説明

変速装置

【課題】入力部材に付与された動力を複数のクラッチの係合状態の切り替えにより変速比を複数段に変更して出力部材に伝達可能な変速装置において、入力部材と複数のクラッチのクラッチドラムをケースに対して安定に支持しつつ部品の点数削減を図る。
【解決手段】自動変速機30では、第1クラッチとしてのクラッチC2のクラッチドラム50が入力軸34に固定され、第2クラッチとしてのクラッチC1のクラッチドラム40がクラッチドラム50にスプライン嵌合部60を介して連結されると共にクラッチC2のキャンセルプレート57と当接する部位としてのブラケット60bを有しており、入力軸34に取り付けられたスナップリング70により軸方向に位置決めされる。そして、クラッチドラム50および入力軸34は、1個のラジアルベアリング61と1個のスラストベアリング62とによりトランスミッションケース18に対して支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力部材に付与された動力を複数のクラッチの係合状態の切り替えにより変速比を複数段に変更して出力部材に伝達可能な変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の変速装置としては、入力軸に固定された第1ドラム部材を有する第1クラッチと、第1ドラム部材の外側に配置された第2ドラム部材を有する第2クラッチと、入力軸に連結されたスリーブに固着されると共に内周面に形成されたスプラインに第2のクラッチの第2ドラム部材が係合される第3ドラム部材を有する第3クラッチとを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この変速装置では、上述のように構成された3つのクラッチの係合状態を切り替えることにより、入力軸の回転速度を複数段に変更して出力部材に伝達している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−161950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の変速装置では、入力軸を変速装置のケースに対して軸方向に支持する軸受(ラジアルベアリング)と径方向に支持する軸受(スラストベアリング)とに加えて、第2および第3ドラム部材をケースに対して軸方向および径方向に支持する軸受や各クラッチの油圧アクチュエータを構成する部品を軸方向に位置決めするための部材等が必要であり、部品点数の削減という観点からみれば、なお改善の余地がある。
【0005】
本発明は、入力部材に付与された動力を複数のクラッチの係合状態の切り替えにより変速比を複数段に変更して出力部材に伝達可能である変速装置において、入力部材と複数のクラッチのクラッチドラムとをケースに対して安定に支持しつつ、軸受といった部品の点数削減を図ることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の変速装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の変速装置は、入力部材に付与された動力をケース内に収容された複数のクラッチの係合状態の切り替えにより変速比を複数段に変更して出力部材に伝達可能な変速装置において、
前記複数のクラッチは、前記入力部材に固定される第1クラッチドラムを有する第1クラッチと、前記第1クラッチドラムの径方向内側で該第1クラッチドラムにスプライン嵌合部を介して連結される第2クラッチドラムを有する第2クラッチとを含み、
前記第1クラッチは、前記第1クラッチドラム内で軸方向に摺動可能な第1クラッチピストンと、前記第1クラッチピストンよりも前記出力部材側に配置されると共に前記第1クラッチドラム内で発生する遠心油圧をキャンセルするための第1キャンセル油室を該第1クラッチピストンと共に画成する第1キャンセルプレートと、前記第1クラッチピストンと前記第1キャンセルプレートとの間に配置された第1リターンスプリングとを含み、
前記第2クラッチドラムは、前記第1キャンセルプレートと当接すると共に、前記入力部材に取り付けられた位置決め部材により軸方向に位置決めされ、
前記第1クラッチドラムおよび前記入力部材は、1個のラジアルベアリングと1個のスラストベアリングとにより前記ケースに対して支持されることを特徴とする。
【0008】
本発明の変速装置では、第1クラッチの第1クラッチドラムが入力部材に固定され、第2クラッチの第2クラッチドラムが第1クラッチドラムにスプライン嵌合部を介して連結される。また、第1クラッチは、第1クラッチドラム内で軸方向に摺動可能な第1クラッチピストンと、第1クラッチピストンよりも出力部材側に配置されると共に第1クラッチドラム内で発生する遠心油圧をキャンセルするための第1キャンセル油室を第1クラッチピストンと共に画成する第1キャンセルプレートと、第1クラッチピストンと第1キャンセルプレートとの間に配置された第1リターンスプリングとを含み、第2クラッチドラムは、第1クラッチの第1キャンセルプレートと当接すると共に、入力部材に取り付けられた位置決め部材により軸方向に位置決めされる。そして、第1クラッチドラムおよび入力部材は、1個のラジアルベアリングと1個のスラストベアリングとによりケースに対して支持される。このようにして第2クラッチドラムを第1クラッチドラムおよび入力部材に対して支持すれば、第1クラッチドラムおよび入力部材を支持する1個のラジアルベアリングと1個のスラストベアリングとを用いて第2クラッチドラムをもケースに対して支持することができる。更に、かかる構成のもとでは、位置決め部材により第2クラッチドラムを介して第1キャンセルプレートの軸方向の位置決めを行うこともできるため、第1キャンセルプレートを軸方向に位置決めするための部材を省略することができる。従って、この変速装置では、入力部材および第1および第2クラッチのクラッチドラムをケースに対して安定に支持しつつ、軸受といった部品の点数削減を図ることが可能となる。
