求出力が所定値以上であれば、前記動力源の始動制御と並行して、前記無段変速機における前記変速比が目標値となるよう前記偏心量を調整することを特徴とする変速比制御方法。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか一項に記載の変速比制御方法であって、
前記動力源の回転数が目標回転数に到達する前に前記変速比が前記目標値となるよう前記偏心量を調整することを特徴とする変速比制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−201339(P2012−201339A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70651(P2011−70651)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】