説明

層間絶縁膜用組成物

【課題】電子デバイスなどに用いられる絶縁膜を形成するための組成物であって、得られた絶縁膜の誘電率、機械強度等の膜特性が良好であり且つ基板との密着性に優れ、更に塗布液の安定性に優れる絶縁膜形成用塗布液を提供することである。
【解決手段】以下の成分を含む層間絶縁膜用組成物により、解決される。
(A)炭素-炭素二重結合を少なくとも一つ有するアルコキシシランまたはアシロキシシランの加水分解物、
(B)分子内に、炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合を少なくとも2つ有する化合物、
(C)炭素数16以下のカルボン酸、及び
(D)溶媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は層間絶縁膜形成用組成物に関し、更に詳しくは電子デバイスなどに用いられる誘電率、機械強度、耐熱性等の膜特性が良好な層間絶縁膜を形成するための組成物に関し、更には該組成物を用いて得られる絶縁膜を有する電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子材料分野においては、高集積化、多機能化、高性能化の進行に伴い、回路抵抗や配線間のコンデンサー容量が増大し、消費電力や遅延時間の増大を招いている。中でも、遅延時間の増大は、デバイスの信号スピードの低下やクロストークの発生の大きな要因となるため、この遅延時間を減少させてデバイスの高速化を図るべく、寄生抵抗や寄生容量の低減が求められている。この寄生容量を低減するための具体策の一つとして、配線の周辺を低誘電性の層間絶縁膜で被覆することが試みられている。また、層間絶縁膜には、実装基板製造時の薄膜形成工程やチップ接続、ピン付け等の後工程に耐え得る優れた耐熱性やウェットプロセスに耐え得る耐薬品性が求められている。更に、近年は、Al配線から低抵抗のCu配線が導入されつつあり、これに伴い、CMP(ケミカルメカニカルポリッシング)による平坦化が一般的となっており、このプロセスに耐え得る高い機械的強度が求められている。
【0003】
高耐熱性の層間絶縁膜としては古くからポリベンゾオキサゾール、ポリイミド、ポリアリーレン(エーテル)等が開示されているが、高速デバイスを実現するためには更に誘電率の低い材料が要望されている。該材料のようにポリマー分子内に酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子や芳香族炭化水素ユニットを導入すると、高モル分極に起因して誘電率が高くなったり、吸湿に起因して経時で誘電率が上昇したり、更には電子デバイスの信頼性を損なう問題が生じるため改良が必要であった。
一方、飽和炭化水素で構成されるポリマーは含ヘテロ原子ユニットや芳香族炭化水素ユニットで構成されるポリマーと比べてモル分極が小さくなるため、より低い誘電率を示すという利点がある。しかし例えばポリエチレン等のフレキシビリティーの高い炭化水素は耐熱性が不十分であり、電子デバイス用途に利用することは困難であった。
【0004】
このような状況下、低誘電性、絶縁性、耐熱性、及び耐久性に優れた絶縁膜材料として、カゴ型構造を有する多環炭素環化合物を含有する低誘電率材料が提案されている。中でも、炭素-炭素不飽和結合を有する化合物を重合して得られる重合体が、優れた材料として開示されている(特許文献1)。これらの絶縁膜は、有機化合物の膜としては、極めて高い耐熱性と低誘電率を両立するという優れた結果を示すものの、基板との密着性の観点で改良が求められていた。
【0005】
層間絶縁膜の密着剤としては、シラン化合物の検討が開示されている(特許文献2,3)。これらは、確かに密着性改良効果を示すものの、十分な密着性を得るためには他性能に弊害が出る程度の大量添加が必要であったり、また塗布液の安定性がNGであったりする問題を抱えており、さらなる改良が求められていた。
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0276964号明細書
【特許文献2】特開2005−146034号公報
【特許文献3】米国特許第6184284号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点を解決するための層間絶縁膜形成用組成物に関し、更に詳しくは電子デバイスなどに用いられる誘電率、機械強度等の膜特性が良好であり、且つ基板との密着性や塗布液の安定性に優れる層間絶縁膜形成用塗布液に関し、更には該塗布液を用いて得られる層間絶縁膜およびそれを有する電子デバイスに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、下記の<1>〜<6>の構成により解決されることを見出した。
<1>
以下の成分を含む層間絶縁膜用組成物。
(A)炭素-炭素二重結合を少なくとも一つ有するアルコキシシランまたはアシロキシシランの加水分解物、
(B)分子内に、炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合を少なくとも2つ有する化合物、
(C)炭素数16以下のカルボン酸、及び
(D)溶媒。
<2>
(B)成分が、炭素-炭素三重結合を有する化合物であることを特徴とする上記<1>に記載の組成物。
<3>
(B)成分が更に、分子内にカゴ型構造を有する化合物であることを特徴とする上記<1>または<2>に記載の組成物。
<4>
該カゴ型構造がビアダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、テトラマンタンから選択されることを特徴とする上記<3>に記載の組成物。
<5>
上記<1>〜<4>のいずれか一に記載の組成物を用いて形成した絶縁膜。
<6>上記<5>に記載の絶縁膜を有する電子デバイス。
【発明の効果】
【0009】
本発明の層間絶縁膜用組成物により、密着性、塗布面状および機械強度に優れる層間絶縁膜を形成することができる。
また、本発明の層間絶縁膜用組成物により、耐熱性および低誘電率という特性を維持しつつ、密着性と機械強度が改良された層間絶縁膜を形成することができる。
また、本発明により、塗布液の経時安定性が非常に良好であり、長期間保存した後にも、良好な層間絶縁膜性能を示す膜を与えることができる層間絶縁膜用組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、以下の成分を含む層間絶縁膜用組成物(以下、単に“膜形成用組成物”あるいは“組成物”ともいう)に関する。
(A)炭素-炭素二重結合を少なくとも一つ有するアルコキシシランまたはアシロキシシランの加水分解物、
(B)分子内に、炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合を少なくとも2つ有する化合物、
(C)炭素数16以下のカルボン酸、及び
(D)溶媒。
以下、各成分について詳細に説明する。
【0011】
(C)成分:炭素数16以下のカルボン酸
本発明の組成物における(C)成分は炭素数16以下のカルボン酸である。かかるカルボン酸を(A)炭素-炭素二重結合を少なくとも一つ有するアルコキシシランまたはアシロキシシランの加水分解物、及び(B)分子内に、炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合を少なくとも2つ有する化合物、と共に添加することにより、長期間保存した後にも、保存前と同様に良好な層間絶縁膜性能を示す膜を与えることができる層間絶縁膜用組成物を得ることができる。すなわち、本発明の層間絶縁膜用組成物は、長期間保存した後にも、低誘電率、耐熱性、密着性及び機械強度などの優れた層間絶縁膜性能を示す膜を形成することができるという、極めて良好な保存安定性を示す。
また、かかる炭素数のカルボン酸であることにより、硬膜後に膜に残留しにくく、低いk値を達成することができるという利点も奏する。
本明細書において、カルボン酸とは、カルボキシ基‐COOHをもつ有機化合物RCOOH(Rは炭化水素基)の総称である。カルボキシル酸ともいう。
本発明において、カルボン酸は、モノカルボン酸であっても、ジカルボン酸やトリカルボン酸のような多価カルボン酸であってもよいが、モノカルボン酸であることが、硬化後の膜中への残留性の観点から好ましい。
また、カルボン酸には、直鎖、分岐鎖あるいは環状の脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸を含み、更に飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸を含む。硬化後の膜中への残留性の観点から、脂肪族カルボン酸が好ましい。
【0012】
本発明において、カルボン酸は、好ましくは炭素数12以下であり、更に好ましくは炭素数8以下であり、最も好ましくは炭素数5以下である。
カルボン酸の沸点は特に制約が無いが、120℃以上のものが好ましく、130℃以上のものがより好ましく、140℃以上のカルボン酸が更に好ましい。揮発性が高すぎると、添加量が多い場合に塗布面状を悪化させる場合がある。