【0009】
また、前記第1クラッチの前記第1クラッチドラムは、複数のクラッチプレートを摺動自在に保持する第1外筒部と、該第1外筒部の径方向内側に形成されると共に前記入力部材に固定される第1内筒部とを有してもよく、前記第2クラッチの前記第2クラッチドラムは、複数のクラッチプレートを摺動自在に保持する第2外筒部と、該第2外筒部の径方向内側に形成されると共に前記第1クラッチドラムの前記第1内筒部の外周に嵌合される第2内筒部とを有してもよく、前記スプライン嵌合部は、前記第1クラッチドラムの前記第1内筒部の外周面に形成された第1スプラインと、前記第2クラッチドラムに配設された第2スプラインとにより構成されてもよい。
【0010】
このように、第2クラッチドラムの第2内筒部を第1クラッチドラムの第1内筒部の外周に嵌合することで第2クラッチドラムを第1クラッチドラムに対してより安定に支持することができる。また、第1クラッチドラムと第2クラッチドラムとのスプライン嵌合部を第1クラッチドラムの第1内筒部の外周に配置すれば、ラジアルベアリングを当該スプライン嵌合部の近傍に配置して、当該ラジアルベアリングにより第1クラッチドラムおよび第2クラッチドラムの径方向の加重をより効率的に受けることができる。これにより、1個のラジアルベアリングにより第1クラッチドラム、第2クラッチドラムおよび入力部材の全体をケースに対してより安定に支持することが可能となる。
【0011】
更に、前記第2クラッチは、前記第2クラッチドラム内で軸方向に摺動可能な第2クラッチピストンと、前記第2クラッチピストンよりも前記出力部材側に配置されると共に前記第2クラッチドラム内で発生する遠心油圧をキャンセルするための第2キャンセル油室を該第2クラッチピストンと共に画成する第2キャンセルプレートと、前記第2クラッチピストンと前記第2キャンセルプレートとの間に配置されると共に前記第1リターンスプリングよりも小さいバネ定数を有する第2リターンスプリングとを含んでもよく、前記第2クラッチドラムの前記第2内筒部の前記出力部材側の端部は、前記位置決め部材と当接してもよい。
【0012】
このように、第2クラッチドラムを第1キャンセルプレートに当接させると共に、第2内筒部の出力部材側の端部を入力部材に取り付けられた位置決め部材と当接させ、更に第2リターンスプリングのバネ定数を第1リターンスプリングのバネ定数よりも小さくすることで、位置決め部材により第2クラッチドラムの軸方向における出力部材側への移動を規制すると共に、第2リターンスプリングよりも大きいバネ定数を有する第1リターンスプリングからの力により第2クラッチドラムの軸方向における出力部材と反対側への移動を規制することが可能となり、軸方向において第2クラッチドラムを第1クラッチドラムおよび入力部材に対してより安定に支持することができる。
【0013】
また、前記第2クラッチドラムの前記第2内筒部は、前記第1クラッチドラムの前記第1内筒部の外周に嵌合される大径部と、前記入力部材が内部に挿通される小径部と、前記大径部と前記小径部とを接続すると共に前記第2クラッチドラムの内部に作動流体を供給するための供給孔が形成された接続部とを有してもよく、前記第1クラッチドラムと前記第2クラッチドラムと前記入力部材とは、前記接続部の近傍に該入力部材に形成された作動流体供給路と連通する油室を画成してもよく、前記大径部と前記第1クラッチドラムの前記第1内筒部との間および前記小径部と前記入力部材との間には、シール部材が配置されてもよい。
【0014】
これにより、供給孔を介して第2クラッチドラムの内部に作動流体が供給されたときに作動流体の圧力により第2クラッチドラムに対して出力部材と反対側への軸方向の力が作用したとしても、第1クラッチドラムと第2クラッチドラムと入力部材とが画成する油室にも作動流体が供給されることで第2クラッチドラムに対して出力部材側への軸方向の力が作用するので、第2クラッチドラムの軸方向位置を安定に保つことができる。更に、シール部材の摩擦抵抗によっても第2クラッチドラムの軸方向位置をより安定に保つことができる。そして、このようにして第2クラッチドラムの軸方向位置の安定化を図ることで、第1クラッチドラムと第2クラッチドラムとのスプライン嵌合部に振動等が加えられるのを抑制してスプライン嵌合部の磨耗を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例に係る自動変速機30を含むトランスミッション20を搭載した車両である自動車10の概略構成図である。
【図2】トランスミッション20に含まれる自動変速機30の概略構成図である。
