説明

少なくとも一つの疎水性基で官能化されたポリアミノ酸、およびその応用、特に治療学的応用

本発明は、活性成分(AP)を担持するために有用な、生分解性ポリアミノ酸に基づく新規な材料に関する。本発明の目的は、APを担持するために有用で、且つ生体適合性、生分解性、多くの活性成分と容易に会合する能力、インビボで前記活性成分を可溶化して放出する能力に関する多くの要件を最適に満たす、新規なポリマー材料を提供することである。当該ポリマーはまた、疎水性基のグラフト化率に従って容易に且つ経済的に、活性成分を担持する粒子に変換することができ、該粒子は安定なす異性コロイド懸濁液を形成する。上記の目的は、それぞれが少なくとも一つの疎水性ユニットを含んだグラフトを有するアスパラギン酸ユニットおよび/またはグルタミン酸ユニット含んでなる両親媒性ポリアミノ酸であって、これら疎水性グラフトの少なくとも幾つかが、それぞれ少なくとも二つのアミド結合を含む連結部、特にリジン型またはオルニチン型の「スペーサ」を介して、前記アスパラギン酸および/またはグルタミン酸ユニットに結合されることを特徴とする本発明の両親媒性ポリアミノ酸によって達成される。上記アミド官能基は、従来技術において既知の生成物に比較して、加水分解の際のより良好な安定性を保証する。本発明はまた、本発明のポリアミノ酸に基づく新規な医薬組成物、化粧品組成物、食品組成物または植物衛生組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、特に活性成分(AP)の担持担持送達(vectorization)のために有用な、生分解性ポリアミノ酸に基づく新規な材料に関する。
本発明は更に、こいれらのポリアミノ酸に基づく新規な医薬組成物、化粧品組成物、食品組成物、または植物衛生組成物に関する。これらの沿い生物は、APの担持送達を可能にするタイプであることができ、好ましくは、エマルジョン、ミセル、粒子、ゲル、インプラントまたはフィルムの形態を取ることができる。
【0002】
上記APは、有利には、経口、非経腸的、経鼻、経膣、眼内皮下的、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、脳内、または頬側口腔内の経路で投与できる、生物学的に活性な化合物であると考えられる。
本発明に関するAPは、より詳細には、タンパク質、糖タンパク質、ペプチド、多糖、リポ多糖、オリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド、および有機分子に関するものであるが、これらは限定を意味するものではない。しかし、本発明はまた、化粧品、または除草剤、殺虫剤、殺菌剤等にも関するものである。
【0003】
活性成分、特に医学的活性成分の担持送達の分野においては、多くの場合に次のことが必要とされる。
・それらが作用部位に達するまで、それらを劣化(加水分解、当該部位における沈着、酵素的消化等)から保護すること;
・および/または、それらの放出速度を制御して、定められた期間に亘って一定のレベルを維持すること;
・および/または、作用部位へとそれらを(保護された状態で)搬送すること。
【0004】
これらの目的のために数種類のポリマーが研究されてきており、その幾つかは商業的に入手可能である。言及し得る例は、ポリ乳酸、ポリ乳酸-グリコール酸、ポリオキシエチレン-オキシプロピレン、ポリアミノ酸型または多糖型のポリマーである。これらのポリマーは、例えばマスインプラント(mass implant)、ミクロ粒子、ナノ粒子、小胞体、ミセルまたはゲルを製造するための出発物質を構成する。これらのポリマーは、このようなシステムの製造に適しなければならないとの事実とは別に、それらはまた生体適合性で、無毒で、非免疫原性で、且つ経済的でなければならず、また身体から容易に除去可能および/または生分解性でなければならない。この最後の点に関しては、更に、生物内での生分解によって無毒の生成物が生じることが不可欠である。
【0005】
APの担持送達システムを製造するための出発物質として用いられるポリマーに関する先行技術を例示するために、以下に、種々の特許、特許出願または科学論文について述べる。
米国特許第4,652,441号は、ホルモンLH-RHを封入したポリラクチドマイクロカプセルを記載している。これらのマイクロカプセルは、水/油/水エマルジョンを調製することによって製造され、当該ホルモンおよび後者を固定するための物質(ゼラチン)を含有する内水層、ポリラクチドの油層、および外水層(ポリビニルアルコール)を含んでいる。APは、皮下注射後の2週間を越える期間に亘って放出されることができる。
【0006】
米国特許第6,153,193号は、アドリアマイシンのような抗癌剤の担持送達のための、両親媒性ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンミセルに基づく組成物を記載している。
Akiyoshi et al.(J. Controlled Release 1998, 54, 313-320)は、コレステロールをグラフト化することにより疎水性とし、水中でナノ粒子を形成するプルラン類を記載している。これらのナノ粒子は、インスリンと可逆的に複合体を形成することができ、安定なコロイド懸濁液を形成する。
【0007】
米国特許第4,351,337号は、活性成分の制御放出のためにインプラントまたはミクロ粒子の形態で使用できる、ロイシンおよびグルタメートに基づく両親媒性の共重合アミノ酸を記載している。活性成分は、当該ポリマーの分解速度に依存して、非常に長基間に亘って放出されることができる。
【0008】
米国特許第4,888,398号は、ポリグルタメートまたはポリアスパルテート、並びに任意にポリロイシンに基づくポリマーであって、該ポリアミノ酸鎖に沿ってランダムに位置するアルコキシカルボニルメチル型のペンダント基を備えたポリマーを記載している。側鎖、例えばメトキシカルボニルメチル基をグラフトされたこれらのポリアミノ酸は、長期放出型のAPを含有する生分解性インプラントの形態で使用することができる。
【0009】
米国特許第5,904,936号は、ポリロイシン-ポリグルタメートブロックポリマーから得られたナノ粒子を記載しており、これらは安定なコロイド懸濁液を形成することができ、また生物学的に活性なタンパク質を変成させることなく、これと自然に会合することができる。次いで、この生物学的に活性なタンパク質は長期間に亘って制御された様式で、インビボで放出されることができる。