【0013】
本発明の炭素数16以下のカルボン酸として、好ましくは下記式(1)で表されるカルボン酸が挙げられる。
1−COOH (式1)
式1において、R1は、炭素数15以下の炭化水素基である。
より好ましくは、R1は、炭素数1〜15の直鎖、分岐鎖あるいは環状アルキル基、炭素数2〜15の直鎖、分岐鎖あるいは環状アルケニル基、炭素数2〜15の直鎖、分岐鎖あるいは環状アルキニル基、炭素数6〜15のアリール基、炭素数7〜15のアルキルアリール基、炭素数7〜15のアリールアルキル基、炭素数1〜15のカルボキシル基置換アルキル基(ただし、炭素数が1の場合はシュウ酸を表す)が挙げられる。より好ましくは、R1は、アルキル基である。
更に、上記各基は水酸基、カルボキシル基、炭素数1〜3のアルキル基(ただし総炭素数は16以下である)、炭素数1〜3のアルコキシ基(ただし総炭素数は16以下である)、ケト基、チオール基、チオ基を置換基として有していてもよい。
【0014】
本発明における炭素数16以下のカルボン酸として、具体的には、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、2−メチルプロピオン酸、2−メチルブタン酸等のアルカン酸、
アクリル酸、メタクリル酸、2−ブテン酸、2−ブチン酸、桂皮酸、プロピン酸等の不飽和結合含有モノカルボン酸、
安息香酸、p−メチル安息香酸、サリチル酸、メシチレン酸、アニス酸等の芳香族モノカルボン酸
グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、メバロン酸等の水酸基あるいはケト基含有モノカルボン酸、
シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のジカルボン酸、
リンゴ酸、酒石酸等の水酸基含有ジカルボン酸、
フマル酸、マレイン酸等の不飽和基含有ジカルボン酸、
フタル酸、テレフタル酸、トリメシン酸等の芳香族多価カルボン酸、
クエン酸、イソクエン酸等の水酸基含有トリカルボン酸、
等を例示することが出来る。
【0015】
本発明の組成物中の(C)成分の含有量は、0.1質量%含有することが好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上が更に好ましく、0.5質量%以上が最も好ましい。添加量の増加により、塗布液の安定性が向上する。
一方、添加量が多すぎると塗布面状が悪化する場合があるので、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が最も好ましい。
なお、(A)成分のアシロキシシランを加水分解した溶液をそのまま本発明の組成物に使用する場合には、アシロキシシランに由来するカルボン酸を本発明の組成物が含むことになる。従って、(A)成分のアシロキシシラン由来のカルボン酸が存在する場合には、これを上記(C)成分の一部として考慮する。
【0016】
(A)成分:炭素-炭素二重結合を少なくとも一つ有するアルコキシシランまたはアシロキシシランの加水分解物
(A)成分は、炭素−炭素二重結合を少なくとも一つ有するアルコキシシランまたはアシロキシシランを加水分解して得られる成分である。
従って、(A)成分は、炭素−炭素二重結合を少なくとも一つ有するアルコキシシランまたはアシロキシシランを加水分解して得られる、炭素−炭素二重結合を少なくとも一つ有し、かつ少なくとも1つの水酸基を有する化合物あるいはシラノールが脱水縮合して得られるシロキサンポリマーである。(A)成分の製造方法は後述するが、係る製造方法により得られる(A)成分は、シロキサンポリマー、あるいは水酸基を有するシラノール単量体化合物及び/又はそのオリゴマーの混合物である。(A)の数平均分子量Mnは、1000以下であることが好ましく、750以下がより好ましく、500以下が最も好ましい。
本発明の組成物中の(A)成分の含有量は、0.5〜30質量%含有することが好ましく、1〜25質量%以上がより好ましく、2〜20質量%以上が更に好ましい。
少なすぎると、密着性改善効果が得られず、また多すぎると、k値の上昇やエッチング性の問題が生じる。
【0017】
加水分解を行う際の主溶媒は、本発明の層間絶縁膜組成物(塗布液)中の塗布溶媒としても機能するものであるから、塗布液への溶解性及び塗布面状の観点で、有機溶媒であることが好ましく、アルコール、ケトン、エステル、エーテルであることが好ましく、ケトン、エーテルであることが更に好ましく、ケトン化合物であることが最も好ましい。
また、塗布面状と塗布時の乾燥しやすさの観点で、加水分解を行う際の主溶媒は、常圧における沸点として、90℃〜210℃であることが好ましく、110℃〜190℃であることが更に好ましく、130℃〜170℃であることが最も好ましい。沸点が低すぎると乾燥速度が速すぎるため面状にムラが生じやすい。沸点が高すぎると、膜中への残留量が多くなりすぎる傾向が見られる。
【0018】
具体的には、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン等を最も好ましい例として挙げることが出来る。
【0019】
加水分解は、炭素−炭素二重結合を少なくとも一つ有するアルコキシシランまたはアシロキシシランを上記溶媒に希釈した後、水を滴下してもよく、あるいは溶媒と水の混合液に、炭素−炭素二重結合を少なくとも一つ有するアルコキシシランまたはアシロキシシランを滴下してもよい。また、炭素−炭素二重結合を少なくとも一つ有するアルコキシシランまたはアシロキシシランを希釈せずに(ニートに)水を滴下してもよく、あるいは水に滴下してもよい。
水の添加量は、シラン化合物に対して、通常、1等量以上用いるが、3等量以上用いることが好ましく、5当量以上用いることがより好ましく、8等量以上用いることが更に好ましい。
水には、金属元素が入っていないことが好ましく、各金属元素の含有量は、300ppb以下であることが好ましく、100ppb以下であることがより好ましく、10ppb以下であることがさらに好ましい。従って、蒸留水、超純水等を用いることが好ましい。
【0020】
更に、本発明では加水分解において酸触媒を使用してもよい。
使用可能な酸触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、スルホン酸、カルボン酸、等、任意の酸を使用して良い。好ましくは、スルホン酸やカルボン酸などの有機酸であり、最も好ましくは、カルボン酸である。
酸触媒の添加量は、目的や温度等の加水分解条件に応じて適宜決定することができる。例えば、加水分解反応の全体量(溶媒、シラン化合物、触媒及び水の総量)の20ppm〜80%である。
【0021】
加水分解反応の温度、時間等の条件は基質によって異なり、加水分解反応の速度に応じて適宜設定すればよい。加水分解反応の進行状況は、例えば、アシルオキシシランの場合は、加水分解の結果生じるカルボン酸を1H−NMRで定量することにより確認でき、また、アルコキシシランの場合は、加水分解の結果生じるアルコールを定量することにより確認できる。
一般的な加水分解反応の温度及び時間は、アシルオキシシランの場合は、−30℃〜50℃で1分〜6時間程度であり、アルコキシシランの場合は、0℃〜120℃で1分〜24時間程度である。
反応終了後、反応液をそのまま膜形成用組成物の(A)成分及び(D)成分あるいは(C)成分として使用することができる。ただし、後述するように(D)成分として更に他の溶媒を添加してもよい。
【0022】
本発明で好適に用いられるアルコキシシラン、アシロキシシランとしては、炭素-炭素二重結合を有することが必須であるが、炭素-炭素二重結合としては芳香環の一部を構成するものは含めない。
【0023】
本明細書において、炭素−炭素二重結合を少なくとも一つ有するアルコキシシランまたはアシロキシシランは、好ましくは下記一般式(1)で表されるトリアルコキシシランまたはトリアシロキシシラン化合物である。

式中、R1はアルキル基若しくはアシル基である。
【0024】
一般式(1)におけるアルキル基は、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル、エチル及びプロピル基が挙げられる。
一般式(1)におけるアシル基は、好ましくは炭素数1〜7のアルカノイル基(R’C=O:R’は水素、炭素数1〜6のアルキル基)であり、さらに好ましくはホルミル、アセチル及びプロパノイル基が挙げられる。
【0025】
(A)成分は、典型的には、上記炭素−炭素二重結合を少なくとも一つ有するアルコキシシランまたはアシロキシシランを、水を含む溶媒中に添加して、あるいは希釈せずにニートの状態で水を添加して、加水分解反応を行うことにより製造できる。
希釈して加水分解反応を行う場合には、反応基質濃度(希釈率)は、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以下であり、最も好ましくは2.5質量%以下である。また、反応基質濃度は、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.2質量%以上であることが最も好ましい。濃度が薄すぎると、塗布液作成の際、溶媒量が多すぎて目標の添加量に調整できない場合がある。
