感光性接着剤組成物、並びにそれを用いたフィルム状接着剤、接着シート、接着剤パターン、接着剤層付半導体ウェハ及び半導体装置。
【課題】貼付性、高温接着性、パターン形成性、熱圧着性、耐熱性及び耐湿性の全ての点で十分に優れた感光性接着剤組成物、並びにそれを用いたフィルム状接着剤、接着シート、接着剤パターン、接着剤層付半導体ウェハ及び半導体装置を提供すること。
【解決手段】(A)フィルム形成能を有する樹脂と、(B)エチレン性不飽和基及びエポキシ基を有する化合物と、(C)光開始剤と、を含む感光性接着剤組成物。
【解決手段】(A)フィルム形成能を有する樹脂と、(B)エチレン性不飽和基及びエポキシ基を有する化合物と、(C)光開始剤と、を含む感光性接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性接着剤組成物、並びにそれを用いたフィルム状接着剤、接着シート、接着剤パターン、接着剤層付き半導体ウェハ及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の高性能化又は高機能化に伴い、種々の形態を有する半導体パッケージが提案されている。そのような半導体パッケージにおいて、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを接着するために用いられる接着剤は、フィルム状にした場合の貼付性(以下、単に「貼付性」ともいう。)や、硬化物にした場合の高温での接着性、熱圧着性、耐熱性及び耐湿性(以下、それぞれ「高温接着性」、「熱圧着性」、「耐熱性」、「耐湿性」ともいう。)などの点で優れたものであることが望ましい。また、半導体パッケージの組立プロセスの簡略化を可能とするため、上記接着剤は、アルカリ現像液によるパターン形成性(以下、単に「パターン形成性」ともいう。)の点でも優れたものであることが望ましい。
【0003】
感光性接着剤組成物は、光を照射した部分が化学的に変化して水溶液や有機溶剤に不溶化又は可溶化する「感光性」の機能を有するため、このような感光性接着剤組成物を上記接着剤として用い、フォトマスクを介して露光し現像することにより、高精細な接着剤パターンを得ることができる。
【0004】
感光性接着剤組成物としては、従来、フォトレジストや、ポリイミド樹脂前駆体(ポリアミド酸)をベースとしたものが知られており(特許文献1〜3)、低Tgポリイミド樹脂をベースとしたものも提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−290501号公報
【特許文献2】特開2001−329233号公報
【特許文献3】特開平11−24257号公報
【特許文献4】国際公開第07/004569号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フォトレジストは、耐熱性の点で十分でなかった。また、ポリイミド樹脂前駆体をベースとした感光性接着剤組成物は、耐熱性の点では十分であるものの、熱閉環イミド化時に300℃以上の高温を要するため、周辺材料への熱的ダメージが大きい、揮発成分量が大きい、熱応力が発生しやすいなどの点で十分ではなかった。
【0007】
さらに、これら従来の感光性接着剤組成物は、貼付性とパターン形成性との両立が困難である点や、高温接着性、熱圧着性及び耐湿性が十分でない点でも、改良が望まれていた。
【0008】
また、低Tgポリイミド樹脂をベースとした感光性接着剤組成物は、貼付性、パターン形成性及び熱圧着性の点では十分であるものの、高温接着性、耐熱性及び耐湿性の点で十分ではなかった。
【0009】
感光性接着剤組成物の耐熱性及び耐湿性を向上させるために、放射線重合性化合物や熱硬化性樹脂の量を調整することも試みられた。しかし、放射線重合性化合物を増量すると、タック性(べた付き具合又は粘着性)が大きくなり取り扱いにくくなる傾向、熱圧着性が十分でなくなる傾向、応力が増大する傾向などがあった。一方、放射線重合性化合物を減量すると、パターン形成性及び高温接着性が十分でなくなる傾向があった。また、熱硬化性樹脂を増量すると、パターン形成性が十分でなくなる傾向や、応力が増大する傾向があった。
【0010】
このように、従来、貼付性、高温接着性、パターン形成性、熱圧着性、耐熱性及び耐湿性の全ての点で十分に優れた感光性接着剤組成物は存在せず、そのような感光性接着剤組成物の開発が希求されていた。
【0011】
そこで、本発明は、貼付性、高温接着性、パターン形成性、熱圧着性、耐熱性及び耐湿性の全ての点で十分に優れた感光性接着剤組成物、並びにそれを用いたフィルム状接着剤、接着シート、接着剤パターン、接着剤層付半導体ウェハ及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明は、(A)フィルム形成能を有する樹脂(以下、「(A)成分」ともいう。)と、(B)エチレン性不飽和基及びエポキシ基を有する化合物(以下、「(B)成分」ともいう。)と、(C)光開始剤(以下、「(C)成分」ともいう。)と、を含む感光性接着剤組成物を提供する。本発明の感光性接着剤組成物は、上記構成を備えることにより、貼付性、高温接着性、パターン形成性、熱圧着性、耐熱性及び耐湿性の全ての点で十分に優れたものとなる。
【0013】
本発明の感光性接着剤組成物において、「貼付性」とは、感光性接着剤組成物をフィルム状に成形することにより得られるフィルム状接着剤とした場合の貼付性を意味し、「高温接着性」とは、感光性接着剤組成物を硬化物にした場合の、加熱下での接着性を意味し、「パターン形成性」とは、被着体上に形成された上記フィルム状接着剤からなる接着剤層をフォトマスクを介して露光しアルカリ現像液により現像したときに得られる接着剤パターンの精度を意味し、「熱圧着性」とは、上記接着剤パターンを加熱下で支持部材等に圧着(熱圧着)したときの接着具合を意味し、「耐熱性」とは、上記接着剤パターンを支持部材等に熱圧着、硬化し、高温下においたときの耐剥離性を意味し、「耐湿性」とは、上記接着剤パターンを支持部材等に熱圧着、硬化し、吸湿させた後の耐結露性(耐曇性)又は耐リフロー性を意味する。
【0014】
上記(A)フィルム形成能を有する樹脂は、例えば以下の理由によって用いられる。(A)フィルム形成能を有する樹脂は、分子の絡み合いや凝集力が強いため、本発明の感光性接着剤組成物をペースト状で用いた場合には、塗布した樹脂の安定性やチキソ性を付与でき、さらに、硬化後に低応力性や接着性などに優れた強靭な樹脂を得ることができる。また、フィルム状で用いた場合には、塗工時のフィルム形成性を向上させることができ、樹脂の染み出しやピンホールなどの不良を改善することができる。また、得られたフィルム状感光性接着剤を硬化した際には、低応力性や接着性などに優れた強靭な樹脂を得ることができる。
【0015】
また、上記(B)成分は、例えば以下の理由によって用いられる。光照射後の放射線重合性化合物同士のネットワークに、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート((B)成分)が導入されると、見かけの架橋密度が低減し、熱圧着性が向上する。さらに、このエポキシ基が熱硬化性基や硬化剤、特にポリマ側鎖のカルボキシル基やフェノール性水酸基と反応すると、分子鎖同士の絡み合いが多くなり、単に放射線重合性化合物及び熱硬化性樹脂が配合されるような各々の架橋反応が独立に進行する系よりも強靭なネットワークが形成される。その結果、本発明の感光性接着剤組成物は、上記全ての特性の点で十分に優れたものとなる。
【0016】
また、上記(B)成分を配合することで、露光後加熱硬化した後の樹脂組成物は、耐アルカリ性、耐溶剤性、耐メッキ液性に十分に優れたものとなる。
【0017】
貼付性及び熱圧着性の観点から、(A)フィルム形成能を有する樹脂のTgは、150℃以下であることが好ましい。
【0018】
パターン形成性の観点から、(A)フィルム形成能を有する樹脂は、アルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。
【0019】
高温接着性及び耐熱性の観点から、(A)フィルム形成能を有する樹脂は、ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂であることが好ましい。
【0020】
高温接着性、耐熱性及び耐湿性の観点から、本発明の感光性接着剤組成物は、エポキシ樹脂を更に含むことが好ましい。
【0021】
別の側面において、本発明は、上記感光性接着剤組成物をフィルム状に成形することにより得られる、フィルム状接着剤に関する。本発明のフィルム状接着剤は、上記感光性接着剤組成物を用いることにより、貼付性、高温接着性、パターン形成性、熱圧着性、耐熱性及び耐湿性の全ての点で十分に優れたものとなる。特に、上記フィルム状接着剤は、低温においても優れた貼付性(低温貼付性)を有する。
【0022】
また、本発明は、基材と、該基材上に形成された上記フィルム状接着剤からなる接着剤層と、を備える接着シートに関する。
【0023】
また、本発明は、被着体上に積層された上記フィルム状接着剤からなる接着剤層を、フォトマスクを介して露光し、露光後の接着剤層をアルカリ現像液により現像処理することにより得られる接着剤パターンに関する。また、本発明の接着剤パターンは、被着体上に積層された上記フィルム状接着剤からなる接着剤層を、直接描画露光技術を用いて直接パターンを描画露光し、露光後の接着剤層をアルカリ水溶液により現像処理することにより形成されるものでもよい。本発明の接着剤パターンは、上記感光性接着剤組成物を用いることにより、熱圧着性に優れた高精細なパターンとなる。特に、上記接着剤パターンは、低温においても優れた熱圧着性(低温熱圧着性)を有する。
【0024】
また、本発明は、半導体ウェハと、該半導体ウェハ上に積層された上記フィルム状接着剤からなる接着剤層と、を備える接着剤層付半導体ウェハに関する。
【0025】
さらに、本発明は、上記感光性接着剤組成物を用いて、半導体素子同士、及び/又は、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とが接着された構造を有する半導体装置に関する。本発明の半導体装置は、上記感光性接着剤組成物を用いることにより、製造プロセスの簡略化にも十分対応可能であり、且つ優れた信頼性を具備するものとなる。
【0026】
上記半導体素子搭載用支持部材は、透明基板であることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、貼付性(低温貼付性)、高温接着性、パターン形成性、熱圧着性(低温熱圧着性)、耐熱性及び耐湿性の全ての点で十分に優れた感光性接着剤組成物、並びにそれを用いたフィルム状接着剤、接着シート、接着剤パターン、接着剤層付半導体ウェハ及び半導体装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のフィルム状接着剤の一実施形態を示す端面図である。
【図2】本発明の接着シートの一実施形態を示す端面図である。
【図3】本発明の接着シートの一実施形態を示す端面図である。
【図4】本発明の接着シートの一実施形態を示す端面図である。
【図5】本発明の接着剤層付半導体ウェハの一実施形態を示す上面図である。
【図6】図5のIV−IV線に沿った端面図である。
【図7】本発明の接着剤パターンの一実施形態を示す上面図である。
【図8】図7のV−V線に沿った端面図である。
【図9】本発明の接着剤パターンの一実施形態を示す上面図である。
【図10】図9のVI−VI線に沿った端面図である。
【図11】本発明の半導体装置の一実施形態を示す端面図である。
【図12】本発明の半導体装置の一実施形態を示す端面図である。
【図13】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す端面図である。
【図14】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す端面図である。
【図15】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す平面図である。
【図16】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す端面図である。
【図17】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す端面図である。
【図18】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す端面図である。
【図19】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す端面図である。
【図20】本発明の半導体装置の一実施形態を示す端面図である。
【図21】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す端面図である。
【図22】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す端面図である。
【図23】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す端面図である。
【図24】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す端面図である。
【図25】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す端面図である。
【図26】本発明の半導体装置の一実施形態を示す端面図である。
【図27】図26に示す半導体素子を固体撮像素子として用いたCMOSセンサの例を示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとし、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0030】
本実施形態の感光性接着剤組成物は、(A)フィルム形成能を有する樹脂と、(B)エチレン性不飽和基及びエポキシ基を有する化合物と、(C)光開始剤と、を含む。
【0031】
(A)成分(フィルム形成能を有する樹脂)のTgは150℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることがさらにより好ましく、80℃以下であることが最も好ましい。このTgが150℃を超える場合、フィルム状接着剤(接着剤層)を被着体(半導体ウェハ)に貼り合わせる際に150℃以上の高温を要し、半導体ウェハに反りが発生しやすくなる傾向がある。フィルム状接着剤のウェハ裏面への貼り付け温度は、半導体ウェハの反りを抑えるという観点から、20〜150℃であることが好ましく、40〜100℃であることがより好ましい。上記温度での貼り付けを可能にするためには、フィルム状接着剤のTgを150℃以下にすることが好ましい。一方、Tgが−20℃未満であると、Bステージ状態でのフィルム表面のタック性が強くなり過ぎて、取り扱い性が良好でなくなる傾向がある。
【0032】
ここで、「Tg」とは、(A)成分をフィルム化したときの主分散ピーク温度を意味する。レオメトリックス社製粘弾性アナライザー「RSA−2」(商品名)を用いて、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、測定温度−150〜300℃の条件で測定し、Tg付近のtanδピーク温度を主分散ピーク温度とした。
【0033】
(A)成分の重量平均分子量は、5000〜500000の範囲内で制御されていることが好ましく、低温貼付性及び熱圧着性と高温接着性とを高度に両立できる点で、10000〜300000であることがより好ましく、パターン形成性をより向上できる点で、10000〜100000であることが更に好ましい。重量平均分子量が上記範囲内にあると、感光性接着剤組成物をシート状又はフィルム状としたときの強度、可とう性及びタック性が良好となり、また、熱時流動性が良好となるため、基板表面の配線段差(凹凸)に対する良好な埋込性を確保することが可能となる。上記重量平均分子量が5000未満であると、フィルム形成性が十分でなくなる傾向がある。一方、上記重量平均分子量が500000を超えると、熱時流動性及び上記埋め込み性が十分でなくなる傾向や、パターン形成する際に樹脂組成物のアルカリ現像液に対する溶解性が十分でなくなる傾向がある。ここで、「重量平均分子量」とは、島津製作所社製高速液体クロマトグラフィー「C−R4A」(商品名)を用いて、ポリスチレン換算で測定したときの重量平均分子量を意味する。
【0034】
(A)成分のTg及び重量平均分子量を上記範囲内とすることにより、ウェハ裏面への貼り付け温度を低く抑えることができるとともに、半導体素子を半導体素子搭載用支持部材に接着固定する際の加熱温度(熱圧着温度)も低くすることができ、半導体素子の反りの増大を抑制することができる。また、貼付性、熱圧着性や現像性を有効に付与することができる。
【0035】
本実施形態の感光性接着剤組成物を用いてパターン形成する場合には、良好な現像性を得るため、(A)成分はアルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。アルカリ可溶性樹脂としては、アルカリ可溶性基を有するポリマーが好ましく、アルカリ可溶性基を末端又は側鎖に有するものがより好ましい。アルカリ可溶性基としては、エチレングリコール基、カルボキシル基、水酸基、スルホニル基、フェノール性水酸基などが挙げられる。これらの官能基は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
(A)成分としては、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンイミド樹脂、ポリウレタンアミドイミド樹脂、シロキサンポリイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、これらの共重合体、これらの前駆体(ポリアミド酸等)の他、ポリベンゾオキサゾール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、重量平均分子量が1万〜100万の(メタ)アクリル共重合体、ノボラック樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの樹脂の主鎖及び/又は側鎖に、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール基、カルボキシル基及び/又は水酸基が付与されたものであってもよい。
【0037】
(A)成分を含む感光性接着剤組成物を用いてフィルム状接着剤を作製する場合、特に限定はしないが、例えば、(A)成分として、下記の方法でフィルムを形成できる樹脂を用いることが好ましい。すなわち、ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、及びN−メチル−ピロリジノンのいずれかから選択される溶媒に、(A)成分を60質量%となるように溶解させ、乾燥後の膜厚が50μmとなるようにPETフィルム上に塗布し、オーブン中にて80℃で20分間加熱し、続いて120℃で20分間加熱することにより、フィルム形成が可能である樹脂が好ましく用いられる。
【0038】
これらの中でも、高温接着性、耐熱性及びフィルム形成性の観点から、(A)成分はポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂であることが好ましい。ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを公知の方法で縮合反応させて得ることができる。すなわち、有機溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを等モルで、又は、必要に応じてテトラカルボン酸二無水物の合計1.0molに対して、ジアミンの合計を好ましくは0.5〜2.0mol、より好ましくは0.8〜1.0molの範囲で組成比を調整(各成分の添加順序は任意)し、反応温度80℃以下、好ましくは0〜60℃で付加反応させる。反応が進行するにつれ反応液の粘度が徐々に上昇し、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸が生成する。なお、樹脂組成物の諸特性の低下を抑えるため、上記のテトラカルボン酸二無水物は無水酢酸で再結晶精製処理したものであることが好ましい。
【0039】
上記縮合反応におけるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの組成比については、テトラカルボン酸二無水物の合計1.0molに対して、ジアミンの合計が2.0molを超えると、得られるポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂に、アミン末端のポリイミドオリゴマーの量が多くなる傾向があり、ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量が低くなり、樹脂組成物の耐熱性を含む種々の特性が十分でなくなる傾向がある。一方、テトラカルボン酸二無水物の合計1.0molに対してジアミンの合計が0.5mol未満であると、酸末端のポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂オリゴマーの量が多くなる傾向があり、ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量が低くなり、樹脂組成物の耐熱性を含む種々の特性が十分でなくなる傾向がある。
【0040】
ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂は、上記反応物(ポリアミド酸)を脱水閉環させて得ることができる。脱水閉環は、加熱処理する熱閉環法、脱水剤を使用する化学閉環法等で行うことができる。
【0041】
ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂の原料として用いられるテトラカルボン酸二無水物としては特に制限は無く、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2´,3,3´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3´,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2´,3´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,3´,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3´,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3´,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2´,3´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ−[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4´−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、下記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。下記一般式(1)中、aは2〜20の整数を示す。
