説明

導電性接着剤

本発明は、電子器機、集積回路、半導体素子、太陽電池および/またはソーラーモジュールの製造において、導電性物質として使用するのに適した接着剤に関する。この接着剤は、少なくとも1種の樹脂成分、少なくとも1種の窒素含有硬化剤、少なくとも1種の低融点金属フィラー、および必要に応じて、金属フィラーとは異なる少なくとも1種の導電性フィラーを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子器機、集積回路、半導体素子、太陽電池および/またはソーラーモジュールの製造において、導電性物質として使用するのに適した接着剤に関する。この接着剤は、少なくとも1種の樹脂成分、少なくとも1種の窒素含有硬化剤、少なくとも1種の低融点金属フィラー、および必要に応じて、金属フィラーとは異なる少なくとも1種の導電性フィラーを含有する。
【背景技術】
【0002】
導電性物質は、電子器機、集積回路、半導体素子、太陽電池および/またはソーラーモジュールの製造および組み立てにおいて種々の目的で使用される。例えば、集積回路チップを基板に接着するため(ダイ接着剤)または金属タブを太陽電池の表面に接着するために、導電性接着剤を使用する。
【0003】
幅広い様々な用途に対して、導電性接着剤(ECA)のような導電性物質は相互接続材料としてはんだ材料の有望な代替品であるとみなすことができる。一般的に、ECAは2つの基材間に機械的な接合をもたらし、かつ電気を通す。一般的にECA調製物は、導電性金属フィラーで満たされたポリマー樹脂から作られている。一般的に樹脂が2つの基材間の機械的な接合をもたらし、一方、一般的に導電性フィラーが所望の電気的相互接続をもたらす。典型的には、ECAは以下の利点を示す:より低い加工温度、低減された環境影響、および増強された耐熱機械的疲労。
【0004】
例えば、米国特許第6,344,157号明細書は、マイクロ電子工学用途において使用するための改善された電気的安定性を備える導電性接着剤を開示する。この導電性接着剤は、ポリマー樹脂、導電性フィラー、腐食防止剤、および低融点金属フィラーを含有し、低融点金属フィラーは、インジウム、インジウム合金、錫合金またはそれらの混合物から選択され得る。ポリマー樹脂は、ビニル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂またはケイ素含有樹脂からなる群から選択される。上記の米国特許文献には、ポリマー樹脂成分としてシアネートエステルとエポキシ樹脂の組み合わせは開示されていない。
【0005】
導電性フィラーを含む導電接着剤は導電性用途において潜在的利点を有し得るが、それらは、例えば接着剤のポリマー部分の比較的低い導電性などの課題ももたらす。さらに、金属充填接着剤による特定の課題は、フィラー充填量、接着強度、硬化速度、導電性および安定な電気接触抵抗の適正なバランスを満たすことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,344,157号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、所望の接着性、硬化速度、導電性および安定な電気接触抵抗を達成するための導電特性を有する新しい接着剤に対する要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、導電特性を有する接着剤および前記接着剤の導電特性を有する硬化生成物を提供する。本発明の接着剤は、約50℃〜約220℃の温度範囲において、約0.1秒〜100分で硬化し得る。硬化した場合、硬化生成物は良好な接着性、安定な電気接触抵抗および高い導電性を示す。
【0009】
本発明の接着剤は、
(a)(i)少なくとも1種のシアネートエステル成分、および
(ii)少なくとも1種のエポキシ樹脂
を含有する少なくとも1種の樹脂成分;
(b)少なくとも1種の窒素含有硬化剤;
(c)1013mbarで300℃未満の融点を有する少なくとも1種の金属フィラー; および、
(d)必要に応じて、金属フィラーとは異なる少なくとも1種の導電性フィラー
を含む。
【0010】
本発明の接着剤は、2つの基材間に導電性接着を形成することができ、電子器機、集積回路、半導体素子、太陽電池および/またはソーラーモジュールの製造および組み立てにおいて使用することができる。
【0011】
したがって、本発明は、離れた関係の空間に配置された2つの基材を含んでなる結合組立品であって、各基材が内部接面および外部接面を有しており、本発明の接着剤の硬化生成物により2つの基材の内部接面間に導電性接着が形成された結合組立品も提供する。
【0012】
本発明の別の態様は、電子器機、集積回路、半導体素子、太陽電池および/またはソーラーモジュールの製造における本発明の接着剤の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において使用される用語「導電性フィラー」は、非導電性樹脂成分に加えた場合に導電性ポリマー合成物を作り出す材料を意味する。導電性フィラーは、1013mbarで300℃未満の融点を有する金属フィラーとは区別される。
【0014】
本発明において使用される用語「ソーラーモジュール」は、いくつかの相互接続された太陽電池の配置(例えばいくつかの電気的相互接続された太陽電池の配置)を意味する。本明細書において使用されるように、用語「ソーラーモジュール」はソーラーモジュール、ソーラーパネルおよびソーラーアレイを含む。
【0015】
用語「樹脂成分」は、全ての重合性樹脂および本発明の接着剤に存在する反応性希釈剤を意味する。特に好ましい実施態様において、本発明の接着剤の全ての樹脂成分は、シアネートエステルおよびエポキシ樹脂からなる群から選択される。別の実施態様において、本発明の接着剤は、少なくとも1種のさらなる樹脂成分、好ましくはビニル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、マレイミド樹脂、ポリイミド樹脂またはケイ素含有樹脂およびそれらの組み合わせから選択される樹脂成分を含有する。