【0010】
米国特許第5,449,513号は、ポリオキシエチレンブロックおよびポリアミノ酸ブロックを含んでなる両親媒性のブロック共重合体、例えばポリ(β-ベンジル-L-アスパルテート)を記載している。これらのポリオキシエチレン-ポリベンジルアスパルテートポリマーは、アドリアマイシンまたはインドメタシンのような疎水性の活性分子を封入できるミセルを形成する。
【0011】
特許出願WO 99/61512は、疎水性基(ポリリジンまたはポリオルニチンに結合されたパルミチン酸)および親水性基(ポリオキシエチレン)で官能化されたポリリジンおよびポリオルニチンを記載している。コレステロールの存在下において、これらのポリマー、例えばポリオキシエチレンおよびパルミトイル鎖をグラフトされたポリリジンは、ドキソルビシンまたはDNAを封入できる小胞体を形成する。ポリリジンに基づくこれらのポリマーは、生理学的媒質中において陽イオン性である。
【0012】
本件出願人の特許出願WO 00/30618は、安定なコロイド懸濁液を形成することができ、また生物学的に活性なタンパク質を変成することなく自然にこれと会合できる、ポリ(グルタミン酸ナトリウム)(ポリグルタミン酸メチル、エチル、ヘキサデシルもしくはドデシル)ブロックポリマーまたはランダムポリマーを記載している。生物学的に活性なタンパク質は、次いで、長期にわたって制御された様式で、インビボで放出されることができる。これら両親媒性の共重合アミノ酸は、疎水性アルキル側鎖の存在によって修飾される。これらのアルキル基は、アルコールまたはヨードアルカン(アルコールグラフトの前駆体)とグルタミン酸ユニットのカルボキシ基との反応から生じるエステル基を介して、当該ポリマー上に共有結合的にグラフトされる。
【0013】
それらは、目的とする用途に応じて、少なくとも二つの側面において改善することができる:
⇒水性媒質中におけるエステル基の相対的安定性;
⇒および疎水性のアルキルグラフト片としての、一定の非天然アルコール(例えばヘキサノール)の使用。後者の側面は、このようなアルコール残基を含むポリマーの量が大きくなれば、毒性の点で特に問題である。
【0014】
従って、医学的活性成分の担持送達のために開発され且つ提案されてきた多くの技術的解決法が先行技術に存在しているが、全体としての要求に対する回答は達成するのが困難であり、未だ不充分なままである。
【発明の開示】
【0015】
この点において、本発明の本質的な目的の一つは、特許出願WO-A-00/30618号に記載されたポリマーと比較して改善を示す、ポリグルタメートおよびポリアスパルテートに基づくポリマー(好ましくはポリアミノ酸ポリマー)の新規なサブファミリーを提供することである。
【0016】
本発明のもう一つの本質的目的に従えば、これらの改善されたポリマー類は、APの担持送達のために使用できるはずであり、また仕様書における下記の全ての明細を満たすことを最適に可能にするはずである:
☆生体適合性
☆生分解性
☆加水分解に対する安定性
☆これらのポリマー自身が、
・安定な水性コロイド懸濁液を容易かつ経済的に形成でき、
・多くの活性成分と容易に会合でき、
・インビボでこれら活性成分を放出できる。
【0017】
この目的および他の目的が本発明によって達成され、これは先ず第一に、それぞれが少なくとも一つの疎水性ユニットを含んだグラフトを有するアスパラギン酸ユニットおよび/またはグルタミン酸ユニット含んでなる両親媒性ポリアミノ酸であって、これら疎水性グラフトの少なくとも幾つかが、それぞれ少なくとも二つのアミド結合の一部を形成する、および/またはこれを含む「スペーサ」によって、前記アスパラギン酸および/またはグルタミン酸ユニットに結合されることを特徴とする両親媒性ポリアミノ酸に関する。
【0018】
本発明によれば、酸(好ましくは天然の脂肪酸)またはその誘導体の一つに由来する疎水性ユニットが選択され、次いで、この疎水性酸が好ましくはリジンまたはオルニチンに基づく「スペーサ」を介してポリマーにグラフトされる。この疎水性基のグラフト化に含まれる二つの結合は、アミド(ポリアミノ酸のペプチド結合と同じタイプ)である。従って、本発明の概念の一部は、グラフトの前駆体として、既知のアルコールまたはヨードアルキルの変わりに疎水性の酸を使用して、水性媒質中で遥かに安定なポリマーを与えることに基づいている。
【0019】
これらの新規なポリマーは、疎水性ユニットを含む側鎖を担持したポリアミノ酸の生分解性骨格を有している。これらのポリマーは、類似の生成物と比較して、驚くべき会合特性および/または封入特性を有しており、更に、それらは酵素の存在下で容易に分解される。
【0020】
特定の生分解性で且つ陰イオン性のポリAspおよび/またはポリGluポリアミノ酸と、酸から誘導された少なくとも一つの疎水性ユニットを含み、且つ少なくとも二つのアミド基を含んでなる回転性結合を介して、より正確にはリジン(好ましくはL-リジン)またはオルニチンに基づく「スペーサ」を介してポリAspおよび/またはポリGluの骨格に結合されるグラフトとを、全体として賢明かつ有利な方法で組合せるアイデアを持ったことが、出願人の功績である。
【0021】
これらの新規なポリマーまたはコポリマーは、APの担持送達に特に適していることが証明された。
本発明に関して、「ポリアミノ酸」の用語は、2〜20アミノ酸ユニットを含んでなるオリゴアミノ酸および20を越えるアミノ酸ユニットを含んでなるポリアミノ酸の両方をカバーするものである。
【0022】
好ましくは、本発明によるポリアミノ酸は、グルタミン酸またはアスパラギン酸のアミノ酸反復単位を含んでなるオリゴマーまたはホモポリマー、或いはこれら二種類のアミノ酸ユニットの混合物を含んでなるコポリマーである。これらポリマーにおける問題のユニットは、D、LまたはDLコンフィグレーションを有し、且つグルタメートまたはグルタミン酸ユニットの場合にはそのα位またはγ位を介して、アスパラギン酸またはアスパルテートユニットの場合はα位またはβ位を介して結合されたアミノ酸である。
【0023】
好ましいアミノ酸ユニットは、Lコンフィギュレーションおよびα型の結合を有するものである。
更に好ましくは、本発明によるポリアミノ酸は、下記一般式(I)を有する:
【0024】
【化3】

