説明

密封電気化学セルのための筐体

【課題】セル容器の開放端を密封するための集電体アセンブリを有する電気化学セルの提供。
【解決手段】集電体アセンブリは、それぞれ中央に開口を持つ保持装置と周辺フランジとを有する接触ばねとを含む。保持装置と接触ばねのフランジとの間に配置された圧力解放通気部材は、正常な条件下では保持装置と接触ばねにある開口を密封し、内部圧力が規定の限度を超えたとき破れてセル内の圧力を解放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気化学セルを密封するための容器と集電体アセンブリとを含む筐体を有する電気化学セルに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の電源として使用される電池は大量のエネルギ―を蓄えることができる。電池は1個あるいは複数の電気化学セルを含むことができる。電気化学セル内部の圧力は、内部温度の変化、放電の間の内部電極体積の増加、充電可能電池の場合の充電および放電の間の隙間の発生により、増加する。このような電気化学セルは、一般に内部圧力の形成を制限するため、セルからガスを解放あるいは放出するための機構を含む。
【0003】
電気化学セルは開放端のある容器と、電気化学セルを閉じるために容器の開放端に配置した集電体アセンブリとを有することができる。この集電体アセンブリは過剰圧力を解放する安全圧力解放通気機構を含むことができる。
【0004】
電気化学セルにはいろいろな集電体アセンブリと圧力解放通気設計が用いられている。たとえば、再び閉じることができる圧力解放弁を、ニッケル-カドミウムおよびニッケル-金属水素化物電池のような、充電式水性電解電池に見出すことができる。アルカリ亜鉛-二酸化マンガン電池のような一次(充電できない)水性セルは、内部圧力が規定の限度を超過したとき破れるような弱い断面を含む比較的大きい表面積のプラスチックシールを持つ集電体アセンブリを用いている。リチウム金属およびリチウム挿入材料を含む電極を使ったセルのような、水性でない一次および充電式電気化学セルは、一般に蒸気の透過を最少にするための薄い壁のプラスチック部材と、内部圧力を非常に速く減少させることができる圧力解放弁を持つ集電体アセンブリを有する。
【0005】
従来の集電体アセンブリおよび圧力解放設計の例は次の文献に見られる。特許文献1(issued to Rods et al. October 16, 1990)、特許文献2(issued to Chancy, Jr. et al. May 14, 1991)、特許文献3(issued to Daio et al. October 20, 1992)、特許文献4(issued to Kaschmitter et al. May 11, 1997)、特許文献5(issued to Sato et al. October 14, 1997)、特許文献6(issued to Mayer et al, April 21, 1998)および特許文献7(issued to Kameishi et al. June 16, 1998)。これらの例はそれぞれ大きい集電体アセンブリ体積あるいは寸法的な制約があって、有効な内容物のセル内の体積が制限される、あるいは部品数が多いためにセルの値段が高くなりまた製造が難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,963,446号
【特許文献2】米国特許第5,015,542号
【特許文献3】米国特許第5,156,930号
【特許文献4】米国特許第5,609,972号
【特許文献5】米国特許第5,677,076号
【特許文献6】米国特許第5,741,606号
【特許文献7】米国特許第5,766,790号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、正電極と負電極および電極間のセパレータを備えた電極アセンブリ、電解質および筐体を有する電気化学セルに関する。この筐体は容器および集電体アセンブリを含む。集電体アセンブリは、電気化学セルの内部圧力が規定の解放圧力に達したとき、破裂することができる圧力解放通気部材を有する。この集電体アセンブリ内の部品の数と配置は小さい体積しか要せず、したがって有効な内容物のために大きな体積を取ることができ、また経済的で信頼性の高いセルを製造することができる。
【0008】
本発明の1つの実施例において、集電体アセンブリは保持装置と接触ばねを含み、それぞれが電気化学セル内部の圧力解放チャネルに沿った開口を規定する。集電体アセンブリはまた、保持装置と接触ばねとの間に配置されまた圧力解放チャネルを閉じるための圧力解放通気部材を含む。電気化学セル内の圧力が少なくとも規定の解放圧力の大きさのとき、圧力解放通気部材が破裂してセル内の物質を保持装置の開口を通して逃がす。
【0009】
本発明の他の実施例において、保持装置と接触ばねの周辺フランジが圧力解放通気部材と協力して圧力解放通気部材と保持装置との間の密封を形成する。この保持装置は、たとえば保持装置内のクリンプを経由して接触ばねと圧力解放通気部材に圧縮力を加えることができる。これに加えてこの接触ばねはさらに、圧力解放通気部材に加えられている圧縮力が減じても圧力解放通気部材と保持装置との間の密封を維持するために、接触ばねの周辺フランジ内に連続的な突起を含むことができる。さらに圧力解放通気部材は電気的に導電性の保持装置に熱溶着、超音波溶接、あるいは接着剤を用いて物理的に結合することができる。
【0010】
他の実施例において、集電体アセンブリは圧力解放通気部材と保持装置との間に密封手段を備える。
【0011】
この圧力解放通気部材は少なくとも導電性あるいは非導電性の組成から成る1つの層を含むことができる。圧力解放通気部材には金属、高分子化合物あるいはこれらの複合材料を含むことができる。圧力解放通気部材の構造および組成は電解質の蒸気透過率に基づいて、望ましくセルの重量減少を低くできる。圧力解放通気部材の組成および厚さはまた圧力解放通気部材が破裂するように規定したあるいは望ましい圧力に基づくことができる。ある実施例では、圧力解放通気部材が、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン/アルミニウム/ポリエチレン/低密度ポリエチレンの5層の積層品で、厚さが約0.0254 mm(0.001 インチ)から約0.254 mm(0.010 インチ) であり、解放圧力が室温(20℃ から25℃)において約14.1 kg/cm2 (200 lbs/in2) から約42.3 kg/cm2 (600 lbs/in2) である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例による電気化学セルの断面図である。
【図2】従来技術による電気化学セルの上部と集電体アセンブリの断面図である。
【図3】本発明の実施例による電気化学セルの上部と集電体アセンブリの断面図である。
【図4】本発明のある実施例による電気化学セルの上部と集電体アセンブリの断面図である。
