対地作業部付設の作業車両
【課題】圃場における作業領域と作業能率を損なうことなく、機体旋回の終了間際のリスクを抑えて安定した作業走行の再開を可能とする対地作業部付設の作業車両を提供する。
【解決手段】作業車両は、作業位置に下降可能な作業部と、駆動輪の伝動を左右個別に切替え可能なサイドクラッチと、これら作業部およびサイドクラッチのそれぞれについて、直進時は作業位置および両側伝動、旋回時は非作業位置および旋回内側を非伝動に制御する制御部とを備えて構成され、この制御部は、操舵装置による旋回動作の開始により旋回走行距離を計測しつつ、次の直進動作の開始の時に、サイドクラッチを両側伝動に切替えるとともに、この時点以降で所定の旋回走行距離に至る間に、作業部を作業位置に切替えるものである。
【解決手段】作業車両は、作業位置に下降可能な作業部と、駆動輪の伝動を左右個別に切替え可能なサイドクラッチと、これら作業部およびサイドクラッチのそれぞれについて、直進時は作業位置および両側伝動、旋回時は非作業位置および旋回内側を非伝動に制御する制御部とを備えて構成され、この制御部は、操舵装置による旋回動作の開始により旋回走行距離を計測しつつ、次の直進動作の開始の時に、サイドクラッチを両側伝動に切替えるとともに、この時点以降で所定の旋回走行距離に至る間に、作業部を作業位置に切替えるものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回走行可能な機体に昇降可能な対地作業用の作業部を備えた対地作業部付設の作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の対地作業部付設の作業車両は、左右の駆動輪のサイドクラッチの個別伝動制御によって機体旋回を行い、昇降可能な作業部を機体旋回における旋回走行距離に基づいて機体旋回の終了間際に下降させることにより、圃場における苗株植付け等の際に、往復作業走行による隣接の作業開始位置を揃えつつ、所定の作業範囲について能率良く作業走行を進めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−344020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、機体旋回の終了間際に旋回内側のサイドクラッチが非伝動の状態で圃場の走行抵抗の変動があると、走行が不安定となって機体が急旋回動作することがあり、この不安定動作が作業部の下降後に発生すると、作業部の横方向動作に伴う過大な抵抗力が圃場面との間に作用することにより、圃場面の荒れや作業部構成部材の損傷という事態を招くことがあり、この問題の解決のために、旋回の完了による直進走行を待って作業部を下降させるようにすると、作業範囲の縮小と作業能率の低下という問題に直面することとなる。
【0005】
本発明の目的は、、圃場における作業領域と作業能率を損なうことなく、機体旋回の終了間際のリスクを抑えて安定した作業走行の再開を可能とする対地作業部付設の作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る作業車両の発明は、下降した作業位置と上昇した非作業位置とに昇降可能な対地作業用の作業部と、左右の後輪への伝動状態と非伝動状態とに切替え可能な左右各々のサイドクラッチと、左右の前輪を操舵する操舵装置と、操舵装置の作動により前輪が所定角度以上操舵すると、作業部を自動的に非作業位置まで上昇させると共に、操向内側の後輪のサイドクラッチを非伝動状態にする制御部とを備え、上記制御部は、操舵装置による旋回動作の開始に起因して旋回行程における走行距離を計測し始め、操舵装置の作動により前輪の操舵角が所定角度未満になると、左右の後輪のサイドクラッチを伝動状態にすると共に、操舵装置の作動により前輪の操舵角が所定角度未満になり、且つ計測される前記走行距離が所定距離未満であるとき、作業部を自動的に作業位置まで下降させる構成としたことを特徴とする。
【0007】
上記作業車両は、旋回開始により作業部が非作業位置に上昇、旋回内側のサイドクラッチが非伝動に切替わるとともに旋回の走行距離の算出を開始し、操舵装置が直進動作に戻された時点で、サイドクラッチが両側伝動となり、上記走行距離が所定距離未満であれば、作業部が作業位置に下降する。
【0008】
請求項2に係る作業車両の発明は、下降した作業位置と上昇した非作業位置とに昇降可能な対地作業用の作業部と、左右の後輪への伝動状態と非伝動状態とに切替え可能な左右各々のサイドクラッチと、左右の前輪を操舵する操舵装置と、操舵装置の作動により前輪が第1の基準角度以上操舵すると、作業部を自動的に非作業位置まで上昇させると共に、操向内側の後輪のサイドクラッチを非伝動状態にする制御部とを備え、上記制御部は、操舵装置による旋回動作の開始に起因して旋回行程における走行距離を計測し始め、操舵装置の作動により前輪の操舵角が第2の基準角度未満になると、左右の後輪のサイドクラッチを伝動状態にすると共に、操舵装置の作動により前輪の操舵角が第2の基準角度未満になり、且つ計測される前記走行距離が所定距離未満であるとき、作業部を自動的に作業位置まで下降させる構成とし、第2の基準角度は、第1の基準角度より大きい角度に設定してなることを特徴とする。
上記作業車両は、旋回開始の際は、操舵角度の増加によって第1の基準角度を越えた時に作業部が非作業位置まで上昇し、操向内側の後輪のサイドクラッチが非伝動状態になるとともに旋回の走行距離のカウントを開始し、また、旋回後において直進走行に戻る際に、操舵角度が第1の基準角度より大きい第2の基準角度になると、左右の後輪のサイドクラッチが伝動状態となり、旋回走行距離が所定距離未満であるときに、作業部が作業位置まで下降する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明の作業車両は、機体旋回の際に、作業部とサイドクラッチの旋回対応動作とともに旋回の走行距離のカウントが開始され、また、旋回動作の終了によって直進動作に戻されると、サイドクラッチが両側伝動に切替わり、この時点以降に、所定の旋回走行距離の範囲で、作業部が作業位置に下降することから、作業部は、サイドクラッチの両側伝動による安定した直進走行の状態で作業位置となるので、片側伝動による不安定走行に伴う作業部の破損や圃場面の荒れを防止して所要の作業領域と作業能率を確保することができる。
【0010】
請求項2の発明の作業車両は、機体旋回の際に、操舵角度の増加によって第1の基準角度を越えた時に作業部とサイドクラッチの旋回対応動作とともに旋回の走行距離のカウントが開始され、また、旋回後において直進走行に戻る際に、操舵角度が第1の基準角度より大きい第2の基準角度になるとサイドクラッチが両側伝動に切替わり、この時点以降に、所定の走行距離の範囲で、作業部が作業位置に下降することから、旋回終了を待たずに、早めに直進対応動作が開始されて作業部が作業位置に下降するので、旋回後の作業の速やかな再開によって作業能率を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例の乗用型田植機の側面図
【図2】図1の乗用型田植機の平面図
【図3】操向操作に連動する後輪のクラッチ作動機構の平面図(a)および側面図(b)
【図4】図3(b)のミッションケース周辺の拡大図
【図5】図3(a)に油圧式無段変速装置を図示した場合の図
【図6】図1の乗用型田植機の制御ブロック図
【図7】線引きマーカーの要部拡大図
【図8】図7の線引きマーカーの動作説明図
【図9】泥落とし装置の配管系統展開図
【図10】欠株検出装置の動作平面図
【図11】施肥駆動部の伝動機構図
