説明

平面ビュー・サンプル作製

【課題】帯電粒子ビーム操作のためにサンプルを配向させる方法および装置を提供する。
【解決手段】サンプルが、サンプルの主表面がプローブ・シャフトに対して垂直ではない角度にある状態で、プローブに付着され、プローブ・シャフトは、サンプルを再配向させるために回転される。一実施形態では、サンプル・ステージに対して45度などのある角度に配向されたプローブは、平坦領域がプローブの軸に対して45度で平行に配向された、すなわち、平坦領域がサンプル・ステージに平行であるプローブの先端を有する。プローブ先端の平坦領域は、サンプルに付着され、プローブが180度回転されるとき、サンプルの配向は、水平から垂直に90度変化する。次いで、サンプルは、TEM格子をサンプル・ステージ上で垂直配向TEM格子に付着される。サンプル・ステージは、薄くするためにサンプルの背面をイオン・ビームに向けるように回転および傾斜される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電粒子ビーム・システムにおいて観察するためのサンプルを作製することに関する。
【背景技術】
【0002】
走査イオン顕微鏡法および電子顕微鏡法などの帯電粒子ビーム顕微鏡法は、光学顕微鏡法より著しく高い分解能および深い焦点深度を提供する。走査電子顕微鏡(SEM)では、1次電子ビームが、観察される表面を走査する微小スポットに集束される。表面に1次電子ビームが当たったとき、2次電子が表面から放出される。それらの2次電子が検出され、像が形成され、像上の各点の輝度は、ビームが表面上の対応するスポットに当たるときに検出された2次電子の数によって決定される。走査イオン顕微鏡法(SIM)は、走査電子顕微鏡法と同様であるが、イオン・ビームが、表面を走査し2次電子を放出するために使用される。
【0003】
透過型電子顕微鏡(TEM)では、広幅電子ビームがサンプルに当たり、サンプルを透過した電子が集束されてサンプルの像を形成する。サンプルは、1次ビームの電子の多くがサンプルを通過し、反対側に貫通できるように、十分に薄くなければならない。サンプルは、通常、100nm未満の厚さである。
【0004】
走査透過型電子顕微鏡(STEM)では、1次電子ビームは微小スポットに集束され、スポットは、サンプル表面にわたって走査される。ワーク・ピースを透過した電子は、サンプルの遠位側において電子検出器によって収集され、像上の各点の強度は、1次ビームが表面上の対応する点に当たったとき収集された電子の数に対応する。
【0005】
サンプルは、透過型電子顕微鏡法(TEMまたはSTEMにかかわらず)で観察するために非常に薄くなければならないので、サンプルの作製は、繊細で時間のかかる作業であることがある。本明細書において使用される「TEM」サンプルという用語は、TEMまたはSTEM用のサンプルを指し、TEM用のサンプルを作製するという言及は、STEM上で観察するためのサンプルを作製することも含むと理解されたい。TEMサンプルを作製する1つの方法は、イオン・ビームを使用してサンプルを基板からカットすることである。プローブが、サンプルが完全に切り離される前に、あるいは後に、サンプルに付着される。プローブは、たとえば静電気、FIB蒸着、または接着剤によって付着することができる。プローブに付着されたサンプルは、サンプルが抽出された基板から取り出され、通常、FIB蒸着、静電気、または接着剤を使用してTEM格子に付着される。
【0006】
図1は、部分的に円形の3mmリングを備える通常のTEM格子100を示す。いくつかの応用例では、サンプル104が、イオン・ビーム蒸着または接着剤によってTEM格子のフィンガ106に付着される。サンプルはフィンガ106から延び、それにより、TEM(図示せず)では、電子ビームが、サンプル104を経てサンプルの下の検出器まで自由経路を有する。TEM格子は、通常、TEM格子の平面が電子ビームに垂直な状態で、TEMのサンプル・ホルダの上に水平に取り付けられ、サンプルは観察される。
【0007】
いくつかの2重ビーム・システムは、サンプルを抽出するために使用することができるイオン・ビーム、およびSEMまたはSTEMの観察に使用することができる電子ビームを含む。いくつかの2重ビーム・システムでは、FIBは、垂直から52度などの角度に配向され、電子ビーム・カラムは垂直に配向される。他のシステムでは、電子ビーム・カラムは傾斜され、FIBは垂直に配向されるか、あるいはまた傾斜される。サンプルが上に取り付けられているステージは、通常、傾斜させることができ、いくつかのシステムでは最高で約60度である。