【図5】蒸気透過率試験に使用する試験膜の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明の実施例による円筒形の電気化学セル100を示す。本発明の電気化学セル100は容器104と集電体アセンブリ106とを含む筐体102を有する。容器104は閉じた底部と、集電体アセンブリ106によって閉じられている開いた上端を有する。容器104はまた容器104の上部と底部を分離するビード107を有する。容器104の底部の中に配置されているのは、負電極あるいはアノード110、正電極あるいはカソード112、およびアノード110とカソード112との間に配置されたセパレータ114を含む電極アセンブリ108である。図1に示す実施例において、アノード110、カソード112およびセパレータ114はそれぞれ薄いシートで一緒に螺旋状に巻かれており、これはまた「ジェリーロール」設計として知られている。電気化学セル100は円筒形であるが、技術に詳しい専門家には本発明の別の実施例が他の形状のセルおよび電極を含むことが明らかである。容器104はさまざまな幾何学的形状、たとえば角柱および長方体、の1つでもよい。
【0014】
電気化学セルがリチウム電気化学セルの場合、アノード110はリチウム金属を含み、これはシートあるいは箔の形でもよい。リチウムセル用のカソード112は1つあるいは複数の、通常は粒子状の活性物質を含むことができる。どのような適切な活性カソード物質を使ってもよく、たとえばFeS2、MnO2、CFx および(CF)nを含むことができる。適当なセパレータ材料は電気的に非電導性であるが、電解質へイオン透過性である。リチウム電気化学セルに使用される電解質は一般的に有機溶媒を含む。アノード110、カソード112、セパレータ114およびリチウムならびにいろいろなその他の電気化学セルの電解質に関するさらなる詳細を以下に説明する。
【0015】
容器104は底が閉じている金属缶でもよいが、最初両端が開いている金属管もまた使用できる。セル容器104は、容器104の外側を腐食から保護しあるいは所望の外観を提供するために、任意で少なくとも外側をたとえばニッケルで鍍金した鋼鉄でもよい。また鋼鉄のタイプは容器104が形成される方法に部分的に依存する。たとえば引き抜き加工を使って作られる容器は、拡散焼きなましをした、ASTM 9から11の結晶粒度で、僅かに細長いグレイン形状に等軸化された、低炭素のSAE 1006あるいは同等のアルミキルド鉄鋼で作ることができる。その他の材料も特別な要求に合わせて使用できる。たとえば、容器104がカソード112に電気的接触をしている、セルの開放電圧が約3ボルトあるいはそれより大きい、あるいはセルが充電可能であるような電気化学セル100に対して、鋼鉄よりももっと耐腐食性のある材料が望まれる。このような材料にはステンレス鋼、ニッケル鍍金をしたステンレス鋼、ニッケルクラッドステンレス鋼、アルミニウムおよびこれらの合金を含むが、これに限定されない。
【0016】
筐体102の上部に配置された集電体アセンブリ106は、正の接触端子116、開口を規定する保持装置118、圧力解放通気部材120、開口を規定する接触ばね122、およびこれらの部品と容器104との間に配置されたガスケット124を含むことができる。集電体アセンブリ106は随意的に、開口を規定し、保持装置118と正の接触端子116との間に配置された正温度係数素子(PTC)126を含むことができる。容器104の上に突き出た正の接触端子116は、内側に折り曲げられた容器104の縁128とガスケット124によってその場所に保持される。
【0017】
電極アセンブリ108のカソード112は接触ばね122によって集電体アセンブリ106に電気的に接続されている。接触ばね122は、電極アセンブリ108の頂上に配置された集電体136の上端に対して偏らせられている少なくとも1つのタブ134を有し得る。集電体136は電気的に伝導性の回路基板であり、例えば金属回路基板、そこにカソード材料が配置され、カソード材料およびセパレータ114を超えて拡大する。集電体136は、セル内で安定する限り、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金およびその他の合金、から成り得る。集電体136は薄いシート、箔、スクリーン、エキスパンデッドメタルの形状であり得る。接触ばね122は、例えば、形状記憶合金を含むばね様の特性を有する1つ以上の伝導性材料からなり得る。組立中、集電アセンブリ106が容器104内に配置される際、集電体136は、力に対して弾性のある組成を有する、接触ばね122のタブ134を押しつける。この助力により、タブ134および集電体136の間の接触が確保される。接触ばね122は集電体136との接触のため1つ以上のタブ134を有することができる。いくつかの実施例において、タブ134と集電体との電気的接触は、集電体136に対してタブ134により加えられるばね様の力により維持される。他の実施例において、タブ134は集電体136に溶接することができる。また別の実施例ではタブ134は集電体136に、タブ134と集電体136の両方に溶接されている狭い金属片あるいは線のような電気的に導電性の線で接続されている。溶接接続は時によって、特に極端な取扱い、保管および使用条件のもとではさらに信頼性が高いが、圧力接続は追加の組立作業や設備を必要としない。
【0018】
アノード110は電気的に容器104の内部表面に金属アノードリード線(示されていない)により接続されており、電極アセンブリ108は、それ以外はセパレータ114の外包みと、集電体136が容器104と接触するのを防止するため電極アセンブリ108の上部周辺に配置された絶縁体138とによって、容器104から物理的に隔離されている。カソード112の底部の縁と容器104の底部との接触は、内側に畳まれたセパレータ114の延長部分と容器104の底部に配置された電気的絶縁性の円板(示されていない)とによって防止されている。
【0019】
電気化学セル100の正常な動作の間、電気装置(示されていない)は、容器104の一方の端にある集電体アセンブリ106の正の接触端子116と、閉じた端にある負の接触端子とに接触することができる。導電経路がこのようにして負の端子あるいは容器104から、アノードリード線、電極アセンブリ108,集電体136を経由して集電体アセンブリ106まで確立される。集電体アセンブリ106を通る電流経路は、接触ばね122のタブ134を通り、圧力解放通気部材120の周りの保持装置118を横切り、正の接触端子116に至る。保持装置118は、金属、バイメタルおよび3層積層材料のような1つあるいは複数の材料で作ることができる。たとえば保持装置118はニッケル鍍金鋼あるいはステンレス鋼、あるいは鋼板、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、ニッケルおよびこれらの合金を組み合わせたクラッド金属で作ることができる。
【0020】
正の接触端子116は周囲環境中の水による腐食に対する良好な耐性と良好な電気伝導性を有する必要がある。正の接触端子116はニッケル鍍金した冷間圧延鋼板あるいは接触端子を成形したあとニッケル鍍金した鋼板のような導電性材料で作ることができる。使用材料はまた正の接触端子116の形状の複雑さにも依存する。 正の接触端子116の形状が複雑な場合、金属成形が容易で所望の耐食性を提供するために、たとえばグレインサイズがASTM 8-9のタイプ304ソフトアニールステンレス鋼を使うことができる。成形したあと正の接触端子116はまたいろいろな金属、たとえばニッケル、で鍍金することができる。
【0021】