【図3】自動変速機30の各変速段とクラッチおよびブレーキの作動状態との関係を表す作動表である。
【図4】自動変速機30の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明の一実施例に係る自動変速機30を含むトランスミッション20を搭載した車両である自動車10の概略構成図である。同図に示す自動車10は、ガソリンや軽油といった炭化水素系の燃料と空気との混合気の爆発燃焼により動力を出力する内燃機関であるエンジン12と、エンジン12を運転制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)14と、図示しない電子制御式油圧ブレーキユニットを制御するブレーキ用電子制御ユニット(以下、「ブレーキECU」という)16と、自動変速機30と共にトランスミッションケース18の内部に収容されるトルクコンバータやオイルポンプ(何れも図示せず)、変速制御を実行する変速用電子制御ユニット(以下、「変速用ECU」という)19を含み、エンジン12のクランクシャフトに接続されてエンジン12からの動力を左右の駆動輪DWに伝達するトランスミッション20とを備える。
【0018】
図1に示すように、エンジンECU14には、アクセルペダル91の踏み込み量(操作量)を検出するアクセルペダルポジションセンサ92からのアクセル開度Accや車速センサ99からの車速V、クランクシャフトの回転数を検出する図示しない回転数センサといった各種センサ等からの信号、ブレーキECU16や変速用ECU19からの信号等が入力され、エンジンECU14は、これらの信号に基づいて何れも図示しない電子制御式スロットルバルブや燃料噴射弁、点火プラグ等を制御する。ブレーキECU16には、ブレーキペダル93が踏み込まれたときにマスタシリンダ圧センサ94により検出されるマスタシリンダ圧や車速センサ99からの車速V、図示しない各種センサ等からの信号、エンジンECU14や変速用ECU19からの信号等が入力され、ブレーキECU16は、これらの信号に基づいて図示しないブレーキアクチュエータ(油圧アクチュエータ)等を制御する。
【0019】
変速用ECU19には、複数のシフトレンジの中から所望のシフトレンジを選択するためのシフトレバー95の操作位置を検出するシフトレンジセンサ96からのシフトレンジSRや車速センサ99からの車速V、図示しない各種センサ等からの信号、エンジンECU14やブレーキECU16からの信号等が入力され、変速用ECU19は、これらの信号に基づいて自動変速機30等を制御する。なお、エンジンECU14、ブレーキECU16および変速用ECU19は、何れも図示しないCPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポートおよび通信ポート(何れも図示せず)等を備える。そして、エンジンECU14、ブレーキECU16および変速用ECU19は、バスライン等を介して相互に接続されており、これらのECU間では制御に必要なデータのやり取りが随時実行される。
【0020】
図2は、トランスミッション20に含まれる自動変速機30の概略構成図である。図2に示す自動変速機30は、6段変速の有段変速機として構成されており、図2に示すように、ダブルピニオン式の第1遊星歯車機構31と、シングルピニオン式の第2遊星歯車機構32および第3遊星歯車機構33と、入力軸(入力部材)34と、出力軸(出力部材)35と、入力軸34から出力軸35までの動力伝達経路を変更するための2つのクラッチC1およびC2と3つのブレーキB1,B2およびB3とワンウェイクラッチF1とを含む。第1〜第3遊星歯車機構31〜33とクラッチC1およびC2とブレーキB1〜B3とワンウェイクラッチF1とは、トランスミッションケース18の内部に収容される。また、自動変速機30の入力軸34は、図示しないトルクコンバータ等を介してエンジン12のクランクシャフトに接続され、出力軸35は、差動機構(デファレンシャルギヤ)40(図1参照)を介して駆動輪DWに接続される。
【0021】
第1〜第3遊星歯車機構31〜33の中で最も車両前方すなわち最も入力軸34に近接して配置される第1遊星歯車機構31は、中空軸36を介して入力軸34に接続される外歯歯車であるサンギヤ(入力要素)31sと、サンギヤ31sと同心円上に配置される内歯歯車であるリングギヤ(固定可能要素)31rと、互いに噛合すると共に一方がサンギヤ31sと他方がリングギヤ31rと噛合する2つのピニオンギヤ31paおよび31pbの組を自転かつ公転自在に複数保持するキャリア31cとを有する。また、第1遊星歯車機構31の車両後方側すなわち出力軸35側に配置される第2遊星歯車機構32は、外歯歯車であるサンギヤ(第1の入力要素)32sと、サンギヤ32sと同心円上に配置される内歯歯車であるリングギヤ(固定可能要素)32rと、サンギヤ32sに噛合すると共にリングギヤ32rに噛合する複数のピニオンギヤ32pを自転かつ公転自在に保持するキャリア(第2の入力要素)32cとを有する。第2遊星歯車機構32のキャリア32cには、中空軸36内に同軸に配置される中空軸37が接続され、第2遊星歯車機構32のサンギヤ32sには、中空軸37内に同軸に配置される連結軸38が接続される。