説明

密封型半導体記録媒体及び密封型半導体記録装置

【課題】 密封型半導体記録媒体及び密封型半導体記録装置に関し、無線により電力を給電するとともに、相互干渉なしに無線でデータ通信を高速に行うことが可能な密封された高信頼性の半導体メモリを低コストで提供する。
【解決手段】 少なくとも1枚の半導体基板に最大辺が20mm以下のサイズの複数の読出専用メモリブロックを互いに電源配線を共有しない状態で設け、前記各読出専用メモリブロックに電力受給用コイルとデータ通信用コイルを備えるとともに、前記各読出専用メモリブロックに互いに異なったデータを書き込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は密封型半導体記録媒体及び密封型半導体記録装置に関するものであり、例えば、外部から完全に隔離された密封型半導体記録媒体に対してデータ通信に影響を与えることなく電源を供給するための構成及び書き込んだデータを高速で読み出すための構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、人類の文化遺産などのデジタル化が進んでおり、デジタル技術はアナログ技術に比べて、信号の経年変化が少なく長期保存に適する。ところが、これまでのデジタル記録装置は、100年以上の保存に耐えない。
【0003】
例えば、磁気を用いてデータを保存するハードディスク装置は、寿命が30年程度と言われる。これは、高速に回転するディスクに対してデータ読出し装置を近づけるための機械機構に故障が発生することが多いためである。
【0004】
或いは、CD(Compact Disc)やDVDやBlu−ray Disc(登録商標)といった光ディスク装置も、寿命は15年程度と言われている。これもやはり回転部の故障が多い他に、ディスク表面を覆う素材の経年変化で光の透過率が減少するためである。
【0005】
このようにデジタル記録装置は数10年程度の寿命しかなく、やがて故障する。そのために、デジタル情報を新しい記録装置に定期的にコピーしないと長期保存できない。この操作はマイグレーションと呼ばれている。
【0006】
マイグレーションのための経費は高く、経済的負担が大きい。例えば、4Kデジタル・シネマ品質(4096×2160画素、24フレーム/秒)の2時間の映画のコピー3部をデジタル保存するための費用は、映画1本あたり年間100万円以上になると言われている。さらに、デジタル製作過程で作られた全ての断片的記録も保存するためには、映画一本当たり年間2000万円以上の保存費用がかかると言われている。
【0007】
そこで、長期に保存できる新たなデジタル記録装置が要請されている。もし、1000年以上故障せずにデジタル情報を保存できればマイグレーションの必要がなくなり、経済的に文化遺産などを後世に伝えることが可能になる。
【0008】
このような可能性を秘める新たなデジタル記録装置として、マスクROM(Read Only Memory)を形成したウェーハを複数枚積層して全体をSiO2 で密封することが概念的に提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0009】
マスクROM等の半導体集積回路デバイスは、主にシリコンとシリコンの酸化膜、および銅などの金属を原材料として加工製造される。シリコンとシリコンの酸化膜は非常に安定した物質であり、1000年以上経過しても変化しないという特長がある。一方、金属は、高温多湿の環境化で酸化し、錆びて腐食する。
【0010】
半導体集積回路デバイスにおいて、金属は回路の結線に使われ、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜で被覆されたデバイス内部で用いられる。金属がデバイス外部と接触するのは、唯一、電源給電やデータ通信のためにデバイス外部との配線接続(ワイヤーボンディング)を行うためのパッドと呼ばれるシリコン酸化膜およびシリコン窒化膜の開口部である。水分がこの開口部からデバイス内部に浸入すれば、内部の金属配線も腐食して、やがて故障の原因となる。
【0011】
マスクROMでは、デバイスの製造過程でリソグラフィー用のマスクを使って、金属配線層を接続するコンタクトの有無によってデジタルデータを記録する。電荷や磁気を使ってデータを書き込む方式に比べると、コンタクト方式のマスクROMは、放射線(宇宙線)や電磁気(地磁気)などの環境の変化やノイズに強く、データは金属配線が腐食しない限り長期保存ができるという特長を有している。
【0012】
もし、マスクROMを上記の提案のようにパッドを開けずにシリコン酸化膜やシリコン窒化膜で密封すると、水分が外部からデバイス内部に浸入することを防ぐことができるので、チップの寿命を1000年以上にすることが可能であると予測される。
【0013】
図13は、チップの寿命に関する研究報告(例えば、非特許文献2参照)によるチップ寿命の湿度依存性の説明図である。図13に示すように、チップ内部の湿度を2%以下にすることができると、チップの温度が100℃の場合でも、チップの寿命は1000年以上になる。
【0014】
また、製造コストの観点からは、このようなマスクROMに映画等のデータを書き込むために、一度しか使わないマスクを製作するのは高価なものになる。電子ビーム(EB)直接描写装置を使って、電子線をウェーハ上のレジストに直接照射してマスクの代替とする技術がある。この技術を使えば、マスクROMに安くデータを書き込むことが可能になる。
【0015】
2009年現在で、45nmCMOS技術を用いると、1cm角のチップに4ギガビットのマスクROMを200円程度のコストで製造することができる。したがって、15インチ(≒38cm)のウェーハを4枚積層すれば、2.5テラビットのマスクROMを14万円程度で製造できることになる。
【0016】
