説明

弾性表面波デバイスおよびその製造方法

【課題】
封止樹脂部に中空構造を有し信頼性を向上させることが可能な弾性表面波デバイスおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】
本発明は、圧電基板(10)と、圧電基板(10)上に設けられた電極と圧電基板からなる弾性表面波素子(12)と、圧電基板(10)上に設けられ、弾性表面波素子(12)上に空洞(18)を有する第1封止樹脂部(20)と、弾性表面波素子(12)を囲むように圧電基板(10)の表面に接し設けられた無機絶縁膜(22)と、を有することを特徴とする弾性表面波デバイスおよびその製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性表面波デバイスおよびその製造方法に関し、特に弾性表面波素子の上部に空洞を有する封止樹脂部を備えた弾性表面波デバイスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面弾性波デバイスは、例えば45MHz〜2GHzの周波数帯における無線信号を処理する各種回路、例えば送信用バンドパスフィルタ、受信用バンドパスフィルタ、局所発振フィルタ、アンテナ共用器、中間周波数フィルタ、FM変調器等に用いられている。近年これらの信号処理機器は小型化が進み、使用される弾性表面波デバイス等の電子部品も小型化が求められている。弾性表面波素子デバイスに用いる弾性表面波素子は圧電基板上に金属膜を用い、すだれ電極(IDT:Interdigital Transducer)や反射器を形成したものである。
【0003】
特に移動体電話端末等の携帯用電子機器においては、電子部品をモジュール化して用いることが多くなってきている。そのため、表面実装可能で、低背の弾性表面波デバイスが求められる。同時に、弾性表面波素子の特性を維持するためには弾性表面波素子の機能部分(振動部分)であるIDTの電極指上面に空洞を設けることが求められ、かつ弾性表面波素子の信頼性確保のためには空洞の気密性を確保することが求められている。
【0004】
このような要求を満たすために、弾性表面波素子内の機能部分に接する空洞を有する封止樹脂部を設けた構造(いわゆる中空構造)を形成する方法が提案されている。特許文献1には、弾性表面波素子上に空洞となるべき領域に溶解用樹脂を形成し、溶解用樹脂上に上部板を形成した後、溶解用樹脂を除去することにより中空構造を形成する方法(従来例1)が開示されている。特許文献2には、電気的構造素子を包囲するフレーム構造体を形成し、電気的構造素子上が空洞になるように、フレーム構造体上に補助フィルムを貼り、その上に樹脂層を形成し、フレーム構造体の屋根部分以外を除去することにより中空構造を形成する方法(従来例2)が開示されている。特許文献3には、弾性表面波素子を形成した圧電基板上に樹脂フィルムを貼り、弾性表面波素子が複数設けられた基板の機能部分上部の樹脂フィルムを開口し、樹脂フィルム上に回路基板を接着し中空構造を形成する方法(従来例3)が開示されている。特許文献4には、弾性表面波素子を複数設けた基板上に感光性樹脂を形成し、弾性表面波素子の機能部分上部の感光性樹脂を開口し、その上に配線基板集合体の基板を実装し、ダイシングで分割することにより中空構造を形成する方法(従来例4)が開示されている。特許文献5には、弾性表面波素子を包囲する保護部材を形成し、保護部材および弾性表面波素子の機能部分を覆うように保護フィルムを形成し中空構造を形成する方法(従来例5)が開示されている。
【特許文献1】特許3291046号公報
【特許文献2】特表2003−523082号公報
【特許文献3】特開3196693号公報
【特許文献4】特開3225906号公報
