説明

弾性ローラ、その製造方法、電子写真プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】弾性ローラの軸方向ならびに厚み方向に、硬さ・変形回復力のばらつきのない、ローコストな弾性ローラ、この弾性ローラの製造方法、電子写真プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】軸芯体の周りに形成された無機フィラーを含むシリコーンゴム組成物からなる弾性層が下記条件A〜条件Cを満足すること。
条件A:無機フィラーの配合量が、シリコーンゴム100質量部に対し、5質量部以上35質量部以下である。
条件B:無機フィラーの組成が、ケイ素原子を有する粒子10質量%以上50質量%以下と平均一次粒径10nm以上40nm以下のカーボンブラック90質量%以下50質量%以上である。
条件C:ケイ素原子を有する粒子中、その5質量%以上25質量%以下が平均一次粒径7nm以上40nm以下のシリカである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンター、複写機等の画像形成装置に用いられる弾性ローラ及びその製造方法に関し、さらに、該弾性ローラを現像ローラとする電子写真プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真方式の画像形成装置について、以下に説明する。
【0003】
装置の本体内部には画像形成部が設置されており、画像がクリーニング、帯電、潜像、現像、転写及び定着のプロセスを経て、画像が出力される。
【0004】
画像形成部は像担持体である感光ドラムを備えており、この感光ドラムの周辺にクリーニング部、帯電部、潜像形成部、現像部及び転写部が設けられている。この画像形成部で形成された感光ドラム上の現像剤像は転写部で記録材に転写され、定着部に搬送されて、該定着部で加熱加圧され、記録材に定着され、記録画像として排出される。
【0005】
電子写真方式を用いたプリンターにおいて、感光ドラムは帯電ローラにより均一に帯電され、画像情報が載せられたレーザー等により該表面に静電潜像が形成される。この静電潜像に対し、現像容器内で現像剤塗布ローラ及び現像剤規制部材により適正電荷で均一に現像ローラ上に担持された現像剤が、感光ドラムと現像ローラとの接触部で転写(現像)が行われる。その後、感光ドラム上の現像剤像は、転写部において転写ローラの作用により記録紙に転写される。この現像剤像を担持した記録紙は定着部に搬送され、熱と圧力(加圧ローラと定着ローラ)により定着される。一方、感光ドラム上に残留した現像剤はクリーニングブレードによって除かれ、一連のプロセスが完了する。
【0006】
この装置において、現像ローラは、感光ドラムおよび現像剤規制部材に圧接した状態にあり、さらに、使用が開始されると現像ローラ・感光ドラム間および現像ローラ・現像剤規制部材間に現像剤が介在している。感光ドラムに転写されずに現像ローラ上に残った現像剤は、現像ローラに当接している現像剤塗布ローラによって剥ぎ取られ、現像容器内に戻る。この現像ローラから戻った現像剤は、容器内で攪拌され、再び現像剤塗布ローラによって現像ローラ上に搬送される。これらの工程を繰り返すうちに、現像剤は大きなストレスを受けている。そこで、現像剤へのストレスを軽減するために、現像ローラは低硬度の弾性体からなる材料で形成されている。
【0007】
また、弾性ローラが現像ローラや帯電ローラである場合、常に他部材と接触した状態で回転しているので、接触状態を安定に保つ必要がある。つまり、現像ローラや帯電ローラは、他部材と所定の接触幅をもって圧接するので、変形しやすく、同時に変形回復力に優れているものが望まれる。接触状態を安定に保つことができないと、現像剤の供給量がばらついたり、帯電状態がムラになったりして、画像に悪い影響を及ぼすことになる。
【0008】
このような接触現像方式に用いられる現像ローラは、軸芯体外周上に弾性層を設けた構成の弾性ローラとなっている。さらに、必要に応じて、弾性層の上に、表面特性を使用目的に合わせるため、各種の樹脂溶液を塗工して、表面層を設けた弾性ローラもある。
【0009】
近年、電子写真のカラー化及び高画質化のニーズが高まっており、電子写真装置に用いられる弾性ローラは、今以上の接触安定性が要求されている。例えば、接触式現像方式において、現像ローラは感光ドラム表面に対し常時接触している。このため、接触幅が正確でないと、感光ドラムと現像ローラとの間のニップ幅やニップ力に変動が生じる。これにより、濃度ムラ等の画像欠陥が発生する。また、変形回復力が小さいと、圧接痕が発生し、これによっても画像欠陥が発生する。
【0010】
すなわち、電子写真方式の画像形成装置に用いられる弾性ローラは、適度に弾性層が低硬度であり、変形回復力が大きいことが重要である。さらに、弾性ローラの軸方向、厚み方向でも、硬さ・変形回復力にばらつきが小さいことが必要である。
【0011】
このような観点から、弾性層の弾性材料として、シリコーンゴムが用いられている。シリコーンゴムとしては、付加反応架橋型、縮合反応架橋型、過酸化物架橋反応型があり、特に加工性が良好で寸法精度の安定性が高く、硬化反応時に反応副生成物が発生しないなどの生産性に優れる理由から、付加反応架橋型液状シリコーンゴムが用いられている。
【0012】
例えば、弾性層がシリコーンゴムで、ローラ硬さがアスカーCで35以下であり、かつ圧縮永久歪みが3%以下である帯電ローラが開示されている(例えば、特許文献1参照)。これによると、長期にわたり被帯電体の帯電不良を防止することができる。
【0013】
また、弾性層が二層で構成され、このうちの外層をシリコーンゴムとする弾性ローラが開示されている(例えば、特許文献2参照)。これによると、外層をシリコーンゴムとすることで、加工性が良好で、寸法精度の改善がよりいっそう図れる利点がある。
【0014】
しかしながら、これら弾性ローラに関しては、電子写真のカラー化及び高画質化に影響を与える弾性ローラの軸方向、厚み方向に対しての硬さ・変形回復力のばらつきは検討されてない。また、これら弾性ローラは、通常、金型を用いた方法で製造されている。これにより、生産設備の高額化は避けられず、コスト高な弾性ローラとなってしまう。
【0015】
上述した性能面の特性を満足させる一方で、弾性ローラの製造方法によるローコスト化も要求されている。
【0016】
従来、弾性ローラを製造するため、金型を用いた成形方法がとられることが多い。例えば、軸芯体受け部に一つまたは複数の溜め溝を設けた金型成形技術がある(例えば、特許文献3参照)。これによると、溜め溝部に過剰の弾性層材料を逃がすことによって、弾性ローラの寸法精度を落とすことなく良好な成形ができるとしている。このように、高精度の弾性ローラを成形するには金型を用いた成形方法が一般的となっている。しかし、金型成形技術においては、高精度な金型を多数必要とし、勢い生産設備の高額化は避けられない。
【0017】
また、金型を使用せずに軸芯体外周上に弾性層材料を成形する方法として、例えば、スプレー塗工法、浸漬塗工法、ロール塗工法、ブレード塗工法、環状塗工槽で塗工する方法、リング形状の塗工ヘッドを用いて塗工する法等種々検討されている。
【0018】
弾性ローラの様々な用途に応じて、軸芯体外周上に所望の機能を有する弾性層を形成させている。特に近年では、そのような所望の機能を発現させるために、均一な薄層から数ミリ程度の厚みまでの弾性層が要求され、かつ、塗工する弾性層材料そのものが多様化している。それに伴って弾性層材料も低粘度から高粘度になるものもあり、そのため、従来の塗工法においてはそのような弾性層材料の塗工範囲をカバーできなくなってきている。
【0019】
例えば、スプレー塗工法は粘度が低い弾性層材料しか使用できず、弾性層材料の粘度が高いと、弾性層材料の霧化が困難になってしまう。
【0020】
ブレード塗工法及びロール塗工法は、例えば、塗工される軸芯体の軸線方向にブレードもしくはロールを配置し、その軸芯体を回転させながらブレードまたはロールによって弾性層材料を塗工する。軸芯体を1〜数回転だけ回転させた後、ブレードまたはロールを後退させて塗工を終了する。この塗工終了時にブレードやロールを後退させ、まだ未硬化未乾燥である弾性層材料から離す際、弾性層材料の粘性によって軸芯体外周上の弾性層材料の一部に他の部分より厚い部分あるいは薄い部分が発生する。特に、弾性層材料の粘度が高い場合には、この厚みに問題が生じた部分が、その後、弾性層のレベリングにおいても回復できないほどになってしまい、均一な弾性層が得られない。
【0021】
また、浸漬塗工法では、スプレー塗工法、ブレード塗工法及びロール塗工法等における弾性層の不均一性の問題は改良される。しかしながら、弾性層の厚みの制御が弾性層材料の物性、例えば、弾性層材料の粘度、表面張力及び密度、その他温度等に支配されるため、弾性層材料の物性を常時一定にしておくことが必要であるが、一定に保つことは難しい。また、弾性層材料が高粘度である場合には、薄層を塗工することができない。このため、スプレー塗工法、ブレード塗工法、ロール塗工法及び浸漬塗工法においては高粘度の弾性層材料を溶媒により希釈し、その弾性層材料を、塗工に必要な粘度にまで下げた状態で塗工し、その後に、弾性層材料の希釈に使用した溶媒を、例えば、蒸発等により、除去して弾性層を形成するしかなかった。