【0042】
【化1】
【0043】
上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、例えば、無水トリメリット酸モノクロライド及び対応するジオールから合成することができ、具体的には1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)等が挙げられる。
【0044】
また、テトラカルボン酸二無水物としては、溶剤への良好な溶解性及び耐湿性、365nm光に対する透明性を付与する観点から、下記一般式(2)又は(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0045】
【化2】
【0046】
以上のようなテトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0047】
(A)成分は、さらに、カルボキシル基及び/又は水酸基含有ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂であることが好ましい。上記カルボキシル基及び/又は水酸基含有ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂の原料として用いられるジアミンは、下記一般式(4)、(5)、(6)又は(7)で表される芳香族ジアミンを含むことが好ましい。これら下記一般式(4)〜(7)で表されるジアミンは、全ジアミンの1〜100モル%とすることが好ましく、3〜80モル%とすることが更に好ましく、5〜50モル%とすることが最も好ましい。
【0048】
【化3】
【0049】
上記ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂の原料として用いられるその他のジアミンとしては特に制限はなく、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3´−ジアミノジフェニルエーテル、3,4´−ジアミノジフェニルエーテル、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、3,3´−ジアミノジフェニルメタン、3,4´−ジアミノジフェニルメタン、4,4´−ジアミノジフェニルエーテメタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3´−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4´−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4´−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3´−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4´−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4´−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3´−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4´−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4´−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3´−ジアミノジフェニルケトン、3,4´−ジアミノジフェニルケトン、4,4´−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2´−(3,4´−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4´−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3´−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4´−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4´−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、3,3´−ジヒドロキシ−4,4´−ジアミノビフェニル、3,5−ジアミノ安息香酸等の芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、下記一般式(8)で表される脂肪族エーテルジアミン、下記一般式(9)で表されるシロキサンジアミン等が挙げられる。
【0050】
上記ジアミンの中でも、他成分との相溶性、有機溶剤可溶性、アルカリ可溶性を付与する点で、下記一般式(8)で表される脂肪族エーテルジアミンが好ましく、エチレングリコール及び/又はプロピレングリコール系ジアミンがより好ましい。下記一般式(8)中、R1、R2及びR3は各々独立に、炭素数1〜10のアルキレン基を示し、bは2〜80の整数を示す。
【0051】
【化4】
【0052】
このような脂肪族エーテルジアミンとして具体的には、サンテクノケミカル(株)製ジェファーミンD−230,D−400,D−2000,D−4000,ED−600,ED−900,ED−2000,EDR−148、BASF(製)ポリエーテルアミンD−230,D−400,D−2000等のポリオキシアルキレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。これらのジアミンは、全ジアミンの1〜80モル%であることが好ましく、他の配合成分との相溶性の観点、また、低温貼付性、熱圧着性及び高温接着性を高度に両立できる観点で、5〜60モル%であることがより好ましい。この量が1モル%未満であると、高温接着性、熱時流動性の付与が困難になる傾向にあり、一方、80モル%を超えると、ポリイミド樹脂のTgが低くなり過ぎて、フィルムの自己支持性が損なわれる傾向にある。
【0053】
また、上記ジアミンとしては、室温での密着性、接着性を付与する点で、下記一般式(9)で表されるシロキサンジアミンが好ましい。下記一般式(9)中、R4及びR9は各々独立に、炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、R5、R6、R7及びR8は各々独立に、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、dは1〜5の整数を示す。
【0054】
【化5】
【0055】
これらのジアミンは、全ジアミンの0.5〜80モル%とすることが好ましく、低温貼付性、熱圧着性及び高温接着性を高度に両立できる点で、1〜50モル%とすることが更に好ましい。0.5モル%を下回るとシロキサンジアミンを添加した効果が小さくなり、80モル%を上回ると他成分との相溶性、高温接着性及び現像性が低下する傾向がある。
【0056】
上記一般式(9)で表されるシロキサンジアミンとして具体的には、式(9)中のdが1のものとして、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェノキシ−1,3−ビス(4−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノブチル)ジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン等が挙げられ、dが2のものとして、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン等が挙げられる。
【0057】
上述したジアミンは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0058】
また、上記ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂は、1種を単独で又は必要に応じて2種以上を混合(ブレンド)して用いることができる。
【0059】
また、上述のように、ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂の組成を決定する際には、そのTgが150℃以下となるように設計することが好ましく、ポリイミド樹脂の原料であるジアミンとして、上記一般式(8)で表される脂肪族エーテルジアミンを用いることが特に好ましい。
【0060】
上記ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂の合成時に、下記一般式(10)、(11)又は(12)で表される化合物のような単官能酸無水物及び/又は単官能アミンを縮合反応液に投入することにより、ポリマー末端に酸無水物又はジアミン以外の官能基を導入することができる。また、これにより、ポリマーの分子量を低くし、パターン形成時の現像性及び熱圧着性を向上させることができる。酸無水物又はジアミン以外の官能基としては、特に限定はしないが、パターン形成時のアルカリ可溶性を向上させる点で、カルボキシル基やフェノール性水酸基、グリコール基などのアルカリ可溶性基が好ましい。また、接着性を付与する点で、下記一般式(12)で表される化合物やアミノ基を有する(メタ)アクリレートなどの放射線重合性基及び/又は熱硬化性基を有する化合物が好ましく用いられる。また、低吸湿性を付与する点で、シロキサン骨格等を有する化合物も好ましく用いられる。
【0061】
【化6】
【0062】
上記ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂は、光硬化性の観点から、30μmのフィルム状に成形した時の365nmに対する透過率が、パターンの側壁が被着体に対して垂直となる点で10%以上であることが好ましく、より低露光量でパターン形成できる点で20%以上であることがより好ましい。このようなポリイミド樹脂は、例えば、上記一般式(2)で表される酸無水物と、上記一般式(8)で表される脂肪族エーテルジアミン及び/又は上記一般式(9)で表されるシロキサンジアミンとを反応させることで合成することができる。
【0063】
本実施形態の感光性接着剤組成物において、(A)成分の含有量は、感光性接着剤組成物の固形分全量を基準として5〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましい。この含有量が20質量%未満であると、パターン形成時の現像性が十分でなくなる傾向があり、80質量%を超えると、パターン形成時の現像性及び接着性が十分でなくなる傾向がある。
【0064】
(A)成分のアルカリ溶解性が乏しい又は(A)成分がアルカリ溶媒に溶解しない場合、溶解助剤として、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂、及び/又は親水性基を有する樹脂を添加してもよい。親水性基を有する樹脂とは、アルカリ可溶性の樹脂であれば特に限定はしないが、エチレングリコール、プロピレングリコール基のようなグリコール基を有する樹脂が挙げられる。
【0065】
(B)成分(エチレン性不飽和基及びエポキシ基を有する化合物)において、エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、プロパギル基、ブテニル基、エチニル基、フェニルエチニル基、マレイミド基、ナジイミド基、(メタ)アクリル基などが挙げられ、反応性の観点から、(メタ)アクリル基が好ましい。
【0066】
(B)成分としては、特に限定はしないが、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、4−ヒドロキシブチルメタクリレートグリシジルエーテルの他、エポキシ基と反応する官能基及びエチレン性不飽和基を有する化合物と多官能エポキシ樹脂とを反応させて得られる化合物等が挙げられる。上記エポキシ基と反応する官能基としては、特に限定はしないが、イソシアネート基、カルボキシル基、フェノール性水酸基、水酸基、酸無水物、アミノ基、チオール基、アミド基などが挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0067】
(B)成分は、例えば、トリフェニルホスフィンやテトラブチルアンモニウムブロミドの存在下、1分子中に少なくとも2つ以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂と、エポキシ基1当量に対し0.1〜0.9当量の(メタ)アクリル酸とを反応させることによって得られる。また、ジブチルスズジラウレートの存在下、多官能イソシアネート化合物とヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート及びヒドロキシ基含有エポキシ化合物とを反応させ、又は多官能エポキシ樹脂とイソシアネート基含有(メタ)アクリレートとを反応させることにより、グリシジル基含有ウレタン(メタ)アクリレート等が得られる。
【0068】
(B)成分は、保存安定性、接着性、組立て加熱時及び組立て後のパッケージの低アウトガス性、耐熱・耐湿性の観点から、5%重量減少温度が、フィルム形成時の加熱乾燥による揮発もしくは表面への偏析を抑制できる点で150℃以上であることが好ましく、熱硬化時のアウトガスによるボイド及びはく離や接着性低下を抑制できる点で180℃以上であることが更に好ましく、200℃以上であることが更により好ましい。さらに、リフロー時に未反応成分が揮発することによるボイド及びはく離を抑制できる点で260℃以上であることが最も好ましい。このような(B)成分としては、分子内に芳香環を有する化合物が好ましい。
【0069】
さらに、(B)成分としては、不純物イオンであるアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲンイオン、特には塩素イオンや加水分解性塩素等を1000ppm以下に低減した高純度品を用いることが、エレクトロマイグレーション防止や金属導体回路の腐食防止の観点から好ましい。例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲンイオン等を低減した多官能エポキシ樹脂を原料として用いることで上記不純物イオン濃度を満足することができる。全塩素含量はJIS K7243−3に準じて測定できる。
【0070】
上記耐熱性と純度を満たす(B)成分としては、特に限定はしないが、ビスフェノールA型(又はAD型、S型、F型)のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA及び/又はF型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA及び/又はF型のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミン等を原料としたものが挙げられる。
【0071】
特に、熱圧着性、低応力性及び接着性を改善し、パターン形成時には現像性を維持するためには、(B)成分のエポキシ基及びエチレン性不飽和基の数がそれぞれ3つ以下であることが好ましく、特にエチレン性不飽和基の数は2つ以下であることが好ましい。このような(B)成分としては特に限定はしないが、下記一般式(13)、(14)、(15)、(16)又は(17)で表される化合物等が好ましく用いられる。下記一般式(13)〜(17)において、R12及びR16は水素原子又はメチル基を示し、R10、R11、R13及びR14は2価の有機基を示し、R15〜R18はエポキシ基又はエチレン性不飽和基を有する有機基を示す。
【0072】
【化7】
【0073】
本実施形態の感光性接着剤組成物において、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して1〜100質量部であることが好ましく、2〜70質量部であることがより好ましく、5〜50質量部であることが更に好ましい。この含有量が100質量部を超えると、フィルム形成時にはチキソ性が低下しフィルム形成しにくくなる傾向や、タック性が上昇し取り扱い性が十分でなくなる傾向がある。また、パターン形成時には現像性が低下する傾向があり、光硬化後の溶融粘度が低くなりすぎることにより熱圧着時にパターンが変形する傾向もある。一方、上記(B)成分の含有量が1質量部未満であると、添加の効果が十分に得られなくなる傾向がある。
【0074】
本発明の感光性接着剤組成物は、高精度平行露光機(オーク製作所製、「EXM−1172−B−∞」(商品名))を用いて露光した後、20℃〜300℃における最低溶融粘度が30000Pa・s以下である感光性接着剤組成物であることが好ましい。
【0075】
本明細書において、「最低溶融粘度」とは、光量1000mJ/cm2を照射後のサンプルを、粘弾性測定装置ARES(レオメトリックス・サイエンティフィック・エフ・イー(株)製)を用いて測定したときの20℃〜300℃における溶融粘度の最低値を示す。なお、測定プレートは直径8mmの平行プレート、測定条件は昇温5℃/min、測定温度は20℃〜300℃、周波数は1Hzとする。
【0076】
上記最低溶融粘度は、20000Pa・s以下であることがより好ましく、18000Pa・s以下であることが更に好ましく、15000Pa・s以下であることが特に好ましい。上記範囲内の最低溶融粘度を有することにより、樹脂の変形を制御しつつ、十分な低温熱圧着性を確保することができ、凹凸がある基板などに対しても良好な密着性を付与することができる。上記最低溶融粘度の下限値は特に設けないが、取り扱い性等の点で100Pa・s以上であることが望ましい。
【0077】
本実施形態の感光性接着剤組成物は、硬化性成分として、(B)成分以外に、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、放射線重合性化合物等を含んでもよい。
【0078】
エポキシ樹脂としては、分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含むものが好ましく、熱圧着性や硬化性、硬化物特性の点から、フェノールのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂がより好ましい。このような樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型(又はAD型、S型、F型)のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0079】
また、エポキシ樹脂としては、不純物イオンである、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲンイオン、特に塩素イオンや加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることが、エレクトロマイグレーション防止や金属導体回路の腐食防止の観点から好ましい。
【0080】
エポキシ樹脂の含有量は、(A)成分100質量部に対して1〜100質量部であることが好ましく、2〜50質量部であることがより好ましい。この含有量が100質量部を超えると、アルカリ水溶液への溶解性が低下し、パターン形成性が低下する傾向がある。一方、上記含有量が2質量部未満であると、十分な熱圧着性及び高温接着性が得られなくなる傾向がある。
【0081】
硬化剤としては、例えば、フェノール系化合物、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール類、第3級アミン等が挙げられる。これらの中でもフェノール系化合物が好ましく、分子中に少なくとも2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物がより好ましい。このような化合物としては、例えばフェノールノボラック、クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾールノボラック、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック、キシリレン変性フェノールノボラック、ナフトール系化合物、トリスフェノール系化合物、テトラキスフェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、ポリ−p−ビニルフェノール、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、数平均分子量が400〜4000の範囲内のものが好ましい。これにより、半導体装置組立加熱時に、半導体素子又は装置等の汚染の原因となる加熱時のアウトガスを抑制できる。
【0082】
硬化剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して1〜100質量部であることが好ましく、2〜50質量部であることがより好ましく、2〜30質量部であることが最も好ましい。この含有量が100質量部を超えると、露光時にエチレン性不飽和基及びエポキシ基を有する化合物と放射線重合性化合物との反応性が十分でなくなる傾向がある。また、樹脂の酸価及びフェノール性水酸基価が上昇することで、現像後に膜厚が減少したり膨潤したりする傾向がある。さらに、現像液の樹脂パターンへの浸透が大きくなることで、その後の加熱硬化時や組立熱履歴でのアウトガスが多くなり、耐熱信頼性や耐湿信頼性が大きく低下する傾向がある。一方、上記含有量が1質量部未満であると、十分な高温接着性が得られなくなる傾向がある。
【0083】
硬化促進剤としては、加熱によってエポキシの硬化/重合を促進する硬化促進剤を含有させるものであれば特に制限はなく、例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール−テトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等が挙げられる。感光性接着剤組成物における硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して0.01〜50質量部が好ましい。
【0084】
