説明

多方向距離無接触測定器

複数の誘導素子(1、4、7)を有し、電気的導体(2、22)の多方向における距離(10、20)を無接触で測定する装置。複数の誘導素子(1、4、7)のうち、少なくとも一つは本質的に電気的導体(2)の周りに配置されている。他の誘導素子、あるいは他の磁場センサー(4、7)は当該誘導素子(1)の近傍に配置されている。このような特徴を有する装置は、多軸誘導センサーを単一の回路基板上に集積することを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は多方向における距離を無接触で測定する装置に関する。具体的には多軸位置センサーに関する。
【0002】
無接触位置測定に対しては誘導センサーを使用することが出来る。このようなセンサーの動作原理はセンサーコイルのインダクタンス、つまりセンサーと対象物の距離に依存する減衰の測定に基づいている。対象材料(強磁性、あるいは電気的導体、またはその両方)と測定周波数によっては、センサーコイルのインダクタンス、つまり減衰は主要な特性となる。
【0003】
低価格で高い再現性を得るために、平面センサーコイルを回路基板に集積することが出来る。平面コイルを使った従来技術によるセンサーは、センサーコイル平面の垂直方向に対して高い位置感度を示す。センサーコイル平面内の横方向X−、及びY−の位置の測定は難しいことが知られている。単一の回路基板上に多方向の距離を測定する多軸誘導センサーを集積するため、コイルの巻き線は充分に大きな感度を得ることが出来るよう対象物が位置している回路基板の端近くに集中しなければならない。しかしながら、回路基板を使うときは充分な巻き線数を得るために、巻き線は表面上に広がってしまうのが常である。従って、この様な配置のインダクタンス、あるいは感度は共に低くなり、センサーの単一回路基板上への集積は不満足なものとなってしまう。
【0004】
米国特許第4642595号明細書は対象物の周りに、コアにフェライトを使い、主コイルの脇にいくつもの補助コイルがある集中コイルを備えたジョイステックを開示している。
【0005】
米国特許第4825157号明細書はホールセンサーとして機能する磁気コアを使ったもう一つのジョイステックを開示している。従来技術文献は、共に非導電性磁気コアの使用を開示している。
【0006】
これらの従来技術から、本発明の目的はここに述べられた欠陥を克服することにある。
【0007】
本発明においてはこれらの問題の解決法が見出され、多軸誘導センサーを単一回路基板上へ集積することが可能となる。
【0008】
サブクレームによる多くの実施例には、これらのセンサーの応用における更なる利点が含まれている。
【0009】
いくつかのインダクタンスは、典型的にはコイルであるが、対象物の位置が測定できるように配置されている。ここでの位置測定は、対象物が空間で行うことができる全ての回転と移動の測定を意味する。配置によって、一、二、あるいは六軸全てに亘って同時に測定することが出来る。回転対称物の場合は、対称軸での回転は測定できない(5次元自由度(DOF)測定)。この分野における他の知られた装置の多くとは対照的に、対称軸での回転は重要でないと考えられている。
【0010】
米国特許第4642595号明細書にあるように、従来技術の方法では磁場は磁性体の中に導かれている。もし、物体が一方向へ動いている場合(例えば左へ)、そちら側の検出器はフェライトコアにより近く、より大きい磁場に出会うことになる。
【0011】
本発明では、ローターは完全導体のシリンダー、即ち、スチールまたはアルミで出来ている。渦電流はこのような物質内に磁場が存在することを回避する。従って、もし、物体が一方向に動いている場合(例えば左へ)、磁場はそちら側では部分的に対象物の渦電流によって抑制される。全体的な磁場は反対方向に動く(つまり右へ)。反対側の検出器はより大きな磁場を受ける。集中コイルと対象物の間のギャップが直径よりも小さい場合は、磁場の全体的な動きは対象物の動きに比べてずっと大きい。これによって高感度になる。
【0012】
本発明を図面に示された典型的な実施例によって説明する。
【0013】
