説明

多結晶膜の形成方法

【課題】 本発明は、レーザービームをなんども照射することによる生産性低下の問題を改善できる多結晶膜の形成方法を提供するためのものである。
【解決手段】 本発明は、ガラス基板上にバッファー膜の介在下に蒸着した被結晶化膜をマスクを用いたレーザー照射により結晶化させる多結晶膜の形成方法であって、レーザー装備の解像度限界の大きさより大きい透過領域とレーザー装備の解像度限界の大きさより小さな非透過領域から構成されたマスクを用いて、前記透過領域の下の被結晶化膜部分には最大強度でレーザーが照射されるようにし、前記非透過領域の下の被結晶化膜部分には0を超過する最小強度を有してレーザーが照射されるようにして、レーザー単一照射により被結晶化膜を結晶化させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶膜の形成方法に関し、より詳しくは、多結晶シリコン薄膜トランジスタを形成するための多結晶シリコン膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置または有機発光表示装置などでスイッチング素子として使われる薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;以下、TFT)は、上記の平板表示装置の性能において最も重要な構成要素である。ここで、前記TFTの性能を判断する基準である移動度(mobility)または漏洩電流などは電荷運搬子が移動する経路である活性層がどんな状態(state)または構造を有するか、即ち、活性層の材料であるシリコン薄膜がどんな状態または構造を有するかに大きく左右される。現在、常用化されている液晶表示装置の場合、TFTの活性層は大部分非晶質シリコン(amorphous silicon;以下、a−Si)である。
【0003】
ところが、活性層としてa−Siを適用したa−Si TFTは移動度が0.5cm2/Vs内外で非常に低いため、液晶表示装置に入る全てのスイッチング素子を作るには制約的である。これは、液晶表示装置の周辺回路用駆動素子は非常に速く動作しなければならないが、a−Si TFTは周辺回路用駆動素子が要求する動作速度を満足させることができないので、前記a−Si TFTでは周辺回路用駆動素子の具現が実質的に困難であるということを意味する。
【0004】
一方、活性層として多結晶シリコン(polycrystalline silicon;以下、poly−Si)を適用したpoly−Si TFTは、移動子が数十〜数百cm2/Vsで高いため、周辺回路用駆動素子に対応可能な高い駆動速度を出すことができる。このため、ガラス基板上にpoly−Si膜を形成させれば、画素スイッチング素子だけでなく、周辺回路用駆動部品も具現可能になる。したがって、周辺回路の形成に必要な別途のモジュール工程が必要でないだけでなく、画素領域を形成する時に共に周辺回路駆動部品をも形成できるので、周辺回路用駆動部品費用の低減を期待することができる。
【0005】
さらに、poly−Si TFTは高い移動度のため、a−Si TFTより小さく作ることができ、そして、集積工程により周辺回路の駆動素子と画素領域のスイッチング素子を同時に形成できるので、線幅の微細化がより容易になって、a−Si TFT−LCDで実現し難い高解像度を得るのに非常に有利である。
【0006】
その上、poly−Si TFTは、高い電流特性を有するので、次世代の平板表示装置である有機発光表示装置の駆動素子として適合し、これによって、最近はガラス基板上にpoly−Si膜を形成させてTFTを製造するpoly−Si TFTの研究が活発に進行している。
【0007】
ここで、ガラス基板上にpoly−Si膜を形成する方法として、a−Si膜の蒸着後熱処理を行なってa−Si膜を結晶化させる方法が挙げられる。ところが、この方法の場合には600℃以上の高温でガラス基板の変形が生じることになり、それで、信頼性及び歩留まりの減少をもたらすことになる。
【0008】
ここに、ガラス基板に熱的損傷を与えないで、a−Si膜のみを結晶化させることができる方法としてエキシマレーザーアニーリング(Excimer Laser Annealing;以下、ELA)方法が提案されたのであり、また、連続側面結晶化(Sequential Lateral Solidification;以下、SLS)方法が提案された。
【0009】