【0022】
高粘度の弾性層材料を直接塗工する方法として、環状塗工槽で塗工する方法が知られている(例えば、特許文献4参照)。この塗工法は、弾性層材料を保持する共に、軸芯体の外径よりも小さい穴を持つ環状シール材を底部に有する環状塗工槽を有し、環状シール材の穴に軸芯体を通し、環状塗工槽から該軸芯体を相対的に上昇させ、軸芯体の表面に弾性層材料を塗工する方法である。この方法においては、ある程度の粘度範囲で塗工が可能である。浸漬塗工方法と比較して浸漬時間がかからないため、生産速度が早くなる、少量の弾性層材料で塗工が可能となる、及び、軸芯体を連続的に環状塗工槽に供給することによって、連続した塗工が可能となる等の利点を有する。しかしながら、このような環状塗工槽での塗工方法にあっては、被塗工物である軸芯体が、環状塗工槽の一部である環状シール材と接触しているため、塗工工程中に軸芯体に傷が生じてしまうことがある。
【0023】
また、高粘度の弾性層材料を軸芯体に直接塗工する方法として、リング形状の塗工ヘッドを用いた塗工法がある(例えば、特許文献5参照)。これによれば、弾性層材料の粘度や弾性層の厚さによる塗工工程の制限を除去し、より容易な装置で軸芯体外周上に弾性層材料を直接塗工して、良好かつ均一な弾性層を形成することができる。この方法では、軸芯体の中心線が水平方向と平行となった状態で弾性層材料を前記軸芯体の表面に塗工する。すなわち、軸芯体の表面に弾性層材料を塗工した後の軸芯体の外径と略等しい内径を有するリング形状の塗工ヘッドを用意する工程、軸芯体を塗工ヘッドの内側に同軸上に配置させる工程、塗工ヘッドの内周面と軸芯体の間の隙間に弾性層材料を供給する工程及び軸芯体に対して前記塗工ヘッドを軸芯体の軸方向に軸線と同軸に相対移動させる工程を有する塗工法である。
【0024】
この塗工法では、塗工ヘッドの内周面と軸芯体との隙間部分に弾性層材料を供給し、軸芯体を水平状態で塗工ヘッドを軸芯体の軸線方向にその軸線と同軸に相対移動させることで軸芯体外周面に弾性層材料が塗工される。塗工ヘッドが軸芯体に塗工層が形成された部分の外径とほぼ等しい内径を持つリング形状であるため、塗工ヘッドが軸芯体に対して非接触状態であり、塗工時の塗工跡が残らない。また、軸芯体は水平状態であるため、重力の要因による弾性層材料の液垂れを減らすことができる。特に、塗工開始時と終了直後に弾性層材料の液垂れをなくし、塗工必要部分への影響をなくすことができる。
【0025】
上述したように、弾性ローラの軸方向ならびに厚み方向に、硬さ・変形回復力のばらつきが生じると、被接触部材に対してニップ幅やニップ力に変動が生じる。結果、画像欠陥が発生する。また、弾性ローラの製造方法に金型を用いることで、コスト高となる。
【特許文献1】特開平09−244348号公報
【特許文献2】特開2000−283146号公報
【特許文献3】特開2000−006163号公報
【特許文献4】特開2004−275824号公報
【特許文献5】特開2003−190870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
従って、本発明の課題は、弾性ローラの軸方向ならびに厚み方向に、硬さ・変形回復力のばらつきのない、ローコストな弾性ローラ、この弾性ローラの製造方法、電子写真プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、シリコーンゴム組成物の処方により、弾性ローラの軸方向ならびに厚み方向に対して、硬さ・変形回復力のばらつきを小さくできること、及び、微小領域での硬さ・変形回復力のばらつきは、シリコーンゴム組成物の架橋密度のばらつきにより発現されることを見出し、さらに検討して、本発明に至った。
【0028】
すなわち、本発明は以下の構成を有することを特徴とする。
【0029】
(1)軸芯体の周りに無機フィラーを含むシリコーンゴム組成物からなる弾性層が形成され、かつ、該弾性層が下記条件A〜条件Cを満足することを特徴とする弾性ローラ。
条件A:無機フィラーの配合量が、シリコーンゴム100質量部に対し、5質量部以上35質量部以下である。
条件B:無機フィラーの組成が、ケイ素原子を有する粒子10質量%以上50質量%以下と平均一次粒径10nm以上40nm以下のカーボンブラック90質量%以下50質量%以上である。
条件C:ケイ素原子を有する粒子中、その5質量%以上25質量%以下が平均一次粒径7nm以上40nm以下のシリカである。
【0030】
(2)弾性ローラの表面から深さ500μmまでの領域の架橋密度をν1、弾性ローラの表面からの深さが500μmから1000μmの領域の架橋密度をν2とした時に、ν1/ν2が0.80以上1.20以下であることを特徴とする上記(1)の弾性ローラ。
【0031】
(3)弾性ローラの架橋密度ν1及びν2がいずれも5×10-5mol/cc以上5×10-4mol/cc以下であることを特徴とする上記(2)の弾性ローラ。
【0032】
(4)弾性ローラの軸方向で、片端部から10mmまでの領域の架橋密度をν3、該片端部と反対の片端部から10mmの領域の架橋密度をν4とした時に、ν3/ν4が0.80以上1.25以下であることを特徴とする上記(1)の弾性ローラ。
【0033】
(5)弾性ローラの架橋密度ν3及びν4がいずれも5×10-5mol/cc以上5×10-4mol/cc以下であることを特徴とする上記(4)の弾性ローラ。
【0034】
(6)軸芯体の周りに無機フィラーを含むシリコーンゴム組成物からなる弾性層が形成され、該弾性層が下記条件A〜条件Cを満足する弾性ローラの製造方法であって、少なくとも下記工程ア〜工程ウを含むことを特徴とする弾性ローラの製造方法。
条件A:無機フィラーの配合量が、シリコーンゴム100質量部に対し、5質量部以上35質量部以下である。
条件B:無機フィラーの組成が、ケイ素原子を有する粒子10質量%以上50質量%以下と平均一次粒径10nm以上40nm以下のカーボンブラック90質量%以下50質量%以上である。
条件C:ケイ素原子を有する粒子中、その5質量%以上25質量%以下が平均一次粒径7nm以上40nm以下のシリカである。
工程ア:軸芯体と同心となるようにリング型の塗工ヘッドを配する。
工程イ:軸芯体を塗工ヘッドに対して相対的に軸方向に移動させ、該移動時に塗工ヘッドから軸芯体の外周上にシリコーンゴム組成物からなる弾性層材料を塗布する。
工程ウ:軸芯体上に塗布された弾性層材料を赤外線加熱により硬化する。
【0035】
(7)弾性ローラの表面から深さ500μmまでの領域の架橋密度をν1、弾性ローラの表面からの深さが500μmから1000μmの領域の架橋密度をν2とした時に、ν1/ν2が0.80以上1.20以下であることを特徴とする上記(6)の弾性ローラの製造方法。
【0036】
(8)弾性ローラの架橋密度ν1及びν2がいずれも5×10-5mol/cc以上5×10-4mol/cc以下であることを特徴とする上記(7)の弾性ローラの製造方法。
【0037】
(9)弾性ローラの軸方向で、片端部から10mmまでの領域の架橋密度をν3、該片端部と反対の片端部から10mmの領域の架橋密度をν4とした時に、ν3/ν4が0.80以上1.25以下であることを特徴とする上記(6)の弾性ローラの製造方法。
【0038】
(10)弾性ローラの架橋密度ν3及びν4がいずれも5×10-5mol/cc以上5×10-4mol/cc以下であることを特徴とする上記(9)の弾性ローラの製造方法。
【0039】
(11)上記(6)〜(10)のいずれかの製造方法で製造されたことを特徴とする弾性ローラ。
【0040】
(12)弾性ローラが現像ローラであることを特徴とする上記(1)〜(5)及び(11)のいずれかの弾性ローラ。
【0041】
(13)現像ローラとして、上記(12)の弾性ローラが組み込まれていることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジ。
【0042】
(14)現像ローラとして、上記(12)の弾性ローラが組み込まれていることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0043】
本発明により、軸方向ならびに厚み方向に硬さ・変形回復力のばらつきがないローコストな弾性ローラがローコストで提供できる。また、本発明の弾性ローラの製造方法は良好な性能の弾性ローラを手供することが可能である。さらに、本発明の弾性ローラは電子写真装置用の現像ローラとして有用であり、該現像ローラを組み込んだ電子写真プロセスカートリッジ及び画像形成装置はきわめて優れた画像特性が発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0045】
図1に、本発明にかかる弾性ローラの1例の斜視図を示す。
【0046】