ここで、
■ R1は、H、直鎖のC2〜C10アルキルもしくは分岐鎖のC3〜C10アルキル、ベンジルまたは末端アミノ酸ユニットであり;
■ R2は、H、直鎖のC2〜C10アシルもしくは分岐鎖のC3〜C10アシル基、またはピログルタメートであり;
■ R3は、H、好ましくは下記の群から選択される陽イオンであり:
- 有利にはナトリウム、カリウムカルシウムおよびマグネシウムからなる副群
から選択される金属陽イオン;
- 有利には下記からなる副群から選択される有機陽イオン;
・アミンに基づく陽イオン
・オリゴアミンに基づく陽イオン
・ポリアミン(ポリエチレンイミンが特に好ましい)に基づく陽イオン
・有利にはリジンまたはアルギニンに基づく陽イオンからなるクラスから
選択される、アミノ酸に基づく陽イオン
- 有利にはポリリジンおよびオリゴリジンからなる副群から選択される陽イオ
ン性ポリアミノ酸;
■ n個の基Bは、相互に独立に、それぞれ次式で表される1価の基であり;
【0025】
【化4】

ここで、
- R4は、独立にR3について挙げたリスト、直鎖のC1〜C6アルキル、分岐鎖の
C3〜C8アルキル、またはベンジルから選択され;
- R5は独立に、(i)飽和または不飽和の、直鎖のC2〜C24アルキルもしくは分岐
鎖のC4〜C24アルキル、または(ii)C7〜C24アリール、アラルキルもしくは
アルキルアリールから誘導されるような酸誘導体から選択される基であり、
■ Aは、独立に、-CH2-(アスパラギン酸ユニット)または-CH2-CH2-(グルタミン酸ユニット)であり;
■ n/(n+m)は、モルグラフト化率として定義され、0.5〜100モル%で変化し;
■ n+mは、3〜1000、好ましくは30〜300で変化し;
■ lは、1(オルニチン「スペーサ」)または2(リジン「スペーサ」)に等しい。
【0026】
一般に、好ましい基-R5は、好ましくはパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸およびリノレン酸からなる群から選択される天然脂肪酸から誘導されたアシル基である。
本発明の第一の実施形態において、前記ポリアミノ酸は、α-L-グルタメートまたはα-L-グルタミン酸ホモポリマーである。
【0027】
本発明の第二の実施形態において、前記ポリアミノ酸は、α-L-アスパルテートまたはα-L-アスパラギン酸ホモポリマーである。
本発明の第三の実施形態において、前記ポリアミノ酸は、α-L-アスパルテート/α-L-グルタメートコポリマー、またはα-L-アスパラギン酸/α-L-グルタミン酸コポリマーである。
【0028】
有利には、少なくとも一つの疎水性ユニットを含んだグラフトを有するアスパラギン酸および/またはグルタミン酸ユニットの分布は、得られるポリマーがランダム型、またはブロック型、またはマルチブロック型の何れかであるような分布である。
もう一つの方法で定義すると、本発明によるポリアミノ酸は、2000〜100,000g/モル、好ましくは5000〜40,000g/モルの分子量を有する。
【0029】
更に好ましいものとしては、本発明によるポリアミノ酸における疎水性ユニットのモルグラフト化率は、2〜50%、好ましくは5〜20%である。
注目すべきこととして、本発明のポリアミノ酸は、そのグラフト化率に従って幾つかの方法で使用することができる。本発明が関連する種々の形態で活性成分を封入するための、ポリマーの成形方法は当業者に既知である。更なる詳細は、例えば、下記に挙げた幾つかの特定の関連参照文献を調べることによって得ることができる。
【0030】
“Microspheres, Microcapsules and Liposomes; vol. 1. Preparation and chemical applications”, Ed. R. Arshady, Citus Books 1999. ISBN: 0-9532187-1-6.
“Sustained-Release Injectable Products”, Ed. J. Senior and M. Radomsky, Interpharm Press 2000. ISBN: 1-57491-101-5.
“Colloidal Drug Delivery Systems”, Ed. J. Kreuter, Marcel Dekker, Inc. 1994. ISBN: 0-8247-9214-9.
“Handbook of Pharmaceutical Controlled Release Technology”, Ed. D.L. Wise, Marcel Dekker, Inc. 2000. ISBN: 0-8247-0369-3。
【0031】
