強化繊維成形体及びその製造方法
【課題】強度・剛性が向上する等の強化繊維成形体を得る。
【解決手段】この発明の強化繊維成形体は、四角形状である基材5aは、各頂点からそれぞれ周方向に離れた切込み始点Aから内側に切込み終点Bまで切断されて形成された切込み部6a〜6dと、隣接した各切込み終点B同士を結ぶ第1の折線イと、各切込み終点Bから外側方向に延びた第2の折線ロを有し、基材5aは、第1の折線イで折曲されて底面部の構成要素である底面及び側面部の構成要素である側面となる本体部5a1と、第2の折線ロで折曲されて隣接した側面に重層して連結した重ね部5a2とから構成されている。
【解決手段】この発明の強化繊維成形体は、四角形状である基材5aは、各頂点からそれぞれ周方向に離れた切込み始点Aから内側に切込み終点Bまで切断されて形成された切込み部6a〜6dと、隣接した各切込み終点B同士を結ぶ第1の折線イと、各切込み終点Bから外側方向に延びた第2の折線ロを有し、基材5aは、第1の折線イで折曲されて底面部の構成要素である底面及び側面部の構成要素である側面となる本体部5a1と、第2の折線ロで折曲されて隣接した側面に重層して連結した重ね部5a2とから構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、強化繊維クロス材で構成された基材を賦型してプリフォームが形成され、このプリフォームに樹脂を含浸した底面部及び各側面部を有する強化繊維成形体、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics:以下、FRPとも称する)は、軽量・高強度の複合材料であり、人工衛星・航空機などで採用されている。
FRPの製造方法としては、これまでオートクレーブ成形が一般的であったが、近年、大型成形体を低コストで製造することが可能な真空含浸成形法(Vacuum assisted resin transfer molding:以下、 VaRTMとも称する)が注目されている。
VaRTM法は、成形型を用いて賦型された、複数枚の積層されたドライな強化繊維クロス材からなるプリフォームを、真空フィルムでもって覆い、その後真空ポンプを用いて強化繊維間にマトリックス樹脂を含浸させて繊維強化プラスチックを製造する方法である。
このVaRTM法では、タック性のあるプリプレグではなくドライな強化繊維クロス材を成形型に賦型する必要がある。そのため、複雑な形状の成形体を得るためには、特殊なプリフォームが必要である。
【0003】
このものとして、例えば座ぐり構造のFRPを製造する方法が知られている(特許文献1参照)。
この製造方法は、座ぐり形状に沿うように切り目を入れた強化繊維を複数層積層することにより、座ぐり部およびその周囲を賦形することが特徴である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-231848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このものには、平面の強化繊維クロス材に切り込みを入れ、曲面の座ぐり形状を賦型するため、必ず強化繊維クロス材の積層数が不均一な部分ができるという問題点があった。
【0006】
また、本願発明者は、強化繊維クロス材の積層数が底面部、側面部とも等しい箱型の各複合成形体を製造しようとした場合、隣接した側面部間の辺部で強化繊維クロス材が不足してしまい、成形体の強度・剛性が低下してしまうという新たな問題点を発見した。
【0007】
この発明は、上記のような問題点を解決することを課題とするものであって、強度・剛性が向上する等の強化繊維成形体、及びその製造方法およびを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る強化繊維成形体は、強化繊維クロス材で構成された基材を賦型してプリフォームが形成され、このプリフォームに樹脂を含浸した底面部及び各側面部を有する強化繊維成形体であって、
多角形状である前記基材は、各頂点からそれぞれ周方向に離れた切込み始点から内側に切込み終点まで切断されて形成された角数と同数の切込み部と、
隣接した各前記切込み終点同士を結ぶ第1の折線と、
各前記切込み終点から外側方向に延びた第2の折線を有し、
前記基材は、前記第1の折線で折曲されて前記底面部の構成要素である底面及び前記側面部の構成要素である側面となる本体部と、前記第2の折線で折曲されて隣接した側面に重層して連結した重ね部とから構成されている。
【0009】
また、この発明に係る強化繊維成形体の製造方法は、基材上に、底面体、側面体を有する成形型を載置する載置工程と、
前記基材の端部を、持ち上げ、前記第1の折線及び前記第2の折線で折曲して、前記基材を前記成形型の前記側面体に面接触させて賦型した前記プリフォームを形成するとともに、プリフォームの端部の仮止め部を前記成形型に仮止めする仮止め工程と、
前記プリフォームに真空含浸法により樹脂を含浸させる含浸工程と、
前記樹脂を硬化させる硬化工程と、
前記プリフォームを前記成形型から脱型し、前記仮止め部を除去する除去工程とを備えている。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る強化繊維成形体によれば、強化繊維成形体の、隣接した側面部の辺部では、基材の端面が露出することなく、隣接した側面に重層した重ね部で占めているので、辺部での強度、剛性が大幅に向上するという効果がある。
また、この発明に係る強化繊維成形体の製造方法によれば、基材の第1の折線及び第2の折線で折曲して、基材を成形型の側面体に面接触させて賦型したプリフォームを形成するので、隣接した側面に基材の重ね部を簡単に重層することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1の強化繊維成形体の概略を示す全体斜視図である。
【図2】図1の強化繊維成形体を構成する第1の基材を示す正面図である。
【図3】図1の強化繊維成形体を構成する第2の基材を示す正面図である。
【図4】図1の強化繊維成形体を構成する補完部材を示す正面図である。
【図5】図1の強化繊維成形体の製造工程を示す斜視図である。
【図6】図5の製造工程の次工程を示す斜視図である。
【図7】図6の製造工程の次工程を示す斜視図である。
【図8】図7の製造工程の次工程を示す斜視図である。
【図9】図8の製造工程の次工程を示す斜視図である。
【図10】図9の製造工程の次工程を示す斜視図である。
【図11】図1の強化繊維成形体の最終製造工程を示す斜視図である。
【図12】図11の最終製造工程後の強化繊維成形体の概略を示す全体斜視図である。
【図13】この発明の実施の形態2の強化繊維成形体の概略を示す全体斜視図である。
【図14】図13の強化繊維成形体を構成する第1の基材を示す正面図である。
【図15】図13の強化繊維成形体を構成する第2の基材を示す正面図である。
【図16】図13の強化繊維成形体を構成する補完部材を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の各実施の形態の強化繊維成形体について図に基づいて説明するが、各図において、同一または相当部材、部位については、同一符号を付して説明する。
【0013】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1における強化繊維成形体1の概略を示す全体斜視図である。
この升形状の強化繊維成形体1は、底面部2と、各側面部3a〜3dと、底面部2、各側面部3a〜3d同士を連結する辺部4a〜4hとから構成されている。
図1中で、L、B及びHはそれぞれ、2軸配向の強化繊維成形体1の幅、奥行き及び高さを表す。
強化繊維成形体1は、強化繊維と樹脂とからなる箱型の複合材料で構成され、その複合材料中の強化繊維の種類(カーボン繊維、ガラス繊維)、含有率などは特に限定されるものではない。
【0014】
図2、図3及び図4は、この強化繊維成形体1を構成する、第1の基材5a、第2の基材5b及び補完部材5cのそれぞれの正面図である。
図2に示す、この正方形状の第1の基材5aは、対向した一方の一対の辺の長さが、強化繊維成形体1の幅Lに高さHの2倍を足し合わせた長さであり、対向した他方の一対の辺の長さが、強化繊維成形体1の奥行Bに高さHの2倍を足し合わせた長さである。
第1の基材5aは、頂点から周方向に高さHの距離離れた切込み始点Aから、辺に対して垂直方向に高さHの距離である切込み終点Bまで切断されて切込み部6a〜6dが形成されている。各切込み部6a〜6dは、それぞれの頂点から反時計回りの高さHの距離の切込み始点Aを基点として形成されている。
第1の基材5aは、周方向において隣接した各切込み終点B同士を結ぶ第1の折線イ、及び各切込み終点Bから各切込み部6a〜6dに対して垂直方向外側に延びた第2の折線ロでそれぞれ直角に折曲されて、底面部2、各側面部3a〜3dの各構成要素となる底面、各側面を構成する。
第1の基材5aは、底面及び側面となる本体部5a1と、第2の折線ロで折曲されて隣接した側面に重層した重ね部5a2とから構成されている。
【0015】
図3に示す、正方形状の第2の基材5bは、第2に示した第1の基材5aと同様に、対向した一方の一対の辺の長さが、強化繊維成形体1の幅Lに高さHの2倍を足し合わせた長さであり、対向した他方の一対の辺の長さが、強化繊維成形体1の奥行Bに高さHの2倍を足し合わせた長さである。
