説明

導電性パターン形成材料、導電性パターン形成方法および配線基板

【課題】膜状態が緻密で、表面粗さの小さい、低抵抗の微細導電性パターンを形成するための材料、導電性パターン形成方法および配線基板を提供すること。
【解決手段】第1導電性粒子が熱分解性高分子材料と溶剤の混合液中に分散混合してなる第1材料1と、第1導電性粒子よりも粒子サイズが小さい第2導電性粒子が分散媒中に分散した第2材料2との組み合わせからなり、第1材料1において、第1導電性粒子の重量と熱分解性高分子材料の重量との比が10:1から100:1であることを特徴とする導電性パターン形成材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性パターン形成材料、導電性パターン形成方法および配線基板に関する。詳しくは、導電性パターンの内部および表面の細孔率を低減し、導電性を向上する導電性パターン形成材料、導電性パターン形成方法および配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器、電子デバイスの小型化に付随して、基板上に形成される回路配線パターンもより微細化することが要望されており、導電性ペーストを基材に塗布して配線パターンを形成する方法が盛んに研究されている。
導電性パターンを微細化する方法として、平均粒子径が1〜100nmの導電性ナノ粒子を含むペースト液を基板表面に数μmのラインおよびスペースを有するパターンで塗布し、ナノ粒子を焼き固めることで低抵抗の導電性パターンを形成する方法が公知である。
導電性ナノ粒子を含むペースト液の塗布方法としては、インクジェット法、スクリーン印刷法、リバーサルインプリント法、オフセット印刷法が挙げられる。
【0003】
インクジェット法は、インクヘッドから吐出されたpLオーダーの導電性パターン材料であるインクを基板に塗布する方法である(例えば、特許文献1参照)。
スクリーン印刷法は、基板にパターンメッシュを介してインクを染み出させる方法である。
【0004】
リバーサルインプリント法は、所定の微細パターンが形成されている型に、加熱消滅性材料中に導電性ナノ粒子を混合したペースト材料を塗布して転写用パターンを形成し、前記微細パターンに応じて転写用パターンを基板上に転写し、その後、基板上の転写パターンを加熱することにより前記加熱消滅性材料を消滅させて導電性パターンを形成する方法である(例えば、特許文献2参照)。特許文献2において、加熱消滅性材料としてポリオキシアルキレン樹脂が用いられている。
【0005】
リバーサルインプリント法において、前記加熱消滅性材料は、前記型および基板に対してペースト材料が密着性を有するためのバインダー成分とされている。通常、導電性粒子の表面は分散剤によってコートされており、それによって分散媒中での導電性粒子の均一分散性確保し、導電性粒子同士の凝集を防ぐようにされている。この分散剤によって、導電性粒子自体の型および基板との密着性は低いため、型から被転写物である基板上に所定パターン形状でペースト材料を転写する上でバインダー成分は必要である。
【0006】
オフセット印刷法は、剥離性表面を有するブランケットの全面にペースト状の転写物の層を形成し、このブランケットを凸版に密着させ離すことで、転写物のうち凸版の凸部に接触した部分をブランケットから除去して転写物を所定パターンに形成した後、所定パターンの転写物に被転写物を密着させ離すことで、転写物をブランケットから被転写物へ転写する印刷パターニング法である。
【0007】
また、その他の方法として、導電性粒子から形成された多孔質膜に導電性物質前駆体を塗布して多孔質膜の細孔内に導電性物質前駆体を浸透させた後、多孔質膜を加熱することにより、導電性物質前駆体を導電性物質に変化させて多孔質膜の細孔を埋めかつその表面の凹凸を緩和する方法が提案されている(例えば、特許文献3)。
【0008】
【特許文献1】特開2006−279038号公報
【特許文献2】特開2006−173277号公報
【特許文献3】特開2005−100941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェット法では、インクを基板に到達させるまでの間の空気抵抗によってインクの到達位置の位置精度が低下するという問題がある。
また、スクリーン印刷法では、メッシュパターン精度の問題により30μm程度までの精度しか得られていないのが現状である。
【0010】
また、特許文献2に記載のリバーサルインプリント法では、基板上のペースト材料からなる転写パターンを加熱することにより、加熱消滅性材料(ポリオキシアルキレン樹脂)消滅させて導電性パターンを形成するが、加熱消滅性材料が占めていた部分が空激となる。したがって、形成された導電性パターンはポーラス質の膜となり、表面ラフネスも大きいため、高抵抗となる。
【0011】
また、導電性パターンをトランジスタにおけるゲート、ソースおよびドレイン電極として用いたとき、それらへの電界のかかり方が不均一になるために、トランジスタ素子のバラツキが大きくなってしまう。さらに、ポーラス質な導電性パターンの上に例えばレジストやポリイミドからなるコート材を塗布すると、導電性パターン表面の凹凸によってコート材の表面均一性に影響を及ぼしてしまう。
なお、前記バインダー成分として、転写パターンの加熱温度で消滅しない樹脂材料(例えばセルロース等)を用いた場合は、形成された導電性パターン中に樹脂材料が残存し、この樹脂材料は絶縁性であるため、導電性パターンの抵抗が大きくなるという問題が発生する。
【0012】
また、前記特許文献3の方法の場合、前記前駆体は、加熱よって導電性物質に変化する材料であるが、変化した導電性物質は加熱状態によって特性が変化するおそれがある。特に、導電性パターンが無機酸化物によって構成される場合、無機酸化物は酸化状態によって導電率および透過率が変化する。つまり、多孔質導電膜の表面側に存在する前駆体の周囲の酸素量の方が、多孔質導電膜の内部側に存在する前駆体の周囲の酸素量よりも多いため、多孔質導電膜の表面の前駆体と内部の前駆体の酸化状態が異なってしまう。その結果、多孔質導電膜全体では導電率および透過率に分布が生じることとなり、低抵抗および高透過率の透明導電膜を得ることはできない。
【0013】