また、第2遊星歯車機構32のリングギヤ32rは、第1遊星歯車機構31のリングギヤ31rと一体に回転可能となるようにリングギヤ31rに連結されている。更に、第1〜第3遊星歯車機構31〜33の中で最も車両後方すなわち最も出力軸35に近接して配置される第3遊星歯車機構33は、外歯歯車であるサンギヤ(入力要素)33sと、サンギヤ33sと同心円上に配置される内歯歯車であるリングギヤ(固定可能要素)33rと、サンギヤ33sに噛合すると共にリングギヤ33rに噛合する複数のピニオンギヤ33pを自転かつ公転自在に保持するキャリア33cとを有する。第3遊星歯車機構33のサンギヤ33sには、連結軸38が接続され、第3遊星歯車機構33のリングギヤ33rには、第2遊星歯車機構32のキャリア32cが連結され、第3遊星歯車機構33のキャリア33cには、出力軸35が接続される。
【0022】
クラッチC1は、入力軸34と連結軸38とを接続すると共に両者の接続を解除することができる多板式油圧クラッチである。クラッチC2は、入力軸34(第1遊星歯車機構31のサンギヤ31s)と第2遊星歯車機構32のキャリア32cとを接続すると共に両者の接続を解除することができる多板式油圧クラッチである。ワンウェイクラッチF1は、第2遊星歯車機構32のキャリア32cと第3遊星歯車機構33のリングギヤ33rとの正転のみを許容して逆転を規制するものである。ブレーキB1は、第1遊星歯車機構31のキャリア31cをトランスミッションケース18に対して固定すると共にキャリア31cのトランスミッションケース18に対する固定を解除することができる多板式油圧ブレーキである。ブレーキB2は、第1遊星歯車機構31のリングギヤ31rをトランスミッションケース18に対して固定すると共にリングギヤ31rのトランスミッションケース18に対する固定を解除することができる多板式油圧ブレーキである。ここで、上述のように、第2遊星歯車機構32のリングギヤ32rは、第1遊星歯車機構31のリングギヤ31rと一体に回転可能となるように当該リングギヤ31rに連結されていることから、ブレーキB2を係合すれば、第2遊星歯車機構32のリングギヤ32rがトランスミッションケース18に対して固定され、ブレーキB2の係合を解除すれば、リングギヤ32rのトランスミッションケース18に対する固定が解除される。ブレーキB3は、第2遊星歯車機構32のキャリア32cと第3遊星歯車機構33のリングギヤ33rとをトランスミッションケース18に対して固定すると共にキャリア32cおよびリングギヤ33rのトランスミッションケース18に対する固定を解除することができる多板式油圧ブレーキである。
【0023】
上述のクラッチC1〜C2およびブレーキB1〜B3は、図示しない油圧制御ユニットによる作動油の給排を受けて動作する。図3に自動変速機30の各変速段とクラッチC1〜C2およびブレーキB1〜B3の作動状態との関係を表す作動表を示す。自動変速機30は、クラッチC1〜C2およびブレーキB1〜B3を図3の作動表に示す状態とすることで前進1〜6速の変速段と後進1段の変速段とを提供する。
【0024】
図4は、自動変速機30の要部を示す要部拡大図である。同図に示すように、クラッチC2(第1クラッチ)は、入力軸34に溶接等により固定されたクラッチドラム(第1クラッチドラム)50と、中空軸37に固定されたクラッチハブ54と、クラッチドラム50の内周面にスプラインを介して摺動自在に支持された複数の環状のクラッチプレート53と、クラッチハブ54の外周面にスプラインを介して摺動自在に支持された複数の環状のクラッチプレート55と、クラッチドラム50内に軸方向に摺動自在に配置されてクラッチプレート53,55に向けて移動可能なクラッチピストン(第1クラッチピストン)56と、クラッチピストン56よりも出力軸35側に配置されると共にクラッチドラム50内で発生する遠心油圧をキャンセルするためのキャンセル油室をクラッチピストン56と共に画成するキャンセルプレート(第1キャンセルプレート)57と、クラッチピストン56とキャンセルプレート57との間に配置されるリターンスプリング(第1リターンスプリング)58とを含む。クラッチC2は、トランスミッションケース18に固定されたポンプカバー21内に形成された油路を介してオイルポンプに接続された図示しない油圧制御ユニットから供給される作動油の油圧を用いてクラッチピストン56をクラッチプレート53,55に向けて移動させてクラッチピストン56とクラッチドラム50に固定された当接部材との間にクラッチプレート53,55を挟み付けることによりクラッチプレート53,55間に作用する摩擦力によりクラッチドラム50とクラッチハブ54とを連結する。これにより、クラッチドラム50とクラッチハブ54とが一体に回転可能となり、エンジン12からの動力を入力軸34、クラッチドラム50、クラッチハブ54および中空軸37を介して第2遊星歯車機構32のキャリア32cへと伝達することができる。また、クラッチC2のクラッチドラム50の出力軸35側の端部には、中空軸36に固定されたハブ39が固定されており、エンジン12からの動力を入力軸34、クラッチドラム50、ハブ39および中空軸36を介して第1遊星歯車機構31のサンギヤ31sへと伝達することができる。
【0025】