第2の基材5bは、頂点から周方向に高さHの距離離れた切込み始点Aから、辺に対して垂直方向に高さHの距離である切込み終点Bまで切断されて切込み部7a〜7dが形成されている。各切込み部7a〜7dは、それぞれの頂点から時計回りの高さHの距離の切込み始点Aを基点として形成されている。
第2の基材5bは、周方向において隣接した各切込み終点B同士を結ぶ第1の折線イ、及び各切込み終点Bから各切込み部7a〜7dに対して垂直方向外側に延びた第2の折線ロでそれぞれ直角に折曲されて、底面部2、各側面部3a〜3dの各構成要素となる底面、各側面を構成する。
第2の基材5bは、底面、側面となる本体部5b1と、第2の折線ロで折曲されて隣接した側面に重層した重ね部5b2とから構成されている。
第1の基材5a及び第2の基材5bは、互いに対面したときに各切込み部6a〜6d、7a〜7dがそれぞれ重なる対称形である。
【0016】
図4に示す、補完部材5cは、強化繊維成形体1の底面部2の構成要素である底面となる本体部5c1と、この本体部5c1の各辺の中央部から垂直に外側方向に延びた補完部5c2とから構成されている。
補完部5c2は、対向した一方の一対の辺の長さが、強化繊維成形体1の幅Lに高さHの2倍を引いた長さであり、対向した他方の一対の辺の長さが、強化繊維成形体1の奥行Bに高さHの2倍を引いた長さである。
補完部5c2は、第3の折線ハで直角に折曲されて、各側面部3a〜3dにおいて、第1の基材5aの重ね部5a2と第2の基材5bの重ね部5b2との間に位置する。
第1の基材5a,第2の基材5b及び補完部材5cは、点対称である。
【0017】
上記強化繊維成形体1は、それぞれ2枚の第1の基材5a、第2の基材5b及び補完部材5cで構成され、その底面部2及び側面部3a〜3dはそれぞれ6層である。
【0018】
次に、上記構成の強化繊維成形体1を製造する手順について図に基づいて説明する。
先ず、補完部材5c、第2の基材5b及び第1の基材5aの順序で積層し、この積層体上に箱型成形型8を載置する(図5参照)。
次に、第1の基材5aを持ち上げるようにしてテンションを加えて箱型成形型8の各側面体に面接触するように折曲し(図6及び図7参照)、両面テープを用いて第1の基材5aの上縁部である仮止め部9で箱型成形型8の側面体上部に仮止めする。
この折曲された第1の基材5aは、第1の基材5aの重ね部5a2が本体部5a1の隣接した側面と重層して連結されている。この重ね部5a2は、隣接した側面と反時計回りで上層、下層とが交互に位置が逆転するようにして連結されている。
【0019】
その後、引き続き第2の基材5bについても、第1の基材5aの折曲作業と同様の作業を繰り返し、また両面テープを用いて仮止め部9で第1の基材5aの側面上縁部に仮止めする(図8〜図10参照)。
この折曲された第2の基材5bについても、第1の基材5aと同様に、第2の基材5bの重ね部5b2が本体部5b1の隣接した側面と重層して連結されている。この重ね部5b2は、隣接した側面と時計回りで上層、下層とが交互に位置が逆転するようにして連結されている。
【0020】
この後、引き続き補完部材5cについて、補完部5c2を持ち上げるようにしてテンションを加えて、第2の基材5bの側面中央部に面接触するように折曲し、また両面テープを用いて仮止め部9で第2の基材5bの側面上縁部に仮止めする(図11参照)。
【0021】
次に、上述した内容と逆の順序で、つまり補完部材5c、第2の基材5b及び第1の基材5aの順序で同じ作業を行う。
そして、全ての第1の基材5a、第2の基材5b及び補完部材5cの仮止め部9での仮止めが終了する。そして、第1の基材5a、第2の基材5b及び補完部材5cが積層されたこのプリフォームを真空フィルムで覆う。
以上で、プリフォームの賦型工程が完了する。
【0022】
次に、真空ポンプを用いてプリフォーム内へ樹脂を含浸、硬化させる。
最後に、箱型成形型8から成形体を脱型し、また仮止め部9を除去し、複合材成形体である強化繊維成形体1を得る(図12参照)。
なお、図12は強化繊維成形体1の概略を示す全体斜視図であり、図1と同様に第1の基材5a、第2の基材5b及び補完部材5cは省略されている。
【0023】
以上説明したように、上記構成の強化繊維成形体1は、第1の基材5a、第2の基材5bは、第1の折線イで直角に折曲されて底面部2の構成要素である底面及び側面部3a〜3dの構成要素である側面となる本体部5a1,5b1と、第2の折線ロで折曲されて隣接した側面に重層して連結した重ね部5a2,5a2とから構成されている。
従って、強化繊維成形体1の、隣接した側面部3a〜3d間の辺部4a〜4hでは、第1の基材5a及び第2の基材5bの端面が露出することなく、隣接した側面に重層した重ね部5a2,5a2で占めているので、升形状の強化繊維成形体1は、辺部4a〜4hでの強度、剛性が大幅に向上する。
【0024】
また、補完部材5cは、強化繊維成形体1の底面部2の構成要素である本体部5c1と、この本体部5c1の各辺の中央部から垂直に外側方向に延びた補完部5c2とから構成され、この補完部5c2は、第3の折線ハで直角に折曲されて、第1の基材5aの重ね部5a2と第2の基材5bの重ね部5b2との間に配置する。
従って、強化繊維成形体1の底面部2及び側面部3a〜3dはそれぞれ同層の6層となり、各面部2,3a〜3dにおいて等しい物理的強度が確保できる。
【0025】
また、強化繊維成形体1は、それぞれ2枚の第1の基材5a及び第2の基材5b及び補完部材5cで構成され、第1の基材5a、第2の基材5b及び補完部材5cの積層順序と、次に積層される、第1の基材5a、第2の基材5b及び補完部材5cの積層順序とは逆である。
従って、第1の基材5a及び第2の基材5b及び補完部材5cそれぞれの「反り」が相殺され、強化繊維成形体1全体の歪み、反りが抑制される。
【0026】
第1の基材5a、第2の基材5b及び補完部材5cは、それぞれ2軸配向の強化繊維クロス材で構成され、切込み部6a〜6d,7a〜7dは、配向に沿って形成されているので、切断が容易となり、切断作業性が向上する。
【0027】
第1の基材5aと第2の基材5bとは、正方形状であり、互いに対面したときに切込み部6a〜6d,7a〜7dが重なる対称形であり、第1の基材5a、第2の基材5b及び補完部材5cは、点対称である。
従って、第1の基材5a、第2の基材5b及び補完部材5cを積層する際の配置方向について注意することなく積層することができ、積層作業性が向上する。
【0028】
また、第1の基材5aと第2の基材5bは、正方形状であり、頂点と切込み始点Aとの距離、切込み始点Aと切込み終点Bとの距離がそれぞれ側面部の高さHに等しいので、高さHの正四角柱状の強化繊維成形体1を簡単に製造することができる。
【0029】
また、上記構成の強化繊維成形体1の製造方法によれば、第3の補完部材5c、第2の基材5b及び第1の基材5aを順次積層した上に、底面体、側面体を有する成形型8を載置する載置工程と、第1の基材5a、第2の基材5b及び第3の補完部材5cの端部を順次持ち上げ、第1の折線イ及び第2の折線ロで折曲して、第1の基材5a、第2の基材5b及び第3の補完部材5cを成形型8の各側面体に面接触させて賦型したプリフォームの端部の仮止め部を成形型に仮止めする仮止め工程とを備えているので、隣接した側面に重ね部5a2,5b2が重層したプリフォームの賦型作業が容易であり、賦型作業性が向上する。
【0030】
また、上記構成の強化繊維成形体1の製造方法によれば、プリフォームに真空含浸法により樹脂を含浸させる含浸工程と、前記樹脂を硬化させる硬化工程と、前記プリフォームを前記成形型8から脱型し、仮止め部9を除去する除去工程とを備え、両面テープで仮止めされた仮止め部9は、樹脂で硬化したプリフォームから除去されるので、除去後は、両面テープの粘着剤が強化繊維成形体1に拡散することは当然なく、強化繊維成形体1の粘着剤による強度及び剛性の低下を防止することができる。
【0031】
なお、上記の実施の形態では第3の補完部材5cを用い、第1の基材5aの重ね部5a2と第2の基材5bの重ね部5b2との端面間の隙間に補完部5c2を配置し、強化繊維成形体1の底面部2及び側面部3a〜3dのそれぞれを同層数としたが、この第3の補完部材5cを用いなくても、強化繊維成形体1の底面部及び側面部のそれぞれを同層数にすることができる。
即ち、第1の基材5aの反時計方向に折曲された重ね部5a2の周方向の長さと、第2の基材5bの時計方向に折曲された重ね部5b2の周方向の長さとが等しく、それぞれ側面の中心線まで延ばすことで、底面部及び側面部のそれぞれの層数が同数の強化繊維成形体1を得ることができる。
この場合、最小層数が2で、底面部及び側面部のそれぞれが最小2層の強化繊維成形体1を得ることができる。
【0032】
なお、上記実施の形態では、第1の基材5a、第2の基材5bは正方形状であったが、勿論この形状に限定されるものではなく、矩形状である長方形状であってもよい。
また、層数も6層に限定されるものではない。
【0033】
また、第1の基材5aだけでも、第2の折線ロで折曲した重ね部5a2を隣接した側面に連結することで、隣接した側面部3a〜3d間の辺部4a〜4hで、第1の基材5aの端面が露出することのない、辺部4a〜4hでの強度、剛性が大幅に向上した強化繊維成形体1を得ることができる。
なお、この場合、側面部において重ね部5a2では2層であり、側面部の他の部位、底面は1層である。
【0034】
実施の形態2.