本発明は、上記課題を鑑みなされたものであり、導電性パターンの内部および表面の細孔が低減し、低抵抗化する導電性パターンを形成するための形成材料、導電性パターン形成方法および配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かくして、本発明によれば、第1導電性粒子が熱分解性高分子材料と溶剤の混合液中に分散混合してなる第1材料と、前記第1導電性粒子よりも粒子サイズが小さい第2導電性粒子が分散媒中に分散した第2材料との組み合わせからなり、前記第1材料において、前記第1導電性粒子の重量と前記熱分解性高分子材料の重量との比が10:1から100:1である導電性パターン形成材料が提供される。
【0015】
また、本発明の別の観点によれば、第1導電性粒子と熱分解性高分子材料と溶剤とを含み、かつ前記第1導電性粒子の重量と前記熱分解性高分子材料の重量との比を10:1から100:1として第1導電性粒子を分散混合してなる第1材料を、版の表面の転写パターン領域に塗布して、転写用パターンを形成する工程(1)と、前記版上の前記転写用パターンを基板の表面に転写する工程(2)と、前記基板の表面上に転写された前記第1材料のパターンを加熱することにより、前記熱分解性高分子材料を加熱分解し、かつ前記第1導電性粒子が粒成長してなる多孔性導電膜を形成する工程(3)と、前記第1導電性粒子よりも粒子サイズが小さい第2導電性粒子が分散媒中に分散した第2材料を、基板の表面上に形成された前記多孔性導電膜上に塗布して、前記第2材料を多孔性導電膜の表面および内部の細孔に浸透させる工程(4)と、前記多孔性導電膜上に塗布された第2材料を加熱することにより、前記多孔性導電膜の細孔内における前記第2導電性粒子を粒成長させる工程(5)とを備えた導電性パターン形成方法が提供される。
【0016】
また、本発明のさらに別の観点によれば、基板と、前記導電性パターン形成方法によって前記基板の表面に形成された前記導電性パターンとを備えた配線基板であって、前記導電性パターンの表面の算術平均粗さが100nm以下である配線基板が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、転写性を利用した印刷方法により導電性パターン作製することができるので、微細な導電性パターンを形成することができる。また、導電性パターンは、内部に多孔質な細孔が極めて少ないため、体積抵抗率が小さいものとなる。また、導電性パターンの表面においても、表面ラフネスがなく、電圧印加した場合電界を全方位に均一にかけることができ、かつ後工程で導電性パターン上層にコート材を塗布する場合に、導電性パターン表面の凹凸による影響を軽減することができる。さらに、導電性パターンは、前駆体型ではない導電性粒子そのものを用いているので、膜内部での導電率および透過率の分布の少ないものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(導電性パターン形成材料の説明)
本発明の導電性パターン形成材料は、第1導電性粒子が熱分解性高分子材料と溶剤の混合液中に分散混合してなる第1材料と、前記第1導電性粒子よりも粒子サイズが小さい第2導電性粒子が分散媒中に分散した第2材料との組み合わせからなり、前記第1材料において、前記第1導電性粒子の重量と前記熱分解性高分子材料の重量との比が10:1から100:1であることを特徴とする。
【0019】
この導電性パターン形成材料は、後述する導電性パターン形成方法によって低抵抗の導電性パターンを形成するための材料である。
第1材料は、それに含まれる第1導電性粒子が焼成により粒成長して多孔性導電膜となるための材料であり、多孔性導電膜内の細孔は第1導電性粒子のサイズよりも小さい。
第2材料は、それに含まれる第2導電性粒子が前記多孔性導電膜の細孔内に流入して緻密な導電膜にするための材料であるため、第2導電性粒子のサイズは、第1導電性粒子のサイズよりも小さい必要があり、細孔のサイズよりも小さいことが望ましい。
【0020】
<第1材料>
第1材料において、第1導電性粒子は、導電性材料からなる粒子であれば特に限定されないが、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、鉄(Fe)、白金(Pt)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、タンタル(Ta)、インジウム(In)、イリジウム(Ir)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、イットリウム(Y)およびこれらの金属の酸化物から選択された1種類以上の粒子からなることが好ましい。つまり、これらの材料からなる粒子が単一成分で含まれているあるいは複数成分で含まれていることが好ましい。
導電性パターンに透明性が必要な場合、第1導電性粒子としては、インジウム・スズ酸化物(ITO)からなる粒子、酸化スズ(SnO2)からなる粒子、酸化亜鉛(ZnO)からなる粒子が単一成分で用いられる。
【0021】
微細パターンを形成するためには、第1導電性粒子のサイズとしては平均1次粒径が10〜500nmが好ましく、30〜300nmがさらに好ましく、30〜100nmが特に好ましい。第1導電性粒子の平均1次粒径が500nmより大きくなると、数μmの微細パターンを形成することが困難になる。また、第2導電性粒子の平均1次粒径が1nmより小さい粒子サイズの揃った微粒子は安定的に合成することが困難である。
【0022】
第1導電性粒子が第1材料中で均一に分散した状態で存在するためには、粒子同士の凝集を防ぎ、溶剤との親和性を高める分散剤によって第1導電性粒子の表面が被覆されていることが望ましい。
分散剤としては、第1導電性粒子との相互作用により第1導電性粒子に吸着する第1の官能基および分散媒中での分散性を保つ第2の官能基を有している低分子量の界面活性剤が好ましい。具体的に、第1の官能基としてはシリル基、チオール基、アミノ基、カルボキシル基、カルボニル基が挙げられ、第2の官能基としてはアルキル基、フルオロアルキル基が挙げられる。これら第1と第2の官能基の組み合わせは、特に制限されない。
【0023】
