説明

屋内誘導システム,屋内誘導システム用標識装置,屋内誘導システム用ユーザ端末,屋内誘導システム用データ生成装置,および誘導情報表示プログラム

【課題】 屋内の目的地に,簡単かつ確実にユーザを誘導できるシステムを提供する。
【解決手段】 屋内誘導システム1の標識装置2は,目的地への経路において次に経由する標識装置2への方角αを示すルート情報を保持する。ユーザ端末3は,最寄りの標識装置2と無線通信を行い,ルート情報を取得するとともに,自端末が面する方角βを取得し,方角αと方角βをもとに,誘導用矢印の傾きを決定する表示角度θを計算し,表示角度θで傾けた誘導用矢印を自端末に表示させる。ユーザが表示された誘導用矢印に従って進み,次の標識装置2と無線通信可能となれば,次の標識装置2からルート情報を取得して誘導用矢印の表示を更新する。この処理を目的地に対応する標識装置2と通信可能な位置に至るまで繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,屋内の目的地にユーザを誘導するための屋内誘導システム,および屋内誘導システム用の標識装置,ユーザ端末,データ生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,GPS機能を搭載した携帯端末を用いて,ユーザの現在位置から所定の目的地への案内情報を表示するシステムが知られている。
【0003】
また,GPS機能を利用しない案内システムとして,要所に配置されたサインマーカーとその配置情報を含む地図情報をもとに,撮影機能付き携帯端末でユーザが撮影した周囲の風景画像を解析して,風景画像に含まれる所定のサインマーカーからユーザの現在位置と目的地への方向とを特定して,ユーザの行き先方向を示す矢印を風景画像に合成して携帯端末に表示させるものが知られている(例えば,特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−101013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のGPS機能を利用した案内システムは,GPS電波が屋内で受信できないことから,建物内の目的地への案内に適用することができなかった。
【0006】
また,特許文献1の手法は,おおまかな方向への誘導であり,屋内の案内に利用された場合に,ユーザが表示された方向へ進んでいったとしても,目的地まで到達することが難しい場合がある。また,細やかな案内を行おうとすると,ユーザは何回も周囲の画像を撮影して送信しなければならなかった。さらに,撮影画像をサーバへ送信して解析結果を受信するため,ユーザが案内情報を得るまでに一定の時間を要してしまうという問題があった。
【0007】
本願発明の目的は,ユーザが屋内の目的地へ確実に到達できるように,ユーザの現在位置から目的地へ到達するために進む方向を示す誘導情報を表示する屋内誘導システムを提供することにある。
【0008】
また,本願発明の別の目的は,上記の屋内誘導システムに使用される標識装置,ユーザが携帯するユーザ端末,データ生成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される屋内誘導システムの代表的なものの概要を簡単に説明すれば,以下のとおりである。すなわち,屋内誘導システムは,建物内の所定の位置にそれぞれ設置された複数の標識装置と,前記標識装置と無線によるデータ通信が可能な携帯型のユーザ端末とを含む。
【0010】
前記の複数の標識装置は,それぞれ,建物内の目的地の識別情報と目的地に対応付けられた標識装置の識別情報とを示す目的地情報を記憶する目的地情報記憶部と,自標識装置の設置位置からその目的地に対応する標識装置の設置位置へ到達する最適経路において自標識装置の次に経由する標識装置への方角を示すルート情報を記憶するルート情報記憶部と,ユーザ端末から誘導要求を受信した場合に,誘導要求をしたユーザ端末へ目的地情報を送信する処理と,ユーザ端末から目的地の識別情報を受信した場合に,受信した目的地のルート情報を,誘導要求したユーザ端末へ送信する処理を行うデータ通信部とを備える。
【0011】
また,前記のユーザ端末は,情報を表示する表示部と,自ユーザ端末が面する方角を取得する方角取得部と,建物に設置された複数の標識装置のうち,自ユーザ端末と最短距離に位置する標識装置と通信を行うデータ通信部と,標識装置から目的地情報を取得して,取得した目的地情報から誘導を要求する目的地を選択し,選択した目的地の識別情報を標識装置へ送信する目的地選択部と,標識装置から選択した目的地のルート情報を取得して,取得したルート情報の方角と方角取得部が取得した方角とに基づいて誘導用矢印の表示角度を計算する方角計算部と,自ユーザ端末の正面を示す基準軸から表示角度に傾けた誘導用矢印を表示部へ表示させる誘導表示処理部と,データ通信部が通信を行った標識装置が選択した目的地に対応する標識装置である場合に,方角計算部と誘導表示処理部の処理を停止して,所定のメッセージを表示部に表示させる目的地判定部とを備える。
【0012】
屋内誘導システムでは,以下のように作用する。
【0013】
ユーザ端末では,方角取得部が,自端末が面する方角を取得し,データ通信部が,建物内に設置された複数の標識装置のうち最寄りに位置する標識装置と無線通信を行う。
【0014】
標識装置は,ユーザ端末から誘導要求を受信すると,誘導要求をしたユーザ端末へ目的地情報を送信する。
【0015】
ユーザ端末では,目的地選択部が,目的地情報から誘導を希望する目的地を選択して,データ通信部が選択した目的地の識別情報を標識装置へ送信する。これに対し,標識装置は,受信した目的地のルート情報をユーザ端末へ送信する。
【0016】
ユーザ端末では,方角計算部が,ルート情報の方角と方角取得部が取得した方角とに基づいて,誘導用矢印の表示角度を計算する。そして,誘導表示処理部が,自ユーザ端末の正面を示す基準軸から表示角度に傾けた誘導用矢印を表示部へ表示させる。または,目的地判定部は,通信を行った標識装置が選択した目的地に対応する標識装置である場合に,方角計算部と誘導表示処理部の処理を停止して,所定のメッセージを表示部に表示させる。
【0017】