図13は、この発明の実施の形態2における強化繊維成形体10の概略を示す全体斜視図である。
上面が開放された正六角柱形状の強化繊維成形体10は、底面部11と、各側面部12a〜2fと、底面部11、各側面部12a〜12f同士を連結する辺部13a〜13lとから構成されている。
図13中で、L及びHは、それぞれ強化繊維成形体10の一辺の長さ及び高さを表す。
強化繊維成形体10は、実施の形態1の強化繊維成形体10と同様に、強化繊維と樹脂とからなる箱型の複合材料であればよく、その複合材料中の強化繊維の種類(カーボン繊維、ガラス繊維)、含有率などは特に限定されるものではない。
【0035】
図14、図15及び図16は、この強化繊維成形体10を構成する、第1の基材14a、第2の基材14b及び補完部材14cのそれぞれの正面図である。
図14に示す、この正六角形状の第1の基材14aは、一辺の長さが、強化繊維成形体10の一辺の長さLに、高さH×tan30°の2倍を加えた長さである。
【0036】
第1の基材14aは、頂点から反時計回りの距離(高さH×tan30°)の切込み始点Aから、辺に対して垂直方向に、強化繊維成形体10の高さHの距離である切込み終点Bまで切断された切込み部15a〜15fが形成されている。
第1の基材14aは、周方向において隣接した各切込み終点B同士を結ぶ第1の折線イ、及び各切込み終点Bから第1の折線イに対して垂直方向外側に延びた第2の折線ロでそれぞれ直角に折曲されて、底面部11、各側面部12a〜12fの各構成要素となる底面、各側面を構成する。
第1の基材14aは、底面及び側面となる本体部14a1と、第2の折線ロで折曲されて隣接した側面に重層した重ね部14a2とから構成されている。
【0037】
図15に示す、第1の基材14aと同形である正六角形状の第2の基材14bは、一辺の長さが、強化繊維成形体10の一辺の長さLに、高さH×tan30°の2倍を加えた長さである。
第2の基材14bは、頂点から時計回りの距離(高さH×tan30°)の切込み始点Aから、辺に対して垂直方向に、強化繊維成形体10の高さHの距離である切込み終点Bまで切断された切込み部16a〜16fが形成されている。
第2の基材14bは、周方向において隣接した各切込み終点B同士を結ぶ第1の折線イ、及び各切込み終点Bから第1の折線イに対して垂直方向外側に延びた第2の折線ロでそれぞれ直角に折曲されて、底面部11、各側面部12a〜12fの各構成要素となる底面、各側面を構成する。
第2の基材14bは、底面及び側面となる本体部14b1と、第2の折線ロで折曲されて隣接した側面に重層した重ね部14b2とから構成されている。
【0038】
図16に示す、補完部材14cは、強化繊維成形体10の底面部11と同形状の本体部14c1と、この本体部14c1から径方向外側に延びた補完部14c2とから構成されている。
補完部14c2は、各切込み終点Bを中心にして左右対称に切り欠いて形成されており、第3の折線ハで直角に折曲されて、第1の基材14aの重ね部14a2と第2の基材14bの重ね部14b2との間に位置する。
【0039】
第1の基材14a及び第2の基材14bは、互いに対面したときに重なる対称形である。また、第1の基材14a,第2の基材14b及び補完部材14cは、それぞれ中心点を中心に180°回転したときに図形が重なる点対称である。
【0040】
上記強化繊維成形体10は、それぞれ2枚の第1の基材14a、第2の基材14b及び補完部材14cで構成され、その底面部11及び側面部12a〜12fはそれぞれ6層である。
【0041】
なお、上記構成の強化繊維成形体10を製造する手順については、実施の形態1の強化繊維成形体1と同じであり、その説明は省略する。
【0042】
以上説明したように、上記構成の強化繊維成形体10は、第1の基材14a、第2の基材14bは、第1の折線イで直角に折曲されて底面部11の構成要素である底面及び側面部12a〜12fの構成要素である側面となる本体部14a1,14b1と、第2の折線ロで折曲されて隣接した側面に重層して連結した重ね部14a2,14a2とから構成されている。
従って、強化繊維成形体10の、隣接した側面部12a〜12f間の辺部13a〜13lでは、第1の基材14a及び第2の基材14bの端面が露出することなく、隣接した側面に重層した重ね部14a2,14a2で占めているので、六角柱形状の強化繊維成形体10は、辺部13a〜13lでの強度、剛性が大幅に向上する。
【0043】
また、補完部材14cは、強化繊維成形体10の底面部11の構成要素である本体部14c1と、この本体部14c1から径方向外側に延びた補完部14c2とから構成され、この補完部14c2は、本体部14c1の各切込み終点Bを中心にして左右対称に切り欠いて形成されており、第3の折線ハで直角に折曲されて、第1の基材14aの重ね部14a2と第2の基材14bの重ね部14b2との間に位置する。
従って、強化繊維成形体10の底面部11及び側面部12a〜12fはそれぞれ同層の6層であり、各面部において等しい物理的強度が確保できる。
【0044】
また、強化繊維成形体10は、それぞれ2枚の第1の基材14a及び第2の基材14b及び補完部材14cで構成され、第1の基材14a、第2の基材14b及び補完部材14cの積層順序と、次に積層される、第1の基材14a、第2の基材14b及び補完部材14cの積層順序とは逆である。
従って、第1の基材14a及び第2の基材14b及び補完部材14cそれぞれの「反り」が相殺され、強化繊維成形体10全体の歪み、反りが抑制される。
【0045】
また、第1の基材14aと第2の基材14bとは、正六角形状であり、互いに対面したときに切込み部15a〜15f,16a〜16fが重なる対称形であり、第1の基材14a、第2の基材14b及び補完部材14cは、点対称である。
従って、第1の基材14a、第2の基材14b及び補完部材14cを積層する際の配置方向について注意することなく積層することができ、積層作業性が向上する。
【0046】
また、第1の基材14aと第2の基材14bは、正六角形状であり、切込み始点Aと切込み終点Bとの間の距離が側面部12a〜12fの高さHに等しいので、高さHの正六角形柱状の強化繊維成形体10を簡単に製造することができる。
【0047】
また、上記構成の強化繊維成形体10の製造方法によれば、第3の補完部材14c、第2の基材14b及び第1の基材14aを順次積層した上に、底面体、側面体を有する成形型8を載置する載置工程と、第1の基材14a、第2の基材14b及び第3の補完部材14cの端部を順次持ち上げ、第1の折線イ及び第2の折線ロで折曲して、第1の基材14a、第2の基材14b及び第3の補完部材14cを成形型の各側面体に面接触させて賦型したプリフォームを形成するとともに、このプリフォームの端部の仮止め部を成形型に仮止めする仮止め工程とを備えているので、隣接した側面に重ね部14a2,14b2を重層したプリフォームの賦型作業が容易であり、賦型作業性が向上する。
【0048】
また、上記構成の強化繊維成形体10の製造方法によれば、プリフォームに真空含浸法により樹脂を含浸させる含浸工程と、前記樹脂を硬化させる硬化工程と、前記プリフォームを前記成形型から脱型し、仮止め部を除去する除去工程とを備え、両面テープで仮止めされた仮止め部は、樹脂で硬化したプリフォームから除去されるので、除去後は、両面テープの粘着剤が強化繊維成形体1に拡散することは当然なく、強化繊維成形体10の粘着剤による強度及び剛性の低下を防止することができる。
【0049】
なお、上記実施の形態では、第1の基材14a、第2の基材14bは正六角形状であったが、勿論この形状に限定されるものではなく、それ以外の5角形、7角形等の多角形であってもよい。
そして、例えば、正n角形の形状の箱型を作製する場合、図14に示したものと同様に、基材の一辺の長さを、正n角形の箱型の一辺の長さLに、箱型の高さH×tan(180°/n)の2倍を加えた長さとし、各頂点から時計回りの距離(H×tan(180°/n))の切込み始点から、各辺に対して垂直方向に、箱型の高さHの切込み部を形成し、この切込み部の隣接する終点を結んだ折線(図14における折線イに相当)に沿って折り曲げることで、正n角形の箱型を作製することができる。
【0050】
また、第1の基材14aだけでも、第2の折線ロで折曲した重ね部14a2を隣接した側面に連結することで、隣接した側面部12a〜12f間の辺部13a〜13lで、第1の基材14aの端面が露出することのない、辺部13a〜13lでの強度、剛性が大幅に向上した強化繊維成形体10を得ることができる。
なお、この場合、側面部において重ね部14a2では2層であり、側面部の他の部位、底面は1層である。
【実施例】
【0051】
実施例1.
