説明

微細樹脂構造体及び光電回路基板の製造方法、微細樹脂構造体及び光電回路基板

【課題】表面に段差を有する基板の該段差部に微細樹脂構造体を形成する場合において、高い平坦性を有する樹脂構造体を製造する方法等を提供することを目的とする。
【解決手段】固体エポキシ樹脂と液状エポキシ樹脂と光重合開始剤を配合することによって得られる、加熱により溶融軟化する固体光硬化性樹脂組成物を用い、(a)表面に段差を有する基板を覆うように、固体光硬化性樹脂組成物からなる未硬化樹脂層を形成する工程、(b)未硬化樹脂層を溶融又は軟化する温度に加熱した状態で、その表面に平板を押圧接触させ、未硬化樹脂層が再固形化する温度にまで冷却して平板を除去することにより、平坦面を有する一次成形体を形成する平坦化工程、(c)一次成形体の上面側から、マスクを用いて選択露光することにより所定領域のみを硬化させる工程、(d)選択硬化された一次成形体の未露光部分を現像除去することにより樹脂構造体を形成する工程、を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に光導波路等の微細な樹脂構造体を形成するための微細樹脂構造体の製造方法、及びその製造方法によって得られる微細樹脂構造体、微細樹脂構造体である光導波路を備える光電回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体の加工技術を応用して作製されるMEMS(Micro Electrical-Mechanical System)とよばれる微細なセンサや光学デバイス、及びSoC(System on Chip)と呼ばれる1つのチップに多種類の素子を集積する技術の利用が発展している。このようなMEMSやSoCの要素技術として、半導体基板の表面に光導波路等の微細立体構造物を形成するための技術が検討されている。しかしながら、半導体基板表面に樹脂製の微細立体構造物を形成することは容易でない。半導体基板表面に樹脂製の微細立体構造物を形成する方法としては、従来から、液状の樹脂材料を繰り返して塗布することにより、数10μmオーダーの厚みの微細構造体を形成する方法が知られている。具体的には、例えば、下記特許文献1には、厚肉塗布の可能な液状の光硬化性樹脂を基板上に塗布し、光透過性平坦化部材を用いて平坦化した後、該光透過性平坦化部材を通して所定領域のみに光照射することにより所定パターンの光硬化樹脂層を形成し、この操作を積層方向に繰り返すことにより立体造形物を形成する方法が開示されている。そして、所定パターンの光硬化樹脂層を形成する手法として、マスクを用いて光照射領域を規制して選択硬化させる方法が開示されている。
【0003】
また、下記特許文献2には、常温では固形で加熱することによって低粘度化し、UV照射により光硬化する樹脂材料(Micro Chem社製の商品名「NANO SU-8」)を用いて、このような樹脂材料で基板表面に樹脂層を形成した後、加熱により樹脂層を低粘度化し、さらに、低粘度の樹脂層に微細型形状を転写した後、樹脂層が冷却固化する温度に冷却してから離型し、次いで、フォトマスクを用いた選択UV露光によって所定部分のみを光硬化した後、現像により未硬化部を除去して光硬化した樹脂構造体を得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−47521号公報
【特許文献2】特開2004−200577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような方法により微細樹脂構造体を形成しようとする場合、次のような課題があった。
【0006】
複雑化するMEMSやSoCにおいては、微細樹脂構造体の高さ(厚み)や平坦性に関して、ミクロンオーダーの制御が要求される。一般的な塗布方法であるスピンコート法を用いて基板表面に液状樹脂を塗布した場合には、塗布された液状樹脂表面にスピンマークによるミクロンオーダーの凹凸が形成されることにより塗布表面の高さが不均一になるという問題があった。具体的には、例えば、光導波路を形成するための溝を含む基板表面にコアを形成するための液状樹脂を塗布した場合、溝の窪みの影響やスピンマーク等の影響により樹脂層の厚みが不均一になるという問題があった。そして、このような場合には、光導波路の経路における任意の複数箇所において、コアの高さが異なることになる。特に、比較的面積が大きな基板上に、長い光導波路や複数の光導波路を形成するような場合においては、塗布表面の高さの不均一さの影響を受けることにより、光導波路中の経路全体におけるコアの高さが不均一になったり、複数のコア同士の高さが不均一になりやすくなったりする。このような表面の高さの不均一さは、例えば光導波路のような光素子においては、伝播損失を大きくする等の要因になる。
【0007】
特許文献1に開示されたような、液状光硬化性樹脂を基板上に塗布し、光透過性平坦化部材を通して所定領域のみに光照射して所定パターンの光硬化樹脂層を形成する方法を用いた場合には、光透過性平坦化部材を除去するときに液状で未硬化の光硬化性樹脂材料が硬化した樹脂構造体の表面に飛び散って付着するという問題があった。また、除去された光透過性平坦化部材には、未硬化の液状光硬化性樹脂が付着しているために、使用するたびごとに光透過性平坦化部材を洗浄する必要があった。
【0008】
また、例えば、光導波路用の溝に特許文献2に開示されているような市販の「NANO SU-8」を、一般的なスピンコート法により塗布した場合、溝の存在の影響を受けて樹脂の均一な広がりが妨げられ、塗布面にスピンマークや凹凸ができる。その結果、平坦な塗布表面が得られない。また、「NANO SU-8」は、硬度や剛性などの機械特性、透過率や屈折率などの光学特性、離型性に影響するタック性等が固定されたものであるために諸特性を自由に調整することもできなかった。例えば、屈折率を調整する場合、屈折率を上げたり、もしくは下げたりするための第三成分を追加配合することになるが、「NANO SU-8」と第三成分との相溶性を適合させる問題や、本来の性質(機械特性、透明性など)を維持するには第三成分の配合量を大きくすることができず、従って屈折率も大きくは調整できないという問題があった。また、型の離型性がわるかったり、構造体の機械的特性が低かったりしてもそれらの特性を調整する方法がなかった。また、非常に高価であるという欠点もあった。
【0009】