【0026】
炭素−炭素二重結合を少なくとも一つ有するアルコキシシランまたはアシロキシシランの具体例として、トリメトキシ(ビニル)シラン、アリル(トリメトキシ)シラン、スチリル(トリメトキシ)シラン、トリメトキシ(ビニル)シラン、3−メタクリロイロキシプロピル(トリメトキシ)シラン、トリエトキシ(ビニル)シラン、アリル(トリエトキシ)シラン、スチリル(トリエトキシ)シラン、3−メタクリロイロキシプロピル(トリエトキシ)シラン、トリアセトキシ(ビニル)シラン、アリル(トリアセトキシ)シラン、スチリル(トリアセトキシ)シラン、3−メタクリロイロキシプロピル(トリアセトキシ)シラン等を挙げることが出来る。
加水分解反応の速度に優れる点で、アシロキシシランが好ましく、耐熱性の観点でビニル基が好ましいため、トリアセトキシ(ビニル)シランが最も好ましい。
【0027】
(B)成分:分子内に、炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合を少なくとも2つ有する化合物
(B)成分としては、分子内に、炭素−炭素二重結合及び炭素−炭素三重結合から選択される結合を少なくとも2つ有する化合物であれば特に限定無く使用することが出来るが、成膜性の観点で、重合体であることが好ましく、重量平均分子量500以上のものが好ましく、1000以上がより好ましく、2000以上が最も好ましい。
本発明の組成物中の(B)成分の含有量は、20質量%以上含有することが好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
【0028】
(B)成分が重合体である場合には、下記一般式(2)及び/又は(3)で表されるモノマーを後述するような方法で重合した化合物であってもよい。

【0029】
式中、R2は、置換基を有していてもよい、炭素数1〜30の、直鎖、分岐鎖あるいは環状のm価の炭化水素基である。炭化水素基の具体例としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルケニル基、炭素数1〜10のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数10〜20のカゴ型構造基が挙げられる。より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数10〜20のカゴ型構造基が挙げられる。
mは1以上であり、好ましくは2以上であり、R2の価数以下である。すなわち、一般式(2)及び(3)において、mはR2に直接結合する二重結合あるいは三重結合の数を意味するため、R2の表す価数がmのとりえる最大値である。
【0030】
前記置換基としては、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素等)、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数10〜20のカゴ型構造基、または炭素数0〜20のシリル基が挙げられる。より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基であり、特に好ましくはアルキル基である。
【0031】
Xはそれぞれ独立に、水素原子、あるいは炭素数1〜20程度の炭化水素基である。前記炭化水素基としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数0〜20のシリル基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル、炭素数1〜20のカルバモイル基等を表す。このうち、好ましくは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数0〜20のシリル基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のカルバモイル基が挙げられ、より好ましくは水素原子、炭素数6〜20のアリール基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0032】
本明細書においてモノマーとは、互いに重合して2量体以上の重合体になるものを指す。この重合体は、ホモポリマーでもコポリマーでも良い。
【0033】
一般式(2)及び/又は(3)で表されるモノマーの重合反応はモノマーに置換した重合性基(炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合)によって起こる。該重合反応としてはどのような重合反応でも良いが、例えばラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、開環重合、重縮合、重付加、付加縮合、遷移金属触媒重合等が挙げられる。
【0034】
本発明において、一般式(2)及び/又は(3)で表されるモノマーの重合反応は非金属の重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。例えば、重合可能な炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を、加熱によって炭素ラジカルや酸素ラジカル等の遊離ラジカルを発生して活性を示す重合開始剤存在下で重合することが出来る。
重合開始剤としては有機過酸化物または有機アゾ系化合物が好ましく用いられるが、特に有機過酸化物が好ましい。
【0035】
有機過酸化物としては、日本油脂株式会社より市販されているパーヘキサH等のケトンパーオキサイド類、パーヘキサTMH等のパーオキシケタール類、パーブチルH−69等のハイドロパーオキサイド類、パークミルD、パーブチルC、パーブチルD等のジアルキルパーオキサイド類、ナイパーBW等のジアシルパーオキサイド類、パーブチルZ、パーブチルL等のパーオキシエステル類、パーロイルTCP等のパーオキシジカーボネート等が好ましく用いられる。
有機アゾ系化合物としては和光純薬工業株式会社で市販されているV−30、V−40、V−59、V−60、V−65、V−70等のアゾニトリル化合物類、VA−080、VA−085、VA−086、VF−096、VAm−110、VAm−111等のアゾアミド化合物類、VA−044、VA−061等の環状アゾアミジン化合物類、V−50、VA−057等のアゾアミジン化合物類等が好ましく用いられる。
【0036】
本発明において重合開始剤は1種のみ、または2種以上を混合して用いてもよい。本発明において、重合開始剤の使用量はモノマー1モルに対して、好ましくは0.001〜2モル、より好ましくは0.01〜1モル、特に好ましくは0.05〜0.5モルである。
【0037】
本発明において一般式(2)及び/又は(3)で表されるモノマーの重合反応は遷移金属触媒存在下で行うことも好ましい。例えば、重合可能な炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有するモノマーを例えばPd(PPh34、Pd(OAc)2等のPd系触媒、Ziegler−Natta触媒、ニッケルアセチルアセトネート等のNi系触媒、WCl6等のW系触媒、MoCl5等のMo系触媒、TaCl5等のTa系触媒、NbCl5等のNb系触媒、Rh系触媒、Pt系触媒等を用いて重合することが好ましい。
【0038】
本発明において遷移金属触媒は1種のみ、または2種以上を混合して用いてもよい。本発明において遷移金属触媒の使用量はモノマー1モルに対して、好ましくは0.001〜2モル、より好ましくは0.01〜1モル、特に好ましくは0.05〜0.5モルである。
【0039】
一般式(2)及び(3)におけるR2として、耐熱性と低誘電率の両立の観点から、カゴ型構造を含む基であることが特に好ましい。また、炭素−炭素三重結合を有する一般式(3)の化合物の方が、耐熱性の観点からより好ましい。
【0040】
本発明で述べる「カゴ型構造」とは、共有結合した原子で形成された複数の環によって容積が定まり、容積内に位置する点は環を通過せずには容積から離れることができないような分子を指す。例えば、アダマンタン構造はカゴ型構造と考えられる。対照的にノルボルナン(ビシクロ[2,2,1]ヘプタン)などの単一架橋を有する環状構造は、単一架橋した環状化合物の環が容積を定めないことから、カゴ型構造とは考えられない。
【0041】
本発明のカゴ型構造は飽和、不飽和結合のいずれを含んでいても良く、酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子を含んでも良いが、低誘電率の見地から飽和炭化水素が好ましい。
【0042】
本発明のカゴ型構造は、好ましくはアダマンタン、ビアダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、テトラマンタン、ドデカヘドランであり、より好ましくはアダマンタン、ビアダマンタン、ジアマンタンであり、低誘電率である点で特にビアダマンタン、ジアマンタンが好ましい。