ところが、前記ELA方法は、a−Si膜にレーザーを照射してpoly−Si膜を得る方法であって、a−Si膜を完全溶融(complete melting)させられなくて部分溶融(partial melting)させるため、poly−Si膜の結晶粒(grain)の大きさが小さくて不均一であるので、poly−Si TFTの特性及び均一性が劣化する問題がある。また、前記ELA方法は、poly−Si TFTの特性の均一性を向上させるためにレーザーを反復照射するため、生産性が落ちて、工程範囲(process window)が小さいという工程上の短所がある。
【0010】
一方、前記SLS方法は、選択的に透過部を提供するスリットパターン(slit pattern)を備えたマスクを通じてパルスレーザー(pulse laser)をa−Si膜に照射し、かつ、ショット(shot)方式またはスキャニング(scanning)方式により前記a−Si膜にレーザーを照射して、前記レーザーが照射されて完全溶融した液状部分とレーザーが照射できなくて溶融していない固体状部分の境界からSi結晶を成長させることによって、前記ELA方法でより大きい結晶粒を有するpoly−Si膜を形成することができる。
【0011】
詳しくは、従来のSLS方法は、図1に示すように、スリットパターンからなる透過(transparent)領域1とそれ以外の非透過(opaque)領域2からなるマスクMを使用して進行し、この際、透過領域1ではレーザーが透過され、非透過領域2ではレーザーが透過できないので、前記透過領域1で透過されたレーザーによりa−Si部分の溶融(melting)がなされ、時間が経ることにつれて前記溶融したa−Siの側面からSi結晶が成長(lateral growth)することになる。
【0012】
図2は、図1のA−A’線地域を通過したレーザーの空間強度分布(spatial intensity profile)を示すものであって、図示したように、透過領域に対応しては最大強度を表す反面、非透過領域に対応してはレーザーの強度が0である。
【0013】
しかしながら、前記SLS方法の場合、レーザーが照射される領域と照射されない領域が繰り返されるので、a−Si膜の全体を結晶化させるためには最小限2回以上のレーザー照射が必要であるため、生産性が落ちるだけでなく、レーザーが重畳されて照射される部分と重畳されていない部分でpoly−Siの結晶粒の大きさが変わるので、poly−Si TFTの特性の均一性が劣化する問題がある。
【0014】
また、前記SLS方法は、前記固体状部分と液状部分の境界地点から成長されるSi結晶粒が互いに会う衝突地点でハイアングル結晶粒界(high angle grain boundary)が形成されるが、前記ハイアングル結晶粒界(high angle grain boundary)の位置制御が困難であるのでpoly−Si TFTの特性が悪くなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、前記した従来の問題を解決するために案出したものであって、レーザービームをなんども照射することによる生産性低下の問題を改善できる多結晶膜の形成方法を提供することをその目的とする。
【0016】
また、本発明の他の目的は、結晶粒の大きさの不均一性及びハイアングル結晶粒界(high angle grain boundary)の不均一な形成によるpoly−Si TFTなどの特性及び均一性劣化の問題を改善できる多結晶膜の形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記のような目的を達成するための本発明の多結晶膜の形成方法は、ガラス基板上にバッファー膜の介在下に蒸着した被結晶化膜をマスクを用いたレーザー照射により結晶化させる多結晶膜の形成方法であって、レーザー装備の解像度限界の大きさより大きい透過領域とレーザー装備の解像度限界の大きさより小さな非透過領域から構成されたマスクを用いて、前記透過領域の下の被結晶化膜部分には最大強度でレーザーが照射されるようにし、前記非透過領域の下の被結晶化膜部分には0を超過する最小強度を有してレーザーが照射されるようにして、レーザー単一照射により被結晶化膜を結晶化させることを特徴とする。
【0018】
前記非透過領域は、ライン(line)タイプまたはドット(dot)タイプパターンから構成される。
【0019】
前記ドット(dot)タイプパターンは円形または多角形である。
前記ドット(dot)タイプパターンは、碁盤形状で各セクタの中央部に配列された形態で規則的に配列されたり、または、ジグザグ方式で規則的に配列される。
