説明

帯電装置及びこれを用いた画像形成装置並びに帯電部材

【課題】 接触帯電方式の帯電部材に必要な要件である形状維持性、抵抗均一性、離型性及び汚染防止性を全て満たす帯電装置を提供するものである。
【解決手段】 像担持体1に接触配置される帯電部材2を有し、この帯電部材2にて像担持体1を帯電させる帯電装置において、帯電部材2は、表面が被覆層4にて被覆される弾性基材3を備え、前記被覆層4が、a.弾性基材3に対して追従変形可能で且つ金属製基材を被覆した際のビッカース硬度が1500Hv以上であること、b.表面摩擦係数が被覆前の弾性基材3の摩擦係数よりも小さいこと、c.表面粗さが被覆前の弾性基材3の表面粗さ以下であること、を満たすものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタなどの画像形成装置に用いられ、感光体ドラム等の像担持体を帯電する帯電装置に係り、特に、像担持体上に接触し、帯電部材の表面にコーティング等の被覆層を備えた態様の帯電装置及びこれを用いた画像形成装置並びに帯電部材の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記電子写真方式を適用した複写機、プリンタ、ファクシミリあるいはこれらの複合機等の画像形成装置に用いられる帯電装置としては、感光体ドラム等の像担持体に帯電ロールを接触若しくは近接配置したものが知られている(例えば特許文献1〜3参照)。
特に、接触帯電方式にあっては、像担持体との間の接触状態を安定させるために帯電ロール基材として弾性基材(例えば導電性発泡体)を用い、この弾性基材表面を被覆層にて被覆保護した態様が採用されている。
ここで、特許文献1には、弾性基材表面をフッ素樹脂含有材料にてコーティングした先行技術が記載されている。また、特許文献2には、表面層にフッ素樹脂を添加した熱可塑性エラストマーをチュービングしたものを用いた先行技術が記載されている。
更に、特許文献3には、近接帯電方式において、高分子型イオン導電材料を分散した熱可塑性樹脂組成物からなる基材表面に、導電性高分子材料を含有する樹脂からなる被覆層を設けた先行技術が記載されている。
【0003】
特許文献1,2に記載の先行技術によれば、弾性基材表面の被覆層の存在によって、離型性が向上するため、帯電ロール表面へのトナー付着を抑止できる。これにより、帯電状態を良好に保つことに寄与できるだけでなく、帯電ロール表面に付着したトナーによる像担持体表面の汚染を回避することができる。
特に、特許文献2に記載の先行技術によれば、表面層(被覆層)にチュービング加工が施されているため、被覆層の抵抗の均一性を得ることが可能になる。
また、特許文献3に記載の先行技術によれば、帯電ロールを構成している物質から染み出る油分や水分等が帯電ロール表面を介して透過してしまう(ブリードアウト)現象により帯電ロール表面及び感光体ドラム表面を汚染してしまうことを防止することができる。
【0004】
【特許文献1】特開平11−218121号公報(発明の実施の形態)
【特許文献2】特開2002−169355号公報(実施例)
【特許文献3】特開2003−076113号公報(発明の実施の態様、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従前の先行技術にあっては、帯電ロールについて離型性の向上やブリードアウトなどによる汚染の防止や、また、製造時において帯電ロールの被覆層の抵抗を均一にすることは可能かもしれない。
しかしながら、特許文献1,2にあっては、被覆層の摩耗に起因して起こる経時変化に対して形状維持が困難であり、被覆層厚が不均一になると、抵抗が不均一になり、帯電性が不安定になり易い。
また、特許文献3は非接触帯電方式であり、帯電性を安定させるには、像担持体と帯電ロールとの間のギャップ精度を保つことを向上させることが必要不可欠であることから、帯電ロールの取り付け構造が複雑化してしまうばかりか、この帯電ロールをこのまま接触帯電方式に適用した場合には、特許文献1,2と同様な技術的課題が生じる。
このように、従前の先行技術にあっては、接触帯電方式において帯電ロールに必要な要件(形状維持性、抵抗均一性、離型性、汚染防止性)の全てを充足する構成をとることができない。
