説明

多孔性ガラステンプレートを用いたシリコンナノワイヤーの製造方法、及びこれにより形成されたシリコンナノワイヤーを含む素子

【課題】素子の実現が容易であり且つ構造による効率の改良が可能な、シリコンナノワイヤーの製造方法、及びこれにより形成されたシリコンナノワイヤーを含む素子の提供。
【解決手段】並列に配置された、複数のワイヤー状気孔を含む多孔性ガラステンプレートにエルビウムまたはエルビウム前駆体をドープする段階と、前記エルビウムまたはエルビウム前駆体がドープされたガラステンプレートを、前記ワイヤー状気孔の一方の開口部が面するように金属触媒層が形成された基板上に配置する段階と、前記ガラステンプレート内の気孔に沿ってシリコンナノワイヤーを形成して成長させる段階とを含む、シリコンナノワイヤーの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔性ガラステンプレートを用いたシリコンナノワイヤーの製造方法、及びこれにより形成されたシリコンナノワイヤーを含む素子に係り、より詳しくは、エルビウムまたはエルビウム前駆体がドープされた、ナノメートルサイズの気孔を持つ多孔性ガラステンプレートを用いてSLS(solid−liquid−solid)法またはVLS(vapor−liquid−solid)法によってシリコンナノワイヤーを形成して成長させることを特徴とする、素子の実現及び構造による効率の改良が容易なシリコンナノワイヤーの製造方法、及びこれにより形成されたシリコンナノワイヤーを含む素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノワイヤーは、直径がナノメートル(1nm=10−9m)領域を有し、長さが直径に比べて一層大きい数百ナノメートル、マイクロメートル(1μm=10−6m)またはさらに大きいミリメートル(1mm=10−3m)単位を持つ線形材料である。このようなナノワイヤーの物性は、それらが持つ直径と長さに依存する。
【0003】
前記ナノワイヤーは、小さいサイズに起因して微細素子に多様に応用でき、特定の方向による電子の移動特性、または偏光現象を示す光学特性を利用することができるという利点がある。
【0004】
現在、ナノ粒子(nano particle)の製造方法と物性についての研究は相当活性化されているが、これに対し、ナノワイヤーの普遍的な製造方法についての研究は微々たる実情である。
【0005】
既存の代表的なナノワイヤーの製造方法としては、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、レーザーアブレーション(Laser Ablation)法、及びテンプレート(template)を用いる方法などがある。
【0006】
この中でも、テンプレートを用いる方法は、数ナノメートル〜数百ナノメートル単位の気孔を形成し、この気孔をナノワイヤーの型として用いる方法である。例えば、アルミニウム電極を酸化させて表面をアルミニウム酸化物にし、この酸化物に電気化学的エッチングによってナノ気孔を形成する。これを金属イオン入り溶液に浸漬し、電気をかけると、金属イオンが気孔を介してアルミニウム電極上に蓄積し、その結果、前記気孔は金属イオンで充填される。その後、適切な方法で前記酸化物を除去すると、金属ナノワイヤーのみが残る。
【0007】
一般に、シリコン(silicon)は、間接遷移バンドギャップ(indirect band gap)を持っているので、光素材として使用できなかったが、素子のナノ化による量子効果と発光物質のドーピング技術を組み合わせると、常温でもシリコンを用いる電光技術の実現が可能であるが、効率的な発光を可能にするドーピング技術、及び大きさをナノメートルの水準にすることが可能な技術の開発が要求されてきた。
【0008】
エルビウム(Er)は、光通信に用いられる波長のうち損失が最も少ない1.54μmでの発光ピークを持っているため、シリコン系電光素子の観点から注目されているが、シリコンナノ結晶(silicon nanocrystal)またはシリコンナノワイヤー(silicon nanowire)のエキシトン(exciton)から発生するエネルギーによって発光特性が著しく改良できる。
【0009】
エルビウムを用いて光素子を製造する方法としては、シリコン基板上で製造されるシリコンナノワイヤーにエルビウムをドープしてシリコン光素子を製造する方法(特許文献1)が開示されている。