【0043】
本発明におけるカゴ型構造は1つ以上の置換基を有していても良く、置換基の例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、または沃素原子)、炭素数1〜10の直鎖、分岐、環状のアルキル基(メチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等)、炭素数2〜10のアルケニル基(ビニル、プロペニル等)、炭素数2〜10のアルキニル基(エチニル、フェニルエチニル等)、炭素数6〜20のアリール基(フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等)、炭素数2〜10のアシル基(ベンゾイル等)、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル等)、炭素数1〜10のカルバモイル基(N,N−ジエチルカルバモイル等)、炭素数6〜20のアリールオキシ基(フェノキシ等)、炭素数6〜20のアリールスルホニル基(フェニルスルホニル等)、ニトロ基、シアノ基、シリル基(トリエトキシシリル、メチルジエトキシシリル、トリビニルシリル等)等である。
【0044】
本発明におけるカゴ型構造は2〜4価であることが好ましい。このとき、カゴ型構造に結合する基は1価以上の置換基でも2価以上の連結基でも良い。カゴ型構造は好ましくは、2または3価であり、特に好ましくは2価である。
【0045】
また、本発明において、“分子内にカゴ型構造を有する化合物”とは、カゴ型構造を有するモノマーの重合体であることが好ましい。ここでモノマーとは、互いに重合して2量体以上の重合体になるものを指す。この重合体は、ホモポリマーでもコポリマーでも良い。
前記モノマーの重合方法については、一般式(2)及び(3)の化合物の重合方法について述べた方法を適用することができる。
【0046】
“分子内にカゴ型構造を有する化合物”におけるカゴ型構造はポリマー中にペンダント基として置換していて良く、ポリマー主鎖の一部となっていても良いが、ポリマー主鎖の一部となっている形態がより好ましい。ここで、ポリマー主鎖の一部になっている形態とは、本ポリマーからかご化合物を除去するとポリマー鎖が切断されることを意味する。この形態においては、カゴ型構造は直接単結合するかまたは適当な2価の連結基によって連結される。連結基の例としては例えば、−C(R11)(R12)−、−C(R13)=C(R14)−、−C≡C−、アリーレン基、−CO−、−O−、−SO2−、−N(R15)−、−Si(R16)(R17)−またはこれらを組み合わせた基が挙げられる。ここで、R11〜R17はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を表す。これらの連結基は置換基で置換されていてもよく、例えば前述の置換基が好ましい例として挙げられる。
この中でより好ましい連結基は、−C(R11)(R12)−、−CH=CH−、−C≡C−、アリーレン基、−O−、−Si(R16)(R17)−またはこれらを組み合わせた基であり、特に好ましいものは、低誘電率である見地から−C(R11)(R12)−、−CH=CH−である。
【0047】
本発明の“分子内にカゴ型構造を有する化合物”は、低分子化合物であっても高分子化合物(たとえばポリマー)であっても良いが、好ましいものはポリマーである。カゴ型構造を有する化合物がポリマーである場合、その質量平均分子量は好ましくは1000〜500000、より好ましくは5000〜200000、特に好ましくは10000〜100000である。カゴ型構造を有するポリマーは分子量分布を有する樹脂組成物として絶縁膜形成用塗布液に含まれていても良い。カゴ型構造を有する化合物が低分子化合物である場合、その分子量は好ましくは150〜3000、より好ましくは200〜2000、特に好ましくは220〜1000である。
【0048】
本発明の“分子内にカゴ型構造を有する化合物”は、重合可能な炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合を有するモノマーの重合体であることが好ましく、さらに式(2)または(3)で表され、かつR2が上述したカゴ型構造を有する基である化合物がより好ましい。更には、下記式(I)〜(VI)で表される化合物の重合体であることがより好ましい。
【0049】

【0050】
式(I)〜(VI)中、
1〜X8はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数0〜20のシリル基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル、炭素数1〜20のカルバモイル基等を表す。このうち、好ましくは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数0〜20のシリル基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のカルバモイル基であり、より好ましくは水素原子、炭素数6〜20のアリール基であり、特に好ましくは水素原子である。
1〜Y8はそれぞれ独立にハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素等)、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数0〜20のシリル基を表し、より好ましくは置換基を有していても良い炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基であり、特に好ましくはアルキル基(メチル基等)である。
1〜X8、Y1〜Y8は更に別の置換基で置換されていてもよい。
【0051】
1、5はそれぞれ独立に1〜16の整数を表し、好ましくは1〜4であり、より好ましくは2〜3であり、特に好ましくは2である。
1、n5はそれぞれ独立に0〜15の整数を表し、好ましくは0〜4であり、より好ましくは0または1であり、特に好ましくは0である。
2、m3、m6、m7はそれぞれ独立に1〜15の整数を表し、好ましくは1〜4であり、より好ましくは1〜3であり、特に好ましくは2である。
2、n3、n6、n7はそれぞれ独立に0〜14の整数を表し、好ましくは0〜4であり、より好ましくは0または1であり、特に好ましくは0である。
4、8はそれぞれ独立に1〜20の整数を表し、好ましくは1〜4であり、より好ましくは2〜3であり、特に好ましくは2である。
4、n8はそれぞれ独立に0〜19の整数を表し、好ましくは0〜4であり、より好ましくは0または1であり、特に好ましくは0である。
【0052】
本発明のカゴ型構造を有するモノマーは好ましくは上記式(II)、(III)、(V)、(VI)であり、より好ましくは上記式(II)、(III)であり、特に好ましくは上記式(III)で表される化合物である。
【0053】
本発明のカゴ型構造を有する化合物は2つ以上を併用しても良く、また、本発明のカゴ型構造を有するモノマーを2種以上共重合しても良い。
重合して得られる化合物が、分子内に、炭素−炭素二重結合及び炭素−炭素三重結合から選択される結合を少なくとも2つ有する化合物となるように、式(I)〜(VI)のモノマーを適宜選択して組み合わせて共重合することができる。
【0054】
本発明のカゴ構造を有する化合物は有機溶剤へ十分な溶解性を有することが好ましい。好ましい溶解度は25℃でシクロヘキサノンまたはアニソールに3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上である。
【0055】
本発明のカゴ型構造を有する化合物としては、例えば特開平11−322929号、特開2003−12802号、特開2004−18593号記載のポリベンゾオキサゾール、特開2001−2899号に記載のキノリン樹脂、特表2003−530464号、特表2004−535497号、特表2004−504424号、特表2004−504455号、特表2005−501131号、特表2005−516382号、特表2005−514479号、特表2005−522528号、特開2000−100808号、米国特許6509415号に記載のポリアリール樹脂、特開平11−214382号、特開2001−332542号、特開2003−252982号、特開2003−292878号、特開2004−2787号、特開2004−67877号、特開2004−59444号に記載のポリアダマンタン、特開2003−252992号、特開2004−26850号に記載のポリイミド等が挙げられる。
【0056】
以下に本発明で使用できるカゴ構造を有するモノマーの具体例を記載するが、本発明はこれらに限定はされない。
【0057】

【0058】














【0059】


















【0060】