本発明は、光導波路を形成するための溝のような段差表面を有する基板の表面に微細樹脂構造体を形成する場合において、例え、長い微細構造体や、複数の微細構造体を形成する場合であっても、均一な高さの微細構造体であって、各種物性バランスが調整された微細構造体が得られるような製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一局面の微細樹脂構造体の製造方法は、表面に溝のような段差を有する基板に微細樹脂構造体を形成するための微細樹脂構造体の製造方法であって、常温(25℃)で固体のエポキシ樹脂(以下、単に、固体エポキシ樹脂と呼ぶことがある)と常温で液状のエポキシ樹脂(以下、単に、液状エポキシ樹脂と呼ぶことがある)とを所定の比率で配合し、さらに光重合開始剤を配合することによって得られる加熱により溶融又は軟化する常温で固体の光硬化性樹脂組成物を用い、下記(a)〜(d)の工程:(a)前記基板に前記光硬化性樹脂組成物のワニスを塗布した後、該ワニス中の溶剤を揮発除去させることにより固体の光硬化性樹脂層を形成する樹脂層形成工程、(b)前記光硬化性樹脂層を溶融又は軟化する温度に加熱した状態で、前記光硬化性樹脂層の表面に平板を前記基板表面と平行を維持した状態で押圧接触させ、押圧接触状態を保持したまま該光硬化性樹脂組成物が固化する温度にまで冷却し、前記平板を離間させることにより平坦面を有する一次成形体を形成する平坦化工程、(c)前記一次成形体の平坦面側から、硬化させる領域を除く部分をマスクして選択露光することにより、該領域のみを選択硬化させる硬化工程、(d)選択硬化された前記一次成形体の未露光部分を現像除去することにより樹脂構造体を形成する現像工程、を行うことを特徴とする。上記製造方法によれば、表面に溝のような段差を有するような基板の表面であっても、面内において均一な高さを有するような平坦性の高い未硬化の光硬化性樹脂層(以下、未硬化樹脂層ということがある)を形成することができる。そして、このような平坦性の高い未硬化樹脂層を選択的露光することにより均一な高さの微細樹脂構造体を得ることができる。また、平板に付与する圧力を調整することにより、未硬化樹脂層の厚みを調整することができるために、得られる微細樹脂構造体の高さを調整することができる。さらに、上述した光硬化性樹脂組成物を用いることにより、機械的特性や、未硬化樹脂層の溶融又は軟化する温度や、平板を成形体から除去する際のタック性(表面の粘着性)を適宜調整することができる。その結果、剥離やクラック等の発生が抑制された、平坦性の高い微細樹脂構造体を得ることができる。前記平板としては、シリコンウエハのような表面平滑性が高い平板が好ましく用いられうる。前記光硬化性樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂としては、屈折率の高い芳香環を有するエポキシ樹脂と屈折率の低い脂環式エポキシ樹脂を配合し、その配合比率を調整することにより、得られる微細樹脂構造体の屈折率を容易に調整することができる。芳香環を有するエポキシ樹脂の中でもビスフェノール型エポキシ樹脂を使用すれば、より強靭な微細樹脂構造体を得ることができる。また、光硬化性樹脂組成物にカップリング剤を0.1〜5質量%配合することにより、基板に対する微細樹脂構造体の密着性を向上させることができる。
【0011】
前記光硬化性樹脂組成物における、固体エポキシ樹脂と液状エポキシ樹脂との配合比率は、質量比で65/35〜90/10の範囲であることが好ましい。このような範囲の場合には、未硬化樹脂層のタック性を充分に抑制することができる。その結果、平板や、接触型のマスクを除去する際に、除去不良を充分に抑制することができる。
【0012】
また、前記光硬化性樹脂組成物においては、光重合開始剤がカチオン重合開始剤であり、該カチオン重合開始剤が、全エポキシ樹脂100質量部に対し0.1〜1質量部含まれていることが好ましい。カチオン重合開始剤を配合することにより、酸素による硬化阻害を抑制することができ、且つ、樹脂硬化の際に生じる体積収縮を抑制することができる。
【0013】
また、前記光硬化性樹脂組成物は、前記工程(c)で露光される光を吸収する光吸収剤を0.01〜1質量%含有することが好ましい。基板の段差部に光硬化性樹脂組成物を塗布し、露光した場合には段差部で露光光が乱反射することにより、本来硬化すべきでない部分にまで光が届いて硬化されてしまうことがある。このような場合に、光硬化性樹脂組成物に光吸収剤を配合しておいた場合には、硬化されるべき部分の硬化性は阻害されずに、硬化すべきでない部分の微量な光による硬化のみを抑制することができる。
【0014】
前記光硬化性樹脂組成物を含むワニスを調製する際に用いる溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのような沸点が120℃以上の溶剤を含有することが好ましい。このような溶剤は常温においては揮発しないために、ワニスの粘度変化が抑制できる。そのために、常温で塗布する際の溶剤の揮発による塗布量のばらつきを抑制することができ、必要量の樹脂を正確に塗布することができる。また、ワニスの保存安定性も向上する。
【0015】
前記ワニスの常温における粘度が100〜500mPa・sであることが好ましい。このような場合には、常温において良好に基板表面へワニスを塗布することができ、また、塗布量の精密な制御が容易になる点から好ましい。
【0016】
また、前記光硬化性樹脂組成物は、フェノキシ樹脂を1〜10質量%含有することが好ましい。このような範囲でフェノキシ樹脂を配合することにより、現像性を損なわずに得られる樹脂構造体に柔軟性を付与することができる。それにより耐クラック性を向上させることができる。また基板に対する樹脂構造体の密着性も高めることができる。また、未硬化樹脂層のタック性が少なくなるために、平板や接触型のマスクに未硬化樹脂層が張り付く現象を抑えることができる。
【0017】
本発明の一局面の光電回路基板の製造方法は、表面にシリコン酸化膜が形成された光導波路形成用溝を有するシリコン基板を用い;常温で固体のエポキシ樹脂と常温で液状のエポキシ樹脂とを所定の比率で配合し、さらに光重合開始剤を配合することにより得られる加熱により溶融又は軟化する常温で固体の、所定の屈折率を有するコア用光硬化性樹脂組成物を用い;下記(a1)〜(e)の工程:(a1)前記シリコン基板表面に光導波路形成用の溝を覆うように前記コア用光硬化性樹脂組成物のワニスを塗布した後、該ワニス中の溶剤を揮発除去させることにより固体のコア用光硬化性樹脂層を形成する樹脂層形成工程、(b1)前記コア用光硬化性樹脂層を溶融又は軟化する温度に加熱した状態で、前記コア用光硬化性樹脂層の表面に平板を前記シリコン基板表面と平行を維持した状態で押圧接触させ、押圧接触状態を保持したまま該コア用光硬化性樹脂組成物が固化する温度にまで冷却し、前記平板を離間させることにより平坦面を有する未硬化コア用樹脂層を形成する平坦化工程、(c1)前記未硬化コア用樹脂層の平坦面側からコアを形成させる領域を除く部分をマスクして露光することにより、該領域のみを選択硬化させる硬化工程、(d1)選択硬化された未硬化コア用樹脂層の未露光部分を現像除去することによりコアを形成する現像工程、(e)前記コアの屈折率よりも低い屈折率を有する樹脂で前記コアを被覆することによりクラッドを形成するクラッド形成工程、を行うことを特徴とする。表面にシリコン酸化膜が形成された光導波路形成用溝を有するシリコン基板においては、シリコン酸化膜を光導波路における下クラッドとして用いることができる。従って、樹脂による下クラッドの形成工程を省略できるために、光導波路形成用溝を有するシリコン基板表面にコアを形成するための光硬化性樹脂組成物を塗布し、その上面を平坦化した後、コア形成部のみを選択的に露光することにより、容易に高さ精度に優れたコアを形成することができる。従って、上記製造方法によれば、高さ精度に優れた光導波路を有する光電回路基板を容易に作製することができる。