【0008】
TEMサンプルは、どのようにサンプルがワーク・ピース上において配向されたかに応じて、「平面ビュー」・サンプルまたは「断面ビュー」・サンプルとして大まかに分類することができる。観察されるサンプルの面がワーク・ピースの表面に平行であった場合、サンプルは、「平面ビュー」・サンプルと呼ばれる。観察される面がワーク・ピースの表面に垂直であった場合、サンプルは、「断面ビュー」・サンプルと呼ばれる。
【0009】
図2は、通常のプロセスを使用してワーク・ピース202から部分的に抽出される断面ビューTEMサンプル200を示す。イオン・ビーム204が、抽出されるサンプルの両面上においてトレンチ206および208をカットし、電子ビームによって観察される主表面212を有する薄いラメラ(lamella)210を残す。次いでサンプル200は、ワーク・ピース202をイオン・ビームに対して傾斜させ、その側面および底部の周りでカットすることによって取り出される。プローブ216が、サンプル200が取り出される前に、あるいは後に、サンプル200の上部に付着され、サンプルをTEM格子に輸送する。図2は、ほとんど完全に切り離されたサンプル200が、1側面上のタブ218によって付着している様子を示す。図2は、タブ218を切断する準備が整ったイオン・ビーム204を示す。
【0010】
図2に示されたように、主表面212は垂直に配向される。ラメラを輸送することにより、通常、その配向は変化せず、したがってその主表面は、サンプル200がTEMサンプル・ホルダに至るとき、依然として垂直に配向されている。TEM格子100の平面は、通常、図3に示されるように垂直に配向され、それによりサンプル200は、主表面212が格子の平面に平行に延びるようにTEM格子に付着することができ、格子の構造は、格子がTEMに取り付けられているとき、電子の透過を妨害しない。イオン・ビームは、イオン・ビーム蒸着によって抽出サンプルをTEM格子に付着するために使用することができる。付着後、サンプル200の面は、イオン・ビームを使用して薄くすることもできる。図3は、サンプル・ステージ304上の格子支持体302においてTEM格子100に付着されているサンプル200を示す。サンプル200は、イオン・ビーム204およびノズル312からの蒸着前駆気体310を使用して格子に付着される。図4は、ステージ304が回転および傾斜され、それにより、サンプル200をイオン・ビームによって薄くすることができるように、サンプル200がイオン・ビーム204に垂直になることを示す。
【0011】
図5は、サンプルの面504を観察するために、平面ビュー・サンプル502が抽出される元のワーク・ピース500を示す。サンプル502は、2つの交差イオン・ビーム・カット506Aおよび506Bによって両方向からアンダーカットされ、次いでイオン・ビームは、側面508Aおよび508Bをカットして「チャンク(chunk)」を切り取る。プローブ510が、サンプル502の上部に付着される。したがって、抽出されたサンプルは、水平に配向している。サンプルが、垂直に配向されたTEM格子に対して水平に配向して付着された場合、サンプルは格子の平面に垂直に延び、格子はTEMの電子ビームを妨害する。サンプルが、水平に配向されたTEM格子に取り付けられた場合、観察される面504は上方に向く。その場合、従来のFIBシステムでは、薄くするためにTEM格子を真空室から取り外してサンプル502の背面を暴露させるようにTEM格子を反転させることなしに、平面サンプル502の背面を薄くすることは困難である。
【0012】
平面ビューTEMサンプル502の配向のこの問題は、平面ビュー・サンプルを付着するためにTEM格子をその上で水平に配向させることができる「フリップ・ステージ」を使用することによって過去に克服されており、その場合ステージは、薄くするためにサンプルの背面をイオン・ビームに垂直に向けることができるように180度反転させて回転させることができる。フリップ・ステージは、たとえば、Asselbergsらの米国特許出願公開第2004/0144924号明細書、「Method for the manufacture and transmissive irradiation of a sample、and particle−optical system」に記載されており、従来のステージ上において利用可能ではない自由度を提供する。そのようなフリップ・ステージは、すべてのFIBシステムにおいて利用可能ではない。