放射線重合性化合物としては、エチレン性不飽和基を有する化合物が挙げられ、エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、プロパギル基、ブテニル基、エチニル基、フェニルエチニル基、マレイミド基、ナジイミド基、(メタ)アクリル基などが挙げられ、反応性の観点から、(メタ)アクリル基が好ましく、放射線重合性化合物は2官能以上の(メタ)アクリレートであることが好ましい。このようなアクリレートとしては、特に制限はしないが、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、4−ビニルトルエン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、1,3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、1,2−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレート、下記一般式(18)で表される化合物、ウレタンアクリレート若しくはウレタンメタクリレート、及び尿素アクリレート等が挙げられる。
【0085】
【化8】
上記一般式(18)中、R19及びR20は各々独立に、水素原子又はメチル基を示し、g及びhは各々独立に、1〜20の整数を示す。
【0086】
これらの放射線重合性化合物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも、上記一般式(18)で表されるグリコール骨格を有する放射線重合性化合物は、アルカリ可溶性、硬化後の耐溶剤性を十分に付与できる点で好ましく、ウレタンアクリレート及びメタクリレート、イソシアヌル酸ジ/トリアクリレート及びメタクリレートは硬化後の高接着性を十分に付与できる点で好ましい。
【0087】
放射線重合性化合物として、3官能以上のアクリレート化合物を含有する場合、硬化後の接着性をより向上させることができると共に、加熱時のアウトガスを抑制することができるため好ましい。
【0088】
硬化後の耐熱性を十分に付与できる点で、放射線重合性化合物として、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ及びトリアクリレートを含有することが最も好ましい。
【0089】
官能基当量の高い放射線重合性化合物を用いることで、低応力化、低反り化することが可能となる。官能基当量の高い放射線重合性化合物は、重合官能基当量が200eq/g以上であることが好ましく、300eq/g以上であることがより好ましく、400eq/g以上であることが最も好ましい。重合官能基当量が200eq/g以上のエーテル骨格、ウレタン基及び/又はイソシアヌル基を有する放射線重合性化合物を用いることにより、感光性接着剤組成物の現像性及び接着性を向上させ、かつ低応力化、低反り化することが可能となる。また、重合官能基当量が200eq/g以上の放射線重合性化合物と重合官能基当量が200eq/g以下の放射線重合性化合物を併用してもよい。この場合、放射線重合性化合物としてウレタン基及び/又はイソシアヌル基を有する放射線重合性化合物を用いることが好ましい。
【0090】
放射線重合性化合物の含有量は、(A)成分100質量部に対して0〜300質量部であることが好ましく、10〜250質量部であることがより好ましい。この含有量が300質量部を超えると、重合により熱溶融時の流動性が低下し、熱圧着時の接着性が低下する傾向にある。一方、10質量部未満であると、露光による光硬化後の耐溶剤性が低くなり、パターンを形成するのが困難となる、つまり現像前後の膜厚変化が大きくなる及び/又は残渣が多くなる傾向にある。また、熱圧着時に溶融し、パターンが変形する傾向にある。
【0091】
(C)成分(光開始剤)としては、感度向上の点から、波長365nmの光に対する分子吸光係数が1000ml/g・cm以上であるものが好ましく、2000ml/g・cm以上であるものがより好ましい。なお、分子吸光係数は、サンプルの0.001質量%アセトニトリル溶液を調製し、この溶液について分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、「U−3310」(商品名))を用いて吸光度を測定することにより求められる。
【0092】
感光性接着剤組成物を膜厚30μm以上の接着剤層とする場合には、感度向上、内部硬化性向上の観点から、(C)成分としては、光照射によってブリーチングするものがより好ましい。このような(C)成分としては、例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパノン−1、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6,−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイドなどの中からUV照射によって光退色する化合物が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0093】
(C)成分は、放射線の照射によりエポキシ樹脂の重合及び/又は反応を促進する機能を発現する光開始剤を含有していてもよい。このような光開始剤としては、例えば、放射線照射によって塩基を発生する光塩基発生剤、放射線照射によって酸を発生する光酸発生剤などが挙げられ、光塩基発生剤が特に好ましい。
【0094】
光塩基発生剤を用いることにより、感光性接着剤組成物の被着体への高温接着性及び耐湿性を更に向上させることができる。この理由としては、光塩基発生剤から生成した塩基がエポキシ樹脂の硬化触媒として効率よく作用することにより、架橋密度をより一層高めることができるため、また生成した硬化触媒が基板などを腐食することが少ないためと考えられる。また、感光性接着剤組成物に光塩基発生剤を含有させることにより、架橋密度を向上させることができ、高温放置時のアウトガスをより低減させることができる。さらに、硬化プロセス温度を低温化、短時間化させることができると考えられる。
【0095】
また、(A)成分のカルボキシル基及び/又は水酸基の含有割合が高くなると、硬化後の吸湿率の上昇及び吸湿後の接着力の低下が懸念される。これに対して、光塩基発生剤を含む感光性接着剤組成物によれば、放射線の照射により塩基が発生することにより、上記のカルボキシル基及び/又は水酸基とエポキシ樹脂との反応後に残存するカルボキシル基及び/又は水酸基を低減させることができ、耐湿性及び接着性とパターン形成性とをより高水準で両立することが可能となる。
【0096】
光塩基発生剤は、放射線照射時に塩基を発生する化合物であれば特に制限は受けず用いることができる。発生する塩基としては、反応性、硬化速度の点から強塩基性化合物が好ましい。一般的には、塩基性の指標として酸解離定数の対数であるpKa値が使用され、水溶液中でのpKa値が7以上の塩基が好ましく、さらに9以上の塩基がより好ましい。
【0097】
このような放射線照射時に発生する塩基としては、例えば、イミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン等のピペラジン誘導体、ピペリジン、1,2−ジメチルピペリジン等のピペリジン誘導体、プロリン誘導体、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等のトリアルキルアミン誘導体、4−メチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の4位にアミノ基またはアルキルアミノ基が置換したピリジン誘導体、ピロリジン、n−メチルピロリジン等のピロリジン誘導体、ジヒドロピリジン誘導体、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−1(DBU)等の脂環式アミン誘導体、ベンジルメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルジエチルアミン等のベンジルアミン誘導体等が挙げられる。
【0098】
上記のような塩基を放射線照射によって発生する光塩基発生剤としては、例えば、Journal of Photopolymer Science and Technology 12巻、313〜314項(1999年)やChemistry of Materials 11巻、170〜176項(1999年)等に記載されている4級アンモニウム塩誘導体を用いることができる。これらは、活性光線の照射により高塩基性のトリアルキルアミンを生成するため、エポキシ樹脂の硬化には最適である。
【0099】
光塩基発生剤としては、Journal of American ChemicalSociety 118巻 12925頁(1996年)やPolymer Journal 28巻 795頁(1996年)等に記載されているカルバミン酸誘導体も用いることができる。
【0100】
活性光線の照射により塩基を発生する光塩基発生剤としては、2,4−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン; 1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)―,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、 エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)などのオキシム誘導体; 光ラジカル発生剤として市販されている2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体(ハロゲン、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等の置換基がフェニル基に置換されていてもよい)、ベンゾイソオキサゾロン誘導体等を用いることができる。
【0101】
光塩基発生剤としては、高分子の主鎖及び/又は側鎖に塩基を発生する基を導入した化合物を用いても良い。この場合の分子量としては、接着剤としての接着性、流動性及び耐熱性の観点から重量平均分子量1,000〜100,000が好ましく、5,000〜30,000であることがより好ましい。
【0102】
上記の光塩基発生剤は、室温で放射線を照射しない状態ではエポキシ樹脂と反応性を示さないため、室温での貯蔵安定性が非常に優れる。
【0103】
本実施形態の感光性接着剤組成物は、必要に応じて増感剤を併用することができる。この増感剤としては、例えば、カンファーキノン、ベンジル、ジアセチル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジ(2−メトキシエチル)ケタール、4,4´−ジメチルベンジル−ジメチルケタール、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノン、1−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ブロモアントラキノン、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ニトロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロ−7−トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン−10,10−ジオキシド、チオキサントン−10−オキサイド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4´−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、アジド基を含む化合物などが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上併用して使用することができる。
【0104】
本実施形態の感光性接着剤組成物は、必要に応じて熱ラジカル発生剤を用いることができる。熱ラジカル発生剤としては、有機過酸化物であることが好ましい。有機過酸化物としては、1分間半減期温度が120℃以上であるものが好ましく、150℃以上であるものがより好ましい。有機過酸化物は、感光性接着剤組成物の調製条件、製膜温度、硬化(貼り合せ)条件、その他プロセス条件、貯蔵安定性等を考慮して選択される。使用可能な過酸化物としては、特に限定はしないが、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシへキサン)、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどが挙げられ、これらのうちの1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0105】
熱ラジカル発生剤の添加量は、エチレン性不飽和基を有する化合物の全量に対し、0.01〜20重量%が好ましく、0.1〜10重量%が更に好ましく、0.5〜5重量%が最も好ましい。0.01重量%以下であると硬化性が低下し、添加効果が小さくなり、5重量%を超えるとアウトガス量増加、保存安定性低下が見られる。
【0106】
熱ラジカル発生剤としては、半減期温度が120℃以上の化合物であれば特に限定はしないが、例えば、パーヘキサ25B(日油社製)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシへキサン)(1分間半減期温度:180℃)、パークミルD(日油社製)、ジクミルパーオキサイド(1分間半減期温度:175℃)などが挙げられる。
【0107】
本実施形態の感光性接着剤組成物には、保存安定性、プロセス適応性又は酸化防止性を付与するために、キノン類、多価フェノール類、フェノール類、ホスファイト類、イオウ類等の重合禁止剤又は酸化防止剤を、硬化性を損なわない範囲で更に添加してもよい。
【0108】
さらに、本発明の感光性接着剤組成物には、適宜フィラーを含有させることもできる。フィラーとしては、例えば、銀粉、金粉、銅粉、ニッケル粉等の金属フィラー、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、結晶性シリカ、非晶性シリカ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等の無機フィラー、カーボン、ゴム系フィラー等の有機フィラー等が挙げられ、種類・形状等にかかわらず特に制限なく使用することができる。
【0109】
上記フィラーは、所望する機能に応じて使い分けることができる。例えば、金属フィラーは、樹脂組成物に導電性、熱伝導性、チキソ性等を付与する目的で添加され、非金属無機フィラーは、接着剤層に熱伝導性、低熱膨張性、低吸湿性等を付与する目的で添加され、有機フィラーは接着剤層に靭性等を付与する目的で添加される。
【0110】
これら金属フィラー、無機フィラー又は有機フィラーは、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも、半導体装置用接着材料に求められる、導電性、熱伝導性、低吸湿特性、絶縁性等を付与できる点で、金属フィラー、無機フィラー、又は絶縁性のフィラーが好ましく、無機フィラー又は絶縁性フィラーの中では、樹脂ワニスに対する分散性が良好でかつ、熱時の高い接着力を付与できる点でシリカフィラーがより好ましい。
【0111】
上記フィラーは、平均粒子径が10μm以下、且つ、最大粒子径が30μm以下であることが好ましく、平均粒子径が5μm以下、且つ、最大粒子径が20μm以下であることがより好ましい。平均粒子径が10μmを超え、且つ、最大粒子径が30μmを超えると、破壊靭性向上の効果が十分に得られない傾向がある。また、平均粒子径及び最大粒子径の下限は特に制限はないが、通常、どちらも0.001μmである。
【0112】
上記フィラーの含有量は、付与する特性又は機能に応じて決められるが、樹脂成分とフィラーの合計に対して0〜50質量%が好ましく、1〜40質量%がより好ましく、3〜30質量%がさらに好ましい。フィラーを増量させることにより、低アルファ化、低吸湿化、高弾性率化が図れ、ダイシング性(ダイサー刃による切断性)、ワイヤボンディング性(超音波効率)、熱時の接着強度を有効に向上させることができる。
【0113】
フィラーを必要以上に増量させると、熱圧着性、パターン形成性が損なわれる傾向にあるため、フィラーの含有量は上記の範囲内に収めることが好ましい。求められる特性のバランスをとるべく、最適フィラー含有量を決定する。フィラーを用いた場合の混合・混練は、通常の撹拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。
【0114】
本実施形態の感光性接着剤組成物には、異種材料間の界面結合を良くするために、各種カップリング剤を添加することもできる。カップリング剤としては、例えば、シラン系、チタン系、アルミニウム系等が挙げられ、中でも効果が高い点で、シラン系カップリング剤が好ましく、エポキシ基などの熱硬化性基やメタクリレート及び/又はアクリレートなどの放射線重合性基を有する化合物がより好ましい。また、上記シラン系カップリング剤の沸点及び/又は分解温度は150℃以上であることが好ましく、180℃以上であることより好ましく、200℃以上であることがさらにより好ましい。つまり、200℃以上の沸点及び/又は分解温度で、かつエポキシ基などの熱硬化性基やメタクリレート及び/又はアクリレートなどの放射線重合性基を有するシラン系カップリング剤が最も好ましく用いられる。上記カップリング剤の使用量は、その効果や耐熱性及びコストの面から、使用する(A)成分100質量部に対して、0.01〜20質量部とすることが好ましい。
【0115】
本実施形態の感光性接着剤組成物には、イオン性不純物を吸着して、吸湿時の絶縁信頼性を良くするために、さらにイオン捕捉剤を添加することもできる。このようなイオン捕捉剤としては、特に制限はなく、例えば、トリアジンチオール化合物、フェノール系還元剤等の銅がイオン化して溶け出すのを防止するための銅害防止剤として知られる化合物、粉末状のビスマス系、アンチモン系、マグネシウム系、アルミニウム系、ジルコニウム系、カルシウム系、チタン系、ズズ系及びこれらの混合系等の無機化合物が挙げられる。具体例としては、特に限定はしないが東亜合成(株)製の無機イオン捕捉剤、商品名、IXE−300(アンチモン系)、IXE−500(ビスマス系)、IXE−600(アンチモン、ビスマス混合系)、IXE−700(マグネシウム、アルミニウム混合系)、IXE−800(ジルコニウム系)、IXE−1100(カルシウム系)等がある。これらは単独あるいは2種以上混合して用いることができる。上記イオン捕捉剤の使用量は、添加による効果や耐熱性、コスト等の点から、(A)成分100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましい。
【0116】
上記感光性接着剤組成物をフィルム状に成形することにより、フィルム状接着剤を得ることができる。図1は、本発明のフィルム状接着剤の一実施形態を示す端面図である。図1に示すフィルム状接着剤1は、上記感光性接着剤組成物をフィルム状に成形したものである。
【0117】
フィルム状接着剤1は、例えば、図2に示す基材3上に上記感光性接着剤組成物を塗布し、乾燥させることによりフィルム状に成形される。このようにして、基材3と、基材3上に形成された上記フィルム状接着剤からなる接着剤層1とを備える接着シート100が得られる。図2は、本発明の接着シート100の一実施形態を示す端面図である。図2に示す接着シート100は、基材3と、これの一方面上に設けられたフィルム状接着剤からなる接着剤層1とから構成される。
【0118】
図3は、本発明の接着シートの他の一実施形態を示す端面図である。図3に示す接着シート100は、基材3と、これの一方面上に設けられたフィルム状接着剤からなる接着剤層1とカバーフィルム2とから構成される。
【0119】
フィルム状接着剤1は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び必要に応じて添加される他の成分を、有機溶媒中で混合し、混合液を混練してワニスを調製し、基材3上にこのワニスを塗布してワニスの層を形成し、加熱によりワニス層を乾燥した後に基材3を除去する方法で得ることができる。このとき、基材3を除去せずに、接着シート100の状態で保存又は使用することもできる。
【0120】
ワニスの調製に用いる有機溶媒、すなわちワニス溶剤は、材料を均一に溶解又は分散できるものであれば、特に制限はない。例えば、ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、及びN−メチル−ピロリジノンが挙げられる。
【0121】
上記混合及び混練は、通常の撹拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜組み合わせて行うことができる。上記加熱による乾燥は、(B)成分が十分には反応しない温度で、かつ、溶媒が十分に揮散する条件で行う。上記「(B)成分が十分には反応しない温度」とは、具体的には、DSC(例えば、パーキンエルマー社製「DSC−7型」(商品名))を用いて、サンプル量:10mg、昇温速度:5℃/min、測定雰囲気:空気、の条件で測定したときの反応熱のピーク温度以下の温度である。具体的には、通常60〜180℃で、0.1〜90分間加熱することによりワニス層を乾燥する。乾燥前のワニス層の好ましい厚みは1〜200μmである。この厚みが1μm未満であると、接着固定機能が十分でなくなる傾向があり、200μmを超えると、後述する残存揮発分が多くなる傾向がある。
【0122】
得られたワニス層の好ましい残存揮発分は10質量%以下である。この残存揮発分が10質量%を超えると、組立加熱時の溶媒揮発による発泡が原因で、接着剤層内部にボイドが残存しやすくなり、耐湿性が十分でなくなる傾向がある。また、加熱時に発生する揮発成分により、周辺材料又は部材が汚染される可能性も高くなる傾向がある。なお、上記の残存揮発成分の測定条件は次の通りである。すなわち、50mm×50mmサイズに切断したフィルム状接着剤1について、初期の質量をM1とし、このフィルム状接着剤1を160℃のオーブン中で3時間加熱した後の質量をM2とし、以下の式により残存揮発分(%)を求める。
式 残存揮発分(%)=[(M2−M1)/M1]×100
【0123】
基材3は、上記の乾燥条件に耐えるものであれば特に限定されるものではない。例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム、メチルペンテンフィルムを基材3として用いることができる。基材3としてのフィルムは2種以上組み合わせた多層フィルムであってもよく、表面がシリコーン系、シリカ系等の離型剤などで処理されたものであってもよい。
【0124】
また、フィルム状接着剤1とダイシングシートとを積層し、接着シートとすることもできる。上記ダイシングシートは、基材上に粘着剤層を設けたシートであり、上記の粘着剤層は、感圧型又は放射線硬化型のどちらでも良い。また、上記の基材はエキスパンド可能な基材が好ましい。このような接着シートとすることにより、ダイボンドフィルムとしての機能とダイシングシートとしての機能を併せ持つダイシング・ダイボンド一体型接着シートが得られる。