第1材料中の熱分解性高分子材料は、第1材料にて上述の多孔性導電膜を焼成する際の少なくとも焼成温度でガス化(分解)して消滅する高分子材料であれば特に限定されず、例えば、150℃以上300℃以下の温度で加熱することで95重量%以上消滅(加熱分解)する高分子材料が好ましく、さらには、カルボキシル基、エーテル基、エステル基等の熱酸化分解反応を生じる基を含む高分子材料であることが好ましい。この熱分解性高分子材料は、第1材料が後述する版および基板と密着するために必要なバインダー成分であり、第1導電性粒子の分散性に影響を与えないものが好ましい。
【0024】
このような熱分解性高分子材料として具体的には、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリル酸エステル、ポリオキシメチレン、ポリオキシエチレン等が挙げられ、これらが単一成分で含まれていても複数成分で含まれていてもどちらでもよく、版および基板の材料に応じて適度な密着性が得られる材料を選択することができる。
また、熱分解性高分子材料の重量平均分子量としては1000〜100000であることが好ましく、1000〜50000がさらに好ましく、1000〜10000が特に好ましい。なお、1000以下であると転写性を向上させるためのバインダーとしての効果を発現することが困難であり、100000超では加熱分解する時間が長くなるため好ましくない。
【0025】
第1材料に用いられる溶媒としては、熱分解性高分子材料を溶解し、第1導電性粒子を均一に分散させ、版および基板に対して濡れ性を示し、さらには、版から基板へ第1材料を転写する際に乾燥が影響しない高沸点溶剤が好ましく、例えば、デカン、ドデカン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素系、デカノール、ドデカノール、ターピネオール等のアルコール系、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系、ジエチレングリコールモノアセテート、ステアリン酸エステル等のエステル系、イソブチルアミン、アニリン、ピロール等のアミン系の溶剤を用いることができる。
【0026】
第1材料中の第1導電性粒子と熱分解性高分子材料との重量比は、熱分解性高分子材料が第1導電性粒子よりも少ない(小さい)ことが好ましく、第1導電性粒子の重量と熱分解性高分子材料の重量との比が10:1から100:1であることがさらに好ましい。
第1導電性粒子10重量部に対して熱分解性高分子材料が1重量部よりも大きくなると、熱分解性高分子材料を加熱飛散させた後の多孔性導電膜パターンの形状を保つことが困難となる傾向にある。また、第1導電性粒子100重量部に対して熱分解性高分子材料が1重量部よりも小さくなると、後述の導電性パターンの形成工程において、第1材料のパターンを版から基板へ転写する際の転写性が低下する傾向にある。
なお、第1導電性粒子の重量と熱分解性高分子材料の重量との重量比は、使用する第1導電性粒子の材料の比重と熱分解性高分子材料の比重が考慮されており、これについて詳しくは後述する。
【0027】
また、版上の転写パターン領域へ第1材料を塗布しかつそのパターンを高精度に基板へ転写する上で、第1材料の粘度はある程度低粘度であることが好ましく、53mPa・s未満がさらに好ましく、50mPa・s以下であることが特に好ましい。第1材料の粘度が53mPa・s以上では、膜厚が厚くなる傾向にあるため、第1材料を版上に所定の膜厚で塗布することが難しくなる傾向にあり、粘度が高くなり過ぎると基板へ転写するときに第1材料の膜が膜厚方向で引きちぎれる(断線した状態となる)場合がある。第1材料の粘度の下限は特に制限されないが、例えば1Pa・s以上が適当である。
【0028】
ここで、第1材料の粘度とは、少なくとも第1材料の使用時の粘度を意味し、第1材料が調製された直後の粘度をも包含する。つまり、第1材料は、その調製時に所望の粘度でなくとも、使用時に所望の粘度であればよい。
第1材料の粘度は、第1導電性粒子と熱分解性高分子材料と溶剤との混合比(重量比)によって調整することができる。第1導電性粒子と熱分解性高分子材料との重量比は上述の10:1〜100:1が好ましいため、第1導電性粒子と熱分解性高分子材料の重量比を予め決定しておき、溶剤の重量比を調整することにより第1材料の粘度を調整することが好ましい。なお、所望の粘度に調整した第1材料を加温してさらに粘度を下げて使用しても構わない。
なお、本発明において、第1材料の粘度測定は、「JISZ8803:液体の粘度−測定方法」に記載の毛細管粘度計、落球粘度計、回転粘度計を用いて行われている。
【0029】
<第2材料>
第2材料において、第2導電性粒子は、導電性材料からなる粒子であれば特に限定されず、例えば第1導電性粒子と同じ材料からなる粒子を単独または複数種類混合して用いることができる。なお、導電性パターンに透明性が必要な場合は、第1導電性粒子と同様に、第2導電性粒子としても、インジウム・スズ酸化物(ITO)からなる粒子、酸化スズ(SnO2)からなる粒子、酸化亜鉛(ZnO)からなる粒子が単一成分で用いられる。
第2導電性粒子のサイズとしては、第1導電性粒子のサイズよりも小さければ特に限定されないが、例えば、平均1次粒径が1〜100nmが好ましく、1〜50nmがさらに好ましく、1〜30nmが特に好ましい。
【0030】
第2導電性粒子が第2材料中で均一に分散した状態で存在するためには、粒子同士の凝集を防ぎ、分散媒との親和性を高める分散剤によって第2導電性粒子の表面が被覆されていることが望ましい。この第2導電性粒子用の分散剤としては、第1導電性粒子用の分散剤を用いることができる。
【0031】
第2材料に用いられる分散媒としては、第2導電性粒子を分散可能なものであれば特に限定されないが、第1材料に用いられる溶剤を用いることが好ましい。さらには、第1材料を焼成してなる多孔性導電膜の細孔内に第2材料が侵入する必要があるため、表面自由エネルギーが低く濡れ性の高い溶媒が好ましく、例えば、デカン、ドデカン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素系、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系の溶媒が好ましい。