10年後には、半導体集積回路の集積度は100倍になり、ビット単価は1/100になることが期待できる。したがって、2020年には、DVDと同じ大きさの4.75インチ(≒12cm)のウェーハ1枚に、6テラビットのデジタル情報を1500円程度の製造コストで蓄積することが可能になると予測される。
【0017】
したがって、残された技術的課題は、いかにして密封したマスクROMに電力を供給し、そのデータを読み出すかである。無線で電力を給電しつつ、無線でデータを読み出す技術としては、無線タグ(RFID:Radio Frequency IDentification)という技術が使われている。
【0018】
これは、ICタグと呼ばれる媒体に記録された人やモノの個別情報を、無線通信によって読み書きする(データを呼び出したり、登録したり、削除したり、更新を行う)自動認識システムである。例えば、電子マネーカードや、電子乗車券などに利用されている。上記の非特許文献1においてもこのようなシステムの使用を前提としていることが推測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2005−228981号公報
【特許文献2】特開2005−348264号公報
【特許文献3】特開2006−050354号公報
【特許文献4】特開2006−066454号公報
【特許文献5】特開2006−105630号公報
【特許文献6】特開2006−173986号公報
【特許文献7】特開2006−173415号公報
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】越智裕之,「ガラスディスク技術の可能性」,http://note.dmc.keio.ac.jp/topics/archives/455
【非特許文献2】D.Stewart Peck,”Comprehensive Model for Humidity Testing Correlation”,Intl’Rel Phys Symp.,pp.44−49,1986
【非特許文献3】D.Mizoguchi et al.,”A 1.2Gb/s/pin Wireless Superconnect based on Inductive Inter−chip Signaling (IIS)”,IEEE International Solid−State Circuits Conference(ISSCC’04),Dig.Tech.Papers,pp.142−143,517,Feb.2004
【非特許文献4】N.Miura et al.,”Analysis and Design of Transceiver Circuit and Inductor Layout for Inductive Inter−chip Wireless Superconnect”, Symposium on VLSI Circuits,Dig.Tech.Papers,pp.246−249,Jun.2004
【非特許文献5】N.Miura et al.,”Cross Talk Countermeasures in Inductive Inter−Chip Wireless Superconnect”,in Proc.IEEE Custom Integrated Circuits Conference(CICC’04),pp.99−102,Oct.2004
【非特許文献6】N.Miura,D.Mizoguchi,M.Inoue,H.Tsuji,T.Sakurai,and T.Kuroda,”A 195Gb/s 1.2W 3D−Stacked Inductive Inter−Chip Wireless Superconnect with Transmit Power Control Scheme”,IEEE International Solid−State Circuits Conference(ISSCC’05),Dig.Tech.Papers,pp.264−265,Feb.2005
【非特許文献7】N.Miura,D.Mizoguchi,M.Inoue,K.Niitsu,Y.Nakagawa,M.Tago,M.Fukaishi,T.Sakurai,and T.Kuroda,”A 1Tb/s 3W Inductive−Coupling Transceiver for Inter−Chip Clock and Data Link”,IEEE International(ISSCC’06),Dig.Tech.Papers,pp.424−425,Feb.2006
【非特許文献8】N.Miura,H.Ishikuro,T.Sakurai,and T.Kuroda,”A 0.14pJ/b Inductive−Coupling Inter−Chip Data Transceiver with Digitally−Controlled Precise Pulse Shaping”,IEEE International Solid−State Circuits Conference(ISSCC’07),Dig.Tech.Papers,pp.264−265,Feb.2007
【非特許文献9】N.Miura,Y.Kohama,Y.Sugimori, H.Ishikuro,T.Sakurai,and T.Kuroda,”An 11Gb/s Inductive−Coupling Link with Burst Transmission”,IEEE International Solid−State Circuits Conference(ISSCC08),Dig.Tech.Papers,pp.298−299,Feb.2008