【0125】
上記のダイシング・ダイボンド一体型接着シートとして具体的には、図4に示すような、基材3、粘着剤層6及びフィルム状接着剤(接着剤層)1がこの順に積層されてなる接着シート100が挙げられる。
【0126】
図5は、本発明の接着剤層付半導体ウェハの一実施形態を示す上面図であり、図6は図5のIV−IV線に沿った端面図である。図5及び6に示す接着剤層付半導体ウェハ20は、半導体ウェハ8と、これの一方面上に設けられたフィルム状接着剤(接着剤層)1と、を備える。
【0127】
接着剤層付半導体ウェハ20は、半導体ウェハ8上に、フィルム状接着剤1を加熱しながらラミネートすることにより得られる。フィルム状接着剤1は、例えば、室温(25℃)〜150℃程度の低温で半導体ウェハ8に貼付けることが可能である。
【0128】
図7及び図9は、それぞれ本発明の接着剤パターンの一実施形態を示す上面図であり、図8は図7のV−V線に沿った端面図であり、図10は図9のVI−VI線に沿った端面図である。図7、8、9及び10に示す接着剤パターン1aは、被着体としての半導体ウェハ8上において、略正方形の辺に沿ったパターン又は正方形のパターンを有するように形成されている。
【0129】
接着剤パターン1aは、接着剤層1を被着体としての半導体ウェハ8上に積層して接着剤層付半導体ウェハ20を得て、接着剤層1をフォトマスクを介して露光し、露光後の接着剤層1をアルカリ現像液により現像処理することにより形成される。これにより、接着剤パターン1aが形成された接着剤層付半導体ウェハ20が得られる。
【0130】
以下、本発明のフィルム状接着剤を用いて製造される半導体装置について、図面を用いて具体的に説明する。近年は様々な構造の半導体装置が提案されており、本発明のフィルム状接着剤の用途は、以下に説明する構造の半導体装置に限定されるものではない。
【0131】
図11は、本発明の半導体装置の一実施形態を示す端面図である。図11に示す半導体装置200において、半導体素子12はフィルム状接着剤1を介して半導体素子搭載用支持部材13に接着され、半導体素子12の接続端子(図示せず)はワイヤ14を介して外部接続端子(図示せず)と電気的に接続され、封止材15によって封止されている。
【0132】
図12は、本発明の半導体装置の他の一実施形態を示す端面図である。図12に示す半導体装置200において、一段目の半導体素子12aはフィルム状接着剤1を介して、端子16が形成された半導体素子搭載用支持部材13に接着され、一段目の半導体素子12aの上に更にフィルム状接着剤1を介して二段目の半導体素子12bが接着されている。一段目の半導体素子12a及び二段目の半導体素子12bの接続端子(図示せず)は、ワイヤ14を介して外部接続端子と電気的に接続され、封止材によって封止されている。このように、本発明のフィルム状接着剤は、半導体素子を複数重ねる構造の半導体装置にも好適に使用できる。
【0133】
図11及び図12に示す半導体装置(半導体パッケージ)は、例えば、図9に示す接着剤層付半導体ウェハ20を破線Dに沿ってダイシングし、ダイシング後の接着剤層付き半導体素子を半導体素子搭載用支持部材13に加熱圧着して両者を接着させ、その後、ワイヤボンディング工程、必要に応じて封止材による封止工程等の工程を経ることにより得ることができる。上記加熱圧着における加熱温度は、通常、20〜250℃であり、荷重は、通常、0.01〜20kgfであり、加熱時間は、通常、0.1〜300秒間である。
【0134】
その他、本発明の半導体装置の実施形態としては、図18に示すようなものがある。以下、図18に示す半導体装置の製造方法について、図面を用いて詳しく説明する。図13、14及び16〜19は、本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す端面図であり、図15は本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す上面図である。
【0135】
本実施形態の半導体装置の製造方法は、以下の(工程1)〜(工程7)を備える。
(工程1)半導体ウェハ8内に形成された半導体チップ(半導体素子)12の回路面18上にフィルム状接着剤(接着剤層)1を積層する工程(図13(a)及び(b))。
(工程2)半導体チップ12の回路面18上に設けられた接着剤層1を露光及び現像によってパターニングする工程(図13(c)及び図14(a))。
(工程3)半導体ウェハ8を回路面18とは反対側の面から研磨して半導体ウェハ8を薄くする工程(図14(b))。
(工程4)半導体ウェハ8をダイシングにより複数の半導体チップ12に切り分ける工程(図14(c)及び図16(a))。
(工程5)半導体チップ12をピックアップして半導体装置用の板状の支持部材(半導体素子搭載用支持部材)13にマウントする工程(図16(b)及び図17(a))。
(工程6)支持部材13にマウントされた半導体チップ12aの回路面18上でパターニングされた接着剤層1に2層目の半導体チップ12bを積層する工程(図17(b))。
(工程7)半導体チップ12a及び12bをそれぞれ外部接続端子と接続する工程(図18)。
【0136】
以下、(工程1)〜(工程7)について詳述する。
(工程1)
図13(a)に示す半導体ウェハ8内には、ダイシングラインDによって区分された複数の半導体チップ12が形成されている。この半導体チップ12の回路面18側の面にフィルム状接着剤(接着剤層)1を積層する(図13(b))。接着剤層1を積層する方法としては、予めフィルム状に成形されたフィルム状接着剤を準備し、これを半導体ウェハ8に貼り付ける方法が簡便であるが、スピンコート法などを用いて液状の感光性接着剤組成物のワニスを半導体ウェハ8に塗布し、加熱乾燥する方法によってもよい。
【0137】
(工程2)
接着剤層1は、露光及び現像によってパターニングされた後に被着体に対する接着性を有し、アルカリ現像が可能なネガ型の感光性接着剤である。より詳細には、接着剤層1を露光及び現像によってパターニングして形成されるレジストパターン(接着剤パターン)が、半導体チップや支持部材等の被着体に対する接着性を有している。例えば接着剤パターンに被着体を必要により加熱しながら圧着することにより、接着剤パターンと被着体とを接着することが可能である。
【0138】
半導体ウェハ8に積層された接着剤層1に対して、所定の位置に開口を形成しているマスク4を介して活性光線(典型的には紫外線)を照射する(図13(c))。これにより接着剤層1が所定のパターンで露光される。
【0139】
露光後、接着剤層1のうち露光されなかった部分をアルカリ現像液を用いた現像によって除去することにより、開口11が形成されるように接着剤層1をパターニングする(図14(a))。なお、ネガ型に代えてポジ型の感光性接着剤組成物を用いることも可能であり、その場合は接着剤層1のうち露光された部分が現像により除去される。
【0140】
図15は、接着剤層1がパターニングされた状態を示す上面図である。開口11において半導体チップ12のボンディングパッドが露出する。すなわち、パターニングされた接着剤層1は、半導体チップ12のバッファーコート膜である。矩形状の開口11は、各半導体チップ12上に複数並んで形成されている。開口11の形状、配置及び数は本実施形態のような形態に限られるものではなく、ボンディングパッド等の所定の部分が露出するように適宜変形が可能である。なお、図15のII−II線に沿った端面図が図14である。
【0141】
(工程3)
パターニングの後、半導体ウェハ8の接着剤層1とは反対側の面を研磨して、半導体ウェハ8を所定の厚さまで薄くする(図14(b))。研磨は、例えば、接着剤層1上に粘着フィルムを貼り付け、粘着フィルムによって半導体ウェハ8を研磨用の治具に固定して行う。
【0142】
(工程4)
研磨後、半導体ウェハ8の接着剤層1とは反対側の面に、ダイボンディング材30及びダイシングテープ40を有しこれらが積層している複合フィルム5を、ダイボンディング材30が半導体ウェハ8に接する向きで貼り付ける。貼り付けは必要により加熱しながら行う。
【0143】
次いで、ダイシングラインDに沿って半導体ウェハ8を接着剤層1及び複合フィルム5とともに切断する。これにより、接着剤層1及び複合フィルムをそれぞれ備えた複数の半導体チップ12が得られる(図16(a))。このダイシングは、例えば、ダイシングテープ40によって全体をフレームに固定した状態でダイシングブレードを用いて行われる。
【0144】
(工程5)
ダイシングの後、切り分けられた半導体チップ12を、接着剤層1及びダイボンディング材30とともにピックアップし(図16(b))、支持部材13にダイボンディング材30を介してマウントする(図17(a))。
【0145】
(工程6)
支持部材13にマウントされた半導体チップ12a上の接着剤層1上に、2層目の半導体チップ12bを積層する(図17(b))。すなわち、半導体チップ12aと、その上層に位置する半導体チップ12bとが、それらの間に介在するパターニングされた接着剤層1(バッファーコート膜)によって接着される。半導体チップ12bは、パターニングされた接着剤層1のうち開口11は塞がないような位置に接着される。なお、半導体チップ12bの回路面18上にもパターニングされた接着剤層1(バッファーコート膜)が形成されている。
【0146】
半導体チップ12bの接着は、例えば、接着剤層1が流動性を発現するような温度にまで加熱しながら熱圧着する方法により行われる。熱圧着後、必要により接着剤層1を加熱して更に硬化を進行させる。
【0147】
(工程7)
その後、半導体チップ12aはそのボンディングパッドに接続されたワイヤ14aを介して支持部材13上の外部接続端子と接続され、半導体チップ12bはそのボンディングパッドに接続されたワイヤ14bを介して支持部材13上の外部接続端子と接続される。次いで、半導体チップ12a及び12bを含む積層体を封止材15によって封止することにより、半導体装置200が得られる(図18)。
【0148】
本発明の半導体装置の製造方法は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。例えば、(工程1)〜(工程7)の順序を適宜入れ替えることが可能である。図19に示すように、接着剤層1が形成された半導体ウェハ8を研磨により薄くした後、ダイシングを行ってもよい。この場合、ダイシング後、露光及び現像によって接着剤層1をパターニングすることにより、図16(a)と同様の積層体が得られる。また、半導体ウェハを研磨により薄くし、ダイシングしてから、フィルム状接着剤1の貼り付けとその露光及び現像を行ってもよい。また、3層以上の半導体チップ12が積層されていてもよい。その場合、少なくとも1組の隣り合う半導体チップ同士が、パターニングされた接着剤層1(下層側のバッファーコート膜)によって直接接着される。
【0149】
図20は、本発明の半導体装置の他の一実施形態を示す端面図である。図20に示す半導体装置200は、接続端子(第1の接続部:図示せず)を有する支持部材(第1の被着体)13と、接続用電極部(第2の接続部:図示せず)を有する半導体チップ(第2の被着体)12と、絶縁材からなる接着剤層1と、導電材からなる導電層9とを備えている。支持部材13は、半導体チップ12と対向する回路面18を有しており、半導体チップ12と所定の間隔をおいて配置されている。接着剤層1は、支持部材13及び半導体チップ12の間において、それぞれと接して形成されており、所定のパターンを有している。導電層9は、支持部材13及び半導体チップ12の間における、接着剤層1が配置されていない部分に形成されている。半導体チップ12の接続用電極部は、導電層9を介して支持部材13の接続端子と電気的に接続されている。
【0150】
以下、図21〜25を用いて、図20に示す半導体装置の製造方法について詳述する。図21〜25は、本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す端面図である。本実施形態の半導体装置の製造方法は、以下の(第1工程)〜(第4工程)を備える。
(第1工程)接続端子を有する支持部材13上に接着剤層1を設ける工程(図21及び図22)。
(第2工程)接着剤層1を露光及び現像により、接続端子が露出する開口11が形成されるようにパターニングする工程(図23及び図24)。
(第3工程)開口11に導電材を充填して導電層9を形成する工程(図25)。
(第4工程)接続用電極部を有する半導体チップ12を、支持部材13と接着剤層1との積層体の接着剤層1側に接着すると共に、支持部材13の接続端子と半導体チップ12の接続用電極部とを導電層9を介して電気的に接続する工程(図20)。
【0151】
以下、(第1工程)〜(第4工程)について詳しく説明する。
(第1工程)
図21に示す支持部材13の回路面18上に、接着剤層1を積層する(図22)。積層方法としては、予めフィルム状に成形されたフィルム状接着剤を準備し、これを支持部材13に貼り付ける方法が簡便であるが、スピンコート法などを用いて、感光性接着剤組成物を含有する液状のワニスを支持部材13上に塗布し、加熱乾燥する方法によって積層してもよい。
【0152】
感光性接着剤組成物は、露光及び現像によってパターニングされた後に被着体に対する接着性を有し、アルカリ現像が可能なネガ型の感光性接着剤である。より詳細には、感光性接着剤を露光及び現像によってパターニングして形成されるレジストパターンが、半導体チップ及び基板等の被着体に対する接着性を有している。例えばレジストパターンに被着体を必要により加熱しながら圧着することにより、レジストパターンと被着体とを接着することが可能である。
【0153】
(第2工程)
支持部材13上に設けられた接着剤層1に対して、所定の位置に開口が形成されているマスク4を介して活性光線(典型的には紫外線)を照射する(図23)。これにより接着剤層1が所定のパターンで露光される。
【0154】
露光後、接着剤層1のうち露光されなかった部分を、アルカリ現像液を用いた現像によって除去することにより、支持部材13の接続端子が露出する開口11が形成されるように接着剤層1がパターニングされる(図24)。なお、ネガ型に代えてポジ型の感光性接着剤を用いることも可能であり、その場合は接着剤層1のうち露光された部分が現像により除去される。
【0155】
得られたレジストパターンの開口11に導電材を充填して導電層9を形成する(図25)。導電材の充填方法は、グラビア印刷、ロールによる押し込み、減圧充填等各種の方法が採用できる。ここで使用する導電材は、半田、金、銀、ニッケル、銅、白金、パラジウム若しくは酸化ルテニウム等の金属、又は、金属酸化物等からなる電極材料、上記金属のバンプの他、例えば、導電性粒子と樹脂成分とを少なくとも含有してなるものが挙げられる。導電性粒子としては、例えば、金、銀、ニッケル、銅、白金、パラジウム若しくは酸化ルテニウム等の金属若しくは金属酸化物、又は有機金属化合物等の導電性粒子が用いられる。また、樹脂成分としては、例えば、エポキシ樹脂及びその硬化剤等の上述した硬化性樹脂組成物が用いられる
【0156】
支持部材13上の接着剤層1に対して、半導体チップ12が直接接着される。半導体チップ12の接続用電極部は、導電層9を介して支持部材13の接続端子と電気的に接続される。なお、半導体チップ12における接着剤層1と反対側の回路面上に、パターン化された接着剤層(バッファーコート膜)が形成されていてもよい。
【0157】
半導体チップ12の接着は、例えば、接着剤層1(感光性接着剤組成物)が流動性を発現するような温度にまで加熱しながら熱圧着する方法により行われる。熱圧着後、必要により接着剤層1を加熱して更に硬化を進行させる。
【0158】
半導体チップ12における接着剤層1と反対側の回路面(裏面)には、裏面保護フィルムを貼り付けることが好ましい。
【0159】
以上の方法により、図20に示す半導体装置200が得られる。本発明の半導体装置の製造方法は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
【0160】
例えば、接着剤層1は、最初に支持部材13上に設けられることに限られるものではなく、半導体チップ12上に最初に設けることもできる。この場合、半導体装置の製造方法は、例えば、接続用電極部を有する半導体チップ12上に接着剤層1を設ける第1の工程と、接着剤層1を露光及び現像により、接続用電極部が露出する開口11が形成されるようにパターニングする第2の工程と、開口11に導電材を充填して導電層9を形成する第3の工程と、接続端子を有する支持部材13を、半導体チップ12と接着剤層1との積層体の接着剤層1に直接接着すると共に、支持部材13の接続端子と半導体チップ12の接続用電極部とを導電層9を介して電気的に接続する第4の工程と、を備える。
【0161】
上記製造方法では、それぞれ個片化された支持部材13及び半導体チップ12間の接続であるため、支持部材13上の接続端子と半導体チップ12上の接続用電極部との接続が容易である点において好ましい。
【0162】
また、接着剤層1は、複数の半導体チップ12から構成される半導体ウェハ上に最初に設けることもできる。この場合、半導体装置の製造方法は、例えば、接続用電極部を有する複数の半導体チップ12から構成される半導体ウェハ上に接着剤層1を設ける第1の工程と、接着剤層1を露光及び現像により、接続用電極部が露出する開口11が形成されるようにパターニングする第2の工程と、開口11に導電材を充填して導電層9を形成する第3の工程と、接続端子を有するウェハサイズの支持部材13(半導体ウェハと同程度の大きさを有する支持部材)を、半導体ウェハと接着剤層1との積層体の接着剤層1側に直接接着すると共に、支持部材13の接続端子と半導体ウェハを構成する半導体チップ12の接続用電極部とを導電層9を介して電気的に接続する第4の工程と、半導体ウェハと接着剤層1と支持部材13との積層体を半導体チップ12ごとに切り分ける(ダイシング)第5の工程と、を備える。
【0163】
また、上記製造方法は、第1の工程において、ウェハサイズの支持部材13上に接着剤層1を設け、第4の工程において、半導体ウェハを、支持部材13と接着剤層1との積層体の接着剤層1側に直接接着すると共に、支持部材13の接続端子と半導体ウェハを構成する半導体チップ12の接続用電極部とを導電層9を介して電気的に接続し、第5の工程において、半導体ウェハと接着剤層1と支持部材13との積層体を半導体チップ12ごとに切り分けてもよい。
【0164】
上記製造方法では、半導体ウェハと支持部材13との接続までの工程(第4の工程)をウェハサイズでできるので作業効率の点において好ましい。なお、半導体ウェハにおける接着剤層1と反対側の回路面(裏面)には、裏面保護フィルムを貼り付けることが好ましい。
【0165】
また、他の半導体装置の製造方法は、接続用電極部を有する複数の半導体チップ12から構成される半導体ウェハ上に接着剤層1を設ける第1の工程と、接着剤層1を露光及び現像により、接続用電極部が露出する開口11が形成されるようにパターニングする第2の工程と、開口11に導電材を充填して導電層9を形成する第3の工程と、半導体ウェハと接着剤層1との積層体を半導体チップ12ごとに切り分ける(ダイシング)第4の工程と、接続端子を有する支持部材13を、個片化された半導体チップ12と接着剤層1との積層体の接着剤層1側に直接接着すると共に、支持部材13の接続端子と半導体チップ12の接続用電極部とを導電層9を介して電気的に接続する第5の工程と、を備える。
【0166】
上記製造方法は、第1の工程において、ウェハサイズの支持部材13上に接着剤層1を設け、第4の工程において、ウェハサイズの支持部材13と接着剤層1との積層体を半導体チップ12ごとに切り分け、第5の工程において、半導体チップ12を、個片化された支持部材13と接着剤層1との積層体の接着剤層1側に直接接着すると共に、支持部材13の接続端子と半導体チップ12の接続用電極部とを導電層9を介して電気的に接続してもよい。
【0167】
上記製造方法では、接着剤層1の形成から導電材の充填工程(第3の工程)までをウェハサイズで行え、またダイシング工程(第4の工程)をスムーズにできる点において好ましい。
【0168】
また、フィルム状接着剤を用いて、半導体ウェハ同士又は半導体チップ同士を接着することにより半導体装置(半導体積層体)を構成することができる。この積層体には、貫通電極を形成することも可能である。
【0169】
この場合、半導体装置の製造方法は、例えば、貫通電極の接続用電極部を有する第1の半導体チップ12上に感光性接着剤からなる接着剤層1を設ける第1の工程と、接着剤層1を露光及び現像により、上記接続用電極部が露出する開口11が形成されるようにパターニングする第2の工程と、開口11に導電材を充填して貫通電極接続を形成する第3の工程と、接続用電極部を有する第2の半導体チップ12を、第1の半導体チップ12と接着剤層1との積層体の接着剤層1に直接接着すると共に、第1及び第2の半導体チップ12の接続用電極部同士を導電層9を介して電気的に接続する第4の工程と、を備える。上記製造方法において、半導体チップに替えて、半導体ウェハを用いてもよい。
【0170】
本発明の半導体装置は、図26に示すような固体撮像素子であってもよい。図26は、本発明の半導体装置の一実施形態を示す端面図である。図26に示す半導体装置(固体撮像素子)200は、ガラス基板7、半導体チップ12、接着剤層1及び有効画素領域17を備える。ガラス基板7と半導体チップ12とは、パターニングされた接着剤層1を介して接着されており、半導体チップ12の支持部材13側の面には有効画素領域17が形成されている。
【0171】
上記半導体装置(固体撮像素子)200は、例えば、図27に示すようなCMOSセンサの製造に用いられる。図27は、図26に示す半導体素子を固体撮像素子として用いたCMOSセンサの例を示す端面図である。図27に示すCMOSセンサ300において、半導体装置200は、複数の導電性バンプ32を介して半導体素子搭載用支持部材13上の接続端子(図示せず)と電気的に接続されている。なお、導電性バンプ32を用いて半導体装置200が接着された構成に代えて、導電性ワイヤを介して半導体装置200が半導体素子搭載用支持部材13上の接続端子に接続された構成を有していてもよい。
【0172】
CMOSセンサ300は、有効画素領域17の真上(半導体チップ12の反対側)に位置するように設けられたレンズ38と、レンズ38と共に半導体装置200を内包するように設けられた側壁50と、レンズ38が嵌め込まれた状態でレンズ38及び側壁50の間に介在する嵌め込み用部材42とが半導体素子搭載用支持部材13上に搭載された構成を有する。
【0173】
CMOSセンサ300は、上述のような方法により製造された半導体装置200を、半導体素子搭載用支持部材13上の接続端子と半導体チップ12を導電性バンプ32を介して接続し、半導体装置200を内包するようにレンズ38、側壁50及び嵌め込み用部材42を半導体素子搭載用支持部材13上に形成することにより製造される。
【実施例】
