説明

多層構造体

【課題】耐摩耗性で摩擦の少ない多層構造体を提供することである。
【解決手段】硬質材料個別層と、炭素個別層またはシリコン個別層との交互の層からなる多層構造体であって、前記硬質材料個別層は、金属、金属炭化物、金属ケイ化物、金属炭化ケイ化物、金属ケイ化窒化物、金属炭化物含有炭素、金属ケイ化物含有シリコン、または前記物質の少なくとも2つからなる含有物であり、前記金属は、タングステン、クロム、チタン、ニオブおよびモリブデンの群から選択され、前記炭素個別層は、非結晶水素含有炭素、非結晶水素無含有炭素、シリコン含有炭素、または金属含有炭素からなる、ことを特徴とする多層構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマCVD法により基板に真空被覆する方法であって、イオン打ち込みを制御するために被覆中に基板に基板電圧を印加し、被覆プラズマをプラズマ形成手段によって形成し、前記基板電圧は、基板電圧形成装 置によって形成し、前記プラズマ形成手段と前記基板電圧形成装置とは相互に別個に制御可能であり、前記基板電圧を被覆中に変化し、基板電圧としてバイポーラ・パルス状直流電圧を使用し、該直流電圧の正パルスと負パルスの時間的長さおよび/または高さは相互に依存しないで調整される方法により作製される多層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の方法はDE-C19513614から公知である。これによれば、基板への非結晶炭素層の被覆がバイポーラ電圧の基板への印加によって行われる。このバイポーラ電圧の正と負のパルス持続時間は相互に別個に調整可能である。デポジットの間、正のパルス持続時間は負のパルス持続時間よりも短く、パルス周波数は5〜100 kHzの領域にある。形成される非結晶炭素層の基板への付着性を改善するために、変形された金属付着性の炭素中間層が被覆される。この公知の方法では、成長層のプラズマ形成およびイオン注入が共に、印加されるバイポーラ電圧により実現され、これらを個別に制御することはできない。従って多くの層品質に対してこの方法による層デポジットは比較的狭いプロセス窓に制限される。
【0003】
ドイツ特許願AZ19609804.1から、ばら荷をプラズマ被覆する方法が公知である。この方法では、回転かごが緩慢にプラズマ被覆源の回りを運動する。回転かごには電圧が印加され、被覆すべきばら荷を負の電位にもたらす。回転かごの中には清浄プラズマを形成するための手段が存在し、このプラズマによってばら荷が層デポジットの前に清浄される。ここで清浄プラズマは、回転かご、およびばら荷に印加される電圧に依存しないで形成される。被覆すべきばら荷の負の帯電は一般的に後続の被覆ステップに対して行われる。どのように負の帯電を行うべきかについては開示されていない。
【0004】
硬質の非結晶炭素層を作製するための方法は、R.S.Bonetti, M.Tober著, Oberflaeche und JOT, Heft 9,1988,s.15に記載されている。プラズマ支援されたCVD方法では、プラズマ形成と負の基板バイアス電圧が共に、基板に印加される無線周波数(RF)電力供給部により実現される。基板電位は、厚く硬質で、従って耐摩耗性の層のデポジットに必要なイオン打ち込みを保証する。このために、被覆すべき部分の表面と容器の内壁面との比は有利には1以下でなければならない。このことはこの発明の電荷密度および高スケーリング可能性を、工業的回分量に対して不利に制限する。別の欠点は、RF入力結合を電荷に依存して適合しなければならないことである。
【特許文献1】DE-C19513614
【特許文献2】ドイツ特許願AZ19609804.1
【特許文献3】米国特許第4619865号
【非特許文献1】R.S.Bonetti,M.Tober著, Oberflaeche und JOT,Heft 9,1988,s.15
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、耐摩耗性で摩擦の少ない多層構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1の構成を有する多層構造体によって解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
基板電圧形成をプラズマ形成から分離することにより、本発明の方法は形成される層の物理的特性に所期のように影響を及ぼすことができる。この影響はとりわけ、層硬度、耐腐食性、層の弾性、および層残留応力について及ぼされる。複雑な幾何形状の基板を被覆することもできる。ここでプラズマ形成と基板電圧形成とを分離して制御することにより基板温度を制御することができる。このことにより層デポジットを多様に、200℃の温度でもそれ以下でも行うことができる。基板電圧としてパルス状のバイポーラ直流電圧が使用される。この電圧は、負パルスの大きさと持続時間、正パルスの大きさと持続時間、ならびに無電圧のパルス間隔ないし休止時間を調整できる。達成可能な層を拡張するために有利には、種々異なるプロセスガスがそれぞれ適切な混合と順序で添加される。
【0008】
プラズマ形成と基板電圧形成を処理的に分離することにより、本発明の方法を実施するのに適した装置は特定のプラズマ形成源での適用に限定されない。むしろすべてのプラズマ形成源、例えばマイクロ波源、高周波源、中空カソードまたは高電流アークが考えられる。基板電圧を形成するための電源部として、バイポーラ・パルス直流電圧電源部を用いる。この電源部は、直流電圧を制御し、無電圧の休止時間を実現するための手段を有するようにする。有利には被覆室にブラインドを設け、このブラインドが被覆室の一部を遮蔽するようにする。被覆すべき部分を運動することにより種々異なるプラズマ密度の部分容積が生じ、これにより形成される層の特性を簡単に制御することができる。