本発明は、上記不具合を解決すべき技術的課題とし、接触帯電方式の帯電部材に必要な要件である形状維持性、抵抗均一性、離型性及び汚染防止性を全て満たす帯電装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、図1に示すように、像担持体1に接触配置される帯電部材2を有し、この帯電部材2にて像担持体1を帯電させる帯電装置において、帯電部材2は、表面が被覆層4にて被覆される弾性基材3を備え、前記被覆層4が、a.弾性基材3に対して追従変形可能で且つ金属製基材を被覆した際のビッカース硬度が1500Hv以上であること、b.表面摩擦係数が被覆前の弾性基材3の摩擦係数よりも小さいこと、c.表面粗さが被覆前の弾性基材3の表面粗さ以下であること、を満たすものであることを特徴とする。
【0007】
このような技術的手段において、帯電部材2は、弾性基材3を備えることを前提とした。このように、弾性基材3を備えることにより、像担持体1に対して緩衝効果を期待でき、また、像担持体1に対するニップ領域を広く確保することができ、像担持体1の傷付け防止及び帯電性を高める点で好ましい。
【0008】
また、被覆層4としては、上述したa〜cの条件(a.硬度条件、b.摩擦係数条件、c.表面粗さ条件)を満たすことが必要である。
ここで、aの「弾性基材3に対して追従変形可能で且つ金属製基材を被覆した際のビッカース硬度が1500Hv以上であること」という条件は、弾性基材3上では被覆層4のビッカース硬度が測定できないことを考慮し、金属製基材上に被覆した場合のビッカース硬度値を代用することにしたものである。
この場合、aの条件を満たすことで、表面硬度が高硬度になり、帯電部材2のダメージや消耗を抑制することが可能になる。
また、bの条件から、摩擦係数が小さくなることで、像担持体1と帯電部材2とのニップ域における摺動抵抗が小さくなるため、像担持体1及び帯電部材2の表面の摩耗量を低減することができる。
更に、cの条件から、表面粗さが小さくなることで、離型性に優れ、トナーや紙粉が付着し難くなるため、帯電性能を良好に維持することができる。
ここで、摩擦係数については被覆前の弾性基材3との関係で小さく、表面粗さについては被覆前の弾性基材3との関係で同じか又は小さくなっていればよく、同じ基準のものであればその種類(摩擦係数:静摩擦係数、動摩擦係数など、表面粗さ:平均表面粗さ、十点平均表面粗さなど)は問わず適宜選定して差し支えない。
【0009】
また、被覆層4は、ダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜)、立方晶窒化ホウ素膜(C−BN膜)、炭化珪素膜(SiC膜)、窒化クロム膜(CrN膜)、タングステンカーボン膜(W−C膜)等、上述した被覆層4の要件を満たすものであれば、適宜選定して差し支えない。
【0010】
更にまた、被覆層4には、高硬度、低摩擦、低表面粗さ、に良好な非晶質硬質炭素膜(ダイヤモンドライクカーボン膜)を用いることが好ましい。
このダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜)としては、a−C膜(水素をほとんど含まない無定形炭素膜)、a−C:H膜、(水素化された無定形炭素膜)、a−C:H:Si膜(水素及びケイ素を含んだ無定形炭素膜)が用いられる。
更に、このDLC膜は、膜厚が薄く均一なため、抵抗を均一に保持することができるほか、弾性基材3を構成する物質からの油分や水分の透過を有効に防止することができる。
【0011】
更に、被覆層4の層厚が0.5〜5.0μm以下であることが好ましい。
この場合、層厚が0.5μm未満であると、強度不足で摺動により摩耗する虞れがあり、また、5.0μmを超えると、変形追従性が不充分で、弾性基材3の柔軟性を損なう虞れがある。
【0012】
また、被覆層4は、表面層が最も高硬度な積層構造であることが好ましい。
更に、この場合、被覆層4は、表面層と弾性基材3との間に中間層を介在させることが好ましい。このように、中間層を挿入することで表面層と弾性基材3との間の密着性(接着性)を向上させることができる。
【0013】
更に、被覆層4は、150℃以下の環境下にて製膜されるものであることが好ましい。