【0174】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0175】
<(A)成分:フィルム形成能を有する樹脂>
ポリイミド樹脂
(PI−1)
撹拌機、温度計及び窒素置換装置(窒素流入管)を備えた300mLフラスコ内に、ジアミンである5,5´−メチレンビス(アントラニル酸)(分子量286.3)(以下「MBAA」と略す。)2.16g(0.0075mol)、ポリオキシプロピレンジアミン(商品名「D−400」(分子量:452.4)、BASF製製)15.13g(0.0335mol)、及び1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン(商品名「BY16−871EG」、東レ・ダウコーニング(株)製)1.63g(0.0065mol)と、溶媒であるNMP(N−メチル−2−ピロリドン)115gを仕込み、撹拌してジアミンを溶媒に溶解させた。
【0176】
上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、4,4´−オキシジフタル酸二無水物(以下「ODPA」と略す。)16.51g(0.051mol)を、フラスコ内の溶液に少量ずつ添加した。添加終了後、室温で5時間撹拌した。その後、フラスコに水分受容器付きの還流冷却器を取り付け、キシレン81gを加え、窒素ガスを吹き込みながら溶液を180℃に昇温させて5時間保温し、水と共にキシレンを共沸除去して、ポリイミド樹脂(PI−1)を得た。(PI−1)のGPC測定を行ったところ、ポリスチレン換算で重量平均分子量(Mw)=30000であった。また、(PI−1)のTgは31℃であった。
【0177】
(PI−2)
撹拌機、温度計及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、ジアミンであるMBAA5.72g(0.02mol)、「D−400」13.57g(0.03mol)、「BY16−871EG」2.48g(0.01mol)、及び1,4−ブタンジオール ビス(3−アミノプロピル)エーテル(商品名「B−12」、東京化成製、分子量204.31)8.17g(0.04mol)と、溶媒であるNMP110gを仕込み、撹拌してジアミンを溶媒に溶解させた。
【0178】
上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、ODPA29.35g(0.09mol)及びTAA(無水トリメリット酸)3.84g(0.02mol)を、フラスコ内の溶液に少量ずつ添加した。添加終了後、室温で5時間撹拌した。その後、フラスコに水分受容器付きの還流冷却器を取り付け、キシレン70.5gを加え、窒素ガスを吹き込みながら溶液を180℃に昇温させて5時間保温し、水と共にキシレンを共沸除去して、ポリイミド樹脂(PI−2)を得た。(PI−2)のGPC測定を行ったところ、ポリスチレン換算でMw=21000であった。また、(PI−2)のTgは55℃であった。
【0179】
(PI−3)
撹拌機、温度計及び窒素置換装置を備えた500mLフラスコ内に、ジアミンであるMBAA34.32g(0.12mol)、「D−400」17.32g(0.04mol)、及び「BY16−871EG」7.454g(0.03mol)と、溶媒であるNMP140gを仕込み、撹拌してジアミンを溶媒に溶解させた。
【0180】
上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、ODPA55.8g(0.18mol)及びTAA11.52g(0.06mol)を、フラスコ内の溶液に少量ずつ添加した。添加終了後、室温で5時間撹拌した。その後、フラスコに水分受容器付きの還流冷却器を取り付け、キシレン81gを加え、窒素ガスを吹き込みながら溶液を180℃に昇温させて5時間保温し、水と共にキシレンを共沸除去して、ポリイミド樹脂(PI−3)を得た。(PI−3)のGPC測定を行ったところ、ポリスチレン換算でMw=20000であった。また、(PI−3)のTgは100℃であった。
【0181】
(メタ)アクリル共重合体
(Polymer―1)
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート240g、乳酸メチル60g、メタクリロイルオキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン(日立化成工業(株)社製、「FANCRYL FA−513M」)86.4g、N−シクロヘキシルマレイミド36.5g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート106.7g、及びメタクリル酸40.5gを混合し、窒素バブリングしながら溶解させた。N−シクロヘキシルマレイミドの溶解を確認した後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル3gを溶解させ、混合溶液(a)を調製した。
【0182】
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.6gをジエチレングリコールジメチルエーテル40gに溶解させ、溶液(b)を調製した。
【0183】
四つ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート264gと乳酸メチル66gを仕込み、90℃に昇温させた。フラスコ内の温度を90℃に保ったまま、上記混合溶液(a)をフラスコ内に3時間かけて連続的に滴下した。その後、3時間90℃に保持し、その間、残存モノマー低減のため、上記溶液(b)を数回に分けて添加した。合計6時間、90℃で反応を行った後、フラスコ内の溶液を120℃まで昇温させ、1時間120℃に保持した後自然冷却して、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを単量体単位として含む重合体の溶液を得た。
【0184】
エチレン性不飽和結合(メタクリロイル基)を導入するために、得られた重合体の溶液に、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナートと錫系の触媒とを添加した。2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナートは、重合体に対し、1.5mmol/gとなるように添加した。その後、80℃で2〜3時間保持した後自然冷却して、側鎖及び/又は末端にエチレン性不飽和結合を有する(メタ)アクリル共重合体(Polymer−1)の溶液を得た。(Polymer−1)のGPC測定を行ったところ、ポリスチレン換算でMw=30000であった。また、(Polymer−1)のTgは60℃であった。
【0185】
<(B)成分:エチレン性不飽和基及びエポキシ基を有する化合物>
(B−1)
撹拌機、温度計及び窒素置換装置を備えた500mLフラスコ内に、液状の高純度ビスフェノールAビスグリシジルエーテルエポキシ樹脂(エポキシ当量178g/eq、東都化成社製 YD−825GS)178g(1.0当量)、アクリル酸36g(0.5当量)、トリフェニルホスフィン0.5g、及びヒドロキノン0.15gを仕込み、100℃で7時間撹拌し、分子内にエチレン性不飽和基及びエポキシ基を有する化合物(B−1)を得た。(B−1)を水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定し、酸価が0.3KOHmg/g以下であることを確認した。(5%重量減少温度:300℃、エポキシ基数:約1、エチレン性不飽和基数:約1、全塩素含量:<400ppm)
【0186】
(B−2)
撹拌機、温度計及び窒素置換装置を備えた500mLフラスコ内に、液状の高純度ビスフェノールFビスグリシジルエーテルエポキシ樹脂(エポキシ当量160g/eq、東都化成社製 YDF−870GS)168g(1.0当量)、アクリル酸36g(0.5当量)、トリフェニルホスフィン0.5g、及びヒドロキノン0.15gを仕込み、100℃で7時間撹拌し、分子内にエチレン性不飽和基及びエポキシ基を有する化合物(B−2)を得た。(B−2)を水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定し、酸価が0.3KOHmg/g以下であることを確認した。(5%重量減少温度:300℃、エポキシ基数:約1、エチレン性不飽和基数:約1、全塩素含量:<400ppm)
【0187】
(B−3)
撹拌機、温度計及び窒素置換装置を備えた500mLフラスコ内に、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量174g/eq、東都化成社製「YDPN−638」)174g(1.0当量)、アクリル酸36g(0.5当量)、トリフェニルホスフィン0.48g、及びヒドロキノン0.10gを仕込み、90℃〜100℃で7時間撹拌し、分子内にエチレン性不飽和基及びエポキシ基を有する化合物(B−3)を得た。(B−3)を水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定し、酸価が0.3KOHmg/g以下であることを確認した。(5%重量減少温度:310℃、エポキシ基数:約1.7、エチレン性不飽和基数:約1.7、全塩素含量:<400ppm)
【0188】
<感光性接着剤組成物>
上記で得られた(PI−1)〜(PI−3)、(Polymer−1)及び(B−1)〜(B−3)を用いて、下記表1及び2に示す組成比(単位:質量部)にて各成分を配合し、実施例1〜8及び比較例1〜6の感光性接着剤組成物(接着剤層形成用ワニス)を得た。
【0189】
表1及び2において、各記号は下記のものを意味する。
BPE−100:新中村化学工業社製、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(5%重量減少温度:330℃)
A−9300:新中村化学工業社製、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート(5%重量減少温度:>400℃)
EA−1020:新中村化学工業社製、ビスフェノールAビスグリシジルエーテル型ジアクリレート(5%重量減少温度:300℃)
M−140:東亜合成社製、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチルアクリレート(5%重量減少温度:200℃、グリシジル基数:0、アクリル基数:1)
VG−3101:プリンテック社製、3官能エポキシ樹脂(5%重量減少温度:350℃)
YDF−870GS:東都化成社製、ビスフェノールF型ビスグリシジルエーテル(5%重量減少温度:270℃)
TrisP−PA:本州化学社製、トリスフェノール化合物(α,α,α´−トリス(4−ヒドロキシフェノル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン)(5%重量減少温度:350℃)
R−972:日本アエロジル社製、疎水性フュームドシリカ(平均粒径:約16nm)
I−819:チバ・ジャパン社製、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド
パークミルD:日油社製、ジクミルパーオキサイド
NMP:関東化学社製、N−メチル−2−ピロリドン
【0190】
なお、5%重量減少温度の測定は、サンプルを示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名「TG/DTA6300」)を用いて、昇温速度10℃/min、窒素フロー(400ml/分)下で行った。
【0191】
また、全塩素含量の測定は、JIS K7243−3に準じて行った。
【0192】
【表1】
【0193】
【表2】
【0194】
<接着シート>
得られた感光性接着剤組成物を、乾燥後の膜厚が50μmとなるように、それぞれ基材(剥離剤処理PETフィルム)上に塗布し、オーブン中にて80℃で20分間加熱し、続いて120℃で20分間加熱して、基材上に感光性接着剤組成物からなる接着剤層を形成した。このようにして、基材及び基材上に形成された接着剤層を有する接着シートを得た。
【0195】
<評価試験>
(貼付性)
支持台上にシリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)を載せ、その上に、上記接着シートを、接着剤層がシリコンウェハの裏面(支持台と反対側の面)と接するように、ロール加圧(温度100℃、線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)により積層した。基材(PETフィルム)を剥離除去した後、露出した接着剤層上に、厚み80μm、幅10mm、長さ40mmのポリイミドフィルム(宇部興産社製、「ユーピレックス」(商品名))を、上記と同様の条件でロール加圧して積層した。このようにして、シリコンウェハ、接着剤層及びポリイミドフィルムからなり、これらがこの順に積層する積層体のサンプルを得た。
【0196】
得られたサンプルについて、レオメータ(東洋製機製作所社製、「ストログラフE−S」(商品名))を用いて、室温で90°ピール試験を行って、接着剤層とポリイミドフィルムとのピール強度を測定した。その測定結果に基づいて、ピール強度が2N/cm以上のサンプルをA、2N/cm未満のサンプルをBとして、貼付性の評価を行った。評価結果を表3及び4に示す。
【0197】
(高温接着性)
ロール加圧の温度を80℃としたこと以外は上記貼付性の評価試験と同様にして、シリコンウェハ上に接着シートを積層した。得られた積層体を、接着シート側から、高精度平行露光機(オーク製作所製、「EXM−1172−B−∞」(商品名))により1000mJ/cm2で露光し、80℃のホットプレート上で約30秒間放置した。基材(PETフィルム)を剥離除去した後、コンベア現像機(ヤコー社製)を用いて、テトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)2.38質量%溶液を現像液とし、温度26℃、スプレー圧0.18MPaの条件でスプレー現像した後、温度25℃の純水にてスプレー圧0.02MPaの条件で6分間水洗し、150℃で1分間乾燥させた。このようにして、シリコンウェハ上に、感光性接着剤組成物の硬化物からなる硬化物層を形成した。
【0198】
得られたシリコンウェハ及び硬化物層からなる積層体を、3mm×3mmの大きさに個片化した。個片化した積層体を、実施例1〜6及び8、比較例1〜5及び7については150℃で10分間、実施例7及び比較例6については120℃で10分間、ホットプレート上で乾燥させた後、ガラス基板(10mm×10mm×0.55mm)上に、硬化物層がガラス基板と接するようにして積層し、2kgfで加圧しながら、150℃で10秒間圧着した。このようにして、シリコンウェハ、硬化物層及びガラス基板からなり、これらがこの順に積層する積層体のサンプルを得た。
【0199】
得られたサンプルを、オーブン中で180℃、3時間の条件で加熱し、さらに、260℃の熱盤上で10秒間加熱した後、せん断接着力試験機「Dage−4000」(商品名)を用いて接着力を測定した。測定結果を表3及び4に示す。
【0200】
(パターン形成性)
ロール加圧の温度を80℃としたこと以外は上記高温接着性の評価試験と同様にして、シリコンウェハ上に接着シートを積層した。得られた積層体を、接着シート側から、ネガ型パターン用マスク(日立化成社製、「No.G−2」(商品名))を介して、上記試験と同様に露光した。次いで、上記試験と同様に、ホットプレート上で放置後、基材を除去し、現像・水洗・乾燥を行った。このようにして、シリコンウェハ上に、感光性接着剤組成物の接着剤パターンを形成した。
【0201】
形成された接着剤パターンを顕微鏡(倍率:50倍)で観察し、ライン幅/スペース幅=400μm/400μmのパターンが形成されていた場合をA、形成されていなかった場合をBとして、パターン形成性の評価を行った。評価結果を表3及び4に示す。
【0202】
(熱圧着性)
ロール加圧の温度を80℃とし、上記ネガ型パターン用マスクに代えて額縁状6インチサイズマスクパターン(中空部2mm、線幅0.5mm)を用いたこと以外は、上記パターン形成性の評価試験と同様にして、シリコンウェハ上に、感光性接着剤組成物の接着剤パターンを形成した。
【0203】
実施例1〜6及び8、比較例1〜5及び7については150℃で10分間、実施例7及び比較例6については120℃で10分間、ホットプレート上で乾燥させた後、形成された接着剤パターンのシリコンウェハと反対側の面上に、ガラス基板(15mm×40mm×0.55mm)を積層し、0.5MPaで加圧しながら、150℃で10分間圧着し、シリコンウェハ、接着剤パターン及びガラス基板からなり、これらがこの順に積層する積層体のサンプルを得た。
【0204】
得られたサンプルを顕微鏡(倍率:50倍)で観察し、未接着部分(空隙)がガラス基板と接着剤パターンとの接着面積に対して20%以下であるものをA、20%以上であるものをBとして、熱圧着性の評価を行った。評価結果を表3及び4に示す。
【0205】
(耐熱性)
上記熱圧着性の評価試験と同様にして、シリコンウェハ、接着剤パターン及びガラス基板からなり、これらがこの順に積層する積層体のサンプルを得た。得られたサンプルを、オーブン中で180℃、3時間の条件で加熱し、さらに、260℃のホットプレート上に30分間静置した。その後、サンプルを目視にて観察し、1ICサイズ以上の剥離が見られなかったものをA、1ICサイズ以上の剥離が見られたものをBとして、耐熱性の評価を行った。評価結果を表3及び4に示す。
【0206】
(耐湿性)
上記耐熱性の評価試験と同様に、積層体のサンプルをオーブン中で180℃にて3時間加熱した。加熱後のサンプルを、温度85℃、湿度60%の条件下で168時間処理した後、温度25℃、湿度50%の環境に置き、サンプルのガラス内部が結露するか顕微鏡で観察した。結露が見られなかったものをA、結露が見られたものをBとして、耐湿性(耐結露性)の評価を行った。評価結果を表3及び4に示す。
【0207】
上記耐熱性の評価試験と同様に、積層体のサンプルをオーブン中で180℃にて3時間加熱した。加熱後のサンプルを、温度60℃、湿度90%の条件下で168時間処理した後、上記で温度25℃、湿度50%の環境下に置いた後、250℃、10秒のIRリフローを行い、剥離の有無を顕微鏡(倍率:15倍)で観察した。剥離が見られなかったものをA、剥離が見られたものをBとして、耐湿性(耐リフロー性)の評価を行った。評価結果を表3及び4に示す。
【0208】
【表3】
【0209】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0210】
本発明の感光性接着剤組成物は、貼付性、高温接着性、パターン形成性、熱圧着性、耐熱性及び耐湿性の全ての点で十分に優れるため、高精細な半導体パッケージの製造に用いる接着剤として好適に用いられる。また、本発明のフィルム状接着剤又は接着シートは、基板、ガラス、シリコンウェハ等の被着体又は支持部材上に適用したときに、液状の樹脂組成物を用いる場合よりも位置合わせ精度に優れる上に、露光によるパターン化の解像度を向上させることができ、更に、パターン形成後の基板、ガラス、半導体素子等の被着体との低温熱圧着性を有すると共に、熱硬化後の優れた耐熱性を有するため、半導体素子、光学素子、固体撮像素子等の保護の用途、又は微細な接着領域が求められる接着剤又はバッファーコート用途に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0211】
1…フィルム状接着剤(接着剤層)、1a…接着剤パターン、2…カバーフィルム、3…基材、4…マスク、5…複合フィルム、6…粘着剤層、7…ガラス基板、8…半導体ウェハ、9…導電層、11…開口、12,12a,12b…半導体素子(半導体チップ)、13…半導体素子搭載用支持部材(支持部材)、14,14a,14b…ワイヤ、15…封止材、16…端子、17…有効画素領域、18…回路面、20…接着剤層付半導体ウェハ、30…ダイボンディング材、32…導電性バンプ、38…レンズ、40…ダイシングテープ、42…嵌め込み用部材、50…側壁、100…接着シート、200…半導体装置、300…CMOSセンサ、D…ダイシングライン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性接着剤組成物、並びにそれを用いたフィルム状接着剤、接着シート、接着剤パターン、接着剤層付き半導体ウェハ及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の高性能化又は高機能化に伴い、種々の形態を有する半導体パッケージが提案されている。そのような半導体パッケージにおいて、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを接着するために用いられる接着剤は、フィルム状にした場合の貼付性(以下、単に「貼付性」ともいう。)や、硬化物にした場合の高温での接着性、熱圧着性、耐熱性及び耐湿性(以下、それぞれ「高温接着性」、「熱圧着性」、「耐熱性」、「耐湿性」ともいう。)などの点で優れたものであることが望ましい。また、半導体パッケージの組立プロセスの簡略化を可能とするため、上記接着剤は、アルカリ現像液によるパターン形成性(以下、単に「パターン形成性」ともいう。)の点でも優れたものであることが望ましい。
【0003】
感光性接着剤組成物は、光を照射した部分が化学的に変化して水溶液や有機溶剤に不溶化又は可溶化する「感光性」の機能を有するため、このような感光性接着剤組成物を上記接着剤として用い、フォトマスクを介して露光し現像することにより、高精細な接着剤パターンを得ることができる。
【0004】
感光性接着剤組成物としては、従来、フォトレジストや、ポリイミド樹脂前駆体(ポリアミド酸)をベースとしたものが知られており(特許文献1〜3)、低Tgポリイミド樹脂をベースとしたものも提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−290501号公報
【特許文献2】特開2001−329233号公報
【特許文献3】特開平11−24257号公報
【特許文献4】国際公開第07/004569号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フォトレジストは、耐熱性の点で十分でなかった。また、ポリイミド樹脂前駆体をベースとした感光性接着剤組成物は、耐熱性の点では十分であるものの、熱閉環イミド化時に300℃以上の高温を要するため、周辺材料への熱的ダメージが大きい、揮発成分量が大きい、熱応力が発生しやすいなどの点で十分ではなかった。
【0007】
さらに、これら従来の感光性接着剤組成物は、貼付性とパターン形成性との両立が困難である点や、高温接着性、熱圧着性及び耐湿性が十分でない点でも、改良が望まれていた。
【0008】
また、低Tgポリイミド樹脂をベースとした感光性接着剤組成物は、貼付性、パターン形成性及び熱圧着性の点では十分であるものの、高温接着性、耐熱性及び耐湿性の点で十分ではなかった。