【0009】
注目すべき利点は、本発明により作製された多層構造体が硬質材料層と硬質炭素層との交互の層からなることである。硬質炭素層は場合により付加的に水素および/またはシリコンおよび/または金属を含むことができる。多層構造体では、硬質材料の耐摩耗性、とりわけ本発明により作製された硬質炭素の優れた耐摩耗性、低摩擦性、潤滑作用が多層構造体特性と共働作用する。多層構造体は例えばこれが単層からなる場合よりも高い硬度を有する。多層構造体はさらに同じ硬度の単層よりも延性と弾性が大きい。
【0010】
本発明により作製された多層構造体は、上記の特性の共働作用に基づき、新種の適用分野でも有利に使用することができる。従ってこの多層構造体は摩擦学的に高負荷の構成部材に対する腐食保護および摩耗保護として一般的に適し、とりわけ乾式運動領域および低潤滑領域の構成部材の摩耗保護として適する。多層構造体は例えば切削および変形工具に対する潤滑性の摩耗保護層および腐食保護層として適し、このことにより工具の寿命を格段に延長する。また多層構造体は、これを被覆した工具による乾式処理作業または最小潤滑での処理作業を可能にし、冷却潤滑剤を完全に省略し、または少なくとも所要の量を格段に低減することができる。さらに前記の多層構造体を被覆することにより、侵襲性媒体における工具の腐食性保護が改善され、そして被覆された工具を使用すれば処理作業速度および構成部材の処理品質が向上する。
【0011】
炭素層が非結晶水素含有炭素(以下、a-C:H)、非結晶水素無含有炭素(a-C)、シリコン含有(水素含有または水素無含有)炭素、または金属含有(水素含有または水素無含有)炭素(C-(MeC))からなり、金属が硬質性周辺金属群から選択されると有利である。この選択によりユーザは、炭素層の潤滑性および硬質性について課せられた要求にフレキシブルに応えることができ、また硬質材料層への適合困難性についてもフレキシブルに適合できる。
【0012】
択一的に多層構造体に炭素層の代わりにシリコン層(場合により付加的に水素および/または炭素および/または金属を含む)を組み込むことができる。シリコン層は潤滑作用を有していないが、非常に硬質であり(炭素層よりもやや柔らかい傾向があるが)、摩擦係数の低いことが特徴である。優れた利点として、とりわけ摩擦係数の周囲湿度への依存性が小さいという層特性が上げられる。
【0013】
シリコン層が非結晶水素含有シリコン(以下、a-Si:H)、非結晶水素無含有シリコン(a-Si)、炭素含有(水素含有または水素無含有)シリコンまたは金属含有(水素含有または水素無含有)シリコン(Si-(MeSi))からなると有利である。これらの選択により、炭素と同じように、課せられた要求にフレキシブルに答えることができる。
【0014】
多層構造体は硬質層、潤滑層および場合により耐酸化性層からなり、この構造体の特性は個別層の特性の組み合わせにより決まる。しかし、米国特許4619865には、硬質炭素層ないしシリコン層ないし前記の金属を含む硬質炭素層ないしシリコン層は記載されておらず、とりわけ摩擦係数の小さい層としては記載されていない。
【0015】
有利には個別層は、組成の点で1つまたは複数の形式の硬質材料層と、1つまたは複数の形式の炭素層ないしシリコン層からなり、ここでもっとも有利には個別層は1つの形式の硬質材料層と1つの形式の炭素層ないしシリコン層からなる。
【0016】
多層構造体の利点を利用するため、個別層の厚さが約1〜10mm、有利には約2〜約5mmであり、構造体全体の層厚が約1〜約10μm、有利には約1〜約4μmであると有利である。
【0017】
硬質材料層が金属(以下、Me)、金属化合物、金属炭化物を含む炭素(C-(MeC))、金属ケイ化物を含むシリコンであり、後者の2つの金属において得ようとする硬質性が例えば相応の金属の選択により達成されるなら、または少なくとも2つの前記金属の混合物からなると有利である。これらの選択により、ユーザはフレキシブルに、硬質材料層の硬質性について課せられた要求に応えることができ、炭素層ないしはシリコン層への適合困難性に応じることができる。これは層が有利には、所定の低摩擦作用を有している場合である。
【0018】
硬質材料層と炭素層との有利な組み合わせは、硬質材料層がMe、金属炭化物(MeC)、金属窒化物(MeN)、金属ケイ化物(MeSi)、金属炭化窒化物(Me(CN))、金属炭化ケイ化物(Me(CSi))または金属ケイ化窒化物(Me(SiN))からなり、炭素層がa-C:Hまたはa-Cからなると得られる。ここで硬質材料層はC-(WC)から、炭素層はa-C:Hからなり、硬質材料層はタングステンを含むと大きな硬度を示す。しかし炭素成分が金属に化合しないため、潤滑について注意すべきである。また硬質材料層がMeCからなり、炭素層がC-(MeC)からなる場合は、硬度が潤滑作用との引き替えで特に優れている。
【0019】
硬質材料層とシリコン層との有利な組み合わせは、硬質材料層がMe、MeC、MeN、MeSi、Me(CN)、Me(CSi)またはMe(SiN)からなり、シリコン層がa-Si:Hまたはa-Siからなると得られる。
【0020】
本発明の多層構造体の有利な構成は従属請求項に記載されている。
【0021】