図1において、101は軸芯体であり、本発明にかかる弾性ローラは、該軸芯体101の周りに無機フィラーを含んだシリコーンゴム組成物からなる弾性層102が設けられている。
【0047】
該軸芯体101は、弾性ローラ1の電極及び支持部材として機能するものである。軸芯体101は、例えば、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼等の金属または合金、クロム、ニッケル等でメッキ処理を施した鉄、合成樹脂等の材質で構成されている。形状は、円柱形や中心部を空洞化した円筒形が好ましい。軸芯体の外径は適宜決めることができるが、通常4mmから20mmの範囲にするのが適当である。
【0048】
本発明では、軸芯体101の周りに形成されている無機フィラーを含んだシリコーンゴム組成物からなる弾性層が、下記条件A〜条件Cを満足していること必要である。
条件A:無機フィラーが、シリコーンゴム100質量部に対し、5質量部以上35質量部以下である。
条件B:無機フィラーの組成が、ケイ素原子を有す粒子10質量%以上50質量%以下と平均一次粒径が10nm以上40nm以下であるカーボンブラック90質量%以下50質量%以上である。
条件C:ケイ素原子を有する粒子中、その5〜25質量%が、一次粒子の平均径が7nm以上40nm以下であるシリカである。
【0049】
弾性層のベース材料としては、適度に低硬度であり良好な変形回復力を持たせることが望まれるため、シリコーンゴムを用いる。シリコーンゴムとして、付加反応架橋型、縮合反応架橋型、過酸化物硬化型があり、これらから適宜選択して使用可能であるが、加工性が良好で寸法精度の安定性が高く、硬化反応時に反応副生成物が発生しないなどの生産性に優れることから、付加反応架橋型液状シリコーンゴムが好ましい。
【0050】
付加反応型液状シリコーンゴムは、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン(主剤)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(硬化剤)からなり、これにさらに触媒や他の添加物を適宜含む組成物である。
【0051】
アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、シリコーンゴム原料のベースポリマーであり、その分子量は特に限定されないが、重量平均分子量(Mw)が1万以上100万以下であることが好ましく、5万以上70万以下であることがより好ましい。
【0052】
このオルガノポリシロキサンのアルケニル基は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの活性水素と反応して架橋点を形成する部位であり、その種類は特に限定されないが、活性水素との反応が高い等の理由から、ビニル基、アリル基の少なくとも一方であることが好ましく、ビニル基がより好ましい。
【0053】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、硬化工程における付加反応の架橋剤の働きをするもので、一分子中のケイ素原子結合水素原子は2個以上必要であり、硬化反応を好適に行わせるために、3個以上あることが好ましい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子量は特に制限がなく、好ましい重量平均分子量(Mw)は1000以上10000以下が適当である。硬化反応を好適に行わせるためには、比較的低分子量である重量平均分子量1000以上5000以下のポリマーが好ましい。
【0054】
付加反応型液状シリコーンゴムは、架橋触媒として、公知の白金系触媒を含むことが好ましい。白金系触媒として、例えば、白金単体、白金化合物、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール化合物、エーテル化合物、水和物との錯体などが挙げられる。また、架橋触媒として、ヒドロシリル化反応において触媒作用を示す遷移金属化合物も使用できる。架橋触媒の添加量は、オルガノポリシロキサンに対し、白金原子あるいは遷移金属原子として1ppm以上2000ppm以下の範囲が好ましい。
【0055】
上記シリコーンゴムに無機フィラーが配合され、弾性層用のシリコーンゴム組成物となる。無機フィラーはシリコーンゴム100質量部に対し、5質量部以上35質量部以下で配合される。5質量部より少ないと無機フィラーによる凝集効果が少なく、シリコーンゴム組成物の粘度が低く、無機フィラーが偏在し易く、架橋密度にばらつきが生じ、弾性ローラの軸方向ならびに厚み方向に対して、硬さ・変形回復力のばらつきが大きくなる。また、シリコーンゴム組成物の高粘度化ができず、弾性ローラのローコスト製造方法に適合した処方とならない。また35質量部より多いと弾性層は、高硬度となり、変形回復力が小さくなる。
【0056】
シリコーンゴムに配合される無機フィラーは、主としてケイ素原子を有する粒子及び平均一次粒径が10nm以上40nm以下であるカーボンブラックであることが肝要である。そして、その組成は、全無機フィラー中、ケイ素原子を有する粒子が10質量%以上50質量%以下であり、かつ、カーボンブラックが90質量%以下50質量%以上である。
【0057】
ケイ素原子を有する粒子が10質量%より少ないと、ケイ素原子を有する粒子による補強性効果が少なく、弾性ローラの軸方向ならびに厚み方向に対して、硬さ・変形回復力のばらつきが大きくなる。ケイ素原子を有する粒子が50質量%より多いと、シリコーンゴムへの均一分散が困難になる。
【0058】
また、カーボンブラックが90質量%より多いと、弾性層が高硬度となり、変形回復力が小さくなる。カーボンブラックが50質量%より少ないと、シリコーンゴム組成物の粘度が低く、無機フィラーが偏在し易く、架橋密度にばらつきが生じ、弾性ローラの軸方向ならびに厚み方向に対して、硬さ・変形回復力のばらつきが大きくなる。また、シリコーンゴム組成物の高粘度化ができず、弾性ローラのローコスト製造方法に適合した処方とならない。
【0059】
ここで使用できるカーボンブラックとしては、平均一次粒径が10nm以上40nm以下であればいずれのカーボンブラックでも構わない。そして、かかるカーボンブラックとして、SAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等が挙げられ、さらに、酸化処理を施した酸性カーボン、熱分解カーボン等の汎用のものが挙げられる。平均一次粒径が10nmより小さいカーボンブラックであると、カーボンブラック自体の凝集性が強く、シリコーンゴムへの均一分散が困難になる。これにより、弾性ローラの軸方向ならびに厚み方向に対して、硬さ・変形回復力のばらつきが大きくなる。また、平均一次粒径が40nmより大きいと、カーボンブラック自体の凝集性が弱く、シリコーンゴム組成物が低粘度となり、作業性が低下し、生産効率が悪くなる。
【0060】
ケイ素原子を有する粒子として、例えば、乾式シリカ、湿式シリカ、珪藻土、石英粉末、アルミノケイ酸等を挙げることができる。無機フィラー中のケイ素原子を有する粒子が10質量%より少ないと、ケイ素原子を有する粒子による補強性効果が少なく、弾性ローラの軸方向ならびに厚み方向に対して、硬さ・変形回復力のばらつきが大きくなる。また、50質量%より多いと、シリコーンゴムへの均一分散が困難になる。
【0061】
さらに、ケイ素原子を有する粒子中、5質量%以上25質量%以下の成分が、平均一次粒径が7nm以上40nm以下であるシリカ(以下、単に「シリカ」という)であることが重要である。シリカが、ケイ素原子を有する粒子中で5質量%より少ない成分であると、補強性効果が発現せず、弾性ローラ製造時に、寸法精度安定性が低くなる。また、シリカが、ケイ素原子を有する粒子中の25質量%超の成分であると、弾性層が高硬度となり、変形回復力が小さくなる。
【0062】
シリカとしては、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法、またはヒュームドシリカと称される乾式シリカが好適に使用できる。また、水ガラスから製造されるいわゆる湿式シリカも使用できる。さらに、これらシリカの表面を化学的に処理したものであっても良い。
【0063】
本発明において、シリカは平均一次粒径が7nm以上40nm以下であることが重要である。平均一次粒径が7nmより小さいとシリカ自体の凝集性が強くて、シリコーンゴムへの均一分散が困難になる。また、平均一次粒径が40nmより大きいと、シリカ自体の凝集性が弱く、シリコーンゴム組成物が低粘度となり、作業性が低下し、生産効率が悪い。
【0064】
弾性層を形成するシリコーンゴム組成物には、所望の性能が得られる範囲内になるように、炭酸カルシウムなどの非導電性充填剤、ポリジメチルシロキサンオイル、ジフェニルシランジオール、トリメチルシラノール、フタル酸誘導体、アジピン酸誘導体などの可塑剤、耐熱剤、難燃剤、酸化防止剤、架橋促進剤、架橋遅延剤、架橋助剤等の各種添加剤が適宜配合されていてもよい。