【0020】
前記ライン(line)タイプまたはドット(dot)タイプパターンは、規則的または不規則的なパターン間の距離を有したり、規則と不規則が混在するパターン間の距離を有する。
【0021】
前記透過領域は、核生成が発生されない大きさを有する。
前記レーザーは、透過領域の下の被結晶化膜部分は完全溶融させ、非透過領域の下の被結晶化膜部分は多結晶のシードが発生されるように部分的に溶融(partial melting)させる強度を有したり、1つの単結晶のシードのみ残留するようにほとんど完全に溶融(near complete melting)(以下、近接完全溶融) させる強度を有したり、完全に溶融(complete melting)(以下、完全溶融)させる強度を有する。
【0022】
前記被結晶化膜は、a−Si膜、poly−Si膜、a−Ge膜、poly−Ge膜、a−SixGey膜、poly−SixGey膜、a−GaNx膜、poly−GaNx膜、a−GaxAsy膜及びpoly−GaxAsy膜を含む3族と5族の物質膜及びその化合物膜から構成されたグループから選択されるいずれか1つの膜である。
【0023】
前記被結晶化膜は、金属膜または金属と半導体の化合物膜である。この際、前記金属膜は、Al膜、Cu膜、Ti膜、W膜、Au膜及びNi膜から構成されたグループから選択されるいずれか1つの膜である。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明は、レーザー装備の解像度限界の大きさより大きい透過領域とレーザー装備の解像度限界の大きさより小さな非透過領域で構成されたマスクを用いて、一回のレーザー照射により単結晶のシード形成領域以外の被結晶化膜の残り部分全てを溶融させ、前記シードから結晶化が進行するようにして多結晶膜を形成することによって、従来のELAまたはSLS方法のように同一地域に反復的にレーザーを照射することによる生産性低下の問題が生じない。したがって、本発明は従来のELAまたはSLS方法より生産性を格段に向上させることができる。
【0025】
また、本発明は、レーザー重畳による多結晶膜の特性不均一化の問題が生じないだけでなく、非透過領域の間隔及び大きさを調節して結晶粒の大きさ及び位置を容易に制御することができ、前記非透過領域の間隔を均一化させることによって、均一な結晶粒の大きさを有する多結晶膜を形成できるので、従来のELAまたはSLS方法より多結晶膜の特性及び均一性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の好ましい実施形態を説明する。
まず、本発明の技術的原理を簡単に説明すれば、本発明はガラス基板上にバッファー膜の介在下に蒸着したa−Si膜をマスクを利用したレーザー照射により結晶化させるpoly−Si膜の形成方法であって、レーザー装備の解像度限界の大きさより大きい透過領域とレーザー装備の解像度限界の大きさより小さな非透過領域から構成されたマスクを用いて、前記透過領域の下のa−Si膜部分には最大強度(maximum intensity)でレーザーが照射されるようにし、前記非透過領域の下のa−Si膜部分には0を超過する最小強度(minimum intensity)を有して、レーザーが照射されるようにしてレーザー照射を進行する。
【0027】
この場合、前記透過領域の下のa−Si膜部分は完全溶融され、前記非透過領域の下のa−Si膜部分は部分溶融、または、近接完全溶融、または、完全溶融されるが、前記非透過領域の下のa−Si膜部分が部分溶融または近接完全溶融された場合にはその部分に各々多結晶シード(seed)または1つの単結晶シードが残留するので、前記形成されたシードから結晶化が進行してpoly−Si膜が形成され、前記非透過領域の下のa−Si膜部分が完全溶融された場合にも前記溶融されたa−Si膜が冷却される際、非透過領域の下のa−Si膜部分が透過領域の下のa−Si膜部分より温度が低いので非透過領域のa−Si膜部分でシードが形成され、前記形成されたシードから結晶化が進行してpoly−Si膜が形成される。この際、前記透過領域のa−Si膜部分ではシードが形成されない。
【0028】
従来技術と本発明を比較すると、従来のSLS方法ではa−Si膜の完全溶融された液状部分と全く溶融されない固状部分の境界部で結晶化が進行するようにした反面、本発明ではa−Si膜の特定部分から結晶化のためのシードが生成されるようにし、前記シード形成領域以外の部分は完全溶融させて、前記シードから結晶化が進行できるようにする。したがって、従来のSLS方法では第1レーザー照射後、固状部分を溶融させるための第2レーザー照射が要求されるが、本発明の方法では一回のレーザー照射だけでも全領域の結晶化が可能である。