クラッチC1(第2クラッチ)は、クラッチドラム50の内部(径方向内側)に配置されると共にスプライン嵌合部60を介してクラッチドラム50と一体回転可能に連結されたクラッチドラム40(第2クラッチドラム)と、連結軸38に固定されたクラッチハブ44と、クラッチドラム40の内周面にスプラインを介して軸方向に摺動自在に支持された複数の環状のクラッチプレート43と、クラッチハブ44の外周面にスプラインを介して軸方向に摺動自在に支持された複数の環状のクラッチプレート45と、クラッチドラム40内に軸方向に摺動自在に配置されてクラッチプレート43,45に向けて移動可能なクラッチピストン(第2クラッチピストン)46と、クラッチピストン46よりも出力軸35側に配置されると共にクラッチドラム40内で発生する遠心油圧をキャンセルするためのキャンセル油室をクラッチピストン46と共に画成するキャンセルプレート(第2キャンセルプレート)47と、クラッチピストン46とキャンセルプレート47との間に配置されると共に上記リターンスプリング58よりも小さいバネ定数を有するリターンスプリング(第2リターンスプリング)48とを含む。第1クラッチC1は、入力軸34に形成されると共に油圧制御ユニットに接続された作動油供給路68からの油圧を用いてクラッチピストン46をクラッチプレート43,45に向けて移動させてクラッチピストン46とクラッチドラム40に固定された当接部材との間にクラッチプレート43,45を挟み付けることによりクラッチプレート43,45間に作用する摩擦力によりクラッチドラム40とクラッチハブ44とを連結する。これにより、クラッチドラム40とクラッチハブ44とが一体に回転可能となり、エンジン12からの動力を入力軸34、クラッチドラム50および40、クラッチハブ44および連結軸38を介して第2遊星歯車機構32のサンギヤ32sと第3遊星歯車機構33のサンギヤ33sとに伝達することができる。
【0026】
クラッチC2のクラッチドラム50は、図4に示すように、エンジン12(動力発生源)側に径方向内側に向けて延びる端部を有すると共にクラッチプレート53を摺動自在に保持する外筒部50aと、外筒部50aのエンジン12側の端部に接続されて出力軸35側へ向けて延びると共に出力軸35側の端部が溶接等により入力軸34に固定される内筒部50bとからなる。内筒部50bは、径方向外側に向けて延出されて外筒部50aに接続される端部をエンジン12側に有すると共に軸方向に延在する大径部50cと、大径部50cから出力軸35に向けて延びると共に入力軸34に固定される小径部50dとを有する。内筒部50bの大径部50cには、トランスミッションケース18に固定されたポンプカバー21内に形成されると共に油圧制御ユニットに接続された図示しない作動油供給路からの作動油をクラッチドラム50の内部に供給するための供給孔59が形成されている。
【0027】
クラッチC1のクラッチドラム40は、クラッチプレート43を摺動自在に保持する外筒部40aと、外筒部40aのエンジン12(動力発生源)側の端部から径方向内側に向けて延出された側壁部40bと、側壁部40bから出力軸35側へ向けて延出されると共にクラッチC2のクラッチドラム50と入力軸34との固定部66よりも出力軸35側で入力軸34に取り付けられたスナップリング(位置決め部材)70と当接する内筒部40cとからなる。また、クラッチドラム40の内筒部40cは、クラッチドラム50の内筒部50b(小径部50d)の外周に嵌合される大径部40dと、大径部40dよりも出力軸35側に位置して内部に入力軸34が挿通される小径部40eと、大径部40dと小径部40eとを接続する接続部40fとを有する。接続部40fには、作動油供給路68からの作動油をクラッチドラム40の内部に供給するための供給孔49が形成されている。
【0028】
クラッチドラム40とクラッチドラム50とを一体回転可能に連結するスプライン嵌合部60は、クラッチドラム50の内筒部50b(大径部50c)の外周に形成されたスプライン60aと、クラッチドラム40の側壁部40bの外面に溶接等により固定された環状のブラケット60bと、クラッチドラム50側のスプライン60aと係合するようにブラケット60bの内周面に配設されたスプライン60cとにより構成される。また、ブラケット60bのエンジン12側の端部は、キャンセルプレート57と当接するようにクラッチドラム40に固定される。そして、クラッチドラム50の内筒部50bの大径部50cとポンプカバー21との間には、1個のラジアルベアリング61が配置され、内筒部50bの小径部50dの外面とポンプカバー21の端部との間には、1個のスラストベアリング62が配置される。すなわち、ラジアルベアリング61は、スプライン嵌合部60の近傍でクラッチドラム50を径方向に支持し、スラストベアリング62は、スプライン嵌合部60の近傍でクラッチドラム50を軸方向に支持する。これにより、クラッチドラム50は入力軸34に固定されると共にスプライン嵌合部60を介してクラッチドラム40と連結されていることから、入力軸34とクラッチドラム50とクラッチドラム40とがポンプカバー21、すなわちトランスミッションケース18に対して回転自在に支持されることになる。
【0029】