【0013】
したがって、TEMサンプル・ホルダを再配向せずにサンプルを薄くすることができる方式で平面ビュー・サンプルをTEM格子に付着する方法および装置を提供することが望ましい。
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0144924号明細書
【特許文献2】米国特許第5851413号明細書
【特許文献3】米国特許第5435850号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、帯電粒子ビーム・サンプルの配向を変更する方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、帯電粒子ビーム・システムにおいて帯電粒子ビーム・サンプルの配向を変更するのを容易にし、たとえば、平面ビューTEMサンプルを作製するのに有用である。一実施形態では、シャフトを備え、かつ角度付き先端を有するプローブが、サンプルに付着される。シャフトを第1の角度にわたって回転させることによって、サンプルの配向は、第2の角度だけ回転する。サンプルのステージ平面に対する縦方向シャフト軸の配向が既知であり、かつ縦方向シャフト軸に対するプローブ先端の角度が既知であることにより、正確に90度だけ、または所望の角度だけサンプルの配向を回転させるシャフトの回転角度を決定することができる。たとえば、シャフトの縦軸がサンプルのステージ平面に対して45度に配向しており、プローブ先端表面がシャフトの縦軸に対して45度に配向している場合、プローブのシャフトを180度回転させることによって、サンプルの配向は、水平から垂直に90度だけ変化する。サンプルは、TEM格子に付着するのに好都合な角度になるように回転させることができ、それにより、再配向のためにサンプルをシステムから取り外さず、かつ特別なステージを必要とせずに、サンプルを帯電粒子ビーム・システムによって薄くすることができる。サンプルを再配向させることにより、レーザ処理または走査電子顕微鏡法など、サンプルが他の処理を受けることを容易にすることができ、本発明は、TEMサンプルの作製に限定されるものではない。
【0016】
以上は、以下の本発明の詳細な記述をよりよく理解することが可能であるように、本発明の特徴および技術上の利点をかなり広範に概述した。本発明の追加の特徴および利点が、以下において記述される。当業者なら、開示される概念および特定の実施形態は、本発明の同じ目的を実施するために他の構造を修正または設計するための基盤として容易に使用することが可能であることを理解されたい。また当業者なら、そのような等価な構造は、添付の請求項において述べられる本発明の精神および範囲から逸脱しないことも理解されたい。
【0017】
本発明およびその利点をより完全に理解するために、ここで、添付の図面と関連して取り入れられる以下の記述を参照する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本開示は、帯電粒子ビーム・システムにおいてサンプルの配向を変更する新規な方法に関する。一実施形態において、本発明は、TEMまたはSTEM内で観察するための平面ビュー・サンプルの作製を容易にする。方法は、フリップ・ステージを必要とせず、かつTEM格子が真空チャンバから取り出されて再配向されることを必要とせずに、サンプルを抽出し、付着し、および薄くすることができるような方式で、平面ビュー・サンプルを抽出し、TEM格子の上に取り付けることを提供する。サンプルの再配向は、サンプルに関する他の分析または処理の操作を容易にすることも可能である。
【0019】
図6は、本発明を実施するのに適切な通常のイオン・ビーム・システムである集束イオン・ビーム(FIB)システム610を示す。FIBシステム610は、液体金属イオン源614または他のイオン源および集束カラム616が内部に配置される上部ネック部分612を有する排気エンベロープを含む。マルチカスプまたは他のプラズマ源などの他のタイプのイオン源、および成形ビーム・カラムなどの他の光学カラムも、電子ビームおよびレーザ・システムと同様に使用することができる。
【0020】