ガスケット124は容器104の上部に対する集電体アセンブリ106の密封を提供する。ガスケット124は、ビード107の下で容器104の下部から集電体136を物理的に隔離している絶縁体138から、容器104の上部の縁128まで、延ばすことができる。容器104の上部の輪郭は集電体アセンブリ106に対して取付面140を提供するビード107を含む。ガスケット124は集電体アセンブリ106の導電性部品を容器104の上部から物理的に隔離し、また腐食とこれらの部品の間に電解質が漏れるのを防止するため集電体アセンブリ106の部品の周辺の縁を密封する。ガスケット124は、集電体アセンブリ106を容器104に挿入し容器104の上端128とガスケット124を折り曲げる際に、ガスケット124を圧縮してガスケット124と容器104との間ならびにガスケット124と集電体アセンブリ106の他の部品の界面との間に密封が作れるような大きさである。
【0022】
ガスケット124は、セルへの水の侵入と電気化学セル100からの電解質の損失を最少にするため、圧縮密封を形成でき、また低い蒸気透過率(VTR)を有するような組成の材料で作ることができる。ガスケット124は高分子化合物組成、たとえば熱可塑性プラスチックあるいは熱硬化性高分子化合物で作ることができ、その組成はアノード110、カソード112および電気化学セル100に使用される電解質に一部依存する。リチウムあるいはリチウムイオンセルのような非水性セル用のガスケット124に使用できる材料の例は、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、四フッ化物-パーフルオロアルキルビニールエーテル共重合体、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、エチレンテトラフルオロエチレン、ポリフタルアミドおよびこれらの混合物を含むがこれに限定されない。使用できる適当なポリプロピレンの1つはBasell Polyolephins, Wilmington, Delaware, USAのPRO-FAX (登録商標) 6524である。適当なポリフェニレンスルフィドの1つはBoedeker Plastics, Inc. Shiner, Texas, USAの TECHTRON(登録商標) PPS である。高分子化合物はまた主剤に加えて無機充填剤および有機化合物を含むことができる。
【0023】
電気化学セル100の圧力解放チャネル142は保持装置118の開口と接触ばね122の開口によって規定される。電気化学セル100と圧力解放チャネル142の閉鎖は保持装置118と接触ばね122の開口を横切って配置された圧力解放通気部材120によって完成される。密封は圧力解放通気部材120の周辺部と少なくとも保持装置118と接触ばね122のいずれかとの間で形成される。この密封は界面における気密接触の結果であり、これはいくつかの実施例において圧力解放通気部材120の周辺部の圧縮により強化されている。随意的に接着剤あるいはシーリング剤を以下に説明するように界面に適用することができる。少なくとも保持装置118か接触ばね122のいずれかの周辺部はまた、容器104およびガスケット124の上縁が折り曲げられたとき、ガスケット124および集電体アセンブリ106のその他の部品の周辺部に加えられる軸力の結果として、圧力解放通気部材120の周辺部を密封する界面に対して偏らせるのに役立つ。保持装置118および接触ばね122の圧力解放通気部材を偏らせる特性は適切な材料と、接触ばね122およびそのための保持装置118の周辺フランジに沿った幾何学的形状とを用いて達成できる。
【0024】
電気化学セル100の通常の動作の間、化学反応によってセル内にガスが発生する。電気化学セル100内に内部圧力が形成されるとき、圧力解放通気部材120によってその内容は基本的に電気化学セル100内に留まる。内部圧力が形成されるにつれ圧力解放通気部材120は変形するかもしれない。しかし前記のように容器104が集電体アセンブリ106に及ぼす圧縮力が圧力解放通気部材120をその場所に留まらせ、ガスおよびセルの内容物が保持装置118の開口を通じて逃げることを防止する。電気化学セル100内の集電体アセンブリ106の圧縮は、セル圧力が規定の解放圧力より小さいとき、圧力解放通気部材120が内側にクリープして保持装置118の開口と接触ばね122の開口との間の圧力解放チャネル142に開口を形成することを少なくとも防止することができる。
【0025】
しかし電気化学セル100内の圧力が少なくとも規定の解放圧力の大きさのとき、圧力により圧力解放通気部材120が破裂してガスあるいは液体またはその両方の形態のセル内の物質を保持装置118の開口を通して逃がす。セル内の物質は正の接触端子116内にある1つあるいは複数の通気孔130を通って逃げることができる。規定の解放圧力は電気化学セル100の化学物質のタイプおよび完全性によって、安全および環境要件の観点から変化し得る。たとえば、AAサイズあるいはAAAサイズのリチウム電池において、規定解放圧力、つまり圧力解放通気部材120が開口を、たとえば裂け目によって、作る圧力は室温で約10.5 kg/cm2 (150 lbs/in2) から約 42.3 kg/cm2 (600 lbs/in2) の範囲にあり、いくつかの実施例においては約14.1 kg/cm2 (200 lbs/in2) から約28.1 kg/cm2 (400 lbs/in2)である。圧力解放通気部材が破裂する圧力は、たとえば容器に開けた孔を通してセルに圧力を加えることにより規定できる。
【0026】
前記のように電気化学セル100は随意的に開口を規定し、また保持装置118と正の接触端子116との間に配置されたPTC素子126を含むことができる。 電気化学セル100の通常の動作の間、電流はPTC素子126を通って流れる。電気化学セル100の温度が異常に高いレベルに達した場合、PTC素子126の電気抵抗が増加し、電流を減少させる。このPTC素子126はセルが外部の短絡、異常充電および強制大放電のような電気の不正使用によって起こる連続的内部加熱および圧力形成を減速あるいは防止する。しかし内部圧力が継続して規定の解放圧力を形成した場合、この圧力により圧力解放通気部材120が破裂して、内部圧力が解放される。
【0027】
保持装置118と接触ばね122との間に配置された圧力解放通気部材120は、少なくとも金属、高分子化合物、あるいはこれらの複合材料の組成の1層を含む。圧力解放通気部材120が異なる組成の2層あるいはそれより多い層を含むこともできる。たとえば1層目と異なる組成を持つ2層目を、圧力解放通気部材120を保持装置118あるいは接触ばね122に結合する目的で使用することができる。別の例において、1層目と異なる組成を持つ2層目と3層目を、圧力解放通気部材120を保持装置118と接触ばね122の両方に結合するために使用することができる。また2つあるいはそれより多い組成を持つ複数の層を動作特性、たとえば圧力解放通気部材120の強度および柔軟性、を調整するのに使用することができる。
【0028】
圧力開放弁部材120への使用に適した組成は、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼、およびこれらの合金などの金属、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エチレンアクリル酸、エチレンメタアクリル酸、ポリエチレンメタアクリル酸およびこれらの混合物のような高分子化合物材料を含むが、これに限定されない。圧力開放弁部材120に適した組成には、また金属で補強した高分子化合物ならびに金属あるいは高分子化合物あるいはその両方の単層あるいは多層の積層を含むことができる。たとえば単層には、本質的に水、二酸化炭素および電解質を透過させない金属、あるいは蒸気の透過を防ぐSiOxあるいはAl2Oxのような酸化物の層で被覆した、メタライズしていない高分子化合物の薄膜のような材料が使用可能である。圧力解放通気部材120はさらにたとえばポリウレタンを含む接着層およびたとえば低密度ポリオレフィンを含む熱封止可能な層を含むことができる。