【0018】
前記(e)工程としては、常温で固体のエポキシ樹脂と常温で液状のエポキシ樹脂とを所定の比率で配合し、さらに光重合開始剤を配合することにより得られる加熱により溶融又は軟化する常温で固体の、前記コアの屈折率よりも低い屈折率を有するクラッド用光硬化性樹脂組成物を用い;下記(a2)〜(d2)の工程:(a2)前記シリコン基板表面に、前記コアを覆うように前記クラッド用光硬化性樹脂組成物のワニスを塗布した後、該ワニス中の溶剤を揮発除去させることにより固体のクラッド用光硬化性樹脂層を形成する樹脂層形成工程、(b2)前記クラッド用光硬化性樹脂層を溶融又は軟化する温度に加熱した状態で、前記クラッド用光硬化性樹脂層の表面に、平板を前記基板表面と平行を維持した状態で押圧接触させ、押圧接触状態を保持したまま該クラッド用光硬化性樹脂組成物が固化する温度にまで冷却し、前記平板を離間させることにより平坦面を有する未硬化クラッド用樹脂層を形成する平坦化工程、(c2)前記未硬化クラッド用樹脂層の平坦面側からクラッドを形成させる領域を除く部分をマスクして選択露光することにより、該領域のみを選択硬化させる硬化工程、(d2)選択硬化された未硬化クラッド用樹脂層の未露光部分を現像除去することによりクラッドを形成する現像工程、を行うことが好ましい。このような方法によれば、厚み及び表面の平坦性が制御された、精度の高いクラッドを形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、表面に溝のような段差を有する基板の表面に、均一な高さを有する微細樹脂構造体を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の一実施形態の製造方法により得られる光導波路を有する光電回路基板を例示する説明図である。
【図2】図2は、本発明の製造方法の一実施形態である、光導波路を製造する工程を説明するための断面模式図である。
【図3】図3は、実施例1〜3及び比較例1〜3における光導波路のコア部分を製造する工程を説明するための断面模式図である。
【図4】図4は、実施例4〜8及び比較例4〜6における光導波路のクラッド部分を製造する工程を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
はじめに、本発明で用いられる光硬化性樹脂組成物について説明する。
【0022】
本発明で用いられる光硬化性樹脂組成物は、固体エポキシ樹脂と液状エポキシ樹脂とを所定の比率で含有し、さらに光重合開始剤を含有し、且つ、加熱により溶融又は軟化する常温で固体の光硬化性樹脂組成物である。
【0023】
このような光硬化性樹脂組成物は、固体エポキシ樹脂と液状エポキシ樹脂を所定の配合比率で溶剤に溶解し、さらに光重合開始剤を添加することにより得られるワニスを乾燥することにより得られる。
【0024】
エポキシ樹脂には、タイプや分子量(繰り返し単位)等により、常温で液状のものと固体のものが存在する。本発明においては、常温で液状のエポキシ樹脂と常温で固体のエポキシ樹脂を、溶剤中で所定の配合比率で配合することにより、溶融または軟化する温度、乾燥後の表面タック性、等を調整することができる。具体的には、液状エポキシ樹脂の配合割合を高くしてワニスの粘度を低減させたり、加熱時の流動性を高めたりすることができる。また、固体エポキシ樹脂の配合割合を高くして、タック性を低減させたり、離型性を向上させて作業効率を高めたりすることができる。
【0025】
常温で固体または液状のエポキシ樹脂は、それぞれ常温で固体又は液状である限り、その種類はとくに限定されない。また、各エポキシ樹脂のエポキシ基数としては、一分子中に2個以上であれば特に限定されない。
【0026】
液状エポキシ樹脂と固体エポキシ樹脂の配合比率は、目的や組み合わせるエポキシ樹脂の種類に応じて適宜調整されるが、具体的には、例えば、固体エポキシ樹脂/液状エポキシ樹脂=90/10〜65/35(質量比)の範囲であることが好ましい。
【0027】
固体または液状のエポキシ樹脂の具体例としては、それぞれ固体または液状である、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ナフタレン骨格型エポキシ樹脂、等の芳香環を有するエポキシ樹脂や、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂等の脂環式エポキシ樹脂が挙げられる。
【0028】
また、光学用途に用いられる微細樹脂構造体を製造する場合には、透明の固体エポキシ樹脂と透明の液状エポキシ樹脂を配合してなる透明の光硬化性樹脂組成物を用いる。このような組み合わせの中でも、例えば、芳香環を有することにより高い屈折率を示すビスフェノール型エポキシ樹脂と、相対的に屈折率の低い脂環式エポキシ樹脂との組み合わせは、配合比率を調整することにより屈折率を自由に調整することができる点から好ましい。例えば、光導波路の形成においては、コア部の形成には、屈折率の高いビスフェノール型エポキシ樹脂の割合を高め、クラッド部の形成には低屈折率の脂環式エポキシ樹脂の割合を高めることが好ましい。
【0029】
上記光硬化性樹脂組成物に配合される光重合開始剤は、光照射によって前記エポキシ樹脂のエポキシ基を開環自重合させるための重合開始剤である。その具体例としては、例えば、陰イオンとしてPF、AsF、SbF、SbCl2−、BF、SnCl、FeCl、BiCl2−等を有するアリールジアゾニウム塩、また、陰イオンとしてPF、AsF、SbF、SbF、SbCl2−、BF、ClO、CFSO、FSO、FPO、B(C等を有するジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアリールセレノニウム塩、さらに、陰イオンとしてPF、AsF、SbF等を有するジアルキルフェナシルスルホニウム塩、ジアルキル−4−ヒドロキシルフェニルスルホニウム塩、また、α−ヒドロキシメチルベンゾインスルホン酸エステルや、N−ヒドロキシイミドスルホネート、α−スルホニルオキシケトンやβ−スルホニルオキシケトン等のスルホン酸エステル、さらに鉄のアレン化合物、シラノール−アルミニウム錯体、o−ニトロベンジル−トリフェニルエーテル等が挙げられる。また、市販品として、アデカ社製の商品名「アデカオプトマーSP−170」や「アデカオプトマーSP−150」、サンアプロ社製の商品名「CPI−101A」や「CPI−200K」等も好ましく用いられる。
【0030】
本発明で用いられる光硬化性樹脂組成物には、上記以外の成分として、本発明の目的を損なわない範囲で、各種の添加剤、例えば露光光吸収剤、カップリング剤、流動改質剤、滑剤、着色剤等を必要に応じて添加することができる。
【0031】
露光光吸収剤としては、光硬化のために用いられる露光光(紫外線など)の波長に対して高い吸収率を有する吸収剤(紫外線吸収剤など)が好ましい。紫外線吸収剤としては、露光光波長(例えば、365nm)に対して吸収率の高い炭素の共役二重結合を有するエポキシ樹脂(ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、芳香環を有するオキセタン樹脂等)や、その他、公知の種々の紫外線吸収剤や紫外線吸収性の各種増感剤を使用できる。その市販品としては、例えば、アデカ社製の商品名「アデカオプトマーSP−100」等が挙げられる。