【0065】
さらに、本発明では、弾性層の導電性を調節するために、導電剤を適宣選択して、添加することができる。導電剤として、上記カーボンブラックが一部機能しているが、上記に示すカーボンブラック以外に導電性カーボンブラック、グラファイト等の炭素系導電剤、金属粉末、導電性金属酸化物等の電子伝導機構を有する導電剤、及び、アルカリ金属塩や四級アンモニウム塩等のイオン伝導機構を有する導電剤等を使用することもできる。
【0066】
上記シリコーンゴム組成にすることにより、弾性ローラの軸方向ならびに厚み方向に対して、硬さ・変形回復力のばらつきを小さくできる。また、シリコーンゴム組成物の架橋密度のばらつきを小さくすることができ、微小領域での硬さ・変形回復力のばらつき小さくすることができる。
【0067】
本発明の弾性ローラの弾性層の架橋密度を、図2に示す領域、すなわち、弾性ローラの表面から深さ500μmまでの領域102a、弾性ローラの表面からの深さが500μmから1000μmの領域102b、及び弾性層の両端部の各10mmの領域102c及び102dにおいてそれぞれ後記のようにして測定する。このときの架橋密度をそれぞれ、弾性ローラの表面から深さ500μmまでの領域102aをν1、該弾性ローラの表面からの深さが500μmから1000μmの領域102bをν2、弾性ローラの片端部から10mmまでの領域102cをν3、該片端部と反対の片端部から10mmの領域102dをν4とする。なお、101は軸芯体であり、102は弾性層である。
【0068】
ここで、弾性層の厚み方向の架橋密度のばらつきが、ν1/ν2で0.80以上1.20以下であることが好ましい。ν1/ν2がこの範囲内にあると、弾性ローラと被接触部材とのニップ幅やニップ力が均一となり、画像欠陥(濃度ムラ)が発生しない。また、弾性層の軸方向の架橋密度のばらつきが、ν3/ν4で0.80以上1.25以下であることが望ましい。ν3/ν4がこの範囲内であると、弾性ローラと被接触部材とが左右で均一な接触幅を達成でき、画像欠陥(濃度ムラ)が発生しない。
【0069】
また、上述した弾性ローラの架橋密度ν1、ν2、ν3及びν4は、いずれも5×10-5mol/cc以上5×10-4mol/cc以下であることが望ましい。これら架橋密度が5×10-5mol/ccより小さいと、弾性ローラの弾性層が、低硬度過ぎ、接触状態を安定に保つことができず、被接触部材に対する圧力分布が生じることがある。また、5×10-4mol/ccより大きいと、弾性ローラの弾性層が高硬度となり、変形回復力が小さくなることがある。
【0070】
本発明の弾性ローラは、軸心体上に上記した構成の弾性層が形成されるならば、その製造方法は限定されないが、軸心体上に同心状で弾性層用シリコーンゴム組成物が形成され、次いで、シリコーンゴム組成物が加熱硬化される方法によることが好ましい。
【0071】
そのような軸芯体上に弾性層用シリコーンゴム組成物を形成する方法として、リング型の塗工ヘッドを用いた塗工方法があり、本発明では好ましい方法である。
【0072】
すなわち、本発明の弾性ローラの製造方法は、少なくとも、下記工程ア、工程イ及び工程ウを有する。
工程ア:軸芯体と同心となるようにリング型の塗工ヘッドを配する。
工程イ:軸芯体を塗工ヘッドに対して相対的に軸方向に移動させ、該移動時に塗工ヘッドから軸芯体の外周上にシリコーンゴム組成物からなる弾性層材料を塗布する。
工程ウ:軸芯体上に塗布された弾性層材料を赤外線加熱により硬化する。
【0073】
本発明の弾性ローラの製造方法に好適に用いることができるリング型の塗工ヘッドを有するリングコート機の概略説明図を図3に示す。
【0074】
このリングコート機は、架台31の上に略垂直にコラム32が取り付けられ、架台31とコラム32の上部に精密ボールネジ33が略垂直に取り付けられている。44はリニアガイドであり、精密ボールネジ33と平行にコラム32に該リニアガイド44は2本取り付けられている。
【0075】
LMガイド34はリニアガイド44と精密ボールネジ33とを連結し、サーボモータ35よりプーリ36を介して回転運動が伝達され昇降できるようになっている。コラム32にはシリコーンゴム組成物の未硬化物を軸芯体101の外周上に塗布するリング形状の塗工ヘッド38が取り付けられている。
【0076】
さらにLMガイド34にはブラケット37が取り付けられ、ブラケット37には軸芯体101を保持し固定する軸芯体下保持軸39が略垂直に取り付けられている。また、逆側のローラの軸芯体101を保持する軸芯体上保持軸40の中心軸がブラケット37の上部に取り付けられ、軸芯体上保持軸40は軸芯体下保持軸39に対向して略同心になるように配置して軸芯体を保持している。
【0077】
該リング形状の塗工ヘッド38の中心軸は軸芯体下保持軸39と軸芯体上保持軸40の移動方向と平行となるようにそれぞれに支持されている。また、軸芯体下保持軸39及び軸芯体上保持軸40が昇降移動時において塗工ヘッド38の内側に開口した環状スリットになっている吐出口の中心軸と軸芯体下保持軸39及び軸芯体上保持軸40の中心軸が略同心になるように調節してある。
【0078】
このような構成により塗工ヘッド38の環状スリットに成っている吐出口の中心軸を軸芯体101の中心軸に略同心に合わせることができ、リング形状の塗工ヘッドの内周面と前記軸芯体101の外周面との間に均一な隙間が形成される。
【0079】
液状であるシリコーンゴム組成物の供給口41は、配管42を介して供給弁43に接続されている。材料供給弁43は、その手前に混合ミキサー、材料供給ポンプ、材料定量吐出装置、材料タンク等を備え、定量(単位時間当たりの量が一定)の液状ゴムを吐出可能としている。シリコーンゴム組成物は材料タンクから、材料定量吐出装置により一定量計量され、混合ミキサーで混合される。その後、材料供給ポンプにより混合されたシリコーンゴム組成物は、材料供給弁43から配管42を経由して、供給口41に送られる。
【0080】
供給口41より送り込まれたシリコーンゴム組成物は、リング型の塗工ヘッド38内の流路を通り、リング型の塗工ヘッド38のノズルから吐出する。シリコーンゴム組成物の肉厚を一定にさせるために、リング状塗工ヘッドノズルからの吐出量と材料供給ポンプからの供給量を一定にして、保持されている軸芯体101を垂直方向(軸芯体の中心軸方向)に上方へ移動させることで、軸芯体101は塗工ヘッド38に対して相対的に軸方向に移動し、軸芯体101の外周上にシリコーンゴム組成物からなる円筒形状(ロール形状)の未硬化物の層102が形成される。この時、軸芯体101とリング型の塗工ヘッドノズルとのクリアランスは、シリコーンゴム組成物が硬化により収縮するため、所望の弾性層の層厚以上のクリアランスにすることが好ましい。特に、層厚に対し1.1倍程度のクリアランスにすることが好ましい。なお、弾性層の厚みは通常2mmから10mmの範囲とすることが好ましい。
【0081】
リングコート機としては、特許文献5にて開示されているように、リング型の塗工ヘッドが横方向に移動させるもの(横型)があり、塗工層(弾性層)の均一性が十分にえられるのである。しかし、塗工層(弾性層)の厚みが2.0mm以下である場合、横型のリングコート機でも有用である。しかしながら、本発明のように電子写真方式の画像形成装置に用いられる弾性ローラでは弾性層の厚みが一般的に2.0mm以上である。塗工層を2.0mm以上となるように横型のリングコート機を用いて塗布すると、塗工層の自重により重力方向に垂れが生じ、弾性層の厚み、硬さ、変形回復力のばらつきが大きくなることが考慮される。したがって、本発明では、上記するような縦型のリングコート機が好ましい。
【0082】
次の工程で、未硬化のシリコーンゴム組成物の層を赤外線加熱で熱処理し硬化し、弾性ローラとする。未硬化のシリコーンゴム組成物の表面は、粘着性を有している。このため、熱処理する方法としては非接触で、装置が簡易で、シリコーンゴム組成物の未硬化物の層を長手方向に均一に熱処理できる赤外線加熱が好ましい。この時、赤外線加熱装置を固定し、シリコーンゴム組成物からなる円筒形状(ロール形状)の未硬化物層を設けた軸芯体を周方向に回転させることにより、周方向に均一に熱処理が行われる。シリコーンゴム組成物の弾性層材料表面の熱処理温度としては、使用するシリコーンゴム組成物にもよるが、硬化反応が開始する100℃以上250℃以下が好ましい。
【0083】
ここで、弾性層の硬化後の物性安定化、弾性層中の反応残渣及び未反応低分子分を除去する等を目的として、赤外線加熱後の弾性層に更に熱処理等の二次硬化を行ってもよい。その後、弾性層の両端を突き切って弾性層を必要な長さにすると共に、弾性層形成に際して異常が発生しやすい、シリコーンゴム組成物を軸芯体上に形成する際の始端及び終端を予め除去することも好ましい。
【0084】
以上のようにして形成された弾性層の外周側に耐磨耗性やトナー帯電性、離型性の観点から、さらに表面層を設けることもできる。表面層を形成する材料としては、各種のポリアミド、フッ素樹脂、水素添加スチレン−ブチレン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、オレフィン樹脂等が挙げられる。これらの材料は、単独で用いてよく、又は二種以上を混合して用いてもよい。これらの材料には必要に応じて各種添加剤が添加される。