【0029】
その代わりに、集電体アセンブリ内の密封を強化するために、接着剤あるいはその他の種類のシーリング剤を圧力解放通気部材、保持装置あるいはその両方の部分に適用することができる。
【0030】
組成に関係なく圧力解放通気部材120は、広範囲の周囲温度においてセル100の重量減少率を低くするために、セル100に含まれる電解質に対して化学的耐性があり、また低い蒸気透過率(VTR)を持つ必要がある。たとえば圧力解放通気部材120が蒸気透過に関して不浸透性の金属の場合、圧力解放通気部材120の厚み方向のVTRは本質的にゼロである。しかし圧力解放通気部材120は少なくとも1層の蒸気透過性の材料、たとえば高分子化合物材料、を前記のように含むことができ、これはたとえば圧力解放通気部材120と少なくとも保持装置118か接触ばね122のいずれかとの間の密封を達成するための接着剤あるいはゴム弾性層として機能できる。
【0031】
本発明の実施例による圧力解放通気部材120の層の75℃で測定したVTRは、約11.81 g・mm/(日mm2) {3000 g・mil /(日in2)}より小さく、いくつかの実施例では約0.1969 g mm/(日mm2) {50 g・mil/(日in2)}から約11.81 g・mm/(日mm2) {3000 g・mil /(日in2)}までの範囲にあり、別の実施例においては約0.3543 g・mm/(日mm2) {90 g mil /(日in2)}から約9.84 g・mm/(日 mm2) {2500 g・mil /(日in2)}まで、またさらに別の実施例では約0.3543 g mm/(日mm2) {90 g mil/(日in2)}から約 5.9g・mm/(日mm2) {l500 g・mil/ (日in2)}までである。VTRは電気化学セル100に含まれている電解質の組成によって変化し、さらにVTRが所望の限度内にあるように選択可能な圧力解放通気部材120の蒸気透過層の組成によっても変化する。1層以上の材料を有する圧力解放通気部材とVTRを計算するための試験手順の詳細を以下に説明する。
【0032】
規定の解放圧力、あるいは圧力解放通気部材120が破裂することを意図した圧力、は、その物理特性(たとえば強度)、その物理的寸法(たとえば厚さ)および保持装置118により規定される開口面積およびPTC素子126により規定される開口のいずれか小さい方、の関数である。保持装置118およびPTC素子126によって露出される圧力解放通気部材120の面積が大きいほど、電気化学セル100の内部ガスが及ぼす全体的な圧力が大きくなるため、規定の解放圧力は低くなる。
【0033】
圧力解放通気部材120の厚さは約0.254 mm (0.010 インチ)より薄くでき、いくつかの実施例において約0.0254 mm (0.001 インチ)から約0.127 mm (0.005 インチ)の範囲にあり、別の実施例におけるこの厚さは約0.0254 mm (0.001 インチ)から約0.05 mm (0.002 インチ)の範囲である。
圧力解放通気部材120の組成および厚さは技術に詳しい専門家が蒸気透過率(VTR)および規定した解放圧力要件を考慮して決定できる。
【0034】
図2は従来技術による電気化学セル200の上部の断面図である。この電気化学セル200は、容器204の上部および底部を分離するビード207と集電体アセンブリ206によって閉じられている解放端とを有する容器204を含む筐体202を含む。集電体アセンブリ206は1個あるいは複数の通気孔230を有する正の接触端子216、ガスケット224,PTC素子226,セルカバー244、ブッシング246,通気球248および、容器204の底部にある電極アセンブリ(示されていない)から延びている集電体236と物理的接触をしている接触ばね222を含む。集電体236はその他にセパレータ238によって容器204から物理的に隔離されている。セルカバー244は、電気化学セル200の内部で正の接触端子216から下の方に突き出ている通気井戸250を有する。この通気井戸250は、そこに形成され、通気球248および通気ブッシング246により密封されている通気開口252有し、通気ブッシング246が通気球248と通気井戸250の縦方向の壁との間に押しつけられるように通気球248および通気ブッシング246が配置される。電気化学セル200の内部圧力が規定のレベルを超過すると、通気球248が、またある場合にはブッシング246と通気球248の両方が通気開口252から押し離され、少なくとも通気井戸250の一部から圧力の掛かったガスを電気化学セル200の通気開口252および通気孔230を通って解放する。
【0035】
図1に示す本発明の実施例を参照すると、電気化学セル100の容器104の上部あるいは肩の部分の縦の高さh1は、図2における電気化学セル200の容器204の上部の縦の高さh2よりも小さい。容器104の外側で容器104の上部からビード107の座面140まで測った肩の高さh1(図1)は、容器204の外側で容器204の上部からビード207の座面240まで測った肩の高さh2(図2)より小さい。図1に示す集電体アセンブリ106は、図2に示す従来技術による集電体アセンブリ206よりも縦の高さ、あるいは肩の高さが小さいので、電気化学セル100の容器104の底部におけるより多くの体積に有効電極材料を入れることができる。圧力解放通気部材120(図1)は本質的に平たいので、通気井戸250(図2)を有するセルカバー244よりも縦の空間が少なくて済む。その結果、従来のAAサイズのリチウム/FeS2電気化学セル200の上部は肩の高さh2が約3.175 mm(0.125インチ)であるが、本発明の実施例におけるAAサイズのリチウム/FeS2電気化学セル100の上部は肩の高さh1が約2.667 mm(0.105インチ)あるいはそれより小さい。さらに集電体アセンブリ106(図1)は従来技術による集電体アセンブリ206(図2)よりも部品数が少なく、これによって組立、製造において容易さと柔軟性が大きくなり、コストを下げることができる。
【0036】
図3は本発明の別の実施例による電気化学セル300の上部と集電体アセンブリ306の断面図である。この電気化学セル300は、容器304の上部および底部の間にあるビード307と集電体アセンブリ306によって閉じられている開放端とを有する容器304を含む筐体302を含む。集電体アセンブリ306は、1個あるいは複数の通気孔330を有する正の接触端子316、ガスケット324、開口を規定する保持装置318、圧力解放通気部材320、および開口を規定しまた容器304の底部において電極アセンブリ(示されていない)から延びている集電体336と物理的接触をしているタブ334を有する接触ばね322を含む。保持装置318の開口および接触ばね322の開口は圧力解放チャネル342に沿った開口を規定し、また保持装置318と接触ばね322との間の圧力解放チャネル342を閉じるために、圧力解放通気部材320が保持装置318および接触ばね322の開口を横切って配置されている。