【図12】制御動作例のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1及び図2は本発明を用いた一実施例である粉粒体繰出し装置として施肥装置を装着した乗用型田植機の側面図と平面図である。この施肥装置付き乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付装置4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0013】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0014】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及び油圧式無段変速装置23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付装置4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。
【0015】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になって畦クラッチペダル109等が配置されている。フロアステップ35は一部格子状になっており(図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0016】
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38,38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付装置4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付装置4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付装置4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0017】
苗植付装置4は8条植の構成で、フレームを兼ねる苗植付伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口51a、…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a、…に供給すると苗送りベルト51b、…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a、…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52、…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ(図示せず)等を備えている。苗植付装置4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にミドルフロート57とサイドフロート56がそれぞれ設けられている。これらフロート55〜57を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55〜57が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52、…により苗が植付けられる。各フロート55〜57は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付装置4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0018】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61、…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62、…でフロート55〜57の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず)、…まで導き、施肥ガイド、…の前側に設けた作溝体(図示せず)、…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62、…に吹き込まれ、施肥ホース62、…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0019】
苗植付装置4には整地装置の一例であるロータ27(27a,27b)が取り付けられている。また、苗載台51は苗植付装置4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65の支持ローラ65aをレールとして左右方向にスライドする構成である。
【0020】
ロータ27は、次のような支持構造に支持されている。すなわち苗載台51の前記支持枠体65の両側辺部材65bに上端を回動自在に支持された梁部材66と該梁部材66の両端に固着した支持アーム67と該支持アーム67に回動自在に取り付けられたロータ支持フレーム68が設けられ、該ロータ支持フレーム68の下端にはロータ27(サイドロータ27aとセンタロータ27b)の駆動軸70(70a,70b)が取り付けられている。また該ロータ支持フレーム68の下端部近くは苗植付伝動ケース50に回動自在に取り付けられた連結部材71に連結している。
【0021】
フロート55〜57との配置位置の関係でセンタフロート55の前方にあるロータ27bはサイドフロート56とミドルフロート57の前方にある各ロータ27aより前方に配置されている。そのためロータ27aの駆動軸70aへの動力は後輪11のギアケース18内のギアから伝達され、ロータ27bの駆動軸70bへは両方のロータ27a,27aの駆動軸70a,70aの車体内側の端部からそれぞれ動力が伝達される。
【0022】
また、ロータ27bは梁部材66に上端部が支持された一対のリンク部材76,77によりスプリング78を介して吊り下げられている。
また、ロータ上下位置調節レバー81の下端部には折曲片82が固着されており、該折曲片82は支持枠体65に回動自在に支持されている。そして前記レバー81が車両の左右方向に回動操作されると、支持枠体65の両側辺部材65bに回動自在に支持された梁部材66に固着支持された突出部66aの近くを折曲片82が上下に回動する。折曲片82は前記突出部66aの下方を係止しているので、該突出部66aがレバー81の機体右方向の回動で、上向きに梁部材66を中心として回動する。該突出部66aの前記回動により第一リンク部材76の梁部材66との連結部と反対側の端部も梁部材66を中心として上向きに回動する。この第一リンク部材76の上方への回動により第二リンク部材77とスプリング78を介してロータ27bを上方に上げることができる。ロータ27bを上方に移動させると、駆動軸70bと駆動軸70aを介してロータ27aも同時に上方に移動する。
なお、ロータ上下位置調節レバー81は車体2のほぼ中央部に設けているので、ロータ27a,27bの上下動を行う場合に左右のバランスを取りやすい。
【0023】
また、苗植付装置4を圃場に下げたときに、苗植付装置4を水平位置に戻すケーブル45をセンタロータ27bのリンク部材76,77とスプリング78等からなる引上げスプリング部と油圧ピストン46と連動させた。
【0024】
このように、センタロータ27bのスプリング78等によるスイング機構の他にケーブル45を設けることで苗植付装置4を上昇位置から下降させるごとにセンタロータ27bを水平位置に戻すことができ、センタロータ27bの保持位置を安定化させることができる。
【0025】
エンジン20の回転動力は、ベルト伝動装置21などを介して油圧式変速装置23に伝えられ、油圧式変速装置23からの出力はベルト(図示せず)を介してミッションケース12の図示しない入力軸に伝えられる。
【0026】
苗植付装置4は、走行車体2のメインフレーム15に昇降リンク装置3で昇降自在に装着されているが、その昇降させる構成と苗植付装置4の構成について説明する。先ず、走行車体2に基部が回動自在に設けられた一般的な油圧シリンダー46(図1)のピストン上端部を昇降リンク装置3に連結し、走行車体2に設けた油圧ポンプ(図示せず)により油圧シリンダー46に圧油を供給・排出して、油圧シリンダー46のピストンを伸進・縮退させて昇降リンク装置3に連結した苗植付装置4が上下動されるように構成されている。