【0032】
紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、アセトフェノン系紫外線吸収剤、アセナフテン系紫外線吸収剤、2−アセナフトン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、フェニルトリアジン系紫外線吸収剤、ペリレン系紫外線吸収剤、アントラセン系紫外線吸収剤、アクリジンオレンジ等のアクリジン系紫外線吸収剤、フェノチアジン系紫外線吸収剤、2,4−ジエチルチオキサントン等や、サリチル酸系紫外線吸収剤等が挙げられる。また、その市販品としては、例えば、チバ・ジャパン社製の商品名「TINUVIN329」(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)等が挙げられる。
【0033】
光硬化性樹脂組成物は、特に、露光される光を吸収する光吸収剤を0.01〜1質量%含有することが好ましい。基板の段差部に光硬化性樹脂組成物を塗布し、露光した場合には段差部で露光光が乱反射することにより、本来硬化すべきでない部分にまで光が届いて硬化されてしまうことがある。このような場合に、光硬化性樹脂組成物に光吸収剤を配合した場合には、強い光が露光される硬化されるべき部分の硬化性は阻害せずに、硬化すべきでない部分の微量な光による硬化のみを抑制することができる。光吸収剤の配合割合が高すぎる場合には、露光光が本来硬化させるべき部分の深部の硬化性を低下させるおそれがあり、少なすぎる場合には、硬化すべきでない部分に対する硬化抑制効果が不充分になる傾向がある。
【0034】
光硬化性樹脂組成物には、さらにシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤等のカップリング剤が配合されることが好ましい。カップリング剤を配合することにより、基板表面と樹脂構造体との密着性が向上する。このようなカップリング剤の具体例としては、例えば、信越化学社製の商品名「KBM−403」(シランカップリング剤)等が挙げられる。カップリング剤の配合割合としては、光硬化性樹脂組成物全量中に0.1〜5質量%程度であることが好ましい。
【0035】
光硬化性樹脂組成物には、さらにフェノキシ樹脂が配合されることが好ましい。フェノキシ樹脂とは、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂とエピクロルヒドリンとから合成される、分子中にエポキシ基を有するポリヒドロキシエーテルであり、分子中の水酸基により架橋可能な熱可塑性樹脂である。光硬化性樹脂組成物に適量のフェノキシ樹脂を配合した場合には、タック性が低減することにより、平板や接触型のフォトマスクとの離型性が向上する点から好ましい。また、樹脂硬化物の脆性が低減することにより耐クラック性が向上し、さらに、得られる微細樹脂構造体の基板との密着性も向上させることができる。
【0036】
フェノキシ樹脂の分子量としては、重量平均分子量(Mw)で40000〜100000、さらには50000〜80000程度の範囲であることが好ましい。このようなフェノキシ樹脂の具体例としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製の商品名「エピコート1256」(ビスフェノールA型でMw約5万)、東都化成社製の商品名「フェノトートYP−50」(ビスフェノールA型でMw約7万)等が挙げられる。
【0037】
フェノキシ樹脂の配合割合は、光硬化性樹脂組成物中に1〜10質量%であることが好ましい。フェノキシ樹脂の配合割合が高すぎる場合には、樹脂組成物を平坦化させる際の流動性が低下することにより平坦化が不充分になったり、露光後に架橋密度を高めるためのアフターキュアをする際に、硬化物が熱変形を起こしたりする傾向がある。さらに、現像時のパターン精度を低下させる傾向もある。
【0038】
光硬化性樹脂組成物は、固体エポキシ樹脂、液状エポキシ樹脂、光重合開始剤、さらに、必要に応じて用いられる露光光吸収剤、フェノキシ樹脂、カップリング剤等を溶剤に溶解・混合して得られる樹脂ワニスを乾燥し、溶剤を揮発除去することによって得られる。
【0039】
樹脂ワニスを形成するための溶剤としては、固体エポキシ樹脂、液状エポキシ樹脂、光重合開始剤、さらには必要に応じて配合されるフェノキシ樹脂等を溶解できるものが好ましく用いられる。このような溶剤としては、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等が挙げられ、これらは単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
なお、樹脂ワニスを基板上に塗布する場合に、塗布中に溶剤が揮発してワニスの粘度が変化することがある。このような場合にはワニスの滴下量が変動し、形成される微細樹脂構造体の厚みが不均一になる。従って、沸点が高く、常温で揮発しにくい溶剤を用いることが好ましい。このような溶剤の具体例としては、例えば、シクロヘキサノン(沸点;156℃)、PGMEA(沸点;146℃)がとくに好ましい。
【0041】
ワニス中の光硬化性樹脂成分と溶剤との混合比率は特に限定されず、基板上にワニスの状態で塗布するのに適した粘度(例えば100〜500mPa・s)に調整できる限り特に限定されない。具体的には、溶剤揮発時の体積減少を考慮すれば、質量比で1:1を基準とし、その前後で所望の粘度が得られるように混合比率を調整することが好ましい。
【0042】
次に、上記のようにして調製されたワニスを用いて、表面に段差を有する基板上に形成される樹脂構造体の具体例として、光導波路を形成するための溝を有する基板表面に、光導波路を形成する方法を図面を参照しながら説明する。
【0043】
図1(a)は、本実施形態の製造方法により得られる、光導波路4を有する光電回路基板1の平面図、図1(b)は、図1(a)のB−B線断面図、図1(c)は、図1(a)のC−C線断面図である。
【0044】
図1(a)〜(c)中、2はシリコン基板であり、シリコン基板2には光導波路4が形成される溝3が形成されている。4aは光導波路4を構成するコア部、4bは光導波路を構成するクラッド部である。シリコン基板2には、その表面にシリコン酸化膜5が形成されている。また、溝3の端部には45°ミラー部6が形成されている。
【0045】
また、シリコン基板2の表面(正確には表面全域に形成されたシリコン酸化膜5上)には、図略の電気回路が形成されている。また、45°ミラー部6には光の反射率を高めるための反射膜が形成されている。反射膜は金やアルミニウム等の蒸着等により形成される。なお、使用する光の波長によっては反射膜を形成しなくてもよい。
【0046】
この光電回路基板1においては、図1(b)中の破線矢印に示すように光導波路4を伝播してきた光が、45°ミラー部6で光軸を90°変換されて、シリコン基板2の表面に実装される図略の光電変換素子に入射するように、もしくは、図略の光電変換素子から出射された光が45°ミラー部6で光軸を90°変換されて、図1(b)中の破線矢印とは反対向きに光導波路4を伝播するように構成されている。