【非特許文献10】Y.Yuxiang,Y.Yoshida,and T.Kuroda,”Non-Contact 10% Efficient 36mW Power Delivery Using On-Chip Inductor in 0.18−um CMOS”,IEEE Asian Solid−State Circuits Conference(A−SSCC’07),Dig.Tech.Papers,pp.115−118,Nov.2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかし、無線タグのデータ読出し速度は、毎秒250キロビット程度である。したがって、2.5テラビットのデジタル情報を読み出すのに115日以上を要してしまうことになる。これを2時間程度で読み出すためには、1000倍程度高速な毎秒数100メガビットの通信速度が必要になる。
【0022】
また、無線タグでは、リーダーがタグに電力を供給しながら、その電磁波をタグが反射する際にデータを乗せることで、データ通信を行っている。この方式はバックスキャッタ方式(変調後方拡散方式)と呼ばれている。この方式では、毎秒数100メガビットの高速な通信を行うことは非常に困難である。
【0023】
また、無線タグでは、給電や通信に使うアンテナ(コイル形状が多い)や電力の蓄積に使うキャパシタとタグのチップがプリント基板上で配線接続されている。長期信頼性を確保するためには、半導体製造プロセスの中で密封する必要があり、外付けのコイルやキャパシタを用いることができないという問題がある。
【0024】
本発明者は、高速通信手段として、ICチップのチップ上の配線により形成されるコイルを介して積層実装されるチップ間で誘導結合による通信を行う電子回路を提案している(例えば、特許文献1乃至特許文献7、及び、非特許文献3乃至非特許文献9参照)。この技術を用いれば、通信速度は毎秒ギガビット以上にできる。例えば、特許文献5においては、LSIチップ試験装置において、チップとテストヘッドの間の誘導結合による通信を行ってチップの試験を行うことを提案している。
【0025】
しかし、この技術をそのまま適用しただけでは、電源を磁界結合で供給できないという問題がある。それは、無線給電のための電磁波とデータ通信のための電磁波が相互に干渉して、データ通信の信頼性が著しく劣化するからである。
【0026】
例えば、電力供給源及びデータ通信源となるリーダーと密封型半導体記録媒体であるストーンの間の通信距離は少なくとも0.5mm以上が必要であり、3mmあれば十分である。ウェーハは薄く削って50μm程度にできるが、SiN膜等の保護膜の厚さが必要だからである。通信距離が1mmのときに、データ通信用のコイルの直径は2mm程度が必要になる。なお、データ通信用とそのタイミングクロック信号用で1対のコイルが必要になり、ストーンからリーダーへの通信用と、リーダーからストーンへの通信用をそれぞれ専用に用意する場合、合計4つのコイルが必要になる。
【0027】
通信距離が1mmでデータ通信用のコイルの直径が2mmのとき、データ通信用コイルの結合係数k(送受信コイルの結合の割合。完全に結合している場合が1で、完全に非結合の場合が0になる)は0.15程度になり、受信コイルに発生する電圧信号は、150mV程度になる。したがって、通信距離が1mmのときに、2mmよりも小さなコイルを用いると、kの値が著しく小さくなり、受信信号電圧が著しく小さくなって、データ通信できなくなる。
【0028】
一方、通信距離が1mmのときに、電力給電用のコイルの直径は、6mm程度が必要になる。このときkは0.4程度である。ストーンが受信する電力PTXとリーダーが送信する電力PRXの比(PRX/PTX)はkの2乗程度である。上述の条件の場合には、
RX/PTX≒k2 =0.42 =0.16
になる。したがって、通信距離が1mmのときに、直径が6mmよりも小さなコイルを用いると、kの値が著しく小さくなり、受信電力が著しく小さくなって、ストーンの回路に十分な電力を供給できなくなる。
【0029】
因に、リーダーの送信電力の上限は、Rを電力送信回路のインピーダンスとすると、VDD2 /Rで与えられる。電力送信回路のインピーダンスRは、コイルの抵抗と送信回路のトランジスタの抵抗を合わせて、およそ5Ωである。したがって、リーダーの送信電力の上限は、VDD=1.8Vの場合、
DD2 /R=1.82 /5≒650mW
になる。
【0030】
650mWの最大送信電力が、誘導結合で受信コイルに0.16倍伝わるので(PRX/PTX=0.16)、100mWが伝わることになる。さらに、整流回路で30%程度が直流電源として変換されると、30mWになる。ストーンが必要とする消費電力が120mWと仮定すると、6mmの直径のコイルが4つ必要になる。
【0031】
直径が2mmのデータ通信用コイルと直径が6mmの電力用コイルがリーダーとストーンにそれぞれ配置される際に、両コイルの間に少なくとも8mmの間隔がないと、無線給電のための電磁波がデータ通信に影響を与え、データ通信のビット誤り率が許容できないほど大きくなる。4つの電力用コイルの間は多少干渉があっても大きな問題にはならないので、隣接して配置することができる。しかし、4つのデータ通信用コイルは互いに2mm以上離さないと、データ間で干渉が起こる。
【0032】
したがって、無線給電のための電磁波とデータ通信のための電磁波の相互干渉を抑制するためには、最低でも6mmの直径の電力給電用コイルが4つと、最低でも2mmの直径のデータ通信用コイルが4つを、電力用コイルとデータ通信用コイルの間を最低でも8mm離し、データ通信用コイル間を互いに最低でも2mm離して配置しなければならない。その結果、チップの寸法は、少なくとも22mm×14mmが必要になる。
【0033】
ところが、半導体集積回路は、最大辺が20mmよりも大きなチップになると、製造歩留りが著しく低下するという問題がある。更に、一般にチップの最大辺が20mmを超えると1枚のレチクルで露光ができなくなるので、複数のレチクルをつなぎ合わせる必要が生じ、コスト増大と不良確率増大を招くことになる。したがって、低コスト化のためにはある程度高い歩留りを得る必要があり、そのためには、チップの寸法は最大辺が20mmよりも小さくなければならない。