【0061】








【0062】

【0063】
重合反応で使用する溶媒は、原料モノマーが必要な濃度で溶解可能であり、かつ得られる重合体から形成する膜の特性に悪影響を与えないものであればどのようなものを使用しても良い。例えば水やメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶剤、アルコールアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、メチルベンゾエート等のエステル系溶剤、ジブチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、メシチレン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,4−ジ−t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、1,3,5−トリ−t−ブチルベンゼン、4−t−ブチル−オルトキシレン、1−メチルナフタレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、N−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、四塩化炭素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン等のハロゲン系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤などが利用できる。これらの中でより好ましい溶剤はアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、アニソール、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、メシチレン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,4−ジ−t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリ−t−ブチルベンゼン、4−t−ブチル−オルトキシレン、1−メチルナフタレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンであり、より好ましくはテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、アニソール、トルエン、キシレン、メシチレン、イソプロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリ−t−ブチルベンゼン、1−メチルナフタレン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンであり、特に好ましくはγ−ブチロラクトン、アニソール、メシチレン、t−ブチルベンゼン、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼンである。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
反応液中のモノマーの濃度は好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは10〜20質量%である。
【0064】
本発明における重合反応の最適な条件は、重合開始剤、モノマー、溶媒の種類、濃度等によって異なるが、好ましくは内温0℃〜200℃、より好ましくは50℃〜170℃、特に好ましくは100℃〜150℃で、好ましくは1〜50時間、より好ましくは2〜20時間、特に好ましくは3〜10時間の範囲である。
また、酸素による重合開始剤の不活性化を抑制するために不活性ガス雰囲気下(例えば窒素、アルゴン等)で反応させることが好ましい。反応時の酸素濃度は好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、特に好ましくは20ppm以下である。
重合して得られるポリマーの質量平均分子量の好ましい範囲は1000〜500000、より好ましくは5000〜300000、特に好ましくは10000〜200000である。
【0065】
本発明のカゴ構造を有する化合物は、例えば市販のジアマンタンを原料として、臭化アルミニウム触媒存在下または非存在下で臭素と反応させて臭素原子を所望の位置に導入、続けて臭化アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化鉄等のルイス酸の存在下で臭化ビニルとフリーデルクラフツ反応させて2,2−ジブロモエチル基を導入、続けて強塩基で脱HBr化してエチニル基に変換することで合成することができる。具体的にはMacromolecules., 1991年24巻5266〜5268頁、1995年28巻5554〜5560、Journal of Organic Chemistry., 39, 2995-3003(1974)等に記載された方法に準じて合成することが出来る。
また、末端アセチレン基の水素原子をブチルリチウム等でアニオン化して、これにハロゲン化アルキルやハロゲン化シリルを反応させることによって、アルキル基やシリル基を導入することが出来る。
本発明の重合体は単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
【0066】
(D)成分:溶媒
本発明の層間絶縁膜用組成物に用いられる溶媒は、成分(A)の加水分解時に用いた溶媒をそのまま用いてもよく、下記塗布溶剤を新たに添加してもよい。成分(A)の加水分解時に用いた溶媒をそのまま用いる場合には、加水分解時の主溶媒が、塗布液の塗布溶媒としても機能することになる。ただし、前記主溶媒に下記塗布溶剤を更に用いてもよい。
本発明に用いられる塗布溶剤は特に限定はされないが、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−エトキシメタノール、3−メトキシプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール系溶剤、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、アニソール、フェネトール、ベラトロール等のエーテル系溶剤、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、N−メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤などが挙げられ、これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
【0067】
より好ましい塗布溶剤は、1−メトキシ−2−プロパノール、プロパノール、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、アニソール、メシチレン、t−ブチルベンゼンであり、特に好ましくは1−メトキシ−2−プロパノール、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、t−ブチルベンゼン、アニソールである。
本発明の膜形成用組成物の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%であり、より好ましくは2〜15質量%であり、特に好ましくは3〜10質量%である。
【0068】
本発明の膜形成用組成物には不純物としての金属含量が充分に少ないことが好ましい。膜形成用組成物の金属濃度はICP−MS法にて高感度に測定可能であり、その場合の遷移金属以外の金属含有量は好ましくは30ppm以下、より好ましくは3ppm以下、特に好ましくは300ppb以下である。また、遷移金属に関しては酸化を促進する触媒能が高く、プリベーク、熱硬化プロセスにおいて酸化反応によって本発明で得られた膜の誘電率を上げてしまうという観点から、含有量がより少ないほうがよく、好ましくは10ppm以下、より好ましくは1ppm以下、特に好ましくは100ppb以下である。
膜形成用組成物の金属濃度は本発明の膜形成用組成物を用いて得た膜に対して全反射蛍光X線測定を行うことによっても評価できる。X線源としてW線を用いた場合、金属元素としてK、Ca、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Pdが観測可能であり、それぞれ100×1010cm-2以下が好ましく、より好ましくは50×1010cm-2以下、特に好ましくは10×1010cm-2以下である。また、ハロゲンであるBrも観測可能であり、残存量は10000×1010cm-2以下が好ましく、より好ましくは1000×1010cm-2以下、特に好ましくは400×1010cm-2以下である。また、ハロゲンとしてClも観測可能であるが、CVD装置、エッチング装置等へダメージを与えるという観点から残存量は100×1010cm-2以下が好ましく、より好ましくは50×1010cm-2以下、特に好ましくは10×1010cm-2以下である。