【0027】
(サイドクラッチと間欠制御)
図3(a)の展開平面図には、図1の乗用型田植機の操向操作に連動する後輪11のサイドクラッチ作動機構図を示し、図3(b)には、図3(a)の側面図を示す。また、図4には、図3(b)のミッションケース12周辺の拡大図を示し、図5には、図3(a)の平面図に油圧式無段変速装置23を図示した場合を示している。
【0028】
左右の後輪11の伝動軸のサイドクラッチ操作アーム86Iを作動させるクラッチ連動用の左右ロッド180がミッションケース12の左右両側に設けられ、該クラッチ連動用の左右ロッド180とサイドクラッチ操作アーム86Iは左右のプルシリンダ217を介して連結している。
【0029】
左右のサイドクラッチ操作アーム86Iは、前記左右のプルシリンダ217(旋回時にシリンダ217を引き、旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチを切る)作動制御用のサイドクラッチ制御用電磁バルブ221(図4,図5,図13)を備えている。上記構成を用いて、ハンドル34を一定角度回転させた後に、一つは継続して前記サイドクラッチを切り又は入りにする制御(A)ともう一つは一定周期で前記サイドクラッチを接続/切断する制御(B)に切替え選択可能にした。制御(A)は標準用であり、制御(B)は湿田用である。ハンドル34を操作するとトルクジェネレータ(パワーステアリング)37(図13にも図示)によって旋回内側のプルシリンダ217を作動させてサイドクラッチを切り(又は入り)にする。これらサイドクラッチ操作アーム86I、クラッチ連動用の左右ロッド180、プルシリンダ217、サイドクラッチ制御用電磁バルブ221などをステアリング機構と言う。
【0030】
上記した実施例では、ステアリングハンドル34の所定角以上の操作により、旋回内側の後輪11のサイドクラッチ(図示せず)を切る例を示したが、サイドクラッチスイッチを作業モニタ装置に備えた操作盤33(図2)に設けておき、手動でサイドクラッチの「切」が可能な構成にしても良い。または、サイドクラッチペダルにより、手動でサイドクラッチの「切」が可能な構成にしても良い。
【0031】
(苗植付部制御)
次に、後進時に苗植付装置4を自動的に上昇させる制御構成について説明する。先ず、チェンジレバー90(前後進レバー)を後進速に操作すると、チェンジレバー90の基部に設けた接当片が接当してONになるバックリフトスイッチ191が設けられており、制御装置163(図6)の苗植付装置上昇手段により電磁油圧バルブ(昇降バルブ)161を作動させる電磁ソレノイドを制御して油圧シリンダー46にて苗植付装置4を最大位置まで上昇させるように構成されている。
【0032】
このように、チェンジレバー90を後進速に操作すると、自動的に苗植付装置4を最大位置まで上昇させるように構成しておくと、圃場の畦際で機体を旋回させるため等に機体を畦に向かって後進させる時に、自動的に苗植付装置4は最大位置まで上昇しているので、苗植付装置4が畦に衝突して破損することが未然に防止でき作業性が良い。
【0033】
また、前記ステアリングハンドル34を左右何れかに200度回転させた時に図6に示すオートリフトスイッチ183がONになると、制御装置163の苗植付部上昇手段により電磁油圧バルブ161を作動させる電磁ソレノイドを制御して油圧シリンダー46にて苗植付装置4を最大位置まで上昇させるように構成されている。
【0034】
このように、畦際で機体を旋回させるためにステアリングハンドル34を左右何れかに最大限まで回転させると、オートリフトスイッチ183がONになり、自動的に苗植付装置4は最大位置まで上昇するので、機体旋回時に苗植付装置4を上昇させる操作が不要となり、能率良く機体旋回が行えて作業性が良い。
【0035】
一方、操作盤33には、苗植付装置4の自動上昇を行わせる状態と行わせない状態とに切替える自動リフト切替スイッチ192(図6)が設けられており、自動リフト切替スイッチ192を自動にしていると、上記のようにバックリフトスイッチ191がONになるかオートリフトスイッチ183がONになると自動的に苗植付装置4は制御装置163の苗植付装置上昇手段により自動上昇される。そして、自動リフト切替スイッチ192をOFFにしていると、バックリフトスイッチ191がONになってもオートリフトスイッチ183がONになっても苗植付装置4は自動上昇されない。
【0036】
このように、一つの自動リフト切替スイッチ192で、バックリフトスイッチ191がONになってもオートリフトスイッチ183がONになっても苗植付装置4は自動上昇されない状態にすることができるので、バックリフトとオートリフトの各々を入り切りするスイッチを別々に設けた構成よりも簡潔な構成となり、一つのスイッチで両者の状態切替えが行えるので、操作ミスが少なくなり作業性が良い。
【0037】
なお、自動リフト切替スイッチ192をOFFにして、バックリフトスイッチ191がONになってもオートリフトスイッチ183がONになっても苗植付装置4が自動上昇しない状態にしておくと、機体を後進で納屋等にしまう時にチェンジレバー90を後進速に操作しても苗植付装置4が自動上昇しないので、苗植付装置4を下げたまま後進することができ、納屋の入口上部や納屋内の他の部材に苗植付装置4をぶつけてしまうような事態が回避できる。また、扇型やひょうたん型等の変形圃場で畦際に沿って周り植えをする場合に、曲がった畦に沿ってステアリングハンドル34を回しながら植付け作業を行うが、この時に、自動リフト切替スイッチ192を自動位置にしていると、ステアリングハンドル34を左右何れかに200度以上回転すると自動的に苗植付装置4が上昇してしまい植付け作業が行えないが、自動リフト切替スイッチ192をOFFにしていると、ステアリングハンドル34を左右何れかに200度以上回転しても苗植付装置4は上昇しないので植付け作業が行え、変形圃場でも適切に苗植付け作業が行える。
【0038】
また、上記構成からなる田植機1では、本実施例の制御装置163は旋回内側の後輪11のドライブシャフト(伝動軸)(図示せず)の回転数の検出に基づいて、旋回時の苗植え付けなどの諸作動を自動的に行わせる旋回連動制御ができる。この制御モードを自動植付開始モードということがあるが、特に、旋回内側の後輪11が所定角度以上操舵されているときに、前記旋回連動制御ができる。
【0039】
旋回後の苗の植始め位置の設定を後輪の回転数に基づいて自動的に行う制御モード(自動植付開始モード)の設定ができ、この制御モード設定は旋回開始タイミングをハンドル34の旋回角度(切れ角)センサ193で検知し、該旋回角度センサ193で検知した旋回開始時からの走行距離を車輪(旋回内側の後輪11の伝動軸)の回転数センサ205の検出値に基づき測定し、前記走行距離が所定値に達すると苗植付レバー19(図2)の操作をしなくても、自動的に苗の植え付けを開始する自動植付開始モードである。
【0040】
(旋回伝動制御)
次に、旋回伝動制御について説明する。
上記制御装置163による機体旋回時の基本制御動作は、下位の作業位置と上位の非作業の待機位置とを切替え可能な対地作業用の作業部4と、左右のプルシリンダ217によって左右駆動輪11,11の伝動と非伝動とを個別切替え可能なサイドクラッチの制御について、操舵装置34の直進動作および旋回動作の操舵角度θに応じて直進制御および旋回制御とを切替える。すなわち、作業部4と左右のサイドクラッチについて、直進制御時にそれぞれ作業位置、両側伝動に切替え、旋回制御時にそれぞれ待機位置、旋回内側非伝動に切替える。
【0041】