【0032】
第2材料の粘度は、第1材料を焼成してなる多孔性導電膜の細孔内に第2材料が侵入する粘度であれば特に制限されないが、ある程度低粘度であることが好ましく、第1材料の粘度と同様に1〜50mPa・sとすることが好ましい。
ここで、第2材料の粘度とは、少なくとも第2材料の使用時の粘度を意味し、第2材料が調製された直後の粘度をも包含する。つまり、第2材料は、その調製時に所望の粘度でなくとも、使用時に所望の粘度であればよい。
第2材料中の分散媒の重量は、第2材料が所望の粘度となるように調整される重量であればよく、例えば、第2材料の粘度を1〜50mPa・sとする場合、第2材料中の分散媒の重量を10〜60重量%とすることができる。なお、所望の粘度に調整した第2材料を加温してさらに粘度を下げて使用しても構わない。
【0033】
(導電性パターン形成方法の説明)
上述の導電性パターン形成材料を用いた導電性パターンの形成は、以下の導電性パターン形成方法に準じて行われる。
すなわち、図1を参照しながら説明すると、この導電性パターン形成方法は、第1導電性粒子と熱分解性高分子材料と溶剤とを含み、かつ第1導電性粒子の重量と熱分解性高分子材料の重量との比を10:1から100:1として第1導電性粒子を分散混合してなる第1材料1を、版Pの表面の転写パターン領域eに塗布して、転写用パターンを形成する工程(1)(図1(b))と、版P上の転写用パターンを基板Sの表面に転写する工程(2)(図1(c))と、基板Sの表面上に転写された第1材料1のパターンを加熱することにより、熱分解性高分子材料を加熱分解し、かつ第1導電性粒子が粒成長してなる多孔性導電膜1aを形成する工程(3)(図1(d))と、第1導電性粒子よりも粒子サイズが小さい第2導電性粒子が分散媒中に分散した第2材料2を、基板Sの表面上に形成された多孔性導電膜1a上に塗布して、第2材料2を多孔性導電膜1aの表面および内部の細孔に浸透させる工程(4)(図1(e))と、多孔性導電膜1a上に塗布された第2材料2を加熱することにより、多孔性導電膜1aの細孔内における第2導電性粒子を粒成長させる工程(5)(図1(f))とを備え、これにより所定パターンの導電性パターン3を形成することができる。
なお、図1(d)において、曲線矢印は、熱分解性高分子材料がガス化して空中へ飛散する状態を表している。
【0034】
第1材料1を版Pの表面の転写パターン領域eに塗布する方法をとしては特に限定されるものではなく、例えば、版Pの表面に、第1材料1と密着する(なじむ)層と、第1材料1をはじく層とを所定パターンで形成し、この版Pの表面全面に第1材料を塗布する方法が挙げられる。このようにすれば、前記工程(1)において、第1材料1をはじく層には第1材料1が載らず、第1材料1となじむ層にのみに容易に第1材料1を載せることができる。
【0035】
具体的には、前記版Pが、第1材料1と密着する材料からなる基版Paと、該基版Paの表面上の転写パターン領域eを除く領域に形成された第1材料1をはじく層Pbとを有してなるものであれば、第1材料1を版Pの転写パターン領域eにのみ容易に塗布することができる。この際、第1材料1の版Pへの塗布方法は特に制限はなく、例えば、スピンコート法、スリットコート法、ダイコート法、キャスト法、ディップコート法等を用いることができる。なお、第1材料1を版Pへ塗布する際、上述したように第1材料1を室温より1〜5℃程度加温してさらに粘度を下げてもよい。
【0036】
このような版Pは、図1(a)に示すように、まず、基版paの表面の全面に、感光性樹脂材料を溶媒に溶解した塗布液を塗布して第1の塗布膜を形成し、この第1の塗布膜上に第1材料1をはじく性質を有する樹脂材料を塗布して第2の塗布膜を形成し、これらの塗布膜にマスクを介してパターン露光し現像して、基版Paの表面における転写パターン領域eを露出させることによって作製することができる。つまり、基版Paの表面の非転写パターン領域のみにはじく層Pbを形成する。
第1材料1と密着する基版Paの材料としては、アルミニウム、銅、ニッケル、タンタル等が挙げられ、これらの中でもアルミニウムが易加工性、良成形性であるため好ましい。
第1材料1をはじく樹脂材料としては、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0037】
被転写材である基板Sとしては、均一な厚さを有し、平滑な表面形状をもった耐熱性の材料からなるものであればよく、例えば、ガラス、シリコン、酸化シリコン、石英、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルフォン、ポリイミドフィルム等からなる基板を用いることができる。
【0038】
上述のように、前記工程(2)では、版P上の所定パターンの第1材料1が基板Sへ転写される。第1材料1は、上述したように第1導電性粒子が熱分解性高分子材料および溶剤の混合液中に均一に分散されている。
第1導電性粒子は、上述したようにナノメートルサイズの微粒子として第1材料中で分散かつ安定して存在するために、第1導電性粒子表面が分散剤にてコートされていることが好ましい。この場合、第1導電性粒子同士はお互いに引きつけ合う力が弱められており、版Pから基板Sへ第1材料1を転写する際に、版Pと基板Sとの間で転写が十分に行われずに転写物(第1材料の層)が内部で分断されてしまうことが考えられるが、熱分解性高分子材料は第1材料1の層内部の凝集力を向上させて内部での分断をなくす役割を有しているため、このような問題は生じない。なお、このような第1材料1の層の内部が分断すると、転写後の第1材料1の膜厚のバラツキおよび表面凹凸が大きくなってしまうだけでなく、形成された導電性パターン3が断線を生じる原因となる。
【0039】
前記工程(3)において、基板Sにパターン転写された第1材料1を焼成処理することにより、第1導電性粒子が融着し、熱分解性高分子材料が熱分解しガス化して飛散する。この際、第1材料1を加熱する加熱温度(焼成温度)は、その後の工程(5)における第2材料2を加熱する加熱温度(焼成温度)よりも高いことが好ましく、200〜300℃であることがさらに好ましい。なお、第1材料1の加熱温度が300℃を超える高温では、プロセス温度として高すぎるため、基板Sなどの他の構成材料に影響を及ぼす傾向があり、200℃より低い温度では、第1導電性粒子の焼成が十分に進行せず、かつ熱分解性高分子材料が完全に熱分解せず膜内に残留する場合があるため、低抵抗の導電性パターン3を得難くなる。また、焼成温度が200℃より低いと、十分な粒成長が進行しないために第1導電性粒子と基板Sとの密着性が十分とれず、膜剥がれがおきやすい膜となってしまう。
