説明

導体張積層板、並びに、これを用いた印刷配線板及び多層配線板

【課題】高周波の電気信号を伝達可能であり、導体層と絶縁層とが十分な強度で接着され、しかも耐熱性も十分に優れる配線板を製造可能な導体張積層板を提供する。
【解決手段】導体張積層板1は、絶縁層2、接着層4及び導体層6をこの順に備えた構造を有している。ここで、接着層4は、所定の樹脂組成物の硬化物から構成されるものである。この樹脂組成物は、(A)成分;ポリアミドイミドと、(B)成分;ポリブタジエン構造及びオキシラン環を有する特定のエポキシ化合物と、ラジカル反応開始剤とを含む樹脂組成物の硬化物からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体張積層板、並びに、これを用いた印刷配線板及び多層配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話のような移動体通信機器、ネットワーク関連電子機器、コンピュータ等の電子機器においては、大容量の情報を高速で伝送・処理する必要性が増してきている。この傾向に対応するため、これらの電子機器に搭載される配線板としては、従来以上に高周波数の電気信号を伝達可能なものが必要とされている。しかしながら、一般に高周波の電気信号は減衰し易いため、高周波信号を用いる場合、伝送損失が大きく、情報を正確に伝達することが困難な傾向にあった。
【0003】
近年では、このような高周波の電気信号の減衰を抑制するため、伝送損失の小さい配線板が盛んに開発されている。配線板における伝送損失は、主に、絶縁層に起因する損失(誘電体損失)及び導体層に起因する損失(導体損失)に大別される。
【0004】
配線板における誘電体損失を低減するために、従来、絶縁層の構成材料として、比誘電率及び誘電正接が低いフッ素樹脂が使用されてきた。しかし、フッ素樹脂は、溶融粘度が高いため、成形時に高温高圧が必要であり、加工性の点で問題があったほか、寸歩安定性や導体層との接着性が低いといった不都合を有していた。このため、上述したような電子機器に用いる配線板用の材料には不適であった。
【0005】
そこで、配線板の誘電体損失を低減可能なフッ素樹脂に代わる材料として、トリアリルシアヌレートやトリアリルイソシアヌレートを含む樹脂組成物(特許文献1〜3参照)、ポリブタジエンを含む樹脂組成物(特許文献4〜7参照)、アリル基等のラジカル架橋性の官能基を有するポリフェニレンエーテルとトリアリルシアヌレートやトリアリルイソシアヌレートを含む樹脂組成物(特許文献8参照)等が知られている。
【0006】
これらの樹脂組成物は、誘電体損失を低減する効果に優れるものであったが、配線板として近年主流となりつつある多層配線板においては、伝送損失を低減する効果が十分に得られ難かった。これは、多層配線板においては、絶縁層が200μm以下の厚みに設計されるなど極めて薄くなっている一方、多層化によって多数の導体層が設けられているため、伝送損失が、誘電体損失よりも導体損失に支配され易い傾向にあるためである。つまり、多層配線板において伝送損失を低減するには、従来の誘電体損失だけでなく、導体損失も十分に低減することが求められる。
【0007】
配線板における導体層は、通常、絶縁層に対する接着性を良好にするために、その接着面に粗面化処理(粗面化された面を以下、「M面」という)が施されている場合が多い。しかしながら、導体損失は、導体層の表面が粗いほど大きい傾向にあるため、最近では、できるだけ表面粗さが小さい導体層を用いることが試みられている。特に、上述した多層配線板の用途においては、M面の十点平均粗さ(Rz)が4μm以下である導体層を適用することが検討されている。
【0008】
また、配線板には、上述した伝送損失が小さいことのほか、良好なインピーダンス制御が可能であることが求められている。そのためには、回路パターンの導体幅を精度良く調整できることが望ましい。通常、回路パターンは、導体層を構成する金属箔等をエッチングすることによって形成されるが、このエッチングは、金属箔の表面が平滑であればあるほど精細に行うことができる。このように、インピーダンス制御の観点からも、配線板に用いる導体層は、その表面が平滑であることが好ましい。
【0009】
しかし、多層配線板において伝送損失を十分に低減するために、絶縁層として特許文献1〜8に記載の樹脂からなるものを用い、且つ、導体層として表面が平滑なものを用いると、上述した樹脂材料が低極性であるが故に導体層との接着性がもともと低いのに加えて、導体層の表面が平滑であることから樹脂材料とのアンカー効果も生じ難くなり、その結果、絶縁層と導体層との接着性が更に不十分となり易い傾向にあった。このため、これらの材料を用いて得られた多層配線板は、導体層と絶縁層との剥離が生じ易かった。
【0010】
そこで、配線板における導体層と絶縁層との接着性を向上するための方法として、両層の間に所定の樹脂層を導入する方法が提案されている。具体的には、ビニル基により硬化するポリブタジエンを用いたプリプレグに対し、マレイン酸、カルボン酸等で変性されたポリブタジエンからなる樹脂層が付着した銅箔を、この樹脂層が接するように積層して銅張積層板を得る方法が知られている(特許文献9,10参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公平6−69746号公報
【特許文献2】特公平7−47689号公報
【特許文献3】特開2000−265777号公報
【特許文献4】特公昭58−21925号公報
【特許文献5】特公平6−69746号公報
【特許文献6】特公平7−47689号公報
【特許文献7】特開平10−117052号公報
【特許文献8】特公平6−92533号公報
【特許文献9】特開昭54−74883号公報
【特許文献10】特開昭55−86744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献9又は10に記載の方法のように、絶縁層と導体層との間に変性されたポリブタジエンからなる樹脂層を導入した場合であっても、例えば、Rzが4μm以下であるような平滑な導体層を用いた場合は、両層の接着性を十分に向上することは困難であった。
【0013】
本発明はこのような事情にかんがみてなされたものであり、特に高周波帯での伝送損失を十分に低減可能であり、導体層と絶縁層との接着性が十分に優れた配線板を製造可能な導体張積層板を提供することを目的とする。本発明はまた、かかる導体張積層板を用いて得られた配線板及び多層配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の導体張積層板は、絶縁層と、この絶縁層に対向して配置された導体層と、絶縁層及び導体層に挟まれた接着層とを備えており、接着層が、(A)成分;ポリアミドイミド、及び、(B)成分;該ポリアミドイミドと反応し得る官能基を有し、かつエチレン性不飽和結合を有する化合物を含む樹脂組成物の硬化物からなるものであることを特徴とする。
【0015】
このように、上記本発明の導体張積層板は、導体層と絶縁層との間に接着層を有するものである。この接着層を形成する樹脂組成物に含まれる(A)成分は、平滑な表面を有する導体層に対して優れた接着性を発揮し得るほか、耐熱性、特に吸湿時における耐熱性にも優れるという特性を有している。また、この樹脂組成物に含まれている(B)成分は、低誘電率の樹脂材料等を含む絶縁層に対しても優れた接着性を発揮し得るものである。
【0016】
このため、これらを組み合わせて含有する樹脂組成物の硬化物からなる接着層は、導体層及び絶縁層の両方に優れた接着性を有するようになる。その結果、本発明の導体張積層板を用いて得られた配線板は、伝送損失を低減するために、例えば表面のRzが4μm以下である導体層を用い、しかも、絶縁層が低誘電率で極性が低い樹脂材料を含む場合であっても、両層の剥離が極めて生じ難いものとなる。
【0017】
また、上記特許文献9又は10に記載されたような、導体層と絶縁層との接着性を高め得る樹脂層は、絶縁層を構成する樹脂材料に比して耐熱性、特に吸湿時の耐熱性が低い傾向にあった。このため、このような樹脂層が導入された配線板は、全体として耐熱性が低いものとなってしまっていた。これに対し、上記本発明の導体張積層板における接着層は、上記従来の樹脂層に比して優れた耐熱性を有している。このため、かかる導体張積層板から得られる配線板は、導体層と接着層との間に樹脂材料を含む接着層を有しているにもかかわらず、全体として優れた耐熱性を有するものとなる。
【0018】
本発明の導体張積層板において、接着層が上述した特性を有するようになるのは、以下に示す理由に基づくと推測される。すなわち、樹脂組成物中の(A)成分は、導体層への接着性に優れるものの、絶縁層に含まれる樹脂材料とは相溶性が低く、絶縁層との接着性が不十分な傾向にある。一方、(B)成分は、樹脂材料との相溶性に優れる特性を有している。これらの両方を含む樹脂組成物においては、(B)成分が、樹脂材料と相溶して絶縁層に強く接着するとともに、当該(B)成分中のポリアミドイミドと反応し得る官能基が、(A)成分であるポリアミドイミドと反応して結合を生じる。こうして、接着層においては、(A)成分が、絶縁層に対して強く接着された状態となる。その結果、導体層と絶縁層とが、接着層を介して強固に接着されることとなる。
【0019】
また、樹脂組成物に含まれる(B)成分は、分子中にエチレン性不飽和結合を含む構造単位を有しているため、かかる構造単位において重合反応を生じ得る。このため、樹脂組成物においては、上述したような(A)成分と(B)成分との反応が生じると同時に(B)成分同士の反応が生じる。そして、接着層中には、(B)成分同士の反応により多数の架橋構造が形成されることとなる。このように、接着層は、もともと耐熱性の高いポリアミドイミドを含有している上、上述の如く多数の架橋構造が形成された状態となっている。このため、かかる接着層は、導体層と絶縁層との間に設けられた従来の樹脂層に比べて、極めて優れた耐熱性を有するものとなる。加えて、この接着層は、このような架橋構造を有していることから、強度等においても優れた特性を有するものとなる。ただし、作用は必ずしもこれらに限定されない。
【0020】
上記本発明の導体張積層板において、樹脂組成物中の(A)成分は、飽和炭化水素基からなる構成単位を有するものであると好ましい。このような構造単位を有する(A)成分は、耐熱性、難燃性等の特性に更に優れるものであるため、接着層、ひいては導体張積層板も同様に、これらの特性に優れるものとなる。
【0021】
また、(B)成分におけるポリアミドイミドと反応する官能基は、オキシラン環又はオキセタン環を有していると好ましい。これらの官能基は、主としてポリアミドイミドのアミド基と反応を生じて容易に結合を形成することができる。
【0022】
さらに、(B)成分は、エチレン性不飽和結合を含む官能基として、ビニル基、アリル基及び(メタ)アクリル基からなる群より選ばれる少なくとも一種の基を有していると好ましい。これらの官能基を有する(B)成分同士は、互いに重合反応を容易に生じ得る。このため、このような(B)成分を含む樹脂組成物によれば、接着層に架橋構造が導入され易くなり、耐熱性等の特性が更に向上する。なかでも、かかる構造単位は、ビニル基を有していると更に好ましい。
【0023】
より具体的には、(B)成分は、ポリブタジエン構造及びオキシラン環を有するエポキシ化合物であると好ましい。このようなエポキシ化合物は、接着層においてより架橋構造を形成し易いものとなる。
【0024】
このエポキシ化合物としては、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、イミノ基及び下記式(1)で表される基からなる群より選ばれる1種以上の基を有する変性ポリブタジエンと、2つ以上のオキシラン環を有する化合物とを反応させてなる化合物が好ましい。特に、エポキシ化合物は、その側鎖又は末端にビニル基を有するものであると一層好ましい。
【化1】