イオン・ビーム618が、液体金属イオン源614からイオン・ビーム集束カラム616を経て、偏向プレート620で概略的に示された静電偏向手段の間を通り、たとえば下方チャンバ626内のステージ624上に配置された半導体デバイスを備えるワーク・ピース622に向かって進む。ステージ624は、1つまたは複数のTEMサンプル・ホルダを支持することもでき、それにより、サンプルは、半導体デバイスから抽出して、TEMサンプル・ホルダに移動させることができる。ステージ624は、水平平面(X軸およびY軸)および垂直(Z軸)に移動することができることが好ましい。ステージ624はまた、約60度傾斜させ、Z軸の周りで回転させることもできる。システム制御装置619が、FIBシステム610の様々な部分の動作を制御する。システム制御装置619により、使用者が、従来のユーザ・インタフェース(図示せず)に入力されたコマンドにより所望の方式で走査されるイオン・ビーム618を制御することができる。代替として、システム制御装置619は、プログラムされた命令に従ってFIBシステム610を制御することが可能である。
【0021】
たとえば、使用者が、ポインティング・デバイスを使用してディスプレイ・スクリーン上で対象領域を描画することができ、その後システムは、サンプルを抽出するために、以下で記述されるステップを自動的に実施することができる。いくつかの実施形態では、FIBシステム610は、対象の領域を自動的に識別するために、マサチューセッツ州ナティックのCognex Corporationから市販されているソフトウエアなど、画像認識ソフトウエアを組み込むことができ、その後システムは、本発明によりサンプルを手動でまたは自動的に抽出することができる。たとえば、システムは、複数のデバイスを含む半導体ウエハ上において同様の特徴を自動的に特定することができ、異なる(または同じ)デバイス上でそれらの特徴のサンプルを採取することができる。
【0022】
イオン・ポンプ628が、上部ネック部分612を真空にするために使用される。下方チャンバ626は、真空制御装置632の制御下において、ターボ分子および機械ポンピング・システム630で真空にされる。真空システムは、下方チャンバ626内において、約1×l0−7Torr(1.3×10−7mbar)と5×10−4Torr(6.7×10−4mbar)の間の真空を実現する。エッチング補助気体、エッチング遅延気体、または蒸着前駆気体が使用される場合、チャンバの背景圧力は、通常約1×10−5Torr(1.3×10−5mbar)まで上昇することがある。
【0023】
高電圧電源634が、約1keVから60keVのイオン・ビーム618を形成し、それをサンプルに向けるために、液体金属イオン源614ならびにイオン・ビーム集束カラム616の適切な電極に接続される。パターン生成装置638によって提供される規定パターンに従って動作する偏向制御装置および増幅器636が、偏向プレート620に結合されており、それによりイオン・ビーム618を手動でまたは自動的に制御して、ワーク・ピース622の上面上においての対応するパターンをトレースすることが可能である。いくつかのシステムでは、偏向プレートは、当技術分野において周知であるように最終レンズの前に配置される。イオン・ビーム集束カラム616内のビーム・ブランキング電極(図示せず)により、イオン・ビーム618は、ブランキング制御装置(図示せず)がブランキング電圧をブランキング電極に印加するとき、対象622の代わりにブランキング・アパーチャ(図示せず)の上に当たる。
【0024】
液体金属イオン源614は、通常、ガリウムの金属イオン・ビームを提供する。このイオン源は、通常、イオン・ミリング、エンハンスド・エッチング、材料蒸着によってワーク・ピース622を修正するために、またはワーク・ピース622を撮像する目的で、ワーク・ピース622において10分の1マイクロメートル以下の幅に集束させることができる。2次イオンまたは電子の放出を検出するために使用されるEverhart Thornleyまたはマルチチャネル・プレートなどの帯電粒子検出器640が、駆動信号をビデオ・モニタ644に供給し、かつ制御装置619から偏向信号を受信するビデオ回路642に接続される。
【0025】
下方チャンバ626内の帯電粒子検出器640の位置は、異なる実施形態では変更することができる。たとえば、帯電粒子検出器640は、イオン・ビームと同軸とすることができ、イオン・ビームが通過できる穴を含むことができる。他の実施形態では、2次粒子は、最終レンズを経て収集することができ、次いで、収集のために軸外に逸らすことができる。走査電子顕微鏡(SEM)641には、その電源および制御645と共に、FIBシステム610が任意選択で設けられる。
【0026】