【0009】
感光性接着剤組成物の耐熱性及び耐湿性を向上させるために、放射線重合性化合物や熱硬化性樹脂の量を調整することも試みられた。しかし、放射線重合性化合物を増量すると、タック性(べた付き具合又は粘着性)が大きくなり取り扱いにくくなる傾向、熱圧着性が十分でなくなる傾向、応力が増大する傾向などがあった。一方、放射線重合性化合物を減量すると、パターン形成性及び高温接着性が十分でなくなる傾向があった。また、熱硬化性樹脂を増量すると、パターン形成性が十分でなくなる傾向や、応力が増大する傾向があった。
【0010】
このように、従来、貼付性、高温接着性、パターン形成性、熱圧着性、耐熱性及び耐湿性の全ての点で十分に優れた感光性接着剤組成物は存在せず、そのような感光性接着剤組成物の開発が希求されていた。
【0011】
そこで、本発明は、貼付性、高温接着性、パターン形成性、熱圧着性、耐熱性及び耐湿性の全ての点で十分に優れた感光性接着剤組成物、並びにそれを用いたフィルム状接着剤、接着シート、接着剤パターン、接着剤層付半導体ウェハ及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明は、(A)フィルム形成能を有する樹脂(以下、「(A)成分」ともいう。)と、(B)エチレン性不飽和基及びエポキシ基を有する化合物(以下、「(B)成分」ともいう。)と、(C)光開始剤(以下、「(C)成分」ともいう。)と、を含む感光性接着剤組成物を提供する。本発明の感光性接着剤組成物は、上記構成を備えることにより、貼付性、高温接着性、パターン形成性、熱圧着性、耐熱性及び耐湿性の全ての点で十分に優れたものとなる。
【0013】
本発明の感光性接着剤組成物において、「貼付性」とは、感光性接着剤組成物をフィルム状に成形することにより得られるフィルム状接着剤とした場合の貼付性を意味し、「高温接着性」とは、感光性接着剤組成物を硬化物にした場合の、加熱下での接着性を意味し、「パターン形成性」とは、被着体上に形成された上記フィルム状接着剤からなる接着剤層をフォトマスクを介して露光しアルカリ現像液により現像したときに得られる接着剤パターンの精度を意味し、「熱圧着性」とは、上記接着剤パターンを加熱下で支持部材等に圧着(熱圧着)したときの接着具合を意味し、「耐熱性」とは、上記接着剤パターンを支持部材等に熱圧着、硬化し、高温下においたときの耐剥離性を意味し、「耐湿性」とは、上記接着剤パターンを支持部材等に熱圧着、硬化し、吸湿させた後の耐結露性(耐曇性)又は耐リフロー性を意味する。
【0014】
上記(A)フィルム形成能を有する樹脂は、例えば以下の理由によって用いられる。(A)フィルム形成能を有する樹脂は、分子の絡み合いや凝集力が強いため、本発明の感光性接着剤組成物をペースト状で用いた場合には、塗布した樹脂の安定性やチキソ性を付与でき、さらに、硬化後に低応力性や接着性などに優れた強靭な樹脂を得ることができる。また、フィルム状で用いた場合には、塗工時のフィルム形成性を向上させることができ、樹脂の染み出しやピンホールなどの不良を改善することができる。また、得られたフィルム状感光性接着剤を硬化した際には、低応力性や接着性などに優れた強靭な樹脂を得ることができる。
【0015】
また、上記(B)成分は、例えば以下の理由によって用いられる。光照射後の放射線重合性化合物同士のネットワークに、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート((B)成分)が導入されると、見かけの架橋密度が低減し、熱圧着性が向上する。さらに、このエポキシ基が熱硬化性基や硬化剤、特にポリマ側鎖のカルボキシル基やフェノール性水酸基と反応すると、分子鎖同士の絡み合いが多くなり、単に放射線重合性化合物及び熱硬化性樹脂が配合されるような各々の架橋反応が独立に進行する系よりも強靭なネットワークが形成される。その結果、本発明の感光性接着剤組成物は、上記全ての特性の点で十分に優れたものとなる。
【0016】
また、上記(B)成分を配合することで、露光後加熱硬化した後の樹脂組成物は、耐アルカリ性、耐溶剤性、耐メッキ液性に十分に優れたものとなる。
【0017】
貼付性及び熱圧着性の観点から、(A)フィルム形成能を有する樹脂のTgは、150℃以下であることが好ましい。
【0018】
パターン形成性の観点から、(A)フィルム形成能を有する樹脂は、アルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。
【0019】
高温接着性及び耐熱性の観点から、(A)フィルム形成能を有する樹脂は、ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂であることが好ましい。
【0020】
高温接着性、耐熱性及び耐湿性の観点から、本発明の感光性接着剤組成物は、エポキシ樹脂を更に含むことが好ましい。
【0021】
別の側面において、本発明は、上記感光性接着剤組成物をフィルム状に成形することにより得られる、フィルム状接着剤に関する。本発明のフィルム状接着剤は、上記感光性接着剤組成物を用いることにより、貼付性、高温接着性、パターン形成性、熱圧着性、耐熱性及び耐湿性の全ての点で十分に優れたものとなる。特に、上記フィルム状接着剤は、低温においても優れた貼付性(低温貼付性)を有する。
【0022】
また、本発明は、基材と、該基材上に形成された上記フィルム状接着剤からなる接着剤層と、を備える接着シートに関する。
【0023】
また、本発明は、被着体上に積層された上記フィルム状接着剤からなる接着剤層を、フォトマスクを介して露光し、露光後の接着剤層をアルカリ現像液により現像処理することにより得られる接着剤パターンに関する。また、本発明の接着剤パターンは、被着体上に積層された上記フィルム状接着剤からなる接着剤層を、直接描画露光技術を用いて直接パターンを描画露光し、露光後の接着剤層をアルカリ水溶液により現像処理することにより形成されるものでもよい。本発明の接着剤パターンは、上記感光性接着剤組成物を用いることにより、熱圧着性に優れた高精細なパターンとなる。特に、上記接着剤パターンは、低温においても優れた熱圧着性(低温熱圧着性)を有する。
【0024】
また、本発明は、半導体ウェハと、該半導体ウェハ上に積層された上記フィルム状接着剤からなる接着剤層と、を備える接着剤層付半導体ウェハに関する。
【0025】
さらに、本発明は、上記感光性接着剤組成物を用いて、半導体素子同士、及び/又は、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とが接着された構造を有する半導体装置に関する。本発明の半導体装置は、上記感光性接着剤組成物を用いることにより、製造プロセスの簡略化にも十分対応可能であり、且つ優れた信頼性を具備するものとなる。
【0026】
上記半導体素子搭載用支持部材は、透明基板であることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、貼付性(低温貼付性)、高温接着性、パターン形成性、熱圧着性(低温熱圧着性)、耐熱性及び耐湿性の全ての点で十分に優れた感光性接着剤組成物、並びにそれを用いたフィルム状接着剤、接着シート、接着剤パターン、接着剤層付半導体ウェハ及び半導体装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のフィルム状接着剤の一実施形態を示す端面図である。
【図2】本発明の接着シートの一実施形態を示す端面図である。
【図3】本発明の接着シートの一実施形態を示す端面図である。
【図4】本発明の接着シートの一実施形態を示す端面図である。
【図5】本発明の接着剤層付半導体ウェハの一実施形態を示す上面図である。
【図6】図5のIV−IV線に沿った端面図である。
【図7】本発明の接着剤パターンの一実施形態を示す上面図である。
【図8】図7のV−V線に沿った端面図である。
【図9】本発明の接着剤パターンの一実施形態を示す上面図である。
【図10】図9のVI−VI線に沿った端面図である。
【図11】本発明の半導体装置の一実施形態を示す端面図である。
【図12】本発明の半導体装置の一実施形態を示す端面図である。
【図13】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す端面図である。
【図14】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す端面図である。
【図15】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す平面図である。
【図16】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す端面図である。
【図17】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す端面図である。
【図18】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す端面図である。
【図19】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す端面図である。
【図20】本発明の半導体装置の一実施形態を示す端面図である。
【図21】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す端面図である。
【図22】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す端面図である。
【図23】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す端面図である。
【図24】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す端面図である。
【図25】本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す端面図である。
【図26】本発明の半導体装置の一実施形態を示す端面図である。
【図27】図26に示す半導体素子を固体撮像素子として用いたCMOSセンサの例を示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとし、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0030】
本実施形態の感光性接着剤組成物は、(A)フィルム形成能を有する樹脂と、(B)エチレン性不飽和基及びエポキシ基を有する化合物と、(C)光開始剤と、を含む。
【0031】
(A)成分(フィルム形成能を有する樹脂)のTgは150℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることがさらにより好ましく、80℃以下であることが最も好ましい。このTgが150℃を超える場合、フィルム状接着剤(接着剤層)を被着体(半導体ウェハ)に貼り合わせる際に150℃以上の高温を要し、半導体ウェハに反りが発生しやすくなる傾向がある。フィルム状接着剤のウェハ裏面への貼り付け温度は、半導体ウェハの反りを抑えるという観点から、20〜150℃であることが好ましく、40〜100℃であることがより好ましい。上記温度での貼り付けを可能にするためには、フィルム状接着剤のTgを150℃以下にすることが好ましい。一方、Tgが−20℃未満であると、Bステージ状態でのフィルム表面のタック性が強くなり過ぎて、取り扱い性が良好でなくなる傾向がある。
【0032】
ここで、「Tg」とは、(A)成分をフィルム化したときの主分散ピーク温度を意味する。レオメトリックス社製粘弾性アナライザー「RSA−2」(商品名)を用いて、昇温速度5℃/min、周波数1Hz、測定温度−150〜300℃の条件で測定し、Tg付近のtanδピーク温度を主分散ピーク温度とした。
【0033】
(A)成分の重量平均分子量は、5000〜500000の範囲内で制御されていることが好ましく、低温貼付性及び熱圧着性と高温接着性とを高度に両立できる点で、10000〜300000であることがより好ましく、パターン形成性をより向上できる点で、10000〜100000であることが更に好ましい。重量平均分子量が上記範囲内にあると、感光性接着剤組成物をシート状又はフィルム状としたときの強度、可とう性及びタック性が良好となり、また、熱時流動性が良好となるため、基板表面の配線段差(凹凸)に対する良好な埋込性を確保することが可能となる。上記重量平均分子量が5000未満であると、フィルム形成性が十分でなくなる傾向がある。一方、上記重量平均分子量が500000を超えると、熱時流動性及び上記埋め込み性が十分でなくなる傾向や、パターン形成する際に樹脂組成物のアルカリ現像液に対する溶解性が十分でなくなる傾向がある。ここで、「重量平均分子量」とは、島津製作所社製高速液体クロマトグラフィー「C−R4A」(商品名)を用いて、ポリスチレン換算で測定したときの重量平均分子量を意味する。
【0034】
(A)成分のTg及び重量平均分子量を上記範囲内とすることにより、ウェハ裏面への貼り付け温度を低く抑えることができるとともに、半導体素子を半導体素子搭載用支持部材に接着固定する際の加熱温度(熱圧着温度)も低くすることができ、半導体素子の反りの増大を抑制することができる。また、貼付性、熱圧着性や現像性を有効に付与することができる。
【0035】
本実施形態の感光性接着剤組成物を用いてパターン形成する場合には、良好な現像性を得るため、(A)成分はアルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。アルカリ可溶性樹脂としては、アルカリ可溶性基を有するポリマーが好ましく、アルカリ可溶性基を末端又は側鎖に有するものがより好ましい。アルカリ可溶性基としては、エチレングリコール基、カルボキシル基、水酸基、スルホニル基、フェノール性水酸基などが挙げられる。これらの官能基は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
(A)成分としては、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンイミド樹脂、ポリウレタンアミドイミド樹脂、シロキサンポリイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、これらの共重合体、これらの前駆体(ポリアミド酸等)の他、ポリベンゾオキサゾール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、重量平均分子量が1万〜100万の(メタ)アクリル共重合体、ノボラック樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの樹脂の主鎖及び/又は側鎖に、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール基、カルボキシル基及び/又は水酸基が付与されたものであってもよい。
【0037】
(A)成分を含む感光性接着剤組成物を用いてフィルム状接着剤を作製する場合、特に限定はしないが、例えば、(A)成分として、下記の方法でフィルムを形成できる樹脂を用いることが好ましい。すなわち、ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、及びN−メチル−ピロリジノンのいずれかから選択される溶媒に、(A)成分を60質量%となるように溶解させ、乾燥後の膜厚が50μmとなるようにPETフィルム上に塗布し、オーブン中にて80℃で20分間加熱し、続いて120℃で20分間加熱することにより、フィルム形成が可能である樹脂が好ましく用いられる。
【0038】
これらの中でも、高温接着性、耐熱性及びフィルム形成性の観点から、(A)成分はポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂であることが好ましい。ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを公知の方法で縮合反応させて得ることができる。すなわち、有機溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを等モルで、又は、必要に応じてテトラカルボン酸二無水物の合計1.0molに対して、ジアミンの合計を好ましくは0.5〜2.0mol、より好ましくは0.8〜1.0molの範囲で組成比を調整(各成分の添加順序は任意)し、反応温度80℃以下、好ましくは0〜60℃で付加反応させる。反応が進行するにつれ反応液の粘度が徐々に上昇し、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸が生成する。なお、樹脂組成物の諸特性の低下を抑えるため、上記のテトラカルボン酸二無水物は無水酢酸で再結晶精製処理したものであることが好ましい。
【0039】
上記縮合反応におけるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの組成比については、テトラカルボン酸二無水物の合計1.0molに対して、ジアミンの合計が2.0molを超えると、得られるポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂に、アミン末端のポリイミドオリゴマーの量が多くなる傾向があり、ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量が低くなり、樹脂組成物の耐熱性を含む種々の特性が十分でなくなる傾向がある。一方、テトラカルボン酸二無水物の合計1.0molに対してジアミンの合計が0.5mol未満であると、酸末端のポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂オリゴマーの量が多くなる傾向があり、ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量が低くなり、樹脂組成物の耐熱性を含む種々の特性が十分でなくなる傾向がある。
【0040】
ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂は、上記反応物(ポリアミド酸)を脱水閉環させて得ることができる。脱水閉環は、加熱処理する熱閉環法、脱水剤を使用する化学閉環法等で行うことができる。
【0041】
ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂の原料として用いられるテトラカルボン酸二無水物としては特に制限は無く、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2´,3,3´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3´,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2´,3´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,3´,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3´,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3´,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2´,3´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ−[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4´−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、下記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。下記一般式(1)中、aは2〜20の整数を示す。
【0042】
【化1】
【0043】
上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、例えば、無水トリメリット酸モノクロライド及び対応するジオールから合成することができ、具体的には1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)等が挙げられる。
【0044】
また、テトラカルボン酸二無水物としては、溶剤への良好な溶解性及び耐湿性、365nm光に対する透明性を付与する観点から、下記一般式(2)又は(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0045】
【化2】
【0046】
以上のようなテトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0047】
(A)成分は、さらに、カルボキシル基及び/又は水酸基含有ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂であることが好ましい。上記カルボキシル基及び/又は水酸基含有ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂の原料として用いられるジアミンは、下記一般式(4)、(5)、(6)又は(7)で表される芳香族ジアミンを含むことが好ましい。これら下記一般式(4)〜(7)で表されるジアミンは、全ジアミンの1〜100モル%とすることが好ましく、3〜80モル%とすることが更に好ましく、5〜50モル%とすることが最も好ましい。
【0048】
【化3】
【0049】