また、ポリアミノ酸は、約3〜10%の比較的低いグラフト化率において、pH 7.4の水(例えばリン酸緩衝液)の中で分散し、ポリマー濃度およびグラフト化率に従ってコロイド溶液もしくは懸濁液、またはゲルを形成する。更に、ポリアミノ酸(粒子状または非粒子状の形態)は、タンパク質、ペプチドまたは小分子のような活性成分を封入することができ、まはこれと会合することができる。好ましい成形操作は、本件出願人の名義による特許出願WO 00/30618号に記載されたものであり、この方法は、当該ポリマーを水中に分散させることと、該溶液をAPの存在下でインキュベートすることからなっている。その後、この溶液を0.2μmのフィルター上で濾過し、次いで患者に直接注射することができる。
【0032】
10%のグラフト化率を越えると、当該ポリマーは、APを結合または封入できるミクロ粒子を形成することができる。この点に関して、当該ミクロ粒子は、APおよびポリマーを適切な有機溶媒中に共溶解させ、次いで該混合物を水中で沈殿させることによって成形することができる。その後、この粒子は濾過によって回収され、次いで経口経路(ゼラチンカプセルの形態、圧縮および/またはコーティングされた形態、または油中に分散された形態)で、または水中に再懸濁させた後に非経腸的経路で投与するために使用することができる。
【0033】
30%を越えるグラフト化率では、イオン化可能なカルボキシレート基の量が少ないため、水中における当該ポリマーの再懸濁化が困難になり、該ポリマーは沈殿する。この場合、当該ポリマーは、N-メチルピロリドンのような生体適合性溶媒、またはMygliol(登録商標)のような適切な油の中で可溶化し、次いで筋肉内経路もしくは皮下経路で注射し、または腫瘍の中に注射することができる。溶媒または油の拡散は、注射部位でのポリマーの沈殿を導き、従ってデポーを形成する。これらのデポーは、拡散および/または浸食により、およびまたは加水分解もしくは酵素的分解によって、ポリマーの制御された放出を保証する。
【0034】
一般に、中性またはイオン化形態の本発明のポリマーは、それ自身の形態、または液体組成物、固体組成物もしくはゲル組成物中の形態、または水性または有機媒質中の形態において使用することができる。
なお、ポリアミノ酸に基づく当該ポリマーは、pHおよび組成に依存して、中性の(COOH形態)またはイオン化されたカルボキシキ基を含むことが理解されるべきである。この理由で、水性層における溶解度は、ポリマー(疎水性ユニットをグラフトされていないもの)中の遊離COOHおよび「スペーサ」中の遊離COOH(ROOR4;R4はH)の比率、およびpHの直接的な関数である。水溶液中において対イオンとなる陽イオンは、ナトリウム、カルシウムもしくはマグネシウムのような金属陽イオン、またはトリエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、もしくはポリエチレンイミン等のポリアミンのような有機陽イオンであることができる。
【0035】
本発明のポリマーは、当業者に既知の方法によって得られる。当該ポリアミノ酸は、アミノ末端の一方が疎水性基で予め官能化されたリジン−スペーサ、もしくはオルニチン-スペーサをグラフトすることによって得ることができる。
例えば、ホモポリグルタメートもしくはホモポリアスパルテートポリアミノ酸、またはグルタメート/アスパルテートのブロック、マルチブロックもしくはランダムコポリマーは、従来の方法で調製される。
【0036】
α型ポリアミノ酸を得るための最も通常の技術は、アミノ酸N-カルボキシ無水物(NCA)の重合に基づいており、これは例えば、論文「Biopolymers」1976, 15, 1869、および「Alpha-amino acid N-carboxy anhydride and related heterocycles」と題する H.R. Kricheldorfの著書(Springer Verlag (1987))に記載されている。このNCA誘導体は、好ましくは、NCA-O-Me、NCA-O-Et、またはNCA-O-Bz誘導体(Me=メチル、Et=エチル、Bz=ベンジル)である。次いで、該ポリマーは適切な条件下で加水分解されて、その酸型ポリマーを与える。これらの方法は、本件出願人の名義による特許FR-A-2 801 226の記載に基づいている。本発明に従って使用できる多くのポリマー、例えば種々の分子量をもったポリ(α-L-アスパラギン酸)、ポリ(α-L-グルタミン酸)、ポリ(α-D-グルタミン酸)およびポリ(γ-L-グルタミン酸)型のポリマーが商業的に入手可能である。α−β型のポリアスパラギン酸ポリマーは、アスパラギン酸の縮合(ポリスクシンイミドを与える)、およびこれに続く塩基性加水分解によって得られる(Tomida et al., Polymer 1997, 38, 4733-36を参照されたい)。
【0037】
アミン基を備えた疎水性グラフトは、下記に提案された方法のうちの一つによって調製することができる。例としてのリジン型「スペーサ」は、当該調製方法を例示するために選択されたものである。
【0038】
【化5】