【0085】
これらの表面層を構成する材料は、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、ボールミル等のビーズを利用した従来公知の分散装置を使用して、分散させることができる。得られた表層形成用の塗料は、スプレー塗工、ディッピング等により弾性層の表面に塗工することができる。表面層の厚みとしては、5μm以上50μm以下が好ましい。低分子量成分がしみ出してきて感光ドラムを汚染することを防止する観点から5μm以上が好ましく、ローラが硬くなり、融着が発生することを防止する観点から50μm以下が好ましい。より好ましくは10μm以上30μm以下である。
【0086】
本発明の弾性ローラは現像ローラとして使用することができる。現像ローラは、潜像を担持する潜像担持体としての感光ドラムに対向して、当接または圧接した状態で現像剤(トナー)を担持する。そして、現像ローラは、感光ドラムに現像剤としてのトナーを付与することにより潜像をトナー像として可視化する機能を持つ。さらに本発明の電子写真プロセスカートリッジ及び画像形成装置は、この現像ローラとして本発明の弾性ローラを使用する。
【0087】
本発明の弾性ローラを現像ローラとして搭載した電子写真プロセスカートリッジ及び画像形成装置の一例を図4に模式図として示した。この図4により以下説明する。
【0088】
なお、本画像形成装置は、それぞれイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの画像を形成する画像形成ユニット10a〜10dが4個あり、タンデム方式で設けられている。そして、感光ドラム11、帯電装置12(図では帯電ローラ)、画像露光装置13(図では書き込みビーム)、現像装置14、クリーニング装置15、画像転写装置16(図では転写ローラ)等の仕様が各色トナー特性に応じて少し調整に差異があるものの、基本的構成においてこれら4個の画像形成ユニット10a〜10dは同じである。また、感光ドラム11、帯電装置12、現像装置14及びクリーニング装置15が一体となり、プロセスカートリッジを形成している。
【0089】
現像装置14には、一成分トナー5を収容した現像容器6と、現像容器6内の長手方向に延在する開口部に位置し、感光ドラム11と対向設置された現像ローラ1とを備え、感光ドラム11上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。さらに、現像ローラ1に一成分トナー5を供給すると共に現像に使用されずに現像ローラ1に担持されている一成分トナー5を現像ローラ1から掻き取るトナー供給ローラ7及び現像ローラ1上の一成分トナー5の担持量を規制すると共に摩擦帯電する現像ブレード8が設けられている。
【0090】
感光ドラム11の表面が帯電装置12により所定の極性・電位に一様に帯電され、画像情報が加増露光装置13からビームとして、帯電された感光ドラム11の表面に照射され、静電潜像が形成される。次いで、形成された静電潜像上に本発明の弾性ローラを現像ローラ1とする現像装置14から一成分トナーが供給され、感光ドラム11表面にトナー像が形成される。このトナー像は感光ドラム11の回転に伴って、画像転写装置16と対向する場所に来たときにその回転と同期して供給されてきた紙等の転写材25に転写される。
【0091】
なお、本図4では4つの画像形成ユニット10a〜10dが一連に連動して所定の色画像を1つの転写材25上に重ねて形成されている。したがって、転写材25をそれぞれの画像形成ユニットの画像形成と同期させる、つまり、画像形成が転写材25の挿入と同期している。そのために、転写材25を輸送するための転写搬送ベルト17が感光ドラム11と画像転写装置16との間に挟まれるように、転写搬送ベルト17の駆動ローラ18、テンションローラ19及び従動ローラ20に架けまわされ、転写材25は転写搬送ベルト17に吸着ローラ21の働きにより静電的に吸着された形で搬送されている。なお、22は転写材25を供給するための供給ローラである。
【0092】
画像が形成された転写材25は、転写搬送ベルト17から剥離装置23の働きにより剥がされ、定着装置24に送られ、トナー像は転写材25に定着されて、印画が完了する。一方、トナー像の転写材25への転写が終わった感光ドラム11はさらに回転して、クリーニング装置15により表面がクリーニングされ、必要により除電装置(不図示)によって除電される。その後感光ドラム11は次の画像形成に供される。なお、図4において、26、27はそれぞれ画像転写装置16、吸着ローラ21へのバイアス電源を示す。
【0093】
なお、ここでは、タンデム型の転写材上へ直接各色のトナー像を転写する装置で説明したが、現像ローラとして本発明の弾性ローラを使用する装置であればいずれでもよく、白黒の単色画像形成装置、転写ローラや転写ベルトに一旦各色のトナー像を重ねてカラー画像を形成し、それを転写部材へ一括して転写する画像形成装置、また、各色の現像ユニットがロータ上に配置されたり、感光ドラムに並列して配置されたりした画像形成装置等が挙げられる。また、プロセスカートリッジではなく、感光ドラム、帯電装置、現像装置等が直接画像形成装置に組み込まれていても構わない。
【0094】
本発明の弾性ローラは、上記した現像ローラとしてばかりでなく、その弾性層の均一性が良好であることから、帯電ローラ、転写ローラ等の導電性が必要な用途にも使用可能である。
【実施例】
【0095】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、これらは本発明を何ら制限するものではない。
【0096】
まず実施例において行った測定方法および評価について説明する。
【0097】
(平均一次粒径)
弾性ローラからシリコーンゴム層片を切り出し、ウルトラミクロトームで約100nm厚みのゴム試料を作成した。透過型電子顕微鏡(TEM)でシリコーンゴム組成物中のカーボンブラック(シリカ)を10万倍の倍率で撮影した。得られた写真から、一次粒子(100個)の投影面積を求めた。得られた面積から円相当径を計算して当該粒子の体積粒径を求め、その平均値をカーボンブラック(シリカ)の平均一次粒径とした。図5にイメージ図を示す。なお、図5において、投影図から求めた円相当径に該当する円301を示してある。
【0098】
(架橋密度ν:膨潤前のゴムサンプルのポリマーに対する有効網目鎖濃度)
トルエン膨潤法により測定を行った(シリコーンゴムの応用開発、ポリマーダイジェスト、1980(8)P59−60による)。弾性ローラのシリコーンゴム層を〈1〉略中央部で表面から深さ500μmまで(領域102a)、〈2〉略中央部で表面からの深さ500μmから1000μmの範囲(領域102b)および〈3〉両端部から10mmまで(領域102c及び領域102d)別々に切出し、シリコーンゴム層試験片作製した。該試験片の重量W1および比重ρ1をまず測定し、次いで、トルエンに室温で72時間浸漬して飽和膨潤した後、トルエンから取り出し、表面のトルエンを拭ってから重量W2を測定した。その後、室温で48時間以上乾燥した後、再び重量W3および比重ρ3を測定した。これらの値を用い、以下の式でそれぞれの試験片について算出した。
【0099】
ν(架橋密度:mol/cm3)=
−(V0/Vs)(ln(1−Vr)+Vr+μVr2)/(Vr1/302/3−2Vr/f)
なお、上記式の各記号は下記を意味する。
・V1(初期体積) =W1(初期重量)/ρ1(初期比重)
・V3(乾燥後体積)=W3(乾燥後重量)/ρ3(乾燥後比重)
・V2(膨潤時体積)=V3−(W2(膨潤時重量)−W3)/ρs(溶媒比重)
ここで、溶媒比重ρsはトルエンの0.866g/cm3である。
・V0(膨潤前のポリマー体積分率)=(V3−V1P)/(V1−V1P)
・Vr(膨潤状態網目鎖中のポリマーの体積分率)=(V3―V1P)/(V2―V1P)
ここで、Pは試料中のフィラーの体積分率であり、シリカ比重2.2g/cm3、カーボンブラック比重1.85g/cm3、石英比重2.65g/cm3、珪藻土比重2.2g/cm3およびポリマー比重0.98g/cm3として算出したものである。
・Vs(溶媒のモル容積)(=106.8cc/mol)
・μ(ポリマーの溶媒相互作用係数)(=0.413+0.361Vr
・f(架橋点の官能数)(=4)
【0100】
なお、架橋密度νに関して、それぞれの試験片について下記のように示した。
・ν1:弾性ローラの表面から深さ500μmまで(領域102a)の架橋密度。
・ν2:弾性ローラの表面からの深さが500μmから1000μmの範囲(領域102b)の架橋密度。
・ν3:弾性ローラの軸方向で、片端部から10mmまで(領域102c)の架橋密度。
・ν4:ν3とは反対端から10mmまで(領域102d)の架橋密度。
【0101】
(画像評価)