【0010】
また、エルビウムがドープされたシリコン膜に、ホール付き鋳型を用いてエッチングマスクを形成した後、露出した部分をエッチング除去してナノメートルサイズのナノドット(nano dot)を製造する方法(特許文献2)が開示されている。
【特許文献1】韓国公開特許第2005−103023号明細書
【特許文献2】韓国公開特許第2003−056328号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述したような従来の技術に係るナノワイヤー製造方法は、工程があまりも複雑であり、時間がかかって大量生産に適しないうえ、優れた直進性及び配列性を持つナノワイヤーを形成することができないという問題点があった。
【0012】
エルビウムを用いて光素子を製造する方法としては、シリコン基板上で製造されるシリコンナノワイヤーにエルビウムをドープしてシリコン光素子を製造する方法(特許文献1)が開示されているが、ナノワイヤーの製造の際に気孔付きガラステンプレートを用いるなどの製造過程は全く開示されておらず、前記技術はPL(photoluminescence)素子にのみ適用可能であるという欠点がある。
【0013】
また、エルビウムがドープされたシリコン膜に、ホール付き鋳型を用いてエッチングマスクを形成した後、露出した部分をエッチング除去してナノメートルサイズのナノドット(nano dot)を製造する方法(特許文献2)が開示されているが、この方法は、ナノワイヤーの成長のためのものではなく、エッチング除去を目的として使用されるという限界がある。
【0014】
そこで、本発明は、上述した従来の技術の問題点を克服するためのもので、その目的とするところは、多孔性ガラステンプレートを用いてSLS(solid−liquid−solid)法またはVLS(vapor−liquid−solid)法によってシリコンナノワイヤーを形成して成長させることにより、素子の実現が容易であり且つ構造による効率の改良が可能な、シリコンナノワイヤーの製造方法を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、前記の製造方法によって形成されたシリコンナノワイヤーを含む素子を提供することにある。
【0016】
本発明の別の目的は、多孔性ガラステンプレート内の気孔に沿って形成されたシリコンナノワイヤーを含む素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明のある様相によれば、並列に配置された複数のワイヤー状気孔を含む多孔性ガラステンプレートにエルビウムまたはエルビウム前駆体をドープする段階と、前記エルビウムまたはエルビウム前駆体がドープされたガラステンプレートを、前記ワイヤー状気孔の一方の開口部が面するように金属触媒層が形成された基板上に配置する段階と、前記ガラステンプレート内の気孔に沿ってシリコンナノワイヤーを形成して成長させる段階とを含むことを特徴とする、シリコンナノワイヤーの製造方法を提供する。
【0018】
また、本発明の他の様相によれば、前記の製造方法によって形成されたシリコンナノワイヤーを含む素子を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡単で経済的な工程によってシリコンナノワイヤーの形状、すなわち直径及び長さを自由に調節することができ、素子の実現及び構造による効率の改良が容易なシリコンナノワイヤーを製造することができる。
【0020】
そのため、FET(Field Effect Transistor)のような電子素子、センサ、光検出素子(photodetector)、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)及びレーザーダイオード(LD:Laser Diode)などの多様な分野に効果的に適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
【0022】
本発明に係るシリコンナノワイヤーの製造方法は、ナノサイズの気孔を持つガラステンプレートを用い、SLS法またはVLS法によってシリコンナノワイヤーを形成して成長させることを特徴とする。
【0023】
図1は、本発明の一実施例に係る多孔性ガラステンプレートを用い、シリコンナノワイヤーを製造する原理を説明するための工程概略図である。
【0024】