【特許文献5】特開2004−153412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来例1ないし4の方法で形成された中空構造では、圧電基板上に樹脂が形成されており、信頼性が十分ではない。従来例5の方法で形成された中空構造では、保護フィルムと圧電基板との接着を熱圧着または接着剤を使用することが必要であり、信頼性が十分ではない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、封止樹脂部に中空構造を有し信頼性を向上させることが可能な弾性表面波デバイスおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、圧電基板と、該圧電基板上に設けられた電極と前記圧電基板とからなる弾性表面波素子と、前記圧電基板上に設けられ、前記弾性表面波素子上に空洞を有する第1封止樹脂部と、前記弾性表面波素子を囲むように前記圧電基板の表面に接し設けられた無機絶縁膜と、を具備することを特徴とする弾性表面波デバイスである。本発明によれば、圧電基板と無機絶縁膜との間の密着が強くなり、信頼性を向上させることができる。
【0008】
本発明は、前記無機絶縁膜は、前記第1封止樹脂部を覆うように設けられたことを特徴とする弾性表面波デバイスとすることができる。本発明によれば、第1封止樹脂部の水分の吸収を抑制し、一層信頼性を向上させることができる。
【0009】
本発明は、前記無機絶縁膜上に第2封止樹脂部が設けられたことを特徴とする弾性表面波デバイスとすることができる。本発明によれば、第2封止樹脂部を設けたことにより無機絶縁膜を保護することができる。
【0010】
本発明は、前記弾性表面波素子と電気的に接続する接続部を具備し、前記接続部は前記無機絶縁膜および前記第2の樹脂封止部を貫通し設けられたことを特徴とする弾性表面波デバイスとすることができる。本発明によれば、接続部を設けたことにより表面実装が可能となる。
【0011】
本発明は、前記接続部は前記第1の樹脂封止部を貫通して設けられたことを特徴とする弾性表面波デバイスとすることができる。
【0012】
本発明は、前記接続部に接する前記第2封止樹脂部の上面は、前記弾性表面波素子の上方の前記第2封止樹脂部の上面より低いことを特徴とする弾性表面波デバイスとすることができる。本発明によれば、弾性表面波デバイスの低背化が可能となる。
【0013】
本発明は、前記無機絶縁膜は、酸化シリコン膜および窒化シリコン膜の少なくとも一方を含むことを特徴とする弾性表面波デバイスとすることができる。本発明によれば、圧電基板と無機絶縁膜との密着性をより向上させることができる。
【0014】
本発明は、前記第1封止樹脂部および前記第2封止樹脂部は、エポキシ樹脂およびポリイミド樹脂の少なくとも一方を含むことを特徴とする弾性表面波デバイスとすることができる。本発明によれば、容易に中空構造を有する封止樹脂部を形成することができる。
【0015】
本発明は、圧電基板上に弾性表面波素子を形成する工程と、前記圧電基板上に、前記弾性表面波素子上に空洞を有する第1封止樹脂部を形成する工程と、前記第1封止樹脂部上および前記第1封止樹脂部を囲む圧電基板の表面上に無機絶縁膜を形成する工程と、を有する弾性表面波デバイスの製造方法である。本発明によれば、圧電基板と無機絶縁膜との間の密着が強くなり、信頼性を向上させることができる。
【0016】
本発明は、前記無機絶縁膜上に第2封止樹脂部を形成する工程を有する弾性表面波デバイスの製造方法とすることができる。本発明によれば、第2封止樹脂部を形成することにより無機絶縁膜を保護することができる。
【0017】
本発明は、前記無機絶縁膜および前記第1の樹脂部を貫通する開口部を形成する工程と、前記開口部に前記弾性表面波デバイスと電気的に接続する接続部を形成する工程と、を有する弾性表面波デバイスの製造方法とすることができる。本発明によれば、接続部を形成することにより表面実装が可能となる。
【0018】
本発明は、前記無機絶縁膜を形成する工程は、酸化シリコン膜をTEOS−CVD法で形成する工程および窒化シリコン膜をCVD法で形成する工程の少なくとも1つを含むことを特徴とする弾性表面波デバイスの製造方法とすることができる。本発明によれば、圧電基板と無機絶縁膜との密着性をより向上させることができる。
【0019】
本発明は、前記第1封止樹脂部を形成する工程は、前記圧電基板上に感光性樹脂層を形成する工程と、感光性樹脂に光を照射することにより前記空洞を形成する工程と、を含むことを特徴とする弾性表面波デバイスの製造方法とすることができる。本発明によれば、第1封止樹脂部に簡単に空洞を形成することができる。