【0025】
(B)成分であるエポキシ化合物としては、特に、下記一般式(2)、(3)又は(4)で表される化合物、あるいは、下記一般式(6)で表される構造単位を有する化合物が好適である。これらの化合物は、ポリアミドイミドのアミド基と反応するエポキシ基、及び、側鎖にブタジエン由来のビニル基を有しており、これらを含む樹脂組成物からなる接着層は、接着性及び耐熱性に極めて優れるものとなる。
【化2】


[式(2)中、nは2〜8であり、n及びmの合計は10〜10000の整数を示す。]
【化3】


[式(3)中、R31及びR32は、それぞれ独立に水素原子又は水酸基を示し、R33は、ビニル基又はオキシラニル基を示す。]
【化4】


【化5】


[式(4)中、R41は、上記式(5)で表される基を示し、iは0〜100の整数であり、i及びjの合計は10〜10000の整数を示す。]
【化6】


[式(6)中、p及びuはそれぞれ独立に1〜10000の整数を示し、qは1〜100の整数を示し、r及びsはそれぞれ独立に0〜100の整数を示し、tは1〜10000の整数を示す。ただし、r及びsのいずれかは1以上の整数を示す]
【0026】
そして、接着層を形成するための樹脂組成物においては、(B)成分の配合割合が、(A)成分100質量部に対して5〜200質量部であると好ましい。(A)成分及び(B)成分がこのような条件を満たしていると、(A)成分と(B)成分との反応、及び、(B)成分同士の反応が効率よく生じるようになり、接着層の接着力及び耐熱性が更に向上する。
【0027】
また、本発明の他の導体張積層板は、絶縁層と、この絶縁層に対向して配置された導体層と、絶縁層及び導体層に挟まれた接着層とを備えており、接着層が、(a)成分;ポリアミドイミド、(b)成分;ポリアミドイミドと反応し得る官能基を2つ以上有する化合物、及び、(c)成分;(b)成分と反応し得る官能基を有し、かつエチレン性不飽和結合を有する化合物を含む樹脂組成物の硬化物から構成されるものであることを特徴とする。
【0028】
この形態の導体張積層板の接着層を形成する樹脂組成物は、硬化の際に、(a)成分と(b)成分との反応が生じるとともに、(b)成分と(c)成分との反応が生じ得る。これにより、接着層中には、上で述べた形態の導体張積層板の接着層と同様に、(a)成分と(b)及び(c)成分の反応物との結合や、(b)成分同士の反応による架橋が形成されることとなる。その結果、この形態の導体張積層板においても、導体層と絶縁層とが接着層を介して強固に接着された状態となり、更に、この導体張積層板は、優れた耐熱性をも有するものとなる。
【0029】
樹脂組成物に含まれる(a)成分は、飽和炭化水素からなる構造単位を有するものであると好ましい。これにより、導体張積層板が、耐熱性、難燃性等により優れるものとなる。
【0030】
また、(b)成分は、2つ以上のオキシラン環又は2つ以上のオキセタン環を有するものであると好ましい。これらの環構造は、ポリアミドイミドのアミド基と良好に反応し得るものであり、これにより、樹脂組成物における上述した結合や架橋がより生じやすくなる。
【0031】
さらに、(c)成分は、その側鎖又は末端にビニル基を有し、かつ、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、イミノ基及び下記式(1)で表される基からなる群より選ばれる1種以上の基を有する変性ポリブタジエンであると好ましい。この変性ブタジエンにおけるこれらの官能基は、(b)成分と良好に反応を生じ得る。
【化7】

【0032】
接着層を形成するための樹脂組成物においては、(b)成分及び(c)成分の総配合割合が、(a)成分100質量部に対して5〜200質量部であり、(c)成分の配合割合が、(b)成分100質量部に対して5〜1000質量部であると好ましい。これらの比率を満たすように配合された樹脂組成物は、硬化の際に上述した各反応が良好に生じるものとなる。その結果、かかる樹脂組成物の硬化物からなる接着層は、導体層及び絶縁層との接着性、並びに、耐熱性に一層優れるものとなる。
【0033】
上述した2つの形態の導体張積層板においては、接着層が、0.1〜10μmの厚さを有していると好ましい。このような厚さを有する接着層は、導体層及び絶縁層に対して優れた接着性を発揮し得るものとなる。
【0034】
さらに、これらの導体張積層板において、導体層は、その接着層側の表面が、4μm以下の十点平均表面粗さ(Rz)を有していると好ましい。こうすれば、この金属箔を備える導体張積層板から得られる配線板は、極めて伝送損失が小さいものとなる。そして、本発明の導体張積層板は、上述した特定の接着層を有しているため、このような平滑な金属箔を導体層に用いた場合であっても、導体層と絶縁層との接着性の低下が極めて少ない。
【0035】
また、上記導体張積層板における絶縁層は、絶縁性樹脂と、この絶縁性樹脂中に配された基材とから構成され、基材として、ガラス、紙材及び樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の材料からなる繊維の織布又は不織布を備えるものであると好ましい。
【0036】
この絶縁層に含まれる絶縁性樹脂としては、エチレン性不飽和結合を有する樹脂が好適である。より具体的には、この絶縁性樹脂としては、ポリブタジエン、ポリトリアリルシアヌレート、ポリトリアリルイソシアヌレート、及び、ポリフェニレンエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂であるとより好ましい。なかでも、ポリフェニレンエーテルを含有すると特に好ましい。これらの樹脂は、低誘電率且つ低誘電正接であるため、誘電体損失を大幅に低減することができる。
【0037】
上述した構成を有する導体張積層板においては、絶縁層の比誘電率が、1GHzで4.0以下であると好ましい。このような条件を満たす絶縁層によれば、誘電体損失を大幅に低減できるようになる。その結果、この導体張積層板から得られる配線板は、伝送損失が極めて少ないものとなる。
【0038】
そして、本発明の導体張積層板は、導体箔上に接着層を備える接着層付き導体箔の接着層上に、絶縁層を積層して加熱加圧成形することにより得られたものが好適である。かかる製造方法により得られた導体張積層板は、接着層と導体層との接着性が特に良好なものとなる。
【0039】
本発明はまた、上述した導体張積層板を用いて得られた印刷配線板や、この印刷配線板をコア基板として備える多層配線板を提供する。すなわち、本発明の導体張積層板は、上記本発明の導体張積層板における導体層を、所定の回路パターンに加工して得られたものである。また、本発明の多層配線板は、コア基板と、このコア基板の少なくとも片面上に設けられた配線板とを備える多層配線板であって、コア基板が、少なくとも一層の上記本発明の印刷配線板からなるものであることを特徴とする。
【0040】
これらの配線板及び多層配線板は、回路パターンと絶縁層との間に上述した特定の接着層を有しているため、極めて表面が平滑な回路パターン、及び、誘電体損失が極めて小さい絶縁層を備える場合であっても、回路パターンと絶縁層とが強固に接着されたものとなり、しかも、優れた耐熱性も併せて具備するものとなる。
【発明の効果】
【0041】
本発明の導体張積層板は、導体層に、例えば、M面のRzが4μm以下であるような表面が平滑な金属箔を用い、しかも、低比誘電率且つ低誘電正接であるような極性の小さい樹脂材料を含む絶縁層を適用した場合であっても、接着層を介することにより両者が強固に接着されたものとなる。その結果、高周波の電気信号を伝達可能であり、導体層と絶縁層とが十分な強度で接着され、しかも耐熱性も十分に優れる印刷配線板及び多層配線板が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】好適な実施形態の導体張積層板の断面構造を模式的に示す図である。
【図2】実施形態の配線板の断面構造を示す模式図である。
【図3】実施形態の多層配線板の断面構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0044】
[第1実施形態]
図1は、好適な実施形態の導体張積層板の断面構造を模式的に示す図である。導体張積層板1は、絶縁層2、接着層4及び導体層6をこの順に備えた構造を有している。
【0045】
絶縁層2としては、公知のプリプレグを所定の枚数張り合わせ、加熱加圧処理を行って得られたものが挙げられる。かかるプリプレグとしては、調整された樹脂ワニスを、ガラス、紙材及び有機高分子化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の材料からなる繊維の織布又は不織布に含浸させて公知の方法により作製されたものを用いることができる。ガラスからなる繊維(ガラス繊維)としては、Eガラス、Sガラス、NEガラス、Dガラス、Qガラスが例示でき、有機高分子化合物からなる繊維(有機繊維)としては、アラミド、フッ素系樹脂、ポリエステル、液晶性高分子等が例示できる。
【0046】
樹脂ワニスに含まれる樹脂としては、絶縁性を有する樹脂(絶縁性樹脂)が好ましく、このような絶縁性樹脂としては、ポリブタジエン、ポリトリアリルシアヌレート、ポリトリアリルイソシアヌレート及びエチレン性不飽和結合を含む構造単位を有するポリフェニレンエーテル等が挙げられる。これらの絶縁性樹脂は、比誘電率及び誘電正接が低いことから、導体張積層板1から得られる配線板の伝送損失を低減することができる。
【0047】
導体層6は、導電性を有する材料からなるものであれば特に制限なく適用できる。例えば、金属箔から構成されるものが挙げられる。実施形態の導体張積層板1の導体層6に適用する金属箔としては、銅箔、ニッケル箔、アルミ箔が好ましく、なかでも電解銅箔又は圧延銅箔が好ましい。
【0048】
導体層6を形成するための金属箔は、その防錆性、耐薬品性や耐熱性を向上させる観点から、ニッケル、スズ、亜鉛、クロム、モリブデン、コバルト等によるバリアー層形成処理が全面に施されていると好ましい。また、このような金属箔は1種の金属材料からなる単層であってもよく、複数の金属材料からなる単層であってもよく、異なる材質の金属層を複数積層して形成されていてもよい。このような金属箔の厚さは特に限定されない。
【0049】
これらの金属箔のうち、銅箔としてはF2−WS(古河サーキットフォイル社製、Rz=3.0μm)、F0−WS(古河サーキットフォイル社製、商品名、Rz=1.2μm)、3EC−VLP(三井金属社製、商品名、Rz=3.0μm)等が商業的に入手可能である。
【0050】
また、導体箔6の、接着層4に接する側の表面には、接着層との接着性を向上させるための表面粗化処理が施されていてもよい。ただし、表面粗化処理に関しては、導体箔6の上記面の表面粗さ(Rz)が好ましくは4μm以下、より好ましくは3μm以下となるようにする。こうすれば、導体張積層板1を配線板等に用いた場合の高周波伝送特性を更に向上できる。
【0051】
接着層4は、所定の樹脂組成物の硬化物から構成されるものである。第1実施形態の導体張積層板における接着層4を形成するための樹脂組成物は、(A)成分;ポリアミドイミド、及び、(B)成分;このポリアミドイミドのアミド基と反応し得る官能基を有し、かつエチレン性不飽和結合を有する化合物(以下、「アミド反応性不飽和化合物」と略す)である。以下、接着層4を構成する樹脂組成物及びその成分について説明する。
【0052】
<(A)成分>
(A)成分であるポリアミドイミドは、特に限定されるものではないが、例えば、無水トリメリット酸と芳香族ジイソシアネートとの反応による、いわゆるイソシアネート法で合成されるポリアミドイミドが挙げられる。ポリアミドイミドを合成するイソシアネート法の具体例としては、芳香族トリカルボン酸無水物とエーテル結合を有するジアミン化合物とをジアミン化合物過剰存在下で反応させ、次いでジイソシアネートを反応させる方法(例えば、特許2897186号公報に記載の方法)、芳香族ジアミン化合物と無水トリメリット酸とを反応させる方法(例えば、特開平04−182466号公報に記載の方法)が挙げられる。
【0053】
また、ポリアミドイミドの主鎖にシロキサン構造を導入させてもよい。これにより、接着層20を硬化させて得られる硬化層の弾性率や可とう性等の特性が向上し、さらに乾燥効率等も改善することができる。かかる主鎖にシロキサン構造を有するポリアミドイミドは、イソシアネート法に従って合成可能である。具体的な合成方法としては、例えば、芳香族トリカルボン酸無水物、芳香族ジイソシアネート及びシロキサンジアミン化合物を重縮合させる方法(例えば、特開平05−009254号公報に記載の方法)、芳香族ジカルボン酸又は芳香族トリカルボン酸とシロキサンジアミン化合物とを重縮合させる方法(例えば、特開平06−116517号公報に記載の方法)、芳香族環を3つ以上有するジアミン化合物及びシロキサンジアミンを含む混合物と無水トリメリット酸とを反応させて得られるジイミドジカルボン酸を含む混合物を、芳香族ジイソシアネートと反応させる方法(例えば、特開平06−116517号公報に記載の方法)等が挙げられる。本実施形態においては、上述の公知の方法で合成されるポリアミドイミドを用いても、導体と十分に高い接着性を発現し得る。
【0054】
さらには、飽和炭化水素からなる構造単位を有するポリアミドイミドを用いると、導体との接着性が更に向上し、しかも耐湿性が向上するため、吸湿後にも高い接着性を維持し、一層高い耐湿耐熱性が得られる。同様の観点から、上記構造単位が飽和脂環式炭化水素基であるとより好ましい。飽和脂環式炭化水素基を含有するポリアミドイミドは耐湿耐熱性に一層優れ、より高いTgを示す。
【0055】
飽和炭化水素からなる構造単位を有するポリアミドイミドは、例えば、飽和炭化水素基を有するジアミン化合物(以下、「ジアミン化合物」という)と無水トリメリット酸とを反応させて得られるイミド基含有ジカルボン酸を酸ハロゲン化物に誘導して、または縮合剤を用いて、ジアミン化合物と反応させることにより得られる。あるいは、飽和炭化水素からなる構造単位を有するポリアミドイミドは、飽和炭化水素基を有するジアミン化合物と無水トリメリット酸とを反応させて得られるイミド基含有ジカルボン酸に、ジイソシアネートを反応させることによっても得られる。同様に、飽和脂環式炭化水素からなる構造単位を有するポリアミドは、上記の合成法において、ジアミン化合物として飽和脂環式炭化水素基を有するものを用いればよい。
【0056】
(ジアミン化合物)
ジアミン化合物としては、例えば、下記一般式(8a)又は(8b)で表されるような、環状飽和炭化水素基を有するジアミン化合物(以下、「脂環族ジアミン」という)が挙げられる。
【0057】
【化8】