この場合において、旋回制御の開始とともに旋回内側の駆動輪11の従動回転による旋回走行距離を回転数センサ205によって算出し、また、旋回動作の終了による直進制御の開始の時に、サイドクラッチを両側伝動に切替えるとともに、この時点以降で異常旋回の基準となる所定の旋回走行距離に至る間に、作業部4を作業位置に切替える。
【0042】
上記制御構成の適用による苗移植機の具体的な制御動作例について説明すると、そのフローチャートを図12に示すように、第1の基準角度θ1によるハンドル切れ角判定の処理ステップ1(以下「S1」の如く略記する。)により機体旋回の開始判定の場合は、植付け作業部4を待機位置、旋回内側のサイドクラッチを非伝動に切替えるとともに、旋回内側の駆動輪11の従動回転による旋回走行距離の算出を開始(S2a〜S2c)する。旋回操作の中断時の対処のためには、第1の基準角度θ1より大きい第2の基準角度θ2に基づく判定により、モニター上のランプやブザーによる警報出力(S3、S3a、S3b)を行う。
【0043】
次いで、操舵装置34が直進動作に戻されて旋回動作が終了した時は、第2の基準角度θ2に基づく判定により、所定の旋回走行距離Aの範囲内(S4a、S4b)を条件に、サイドクラッチの両側伝動および植付け作業部4の下降による作業位置への切替え(S5,S6)を行なう。旋回走行距離Aについての条件不備の場合は、旋回異常としてオペレータの対応を促すべく警報出力(S4c)を行う。
【0044】
上記制御処理により、植付け作業部4は、サイドクラッチの両側伝動による安定した直進走行の状態で植付け作業部4が接地して植付け作業の開始となるので、片側伝動による不安定走行に伴う作業部の破損や圃場面の荒れを防止して所要の作業領域と作業能率を確保することができる。
【0045】
また、前記操舵装置34の中立位置からの左右の操舵角度について、旋回制御の開始のための角度位置を第1の基準角度θ1とし、直進制御の開始のための角度位置を第2の基準角度θ2とし、この第2の基準角度θ2は、第1の基準角度θ1以上の角度に設定する。これら第1の基準角度θ1、第2の基準角度θ2は、それぞれ設定ダイヤル206a,206bによって調節する。
【0046】
このように、第1、第2の基準角度θ1,θ2を設定することにより、作業車両の旋回開始の際は、操舵角度の増加によって第1の基準角度θ1を越えた時に旋回制御が開始され、また、旋回後において直進走行に戻る際に、操舵角度が第1の基準角度θ1より大きい第2の基準角度θ2になると直進制御が開始されることから、旋回終了を待たずに、早めに直進制御が開始されて作業部4が作業位置に切替えられるので、機体旋回後の作業の速やかな再開によって作業能率を確保することができる。
【0047】
また、機体旋回開始時においては、ピットマンアーム等から、サイドクラッチの非伝動動作時に油圧上げとして作業部4の動作を停止することもできる。
【0048】
(スロットル制御)
次に、機体旋回におけるスロットル制御について説明する。
機体旋回において、HSTレバーが一定の場合に、後輪回転センサ205によって不等速回転を検出したときは、スロットルモータ111の制御によってエンジン回転を上昇させることによって出力を安定させ、出力不足を改善してフィーリングを向上することができる。
【0049】
(線引きマーカー)
次に、線引きマーカーの構成について説明する。
線引きマーカー121は、その要部拡大図および動作説明図をそれぞれ図7、図8に示すように、マーカーチューブ122の根元側を芯棒122aに嵌合して回動可能に支持し、かつ、線引き作業位置に回動させるトルクスプリング122bを取付け、マーカーチューブ122を上下させるワイヤー123の取付部123aを逆トルクが作用する位置に定める。
【0050】
ワイヤー123を引っ張ることでマーカーチューブ122を引き上げるとともに、その逆トルクによってチューブ122が回動し、張出し状態の線引きマーカー121を内側に収容することができるので、線引きマーカーの出っ張りによる障害物との干渉がなくなることから、畦際作業や路上走行時の取扱いが容易となる。
【0051】
(泥落とし装置)
次に、泥落とし装置について説明する。
車輪の泥落とし装置は、図9の配管系統展開図に示すように、前輪10,10と後輪11,11にそれぞれエアノズル131,132を配して施肥装置5のブロア58と連通し、田植作業が終了して圃場から出た際に、走行しながらブロア58のエアを使用することにより、車輪の泥を吹き払うことができる。
【0052】
(欠株センサ)
次に、欠株センサについて説明する。
従前における苗との接触を検出するセンサーを苗ガイド等に設けて構成した欠株センサは、苗の土がセンサに付着して誤検知することがあり、そのような問題の解消のために、欠株検出装置の動作平面図を図10に示すように、植付作業部4の後部に距離センサ141を植付条別に設け、既に植え付けた苗Pとの距離Lを測定し、植付入の場合において、苗との距離が所定値以上になると、ブザー186で欠株を知らせるように欠株検出装置を構成することにより、苗Pと非接触で欠株を感知することができる。この場合において、畦クラッチレバーセンサ105と連動して検出動作させる。
【0053】
(施肥駆動部)
次に、施肥駆動部について説明する。
従来の施肥繰出部の施肥ロールは、回転角度位置によって回転速度が異なることから肥料の繰出しムラが避けられなかったが、図11の施肥駆動部の伝動機構図に示すように、施肥駆動ケース151内のギヤ機構152を駆動軸152aから非円形伝動とすることにより、ロッド153のピストン運動の上下動作を等速に(なめらかに)動くようにして、施肥ロール154が等速回転するように構成することにより、ホッパー155からムラなく均一に肥料の繰出しが可能となる。
【符号の説明】
【0054】
1 乗用型田植機
4 苗植付装置(作業部)
10 前輪
11 後輪(駆動輪)
12 ミッションケース
34 ステアリングハンドル(操舵装置)
46 昇降油圧シリンダ
86I サイドクラッチ操作アーム
163 制御装置
193 切れ角センサ
205 後輪回転センサ
206a 設定ダイヤル
206b 設定ダイヤル
221 サイドクラッチ制御用電磁バルブ
θ 操舵角度
θ1 第1の基準角度
θ2 第2の基準角度
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回走行可能な機体に昇降可能な対地作業用の作業部を備えた対地作業部付設の作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の対地作業部付設の作業車両は、左右の駆動輪のサイドクラッチの個別伝動制御によって機体旋回を行い、昇降可能な作業部を機体旋回における旋回走行距離に基づいて機体旋回の終了間際に下降させることにより、圃場における苗株植付け等の際に、往復作業走行による隣接の作業開始位置を揃えつつ、所定の作業範囲について能率良く作業走行を進めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−344020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、機体旋回の終了間際に旋回内側のサイドクラッチが非伝動の状態で圃場の走行抵抗の変動があると、走行が不安定となって機体が急旋回動作することがあり、この不安定動作が作業部の下降後に発生すると、作業部の横方向動作に伴う過大な抵抗力が圃場面との間に作用することにより、圃場面の荒れや作業部構成部材の損傷という事態を招くことがあり、この問題の解決のために、旋回の完了による直進走行を待って作業部を下降させるようにすると、作業範囲の縮小と作業能率の低下という問題に直面することとなる。
【0005】