【0016】
本発明の一実施態様において、シアネートエステル成分は、多官能モノマーシアネート、多官能ポリマーシアネート、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0017】
用語「多官能」は、少なくとも2つのシアネート基を有するモノマーシアネートエステルまたはポリマーシアネートエステルを意味する。これらの化合物は、好ましくは下記式(I)〜(IV)で示される化合物から選択される。
【0018】
【化1】

式中、R〜Rは、互いに独立して、水素、C〜C10アルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜C10アルコキシ、ハロゲン、フェニルまたはフェノキシを表し、アルキル基またはアリール基は部分的にまたは完全にフッ素化されていてもよい。例えば、フェニレン−1,3−ジシアネート、フェニレン−1,4−ジシアネート、2,4,5−トリフルオロフェニレン−1,3−ジシアネート。
【0019】
【化2】

式中、R〜Rは、R〜Rと同じ意味を有し、Zは化学結合、SO、CF、CH、CHF、CH(CH)、C(CH、C(CF、C〜C10アルキル、O、NH、N=N、CH=CH、COO、CH=N、CH=N−−N=CH、C〜Cアルキル基を有するアルキルオキシアルキル、S、Si(CH、または
【化3】

である。例えば、2,2−ビス(4−シアナト−フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナト−フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビフェニレン−4,4’−ジシアネート。
【0020】
【化4】

式中、R10は、3〜100個の炭素原子を有する二点結合非芳香族炭化水素である。炭化水素鎖は1種以上の置換基、好ましくは、フッ素などのハロゲン、ヒドロキシ基、アシル基およびアミノ基から選択される置換基で置換されていてもよい。
【0021】
【化5】

式中、Rは水素またはC〜C10アルキルであり、nは0〜20の整数である。
【0022】
多官能モノマーシアネートおよび多官能ポリマーシアネートは、モノマーまたはポリマーとして、単独でまたは互いに混合して、あるいは1種以上の単官能シアネートと混合して用いることができる。
【0023】
好ましい単官能シアネートは、下記式(V)〜(VI)で示される化合物から選択される。
【0024】
【化6】

【0025】
【化7】

式中、R〜RおよびR10は前記と同じ意味である。
【0026】
硬化樹脂成分の特性、例えばガラス転移温度は、多官能モノマーシアネートおよび/または多官能ポリマーシアネートと単官能シアネートの共重合によりコントロールすることができ、単官能シアネートのシアネート基の好ましい量は、本発明の接着剤の全てのシアネート基に対して、最大50モル%、好ましくは最大40モル%、より好ましくは最大10モル%である。
【0027】
市販のシアネートエステル成分の中で本発明の使用に適当なのは、ビスフェノールAシアネートエステル、ヘキサフルオロビスフェノール−Aシアネートエステル、ビスフェノール−Eシアネートエステル、テトラメチルビスフェノールFシアネートエステル、ビスフェノール−Mシアネートエステル、フェノールノボラックシアネートエステル、ジシクロペンタジエニル−ビスフェノールシアネートエステル、ノボラックシアネートエステル、例えば、Primaset PT15、Primaset PT30、Primaset PT60、Primaset BADCy、Primaset LECy、Primaset METHYLCy、Primaset BA200などの商品名PrimasetのもとLonzaから市販されているシアネートエステル、ならびにAroCy B-10、AroCy F-10、およびAroCy L-10などの商品名AroCyのもとHuntsmanから市販されているシアネートエステルである。
【0028】
シアネートエステル成分または異なるシアネートエステル成分の混合物を、本発明の接着剤の全樹脂成分の総重量に基づいて、4〜70重量%、より好ましくは20〜60重量%、最も好ましくは30〜50重量%の量で使用し得る。
【0029】
本発明の接着剤は、さらに少なくとも1種のエポキシ樹脂、すなわちエポキシ含有化合物を含む。以下に、本発明に使用される市販のエポキシ樹脂を記載する。
【0030】
使用される樹脂として、例えば、C〜C28ジオールのグリシジルエーテル、C〜C28アルキルポリフェノールグリシジルエーテル;ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン(またはビスフェノールF、例えば日本化薬(日本)製のRE-303-SまたはRE-404-Sなど)、4−4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン(またはビスフェノールA)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメチルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、およびトリス(4−ヒドロキシフェニル)メタンのポリグリシジルエーテル;遷移金属錯体のポリグリシジルエーテル;上記ジフェノールの塩化物および臭化物;ノボラックのポリグリシジルエーテル;芳香族炭化水素とジハロアルカンまたはジハロゲンジアルキルエーテルとの塩のエステル化により得られるジフェノールのエーテルをエステル化することにより得られるジフェノールのポリグリシジルエーテル;フェノールと、少なくとも2つのハロゲン原子を有する長鎖ハロゲンパラフィンとの縮合により得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテル;フェノールノボラックエポキシ樹脂;クレゾールノボラックエポキシ樹脂;およびそれらの組み合わせのような多官能エポキシ含有化合物が挙げられる。