【0020】
本発明は、前記圧電基板を前記チップ分離領域より切断する工程を有することを特徴とする弾性表面波デバイスの製造方法とすることができる。本発明によれば、無機絶縁膜を形成することにより、切断工程における第1封止樹脂部への水分の吸収を抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、封止樹脂部に中空構造を有し信頼性を向上させることが可能な弾性表面波デバイスおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
まず、従来例1ないし5の課題を明確にするため、比較例として封止樹脂部に中空構造を有する弾性表面波デバイスの信頼性試験としてプレッシャクッカ(PCT)試験を行った結果について説明する。図1(a)ないし図1(c)はPCT試験を行った弾性表面波デバイスを示す図である。図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のA−A断面図、図1(c)は図1(a)のB−B断面図である。なお、図1(a)においては、第1封止樹脂部20を透視して弾性表面波素子12、配線16および空洞18を図示し、弾性表面波素子12および配線16は実線、空洞18は破線で示している。図1(a)および図1(b)を参照に、圧電基板10上に金属膜で形成されたIDT、反射器等の電極と圧電基板10とからなる弾性表面波素子12が設けられ、さらに圧電基板10上には弾性表面波素子12の機能部分上に空洞18を有する封止樹脂部20が設けられている。
【0023】
図1(a)および図1(c)を参照に、圧電基板10上に配線16が形成され、配線上に封止樹脂部20が設けられている。封止樹脂部20を貫通するプラグ金属30が設けられ、弾性表面波素子12とプラグ金属30とは配線16により接続されている。プラグ金属30上にはハンダボール32が設けられる。このように、弾性表面波素子12は中空構造を有する封止樹脂部20に封止され、配線16、プラグ金属30を介しハンダボール32に接続される。
【0024】
上記比較例に係る弾性表面波デバイスを、温度120℃、湿度100%RH、印加圧力2気圧、暴露時間100時間のPCT試験を行ったところ、封止樹脂部20の剥離が発生した。本発明者らが、剥離の原因を調査したところ、中空構造を有する封止樹脂部20がPCT試験中に水分を吸収し樹脂が膨潤することが原因であることが判明した。図2(a)ないし図2(b)は、このことを説明するための図である。図2(a)は図1(b)と同様の図であり同じ部材は同じ符号を付し説明を省略する。図2(b)は図2(a)の円で示した封止樹脂部20と圧電基板10の界面を示した図である。
【0025】
図2(b)を参照に、封止樹脂部20は水分を吸収することで膨張し、右方向の矢印のように力が加わる。圧電基板10と封止樹脂部20の界面付近の圧電基板10には左方向の矢印のように保持しようとする力が加わる。圧電基板10と封止樹脂部20との間に圧電基板10と封止樹脂部20との密着力より強い応力が加わると、封止樹脂部20の剥離が生じる。そうすると、封止樹脂部20に多くの水分が吸収されさらに封止樹脂部20が膨張し、さらに封止樹脂部20が剥離する。このようにして、封止樹脂部20が剥離してしまう。中空構造を有する封止樹脂部20では、デバイスを小型化するためには圧電基板10と封止樹脂部20とが密着する領域は小さくすることが好ましく、そうすると、さらに封止樹脂部20が剥離しやすくなる。このように、従来例1ないし4のように封止樹脂部が圧電基板に直接接する構造では、PCT試験により封止樹脂部が剥離してしまう。以下、中空構造を有する封止樹脂部20の圧電基板10からの剥離を抑制し信頼性を向上させることが可能な弾性表面波デバイスの実施例を図面を参照に説明する。
【実施例1】
【0026】