【0069】
更に、本発明の膜形成用組成物には、得られる絶縁膜の特性(耐熱性、誘電率、機械強度、塗布性、密着性等)を損なわない範囲で、ラジカル発生剤、コロイド状シリカ、界面活性剤、シランカップリング剤、密着剤などの添加剤を添加してもよい。
【0070】
本発明にいかなるコロイド状シリカを使用してもよい。例えば、高純度の無水ケイ酸を親水性有機溶媒もしくは水に分散した分散液であり、通常、平均粒径5〜30nm、好ましくは10〜20nm、固形分濃度が5〜40質量%程度のものである。
【0071】
本発明にいかなる界面活性剤を使用してもよいが、例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤などが挙げられ、更にシリコーン系界面活性剤、含フッ素系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が挙げられる。本発明で使用する界面活性剤は、一種類でも良いし、二種類以上でも良い。界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、含フッ素系界面活性剤、アクリル系界面活性剤が好ましく、特にシリコーン系界面活性剤が好ましい。
【0072】
本発明で使用する界面活性剤の添加量は、膜形成塗布液の全量に対して0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であることが更に好ましい。
【0073】
本発明において、シリコーン系界面活性剤とは、少なくとも1原子のSi原子を含む界面活性剤である。本発明に使用するシリコーン系界面活性剤としては、いかなるシリコーン系界面活性剤でもよく、アルキレンオキシド及びジメチルシロキサンを含む構造であることが好ましい。下記化学式を含む構造であることが更に好ましい。
【0074】
【化1】

【0075】
式中Rは水素原子または炭素原子数1〜5のアルキル基であり、xは1〜20の整数であり、m、nはそれぞれ独立に2〜100の整数である。複数のRは同じでも異なっていてもよい。
【0076】
本発明に使用するシリコン系界面活性剤としては、例えばBYK306、BYK307(ビックケミー社製)、SH7PA、SH21PA、SH28PA、SH30PA(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、TroysolS366(トロイケミカル社製)等を挙げることができる。
【0077】
本発明に使用するノニオン系界面活性剤としては、いかなるノニオン系界面活性剤でもよい。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアリールエーテル類、ポリオキシエチレンジアルキルエステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリオキシエチレン類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等を挙げることができる。
【0078】
本発明に使用する含フッ素系界面活性剤としては、いかなる含フッ素系界面活性剤でもよい。例えば、パーフルオルオクチルポリエチレンオキシド、パーフルオルデシルポリエチレンオキシド、パーフルオルドデシルポリエチレンオキシド等が挙げられる。
【0079】
本発明に使用するアクリル系界面活性剤としては、いかなるアクリル系界面活性剤でもよい。例えば、(メタ)アクリル酸系共重合体等が挙げられる。
【0080】
本発明にいかなるシランカップリング剤を使用してもよいが、例えば、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノグリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジメトキシシラン、1−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。本発明で使用するシランカップリング剤は、一種類でも良いし、二種類以上でも良い。
【0081】
本発明にはいかなる密着促進剤を使用してもよいが、例えば、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、トリメトキシビニルシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、アルミニウムモノエチルアセトアセテートジイソプロピレート、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,N'−ビス(トリメチルシリル)ウレア、ジメチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール、ビニルトリクロロシラン、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、イミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、ウラゾール、チオウラシル、メルカプトイミダゾール、メルカプトピリミジン、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、チオ尿素化合物等を挙げることができる。官能性シランカップリング剤が密着促進剤として好ましい。
【0082】
上記シランカップリング剤あるいは密着促進剤の使用量は、本発明の効果、特に密着性及び保存安定性を損なわない量であることが好ましい。具体的には、全固形分に対して、0〜20質量部程度であることが好ましい。また、シランカップリング剤あるいは密着促進剤が、炭素−炭素二重結合を少なくとも一つ有するアルコキシシラン基若しくはアシロキシシラン基を有する化合物である場合には、その化合物と(A)成分との合計濃度は30質量%以下であることが好ましい。
【0083】
本発明の膜形成用組成物には膜の機械強度の許す範囲内で、空孔形成因子を使用して、膜を多孔質化し、低誘電率化を図ることができる。
空孔形成剤となる添加剤としての空孔形成因子としては特に限定はされないが、非金属化合物が好適に用いられ、膜形成用塗布液で使用される溶剤との溶解性、本発明重合体との相溶性を同時に満たすことが必要である。またこの空孔形成剤の沸点若しくは分解温度は、好ましくは100〜500℃、より好ましくは200〜450℃、特に好ましくは250〜400℃である。分子量としては、200〜50000であることが好ましく、より好ましくは300〜10000、特に好ましくは400〜5000である。添加量は膜を形成する重合体に対して、質量%で好ましくは0.5〜75%、より好ましくは0.5〜30%、特に好ましくは1%〜20%である。また、空孔形成因子として、重合体の中に分解性基を含んでいても良く、その分解温度は好ましくは100〜500℃、より好ましくは200〜450℃、特に好ましくは250〜400℃であると良い。分解性基の含有率は膜を形成する重合体に対して、モル%で0.5〜75%、より好ましくは0.5〜30%、特に好ましくは1〜20%である。
【0084】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、膜形成用組成物をスピンコーティング法、ローラーコーティング法、ディップコーティング法、スキャン法等の任意の方法により基板に塗布した後、溶剤を加熱処理で除去することにより形成することができる。基板に塗布する方法としては、スピンコーティング法、スキャン法によるものが好ましい。特に好ましくは、スピンコーティング法によるものである。スピンコーティングについては、市販の装置を使用できる。例えば、クリーントラックシリーズ(東京エレクトロン製)、D−スピンシリーズ(大日本スクリーン製)、SSシリーズあるいはCSシリーズ(東京応化工業製)等が好ましく使用できる。スピンコート条件としては、いずれの回転速度でもよいが、膜の面内均一性の観点より、300mmシリコン基板においては1300rpm程度の回転速度が好ましい。また組成物溶液の吐出方法においては、回転する基板上に組成物溶液を吐出する動的吐出、静止した基板上へ組成物溶液を吐出する静的吐出のいずれでもよいが、膜の面内均一性の観点より、動的吐出が好ましい。また、組成物の消費量を抑制する観点より、予備的に組成物の主溶剤のみを基板上に吐出して液膜を形成した後、その上から組成物を吐出するという方法を用いることもできる。スピンコート時間については特に制限はないが、スループットの観点から180秒以内が好ましい。また、基板の搬送の観点より、基板エッジ部の膜を残存させないための処理(エッジリンス、バックリンス)をすることも好ましい。熱処理の方法は、特に限定されないが、一般的に使用されているホットプレート加熱、ファーネス炉を使用した加熱方法、RTP(Rapid Thermal Processor)等によるキセノンランプを使用した光照射加熱等を適用することができる。好ましくは、ホットプレート加熱、ファーネスを使用した加熱方法である。ホットプレートとしては市販の装置を好ましく使用でき、クリーントラックシリーズ(東京エレクトロン製)、D−スピンシリーズ(大日本スクリーン製)、SSシリーズあるいはCSシリーズ(東京応化工業製)等が好ましく使用できる。ファーネスとしては、αシリーズ(東京エレクトロン製)等が好ましく使用できる。