【0031】
市販されているエポキシ樹脂の中で本発明の使用に適当なエポキシ樹脂は、フェノール性化合物のポリグリシジル誘導体、例えば商品名EPON 825、EPON 826、EPON 828、EPON 1001、EPON 1007およびEPON 1009、脂環式エポキシ含有化合物、例えばHuntsman製のAraldite CY179または水性分散体、Hexion製の商品名EPI-REZ 3510、EPI-REZ 3515、EPI-REZ 3520、EPI-REZ 3522、EPI-REZ 3540またはEPI-REZ 3546;Dow Chemical社製のDER 331、DER 332、DER 383、DER 354、およびDER 542;Huntsman社製のGY 285;日本化薬製のBREN-Sなどである。他の適当なエポキシ含有化合物には、ポリオールなどから調製されるポリエポキシドおよびフェノール−ホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジル誘導体が含まれ、フェノール−ホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジル誘導体は、Dow Chemical社製のDEN 431、DEN 438およびDEN 439ならびにHuntsman社製の水性分散体ARALDITE PZ 323の商品名のもと入手可能である。
【0032】
クレゾール類似体も、Huntsman社からECN 1273、ECN 1280、ECN 1285およびECN 1299または水性分散体ARALDITE ECN 1400を入手し得る。SU-8およびEPI-REZ 5003は、Hexion製のビスフェノールA型エポキシノボラック樹脂である。接着性、柔軟性および強度を改善するためのエポキシまたはフェノキシ官能性変性剤(例えばHELOXYブランドエポキシ変性剤67、71、84および505)を使用し得る。使用時、エポキシまたはフェノキシ官能性変性剤は、熱硬化性樹脂に対して、約1:1〜約5:1の量で使用し得る。
【0033】
当然、異なるエポキシ樹脂(エポキシ含有化合物)の組み合わせも、本発明の使用に好ましい。
【0034】
エポキシ樹脂または異なるエポキシ樹脂の混合物を、本発明の全樹脂成分の総重量に基づき、30〜96重量%、より好ましくは40〜80重量%、最も好ましくは50〜70重量%の量で使用し得る。
【0035】
好ましくは、シアネートエステル成分は、本発明の接着剤の全樹脂成分の総重量に基づいて4〜70重量%の量、より好ましくは20〜60重量%または30〜50重量%の量で存在し、エポキシ樹脂は、本発明の接着剤の全樹脂成分の総重量に基づいて、好ましくは30〜96重量%の量、より好ましくは40〜80重量%または50〜70重量%の量で存在する。
【0036】
シアネートエステル成分とエポキシ樹脂の混合物を用いることにより、エポキシ系調製物と比較して、(比較的低い温度において)非常に速い硬化速度を示す接着剤を調製することができる。さらに、本発明の接着剤は、前記エポキシ系調製物に比べてより高い導電性およびより安定な電気接触抵抗をもたらす。
【0037】
特に好ましい実施態様において、本発明の接着剤の全樹脂成分の総重量は、本発明の接着剤の総重量に基づいて、3〜25重量%の範囲、好ましくは5〜18重量%の範囲、より好ましくは6〜15重量%の範囲である。
【0038】
別の実施態様において、本発明の接着剤は、コアシェルゴム粒子をさらに含有する。
【0039】
そのような粒子は、一般的に、非弾性ポリマー材(すなわち、周囲温度を超えるガラス転移温度(例えば約50℃以上)を有する熱可塑性または熱硬化性/架橋ポリマー)からなるシェルに取り囲まれた、弾性またはゴム状特性(すなわち、約0℃未満、例えば約−30℃未満のガラス転移温度)を有するポリマー材からなるコアを有する。
【0040】
例えば、コアは、ジエンホモポリマーまたはコポリマー(例えば、ブタジエンまたはイソプレンのホモポリマー、ブタジエンまたはイソプレンと例えばビニル芳香族モノマー、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリレートなどの1種以上のエチレン性不飽和モノマーとのコポリマー)から構成されていてよく、一方、シェルは、例えば、(メタ)アクリレート(例えば、メチルメタクリレート)、ビニル芳香族モノマー(例えばスチレン)、シアン化ビニル(例えばアクリロニトリル)、不飽和酸および無水物(例えばアクリル酸)、(メタ)アクリルアミド、および適当な高いガラス転移温度を有するモノマーなどの1種以上のモノマーのポリマーまたはコポリマーから構成されていてもよい。ポリブチルアクリレートまたはポリシロキサンエラストマー(例えば、ポリジメチルシロキサン、特に架橋ポリジメチルシロキサン)を含む他のゴム状ポリマーもコアとして使用するのに適している。コアシェルゴム粒子は2つ以上の層から構成されていてもよい(例えば、1つのゴム状物質の中心コアを異なるゴム状物質の第2コアが取り囲んでいてよく、または、ゴム状コアを異なる組成の2つのシェルが取り囲んでいてもよく、あるいは、コアシェルゴム粒子はソフトコア、ハードシェル、ソフトシェル、ハードシェル構造を有していてもよい)。本発明の一実施態様において、使用されるコアシェルゴム粒子は、コアと、異なる化学的組成および/または特性を有する少なくとも2種の同心状シェルから構成される。
【0041】
コアまたはシェルのいずれかが、あるいはコアおよびシェルのいずれもが(例えば、イオン的にまたは共有的に)架橋していてよい。シェルはコアに接合していてよい。シェルを含むポリマーは、本発明の接着剤の他の成分と相互作用することのできる1種以上の異なるタイプの官能基(例えばエポキシ基)を有し得る。