図3(a)は実施例1に係る弾性表面波デバイスの平面図、図3(b)は図3(a)のA−A断面図、図3(c)は図3(a)のB−B断面図である。なお、図3(a)においては、第1封止樹脂部20を透視して弾性表面波素子12、配線16および空洞18を図示し、弾性表面波素子12および配線16は実線、空洞18は破線で示している。また、無機絶縁膜22と圧電基板10が接する領域26をハッチで示している。図3(a)および図3(b)を参照に、弾性表面波デバイスは、圧電基板(LiTaOまたはLNbO)上に設けられたAl等の金属膜を用い形成されたIDTおよび反射器等の電極と圧電基板10とからなる弾性表面波素子12を有している。弾性表面波素子12の機能部分上に接する空洞18を有しエポキシ樹脂を含む第1封止樹脂部20が設けられている。空洞18は2つの弾性表面波素子12上にそれぞれ2箇所設けられている。第1封止樹脂部20を覆い、第1封止樹脂部20の周囲の圧電基板10上に接するように領域26に無機絶縁膜22が設けられている。無機絶縁膜22としては酸化シリコン膜または窒化シリコン膜が用いられる。無機絶縁膜22上にエポキシ樹脂またはポリイミド樹脂を含む第2封止樹脂部24が設けられている。
【0027】
図3(a)および図3(c)を参照に、圧電基板10上にAl当の金属膜からなる配線16が形成されている。配線16は弾性表面波素子12と後述するプラグ金属30を接続する。配線16および圧電基板10上に第1封止樹脂部20が設けられている。第1封止樹脂部20を覆い、第1封止樹脂部20の周囲およびプラグ金属周辺の圧電基板10上に接するように無機絶縁膜22が設けられている。無機絶縁膜22上に第2封止樹脂部24が設けられている。このように、第1封止樹脂部20を囲むように、すなわち弾性表面波素子12を囲むような領域26の圧電基板10の表面に設けられた無機絶縁膜22が設けられている。
【0028】
次に、図4(a)ないし図8(f)を用い実施例1に係る弾性表面波デバイスの製造方法について説明する。図4(a)ないし図4(c)、図5(a)および図5(b)、図6(a)ないし図6(c)、図7(a)ないし図7(c)並びに図8(a)ないし図8(c)は図3(a)のA−A断面に相当する断面の製造工程を示した図である。一方、図4(d)ないし図4(f)、図5(c)および図5(d)、図6(d)ないし図6(f)、図7(d)ないし図7(f)並びに図8(d)ないし図8(f)は図3(a)のB−B断面に相当する断面の製造工程を示した図である。また、図4(a)ないし図8(f)は、ウェハ状態の圧電基板10を用いで行われる製造工程であり、複数の弾性表面波デバイスとなるべき領域がウェハ上に存在するが、1つの複数の弾性表面波デバイスとなるべき領域を図示して説明する。図中のチップ分離領域64は複数の弾性表面波デバイスとなるべき領域を、例えばダイシングで分離するための領域である。
【0029】
図4(a)および図4(d)を参照に、圧電基板10(LiTaO、LiNbO等)上にAlを用い金属膜を形成し、弾性表面波素子12および配線16を形成する。配線16上のプラグ金属30を形成すべき領域に電極17を形成する。図4(b)および図4(e)を参照に、圧電基板10、弾性表面波素子12および配線16上に照射部が現像されなくなるネガ型の感光性を有するエポキシ樹脂19を20μm程度塗布しポストベークする。図4(c)および図4(f)を参照に、マスクを用い紫外線(UV光)を、感光性樹脂19の弾性表面波素子12の機能部分上の空洞18を形成すべき領域、電極17およびチップ分離領域64以外の領域に照射する。
【0030】
図5(a)および図5(c)を参照に、感光性樹脂19を現像することで、紫外線(UV光)を照射していない領域の感光性樹脂19を除去する。これにより、感光性樹脂19に空洞となるべき開口部60、電極17周辺の開口部62、チップ分離領域64の開口部が形成される。さらに、窒素雰囲気中の200℃で1時間熱処理することで感光性樹脂19を硬化させる。図5(b)および図5(d)を参照に、保護フィルム52に塗られたフィルム状のネガ型感光性樹脂21をラミネータ等の押し付けロール50を用い、感光性樹脂19上に押し付け貼り付ける。
【0031】