図1を参照すると、多孔性ガラステンプレートにエルビウムまたはエルビウム前駆体をドープして伝導性を与え(a段階)、前記エルビウムまたはエルビウム前駆体がドープされたガラステンプレートを、金属触媒層が形成された基板上に配置し(b段階)、SLS法またはVLS法によってガラステンプレート内の気孔に沿ってシリコンナノワイヤーを形成して成長させる(c段階)。
【0025】
本発明にしたがって、多孔性ガラステンプレートを用いてSLS法またはVLS法によってシリコンナノワイヤーを形成させると、シリコンナノワイヤーの直径及び長さを容易に調節することができ、物質または組成を変化させることにより超格子(superlattice)またはハイブリッド(hybrid)の複合構造物に形成することができ、また、シリコンナノワイヤーの成長の際に、ドーパントをドープさせ、ドープされたシリコンナノワイヤーを製造することもできる。
【0026】
次に、前述した本発明の製造方法を各段階別に詳細に説明する。
【0027】
(a)多孔性ガラステンプレートにエルビウムまたはエルビウム前駆体をドープする段階
本発明は、シリコンナノワイヤーを製造するために、複数のワイヤー状または棒状の気孔を含む多孔性ガラステンプレートを用いることを特徴とする。
【0028】
既存のナノワイヤーを形成するためのテンプレートとしては、主にAAO(Anodic Aluminum Oxide)が用いられてきたが、これは、印加電圧に応じて気孔のサイズ及び長さを調節するので、気孔を所望の位置に均一に形成することが難しい。また、エッチングが長手方向に完全には行われない場合、気孔が形成されていない部分は除去しなければならないため、工程が複雑である。しかも、内部に存在するアルミニウムの融点が660℃なので、高温工程で行われるSLS法によってワイヤーを形成させることができず、材質が不透明なので、光素子の製作には用いることができない。
【0029】
これに反し、ガラステンプレートは、大きい気孔を持つ、多数の長いファイバーを束に結んで一度に引張させて作るので、気孔を所望の位置に均一に形成することが容易であり、ファイバーのカットによって長さが定められるので、均一な気孔を持った多様な長さのテンプレートを選択することができる。該気孔は、並列に配置されていることが好ましい。また、工程が簡単であるうえ、ガラスの融点が1700℃程度なので、高温工程で行われるSLS法によってワイヤーを形成させることができる。しかも、材質が透明なので光素子としての使用が可能であり、従来から研究が盛んに行われてきた光ファイバー技術を利用することができる。
【0030】
本発明において特徴的に用いられる前記多孔性ガラステンプレートは、直径または高さの自由度が高いので、シリコンナノワイヤーが成長する基板の大きさに応じて選択可能であるため、特に限定されるものではないが、好ましくは、直径は1nm〜1mmとし、高さは100nm〜1mmとする。また、前記多孔性テンプレート内の気孔は、製造しようとするシリコンナノワイヤーの規格によって異なるため、特に限定されるものではないが、好ましくは、直径は1〜100nm、気孔間の間隔は2nm〜1μmとする。
【0031】
前記多孔性ガラステンプレートにエルビウムまたはエルビウム前駆体をドープする方法としては、本発明の目的を阻害しない限りは特に限定されず、当該技術分野で通常用いられる方法、例えば、数MeVのエネルギーでエルビウムをインプラントした後、熱処理によってガラス内の損失を減少させる方法であるイオンインプランテーション法、電気化学蒸着(electrochemical deposition)法、スピンオンドーピング(spin−on dopping)法、化学蒸着(chemical deposition)法、スパッタリング(sputtering)法、レーザーアブレーション(laser ablation)法、共沈法、湿式法またはゾルゲル(sol−gel method)法などで行うことができる。
【0032】
前記エルビウム前駆体としては、塩化エルビウム(ErCl)などが使用できる。
【0033】
(b)前記ドープされたガラステンプレートを、該ワイヤー状気孔の一方の開口部が面するように金属触媒層が形成された基板上に配置する段階
エルビウムがドープされたガラステンプレートを提供すると、これを該ワイヤー状気孔の一方の開口部が面するように金属触媒層の形成された基板上に配置させる。本発明において、金属触媒層は、基板上に金属触媒、例えば金(Au)触媒をコートすることにより形成される。この際、不純物を除去するために、通常の方法によって基板を予め洗浄することができる。