【0047】
このような光電回路基板1の製造工程を、図2(a)〜(h)に示す断面模式図を参照しながら説明する。
【0048】
はじめに、図2(a)に示すように、溝3とシリコン酸化膜5が形成されたシリコン基板2を用意する。本実施形態の光導波路の形成においては、コア4aよりも屈折率が低いシリコン酸化膜5が、光導波路の下クラッドとなる。従って、樹脂材料により、別途下クラッドを形成する工程を省略することができる。
【0049】
シリコン基板2に形成される溝3は、例えば、アルコールを加えた水酸化カリウム水溶液や界面活性剤を添加したテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液などでシリコン基板を異方性エッチングすることによって形成される。なお図2(a)〜(h)には表されていないが、溝3の紙面貫通方向端には図1(b)に示したような45°ミラー部6が形成されている。
【0050】
光電回路基板1の製造においては、コア用の光硬化性樹脂組成物を含む樹脂ワニスを調製しておき、シリコン基板2に形成された溝3に樹脂ワニスを塗布する。樹脂ワニスの塗布には、先にも説明したようにディスペンサ等が用いられる。
【0051】
次に、塗布された樹脂ワニスを、樹脂組成物中の光重合開始剤やその他の添加剤が失活しない温度範囲で加熱して、溶剤を揮発乾燥させることにより、図2(a)に示すように、溝3に固体の光硬化性樹脂組成物からなる未硬化樹脂層8が形成される。
【0052】
続いて、図2(b)に示すように、未硬化樹脂層8を加熱溶融させた後、下面がミクロンオーダーで平滑に表面調整された平板7で上方から所定のプレス圧でプレスし、一定時間保持することによって未硬化樹脂層8を所望の厚さに調整しながら平坦化する。このとき、平板7はシリコン基板2の表面と平行状態を維持するようにプレスに支持されている。その後、プレス圧を一定に維持したままで室温まで冷却することにより樹脂を再固体化させる。そして、平板7を離間させることにより、図2(c)に示すように、表面が平坦化された未硬化樹脂層8aが得られる。
【0053】
平板の表面の平滑性としては、表面粗さ(Ra)が1μm以下、さらには、0.1μm以下の範囲のものが好ましい。
【0054】
また、平板の材質は、金属、無機物、樹脂等、特に限定されないが、表面平滑性に特に優れている点からシリコンウエハを用いることが好ましい。なお、平板の表面は離型剤で処理されていることが好ましい。離型剤の具体例としては、例えば、旭硝子社製の商品名「サイトップ」や住友スリーエム社製の商品名「ノベック」等のフッ素系樹脂が挙げられる。
【0055】
本製造方法においては、このような平坦化処理により、未硬化樹脂層8aの上面を平坦化することができる。そして、この処理により、後の工程で得られるコア4aの高さを光導波路の経路全体において均一にすることができる。
【0056】
次に、図2(d)に示すように、平坦化された未硬化樹脂層8aをフォトマスク9でマスキングし、マスク9の開口部9aから紫外線(UV)を露光することにより、マスク開口部9aに対応する部分を選択的に光硬化させる。この選択的露光により、コア4aの輪郭が規定される。なお、硬化を確実にするために、例えば、150℃程度で15分間程度加熱処理するPEB(Post Exposure Bake)と呼ばれる熱キュア処理を施してもよい。
【0057】
その後、図2(e)に示すように、選択硬化処理後の樹脂層を現像して未露光部分の未硬化樹脂を洗浄除去することにより、硬化された樹脂のみからなる微細樹脂構造体である光導波路のコア4aが形成される。コア4aの断面形状は、例えば高さ20〜80μm程度、幅20〜80μm程度の微細なものである。
【0058】
現像は、例えば界面活性剤を含む溶液に浸漬して超音波処理を施すなどの処理で、硬化していない未露光部を除去する、各種溶剤系の現像液等が特に限定なく用いられ得る。
【0059】
このように形成されたコア4aは、次にクラッド4bで被覆される。
【0060】
クラッド4bの形成も、クラッド用に屈折率等が調整された光硬化性樹脂組成物を用いる以外は、上述したコア4aの形成方法と同様の方法が用いられる。
【0061】
はじめに、図2(f)に示すように、コア4aが形成されたシリコン基板2の溝3にクラッド用に調製された樹脂ワニスを塗布し、溶剤を揮発乾燥させることによって、溝3内のコア4aを覆うように光硬化性樹脂組成物からなる未硬化樹脂層10を形成する。
【0062】
次に、図2(g)に示すように、未硬化樹脂層10を加熱溶融させた後、シリコン基板2と平行状態になるようにプレスに支持された平板7で上方から所定のプレス圧でプレスし、一定時間保持することにより未硬化樹脂層10を所望の厚さまで押し広げる。その後、プレス圧を一定に維持したままで室温まで冷却することにより樹脂を固化させた後、平板を離間させることにより、図2(h)に示すように、平坦化されたクラッド用の未硬化樹脂層10aが得られる。
【0063】
次に、図2(i)に示すように、平坦化された未硬化樹脂層10aをフォトマスク11でマスキングし、フォトマスク11の開口部11aから紫外線を露光することにより、開口部11aに対応する部分を選択的に光硬化させる。必要に応じて熱キュアをかけてもよい。
【0064】
そして、選択硬化処理後の樹脂層を現像して未露光部分の未硬化樹脂を洗浄除去することにより、図2(j)に示すように、樹脂構造体として光導波路のクラッド10bが形成される。この現像工程により、シリコン基板2の光導波路4を形成する領域のみにクラッド10bを形成し、その他の領域に残された未硬化樹脂が除去される。
【0065】
以上説明した工程により、図1に示したような、光導波路4を有する光電回路基板1が得られる。このようにして得られた光電回路基板1に形成された光導波路4を構成するコア4aは光導波路4の経路全体においてミクロンオーダーで平坦である。そのために、平坦化されていないコアを有する光導波路に比べて、伝搬損失が小さくなる。また、シリコン基板表面に形成されたシリコン酸化膜を下クラッドとして用いることができるために、下クラッドの形成を省略することができる。そのため、生産コストを下げることができる。
【0066】
なお、本発明の一実施形態として、微細構造体として光導波路の製造について詳しく説明したが、本発明の製造方法は光導波路の製造に限られず、段差のある基板表面に一定の厚みの樹脂構造体を形成する、種々の用途に用いることができる。また、比較的大面積の表面に形成された複数の溝に個別に複数の微細構造体を形成するような場合であっても、上述した平坦化工程により、全ての微細構造体において均一な高さを付与しうる。
【0067】
微細樹脂構造体の具体例としては、光導波路の他、例えば、バイオチップ等の微細流路、ポリマーばね構造、バイナリーオプティクスを利用した光学レンズや回折格子等が挙げられる。
【0068】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0069】
はじめに、本実施例で用いた原材料を以下にまとめて示す。