気体送達システム646が、気体蒸気を導入してワーク・ピース622に向けるために、下方チャンバ626の中に延びる。本発明の譲受人に譲渡されたCasellaらへの米国特許第5851413号明細書、「Gas Delivery Systems for Particle Beam Processing」が、適切な気体送達システム646を記載している。他の気体送達システムが、やはり本発明の譲受人に譲渡されたRasmussenへの米国特許第5435850号明細書「Gas Injection System」に記載されている。たとえば、エッチングを改善するためにヨウ素を送達することができ、または、金属を蒸着させるために金属有機化合物を送達することができる。
【0027】
テキサス州ダラスのOmniprobe,Inc.からのAutoProbe 200(商標)、またはドイツ、ロイトリンゲンのKleindiek NanotechnikからのModel MM3Aなど、微調整装置647が、真空チャンバ内において物体を精確に移動させることができる。微調整装置647は、真空チャンバ内に位置する部分649のX、Y、Z、およびシータの制御を提供するために、真空チャンバ外に配置された精密電気モータ648を備えることが可能である。微調整装置647は、小さな対象物を操作するために、様々なエンド・エフェクタ(end effectors)に装備することができる。以下で記述される実施形態では、エンド・エフェクタは薄いプローブ650である。薄いプローブ650は、サンプルとプローブの間の引力を制御する目的で、電荷をプローブ650に加えるためにシステム制御装置619に電気的に接続することが可能である。
【0028】
加熱または冷却することが可能であるX−Yステージ624の上にワーク・ピース622を挿入するために、また内部気体供給リザーバが使用される場合はそれを使うために、ドア60が開かれる。ドアは、システムが真空下にある場合、ドアを開くことができないようにインタロックされる。高圧電源は、イオン・ビーム618に給電して、かつ集束させるために、適切な加速電圧をイオン・ビーム集束カラム616の電極に提供する。イオン・ビーム618がワーク・ピース622に当たったとき、材料がサンプルからスパッタリングされる、すなわち放出される。代替として、イオン・ビーム618は、材料を蒸着させるために、前駆気体を分解することができる。集束イオン・ビーム・システムは、たとえば本発明の譲渡人であるオレゴン州ヒルズボロのFEI Companyから市販されている。適切なハードウエアの例が上記で提供されたが、本発明は、あらゆる特定のタイプのハードウエアにおいて実施されることに限定されるものではない。
【0029】
図7は、平面ビューTEMサンプルを作製する好ましい方法のステップを記載する。上述の図5は、図7の初期ステップのいくつかの結果を示す。ステップ702において、集束イオン・ビームが、抽出されるサンプルの下のワーク・ピース500において第1の方向から第1カット506Aを作成する。ステップ704において、イオン・ビームは、第1の方向に対向し、かつ第1カット506Aと交差する第2の方向からサンプルの下に第2カット506Bを作成する。たとえば、サンプル・ステージは、180度回転させることができ、第1カットおよび第2カットの入射角度は、同じとすることができる。ステップ706において、左縁が、以前のカット506Aおよび506Bと交差する508Aである。
【0030】
図8は、縦軸804、および縦軸804に対して角度808でカットされた先端806を有するシャフト802を備えるプローブ800を示す。プローブのシャフト802は、シャフトを3次元で移動させることができ、かつシャフトを回転させることができる微調整装置810に接続される。シャフトは、非傾斜配向にあるサンプル・ステージの平面に対して、好ましくは45度である固定角度812であることが好ましい。プローブの先端808は、角度812と同じ角度でカットされることが好ましく、それによりプローブ先端の平坦な領域は、非傾斜配向にあるサンプル・ステージの平面に平行になる。ステップ710において、プローブ先端806が、図9に示されるようにサンプル502に付着される。プローブ800は、たとえば、タングステンなどの金属の集束イオン・ビーム蒸着を使用して、サンプルおよびプローブに付着することができる。プローブ800をサンプル502に付着するために、プローブ先端806は、主表面504上においてサンプル502と接触させる。イオン・ビームがプローブ先端806とサンプル502の間の接触点の周りの領域を走査するように向けられる際に、タングステンヘキサカルボニルW(CO)6などの前駆気体がその接触点に向けられる。イオン・ビームは、サンプル502をプローブ先端806に接続する材料を蒸着させるように、前駆気体の分解を誘起するために使用される。