本発明の目的は、、圃場における作業領域と作業能率を損なうことなく、機体旋回の終了間際のリスクを抑えて安定した作業走行の再開を可能とする対地作業部付設の作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る作業車両の発明は、下降した作業位置と上昇した非作業位置とに昇降可能な対地作業用の作業部と、左右の後輪への伝動状態と非伝動状態とに切替え可能な左右各々のサイドクラッチと、左右の前輪を操舵する操舵装置と、操舵装置の作動により前輪が所定角度以上操舵すると、作業部を自動的に非作業位置まで上昇させると共に、操向内側の後輪のサイドクラッチを非伝動状態にする制御部とを備え、上記制御部は、操舵装置による旋回動作の開始に起因して旋回行程における走行距離を計測し始め、操舵装置の作動により前輪の操舵角が所定角度未満になると、左右の後輪のサイドクラッチを伝動状態にすると共に、操舵装置の作動により前輪の操舵角が所定角度未満になり、且つ計測される前記走行距離が所定距離未満であるとき、作業部を自動的に作業位置まで下降させる構成としたことを特徴とする。
【0007】
上記作業車両は、旋回開始により作業部が非作業位置に上昇、旋回内側のサイドクラッチが非伝動に切替わるとともに旋回の走行距離の算出を開始し、操舵装置が直進動作に戻された時点で、サイドクラッチが両側伝動となり、上記走行距離が所定距離未満であれば、作業部が作業位置に下降する。
【0008】
請求項2に係る作業車両の発明は、下降した作業位置と上昇した非作業位置とに昇降可能な対地作業用の作業部と、左右の後輪への伝動状態と非伝動状態とに切替え可能な左右各々のサイドクラッチと、左右の前輪を操舵する操舵装置と、操舵装置の作動により前輪が第1の基準角度以上操舵すると、作業部を自動的に非作業位置まで上昇させると共に、操向内側の後輪のサイドクラッチを非伝動状態にする制御部とを備え、上記制御部は、操舵装置による旋回動作の開始に起因して旋回行程における走行距離を計測し始め、操舵装置の作動により前輪の操舵角が第2の基準角度未満になると、左右の後輪のサイドクラッチを伝動状態にすると共に、操舵装置の作動により前輪の操舵角が第2の基準角度未満になり、且つ計測される前記走行距離が所定距離未満であるとき、作業部を自動的に作業位置まで下降させる構成とし、第2の基準角度は、第1の基準角度より大きい角度に設定してなることを特徴とする。
上記作業車両は、旋回開始の際は、操舵角度の増加によって第1の基準角度を越えた時に作業部が非作業位置まで上昇し、操向内側の後輪のサイドクラッチが非伝動状態になるとともに旋回の走行距離のカウントを開始し、また、旋回後において直進走行に戻る際に、操舵角度が第1の基準角度より大きい第2の基準角度になると、左右の後輪のサイドクラッチが伝動状態となり、旋回走行距離が所定距離未満であるときに、作業部が作業位置まで下降する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明の作業車両は、機体旋回の際に、作業部とサイドクラッチの旋回対応動作とともに旋回の走行距離のカウントが開始され、また、旋回動作の終了によって直進動作に戻されると、サイドクラッチが両側伝動に切替わり、この時点以降に、所定の旋回走行距離の範囲で、作業部が作業位置に下降することから、作業部は、サイドクラッチの両側伝動による安定した直進走行の状態で作業位置となるので、片側伝動による不安定走行に伴う作業部の破損や圃場面の荒れを防止して所要の作業領域と作業能率を確保することができる。
【0010】
請求項2の発明の作業車両は、機体旋回の際に、操舵角度の増加によって第1の基準角度を越えた時に作業部とサイドクラッチの旋回対応動作とともに旋回の走行距離のカウントが開始され、また、旋回後において直進走行に戻る際に、操舵角度が第1の基準角度より大きい第2の基準角度になるとサイドクラッチが両側伝動に切替わり、この時点以降に、所定の走行距離の範囲で、作業部が作業位置に下降することから、旋回終了を待たずに、早めに直進対応動作が開始されて作業部が作業位置に下降するので、旋回後の作業の速やかな再開によって作業能率を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例の乗用型田植機の側面図
【図2】図1の乗用型田植機の平面図
【図3】操向操作に連動する後輪のクラッチ作動機構の平面図(a)および側面図(b)
【図4】図3(b)のミッションケース周辺の拡大図
【図5】図3(a)に油圧式無段変速装置を図示した場合の図
【図6】図1の乗用型田植機の制御ブロック図
【図7】線引きマーカーの要部拡大図
【図8】図7の線引きマーカーの動作説明図
【図9】泥落とし装置の配管系統展開図
【図10】欠株検出装置の動作平面図
【図11】施肥駆動部の伝動機構図
【図12】制御動作例のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1及び図2は本発明を用いた一実施例である粉粒体繰出し装置として施肥装置を装着した乗用型田植機の側面図と平面図である。この施肥装置付き乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付装置4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0013】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0014】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及び油圧式無段変速装置23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付装置4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。
【0015】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になって畦クラッチペダル109等が配置されている。フロアステップ35は一部格子状になっており(図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0016】
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38,38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付装置4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付装置4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付装置4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0017】
苗植付装置4は8条植の構成で、フレームを兼ねる苗植付伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口51a、…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a、…に供給すると苗送りベルト51b、…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a、…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52、…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ(図示せず)等を備えている。苗植付装置4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にミドルフロート57とサイドフロート56がそれぞれ設けられている。これらフロート55〜57を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55〜57が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52、…により苗が植付けられる。各フロート55〜57は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付装置4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0018】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61、…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62、…でフロート55〜57の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず)、…まで導き、施肥ガイド、…の前側に設けた作溝体(図示せず)、…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62、…に吹き込まれ、施肥ホース62、…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0019】