このように、クラッチドラム40の内筒部40cの大径部40dをクラッチドラム50の内筒部50bの小径部50dに嵌合すると共に、スプライン嵌合部60を介してクラッチドラム40をクラッチドラム50と連結することで、クラッチドラム40がクラッチドラム50に対して安定に支持される。また、クラッチドラム40の側壁部40bに固定されたブラケット60bをキャンセルプレート57に当接させると共に、クラッチドラム40の内筒部40cの出力軸35側の端部すなわち小径部60eを入力軸34に取り付けられたスナップリング70と当接させ、更にリターンスプリング48のバネ定数をリターンスプリング58のバネ定数よりも小さくすることで、スナップリング70によりクラッチドラム40の軸方向における出力軸35側への移動が規制されると共に、リターンスプリング48よりも大きいバネ定数を有するリターンスプリング58からの力によりクラッチドラム40の軸方向における出力軸35とは反対側すなわちエンジン12側への移動が規制される。これにより、クラッチドラム50および入力軸34に対してクラッチドラム40が軸方向に位置決めされ、クラッチドラム50および入力軸34をトランスミッションケース18に対して支持するラジアルベアリング61およびスラストベアリング62によってクラッチドラム40もトランスミッションケース18に対して軸方向に位置決めされる。更に、スナップリング70によりクラッチドラム40を介してキャンセルプレート57も軸方向に位置決めされる。
【0030】
また、実施例では、クラッチドラム40とクラッチドラム50と入力軸34とにより、クラッチドラム40の接続部40fの近傍に供給孔49を介して入力軸34に形成された作動油供給路68と連通する油室67が画成される。更に、クラッチドラム40の大径部40dとクラッチドラム50の内筒部50bの大径部50cとの間および小径部40eと入力軸34との間には、それぞれシール部材71,72が配置される。これにより、供給孔49を介してクラッチドラム50の内部に作動油が供給されると、クラッチドラム40とクラッチドラム50と入力軸34とが画成する油室67にも作動油が供給される。
【0031】
以上説明した実施例の自動車10に搭載されたトランスミッション20に含まれる自動変速機30では、第1クラッチとしてのクラッチC2のクラッチドラム50が入力軸34に固定され、第2クラッチとしてのクラッチC1のクラッチドラム40がクラッチドラム50にスプライン嵌合部60を介して連結される。また、クラッチC2は、クラッチドラム50内で軸方向に摺動可能なクラッチピストン56と、クラッチピストン56よりも出力軸35側に配置されると共にクラッチドラム50内で発生する遠心油圧をキャンセルするためのキャンセル油室をクラッチピストン56と共に画成するキャンセルプレート57と、クラッチピストン56とキャンセルプレート57との間に配置されたリターンスプリング58とを含むものであり、クラッチC1のクラッチドラム40は、クラッチC2のキャンセルプレート57と当接する部位としてのブラケット60bを有しており、入力軸34に取り付けられたスナップリング(位置決め部材)70により軸方向に位置決めされる。そして、クラッチドラム50および入力軸34は、1個のラジアルベアリング61と1個のスラストベアリング62とによりトランスミッションケース18に対して支持される。このようにしてクラッチドラム40をクラッチドラム50および入力軸34に対して支持すれば、クラッチドラム50および入力軸34を支持する1個のラジアルベアリング61と1個のスラストベアリング62とを用いてクラッチドラム40をもトランスミッションケース18に対して支持することができる。更に、実施例の自動変速機30では、スナップリング70によりクラッチドラム40を介してキャンセルプレート57の軸方向の位置決めを行うこともできるため、キャンセルプレート57を軸方向に位置決めするための部材を省略することができる。従って、実施例の自動変速機30では、入力軸34およびクラッチC1,C2のクラッチドラム40,50をトランスミッションケース18に対して安定に支持しつつ、軸受といった部品の点数削減を図ることが可能となる。
【0032】
また、上記実施例において、クラッチC2のクラッチドラム50は、複数のクラッチプレート53を摺動自在に保持する外筒部50aと、外筒部50aの径方向内側に形成されると共に入力軸34に固定される内筒部50bとを有しており、クラッチC2のクラッチドラム40は、複数のクラッチプレート43を摺動自在に保持する外筒部40aと、外筒部40aの径方向内側に形成されると共にクラッチドラム50の内筒部50bの外周に嵌合される内筒部40cとを有している。そして、スプライン嵌合部60は、クラッチドラム50の内筒部50bの外周面に形成されたスプライン60aと、クラッチドラム40に固定されたブラケット60bに配設されたスプライン60cとにより構成される。
【0033】
このように、クラッチドラム40の内筒部40cをクラッチドラム50の内筒部50bの外周に嵌合することでクラッチドラム40をクラッチドラム50に対してより安定に支持することができる。また、上記実施例のように、クラッチドラム50とクラッチドラム40とのスプライン嵌合部60をクラッチドラム50の内筒部50bの外周に配置すれば、ラジアルベアリング61を当該スプライン嵌合部60の近傍に配置して、当該ラジアルベアリング61によりクラッチドラム50およびクラッチドラム40の径方向の加重をより効率的に受けることができる。これにより、1個のラジアルベアリング61によりクラッチドラム50、クラッチドラム40および入力軸34の全体をトランスミッションケース18に対してより安定に支持することが可能となる。