また,本発明は,別の実施の態様において,建物内を誘導する屋内誘導システムで使用されるデータを生成するデータ生成装置であって,誘導を行う建物内の平面図データを取得して,予め設定された間隔に基づいて,平面図データ内の所定の位置に標識装置の設置位置を設定する処理と,平面図データ内に設定された標識装置について,所定の隣接関係にある標識装置同士を接続して隣接線を設定して,標識装置同士の設置位置の関係を示す標識装置情報を生成する処理とを行う標識装置情報生成部と,建物内に設置された標識装置に目的地を対応付けて,対応付けた目的地の識別情報と標識装置の識別情報とを示す目的地情報を生成する目的地情報生成部と,標識装置情報と目的地情報とをもとに,標識装置の各々から目的地情報の各目的地への最適経路を解析し,解析した最適経路を構成する標識装置の並びを決定する処理と,決定した標識装置の並びをもとにその最適経路の標識装置各々について,次に経由する標識装置への方角を特定し,特定した方角を示すルート情報を生成する処理とを行うルート情報生成部と,目的地情報とルール情報とを屋内誘導システムへ出力するデータ出力部とを備える。
【発明の効果】
【0018】
上記した屋内誘導システムにより,ユーザ端末は,建物内に設置された複数の標識装置のうち最寄りに設置された標識装置から得たルート情報を取得して,自端末が面する方角とルート情報の方角(目的地へ向かうために次に経由する標識装置が設置された位置への方角)とをもとに誘導用矢印の表示角度を特定する。そして,ユーザ端末の表示部に,表示角度で傾けた誘導用矢印を表示する。
【0019】
これによって,ユーザは,自身の現在位置から目的地に向かって進むべき方角をリアルタイムで知ることができ,表示される誘導用矢印に従って進むことにより,目的地へ確実に到達することができる。
【0020】
また,屋内誘導システム用データ生成装置は,上記の屋内誘導システムが使用する目的地情報と各標識装置のルート情報とを自動的に生成して,屋内誘導システムへ出力するため,屋内の誘導に必要なデータを生成する作業負担を軽減することができ,屋内の状況の変化や標識装置の設置状況の変化などに早期に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例における屋内誘導システムのシステム構成例を示す図である。
【図2】標識装置の配置例を示す図である。
【図3】建物の1階フロアの標識装置の配置例を示す図である。
【図4】建物の2階フロアの標識装置の配置例を示す図である。
【図5】屋内誘導システムの標識装置およびユーザ端末のブロック構成の例を示す図である。
【図6】目的地情報の例を示す図である。
【図7】ルート情報の例を示す図(1)である。
【図8】ルート情報の例を示す図(2)である。
【図9】通信可能な2つの標識装置がある場合の処理例を示す図である。
【図10】管理装置およびデータ生成装置のブロック構成の例を示す図である。
【図11】屋内誘導システムのより詳細な誘導例を説明する図(1)である。
【図12】屋内誘導システムのより詳細な誘導例を説明する図(2)である。
【図13】屋内誘導システムのより詳細な誘導例を説明する図(3)である。
【図14】屋内誘導システムのより詳細な誘導例を説明する図(4)である。
【図15】屋内誘導システムのより詳細な誘導例を説明する図(5)である。
【図16】屋内誘導システムのより詳細な誘導例を説明する図(6)である。
【図17】屋内誘導システムのより詳細な誘導例を説明する図(7)である。
【図18】屋内誘導システムのより詳細な誘導例を説明する図(8)である。
【図19】標識装置の処理フロー図である。
【図20】ユーザ端末の処理フロー図である。
【図21】誘導情報の表示処理の処理フロー図である。
【図22】データ生成装置の処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は,本発明の一実施例における,屋内誘導システムのシステム構成例を示す図である。
【0023】
図1に示すように,屋内誘導システム1は,誘導対象となる複数の階層構造を持つ建物の所定の位置に設置された標識装置2と,誘導を受けるユーザが携帯するユーザ端末3とを有する。さらに,屋内誘導システム1は,管理装置4を有する。さらに,屋内誘導システム1は,管理装置4とデータ通信が可能なデータ生成装置5を有する。
【0024】
本実施形態において,屋内誘導システム1を構成する複数の標識装置2はネットワークを構成する。管理装置4は,ネットワークのメインサーバとして機能する。
【0025】
管理装置4と接続する各フロアの標識装置2を,親装置である標識装置2Pとする。建物内の同一フロアに設置されている,1つの標識装置2P以外の標識装置2を,子装置の標識装置2Cとする。
【0026】
管理装置は,建物の各フロアに設置されている1つの標識装置2Pと有線LANによる通信が可能である。
【0027】
同一フロア内の標識装置2P,2Cは,1つ無線ネットワークを構成する。無線通信のプロトコルは,米国電気電子技術者協会(IEEE)の短距離無線通信規格であるIEEE802.15.4に準拠する通信プロトコルであり,ZigBee(Philips Electronics N.V.社の登録商標)として知られている。
【0028】
標識装置2Pは,ZigBee通信プロトコルでの「ZC」,「ZR」の機能を実現し,標識装置2Cは,「ZR」,「ZED」の機能を実現する。「ZC」は,ZigBeeのネットワークに1台存在して,そのネットワークの制御を行う機能である。「ZR」は,データの中継を行う機能である。「ZED」は,ネットワークにおけるクライアント機能である。標識装置2C同士が直接通信可能な距離を,例えば20〜30mとする。それ以上の距離と通信を行う場合は,各標識装置2(2P,2C)おいて,自動的にハンドオーバ処理を行い,別の標識装置2に通信を行うようにする。
【0029】
標識装置2Pまたは標識装置2Cとユーザ端末3とは,ZigBee通信プロトコルによる無線通信を行う。
【0030】
図2は,標識装置2の配置例を示す図である。図2に示す平面図において,丸印が標識装置2を示し,太い直線が標識装置2同士の隣接関係を示す隣接線を表す。
【0031】
標識装置2は,1つの標識装置2の通信可能範囲内に別の標識装置2が配置されるように,二重格子状に設置される。
【0032】
なお,本実施例において,標識装置2を二重格子状に設置するのは,隣接する標識装置2までの角度計算を簡単にするためである。実際には,建物内の歩行可能な場所の天井や壁などの適当な場所に,できる限り格子状に設置されるが,フロアの移動手段となる階段,エレベータ,エスカレータ等の近辺や目的地の近くでは,格子状ではない形状で設置されてもよい。