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0022】
図1は、本発明で提案された方法を実施するための装置を示す。この装置は真空容器12を有し、ここには支承装置11が配置されている。この支承装置には被覆すべき基板が存在する。基板10は、容器12に外に配置された電圧供給源13と電気的に接続されている。支承装置11は、基板10が被覆の間、均一に回転できるよう構成されており、図1に示すように回転ディスクの形状を有する。基板を相応の装置を介して付加的に別の回転軸を中心に回転することもできる。電圧供給源13として、直流電圧電位を付加的に重畳する手段を備えたバイポーラ直流パルス源を用いる。これにより、電圧が数kVで周波数が0.1kHzから10MHzのパルス状のユニポーラまたはバイポーラ直流電圧を印加することができ、正パルスと負パルスの長さと高さを相互に別個に調整することができ、無電圧の休止時間を実現することができる。真空室12はガス吸入装置14を有し、このガス吸入装置を介してガスをその内室にもたらすことができる。さらに容器12は真空装置23を排気のために有する。容器12にはさらにマイクロ波源15がマイクロ波を容器内室21に入力結合するために配置されており、ここでマイクロ波源はプラズマを形成する。マイクロ波源は中空ビーム発生器またはアンテナ幾何構成を有する石英窓として構成されている。容器内室21には磁石16が配置されており、磁石は図1に示すようにマグネットバンクとして構成することができる。このマグネットバンクにより、マイクロ波源15によって形成されたプラズマ20が容器内室21で均質に分散され、相応に配置される。
【0023】
プラズマ源15の配置は、構造的およびプロセス技術的周辺条件に相応して行われる。このためにプラズマ源は、図1に示すように支承装置11を基準にして中央の壁側に、または容器12に分散して配置することができる。中央に配置する場合には、実質的に中心対称のプラズマ20が得られる。このプラズマにより、内側を向いた基板面を均一に被覆することができるが、外側を向いた面の被覆速度が比較的に低く、そこでは層をデポジットするのに別の品質が生じる。プラズマ源を容器12の側壁に配置した場合には、反対の状況が生じる。内側と外側のプラズマ源を組み合わせ、また別の品質と別の特性を有する層を形成することもできる。容器12にはさらにブラインド22を設けることができ、このブラインドはプラズマが容器内室の一部で形成されるのを阻止する。このことにより、容器内室21で種々異なる個別層を得るために種々異なる被覆条件を形成することができる。このために被覆すべき基板10は、図2に矢印で示すように、種々異なるプラズマ条件を備えた容器内室21の部分容積によって運動される。これにより成長する個別層または多数の個別層の特性を制御することができ、多重層または多層構造体として全体層が得られる。
【0024】
図1および図2に示した施設の駆動は次のようにして行われる。すなわち、容器内室212で排気後、ポンプ装置23により典型的には残圧が10-4 mbarになるようにする。有利には被覆すべき基板21を次にまず加熱、プラズマエッチングによる清掃により前処理し、後で被覆される層の付着性を改善するために前被覆する。続いて、ガス吸気装置14を介してガスが容器21に導かれ、マイクロ波源15によりプラズマ20が形成される。ここではとりわけ、ガスがプラズマ源を通るか、プラズマ源の近傍で容器に導かれる場合に特別のプラズマ条件が発生し、例えば空間的プラズマ密度が高くなり、および/またはガス変換率が高くなる。ガスとしては一連のガスおよび混合ガスが適する。炭素含有層を被覆するための反応ガスは例えば炭水素CxHy、とりわけC2H2およびCH4であり、シリコン含有層を被覆するには、シランおよびシロキサン、とりわけSiH4とHMDS(O)、HMDS(N)、TEOS、TMSが適する。プラズマ20を形成し維持するために、希ガス、例えばアルゴン、ネオン、またはヘリウムが使用される。アルゴンを使用する場合には、アルゴン分圧の変動により、被覆を形成しないイオンの打ち込みが層デポジットの間に行われ、さらなる硬度と残留応力が得られる。ヘリウムを使用すれば、水素含有ガスによって層にもたらされる水素成分を制御することができ、層を付加的に圧縮することができる。ネオンを使用すれば、層の所期の小型化が得られる。有機金属化合物を反応ガスとして使用すれば、反応ガスを介して金属の被覆部への装填を行うことができる。H2により層のH含有量を制御でき、N2、NH2または硼素含有ガスにより、残留応力と濡れ性に関する層特性を制御することができる。Si含有ガスによって炭素層の残留応力および濡れ性を制御することができる。C含有ガスによってシリコン層の場合は摩擦が低減され、導電性、ドーピング、 a-SiC:Hのデポジットが得られる。
【0025】
プラズマ20の形成に依存しないで、被覆すべき基板10に電圧源13による被覆の間、電位を変化させて、基板電位USが印加される。この電位は、被覆中に基板10へのイオン打ち込みを制御に用いられる。基板電位の正成分は、基板表面が絶縁されている場合、先行するイオン打ち込みにより荷電した表面の放電に作用する。正パルスの持続時間は、このために負パルスの持続時間より短いか、または同じに保持される。基板の温度負荷を低く保持したい場合には、正パルスの電圧振幅は負パルスよりも格段に小さく選択される。
【0026】