【0034】
そうすると、今度は、最大辺が20mmよりも小さなチップに電力給電用コイルと、データ通信用コイルを配置することになるので、両コイルの間で電磁波が相互に干渉して、データ通信の信頼性が著しく劣化するというジレンマがある。
【0035】
また、半導体チップに搭載できるキャパシタでは容量値が不十分なので、磁界結合で交流信号に載せて電力を送り、受信した交流信号を整流回路で直流信号に直して電源電圧を得るとき、交流成分を十分に小さくできないという問題がある。
【0036】
また、上記非特許文献1における提案では、各チップの電源が共有されることになるが、各チップの電源が共有されていると、一つのチップの不良が、電源を共有する全てのチップの誤動作の要因になり得る。例えば、電源間で短絡不良があると、電源を共有する全てのチップにおいて電源電圧が十分に高くならず、回路が正常に動作できないという問題が発生する。
【0037】
さらに、各チップの電源を共有するためには、1枚のウェーハ上に設けた複数のチップ間を金属配線で接続する必要があるが、そのためには、従来配線を形成しないスクライブ領域を跨いだ相互接続配線を形成する必要がある。しかし、大口径のウェーハからストーンを切り出す場合、スクライブ断面で配線形状が異常になりVDDと基板(GND)の短絡不良の原因となり、信頼性が低下するという問題もある。
【0038】
また、信頼性の高い密封型半導体記録媒体を低コストで生産するためには、製造プロセスが確立している信頼性の高い技術を用いて余分な工程や余分な構成要素を付け加えることなく生産可能であることが必須となる。例えば、上述のように22mm×14mm以上のサイズのチップを用いた場合には、製造歩留りが著しく低下して大幅なコスト増を招くことになる。
【0039】
したがって、本発明は、無線により電力を給電するとともに、相互干渉なしに無線でデータ通信を高速に行うことが可能な密封された高信頼性の半導体メモリを低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0040】
上記の課題を解決するために、本発明の密封型半導体記録媒体は、少なくとも1枚の半導体基板に最大辺が20mm以下のサイズの複数の読出専用メモリブロックを互いに電源配線を共有しない状態で設け、前記各読出専用メモリブロックは電力受給用コイルとデータ通信用コイルを備えるとともに、前記各読出専用メモリブロックに書き込まれたデータが互いに異なっている。
【0041】
このように、チップサイズに相当するブロックサイズを最大辺を20mm以下にしているので、高い信頼性が確立している製造技術を用いて密封型半導体記録媒体を低コストで生産することが可能になる。また、各読出専用メモリブロックは互いに電源が共有されていないので、一つの読出専用メモリブロックの不良が、電源を共有する全ての読出専用メモリブロックの誤動作の原因となることない。
【0042】
また、本発明の密封型半導体記録媒体において、さらに、各読出専用メモリブロックは、電力の受給とデータ通信とを時間分割して行う時分割手段を備えている。
【0043】
このように、時分割手段を備えているので、電力の受給とデータ通信とを時間分割して行うことができ、それによって、電力供給用の電磁波とデータ通信用の電磁波が相互干渉することがなく、データ通信のビット誤り率を許容範囲にすることができる。また、時分割手段を備えているので、電力受給用コイルとデータ通信用コイルとを近接配置することが可能になり、最大辺が20mm以下、例えば、15mm×15mm程度にすることができる。
【0044】
また、本発明の密封型半導体記録媒体は、さらに、各読出専用メモリブロックは、前記電力受給用コイルで受給した交流電力を平滑化する平滑化手段を備えており、特に、前記電力受給用コイルで受給した交流電力の位相を互いにずらして平滑化する機構を備えていることが望ましい。
【0045】
このように、平滑化手段を備えることによって、供給された交流電力を直流電力として、マスクROMを構成する配線部の寄生容量に蓄えることができる。特に、前記電力受給用コイルで受給した交流電力の位相を互いにずらして平滑化する機構を備えることによって、電源電圧のリップルの電源電圧VDDに対する比を10%以下に抑えることが可能になる。その結果、回路が正常に動作することが可能になる。
【0046】
また、本発明の密封型半導体記録媒体は、さらに、半導体基板が、シリコン窒化膜でシールされている。
【0047】
このように、半導体基板が耐候性に優れたシリコン窒化膜でシールされているので、水分等の進入を確実に防止することができ、さらなる長寿命化が可能になる。因に、上記の非特許文献2の予測では1000年以上の寿命が期待される。
【0048】
また、本発明の密封型半導体記録媒体は、さらに、前記各読出専用メモリブロックが同じ配列で配置されるとともに、前記各読出専用メモリブロックに書き込まれたデータが互いに異なる半導体基板を、各各読出専用メモリブロックは投影的に重なるように複数枚積層する。
【0049】
このように、同じ仕様の半導体基板を各読出専用メモリブロックが投影的に重なるように複数枚積層することによって、積層枚数に応じて記録容量を増大させることができる。
【0050】
また、本発明の密封型半導体記録装置は、上述の密封型半導体記録媒体と、前記密封型半導体記録媒体に電力を供給する電力供給用コイルとデータ通信用コイルとを備えたリーダーブロックを複数設けた半導体基板からなるリーダーとを有し、前記各リーダーブロックに設けた電力供給用コイルとデータ通信用コイルと前記各読出専用メモリブロックに設けた電力受給用コイルとデータ通信用コイルとがそれぞれ互いに投影的に重なるように対向させる。
【0051】
リーダーに設けるリーダーブロックは1個でも良いが、複数個のリーダーブロックを設けることで、データ読み出し速度をリーダーブロックの数に比例して高速にすることができる。