式(8a),(8b)中、Lは、ハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基、カルボニル基、単結合又は下記一般式(9a)又は(9b)で表される2価の基を示し、Lは、ハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基又はカルボニル基を示し、R81、R82、R83、R84、R85及びR86は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、メトキシ基、ハロゲン置換されていてもよいメチル基を示す。
【0058】
【化9】


式(9a)中、Lは、ハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基、カルボニル基又は単結合を示す。
【0059】
脂環族ジアミンとしては、2,2−ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]プロパン、ビス[4−(3−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルホン、ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]メタン、4,4’−ビス(4−アミノシクロヘキシルオキシ)ジシクロヘキシル、ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]エーテル、ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]ケトン、1,3−ビス(4−アミノシクロヘキシルオキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノシクロヘキシルオキシ)ベンゼン、2,2’−ジメチルビシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ジシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、2,6,2’,6’−テトラメチル−4,4’−ジアミン、5,5’−ジメチル−2,2’−スルフォニルジシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、3,3’−ジヒドロキシジシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルエーテル、(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルスルホン、(4,4’−ジアミノシクロヘキシル)ケトン、(3,3’―ジアミノ)ベンゾフェノン、(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタン、(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルエーテル、(3,3’−ジアミノ)ジシクロヘキシルエーテル、(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタン、(3,3’−ジアミノ)ジシクロヘキシルエーテル、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン等を例示できる。これらのジアミン化合物は1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、さらに他のジアミン化合物、すなわち飽和炭化水素基を有していないジアミン化合物を併用することもできる。
【0060】
脂環族ジアミンは、例えば、対応する構造を有する芳香族ジアミン化合物を水素還元することによって容易に得ることが可能である。このような芳香族ジアミン化合物としては、例えば、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(以下、「BAPP」と表記する。)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−4,4’−ジアミン、2,6,2’,6’−テトラメチル−4,4’−ジアミン、5,5’−ジメチル−2,2’−スルフォニルビフェニル−4,4’−ジアミン、3,3’−ジヒドロキシビフェニル−4,4’−ジアミン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルスルホン、(4,4’−ジアミノ)ベンゾフェノン、(3,3’―ジアミノ)ベンゾフェノン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルメタン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(3,3’―ジアミノ)ジフェニルエーテル等を例示できる。
【0061】
芳香族ジアミン化合物の水素還元は、芳香環の一般的な還元方法によって好適に行うことができる。例えば、水素の存在下に種々の触媒存在下で処理する方法が挙げられる。このような触媒としては、ラネーニッケル、酸化白金(D. Varech et al., Tetrahedron Letters 26, 61(1985)、R. H. Baker et al., J. Am. Chem. Soc., 69, 1250(1947)、ロジウム−酸化アルミ(J. C. Sircar et al.,J. Org. Chem., 30, 3206(1965)、A. I. Meyers et al., organic Synthesis, Collective Volume VI,371(1988)、A. w. Burgstahler, organic Synthesis,Collective Volume V、 591(1973)、A. J. Briggs, Synthesis, 19880, 66)、酸化ロジウム−酸化白金(S.Nishimura, Bull. Chem. Soc. Jpn., 34, 32(1961)、E. J.Corey et al., J. Am. Chem. Soc.,101, 1608(1979)、チャコール担持ロジウム(K. Chebaane et al., Bull. Soc. Chim. Fr., 244(1975))等が挙げられる。また、水素化ホウ素ナトリウム−塩化ロジウム系(P. G. Gassman et al., Organic Synthesis Collective Volume VI,581(1988)、P. G. Gassman et al., Organic SynthesisCollective Volume VI, 601(1988))による方法も例示できる。
【0062】
上述した脂環族ジアミンのなかでも、上記一般式(8a)で表される化合物が好ましく、特に、下記化学式(10)で表される(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタンが好ましい。このような化合物は、例えば、ワンダミンHM(アミン当量105、新日本理化社製商品名)として商業的に入手可能である。
【化10】

【0063】
本実施形態において好適に用いられるポリアミドイミドは、ジアミン化合物として、上述したジアミンに加えて下記一般式(11)で表される脂肪族ジアミン化合物(以下、「脂肪族ジアミン」という)を更に含有させることが好ましい。
【0064】
【化11】


上記一般式(11)中、Lは、メチレン基、スルホニル基、オキシ基、カルボニル基又は単結合を示し、R111及びR112はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基を示し、kは1〜50の整数を示す。
【0065】
上記一般式(11)で表されるジアミン化合物において、R111及びR112はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基であると好ましい。フェニル基に結合していてもよい置換基としては、炭素数1〜3のアルキル基やハロゲン原子が挙げられる。一般式(11)で表されるジアミン化合物において、低弾性率化及び高ガラス転移温度(Tg)化を両立する観点からは、Lがオキシ基であると特に好ましい。このようなジアミン化合物としては、ジェファーミンD−400、ジェファーミンD−2000(以上、サンテクノケミカル社製商品名)等が例示できる。
【0066】
本実施形態において好適に用いられるポリアミドイミドは、上述のような特定の飽和炭化水素基を有するジアミン化合物から得られることに起因して、耐吸水性又は撥水性が従来のポリアミドイミドと比較して極めて高くなる。特に、脂環式飽和炭化水素基を有するジアミン化合物から得られる、脂環式飽和炭化水素からなる構造単位を有するポリアミドイミドを樹脂組成物の構成材料として用いて本実施形態の導体張積層板1を形成すると、かかる導体張積層板から得られる多層プリント配線板は、例えば芳香環を有するポリアミドイミドを含有する樹脂組成物を構成材料に用いた場合に比べて、吸湿時の接着性が低下し難くなる。
【0067】
さらに好ましくは、本実施形態に係るポリアミドイミドは、飽和炭化水素基を有するジアミン化合物に芳香族ジアミン化合物(以下、「芳香族ジアミン」という)を併用して合成することができる。そのような芳香族ジアミンとしては、下記一般式(12a)、(12b)で表されるものを例示できる。
【0068】
【化12】