ヒューレット・パッカード社製の電子写真方式の画像形成装置「HP Color LaserJet 3700」(商品名)の電子写真プロセスカートリッジ(公称寿命6000枚、A4サイズ、5%印字率、プリントカートリッジ:黒・シアン・マゼンタ・イエロー)の現像ローラとして、以下の実施例・比較例で作製した現像ローラを組み込んだ。次いで、トナーを充填した後、上記画像成形装置に組み込んで、画像(ベタ画像、ハーフトーン画像)を出力し、濃度ムラ(ローラピッチ)を目視にて観察し、下記基準で評価した。
A:全画像において良好。
B:ベタ、ハーフトーンにて濃度ムラが若干確認されるが、実用上問題ない。
C:全画像において濃度ムラが確認された。
【0102】
以下の実施例、比較例で使用するフィラー類を表1に示す。
【0103】
【表1】

【0104】
〔実施例1〕
(シリコーンゴム組成物の調製)
シリコーンゴムの主剤として、分子鎖両末端ジメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量0.15質量%)98.5質量部と、架橋剤として分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(Si原子に結合するH含有量0.30質量%)1.5質量部に対して、塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体(白金含有量0.5質量%)0.5質量部、1−エチル−1−シクロヘキサノール0.04質量部および無機フィラー20質量部を配合して、シリコーンゴム組成物を調製した。なお、この無機フィラーはカーボンブラックCB−1(表1参照)70質量%とケイ素原子を有する粒子30質量%からなり、かつ、ケイ素原子を有する粒子はシリカFS−1(表1参照)10質量%および石英粉末SI−1(表1参照)90質量%の組成であった。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。
【0105】
(弾性ローラの作成)
図2に示すリング型の塗工ヘッドを有するリングコート機の軸芯体保持軸(軸芯体上保持軸40および軸芯体下保持軸39)で外径φ6mmの鉄製軸芯体を垂直にセットし、軸芯体101と内径12.6mmのリング形状の塗工ヘッド38のノズルとのクリアランスを3.3mmとした。
【0106】
軸芯体保持軸を垂直に上昇(10mm/sec)させて軸芯体を移動させた。それに合わせて、上記シリコーンゴム組成物を840μl/secで吐出し、軸芯体の外周にシリコーンゴム組成物からなる円筒形状(ロール形状)にシリコーンゴム組成物の層を形成して、未硬化の成形物層を有するローラ(以下、未硬化のローラ)を作成した。
【0107】
この未硬化のローラを、軸芯体を中心として60rpmで回転させ、その未硬化の成形物層表面に、株式会社ハイベック製の赤外線加熱ランプ「HYL25」(商品名)で赤外線(出力1000W)を4分間照射し、硬化させた。なお、赤外線照射時の成形物層表面とランプの距離は60mmであり、成形物層表面の温度は200℃であった。その後、硬化したシリコーンゴムの弾性層の物性を安定させ、シリコーンゴムの弾性層中の反応残渣および未反応低分子分を除去する等を目的として、電気炉で200℃、4時間の二次硬化を行い、軸芯体の外周上に層厚3.0mmの導電性シリコーン層を有する弾性ローラを得た。
【0108】
この弾性ローラ1の架橋密度ν1、ν2、ν3およびν4を上記により測定し、その比ν1/ν2およびν3/ν4も算出した。結果を表3に示した。
【0109】
(現像ローラの作製)
ポリウレタンポリオールプレポリマー「タケラックTE5060」(商品名、三井武田ケミカル株式会社製)100質量部、イソシアネート「コロネート2521」(商品名、日本ポリウレタン株式会社製)77質量部およびカーボンブラック「MA100」(商品名、三菱化学株式会社製)24質量部にMEKを加え、サンドミルで1時間分散した。分散後さらにMEKを加えて固形分20質量%から30質量%の範囲で塗布乾燥後の膜厚が20μmとなるように調整して、表面層用塗料を得た。
【0110】
この塗料中に、弾性ローラを浸漬して、表面層に塗布した後、自然乾燥させた。次いで、140℃にて60分間加熱処理して、塗料膜を硬化し、表面層が形成された現像ローラ1を得た。
【0111】
(画像評価)
作成した現像ローラ1を現像ローラとして電子写真プロセスカートリッジに組み込み、画像出力して、評価した。結果を表3に示す。
【0112】
〔実施例2〕
カーボンブラックとしてCB−2(表1参照)を用いた以外実施例1と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下、実施例1と同様に弾性ローラおよび現像ローラ2を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ2の画像評価も表3に示す。
【0113】
〔実施例3〕
カーボンブラックとしてCB−3(表1参照)を用いた以外実施例1と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下、実施例1と同様に弾性ローラおよび現像ローラ3を製造した。無機フィラーの組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ3の画像評価も表3に示す。
【0114】
〔実施例4〕
カーボンブラックCB−2(表1参照)およびケイ素原子を有する粒子の使用割合を50質量%および50質量%とした以外実施例2と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下、実施例2と同様に弾性ローラおよび現像ローラ4を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ4の画像評価も表3に示す。
【0115】
〔実施例5〕
カーボンブラックCB−3(表1参照)およびケイ素原子を有する粒子の使用割合を50質量%および50質量%とした以外実施例3と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下、実施例3と同様に弾性ローラおよび現像ローラ5を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ5の画像評価も表3に示す。
【0116】
〔実施例6〕
主剤を98.0質量部、架橋剤を2.0質量部とし、ケイ素原子を有する粒子の組成をシリカFS−2(表1参照)5質量%と珪藻土SI−5(表1参照)95質量%とした以外実施例1と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下、実施例1と同様に弾性ローラおよび現像ローラ6を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ6の画像評価も表3に示す。
【0117】
〔実施例7〕
ケイ素原子を有する粒子中のシリカとして、シリカFS−3(表1参照)を使用した以外実施例6と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下、実施例6と同様に弾性ローラおよび現像ローラ7を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ7の画像評価も表3に示す。
【0118】
〔実施例8〕
主剤を99.0質量部、架橋剤を1.0質量部とし、ケイ素原子を有する粒子の組成をシリカFS−1(表1参照)25質量%と石英粉末SI−2(表1参照)75質量%とした以外実施例1と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下、実施例1と同様に弾性ローラおよび現像ローラ8を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ8の画像評価も表3に示す。
【0119】
〔実施例9〕
ケイ素原子を有する粒子中のシリカとして、シリカFS−3(表1参照)を使用した以外実施例8と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下、実施例8と同様に弾性ローラおよび現像ローラ9を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ9の画像評価も表3に示す。
【0120】
〔実施例10〕
無機フィラーを5質量部と減らした以外実施例1と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下実施例1と同様に弾性ローラおよび現像ローラ10を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ10の画像評価も表3に示す。
【0121】
〔実施例11〕