【0034】
本発明に使用可能な基板としては、シリコン基板、またはガラス上にシリコンをコートした基板を例示することができる。
【0035】
前記基板上にコートされた金属触媒は、ワイヤーを成長させ得る金属触媒であればいずれでも使用可能であり、例えば、Au、Ni、Fe、Ag、Pd、またはPd/Niなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0036】
この際、前記金属触媒はナノ粒子または薄膜の形で基板にコートでき、前記基板上にコートされる金属触媒コーティング層の厚さは50nm以下が好ましい。
【0037】
前記金属触媒を基板にコートする方法としては、本発明の目的を阻害しない限りは特に限定されず、当該技術分野で通常用いられるコーティング方法、例えばCVD(chemical vapor deposition)法、スパッタリング法、eビーム蒸着(e−beam evaporation)法、真空蒸着法、スピンコーティング(spin coating)法またはディッピング(dipping)法がある。
【0038】
(c)SLS法またはVLS法によってテンプレート内の気孔に沿ってシリコンナノワイヤーを形成して成長させる段階
本発明は、SLS工程またはVLS工程によってシリコンナノワイヤーを形成することを特徴とする。
【0039】
SLS工程は、図2に示すように、別途の蒸気状シリコンを供給せず、固体基板であるシリコン系基板から拡散したシリコンが溶融触媒の表面上で凝縮して結晶化することにより、シリコンナノワイヤーに成長する方法である。
【0040】
これに対し、VLS工程は、図3に示すように、高温の反応炉(furnace)内に持ち込まれる蒸気状シリコン含有種(species)が金、コバルト、ニッケルなどの溶融触媒の表面上で凝縮して結晶化することにより、シリコンナノワイヤーに成長する方法である。
【0041】
具体的に、本発明の前記SLS工程は、テンプレートが配置された基板を反応炉に入れ、気体を注入しながら加熱し、基板から拡散したワイヤーソースでシリコンナノワイヤーを形成させることにより行われる。
【0042】
また、前記VLS工程は、テンプレートが配置された基板を反応炉に入れ、気体及びワイヤーソースを注入しながら加熱してシリコンナノワイヤーを形成させることにより行われる。
【0043】
具体的に、前記SLS工程及びVLS工程に用いられる気体としては、Ar、N、He及びHよりなる群から選択できるが、これに限定されるものではない。また、前記気体は、具体的に100sccm程度で注入することができるが、工程に応じて変更可能である。
【0044】
前記SLS工程及びVLS工程において、圧力は760torr以下とし、温度はSLSの場合には800〜1200℃、VLSの場合には370〜600℃とすることができる。また、シリコンナノワイヤーの長さに応じて、加熱時間の調節が可能である。
【0045】
一方、VLS工程の場合、注入されるワイヤーソースとしては、SiH、SiClまたはSiHClなどを用いることができる。
【0046】
しかも、本発明において、前記シリコンナノワイヤーの形成の際に、ドーパントをドープさせ、シリコンナノワイヤーを形成することもできる。また、物質または組成を変化させることにより、超格子またはハイブリッドの複合構造物に形成することができる。
【0047】
前記複合構造物は、例えば、シリコンナノワイヤーの場合、III−V族化合物(例えば、ガリウムヒ素(GaAs)、窒化ガリウム(GaN))、炭素ナノチューブ(CNT)、酸化亜鉛(ZnO)及び炭化ケイ素(SiC)よりなる群から選択された少なくとも一つの物質で形成させることができる。
【0048】
本発明によって形成されたシリコンナノワイヤーをガラステンプレートの除去された形にして使用しようとする場合には、フッ酸などのエーチャント(etchant)を用いてガラステンプレートを除去することもできる。
【0049】