【0042】
一般的に、コアはコアシェルゴム粒子の約50〜約95重量%を構成し、シェルはコアシェルゴム粒子の約5〜約50重量%を構成する。
【0043】
コアシェルゴム粒子は、ナノ単位の大きさである。すなわち、コアシェルゴム粒子は、約1000nm未満の、好ましくは約400nm未満の、より好ましくは約350nm未満の、望ましくは50〜350nmの範囲の平均粒子径を有する。
【0044】
コア−シェル構造を有するゴム粒子の製造方法は、先行技術において既知であり、例えば、米国特許第4,419,496号、同4,778,851号、同5,981,659号、同6,111,015号、同6,147,142号および同6,180,693号に記載されている(これらの全てを参照することによりここに組み込む)。
【0045】
コア−シェル構造を有するゴム粒子は、ゴム粒子を1種以上の樹脂(例えばビスフェノールAのジグリシジルエーテル)中に分散させるマスターバッチとして調製し得る。例えば、ゴム粒子は一般的に水性分散体またはエマルションとして調製される。そのような分散体またはエマルションは、所望の樹脂または種々の樹脂と水および蒸留等により除去される他の揮発性物質との混合物と組み合わせ得る。
【0046】
エポキシ樹脂にコア−シェル構造を有するゴム粒子の特に適当な分散体は、例えば、Kaneka MX-120(ビスフェノールAのジグリシジルエーテルマトリクスにおける25重量%ナノサイズのコア−シェルゴムのマスターバッチ)、Kaneka MX-136(ビスフェノールFのジグリシジルエーテルマトリクスにおける25重量%ナノサイズのコア−シェルゴムのマスターバッチ)、およびHanse Chemie Albidur EP 940などを株式会社カネカまたはHanse Chemieから入手できる。
【0047】
例えば、コアは、ポリブタジエン、ポリアクリレート、ポリブタジエン/アクリロニトリル混合物、ポリオールおよび/またはポリシロキサンあるいは低ガラス転移温度を付与する任意の他のモノマーの供給原料から主に形成することができる。外側のシェルは、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンまたはポリ塩化ビニルあるいはより高いガラス転移温度を付与する任意の他のモノマーの供給原料から主に形成することができる。このようにして製造されたコアシェルゴム粒子を、エポキシ樹脂中に分散すればよい。
【0048】
本発明の接着剤中に、コアシェルゴム粒子は、本発明の接着剤の全樹脂成分の総重量に基づいて、約5〜約45重量部の範囲、好ましくは約10〜約30重量部の範囲の量で存在し得る。
【0049】
コアシェルゴム粒子を用いることにより、本発明の接着剤の硬化生成物のガラス転移温度を低下させることなく、本発明の接着剤の硬化生成物の強靱性および剥離接着性が増加する。
【0050】
窒素含有硬化剤は、本発明の接着剤を適当な条件下で硬化させる。前記硬化剤は、少なくとも1つのアミノ基、例えば1級アミノ基または2級アミノ基を有する化合物から選択され得る。
【0051】
本発明の一実施態様において、窒素含有硬化剤は、阻害または抑制された反応性を示す第1級アミンまたは第2級アミンから選択される。定義「阻害または抑制された反応性を示す第1級アミンまたは第2級アミン」とは、化学的または物理的なブロッキングにより、樹脂成分と反応できないまたは非常に低い反応性を有するが、保護基を開裂させ得る化学反応物質と反応することなくその反応性を再生し得るアミンを意味する。これらの特性は、物理的または化学的条件に起因するアミン固有の特性であろう。
【0052】
阻害または抑制された反応性を示す第1級アミンまたは第2級アミンを、化学的または物理的にカプセル化してもよい。例えば、上昇温度下において溶融することによる、被覆またはコーティングを除去することによる、圧力または超音波あるいは他のエネルギー型の作用によるアミンの放出後、樹脂成分の硬化反応が開始する。
【0053】
本発明の好ましい実施態様において、窒素含有硬化剤は熱活性可能硬化剤から選択される。
熱活性可能硬化剤の例は、グアニジン、置換グアニジン、置換尿素、メラミン樹脂、グアナミン誘導体、環状第3アミン、芳香族アミンおよび/またはそれらの混合物である。
【0054】
好ましい窒素含有および/または熱活性可能硬化剤は、アミン−エポキシ付加物から選択される。アミン−エポキシ付加物は、先行技術において既知であり、例えば、米国特許第5,733,954号、同5,789,498号、同5,798,399号および同5,801,218号に記載されている(これらの全てを参照することによりここに組み込む)。そのようなアミン−エポキシ付加物は、1種以上のアミン化合物と1種以上のエポキシ化合物との反応生成物である。アミン−エポキシ付加物の製造において、またはアミンとエポキシを反応させた後さらに付加物を変性するために、カルボン酸無水物、カルボン酸、フェノールノボラック樹脂、水、金属塩などをさらなる反応物質として使用してもよい。
【0055】
好ましくは、付加物は、室温で本発明の樹脂成分に不溶性の固体であるが、加熱により溶解または融解して、樹脂成分を硬化させるための硬化剤として機能する。いかなるタイプのアミンも使用し得るが、複素環アミン、少なくとも1つの2級窒素を含むアミンおよびイミダゾール化合物が好ましい。
【0056】
イミダゾールの実例として、2−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどが挙げられる。限定するものではないが、他の適当なアミンとして、ピペラジン、ピペリジン、ピラゾール、プリンおよびトリアゾールが挙げられる。エポキシ樹脂の任意の種を付加物の出発物質として使用することができ、それらには単官能、2官能、および多官能エポキシ化合物(例えばエポキシ樹脂に関する先の記載で挙げられたような化合物)が挙げられる。
【0057】