供給されるガスの組成と、電圧供給源13により形成される基板電圧USを変化することにより、基板10に多数の層を備えた層システムを取り付けることができる。この多数の層は、それぞれ異なる層特性を有する。とりわけ硬質で耐摩耗性、耐腐食性、低摩擦係数を有する層が作製される。とりわけ硬質の層、または高い機械的残留応力を有する層の付着はしばしば適切な中間層を使用することによりさらに改善される。勾配層の形成が特に有利であることが示されている。この勾配層は機械的特性、とりわけ硬度と弾性の点で機能層への滑らかな移行を可能にする。非結晶炭素層のスチール基板への付着は中間層の使用によって改善される。この中間層は、金属層と変形金属含有炭素層との相互に勾配で移行する適切なプロセス導入により形成される。簡単には、このような金属含有炭素層は金属の反応スパッタリングによりデポジットされる。スパッタリング特性を維持するためにここではアルゴン(Ar)が別のガスとして添加される。
【0027】
択一的に、非結晶シリコンまたは非結晶シリコン炭素層をベースとする付着層を使用することができる。このような層をデポジットするための反応ガスとしてシランおよびシロキサンが相応の炭素含有ガスのほかに適する。
【0028】
図1と図2に示された構成により、第1の適用では2μm厚の非結晶炭素層(a=C:HないしはDLC)がスチール(100Cr6)に、そしてシリコンが付着媒体中間層によってデポジットされる。ここでは次のプロセスパラメータが調整される:反応ガス:流量300標準cm3/minのアセチレン、容器圧:3×10-3 mbar、マイクロ波出力1kW、電力:1kW、基板電圧:バイポーラ正パルス:10μs、負パルス:10μs。形成された層は35 Gpaのミクロ硬度を165 GpaのEモジュールで有する。スチールに対する摩擦係数は乾燥状態の空間条件では0.12である。このような層はとりわけ摩耗保護層として適する。電力を200Wから2kWの間で変化することにより、10 Gpaから42 Gpaの領域の層硬度を変化することができる。負パルスを短くすると、比較的に硬い層が得られ、基板温度は上昇するがデポジット速度も上昇する。各パルス後に無電圧休止時間を調整することにより、デポジット速度と硬度は低下するが、被覆温度を下げることができる。負パルス後の休止時間を正パルス後の休止時間より短く選択すると有利である。基板10を清掃することにより、さらに通常の方法による施設の外で層付着をさらに改善することができる。層デポジット速度はマイクロ波源を0.6kWから1.1kWの間で変化させ、アセチレンガス流を100から450標準cm3/minで変化させることにより制御できる。プラズマ微細清浄を公知の方法に従って、基板10を容器2に装入し、排気した後に行うと有利であることが判明した。シリコン含有反応ガスを被覆過程の開始時に付着性媒体層のデポジットのために装入することによって、層付着はさらに改善される。
【0029】
非結晶炭素層の特性は水素含有量を介して、またはその光学的および電気的特性に関してのドーピングを介して調整できる。この特性は、広い吸収スペクトルにわたり黒色から透明まで、また導電性から絶縁作用までである。層はこのことにより、光学的および電気的要求のある適用にも適する。例えばこれは電気絶縁層として、透明な引掻保護層として、耐摩滅性のデコレーション層として、またはディスプレイのブラックマトリクス層としての適用である。
【0030】
図1および図2に示した構成の別の適用では、厚さ2.5μmの金属のない非結晶炭素層がスチール(100Cr6)基板に腐食保護として被覆される。基板を容器に装入する前に、ここでは施設の清浄が行われ、ルーズな粒子が除去され、先行する被覆サイクルで存在する層の成長が回避され、孔のない層形成が保証される。プロセスパラメータは前の実施例のように選択される。しかし低い作業圧力1〜2×10-3mbarを調整し、粒子形成の作用を低減する。
【0031】
別の適用では、図1と図2に示した施設は、硬度と応力状態が種々異なる多数の薄い個別層から多層構造体を形成するのに適する。このような多層構造体は、とりわけ残留応力が小さく、硬度の高いことが特徴である。この技術は、非結晶炭素層およびシリコン層に適用可能である。個別層からなる多層構造体は基板電圧を周期的に変動することにより実現される。基板電圧を低下すると、柔らかい層が形成され、電圧を上昇させると硬い層が形成される。層構造体は、0Vの基板電圧に相当するグラファイト層から50Gpaの硬度を有する層までに及ぶ。基板電圧の個々のパルスの持続時間は層成長速度に適合させ、1nmから2μm、有利には5 nmから200 nmの個別層がデポジットされるようにする。個別層間の移行は基板電圧の急激な変化により引き起こされる。択一的に基板電圧の変化を緩慢に行い、これにより個別層間の連続的移行部が生じるようにする。プロセスパラメータ制御により、多層結合体が多数の種々異なる形式の個別層から形成されるようにすることもできる。
【0032】
個別層の種々の構成を支援するために、基板電圧に付加的に、マイクロ波源15を介して入力結合されるマイクロ波出力を変化させるか、または供給されるガスの量を変化させることができる。両者ともプラズマ密度ならびに作業圧力の変化につながり、イオンエネルギー分布を所望の層特性が得られるように調整することができる。
【0033】
プロセスパラメータを、多数の個別層からなる多層結合体の形成のために変化することは、容器内室21を種々異なるプラズマ密度の部分容積に分割することにより行うことができる。このことは被覆すべき基板10を順次周期的に種々異なる部分容積を通過させることにより行われる。このような容器内室分割は例えば図2に示すように、ブラインド22により達成される。ブラインドはプラズマ20の形成を容器内室21の一部において阻止する。基板が回転ディスクとして構成された支承装置11の回転によって回転運動する場合、個別層の厚さは基板の部分容積を通る回転周波数を介して制御される。