【0085】
本発明において、重合体は基盤上に塗布した後に加熱処理することによって硬化させることが特に好ましい。例えば重合体中に残存する炭素三重結合の後加熱時の重合反応が利用できる。この後加熱処理の条件は、好ましくは100〜450℃、より好ましくは200〜420℃、特に好ましくは350℃〜400℃で、好ましくは1分〜2時間、より好ましくは10分〜1.5時間、特に好ましくは30分〜1時間の範囲である。後加熱処理は数回に分けて行っても良い。また、この後加熱は酸素による熱酸化を防ぐために窒素雰囲気下で行うことが特に好ましい。
【0086】
また、本発明では加熱処理ではなく高エネルギー線を照射することで重合体中に残存する炭素三重結合の重合反応を起こして硬化させても良い。高エネルギー線とは、電子線、紫外線、X線などが挙げられるが、特にこれらの方法に限定されるものではない。
【0087】
高エネルギー線として、電子線を使用した場合のエネルギーは0〜50keVが好ましく、より好ましくは0〜30keV、特に好ましくは0〜20keVである。電子線の総ドーズ量は好ましくは0〜5μC/cm2、より好ましくは0〜2μC/cm2、特に好ましくは0〜1μC/cm2である。電子線を照射する際の基板温度は0〜450℃が好ましく、より好ましくは0〜400℃、特に好ましくは0〜350℃である。圧力は好ましくは0〜133kPa、より好ましくは0〜60kPa、特に好ましくは0〜20kPaである。本発明の重合物の酸化を防止するという観点から、基盤周囲の雰囲気はAr、He、窒素などの不活性雰囲気を用いることが好ましい。また、電子線との相互作用で発生するプラズマ、電磁波、化学種との反応を目的に酸素、炭化水素、アンモニアなどのガスを添加してもよい。本発明における電子線照射は複数回行ってもよく、この場合は電子線照射条件を毎回同じにする必要はなく、毎回異なる条件で行ってもよい。
【0088】
高エネルギー線として紫外線を用いてもよい。紫外線を用いる際の照射波長領域は190〜400nmが好ましく、その出力は基板直上において0.1〜2000mWcm-2が好ましい。紫外線照射時の基板温度は250〜450℃が好ましく、より好ましくは250〜400℃、特に好ましくは250〜350℃である。本発明の重合物の酸化を防止するという観点から、基盤周囲の雰囲気はAr、He、窒素などの不活性雰囲気を用いることが好ましい。また、その際の圧力は0〜133kPaが好ましい。
【0089】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、半導体用層間絶縁膜として使用する際、その配線構造において、配線側面にはメタルマイグレーションを防ぐためのバリア層があっても良く、また、配線や層間絶縁膜の上面底面にはCMPでの剥離を防ぐキャップ層、層間密着層の他、エッチングストッパー層等があってもよく、更には層間絶縁膜の層を必要に応じて他種材料で複数層に分けても良い。
【0090】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、銅配線あるいはその他の目的でエッチング加工をすることができる。エッチングとしてはウエットエッチング、ドライエッチングのいずれでもよいが、ドライエッチングが好ましい。ドライエッチングは、アンモニア系プラズマ、フルオロカーボン系プラズマのいずれもが適宜使用できる。これらプラズマにはArだけでなく、酸素、あるいは窒素、水素、ヘリウム等のガスを用いることができる。また、エッチング加工後に、加工に使用したフォトレジスト等を除く目的でアッシングすることもでき、更にはアッシング時の残渣を除くため、洗浄することもできる。
【0091】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、銅配線加工後に、銅めっき部を平坦化するためCMP(化学的機械的研磨)をすることができる。CMPスラリー(薬液)としては、市販のスラリー(例えば、フジミ製、ロデールニッタ製、JSR製、日立化成製等)を適宜使用できる。また、CMP装置としては市販の装置(アプライドマテリアル社製、荏原製作所製等)を適宜使用することができる。更にCMP後のスラリー残渣除去のため、洗浄することができる。
【0092】
本発明の膜形成用組成物を使用して得られる膜は、多様の目的に使用することが出来る。例えばLSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D−RDRAM等の半導体装置、マルチチップモジュール多層配線板等の電子部品における絶縁皮膜として好適であり、半導体用層間絶縁膜、エッチングストッパー膜、表面保護膜、バッファーコート膜の他、LSIにおけるパッシベーション膜、α線遮断膜、フレキソ印刷版のカバーレイフィルム、オーバーコート膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、液晶配向膜等として使用することが出来る。
更に、別の用途として本発明の膜に電子ドナーまたはアクセプターをドープすることによって導電性を付与し、導電性膜として使用することも出来る。
【実施例】
【0093】
以下の実施例は本発明を説明するものであり、その範囲を限定するものではない。
<合成例1>化合物A−1の合成
遮光された非ガラス製反応容器にシクロヘキサノン1100g、超純水5.81gを測り取り、25℃で攪拌しながら、トリアセトキシ(ビニル)シラン25.0gをゆっくりと滴下した。得られた反応液を化合物A−1を含む溶液として塗布液作成に用いた。
(アセトキシ基由来の酢酸含有濃度:約0.57質量%)
【0094】
<合成例2>化合物A−2の合成
遮光された非ガラス製反応容器にトリアセトキシ(ビニル)シラン25.0gを測り取り、十分に攪拌し、内温が5℃以下になるように冷却しながら、超純水5.81gをゆっくりと滴下した。25℃にて2時間攪拌後、得られた反応液をシクロヘキサノン1100gにて希釈し、化合物A−2を含む溶液を作成し塗布液作成に用いた。
(アセトキシ基由来の酢酸含有濃度:約0.57質量%)
【0095】
<合成例3>化合物A−3の合成
遮光された非ガラス製反応容器に約20ppmの塩酸を含有するトリメトキシ(ビニル)シラン25.0gを測り取り、十分に攪拌し、内温が5℃以下になるように冷却しながら、超純水5.81gをゆっくりと滴下した。20℃にて10分攪拌後、得られた反応液をシクロヘキサノン1100gにて希釈し、化合物A−3を含む溶液を作成し塗布液作成に用いた。
(酢酸含有濃度:0.00質量%)
【0096】
<合成例4>化合物A−4の合成
遮光された非ガラス製反応容器にトリメトキシ(ビニル)シラン10.0g、酢酸40.5g、シクロヘキサノン80.6gを測り取り、十分に攪拌し、内温が5℃以下になるように冷却しながら、超純水12.1gをゆっくりと滴下した。25℃にて8時間攪拌後、得られた反応液をシクロヘキサノン573gにて希釈し、化合物A−4を含む溶液を作成し塗布液作成に用いた。
(酢酸含有濃度:約5.65質量%)
【0097】
ポリマーの合成
Macromolecules.,5266頁(1991)に記載の合成法に従って、4,9−ジエチニルジアマンタンを合成した。
次に、4,9−ジエチニルジアマンタン100gと563gのジフェニルエーテルを反応容器内に入れ、窒素気流下で攪拌しながら内温155℃に加熱し、4,9−ジエチニルジアマンタンを完全に溶解した。次に、ジクミルパーオキサイド(パークミルD、日本油脂製)21.6gをジフェニルエーテル18.9gに溶解した溶液を、反応液の内温を150℃〜160℃に保ちながら、1時間かけて反応液へ滴下した。
反応後、反応液を50℃まで冷却後、2−プロパノール4Lに添加し、析出した固体を濾過して、2−プロパノールで洗浄した。得られた重合体をTHF400mlに溶解して、メタノール4Lへ添加し、再沈精製した。真空乾燥後、重量平均分子量約3.8万の重合体(1)を62g得た。
【0098】
<実施例1>
重合体(1)1.00gおよび合成例1で作成した化合物(A−1)を含む溶液3.00g(酢酸含有量:約0.017g)をシクロヘキサノン30.00gに完全に溶解させて塗布液1を調製した。(塗布液1の酢酸含有濃度:約0.05%)
この溶液を日本ポール社製0.02μmNylonフィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で200℃で60秒間加熱した後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成し、膜厚100nmの膜を作成した。
【0099】
<実施例2>