以下、実施の形態1における強化繊維成形体1の製造方法について具体的な例で説明する。
先ず形状が図2〜図4に示す、第1の基材5a、第2の基材5b及び補完部材5cと同じであって、各寸法がL=B=500mm、H=150mmとなる炭素繊維クロス材(東レ製、T300炭素繊維平織りクロス材)をそれぞれ2枚ずつ準備した。
次に、それぞれの炭素繊維クロス材を積層し、この積層された炭素繊維クロス材上に幅:500mm、長さ:500mm、高さ:300mmのアルミ製の箱型成形型8を載置した。
次に、それぞれの炭素繊維クロス材を持ち上げるようにしてテンションを加えて箱型成形型の各側面に面接触するように折曲し、それぞれの炭素繊維クロス材を両面テープを用いて箱型成形型の側面上部に仮止めした。
次に、強化繊維成形体の反り、歪みを防止するために、それぞれ残りの炭素繊維クロス材を逆順序で積層し、同様の作業で両面テープを用いて箱型成形型の側面上部に仮止めした。
【0052】
全ての炭素繊維クロス材の仮止めが終了して形成されたプリフォームの外側にピールプライ(AirTech製、BLEEDER LEASE-B、耐熱232℃)、フローメディア(AirTech製、GREEN FROW 75、耐熱161℃)、真空フィルム(AirTech製、WL7400、耐熱204℃)を順次重ね、テフロンチューブ(外径:9.52mm、内径:6.35mm、耐熱260℃)、バルブで樹脂注入口、吸引口を設け、シール材(AirTech製、AT-200Y、耐熱204℃)で密閉した。
【0053】
次に、吸引口を真空ポンプに接続し、樹脂注入口を密栓し、真空引きした。
この後、真空フィルム内に樹脂(昭和高分子製、ビニルエステル樹脂リポキシR806(100重量部)、過酸化物328E(1重量部)、オクチル酸コバルト(0.2重量部)の混合樹脂)を注入、プリフォームに樹脂を含浸させた。
その次に、樹脂を室温で硬化させた。
30min後、樹脂が硬化していることを確認した後、ピールプライ、フローメディア、バギングフィルム、樹脂注入口、吸引口、シール材を取り除いた。
最後に、箱型成形型から樹脂が硬化したプリフォームを脱型し、仮止め部を除去し、強化繊維成形体を得た。
【符号の説明】
【0054】
1,10 強化繊維成形体、2,11 底面部、3a〜3d,12a〜12f 側面部、4a〜4h,13a〜13l 辺部、5a,14a 第1の基材、5b,14b 第2の基材、5c,14c 補完部材、5a1,5b1,5c1,14a1,14b1,14c1 本体部、5a2,5b2,14a2,14b2 重ね部、5c2,14c2 補完部、6a〜6d,7a〜7d,15a〜15f,16a〜16f 切込み部、8 成形型、9 仮止め部、イ 第1の折線、ロ 第2の折線、ハ 第3の折線、A 切込み始点、B 切込み終点。
【技術分野】
【0001】
この発明は、強化繊維クロス材で構成された基材を賦型してプリフォームが形成され、このプリフォームに樹脂を含浸した底面部及び各側面部を有する強化繊維成形体、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics:以下、FRPとも称する)は、軽量・高強度の複合材料であり、人工衛星・航空機などで採用されている。
FRPの製造方法としては、これまでオートクレーブ成形が一般的であったが、近年、大型成形体を低コストで製造することが可能な真空含浸成形法(Vacuum assisted resin transfer molding:以下、 VaRTMとも称する)が注目されている。
VaRTM法は、成形型を用いて賦型された、複数枚の積層されたドライな強化繊維クロス材からなるプリフォームを、真空フィルムでもって覆い、その後真空ポンプを用いて強化繊維間にマトリックス樹脂を含浸させて繊維強化プラスチックを製造する方法である。
このVaRTM法では、タック性のあるプリプレグではなくドライな強化繊維クロス材を成形型に賦型する必要がある。そのため、複雑な形状の成形体を得るためには、特殊なプリフォームが必要である。
【0003】
このものとして、例えば座ぐり構造のFRPを製造する方法が知られている(特許文献1参照)。
この製造方法は、座ぐり形状に沿うように切り目を入れた強化繊維を複数層積層することにより、座ぐり部およびその周囲を賦形することが特徴である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-231848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このものには、平面の強化繊維クロス材に切り込みを入れ、曲面の座ぐり形状を賦型するため、必ず強化繊維クロス材の積層数が不均一な部分ができるという問題点があった。
【0006】
また、本願発明者は、強化繊維クロス材の積層数が底面部、側面部とも等しい箱型の各複合成形体を製造しようとした場合、隣接した側面部間の辺部で強化繊維クロス材が不足してしまい、成形体の強度・剛性が低下してしまうという新たな問題点を発見した。
【0007】
この発明は、上記のような問題点を解決することを課題とするものであって、強度・剛性が向上する等の強化繊維成形体、及びその製造方法およびを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る強化繊維成形体は、強化繊維クロス材で構成された基材を賦型してプリフォームが形成され、このプリフォームに樹脂を含浸した底面部及び各側面部を有する強化繊維成形体であって、
多角形状である前記基材は、各頂点からそれぞれ周方向に離れた切込み始点から内側に切込み終点まで切断されて形成された角数と同数の切込み部と、
隣接した各前記切込み終点同士を結ぶ第1の折線と、
各前記切込み終点から外側方向に延びた第2の折線を有し、
前記基材は、前記第1の折線で折曲されて前記底面部の構成要素である底面及び前記側面部の構成要素である側面となる本体部と、前記第2の折線で折曲されて隣接した側面に重層して連結した重ね部とから構成されている。
【0009】
また、この発明に係る強化繊維成形体の製造方法は、基材上に、底面体、側面体を有する成形型を載置する載置工程と、
前記基材の端部を、持ち上げ、前記第1の折線及び前記第2の折線で折曲して、前記基材を前記成形型の前記側面体に面接触させて賦型した前記プリフォームを形成するとともに、プリフォームの端部の仮止め部を前記成形型に仮止めする仮止め工程と、
前記プリフォームに真空含浸法により樹脂を含浸させる含浸工程と、
前記樹脂を硬化させる硬化工程と、
前記プリフォームを前記成形型から脱型し、前記仮止め部を除去する除去工程とを備えている。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る強化繊維成形体によれば、強化繊維成形体の、隣接した側面部の辺部では、基材の端面が露出することなく、隣接した側面に重層した重ね部で占めているので、辺部での強度、剛性が大幅に向上するという効果がある。
また、この発明に係る強化繊維成形体の製造方法によれば、基材の第1の折線及び第2の折線で折曲して、基材を成形型の側面体に面接触させて賦型したプリフォームを形成するので、隣接した側面に基材の重ね部を簡単に重層することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1の強化繊維成形体の概略を示す全体斜視図である。