【0039】
【化6】

これらのスキームにおいて、XはハロゲンまたはN-ヒドロキシスクシンイミドのような脱離基であり、PはN-ベンジルオキシカルボニル(Cb)またはt-Bocのようなアミン保護基である。この方法の一般的または完全な説明としては、次の二つの参照文献を挙げることができる:US-B-4 126 628 and Volgler et al., Helv. Chim. Acta 1964, 47, 526-544。
【0040】
得られたアミンとポリマー酸基とのカップリングは、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)またはジメチルスルホキシド(DMSO)のような適切な溶媒中において、カップリング剤としてのカルボジイミドおよび任意に4-ジメチルアミノピリジンのような触媒の存在下で、ポリアミノ酸を反応させルことによって容易に行われる。カルボジイミドは、例えばジシクロヘキシルカルボジイミドまたはジイソプロピルカルボジイミドである。グラフト化率は、構成成分および反応体の化学量論的量または反応時間によって化学的に制御される。
【0041】
もう一つの特徴によれば、本発明は、少なくとも一つの上記で定義したポリアミノ酸、および任意に少なくとも一つの活性成分(治療的、化粧品的、食品的または植物衛生的活性成分であることができる)を含有する医薬組成物、化粧品組成物、食品組成物、または植物衛生組成物に関する。
【0042】
好ましくは、この活性成分はタンパク質、糖タンパク質、1以上のポリアルキレングリコール鎖に結合されたタンパク質(好ましくはポリエチレングリコール(PEG)鎖:「PEG化タンパク質」)、多糖、糖脂質、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、またはペプチドである。
【0043】
更に好ましくは、この活性成分は、疎水性、親水性または両親媒性の小有機分子である。
この組成物は、ナノ粒子、ミクロ粒子、エマルジョン、ゲル、ミセル、インプラント、粉末またはフィルムの形態であることができる。
その特に好ましい形態において、該組成物は、活性成分を負荷されたか否かにかかわらず、水層中における、ポリアミノ酸のナノ粒子および/またはミクロ粒子および/またはミセルの安定なコロイド懸濁液である。
【0044】
本発明による組成物が医薬組成物であれば、それは経口、非経腸的、経鼻腔、経膣、癌内、皮下、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、脳内、または頬側口腔内の経路で投与することができる。
また、皮下または筋肉内の経路で、または腫瘍の中に注射できるような、生体適合性溶媒中の溶液の形態での組成物を想定することも可能である。
【0045】
もう一つの変形例において、本発明による組成物は、注射部位においてデポーを形成できるような方法で処方される。
本発明は更に、本発明によるポリアミノ酸およびAPを含有し、且つ下記のものを調製するために使用できる組成物に関する:
・医薬品。特に、経口、非経腸的、経鼻腔、経膣、癌内、皮下、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、脳内、または頬側口腔内の経路で投与するための医薬品。これら薬物の活性成分はタンパク質、糖タンパク質、1以上のポリアルキレングリコール鎖に結合されたタンパク質(好ましくはポリエチレングリコール(PEG)鎖:この場合は「PEG化タンパク質」の用語が用いられる)、ペプチド多糖、糖脂質、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、および疎水性、親水性もしくは両親媒性の小有機分子であることが可能である。
【0046】
・および/または栄養素製品;
・および/または化粧品または植物衛生品
この調製は、上記で定義した本発明による少なくとも一つのポリアミノ酸、および/または上記で述べた組成物を使用することを特徴とするものである。
上記で述べたように、1以上のAPを、本発明によるグラフト化されたポリアミノ酸に結合させる技術は、実質的に特許出願WO-A-00/30618に記載されている。
【0047】
本発明は更に、本開示に記載された組成物を、経口、非経腸的、経鼻腔、経膣、癌内、皮下、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、脳内、または頬側口腔内の経路で投与することから実質的になる治療方法に関する。
本発明は更に、生体適合性の溶媒中の溶液の形態で上記組成物を提供し、次いで、これを皮下または筋肉内の経路で、または腫瘍の中に、好ましくはそれが注射部位でデポーを形成するような方法で注射することから実質的になる治療方法に関する。
【0048】
ナノ粒子またはミクロ粒子の形態であるか否かにかかわらず、本発明に従ってポリアミノ酸に会合され得るAPの例としては下記のものが挙げられる:
☆ インスリン、インターフェロン、成長ホルモン、インターロイキン、
エリスロポエチン、またはサイトカイン;
☆ ロイプロリドまたはシクロスポリンのようなペプチド;
☆ アントラサイクリン、タキソイドまたはカンプトセシンの科に属するよう
な小分子
☆ およびこれらの混合物。
【0049】
本発明は、疎水性基をグラフしたポリアミノ酸の合成、そのAP担持送達システム(安定な水生コロイド懸濁液)への変換、およびこのようなシステムがAP(有機小分子、タンパク質等)と会合して医薬組成物を形成する能力の実証を記載した以下の実施例から、更に明瞭に理解され且つその利点および変形例も明瞭になるであろう。
【実施例】
【0050】
例1: ポリマーP1の調製
リジン「スペーサ」を介してパルミチン酸をグラフトされた
ポリグルタメートの合成
1/ 疎水性グラフト基(LysC16)の合成
【0051】
【化7】

11.9 gの塩化チオニルを、100 mLの冷エタノール中のL-リジン 塩酸塩(11 g)に加え、この混合物を3時間還流させる。過剰の塩化チオニルおよびエタノールを蒸発させた後、生成物をヘプタンで洗浄し、次いで減圧下で乾燥して、酸キがエタノールでエステル化された14.8 gのリジン二塩酸塩を得る。この生成物(4.9 g)を、7 gのトリエチルアミンの存在下で、アセトン/水の混合物(それぞれ80 + 40 ml)中において、7 gのパルミチン酸N-ヒドロキシスクシンイミド誘導体(Rn Cas 14464-31-4、シグマ社から入手可能)と反応させる。室温で一晩放置した後、1 N 塩酸を加えることによって生成物を沈殿させる。シリカカラムを通すことにより精製した後、3.3 gの所望の生成物を回収する。その構造は、NMRスペクトルによって確認される。
【0052】
2/ ポリマーの合成
4 gのα-L-ポリグルタメート(ポリオキシエチレン標準に比較して訳10,000の分子量を有し、特許出願FR 2 801 226に記載されたように、グルタミン酸メチルのN-カルボキシ無水物誘導体:NCAGluOMe の重合と、これに続く加水分解によって得られる)を、80 mLのジメチルホルムアミド(DMF)中において40℃で2時間加熱することにより溶解させる。ポリマーが溶解したら温度を25℃まで下げ、予め6 mLのDFM中に溶解させた1.025 gの疎水性グラフト(LysC16)、予め6 mLのDFM中に溶解させた4-ジメチルアミノピリジン、予め6 mLのDFM中に溶解させた0.37 gのジイソプロピルカルボジイミドを連続して添加する。攪拌しながら25℃で8時間放置した後、反応媒質を、15%の塩化ナトリウムおよび塩酸を含有する800 mLの水(pH2)の中に投入する。次いで、沈殿したポリマーを濾過により回収し、0.1 N塩酸で洗浄し、次いで水で洗浄する。引き続き該ポリマーを75mLのDMF中に溶解し、次いで以前と同様に、pH 2までの塩および酸を含有する水中で沈殿させる。水で2回洗浄した後、この沈殿をジイソプロピルエーテルで数回洗浄する。次いで、該ポリマーを40℃の減圧オーブン中で乾燥して、約95%の収率を得る。
【0053】
プロトンNMRで評価されたグラフト化率は、約8.1%である。
例2: ポリマーP2の調製
グラフト化率を低下させた点を除き、ポリマーP1のために使用したのと同じ条件下でポリマーP2を調製する。
二つのポリマーの特性を、下記の表に纏めた。
【0054】
【表1】