【0033】
図3および図4は,建物の各フロアの標識装置2の配置例を示す図である。
【0034】
図3は,1階フロアの標識装置2の配置例,図4は,2階フロアの標識装置2の配置例を示す。図3および図4において,フロアの平面図内の矩形は,目的地または歩行の障害となる構造物を示す。丸印は標識装置2の設置位置を示し,各丸印の右上の5桁の数字列,例えば,10101,10103等は,標識装置2の標識情報(標識ID)を示す。標識IDは,屋内誘導システム1を構成する標識装置2を,誘導のための標識としてユニークに識別する情報である。
【0035】
図3の1階フロアの標識装置2P(20101),図4の2階フロアの標識装置2P(20201)は,階層移動手段に対応付けられた標識装置2であり,また,管理装置4および他フロアの親の標識装置2Pと有線で接続する各フロアの親の標識装置2Pとして設置されている。
【0036】
なお,屋内誘導システム1を構成する各フロアのどの標識装置2も,そのフロアの親の標識装置2Pとして機能することが可能である。
【0037】
標識装置2は,データ通信処理の識別情報(識別ID)を有し,識別IDとして,装置のMACアドレス情報,管理装置4が管理するアドレス情報が用いられる。
【0038】
図5は,屋内誘導システムの標識装置2(2P,2C)およびユーザ端末3のブロック構成の例を示す図である。
【0039】
標識装置2は,データ記憶部20とデータ通信部21とを備える。
【0040】
データ記憶部20は,通信中の標識装置2の識別ID,目的地情報,選択した目的地の識別情報(目的地に対応する標識装置2の識別ID),ルート情報等を記憶する。本実施例におけるデータ記憶部20は,目的地情報記憶部とルート情報記憶部とに相当する。
【0041】
図6は,目的地情報の例を示す図である。目的地情報は,建物内の目的地の識別情報である目的地名と,その目的地に対応付けられた標識装置2の識別情報である標識IDとを示す情報である。目的地情報は,建物内に設置された全ての標識装置2のデータ記憶部20に格納される。
【0042】
図6の例では,図3に示す配置例の場合に,出入り口の最寄り位置には標識ID=10101の標識装置2,ShopAには標識ID=10106の標識装置2が,それぞれ,設定されていることがわかる。
【0043】
図7および図8は,ルート情報の例を示す図である。ルート情報は,目的地ごとに,自標識装置2からその目的地に対応する標識装置2へ到達する経路において,次に経由する標識装置2への方角を示す情報である。
【0044】
図7および図8に示す「方角」の値は,基準軸(北)から反時計回りの角度で表し,北を示す「0」から「359」の値で示す。「方角:90」が西を,「方角:180」が南を,「方角:270」が東を,それぞれ示す。
【0045】
図7(A)は,図3に示す標識装置(標識ID:10101)2が保持するルート情報の例を示す図,図7(B)は,図3に示す標識装置(標識ID:10103)2が保持するルート情報の例を示す図である。図8は,図3に示すフロア移動手段に対応する標識装置(標識ID:20101)2が保持するルート情報の例を示す図である。
【0046】
ユーザによって選択された目的地が,図4に示す,2階にある「飲食店A(対応する標識装置2の識別ID:10213)」であるとする。
【0047】
この場合に,図7(A)に示すルート情報によれば,標識装置2(識別ID:10101)は,目的地「飲食店A」(識別ID:10213)への経路について,次に経由する標識装置2(図3に示す,識別ID:10103の標識装置とする)への「方角」を示す「45(北西)」のルート情報を保持することがわかる。
【0048】
次に,標識装置(識別ID:10103)2は,図7(B)に示すルート情報によれば,目的地「飲食店A」(識別ID:10213)への経路について,次に経由する標識装置2(図3に示す,識別ID:20101の標識装置とする)への「方角」を示す「45(北西)」のルート情報を保持することがわかる。
【0049】
また,図8に示すように,フロア移動手段(ここではエレベータ)に対応する標識装置(識別ID:20101)2は,目的地「飲食店A」への経路について,次に経由する標識装置2への「方角」として値の代わりに,移動先を示す「2階(2F)」のルート情報を保持することがわかる。
【0050】
また,目的地に対応する標識装置2では,自標識装置2が保持するルート情報において,その目的地へのルート情報の「方角」には値が設定されないものとし,図7に示すルート情報では,“−”で表す。
【0051】
データ通信部21は,無線通信を行って,管理装置4または他の標識装置2から,目的地情報およびルート情報を取得して,データ記憶部20に格納する。
【0052】
また,データ通信部21は,無線通信を行って,ユーザ端末3から誘導要求を受信した場合に,誘導要求をしたユーザ端末3へ目的地情報を送信する。また,データ通信部21は,ユーザ端末3から誘導を希望する目的地名(識別情報)を受信した場合に,受信した目的地名に対応するルート情報を,誘導要求をしたユーザ端末3へ送信する。
【0053】
図5に示すように,ユーザ端末3は,誘導を受けようとするユーザが携帯する端末であり,誘導情報表示装置30と,ユーザ端末3が向いている方角を取得する方角取得部310と,情報が表示される表示部311とを有する。ユーザ端末3は,例えば,携帯電話,PDA(Personal Data Assistance)等の端末である。ユーザ端末3の識別IDとして,データ通信部32のMACアドレス情報や,ユーザ端末3の携帯電話番号,携帯端末の固有番号などを使用する。
【0054】
誘導情報表示装置30は,ユーザ端末3にインストールされ実行されるソフトウェアプログラムおよびデータとして,または,メモリおよび演算処理部を備えたチップとして実施される。
【0055】
誘導情報表示装置30は,データ記憶部31,データ通信部32,目的地選択・判定部33,方角計算部34,誘導表示処理部35,更新タイマ36を備える。
【0056】
データ記憶部31は,データ通信部32を介して取得した,目的地情報,選択した目的地,通信中の標識装置の識別ID,ルート情報などを記憶する。
【0057】
データ通信部32は,自ユーザ端末3と最短距離に位置する標識装置2と無線通信を行い,取得した情報をデータ記憶部31へ格納する。データ通信部32は,新たな標識装置2と通信を行うと,取得したデータをデータ記憶部31に格納してデータ更新を行う。