【図2】図1の強化繊維成形体を構成する第1の基材を示す正面図である。
【図3】図1の強化繊維成形体を構成する第2の基材を示す正面図である。
【図4】図1の強化繊維成形体を構成する補完部材を示す正面図である。
【図5】図1の強化繊維成形体の製造工程を示す斜視図である。
【図6】図5の製造工程の次工程を示す斜視図である。
【図7】図6の製造工程の次工程を示す斜視図である。
【図8】図7の製造工程の次工程を示す斜視図である。
【図9】図8の製造工程の次工程を示す斜視図である。
【図10】図9の製造工程の次工程を示す斜視図である。
【図11】図1の強化繊維成形体の最終製造工程を示す斜視図である。
【図12】図11の最終製造工程後の強化繊維成形体の概略を示す全体斜視図である。
【図13】この発明の実施の形態2の強化繊維成形体の概略を示す全体斜視図である。
【図14】図13の強化繊維成形体を構成する第1の基材を示す正面図である。
【図15】図13の強化繊維成形体を構成する第2の基材を示す正面図である。
【図16】図13の強化繊維成形体を構成する補完部材を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の各実施の形態の強化繊維成形体について図に基づいて説明するが、各図において、同一または相当部材、部位については、同一符号を付して説明する。
【0013】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1における強化繊維成形体1の概略を示す全体斜視図である。
この升形状の強化繊維成形体1は、底面部2と、各側面部3a〜3dと、底面部2、各側面部3a〜3d同士を連結する辺部4a〜4hとから構成されている。
図1中で、L、B及びHはそれぞれ、2軸配向の強化繊維成形体1の幅、奥行き及び高さを表す。
強化繊維成形体1は、強化繊維と樹脂とからなる箱型の複合材料で構成され、その複合材料中の強化繊維の種類(カーボン繊維、ガラス繊維)、含有率などは特に限定されるものではない。
【0014】
図2、図3及び図4は、この強化繊維成形体1を構成する、第1の基材5a、第2の基材5b及び補完部材5cのそれぞれの正面図である。
図2に示す、この正方形状の第1の基材5aは、対向した一方の一対の辺の長さが、強化繊維成形体1の幅Lに高さHの2倍を足し合わせた長さであり、対向した他方の一対の辺の長さが、強化繊維成形体1の奥行Bに高さHの2倍を足し合わせた長さである。
第1の基材5aは、頂点から周方向に高さHの距離離れた切込み始点Aから、辺に対して垂直方向に高さHの距離である切込み終点Bまで切断されて切込み部6a〜6dが形成されている。各切込み部6a〜6dは、それぞれの頂点から反時計回りの高さHの距離の切込み始点Aを基点として形成されている。
第1の基材5aは、周方向において隣接した各切込み終点B同士を結ぶ第1の折線イ、及び各切込み終点Bから各切込み部6a〜6dに対して垂直方向外側に延びた第2の折線ロでそれぞれ直角に折曲されて、底面部2、各側面部3a〜3dの各構成要素となる底面、各側面を構成する。
第1の基材5aは、底面及び側面となる本体部5a1と、第2の折線ロで折曲されて隣接した側面に重層した重ね部5a2とから構成されている。
【0015】
図3に示す、正方形状の第2の基材5bは、第2に示した第1の基材5aと同様に、対向した一方の一対の辺の長さが、強化繊維成形体1の幅Lに高さHの2倍を足し合わせた長さであり、対向した他方の一対の辺の長さが、強化繊維成形体1の奥行Bに高さHの2倍を足し合わせた長さである。
第2の基材5bは、頂点から周方向に高さHの距離離れた切込み始点Aから、辺に対して垂直方向に高さHの距離である切込み終点Bまで切断されて切込み部7a〜7dが形成されている。各切込み部7a〜7dは、それぞれの頂点から時計回りの高さHの距離の切込み始点Aを基点として形成されている。
第2の基材5bは、周方向において隣接した各切込み終点B同士を結ぶ第1の折線イ、及び各切込み終点Bから各切込み部7a〜7dに対して垂直方向外側に延びた第2の折線ロでそれぞれ直角に折曲されて、底面部2、各側面部3a〜3dの各構成要素となる底面、各側面を構成する。
第2の基材5bは、底面、側面となる本体部5b1と、第2の折線ロで折曲されて隣接した側面に重層した重ね部5b2とから構成されている。
第1の基材5a及び第2の基材5bは、互いに対面したときに各切込み部6a〜6d、7a〜7dがそれぞれ重なる対称形である。
【0016】
図4に示す、補完部材5cは、強化繊維成形体1の底面部2の構成要素である底面となる本体部5c1と、この本体部5c1の各辺の中央部から垂直に外側方向に延びた補完部5c2とから構成されている。
補完部5c2は、対向した一方の一対の辺の長さが、強化繊維成形体1の幅Lに高さHの2倍を引いた長さであり、対向した他方の一対の辺の長さが、強化繊維成形体1の奥行Bに高さHの2倍を引いた長さである。
補完部5c2は、第3の折線ハで直角に折曲されて、各側面部3a〜3dにおいて、第1の基材5aの重ね部5a2と第2の基材5bの重ね部5b2との間に位置する。
第1の基材5a,第2の基材5b及び補完部材5cは、点対称である。
【0017】
上記強化繊維成形体1は、それぞれ2枚の第1の基材5a、第2の基材5b及び補完部材5cで構成され、その底面部2及び側面部3a〜3dはそれぞれ6層である。
【0018】
次に、上記構成の強化繊維成形体1を製造する手順について図に基づいて説明する。
先ず、補完部材5c、第2の基材5b及び第1の基材5aの順序で積層し、この積層体上に箱型成形型8を載置する(図5参照)。
次に、第1の基材5aを持ち上げるようにしてテンションを加えて箱型成形型8の各側面体に面接触するように折曲し(図6及び図7参照)、両面テープを用いて第1の基材5aの上縁部である仮止め部9で箱型成形型8の側面体上部に仮止めする。
この折曲された第1の基材5aは、第1の基材5aの重ね部5a2が本体部5a1の隣接した側面と重層して連結されている。この重ね部5a2は、隣接した側面と反時計回りで上層、下層とが交互に位置が逆転するようにして連結されている。
【0019】
その後、引き続き第2の基材5bについても、第1の基材5aの折曲作業と同様の作業を繰り返し、また両面テープを用いて仮止め部9で第1の基材5aの側面上縁部に仮止めする(図8〜図10参照)。
この折曲された第2の基材5bについても、第1の基材5aと同様に、第2の基材5bの重ね部5b2が本体部5b1の隣接した側面と重層して連結されている。この重ね部5b2は、隣接した側面と時計回りで上層、下層とが交互に位置が逆転するようにして連結されている。
【0020】
この後、引き続き補完部材5cについて、補完部5c2を持ち上げるようにしてテンションを加えて、第2の基材5bの側面中央部に面接触するように折曲し、また両面テープを用いて仮止め部9で第2の基材5bの側面上縁部に仮止めする(図11参照)。
【0021】
次に、上述した内容と逆の順序で、つまり補完部材5c、第2の基材5b及び第1の基材5aの順序で同じ作業を行う。