【0070】
(固体エポキシ樹脂)
・脂環式エポキシ樹脂:ダイセル化学社製の商品名「EHPE3150」
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン社製の商品名「JER1006FS」
・水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン社製の商品名「YX8040」
(液状エポキシ樹脂)
・脂環式エポキシ樹脂:ダイセル化学社製の商品名「セロキサイド2021P」
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂:DIC社製の商品名「EPICLON 850−S」
・水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン社製の商品名「YX8000」
(フェノキシ樹脂)
・フェノキシ樹脂のメチルエチルケトン溶解品:東都化成社製の商品名「フェノトートYP−50EK35」
(光重合開始剤)
・トリアリールスルホニウム塩系カチオン重合開始剤:アデカ社製の商品名「アデカオプトマーSP−170」
(紫外線吸収剤)
・紫外線増感剤:アデカ社製の商品名「アデカオプトマーSP−100」
(カップリング剤)
・シランカップリング剤:信越化学社製の商品名「KBM−403」
(溶剤)
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA):一般試薬
・メチルエチルケトン(MEK):一般試薬
また、溝を有する、シリコン酸化膜が形成されたシリコン基板の調製方法について、以下に説明する。
(溝を有する、シリコン酸化膜が形成されたシリコン基板の調製方法)
パターニング開口された厚さ1μmのシリコン酸化膜が形成された直径4インチのシリコン基板に異方性エッチング処理を施すことにより、基板表面に、深さ40μm、溝底幅60μm、溝開口幅140μm、長さ5mm、側面角度45°の1000本の溝を形成した。なお、異方性エッチングは、以下のような方法により行った。はじめに、40質量%の水酸化カリウム水溶液4Lに0.5Lのイソプロピルアルコールを混合したエッチャントを調製した。そして、80℃に加温されたエッチャントに前記シリコン基板を1時間浸漬し、その後、酸化膜マスクをフッ酸で溶解した。
【0071】
次に、溝形成されたシリコン基板を熱酸化炉に入れ、酸素雰囲気中で加熱することによって、全面に厚さ2μmのシリコン酸化膜を形成した。そして、シリコン酸化膜が形成されたシリコン基板を酸素プラズマ中で表面処理した。
【0072】
[実施例1〜3、及び比較例1〜3:コアの評価]
実施例1〜3及び比較例1〜3は、表1に記載の配合組成に従って各光硬化性樹脂組成物を調製し、得られた光硬化性樹脂組成物を用いて以下に詳しく説明するようにコアを形成した。そして、クラッドを形成せずにコア単独の特性を評価した。図3を参照しながら、実施例1〜3、及び比較例1〜3における評価方法を説明する。
【0073】
はじめに、表1の配合組成に従って光硬化性樹脂組成物の樹脂ワニスを調製した。なお樹脂ワニスの調製は、はじめに常温で溶剤を秤量した後、これに所定量の固形エポキシ樹脂、液状エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂を順に添加し、密閉容器中で50℃に加温しながら攪拌混合して溶解した。そして、常温まで冷却した後、所定量の光重合開始剤と紫外線吸収剤(紫外線増感剤)およびカップリング剤を添加し、密閉容器中で50℃で攪拌混合した。
【0074】
そして、溝3が形成されたシリコン基板2の各溝に調製された光硬化性樹脂組成物8の樹脂ワニスをディスペンサで滴下した。なお、滴下量は、各溝に対し、溝容積の2倍量以上のワニスを滴下した。そして、ホットプレートを用いて130℃、60分間の条件で加熱することにより、樹脂ワニスを乾燥させることにより、光硬化性樹脂層8を形成した(図3(a))。
【0075】
次に、光硬化性樹脂層8が形成されたシリコン基板2をプレス装置の下側ステージに吸着保持した。そして、プレス装置の上側ステージには、離型処理を施した表面粗さ Ra1nm以下のシリコンウエハの平板7を吸着した。そして、上側ステージ及び下側ステージを約130℃に加熱して光硬化性樹脂層を溶融し、平板7で0.6〜0.7MPaの圧力で3分間加圧することにより平坦化した(図3(b))。そして、室温(25℃)まで冷却した後、上下ステージを開いた。そして、平板7を光硬化性樹脂層が形成されたシリコン基板2から剥離した(図3(c))。
【0076】
次に、コアパターンの開口部9aを有するフォトマスク9を用いて、紫外線パターニングにより光硬化性樹脂層を選択的に光硬化させた(図3(d))。なお、露光には高圧水銀灯を光源とする紫外線光(フィルタにより波長365nmを選択)を使用し、1000mJ/cmの照射量で露光した。そして、硬化を促進させて光硬化性樹脂層とシリコン基板との密着性をさらに高めるために、120℃で15分間のベーキング処理を行った。
【0077】
その後、一旦室温にまで冷却してから、約55℃に加温した界面活性剤液(荒川化学社製の商品名「パインアルファST−100SX」)にシリコン基板を浸し、超音波洗浄することによって光硬化性樹脂層の未硬化部分を除去した(図3(e))。そして、シリコン基板をさらに純水で洗浄してから、150℃で15分間加熱することにより水分を除去した。このようにして光導波路のコア4aを形成した。
【0078】
上記製造工程における、各プロセスにおいて以下の評価試験を行った。
(常温(25℃)における光硬化性樹脂組成物の状態観察)
調製した樹脂ワニス中の溶剤を乾燥除去して得られた光硬化性樹脂組成物の状態を観察し、固体か液状かを判定した。
【0079】
(光硬化性樹脂組成物のタック性)
光硬化性樹脂層の表面を指触し、以下の基準で判定した。なおタック性は、離型性の指標になり、また、加熱して液状化した樹脂が再固形化する温度(固化点)を間接的に把握するための指標にもなる。
◎:光硬化性樹脂層の表面に指を押し付けたときに、粘着性が無く全く指紋が付かない。
○:光硬化性樹脂層の表面に指を押し付けたときに、わずかに指紋の痕跡が付く。
△:光硬化性樹脂層の表面に指を押し付け、離すときに粘着性を感じるが樹脂の分離がない。
×:光硬化性樹脂層の表面に指を押し付けたときに明瞭に指紋痕が残るとともに、指に樹脂が付着した。
【0080】
(平坦性)
シリコン基板表面から形成されたコア表面の高さのばらつきを測定した。なお、高さの測定はランダムに10か所行い、以下の基準で判定した。なお、測定には、KLA-Tencor社の接触式段差計 アルファステップ AS-500 を使用した。
◎:10ヶ所のコア表面の高さのばらつきの範囲が2μm未満であった。
○:10ヶ所のコア表面の高さのばらつきの範囲が2〜3μmの範囲であった。
△:10ヶ所のコア表面の高さのばらつきの範囲が3〜5μmの範囲であった。
×:10ヶ所のコア表面の高さのばらつきの範囲が5μm超であった。
【0081】
(耐クラック性/密着性)
光導波路のコアが形成されたシリコン基板を、光導波路を横断するようにダイシングソーで切断し、その切断面を観察して以下の基準で判定した。