適当なアミン−エポキシ付加物は、味の素、エアープロダクツ、アデカ、旭電化工業および旭化成などの販売元から入手することができる。商品名AJICUREのもと味の素から販売されている製品、および商品名AMICUREまたはANCAMINEのもとエアープロダクツから販売されている製品が、本発明における使用に特に好ましい。
【0058】
市販のアミン−エポキシ付加物の中で、本発明の使用に適するものは、Ajicure PN-H、Ajicure PN-23(J)、Ajicure PN-40(J)、Ajicure PN-50(J)、Ajicure PN-31、Amicure 2014 AS、Amicure 2014 FG、Amicure 2337S、Amicure 2441、Amicure 2442、Ajicue MY-24、Ajicure MY-H、Ajicure MY-23、Adeka Hardener EH 4360S、Adeka Hardener EH 4370S、Adeka Hardener EH 3731S、およびAdeka Hardener EH 4357Sである。
【0059】
当然、異なる窒素含有硬化剤の組み合わせ、例えば異なるアミン−エポキシ付加物の組み合わせも本発明の使用に適する。
【0060】
少なくとも1種の窒素含有硬化剤、例えばアミン−エポキシ付加物は、本発明の接着剤中に、本発明の接着剤の全樹脂成分の総重量に基づいて、約5〜約40重量部の範囲の量、好ましくは約8〜約30重量部の範囲の量、より好ましくは約10〜約25重量部の範囲の量で存在し得る。
【0061】
窒素含有硬化剤の化学的性質に応じて、5時間〜最大数ヶ月のポットライフを有する一成分性接着剤および二成分性接着剤を調製し得る。
【0062】
用語「ポットライフ」は、22℃における本発明の接着剤調製物の安定性を意味する。本発明の接着剤の粘度増加が接着剤調製物の初期粘度と比較して50%未満であれば、本発明の接着剤調製物は安定であるとみなす。当然、すべての粘度を同じ条件下で測定する。
【0063】
硬化反応をさせたい時に必要な熱またはエネルギーを構成成分の混合物中に投入するとすぐに、選択された成分の反応性に応じて約0.1秒〜100分後に終了する自発的硬化が引き起こされる。
【0064】
本発明の接着剤は、1013mbarで300℃未満の融点を有する少なくとも1種の金属フィラーをさらに含有する。少なくとも1種の金属フィラーの融点は、1013mbarにおける測定で、好ましくは270℃未満、または250℃未満、または230℃未満、または200℃未満、または180℃未満または160℃未満である。
【0065】
金属合金に対する用語「融点」は、その金属合金の共晶融点を意味する。金属合金が共晶融点を示さない場合、示される融点はその合金が完全に液体状に変化した時点の温度を意味する。
【0066】
種々の金属または金属合金の融点は当業者により容易に測定することができ、また、文献(例えば、Holleman-Wiberg、Lehrbuch der anorganischen Chemie、101版, de Gruyter、1995)中に見つけることができる。
【0067】
本発明の一実施態様において、金属フィラーは、インジウム(融点157℃)、錫(融点232℃)、およびインジウムおよび/または錫の合金(例えば、インジウムと銀、ビスマス、錫および/または鉛の合金、あるいは錫と銀、ビスマス、インジウムおよび/または鉛の合金)から選択される。
【0068】
用語「インジウム合金」は、合金の総量に基づいて少なくとも5重量%のインジウムを含む合金を意味する。
用語「錫合金」は、合金の総量に基づいて少なくとも5重量%の錫を含む合金を意味する。
【0069】
特に好ましい実施態様において、本発明において合金は、合金の総重量に基づいて、少なくとも10重量%のインジウム、好ましくは20重量%のインジウム、より好ましくは少なくとも30重量%のインジウム、および/または少なくとも10重量%の錫、好ましくは少なくとも20重量%の錫、より好ましくは少なくとも30重量%の錫を含有する。
【0070】
インジウムおよび/または錫の合金の好適例としては、SnPb(Sn:63重量%、Pb:37重量%、融点183℃)、SnAg (Sn:96.5重量%、Ag:3.5重量%、融点221℃)、SnIn (Sn:50重量%、In:50重量%、融点120℃)、SnBi (Sn:5重量%、Bi:95重量%、融点251℃)、BiInSn (Bi:32.5重量%、In:51重量%、Sn:16.5 重量%、融点62℃)、BiPbSn (Bi:50重量%、Pb:26.7重量%、Sn:13.3重量%、融点70℃)、BiPbSn (Bi:25重量%、Pb:25重量%、Sn:50重量%、融点100℃)、AgIn (Ag:10重量%、In:90重量%、融点237℃)、InGa (In:99.3重量%、Ga:0.7重量%、融点150℃)が挙げられる。
【0071】
当然、1013mbarで300℃未満の融点を有する異なる金属フィラーの組み合わせも、本発明における使用に好ましい。
【0072】
例えばインジウムおよび/またはインジウムの合金などの1013mbarで300℃未満の融点を有する金属フィラーの添加は、本発明の接着剤により形成された導電性接着の長期安定性を改善する。これは、上昇温度および/または高い湿度条件下においても、前記金属フィラーが電気抵抗率の著しい増加を防止するからである。
【0073】
インジウムなどの1013mbarで300℃未満の融点を有する少なくとも1種の金属フィラーは、本発明の接着剤中に、本発明の接着剤の総重量に基づいて、約0.1〜約40重量部の範囲の量、好ましくは約1〜約10重量部の範囲の量、より好ましくは約2〜約5重量部の範囲の量で存在してよい。
【0074】