図1は本発明による装置の第一形態における概念的斜視図を示す。コイル1は電気的導体である移動可能な対象物2の周りに巻かれ、線3及び発振器13を通して高周波電流によって励起される。対象物2は電気的導体であるが強磁性材料ではない。対象物の周りに小さな独立コイルを設置しただけの従来の配置とは異なって、コイルは巻き線が物体を完全に取り囲むように配置されている。従って、コイル1のコンダクタンスは従来の配置に比べて高い。コイル1のような場は導体2の中に誘起される渦電流によって拒絶される。これによって、移動可能な対象物2とコイル1の間のギャップに場が集中する。場はギャップサイズ10に大きく依存する。このようにして、物体2の位置は場の全体的分布に対して大きな影響を持つ。
【0014】
この効果は、コイル1の電気的パラメータを変化させることはない。と言うのは、物体の片側の増加したギャップ11は、その反対側の減少したギャップ12によって相殺されるからである。場の合計はほぼ一定である。しかしながら、場の分布は物体の位置によって変化する。磁場センサー4は、場の分布の非対象性を測定するためにコイル1の巻き線に沿って物体2の周りに使われている。センサー4は中空のシリンダー状装置の同一平面14上に、より多くあるいはより少なく配置されている。その配置の結果は、対象物の横方向(X,Y方向)の微小な動きに対して良好な感度を持ち、製作するのが簡単で、コイル1の大きなコンダクタンスのために比較的低周波で動作することが出来る。
【0015】
出願人は本発明によって直径20mmの物体2を有する装置を作製した。物体2の周りの平面を構成する基板14の内端は21mmの直径を有する。従って、本発明の一実施例に拠れば、ギャップサイズ10は0.5mmである。
【0016】
実施例は物体2の直径とギャップ10の幅が40:1の関係になるように選択され、配置されている。もし、物体2が例えば0.3mm右側に動くとギャップ12は0.2mmに減少し、反対側のギャップは0.8mmに増加する。従って、磁場は約12mm程左側に動くことになる。
【0017】
装置の動作は以下の通りである。静止コイル1はリング状基板14上で基板14の内周に出来るだけ近く、移動可能な対象物2を取り囲む。その距離は0.2mmまで減少する。高周波電流3は、典型的には100KHzから10MHzであるが、発振器13で生成され、コイル1を貫通する。この配置の利点はコンパクトなこと−微小な空間を使って大きなコイルインダクタンスが実現出来る−である。磁場センサー4はコイルである。これらの追加コイル4は対象物2の周りに配置されているが、コイル1によって作られる高周波場によって発生する電圧を測定することに使われる。これらの電圧は対象物の位置に依存し、従ってX−方向、Y−方向には依存しない位置信号を生ずる。
【0018】
ケーブル3は装置の規模に比べて長く、例えば100:1になり、比較的低周波だけが許容される。
【0019】
高周波電流の可能な周波数範囲は装置の規模による。その周波数は、生成した磁場の大部分が導電体2の中に侵入出来ないように充分高くなければならない。言い換えると、導電体2の中に発生した渦電流は移動し、コイル1の磁場を撥ね付ける。
【0020】
図2は図1による装置の概念的平面図を示す。各図に亘って同じ物には同じ参照番号がつけられている。図1と図2の実施例では4つのコイルが使われている。
【0021】
このような位置信号を生ずる同様の配置は、また、図3及び図4の例のように、より多くの、あるいはより少ない検出コイルを備えることによって実現できる。図3では、本発明による第二の形態の装置は三つのコイル4を使用し、一方、図4では六つのコイル4を使っている。
【0022】
本発明によるコイルの配置によれば、コイル当たりの巻き数が低い場合(例えば、5ターン)でも、またコイルのサイズが小さくとも(例えば、直径10mmのコイル)、充分大きなインダクタンスが得られる。その結果、この測定原理は回路基板(PCB)への集積に適している。また、回路基板の使用によって、図1に示されているように、一つの生産工程によって同一平面14上に全てのコイル1と4を配備することが確実にできるようになる。このことによって、コイルの最適配置のみならず、再現性のある低コストの生産工程が可能となる。コイル1とコイル4は、更に分解能の改善をもたらす対象物2に極めて接近した多層配置とすることが出来る。図7を参照。上述の全ての実施例では、導電体2の中に誘起された渦電流はコイル1の場を排除する。導電体2は、従って、ほとんど磁力線はない。このことによって移動可能な物体2と固定コイル1の間のギャップ10に前述の場が集中することになる。
【0023】