苗植付装置4には整地装置の一例であるロータ27(27a,27b)が取り付けられている。また、苗載台51は苗植付装置4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65の支持ローラ65aをレールとして左右方向にスライドする構成である。
【0020】
ロータ27は、次のような支持構造に支持されている。すなわち苗載台51の前記支持枠体65の両側辺部材65bに上端を回動自在に支持された梁部材66と該梁部材66の両端に固着した支持アーム67と該支持アーム67に回動自在に取り付けられたロータ支持フレーム68が設けられ、該ロータ支持フレーム68の下端にはロータ27(サイドロータ27aとセンタロータ27b)の駆動軸70(70a,70b)が取り付けられている。また該ロータ支持フレーム68の下端部近くは苗植付伝動ケース50に回動自在に取り付けられた連結部材71に連結している。
【0021】
フロート55〜57との配置位置の関係でセンタフロート55の前方にあるロータ27bはサイドフロート56とミドルフロート57の前方にある各ロータ27aより前方に配置されている。そのためロータ27aの駆動軸70aへの動力は後輪11のギアケース18内のギアから伝達され、ロータ27bの駆動軸70bへは両方のロータ27a,27aの駆動軸70a,70aの車体内側の端部からそれぞれ動力が伝達される。
【0022】
また、ロータ27bは梁部材66に上端部が支持された一対のリンク部材76,77によりスプリング78を介して吊り下げられている。
また、ロータ上下位置調節レバー81の下端部には折曲片82が固着されており、該折曲片82は支持枠体65に回動自在に支持されている。そして前記レバー81が車両の左右方向に回動操作されると、支持枠体65の両側辺部材65bに回動自在に支持された梁部材66に固着支持された突出部66aの近くを折曲片82が上下に回動する。折曲片82は前記突出部66aの下方を係止しているので、該突出部66aがレバー81の機体右方向の回動で、上向きに梁部材66を中心として回動する。該突出部66aの前記回動により第一リンク部材76の梁部材66との連結部と反対側の端部も梁部材66を中心として上向きに回動する。この第一リンク部材76の上方への回動により第二リンク部材77とスプリング78を介してロータ27bを上方に上げることができる。ロータ27bを上方に移動させると、駆動軸70bと駆動軸70aを介してロータ27aも同時に上方に移動する。
なお、ロータ上下位置調節レバー81は車体2のほぼ中央部に設けているので、ロータ27a,27bの上下動を行う場合に左右のバランスを取りやすい。
【0023】
また、苗植付装置4を圃場に下げたときに、苗植付装置4を水平位置に戻すケーブル45をセンタロータ27bのリンク部材76,77とスプリング78等からなる引上げスプリング部と油圧ピストン46と連動させた。
【0024】
このように、センタロータ27bのスプリング78等によるスイング機構の他にケーブル45を設けることで苗植付装置4を上昇位置から下降させるごとにセンタロータ27bを水平位置に戻すことができ、センタロータ27bの保持位置を安定化させることができる。
【0025】
エンジン20の回転動力は、ベルト伝動装置21などを介して油圧式変速装置23に伝えられ、油圧式変速装置23からの出力はベルト(図示せず)を介してミッションケース12の図示しない入力軸に伝えられる。
【0026】
苗植付装置4は、走行車体2のメインフレーム15に昇降リンク装置3で昇降自在に装着されているが、その昇降させる構成と苗植付装置4の構成について説明する。先ず、走行車体2に基部が回動自在に設けられた一般的な油圧シリンダー46(図1)のピストン上端部を昇降リンク装置3に連結し、走行車体2に設けた油圧ポンプ(図示せず)により油圧シリンダー46に圧油を供給・排出して、油圧シリンダー46のピストンを伸進・縮退させて昇降リンク装置3に連結した苗植付装置4が上下動されるように構成されている。
【0027】
(サイドクラッチと間欠制御)
図3(a)の展開平面図には、図1の乗用型田植機の操向操作に連動する後輪11のサイドクラッチ作動機構図を示し、図3(b)には、図3(a)の側面図を示す。また、図4には、図3(b)のミッションケース12周辺の拡大図を示し、図5には、図3(a)の平面図に油圧式無段変速装置23を図示した場合を示している。
【0028】
左右の後輪11の伝動軸のサイドクラッチ操作アーム86Iを作動させるクラッチ連動用の左右ロッド180がミッションケース12の左右両側に設けられ、該クラッチ連動用の左右ロッド180とサイドクラッチ操作アーム86Iは左右のプルシリンダ217を介して連結している。
【0029】
左右のサイドクラッチ操作アーム86Iは、前記左右のプルシリンダ217(旋回時にシリンダ217を引き、旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチを切る)作動制御用のサイドクラッチ制御用電磁バルブ221(図4,図5,図13)を備えている。上記構成を用いて、ハンドル34を一定角度回転させた後に、一つは継続して前記サイドクラッチを切り又は入りにする制御(A)ともう一つは一定周期で前記サイドクラッチを接続/切断する制御(B)に切替え選択可能にした。制御(A)は標準用であり、制御(B)は湿田用である。ハンドル34を操作するとトルクジェネレータ(パワーステアリング)37(図13にも図示)によって旋回内側のプルシリンダ217を作動させてサイドクラッチを切り(又は入り)にする。これらサイドクラッチ操作アーム86I、クラッチ連動用の左右ロッド180、プルシリンダ217、サイドクラッチ制御用電磁バルブ221などをステアリング機構と言う。
【0030】
上記した実施例では、ステアリングハンドル34の所定角以上の操作により、旋回内側の後輪11のサイドクラッチ(図示せず)を切る例を示したが、サイドクラッチスイッチを作業モニタ装置に備えた操作盤33(図2)に設けておき、手動でサイドクラッチの「切」が可能な構成にしても良い。または、サイドクラッチペダルにより、手動でサイドクラッチの「切」が可能な構成にしても良い。
【0031】
(苗植付部制御)
次に、後進時に苗植付装置4を自動的に上昇させる制御構成について説明する。先ず、チェンジレバー90(前後進レバー)を後進速に操作すると、チェンジレバー90の基部に設けた接当片が接当してONになるバックリフトスイッチ191が設けられており、制御装置163(図6)の苗植付装置上昇手段により電磁油圧バルブ(昇降バルブ)161を作動させる電磁ソレノイドを制御して油圧シリンダー46にて苗植付装置4を最大位置まで上昇させるように構成されている。
【0032】
このように、チェンジレバー90を後進速に操作すると、自動的に苗植付装置4を最大位置まで上昇させるように構成しておくと、圃場の畦際で機体を旋回させるため等に機体を畦に向かって後進させる時に、自動的に苗植付装置4は最大位置まで上昇しているので、苗植付装置4が畦に衝突して破損することが未然に防止でき作業性が良い。