【0058】
目的地選択・判定部33は,標識装置2から目的地情報を取得すると,目的地情報に含まれる目的地の一覧を表示部311へ表示する。ユーザが表示された目的地の一覧から誘導を要求する目的地を選択すると,選択した目的地として,その目的地に対応する標識装置2の識別IDを,データ通信部32を介して標識装置2へ送信する。また,選択された目的地に対応する標識装置2の識別IDをデータ記憶部31に保持しておく。
【0059】
また,目的地選択・判定部33は,データ通信部32が通信を行った標識装置2が選択した目的地に対応する標識装置2である場合に,方角計算部34と誘導表示処理部35の処理を停止して,所定のメッセージを表示部311に表示させる。
【0060】
方角計算部34は,データ記憶部31に記憶されたルート情報から,方角α(選択された目的地に対応する次の標識装置2への方角)を取得する。そして,この方角αと方角取得部310が取得したユーザ端末3の方角βとに基づいて,誘導用矢印の表示角度θを計算する。
【0061】
ユーザ端末3の方角βは,ユーザ端末3の正面を示す基準軸から反時計回りで示す角度で表される。
【0062】
方角計算部34は,更新タイマ36が所定時間の経過を通知するたびに,方角取得部310からユーザ端末3の方角βを取得する。そして,データ記憶部31に記憶されたルート情報の方角αとユーザ端末3の方角βとの差分(α−β)を求めて,表示角度θとする。差分(α−β)がマイナスの場合には,360+(α−β)を表示角度θとする。
【0063】
例えば,ルート情報の方角αが「45」であり,ユーザ端末3の方角βが「270」であれば,表示角度θは「135」となり,ユーザ端末3の方角βが「0」であれば,表示角度θは「45」となる。
【0064】
誘導表示処理部35は,ユーザ端末3の正面を示す基準軸から,反時計回りに表示角度θ分だけ傾けた誘導用矢印の表示データを生成し,表示部311へ表示させる。
【0065】
更新タイマ36は,所定の経過時間(例えば5秒)を検出して,方角計算部34へ通知する。
【0066】
方角取得部310は,既知の電子コンパス機能によって実施され,所定の時間ごとにユーザ端末3が面している方角βを取得する。
【0067】
表示部311は,既知の表示部機能によって実施され,誘導表示処理部35が生成した誘導用矢印が表示される。
【0068】
ユーザ端末3において,データ通信部32は,標識装置2の通信可能な範囲に移動すると,その標識装置2と通信を行って,選択した目的地のルート情報を取得して,データ記憶部31へ格納する。また,新しい標識装置2と通信可能となった場合に,新しいルート情報を取得する。方角計算部34は,データ記憶部31に記憶されたルート情報の方角に値が設定されている間は,表示角度θの計算を行い,誘導表示処理部35は,表示角度θで傾けた矢印を表示する処理を繰り返す。
【0069】
本実施形態では,目的地選択・判定部33によって,目的地の近辺に到達したことを判断するが,方角計算部34が,データ記憶部31に記憶されたルート情報の方角に値が設定されていない場合に,このルート情報を送信した標識装置2が目的地に対応するものであると判定して,表示角度θの計算処理と,誘導用矢印の表示処理とを終了させるようにしてもよい。
【0070】
目的地に近づいたと判定された場合には,誘導表示処理部35は,例えば「目的地付近です」等のメッセージを表示部311へ表示する。
【0071】
図9に示すように,ユーザ端末3が,2つの標識装置2の通信可能範囲にある場合には,データ通信部32は,既に通信を行っている標識装置2aから取得したルート情報をデータ記憶部31に保持し続ける。そして,ユーザが重複する通信可能範囲を移動して,ユーザ端末3が標識装置2bの電波受信範囲に位置するようになったときに,データ通信部32が,標識装置2bと通信を開始し,標識装置2bからルート情報を取得してデータ記憶部31を更新する。標識装置2bとの通信可能範囲に進入して直ちにルート情報を更新してしまうと,表示部311の誘導用矢印の表示切り替えのタイミングが早過ぎてしまい,適切な誘導ができないからである。
【0072】
図10は,管理装置4およびデータ生成装置5のブロック構成の例を示す図である。
【0073】
管理装置4は,標識装置アドレス記憶部40,目的地情報記憶部41,ルート情報記憶部42,データ配信部43を備える。
【0074】
標識装置アドレス記憶部40は,建物に設置された標識装置2のアドレス情報を記憶する。
【0075】
目的地情報記憶部41は,目的地情報を記憶する。
【0076】
ルート情報記憶部42は,複数の標識装置2各々におけるルート情報を記憶する。
【0077】
データ配信部43は,目的地情報の更新情報を受け付けて,目的地情報記憶部41に記憶するとともに,受け付けた目的地情報の更新情報を標識装置2全てへ送信する処理と,ルート情報の更新情報を受け付けて,ルート情報記憶部42に記憶するとともに,ルート情報の更新情報を該当する標識装置2へ送信する。
【0078】
管理装置4は,データ生成装置5から送信された,目的地情報,ルート情報を受け付けて,それぞれを,目的地情報記憶部41,ルート情報記憶部42へ格納する。
【0079】
データ配信部43は,目的地情報とルート情報とを,各フロアの標識装置2Pへ送信すると,標識装置2Pは,ネットワーク配下の標識装置2Cへ,これらの情報を送信する。データ配信部43は,屋内誘導システム1の全ての標識装置2へ一括して情報を送信してもよく,また,特定の標識装置2へ個別に情報を送信してもよい。また,標識措置2Pが近傍に位置する標識装置2Cへ情報を送信し,情報を受信した標識装置2Cが別の標識装置2Cへ情報を転送するようにしてもよい。
【0080】
データ生成装置5は,屋内誘導システム1で使用されるデータを生成する装置であって,標識装置情報生成部50と,目的地情報生成部51と,ルート情報生成部52と,データ出力部53とを備える。
【0081】
標識装置情報生成部50は,誘導を行う建物内の平面図データを取得して,予め設定された間隔に基づいて,平面図データ内の所定の位置に標識装置2の設置位置を設定する処理と,平面図データ内に設定された標識装置2について,所定の隣接関係にある標識装置同士を接続して隣接線を設定して,標識装置2同士の設置位置の関係を示す標識装置情報を生成する処理とを行う。
【0082】