このように、製膜時温度を低くすることによって、耐熱性の低い弾性基材3に対しても、製膜可能になる。
【0014】
また、帯電部材2の帯電方法としては、支持部材5に導電性部材を用い支持部材5を直接帯電させる方法や、支持部材5に非導電性部材を用い被覆層4の中間層に導電性部材を用いると共に、被覆層4の表面に中間層を一部露出する箇所を設け、その部分に直接給電部材を接触させて帯電させる方法が挙げられる。
【0015】
更に、本発明は、上述した帯電装置に限られるものではなく、これを用いた画像形成装置をも対象とする。
【0016】
更にまた、本発明は、帯電部材2単独の取引性を考慮し、帯電部材2そのものをも対象とする。
この場合、帯電部材2は、像担持体1に接触配置されるものであって、表面が被覆層4にて被覆される弾性基材3を備え、前記被覆層4が、a.弾性基材3に対して追従変形可能で且つ金属製基材を被覆した際のビッカース硬度が1500Hv以上であること、b.表面摩擦係数が被覆前の弾性基材3の摩擦係数よりも小さいこと、c.表面粗さが被覆前の弾性基材3の表面粗さ以下であること、を満たすようにしたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る帯電装置によれば、接触帯電方式の帯電部材として、弾性基材表面に高硬度で低摩擦且つ平滑な被覆層を設けるようにしたので、経時変化による摩耗や変形を抑制することができる。このため、像担持体に対する帯電部材の初期の接触状態を長期間維持することが可能になり、被覆層の膜厚を均一に保持することができ、もって、長期間にわたって帯電電位を安定的に確保することができる。
また、本発明によれば、低摩擦且つ平滑な被覆層を備えているので、弾性基材からのブリードアウトを有効に阻止できることは勿論、帯電部材表面の離型性を向上させることができる。このため、帯電部材や像担持体表面へのトナーや紙粉等の付着を有効に防止でき、安定した帯電電位を保持することが可能になる。
更に、このような帯電装置に用いられる帯電部材によれば、長期にわたって帯電性能が良好な帯電装置を簡単に構築することができる。
更にまた、このような帯電装置を備えた画像形成装置によれば、長期にわたって帯電性能が良好な画像形成装置を簡単に構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
◎実施の形態1
図2は本発明が適用された画像形成装置の実施の形態1を示す。
同図において、画像形成装置は、感光体ドラム10と、この感光体ドラム10からトナー像を転写させるために前記感光体ドラム10に対向配置される中間転写ベルト20とを有する。
本実施の形態において、感光体ドラム10は光の照射によって抵抗値が低下する感光層を備えたものであり、この感光体ドラム10の周囲には、感光体ドラム10を帯電する帯電装置11(詳細は後述)と、帯電された感光体ドラム10上に各色成分(本例ではイエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K))の静電潜像を書き込む露光装置12と、感光体ドラム10上に形成された各色成分潜像を各色成分トナーにて可視像化するロータリ型現像装置13と、前記中間転写ベルト20と、感光体ドラム10上の残留トナーを清掃するドラムクリーナ(クリーニング装置)17とが配設されている。
【0019】
また、露光装置12は感光体ドラム10上に光によって像を書き込めるものであればよく、本例では、例えばLEDを用いたプリントヘッドが用いられるが、これに限られるものではなく、ELを用いたプリントヘッドでも、レーザビームをポリゴンミラーでスキャンするスキャナなど適宜選定して差し支えない。
更に、ロータリ型現像装置13は各色成分トナーが収容された現像器13a〜13dを回転可能に搭載したものであり、例えば感光体ドラム10上で露光によって電位が低下した部分に各色成分トナーを付着させるものであれば適宜選定して差し支えなく、使用するトナーも形状、粒径など特に制限はなく、感光体ドラム10上の静電潜像上に正確に載るものであればよい。
更にまた、ドラムクリーナ17については、感光体ドラム10上の残留トナーを清掃するものであれば、ブレードクリーニング方式を採用したもの等適宜選定して差し支えない。但し、転写率の高いトナーを使用する場合にはドラムクリーナ17を使用しない態様もあり得る。