そして、全ての第1の基材5a、第2の基材5b及び補完部材5cの仮止め部9での仮止めが終了する。そして、第1の基材5a、第2の基材5b及び補完部材5cが積層されたこのプリフォームを真空フィルムで覆う。
以上で、プリフォームの賦型工程が完了する。
【0022】
次に、真空ポンプを用いてプリフォーム内へ樹脂を含浸、硬化させる。
最後に、箱型成形型8から成形体を脱型し、また仮止め部9を除去し、複合材成形体である強化繊維成形体1を得る(図12参照)。
なお、図12は強化繊維成形体1の概略を示す全体斜視図であり、図1と同様に第1の基材5a、第2の基材5b及び補完部材5cは省略されている。
【0023】
以上説明したように、上記構成の強化繊維成形体1は、第1の基材5a、第2の基材5bは、第1の折線イで直角に折曲されて底面部2の構成要素である底面及び側面部3a〜3dの構成要素である側面となる本体部5a1,5b1と、第2の折線ロで折曲されて隣接した側面に重層して連結した重ね部5a2,5a2とから構成されている。
従って、強化繊維成形体1の、隣接した側面部3a〜3d間の辺部4a〜4hでは、第1の基材5a及び第2の基材5bの端面が露出することなく、隣接した側面に重層した重ね部5a2,5a2で占めているので、升形状の強化繊維成形体1は、辺部4a〜4hでの強度、剛性が大幅に向上する。
【0024】
また、補完部材5cは、強化繊維成形体1の底面部2の構成要素である本体部5c1と、この本体部5c1の各辺の中央部から垂直に外側方向に延びた補完部5c2とから構成され、この補完部5c2は、第3の折線ハで直角に折曲されて、第1の基材5aの重ね部5a2と第2の基材5bの重ね部5b2との間に配置する。
従って、強化繊維成形体1の底面部2及び側面部3a〜3dはそれぞれ同層の6層となり、各面部2,3a〜3dにおいて等しい物理的強度が確保できる。
【0025】
また、強化繊維成形体1は、それぞれ2枚の第1の基材5a及び第2の基材5b及び補完部材5cで構成され、第1の基材5a、第2の基材5b及び補完部材5cの積層順序と、次に積層される、第1の基材5a、第2の基材5b及び補完部材5cの積層順序とは逆である。
従って、第1の基材5a及び第2の基材5b及び補完部材5cそれぞれの「反り」が相殺され、強化繊維成形体1全体の歪み、反りが抑制される。
【0026】
第1の基材5a、第2の基材5b及び補完部材5cは、それぞれ2軸配向の強化繊維クロス材で構成され、切込み部6a〜6d,7a〜7dは、配向に沿って形成されているので、切断が容易となり、切断作業性が向上する。
【0027】
第1の基材5aと第2の基材5bとは、正方形状であり、互いに対面したときに切込み部6a〜6d,7a〜7dが重なる対称形であり、第1の基材5a、第2の基材5b及び補完部材5cは、点対称である。
従って、第1の基材5a、第2の基材5b及び補完部材5cを積層する際の配置方向について注意することなく積層することができ、積層作業性が向上する。
【0028】
また、第1の基材5aと第2の基材5bは、正方形状であり、頂点と切込み始点Aとの距離、切込み始点Aと切込み終点Bとの距離がそれぞれ側面部の高さHに等しいので、高さHの正四角柱状の強化繊維成形体1を簡単に製造することができる。
【0029】
また、上記構成の強化繊維成形体1の製造方法によれば、第3の補完部材5c、第2の基材5b及び第1の基材5aを順次積層した上に、底面体、側面体を有する成形型8を載置する載置工程と、第1の基材5a、第2の基材5b及び第3の補完部材5cの端部を順次持ち上げ、第1の折線イ及び第2の折線ロで折曲して、第1の基材5a、第2の基材5b及び第3の補完部材5cを成形型8の各側面体に面接触させて賦型したプリフォームの端部の仮止め部を成形型に仮止めする仮止め工程とを備えているので、隣接した側面に重ね部5a2,5b2が重層したプリフォームの賦型作業が容易であり、賦型作業性が向上する。
【0030】
また、上記構成の強化繊維成形体1の製造方法によれば、プリフォームに真空含浸法により樹脂を含浸させる含浸工程と、前記樹脂を硬化させる硬化工程と、前記プリフォームを前記成形型8から脱型し、仮止め部9を除去する除去工程とを備え、両面テープで仮止めされた仮止め部9は、樹脂で硬化したプリフォームから除去されるので、除去後は、両面テープの粘着剤が強化繊維成形体1に拡散することは当然なく、強化繊維成形体1の粘着剤による強度及び剛性の低下を防止することができる。
【0031】
なお、上記の実施の形態では第3の補完部材5cを用い、第1の基材5aの重ね部5a2と第2の基材5bの重ね部5b2との端面間の隙間に補完部5c2を配置し、強化繊維成形体1の底面部2及び側面部3a〜3dのそれぞれを同層数としたが、この第3の補完部材5cを用いなくても、強化繊維成形体1の底面部及び側面部のそれぞれを同層数にすることができる。
即ち、第1の基材5aの反時計方向に折曲された重ね部5a2の周方向の長さと、第2の基材5bの時計方向に折曲された重ね部5b2の周方向の長さとが等しく、それぞれ側面の中心線まで延ばすことで、底面部及び側面部のそれぞれの層数が同数の強化繊維成形体1を得ることができる。
この場合、最小層数が2で、底面部及び側面部のそれぞれが最小2層の強化繊維成形体1を得ることができる。
【0032】
なお、上記実施の形態では、第1の基材5a、第2の基材5bは正方形状であったが、勿論この形状に限定されるものではなく、矩形状である長方形状であってもよい。
また、層数も6層に限定されるものではない。
【0033】
また、第1の基材5aだけでも、第2の折線ロで折曲した重ね部5a2を隣接した側面に連結することで、隣接した側面部3a〜3d間の辺部4a〜4hで、第1の基材5aの端面が露出することのない、辺部4a〜4hでの強度、剛性が大幅に向上した強化繊維成形体1を得ることができる。
なお、この場合、側面部において重ね部5a2では2層であり、側面部の他の部位、底面は1層である。
【0034】
実施の形態2.
図13は、この発明の実施の形態2における強化繊維成形体10の概略を示す全体斜視図である。
上面が開放された正六角柱形状の強化繊維成形体10は、底面部11と、各側面部12a〜2fと、底面部11、各側面部12a〜12f同士を連結する辺部13a〜13lとから構成されている。
図13中で、L及びHは、それぞれ強化繊維成形体10の一辺の長さ及び高さを表す。
強化繊維成形体10は、実施の形態1の強化繊維成形体10と同様に、強化繊維と樹脂とからなる箱型の複合材料であればよく、その複合材料中の強化繊維の種類(カーボン繊維、ガラス繊維)、含有率などは特に限定されるものではない。
【0035】
図14、図15及び図16は、この強化繊維成形体10を構成する、第1の基材14a、第2の基材14b及び補完部材14cのそれぞれの正面図である。
図14に示す、この正六角形状の第1の基材14aは、一辺の長さが、強化繊維成形体10の一辺の長さLに、高さH×tan30°の2倍を加えた長さである。
【0036】
第1の基材14aは、頂点から反時計回りの距離(高さH×tan30°)の切込み始点Aから、辺に対して垂直方向に、強化繊維成形体10の高さHの距離である切込み終点Bまで切断された切込み部15a〜15fが形成されている。
第1の基材14aは、周方向において隣接した各切込み終点B同士を結ぶ第1の折線イ、及び各切込み終点Bから第1の折線イに対して垂直方向外側に延びた第2の折線ロでそれぞれ直角に折曲されて、底面部11、各側面部12a〜12fの各構成要素となる底面、各側面を構成する。