また,標識装置情報生成部50は,フロアの平面図上に設置された標識装置2同士を連結する情報を表示装置(図示しない)に表示させて(図2参照),管理者に,ユーザが歩行できない範囲を設定させたり,不要な連結情報を削除させたりする。
【0083】
目的地情報生成部51は,建物内に設置された標識装置2に目的地を対応付けて,対応付けた目的地の識別情報と標識装置2の識別情報とを示す目的地情報を生成する。
【0084】
ルート情報生成部52は,標識装置情報と目的地情報とをもとに,標識装置2各々から目的地情報の各目的地への最適経路を解析し,解析解析した最適経路を構成する標識装置2の並びを決定する処理と,決定した標識装置2の並びをもとに,その最適経路の標識装置2各々について,次に経由する標識装置2への方角を特定し,特定した方角を示すルート情報を生成する処理とを行う。ルート情報生成部52は,最適経路の解析処理として,例えば,各標識装置2から目的地への経路が最短距離となる経路の解析,最小パスとなる経路の解析などを実行する。これらの解析以外にも,経路の所定のコストが最小となる経路の解析を実行してもよい。
【0085】
データ出力部53は,目的地情報とルート情報とを屋内誘導システム1を管理する管理装置4へ出力する。
【0086】
以下,図11〜図18を用いて,屋内誘導システム1のより詳細な誘導例を説明する。図11〜図18の各図において,右上に示すリストは,各標識装置2が保持するルート情報の一部である。
【0087】
この誘導例の説明を簡易にするため,方角を示す角度の基準軸を「北」とし,ユーザ端末3が正対する方角を示す方角βは,常に「北向き(0)」とする。
【0088】
図11に示す建物の1階の「出入り口」に,ユーザ端末3を携行するユーザがいると仮定する。
【0089】
ユーザ端末3は,「出入り口」の最寄りの標識装置(10101)2と通信を行い,標識装置(10101)2から目的地情報を取得する。ユーザ端末3は,ユーザが選択した目的地「ShopA(対応する標識装置の識別ID:10302)」を返信し,標識装置(10101)2は,「ShopA」のルート情報(次方角:45)をユーザ端末3へ送信する。
【0090】
ユーザ端末3では,ルート情報に設定されている次に経由する標識装置(10103)2への方角α(45)と,ユーザ端末3の方角β(0)とに基づいて表示角度θ(45)を計算して,基準軸とする北(0)から,反時計回りに45度傾けた誘導用矢印(北西向き)を表示部311に表示する。
【0091】
図12に示すように,ユーザがこの表示に誘導されて進むことによって,次の標識装置(10103)2の設置位置に近づいていくことになる。すると,ユーザ端末3は,次に,最寄りの標識装置(10103)2と通信を行い,標識装置(10103)2からルート情報(次方角:90)を取得し,データ記憶部31に保持していたルート情報を更新する。
【0092】
ユーザ端末3は,ルート情報の,次に経由する標識装置(10102)2への方角α(90)と,ユーザ端末3の方角β(0)とに基づいて表示角度θ(90)を計算して,基準軸(北向き)から反時計回りに90度傾けた誘導用矢印(西向き)を表示部311に表示する。
【0093】
図13に示すように,ユーザが次の標識装置(10102)2の設置位置に近づくと,ユーザ端末3は,標識装置(10102)2と通信を行い,ルート情報(次方角:0)を取得して,保持していたルート情報を更新する。
【0094】
ユーザ端末3は,ルート情報の標識装置(20101)2への方角α(0)と,ユーザ端末3の方角β(0)とに基づいて表示角度θ(0)を計算して,基準軸(北向き)で表示した誘導用矢印を表示部311に表示する。
【0095】
図14に示すように,ユーザが次の標識装置(20101)2の設置位置に近づくと,ユーザ端末3は,標識装置(20101)2と通信を行い,ルート情報(次方角:3F)を取得して,保持していたルート情報を更新する。
【0096】
ユーザ端末3は,ルート情報の方角に「3階(3F)」と設定されているので,表示角度θの計算を行わず,誘導用矢印の代わりに,「3Fへ移動してください」というメッセージを表示部311に表示する。
【0097】
図15に示すように,ユーザがこの表示に誘導されて,エレベータで3階フロア(3F)へ移動すると,標識装置(20301)2の設置位置に近づく。ユーザ端末3は,標識装置(20301)2と通信を行い,ルート情報(次方角:180)を取得して,保持していたルート情報を更新する。
【0098】
ユーザ端末3は,ルート情報の,標識装置(10301)2への方角α(180)と,ユーザ端末3の方角β(0)とに基づいて表示角度θ(180)を計算して,基準軸(北向き)から反時計回りに180度傾けた誘導用矢印(南向き)を表示部311に表示する。
【0099】
図16に示すように,ユーザが標識装置(10301)2の設置位置に近づくと,ユーザ端末3は,標識装置(10301)2と通信を行い,ルート情報(次方角:270)を取得して,保持していたルート情報を更新する。
【0100】
ユーザ端末3は,ルート情報の標識装置(10302)2への方角α(270)と,ユーザ端末3の方角β(0)とに基づいて表示角度θ(270)を計算して,基準軸(北向き)から反時計回りに270度傾けた誘導用矢印(東向き)を表示部311に表示する。
【0101】
図17に示すように,ユーザが標識装置(10302)2の設置位置に近づくと,ユーザ端末3は,標識装置(10302)2と通信を行い,ルート情報(次方角:−)を取得して,保持していたルート情報を更新する。
【0102】
ユーザ端末3は,標識装置(10302)2のルート情報から,通信相手が目的地「ShopA」に対応する標識装置2であると判断するので,誘導用矢印を表示せずに,「目的地付近です」というメッセージを表示部311に表示する。
【0103】
このようにして,標識装置2のルート情報をもとに,ユーザ端末3は,細やかな誘導情報を表示することができるため,ユーザは,1階フロアの出入り口から3階フロアの目的地「ShopA」まで,確実に到達することができる。
【0104】
また,図18に示すように,ユーザが,誤って2階フロアへ移動してしまった場合には,2階フロアの標識装置(20201)2の設置位置に近づくことになる。ユーザ端末3は,標識装置(20201)2と通信を行い,ルート情報(次方角:3F)を取得して,保持していたルート情報を更新する。
【0105】
ユーザ端末3は,ルート情報の方角αに「3階(3F)」と設定されているので,表示角度θの計算を行わず,誘導用矢印を表示せずに,「3Fへ移動してください」というメッセージを表示部311に表示する。この表示により,ユーザは,間違ったフロアへ移動したことに気付き,3階フロアへ移動し直すことができる。