【0020】
また、本実施の形態において、中間転写ベルト20は、複数の張架ロール21〜23に張架され、例えば張架ロール23を駆動ロールとして所定方向に回動するようになっている。ここで用いられる中間転写ベルト20としては、例えばポリイミド樹脂やポリアミド樹脂等の樹脂にカーボン等の抵抗調整剤を所定量分散させ、所定厚に設定されたものが用いられる。
そして、中間転写ベルト20が感光体ドラム10に密着した接触領域の一部には中間転写ベルト20の裏側から一次転写装置としての一次転写ロール25が接触配置されており、所定の一次転写バイアスが印加されている。
更に、中間転写ベルト20の張架ロール22に対向した部位には、二次転写装置としての二次転写ロール30が張架ロール22をバックアップロールとして対向配置されており、例えば二次転写ロール30に所定の二次転写バイアスが印加され、バックアップロールを兼用する張架ロール22が接地されている。
更にまた、中間転写ベルト20の張架ロール21に対向した部位にはベルトクリーナ(クリーニング装置)26が配設されている。
【0021】
また、用紙などの記録材40は、供給トレイ41に収容されており、ピックアップロール42にて供給された後、レジストレーションロール43を経て二次転写部位に導かれ、搬送ベルト44を通じて定着装置45へ搬送され、搬送ロール46及び排出ロール47を経て排出トレイ48へと排出されるようになっている。
【0022】
次に、本実施の形態に用いられる帯電装置11について詳述する。
本実施の形態において、帯電ロール50は、図3(a)に示すように、感光体ドラム10に接触配置されている。
また、帯電ロール50は、ステンレスや鉄、アルミニウム等の金属製の芯金51に発泡ウレタンなどの導電性発泡層52を備えており、この導電性発泡層52を被覆する被覆層60が設けられている。
ここで、帯電ロール50への付着物を除去する目的でスクレーパ等の除去部材を設けても差し支えない。
尚、芯金51と導電性発泡層52の間に、ほかの何らかの層があっても構わない。
【0023】
本例の被覆層60は、図3(b)に示すように、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜からなる表面層61を備え、この表面層61と導電性発泡層52との間に両者を接着するための中間層(本例では3層の積層構造にて構成)62〜64を介在させるようにしたものである。
ここで、中間層62〜64としては、表面層61側から順に例えばタングステンカーボン(W−C)とDLCとの混合膜からなる第一中間層62、クロム(Cr)とW−Cとの混合膜からなる第二中間層63、クロムからなる第三中間層64が配設されており、例えば表面層61と第一中間層62とが共通のDLC膜構造をもとにして強固に接着され、第一中間層62と第三中間層64とが中間接着層として機能する第二中間層63(第一中間層62とW−Cが共通構造,第三中間層64とCrが共通構造)を介して強固に接着されている。
この場合、被覆層60を構成する各層61〜64の層厚については適宜選定して差し支えないが、製膜時間を短縮するため中間層62〜64を可能な限り薄膜にすることが望ましい。
【0024】
この被覆層60の製造方法としては、マイクロ波プラズマCVD法、直流プラズマCVD法、高周波プラズマCVD法、有磁場プラズマCVD法、イオンビーム・スパッタ法、イオンビーム蒸着法、反応性プラズマ・スパッタ法、アンバランスドマグネトロンスパッタ法等により形成される。このとき用いることができる原料ガスは、含炭素ガスであり、例えば、メタン、エタン、プロパン、エチレン、ベンゼン、アセチレン等の炭化水素ガス、塩化メチレン、四塩化炭素、クロロホルム、トリクロルエタン等のハロゲン化炭素、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類、アセトン、ジフェニルケトン等のケトン類、一酸化炭素、二酸化炭素等のガス、及び、これらのガスにN、H、O、HO、Ar等を混合したものが挙げられる。
【0025】