なお、工程(3)において、第1導電性粒子をコートする分散剤は、焼成処理によって焼失あるいはガス化して蒸発するため、第1導電性粒子同士の融着を妨げることがなく、多孔性導電膜内に残留して抵抗となることもない。
【0040】
導電性粒子は、そのサイズ効果によって、バルク状態の融点よりも融点が低くなる。例えば、Agの場合、バルクの融点は900℃以上であるが、粒子サイズが100nm程度から融点が落ち始めて10nm以下では200℃付近まで低下する。工程(3)では、このサイズ効果を利用して、300℃以下の温度での加熱によって、ナノ粒子の融着による粒成長をさせる。導電性粒子は焼成により、微粒子がそれぞれ互いに融着することで成長し、焼成前の粒子サイズよりも10倍〜500倍程度に大きく成長する。基板S上に転写された第1材料1中の第1導電性粒子は、その周辺に成長を阻害するものがないので、膜面内方向に概ね等方的に粒成長することが可能である。以下、第1導電性粒子が成長した成長粒を第1成長粒と称する場合がある。
【0041】
以上の工程によって、基板S上に第1成長粒からなる所定パターンの導電膜1aが形成されるが、該導電膜1aは熱分解性高分子材料が除去された領域が概ねそのまま細孔となるために、導電膜1aは内部および表面が多孔質な状態となる。つまり、前記工程(1)における版P上の第1材料のパターンからは溶剤が蒸発し続けているため、基板S上の第1材料の転写パターンを焼成する時点には溶剤は概ね抜けている。したがって、多孔性導電膜の細孔の体積分は概ね熱分解性高分子材料の体積分に相当している。
【0042】
例えば、第1導電性粒子として比較的比重(密度)が大きい部類である白金(比重:21.41g/cm3)を使用し、熱分解性高分子材料としては比重2以下のものを使用し、白金および熱分解性高分子材料の重量比を10:1とした場合で計算すると、第1成長粒からなる多孔性導電膜1aにおける固形部分が占める体積割合は約50%となり、残りの約50%が細孔部分となる。つまり、この場合の多孔性導電膜1aの空隙率は約50%である。
また、第1導電性粒子として比較的比重が小さい部類である銀(比重:10.49g/cm3)を使用し、熱分解性高分子材料としては比重2以下のものを使用し、銀および熱分解性高分子材料の重量比を100:1とした場合で計算すると、第1成長粒からなる多孔性導電膜1aにおける固形部分が占める体積割合は約95%となり、残りの約5%が細孔部分となる。つまり、この場合の多孔性導電膜1aの空隙率は約5%である。
なお、多孔性導電膜1aの膜表面および膜断面を走査電子顕微鏡(SEM)により観察し、画像解析をすることによって、多孔性導電膜1aの空隙率を確認することができる。
【0043】
本発明において、緻密で低抵抗な導電性パターン3を得るためには、導電性パターン3の空隙率を低く抑える必要がある。この導電性パターン3の空隙率は、基板に転写された第1材料中の第1導電性粒子を焼成した多孔性導電膜1aの空隙率が大きく影響し、導電性パターン3の空隙率を低く抑える上では多孔性導電膜1aの空隙率を低くしておくことが有利となる。よって、多孔性導電膜1aの空隙率は50%以下であることが好ましい。
この多孔性導電膜1aの空隙率は、第1材料中の第1導電性粒子と熱分解性高分子材料の割合およびそれらの比重によって概ね決定されるものである。上述のように、比重の大きい白金を第1導電性粒子として用いた場合は、比重2以下の熱分解高分子材料1重量部に対して第1導電性粒子を10重量部以上に設定することにより、空隙率約50%以下の多孔性導電膜1aを形成することができる。
【0044】
前記工程(4)では、上述したように第2材料2を多孔性導電膜1a上に塗布してその表面に付着させかつ内部細孔に浸透させる。第2材料2中の分散媒は上述したように表面自由エネルギーの低い溶媒が用いられ、かつ第2導電性粒子は第1導電性粒子よりも小さいサイズのものが用いられるため、多孔性導電膜1aの細孔に毛管力を利用して分散媒が第2導電性粒子と共に侵入する結果、第2導電性粒子が多孔性導電膜1aの細孔に取り込まれて内部が緻密でかつ表面がフラットな導電性パターン3を形成することが可能となる。なお、第2材料2を多孔性導電膜1a上に塗布する際、上述したように第2材料2を室温よりも1〜5℃程度加温してさらに粘度を下げてもよい。
【0045】
この工程(4)では、第2材料2を多孔性導電膜1a上に選択的に塗布する選択的塗布方法と、多孔性導電膜1aを含む基板Sの表面全面に第2材料2を塗布する全面的塗布方法のいずれかを用いることができる。
選択的塗布方法では、インクジェット法、ディスペンサー法等を用いて所定パターンの多孔性導電膜1a上のみに選択的に第2材料2を塗布することができる。この場合、多孔性導電膜1a内に毛細管現象により浸透する第2材料2の液滴量を適宜調整することが好ましい。なお、図1(e)において、符号Nは第2材料の液滴を吐出する吐出ノズルを表している。
【0046】
一方、全面的塗布方法では、スピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、キャスト法等を用いて多孔性導電膜1aを含む基板Sの表面全面に第2材料2を塗布することができる。この場合、多孔性導電膜1a上に塗布された第2材料2は内部に浸透するが、転写パターン領域e以外の基板Sの表面上にも第2材料2が塗布される。よって、その後の工程(5)で第2材料2を焼成すると、転写パターン領域e以外の基板Sの表面上に第2導電性粒子の成長粒(以下、第2成長粒と称する場合がある)が存在するため、転写パターン領域e以外の領域に付着した第2成長粒を除去する工程が行われる。なお、これについて詳しくは後述する。
【0047】