図4は本発明の一実施例に係るシリコンナノワイヤーの発光効率向上の原理を示す概略図である。図4を参照すると、エルビウムまたはエルビウム前駆体がドープされたガラステンプレートの表面に反射コーティング処理を施すことにより、発光効率を増大させることができる。すなわち、ガラスが在る状態の場合、エルビウムイオンによって生成された光は、四方に広がることができるが、この際、壁面または底面の反射率を、反射度の高い物質またはDBR(Distributed Bragg Reflector)層を蒸着して高めると、この部分に当たった光は外に放出されずに内部全反射が起こり、これにより反射膜のない部分にのみ発光がなされて、方向性を作るか或いは発光効率を向上させることができる。
【0050】
一方、本発明の他の様相は、前記方法で形成された、素子の実現及び構造による効率の改良が容易なシリコンナノワイヤーを含む素子を提供する。
【0051】
具体的に、前記素子は、FET(Field Effect Transistor)のような電子素子、センサ、光検出素子(photodetector)、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)、レーザーダイオード(LD:Laser Diode)、EL(electroluminescence)素子、PL(photoluminescence)素子及びCL(Cathodeluminescence)素子などを含むが、これに限定されるものではない。
【0052】
次に、EL素子を例としてより具体的に説明する。
【0053】
図5は、本発明の一実施例に係るEL素子を示す概略図である。図5を参照すると、EL素子は、基板10と、第1電極層20と、多孔性テンプレート30内の気孔に沿って形成されたナノワイヤー50と、第2電極層40とを含んでいる。図5では、第1電極層が基板上に形成されているが、第1電極層は基板の下面に形成されていてもよい。
【0054】
具体的には、前記シリコンナノワイヤー50としては、p型、n型またはp−n型にドープされてダイオード特性を持つものを用いることができる。基板10、第1電極層20、第2電極層40は、通常のEL素子に使用される材料を用いて通常の製作方法によって製作することができる。
【0055】
一般に、通常の方法によって得られたナノワイヤーを用いたEL素子の場合、成長したナノワイヤーの直進性の確保が難しく、ナノワイヤー間の空間を他の物質で充填して電極を形成するために工程が複雑になる。これに対し、本発明に係る方法によって形成されたシリコンナノワイヤーを用いると、可視光領域で透明なガラステンプレートを含んでいて直進性が改良されることにより、外部光素子とのカップリング効率が向上するため、ナノワイヤーを製造し次第に電極の形成が容易である。したがって、発光素子は、簡単な工程によって安価に製造することができる。
【0056】
また、本発明に係るシリコンナノワイヤーを含む素子は、シリコンナノワイヤーの形状調節が可能であると共に、PL素子だけでなく、EL素子にも駆動が可能であるという特徴がある。
【実施例】
【0057】
次に、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、下記の実施例は本発明を説明するためのもので、本発明を限定するものではない。
【0058】
(実施例1:シリコンナノワイヤー(1)の製造)
スパッタリング法を用いて、エルビウム(Er)を、直径20nm、長さ1μmのワイヤー状気孔が40nmの間隔で形成された、直径100μmの多孔性ガラステンプレートにドープした。
シリコン基板から有機洗浄剤とフッ酸を用いて自然酸化膜を除去した後、触媒として日本ペイント社の約10nmサイズの金ナノ粒子(Au nano particle)をスピンコートしてシリコンナノワイヤーを形成するための基板を調製した。
その後、シリコンナノワイヤーの成長のためにエルビウムがドープされたガラステンプレートを基板上に載置し、ガラステンプレートが載置された基板を反応炉に入れた後、分当たり10〜15℃で加熱し、アルゴン(Ar)を100sccm程度で注入しながら、工程の圧力を一定に500torrにした
工程温度である1000℃に達すると、30分間維持させてシリコンナノワイヤーが成長するようにした。その後、700℃程度にゆっくり冷却させてシリコンナノワイヤーの成長を終了させた。
【0059】
(実施例2:ナノワイヤー(2)の製造)
ドーパントとしてエルビウムの代わりに塩化エルビウム(ErCl)を用い、Ar気体の他に、ワイヤーソースとして4%SiH気体を100sccm程度でさらに注入し、工程温度を400℃にする以外は、実施例1と同様にして、シリコンナノワイヤーを製造した。
【0060】