上記式(12a),(12b)中、Lは、ハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基、カルボニル基、単結合又は下記式(13a)又は(13b)で表される2価の基を示し、Lは、ハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基又はカルボニル基を示し、R121、R122、R123、R124、R125及びR126は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、メトキシ基、ハロゲン置換されていてもよいメチル基を示す。
【0069】
【化13】


式(13a)中、Lはハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基、カルボニル基又は単結合を示す。
【0070】
より具体的には、芳香環に2つのアミノ基が直接結合している化合物、及び2つ以上の芳香環が直接又は一つの基を介して結合しているジアミンであれば特に制限はないが、例えば、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−4,4’−ジアミン、2,6,2’,6’−テトラメチル−4,4’−ジアミン、5,5’−ジメチル−2,2’−スルフォニルビフェニル−4,4’−ジアミン、3,3’−ジヒドロキシビフェニル−4,4’−ジアミン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルスルホン、(4,4’−ジアミノ)ベンゾフェノン、(3,3’―ジアミノ)ベンゾフェノン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルメタン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(3,3’―ジアミノ)ジフェニルエーテル等が挙げられる。これらの芳香族ジアミンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの芳香族ジアミンを上述のジアミン化合物と併用して得られる接着層の熱硬化性樹脂組成物は、更にTgが向上し、耐熱性を改良することが可能となる。
【0071】
さらには、ジアミン化合物として、下記一般式(14)で表されるシロキサンジアミンを併用してもよい。
【化14】

【0072】
上記式(14)中、R141、R142、R143、R144、R145及びR146(以下、「R141〜R146」のように表記する)は、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基であると好ましい。フェニル基に結合していてもよい置換基としては、炭素数1〜3のアルキル基又はハロゲン原子が挙げられる。R147及びR148は、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキレン基又はアリーレン基が好ましく、アリーレン基としては、置換基を有していてもよいフェニレン基又は置換基を有していてもよいナフタレン基が好ましい。これらのアリーレン基に結合していてもよい置換基としては、炭素数1〜3のアルキル基又はハロゲン原子が好ましい。また、a及びbはそれぞれ1〜15の整数を示す。
【0073】
かかるシロキサンジアミンとしては、ジメチルシロキサンの両末端にアミノ基が結合したものを用いることが特に好ましい。これらのシロキサンジアミンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。一般式(11)で表されるシロキサンジアミンは、シリコーンオイルX−22−161AS(アミン当量450)、X−22−161A(アミン当量840)、X−22−161B(アミン当量1500)、X−22−9409(アミン当量700)、X−22−1660B−3(アミン当量2200)(以上、信越化学工業社製、商品名)、BY16−853(アミン当量650)、BY16−853B(アミン当量2200)、(以上、東レダウコーニングシリコーン社製、商品名)等として商業的に入手可能である。
【0074】
上述のシロキサンジアミンを原料として用いることにより得られるポリアミドイミドは、主鎖にシロキサン構造を有するようになるため、可とう性が向上し、また、高温条件下における膨れ等の発生を大幅に低減させることができる。
【0075】
((A)成分の製造方法)
次に、これらのジアミン化合物を用い、(A)成分であるポリアミドイミドを製造する方法について説明する。
【0076】
ポリアミドイミドの製造においては、例えば、まず、上記ジアミン化合物のアミノ基を無水トリメリット酸のカルボキシル基又は無水カルボキシル基と反応させる。この際、上記アミノ基が無水カルボキシル基と反応すると好ましい。かかる反応は、両化合物を非プロトン性極性溶媒に溶解又は分散させて、70〜100℃で行うことができる。非プロトン性極性溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、シクロヘキサノン等を例示でき、これらのなかでもNMPが特に好ましい。これらの非プロトン性極性溶媒は、1種を単独でも用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
上述の非プロトン性極性溶媒の配合量は、この非プロトン性極性溶媒、ジアミン化合物及び無水トリメリット酸を含有する溶液の全重量に対して、固形分が10〜70質量%となる量であると好ましく、20〜60質量%となる量であるとより好ましい。この溶液中の固形分が10質量%未満となる場合、溶媒の使用量が多いため工業的に不利となる傾向にある。一方、70質量%を超えると、無水トリメリット酸の溶解性が低下し、充分な反応を行うことが困難となる傾向にある。
【0078】
次いで、上記反応後の溶液中に水と共沸可能な芳香族炭化水素を添加し、150〜200℃で更に反応させて脱水閉環反応を生じさせることにより、イミド基含有ジカルボン酸を得ることができる。水と共沸可能な芳香族炭化水素としては、トルエン、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン等を例示でき、トルエンを用いることが好ましい。かかる芳香族炭化水素は、非プロトン性極性溶媒100質量部に対して、10〜50質量部に相当する量を添加されることが好ましい。芳香族炭化水素の添加量が、非プロトン性極性溶媒100質量部に対して10質量部未満である場合、水の除去効果が不十分となる傾向にあり、イミド基含有ジカルボン酸の生成量が減少する傾向にある。また、50質量部を超えると、反応温度が低下し、イミド基含有ジカルボン酸の生成量が減少する傾向にある。
【0079】
また、脱水閉環反応中に、水と同時に溶液中の芳香族炭化水素も留出することにより、その芳香族炭化水素量が上述の好適な範囲よりも少なくなる場合があるため、例えば、コック付きの水分定量受器中に留出した芳香族炭化水素を水と分離した後、これを反応溶液中に戻す等して、溶液中の芳香族炭化水素の量を一定割合に保つことが好ましい。なお、脱水閉環反応の終了後には、溶液の温度を150〜200℃程度に保持して水と共沸可能な芳香族炭化水素を除去しておくことが好ましい。
【0080】
このようにして得られるイミド基含有ジカルボン酸としては、例えば、下記一般式(15)で表される化合物が好適である。
【0081】
【化15】


式中、Lは上記式(8a)、(8b)、(11)、(12a)、(12b)又は(14)で表されるジアミン化合物のアミノ基を除いた残基を示す。
【0082】
本実施形態において好適に用いられるポリアミドイミドは、上述したようなイミド基含有ジカルボン酸を酸ハロゲン化物に誘導し、これを上記ジアミン化合物と共重合させることにより製造することができる。具体的には、イミド基含有ジカルボン酸は、塩化チオニルや三塩化リン、五塩化リン、ジクロロメチルメチルエーテルとの反応により容易に酸ハロゲン化物に誘導され、これにより得られるイミド基含有ジカルボン酸のハロゲン化物は、室温若しくは加熱条件下で容易に上記ジアミン化合物と共重合させることができる。
【0083】
また、本実施形態において好適に用いられるポリアミドイミドは、上述したようなイミド基含有ジカルボン酸を縮合剤の存在下、上記ジアミン化合物と共重合させて製造することもできる。かかる反応において、縮合剤としては、アミド結合を形成する一般的な縮合剤を用いることができるが、特にジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド若しくはN−エチル−N’−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミドを単独で、又はN−ヒドロキシスクシンイミド若しくは1−ヒドロキシベンゾトリアゾールと併用して用いることが好ましい。
さらに、本実施形態のポリアミドイミドは、上述したように、上記イミド基含有ジカルボン酸を酸ハロゲン化物に誘導した後、ジイソシアネートを反応させて得ることもできる。かかる反応を経由する場合、(ジアミン化合物:無水トリメリット酸:ジイソシアネート)は、モル比で1.0:(2.0〜2.2):(1.0〜1.5)の範囲であることが好ましく、1.0:(2.0〜2.2):(1.0〜1.3)の範囲であることがより好ましい。反応の際、これらの化合物のモル比を上記範囲内とすることにより、より高分子量でフィルム形成に有利なポリアミドイミドを得ることが可能となる。
【0084】
ポリアミドイミドの合成の際に用いるジイソシアネートとしては、下記一般式(16)で表される化合物を例示できる。
【0085】
【化16】


上記式(16)中、Lは、1つ以上の芳香環を有する2価の有機基、又は、2価の脂肪族炭化水素基を示し、−Ph−CH−Ph−で表される基(下記式(17a))、トリレン基、ナフチレン基、ヘキサメチレン基、2,2,4−トリメチルヘキサメチレン基及びイソホロン基(下記式(17b))からなる群より選ばれる少なくとも一種の基が好適である。
【化17】

【0086】
上記式(16)で表されるジイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネート及び芳香族ジイソシアネートを用いることができるが、芳香族ジイソシアネートを用いることが好ましく、両者を併用することが特に好ましい。芳香族ジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、2,4−トリレンダイマー等が例示でき、なかでも、MDIが好ましい。芳香族ジイソシアネートとしてMDIを含有させることにより、得られるポリアミドイミドの可とう性を向上させ、結晶性を低減させることができるので、ポリアミドイミドのフィルム形成性を向上させることができる。また、脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が例示できる。
【0087】
芳香族ジイソシアネートと脂肪族ジイソシアネートとを併用する場合は、脂肪族ジイソシアネートを芳香族ジイソシアネート100モル部に対して5〜10モル部程度添加することが好ましい。これにより、得られるポリアミドイミドの耐熱性を更に向上させることができるようになる。
【0088】
イミド基含有ジカルボン酸とジイソシアネートとの反応は、イミド基含有ジカルボン酸を含む溶液中にジイソシアネートを添加することにより、反応温度130〜200℃で行うことができる。塩基性触媒を用いる場合は、この反応を70〜180℃で行うことが好ましく、120〜150℃で行うことがより好ましい。塩基性触媒の存在下でかかる反応を行う場合は、塩基性触媒の不在下で反応を行う場合に比べて、より低い温度でこの反応を進行させることが可能となるため、高温条件下におけるジイソシアネート同士の反応等の副反応の進行を抑制でき、更に高分子量のポリアミドイミド化合物を得ることが可能となる。
【0089】
かかる塩基性触媒としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリ(2−エチルへキシル)アミン、トリオクチルアミン等のトリアルキルアミンが例示できる。なかでもトリエチルアミンは、上述の反応を促進できる好適な塩基性触媒であり、かつ反応後の系内からの除去が容易であることから特に好ましい。
【0090】
上記反応により得られるポリアミドイミドは、例えば、下記一般式(18)で表される構造単位を有している。なお、下記式(18)中、L及びLは上記と同義である。
【化18】