◎:コアにクラックが全く見られず、また、シリコン基板に対する光導波路の剥離も全く見られなかった。
○:コアにわずかなクラックまたは、剥離が見られた。
△:コアの半数程度にクラックまたは剥離が見られた。
×:殆ど全てのコアにクラック及び剥離が見られた。
【0082】
(流れ性)
シリコン基板からシリコンウエハ(平板)を剥離したときの、溝3からシリコン基板の溝3の外の表面にあふれ出た光硬化性樹脂組成物の厚みを測定し、以下の基準で評価した。
◎:厚みが6μm未満であった。
○:厚みが6〜10μmであった。
×:厚みが10μm超であった。
【0083】
(コア現像性)
コアの現像処理後の硬化物の硬化状態を以下の基準で判定した。
◎:選択露光領域のみが全く崩れなく予定通りにコア形成部分が硬化され、未露光部が正しく除去されていた。
○:コアの角部の一部にわずかに丸みがあった。
△:コアの輪郭から余分なバリや不要硬化部が形成されていた。
×:選択硬化の反映が見られなかった。
【0084】
結果を表1に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
表1の結果から、実施例1〜3のコア用光硬化性樹脂組成物を用いて形成したコアにおいては、コア表面の高さのバラツキが少なく、また、密着性、流れ性、及び現像性のバランスにも優れていた。一方、液状エポキシ樹脂を含有しない比較例1の光硬化性樹脂組成物を用いてコアを形成した場合には、殆ど全てのコアにクラック及び剥離が見られた。また、比較例1におけるクラック及び剥離の発生を解消するために、硬化物に柔軟性を付与しうるフェノキシ樹脂を加えた比較例2、3においては、フェノキシ樹脂の配合により樹脂粘度が急激に高くなり、平坦化工程を施しても充分に平坦化できなかった。
【0087】
[実施例4〜8、及び比較例4〜6:クラッドの評価]
実施例4〜8及び比較例4〜6は、表2に記載の配合組成に従って各光硬化性樹脂組成物を調製し、得られた光硬化性樹脂組成物を用いて以下に詳しく説明するようにクラッドを形成した。なお、コアは形成せずにクラッド単独の特性を評価した。図4を参照しながら、実施例4〜8、及び比較例4〜6における評価方法を説明する。
【0088】
はじめに、表2の配合組成に従って光硬化性樹脂組成物の樹脂ワニスを調製した。なお樹脂ワニスの調製は、実施例1〜3及び比較例1〜3と同様の方法で行った。
【0089】
そして、溝3が形成されたシリコン基板2の各溝に光硬化性樹脂組成物の樹脂ワニスをディスペンサで滴下した。なお、滴下量は、各溝に対し、溝容積の2倍量以上のワニスを滴下した。そして、ホットプレートを用いて130℃、60分間の条件で加熱することにより、樹脂ワニスを乾燥させることにより、光硬化性樹脂層10を形成した(図4(a))。
【0090】
次に、光硬化性樹脂層10が形成されたシリコン基板2をプレス装置の下側ステージに吸着保持した。そして、プレス装置の上側ステージには、離型処理を施した表面粗さ Ra1nm以下のシリコンウエハ(平板)7を吸着した。そして、上側ステージ及び下側ステージを約130℃に加熱して光硬化性樹脂層を溶融し、シリコンウエハ7で0.6〜0.7MPaの圧力で3分間加圧することにより平坦化した(図4(b))。そして、室温(25℃)まで冷却した後、上下ステージを開いた。そして、シリコンウエハ7を光硬化性樹脂層が形成されたシリコン基板2から剥離した(図4(c))。
【0091】
次に、クラッドパターンの開口部11aを有するフォトマスク11を用いて、紫外線パターニングにより光硬化性樹脂層を選択的に光硬化させた(図4(d))。なお、露光には高圧水銀灯を光源とする紫外線光(フィルタにより波長365nmを選択)を使用し、1500mJ/cmの照射量で露光した。そして、硬化を促進させて光硬化性樹脂層とシリコン基板との密着性をさらに高めるため、120℃で15分間のベーキング処理を行った。
【0092】
その後、一旦室温にまで冷却してから、約55℃に加温した界面活性剤液(荒川化学社製の商品名「パインアルファST−100SX」)にシリコン基板を浸し、超音波洗浄することによって光硬化性樹脂層の未硬化部分を除去した(図4(e))。そして、シリコン基板をさらに純水で洗浄してから、150℃で15分間加熱することにより水分を除去した。このようにして光導波路のクラッド10bを形成した。
【0093】
そして、実施例1〜3、及び比較例1〜3と同様の方法により光硬化性樹脂組成物の特性を評価した。また、形成されたクラッド10bは以下のようにして評価した。
【0094】
(平坦性)
シリコン基板表面から形成されたクラッド表面の高さのばらつきを測定した。なお、高さの測定はランダムに10か所行い、以下の基準で判定した。なお、測定には、KLA-Tencor社の接触式段差計 アルファステップ AS-500 を使用した。
◎:10ヶ所のクラッド表面の高さのばらつきの範囲が2μm未満であった。
○:10ヶ所のクラッド表面の高さのばらつきの範囲が2〜3μmの範囲であった。
△:10ヶ所のクラッド表面の高さのばらつきの範囲が3〜5μmの範囲であった。
×:10ヶ所のクラッド表面の高さのばらつきの範囲が5μm超であった。
【0095】
(耐クラック性/密着性)
光導波路のクラッドが形成されたシリコン基板を、光導波路を横断するようにダイシングソーで切断し、その切断面を観察して以下の基準で判定した。
◎:クラッドにクラックが全く見られず、また、シリコン基板に対する光導波路の剥離も全く見られなかった。
○:クラッドにわずかなクラックまたは、剥離が見られた。
△:クラッドの半数程度にクラックまたは剥離が見られた。
×:殆ど全てのクラッドにクラック及び剥離が見られた。
【0096】
(流れ性)
シリコン基板からシリコンウエハを剥離したときの、溝からシリコン基板の溝の外の表面にあふれ出た光硬化性樹脂組成物の厚みを測定し、以下の基準で評価した。
◎:厚みが6μm未満であった。
○:厚みが6〜10μmであった。
×:厚みが10μm超であった。
【0097】
(クラッド現像性)
クラッドの現像処理後の硬化物の硬化状態を以下の基準で判定した。
◎:選択露光領域のみが全く崩れなく予定通りにクラッド形成部分が硬化され、未露光部が正しく除去されていた。
○:クラッドの角部の一部にわずかに丸みがあった。
△:クラッドの輪郭から余分なバリや不要硬化部が形成されていた。
×:選択硬化の反映が見られなかった。
【0098】
結果を表2に示す。
【0099】
【表2】

【0100】
表2の結果から、実施例4〜8のクラッド用光硬化性樹脂組成物を用いて形成したクラッドにおいては、クラッド表面の高さのバラツキか少なく、また、密着性、流れ性、および現像性のバランスにも優れていた。一方、液状エポキシ樹脂を含有しない比較例4の光硬化性樹脂組成物を用いてクラッドを形成した場合には、殆ど全てのクラッドにクラック及び剥離が見られた。また、比較例4におけるクラック及び剥離の発生を解消するために、硬化物に柔軟性を付与しうるフェノキシ樹脂を加えた比較例5、6においては、フェノキシ樹脂の配合により樹脂粘度が急激に高くなり、平坦化工程を施しても十分に平坦化できなかった。また、比較例4〜6の現像性評価においては、溝傾斜面からの反射露光光による不要硬化のために全てのクラッドの現像性が悪化した。