(実施例3:EL発光素子の製造)
ガラス基板上にITOがパターニングされている基板の上に、実施例1で製造したシリコンナノワイヤーを配置し、フォト工程を用いて電極を形成した。
前記電極が形成されているシリコンワイヤーが配置された基板の上部にチタニウム(Ti)を20nmの厚さに蒸着し、さらに金(Au)を100nmの厚さに蒸着して陰極を形成することにより、EL素子を完成した。
【0061】
以上、具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内において、本発明の属する技術分野の当業者によって種々の変形が可能なのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施例に係る多孔性ガラステンプレートを用いてシリコンナノワイヤーを製造する原理を説明するための工程概略図である。
【図2】SLS法によるシリコンナノワイヤーの製作工程を示す工程概略図である。
【図3】VLS法によるシリコンナノワイヤーの製作工程を示す工程概略図である。
【図4】本発明の一実施例に係るシリコンナノワイヤーの発光効率を向上させる原理を示す概略図である。
【図5】本発明の一実施例に係るEL素子を示す概略図である。
【符号の説明】
【0063】
10 基板
20 第1電極層
30 ガラステンプレート
40 第2電極層
50 シリコンナノワイヤー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)並列に配置された、複数のワイヤー状気孔を含む多孔性ガラステンプレートにエルビウムまたはエルビウム前駆体をドープする段階と、
(b)前記エルビウムまたはエルビウム前駆体がドープされたガラステンプレートを、前記ワイヤー状気孔の一方の開口部が面するように金属触媒層が形成された基板上に配置する段階と、
(c)前記ガラステンプレート内の気孔に沿ってシリコンナノワイヤーを形成して成長させる段階とを含むことを特徴とする、シリコンナノワイヤーの製造方法。
【請求項2】
前記多孔性ガラステンプレートは、1nm〜1mmの直径、100nm〜1mmの高さを有することを特徴とする、請求項1に記載のシリコンナノワイヤーの製造方法。
【請求項3】
前記多孔性ガラステンプレートの気孔は、1〜100nmの直径を有し、2nm〜1μmの間隔で形成されることを特徴とする、請求項1に記載のシリコンナノワイヤーの製造方法。
【請求項4】
前記(a)段階のエルビウムまたはエルビウム前駆体のドーピングは、イオンインプランテーション法、電気化学蒸着法、スピンオンドーピング法、化学蒸着法、スパッタリング法、レーザーアブレーション法、共沈法、湿式法またはゾルゲル法よりなる群から選択された方法によって行われることを特徴とする、請求項1に記載のシリコンナノワイヤーの製造方法。
【請求項5】
前記(a)段階のエルビウム前駆体は、塩化エルビウム(ErCl)であることを特徴とする、請求項1に記載のシリコンナノワイヤーの製造方法。
【請求項6】
前記(a)段階の後、ガラステンプレートの表面に反射コーティング処理を施す段階をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のシリコンナノワイヤーの製造方法。
【請求項7】
前記(b)段階の基板は、シリコン基板、またはガラス上にシリコンをコートした基板であることを特徴とする、請求項1に記載のシリコンナノワイヤーの製造方法。
【請求項8】
前記(b)段階の金属触媒は、Au、Ni、Fe、Ag、Pd、及びPd/Niよりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1に記載のシリコンナノワイヤーの製造方法。
【請求項9】
前記(b)段階の金属触媒は、ナノ粒子または薄膜の形でコートされることを特徴とする、請求項1に記載のシリコンナノワイヤーの製造方法。
【請求項10】
前記(b)段階の金属触媒は、50nm以下の厚さにコートされることを特徴とする、請求項1に記載のシリコンナノワイヤーの製造方法。
【請求項11】
前記(b)段階の金属触媒は、法、スパッタリング法、eビーム蒸着法、真空蒸着法、スピンコーティング法またはディッピング法よりなる群から選択された方法によってコートされることを特徴とする、請求項1に記載のシリコンナノワイヤーの製造方法。
【請求項12】