工程(5)では、上述したように多孔性導電膜1a上に塗布された第2材料2を加熱することにより、分散媒を蒸発させ、かつ多孔性導電膜1aの表面および内部細孔における第2導電性粒子を粒成長させる。この場合、第2導電性粒子は、第1成長粒からなる多孔性導電膜1a内の細孔を埋めるように成長するために成長方向が抑制されており、非等方的に成長する。よって、焼成後の導電性パターン3は、概ね等方的に成長した第1成長粒と非等方的に成長した第2成長粒とから構成される。
【0048】
第2材料2の加熱温度は、第1材料1の加熱温度よりも低いことが好ましい。具体的には、150〜200℃である。第2材料2の加熱温度を第1材料1の加熱温度よりも低くすることにより、第1導電性粒子が焼成してなる多孔性導電膜1aの基板Sとの密着性と、第2導電性粒子が焼成してなる成長粒の基板Sとの密着性にコントラストをつけることができる。
一般的に焼結前の導電性粒子は、ガラスやPET等の基板に対して密着性をもたない。焼成した導電性粒子と基板との密着力は、基板とのアンカー効果(基板と膜との絡み合い)により発現するが、このアンカー効果は焼成温度が高い方が強く、200℃以下の焼成温度では基板に対して密着性をもたないことを実験から得ている。また、アンカー効果は、成長粒のサイズが小さいと発現しない。
【0049】
上述したように工程(4)において基板Sの全面に第2材料2を塗布した場合、多孔性導電膜1a以外の領域の基板S表面に第2成長粒が付着しているため、第1材料1の焼成温度よりも第2材料2の焼成温度を低くする温度制御によって、第2成長粒の基板Sとの密着力を多孔性導電膜1aの基板Sとの密着力よりも弱くすることにより、工程(5)の後に第2成長粒を基板S表面から洗浄剥離することができる。また、選択的塗布方法の場合でも、第2材料2が多孔性導電膜1a上からこぼれる、または多孔性導電膜1a内から染み出る、または第2材料2の液滴が飛散して基板S表面に付着し、それが第2成長粒となることもあり得るため、この第2成長粒を基板S表面から洗浄剥離する。
洗浄剥離する方法としては、純水、有機溶剤のリンス洗浄、超音波洗浄が挙げられる。
【0050】
以上の方法により、多孔性導電膜1aの内部および表面が第2成長粒によって緻密に充填され、かつ表面均一性の高い導電性パターン3を得ることが可能となると共に、この導電性パターン3が基板S上に形成された配線基板Fを得ることができる。
【0051】
(配線基板の説明)
基板S上に前記導電性パターン3が形成された配線基板Fにおいて、導電性パターン3は、上述のように空隙率50%以下の多孔性導電膜1aの細孔内に第2成長粒が充填されたものである。したがって、導電性パターン3の空隙率は50%未満であり、現実的には30〜50%程度の低い空隙率である。
なお、導電性パターン3の膜表面および膜断面を走査電子顕微鏡(SEM)により観察し、画像解析をすることで、導電性パターン3の空隙率を測定することができる。
【0052】
また、この導電性パターン3は、上述のように内部の細孔が第2成長粒にて充填されると共に、表面の凹凸も第2成長粒によって平坦化されている。具体的には、導電性パターン3の表面の算術平均粗さ(JIS B 0601-1994)は100nm以下に平坦化されており、断線やグレイン境界による影響を受け難いものとなっている。なお、導電性パターン3の表面の算術平均粗さが100nmを上回ると、断線やグレイン境界による影響を受け易い傾向にある。
【0053】
また、導電パターン3における導電性粒子のグレインサイズは、第1材料1中の第1導電性粒子および第2材料2中の第2導電性粒子のサイズおよび各材料を焼成する焼成温度によって少なくとも2つ以上の分布をもつ。特に焼成温度は、微粒子の融着反応の反応ネルギーを与える重要なファクターである。
一般に、高温で焼成する方が、大きなサイズのグレインに成長する。例えば、粒径40nmの導電性粒子を、150℃、200℃、250℃で焼成したところ、グレインサイズは、100nm、350nm、1200nmである結果が得られている。第1材料1の焼成温度は200〜300℃であり、第2材料2の焼成温度は150〜200℃であることから、導電性パターン3は少なくとも2つ以上のグレインサイズの分布をもつ膜となっている。
【0054】
ここで、この導電性パターン3における第1成長粒と第2成長粒との体積分率は以下のように考えられる。
第1導電性粒子として比重(密度)が白金よりも大きいイリジウム(比重:22.61g/cm3)を使用し、熱分解性高分子材料としては比重2以下のものを使用し、イリジウムおよび熱分解性高分子材料の重量比を10:1とした場合で計算すると、第1成長粒からなる多孔性導電膜1aにおける固形部分が占める体積割合は約47%となり、残りの約53%が細孔部分となる。つまり、この場合の多孔性導電膜1aの空隙率は約53%である。この多孔性導電膜1aの細孔内に第2成長粒が隙間なく充填された場合、導電性パターン3における第1成長粒と第2成長粒との体積分率は47:53≒1:1.1である。
また、第1導電性粒子として比重(密度)が銀よりも小さいイットリウム(比重:4.5g/cm3)を使用し、熱分解性高分子材料としては比重2以下のものを使用し、イットリウムおよび熱分解性高分子材料の重量比を100:1とした場合で計算すると、第1成長粒からなる多孔性導電膜1aにおける固形部分が占める体積割合は約98%となり、残りの約2%が細孔部分となる。つまり、この場合の多孔性導電膜1aの空隙率は約2%である。この多孔性導電膜1aの細孔内に第2成長粒が隙間なく充填された場合、導電性パターン3における第1成長粒と第2成長粒との体積分率は98:2≒49:1である。
したがって、本発明の導電性パターン3は、第1成長粒と第2成長粒の体積分率が1:1.1から49:1の範囲にあると考えることができる。
【実施例】
【0055】
(実験例1)
下記の材料を用いて調製した粘度の異なる10種類の第1材料を用意し、図1(a)〜(c)で説明した方法によって版P上に第1材料のパターンを形成し、その第1材料のパターンを版Pから基板Sへ転写し、その際の転写性を評価し、その結果を表1に示した。なお、転写性の判定は、版Pのパターン形状をパターン形状通りで基板S上に転写できたか否かにより行い、転写性が良好である場合は○、転写性が不良である場合は×を記した。
<第1材料>
第1導電性粒子:銀粒子(平均一次粒径100nm)、10重量部
熱分解性高分子材料:エチルセルロース、0.5重量部