【0034】
容器内室を部分容積に分割することは択一的に、種々異なる、容器12の種々の箇所に配置されたプラズマ源、ならびにマイクロ波源および中空カソードまたは種々のマイクロ波源を使用することによっても可能である。
【0035】
別の変形実施形態では、2つの個別層のうちの柔らかい層として変形金属含有炭素層が選択される。部分層の被覆は公知のように反応マグネトロンスパッタリングにより行われる。このために適する、変形された構成が図3に示されている。この構成は、図1と図2の構成からは付加的なマグネトロンスパッタ源17の点で異なっており、このスパッタ源は図に示すように側方から容器壁に配置することができる。この施設によって基板10からのバックスパッタを印加される基板電圧を介して制御することにより、所期のように発生する層に組み込まれる金属部分を制御することができる。
【0036】
別の適用は第1の適用例と同じプロセスパラメータを使用し、付加的に反応ガスとしてシランまたはシロキサンを20標準cm3/minで供給する。シランないしSi含有ガスは付加的反応ガスとして数原子%のシリコンをデポジットされた層に取り付けるために供給される。このことにより、層残留応力が低下し、種々の液体に対する濡れ特性を制御することができる。このようにしてとりわけ、被覆される基板の特性を摩擦学的接点で制御することができる。この適用の変形では、Si含有ガスのガス流がアセチレンよりも大きく選択される。これにより、水素含有シリコン層が炭素と共に付加的構成成分としてデポジットされる。ガラスおよび金属基板への付着性を高めるために、変形されたシリコン付着層の被覆が有利である。
【0037】
別の変形実施例では、反応ガス中のアセチレンの成分がゼロに選択される。これにより非結晶、水素含有シリコン層(a-Si:H)がデポジットされる。このような層は、摩耗保護層として適する。この層はさらに変形することができる。例えば相応の成分を添加することにより、化学量論的化合物をデポジットすることができる。これに対する例は水素含有窒化シリコン(SiN)を、窒素を反応ガスに添加することによりデポジットすることである。発生する層は高い耐摩耗性と、電気的絶縁作用を特徴とする。同じように別の適用に対して別の層を形成することもできる。例えば電気半導体素子の形成のための層である。所用の電気的特性はプロセスパラメータ、例えば水素含有量およびドーピングを介して調整される。絶縁作用は、絶縁化合物のデポジットにより達成される。そのような層は太陽電池または平面パネルディスプレイの作製に適する。このような場合、大面積にデポジットできる手段が特に有利である。
【0038】
ガラス、太陽電池、およびディスプレイを透明に、引掻保護または導電被覆することはこの層のさらなる適用分野を意味する。
【0039】
アセチレンはほかの炭素含有反応ガスよりもしばしば早いデポジット速度を実現することができるが、アセチレンの代わりに前記の実施例で述べた別の炭素含有反応ガスを使用することができる。このためにプロセスパラメータは変更された条件に適合される。
【0040】
図4は、前記の提案された方法を実施するための変形構成を示す。この構成は、図1と図2に示された構成とは被覆プラズマ20を形成する手段の点で異なる。プラズマ源としてここでは中空カソード18が使用されるこの中空カソードは側方から容器12に配置され、中空シリンダとして成形されている。ガスはシリンダ状中空カソード18を通って容器内室にもたらされる。この構成の利点は高い励起度であり、従ってプラズマ形成の効率が高い。変形実施例では、中空カソード18は相互に平行な2つのプレートからなり、これらプレートの長さは容器の大きさに適合されている。アセチレンを反応ガスとして使用する場合にはこのような構成により、ダイヤモンド状の炭素層が5μm/hよりも格段に大きな速度で、運動する基板10に工業的に通常のチャージ量でデポジットされる。ガス圧を上昇させる場合には粒子形成を回避するためにCH4の使用または種々の炭素含有反応ガスの混合が有利である。層特性の調整は、ここでも基板電圧を電圧供給源13を介して変化することにより行う。中空カソード18から放出される金属原子が取り付けられる場合には、基板に形成される層は取り付けられる金属原子の濃度およびプロセスパラメータに依存しないで導電性である。この場合、基板10に交流電圧の代わりに直流電圧を印加する。被覆温度を低下し、層特性をさらに良好に制御するため、ここでもパルス状バイアス電圧源が使用される。
【0041】
別の変形実施例、とりわけ炭素層のデポジットに適する方法を実施するための構成が図5に示されている。この構成は、図1と図2に示した構成とはプラズマ20の形成手段の点で異なる。ここではプラズマ形成は、高電流アークによって行われ、この高電流アークは容器12の側壁に配置された炭素ターゲット19と図示しないアノードとの間で、対向する側壁に配置されたスパッタカソードにより点弧される。高電流アークの利点は、露出された炭素の高いイオン化率である。炭素を装入するのに水素含有ガスが必要ないから、基板にデポジットされ、得られた層には水素がなく、これによりとりわけ耐熱性がある。このような無水素炭素層は80Gpaまでの硬度を有する。図5に示された構成の実施では、アーク蒸気で発生したグラファイト微粒子が同じように基板10にデポジットされる。この作用は所望のものである。なぜなら、微粒子が例えば層に取り付けられる潤滑剤デポとして適するからである。アーク電流のパルスによって、微粒子形成は他方では抑圧される。ここで同時にアーク電流を高めると抑圧が増強される。微粒子のほぼ完全な抑圧は、アーク蒸気により形成されたイオンを磁気的に基板10に偏向することにより達成される。荷電されない微粒子は平行プレートに衝突し、層デポジットから遠ざけられる。