全ての場合に、実際にグラフト化されたリジン-C16の量をNMRによって確認した。
例3: 水溶液中のポリマーの分析
ポリマーを、10〜40 mg/mLの濃度でpH 7.4のリン酸緩衝液中に溶解し、0.1 N水酸化ナトリウム溶液を加えることによりpHを7.4に調節する。溶解が肉眼で認められる。
【0055】
【表2】

光散乱(488 nm)での約1 mg/mlの溶液の分析により、ポリマーP1については、約100 nmのナノメータサイズの物体が存在すること、およびポリマーP2についてはそのような物体が存在しないこと(光散乱の不存在)が明らかになる。
【0056】
例4:ポリマーP1の水溶液安定性
この研究のために、ポリマーP1を、エステル基を介してポリグルタメートにグラフト化されたヘキサデカノール鎖を有する類似のポリマー(ポリマーC1:グラフト化率9.5モル%)と比較した。この種類の類似ポリマーの合成は、特許WO-A-00/30618に記載されている。
【0057】
この研究では、「加速された」条件が用いられた:これら二つのポリマーを、濃度30 g/L、pH 10、および温度60℃で5日間放置した。次いで、これらのポリマーを1 N HClで沈殿させ、ジイソプロピルエーテルで洗浄する。上記試験の前後において、これらポリマーをNMRで分析する。その結果を下記の表3に記載する。
【0058】
【表3】

これらの結果は、ポリマーP1が、高pHおよび高温条件下において、そのLys-C16 疎水性基の一体性を維持することを明瞭に示している。他方、そのC16類似体は、これら疎水性アルキル基の50%以上の喪失を生じる。
例5:ポリマーP1およびP2への色素の吸着
本発明の一つの目的によれば、これらのポリマーは水中で使用することができ、また活性成分(コロイドもしくは非コロイド懸濁液の形態)と会合し、またはこれを封入することができる。この応用のために、以下の実験では、ポリマーP1およびP2が標準色素と会合し、またはこれを封入できることが示される。
【0059】
この研究は以下の方法で実施される:当該ポリマーをpH 7の水溶液(リン酸緩衝液)中に溶解し、「オレンジ01」(Rn CAS: 2646-17-5)と称する5 mgの色素を加える。この溶液を超音波浴の中に1時間放置して、会合を行わせる。次いで、この溶液を遠心分離して非会合色素を除去し、希釈後に、色素のλmax(495 nm)において光学密度(OD)を測定する。
【0060】
【表4】

例6:ポリマーとインスリンとの会合
1ミリリットル当たり10 mgのポリマーおよび200 IUのインスリン(7.4 mg)を含有したpH 7.4の水溶液を調製する。この溶液を室温で2時間インキュベートし、限外濾過(閾値 100 kDa、18℃において10,000下で15分)により、会合したインスリンから遊離のインスリンを分離する。次いで、濾液から回収された遊離インスリンを、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)によって定量測定し、会合したインスリンの量を推定する。
【0061】
その結果は、二つのポリマーが、ポリマー10 mg当たり190 IU(7.2 mg)を越える比率でインスリンと会合できることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが少なくとも一つの疎水性ユニットを含んだグラフトを有するアスパラギン酸ユニットおよび/またはグルタミン酸ユニット含んでなる両親媒性ポリアミノ酸であって、これら疎水性グラフトの少なくとも幾つかが、それぞれ少なくとも二つのアミド結合の一部を形成する、および/またはこれを含む「スペーサ」によって、前記アスパラギン酸および/またはグルタミン酸ユニットに結合されることを特徴とする両親媒性ポリアミノ酸。
【請求項2】
請求項1に記載のポリアミノ酸であって、前記「スペーサ」がリジン型またはオルニチン型であることを特徴とするポリアミノ酸。
【請求項3】
下記一般式(I)によって特徴付けられる、請求項1または2に記載のポリアミノ酸:
【化1】

ここで、
■ R1は、H、直鎖のC2〜C10アルキルもしくは分岐鎖のC3〜C10アルキル、ベンジルまたは末端アミノ酸ユニットであり;
■ R2は、H、直鎖のC2〜C10アシルもしくは分岐鎖のC3〜C10アシル基、またはピログルタメートであり;
■ R3は、H、好ましくは下記の群から選択される陽イオンであり:
- 有利にはナトリウム、カリウムカルシウムおよびマグネシウムからなる副群
から選択される金属陽イオン;
- 有利には下記からなる副群から選択される有機陽イオン;
・アミンに基づく陽イオン
・オリゴアミンに基づく陽イオン
・ポリアミン(ポリエチレンイミンが特に好ましい)に基づく陽イオン
・有利にはリジンまたはアルギニンに基づく陽イオンからなるクラスから
選択される、アミノ酸に基づく陽イオン
- 有利にはポリリジンおよびオリゴリジンからなる副群から選択される陽イオ
ン性ポリアミノ酸;
■ n個の基Bは、相互に独立に、それぞれ次式で表される1価の基であり;
【化2】