【0052】
この場合、電力の授受及びデータ通信を効率的行うためには、前記各リーダーブロックに設けた電力供給用コイルとデータ通信用コイルと前記各読出専用メモリブロックに設けた電力受給用コイルとデータ通信用コイルとの対向間隔を3mm以下とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0053】
開示の密封型半導体記録媒体及び密封型半導体記録装置によれば、無線により電力を給電するとともに、相互干渉なしに無線でデータ通信を高速に行うことが可能な密封された高信頼性の半導体メモリを低コストで提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態の密封型半導体記録装置の概念的構成図である。
【図2】電力通信及びデータ通信構成の概念的説明図である。
【図3】本発明の実施例1の密封型半導体記録装置の概念的断面図である。
【図4】ROMブロック及びリーダーブロックの一例を示す平面図である。
【図5】マスクROMの構成説明図である。
【図6】本発明の実施例1の電力通信及びデータ通信のための回路ブロック図である。
【図7】全波整流器及び電力センサの構成説明図である。
【図8】図7における各出力の時間変化の説明図である。
【図9】4チャネル全波整流の説明図である。
【図10】4つの電力チャネルによる無線給電におけるリップル電圧の説明図である。
【図11】クランプ回路及び過剰電力センサの回路構成図である。
【図12】本発明の実施例2のROMブロック及びリーダーブロックの概念的平面図である。
【図13】チップ寿命の湿度依存性の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
ここで、図1及び図2を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施の形態の密封型半導体記録装置の概念的斜視図であり、データを格納したデジタルロゼッタストーン10と、格納したデータを読み出すリーダー30とから構成される。
【0056】
デジタルロゼッタストーン10は、マスクROMと、電力受給用コイル21およびデータ通信用コイル22と無線通信回路が集積されたROMブロック20が配列されたウェーハ11が各ROMブロック20の位置が投影的に重なるように複数枚積層されて、SiNやSiO等の保護膜12で密封されている。
【0057】
リーダー30は、ウェーハ11に設けた電力受給用コイル21およびデータ通信用コイル22に対応した同様の形状の電力供給用コイル32とデータ通信用コイル33と、データの無線通信回路が集積されたリーダーブロック31をROMブロック20と同じ数だけ配置されている。リーダーブロック31に設けた電力供給用コイル32から電力用電磁波が発信されると、電力供給用コイル32と投影的に重なる各段のウェーハ11のROMブロック20に設けた電力受給用コイル21で順次減衰しながら受信される。データ通信用電磁波も同様である。
【0058】
リーダー30に設けられるリーダーブロック31の数は最小で1個、最大でROMブロック20と同数であり、リーダーブロック31の数に比例してデータ読み出し速度を速めることができる。なお、リーダーブロック31の数がROMブロック20の数より少ない場合には、リーダー30をデジタルロゼッタストーン10の上で移動させることで、各ROMブロック20からデータを読み出す。
【0059】
図2は、電力通信及びデータ通信構成の説明図である。図2(a)は電力通信及びデータ通信のための概念的回路ブロック図であり、図2(b)は電力通信及びデータ通信方式のチャート図である。図2(a)に示すように、リーダーブロック31側には電力供給用コイル32と、データ通信用コイルとして送信用コイル331 と受信用コイル332 とが設けられており、各コイルには、電力用増幅器34、送信用増幅器351 及び受信用増幅器352 がそれぞれ接続されている。
【0060】
一方、ROMブロック20側には電力供給用コイル21と、データ通信用コイルとして受信用コイル22と送信用コイル22とが設けられており、各コイルには、電力整流器23、受信用増幅器24及び送信用増幅器24がそれぞれ接続されている。
【0061】
また、電力整流器23には供給された電力を充電するキャパシタ25が接続されているとともに、電力センサ26及びパワー・オン・リセット回路27が接続されている。このキャパシタ25は、ROMブロック20の回路の電源線に寄生する容量と、もしくは更に、例えばMOSFETのゲート容量を使用して作った容量を加えたものである。受信用増幅器24 及び送信用増幅器24にはそれぞれレジスタ28,28が接続されており、各レジスタ28,28はマスクROM29に接続されている。
【0062】
図2(b)に示すように、本発明の電力通信及びデータ通信方式においては、電磁波が互いに干渉しないように、電力とデータの通信を時間で分けて交互に実行するもので、以下の4つの手順を繰り返して行う。
第1手順(I):まず、リーダーブロック31からROMブロック20に磁界結合を用いて電力を無線送電する。給電された電力はチップ上に形成されたキャパシタ25に蓄えられる。ROMブロック20の電源の電位VDDが所定の電位まで上昇したことを電力センサ26を用いて検出し、パワー・オン・リセット回路27を用いてシステムをリセットする。
【0063】