【0037】
随意的に集電体アセンブリ306は、開口を規定しまた保持装置318と正の接触端子316との間に配置されたPTC素子326を含むことができる。集電体アセンブリ306は図1の集電体アセンブリ106に似ているが、保持装置318はクリンプ319、たとえばC形状のクリンプ、を有し、これは接触ばね322と圧力解放通気部材320の両方に直接接触し、また圧力解放通気部材320の周辺部を保持装置318および接触ばね322に対して保持するために軸力を供給する。保持装置318のこのクリンプ319は、半径方向および軸方向の両方に大きな強度を有し、電気化学セル300の内部に内部圧力が形成されたとき、圧力解放通気部材320を実質上その場所に保持するために、半径方向および軸方向の大きな圧縮密封力に耐えることができる。圧力が形成されると圧力解放通気部材320は変形するあるいは膨らむかもしれないが、セル内部圧力が規定した解放圧力より小さいとき、圧縮力が保持装置318と圧力解放通気部材320との間の密封を維持することができる。
【0038】
さらに接触ばね322は、圧力解放通気部材320と保持装置318の周辺部間の密封を向上することができる突起部322を有する周辺フランジを含むことができる。接触ばね322の周辺フランジは連続的な環状のフランジで、突起部332はばね322の中央開口の周辺を完全に囲む連続的な突起であってよい。その代わりに、突起部322は不連続で、複数の別個の突起部から成ってもよい。突起部332は、保持装置318のクリンプ319が跳ね返りと応力緩和を受けて接触ばね322から離れる方向に動くとき、圧力解放通気部材320の周辺部に対して圧縮力を維持するのに役立つ形状を有する。図3の実施例に示す突起部332は、下向きと内側に曲げられた、接触ばね322の周辺フランジの縁である。しかし上向きに突出し、それとは異なる輪郭を有する突起部も可能である。
【0039】
接触ばね322はまたガスケット324に対して半径方向の圧縮力を及ぼすことができる拡張壁323を有することができる。これは接触ばね322とガスケット324との間に追加の内部密封を提供することにより、容器304の解放端密封の効果を向上することができる。これはガスケット324と集電体アセンブリ306との間の密封界面の長さを増加させ、また圧力解放通気部材320の周辺部を電解質から守る。これはまた接触ばね322の周辺の縁および保持装置318の下の縁を電解質から遮蔽し、腐食を防止することができる。
【0040】
その代わりに、図1のセル100のように保持装置を座金の形状にすることもでき、また接触ばねの周辺フランジは、折り曲げられて保持装置の周辺部に被さる部分を含むこともできる。
【0041】
図4は本発明の別の実施例による電気化学セル400を示す。この電気化学セル400は、容器404の上部および底部を分離するビード407と、集電体アセンブリ406によって閉じられている解放端とを有する容器404を含む筐体202を含む。集電体アセンブリ406は、1個あるいは複数の通気孔430を有する正の接触端子416、ガスケット424、開口を有する保持装置418、圧力解放通気部材420、および容器404の底部において電極アセンブリ(示されていない)から延びている集電体436と物理的接触をしているタブ434を有する接触ばね422を含む。随意的に集電体アセンブリ406は、保持装置418と正の接触端子416との間に配置されたPTC素子426を含むことができる。
【0042】
電気化学セル300(図3)の保持装置318のように、電気化学セル400(図4)の保持装置418はクリンプ419、たとえばC形状をしたクリンプ、を有し、これは圧力解放通気部材420と接触ばね422に接触している。保持装置418、接触ばね422、および圧力解放通気部材420は協力して集電体アセンブリ406内で電解質の密封を形成している。接触ばね422は下の方に突き出たV形状の環状の溝の形をした突起部432を持つ周辺フランジを有するが、突起部432は別の形状大きさや輪郭も可能である。接触ばね422の周辺フランジは連続的な(たとえば環状)フランジであってもよく、突起部432は接触ばね422の周辺フランジに沿った連続的な(たとえば環状突起)であってもよい。
【0043】
前記のように、電気化学セル400の規定解放圧力、これは圧力解放通気部材420が破裂する圧力である、は保持装置418の開口のサイズを変えることによって調節できる。所定の材料の種類と厚さに対して、保持装置418により規定される開口を大きくすることにより、圧力解放通気部材420が同じ厚さと組成を持つと仮定すると、より大きな外側への力が圧力解放通気部材420に加わるので、電気化学セルの解放圧力を小さくすることができる。たとえば保持装置418により規定される開口は保持装置318(図3)により規定される開口より小さく、したがって電気化学セル400の規定解放圧力は電気化学セル300(図3)の規定解放圧力よりも大きい。前記はまたPTC素子426の開口は少なくとも保持装置418により規定される開口と同じ大きさであることを仮定している。
【0044】
別の実施例において、電気化学セル400(図4)は、ガスケット424に追加して随意的な内部ガスケットを含むことができる集電体アセンブリ406を有することができる。この内部ガスケットは、圧力解放通気部材420と少なくとも保持装置418か接触ばね422のいずれかとの間に配置され、電解質密封を提供する。この内部ガスケットは、集電体アセンブリ406が容器404中に配置されるとき、圧力解放通気部材420の周囲の金属部品に対する密封の効果を増すことができる。この内部ガスケットは、ガスケット124(図1)に関して前記説明したいろいろな材料、たとえばゴム弾性材料、の1つから作ることができ、接着結合密封を提供するために接着剤で被覆した材料を使うことができる。この内部ガスケットはC形状の輪郭をし、保持装置418と接触ばね422および圧力解放通気部材420の両方との間に配置することができるが、この内部ガスケットはいろいろな形状を持つことができる。たとえばこの内部ガスケットは、保持装置418と圧力解放通気部材420の周辺部の上面との間、圧力解放通気部材420と接触ばね422の周辺部の上面との間、あるいはこれらの位置の両方に配置された実質的に平らな座金であってもよい。この内部ガスケットはまた、接触ばね422と保持装置418との間に電気的接触があるようにして、内部ガスケットの縦の壁を圧力解放通気部材420と接触ばね422の周辺部外側縁の周りに配置した、L形状で、直立したあるいは逆転した位置であってもよい。このようなL形状ならびにC形状の構成は圧力解放通気部材420の周辺部分から電解質を密封する。同様の内部ガスケットをそれぞれ図1および図3に示す電気化学セル100および300の代替の実施例ならびにその他の実施例に含むことができる。
【0045】
セル400において圧力解放通気部材420は第1の層420a、第2の層420bおよび第3の層420cを含む。たとえば第1の層420aと保持装置418との間に配置された第2の層420b、および第1の層420aと接触ばね422との間に配置された第3の層420cは、圧力解放通気部材420を保持装置418および接触ばね422に対して密封するための接着層あるいは密封可能な層として機能することができる。どの実施例においても圧力解放通気部材420は、保持装置418あるいは接触ばね422あるいはその両方にいろいろな方法によって、たとえば接着剤結合、スポット溶接結合、超音波溶接あるいはその他の溶接および技術に詳しい専門家に知られている取付方法によって、結合することができる。圧力解放通気部材420を、接着および熱密封可能材料が不要なように、機械的にその場所に保持することもまた可能である。第2の層420bおよび第3の層420cはまた組立の際の第1の層420aの擦傷あるいは破損を防止するための保護被膜として機能する。