図6(a)および図6(d)を参照に、電極17上およびチップ分離領域64以外の領域に紫外線を照射する。図6(b)および図6(e)を参照に、保護フィルム52を剥がし、現像することにより紫外線を照射していない領域の感光性樹脂21を除去する。さらに、窒素雰囲気中の200℃で1時間熱処理することで感光性樹脂21を硬化させる。以上により、圧電基板10上に、弾性表面波素子12上に空洞18を有し、感光性樹脂19および21よりなる第1封止樹脂部20を形成する。このとき、プラグ金属30が形成されるべき領域の周囲には第1封止樹脂部20を貫通する開口部40、チップ分離領域64に開口部が形成される。図6(c)および図6(f)を参照に、第1封止樹脂部20上、第1封止樹脂部20を囲む領域、および開口部40の圧電基板10の表面上に無機絶縁膜22を形成する。無機絶縁膜22はTEOS−CVD法(テトラエチルオルソシリケーを用いた化学気相成長法)を用い約1μmの膜厚を有する酸化シリコン膜を成膜する。
【0032】
図7(a)および図7(d)を参照に、無機絶縁膜22上にネガ型感光性のエポキシ樹脂を含む第2封止樹脂部24を10μm程度塗布する。図7(b)および図7(e)を参照に、マスクを用い、第1封止樹脂部20を覆うような第2封止樹脂部24を残存させるように紫外線(UV光)を照射し、現像する。窒素雰囲気中の200℃で1時間熱処理し第2封止樹脂部24を硬化させる。これにより、無機絶縁膜22上に第2封止樹脂部24を形成する。このとき、第2封止樹脂部24にプラグ金属30を形成すべき開口部42、チップ分離領域64の開口部が形成される。図7(c)および図7(f)を参照に、第2封止樹脂部24をマスクに無機絶縁膜22をCF4と酸素を混合したガスを用いドライエッチングする。無機絶縁膜22のエッチングは電極16としてAlの代わりに例えばAuを用いた場合は弗酸溶液を用いても良い。Alは弗酸でエッチングされるがAuはエッチングされないためである。この工程により、開口部42下およびチップ分離領域64の無機絶縁膜22がエッチングされ、第1封止樹脂部20(つまり弾性表面波素子12)を囲む圧電基板10の表面に接するように無機絶縁膜22が形成される。また、第1封止樹脂部20、第2封止樹脂部24および無機絶縁膜22を貫通する開口部42が形成される。このようにして、無機絶縁膜22上に第2封止樹脂部24を形成する。
【0033】
図8(a)および図8(d)を参照に、開口部42内にNi、CuまたはAu等を無電解メッキし導電性のプラグ金属30を形成する。プラグ金属30は銀ペースト等の導電性物質を印刷で開口部42内に充填する方法で形成しても良い。図8(b)および図8(e)を参照に、プラグ金属30上に、プラグ金属30に接続するハンダボール32を形成する。以上により、弾性表面波素子12と電気的に接続するプラグ金属30およびハンダボール32(接続部)が形成される。図8(c)および図8(f)を参照に、チップ分離領域64の圧電基板10をダイシングにより切断する。以上により、実施例1に係る弾性表面波デバイスが完成する。
【0034】
実施例1に係る弾性表面波デバイスによれば、領域26のように弾性表面波素子12を全て囲むように圧電基板10の表面に接し設けられた無機絶縁膜22を有している。これにより、圧電基板10と無機絶縁膜22との間の強い密着により、比較例のようなPCT試験による第1封止樹脂部20または第2封止樹脂部24の剥離を抑制することができる。
【0035】
さらに、無機絶縁膜22が第1封止樹脂部20を覆うように設けられている。無機絶縁膜22は樹脂に比べ吸湿性が小さく、水分の浸透性が弱い。よって、無機絶縁膜22を設けることにより、第1封止樹脂部20に水分が吸収することを抑制できる。よって、第1封止樹脂部20の膨張を抑制し、これにより、比較例のようなPCT試験による第1封止樹脂部20または第2封止樹脂部24の剥離を抑制することができる。
【0036】
さらに、無機絶縁膜22上に第2封止樹脂部24が設けられている。これにより、無機絶縁膜22を保護することができる。また、容易にプラグ金属30やハンダボール32を形成することができる。第1封止樹脂部20はエポキシ樹脂とし、第2封止樹脂部24をポリイミド樹脂を用いることにより、図8(b)および図8(e)でハンダボール32を形成した後に、ヒドラジン等を用い、第2封止樹脂部24を除去することもできる。また、図7(a)および図7(d)において、樹脂の代わりにレジストを用い、図8(b)および図8(e)において、レジストを除去することもできる。このように、第2封止樹脂部24を設けない場合、封止樹脂部の高さを低くでき、弾性表面波デバイスの低背化が可能となる。