【0106】
図19は,標識装置2の処理フロー図である。
【0107】
標識装置2は,ユーザ端末3からアクセス要求(誘導要求)を受信すると(ステップS10),データ通信部21が通信を開始して,目的地情報を送信する(ステップS11)。そして,ユーザ端末3から,選択された目的地(目的地に対応する標識装置2の識別情報)を受信すると(ステップS12),ユーザ端末3の識別IDを保持する(ステップS13)。
【0108】
標識装置2は,ルート情報から,受信した目的地に対応する「方角」を検索して(ステップS14),検索した方角をユーザ端末3へ送信し(ステップS15),その後,ユーザ端末3の識別IDを削除する(ステップS16)。
【0109】
図20は,ユーザ端末3の処理フロー図である。
【0110】
ユーザ端末3は,通信可能な標識装置2に対して,アクセス要求(誘導要求)を送信する(ステップS20)。そして,目的地選択・判定部33が,標識装置2から目的地情報を受信して,ユーザによって選択された目的地(対応する標識装置の識別ID)を,データ通信部32を介して送信する(ステップS21)。
【0111】
さらに,データ通信部32が標識装置2からルート情報(方角)を受信して,データ記憶部31のルート情報を更新する(ステップS22)。更新されたルート情報をもとに,方角計算部34と誘導表示処理部35が,誘導情報の表示処理を行う(ステップS23)。このステップS23の処理の詳細は,後述する。
【0112】
ユーザ端末3が通信可能な標識装置2が切り替わるかをチェックして(ステップS24),切り替わらなければ(ステップS24のNO),所定の時間ごとに,ステップS23の処理を繰り返す。
【0113】
ユーザ端末3が通信可能な標識装置2が切り替われば(ステップS24のYES),目的地選択・判定部33が,切り替わった標識装置2が目的地に対応するものであるかを調べる(ステップS25)。
【0114】
切り替わった標識装置2が目的地に対応するものでなければ(ステップS25のNO),ステップS22の処理へ戻り,ステップS23,S24の処理を行う。切り替わった標識装置2が目的地に対応するものであれば(ステップS25のYES),誘導表示処理部35は,目的地の近くである旨のメッセージを表示部311へ表示する(ステップS26)。
【0115】
図21は,ステップS23の誘導情報の表示処理の処理フロー図である。
【0116】
ユーザ端末3の方角計算部34は,取得したルート情報の「方角」が設定無し(−)であるかを調べ(ステップS30),「方角」が設定無し(−)でなければ(ステップS30のNO),取得したルート情報の「方角」が値(角度)であるかを調べる(ステップS31)。取得したルート情報の「方角」が値(角度)であれば(ステップS31のYES),ルート情報の方角αを取得する(ステップS32)。方角取得部310からユーザ端末3の方角βを取得して(ステップS33),方角αと方角βから,表示額度θを計算する(ステップS34)。誘導表示処理部35は,基準軸から表示角度θで傾けた誘導用矢印を表示する(ステップS35)。
【0117】
取得したルート情報の「方角」が値(角度)でなければ(ステップS31のNO),誘導表示処理部35は,ルート情報に示された移動先を示すメッセージを表示部311に表示する(ステップS36)。
【0118】
また,取得したルート情報の「方角」が設定無し(−)であれば(ステップS30のYES),誘導表示処理部35は,目的地付近であることを示すメッセージを表示部311に表示する(ステップS37)。
【0119】
図22は,データ生成装置5の処理フローである。
【0120】
データ生成装置5の標識装置情報生成部50は,建物の各フロアの平面図データを読み込むと,表示装置(図示しない)に表示させる(ステップS40)。管理者によって,建物の平面図の外周を囲うような範囲が指定されると,標識装置情報生成部50は,表示された平面図データ上で標識装置2を設置する配置範囲を指定する(ステップS41)。そして,指定された配置範囲内に,平面図データの倍率に基づいて,標識装置2を所定の間隔で二重格子状に配置し,その位置を表示する。さらに,隣り合う標識装置2同士を隣接線で接続する(ステップS42)。なお,ステップS42では,1つの標識装置2から,縦・横・斜めの8つの隣接線を接続することができる。
【0121】
標識装置情報生成部50は,平面図データ上で設置された標識装置2と隣接線について,不要なものを削除する(ステップS43)。例えば,管理者によって削除対象として,建物外や歩行不可能な範囲に設置された標識装置2,壁や構造物等の障害物を通過する隣接線などが選択されると,これらの標識装置2,隣接線を平面図データ等から削除する。
【0122】
さらに,配置された標識装置2のうち,階段,エレベータ,エスカレータなどの移動手段の近くにある標識装置2を,移動手段用の標識装置2として特定する(ステップS44)。
【0123】
次に,目的地情報生成部51は,配置された標識装置2のうち,目的地とその目的地に最寄りの標識装置2を,目的地の標識装置2として特定する(ステップS45)。
【0124】
なお,平面図データ上で,移動手段の標識装置2,目的地の標識装置2の表示色を変えて表示してもよい。
【0125】
次に,ルート情報生成部52は,平面図上に設定された標識装置2の位置,隣接線等に基づいて,各標識装置2から,目的地の標識装置2までの最適経路を計算する(ステップS46)。なお,同一フロア内に目的地の標識装置2が存在しない場合に,一番近くに設定されている移動手段の標識装置2への最適経路を計算する。そして,目的地への最適経路における標識装置2の並びを特定し,自標識装置から次に経由する標識装置2への方角を,各標識装置について計算する(ステップS47)。
【0126】
ルート情報生成部52は,目的地情報の目的地と,ステップS47で計算した方角または他の階層構造への移動の指示とを対応付けた各標識装置2用のルート情報を生成する(ステップS48)。
【0127】
なお,このようなステップS41〜ステップS48の処理は,建物の全ての階層の平面図データに対して行われる。
【0128】
以上の本実施例に示されるように,本発明にかかる屋内誘導システムを,建物内の案内業務に適用した場合に,次のような効果が得られる。
【0129】