第2手順(II):リーダーブロック31からROMブロック20への給電を停止する。ROMブロック20は電力を消費するので、ROMブロック20の電源電位VDDは徐々に低下する。その変化を電力センサ26が高速に検出する。電力供給が停止したことを検出すると、無線受信器を起動して、リーダーブロック31からの命令を受信してレジスタ28に格納する。この命令には、例えば、リーダーブロック31が次の第3手順と第4手順の間にROMブロック20から読み出すデータの最初のアドレスと最後のアドレスが指定されている。或いは、次の第3手順で電力供給が再開されるのに備えて事前に無線通信機を止めるように命令する。無線受信器は、キャパシタ25に蓄えらえたエネルギを用いて動作する。従って、VDDの値は徐々に下がるが、VDDの値が所定値以下に下がらないように、第2手順の時間が回路の消費電力から決定される。
【0064】
第3手順(III):リーダーブロック31からROMブロック20への給電を再開する。それをROMブロック20が検出すると、マスクROMのデータ(MDATA)を読み出し、レジスタ28に格納する。この間の回路動作は、給電した電力を用いて行う。
【0065】
第4手順(IV)では、リーダーブロック31からROMブロック20への給電を停止する。それをROMブロック20が検出すると、無線送信器を起動して、レジスタ28に格納されたデータをリーダーブロック31に無線送信する。無線送信器は、キャパシタ25に蓄えらえたエネルギを用いて動作する。従って、VDDの値は徐々に下がるが、VDDの値が所定値以下に下がらないように、第4手順の時間が回路の消費電力から決定される。
【0066】
上記の第3手順と第4手順を繰り返して、所望のデータを全て読み出す。データの読出しが完了すると、その後はリーダーブロック31から電力が供給されることはなく、やがてROMブロック20の電源電圧VDDはゼロになり、第1手順に戻る。
【0067】
電源用受信コイルが発生する交流信号を整流回路で直流電圧に変換する際に残る電源電圧のリップルVのVDDに対する比V /VDDは、10%以下に抑えたい。V/VDDが10%以上になると、回路が正常に動作しなくなる。
【0068】
電源電圧のリップルVのVDDに対する比V/VDDは、fを給電の電磁波の周波数、Cを電源線に寄生する容量、RをマスクROMの回路のインピーダンスとすると、
/VDD=1/(fCR)
で求められる。
【0069】
マスクROMの回路は、その大部分がnチャネル型MOSFETで構成されていて、pチャネル型MOSFETはほとんど使われていないので、電源線に寄生する容量は非常に小さく、例えば、C=1nFである。また、マスクROMの回路のインピーダンスRは例えば、25Ω程度である。
【0070】
したがって、給電の電磁波の周波数fを250MHzにすると、
/VDD=1/(fCR)=1/(250MHz×1nF×25Ω)≒0.16
であり、16%になる。つまり、マスクROMの回路ではリップルが大きくなるので、この問題を解決するために、本発明では、電力送信を複数のチャネルに分け、各チャネルの電磁波の位相をずらすことでリップルを低減する。
【0071】
また、各ROMブロックの電源が共有されていると、一つのROMブロックの不良が、電源を共有する全てのROMブロックの誤動作の要因になり得る。例えば、電源間で短絡不良があると、電源を共有する全てのROMブロックにおいて電源電圧が十分に高くならず、回路が正常に動作できない。
【0072】
しかし、本発明では各ROMブロックを互いに電気的に隔絶しているので、たとえ1つのROMブロックが動作不良になっても、データを冗長符号化して保存することで、データを完全に復元することができる。例えば、Low Density Parity Check(LDPC)符号を用いると、データ量を23%増加することで修復ができる。
【実施例1】
【0073】
以上を前提として、次に、本発明の実施例1の密封型半導体記録装置を説明する。図3は、本発明の実施例1の密封型半導体記録装置の断面図であり、データを格納したデジタルロゼッタストーン40と、格納したデータを読み出すリーダー60とから構成される。
【0074】
デジタルロゼッタストーン40は、図1に示したのと同様にマスクROMと、電力受給用コイル51およびデータ通信用コイル52と無線通信回路が集積されたROMブロック50が配列されたウェーハ41が各ROMブロック50の位置が投影的に重なるように複数枚積層されて、SiN保護膜42で密封されている。各ウェーハ41はそれぞれ個別にSiN保護膜43で被覆されており、各ウェーハ41はSiO膜44を利用した基板張り合わせ技術によって積層されている。
【0075】
リーダー60は、ウェーハ41に設けた電力受給用コイル51およびデータ通信用コイル52に対応した同様の形状の電力供給用コイル62とデータ通信用コイル63と、データの無線通信回路が集積されたリーダーブロック61をROMブロック50と同じ数だけ配置されている。
【0076】
図4は、ROMブロック及びリーダーブロックの一例を示す平面図である。図4(a)はROMブロックの平面図であり、ここでは、15mm×15mmのサイズのROMブロック50に一辺が6mmの電力受給用コイル51〜51を4個配置するとともに、一辺が1.2mmのデータ通信用コイル52〜52を4個十字状に配置している。4つのデータ通信用コイル52〜52のうち2個は送信用で他の2個は受信用である。
【0077】
図4(b)はリーダーブロックの平面図であり、ここでは、15mm×15mmのサイズのリーダーブロック61に一辺が6mmの電力供給用コイル62〜62を4個配置するとともに、一辺が1.2mmのデータ通信用コイル63〜63を4個十字状に配置している。4つのデータ通信用コイル63〜63のうち2個は送信用で他の2個は受信用である。この時のリーダーブロック61とROMブロック50との通信距離は0.6mmとする。
【0078】
なお、この電力受給用コイル62及びデータ通信用コイル63はROMブロック50に設けた電力受給用コイル51及びデータ通信用コイル52とそれぞれ実効的に同じサイズで且つ同じ配置とする。送信用のデータ通信用コイル63,63と受信用のデータ通信用コイル52,52とが対向し、受信用のデータ通信用コイル63,63と送信用データ通信用コイル52,52とが対向するように各コイルを配置する。