本実施の形態において、導電性発泡層52を被覆する被覆層60の製造方法に当たっては、導電性発泡層52が発泡ウレタン等の弾性体であるため耐熱性が低く比較的低温(150℃以下、好ましくは80℃以下)であることが必要である。また、導電性発泡層52の表面が油脂や酸化防止剤等で汚染されている可能性があることのほか、導電性発泡層52が変形する虞れがあることを考慮することが必要である。
【0026】
このような点を踏まえて、本実施の形態においては、図4に示すように、例えば低温でコーティングが可能な高周波プラズマCVD法を採用することが好ましい。
同図において、製膜装置71は、真空容器72内の上下に一対の対向電極73,74を設け、この真空容器72には真空ポンプ75を連通接続する一方、圧力調整器76を介して原料ガス77であるメタンガスが供給可能なガス供給配管を接続するものである。そして、真空容器72内には一方の対向電極74上に非製膜対象である帯電ロール50が配設され、この対向電極74の下方はマッチングボックス78を介して変調高周波電源79に接続されている。
【0027】
このような製膜装置71を用いたコーティングのプロセス工程としては、まず、ベース真空に引いた後、この真空中でプラズマを発生させて水素ラジカルで基板70(帯電ロール)の表面を構成する導電性発泡層52を暴露して表面を浄化する。このように、導電性発泡層52の表面をプラズマで洗浄することにより、溶剤等で長時間洗浄した場合における油分などの溶け出しを回避し、導電性発泡層52の表面の汚れを取り除くことができる。
更に、メチル基で暴露すると導電性発泡層52の表面の水素はメチル基と反応しメタンとなって除去され、導電性発泡層52の表面上の炭素のフリーボンドにメチル基が反応することによって、被覆層60が成形されていく。
このような製膜装置71によれば、基板70の温度上昇を有効に抑えながら、層厚0.5〜5.0μmの被覆層60を形成することが可能になる。
【0028】
また、このように製造される被覆層60の物性としては、a.導電性発泡層52に対して追従変形可能で且つ金属製基材を被覆した際のビッカース硬度が1500Hv以上であること、b.表面摩擦係数が被覆前の導電性発泡層52の摩擦係数よりも小さいこと、c.表面粗さが被覆前の導電性発泡層52の表面粗さ以下であること、を満たすことが必要である。
本実施の形態では、被覆層60の特性は主としてDLC膜からなる表面層61の特性が反映され、高硬度に保たれるほか、摩擦係数は発泡ウレタンの導電性発泡層52の場合の摩擦係数よりも小さく設定される。また、上記製膜法を用いた場合、導電性発泡層52表面に分子レベルで倣って被膜層60が製膜されるので、高精度の表面粗さを得ることができる。
【0029】
次に、本実施の形態に係る画像形成装置の作動について説明する。
画像形成装置が作像動作を開始すると、感光体ドラム10上の各色成分トナー像が順次形成され、一次転写ロール25の転写電界により中間転写ベルト20上に順次一次転写される。
しかる後、この中間転写ベルト20に一次転写されたトナー像は二次転写ロール30の転写電界により記録材40に二次転写され、定着工程へと運ばれる。
【0030】
このような作像過程において、帯電ロール50は表面に高硬度且つ低摩擦の被覆層60を備えているため、長期間使用したとしても帯電ロール50及び感光体ドラム10にはほとんど摩耗が見られない。更に、帯電ロール50の離型性は高く、トナーや紙紛が付着するようなことがないだけでなく、帯電ロール50を構成する物質からの油分等のしみ出しも見られない。
したがって、本態様における帯電装置11によれば、感光体ドラム10を汚染することなく、かつ、常に均一な帯電性能を保持することができるため、画像ムラの発生を有効に防止できる。
【0031】
◎実施の形態2
図5は、本発明が適用された画像形成装置の実施の形態2を示す。同図において、実施の形態1とは異なり、帯電ロール80は非導電性の支持ロール81に非導電性発泡層82を有し、この非導電性発砲層82を被覆する被覆層90を備えている。
更に、本実施の形態において、被覆層90は、DLC膜から成る表面層91と、この表面層91と非導電性発泡層82との間に設けられ、銅、銀、アルミ、クロム等の導電性部材から成る中間層92とによって形成されている。
また、この帯電ロール80の表面には、表面層91が軸線に対して垂直方向に一筋状に剥離され、中間層92が露出している給電部95を設けている。更に、この給電部95には、帯電用のバイアスが印加可能な導電性の給電ロール84が回転自在に接触配置されている。