主剤を98.0質量部、架橋剤を2.0質量部とし、無機フィラーを5質量部と減らした以外実施例2と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下実施例2と同様に弾性ローラおよび現像ローラ11を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ11の画像評価も表3に示す。
【0122】
〔実施例12〕
主剤を98.0質量部、架橋剤を2.0質量部とし、無機フィラーを5質量部と減らした以外実施例3と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下実施例3と同様に弾性ローラおよび現像ローラ12を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ11の画像評価も表3に示す。
【0123】
〔実施例13〕
主剤を99.0質量部、架橋剤を1.0質量部とし、無機フィラーを5質量部と減らした以外実施例4と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下実施例4と同様に弾性ローラおよび現像ローラ13を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ13の画像評価も表3に示す。
【0124】
〔実施例14〕
主剤を99.0質量部、架橋剤を1.0質量部とし、無機フィラーを5質量部と減らした以外実施例5と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下実施例5と同様に弾性ローラおよび現像ローラ14を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ14の画像評価も表3に示す。
【0125】
〔実施例15〕
無機フィラーを5質量部に減らし、かつ、ケイ素原子を有する粒子の組成をシリカFS−2(表1参照)5質量%と石英粉末SI−3(表1参照)95質量%とした以外実施例1と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下、実施例1と同様に弾性ローラおよび現像ローラ15を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ15の画像評価も表3に示す。
【0126】
〔実施例16〕
ケイ素原子を有する粒子中のシリカとして、シリカFS−3(表1参照)を使用した以外実施例15と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下、実施例15と同様に弾性ローラおよび現像ローラ16を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ16の画像評価も表3に示す。
【0127】
〔実施例17〕
無機フィラーを5質量部に減らし、かつ、ケイ素原子を有する粒子の組成をシリカFS−2(表1参照)25質量%と珪藻土SI−5(表1参照)75質量%とした以外実施例1と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下、実施例1と同様に弾性ローラおよび現像ローラ17を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ17の画像評価も表3に示す。
【0128】
〔実施例18〕
ケイ素原子を有する粒子中のシリカとして、シリカFS−3(表1参照)を使用した以外実施例17と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下、実施例17と同様に弾性ローラおよび現像ローラ18を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ18の画像評価も表3に示す。
【0129】
〔実施例19〕
無機フィラーを35質量部に増やした以外実施例1と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下、実施例1と同様に弾性ローラおよび現像ローラ19を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ19の画像評価も表3に示す。
【0130】
〔実施例20〕
主剤を99.0質量部、架橋剤を1.0質量部とし、無機フィラーを35質量部と増やした以外実施例2と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下、実施例2と同様に弾性ローラおよび現像ローラ20を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ20の画像評価も表3に示す。
【0131】
〔実施例21〕
主剤を99.0質量部、架橋剤を1.0質量部とし、無機フィラーを35質量部と増やした以外実施例3と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下、実施例3と同様に弾性ローラおよび現像ローラ21を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ21の画像評価も表3に示す。
【0132】
〔実施例22〕
主剤を98.0質量部、架橋剤を2.0質量部とし、無機フィラーも35質量部と増やした以外実施例4と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下実施例4と同様に弾性ローラおよび現像ローラ22を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ22の画像評価も表3に示す。
【0133】
〔実施例23〕
主剤を98.0質量部、架橋剤を2.0質量部とし、無機フィラーも35質量部と増やした以外実施例5と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下実施例5と同様に弾性ローラおよび現像ローラ23を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ23の画像評価も表3に示す。
【0134】
〔実施例24〕
無機フィラーを35質量部に増やし、かつ、ケイ素原子を有する粒子の組成をシリカFS−2(表1参照)5質量%と石英粉末SI−4(表1参照)95質量%とした以外実施例1と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下、実施例1と同様に弾性ローラおよび現像ローラ24を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ24の画像評価も表3に示す。
【0135】
〔実施例25〕
ケイ素原子を有する粒子中のシリカとして、シリカFS−3(表1参照)を使用した以外実施例24と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下、実施例24と同様に弾性ローラおよび現像ローラ25を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ25の画像評価も表3に示す。
【0136】
〔実施例26〕
無機フィラーを35質量部に増やし、かつ、ケイ素原子を有する粒子の組成をシリカFS−2(表1参照)25質量%と石英粉末SI−4(表1参照)75質量%とした以外実施例1と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下、実施例1と同様に弾性ローラおよび現像ローラ26を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ26の画像評価も表3に示す。
【0137】
〔実施例27〕
ケイ素原子を有する粒子中のシリカとして、シリカFS−3(表1参照)を使用した以外実施例26と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下、実施例26と同様に弾性ローラおよび現像ローラ27を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ27の画像評価も表3に示す。
【0138】
〔比較例1〕
無機フィラーを4質量部に減らし、かつ、無機フィラーの組成をカーボンブラックCB−1(表1参照)92質量%およびケイ素原子を有する粒子8質量%とした以外実施例1と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下、実施例1と同様に弾性ローラおよび現像ローラ28を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ28の画像評価も表3に示す。
【0139】
〔比較例2〕
無機フィラーの組成をカーボンブラックCB−1(表1参照)45質量%およびケイ素原子を有する粒子55質量%とした以外比較例1と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下、比較例1と同様に弾性ローラおよび現像ローラ29を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ29の画像評価も表3に示す。