【0046】
前記のように電気化学セル100(図1)に関して、圧力解放通気部材120(図1,3)および420(図4)は少なくとも金属、高分子化合物、およびこれらの複合材料を含む組成の1層を含むことができる。圧力解放通気部材420に対して使用できる適当な3層積層の1つは、Oshkosh, Wisconsin, USAのCurwoodからLIQUIFLEX(登録商標) Grade 05396 35C-501Cとして入手できる、PET/アルミニウム/EAA共重合体である。適当な5層積層の1つは、Columbus, Georgia, USAのLudlow Coated ProductsからBF-48として入手できるPET/PE/アルミニウム/PE/LLDPEであるが、この会社はPrinceton, New Jersey, USAのTyco International, Ltd.の完全子会社である。
【0047】
前記のように圧力解放通気部材120(図1)、320(図3)および420(図4)のどの透過性層のVTR範囲もASTM E96-80(材料の水蒸気透過に対する標準試験法)から適用された方法を使って決定することができる。圧力解放通気部材、たとえば圧力解放通気部材120、320、420、の透過性層の組成を持つ試験膜501(図5)を、セルで使用される電解質を8 ml だけ含む直径25 ml 高さ54 mmで15 ml ビン(たとえばWheaton Serum Bottle、直径25 mm x 高さ54 mm、Cat. No. 06-4061D)の上部に置く。通気膜501は、壁503,ハブ505および試験面507を有し、ビンに対して密封を提供する大きさである。壁503の外径は19.56 mmで、壁503の内径は14.33である。ハブ505の直径は3.23 mmで、試験面507の下の長さは1.91 mmである。試験面507の厚さは0.508 mmで、壁503とハブ505との間の環状面である試験面の面積は1.529 cm2である。真空グリースをビンの口に適用し、中央に15.88 mmの穴を有するシール(たとえばWheaton Aluminum Seal Cat. No. 060405-15)を試験膜の上に置き、試験膜501が試験中にビンに密封されているようにビンの上にしっかりと折り曲げる。密封したビンの重量を量り、ビンを75℃で保管し、規定の試験期間内で一定の間隔で重量を量る(たとえば6ヶ月に対して毎月、2週間に対して毎日など)。試験期間にわたる重量の変化を決定し、最初の実験的VTRを計算する。密封した空のビンについて前記と同じ試験を行い、同じ一定間隔と試験期間について重量の変化を決定し、2番目の実験的VTRを計算する。平均総重量損失を用いて最初と2番目のそれぞれの実験的VTRを計算する。最後に空のビンについて行った試験に対して計算した2番目の実験的VTRを、電解質を含むビンについて行った試験に対して計算した最初の実験的VTRから差し引き、試験膜のVTRを得る。
【0048】
本発明の実施例における電極アセンブリおよび電解質に使用できる材料は、図1,3,および4で前記説明した実施例のものを含むがこれに限定されず、以下に説明する。リチウム電気化学セルのアノードはリチウム金属を含み、しばしばシートあるいは箔の形状である。リチウムの組成は常に純度は高いものの、いろいろである。このリチウムは所望のセルの電気的性能を提供するために、アルミニウムのような他の金属との合金でもよい。リチウムイオンセル用のアノードは1つあるいは複数のリチウム挿間可能な材料を含む。挿間可能な物質とは、その格子構造の中にリチウムイオンを挿入したり引き出したりできる材料を意味する。適当な材料の例には、グラファイト、中間相炭素および非晶質炭素またはそのいずれかのような炭素;ニッケル、コバルトおよびマンガンのような遷移金属酸化物;たとえば鉄、モリブデン、銅およびチタンの硫化物を含む遷移金属硫化物;およびたとえば珪素および錫の酸化物を含む非晶質金属酸化物を含むがこれに限定されない。これらの材料は一般的に粒子状で、所望の形状に成形される。
【0049】
リチウムセル用のカソードは1つあるいは複数の、通常は粒子状の活性物質を含む。適切なカソード材料ならどれでも使用でき、たとえばFeS2、MnO2、CFx および(CF)n を含むことができる。リチウムイオンセル用のカソードは1つあるいは複数のリチウム挿間したあるいはリチウム挿間可能な材料を含み、通常は粒子状である。例にはバナジウムおよびタングステンのような金属酸化物;リチウム化した遷移金属酸化物、たとえばニッケル、コバルトおよびマンガン;リチウム化した硫化物、たとえば鉄、モリブデン、銅およびチタンの硫化物、およびリチウム化した炭素を含む。
【0050】
適当なセパレータ材料はイオン透過性で電気的に非導電性である。適当なセパレータの例には、ポリプロピレン、ポリエチレンおよび超高分子量ポリエチレンのような材料でできた微孔性の膜を含む。Li/FeS2セルに適当なセパレータ材料は、CELGARD(登録商標) 2400 微孔性ポリプロピレン膜としてCelgard Inc., Charlotte, North Carolina, USAから入手でき、またSetella F20DHI微孔性ポリエチレン膜としてExxon Mobil Chemical Company of Macedonia, New York, USA から入手できる。固体電解質あるいは高分子化合物電解質の層もまたセパレータとして使用できる。
【0051】
リチウムセルおよびリチウムイオンセル用の電解質は非水性の電解質で、水を混入物質としてごく微量にしか含まず、たとえば重量で約500 ppmより少ない。適当な非水性電解質は有機溶媒に溶けた1つあるいは複数の電解質塩を含む。アノードおよびカソードの活性材料および所望のセル性能に応じてどのような適当な塩も使用できる。例には臭化リチウム、過塩素酸リチウム、ヘクサフルオロリン酸リチウム、ヘクサフルオロリン酸カリウム、ヘクサフルオロアルソン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムおよびヨウ化リチウムを含む。適当な有機溶媒には下記の1つあるいは複数を含む:炭酸ジメチル;炭酸ジエチル;炭酸ジプロピル;炭酸メチルエチル;炭酸エチレン;炭酸プロピレン;1,2-ブチレンカーボネート;2,3-ブチレンカーボネート;メタフォルメート;ガンマブチロラクトン;スルホラン;アセトニトリル;3,5-ジメチルイソオキサゾール;n,n-ジメチルホルムアミド;およびエーテル。この塩と溶媒との組合せは所望の温度範囲にわたってセルの放電要件を満たすために、充分な電解質伝導度および電気的伝導度を提供する必要がある。エーテル溶媒を溶媒に使用すると、一般に粘性が小さく、良好な濡れ能力、良好な低温放電特性および高い放電率特性を提供する。適当なエーテル溶媒には、1,2-ジメトキシエタン(DME);1,2-ジエトキシエタン;ジ(メトキシエチル)エーテル;トリグライム;テトラグライムおよびジエチルエーテルのような非環状エーテル; 1,3-ジオキソラン(DIOX)、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランおよび3-メチル-2-オキサゾリジノンのような環状エーテル;およびこれらの混合物を含むがこれに限定されない。