第1の基材14aは、底面及び側面となる本体部14a1と、第2の折線ロで折曲されて隣接した側面に重層した重ね部14a2とから構成されている。
【0037】
図15に示す、第1の基材14aと同形である正六角形状の第2の基材14bは、一辺の長さが、強化繊維成形体10の一辺の長さLに、高さH×tan30°の2倍を加えた長さである。
第2の基材14bは、頂点から時計回りの距離(高さH×tan30°)の切込み始点Aから、辺に対して垂直方向に、強化繊維成形体10の高さHの距離である切込み終点Bまで切断された切込み部16a〜16fが形成されている。
第2の基材14bは、周方向において隣接した各切込み終点B同士を結ぶ第1の折線イ、及び各切込み終点Bから第1の折線イに対して垂直方向外側に延びた第2の折線ロでそれぞれ直角に折曲されて、底面部11、各側面部12a〜12fの各構成要素となる底面、各側面を構成する。
第2の基材14bは、底面及び側面となる本体部14b1と、第2の折線ロで折曲されて隣接した側面に重層した重ね部14b2とから構成されている。
【0038】
図16に示す、補完部材14cは、強化繊維成形体10の底面部11と同形状の本体部14c1と、この本体部14c1から径方向外側に延びた補完部14c2とから構成されている。
補完部14c2は、各切込み終点Bを中心にして左右対称に切り欠いて形成されており、第3の折線ハで直角に折曲されて、第1の基材14aの重ね部14a2と第2の基材14bの重ね部14b2との間に位置する。
【0039】
第1の基材14a及び第2の基材14bは、互いに対面したときに重なる対称形である。また、第1の基材14a,第2の基材14b及び補完部材14cは、それぞれ中心点を中心に180°回転したときに図形が重なる点対称である。
【0040】
上記強化繊維成形体10は、それぞれ2枚の第1の基材14a、第2の基材14b及び補完部材14cで構成され、その底面部11及び側面部12a〜12fはそれぞれ6層である。
【0041】
なお、上記構成の強化繊維成形体10を製造する手順については、実施の形態1の強化繊維成形体1と同じであり、その説明は省略する。
【0042】
以上説明したように、上記構成の強化繊維成形体10は、第1の基材14a、第2の基材14bは、第1の折線イで直角に折曲されて底面部11の構成要素である底面及び側面部12a〜12fの構成要素である側面となる本体部14a1,14b1と、第2の折線ロで折曲されて隣接した側面に重層して連結した重ね部14a2,14a2とから構成されている。
従って、強化繊維成形体10の、隣接した側面部12a〜12f間の辺部13a〜13lでは、第1の基材14a及び第2の基材14bの端面が露出することなく、隣接した側面に重層した重ね部14a2,14a2で占めているので、六角柱形状の強化繊維成形体10は、辺部13a〜13lでの強度、剛性が大幅に向上する。
【0043】
また、補完部材14cは、強化繊維成形体10の底面部11の構成要素である本体部14c1と、この本体部14c1から径方向外側に延びた補完部14c2とから構成され、この補完部14c2は、本体部14c1の各切込み終点Bを中心にして左右対称に切り欠いて形成されており、第3の折線ハで直角に折曲されて、第1の基材14aの重ね部14a2と第2の基材14bの重ね部14b2との間に位置する。
従って、強化繊維成形体10の底面部11及び側面部12a〜12fはそれぞれ同層の6層であり、各面部において等しい物理的強度が確保できる。
【0044】
また、強化繊維成形体10は、それぞれ2枚の第1の基材14a及び第2の基材14b及び補完部材14cで構成され、第1の基材14a、第2の基材14b及び補完部材14cの積層順序と、次に積層される、第1の基材14a、第2の基材14b及び補完部材14cの積層順序とは逆である。
従って、第1の基材14a及び第2の基材14b及び補完部材14cそれぞれの「反り」が相殺され、強化繊維成形体10全体の歪み、反りが抑制される。
【0045】
また、第1の基材14aと第2の基材14bとは、正六角形状であり、互いに対面したときに切込み部15a〜15f,16a〜16fが重なる対称形であり、第1の基材14a、第2の基材14b及び補完部材14cは、点対称である。
従って、第1の基材14a、第2の基材14b及び補完部材14cを積層する際の配置方向について注意することなく積層することができ、積層作業性が向上する。
【0046】
また、第1の基材14aと第2の基材14bは、正六角形状であり、切込み始点Aと切込み終点Bとの間の距離が側面部12a〜12fの高さHに等しいので、高さHの正六角形柱状の強化繊維成形体10を簡単に製造することができる。
【0047】
また、上記構成の強化繊維成形体10の製造方法によれば、第3の補完部材14c、第2の基材14b及び第1の基材14aを順次積層した上に、底面体、側面体を有する成形型8を載置する載置工程と、第1の基材14a、第2の基材14b及び第3の補完部材14cの端部を順次持ち上げ、第1の折線イ及び第2の折線ロで折曲して、第1の基材14a、第2の基材14b及び第3の補完部材14cを成形型の各側面体に面接触させて賦型したプリフォームを形成するとともに、このプリフォームの端部の仮止め部を成形型に仮止めする仮止め工程とを備えているので、隣接した側面に重ね部14a2,14b2を重層したプリフォームの賦型作業が容易であり、賦型作業性が向上する。
【0048】
また、上記構成の強化繊維成形体10の製造方法によれば、プリフォームに真空含浸法により樹脂を含浸させる含浸工程と、前記樹脂を硬化させる硬化工程と、前記プリフォームを前記成形型から脱型し、仮止め部を除去する除去工程とを備え、両面テープで仮止めされた仮止め部は、樹脂で硬化したプリフォームから除去されるので、除去後は、両面テープの粘着剤が強化繊維成形体1に拡散することは当然なく、強化繊維成形体10の粘着剤による強度及び剛性の低下を防止することができる。
【0049】
なお、上記実施の形態では、第1の基材14a、第2の基材14bは正六角形状であったが、勿論この形状に限定されるものではなく、それ以外の5角形、7角形等の多角形であってもよい。
そして、例えば、正n角形の形状の箱型を作製する場合、図14に示したものと同様に、基材の一辺の長さを、正n角形の箱型の一辺の長さLに、箱型の高さH×tan(180°/n)の2倍を加えた長さとし、各頂点から時計回りの距離(H×tan(180°/n))の切込み始点から、各辺に対して垂直方向に、箱型の高さHの切込み部を形成し、この切込み部の隣接する終点を結んだ折線(図14における折線イに相当)に沿って折り曲げることで、正n角形の箱型を作製することができる。
【0050】
また、第1の基材14aだけでも、第2の折線ロで折曲した重ね部14a2を隣接した側面に連結することで、隣接した側面部12a〜12f間の辺部13a〜13lで、第1の基材14aの端面が露出することのない、辺部13a〜13lでの強度、剛性が大幅に向上した強化繊維成形体10を得ることができる。
なお、この場合、側面部において重ね部14a2では2層であり、側面部の他の部位、底面は1層である。
【実施例】
【0051】
実施例1.