溶剤:トルエン、10〜100重量部(10重量部ずつ10段階で増加)
【0056】
【表1】

【0057】
この実験では、表1に示すように、粘度50mPa・s付近にパターン転写性可否の閾値がみられた。この結果から、本発明において第1材料の粘度は50mPa・s以下が好ましいことが確認された。
しかしながら、本発明において、第1材料の粘度は50mPa・sに限定されるものではなく、粘度が50mPa・sを越える第1材料であっても加温して50mPa・s以下に低下させて使用することができる。
【0058】
(実施例1)
ガラス基板上に、ライン幅W1が10μmおよびスペース幅W2が30μmの導電性パターンを以下のようにして形成した(図1(f)参照)。
第1材料は、分散剤によって表面がコートされた第1導電性粒子として平均1次粒径100nmの銀微粒子(アルバックマテリアル製)と、熱分解性高分子材料としてのエチルセルロース(日進化成製)とをターピネオール溶剤に対して重量比で20:1:100で混合分散して調製した。この第1材料の粘度を測定したところ3.4mPa・sであった。
第2材料は、第2導電性粒子として分散剤がコートされた平均1次粒径30nmの銀微粒子(アルバックマテリアル製)を溶剤としてのドデカンに対して重量比30:1で分散混合して調製した。この第2材料の粘度を測定したところ2.7mPa・sであった。
また、第1材料および第2材料を超音波処理して、銀微粒子の分散性を高めた。
【0059】
版は、アルミニウム製の基版上にポジ型感光性樹脂(東京応化社製)を塗布し、次いでその上にシリコーン樹脂(東芝GE製)を塗布し、複数本のライン(幅W1=10μm)およびスペース(幅W2=30μm)のパターンを有するフォトマスクを介して紫外線露光して現像することにより作製した(図1(a)参照)。なお、得られたシリコーン層の厚みは500nmであった。
【0060】
次に、スリットコーターを用いて第1材料を版上に塗布することにより、シリコーン層上には第1材料がなく、露出した基版表面上にウエット状態の第1材料が膜厚8μmでパターン形成された塗布膜を得た(図1(b)参照)。
続いて、この版上の第1材料パターンにガラス基板を密着させ、ガラス基板を剥離することにより、版上の第1材料パターンをガラス基板上に転写した(図1(c)参照)。
その後、第1材料パターンを有するガラス基板を炉内へ入れ、250℃で10分間焼成することにより、第1成長粒からなる多孔性導電膜を形成した(図1(d)参照)。
【0061】
次に、ディスペンサーを用いた選択的塗布方法により第2材料を多孔性導電膜上に液滴量0.3ml/mmで塗布し、多孔性導電膜内に第2材料を浸透させた(図1(e)参照)。この際、多孔性導電膜から部分的に第2材料があふれてガラス基板表面に付着した。
続いて、多孔性導電膜に第2材料を浸透させたガラス基板を炉内に入れ、150℃で10分間焼成させて、多孔性導電膜の内部および表面上で第2導電性粒子を成長させた(図1(f)参照)。
その後、ガラス基板をエタノール中に浸漬し、超音波洗浄することにより、基板表面に付着した第2成長粒を剥離して、ガラス基板上にライン幅W1が10μmおよびスペース幅W2が30μmを有する導電性パターンを形成して、配線基板を得た。
【0062】
形成した導電性パターンの体積抵抗率を測定したところ、5μΩcmであり、バルク銀と同じオーダーの低抵抗のパターンであることが分かった。
また、導電性パターンの膜の構造を評価するために、SEMで膜表面および断面形状を観察した。膜表面のSEM観察から、銀粒子のグレイン成長は、概ね等方的に球状に成長したサイズ1000〜12000nmの第1成長粒と、第1成長粒間を埋めるように非等方的に成長したサイズ100nm前後の第2成長粒が存在していた。また膜断面のSEM観察から、膜内部においても細孔の少ない緻密な膜であり、空間充填率は85%以上であることが分かった。
また、導電性パターンの表面を原子間力顕微鏡(AFM)において観察し、算術平均粗さを算出したところ60nmであり、非常にフラットな膜であることが分かった。
【0063】
(比較例1)
実施例1と同様に、図1(a)〜(d)の工程を行い、第2材料を用いた図1(e)および(f)の工程は行わずに、第1成長粒のみからなる多孔性導電膜の導電性パターンを作製した。この導電性パターンの体積抵抗率を測定したところ27μΩcmであり、実施例1よりも抵抗値が大きくなった。
また、SEMで膜形状を観察したところ、導電性パターンのグレインサイズは実施例1と同様に1000〜12000nmであり、空間充填率は40%程度であった。また、この導電性パターンの表面をAFMで観測して算出した算出平均粗さは540nmであり、実施例1よりも大幅に粗いものであることがわかった。
【0064】
(比較例2)
実施例1における第1材料中の第1導電性粒子とエチルセルロースとターピネオールとを重量比で110:1:550に変更して、実施例1と同様に図1(a)〜(c)の工程を行ったところ、版から基板へ第1材料パターン転写ができず、導電性パターンを形成することができなかった。
【0065】
(比較例3)
実施例1における第1材料中の第1導電性粒子とエチルセルロースとターピネオールとを重量比で150:1:750に変更して、実施例1と同様に図1(a)〜(c)の工程を行ったところ、版から基板へ第1材料パターンの転写が全くできず、導電性パターンを形成することができなかった。
【0066】
(比較例4)
実施例1における第1材料中の第1導電性粒子とエチルセルロースとターピネオールとを重量比で9:1:220に変更して、実施例1と同様に図1(a)〜(d)の工程を行ったところ、第1材料を焼成してなる多孔性導電膜のパターン中に断線が生じたため、それ以降の工程を行うことができなかった。
【0067】
(比較例5)
実施例1における第1材料中の第1導電性粒子とエチルセルロースとターピネオールとを重量比で1:1:2000に変更して、実施例1と同様に図1(a)〜(d)の工程を行ったところ、第1材料を焼成してなる多孔性導電膜のパターン中に比較例4よりもさらに断線が生じたため、それ以降の工程を行うことができなかった。
【0068】