【0052】
本発明による電気化学セルはリチウムおよびリチウムイオンセル以外の種類も可能である。例には、亜鉛/MnO2、亜鉛/NiOOH、ニッケル/カドミウムおよびニッケル/金属水素化物アルカリ電池のような水性電解質を用いた一次電池および二次電池を含む。これらの種類の電池は水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよびこれらの混合物のような溶質を用いたアルカリ性電解質を有することができる。
【0053】
電気化学セル100、300および400は適当なプロセスにより組立できる。たとえば図1の電気化学セル100は電極アセンブリ108および絶縁体138をセル容器104に挿入し、それから容器104の中に電解質を注入することにより作ることができる。それからガスケット124、接触ばね122、保持装置118、圧力解放通気部材120、および随意的にPTC素子126を容器104の開放端に取り付ける。容器104はビード107で支持され、一方ガスケット124および正の接触端子116を含む集電体アセンブリ106は下向きにビード107の座面140に対して押しつけられ、容器104の上端縁は内側に曲げられて容器104はガスケット124に対して圧縮されて、筐体の開放端の密封が完成する。電気化学セル100を密封するためにどのような適当な方法、たとえば折り曲げる、コレットにはめる、据え込みあるいは再絞りすることにより容器104を変形させることを使ってもよい。
【0054】
別のある実施例において、圧力解放通気部材120を、熱溶融、超音波溶接あるいは接着剤の適用のような、1つあるいは複数の方法によって保持装置118に結合することができる。前記のように圧力解放通気部材120は単層でも、あるいはその代わりに2層あるいはそれ以上の材料の積層であってもよい。この場合、圧力解放通気部材120を保持装置118に結合してサブアセンブリを形成し、それからそれをガスケット124および接触ばね122に続いて容器104に挿入することができる。PTC素子126および正の接触端子116をそれから容器104の開口端に取り付けて電気化学セル100の密封をする。その代わりに、圧力解放通気部材120を前記した方法の1つにより接触ばね122と保持装置118の両方に結合することもできる。
【0055】
電気化学セル300(図3)の実施例は、圧力解放通気部材320を保持装置318の上に置き、接触ばね322を圧力解放通気部材320の上に置き、それから保持装置318の縁をそれが接触ばね310に接触してサブアセンブリを形成するように曲げることにより形成された、折り曲げた保持装置318を含む。圧力解放通気部材320は随意的に保持装置318あるいは接触ばね322あるいは保持装置と接触ばねの両方に結合することができる。同様のサブアセンブリを電気化学セル400(図4)において使用するために形成することができる。接触ばね322および422が突起部332および432をそれぞれ含む所で、接触ばねがサブアセンブリを形成するために使用される前に、接触ばね322および422の周辺フランジが、V型の溝あるいは丸められた縁のような多くの可能な輪郭の1つを持つ、環状あるいは多角形のような多くの可能な形状の1つを形成するように、成形される。
【0056】
前記の発明は理解を明確にする目的で詳細を説明したが、添付の請求項の請求範囲内で、ある程度の変更や修正が実施できることは明らかである。たとえば、この明細書で主としてリチウムおよびリチウムイオンセルを説明したが、本発明はまた他のセルの種類にも適用できる。また、前記の実施例が放電時のカソードに接続されている正の接触端子に関連する圧力解放通気部材を説明したが、同じ解放機構を負のセル端子に用いることができる。したがって、本実施例は説明的であって、制限的ではないと考えるべきであり、本発明はここで与えた詳細に限定すべきでなく修正できるものであり、添付の請求項によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0057】
100 電気化学セル
102 筐体
104 容器
106 集電体アセンブリ
107 ビード
110 アノード
112 カソード
114 セパレータ
116 正の接触端子
124 ガスケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セルであって、筐体と、正電極、負電極および電極間に配置されたセパレータを備える電極アセンブリと、電解質とを備え、
前記筐体が、
電極アセンブリおよび電解質が配置されている、開放端を持つ容器と、
電極アセンブリと筐体の開放端との間に配置された集電体アセンブリと、
を備え、
前記集電体アセンブリが、
最初の開口を規定する保持装置と
2番目の開口を規定する周辺フランジを備えた接触ばねと、
前記最初と2番目の開口は圧力解放チャネルを規定するが、
保持装置と接触ばねとの間に配置された周辺部分を有し、圧力解放チャネルを閉じている圧力解放通気部材と
を備え、
前記圧力解放通気部材が少なくとも規定した解放圧力の大きさの内部セル圧力に反応して破れ、それによって物質を保持装置の最初の開口を通じて逃がすことができる、前記電気化学セル。
【請求項2】
圧力解放通気部材が金属、高分子化合物およびこれらの混合物の群から選択した組成の少なくとも最初の層を備える、請求項1に記載のセル。
【請求項3】
圧力解放通気部材が厚さ0.254 mmあるいはそれより薄い、請求項1に記載のセル。
【請求項4】
保持装置、接触ばねの周辺フランジ、圧力解放通気部材の周辺部分が協力して集電体アセンブリ内の電解質密封を形成する、請求項1に記載のセル。
【請求項5】
接触ばねの周辺フランジが連続した環形を形成する、請求項4に記載のセル。
【請求項6】
圧力解放通気部材が 11.81 g・mm(日mm2)より小さい電解質の蒸気透過率を有する最初の層を備える、請求項1に記載のセル。
【請求項7】
圧力解放通気部材が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、エチレンアクリル酸、エチレンメタアクリル酸、ポリエチレン、メタアクリル酸およびこれらの混合物を含む群から選択した組成から成る2番目の層を備える、請求項2に記載のセル。
【請求項8】
圧力解放通気部材が3番目の層を備え、最初の層が2番目の層と3番目の層との間に配置され、3番目の層がポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、エチレンアクリル酸、エチレンメタアクリル酸、ポリエチレンメタアクリル酸およびこれらの混合物を含む群から選択した組成から成る、請求項7に記載のセル。
【請求項9】
最初の層がアルミニウムから成る、請求項8に記載のセル。
【請求項10】
集電体アセンブリが容器に対して配置された最初のガスケットを備え、前記ガスケット、保持装置、接触ばねおよび圧力解放通気部材が一緒に圧縮されてそれにより保持装置と接触ばねとの間の密封を提供する、請求項1に記載のセル。
【請求項11】
集電体アセンブリが、保持装置と少なくとも接触ばねあるいは圧力解放通気部材のいずれかとの間に配置された2番目のガスケットを備える、請求項1に記載のセル。
【請求項12】
接触ばねの周辺フランジが最初の開口の周りの連続的なフランジを備え、前記連続的なフランジがその上に連続的な突起部を有する、請求項1に記載のセル。