【0140】
〔比較例3〕
無機フィラーを36質量部に増やし、カーボンブラックとしてカーボンブラックCB−4(表1参照)を使用し、ケイ素原子を有する粒子の組成をシリカFS−4(表1参照)10質量%と石英粉末SI−1(表1参照)90質量%とした以外実施例1と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下、実施例1と同様に弾性ローラおよび現像ローラ30を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ30の画像評価も表3に示す。
【0141】
〔比較例4〕
無機フィラーを36質量部に増やし、カーボンブラックとしてカーボンブラックCB−4(表1参照)を使用し、ケイ素原子を有する粒子の組成をシリカFS−5(表1参照)3質量%と石英粉末SI−1(表1参照)97質量%とした以外実施例1と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下、実施例1と同様に弾性ローラおよび現像ローラ31を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ31の画像評価も表3に示す。
【0142】
〔比較例5〕
カーボンブラックとしてカーボンブラックCB−4(表1参照)を用いた以外実施例1と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下、実施例1と同様に弾性ローラおよび現像ローラ32を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ32の画像評価も表3に示す。
【0143】
〔比較例6〕
シリカとしてシリカFS−4(表1参照)を用いた以外実施例1と同様にシリコーンゴム組成物を得、以下、実施例1と同様に弾性ローラおよび現像ローラ33を製造した。無機フィラーの配合量および組成を表2に示す。さらに、弾性ローラのν1、ν2、ν3およびν4、ならびにν1/ν2およびν3/ν4を表3に示す。また、現像ローラ33の画像評価も表3に示す。
【0144】
【表2】

【0145】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明の弾性ローラの一例の斜視図である。
【図2】弾性層の架橋密度の測定領域を示す断面図である。
【図3】本発明の弾性ローラの製造に使用するリングコート機の概略説明図である。
【図4】本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図5】一次粒子の平均径測定のイメージ図である。
【符号の説明】
【0147】
1 現像ローラ
2 導電性軸芯体
3 弾性層
4 導電性樹脂層
5 非磁性一成分トナー
6 現像容器
7 トナー供給ローラ
8 現像ブレード
10a〜d 画像形成ユニット
11 感光ドラム
12 帯電装置(帯電ローラ)
13 画像露光装置(書き込みビーム)
14 現像装置
15 クリーニング装置
16 画像転写装置(転写ローラ)
17 転写搬送ベルト
18 駆動ローラ
19 テンションローラ
20 従動ローラ
21 吸着ローラ
22 供給ローラ
23 剥離装置
24 定着装置
25 転写材
26 バイアス電源(画像転写装置(転写ローラ)16用)
27 バイアス電源(吸着ローラ21用)
31 架台
32 コラム
33 ボールネジ
34 LMガイド
35 サーボモータ
36 プーリ
37 ブラケット
38 塗工ヘッド
39 軸芯体下保持軸
40 軸芯体上保持軸
41 供給口
42 配管
43 材料供給弁
44 リニアガイド
101 軸芯体
102 弾性層
102a 弾性層の表面からの深さ500μmまでの領域
102b 弾性層の表面からの深さ500μmから1000μmまでの領域
102c 弾性層の片端部より10mmまでの領域
102d 弾性層の片端部より10mmまでの領域(102cとは逆側)
301 粒子の投影面積の円相当径の円

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体の周りに無機フィラーを含むシリコーンゴム組成物からなる弾性層が形成され、かつ、該弾性層が下記条件A〜条件Cを満足することを特徴とする弾性ローラ。
条件A:無機フィラーの配合量が、シリコーンゴム100質量部に対し、5質量部以上35質量部以下である。
条件B:無機フィラーの組成が、ケイ素原子を有する粒子10質量%以上50質量%以下と平均一次粒径10nm以上40nm以下のカーボンブラック90質量%以下50質量%以上である。
条件C:ケイ素原子を有する粒子中、その5質量%以上25質量%以下が平均一次粒径7nm以上40nm以下のシリカである。
【請求項2】
弾性ローラの表面から深さ500μmまでの領域の架橋密度をν1、弾性ローラの表面からの深さが500μmから1000μmの領域の架橋密度をν2とした時に、ν1/ν2が0.80以上1.20以下であることを特徴とする請求項1に記載の弾性ローラ。
【請求項3】
弾性ローラの架橋密度ν1及びν2がいずれも5×10-5mol/cc以上5×10-4mol/cc以下であることを特徴とする請求項2に記載の弾性ローラ。
【請求項4】
弾性ローラの軸方向で、片端部から10mmまでの領域の架橋密度をν3、該片端部と反対の片端部から10mmの領域の架橋密度をν4とした時に、ν3/ν4が0.80以上1.25以下であることを特徴とする請求項1に記載の弾性ローラ。
【請求項5】
弾性ローラの架橋密度ν3及びν4がいずれも5×10-5mol/cc以上5×10-4mol/cc以下であることを特徴とする請求項4に記載の弾性ローラ。
【請求項6】
軸芯体の周りに無機フィラーを含むシリコーンゴム組成物からなる弾性層が形成され、該弾性層が下記条件A〜条件Cを満足する弾性ローラの製造方法であって、少なくとも下記工程ア〜工程ウを含むことを特徴とする弾性ローラの製造方法。
条件A:無機フィラーの配合量が、シリコーンゴム100質量部に対し、5質量部以上35質量部以下である。
条件B:無機フィラーの組成が、ケイ素原子を有する粒子10質量%以上50質量%以下と平均一次粒径10nm以上40nm以下のカーボンブラック90質量%以下50質量%以上である。
条件C:ケイ素原子を有する粒子中、その5質量%以上25質量%以下が平均一次粒径7nm以上40nm以下のシリカである。
工程ア:軸芯体と同心となるようにリング型の塗工ヘッドを配する。
工程イ:軸芯体を塗工ヘッドに対して相対的に軸方向に移動させ、該移動時に塗工ヘッドから軸芯体の外周上にシリコーンゴム組成物からなる弾性層材料を塗布する。
工程ウ:軸芯体上に塗布された弾性層材料を赤外線加熱により硬化する。
【請求項7】
弾性ローラの表面から深さ500μmまでの領域の架橋密度をν1、弾性ローラの表面からの深さが500μmから1000μmの領域の架橋密度をν2とした時に、ν1/ν2が0.80以上1.20以下であることを特徴とする請求項6に記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項8】
弾性ローラの架橋密度ν1及びν2がいずれも5×10-5mol/cc以上5×10-4mol/cc以下であることを特徴とする請求項7に記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項9】
弾性ローラの軸方向で、片端部から10mmまでの領域の架橋密度をν3、該片端部と反対の片端部から10mmの領域の架橋密度をν4とした時に、ν3/ν4が0.80以上1.25以下であることを特徴とする請求項6に記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項10】
弾性ローラの架橋密度ν3及びν4がいずれも5×10-5mol/cc以上5×10-4mol/cc以下であることを特徴とする請求項9に記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれか1項に記載の製造方法で製造されたことを特徴とする弾性ローラ。
【請求項12】
弾性ローラが現像ローラであることを特徴とする請求項1〜5及び11のいずれか1項記載の弾性ローラ。
【請求項13】
現像ローラとして、請求項12に記載の弾性ローラが組み込まれていることを特徴とする電子写真プロセスカートリッジ。
【請求項14】
現像ローラとして、請求項12に記載の弾性ローラが組み込まれていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−291298(P2007−291298A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−123506(P2006−123506)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】