(1)従来のGPS機能を搭載した案内システムが不可能であった屋内での案内業務において,訪問者を確実に目的地へ誘導することができる。
【0130】
(2)目的地への経路に,階段・エスカレータ・エレベータ等の階層間の移動手段の使用が含まれる場合でも,自動的に次の標識装置へ誘導することができる。
【0131】
(3)ユーザ端末は,最寄りの認識装置と無線通信を行うため,ユーザの移動時においても十分な感度でルート情報を取得することができる。
【0132】
(4)ユーザ端末の表示部には,ユーザが進むべき方向を矢印で表示するだけであり,特別な操作が不要であり,かつ,直観的に進行方向を把握することができる。
【0133】
以上の説明では,屋内誘導システム1の同一フロア内でのデータ通信を,IEEE802.15.4に準拠する通信プロトコルのネットワークを用いて行う場合の実施例を説明したが,本願発明は,これに限定されるものではなく,その記述の主旨の範囲において種々の変形が可能であることは当然である。例えば,屋内誘導システム1は,IEEE802.15に準拠するいずれかの通信プロトコルを採用することができ,通常,WPANと呼ばれる,数〜数十メートルの範囲で使用される無線ネットワークであれば,どのような無線ネットワークを利用して実施してもよい。
【0134】
また,方角計算部34が行う方角の計算処理において,基準軸から時計回りに特定される値を用いた計算処理でもよく,また,方角を特定する他の処理でもよい。
【0135】
さらに,誘導情報表示装置30を実施するプログラムは,コンピュータが読み取り可能な,可搬媒体メモリ,半導体メモリ,ハードディスクなどの適当な記録媒体に格納することができ,これらの記録媒体に記録して提供される。または,このプログラムは,通信インタフェースを介して種々の通信網を利用した送受信により提供される。
【符号の説明】
【0136】
1 屋内誘導システム
2(2P,2C) 標識装置
20 データ記憶部
21 データ通信部
3 ユーザ端末
30 誘導情報表示装置
31 データ記憶部
32 データ通信部
33 目的地選択・判定部
34 方角計算部
35 誘導表示処理部
36 更新タイマ
310 方角取得部(電子コンパス)
311 表示部
4 管理装置
40 標識装置アドレス記憶部
41 目的地情報記憶部
42 ルート情報記憶部
43 データ配信部
5 データ生成装置
50 標識装置情報生成部
51 目的地情報生成部
52 ルート情報生成部
53 データ出力部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の所定の位置にそれぞれ設置された複数の標識装置と,前記標識装置と無線によるデータ通信が可能な携帯型のユーザ端末とを備える屋内誘導システムであって,
前記複数の標識装置は,それぞれ,
前記建物内の目的地の識別情報と前記目的地に対応付けられた標識装置の識別情報とを示す目的地情報を記憶する目的地情報記憶部と,
自標識装置の設置位置から当該目的地に対応する標識装置の設置位置へ到達する最適経路において自標識装置の次に経由する標識装置への方角を示すルート情報を記憶するルート情報記憶部と,
前記ユーザ端末から誘導要求を受信した場合に,前記誘導要求をしたユーザ端末へ前記目的地情報を送信する処理と,前記ユーザ端末から目的地の識別情報を受信した場合に,前記受信した目的地のルート情報を,前記誘導要求をしたユーザ端末へ送信する処理を行うデータ通信部とを備えて,
前記ユーザ端末は,
情報を表示する表示部と,
自ユーザ端末が面する方角を取得する方角取得部と,
前記複数の標識装置のうち,自ユーザ端末と最短距離に位置する標識装置と通信を行うデータ通信部と,
前記標識装置から前記目的地情報を取得して,前記取得した目的地情報から誘導を要求する目的地を選択し,前記選択した目的地の識別情報を前記標識装置へ送信する目的地選択部と,
前記標識装置から前記選択した目的地のルート情報を取得して,前記取得したルート情報の方角と前記方角取得部が取得した方角とに基づいて誘導用矢印の表示角度を計算する方角計算部と,
自ユーザ端末の正面を示す基準軸から前記表示角度に傾けた前記誘導用矢印を前記表示部へ表示させる誘導表示処理部と,
前記データ通信部が通信を行った標識装置が前記選択した目的地に対応する標識装置である場合に,前記方角計算部と前記誘導表示処理部の処理を停止して,所定のメッセージを前記表示部に表示させる目的地判定部とを備える
ことを特徴とする屋内誘導システム。
【請求項2】
前記ユーザ端末は,
所定の時間経過を検出する更新タイマ部を備えて,
前記方角取得部は,前記更新タイマ部が前記所定の時間経過を検出すると,自ユーザ装置が面する方角を取得する処理を行い,
前記方角計算部が,前記取得したルート情報の方角と前記方角取得部が取得した方角とに基づいて前記表示角度を計算する処理を行い,
前記誘導表示処理部が,前記基準軸から前記表示角度に傾けた前記誘導用矢印を前記表示部へ表示させる処理を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の屋内誘導システム。
【請求項3】
前記建物が複数の階層を備える場合に,前記複数の階層各々に設置された複数の標識装置のうち,他の階層への移動手段に対応付けられた標識装置について,前記方角の代わりに,次に経由する階層を示すルート情報を前記ルート情報記憶部が記憶する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の屋内誘導システム。
【請求項4】
前記建物が複数の階層を備える場合に,前記複数の階層各々に設置された複数の標識装置のうち,目的地に対応付けられた標識装置について,前記方角の値を無設定にしたルート情報を前記ルート情報記憶部が記憶する
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の屋内誘導システム。
【請求項5】
前記建物に設置された標識装置のアドレス情報を記憶する標識装置アドレス記憶部と,
前記目的地情報を記憶する目的地情報記憶部と,
前記複数の標識装置各々におけるルート情報を記憶するルート情報記憶部と,
前記目的地情報の更新情報を受け付けて前記目的地情報記憶部に記憶するとともに,前記受け付けた目的地情報の更新情報を前記標識装置へ送信する処理と,前記ルート情報の更新情報を受け付けて前記ルート情報記憶部に記憶するとともに,前記ルート情報の更新情報を該当する標識装置へ送信するデータ配信手段とを備える
管理装置を備える