本実施の形態において、帯電ロール80は、中間層92のみが導電性部材によって形成されており、給電部95から給電ロール84が給電し中間層92が帯電路として機能することによって、帯電するものである。
【0032】
本実施の形態において、帯電ロール80は感光体ドラム10及び給電ロール84と常時接触しているものの、長期間使用したとしても帯電ロール80、感光体ドラム10及び給電ロール84にはほとんど摩耗が見られない。更に、帯電ロール80の離型性は高く、トナーや紙紛が付着するようなことがないだけでなく、帯電ロール80を構成する物質からの油分等のしみ出しもない。
したがって、このような態様の帯電装置であれば、感光体ドラム10及び給電ロール84を汚染することなく、かつ、常に均一な帯電性能を保持することができるため、画像ムラの発生を有効に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る帯電装置及びこれに用いられる帯電部材の概要を示す説明図である。
【図2】本発明が適用された画像形成装置の実施の形態1の全体構成を示す説明図である。
【図3】(a)は実施の形態1で用いられる帯電装置の要部を示す説明図、(b)は(a)中B部の被覆層の詳細を示す説明図である。
【図4】実施の形態1で用いられる帯電ロールを製膜する製膜装置を示す説明図である。
【図5】実施の形態2で用いられる帯電装置において、(a)は帯電装置の要部を示す説明図、(b)は帯電ロールの軸方向断面を示す説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1…像担持体,2…帯電部材,3…弾性基材,4…被覆層,5…支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に接触配置される帯電部材を有し、この帯電部材にて像担持体を帯電させる帯電装置において、帯電部材は、表面が被覆層にて被覆される弾性基材を備え、前記被覆層は、
a.弾性基材に対して追従変形可能で且つ金属製基材を被覆した際のビッカース硬度が1500Hv以上であること、
b.表面摩擦係数が被覆前の弾性基材の摩擦係数よりも小さいこと、
c.表面粗さが被覆前の弾性基材の表面粗さ以下であること、
を満たすものであることを特徴とする帯電装置。
【請求項2】
請求項1記載の帯電装置において、
被覆層は、非晶質硬質炭素膜からなる表面層を備えていることを特徴とする帯電装置。
【請求項3】
請求項1記載の帯電装置において、
被覆層の層厚が0.5〜5.0μm以下であることを特徴とする帯電装置。
【請求項4】
請求項1記載の帯電装置において、
被覆層は表面層が最も高硬度な積層構造であることを特徴とする帯電装置。
【請求項5】
請求項4記載の帯電装置において、
被覆層は表面層と弾性基材との間に中間層を介在させたものであることを特徴とする帯電装置。
【請求項6】
請求項1記載の帯電装置において、
被覆層は150℃以下の環境下にて製膜されるものであることを特徴とする帯電装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6いずれかに記載の帯電装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
像担持体に接触配置される帯電部材であって、表面が被覆層にて被覆される弾性基材を備え、前記被覆層は、
a.弾性基材に対して追従変形可能で且つ金属製基材を被覆した際のビッカース硬度が1500Hv以上であること、
b.表面摩擦係数が被覆前の弾性基材の摩擦係数よりも小さいこと、
c.表面粗さが被覆前の弾性基材の表面粗さ以下であること、
を満たすものであることを特徴とする帯電部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−235045(P2006−235045A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47048(P2005−47048)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】