上記ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂の原料として用いられるその他のジアミンとしては特に制限はなく、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3´−ジアミノジフェニルエーテル、3,4´−ジアミノジフェニルエーテル、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、3,3´−ジアミノジフェニルメタン、3,4´−ジアミノジフェニルメタン、4,4´−ジアミノジフェニルエーテメタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3´−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4´−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4´−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3´−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4´−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4´−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3´−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4´−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4´−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3´−ジアミノジフェニルケトン、3,4´−ジアミノジフェニルケトン、4,4´−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2´−(3,4´−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4´−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3´−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4´−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4´−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノエノキシ)フェニル)スルフォン、3,3´−ジヒドロキシ−4,4´−ジアミノビフェニル、3,5−ジアミノ安息香酸等の芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、下記一般式(8)で表される脂肪族エーテルジアミン、下記一般式(9)で表されるシロキサンジアミン等が挙げられる。
【0050】
上記ジアミンの中でも、他成分との相溶性、有機溶剤可溶性、アルカリ可溶性を付与する点で、下記一般式(8)で表される脂肪族エーテルジアミンが好ましく、エチレングリコール及び/又はプロピレングリコール系ジアミンがより好ましい。下記一般式(8)中、R1、R2及びR3は各々独立に、炭素数1〜10のアルキレン基を示し、bは2〜80の整数を示す。
【0051】
【化4】
【0052】
このような脂肪族エーテルジアミンとして具体的には、サンテクノケミカル(株)製ジェファーミンD−230,D−400,D−2000,D−4000,ED−600,ED−900,ED−2000,EDR−148、BASF(製)ポリエーテルアミンD−230,D−400,D−2000等のポリオキシアルキレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。これらのジアミンは、全ジアミンの1〜80モル%であることが好ましく、他の配合成分との相溶性の観点、また、低温貼付性、熱圧着性及び高温接着性を高度に両立できる観点で、5〜60モル%であることがより好ましい。この量が1モル%未満であると、高温接着性、熱時流動性の付与が困難になる傾向にあり、一方、80モル%を超えると、ポリイミド樹脂のTgが低くなり過ぎて、フィルムの自己支持性が損なわれる傾向にある。
【0053】
また、上記ジアミンとしては、室温での密着性、接着性を付与する点で、下記一般式(9)で表されるシロキサンジアミンが好ましい。下記一般式(9)中、R4及びR9は各々独立に、炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、R5、R6、R7及びR8は各々独立に、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、dは1〜5の整数を示す。
【0054】
【化5】
【0055】
これらのジアミンは、全ジアミンの0.5〜80モル%とすることが好ましく、低温貼付性、熱圧着性及び高温接着性を高度に両立できる点で、1〜50モル%とすることが更に好ましい。0.5モル%を下回るとシロキサンジアミンを添加した効果が小さくなり、80モル%を上回ると他成分との相溶性、高温接着性及び現像性が低下する傾向がある。
【0056】
上記一般式(9)で表されるシロキサンジアミンとして具体的には、式(9)中のdが1のものとして、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェノキシ−1,3−ビス(4−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノブチル)ジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン等が挙げられ、dが2のものとして、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン等が挙げられる。
【0057】
上述したジアミンは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0058】
また、上記ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂は、1種を単独で又は必要に応じて2種以上を混合(ブレンド)して用いることができる。
【0059】
また、上述のように、ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂の組成を決定する際には、そのTgが150℃以下となるように設計することが好ましく、ポリイミド樹脂の原料であるジアミンとして、上記一般式(8)で表される脂肪族エーテルジアミンを用いることが特に好ましい。
【0060】
上記ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂の合成時に、下記一般式(10)、(11)又は(12)で表される化合物のような単官能酸無水物及び/又は単官能アミンを縮合反応液に投入することにより、ポリマー末端に酸無水物又はジアミン以外の官能基を導入することができる。また、これにより、ポリマーの分子量を低くし、パターン形成時の現像性及び熱圧着性を向上させることができる。酸無水物又はジアミン以外の官能基としては、特に限定はしないが、パターン形成時のアルカリ可溶性を向上させる点で、カルボキシル基やフェノール性水酸基、グリコール基などのアルカリ可溶性基が好ましい。また、接着性を付与する点で、下記一般式(12)で表される化合物やアミノ基を有する(メタ)アクリレートなどの放射線重合性基及び/又は熱硬化性基を有する化合物が好ましく用いられる。また、低吸湿性を付与する点で、シロキサン骨格等を有する化合物も好ましく用いられる。
【0061】
【化6】
【0062】
上記ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂は、光硬化性の観点から、30μmのフィルム状に成形した時の365nmに対する透過率が、パターンの側壁が被着体に対して垂直となる点で10%以上であることが好ましく、より低露光量でパターン形成できる点で20%以上であることがより好ましい。このようなポリイミド樹脂は、例えば、上記一般式(2)で表される酸無水物と、上記一般式(8)で表される脂肪族エーテルジアミン及び/又は上記一般式(9)で表されるシロキサンジアミンとを反応させることで合成することができる。
【0063】
本実施形態の感光性接着剤組成物において、(A)成分の含有量は、感光性接着剤組成物の固形分全量を基準として5〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましい。この含有量が20質量%未満であると、パターン形成時の現像性が十分でなくなる傾向があり、80質量%を超えると、パターン形成時の現像性及び接着性が十分でなくなる傾向がある。
【0064】
(A)成分のアルカリ溶解性が乏しい又は(A)成分がアルカリ溶媒に溶解しない場合、溶解助剤として、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する樹脂、及び/又は親水性基を有する樹脂を添加してもよい。親水性基を有する樹脂とは、アルカリ可溶性の樹脂であれば特に限定はしないが、エチレングリコール、プロピレングリコール基のようなグリコール基を有する樹脂が挙げられる。
【0065】
(B)成分(エチレン性不飽和基及びエポキシ基を有する化合物)において、エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、プロパギル基、ブテニル基、エチニル基、フェニルエチニル基、マレイミド基、ナジイミド基、(メタ)アクリル基などが挙げられ、反応性の観点から、(メタ)アクリル基が好ましい。
【0066】
(B)成分としては、特に限定はしないが、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、4−ヒドロキシブチルメタクリレートグリシジルエーテルの他、エポキシ基と反応する官能基及びエチレン性不飽和基を有する化合物と多官能エポキシ樹脂とを反応させて得られる化合物等が挙げられる。上記エポキシ基と反応する官能基としては、特に限定はしないが、イソシアネート基、カルボキシル基、フェノール性水酸基、水酸基、酸無水物、アミノ基、チオール基、アミド基などが挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0067】
(B)成分は、例えば、トリフェニルホスフィンやテトラブチルアンモニウムブロミドの存在下、1分子中に少なくとも2つ以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ樹脂と、エポキシ基1当量に対し0.1〜0.9当量の(メタ)アクリル酸とを反応させることによって得られる。また、ジブチルスズジラウレートの存在下、多官能イソシアネート化合物とヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート及びヒドロキシ基含有エポキシ化合物とを反応させ、又は多官能エポキシ樹脂とイソシアネート基含有(メタ)アクリレートとを反応させることにより、グリシジル基含有ウレタン(メタ)アクリレート等が得られる。
【0068】
(B)成分は、保存安定性、接着性、組立て加熱時及び組立て後のパッケージの低アウトガス性、耐熱・耐湿性の観点から、5%重量減少温度が、フィルム形成時の加熱乾燥による揮発もしくは表面への偏析を抑制できる点で150℃以上であることが好ましく、熱硬化時のアウトガスによるボイド及びはく離や接着性低下を抑制できる点で180℃以上であることが更に好ましく、200℃以上であることが更により好ましい。さらに、リフロー時に未反応成分が揮発することによるボイド及びはく離を抑制できる点で260℃以上であることが最も好ましい。このような(B)成分としては、分子内に芳香環を有する化合物が好ましい。
【0069】
さらに、(B)成分としては、不純物イオンであるアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲンイオン、特には塩素イオンや加水分解性塩素等を1000ppm以下に低減した高純度品を用いることが、エレクトロマイグレーション防止や金属導体回路の腐食防止の観点から好ましい。例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲンイオン等を低減した多官能エポキシ樹脂を原料として用いることで上記不純物イオン濃度を満足することができる。全塩素含量はJIS K7243−3に準じて測定できる。
【0070】
上記耐熱性と純度を満たす(B)成分としては、特に限定はしないが、ビスフェノールA型(又はAD型、S型、F型)のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA及び/又はF型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA及び/又はF型のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミン等を原料としたものが挙げられる。
【0071】
特に、熱圧着性、低応力性及び接着性を改善し、パターン形成時には現像性を維持するためには、(B)成分のエポキシ基及びエチレン性不飽和基の数がそれぞれ3つ以下であることが好ましく、特にエチレン性不飽和基の数は2つ以下であることが好ましい。このような(B)成分としては特に限定はしないが、下記一般式(13)、(14)、(15)、(16)又は(17)で表される化合物等が好ましく用いられる。下記一般式(13)〜(17)において、R12及びR16は水素原子又はメチル基を示し、R10、R11、R13及びR14は2価の有機基を示し、R15〜R18はエポキシ基又はエチレン性不飽和基を有する有機基を示す。
【0072】
【化7】
【0073】
本実施形態の感光性接着剤組成物において、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して1〜100質量部であることが好ましく、2〜70質量部であることがより好ましく、5〜50質量部であることが更に好ましい。この含有量が100質量部を超えると、フィルム形成時にはチキソ性が低下しフィルム形成しにくくなる傾向や、タック性が上昇し取り扱い性が十分でなくなる傾向がある。また、パターン形成時には現像性が低下する傾向があり、光硬化後の溶融粘度が低くなりすぎることにより熱圧着時にパターンが変形する傾向もある。一方、上記(B)成分の含有量が1質量部未満であると、添加の効果が十分に得られなくなる傾向がある。
【0074】
本発明の感光性接着剤組成物は、高精度平行露光機(オーク製作所製、「EXM−1172−B−∞」(商品名))を用いて露光した後、20℃〜300℃における最低溶融粘度が30000Pa・s以下である感光性接着剤組成物であることが好ましい。
【0075】
本明細書において、「最低溶融粘度」とは、光量1000mJ/cm2を照射後のサンプルを、粘弾性測定装置ARES(レオメトリックス・サイエンティフィック・エフ・イー(株)製)を用いて測定したときの20℃〜300℃における溶融粘度の最低値を示す。なお、測定プレートは直径8mmの平行プレート、測定条件は昇温5℃/min、測定温度は20℃〜300℃、周波数は1Hzとする。
【0076】
上記最低溶融粘度は、20000Pa・s以下であることがより好ましく、18000Pa・s以下であることが更に好ましく、15000Pa・s以下であることが特に好ましい。上記範囲内の最低溶融粘度を有することにより、樹脂の変形を制御しつつ、十分な低温熱圧着性を確保することができ、凹凸がある基板などに対しても良好な密着性を付与することができる。上記最低溶融粘度の下限値は特に設けないが、取り扱い性等の点で100Pa・s以上であることが望ましい。
【0077】
本実施形態の感光性接着剤組成物は、硬化性成分として、(B)成分以外に、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、放射線重合性化合物等を含んでもよい。
【0078】
エポキシ樹脂としては、分子内に少なくとも2個以上のエポキシ基を含むものが好ましく、熱圧着性や硬化性、硬化物特性の点から、フェノールのグリシジルエーテル型のエポキシ樹脂がより好ましい。このような樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型(又はAD型、S型、F型)のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、フェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、クレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂のグリシジルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル、3官能型(又は4官能型)のグリシジルアミン、ナフタレン樹脂のグリシジルアミン等が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0079】
また、エポキシ樹脂としては、不純物イオンである、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ハロゲンイオン、特に塩素イオンや加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることが、エレクトロマイグレーション防止や金属導体回路の腐食防止の観点から好ましい。
【0080】
エポキシ樹脂の含有量は、(A)成分100質量部に対して1〜100質量部であることが好ましく、2〜50質量部であることがより好ましい。この含有量が100質量部を超えると、アルカリ水溶液への溶解性が低下し、パターン形成性が低下する傾向がある。一方、上記含有量が2質量部未満であると、十分な熱圧着性及び高温接着性が得られなくなる傾向がある。
【0081】
硬化剤としては、例えば、フェノール系化合物、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、脂肪族酸無水物、脂環族酸無水物、芳香族酸無水物、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド、三フッ化ホウ素アミン錯体、イミダゾール類、第3級アミン等が挙げられる。これらの中でもフェノール系化合物が好ましく、分子中に少なくとも2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物がより好ましい。このような化合物としては、例えばフェノールノボラック、クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾールノボラック、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック、キシリレン変性フェノールノボラック、ナフトール系化合物、トリスフェノール系化合物、テトラキスフェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、ポリ−p−ビニルフェノール、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、数平均分子量が400〜4000の範囲内のものが好ましい。これにより、半導体装置組立加熱時に、半導体素子又は装置等の汚染の原因となる加熱時のアウトガスを抑制できる。
【0082】
硬化剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して1〜100質量部であることが好ましく、2〜50質量部であることがより好ましく、2〜30質量部であることが最も好ましい。この含有量が100質量部を超えると、露光時にエチレン性不飽和基及びエポキシ基を有する化合物と放射線重合性化合物との反応性が十分でなくなる傾向がある。また、樹脂の酸価及びフェノール性水酸基価が上昇することで、現像後に膜厚が減少したり膨潤したりする傾向がある。さらに、現像液の樹脂パターンへの浸透が大きくなることで、その後の加熱硬化時や組立熱履歴でのアウトガスが多くなり、耐熱信頼性や耐湿信頼性が大きく低下する傾向がある。一方、上記含有量が1質量部未満であると、十分な高温接着性が得られなくなる傾向がある。
【0083】
硬化促進剤としては、加熱によってエポキシの硬化/重合を促進する硬化促進剤を含有させるものであれば特に制限はなく、例えば、イミダゾール類、ジシアンジアミド誘導体、ジカルボン酸ジヒドラジド、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール−テトラフェニルボレート、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等が挙げられる。感光性接着剤組成物における硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して0.01〜50質量部が好ましい。
【0084】
放射線重合性化合物としては、エチレン性不飽和基を有する化合物が挙げられ、エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、プロパギル基、ブテニル基、エチニル基、フェニルエチニル基、マレイミド基、ナジイミド基、(メタ)アクリル基などが挙げられ、反応性の観点から、(メタ)アクリル基が好ましく、放射線重合性化合物は2官能以上の(メタ)アクリレートであることが好ましい。このようなアクリレートとしては、特に制限はしないが、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、4−ビニルトルエン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、1,3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、1,2−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレート、下記一般式(18)で表される化合物、ウレタンアクリレート若しくはウレタンメタクリレート、及び尿素アクリレート等が挙げられる。
【0085】
【化8】
上記一般式(18)中、R19及びR20は各々独立に、水素原子又はメチル基を示し、g及びhは各々独立に、1〜20の整数を示す。
【0086】
これらの放射線重合性化合物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも、上記一般式(18)で表されるグリコール骨格を有する放射線重合性化合物は、アルカリ可溶性、硬化後の耐溶剤性を十分に付与できる点で好ましく、ウレタンアクリレート及びメタクリレート、イソシアヌル酸ジ/トリアクリレート及びメタクリレートは硬化後の高接着性を十分に付与できる点で好ましい。
【0087】
放射線重合性化合物として、3官能以上のアクリレート化合物を含有する場合、硬化後の接着性をより向上させることができると共に、加熱時のアウトガスを抑制することができるため好ましい。
【0088】
硬化後の耐熱性を十分に付与できる点で、放射線重合性化合物として、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ及びトリアクリレートを含有することが最も好ましい。
【0089】
官能基当量の高い放射線重合性化合物を用いることで、低応力化、低反り化することが可能となる。官能基当量の高い放射線重合性化合物は、重合官能基当量が200eq/g以上であることが好ましく、300eq/g以上であることがより好ましく、400eq/g以上であることが最も好ましい。重合官能基当量が200eq/g以上のエーテル骨格、ウレタン基及び/又はイソシアヌル基を有する放射線重合性化合物を用いることにより、感光性接着剤組成物の現像性及び接着性を向上させ、かつ低応力化、低反り化することが可能となる。また、重合官能基当量が200eq/g以上の放射線重合性化合物と重合官能基当量が200eq/g以下の放射線重合性化合物を併用してもよい。この場合、放射線重合性化合物としてウレタン基及び/又はイソシアヌル基を有する放射線重合性化合物を用いることが好ましい。