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の屋内誘導システム。
【請求項6】
建物内を誘導する屋内誘導システムで使用されるために,建物内の所定の位置に設置される標識装置であって,
前記建物内の目的地の識別情報と前記目的地に対応付けられた標識装置の識別情報とを示す目的地情報を記憶する目的地情報記憶部と,
自標識装置の設置位置から当該目的地に対応する標識装置の設置位置へ到達する最適経路において自標識装置の次に経由する標識装置への方角を示すルート情報を記憶するルート情報記憶部と,
前記屋内誘導システムの他の装置から前記目的地情報を取得して前記目的地情報記憶部へ格納する処理と,前記屋内誘導システムの他の装置から前記ルート情報を取得して前記ルート情報記憶部に格納する処理と,誘導を受けるユーザ端末と無線通信を行って,前記ユーザ端末から誘導要求を受信した場合に,前記誘導要求をしたユーザ端末へ前記目的地情報を送信する処理と,前記ユーザ端末から目的地の識別情報を受信した場合に,前記受信した目的地のルート情報を,前記誘導要求をしたユーザ端末へ送信する処理とを行うデータ通信部とを備える
ことを特徴とする屋内誘導システム用標識装置。
【請求項7】
建物内を誘導する屋内誘導システムで使用されるために,ユーザが携帯するユーザ端末であって,
情報を表示する表示部と,
自ユーザ端末が面する方角を取得する方角取得部と,
誘導される建物内に設置された複数の標識装置のうち,自端末と最短距離に位置する標識装置と無線通信を行うデータ通信部と,
前記標識装置から,目的地の識別情報と前記目的地に対応付けられた標識装置の識別情報とを示す目的地情報を取得して,前記目的地情報から誘導を要求する目的地を選択し,前記選択した目的地の識別情報を前記標識装置へ送信する目的地選択部と,
前記標識装置から前記選択した目的地のルート情報であって,当該標識装置の設置位置から当該目的地に対応する標識装置の設置位置へ到達する最適経路において次に経由する標識装置への方角を示す情報を取得して,前記取得したルート情報の方角と前記方角取得部が取得した方角とに基づいて誘導用矢印の表示角度を計算する方角計算部と,
自ユーザ端末の正面を示す基準軸から前記表示角度に傾けた前記誘導用矢印を前記表示部へ表示させる誘導表示処理部と,
前記データ通信部が通信を行った標識装置が前記選択した目的地に対応する標識装置である場合に,前記方角計算部と前記誘導表示処理部の処理を停止して,所定のメッセージを前記表示部に表示させる目的地判定部とを備える
ことを特徴とする屋内誘導システム用ユーザ端末。
【請求項8】
建物内を誘導する屋内誘導システムで使用されるデータを生成するデータ生成装置であって,
誘導を行う建物内の平面図データを取得して,予め設定された間隔に基づいて,前記平面図データ内の所定の位置に標識装置の設置位置を設定する処理と,前記平面図データ内に設定された標識装置について,所定の隣接関係にある標識装置同士を接続して隣接線を設定して,前記標識装置同士の設置位置の関係を示す標識装置情報を生成する処理とを行う標識装置情報生成部と,
前記建物内に設置された標識装置に目的地を対応付けて,前記対応付けた目的地の識別情報と前記標識装置の識別情報とを示す目的地情報を生成する目的地情報生成部と,
前記標識装置情報と前記目的地情報とをもとに,前記標識装置の各々から前記目的地情報の各目的地への最適経路を解析し,前記解析した最適経路を構成する標識装置の並びを決定する処理と,前記決定した標識装置の並びをもとに,当該最適経路の標識装置各々について,次に経由する標識装置への方角を特定し,前記特定した方角を示すルート情報を生成する処理とを行うルート情報生成部と,
前記目的地情報と前記ルール情報とを前記屋内誘導システムへ出力するデータ出力部とを備える
ことを特徴とする屋内誘導システム用データ生成装置。
【請求項9】
前記目的地情報生成部は,ユーザ操作に基づいて,前記建物に設置された標識装置を前記目的地に対応付ける
ことを特徴とする請求項8に記載の屋内誘導システム用データ生成装置。
【請求項10】
前記ルート情報生成部は,前記目的地情報の目的地ごとに,前記標識装置情報に設定された全ての標識装置から当該目的地への全ての経路を生成して,経路を経由するコストが最小となる経路を最適経路として特定する
ことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の屋内誘導システム用データ生成装置。
【請求項11】
建物内を誘導する屋内誘導システムで使用するために,情報を表示する表示部と自端末が面する方角を取得する方角取得部とを備えたユーザ端末に,
誘導される建物内に設置された複数の標識装置のうち,自端末と最短距離に位置する標識装置と無線通信を行うデータ通信処理と,
前記標識装置から,目的地の識別情報と前記目的地に対応付けられた標識装置の識別情報とを示す目的地情報を取得して,前記目的地情報から誘導を要求する目的地を選択し,前記選択した目的地の識別情報を前記標識装置へ送信する目的地選択処理と,
前記標識装置から前記選択した目的地のルート情報であって,当該標識装置の設置位置から当該目的地に対応する標識装置の設置位置へ到達する最適経路において次に経由する標識装置への方角を示す情報を取得して,前記取得したルート情報の方角と前記方角取得部が取得した方角とに基づいて誘導用矢印の表示角度を計算する方角計算処理と,
自ユーザ端末の正面を示す基準軸から前記表示角度に傾けた前記誘導用矢印を前記表示部へ表示させる誘導表示処理と,
前記データ通信部が通信を行った標識装置が前記選択した目的地に対応する標識装置である場合に,前記方角計算部と前記誘導表示処理部の処理を停止して,所定のメッセージを前記表示部に表示させる目的地判定処理とを,
実行させるための誘導情報表示プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−21971(P2011−21971A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166599(P2009−166599)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(591128763)株式会社富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ (57)
【Fターム(参考)】