【0033】
また、前記ステアリングハンドル34を左右何れかに200度回転させた時に図6に示すオートリフトスイッチ183がONになると、制御装置163の苗植付部上昇手段により電磁油圧バルブ161を作動させる電磁ソレノイドを制御して油圧シリンダー46にて苗植付装置4を最大位置まで上昇させるように構成されている。
【0034】
このように、畦際で機体を旋回させるためにステアリングハンドル34を左右何れかに最大限まで回転させると、オートリフトスイッチ183がONになり、自動的に苗植付装置4は最大位置まで上昇するので、機体旋回時に苗植付装置4を上昇させる操作が不要となり、能率良く機体旋回が行えて作業性が良い。
【0035】
一方、操作盤33には、苗植付装置4の自動上昇を行わせる状態と行わせない状態とに切替える自動リフト切替スイッチ192(図6)が設けられており、自動リフト切替スイッチ192を自動にしていると、上記のようにバックリフトスイッチ191がONになるかオートリフトスイッチ183がONになると自動的に苗植付装置4は制御装置163の苗植付装置上昇手段により自動上昇される。そして、自動リフト切替スイッチ192をOFFにしていると、バックリフトスイッチ191がONになってもオートリフトスイッチ183がONになっても苗植付装置4は自動上昇されない。
【0036】
このように、一つの自動リフト切替スイッチ192で、バックリフトスイッチ191がONになってもオートリフトスイッチ183がONになっても苗植付装置4は自動上昇されない状態にすることができるので、バックリフトとオートリフトの各々を入り切りするスイッチを別々に設けた構成よりも簡潔な構成となり、一つのスイッチで両者の状態切替えが行えるので、操作ミスが少なくなり作業性が良い。
【0037】
なお、自動リフト切替スイッチ192をOFFにして、バックリフトスイッチ191がONになってもオートリフトスイッチ183がONになっても苗植付装置4が自動上昇しない状態にしておくと、機体を後進で納屋等にしまう時にチェンジレバー90を後進速に操作しても苗植付装置4が自動上昇しないので、苗植付装置4を下げたまま後進することができ、納屋の入口上部や納屋内の他の部材に苗植付装置4をぶつけてしまうような事態が回避できる。また、扇型やひょうたん型等の変形圃場で畦際に沿って周り植えをする場合に、曲がった畦に沿ってステアリングハンドル34を回しながら植付け作業を行うが、この時に、自動リフト切替スイッチ192を自動位置にしていると、ステアリングハンドル34を左右何れかに200度以上回転すると自動的に苗植付装置4が上昇してしまい植付け作業が行えないが、自動リフト切替スイッチ192をOFFにしていると、ステアリングハンドル34を左右何れかに200度以上回転しても苗植付装置4は上昇しないので植付け作業が行え、変形圃場でも適切に苗植付け作業が行える。
【0038】
また、上記構成からなる田植機1では、本実施例の制御装置163は旋回内側の後輪11のドライブシャフト(伝動軸)(図示せず)の回転数の検出に基づいて、旋回時の苗植え付けなどの諸作動を自動的に行わせる旋回連動制御ができる。この制御モードを自動植付開始モードということがあるが、特に、旋回内側の後輪11が所定角度以上操舵されているときに、前記旋回連動制御ができる。
【0039】
旋回後の苗の植始め位置の設定を後輪の回転数に基づいて自動的に行う制御モード(自動植付開始モード)の設定ができ、この制御モード設定は旋回開始タイミングをハンドル34の旋回角度(切れ角)センサ193で検知し、該旋回角度センサ193で検知した旋回開始時からの走行距離を車輪(旋回内側の後輪11の伝動軸)の回転数センサ205の検出値に基づき測定し、前記走行距離が所定値に達すると苗植付レバー19(図2)の操作をしなくても、自動的に苗の植え付けを開始する自動植付開始モードである。
【0040】
(旋回伝動制御)
次に、旋回伝動制御について説明する。
上記制御装置163による機体旋回時の基本制御動作は、下位の作業位置と上位の非作業の待機位置とを切替え可能な対地作業用の作業部4と、左右のプルシリンダ217によって左右駆動輪11,11の伝動と非伝動とを個別切替え可能なサイドクラッチの制御について、操舵装置34の直進動作および旋回動作の操舵角度θに応じて直進制御および旋回制御とを切替える。すなわち、作業部4と左右のサイドクラッチについて、直進制御時にそれぞれ作業位置、両側伝動に切替え、旋回制御時にそれぞれ待機位置、旋回内側非伝動に切替える。
【0041】
この場合において、旋回制御の開始とともに旋回内側の駆動輪11の従動回転による旋回走行距離を回転数センサ205によって算出し、また、旋回動作の終了による直進制御の開始の時に、サイドクラッチを両側伝動に切替えるとともに、この時点以降で異常旋回の基準となる所定の旋回走行距離に至る間に、作業部4を作業位置に切替える。
【0042】
上記制御構成の適用による苗移植機の具体的な制御動作例について説明すると、そのフローチャートを図12に示すように、第1の基準角度θ1によるハンドル切れ角判定の処理ステップ1(以下「S1」の如く略記する。)により機体旋回の開始判定の場合は、植付け作業部4を待機位置、旋回内側のサイドクラッチを非伝動に切替えるとともに、旋回内側の駆動輪11の従動回転による旋回走行距離の算出を開始(S2a〜S2c)する。旋回操作の中断時の対処のためには、第1の基準角度θ1より大きい第2の基準角度θ2に基づく判定により、モニター上のランプやブザーによる警報出力(S3、S3a、S3b)を行う。
【0043】
次いで、操舵装置34が直進動作に戻されて旋回動作が終了した時は、第2の基準角度θ2に基づく判定により、所定の旋回走行距離Aの範囲内(S4a、S4b)を条件に、サイドクラッチの両側伝動および植付け作業部4の下降による作業位置への切替え(S5,S6)を行なう。旋回走行距離Aについての条件不備の場合は、旋回異常としてオペレータの対応を促すべく警報出力(S4c)を行う。
【0044】
上記制御処理により、植付け作業部4は、サイドクラッチの両側伝動による安定した直進走行の状態で植付け作業部4が接地して植付け作業の開始となるので、片側伝動による不安定走行に伴う作業部の破損や圃場面の荒れを防止して所要の作業領域と作業能率を確保することができる。
【0045】
また、前記操舵装置34の中立位置からの左右の操舵角度について、旋回制御の開始のための角度位置を第1の基準角度θ1とし、直進制御の開始のための角度位置を第2の基準角度θ2とし、この第2の基準角度θ2は、第1の基準角度θ1以上の角度に設定する。これら第1の基準角度θ1、第2の基準角度θ2は、それぞれ設定ダイヤル206a,206bによって調節する。
【0046】
このように、第1、第2の基準角度θ1,θ2を設定することにより、作業車両の旋回開始の際は、操舵角度の増加によって第1の基準角度θ1を越えた時に旋回制御が開始され、また、旋回後において直進走行に戻る際に、操舵角度が第1の基準角度θ1より大きい第2の基準角度θ2になると直進制御が開始されることから、旋回終了を待たずに、早めに直進制御が開始されて作業部4が作業位置に切替えられるので、機体旋回後の作業の速やかな再開によって作業能率を確保することができる。
【0047】
また、機体旋回開始時においては、ピットマンアーム等から、サイドクラッチの非伝動動作時に油圧上げとして作業部4の動作を停止することもできる。
【0048】
(スロットル制御)
次に、機体旋回におけるスロットル制御について説明する。
機体旋回において、HSTレバーが一定の場合に、後輪回転センサ205によって不等速回転を検出したときは、スロットルモータ111の制御によってエンジン回転を上昇させることによって出力を安定させ、出力不足を改善してフィーリングを向上することができる。
【0049】
(線引きマーカー)
次に、線引きマーカーの構成について説明する。