以下、実施の形態1における強化繊維成形体1の製造方法について具体的な例で説明する。
先ず形状が図2〜図4に示す、第1の基材5a、第2の基材5b及び補完部材5cと同じであって、各寸法がL=B=500mm、H=150mmとなる炭素繊維クロス材(東レ製、T300炭素繊維平織りクロス材)をそれぞれ2枚ずつ準備した。
次に、それぞれの炭素繊維クロス材を積層し、この積層された炭素繊維クロス材上に幅:500mm、長さ:500mm、高さ:300mmのアルミ製の箱型成形型8を載置した。
次に、それぞれの炭素繊維クロス材を持ち上げるようにしてテンションを加えて箱型成形型の各側面に面接触するように折曲し、それぞれの炭素繊維クロス材を両面テープを用いて箱型成形型の側面上部に仮止めした。
次に、強化繊維成形体の反り、歪みを防止するために、それぞれ残りの炭素繊維クロス材を逆順序で積層し、同様の作業で両面テープを用いて箱型成形型の側面上部に仮止めした。
【0052】
全ての炭素繊維クロス材の仮止めが終了して形成されたプリフォームの外側にピールプライ(AirTech製、BLEEDER LEASE-B、耐熱232℃)、フローメディア(AirTech製、GREEN FROW 75、耐熱161℃)、真空フィルム(AirTech製、WL7400、耐熱204℃)を順次重ね、テフロンチューブ(外径:9.52mm、内径:6.35mm、耐熱260℃)、バルブで樹脂注入口、吸引口を設け、シール材(AirTech製、AT-200Y、耐熱204℃)で密閉した。
【0053】
次に、吸引口を真空ポンプに接続し、樹脂注入口を密栓し、真空引きした。
この後、真空フィルム内に樹脂(昭和高分子製、ビニルエステル樹脂リポキシR806(100重量部)、過酸化物328E(1重量部)、オクチル酸コバルト(0.2重量部)の混合樹脂)を注入、プリフォームに樹脂を含浸させた。
その次に、樹脂を室温で硬化させた。
30min後、樹脂が硬化していることを確認した後、ピールプライ、フローメディア、バギングフィルム、樹脂注入口、吸引口、シール材を取り除いた。
最後に、箱型成形型から樹脂が硬化したプリフォームを脱型し、仮止め部を除去し、強化繊維成形体を得た。
【符号の説明】
【0054】
1,10 強化繊維成形体、2,11 底面部、3a〜3d,12a〜12f 側面部、4a〜4h,13a〜13l 辺部、5a,14a 第1の基材、5b,14b 第2の基材、5c,14c 補完部材、5a1,5b1,5c1,14a1,14b1,14c1 本体部、5a2,5b2,14a2,14b2 重ね部、5c2,14c2 補完部、6a〜6d,7a〜7d,15a〜15f,16a〜16f 切込み部、8 成形型、9 仮止め部、イ 第1の折線、ロ 第2の折線、ハ 第3の折線、A 切込み始点、B 切込み終点。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維クロス材で構成された基材を賦型してプリフォームが形成され、このプリフォームに樹脂を含浸した底面部及び各側面部を有する強化繊維成形体であって、
多角形状である前記基材は、各頂点からそれぞれ周方向に離れた切込み始点から内側に切込み終点まで切断されて形成された角数と同数の切込み部と、
隣接した各前記切込み終点同士を結ぶ第1の折線と、
各前記切込み終点から外側方向に延びた第2の折線を有し、
前記基材は、前記第1の折線で折曲されて前記底面部の構成要素である底面及び前記側面部の構成要素である側面となる本体部と、前記第2の折線で折曲されて隣接した側面に重層して連結した重ね部とから構成されていることを特徴とする強化繊維成形体。
【請求項2】
前記プリフォームは、2種類の前記基材を重層して構成され、
一方の前記基材と他方の前記基材とは、互いに対面したときに前記切込み部が重なる対称形であることを特徴とする請求項1に記載の強化繊維成形体。
【請求項3】
前記重ね部は、前記側面部の中心線まで延びていることを特徴とする請求項2に記載の強化繊維成形体。
【請求項4】
前記プリフォームは、2種類の前記基材と、強化繊維クロス材で構成された補完部材とを重層して構成され、
一方の前記基材である第1の基材と他方の前記基材である第2の基材とは、互いに対面したときに前記切込み部が重なる対称形であり、
前記補完部材は、前記底面部と同形状の本体部と、この本体部の第3の折線から外側方向に突出し、第3の折線で折曲されて各前記側面部において前記重ね部間に位置する補完部とから構成され、
前記第1の基材、第2の基材及び前記補完部材は、点対称であることを特徴とする請求項1に記載の強化繊維成形体。
【請求項5】
前記プリフォームは、偶数枚の、前記第1の基材及び前記第2の基材で構成され、第1の基材及び前記第2の基材の積層順序と、次に積層される、第1の基材及び前記第2の基材の積層順序とは逆であることを特徴とする請求項2または3に記載の強化繊維成形体。
【請求項6】
前記プリフォームは、偶数枚の、前記第1の基材及び前記第2の基材及び前記補完部材で構成され、第1の基材、前記第2の基材及び前記補完部材の積層順序と、次に積層される、第1の基材、前記第2の基材及び前記補完部材の積層順序とは逆であることを特徴とする請求項4に記載の強化繊維成形体。
【請求項7】
前記基材は、矩形状であって2軸配向の強化繊維クロス材で構成され、前記切込み部は配向に沿って形成されていることを特徴とするあることを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載の強化繊維成形体。
【請求項8】
前記基材は、前記頂点と前記切込み始点との距離、前記切込み始点と前記切込み終点との距離がそれぞれ前記側面部の高さHに等しいことを特徴とする請求項7に記載の強化繊維成形体。
【請求項9】
前記基材は、正n角形形状であって、前記頂点と前記切込み始点との距離が前記側面部の高さH×tan(180°/n)であり、前記切込み始点と前記切込み終点との距離が前記側面部の高さHであることを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載の強化繊維成形体。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れか1項に記載の強化繊維成形体の製造方法であって、
前記基材上に、底面体、側面体を有する成形型を載置する載置工程と、
前記基材の端部を、持ち上げ、前記第1の折線及び前記第2の折線で折曲して、前記基材を前記成形型の前記側面体に面接触させて賦型した前記プリフォームを形成するとともに、プリフォームの端部の仮止め部を前記成形型に仮止めする仮止め工程と、
前記プリフォームに真空含浸法により樹脂を含浸させる含浸工程と、
前記樹脂を硬化させる硬化工程と、
前記プリフォームを前記成形型から脱型し、前記仮止め部を除去する除去工程とを備えたことを特徴とする強化繊維成形体の製造方法。
【請求項1】
強化繊維クロス材で構成された基材を賦型してプリフォームが形成され、このプリフォームに樹脂を含浸した底面部及び各側面部を有する強化繊維成形体であって、
多角形状である前記基材は、各頂点からそれぞれ周方向に離れた切込み始点から内側に切込み終点まで切断されて形成された角数と同数の切込み部と、
隣接した各前記切込み終点同士を結ぶ第1の折線と、
各前記切込み終点から外側方向に延びた第2の折線を有し、
前記基材は、前記第1の折線で折曲されて前記底面部の構成要素である底面及び前記側面部の構成要素である側面となる本体部と、前記第2の折線で折曲されて隣接した側面に重層して連結した重ね部とから構成されていることを特徴とする強化繊維成形体。
【請求項2】
前記プリフォームは、2種類の前記基材を重層して構成され、
一方の前記基材と他方の前記基材とは、互いに対面したときに前記切込み部が重なる対称形であることを特徴とする請求項1に記載の強化繊維成形体。
【請求項3】
前記重ね部は、前記側面部の中心線まで延びていることを特徴とする請求項2に記載の強化繊維成形体。
【請求項4】
前記プリフォームは、2種類の前記基材と、強化繊維クロス材で構成された補完部材とを重層して構成され、
一方の前記基材である第1の基材と他方の前記基材である第2の基材とは、互いに対面したときに前記切込み部が重なる対称形であり、
前記補完部材は、前記底面部と同形状の本体部と、この本体部の第3の折線から外側方向に突出し、第3の折線で折曲されて各前記側面部において前記重ね部間に位置する補完部とから構成され、
前記第1の基材、第2の基材及び前記補完部材は、点対称であることを特徴とする請求項1に記載の強化繊維成形体。
【請求項5】
前記プリフォームは、偶数枚の、前記第1の基材及び前記第2の基材で構成され、第1の基材及び前記第2の基材の積層順序と、次に積層される、第1の基材及び前記第2の基材の積層順序とは逆であることを特徴とする請求項2または3に記載の強化繊維成形体。
【請求項6】
前記プリフォームは、偶数枚の、前記第1の基材及び前記第2の基材及び前記補完部材で構成され、第1の基材、前記第2の基材及び前記補完部材の積層順序と、次に積層される、第1の基材、前記第2の基材及び前記補完部材の積層順序とは逆であることを特徴とする請求項4に記載の強化繊維成形体。
【請求項7】
前記基材は、矩形状であって2軸配向の強化繊維クロス材で構成され、前記切込み部は配向に沿って形成されていることを特徴とするあることを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載の強化繊維成形体。
【請求項8】
前記基材は、前記頂点と前記切込み始点との距離、前記切込み始点と前記切込み終点との距離がそれぞれ前記側面部の高さHに等しいことを特徴とする請求項7に記載の強化繊維成形体。
【請求項9】
前記基材は、正n角形形状であって、前記頂点と前記切込み始点との距離が前記側面部の高さH×tan(180°/n)であり、前記切込み始点と前記切込み終点との距離が前記側面部の高さHであることを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載の強化繊維成形体。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れか1項に記載の強化繊維成形体の製造方法であって、
前記基材上に、底面体、側面体を有する成形型を載置する載置工程と、
前記基材の端部を、持ち上げ、前記第1の折線及び前記第2の折線で折曲して、前記基材を前記成形型の前記側面体に面接触させて賦型した前記プリフォームを形成するとともに、プリフォームの端部の仮止め部を前記成形型に仮止めする仮止め工程と、
前記プリフォームに真空含浸法により樹脂を含浸させる含浸工程と、
前記樹脂を硬化させる硬化工程と、
前記プリフォームを前記成形型から脱型し、前記仮止め部を除去する除去工程とを備えたことを特徴とする強化繊維成形体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−167936(P2011−167936A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33930(P2010−33930)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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