【0037】
さらに、弾性表面波素子12と電気的に接続するプラグ金属30およびハンダボール(接続部)を有している。プラグ金属30(接続部)は無機絶縁膜22および第2封止樹脂部24を貫通し設けられている。このように、無機絶縁膜22および第2封止樹脂部24を貫通し表面より弾性表面波素子12に電気的に接続する接続部を設けることにより、表面実装が可能となる。さらに、プラグ金属30(接続部)は第1封止樹脂部20をも貫通して設けられている。
【0038】
無機絶縁膜22として、酸化シリコン膜または窒化シリコン膜を含む膜を用いることができる。酸化シリコン膜または窒化シリコン膜を用いることにより、圧電基板10と無機絶縁膜22との密着性をより向上させることができる。酸化シリコン膜を用いることにより、被覆性が向上する。また窒化シリコン膜を用いることにより被覆性は酸化シリコン膜よりは低下するものの、吸湿性は酸化シリコン膜よりも向上させることができる。また、無機絶縁膜22の形成は、無機絶縁膜22を化学気相法で形成する方法を用いることができる。これにより、圧電基板10との密着性の良い無機絶縁膜22を形成することができる。実施例1のように、酸化シリコン膜をTEOS−CVD法で形成することにより、被覆性のよい無機絶縁膜22を形成することができる。窒化シリコン膜をCVD(化学気相成長)法で形成することにより、吸湿性の低い窒化シリコン膜を形成することもできる。
【0039】
第1封止樹脂部20および第2封止樹脂部24として、エポキシ樹脂またはポリイミド樹脂を含む樹脂を用いることができる。これらの樹脂を用いることにより、容易に中空構造を有する封止樹脂部を形成することができる。また、一般に、エポキシ樹脂はポリイミド樹脂に比べ、吸湿性は低いが耐熱性は低い。いずれの樹脂を用いるかは、これらを考慮し選択することができる。
【0040】
図7(c)および図7(f)において、圧電基板10のチップ分離領域64上の無機絶縁膜22を除去し、図8(c)および図8(f)のように、圧電基板10をチップ分離領域64より切断している。圧電基板10の切断はダイシングを用いることが多い。ダイシングは水を使用するため、封止樹脂部に水分が吸収しやすい。そこで、実施例1のように、ダイシングを行う前に、無機絶縁膜22を形成することにより、第1封止樹脂部20への水分の吸収を抑制することができる。
【実施例2】
【0041】
図9(a)は実施例2に係る弾性表面波デバイスの平面図、図9(b)は図9(a)のA−A断面図、図9(c)は図9(a)のB−B断面図である。図3(a)ないし図3と比較し、第1封止樹脂部20は空洞28の周辺部に形成されており、プラグ金属30は第1封止樹脂部20を貫通していない。その他の構成は、図3(a)ないし図3(b)と同じであり、同じ部材は同じ符号を付し説明を省略する。
【0042】
図10(a)ないし図11(f)を用い実施例2に係る弾性表面波デバイスの製造方法について説明する。図10(a)ないし図10(c)並びに図11(a)ないし図11(c)は図9(a)のA−A断面に相当する断面の製造工程を示した図である。一方、図10(d)ないし図10(f)並びに図12(d)ないし図12(f)は図9(a)のB−B断面に相当する断面の製造工程を示した図である。
【0043】
図10(a)および図10(d)を参照に、図4(a)および図4(d)から図6(b)および図6(e)と同様な方法を用い、圧電基板10上に、弾性表面波素子12の機能部分上に接する空洞18を有する第1封止樹脂部20を形成する。図10(b)および図10(e)を参照に、第1封止樹脂部20上および第1封止樹脂部を囲む領域の圧電基板10の表面上に無機絶縁膜22を形成する。図10(c)および図10(f)を参照に、実施例1と同様に、無機絶縁膜22上に第2封止樹脂部24を10μm程度塗布する。図11(a)および図11(d)を参照に、実施例1と同様の方法を用い、プラグ金属30を形成すべき開口部48およびチップ分離領域64の開口部の第2封止樹脂部24を除去する。図11(b)および図11(e)を参照に、第2封止樹脂部24をマスクに無機絶縁膜22をエッチングする。第1封止樹脂部20(つまり弾性表面波素子12)を囲む圧電基板10の表面に接するように無機絶縁膜22が形成される。また、第2封止樹脂部24および無機絶縁膜22を貫通する開口部48が形成される。