【0091】
これらの方法により得られたポリアミドイミドの重量平均分子量(Mw)は、20000〜300000であると好ましく、30000〜200000であるとより好ましく、40000〜150000であると更に好ましい。なお、ここでいうMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定を行い、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算して得られた値である。
【0092】
<(B)成分>
(B)成分であるアミド反応性不飽和化合物は、熱を加えられること等により上述した(A)成分(ポリアミドイミド)のアミド基と反応し得る官能基を有するものであり、エチレン性不飽和結合を有していれば特に限定されない。このような(B)成分としては、下記式(19a)で表されるオキシラン環又は下記式(19b)で表されるオキセタン環を有するものが好ましく、オキシラン環を有するものであるとより好ましい。具体的には、例えば、エチレン性不飽和結合を有するエポキシ化合物、エチレン性不飽和結合を有するオキセタン化合物等が挙げられ、エチレン性不飽和結合を有するエポキシ化合物を用いると好ましい。
【化19】

【0093】
かかるエチレン性不飽和結合を有するエポキシ化合物としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基等のエチレン性不飽和基を1つ以上有するエポキシ樹脂であれば特に限定されない。具体的には、エチレン性不飽和基を有するポリブタジエン変性エポキシ化合物、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン等のビニル基を有する脂環式エポキシ樹脂、グリシジルメタクリレート(GMA)、メチルグリシジルメタクリレート(M−GMA)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のアクリル基又はメタクリル基を有するエポキシ化合物等を例示できる。これらのなかでも、エチレン性不飽和基を有するポリブタジエン変性エポキシ化合物が好適に用いられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを示すものとし、同様に(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを示すものとする。
【0094】
上述のポリブタジエン変性エポキシ化合物としては、1,2−ポリブタジエン構造及び/又は1,4−ポリブタジエン構造を有する化合物のエチレン性不飽和基の一部をエポキシ化して得られるポリブタジエン変性エポキシ化合物(以下、「第1の変性エポキシ化合物」という。)、あるいは、オキシラン環と反応する、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、イミノ基又は上記式(1)で表される基などの基を有する変性ポリブタジエンと、2つ以上のオキシラン環を有する多官能エポキシ化合物とを反応させて得られるポリブタジエン変性エポキシ化合物(以下、「第2の変性エポキシ化合物」という。)等が挙げられる。そのような化合物のうち、分子中の末端又は側鎖にビニル基を一つ以上有するポリブタジエン変性エポキシ化合物を用いると、特に好ましい。
【0095】
第1の変性エポキシ化合物の具体例としては、上記一般式(2)若しくは(3)で表される化合物、又は上記一般式(6)で表される構造単位を有する化合物が挙げられる。式(2)で表されるエポキシ化合物としては、BF−1000(日本曹達社製、商品名)等、式(3)で表されるエポキシ化合物としては、PB3600(ダイセル化学工業社製、商品名)等、式(6)で表される構造単位を有するエポキシ化合物としては、A1005、A1010、A1020(以上、ダイセル化学工業社製、商品名)等を商業的に入手可能である。
【0096】
第2の変性エポキシ化合物の具体例としては、上記一般式(4)で示されるような、カルボキシル基を有するポリブタジエンとビスフェノールA型エポキシ樹脂とを反応させて得られるエポキシ化合物が例示できる。このような第2の変性エポキシ化合物としては、EPB−13(日本曹達社製、商品名)を、商業的に入手できる。
【0097】
第2の変性エポキシ化合物は、多官能エポキシ化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂の他に、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、アラルキレン骨格含有エポキシ樹脂、ビフェニル−アラルキレン骨格エポキシ樹脂、フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、低級アルキル基置換フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、多官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂及び多官能脂環式エポキシ樹脂等を用いて得られるポリブタジエン変性エポキシ化合物であってもよい。
【0098】
また、本実施形態に係るアミド反応性不飽和化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0099】
<(A)成分と(B)成分の配合量>
第1実施形態の導体張積層板における絶縁層形成用の樹脂組成物において、上述した(A)成分と(B)成分とは、以下に示す条件を満たすように配合されていることが好ましい。すなわち、(B)成分の配合割合は、(A)成分100質量部に対して5〜200質量部の範囲とすると好ましく、7〜80質量部とするとより好ましく、10〜50質量部とすると更に好ましい。(B)成分の配合割合が5質量部未満であると、樹脂組成物の硬化性が悪くなり、接着層4の耐熱性、耐薬品性、破壊強度等が低下する傾向にある。一方、200質量部を超えると、接着層4の靭性が低下するほか、接着層4の絶縁層2や導体層6との接着性が低下する傾向にある。
【0100】
<その他の成分>
(硬化促進剤)
接着層4を形成するための樹脂組成物は、上述した(A)成分及び(B)成分に加え、(A)成分のアミド基と(B)成分との反応を促進させるような触媒機能を有する硬化促進剤を更に含有していると好ましい。例えば、(B)成分におけるポリアミドイミドと反応する官能基がエポキシ基等である場合、硬化促進剤としては、アミン化合物、イミダゾール化合物、有機リン化合物、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、第四級アンモニウム塩等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの硬化促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
この硬化促進剤の配合量は、(B)成分の配合量に応じて決定することが好ましく、(B)成分100質量部に対して、0.05〜10質量部とすることが好ましい。この数値範囲内で硬化促進剤を配合すると、適切な反応速度が得られ、しかも接着層4を形成する樹脂組成物の反応性及び硬化性が一層優れるようになる。その結果、この硬化層からなる接着層4が、より優れた耐薬品性、耐熱性及び/又は耐湿耐熱性を備えるようになる。
【0102】
(ラジカル反応開始剤)
また、第1の形態の樹脂組成物は、(B)成分同士の重合反応を促進させるための重合開始剤(ラジカル反応開始剤)を更に含有していると好ましい。かかるラジカル反応開始剤を含むことで、接着層4を形成する際、樹脂組成物における(B)成分におけるエチレン性不飽和結合同士の架橋反応が促進されて、接着層4中に架橋構造が一層形成され易くなる。
【0103】
ラジカル反応開始剤としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、イソブチリルパーオキサイド、ジ(トリメチルシリル)パーオキサイド、トリメチルシリルトリフェニルシリルパーオキサイド等の過酸化物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンゾインメチルエーテル、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート等が挙げられる。これらのラジカル反応開始剤は、単独で、又は複数種組み合わせて用いることができる。
【0104】
樹脂組成物におけるラジカル反応開始剤の含有量は、(B)成分の含有割合に応じて決定することが好ましく、(B)成分100質量部に対して、0.5〜10質量部とすることが好ましい。この数値範囲内でラジカル反応開始剤を配合すると、樹脂組成物において適切な反応速度が得られ、しかも、樹脂組成物の反応性、硬化性が向上し、その結果、接着層4の強度及び脆性が良好となるほか、耐薬品性、耐熱性、耐湿耐熱性等が十分となり、更に絶縁層2及び導体層6との接着性が良好となる。
【0105】
(難燃剤)
樹脂組成物はまた、接着層4の接着性、耐熱性、耐吸湿性等の特性を低下させない範囲で、難燃剤を更に含有していてもよい。難燃剤を含むことで、接着層4、ひいては導体張積層板1の難燃性が向上し、その結果、これを用いた配線板の安全性が向上するようになる。難燃剤としては、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、金属水酸化物等を特に制限なく適用できる。
【0106】
臭素系難燃剤としては、例えば、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の臭素化エポキシ樹脂、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン、2,4,6−トリス(トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン等の臭素化化合物類、トリブロモフェニルマレイミド、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、ペンタブロモベンジルアクリレート、臭素化スチレン等の不飽和結合含有臭素化化合物等が挙げられる。
【0107】
リン系難燃剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ−2,6−キシレニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)等の芳香族リン酸エステル、フェニルホスホン酸ジビニル、フェニルホスホン酸ジアリル、フェニルホスホン酸ビス(1−ブテニル)等のホスホン酸エステル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸メチル、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド等のホスフィン酸エステル、ビス(2−アリルフェノキシ)ホスファゼン、ジクレジルホスファゼン等のホスファゼン化合物、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸アンモニウム、赤リン等のその他のリン系化合物等が挙げられる。さらに、金属水酸化物系難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0108】
これらの難燃剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、難燃剤の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、5〜150質量部とすると好ましく、5〜80質量部とするとより好ましく、5〜60質量部とすると更に好ましい。難燃剤の配合割合が5質量部未満であると、接着層4の耐燃性が不十分となる傾向にあり、100質量部を超えると硬化させた接着層の耐熱性が低下する傾向にある。
【0109】
(充填剤)
さらに、樹脂組成物は、接着層4の強度等を向上させ得る充填剤を、当該層4の接着性、耐熱性等を低下させない程度に含有していてもよい。充填剤としては、公知の無機充填剤を適用できる。具体的には、例えば、アルミナ、酸化チタン、マイカ、シリカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの充填剤の形状及び粒径は特に制限されないが、例えば、粒径が0.01〜50μm、好ましくは0.1〜15μmの粒子状のものが好適である。
【0110】
充填剤の含有量は、特に制限されないが、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、1〜1000質量部であると好ましく、1〜800質量部であるとより好ましい。かかる含有量で充填剤を含有することにより、優れた接着性及び耐熱性を維持したまま、接着層4の強度を向上させることができる。
【0111】
接着層4を形成するための樹脂組成物は、上述した(A)成分、(B)成分、硬化促進剤、ラジカル重合開始剤や、必要に応じてその他の添加剤を、公知の方法で配合、混合することにより製造することができる。
【0112】
[第2実施形態]
第2実施形態の導体張積層板は、第1実施形態の導体張積層板と同様の構成を有しており、接着層4を形成するために用いる樹脂組成物が異なるものである。第2実施形態の導体張積層板に用いる樹脂組成物は、(a)成分;ポリアミドイミド、(b)成分;このポリアミドイミドと反応し得る官能基を2つ以上有する化合物(以下、「アミド反応性化合物」という)、及び、(c)成分;(b)成分と反応し得る官能基を有し、かつエチレン性不飽和結合を有する化合物(以下、「反応性不飽和化合物」という)を含むものである。
【0113】
<(a)成分>
本実施形態で用いる(a)成分であるポリアミドイミドとしては、上述した第1実施形態における樹脂組成物に含まれる(A)成分であるポリアミドイミドと同様のものを用いることができる。
【0114】
<(b)成分>
(b)成分は、(a)成分であるアミド反応性化合物は、熱等を加えることにより(a)成分であるポリアミドイミドのアミド基と反応し得る官能基を2つ以上有していれば特に限定されない。具体的には、例えば、2つ以上のオキシラン環又はオキセタン環を有する化合物、すなわち多官能のエポキシ化合物(オキシラン化合物)又はオキセタン化合物等が挙げられ、多官能のエポキシ化合物がより好ましい。多官能のエポキシ化合物としては、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、アラルキレン骨格含有エポキシ樹脂、ビフェニル−アラルキレン骨格エポキシ樹脂、フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、低級アルキル基置換フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、多官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂及び多官能脂環式エポキシ樹脂等が例示される。(b)成分であるアミド反応性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
<(c)成分>
(c)成分である反応性不飽和化合物は、分子中に1つ以上のエチレン性不飽和結合を有し、しかも、熱等を加えることにより(b)成分と反応する官能基を有する化合物であれば特に限定されない。具体的には、例えば、エチレン性不飽和結合を有し、かつフェノール性水酸基、アルコール性水酸基、カルボキシル基、アミド基、アミノ基、イミノ基又は上記式(1)で表される基を有する変性ポリブタジエンが挙げられる。特に、エチレン性不飽和基が末端及び/又は側鎖に存在するビニル基である変性ポリブタジエンが好適に用いられる。
【0116】
このような変性ポリブタジエンの具体例としては、下記一般式(20)、(21)、(22)又は(23)で表される化合物を例示できる。
【0117】
【化20】