追加的なコイルを加えることによって、従来のセンサー原理と組み合わせると垂直なZ方向の距離が測定できる。
【0024】
前述のインダクタンスの配置を依然として使えるようにするため、渦電流効果が支配的である限りは強磁性対象物を使用することが可能である。
【0025】
コイル1とコイル4は結合したインダクタンスの系を構成する。得られる信号はコイルのインピーダンス測定に基づいて評価することが出来る。これは様々な方法によって実現できる。高周波電流3をコイル1に接続する代わりに、またそのような電流をコイル4に加えることが出来、その結果コイル1の中に測定可能な信号が生ずる。コイル4に加えられる電流は、互いに相を違えたり周波数を変えたりすることが出来る。
【0026】
典型的には数百ピコファラッドのコンデンサーを、コイルの誘導無効電流を相殺するためにコイル4、コイル1と並列に接続することが出来る。従って、それはケーブル中の電流を減少させる。これによって、対象物2の位置に強く依存する共鳴回路が生ずる。ここに提示された配置では、その共鳴周波数はインダクタンスの結合による単一の独立コイルに比べて著しく低いものとなる。低電流と低周波は共に、配置物に接続されたケーブルによる信号発信に対して好都合である。
【0027】
図4は信号処理を有する本発明による装置の第三形態の概念的平面図を示したものである。図4の5による信号の処理はセンサードリフトを除去するために微分で行われる。更に、良く知られた同期復調6を使うことが出来る。しかしながら、複数の異なった処理手段と信号の取り扱い方法は、従来の技術によっても得られる事に注意する必要がある。信号処理5は、望ましくはコイル1、コイル4と一緒に基板に集積される。しかしながら、供給ライン3の低い感度と測定ラインは、センサーとその信号処理の分離を可能にすることに注意しなければならない。
【0028】
コイル4の代わりに、また他の磁場センサー、例えばホールセンサーのようなものを使うことが出来る。図5は、コイルの代わりにホールセンサー4を使った三つのセンサーを有する本発明による装置の第四形態の概念的平面図を示したものである。
【0029】
図6は本発明による装置の第五形態の概念的平面図を示したものであり、図7は図6におけるVII−VII線による図6の装置の概念的側断面図を示したものである。図6の実施例において、Z方向における対象物の軸方向位置は、対象物2上のステップ、即ちノッチ22までの距離(つまりギャップ)20を測ることによって追加的に決定することが出来る。この配置では、距離測定はコイル4の信号の合計を評価することによって、あるいはコイル1のインピーダンスを評価することによって達成される。図7は、実際には一つの図の中の異なった二つの実施例を示している。図7の左側には、コイル1が基板の上下の最も内周に用意されており、そしてコイル4がZ軸からより離れた距離におけるコイル1と同平面上に設置されている。図7の右側には多層配置が示されている。そこではコイル4はコイル1の二つの部分によって挟まれて設置されている。
【0030】
図8は本発明による装置の第六形態の概念的平面図を示し、図9は図8の装置の概念的側断面図を示す。追加的なコイル7によって、測定配置の自由度(DOF)は追加された次元にまで拡張される。図8は、それぞれコイル1とコイル4の同径方向外側に配置されたこのような追加コイル7を有する配置図を表す。図8の実施例おいて、Z方向における対象物の軸方向位置は対象物2のより大きいシリンダー部分22までのギャップ20を測定することによって追加的に決定することが出来る。このようなコイル7は、X−方向,Y−方向,及びZ−方向の変異のみならず、X−軸,Y−軸に関する回転角(傾斜角)を評価することが出来る。図9からは、コイル4及びコイル7がより大きいシリンダー部分22に面した基板14の下面上に設置されていることが解る。一方、そこには円筒状に取り囲むコイル1が基板14の他の基板面上の内周に設置されている。
【0031】
図10は本発明による装置の第七形態の概念的平面図を示し、図11は図10の装置の巻き線回路レイアウトを示す。コイル1は四つの分離された巻き線からなる。それぞれのコイル4はコイル1の対応する巻き線に直列に接続されている。これによって接続線はより少なくなる。図10は、見えやすくするため、ただの一回巻き線を示している。励起信号13は全てのコイル4に供給され、そのインピーダンスが測定される。図11は二層巻き線板を示している。実線は上層の線を、点線は下層の線を、そして点は二層間の相互接続点である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による装置の第一形態における概念的斜視図を示す。