【0031】
ステップ712において、サンプルの右側壁508Bはカットされ、サンプル502を切り離す。代替として、サンプルの右側壁508Bがカットされて、サンプルが切り離された後、プローブ800をサンプル502に付着することができる。次に、プローブ800は、サンプル502をワーク・ピース500から分離するために、ステップ714において引き出される。図10は、ウエッジ形背面1002と反対側の主表面504上においてプローブ800に付着されたサンプル502を示す。
【0032】
TEM上においてサンプル502を観察するために、ウエッジ形背面1002は、ウエッジの中心の厚さを低減するために薄くしなければならない。ステップ716において、プローブのシャフト802は、図11に示されるように調整装置810によって180度回転される。次いで主表面504は、サンプル・ステージ304の平面に垂直、かつ、垂直に配向されたTEMサンプル・ホルダの平面に平行に配向される。次いでサンプル502は、ステップ720においてイオン・ビーム蒸着を使用して、図12に示されるように垂直に配向されたTEM格子100のフィンガ106に付着される。プローブ802は、通常は接続を切断するFIBを使用して、ステップ722においてサンプル502から取り外される。ステップ724において、サンプルのステージ304は、背面1002がイオン・ビーム204に面するように、図13に示されるように回転され、サンプル・ステージ304は、背面1002がイオン・ビームに垂直になるように傾斜される。サンプルはこの段階で、背面1002をイオン・ビームで機械加工することによって薄くするのに適切な位置に配向される。ステップ726においてサンプル502の背面1002は、図14に示されるように薄くされる。ステップ730において、サンプルは、TEMまたはSTEMにおいて観察される。
【0033】
当業者ならまた、プローブの底面上の平坦な表面が好ましくはあるが、いくつかの実施形態では排除することができることも理解するであろう。サンプルがプローブに固定されている限り、プローブを回転させることにより、サンプルは再配向され、再配向の角度は、回転の程度、およびプローブ軸とステージ平面の間の角度によって決定される。したがって、丸いプローブ先端、プローブの先端がステージの平面に平行ではないプローブの先端角度、またはあらゆる他のプローブ先端の形状が、本発明の範囲内にある。
【0034】
本発明およびその利点が詳細に記述されたが、添付の請求項によって定義される本発明の精神および範囲から逸脱せずに、様々な修正、代用、および変更を本発明において実施することができることを理解されたい。たとえば、記述された角度および配向は、イオン・ビームが垂直に対してある角度に配向されたシステムについて有用である。垂直にまたはあらゆる他の角度に配向されているイオン・ビーム・カラムについて、当業者なら、本発明の適切な実施形態を提供するために、上述された例を容易に変更することができる。本発明は、TEMサンプルの作製にのみ有用なのではなく、SEMまたは光学顕微鏡の観察、あるいはあらゆる帯電粒子ビーム、レーザ、または他の顕微的試料に対する作業について使用することができる。
【0035】
さらに、本発明の範囲は、本明細書において記述されたプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、およびステップの特定の実施形態に限定されることを意図しない。当業者なら本発明の開示から容易に理解するように、本明細書において記述された対応する実施形態とほぼ同じ機能を実施する、またはほぼ同じ結果を達成する現在既存の、または開発されるプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、およびステップが、本発明により使用されることが可能である。したがって、添付の請求項は、そのようなプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、およびステップを範囲内に含むことを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】サンプルが付着される通常のTEM格子を示す図である。