【請求項13】
前記保持装置および圧力解放通気部材が一緒に結合されている、請求項1に記載のセル。
【請求項14】
前記接触ばねと圧力解放通気部材とが一緒に結合されている、請求項12に記載のセル。
【請求項15】
前記圧力解放通気部材が20℃から25℃の温度範囲で、10.5 kg/cm2 から 42.3 kg/cm2の圧力範囲で破れる、請求項1に記載のセル。
【請求項16】
前記圧力解放通気部材がアルミニウムを含む組成の層を備え、前記圧力解放通気部材が0.254 mmの最大厚さを有する、請求項1に記載のセル。
【請求項17】
圧力解放通気部材が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、エチレンアクリル酸、エチレンメタアクリル酸、ポリエチレンメタアクリル酸およびこれらの混合物を含む群から選択した組成から成る2番目および3番目の層を備える、請求項16に記載のセル。
【請求項18】
前記セルがさらに接触端子と、前記接触端子と保持装置との間に配置された正の温度係
数素子を備える、請求項17に記載のセル。
【請求項19】
正電極がFeS2を含み、負電極がリチウム金属を含む、請求項18に記載のセル。
【請求項20】
前記保持装置が実質的に円形の周辺の縁を有する、請求項19に記載のセル。
【請求項21】
筐体が円筒形である、請求項20に記載のセル。
【請求項22】
電気化学セルであって、筐体と、正電極、負電極および電極間に配置されたセパレータを備える電極アセンブリと、電解質とを備え、
前記筐体が、
電極アセンブリと電解質とが配置されている、開放端を持つ容器と、
電極アセンブリと筐体の開放端との間に配置された集電体アセンブリと
を備え、
前記集電体アセンブリが、
最初の開口を規定する保持装置と、
2番目の開口を規定する周辺フランジを備えた接触ばねと、
前記最初と2番目の開口は圧力解放チャネルを規定するが、
保持装置と接触ばねとの間に配置された周辺部分を持ち、最初の開口と2番目の開口との間の圧力解放チャネルを閉じている圧力解放通気部材と
を備え、
前記圧力解放部材が少なくとも規定の解放圧力の大きさの内部セル圧力に反応して破れ、それによって物質が保持装置の最初の開口を通って逃げることができ、
保持装置と接触ばねフランジが圧力解放部材と協力して圧力解放部材と保持装置との間の密封を形成する、前記電気化学セル。
【請求項23】
前記圧力解放通気部材の破裂圧力が20℃から25℃の温度範囲で、10.5 kg/cm2 から 42.3 kg/cm2の圧力範囲である、請求項22に記載のセル。
【請求項24】
圧力解放通気部材が金属、高分子化合物およびこれらの混合物の群から選択した組成の少なくとも最初の層を備える、請求項22に記載のセル。
【請求項25】
前記圧力解放通気部材の最初の層がアルミニウムから成る、請求項24に記載のセル。
【請求項26】
圧力解放通気部材が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、エチレンアクリル酸、エチレンメタアクリル酸、ポリエチレンメタアクリル酸およびこれらの混合物を含む群から選択した組成から成る2番目の層を備える、請求項25に記載のセル。
【請求項27】
圧力解放通気部材が3番目の層を備え、最初の層が2番目の層と3番目の層との間に配置され、3番目の層がポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、エチレンアクリル酸、エチレンメタアクリル酸、ポリエチレンメタアクリル酸およびこれらの混合物を含む群から選択した組成から成る、請求項26に記載のセル。
【請求項28】
前記2番目の層がポリエチレンから成り、3番目の層がポリエチレンから成る、請求項27に記載のセル。
【請求項29】
接触ばねの周辺フランジが最初の開口の周りの連続的なフランジから成り、前記連続的なフランジがその上に連続的な突起部を有する、請求項22に記載のセル。
【請求項30】
前記保持装置が圧力解放通気部材および接触ばねに圧縮力を加える折り曲げを有する、請求項22に記載のセル。
【請求項31】
前記保持装置が圧力解放通気部材の周辺部および接触ばねの周辺フランジに圧縮力を加える折り曲げを有する、請求項29に記載のセル。
【請求項32】
前記集電体アセンブリがさらに接触端子と、ガスケットと、前記接触端子と保持装置との間に配置された正の温度係数素子を備える、請求項31に記載のセル。
【請求項33】
前記保持装置と圧力解放通気部材とが一緒に結合されている、請求項32に記載のセル。
【請求項34】
正電極がFeS2を含み、負電極がリチウム金属を含む、請求項33に記載のセル。
【請求項35】
前記保持装置が実質的に円形の周辺の縁を有する、請求項33に記載のセル。
【請求項36】
筐体が円筒形である、請求項33に記載のセル。
【請求項37】
電気化学セルであって、筐体と、正電極、負電極および電極間に配置されたセパレータを備える電極アセンブリと、電解質とを備え、
前記筐体が、
電極アセンブリおよび電解質が配置されている、開放端を持つ容器と、
電極アセンブリと筐体の開放端との間に配置された集電体アセンブリと
を備え、
前記集電体アセンブリが
最初の開口を規定する保持装置と、
2番目の開口を規定する周辺フランジを備えた接触ばねと、
前記最初と2番目の開口は圧力解放チャネルを規定するが、
保持装置と接触ばねとの間に配置された周辺部分を持ち、最初の開口と2番目の開口との間に配置された圧力解放チャネルを閉じている圧力解放部材と、
前記圧力解放部材は少なくとも規定の解放圧力の大きさの内部セル圧力に反応して破れ、それによって物質が保持装置の最初の開口を通って逃げることができるが、
圧力解放部材と保持装置との間の密封手段とを
備えた、前記電気化学セル。
【請求項38】
前記密封手段が保持装置、接触ばね、および圧力解放通気部材の周辺部分の協力により生じる圧縮力を備える、請求項37に記載のセル。
【請求項39】
前記密封手段が、接触ばねの周辺フランジおよび圧力解放通気部材の周辺部分に対する保持装置における折り曲げを備える、請求項38に記載のセル。
【請求項40】
圧力解放通気部材と保持装置との間の圧縮力が減少したとき、集電体アセンブリが圧力解放通気部材と保持装置との間の密封を維持するための手段を備える、請求項39に記載のセル。
【請求項41】
圧力解放通気部材と保持装置との間の密封を維持するための手段が、2番目の開口の周りを完全に囲む、接触ばねの周辺フランジ内に、連続的な突起を含む、請求項40に記載のセル。
【請求項42】
正電極がFeS2を含み、負電極がリチウム金属を含む、請求項37に記載のセル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−89515(P2012−89515A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−280881(P2011−280881)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【分割の表示】特願2007−510886(P2007−510886)の分割
【原出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(397043422)エバレデイ バツテリ カンパニー インコーポレーテツド (123)
【Fターム(参考)】