【0042】
支承装置は択一的に、基板が被覆中に運動しないように構成することもできる。このことは例えばデポジット速度の上昇または達成可能な層特性に基づき有利なことがある。基板はさらにクロック状に運動させることができる。これにより、種々異なる時点で容器の種々の空間的領域がそこにそれぞれ移動しないで存在することになる。
【0043】
別の適用では、被覆を1つの装置で実行できる。この装置は装置の大きな結合体の一部である。基板はここでは装置ごとに真空のまま、または真空の中断で運動され、各個別の装置では1つまたは複数の処理ステップが実行される。図6はこのための例として、ベルトコンベヤの形式の線形装置構成を示す。回転または固定して支承された基板10a,10bはここでは矢印で示した適切な直線並進機によって種々異なる装置を通って、図6に示したようにマグネトロンスパッタ源17と3つのマイクロ波源15を通り、各装置17,15で相応の処理ステップまたは被覆ステップが施される。順次連続して例えば、プラズマエッチング、付着層デポジット、および主層デポジットが行われる。ここで基板は運動または無運動、またはクロック状に運動して処理することができる。基板に依存しないで装置およびプロセスは存在する基板を処理することができる。このようにしてシートまたはガラスの処理のために基板の並置構成が可能である。
【0044】
図7は、装置結合体に対する別の実施例を示す。ここでは多室装置が、真空密のエアロックドア24を介して連結された2つの容器12を有し、これらの間で被覆すべき基板10が往復搬送される。図7の実施例では、一方の容器にマイクロ波源15があり、他方の容器にマグネトロンスパッタ源17が配置されている。
【0045】
ばら荷をプラズマ被覆するため、基板ホルダは回転かごとして構成することもできる。この回転かごは緩慢にプラズマ源の周囲を回転運動する。
【0046】
有利には本発明の装置は交互の個別層からなる多層構造体を作製するのに使用される。多層構造体は、同じ厚さの個別層との比較で比較的に小さな残留応力でデポジットすることができる。このことは層剥離の傾向を低減する。
【0047】
摩擦学的に高負荷の構成部材に対する優れた腐食保護および摩耗保護作用が得られるので、上記の多層構造体の構成は非常に有利である。この多層構造体は、硬質材料層と炭素個別層との交互の層からなる。所期の適用に相応してここでは組成の点で、有利にはそれぞれ硬質材料層の形式と炭素層との形式とが組み合わされる。これらは2つの層形式の多数の代表から選択される。
【0048】
前記多層構造体の層の作製は基本的に個別層の作製と同じように行われる。方法上の相違は、順次連続する交互の層を設けなければならないことである。試料が予清浄され、容器に装入される。これは図3に簡単に示したのと同じである。容器は約1×10-4 mbar以下の圧力に排気される。続いて、試料はプラズマでプラズマグロー放電により微清浄される。次に層が取り付けられる。交互の層を形成することができるようにするため、試料は例えば遊星伝動装置によって運動され、これにより周期的に種々異なるプラズマ源の前を通過する。試料のプラズマ源に対する相対運動により、複雑に成形された試料への均質層のデポジットも容易になる。この方法を実施するために図1から図7に示された装置を使用することができる。ここではプラズマ源を任意に配置することができる。これは例えば、図3のスパッタカソードに示すように容器内壁または容器の内部に配置することができる。必要な場合には、図3と図5に示した装置のようにさらに変形して、付加的スパッタカソードを取り付けることができる。
【0049】
第1のプラズマ源を通過する間に第1の層が試料にデポジットされる。層厚はプラズマ源の被覆速度と試料の速度に依存する。次に試料は第2のプラズマ源を通過し、このときに第2の層が被覆される。これに続いて試料は再び第1のプラズマ源を通過し、被覆される。このような種々のプラズマ源への相対的運動とこのときに実行される周期的な被覆によって被覆速度と試料の速度を適切に選択していれば、所望の多層構造体がデポジットされる。
【0050】
動作パラメータは使用されるプラズマ源に依存する。スパッタカソードは例えば1〜3×10-3mbarの圧力領域で駆動される。これはArまたはほかの希ガスの流入によって調整される。硬質材料層は有利には所望の層と同じように組成されたスパッタリングターゲットからのスパッタリングにより、または反応スパッタリングにより形成される。スパッタリングに択一的に、アーク(Arc)による蒸着をデポジットの際に使用することができる。硬質材料層、および炭素層に対する炭素ディスペンサとして炭素含有ガス、例えばアセチレンまたはメタンを使用することができる。しかしグラファイトターゲット、金属炭化物からなるターゲットおよび光アークを使用できる。窒素ディスペンサとして窒素含有ガス、例えば窒素とアンモニアおよび金属窒化物からなるターゲットを使用することができる。シリコンディスペンサとしてシランおよびシロキサンおよび金属ケイ化物からなるターゲットを使用することができる。カソードを駆動する電力は有利には1カソード当たり2 kWから20 kWの間である。電力制御により被覆速度を調整することができ、このことは重要である。なぜなら、プラズマ源が種々異なる材料からなり、個別層がほぼ同じ層厚を有する多層構造体を得ようとするからである。