【0034】
更に、クラッチC1は、クラッチドラム40内で軸方向に摺動可能なクラッチピストン46と、クラッチピストン46よりも出力軸35側に配置されると共にクラッチドラム40内で発生する遠心油圧をキャンセルするためのキャンセル油室をクラッチピストン46と共に画成するキャンセルプレート47と、クラッチピストン46とキャンセルプレート47との間に配置されると共にリターンスプリング58よりも小さいバネ定数を有するリターンスプリング48とを含み、クラッチドラム40の内筒部40cの出力軸35側の端部すなわち小径部40eは、入力軸34に取り付けられたスナップリング70と当接する。
【0035】
このように、クラッチドラム40をキャンセルプレート57に当接させると共に、内筒部40cの出力軸35側の端部すなわち小径部40eを入力軸34に取り付けられたスナップリング70と当接させ、更にクラッチC1のリターンスプリング48のバネ定数をクラッチC2のリターンスプリング58のバネ定数よりも小さくすることで、スナップリング70によりクラッチドラム40の軸方向における出力軸35側への移動を規制すると共に、リターンスプリング48よりも大きいバネ定数を有するリターンスプリング58からの力によりクラッチドラム40の軸方向における出力軸35と反対側への移動を規制することが可能となり、軸方向においてクラッチドラム40をクラッチドラム50および入力軸34に対してより安定に支持することができる。
【0036】
また、クラッチドラム40の内筒部40cは、クラッチドラム50の内筒部50bの外周に嵌合される大径部40dと、入力軸34が内部に挿通される小径部40eと、大径部40dと小径部40eとを接続すると共にクラッチドラム40の内部に作動油を供給するための供給孔49が形成された接続部40fとを有しており、クラッチドラム50とクラッチドラム40と入力軸34とは、接続部40fの近傍に入力軸34に形成された作動油供給路68と連通する油室67を画成する。そして、大径部40dとクラッチドラム50の内筒部50bとの間および小径部40eと入力軸34との間には、シール部材71,72が配置される。
【0037】
これにより、供給孔49を介してクラッチドラム40の内部に作動油が供給されたときに作動油の圧力によりクラッチドラム40に対して出力軸35と反対側への軸方向の力が作用したとしても、クラッチドラム40とクラッチドラム50と入力軸34とが画成する油室67にも作動油が供給されることでクラッチドラム40に対して出力軸35側への軸方向の力が作用するので、クラッチドラム40の軸方向位置を安定に保つことができる。更に、シール部材71,72の摩擦抵抗によってもクラッチドラム40の軸方向位置をより安定に保つことができる。そして、このようなクラッチドラム40の軸方向位置の安定化を図ることで、クラッチドラム40とクラッチドラム50とのスプライン嵌合部60に振動等が加えられるのを抑制してスプライン嵌合部60の磨耗を抑制することが可能となり、スプライン60aおよび60cの表面硬度を向上させるための表面処理を省略することができる。
【0038】
なお、上述のクラッチC1およびC2に関わる構成は、上述のような自動変速機30以外の構成を有する変速装置にも適用されることはいうまでもない。1
【0039】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。すなわち、上記実施例では、入力軸34に付与された動力をトランスミッションケース18内に収容された複数のクラッチC1およびC2の係合状態の切り替えにより変速比を複数段に変更して出力軸35に伝達可能な自動変速機30が「変速装置」に相当し、入力軸34に固定されるクラッチドラム50を有するクラッチC2が「第1クラッチ」に相当し、クラッチドラム50の径方向内側で当該クラッチドラム50にスプライン嵌合部60を介して連結されるクラッチドラム40を有するクラッチC1が「第2クラッチ」に相当し、入力軸34に取り付けられたスナップリング70が「位置決め部材」に相当し、クラッチドラム50および入力軸34とを支持するラジアルベアリング61とスラストベアリング62とが、「1個のラジアルベアリング」と「1個のラジアルベアリング」とに相当する。ただし、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。すなわち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0040】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、変速装置の製造産業において利用可能である。
【符号の説明】
【0042】