【図2】図1の装置の概念的平面図を示す。
【図3】本発明による装置の第二形態における概念的平面図を示す。
【図4】信号処理を備えた本発明による装置の第三形態の概念的平面図を示す。
【図5】本発明による装置の第四形態における概念的平面図を示す。
【図6】本発明による装置の第五形態における概念的平面図を示す。
【図7】図6の装置の概念的断面横図を示す。
【図8】本発明による装置の第六形態における概念的平面図を示す。
【図9】図8の装置の概念的断面横図を示す。
【図10】本発明による装置の第七形態における概念的平面図を示す。
【図11】図10による装置の配線回路配置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘導素子(1、4、7)を有し、電気的導体(2、22)の多方向における距離(10、20)を無接触で測定する装置であって、少なくとも一つ(1)の前記複数の誘導素子(1、4、7)は前記電気的導体(2)の周りに設置され、また、他の誘導素子、即ち他の磁場センサー(4、7)は前記一つの誘導素子(1)の近傍に配置されていることを特徴とする無接触距離測定器。
【請求項2】
前記複数の誘導素子(1、4、7)はコイルであり、特に印刷されたコイルであることを特徴とする請求項1に記載の無接触距離測定器。
【請求項3】
前記他のコイル(4、7)は、前記電気的導体(2)の周りの異なった角度位置に設置された単体コイルであり、前記一つのコイル(1)は前記電気的導体(2)の周りに巻かれたことを特徴とする請求項2に記載の無接触距離測定器。
【請求項4】
高周波電流が前記一つのコイル(1)に供給され、前記他のコイル(4、7)から出力信号が検出されることを特徴とする請求項2または3に記載の無接触距離測定器。
【請求項5】
高周波電流が前記電気的導体(2)の周りに巻かれた一つの誘導素子(1)に供給され、前記周波数は生成された磁場の大部分が前記電気的導体(2)に侵入できない程、充分に高いことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の無接触距離測定器。
【請求項6】
前記他のコイル(4、7)は偶数個配置され、対極のコイルは特異的に結合されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の無接触距離測定器。
【請求項7】
前記他のコイル(4、7)は、共鳴回路を形成するため並列に電気容量を配置されたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の無接触距離測定器。
【請求項8】
前記電気的導体(2)はフランジ部分(22)を有し、更なる単体コイル(7)が前記フランジ部分(22)の表面近傍の前記電気的導体(2)周りの異なった角度位置に設置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の無接触距離測定器。
【請求項9】
ジョイステック、操縦装置、モーターのローター、或いはコンピュータ入力手段の角度検出を行う請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の無接触距離測定器の使用方法。
【請求項10】
磁気ベアリングの位置制御を行う請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の無接触距離測定器の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2006−509189(P2006−509189A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−554133(P2004−554133)
【出願日】平成15年11月6日(2003.11.6)
【国際出願番号】PCT/CH2003/000726
【国際公開番号】WO2004/048883
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(505187895)メコス トラックスラー アクチェンゲゼルシャフト (6)
【Fターム(参考)】