本発明の接着剤は、少なくとも1種の導電性フィラーをさらに含有し得る。導電性フィラーは金属フィラーとは異なり、好ましくは、銀、銅、金、パラジウム、白金、カーボンブラック、炭素繊維、グラファイト、アルミニウム、酸化インジウム錫、銀めっき銅、銀めっきアルミニウム、金属めっきガラス球、アンチモンドープ酸化錫、およびそれらの組み合わせから選択される。導電性フィラーが存在する場合、好ましくは、少なくとも1つの導電性フィラーが銀から選択される。
【0075】
当然、異なる導電性フィラーの組み合わせも、本発明における使用に好ましい。
【0076】
本発明の一実施態様においては、100nm〜50μmの範囲の平均粒子径、好ましくは5〜30μmの範囲、より好ましくは1〜10μmの範囲の平均粒子径を有する少なくとも1種の粒子状導電性フィラーを使用する。粒子状導電性フィラーは、例えば球状、フレーク状および/または樹枝状形態などの種々の形態を有していてよい。
【0077】
ここで使用されるような用語「平均粒子径」は、好ましくは、50体積%の粒子が前記数値未満の直径を有する累積容積分布曲線のD50値を意味する。本発明において平均粒子径またはD50値は、マイクロトラック社製のS3500を用いたレーザー回折により測定する。この技術においては、懸濁液またはエマルション中の粒子の大きさを、フラウンホーファー理論またはミー理論のいずれかの応用に基づくレーザー光線の回折を用いて測定する。本発明においては、ミー理論または非球状粒子のための修正ミー理論が適する。
【0078】
10nm〜100nmの範囲の平均粒子径を有するナノ粒子状導電性フィラーの添加は、一般的に、比較的容易に加工や操作し得る粘度を保ちながら、樹脂成分のバルク導電率を高める。さらに、ナノ粒子状導電性フィラーは、ミクロンサイズの導電性フィラーが侵入し難い表面孔および凸凹に侵入することができ、それにより界面抵抗の影響を低減する。ミクロンサイズの粒子が存在する場合に、本発明の調製物におけるナノ粒子状導電性フィラーの存在はその接着剤の安定性も改善し得る。
【0079】
銀などの少なくとも1つの導電性フィラーは、本発明の接着剤中に、本発明の接着剤の総重量に基づいて、約40〜約95重量%の範囲の量で、好ましくは約50〜約90重量%の量で、より好ましくは約70〜約85重量%の量で存在し得る。
【0080】
別の実施態様において、本発明の接着剤は、この分野で既知の一般的な添加剤、例えば、可塑剤、油、安定化剤、酸化防止剤、顔料、染料、ポリマー添加剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、レオロジー調整剤、保湿剤、マスターバッチ剤、接着促進剤、分散剤および水などをさらに含有する。
【0081】
添加剤を使用する場合、その所望する特性を得るのに十分な量で添加剤を使用する。少なくとも1種の添加剤は、本発明の接着剤中に、本発明の接着剤の総重量に基づいて、約0.05〜約10重量%の範囲の量、好ましくは約1〜約5重量%の範囲の量、より好ましくは約2〜約4重量%の範囲の量で存在し得る。
【0082】
当然、異なる添加剤の組み合わせも、本発明における使用に適する。
【0083】
本発明の接着剤の典型的な処方は、以下の成分を含む:
(a)(i)全樹脂成分の総重量に基づいて、25〜55重量%の少なくとも1つのシアネートエステル成分;
(a)(ii)全樹脂成分の総重量に基づいて、45〜75重量%の少なくとも1つのエポキシ樹脂;
(b)全樹脂成分の総重量に基づいて、5〜40重量部の少なくとも1つの窒素含有硬化剤;
(c)本発明の接着剤の総重量に基づいて、0.1〜40重量%の、1013mbarで300℃未満の融点を有する少なくとも1つの金属フィラー;
(d)本発明の接着剤の総重量に基づいて、0〜95重量%の、金属フィラーとは異なる少なくとも1つの導電性フィラー;
(e)全樹脂成分の総重量に基づいて、0〜35重量部の少なくとも1つのコアシェルゴム;および
(f)本発明の接着剤の総重量に基づいて、0〜10重量%の少なくとも1つの添加剤。
上記処方において、樹脂成分(a)(i)、(a)(ii)および(b)の割合は、本発明の接着剤の総重量に基づいて、3〜22重量%の範囲である。
【0084】
本発明の接着剤の好ましい処方は、以下の成分を含む:
(a)(i)2〜8重量%の少なくとも1つのシアネートエステル成分;
(a)(ii)3〜10重量%の少なくとも1つのエポキシ樹脂;
(b)1.5〜3重量%の少なくとも1つのアミン−エポキシ付加物;
(c)1.5〜3重量%のインジウム;
(d)70〜90重量%の銀;
(e)0〜5重量%の少なくとも1つのコアシェルゴム;および
(f)0〜5重量%の少なくとも1つの添加剤。
上記処方において、各成分の量は、本発明の接着剤の総重量に基づく。
【0085】
本発明の発明者は、同時に高い剥離強度、速い硬化速度、高い導電率、安定的な電気接触抵抗(長期安定性)および低いバルク伝導性を示す接着剤として、前記調製物を使用し得ることを見出した。
【0086】
導電性接着剤である本発明の接着剤に、無鉛はんだ代替技術、一般的な相互接続技術、ダイ接着剤などとしての利用を見出すことができる。本発明の接着剤を使用する電子器機、集積回路、半導体素子、太陽電池および/またはソーラーモジュールならびに他の装置は、エネルギー生産、パソコン、制御システムおよび電話網を含む世界中の様々な用途において使用し得る。
【0087】
特に好ましい活用において、太陽電池および/または太陽電池モジュールにおけるはんだ付けまたは溶接による相互接続に代えて、本発明の接着剤を使用する。これらの太陽電池/モジュールとしては、限定するものではないが、結晶シリコン(c−Si)電池に基づく電池およびモジュール、ならびに、活性光起電層がCI(G)S(銅インジウムセレン化物または硫化物、CuInSeまたはCuInS、銅インジウムガリウムセレン化物または硫化物、CuInGaSeまたはCuInGaS)、カドミウムテルル化物(CdTe)、a−Si、μ−Siまたはそれらの組み合わせを含み得るいわゆる薄膜ソーラーモジュールが挙げられる。通常、外部電気回路へ接続するために、接続タブ、例えば錫のタブ、錫鉛のタブ、錫鉛銀のタブまたは錫銀めっき銅のタブが太陽電池/モジュールに取り付けられる。太陽電池/モジュールへの接続タブのはんだ付けは、シリコン製太陽電池/モジュールとはんだ間での熱膨張係数の不一致により、剛性の相互接続と残留応力を生じる。製造中および使用中に相互接続で生じる温度サイクルは、太陽電池および/または太陽電池モジュールに損傷をもたらすであろう。