【0051】
択一的に多層構造体は硬質材料層とシリコン個別層との交互の層から形成することができる。シリコン層が上記のように実施された組成を有することができる構造体は同じように上記の利点を有する。作製の際には、ターゲットと反応ガスの点で相応に適合され、同じ方法および装置を、硬質材料層と炭素個別層との交互の層からなる構造体の場合と同じように使用することができる。
【0052】
以下、本発明の多層構造体の7つの実施例について説明する。これらは硬質材料層と炭素層との交互の層からなり、2つの層はそれぞれ1つの材料から形成することができる。
【0053】
例1
多層構造体は金属炭化物(MeC)および金属含有炭素(C-(MeC))からなる。有利には金属はタングステン(W)、クロム(Cr)、チタン(Ti)である。個別層の厚さは約3から5nmであり、層全体の厚さは約2から3μmである。多層構造体はスチール基板または硬質材料基板、例えば構成部材または工具に被覆される。
【0054】
構造体の作製はターゲットからの反応スパッタリングにより、一方では金属(Me)から、他方では金属炭化物(MeC)から雰囲気中で行われる。雰囲気は希ガス、例えばアルゴンをスパッタリングガスとし、炭素含有ガス、例えばアセチレンおよびメタンを反応ガスとする混合気である。層は1つの装置によりデポジットされる。これは図3に示した構成とは付加的なスパッタリングカソードの点で異なる。ガス流は公知のように一定に調整され、金属ターゲットMeCの方法ステップとMecターゲットの次の方法ステップでC-(MeC)スパッタリングされる。次の次のステップで再び金属ターゲットMeCがスパッタリングされ、これが所要の全体層厚に達するまで繰り返される。
【0055】
例2
多層システムは、硬質材料としてのC-(MeC)と、無金属非結晶水素含有炭素(a-C:H)からなり、ここで金属は有利にはタングステンである。層厚は第1の実施例と同じ領域にある。C-(MeC)層は反応スパッタリングにより、例えばWCターゲットのスパッタリングにより形成される。ここでは付加的に炭素がアセチレンまたはメタンから送出される。a-C:H層は上に記載したプラズマ源の1つ、例えばRF源、MW源(図3参照)または中空カソード源(図4参照)によって、アセチレンまたはメタン含有雰囲気中で得ることができる。多層構造体のデポジットは図3に示した装置により、または図4に示した装置(付加的なスパッタカソードの点で異なる)により行われる。
【0056】
例3
多層システムは、硬質材料としての金属(Me)とa-C:Hからなる。金属は有利には例1で上げたものから選択される。層厚は第1実施例と同じ領域にある。層を被覆するために相互に別個の2つのガス室が必要である。これにより金属をスパッタリングまたは金属蒸着により炭素不含有雰囲気中で被覆し、a-C:Hをメタンまたはアセチレン含有雰囲気中で被覆することができる。多層構造体を作製するには、図6と図7に示したように動作する装置を用いて行う。ここでガス室の分離は、図示されていないが、図6に示した装置においても可能である。各層に対して多数の源を必要としないようにするため、試料を最初に2つの層を被覆した後、再び装置の始端部に戻し、それからさらに2つの層を繰り返し被覆するとよい。
【0057】
例4
多層システムにおいては、交互の層は硬質材料として金属炭化物(MeC)からなる層とa-C:H層のとからなる。金属は有利には例1で上げたものから選択される。層厚は第1の実施例と同じように選択される。Mec層は反応スパッタリングによりMeからなるターゲットからアセチレンを含む雰囲気中でデポジットされる。a-C:H層は上に述べたプラズマ源の1つによって、例えばRF源、MW源(図3参照)、または中空カソード源(図4参照)によってアセチレン含有雰囲気中で得られる。多層構造体のデポジットは図3に示した装置、または図4に示し、付加的にスパッタカソードを有する装置によって形成することができる。
【0058】
例5
多層システムは硬質材料としての金属窒化物(MeN)とa-C:Hからなり、ここで金属は有利にはチタンまたはクロムである。MeCN層を形成するためにとりわけ2つの選択肢がある:Meターゲットから反応スパッタリングする。ここで反応ガスは窒素含有ガスおよび炭素含有ガスの混合ガスである。またMeNからの反応スパッタリングが行われ、炭素含有ガスは反応ガスとして使用される。a-C:H層をデポジットするために炭素含有ガスが使用される。このようなものとして第2の選択肢では反応スパッタリングの際に使用される反応ガスが共に使用される。第1の選択肢では、a-C:H層のデポジットはスパッタリング雰囲気とは別のガス室で行われ、このガス室は炭素含有するが、窒素は含有しない反応ガスを含む。第1の選択肢に相応するデポジットは、例3のように図6と図7に示したように動作する装置によって行われる。ここで詳細については例3を参照されたい。第2の選択肢に相応するデポジットは図3に示した装置によって実行される。
【0059】
例7
例3,4,5および6に記載した多層システムの変形では、炭素層はa-C:Hではなくa-Cからなる。硬質材料層は有利には、硬質材料層の所望の組成に応じてMe, MeC, MeNないしはMeCNからなるターゲットからスパッタリングされ、a-C層はグラファイトターゲットからスパッタリングされるか、または炭素アークを用いて形成される。多層構造体は、a-C層の形成と同じように図5に示した装置により、または図5に示し炭素ターゲット19の代わりにグラファイトターゲットが設けられた装置によって形成される。