【0029】
このように、本発明では、一回のレーザー照射によりシード形成領域以外の残りの部分を全て溶融させ、前記シードから結晶化が進行するようにしてpoly−Si膜を形成するため、追加的なレーザー照射が要求されない。
【0030】
したがって、本発明の方法によれば、従来のELAまたはSLS方法より生産性を大きく向上させることができ、反復的なレーザー照射及びレーザー重畳による特性の不均一化の問題が生じないので、製品の特性が向上する。
【0031】
また、本発明は前記非透過領域の間隔及び大きさを調節して結晶粒の大きさ及び位置を容易に制御でき、前記非透過領域の間隔を均一化させることによって、均一な結晶粒の大きさを有するpoly−Si膜を形成できるので、従来のELAまたはSLS方法よりpoly−Si膜の特性及びその均一性を向上させることができる。
【0032】
詳しくは、図3は本発明に係るpoly−Si膜形成方法を説明するための図であって、これを説明すれば次の通りである。
【0033】
図3には本発明で使用するマスクMと前記マスクMを通過したレーザーの空間強度分布(spatial intensity profile)グラフ、そして、前記マスクMを通じたレーザーの照射によりa−Si膜からシード及びpoly−Si膜が形成される過程を図示する。
【0034】
図3を参照すれば、本発明では、前述のように、レーザー装備の解像度限界の大きさより大きい透過領域31とレーザー装備の解像度限界の大きさより小さな非透過領域32から構成されたマスクMを用いて、前記透過領域31の下のa−Si膜部分には最大強度(maximum intensity)でレーザーが照射されるようにし、前記非透過領域32の下のa−Si膜320部分には0を超過する最小強度(minimum intensity)を有してレーザーが照射されるようにし、前記透過領域31の下のa−Si膜320部分は完全溶融させ、前記非透過領域32の下のa−Si膜320部分は、部分溶融、近接完全溶融または完全溶融させて、その部分でシードが形成されるようにして、前記形成されたシードから結晶化を進行させる。
【0035】
この際、前記マスクMとa−Si膜320との間の空間にはレンズLが位置するが、前記レンズLのないプロキシミティー(proximity)タイプの装備を使用することができる。未説明符号300及び310は、各々ガラス基板及びバッファー膜を表す。
【0036】
ここで、前記マスクMは多様な形態で形成できるが、以下では図4A乃至図4Cを参照して本発明で使用することができる多様な形状のマスクMの平面図及びそれに対応する結晶粒の形態を説明する。
【0037】
図4Aは、同一間隔を有するラインタイプの非透過領域を有する第1マスクM1及びそれに対応する結晶粒の形態を表し、これを参照すれば、前記第1マスクM1を使用して結晶化を進行した時、直六面体形態の結晶粒を有するpoly−Si膜を形成することができる。
【0038】
図4Bは、非透過領域がドットタイプパターンで構成され、かつ、前記ドットタイプパターンが碁盤形状で各セクタ(sector)の中央部に配列された第2マスクM2及びそれに対応する結晶粒の形態を表し、これを参照すれば、前記第2マスクM2を使用して結晶化を進行した時、正六面体形態の均一な結晶粒を有するpoly−Si膜を形成することができる。
【0039】
図4Cは、非透過領域がドットタイプパターンで構成され、かつ、前記ドットタイプパターンがジグザグ方式で規則的に配列された第3マスクM3及びそれに対応する結晶粒の形態を表し、これを参照すれば、前記第3マスクM3を使用して結晶化を進行した際、正六角柱形態の結晶粒を有するpoly−Si膜を形成することができる。
【0040】
一方、図示してはいないが、前記ドット(dot)タイプパターンは四角形以外の他の多角形または円形で形成することができ、前記ライン(line)タイプまたはドット(dot)タイプパターンは規則的または不規則的なパターン間距離を有したり、規則と不規則が混在するパターン間距離を有するように形成することができる。
【0041】
図5はレーザーのエネルギー強度による結晶化形態を示す図であって、これを参照すれば、レーザーのエネルギー強度が低い第1タイプの場合、最小強度のレーザーが照射されるa−Si膜部分の溶融厚さが相対的に薄い。