【0079】
図5は、マスクROMの構成説明図であり、図5(a)は概略的平面図であり、図5(b)は等価回路図である。
【0080】
図6は、本発明の実施例1の電力通信及びデータ通信のための回路ブロック図である。図に示すように、電力供給用コイル62〜62と電力受給用コイル51〜51が互いに対向している。後述するように各電力供給用コイル62〜62には、位相が互いに45°ずれるように交流電圧が印加される。また、送信用のデータ通信用コイル63,63と受信用のデータ通信用コイル52,52とが対向し、受信用のデータ通信用コイル63,63と送信用のデータ通信用コイル52,52とが対向している。ここでは、各データ通信用コイルは、データ通信用とそのタイミングクロック信号用で1対のコイルで構成している。
【0081】
マスクROMの読出しのために例えば100MHzのクロックMclkが用いられ、データレジスタのデータをROMブロック50からリーダーブロック60に無線送信するために、例えば1GHzのクロックDclkが用いられる。
【0082】
これらのクロックは、必要なときだけ発振出力させ、不必要なときは停止して、無駄な電力消費を避ける。クロックの発振を開始した直後の数クロックは、振幅が小さかったりジッタが大きい場合があるので、これを使わないようにするための回路Mask及びMaskを用いる。具体的には、カウンターでクロックの数を数えて、最初の2つのクロックは使わず、3つ目以降のクロックを利用するようにする。
【0083】
図7(a)は、電力整流器Prxの一例としての全波整流器の回路構成図(例えば、非特許文献10参照)である。また、図7(b)は、電力センサの構成図であり、リーダーブロックからROMブロックへの電力の無線送電が開始したか停止したかを検出する。ROMブロックが受信した電力送信波は、図7(a)に示した全波整流器を用いて、交流から直流に変換される。
【0084】
図7(b)に示した電力センサにおいては、電力整流器Prxの整流回路と出力負荷容量をそれぞれ小さくしたレプリカ回路Prxs(w=1/40)の出力Vと、VDDの1/3の電位Vを比較器で比較して、無線送電が開始されたか停止されたかをROMブロックが検出する。
【0085】
即ち、図8に各出力の時間変化を示したように、リーダーブロックからROMブロックへの無線送電を停止すると、Vが下降してVDDの1/3の電位VC よりも低くなり、比較器の出力VSENがローに変化して、送電が停止されたことをROMブロックが検出する。一方、リーダーブロックからROMブロックへの無線送電を開始すると、Vが上昇してVDDの1/3の電位Vよりも高くなり、VSENがハイに変化して、送電が再開されたことをROMブロックが検出する。この場合、比較器がノイズで誤動作しないように、比較しきい値にヒステリシス特性を持たせたヒステリシス比較器を用いることが望ましい。
【0086】
図9は、4チャネル全波整流の説明図である。リーダーブロック61からROMブロック50への電力送電に複数の通信チャネルを用い、各チャネルの位相を互いにずらすことで、受信して整流したROMブロック50の電源電圧VDDの変動(リップル)を小さくする。
【0087】
そこで、図9に示すように、互いに位相を45°ずらした4つの交流を4つの通信チャネルを用いて送電すれば、各チャネルを通して得られた電源電圧にはそれぞれ大きな電源変動が残るが、4つの給電チャネルの出力を足し合わせれば、各リップルが互いの変動を埋めあう結果、リップル値を非常に小さくすることができる。
【0088】
図10は、給電試験のために、コイルなどの寸法を1/3に小さくしたチップを実際に試作し、通信距離も1/3に設定し、4つの電力チャネルを使って無線給電した結果の説明図である。ここでは、5mm角のチップに設けた電力用コイルの一辺を2mmとして、リーダーブロックとROMブロックの間隔を0.2mmに設定して試験を行った。その結果、マスクROMの100MHz動作に必要な電力を無線給電できたと同時に、直流に変換された電源電圧の最大リップル電圧V=33.6mVとなり、VDDの2%以下に小さくできたことを実験で検証することができた。
【0089】
図11(a)は、図6に示したクランプ回路の一例を示す回路図であり、ダイオードのの順方向電圧降下を0.6Vとすると、2つのダイオードを直列接続することにより、1.2Vのクランプ回路を構成できる。即ち、電源電圧VDDが1.2Vになると、ダイオードが順方向に電流を流して、VDDの上昇を抑える。なお、このダイオードは、ゲートとドレインを接続したMOSFETに置き換えても良い。
【0090】
図11(b)は、クランプ回路が作動し始めたことを検出する回路の一例である。過剰電力がクランプ回路でGNDに捨てられると、VがVDD/3よりも高くなり、VSENがハイになる。供給電力が過剰になると、クランプ回路で捨てられる電力に伴って熱が発生する。この熱の発生を防止するために、供給電力が過剰であることをリーダーブロック側に無線通信で知らせ、リーダーブロックの送信電力を低減するフィードバック制御を行う。
【実施例2】
【0091】
次に、図12を参照して本発明の実施例2の密封型半導体記録装置を説明するが、コイル配置が異なるだけで、基本的構成は上記の実施例1と同様であるので、ここでは、コイル配置のみを説明する。
【0092】
図12は、本発明の実施例2のROMブロック及びリーダーブロックの概念的平面図である。図12(a)はROMブロックの概念的平面図であり、ここでは、15mm×15mmのサイズのROMブロック70に一辺が7mmの電力受給用コイル71〜71を4個配置するとともに、一辺が6mmのデータ通信用コイル72〜72を4個、電力受給用コイル71〜71の内側に同心状に配置した。4つのデータ通信用コイル72〜72のうち2個は送信用で他の2個は受信用である。
【0093】