重合体(1)1.00gおよび合成例1で作成した化合物(A−1)を含む溶液3.00g(酢酸含有量:約0.017g)、酢酸0.10gをシクロヘキサノン29.90gに完全に溶解させて塗布液2を調製した。(塗布液2の酢酸含有濃度:約0.345%)
この溶液を日本ポール社製0.02μmNylonフィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で200℃で60秒間加熱した後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成し、膜厚100nmの膜を作成した。
【0100】
<実施例3>
重合体(1)1.00gおよび合成例1で作成した化合物(A−1)を含む溶液3.00g(酢酸含有量:約0.017g)、酢酸0.50gをシクロヘキサノン29.50gに完全に溶解させて塗布液3を調製した。(塗布液3の酢酸含有濃度:約1.52%)
この溶液を日本ポール社製0.02μmNylonフィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で200℃で60秒間加熱した後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成し、膜厚100nmの膜を作成した。
【0101】
<実施例4>
重合体(1)1.00gおよび合成例3で作成した化合物(A−3)を含む溶液3.00g(酢酸含有量:約0.00g)、酢酸0.10gをシクロヘキサノン29.90gに完全に溶解させて塗布液2を調製した。(塗布液4の酢酸含有濃度:約0.294%)
この溶液を日本ポール社製0.02μmNylonフィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で200℃で60秒間加熱した後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成し、膜厚100nmの膜を作成した。
【0102】
<実施例5>
重合体(1)1.00gおよび合成例2で作成した化合物(A−2)を含む溶液3.00g(酢酸含有量:約0.017g)をシクロヘキサノン30.00gに完全に溶解させて塗布液5を調製した。(塗布液5の酢酸含有濃度:約0.05%)
この溶液を日本ポール社製0.02μmNylonフィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で200℃で60秒間加熱した後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成し、膜厚100nmの膜を作成した。
【0103】
<実施例6>
重合体(1)1.00gおよび合成例3で作成した化合物(A−3)を含む溶液3.00g(酢酸含有量:約0.00g)、乳酸0.10gをシクロヘキサノン29.90gに完全に溶解させて塗布液2を調製した。(塗布液6の乳酸含有濃度:約0.294%)
この溶液を日本ポール社製0.02μmNylonフィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で200℃で60秒間加熱した後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成し、膜厚100nmの膜を作成した。
【0104】
<実施例7>
重合体(1)1.00gおよび合成例1で作成した化合物(A−1)を含む溶液3.00g(酢酸含有量:約0.017g)、プロピオン酸0.50gをシクロヘキサノン29.50gに完全に溶解させて塗布液7を調製した。(塗布液7のカルボン酸含有濃度:約1.52%)
この溶液を日本ポール社製0.02μmNylonフィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で200℃で60秒間加熱した後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成し、膜厚100nmの膜を作成した。
【0105】
<実施例8>
重合体(1)1.00gおよび合成例4で作成した化合物(A−4)を含む溶液3.00g(酢酸含有量:約0.170g)をシクロヘキサノン30.00gに完全に溶解させて塗布液8を調製した。(塗布液8のカルボン酸含有濃度:約0.5%)
この溶液を日本ポール社製0.02μmNylonフィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で200℃で60秒間加熱した後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成し、膜厚100nmの膜を作成した。
【0106】
<比較例1>
重合体(1)1.00gおよび合成例3で作成した化合物(A−3)を含む溶液3.00g(酢酸不含)をシクロヘキサノン30.00gに完全に溶解させて塗布液P1を調製した。(塗布液P1の酢酸含有濃度:約0.00%)
この溶液を日本ポール社製0.02μmNylonフィルターでろ過した後、シリコンウェハー上にスピンコートし、この塗膜を窒素気流下ホットプレート上で200℃で60秒間加熱した後、更に窒素置換した400℃のオーブン中で60分焼成し、膜厚100nmの膜を作成した。
【0107】
得られた膜の比誘電率、密着性、塗布面の欠陥を下記に示したように評価した。
また、45℃で1ヶ月保存した後の塗布液を用いて膜を形成し、得られた膜の密着性と、膜の塗布面の欠陥を評価し、保存前の膜と比較して、塗布液の経時安定性を評価した。得られた結果を下記表1に示した。
【0108】
・膜の比誘電率:測定温度25℃にて、フォーディメンジョンズ製水銀プローバおよび横川ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出した。
・膜の基板に対する密着性:テープ剥離試験による剥離面積として評価した。すなわち、シリコンウェハの塗布面をJIS D0202-1988に準拠して碁盤目テープ剥離試験を行った。セロハンテープ(「CT24」,ニチバン(株)製)を用い、指の腹でフィルムに密着させた後剥離した。判定は、剥離面積率で、A:0%、B:<10%、C:<50%、D:>50%とした。
・塗布面の欠陥評価: KLA-Tencor社製2360号機により、ウェハ全面の欠陥数を測定し、欠陥数500以下をA、1000以下をB、3000以下をC、3000以上をDとして評価した。
【0109】
【表1】

【0110】
上記表から明らかなように、(A)炭素-炭素二重結合を少なくとも一つ有するアルコキシシランまたはアシロキシシランの加水分解物、(B)分子内に、炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合を少なくとも2つ有する化合物、(C)炭素数16以下のカルボン酸、及び(D)溶媒を含む、本発明の組成物から得られた膜はいずれも高い比誘電率と密着性を有し、更に、塗布液の経時安定性が高かった。特に、アセトキシシランの加水分解物由来の酢酸に加えて、酢酸、乳酸、プロピオン酸等のカルボン酸を十分量加えた場合には、顕著な経時安定性が見られ、保存後も密着性及び塗布面の性能が全く変わらない塗布液を得ることができた(実施例2〜4、6〜8)。
一方、カルボン酸を全く含まない塗布液は塗布液の経時安定性が悪く、1ヶ月保存した液を用いると、得られた膜の密着性が劣化した(比較例1)。また、保存前の塗布液を用いて得られた膜の塗布面には欠陥が少なかったのに対して、保存後の塗布液を用いて得られた膜の塗布面には多数の欠陥があった(比較例1)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分を含む層間絶縁膜用組成物。
(A)炭素-炭素二重結合を少なくとも一つ有するアルコキシシランまたはアシロキシシランの加水分解物、
(B)分子内に、炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合を少なくとも2つ有する化合物、
(C)炭素数16以下のカルボン酸、及び
(D)溶媒。
【請求項2】
(B)成分が、炭素-炭素三重結合を有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(B)成分が更に、分子内にカゴ型構造を有する化合物であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
該カゴ型構造がビアダマンタン、ジアマンタン、トリアマンタン、テトラマンタンから選択されることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物を用いて形成した絶縁膜。
【請求項6】
請求項5に記載の絶縁膜を有する電子デバイス。

【公開番号】特開2008−231383(P2008−231383A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77398(P2007−77398)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】