10 自動車、12 エンジン、14 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、16 ブレーキ用電子制御ユニット(ブレーキECU)、18 トランスミッションケース、19 変速用電子制御ユニット(変速用ECU)、20 トランスミッション、21 ポンプカバー、30 自動変速機、31 第1遊星歯車機構、31c,32c,33c キャリア、31pa,31pb,32p,33p ピニオンギヤ、31r,32r,33r リングギヤ、31s,32s,33s サンギヤ、32 第2遊星歯車機構、33 第3遊星歯車機構、34 入力軸、35 出力軸、36,37 中空軸、38 連結軸、39 ハブ、40,50 クラッチドラム、40a,50a 外筒部、40b 側壁部、40c,50b 内筒部、40d,50c 大径部、40e,50d 小径部、40f 接続部、43,45,53,55 クラッチプレート、44,54 クラッチハブ、46,56 クラッチピストン、47,57 キャンセルプレート、48,58 リターンスプリング、49,59 供給孔、60 スプライン嵌合部、60a,60c スプライン、60b ブラケット、61 ラジアルベアリング、62 スラストベアリング、66 固定部、67 油室、68 作動油供給路、70 スナップリング、71,72 シール部材、91 アクセルペダル、92 アクセルペダルポジションセンサ、93 ブレーキペダル、94 マスタシリンダ圧センサ、95 シフトレバー、96 シフトレンジセンサ、99 車速センサ、B1,B2,B3 ブレーキ、C1,C2 クラッチ、DW 駆動輪、F1 ワンウェイクラッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部材に付与された動力をケース内に収容された複数のクラッチの係合状態の切り替えにより変速比を複数段に変更して出力部材に伝達可能な変速装置において、
前記複数のクラッチは、前記入力部材に固定される第1クラッチドラムを有する第1クラッチと、前記第1クラッチドラムの径方向内側で該第1クラッチドラムにスプライン嵌合部を介して連結される第2クラッチドラムを有する第2クラッチとを含み、
前記第1クラッチは、前記第1クラッチドラム内で軸方向に摺動可能な第1クラッチピストンと、前記第1クラッチピストンよりも前記出力部材側に配置されると共に前記第1クラッチドラム内で発生する遠心油圧をキャンセルするための第1キャンセル油室を該第1クラッチピストンと共に画成する第1キャンセルプレートと、前記第1クラッチピストンと前記第1キャンセルプレートとの間に配置された第1リターンスプリングとを含み、
前記第2クラッチドラムは、前記第1キャンセルプレートと当接すると共に、前記入力部材に取り付けられた位置決め部材により軸方向に位置決めされ、
前記第1クラッチドラムおよび前記入力部材は、1個のスラストベアリングと1個のラジアルベアリングとにより前記ケースに対して支持されることを特徴とする変速装置。
【請求項2】
請求項1に記載の変速装置において、
前記第1クラッチの前記第1クラッチドラムは、複数のクラッチプレートを摺動自在に保持する第1外筒部と、該第1外筒部の径方向内側に形成されると共に前記入力部材に固定される第1内筒部とを有し、
前記第2クラッチの前記第2クラッチドラムは、複数のクラッチプレートを摺動自在に保持する第2外筒部と、該第2外筒部の径方向内側に形成されると共に前記第1クラッチドラムの前記第1内筒部の外周に嵌合される第2内筒部とを有し、
前記スプライン嵌合部は、前記第1クラッチドラムの前記第1内筒部の外周面に形成された第1スプラインと、前記第2クラッチドラムに配設された第2スプラインとにより構成されることを特徴とする変速装置。
【請求項3】
請求項2に記載の変速装置において、
前記第2クラッチは、前記第2クラッチドラム内で軸方向に摺動可能な第2クラッチピストンと、前記第2クラッチピストンよりも前記出力部材側に配置されると共に前記第2クラッチドラム内で発生する遠心油圧をキャンセルするための第2キャンセル油室を該第2クラッチピストンと共に画成する第2キャンセルプレートと、前記第2クラッチピストンと前記第2キャンセルプレートとの間に配置されると共に前記第1リターンスプリングよりも小さいバネ定数を有する第2リターンスプリングとを含み、
前記第2内筒部の前記出力部材側の端部は、前記位置決め部材と当接することを特徴とする変速装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の変速装置において、
前記第2クラッチドラムの前記第2内筒部は、前記第1クラッチドラムの前記第1内筒部の外周に嵌合される大径部と、前記入力部材が内部に挿通される小径部と、前記大径部と前記小径部とを接続すると共に前記第2クラッチドラムの内部に作動流体を供給するための供給孔が形成された接続部とを有し、
前記第1クラッチドラムと前記第2クラッチドラムと前記入力部材とは、前記接続部の近傍に該入力部材に形成された作動流体供給路と連通する油室を画成しており、
前記大径部と前記第1クラッチドラムの前記第1内筒部との間および前記小径部と前記入力部材との間には、シール部材が配置されることを特徴とする変速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−169341(P2011−169341A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31354(P2010−31354)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】