式(20)中、R201は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、c及びdは、それぞれ独立に、0〜100の整数を示し、c及びdのうちいずれかは1以上の整数を示し、eは1〜1000の整数を示す。
【0118】
【化21】


式(21)中、R211は、ヒドロキシエチル基、カルボキシル基又は下記一般式(24)で表される基を示し、fは0〜100の整数を示し、f及びgの合計は10〜10000の整数を示す。
【0119】
【化22】


式(24)中、R241は水素原子又はメチル基を示す。
【0120】
【化23】


式(22)中、R221は、下記式(25a)又は(25b)で表される基を示し、v、w及びxはそれぞれ独立に0〜100の整数を示し、v及びwのうちいずれかは1以上の整数を示し、hは1〜10000の整数を示す。
【0121】
【化24】


式(25a)、(25b)中、R251及びR252はそれぞれ独立に、単結合、炭素数1〜6の2価の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよいフェニレン基、スルホニル基、オキシ基又はカルボニル基を示す。
【0122】
【化25】


式(23)中、yは1〜8の整数を示し、y及びzの合計は、10〜10000の整数を示す。
【0123】
より具体的には、上記式(20)で表される化合物としては、PP700−300、PP1000−180、PP1000−240(以上、新日本石油化学社製)等が挙げられ、上記式(21)で表される化合物としては、G−1000、G−2000、G−3000、C−1000、TEA−1000、TEA−2000(以上、日本曹達社製)等が挙げられる。また、上記式(22)で表される化合物としては、ATBN1300(宇部興産社製)等が挙げられ、上記式(23)で表される化合物としては、BN−1015(日本曹達社製)等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよく、複数種組み合わせて用いてもよい。
【0124】
<(a)成分、(b)成分及び(c)成分の配合量>
本実施形態の導体張積層板の接着層4を形成するための樹脂組成物において、(b)成分及び(c)成分の総配合割合は、(a)成分100質量部に対して5〜200質量部であると好ましく、7〜80質量部であるとより好ましく、10〜50質量部であると更に好ましい。(b)成分及び(c)成分の総配合割合が、5質量部未満であると、かかる配合割合の樹脂組成物の熱硬化性が低下するとともに、接着層4を形成する際に樹脂組成物と絶縁層2との反応性が低下するため、得られる多層プリント配線板において、接着層4内や、絶縁層2と接着層4との界面近傍での耐熱性、耐薬品性及び破壊強度が低下する傾向にある。また、200質量部を超えると、接着層4と導体層6との接着性が低下する傾向にあり、得られる多層プリント配線板においても、接着層4の靭性が低下する傾向にある。
【0125】
また、(c)成分の配合割合は、(b)成分100質量部に対して、5〜1000重量部の範囲とすることが好ましく、20〜500質量部とすることがより好ましく、50〜150質量部とすることが更に好ましい。(c)成分の配合割合が5質量部未満であると、かかる配合割合の樹脂組成物の熱硬化性が低下するほか、導体張積層板を製造する際の樹脂組成物と絶縁層2との反応性が低下するため、接着層4内や、絶縁層2と接着層4との界面近傍での耐熱性及び破壊強度が低下する傾向にある。また、1000質量部を超えると、樹脂組成物の熱硬化性が低下し、接着層4の耐熱性及び耐薬品性が低下する傾向にある。
【0126】
<その他の成分>
第2の形態の樹脂組成物は、上述した(a)成分、(b)成分及び(c)成分以外に、(a)成分のアミド基と(b)成分のアミド反応性を有する官能基との反応、及び、(b)成分のアミド反応性基と(c)成分の不飽和結合との反応を促進させるような触媒機能を有する硬化促進剤、(c)成分の不飽和結合による架橋反応を促進させるラジカル反応開始剤を更に含有していると好ましい。また、これらに加えて、必要に応じて難燃剤、充填剤等を含有していてもよい。これらのその他の成分は、第1実施形態で説明したのと同様の材料を、同様の配合量で添加することが好ましい。
【0127】
第2実施形態の導体張積層板における接着層を形成するための樹脂組成物は、(a)成分、(b)成分、(c)成分、硬化促進剤、ラジカル重合開始剤及び必要に応じてその他の添加剤を、公知の方法で配合、混合することにより製造することができる。
【0128】
[導体張積層板の製造方法]
次に、上述した第1実施形態又は第2の実施形態の導体張積層板を製造する方法の一例について説明する。なお、本発明の導体張積層板を製造する方法は、必ずしも以下に限定されない。
【0129】
導体張積層板1の製造においては、まず、接着層4を形成するための樹脂組成物を、導体層6となるべき金属箔の粗化面(M面)上に塗布した後、乾燥して樹脂付き金属箔を得る。樹脂組成物の塗布は、これらをそのまま、或いは、溶媒等に溶解及び/又は分散したワニスの状態で、キスコータ、ロールコータ、コンマコータ等の公知の方法により行うことができる。乾燥は、樹脂組成物塗布後の金属箔を加熱乾燥炉中に入れ、70〜250℃(溶媒を使用した場合は溶媒が揮発可能な温度以上)、好ましくは100〜200℃で、1〜30分間、好ましくは3〜15分間加熱することにより行う。これにより、樹脂組成物を半硬化状態(Bステージ状態)とする。
【0130】
金属箔は、上述したように、防錆処理や、耐薬品性や耐熱性向上のためのニッケル、錫、亜鉛、クロム、モリブデン、コバルト等によるバリア層形成処理、絶縁層4との接着性を向上させるための粗化処理、シランカップリング剤による処理等の通常の表面処理が施されたものであってもよい。シランカップリング剤処理に用いるシランカップリング剤としては、エポキシシラン、アミノシラン、カチオニックシラン、ビニルシラン、(メタ)アクリロキシシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン、スルフィドシラン、イソシアネートシラン等が用いられる。
【0131】
金属箔としては、銅箔、ニッケル箔、アルミ箔等が挙げられ、電解銅箔又は圧延銅箔が好ましい。また、金属箔は、配線板とした場合の導体損失を低減する観点からは、M面の表面粗さが4μmであるものが好ましく、2μm以下であるものがより好ましい。表面粗さがこのように小さくても、導体張積層板1は、接着層4が上述した樹脂組成物の硬化物からなるものであるため、絶縁層2と導体層6との剥離が生じ難いものとなる。なお、「表面粗さ」とは、JISB0601−1994に規定された十点平均表面粗さをいうものとする。
【0132】
この樹脂付き金属箔における樹脂組成物からなる層の厚さは、0.1〜10μmとすることが好ましく、0.5〜5μmとすることがより好ましい。この厚さが0.1μm未満であると、導体張積層板1を製造した場合、絶縁層2及び導体層6との接着性が不十分となり、導体箔引き剥がし強さの工場効果が得られ難くなる傾向にある。一方、10μmを超えると、例えば、絶縁層2の材料にポリブタジエン、ポリトリアリルイソシアヌレート、ポリトリアリルシアヌレートを用いた場合、当該絶縁層2の厚み次第では(例えば、50μm以下となる場合)高周波伝送特性が低下するおそれがある。
【0133】
また、樹脂組成物のワニスを調製する場合、溶媒としては、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、カルビトール、ブチルカルビトール等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、酢酸エチル等のエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の含窒素溶媒等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0134】
複数の溶媒の組み合わせの例としては、芳香族炭化水素系溶媒とケトン系溶媒の組み合わせが挙げられ、この場合、ケトン系溶媒の含有量は、芳香族炭化水素系溶媒100質量部に対して、30〜300質量部であると好ましく、30〜250質量部であるとより好ましく、30〜220質量部であると更に好ましい。また、溶媒の添加量は、ワニスにおける固形分(不揮発分)の含有量が、総量中5〜80質量%となる量とすることが好ましい。なお、溶媒量は、樹脂付き金属箔における樹脂組成物からなる層の厚みを上述した所望の厚さを得やすい固形分濃度やワニス粘度が得られるように適宜調整することが好ましい。
【0135】
なお、樹脂組成物として上述した第2の形態のものを用いる場合、当該組成物は、b成分及びc成分を、そのままの化合物の状態で含有していてもよく、また、これらの成分が反応して結合を生じた状態で含有していてもよい。後者の場合、b成分とc成分との反応により生じた化合物は、第1の形態におけるB成分に該当し、当該樹脂組成物は、第1の形態の樹脂組成物と同様の構成を有するものとなる。
【0136】
導体張積層板1の製造においては、樹脂付き金属箔の製造とともに、絶縁層2を形成すべきプリプレグを準備する。当該プリプレグは、上述した強化基材を、絶縁層2を構成する絶縁性の樹脂材料又はそのワニス中に浸漬して、強化基材中に樹脂材料を含浸させ、必要に応じて溶媒等を除去した後、加熱により樹脂材料をBステージ化すること等によって製造可能である。
【0137】