【0088】
本明細書において、本発明の接着剤をはんだに代わる無鉛代替物として使用することができる。はんだ付けと比較して、本発明の接着剤のより低い加工温度は、室温まで冷却した後の残留応力をより低下させる。従来の鉛含有はんだ付けは220℃前後の温度で生じ、従来の鉛非含有はんだ付けは約220℃で生じるが、本発明の接着剤は、積層する間または積層前に220℃よりかなり低い温度で硬化することができる。
【0089】
硬化した時、接着剤の硬化生成物は、接続タブと太陽電池および/またはソーラーモジュールの表面の間に安定的な相互接続を形成する。この相互接続は、高い機械的強度、安定な電気接触抵抗、および高い導電率をもたらす。
【0090】
したがって、本発明の接着剤の硬化生成物は本発明の別の態様である。前述したように、本発明の接着剤は、約50℃〜約220℃の範囲、90℃〜約180℃または120℃〜約150℃の範囲の温度において、約0.1秒〜100分で硬化し得る。
【0091】
好ましい実施態様において、本発明の接着剤は、120℃〜150℃において、5秒未満、好ましくは4秒未満、より好ましくは3秒未満で硬化する。本発明の接着剤の硬化は、例えばIRランプや従来の加熱技術を用いて調製物を加熱することにより行うことができる。
【0092】
本発明の別の態様は、離れた関係の空間に配置された2つの基材を含んでなる結合組立品であって、各基材が内部接面および外部接面を有しており、本発明の接着剤の硬化生成物により2つの基材の内部接面間に導電性接着が形成された結合組立品である。
【0093】
少なくとも1つの基材は、例えば金属焼成ペースト、アルミニウム、錫、モリブデン、銀および導電性金属酸化物(例えば酸化インジウム錫(ITO)、フッ素ドープ酸化錫、アルミニウムドープ酸化亜鉛など)等の金属から選択することができる。
別の適当な金属としては、銅、金、パラジウム、白金、アルミニウム、インジウム銀めっき銅、銀めっきアルミニウム、錫、および錫めっき銅が挙げられる。
【0094】
シリコン基材は結晶質または非晶質であってよい。結晶シリコンは、単結晶シリコンまたは多結晶シリコンから選択され得る。単結晶シリコンは高純度単結晶ブールからウェハーを薄く切り取ることにより製造され、一方、多結晶シリコンは、シリコンのキャストブロックを初めにバーへ、その後ウェハーへ切断することにより作製される。
【0095】
特に好ましい実施態様において、一方の基材は結晶シリコン太陽電池/モジュールで一般的に使用されている金属焼成ペースト、または透明導電性酸化物、例えば酸化インジウム錫から製造され、他方の基材は錫めっき銅、錫銀めっき銅、または銀めっき銅から製造される。
【0096】
本発明において使用される用語「焼成ペースト」とは、一般的に、組成物に適当な電気的機能特性を与える機能層を含んでなる厚膜組成物を意味する。この機能層は、組成物を形成する機能層に対する媒体としてはたらく有機媒体に分散された電気的機能性粉体を含む。この組成物は、有機層を燃焼し、無機バインダー層を活性化し、電気的機能特性を付与するために燃やされる。
【0097】
本発明の別の態様は、電子器機、集積回路、半導体素子および太陽電池の製造における本発明の接着剤の使用に関する。
【0098】
例えばインジウムなどの1013mbarで300℃未満の融点を有する金属フィラーを使用することにより、導電性接着剤により形成された導電性接着の長期安定性を改善することができる。これは、金属フィラーが、前記接着において電気抵抗率の著しい増加が生じるのを防止するためである。
【0099】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0100】
下記材料を使用した。
シアネートエステル成分:4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート(Lonza製、 Primaset Lecy)
エポキシ樹脂1:ビスフェノールFのジグリシジルエーテル
エポキシ樹脂2:1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(Acros製)
窒素含有硬化剤:本発明に記載するようなエポキシ付加物の形態の窒素含有化合物
コアシェルゴム粒子:本発明に記載するようなコアシェルゴム粒子
インジウム:6A型、625メッシュ(AM&M製)
銀:ミクロンサイズの銀フレーク
【0101】
下記表1に示すように種々のサンプルを調製した。サンプルNo.1およびサンプルNo.3は、コントロールサンプルである。サンプルNo.1はインジウムを含有しないが、サンプルNo.2と類似調製物である。サンプルNo.3は、シアネートエステル成分を含有しない市販のエポキシ系導電性接着剤(ECCOBOND CE3103WLV)である。
【0102】
【表1】

【0103】
サンプルNo.1および2は、それぞれ以下のようにして調製した。
エポキシ樹脂1および2をシアネートエステル成分に加え、得られた混合物をスピードミキサー容器において、22℃で2分間、2000rpmの混合速度で攪拌した。残りの成分を加え、得られた調製物を22℃で1分間、1000rpmの混合速度で十分に均質な調製物が観察され、形成されるまで攪拌した。
【0104】
本発明の種々のサンプル(接着剤)をさらに特徴付けるため、下記の方法を用いた。
【0105】
電気接触抵抗