【0044】
図11(c)および図11(f)を参照に、開口部48内にプラグ金属30を形成する。プラグ金属30上に、プラグ金属30に接続するハンダボール32を形成する。チップ分離領域64の圧電基板10をダイシングにより切断する。以上により、実施例2に係る弾性表面波デバイスが完成する。
【0045】
実施例2によれば、プラグ金属30およびハンダボール32の周辺に第1封止樹脂部20が形成されていない。そのため、プラグ金属30およびハンダボール32(接続部)に接する第2封止樹脂部24の上面は、弾性表面波素子12の上方の第2封止樹脂部24の上面より図11(c)および図11(f)中に図示した高さH分低い。よって、実施例1に比べ低背化が可能となる。実施例2においては、弾性表面波素子12の上方の第2封止樹脂部24の上面の高さは圧電基板10より約50μmであるのに対し、プラグ金属30およびハンダボール32(接続部)に接する第2封止樹脂部24の上面の圧電基板10からの高さを約30μmとすることができる。
【0046】
実施例1および実施例2では、弾性表面波素子12および空洞18はそれぞれ2つづつ形成されているが、これらの数に限られるものではない。また、接続部としてプラグ金属30およびハンダボール32の例を示したが、弾性表面波素子12と外部とを電気的に接続する機能を有するものであれば良い。さらに、無機絶縁膜22として酸化シリコン膜、窒化シリコン膜の例を示したが、これらに限られず圧電基板10との密着が強い膜であれば良い。例えば、酸化窒化シリコン膜や酸化アルミニウム膜等も使用できる。第1封止樹脂部20および第2封止樹脂部24として、エポキシ樹脂またはポリイミド樹脂の例を示したが、これらに限られず、弾性表面波素子12を保護する樹脂であれば良い。
【0047】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1(a)は比較例に係る弾性表面波デバイスの平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A断面図であり、図1(c)は図1(a)のB−B断面図である。
【図2】図2(a)および図2(b)は比較例に係る弾性表面波デバイスにおいて、PCT試験により封止樹脂部に剥離が生じた原因を説明するための図である。
【図3】図3(a)は実施例1に係る弾性表面波デバイスの平面図であり、図3(b)は図3(a)のA−A断面図であり、図3(c)は図3(a)のB−B断面図である。
【図4】図4(a)ないし図4(f)は実施例1に係る弾性表面波デバイスの製造工程を示す断面図(その1)である。
【図5】図5(a)ないし図5(d)は実施例1に係る弾性表面波デバイスの製造工程を示す断面図(その2)である。
【図6】図6(a)ないし図6(f)は実施例1に係る弾性表面波デバイスの製造工程を示す断面図(その3)である。
【図7】図7(a)ないし図7(f)は実施例1に係る弾性表面波デバイスの製造工程を示す断面図(その4)である。
【図8】図8(a)ないし図8(f)は実施例1に係る弾性表面波デバイスの製造工程を示す断面図(その5)である。
【図9】図9(a)は実施例2に係る弾性表面波デバイスの平面図であり、図9(b)は図9(a)のA−A断面図であり、図9(c)は図9(a)のB−B断面図である。
【図10】図10(a)ないし図10(f)は実施例2に係る弾性表面波デバイスの製造工程を示す断面図(その1)である。
【図11】図11(a)ないし図11(f)は実施例2に係る弾性表面波デバイスの製造工程を示す断面図(その2)である。
【符号の説明】
【0049】
10 圧電基板
12 弾性表面波素子
16 配線
18 空洞
20 第1封止樹脂部
22 無機絶縁膜
24 第2封止樹脂部