線引きマーカー121は、その要部拡大図および動作説明図をそれぞれ図7、図8に示すように、マーカーチューブ122の根元側を芯棒122aに嵌合して回動可能に支持し、かつ、線引き作業位置に回動させるトルクスプリング122bを取付け、マーカーチューブ122を上下させるワイヤー123の取付部123aを逆トルクが作用する位置に定める。
【0050】
ワイヤー123を引っ張ることでマーカーチューブ122を引き上げるとともに、その逆トルクによってチューブ122が回動し、張出し状態の線引きマーカー121を内側に収容することができるので、線引きマーカーの出っ張りによる障害物との干渉がなくなることから、畦際作業や路上走行時の取扱いが容易となる。
【0051】
(泥落とし装置)
次に、泥落とし装置について説明する。
車輪の泥落とし装置は、図9の配管系統展開図に示すように、前輪10,10と後輪11,11にそれぞれエアノズル131,132を配して施肥装置5のブロア58と連通し、田植作業が終了して圃場から出た際に、走行しながらブロア58のエアを使用することにより、車輪の泥を吹き払うことができる。
【0052】
(欠株センサ)
次に、欠株センサについて説明する。
従前における苗との接触を検出するセンサーを苗ガイド等に設けて構成した欠株センサは、苗の土がセンサに付着して誤検知することがあり、そのような問題の解消のために、欠株検出装置の動作平面図を図10に示すように、植付作業部4の後部に距離センサ141を植付条別に設け、既に植え付けた苗Pとの距離Lを測定し、植付入の場合において、苗との距離が所定値以上になると、ブザー186で欠株を知らせるように欠株検出装置を構成することにより、苗Pと非接触で欠株を感知することができる。この場合において、畦クラッチレバーセンサ105と連動して検出動作させる。
【0053】
(施肥駆動部)
次に、施肥駆動部について説明する。
従来の施肥繰出部の施肥ロールは、回転角度位置によって回転速度が異なることから肥料の繰出しムラが避けられなかったが、図11の施肥駆動部の伝動機構図に示すように、施肥駆動ケース151内のギヤ機構152を駆動軸152aから非円形伝動とすることにより、ロッド153のピストン運動の上下動作を等速に(なめらかに)動くようにして、施肥ロール154が等速回転するように構成することにより、ホッパー155からムラなく均一に肥料の繰出しが可能となる。
【符号の説明】
【0054】
1 乗用型田植機
4 苗植付装置(作業部)
10 前輪
11 後輪(駆動輪)
12 ミッションケース
34 ステアリングハンドル(操舵装置)
46 昇降油圧シリンダ
86I サイドクラッチ操作アーム
163 制御装置
193 切れ角センサ
205 後輪回転センサ
206a 設定ダイヤル
206b 設定ダイヤル
221 サイドクラッチ制御用電磁バルブ
θ 操舵角度
θ1 第1の基準角度
θ2 第2の基準角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下降した作業位置と上昇した非作業位置とに昇降可能な対地作業用の作業部(4)と、左右の後輪(11)への伝動状態と非伝動状態とに切替え可能な左右各々のサイドクラッチと、左右の前輪(10)を操舵する操舵装置(34)と、操舵装置(34)の作動により前輪(10)が所定角度以上操舵すると、作業部(4)を自動的に非作業位置まで上昇させると共に、操向内側の後輪(11)のサイドクラッチを非伝動状態にする制御部(163)とを備え、
上記制御部(163)は、操舵装置(34)による旋回動作の開始に起因して旋回行程における走行距離を計測し始め、
操舵装置(34)の作動により前輪(10)の操舵角が所定角度未満になると、左右の後輪(11)のサイドクラッチを伝動状態にすると共に、
操舵装置(34)の作動により前輪(10)の操舵角が所定角度未満になり、且つ計測される前記走行距離が所定距離未満であるとき、作業部(4)を自動的に作業位置まで下降させる構成としたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
下降した作業位置と上昇した非作業位置とに昇降可能な対地作業用の作業部(4)と、左右の後輪(11)への伝動状態と非伝動状態とに切替え可能な左右各々のサイドクラッチと、左右の前輪(10)を操舵する操舵装置(34)と、操舵装置(34)の作動により前輪(10)が第1の基準角度(θ1)以上操舵すると、作業部(4)を自動的に非作業位置まで上昇させると共に、操向内側の後輪(11)のサイドクラッチを非伝動状態にする制御部(163)とを備え、
上記制御部(163)は、操舵装置(34)による旋回動作の開始に起因して旋回行程における走行距離を計測し始め、
操舵装置(34)の作動により前輪(10)の操舵角が第2の基準角度(θ2)未満になると、左右の後輪(11)のサイドクラッチを伝動状態にすると共に、
操舵装置(34)の作動により前輪(10)の操舵角が第2の基準角度(θ2)未満になり、且つ計測される前記走行距離が所定距離未満であるとき、作業部(4)を自動的に作業位置まで下降させる構成とし、
第2の基準角度(θ2)は、第1の基準角度(θ1)より大きい角度に設定してなることを特徴とする作業車両。
【請求項1】
下降した作業位置と上昇した非作業位置とに昇降可能な対地作業用の作業部(4)と、左右の後輪(11)への伝動状態と非伝動状態とに切替え可能な左右各々のサイドクラッチと、左右の前輪(10)を操舵する操舵装置(34)と、操舵装置(34)の作動により前輪(10)が所定角度以上操舵すると、作業部(4)を自動的に非作業位置まで上昇させると共に、操向内側の後輪(11)のサイドクラッチを非伝動状態にする制御部(163)とを備え、
上記制御部(163)は、操舵装置(34)による旋回動作の開始に起因して旋回行程における走行距離を計測し始め、
操舵装置(34)の作動により前輪(10)の操舵角が所定角度未満になると、左右の後輪(11)のサイドクラッチを伝動状態にすると共に、
操舵装置(34)の作動により前輪(10)の操舵角が所定角度未満になり、且つ計測される前記走行距離が所定距離未満であるとき、作業部(4)を自動的に作業位置まで下降させる構成としたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
下降した作業位置と上昇した非作業位置とに昇降可能な対地作業用の作業部(4)と、左右の後輪(11)への伝動状態と非伝動状態とに切替え可能な左右各々のサイドクラッチと、左右の前輪(10)を操舵する操舵装置(34)と、操舵装置(34)の作動により前輪(10)が第1の基準角度(θ1)以上操舵すると、作業部(4)を自動的に非作業位置まで上昇させると共に、操向内側の後輪(11)のサイドクラッチを非伝動状態にする制御部(163)とを備え、
上記制御部(163)は、操舵装置(34)による旋回動作の開始に起因して旋回行程における走行距離を計測し始め、
操舵装置(34)の作動により前輪(10)の操舵角が第2の基準角度(θ2)未満になると、左右の後輪(11)のサイドクラッチを伝動状態にすると共に、
操舵装置(34)の作動により前輪(10)の操舵角が第2の基準角度(θ2)未満になり、且つ計測される前記走行距離が所定距離未満であるとき、作業部(4)を自動的に作業位置まで下降させる構成とし、
第2の基準角度(θ2)は、第1の基準角度(θ1)より大きい角度に設定してなることを特徴とする作業車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−4642(P2011−4642A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150227(P2009−150227)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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