図12(b)はリーダーブロックの概念的平面図であり、ここでは、15mm×15mmのサイズのリーダーブロック81に一辺が7mmの電力供給用コイル82〜82を4個配置するとともに、一辺が6mmのデータ通信用コイル83〜83を4個、電力供給用コイル82〜82の内側に同心状に配置した。4つのデータ通信用コイル83〜83のうち2個は送信用で他の2個は受信用である。
【0094】
この場合、例えば、図における左斜め上のデータ通信用コイル72(一方は反転して対向するので、右斜め上のデータ通信用コイル83)と右斜め下のデータ通信用コイル72(同じく、左斜め下のデータ通信用コイル83)をリーダーからストーンへの通信用のデータ通信とタイミング通信に割り当て右斜め上のデータ通信用コイル72(同じく、左斜め上のデータ通信用コイル83)と左斜め下のデータ通信用コイル72(同じく、右斜め下のデータ通信用コイル83)をストーンからリーダーへの通信用のデータ通信とタイミング通信に割り当てることが望ましい。
【0095】
この時、リーダーからストーンへの通信とストーンからリーダーへの通信を時分割にすることによって、同時に通信している一対のデータ用とタイミング用のデータ通信用コイルが水平隣接ではなく、斜めに1.4倍程度離れることになるので、データ通信用コイル間の干渉をより小さくすることができる。
【0096】
本発明の実施例2においても、電力供給とデータ通信とは時間分割で行っているので、電磁波同士が干渉することがなく、したがって、データ通信用コイルを電力用コイルの内側に配置することが可能になる。
【0097】
それによって、データ通信用コイルのサイズを大きくすることができるので、リーダーとデジタルロゼッタストーンの間隔を広くすることができ、例えば、3mmの間隔としても読み出しは可能になる。
【符号の説明】
【0098】
10,40 デジタルロゼッタストーン
11,41 ウェーハ
12 保護膜
20,50,70 ROMブロック
21,51,51〜51,71〜71 電力受給用コイル
22,52,52〜52,72〜72 データ通信用コイル
22 受信用コイル
22 送信用コイル
23,53〜53 電力整流器
24 受信用増幅器
24 送信用増幅器
25 キャパシタ
26 電力センサ
27 パワー・オン・リセット回路
28,28 レジスタ
29 マスクROM
30,60 リーダー
31,61,81 リーダーブロック
32,62,62〜62,82〜82 電力供給用コイル
33,63,63〜63,83〜83 データ通信用コイル
33 送信用コイル
33 受信用コイル
34 電力用増幅器
35 送信用増幅器
35 受信用増幅器
42 SiN保護膜
43 SiN保護膜
44 SiO


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1枚の半導体基板に最大辺が20mm以下のサイズの複数の読出専用メモリブロックを互いに電源配線を共有しない状態で設け、
前記各読出専用メモリブロックは電力受給用コイルとデータ通信用コイルを備えるとともに、
前記各読出専用メモリブロックに書き込まれたデータが互いに異なっている密封型半導体記録媒体。
【請求項2】
前記各読出専用メモリブロックは、電力の受給とデータ通信とを時間分割して行う時分割手段を備えている請求項1に記載の密封型半導体記録媒体。
【請求項3】
前記各読出専用メモリブロックは、前記電力受給用コイルで受給した交流電力を平滑化する平滑化手段を備えている請求項1または請求項2に記載の密封型半導体記録媒体。
【請求項4】
前記平滑化手段が、前記電力受給用コイルで受給した交流電力の位相を互いにずらして平滑化する機構を備えている請求項3に記載の密封型半導体記録媒体。
【請求項5】
前記読出専用メモリブロックが、前記電力受給用コイルに供給された電力が予め設定した値より過剰になったことを前記データ通信用コイルに伝達するフィードバック制御機構を備えている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の密封型半導体記録媒体。
【請求項6】
前記半導体基板が、シリコン窒化膜で密封されている請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の密封型半導体記録媒体。
【請求項7】
前記各読出専用メモリブロックが同じ配列で配置されるとともに、前記各読出専用メモリブロックに書き込まれたデータが互いに異なる半導体基板を、各各読出専用メモリブロックは投影的に重なるように複数枚積層した請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の密封型半導体記録媒体。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の密封型半導体記録媒体と、
前記密封型半導体記録媒体に電力を供給する電力供給用コイルとデータ通信用コイルとを備えたリーダーブロックを複数設けた半導体基板からなるリーダーとを有し、
前記各リーダーブロックに設けた電力供給用コイルとデータ通信用コイルと前記各読出専用メモリブロックに設けた電力受給用コイルとデータ通信用コイルとがそれぞれ互いに投影的に重なるように対向させた密封型半導体記録装置。
【請求項9】
前記各リーダーブロックに設けた電力供給用コイルとデータ通信用コイルと前記各読出専用メモリブロックに設けた電力受給用コイルとデータ通信用コイルとの対向間隔が3mm以下である請求項8に記載の密封型半導体記録装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−287113(P2010−287113A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141403(P2009−141403)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】