そして、こうして得られたプリプレグを一枚又は複数枚重ね、更に、樹脂付き金属箔を、その樹脂組成物層がプリプレグと向き合うようにして重ね、これらを加熱加圧成型して圧着させることによって、導体張積層板1を得る。圧着の条件は、温度150〜250℃、圧力0.5〜10MPaで0.5〜10時間とすることが好ましい。このような条件で圧着を行うことにより、接着層4が十分に硬化され、絶縁層2と導体層6との、接着層4を介した接着性、耐湿耐熱性、耐薬品性等が極めて優れる導体張積層板1が得られるようになる。
【0138】
[印刷配線板]
次に、実施形態の印刷配線板について、図2を参照して説明する。図2は、実施形態の配線板の断面構造を示す模式図である。
【0139】
配線板10は、絶縁層12と、接着層14と、回路パターン16とをこの順に備える構成を有している。絶縁層12、接着層14及び回路パターン16は、それぞれ導体張積層板1における絶縁層2、接着層4及び導体層6と同様の材料から構成されるものである。このような構成を有する配線板10は、例えば、上述した導体張積層板1における導体層6を、公知のエッチング方法を適用することにより、所望の回路パターンに加工することによって製造することができる。
【0140】
[多層配線板]
次に、実施形態の多層配線板について、図3を参照して説明する。図3は、実施形態の多層配線板の断面構造を示す模式図である。
【0141】
多層配線板20は、絶縁層22、接着層24、内層回路パターン26、層間絶縁層28及び外層回路パターン30をこの順に有する一組の配線板が、絶縁層22同士が向き合うようにして張り合わされた構造を有している。かかる多層配線板20においては、内層回路パターン26と、外層回路パターン30とが、層間絶縁層28に設けられたビアホール32によって接続されている。また、一組の配線板における内層回路パターン26同士は、スルーホール34によって接続されている。
【0142】
多層配線板20において、絶縁層22、接着層24及び内層回路パターン26は、それぞれ配線板10における絶縁層12、接着層24及び回路パターン16と同様の材料から構成されている。すなわち、多層配線板20は、上述した実施形態の配線板10をコア基板40として備えている。また、層間絶縁層28としては、公知の絶縁性を有する樹脂材料(例えば、配線板10における絶縁層12に含まれる樹脂材料)からなる層、又は、この絶縁性樹脂中に所定の強化基材が配されたプリプレグからなる層が挙げられる。
【0143】
さらに、外層回路パターン30は、内層回路パターン26と同様の導電材料からなるものである。さらにまた、ビアホール32及びスルーホール34は、絶縁層22、接着層24、層間絶縁層28等に設けられた空孔に、所定の導電材料を充填して形成されたものである。このビアホール32又はスルーホール34によって、内層回路パターン26と外層回路パターン30、又は、内層回路パターン26同士が、所定の部位において導通されている。
【0144】
このような構成を有する多層配線板20は、次に示すような方法により製造可能である。すなわち、まず、コア基板40となるべき一組の配線板10を準備し、絶縁層22同士が向き合うように重ねる。これに、必要に応じて穴あけ、金属めっき等を施して、スルーホール34を形成する。次いで、配線板10における回路パターン16(内層回路パターン26)上に、層間絶縁層28を構成すべきプリプレグ等を所定の枚数重ねる。
【0145】
それから、プリプレグに対して、所望の位置に穴あけした後、導電材料を充填するなどしてビアホール32を形成する。その後、プリプレグ上に内層回路パターン26と同様の金属箔を積層し、これらを加熱加圧することによって、圧着させる。そして、最外層の金属箔を、公知のエッチング方法等により所望の回路パターンとなるように加工し外層回路パターン30を形成して、多層配線板20を得る。
【0146】
なお、本発明の多層配線板は、少なくともコア基板40として本発明の配線板を有していれば、上述した実施形態に限られない。例えば、層間絶縁層28と外層回路パターン30との間には、接着層24と同様の接着層が形成されていてもよい。これにより、層間絶縁層24と外層回路パターン30とが、この接着層を介して強固に接着されるようになるため、多層配線板20は、内層回路パターン26のみならず、外層回路パターン30の剥離も極めて生じ難いものとなる。
【0147】
このように、層間絶縁層28と外層回路パターン30との間に接着層を有する構成の多層配線板は、例えば、上述したように層間絶縁層28と外層回路パターン30とを順次形成する以外に、コア基板40上に、配線板10の製造に用いた樹脂付き金属箔を積層することによっても得ることができる。また、このような多層配線板20は、コア基板40上に、これと同一又は異なる回路パターン16を備える配線板10を積層することによっても製造可能である。
【0148】
さらに、多層配線板20は、図示の積層数に限られず、所望の積層数を有するものとすることができる。このような多層配線板20は、コア基板40の両側に、所望の積層数に応じて、層間絶縁層28及び外層回路パターン30を交互に積層するか、または、配線板10を所望の層数となるように積層することによって製造することができる。
【実施例】
【0149】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0150】
[ポリアミドイミドの合成]
(合成例1〜7)
ディーンスターク還流冷却器、温度計及び攪拌器を備える1Lのセパラブルフラスコに、ジアミン化合物(脂環族ジアミン、脂肪族ジアミン、シロキサンジアミン、芳香族ジアミン)、無水トリメリット酸(TMA)及び非プロトン性極性溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を、表1に示す種類及び量にしたがって加え、80℃で30分間攪拌した。
【0151】
攪拌後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエンを表1に示す量にしたがって加え、温度を160℃に昇温して2時間還流させた。水分定量受器に理論量の水がたまり、水の留出が見られなくなっていることを確認した後、水分定量受器中の水とトルエンを除去し、温度を190℃まで昇温して、溶液中のトルエンを除去した。
【0152】
フラスコの溶液を室温(25℃)に冷却した後、この溶液中にジイソシアネートである4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を加え、温度を190に昇温して2時間反応させた後、得られた溶液をNMPで希釈して、それぞれ表1に示す平均分子量を有する合成例1〜7のポリアミドイミドのNMP溶液を得た。
【0153】
なお、表1中の各ジアミン化合物は、次に示すものである。
・WHM:脂環族ジアミン(ワンダミンHM、新日本理化社製)
・D−2000:脂肪族ジアミン(ジェファーミンD−2000、サンテクノケミカル社製)
・X−22−161−B:シロキサンジアミン(反応性シリコーンオイル、X−22−161−B、信越化学工業社製、アミン当量1500)
・X−22−161−AS:シロキサンジアミン(反応性シリコーンオイル、X−22−161−AS、信越化学工業社製、アミン当量850)
・DDM:芳香族ジアミン((4,4’−ジアミノ)ジフェニルメタン)
【0154】
【表1】

【0155】
[接着層形成用ワニスの調製]
(調製例1〜7、比較調製例1〜3)
合成例1〜7のポリアミドイミドのNMP溶液のそれぞれに、接着層形成用の材料(樹脂組成物)の各成分を、それぞれ表2に示した種類及び量にしたがって加えた後、更に、溶媒であるN,N−ジメチルアセトアミドを表2に示す量にしたがって加え、調整例1〜7及び比較調整例1〜3の接着層形成用ワニスを得た。なお、表中の各成分の配合量は、全て(g)単位で表した。
【0156】
ここで、表2中の各成分は、以下に示すものである。なお、(B)成分、(b)成分、(c)成分等の表記は、いずれも上述した実施形態で用いた表記と同義である。
・PB3600:(B)成分(ポリブタジエン変性エポキシ化合物、PB3600、ダイセル化学工業社製)
・EPB−13:(B)成分(ポリブタジエン変性エポキシ化合物、EPB−13、日本曹達社製、カルボン酸末端ポリブタジエンとビスフェノールA型エポキシ樹脂との反応物)
・A1020:(B)成分(ポリブタジエン変性エポキシ化合物、A1020、ダイセル化学工業社製)
・N673:(b)成分(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、N673、大日本インキ化学工業社製)
・N770:(b)成分(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、N770、大日本インキ化学工業社製)
・DER−331L:(b)成分(DER−331L、ダウケミカル日本社製)
・GMA:B成分(グリシジルメタクリレート、GMA、東京化成工業社製)
・BN−1015:(c)成分(無水マレイン酸変性ポリブタジエン、BN−1015、日本曹達社製)
・C−1000:(c)成分(カルボン酸末端ポリブタジエン、C−1000、日本曹達社製)
・ATBN1300X42:(c)成分(アミン末端ポリブタジエン、ATBN1300X42、宇部興産社製)
・2E4MZ:硬化促進剤(2−エチル−4−メチルイミダゾール、2E4MZ、四国化成社製)
・パーブチルP:ラジカル反応開始剤(α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、パーブチルP、日本油脂社製)
【0157】
【表2】