前記(c)段階は、SLS(solid−liquid−solid)工程またはVLS(vapor−liquid−solid)工程によって行われることを特徴とする、請求項1に記載のシリコンナノワイヤーの製造方法。
【請求項13】
前記SLS工程は、ガラステンプレートが配置された基板を反応炉に入れ、気体を注入しながら加熱し、基板から拡散したワイヤーソースでナノワイヤーを形成させることにより行われることを特徴とする、請求項12に記載のシリコンナノワイヤーの製造方法。
【請求項14】
前記VLS工程は、ガラステンプレートが配置された基板を反応炉に入れ、気体及びワイヤーソースを注入しながら加熱してナノワイヤーを形成させることにより行われることを特徴とする、請求項12に記載のシリコンナノワイヤーの製造方法。
【請求項15】
前記気体は、Ar、N、He及びHよりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項13または14に記載のシリコンナノワイヤーの製造方法。
【請求項16】
前記SLS工程は、760torr以下の圧力、800〜1200℃の範囲の温度で行われることを特徴とする、請求項13に記載のシリコンナノワイヤーの製造方法。
【請求項17】
前記VLS工程は、760torr以下の圧力、370〜600℃の範囲の温度で行われることを特徴とする、請求項14に記載のシリコンナノワイヤーの製造方法。
【請求項18】
前記ワイヤーソースは、SiH、SiCl及びSiHClよりなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項14に記載のシリコンナノワイヤーの製造方法。
【請求項19】
前記(c)段階のナノワイヤー形成の際に、ドーパントをドープさせ、ドープされたシリコンナノワイヤーを形成することを特徴とする、請求項1に記載のシリコンナノワイヤーの製造方法。
【請求項20】
前記(c)段階のナノワイヤー形成の際に、物質または組成を変化させることにより、超格子またはハイブリッドの複合構造物に形成することを特徴とする、請求項1に記載のシリコンナノワイヤーの製造方法。
【請求項21】
前記(c)段階のシリコンナノワイヤーの形成後、ガラステンプレートを除去する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のシリコンナノワイヤーの製造方法。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法によって形成されたシリコンナノワイヤーを含む素子。
【請求項23】
前記素子は、電子素子、センサ、光検出素子、発光ダイオード、レーザーダイオード、EL素子、PL素子及びCL素子よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項22に記載の素子。
【請求項24】
前記EL素子は、基板と、第1電極層と、多孔性ガラステンプレート内の気孔に沿って形成されたシリコンナノワイヤーと、第2電極層とを含んで形成されることを特徴とする、請求項23に記載の素子。
【請求項25】
前記シリコンナノワイヤーは、p型、n型またはp−n型にドープされていることを特徴とする、請求項24に記載の素子。
【請求項26】
多孔性ガラステンプレート内の気孔に沿って形成されたシリコンナノワイヤーを含む素子。
【請求項27】
前記素子は、電子素子、センサ、検出素子、発光ダイオード、レーザーダイオード、EL素子、PL素子またはCL素子よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項26に記載の素子。
【請求項28】
前記EL素子は、基板と、第1電極層と、多孔性ガラステンプレート内の気孔に沿って形成されたシリコンナノワイヤーと、第2電極層とを含んで形成されることを特徴とする、請求項27に記載の素子。
【請求項29】
前記シリコンナノワイヤーは、p型、n型またはp−n型にドープされていることを特徴とする、請求項28に記載の素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−260896(P2007−260896A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−55707(P2007−55707)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】