【0060】
スパッタリングターゲットおよび反応ガスなどの作製条件の相応の選択により、上に示した例は次のように変形できる。すなわち、炭素層の代わりに相応のシリコン層を形成し、場合により硬質材料層中の炭素をシリコンにより置換する。このようにして例えば、Me層とa-Si個別層の交互の層、またはMeSi層とa-Si:H層の交互の層からなる多層構造体が例3と例4に示したように形成される。
【0061】
別の層組み合わせも有利に使用することができる。例えば硬質材料層と炭素層ないしはシリコン層すべてが同じ材料からなるのではなく、および/または炭素層がシリコンまたはシリコンと炭素を含む硬質材料層と、またはシリコン層が炭素または炭素とシリコンを含む硬質材料層と組み合わされるのである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】基板にプラズマCVD被覆を行うための装置の側面図である。
【図2】同じ装置の平面図である。
【図3】図1に示した装置の変形実施例である。
【図4】図1に示した装置の変形実施例である。
【図5】図1に示した装置の変形実施例である。
【図6】連続施設として構成された装置である。
【図7】多室装置である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質材料個別層と、炭素個別層またはシリコン個別層との交互の層からなる多層構造体であって、
前記硬質材料個別層は、金属、金属炭化物(MeC)、金属ケイ化物、金属炭化ケイ化物(Me(CSi))、金属ケイ化窒化物(Me(SiN))、金属炭化物含有炭素(C-(MeC))、金属ケイ化物含有シリコン(Si-(MeSi))、または前記物質の少なくとも2つからなる含有物であり、
前記金属は、タングステン(W)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)およびモリブデン(Mo)の群から選択され、
前記炭素個別層は、非結晶水素含有炭素(a-C:H)、非結晶水素無含有炭素(a-C)、シリコン含有(水素含有または水素無含有)炭素、または金属含有(水素含有または水素無含有)炭素(C-(MeC))からなる、ことを特徴とする多層構造体。
【請求項2】
前記シリコン個別層は、非結晶水素含有シリコン(a-Si:H)、非結晶水素無含有シリコン(a-Si)、炭素含有(水素含有または水素無含有)シリコン、または金属含有(水素含有または水素無含有)シリコン(Si-(MeSi))からなる、請求項1記載の多層構造体。
【請求項3】
前記硬質材料個別層は1つまたは複数の硬質材料層からなり、
前記炭素個別層は1つまたは複数の炭素層からなり、
前記シリコン個別層は1つまたは複数のシリコン層からなる、請求項1記載の多層構造体。
【請求項4】
硬質材料個別層、炭素個別層およびシリコン個別層の厚さは、1 nmから10 nmである、請求項1から3までのいずれか一項記載の多層構造体。
【請求項5】
硬質材料個別層、炭素個別層およびシリコン個別層の厚さは、2nmから5nmである、請求項1から3までのいずれか一項記載の多層構造体。
【請求項6】
多層構造体の全体厚は、1μmから10μmである、請求項1から5までのいずれか一項記載の多層構造体。
【請求項7】
多層構造体の全体厚は、1μmから4μmである、請求項1から5までのいずれか一項の多層構造体。
【請求項8】
硬質材料層は、Me、MeC、MeSi、Me(CSi)、またはMe(SiN)からなり、炭素層はa-C:Hまたはa-Cからなる、請求項3から7までのいずれか一項記載の多層構造体。
【請求項9】
多層構造体は、C-(WC)層とa-C:H層との交互の層からなる、請求項1から8までのいずれか一項記載の多層構造体。
【請求項10】
多層構造体は、MeC層とC-(MeC)層との交互の層からなる、請求項1から9までのいずれか一項記載の多層構造体。
【請求項11】
硬質材料層はMe、MeC、MeN、MeSi、Me(CN)、Me(CSi)またはMe(SiN)からなり、シリコン層はa-Si:Hまたはa-Siからなる、請求項3から10までのいずれか一項記載の多層構造体。
【請求項12】
硬質材料個別層、炭素個別層またはシリコン個別層は付加的に、シリコン、ボロン、窒素、酸素、炭素および金属の群から少なくとも1つの元素を、ボロンと炭素とは同時に存在しないことを前提に含む、請求項1から11までのいずれか一項記載の多層構造体。
【請求項13】
工具、とりわけ切削工具または変形工具に被覆する、請求項1から12までのいずれか一項記載の多層構造体の使用法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−133008(P2009−133008A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327799(P2008−327799)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【分割の表示】特願平11−503554の分割
【原出願日】平成10年6月15日(1998.6.15)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】