【0042】
この場合、レーザー照射後、前記最小強度のレーザーが照射されて溶融したa−Si膜部分から溶融していないa−Si膜部分に熱伝逹がなされながら初期に溶融しなかったa−Si膜部分が溶けてから堅くなって多結晶化されるので、その部分に複数の微細結晶粒(fine grain)からなる第1のSi膜(A)が形成される。
【0043】
そして、前記第1のSi膜Aが形成される過程で、前記第1のSi膜Aの上段部終端で結晶が垂直成長(vertical growth)されて小さな結晶粒(small grain)の大きさを有する第2のSi膜Bが形成される。
【0044】
次に、前記第2のSi膜Bから側面成長(lateral growth)がなされて、大きい結晶粒(large grain)の大きさを有する第3のSi膜Cが形成される。ここで、前記垂直成長が側面成長より先になされる理由は、最小強度のレーザーが照射された部分の温度が低くてその部分で結晶化が先に進行するためである。
【0045】
一方、最小強度のレーザーが照射される領域を近接完全溶融(near complete melting)させることができるエネルギーを有するレーザーが照射される第2タイプの場合、最小強度のレーザーが照射される領域がほとんど完全に溶融され、非常に小さな大きさの単結晶シードが残すことになるので、前記シードの四方に結晶化(super lateral growth)が進行して非常に大きい第4のSi膜Dが形成される。ここで、図面符号Fは成長する結晶粒の間の衝突により形成された突出部(protrusion)部分であって、成長する結晶粒はハイアングル結晶粒界(high angle grain boundary)を有する突出部Fを形成しながらその成長を止めることになる。
【0046】
そして、レーザーのエネルギー強度が第2タイプの場合より高い第3タイプの場合、最小強度のレーザーが照射されるa−Si膜部分を含んだa−Si膜全体が完全溶融されるが、完全溶融された液状が徐々に冷却される時、前記最小強度のレーザーが照射された部分の温度が最も低いので、その部分で複数の結晶粒を有するシードが形成され、前記多結晶のシードから結晶化が進行して前記第4のSi膜Dより結晶粒の大きさが小さい第5のSi膜Eが形成される。この際、前記第3タイプでのシードが多結晶状で形成される理由は完全溶融後、冷却時の冷却速度が十分にのろくなくて、シードが多結晶膜に育つためである。ところが、もし完全溶融後、冷却速度をのろくして単結晶のシードを形成させれば、前記第4のSi膜Dの場合のように大きい結晶粒を得ることができる。
【0047】
ここで、前記第1、第2及び第3タイプに該当するエネルギー強度はa−Si膜の厚さと工程条件によって変わるので、各タイプに該当するエネルギー強度範囲を特定数値に限定できない。
【0048】
前記第1、第2及び第3タイプのうち、第2タイプが最も大きい結晶粒の大きさを有するpoly−Si膜が得られるので、本発明の目的を達成するに最も適合したタイプである。図6は前記第2タイプに該当するエネルギーを有するレーザーを使用して形成したpoly−Si膜の平面写真であって、これを参照すれば、最小強度のレーザーが照射された領域から単結晶Si膜が成長して最大強度のレーザーが照射された領域で突起を形成させながらその成長を止めることにより、比較的均一で、かつ、大きい結晶粒の大きさを有するpoly−Si膜が形成されたことを確認することができる。
【0049】
一方、本発明は装備の種類及びマスクとガラス基板の大きさによって多様に遂行できるが、以下では、図7A乃至図7Eを参照して本発明の多様な結晶化方法について説明する。
【0050】
図7A乃至図7Cは、レンズLを使用する場合であって、この際、装備の解像度は下記式1の通りである。
解像度=0.5×λ/NA …(1)
ここで、λはレーザーの波長を、そして、NAはレンズの数値口径(Numerical Aperture)を表す。
【0051】
図7Aはレーザーがガラス基板300の全体を一度に照射することができ、併せて、レンズLがガラス基板300の全体を覆うぐらいの大きさを有する場合であって、この場合、一回のレーザー照射でガラス基板300上に形成された被結晶化膜Tを全領域を結晶化させて結晶化膜Pを形成する。
【0052】