ここで、
- R4は、独立にR3について挙げたリスト、直鎖のC1〜C6アルキル、分岐鎖の
C3〜C8アルキル、またはベンジルから選択され;
- R5は独立に、(i)飽和または不飽和の、直鎖のC2〜C24アルキルもしくは分岐
鎖のC4〜C24アルキル、または(ii)C7〜C24アリール、アラルキルもしくは
アルキルアリールから誘導されるような酸誘導体から選択される基であり、
■ Aは、独立に、-CH2-(アスパラギン酸ユニット)または-CH2-CH2-(グルタミン酸ユニット)であり;
■ n/(n+m)は、モルグラフト化率として定義され、0.5〜100モル%で変化し;
■ n+mは、3〜1000、好ましくは30〜300で変化し;
■ lは、1(オルニチン「スペーサ」)または2(リジン「スペーサ」)に等しい。
【請求項4】
請求項3に記載のポリアミノ酸であって、R5は、好ましくはパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸およびリノレン酸からなる群から選択される天然脂肪酸のアシルであることを特徴とするポリアミノ酸。
【請求項5】
請求項1に記載のポリアミノ酸であって、前記「スペーサ」がL-リジンから誘導されることを特徴とするポリアミノ酸。
【請求項6】
請求項1に記載のポリアミノ酸であって、α-L-グルタメートまたはα-L-グルタミン酸ホモポリマーからなることを特徴とするポリアミノ酸。
【請求項7】
請求項1に記載のポリアミノ酸であって、α-L-アスパルテートまたはα-L-アスパラギン酸ホモポリマーからなることを特徴とするポリアミノ酸。
【請求項8】
請求項1に記載のポリアミノ酸であって、α-L-アスパルテート/α-L-グルタメートコポリマー、またはα-L-アスパラギン酸/α-L-グルタミン酸コポリマーからなることを特徴とするポリアミノ酸。
【請求項9】
請求項1に記載のポリアミノ酸であって、前記疎水性グラフトを有するアスパラギン酸および/またはグルタミン酸ユニットの分布は、得られるポリマーがランダム型、またはブロック型、またはマルチブロック型の何れかであるような分布であることを特徴とするポリアミノ酸。
【請求項10】
請求項1に記載のポリアミノ酸であって、その分子量が2000〜100,000g/モル、好ましくは5000〜40,000g/モルの分子量を有することを特徴とするポリアミノ酸。
【請求項11】
請求項1に記載のポリアミノ酸であってモルグラフト化率が2〜50%、好ましくは5〜20%であることを特徴とするポリアミノ酸。
【請求項12】
請求項1に記載の少なくとも一つのポリアミノ酸を含有する、医薬組成物、化粧品組成物、食品組成物、または植物衛生組成物。
【請求項13】
少なくとも一つの活性成分を含有することを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の組成物であって、前記活性成分がタンパク質、糖タンパク質、1以上のポリアルキレングリコール鎖に結合されたタンパク質(好ましくはポリエチレングリコール(PEG)鎖:「PEG化タンパク質」)、多糖、糖脂質、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、またはペプチドであることを特徴とする組成物。
【請求項15】
請求項13に記載の組成物であって、前記活性成分が疎水性、親水性または両親媒性の小有機分子であることを特徴とする組成物。
【請求項16】
請求項12または13に記載の組成物であって、経口、非経腸的、経鼻腔、経膣、癌内、皮下、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、脳内、または頬側口腔内の経路で投与することができることを特徴とする組成物。
【請求項17】
請求項12または13に記載の組成物であって、ゲル、エマルジョン、見せる、ナノ粒子、ミクロ粒子、粉末またはフィルムの形態であることを特徴とする組成物。
【請求項18】
請求項12または13に記載の組成物であって、水層中におけるポリアミノ酸のナノ粒子および/またはミクロ粒子および/またはミセルの安定なコロイド懸濁液であることを特徴とする組成物。
【請求項19】
請求項12または13に記載の組成物であって、生体適合性溶媒中の溶液の形態であること、および皮下または筋肉内の経路で、または腫瘍の中に注射できることを特徴とする組成物。
【請求項20】
請求項12または13に記載の組成物であって、注射部位においてデポーを形成できることを特徴とする組成物。
【請求項21】
下記のもの、即ち:
・特に、経口、非経腸的、経鼻腔、経膣、癌内、皮下、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、脳内、または頬側口腔内の経路で投与するための薬物であって、これら薬物の活性成分はタンパク質、糖タンパク質、1以上のポリアルキレングリコール鎖に結合されたタンパク質(好ましくはポリエチレングリコール(PEG)鎖:この場合は「PEG化タンパク質」の用語が用いられる)、ペプチド多糖、糖脂質、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、および疎水性、親水性もしくは両親媒性の小有機分子であることが可能である。
・および/または栄養素;
・および/または化粧品または植物衛生品
を調製する方法であって:
請求項1に記載の少なくとも一つのポリアミノ酸、および/または請求項12もしくは13に記載の組成物を使用することを特徴とする方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが少なくとも一つの疎水性ユニットを含んだグラフトを有するアスパラギン酸ユニットおよび/またはグルタミン酸ユニット含んでなる両親媒性ポリアミノ酸であって、これら疎水性グラフトの少なくとも幾つかが、それぞれ少なくとも二つのアミド結合の一部を形成する、および/またはこれを含む「スペーサ」によって、前記アスパラギン酸および/またはグルタミン酸ユニットに結合されることを特徴とする両親媒性ポリアミノ酸。
【請求項2】
請求項1に記載のポリアミノ酸であって、前記「スペーサ」がリジン型またはオルニチン型であることを特徴とするポリアミノ酸。
【請求項3】
下記一般式(I)によって特徴付けられる、請求項1または2に記載のポリアミノ酸:
【化1】

ここで、
■ R1は、H、直鎖のC2〜C10もしくは分岐鎖のC3〜C10アシル基、またはピログルタメートであり;
■ R2は、H、直鎖のC2〜C10アルキルもしくは分岐鎖のC3〜C10アルキル、ベンジルまたは末端アミノ酸ユニットであり;
■ R3は、H、好ましくは下記の群から選択される陽イオンであり:
- 有利にはナトリウム、カリウムカルシウムおよびマグネシウムからなる副群
から選択される金属陽イオン;
- 有利には下記からなる副群から選択される有機陽イオン;
・アミンに基づく陽イオン
・オリゴアミンに基づく陽イオン
・ポリアミン(ポリエチレンイミンが特に好ましい)に基づく陽イオン
・有利にはリジンまたはアルギニンに基づく陽イオンからなるクラスから
選択される、アミノ酸に基づく陽イオン
- 有利にはポリリジンおよびオリゴリジンからなる副群から選択される陽イオ
ン性ポリアミノ酸;
■ n個の基Bは、相互に独立に、それぞれ次式で表される1価の基であり;
【化2】