電気接触抵抗は、銀めっき銅の接続タブを酸化インジウム錫の試験層に取り付けることにより、または錫めっき銅の接続タブをc−Si太陽電池の正面のバスバー(銀焼成ペースト)に取り付けることにより測定した(TLM構造試験設定)。TLM構造は、7個の接続タブを試験層に接続することにより得た(接続タブ間の距離は約3mm〜約18mmに増加する)。隣接する接続タブ間の抵抗は、Keithley 2010マルチメーターにより測定し、距離の関数として表示した。プロットから得られる曲線の切片の半分が接触抵抗値である。
【0106】
電気接触抵抗の安定性
電気接触抵抗の安定性は、上述したTLM試験設定を用いて、加速試験(85℃、相対湿度85%)により測定した。
+ 初期の電気接触抵抗に対して、4000時間後の電気接触抵抗の増加が20%未満
− 初期の電気接触抵抗に対して、4000時間後の電気接触抵抗の増加が20%以上
【0107】
剥離強度
剥離強度は、金属タブ(2mm幅、厚さ150ミクロン、錫銀めっき銅のタブ)を10×10cmのセラミック基板に接着することにより測定した。接着剤をステンシル(容積2×5×0.75mm)を用いてセラミック基板上に5回塗布し、5つの接着点を作製した。5つの接着点に金属タブを設置した後、組立品を150℃のボックスオーブンで10分間硬化させた。Frolyt製の90°剥離試験装置を使用して剥離強度を測定する前に、サンプルを室温で少なくとも2時間放置した。報告した全ての剥離強度について、8.8mm/秒の剥離速度を採用した。報告した結果は15個のサンプル(3つの金属タブ、各金属タブに対して5個の接着点)の平均である。
【0108】
粘度は、TA instrument製のAR1000レオメーターを用いて25℃にて測定した。測定には、2cmプレートジオメトリーおよび200ミクロンギャップを用いた。剪断速度は15s−1とした。
【0109】
表2はサンプルNo.1〜No.3の異なる特性を示す。
【0110】
【表2】

【0111】
[1]+ 初期の電気接触抵抗に対して、85℃/85%RHで4000時間貯蔵後の電気接触抵抗の増加が20%未満
− 初期の電気接触抵抗に対して、85℃/85%RHで4000時間貯蔵後の電気接触抵抗の増加が20%以上
[2]2mm×20mmの接触領域
[3]2mm×2mmの接触領域
【0112】
サンプルNo.3の硬化速度は、150℃にて5分であったのに対して、サンプルNo.1およびNo.2は、150℃にて5秒未満で硬化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)少なくとも1種のシアネートエステル成分、および
(ii)少なくとも1種のエポキシ樹脂
を含有する少なくとも1種の樹脂成分;
(b)少なくとも1種の窒素含有硬化剤;
(c)1013mbarで300℃未満の融点を有する少なくとも1種の金属フィラー; および、
(d)必要に応じて、金属フィラーとは異なる少なくとも1種の導電性フィラー
を含んでなる接着剤。
【請求項2】
シアネートエステル成分は、多官能モノマーシアネート、多官能ポリマーシアネートおよびそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
エポキシ樹脂は、単官能グリシジルエーテル、多官能グリシジルエーテルおよびそれらの組み合わせから選択される、請求項1または2に記載の接着剤。
【請求項4】
接着剤がコアシェルゴム粒子を含んでなる、請求項1〜3のいずれかに記載の接着剤。
【請求項5】
窒素含有硬化剤は熱活性可能硬化剤から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の接着剤。
【請求項6】
窒素含有硬化剤はアミン−エポキシ付加物から選択される、請求項1〜5のいずれかに記載の接着剤。
【請求項7】
金属フィラーは、インジウム、錫、およびインジウムおよび/または錫の合金から選択される、請求項1〜6のいずれかに記載の接着剤。
【請求項8】
金属フィラーは、インジウムと、銀、ビスマス、鉛から選択される少なくとも1種の金属との合金から選択される、請求項7に記載の接着剤。
【請求項9】
合金が、合金の総重量に基づいて少なくとも10重量%のインジウムを含んでなる、請求項7または8に記載の接着剤。
【請求項10】
導電性フィラーが存在する場合、導電性フィラーが、レーザー回折法により測定した場合に100nm〜50μmの範囲の平均粒子径を有する、請求項1〜9のいずれかに記載の接着剤。
【請求項11】
導電性フィラーが存在する場合、導電性フィラーは、銀、銅、金、パラジウム、白金、カーボンブラック、炭素繊維、グラファイト、アルミニウム、酸化インジウム錫、銀めっき銅、銀めっきアルミニウム、金属めっきガラス球、アンチモンドープ酸化錫、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項1〜10のいずれかに記載の接着剤。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の接着剤の硬化生成物。
【請求項13】
離れた関係の空間に配置された2つの基材を含んでなる結合組立品であって、各基材が内部接面および外部接面を有しており、請求項12に記載の硬化接着剤により2つの基材の内部接面間に導電性接着が形成された結合組立品。
【請求項14】
少なくとも1つの基材は、金属および導電性金属酸化物から選択される、請求項13に記載の結合組立品。
【請求項15】
電子器機、集積回路、半導体素子および太陽電池の製造における、請求項1〜11のいずれかに記載の接着剤の使用。

【公表番号】特表2012−532942(P2012−532942A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518981(P2012−518981)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059746
【国際公開番号】WO2011/003948
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】