図7B及び図7Cはレーザーがガラス基板300の全体を一度に照射することができなくて、併せて、レンズLがガラス基板300より小さな場合であって、図7Bの場合、マスクMとガラス基板300を同時に同一な方向に平行移動させながら単一照射工程を反復遂行して被結晶化膜Tの全領域を結晶化させ、図7Cの場合、ガラス基板300のみを移動させながら単一照射工程を反復遂行して被結晶化膜Tの全領域を結晶化させる。
【0053】
一方、図7D及び図7Eは、レンズを使用しないプロキシミティー(proximity)タイプの装備を使用する場合であって、この場合、マスクMは被結晶化膜T上に接触されたり、とても近く近接され、装備解像度は下記式2の通りである。
解像度=(λZ/2)1/2 …(2)
ここで、ZはマスクMと基板結果物との間の距離を表す。
【0054】
図7Dはレーザーがガラス基板300の全体を一度に照射することができる場合であって、この場合、一回のレーザー照射でガラス基板300上に形成された被結晶化膜Tの全領域を結晶化させる。
【0055】
図7Eはレーザーがガラス基板300の全体を一度に照射できない場合であって、この場合、マスクMとガラス基板300を同時に一定の長さだけずつ平行移動させながら単一照射工程を反復遂行して被結晶化膜Tの全領域を結晶化させる。図7A乃至図7Eにおいて、未説明符号310はバッファー膜を表す。
【0056】
このように、本発明はレーザー装備の解像度限界の大きさより大きい透過領域とレーザー装備の解像度限界の大きさより小さな非透過領域から構成されたマスクを用いて、前記透過領域の下の被結晶化膜部分には最大強度でレーザーが照射されるようにし、前記非透過領域の下の被結晶化膜部分には0を超過する最小強度を有してレーザーが照射されるようにして、前記最小強度のレーザーが照射された部分で単結晶のシードを形成させて結晶化を進行することによって、レーザーの単一照射により大きくて均一な結晶粒を有する多結晶膜を形成させることができる。
【0057】
したがって、本発明の方法によれば、従来のELAまたはSLS方法のように同一地域に反復的にレーザーを照射することによる生産性の低下の問題及びレーザーの重畳による特性の不均一化の問題が生じない。
【0058】
また、本発明は前記非透過領域の間隔及び大きさを調節して結晶粒の大きさ及び位置を容易に制御することができ、前記非透過領域の間隔を均一にすることによって、均一な結晶粒の大きさを有する多結晶膜を形成することができるので、従来のELAまたはSLS方法より多結晶膜の特性及び均一性を向上させることができる。
【0059】
一方、前記した本発明の実施形態では、被結晶化膜がa−Si膜である場合に対してのみ図示及び説明したが、本発明の方法は前記被結晶化膜がa−Si膜でない他の材質の膜、例えば、poly−Si膜、a−Ge膜、poly−Ge膜、a−SixGey膜、poly−SixGey膜、a−GaNx膜、poly−GaNx膜、s−GaxAsy膜及びpoly−GaxAsy膜を含む3族と5族の物質膜及びその化合物膜から構成されたグループから選択されるいずれか1つの膜であるとか、または、Al膜、Cu膜、Ti膜、W膜、Au膜及びNi膜のような金属膜または前記金属膜と半導体の化合物膜である場合にも同一に適用されることができる。ここで、前記被結晶化膜である多結晶膜(poly−Si膜等)である場合、本発明の方法を通じてその結晶粒の大きさが増加し均一になる。
【0060】
以上、ここでは本発明を特定の実施形態に関連して図示及び説明したが、本発明がそれに限るのではなく、以下の特許請求範囲は本発明の精神と分野を離脱しない限度内で、本発明が多様に改造及び変形できるということを当業界で通常の知識を有する者であれば容易に分かる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】従来のSLS方法による多結晶膜の形成方法でのマスクを説明するための図である。
【図2】図1のA−A’線を通過したレーザーの空間強度分布を示す図である。
【図3】本発明に係る多結晶膜の形成方法を説明するための図である。
【図4A】本発明で使用したマスクの平面図及びそれに対応する結晶粒の形態を説明するための図である。
【図4B】本発明で使用した他のマスクの平面図及びそれに対応する結晶粒の形態を説明するための図である。
【図4C】本発明で使用した他のマスクの平面図及びそれに対応する結晶粒の形態を説明するための図である。
【図5】レーザーのエネルギー強度による結晶化形態を示す図である。
【図6】本発明の実施形態により形成したpoly−Si膜の平面写真である。
【図7A】本発明に係る結晶化方法を説明するための図である。