【図2】ワーク・ピースから抽出されている断面TEMサンプルを示す図である。
【図3】図1のTEM格子の上に取り付けられている図2の断面TEMサンプルを示す図である。
【図4】イオン・ビームを使用してサンプルを薄くするために傾斜および回転された図3のサンプルおよび格子を示す図である。
【図5】ワーク・ピースから抽出されている平面ビューTEMサンプルを示す図である。
【図6】本発明を実施するために使用される通常の2重ビーム・システムを示す図である。
【図7】本発明の好ましい実施形態のステップを示すフロー・チャートである。
【図8】本発明の好ましい実施形態において使用されるプローブを示す図である。
【図9】サンプル502に配置された図8のプローブを示す図である。
【図10】サンプルが付着されている図8のプローブを示す図である。
【図11】サンプルの配向を変更するために180度回転された図10のプローブを示す図である。
【図12】TEM格子に付着されている図11のサンプルを示す図である。
【図13】イオン・ビームで薄くするためにサンプルを配向させるように回転および傾斜されているステージ上の図12のTEM格子を示す図である。
【図14】部分的に薄くされた図3のサンプルを示す図である。
【符号の説明】
【0037】
100 通常のTEM格子
104 サンプル
106 フィンガ
200 TEMサンプル
202 ワーク・ピース
204 イオン・ビーム
206 トレンチ
208 トレンチ
210 ラメラ
212 主表面
216 プローブ
218 タブ
302 格子支持体
304 サンプル・ステージ
310 蒸着前駆気体
312 ノズル
500 ワーク・ピース
502 平面ビュー・サンプル
504 主表面
506A イオン・ビーム・カット
506B イオン・ビーム・カット
508A 側面
508B 側面
510 プローブ
610 FIBシステム
612 上方ネック部分
614 液体金属イオン源
616 集束カラム
618 イオン・ビーム
619 システム制御装置
620 偏向プレート
622 ワーク・ピース
624 ステージ
626 下方チャンバ
630 ターボ分子および機械ポンピング・システム
632 真空制御装置
634 高電圧電源
636 偏向制御装置および増幅器
638 パターン生成装置
640 帯電粒子検出器
641 走査電子顕微鏡
642 ビデオ回路
644 ビデオ・モニタ
645 電源および制御
646 気体送達システム
647 微調整装置
648 精密電気モータ
649 部分
650 薄いプローブ
702 ステップ
704 ステップ
706 ステップ
710 ステップ
712 ステップ
714 ステップ
716 ステップ
720 ステップ
722 ステップ
724 ステップ
726 ステップ
730 ステップ
800 プローブ
802 プローブのシャフト
804 縦軸
806 プローブ先端
808 角度
810 微調整装置
812 固定角度
1002 ウエッジ形背面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電粒子ビーム・システムにおいてサンプルを処理する方法であって、
サンプル・ステージ平面を有するサンプル・ステージ上に基板を載置することと、
サンプルを前記基板から切り離すことと、
プローブを前記サンプルに付着し、前記プローブが、シャフト軸を有するシャフトを含み、前記シャフト軸が、前記サンプル・ステージ平面に対してシャフト角度に配向され、前記サンプルが、前記シャフト軸に平行ではない主表面を有することと、
前記プローブに付着させた前記サンプルを所定の配向角度だけ回転させるために、前記シャフトをその軸の周りで第1の回転角度にわたって回転させることとを備える方法。
【請求項2】
前記プローブが、付着表面を含むプローブ先端を有するプローブを含み、前記付着表面が、前記シャフト軸に対して垂直ではない所定の先端角度に配向され、前記プローブを前記サンプルに付着することが、前記プローブ先端の前記付着表面が前記サンプル表面に平行な状態で前記プローブを付着することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サンプルが前記配向角度だけ回転された後、前記サンプルをサンプル・ホルダに付着することをさらに備える請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプル・ホルダがTEM格子である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