ここで、
- R4は、独立にR3について挙げたリスト、直鎖のC1〜C6アルキル、分岐鎖の
C3〜C8アルキル、またはベンジルから選択され;
- R5は独立に、(i)飽和または不飽和の、直鎖のC2〜C24アルキルもしくは分岐
鎖のC4〜C24アルキル、または(ii)C7〜C24アリール、アラルキルもしくは
アルキルアリールから誘導されるような酸誘導体から選択される基であり、
■ Aは、独立に、-CH2-(アスパラギン酸ユニット)または-CH2-CH2-(グルタミン酸ユニット)であり;
■ n/(n+m)は、モルグラフト化率として定義され、0.5〜100モル%で変化し;
■ n+mは、3〜1000、好ましくは30〜300で変化し;
■ lは、1(オルニチン「スペーサ」)または2(リジン「スペーサ」)に等しい。
【請求項4】
請求項3に記載のポリアミノ酸であって、R5は、好ましくはパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸およびリノレン酸からなる群から選択される天然脂肪酸のアシルであることを特徴とするポリアミノ酸。
【請求項5】
請求項1に記載のポリアミノ酸であって、前記「スペーサ」がL-リジンから誘導されることを特徴とするポリアミノ酸。
【請求項6】
請求項1に記載のポリアミノ酸であって、α-L-グルタメートまたはα-L-グルタミン酸ホモポリマーからなることを特徴とするポリアミノ酸。
【請求項7】
請求項1に記載のポリアミノ酸であって、α-L-アスパルテートまたはα-L-アスパラギン酸ホモポリマーからなることを特徴とするポリアミノ酸。
【請求項8】
請求項1に記載のポリアミノ酸であって、α-L-アスパルテート/α-L-グルタメートコポリマー、またはα-L-アスパラギン酸/α-L-グルタミン酸コポリマーからなることを特徴とするポリアミノ酸。
【請求項9】
請求項1に記載のポリアミノ酸であって、前記疎水性グラフトを有するアスパラギン酸および/またはグルタミン酸ユニットの分布は、得られるポリマーがランダム型、またはブロック型、またはマルチブロック型の何れかであるような分布であることを特徴とするポリアミノ酸。
【請求項10】
請求項1に記載のポリアミノ酸であって、その分子量が2000〜100,000g/モル、好ましくは5000〜40,000g/モルの分子量を有することを特徴とするポリアミノ酸。
【請求項11】
請求項1に記載のポリアミノ酸であってモルグラフト化率が2〜50%、好ましくは5〜20%であることを特徴とするポリアミノ酸。
【請求項12】
請求項1に記載の少なくとも一つのポリアミノ酸を含有する、医薬組成物、化粧品組成物、食品組成物、または植物衛生組成物。
【請求項13】
少なくとも一つの活性成分を含有することを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の組成物であって、前記活性成分がタンパク質、糖タンパク質、1以上のポリアルキレングリコール鎖に結合されたタンパク質(好ましくはポリエチレングリコール(PEG)鎖:「PEG化タンパク質」)、多糖、糖脂質、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、またはペプチドであることを特徴とする組成物。
【請求項15】
請求項13に記載の組成物であって、前記活性成分が疎水性、親水性または両親媒性の小有機分子であることを特徴とする組成物。
【請求項16】
請求項12または13に記載の組成物であって、経口、非経腸的、経鼻腔、経膣、癌内、皮下、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、脳内、または頬側口腔内の経路で投与することができることを特徴とする組成物。
【請求項17】
請求項12または13に記載の組成物であって、ゲル、エマルジョン、見せる、ナノ粒子、ミクロ粒子、粉末またはフィルムの形態であることを特徴とする組成物。
【請求項18】
請求項12または13に記載の組成物であって、水層中におけるポリアミノ酸のナノ粒子および/またはミクロ粒子および/またはミセルの安定なコロイド懸濁液であることを特徴とする組成物。
【請求項19】
請求項12または13に記載の組成物であって、生体適合性溶媒中の溶液の形態であること、および皮下または筋肉内の経路で、または腫瘍の中に注射できることを特徴とする組成物。
【請求項20】
請求項12または13に記載の組成物であって、注射部位においてデポーを形成できることを特徴とする組成物。
【請求項21】
下記のもの、即ち:
・特に、経口、非経腸的、経鼻腔、経膣、癌内、皮下、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、脳内、または頬側口腔内の経路で投与するための薬物であって、これら薬物の活性成分はタンパク質、糖タンパク質、1以上のポリアルキレングリコール鎖に結合されたタンパク質(好ましくはポリエチレングリコール(PEG)鎖:この場合は「PEG化タンパク質」の用語が用いられる)、ペプチド多糖、糖脂質、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、および疎水性、親水性もしくは両親媒性の小有機分子であることが可能である。
・および/または栄養素;
・および/または化粧品または植物衛生品
を調製する方法であって:
請求項1に記載の少なくとも一つのポリアミノ酸、および/または請求項12もしくは13に記載の組成物を使用することを特徴とする方法。

【公表番号】特表2006−503124(P2006−503124A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−525469(P2004−525469)
【出願日】平成15年7月23日(2003.7.23)
【国際出願番号】PCT/FR2003/002329
【国際公開番号】WO2004/013206
【国際公開日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【出願人】(593125160)フラメル・テクノロジー (22)
【氏名又は名称原語表記】FLAMEL TECHNOLOGIES
【Fターム(参考)】