比較例1は、実施例1のように第2材料を用いて多孔性導電膜内に第2導電性粒子を充填しない多孔質な導電性パターンであるため、表面も粗く、体積低効率が高いものとなった。比較例2および比較例3は、第1材料中の熱分解性高分子材料の重量比が小さ過ぎるため、版から基板へパターン転写することができなかったと思われる。逆に、比較例4および比較例5は、第1材料中の熱分解性高分子材料の重量比が大き過ぎるため、多孔性導電膜の空隙率が大きくなり過ぎて断線を生じたと考えられる。
これらに対して、本発明の条件を備える実施例1では、比較例1〜5のような問題を生じることなく、表面がフラットで低抵抗な緻密な膜を形成することができた。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、各種電子デバイスに組み込まれるμmオーダーの微細配線パターンを有する配線基板、集積回路等の形成に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1(a)〜(f)は本発明の導電性パターン形成方法を示す工程図である。
【符号の説明】
【0071】
1 第1材料
1a 多孔性導電膜
2 第2材料
3 導電性パターン
e 転写パターン領域
F 配線基板
N 吐出ノズル
P 版
Pa 基版
Pb 第1材料をはじく層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電性粒子が熱分解性高分子材料と溶剤の混合液中に分散混合してなる第1材料と、前記第1導電性粒子よりも粒子サイズが小さい第2導電性粒子が分散媒中に分散した第2材料との組み合わせからなり、
前記第1材料において、前記第1導電性粒子の重量と前記熱分解性高分子材料の重量との比が10:1から100:1であることを特徴とする導電性パターン形成材料。
【請求項2】
前記第1材料および第2材料は、粘度が1〜50mPa・sである請求項1に記載の導電性パターン形成材料。
【請求項3】
前記第1導電性粒子の平均1次粒径が10〜500nmであり、前記第2導電性粒子の平均1次粒径が1〜100nmである請求項1または2に記載の導電性パターン形成材料。
【請求項4】
前記熱分解性高分子材料が150℃以上300℃以下の温度で熱分解する高分子材料からなる請求項1〜3のいずれか1つに記載の導電性パターン形成材料。
【請求項5】
前記熱分解性高分子材料が、重量平均分子量1000〜100000を有する熱分解性高分子材料を含む請求項1〜4のいずれか1つに記載の導電性パターン形成材料。
【請求項6】
前記第1導電性粒子および第2導電性粒子は、その表面が分散剤にて覆われている請求項1〜5のいずれか1つに記載の導電性パターン形成材料。
【請求項7】
前記第1導電性粒子および第2導電性粒子が、金、銀、銅、鉄、白金、クロム、ニッケル、タンタル、インジウム、イリジウム、錫、亜鉛、ガリウム、イットリウムおよびこれらの金属の酸化物から選択された1種類以上の粒子からなる請求項1〜6のいずれか1つに記載の導電性パターン形成材料。
【請求項8】
第1導電性粒子と熱分解性高分子材料と溶剤とを含み、かつ前記第1導電性粒子の重量と前記熱分解性高分子材料の重量との比を10:1から100:1として第1導電性粒子を分散混合してなる第1材料を、版の表面の転写パターン領域に塗布して、転写用パターンを形成する工程(1)と、
前記版上の前記転写用パターンを基板の表面に転写する工程(2)と、
前記基板の表面上に転写された前記第1材料のパターンを加熱することにより、前記熱分解性高分子材料を加熱分解し、かつ前記第1導電性粒子が粒成長してなる多孔性導電膜を形成する工程(3)と、
前記第1導電性粒子よりも粒子サイズが小さい第2導電性粒子が分散媒中に分散した第2材料を、基板の表面上に形成された前記多孔性導電膜上に塗布して、前記第2材料を多孔性導電膜の表面および内部の細孔に浸透させる工程(4)と、
前記多孔性導電膜上に塗布された第2材料を加熱することにより、前記多孔性導電膜の細孔内における前記第2導電性粒子を粒成長させる工程(5)とを備えたことを特徴とする導電性パターン形成方法。
【請求項9】
前記第1材料および第2材料が、1〜50mPa・sの粘度で調製される請求項8に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項10】
前記工程(3)において、前記第1材料を加熱する加熱温度が、前記第2材料を加熱する加熱温度よりも高い請求項8または9に記載の導電性パターン形成方法。
【請求項11】
前記版が、前記第1材料と密着する材料からなる基版と、該基版の表面上の転写パターン領域を除く領域に形成された第1材料をはじく層とを有してなる請求項8〜10のいずれか1つに記載の導電性パターン形成方法。
【請求項12】
前記工程(4)において、前記第2材料を前記多孔性導電膜上に選択的に塗布する請求項8〜11のいずれか1つに記載の導電性パターン形成方法。
【請求項13】
前記工程(4)において、多孔性導電膜を含む基板表面の全面に前記第2材料を塗布し、
さらに、前記工程(5)の後に、基板表面上で粒成長した第2導電性粒子の成長粒を除去する工程を含む請求項8〜11のいずれか1つに記載の導電性パターン形成方法。
【請求項14】
前記工程(3)にて形成された多孔性導電膜の空隙率が53%以下である請求項8〜13のいずれか1つに記載の導電性パターン形成方法。
【請求項15】
基板と、前記請求項8〜14のいずれか1つに記載の導電性パターン形成方法によって前記基板の表面に形成された前記導電性パターンとを備えた配線基板であって、
前記導電性パターンの表面の算術平均粗さが100nm以下である配線基板。
【請求項16】
前記導電性パターンが、前記第1導電性粒子が等方的に粒成長した第1成長粒と、前記第2導電性粒子が非等方的に粒成長した第2成長粒とからなり、前記第1成長粒と第2成長粒との体積分率が1:1.1から49:1の範囲内にある請求項15に記載の配線基板。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−170447(P2009−170447A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−3390(P2008−3390)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】