平面ビュー・サンプルを創出するために、イオン・ビームを使用することによって、前記サンプル・ホルダに付着させた前記サンプルを薄くすることをさらに含む請求項3または請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記TEM格子に付着させている間、TEMまたはSTEMで前記平面ビュー・サンプルを観察することをさらに含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記シャフト角度が45度であり、前記先端角度が45度であり、前記第1の回転角度が180度であり、前記配向角度が90度である請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記シャフト軸を第1の回転角度にわたって回転させることが、前記プローブ先端に付着された前記サンプルを90度の配向角度だけ回転させるために、前記シャフト軸を180度だけ回転させることを含む請求項1、請求項2、または請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記先端の付着表面が前記サンプルに付着しているとき、前記先端の前記付着表面が、前記サンプル・ステージ平面に平行に配向される請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記TEM格子が垂直に配向される請求項4、請求項5、または請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記プローブを前記サンプルに付着することが、イオン・ビーム蒸着によって前記プローブを前記サンプルに付着することを含む請求項1、請求項2、または請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記プローブを前記サンプルに付着することが、接着剤で前記プローブを前記サンプルに付着することを含む請求項1、請求項2、または請求項3に記載の方法。
【請求項13】
サンプルを前記基板から切り離すことが、集束イオン・ビームを使用して前記サンプルを前記基板から切り離すことを含む請求項1、請求項2、または請求項3に記載の方法。
【請求項14】
サンプルを処理する装置であって、
イオン・ビーム・カラムと、
サンプル・ステージ平面を有するサンプル・ステージであって、少なくとも2次元で移動し、垂直軸の周りで回転し、および水平から傾斜させることができる、サンプル・ステージと、
シャフト軸を有するプローブ・シャフトおよび前記プローブ・シャフトの端部にあるプローブ先端を含むプローブであって、前記プローブ先端が、サンプルに付着するための付着表面を有し、前記付着表面が、前記シャフト軸に対して垂直ではない所定の付着表面角度に配向されるプローブと、
前記プローブを前記シャフト軸に沿って保持および回転させるための微調整装置であって、前記シャフトを前記サンプル・ステージ平面に対して所定のシャフト角度に保持し、微調整装置が所定のシャフト回転角度だけ前記プローブ・シャフトを回転させるとき、前記プローブ付着表面の配向が所定のサンプル配向変更角度によって変化するように、シャフト回転能力を有する微調整装置とを備える装置。
【請求項15】
前記イオン・ビーム・カラムが、集束イオン・ビーム・カラムである請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記微調整装置が、前記サンプル・ステージ平面に対して45度に配向された前記シャフト軸を保持し、前記プローブ付着表面が、ほぼ平坦で、前記シャフト軸に対して45度の付着表面角度に配向され、それにより、プローブ付着表面を前記サンプル・ステージ平面と平行に配向させるために、前記微調整装置を前記シャフト軸の周りで回転させることができる請求項14に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−26312(P2008−26312A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−163546(P2007−163546)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(501419107)エフ・イ−・アイ・カンパニー (78)
【Fターム(参考)】