【図7B】本発明に係る他の結晶化方法を説明するための図である。
【図7C】本発明に係る他の結晶化方法を説明するための図である。
【図7D】本発明に係る他の結晶化方法を説明するための図である。
【図7E】本発明に係る他の結晶化方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0062】
31 透過領域
32 非透過領域
M、M1、M2、M3 マスク
L レンズ
300 ガラス基板
310 バッファー膜
320 a−Si膜
T 被結晶化膜
P 多結晶膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板上にバッファー膜の介在下に蒸着した被結晶化膜をマスクを用いたレーザー照射により結晶化させる多結晶膜の形成方法であって、
レーザー装備の解像度限界の大きさより大きい透過領域とレーザー装備の解像度限界の大きさより小さな非透過領域から構成されたマスクを用いて、前記透過領域の下の被結晶化膜部分には最大強度でレーザーが照射されるようにし、前記非透過領域の下の被結晶化膜部分には0を超過する最小強度を有してレーザーが照射されるようにして、レーザー単一照射により被結晶化膜を結晶化させることを特徴とする多結晶膜の形成方法。
【請求項2】
前記非透過領域は、ライン(line)タイプまたはドット(dot)タイプパターンから構成されたことを特徴とする請求項1に記載の多結晶膜の形成方法。
【請求項3】
前記ドット(dot)タイプパターンは、円形または多角形であることを特徴とする請求項2に記載の多結晶膜の形成方法。
【請求項4】
前記ドット(dot)タイプパターンは、碁盤形状で各セクタの中央部に配列された形態で規則的に配列されたり、または、ジグザグ方式で規則的に配列されたことを特徴とする請求項2に記載の多結晶膜の形成方法。
【請求項5】
前記ライン(line)タイプまたはドット(dot)タイプパターンは、規則的または不規則的なパターン間距離を有したり、規則と不規則が混在するパターン間距離を有することを特徴とする請求項2に記載の多結晶膜の形成方法。
【請求項6】
前記透過領域は、核生成が発生されない大きさを有することを特徴とする請求項1に記載の多結晶膜の形成方法。
【請求項7】
前記レーザーは、透過領域の下の被結晶化膜部分は完全溶融させ、非透過領域の下の被結晶化膜部分は部分溶融(partial melting)させる強度を有して、前記部分溶融された部分で多結晶のシードが発生されるようにすることを特徴とする請求項1に記載の多結晶膜の形成方法。
【請求項8】
前記レーザーは、透過領域の下の被結晶化膜部分は完全溶融させ、非透過領域の下の被結晶化膜部分は近接完全溶融(near complete melting)させて、前記近接完全溶融された部分で1つの単結晶シードのみ残留するようにすることを特徴とする請求項1に記載の多結晶膜の形成方法。
【請求項9】
前記レーザーは、透過領域の下の被結晶化膜部分は完全溶融させ、非透過領域の下の被結晶化膜部分は完全溶融(complete melting)させる強度を有することを特徴とする請求項1に記載の多結晶膜の形成方法。
【請求項10】
前記被結晶化膜は、a−Si膜、poly−Si膜、a−Ge膜、poly−Ge膜、a−SixGey膜、poly−SixGey膜、a−GaNx膜、poly−GaNx膜、a−GaxAsy膜及びpoly−GaxAsy膜を含む3族と5族の物質膜及びその化合物膜から構成されたグループから選択されるいずれか1つの膜であることを特徴とする請求項1に記載の多結晶膜の形成方法。
【請求項11】
前記被結晶化膜は、金属膜または金属と半導体の化合物膜であることを特徴とする請求項1に記載の多結晶膜の形成方法。
【請求項12】
前記金属膜は、Al膜、Cu膜、Ti膜、W膜、Au膜及びNi膜から構成されたグループから選択されるいずれか1つの膜であることを特徴とする請求項11に記載の多結晶膜の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−281465(P2007−281465A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95550(P2007−95550)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(303016487)ビオイ ハイディス テクノロジー カンパニー リミテッド (21)
【Fターム(参考)】