26 領域
30 プラグ金属
32 ハンダボール
64 チップ分離領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
該圧電基板上に設けられた電極と前記圧電基板とからなる弾性表面波素子と、
前記圧電基板上に設けられ、前記弾性表面波素子上に空洞を有する第1封止樹脂部と、
前記弾性表面波素子を囲むように前記圧電基板の表面に接し設けられた無機絶縁膜と、を具備することを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項2】
前記無機絶縁膜は、前記第1封止樹脂部を覆うように設けられたことを特徴とする請求項1記載の弾性表面波デバイス。
【請求項3】
前記無機絶縁膜上に第2封止樹脂部が設けられたことを特徴とする請求項1または2記載の弾性表面波デバイス。
【請求項4】
前記弾性表面波素子と電気的に接続する接続部を具備し、
前記接続部は前記無機絶縁膜および前記第2の樹脂封止部を貫通し設けられたことを特徴とする請求項3記載の弾性表面波デバイス。
【請求項5】
前記接続部は前記第1の樹脂封止部を貫通して設けられたことを特徴とする請求項4記載の弾性表面波デバイス。
【請求項6】
前記接続部に接する前記第2封止樹脂部の上面は、前記弾性表面波素子の上方の前記第2封止樹脂部の上面より低いことを特徴とする請求項3記載の弾性表面波デバイス。
【請求項7】
前記無機絶縁膜は、酸化シリコン膜および窒化シリコン膜の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載の弾性表面波デバイス。
【請求項8】
前記第1封止樹脂部および前記第2封止樹脂部は、エポキシ樹脂およびポリイミド樹脂の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項3から7のいずれか一項記載の弾性表面波デバイス。
【請求項9】
圧電基板上に弾性表面波素子を形成する工程と、
前記圧電基板上に、前記弾性表面波素子上に空洞を有する第1封止樹脂部を形成する工程と、
前記第1封止樹脂部上および前記第1封止樹脂部を囲む圧電基板の表面上に無機絶縁膜を形成する工程と、を有する弾性表面波デバイスの製造方法。
【請求項10】
前記無機絶縁膜上に第2封止樹脂部を形成する工程を有する請求項9記載の弾性表面波デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記無機絶縁膜および前記第1封止樹脂部を貫通する開口部を形成する工程と、
前記開口部に前記弾性表面波デバイスと電気的に接続する接続部を形成する工程と、を有する請求項9または10記載の弾性表面波デバイスの製造方法。
【請求項12】
前記無機絶縁膜を形成する工程は、酸化シリコン膜をTEOS−CVD法で形成する工程および窒化シリコン膜をCVD法で形成する工程の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項9から11のいずれか一項記載の弾性表面波デバイスの製造方法。
【請求項13】
前記第1封止樹脂部を形成する工程は、前記圧電基板上に感光性樹脂層を形成する工程と、
感光性樹脂に光を照射することにより前記空洞を形成する工程と、を有することを特徴とする請求項9から12のいずれか一項記載の弾性表面波デバイスの製造方法。
【請求項14】
前記圧電基板を前記チップ分離領域より切断する工程を有することを特徴とする請求項9から13記載の弾性表面波デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−104264(P2007−104264A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−290969(P2005−290969)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(398067270)富士通メディアデバイス株式会社 (198)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】