【0158】
[絶縁層形成用ワニスの調製]
(調製例8)
冷却管、温度計、攪拌器を備える1Lのセパラブルフラスコに、トルエン400gとポリフェニレンエーテル樹脂(変性PPOノリルPKN4752、日本ジーイープラスチックス社製)120gを投入し、90℃に加熱し攪拌して溶解させた。この溶液に、トリアリルイソシアヌレート(TAIC、日本化成社製)80gを配合して溶解するか又は均一に分散したのを確認した後、室温まで冷却した。次いで、ラジカル反応開始剤として、α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製)2gを加えた後、トルエン70gを配合して調製例8の絶縁層形成用ワニスを得た。なお、得られたワニスの固形分濃度は30質量%であった。
【0159】
(調製例9)
トリアリルイソシアヌレートに代えて、1,2−ポリブタジエン(B−1000、日本曹達社製)80g及び架橋助剤であるジビニルベンゼン(DVB)10gを加えたこと以外は調製例8と同様にして調製例9の絶縁層形成用ワニスを得た。なお、得られたワニスの固形分濃度は30質量%であった。
【0160】
(調製例10)
ポリフェニレンエーテル樹脂に代えて、以下に示す方法により得られたアリル化ポリフェニレンエーテル樹脂100gを用いたこと、TAICの配合量を100gとしたこと、及び、パーブチルPの配合量を2.5gとしたこと以外は、調製例8と同様にして絶縁層形成用ワニスを得た。なお、得られたワニスの固形分濃度は30質量%であった。
【0161】
アリル化ポリフェニレンエーテル樹脂は、次のようにして製造した。すなわち、まず、冷却管、温度計、攪拌器を備える1Lのセパラブルフラスコに、テトラヒドロフラン5000mL、ポリフェニレンエーテル樹脂(ノリルPPO646−111、日本ジーイープラスチックス社製)100gを投入し、60℃に加熱し攪拌して溶解させた。次いで、この溶液に、臭素化アリル100gを加えて30分攪拌した後、多量のメタノールを配合し、沈殿物を単離することによりアリル化ポリフェニレンエーテル樹脂を得た。
【0162】
[銅張積層板の作製]
(実施例1〜7)
上述した各調製例で得られた接着層形成用ワニス及び絶縁層形成用ワニスを、表3に示す組み合わせでそれぞれ用い、以下に示す方法にしたがって実施例1〜7の銅張積層板(導体張積層板)を作製した。
【0163】
<接着層付き銅箔の作製>
まず、接着層形成用ワニスを、厚さ18μmの電解銅箔(F0−WS−18、ロープロファイル銅箔、粗化面表面粗さ(Rz)=0.8μm、古河電気工業社製)の粗化面側に均一に塗布した後、150℃で5分間加熱乾燥して、銅箔上に接着層形成用ワニスからなる接着層を備える接着層付き銅箔を得た。なお、接着層の厚さは2μmとした。
【0164】
<プリプレグの作製>
また、各絶縁層形成用ワニスを、厚さ0.1mmのガラス布(Eガラス、日東紡績社製)に含浸した後、120℃で5分間加熱乾燥してプリプレグを得た。なお、得られたプリプレグにおける樹脂含有量は、50質量%であった。
【0165】
<銅張積層板の作製>
次に、上記プリプレグを4枚重ねてプリプレグ層とし、その最外層両面に、上記各接着層付き銅箔を、その接着層がプリプレグ層と向き合うようにしてそれぞれ重ね、200℃、70分、2.9MPaのプレス条件で加熱及び加圧し成形して、プリプレグ層の両面に接着層を介して銅箔が積層された実施例1〜7の銅張積層板を得た。なお、得られた銅張積層板の厚さは、0.55mmであった。
【0166】
【表3】

【0167】
(比較例1)
<プリプレグの作製>
調製例8の絶縁層形成用ワニスを、厚さ0.1mmのガラス布(Eガラス、日東紡績社製)に含浸した後、120℃で5分間加熱乾燥してプリプレグを得た。なお、得られたプリプレグにおける樹脂含有量は、50質量%であった。
<銅張積層板の作製>
【0168】
上記プリプレグを4枚重ねてプリプレグ層とし、その最外層両面に、厚さ18μmの電解銅箔(F0−WS−18)を、その粗化面側がプリプレグ層と向き合うようにしてそれぞれ重ね、200℃、70分、2.9MPaのプレス条件で加熱及び加圧し成形して、プリプレグ層の両面に銅箔が積層された比較例1の銅張積層板を得た
【0169】
(比較例2)
電解銅箔として、厚さ18μmの電解銅箔(GTS−18、一般銅箔、粗化面表面粗さ(Rz)=8μm、古河電気工業社製)を用いたこと以外は、比較例1と同様にして銅張積層板を得た。
【0170】
(比較例3〜5)
上述した各調製例で得られた接着層形成用ワニス及び絶縁層形成用ワニスを、表4に示す組み合わせで用いたこと以外は、実施例1〜7と同様にして比較例3〜5の銅張積層板を得た。
【0171】
【表4】

【0172】
[特性評価]
実施例1〜7及び比較例1〜5の銅張積層板を用い、以下に示す方法にしたがって、各銅張積層板の銅箔引き剥がし強さ、はんだ耐熱性及び伝送損失を測定した。得られた結果をまとめて表5に示す。
【0173】
(銅箔引き剥がし強さ)
常態の銅張積層板(作製直後の銅張積層板)、及び、5時間のPCT処理(121℃、2.2気圧、100%RHのプレッシャークッカーテスター内に保持)を行った後の銅張積層板のそれぞれについて、90°方向ピール試験(島津製作所オートグラフAG−100C、引っ張り速度50mm/min、ライン幅5mm)を行い、各銅張積層板の銅箔引き剥がし強さを測定した。
【0174】
(はんだ耐熱性)
まず、各実施例及び比較例の銅張積層板を、50mm角に切断して試験片を得た。そして、常態の試験片(作製直後の試験片)、並びに、1、2、3、4及び5時間のPCT処理(121℃、2.2気圧、100%RHのプレッシャークッカーテスター内に保持)を行った後の試験片のそれぞれを、260℃の溶融はんだに20秒浸漬した後、各試験片の外観を目視で観察した。そして、導箔とプリプレグ層との間にふくれやミーズリングが生じていなかったものを異常無しと評価した。
【0175】
なお、かかる試験においては、各実施例又は各比較例に対応する試験片の常態のもの及びPCT処理後のものについてそれぞれ3つずつ準備した。そして、これらの全てについてはんだ耐熱性の評価を行い、各条件で処理した各実施例又は各比較例に対応する3つの試験片のうち、異常無しであったものの数を測定した。
【0176】
(伝送損失の測定)
各実施例及び比較例の銅張積層板の伝送損失を、ベクトル型ネットワークアナライザを用いたトリプレート線路共振器法により測定した。なお、測定条件は、ライン幅:0.6mm、上下グランド導体間絶縁層距離:約1.04mm、ライン長:200mm、特性インピーダンス:約50Ω、周波数:3GHz、測定温度:25℃とした。
【0177】
【表5】

【0178】
表5より、実施例1〜7の銅張積層板は、比較例1〜5の銅張積層板に比して、銅箔引き剥がし強さが強く、また吸湿後にも優れた引き剥がし強さを維持し得ることが確認された。なかでも、接着層のポリアミドイミドが脂環式構造を有している実施例1〜4及び7の銅張積層板は、特に優れた特性を有していることが判明した。
【0179】
また、実施例1〜7の銅張積層板は、通常の粗化面を有する銅箔を接着層を介さずにプリプレグ層に接着させた比較例2の銅張積層板に比べても優れた銅箔引き剥がし強さを有していたことから、かかる銅張積層板は、高周波対応が可能なプリント配線板にも適用できることが確認された。
【符号の説明】
【0180】
1…導体張積層板、2…絶縁層、4…接着層、6…導体層、10…配線板、12…絶縁層、14…接着層、16…回路パターン、20…多層配線板、22…絶縁層、24…接着層、26…内層回路パターン、28…層間絶縁層、30…外層回路パターン、32…ビアホール、34…スルーホール、40…コア基板。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、該絶縁層に対向して配置された導体層と、前記絶縁層及び前記導体層に挟まれた接着層と、を備え、
前記接着層は、
(A)成分;ポリアミドイミドと、
(B)成分;ポリブタジエン構造及びオキシラン環を有するエポキシ化合物と、
ラジカル反応開始剤と、
を含む樹脂組成物の硬化物からなり、且つ、
前記エポキシ化合物は、下記一般式(2)、(3)又は(4)で表される化合物、あるいは、下記一般式(6)で表される構造単位を有する化合物である、導体張積層板。
【化1】


[式(2)中、nは2〜8であり、n及びmの合計は10〜10000の整数を示す。]
【化2】


[式(3)中、R31及びR32は、それぞれ独立に水素原子又は水酸基を示し、R33は、ビニル基又はオキシラニル基を示す。]
【化3】


【化4】


[式(4)中、R41は、上記式(5)で表される基を示し、iは0〜100の整数であり、i及びjの合計は10〜10000の整数を示す。]
【化5】


[式(6)中、p及びuはそれぞれ独立に1〜10000の整数を示し、qは1〜100の整数を示し、r及びsはそれぞれ独立に0〜100の整数を示し、tは1〜10000の整数を示す。ただし、r及びsのいずれかは1以上の整数を示す。]
【請求項2】
前記(A)成分は、飽和炭化水素基からなる構成単位を有する、請求項1記載の導体張積層板。
【請求項3】
前記(B)成分の配合割合が、前記(A)成分100質量部に対して5〜200質量部である、請求項1又は2記載の導体張積層板。
【請求項4】
前記接着層は、0.1〜10μmの厚さを有している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の導体張積層板。
【請求項5】
前記導体層における前記接着層側の面の十点平均粗さ(Rz)は、4μm以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の導体張積層板。
【請求項6】
前記絶縁層は、絶縁性樹脂と、該絶縁性樹脂中に配された基材とから構成され、
前記基材として、ガラス、紙材及び有機高分子化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の材料からなる繊維の織布又は不織布を備える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の導体張積層板。
【請求項7】
前記絶縁層は、前記絶縁性樹脂として、エチレン性不飽和結合を有する樹脂を含有する、請求項6記載の導体張積層板。
【請求項8】
前記絶縁性樹脂は、ポリブタジエン、ポリトリアリルシアヌレート、ポリトリアリルイソシアヌレート、及び、ポリフェニレンエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂である、請求項7記載の導体張積層板。
【請求項9】
前記絶縁性樹脂は、ポリフェニレンエーテルを含有する、請求項6〜8のいずれか一項に記載の導体張積層板。
【請求項10】
前記導体箔上に前記接着層を備える接着層付き導体箔における該接着層上に、前記絶縁層を積層して加熱加圧成形することにより得られた、請求項1〜9のいずれか一項に記載の導体張積層板。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の導体張積層板における導体層を、所定の回路パターンに加工して得られた印刷配線板。
【請求項12】
コア基板と、該コア基板の少なくとも片面上に設けられた配線板と、を備える多層配線板であって、
前記コア基板は、少なくとも一層の請求項11記載の印刷配線板からなるものである、多層配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−183807(P2011−183807A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92258(P2011−92258)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【分割の表示】特願2005−24473(P2005−24473)の分割
【原出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】