【0101】
以上の結果から、実施例1〜3の光硬化性樹脂組成物をコア材料として、また、実施例4〜8の光硬化性樹脂組成物をクラッド材料として用い、前述の、溝を有する、シリコン酸化膜が形成されたシリコン基板上に、図2に示すプロセスにて、同溝内にコア、クラッドと順に形成し、コア幅40μm、コア高さ45μm、その両端がシリコン45°面(ミラー)で終端された光導波路を作製した場合には、ディスペンサによる滴下性や平坦化の際の平板との剥離性が良好なプロセスで、平坦性、密着性、流れ性、現像性に優れた低損失の光導波路を作製できた。
【符号の説明】
【0102】
1 光電回路基板
2 シリコン基板
3 溝
4 光導波路
4a コア
4b クラッド
5 シリコン酸化膜
6 ミラー部
8,10 未硬化樹脂層
8a,10a 平坦化された未硬化樹脂層
9,11 マスク
9a,11a マスク開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に段差を有する基板に微細樹脂構造体を形成するための微細樹脂構造体の製造方法であって、
常温で固体のエポキシ樹脂と常温で液状のエポキシ樹脂とを所定の比率で配合し、さらに光重合開始剤を配合することにより得られる加熱により溶融又は軟化する、常温で固体の光硬化性樹脂組成物を用い;
下記(a)〜(d)の工程:
(a)前記基板表面に前記光硬化性樹脂組成物のワニスを塗布した後、該ワニス中の溶剤を揮発除去させることにより固体の光硬化性樹脂層を形成する樹脂層形成工程、
(b)前記光硬化性樹脂層を溶融又は軟化する温度に加熱した状態で、前記光硬化性樹脂層表面に、平板を前記基板表面と平行を維持した状態で押圧接触させ、押圧接触状態を保持したまま該光硬化性樹脂組成物が固化する温度にまで冷却し、前記平板を離間させることにより平坦面を有する一次成形体を形成する平坦化工程、
(c)前記一次成形体の平坦面側から、硬化させる領域を除く部分をマスクして露光することにより、該領域のみを選択硬化させる硬化工程、
(d)選択硬化された前記一次成形体の未露光部分を現像除去することにより樹脂構造体を形成する現像工程、
を行うことを特徴とする微細樹脂構造体の製造方法。
【請求項2】
前記平板がシリコンウエハである請求項1に記載の微細樹脂構造体の製造方法。
【請求項3】
前記常温で固体のエポキシ樹脂と前記常温で液状のエポキシ樹脂との配合比率が、質量比で90/10〜65/35の範囲である請求項1または2に記載の微細樹脂構造体の製造方法。
【請求項4】
前記光重合開始剤がカチオン重合開始剤であり、該カチオン重合開始剤が、全エポキシ樹脂100質量部に対し0.1〜1質量部含まれている請求項1〜3のいずれか1項に記載の微細樹脂構造体の製造方法。
【請求項5】
前記光硬化性樹脂組成物が、前記工程(c)で露光される光を吸収する光吸収剤を0.01〜1質量%含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の微細樹脂構造体の製造方法。
【請求項6】
前記ワニスが、少なくとも1種以上の沸点120℃以上の溶剤を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の微細樹脂構造体の製造方法。
【請求項7】
前記光硬化性樹脂組成物が、さらにフェノキシ樹脂を1〜10質量%含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の微細樹脂構造体の製造方法。
【請求項8】
光導波路を有する光電回路基板の製造方法であって、
表面にシリコン酸化膜が形成された光導波路形成用溝を有するシリコン基板を用い;
常温で固体のエポキシ樹脂と常温で液状のエポキシ樹脂とを所定の比率で配合し、さらに光重合開始剤を配合することにより得られる加熱により溶融又は軟化する常温で固体の、所定の屈折率を有するコア用光硬化性樹脂組成物を用い;
下記(a1)〜(e)の工程:
(a1)前記光導波路形成用溝を覆うように前記コア用光硬化性樹脂組成物のワニスを塗布した後、該ワニス中の溶剤を揮発除去させることにより固体のコア用光硬化性樹脂層を形成する樹脂層形成工程、
(b1)前記コア用光硬化性樹脂層を溶融又は軟化する温度に加熱した状態で、前記コア用光硬化性樹脂層表面に、平板を前記シリコン基板表面と平行を維持した状態で押圧接触させ、押圧接触状態を保持したまま該コア用光硬化性樹脂組成物が固化する温度にまで冷却し、前記平板を離間させることにより平坦面を有する未硬化コア用樹脂層を形成する平坦化工程、
(c1)前記未硬化コア用樹脂層の平坦面側からコアを形成させる領域を除く部分をマスクして露光することにより、該領域のみを選択硬化させる硬化工程、
(d1)選択硬化された未硬化コア用樹脂層の未露光部分を現像除去することによりコアを形成する現像工程、
(e)前記コアの屈折率よりも低い屈折率を有する樹脂で前記コアを被覆することによりクラッドを形成するクラッド形成工程、
を行うことを特徴とする光電回路基板の製造方法。
【請求項9】
前記(e)工程が、
常温で固体のエポキシ樹脂と常温で液状のエポキシ樹脂とを所定の比率で配合し、さらに光重合開始剤を配合することにより得られる加熱により溶融又は軟化する常温で固体の、前記コアの屈折率よりも低い屈折率を有するクラッド用光硬化性樹脂組成物を用い;
下記(a2)〜(d2)の工程:
(a2)前記コアを覆うように前記クラッド用光硬化性樹脂組成物のワニスを塗布した後、該ワニス中の溶剤を揮発除去させることにより固体のクラッド用光硬化性樹脂層を形成する樹脂層形成工程、
(b2)前記クラッド用光硬化性樹脂層を溶融又は軟化する温度に加熱した状態で、前記クラッド用光硬化性樹脂層の表面に、平板を前記基板表面と平行を維持した状態で押圧接触させ、押圧接触状態を保持したまま該クラッド用光硬化性樹脂組成物が固化する温度にまで冷却し、前記平板を離間させることにより平坦面を有する未硬化クラッド用樹脂層を形成する平坦化工程、
(c2)前記未硬化クラッド用樹脂層の平坦面側からクラッドを形成させる領域を除く部分をマスクして露光することにより、該領域のみを選択硬化させる硬化工程、
(d2)選択硬化された未硬化クラッド用樹脂層の未露光部分を現像除去することによりクラッドを形成する現像工程、
を行うことを特徴とする請求項8に記載の光電回路基板の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜7の何れか1項に記載の製造方法により得られたことを特徴とする微細樹脂構造体。
【請求項11】
請求項8または9に記載の製造方法により得られたことを特徴とする光電回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−243920(P2010−243920A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94347(P2009−94347)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】