【0090】
放射線重合性化合物の含有量は、(A)成分100質量部に対して0〜300質量部であることが好ましく、10〜250質量部であることがより好ましい。この含有量が300質量部を超えると、重合により熱溶融時の流動性が低下し、熱圧着時の接着性が低下する傾向にある。一方、10質量部未満であると、露光による光硬化後の耐溶剤性が低くなり、パターンを形成するのが困難となる、つまり現像前後の膜厚変化が大きくなる及び/又は残渣が多くなる傾向にある。また、熱圧着時に溶融し、パターンが変形する傾向にある。
【0091】
(C)成分(光開始剤)としては、感度向上の点から、波長365nmの光に対する分子吸光係数が1000ml/g・cm以上であるものが好ましく、2000ml/g・cm以上であるものがより好ましい。なお、分子吸光係数は、サンプルの0.001質量%アセトニトリル溶液を調製し、この溶液について分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、「U−3310」(商品名))を用いて吸光度を測定することにより求められる。
【0092】
感光性接着剤組成物を膜厚30μm以上の接着剤層とする場合には、感度向上、内部硬化性向上の観点から、(C)成分としては、光照射によってブリーチングするものがより好ましい。このような(C)成分としては、例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパノン−1、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6,−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイドなどの中からUV照射によって光退色する化合物が挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0093】
(C)成分は、放射線の照射によりエポキシ樹脂の重合及び/又は反応を促進する機能を発現する光開始剤を含有していてもよい。このような光開始剤としては、例えば、放射線照射によって塩基を発生する光塩基発生剤、放射線照射によって酸を発生する光酸発生剤などが挙げられ、光塩基発生剤が特に好ましい。
【0094】
光塩基発生剤を用いることにより、感光性接着剤組成物の被着体への高温接着性及び耐湿性を更に向上させることができる。この理由としては、光塩基発生剤から生成した塩基がエポキシ樹脂の硬化触媒として効率よく作用することにより、架橋密度をより一層高めることができるため、また生成した硬化触媒が基板などを腐食することが少ないためと考えられる。また、感光性接着剤組成物に光塩基発生剤を含有させることにより、架橋密度を向上させることができ、高温放置時のアウトガスをより低減させることができる。さらに、硬化プロセス温度を低温化、短時間化させることができると考えられる。
【0095】
また、(A)成分のカルボキシル基及び/又は水酸基の含有割合が高くなると、硬化後の吸湿率の上昇及び吸湿後の接着力の低下が懸念される。これに対して、光塩基発生剤を含む感光性接着剤組成物によれば、放射線の照射により塩基が発生することにより、上記のカルボキシル基及び/又は水酸基とエポキシ樹脂との反応後に残存するカルボキシル基及び/又は水酸基を低減させることができ、耐湿性及び接着性とパターン形成性とをより高水準で両立することが可能となる。
【0096】
光塩基発生剤は、放射線照射時に塩基を発生する化合物であれば特に制限は受けず用いることができる。発生する塩基としては、反応性、硬化速度の点から強塩基性化合物が好ましい。一般的には、塩基性の指標として酸解離定数の対数であるpKa値が使用され、水溶液中でのpKa値が7以上の塩基が好ましく、さらに9以上の塩基がより好ましい。
【0097】
このような放射線照射時に発生する塩基としては、例えば、イミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン等のピペラジン誘導体、ピペリジン、1,2−ジメチルピペリジン等のピペリジン誘導体、プロリン誘導体、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等のトリアルキルアミン誘導体、4−メチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の4位にアミノ基またはアルキルアミノ基が置換したピリジン誘導体、ピロリジン、n−メチルピロリジン等のピロリジン誘導体、ジヒドロピリジン誘導体、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−1(DBU)等の脂環式アミン誘導体、ベンジルメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルジエチルアミン等のベンジルアミン誘導体等が挙げられる。
【0098】
上記のような塩基を放射線照射によって発生する光塩基発生剤としては、例えば、Journal of Photopolymer Science and Technology 12巻、313〜314項(1999年)やChemistry of Materials 11巻、170〜176項(1999年)等に記載されている4級アンモニウム塩誘導体を用いることができる。これらは、活性光線の照射により高塩基性のトリアルキルアミンを生成するため、エポキシ樹脂の硬化には最適である。
【0099】
光塩基発生剤としては、Journal of American ChemicalSociety 118巻 12925頁(1996年)やPolymer Journal 28巻 795頁(1996年)等に記載されているカルバミン酸誘導体も用いることができる。
【0100】
活性光線の照射により塩基を発生する光塩基発生剤としては、2,4−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン; 1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)―,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、 エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)などのオキシム誘導体; 光ラジカル発生剤として市販されている2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体(ハロゲン、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等の置換基がフェニル基に置換されていてもよい)、ベンゾイソオキサゾロン誘導体等を用いることができる。
【0101】
光塩基発生剤としては、高分子の主鎖及び/又は側鎖に塩基を発生する基を導入した化合物を用いても良い。この場合の分子量としては、接着剤としての接着性、流動性及び耐熱性の観点から重量平均分子量1,000〜100,000が好ましく、5,000〜30,000であることがより好ましい。
【0102】
上記の光塩基発生剤は、室温で放射線を照射しない状態ではエポキシ樹脂と反応性を示さないため、室温での貯蔵安定性が非常に優れる。
【0103】
本実施形態の感光性接着剤組成物は、必要に応じて増感剤を併用することができる。この増感剤としては、例えば、カンファーキノン、ベンジル、ジアセチル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジ(2−メトキシエチル)ケタール、4,4´−ジメチルベンジル−ジメチルケタール、アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、1−ヒドロキシアントラキノン、1−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1−ブロモアントラキノン、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ニトロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロ−7−トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン−10,10−ジオキシド、チオキサントン−10−オキサイド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、イソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4´−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、アジド基を含む化合物などが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上併用して使用することができる。
【0104】
本実施形態の感光性接着剤組成物は、必要に応じて熱ラジカル発生剤を用いることができる。熱ラジカル発生剤としては、有機過酸化物であることが好ましい。有機過酸化物としては、1分間半減期温度が120℃以上であるものが好ましく、150℃以上であるものがより好ましい。有機過酸化物は、感光性接着剤組成物の調製条件、製膜温度、硬化(貼り合せ)条件、その他プロセス条件、貯蔵安定性等を考慮して選択される。使用可能な過酸化物としては、特に限定はしないが、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシへキサン)、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどが挙げられ、これらのうちの1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0105】
熱ラジカル発生剤の添加量は、エチレン性不飽和基を有する化合物の全量に対し、0.01〜20重量%が好ましく、0.1〜10重量%が更に好ましく、0.5〜5重量%が最も好ましい。0.01重量%以下であると硬化性が低下し、添加効果が小さくなり、5重量%を超えるとアウトガス量増加、保存安定性低下が見られる。
【0106】
熱ラジカル発生剤としては、半減期温度が120℃以上の化合物であれば特に限定はしないが、例えば、パーヘキサ25B(日油社製)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシへキサン)(1分間半減期温度:180℃)、パークミルD(日油社製)、ジクミルパーオキサイド(1分間半減期温度:175℃)などが挙げられる。
【0107】
本実施形態の感光性接着剤組成物には、保存安定性、プロセス適応性又は酸化防止性を付与するために、キノン類、多価フェノール類、フェノール類、ホスファイト類、イオウ類等の重合禁止剤又は酸化防止剤を、硬化性を損なわない範囲で更に添加してもよい。
【0108】
さらに、本発明の感光性接着剤組成物には、適宜フィラーを含有させることもできる。フィラーとしては、例えば、銀粉、金粉、銅粉、ニッケル粉等の金属フィラー、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、結晶性シリカ、非晶性シリカ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化鉄、セラミック等の無機フィラー、カーボン、ゴム系フィラー等の有機フィラー等が挙げられ、種類・形状等にかかわらず特に制限なく使用することができる。
【0109】
上記フィラーは、所望する機能に応じて使い分けることができる。例えば、金属フィラーは、樹脂組成物に導電性、熱伝導性、チキソ性等を付与する目的で添加され、非金属無機フィラーは、接着剤層に熱伝導性、低熱膨張性、低吸湿性等を付与する目的で添加され、有機フィラーは接着剤層に靭性等を付与する目的で添加される。
【0110】
これら金属フィラー、無機フィラー又は有機フィラーは、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。中でも、半導体装置用接着材料に求められる、導電性、熱伝導性、低吸湿特性、絶縁性等を付与できる点で、金属フィラー、無機フィラー、又は絶縁性のフィラーが好ましく、無機フィラー又は絶縁性フィラーの中では、樹脂ワニスに対する分散性が良好でかつ、熱時の高い接着力を付与できる点でシリカフィラーがより好ましい。
【0111】
上記フィラーは、平均粒子径が10μm以下、且つ、最大粒子径が30μm以下であることが好ましく、平均粒子径が5μm以下、且つ、最大粒子径が20μm以下であることがより好ましい。平均粒子径が10μmを超え、且つ、最大粒子径が30μmを超えると、破壊靭性向上の効果が十分に得られない傾向がある。また、平均粒子径及び最大粒子径の下限は特に制限はないが、通常、どちらも0.001μmである。
【0112】
上記フィラーの含有量は、付与する特性又は機能に応じて決められるが、樹脂成分とフィラーの合計に対して0〜50質量%が好ましく、1〜40質量%がより好ましく、3〜30質量%がさらに好ましい。フィラーを増量させることにより、低アルファ化、低吸湿化、高弾性率化が図れ、ダイシング性(ダイサー刃による切断性)、ワイヤボンディング性(超音波効率)、熱時の接着強度を有効に向上させることができる。
【0113】
フィラーを必要以上に増量させると、熱圧着性、パターン形成性が損なわれる傾向にあるため、フィラーの含有量は上記の範囲内に収めることが好ましい。求められる特性のバランスをとるべく、最適フィラー含有量を決定する。フィラーを用いた場合の混合・混練は、通常の撹拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。
【0114】
本実施形態の感光性接着剤組成物には、異種材料間の界面結合を良くするために、各種カップリング剤を添加することもできる。カップリング剤としては、例えば、シラン系、チタン系、アルミニウム系等が挙げられ、中でも効果が高い点で、シラン系カップリング剤が好ましく、エポキシ基などの熱硬化性基やメタクリレート及び/又はアクリレートなどの放射線重合性基を有する化合物がより好ましい。また、上記シラン系カップリング剤の沸点及び/又は分解温度は150℃以上であることが好ましく、180℃以上であることより好ましく、200℃以上であることがさらにより好ましい。つまり、200℃以上の沸点及び/又は分解温度で、かつエポキシ基などの熱硬化性基やメタクリレート及び/又はアクリレートなどの放射線重合性基を有するシラン系カップリング剤が最も好ましく用いられる。上記カップリング剤の使用量は、その効果や耐熱性及びコストの面から、使用する(A)成分100質量部に対して、0.01〜20質量部とすることが好ましい。
【0115】
本実施形態の感光性接着剤組成物には、イオン性不純物を吸着して、吸湿時の絶縁信頼性を良くするために、さらにイオン捕捉剤を添加することもできる。このようなイオン捕捉剤としては、特に制限はなく、例えば、トリアジンチオール化合物、フェノール系還元剤等の銅がイオン化して溶け出すのを防止するための銅害防止剤として知られる化合物、粉末状のビスマス系、アンチモン系、マグネシウム系、アルミニウム系、ジルコニウム系、カルシウム系、チタン系、ズズ系及びこれらの混合系等の無機化合物が挙げられる。具体例としては、特に限定はしないが東亜合成(株)製の無機イオン捕捉剤、商品名、IXE−300(アンチモン系)、IXE−500(ビスマス系)、IXE−600(アンチモン、ビスマス混合系)、IXE−700(マグネシウム、アルミニウム混合系)、IXE−800(ジルコニウム系)、IXE−1100(カルシウム系)等がある。これらは単独あるいは2種以上混合して用いることができる。上記イオン捕捉剤の使用量は、添加による効果や耐熱性、コスト等の点から、(A)成分100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましい。
【0116】
上記感光性接着剤組成物をフィルム状に成形することにより、フィルム状接着剤を得ることができる。図1は、本発明のフィルム状接着剤の一実施形態を示す端面図である。図1に示すフィルム状接着剤1は、上記感光性接着剤組成物をフィルム状に成形したものである。
【0117】
フィルム状接着剤1は、例えば、図2に示す基材3上に上記感光性接着剤組成物を塗布し、乾燥させることによりフィルム状に成形される。このようにして、基材3と、基材3上に形成された上記フィルム状接着剤からなる接着剤層1とを備える接着シート100が得られる。図2は、本発明の接着シート100の一実施形態を示す端面図である。図2に示す接着シート100は、基材3と、これの一方面上に設けられたフィルム状接着剤からなる接着剤層1とから構成される。
【0118】
図3は、本発明の接着シートの他の一実施形態を示す端面図である。図3に示す接着シート100は、基材3と、これの一方面上に設けられたフィルム状接着剤からなる接着剤層1とカバーフィルム2とから構成される。
【0119】
フィルム状接着剤1は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び必要に応じて添加される他の成分を、有機溶媒中で混合し、混合液を混練してワニスを調製し、基材3上にこのワニスを塗布してワニスの層を形成し、加熱によりワニス層を乾燥した後に基材3を除去する方法で得ることができる。このとき、基材3を除去せずに、接着シート100の状態で保存又は使用することもできる。
【0120】
ワニスの調製に用いる有機溶媒、すなわちワニス溶剤は、材料を均一に溶解又は分散できるものであれば、特に制限はない。例えば、ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、及びN−メチル−ピロリジノンが挙げられる。
【0121】
上記混合及び混練は、通常の撹拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を適宜組み合わせて行うことができる。上記加熱による乾燥は、(B)成分が十分には反応しない温度で、かつ、溶媒が十分に揮散する条件で行う。上記「(B)成分が十分には反応しない温度」とは、具体的には、DSC(例えば、パーキンエルマー社製「DSC−7型」(商品名))を用いて、サンプル量:10mg、昇温速度:5℃/min、測定雰囲気:空気、の条件で測定したときの反応熱のピーク温度以下の温度である。具体的には、通常60〜180℃で、0.1〜90分間加熱することによりワニス層を乾燥する。乾燥前のワニス層の好ましい厚みは1〜200μmである。この厚みが1μm未満であると、接着固定機能が十分でなくなる傾向があり、200μmを超えると、後述する残存揮発分が多くなる傾向がある。
【0122】
得られたワニス層の好ましい残存揮発分は10質量%以下である。この残存揮発分が10質量%を超えると、組立加熱時の溶媒揮発による発泡が原因で、接着剤層内部にボイドが残存しやすくなり、耐湿性が十分でなくなる傾向がある。また、加熱時に発生する揮発成分により、周辺材料又は部材が汚染される可能性も高くなる傾向がある。なお、上記の残存揮発成分の測定条件は次の通りである。すなわち、50mm×50mmサイズに切断したフィルム状接着剤1について、初期の質量をM1とし、このフィルム状接着剤1を160℃のオーブン中で3時間加熱した後の質量をM2とし、以下の式により残存揮発分(%)を求める。
式 残存揮発分(%)=[(M2−M1)/M1]×100
【0123】
基材3は、上記の乾燥条件に耐えるものであれば特に限定されるものではない。例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム、メチルペンテンフィルムを基材3として用いることができる。基材3としてのフィルムは2種以上組み合わせた多層フィルムであってもよく、表面がシリコーン系、シリカ系等の離型剤などで処理されたものであってもよい。
【0124】
また、フィルム状接着剤1とダイシングシートとを積層し、接着シートとすることもできる。上記ダイシングシートは、基材上に粘着剤層を設けたシートであり、上記の粘着剤層は、感圧型又は放射線硬化型のどちらでも良い。また、上記の基材はエキスパンド可能な基材が好ましい。このような接着シートとすることにより、ダイボンドフィルムとしての機能とダイシングシートとしての機能を併せ持つダイシング・ダイボンド一体型接着シートが得られる。
【0125】
上記のダイシング・ダイボンド一体型接着シートとして具体的には、図4に示すような、基材3、粘着剤層6及びフィルム状接着剤(接着剤層)1がこの順に積層されてなる接着シート100が挙げられる。
【0126】
図5は、本発明の接着剤層付半導体ウェハの一実施形態を示す上面図であり、図6は図5のIV−IV線に沿った端面図である。図5及び6に示す接着剤層付半導体ウェハ20は、半導体ウェハ8と、これの一方面上に設けられたフィルム状接着剤(接着剤層)1と、を備える。
【0127】
接着剤層付半導体ウェハ20は、半導体ウェハ8上に、フィルム状接着剤1を加熱しながらラミネートすることにより得られる。フィルム状接着剤1は、例えば、室温(25℃)〜150℃程度の低温で半導体ウェハ8に貼付けることが可能である。
【0128】
図7及び図9は、それぞれ本発明の接着剤パターンの一実施形態を示す上面図であり、図8は図7のV−V線に沿った端面図であり、図10は図9のVI−VI線に沿った端面図である。図7、8、9及び10に示す接着剤パターン1aは、被着体としての半導体ウェハ8上において、略正方形の辺に沿ったパターン又は正方形のパターンを有するように形成されている。
【0129】
接着剤パターン1aは、接着剤層1を被着体としての半導体ウェハ8上に積層して接着剤層付半導体ウェハ20を得て、接着剤層1をフォトマスクを介して露光し、露光後の接着剤層1をアルカリ現像液により現像処理することにより形成される。これにより、接着剤パターン1aが形成された接着剤層付半導体ウェハ20が得られる。
【0130】
以下、本発明のフィルム状接着剤を用いて製造される半導体装置について、図面を用いて具体的に説明する。近年は様々な構造の半導体装置が提案されており、本発明のフィルム状接着剤の用途は、以下に説明する構造の半導体装置に限定されるものではない。
【0131】
図11は、本発明の半導体装置の一実施形態を示す端面図である。図11に示す半導体装置200において、半導体素子12はフィルム状接着剤1を介して半導体素子搭載用支持部材13に接着され、半導体素子12の接続端子(図示せず)はワイヤ14を介して外部接続端子(図示せず)と電気的に接続され、封止材15によって封止されている。
【0132】
図12は、本発明の半導体装置の他の一実施形態を示す端面図である。図12に示す半導体装置200において、一段目の半導体素子12aはフィルム状接着剤1を介して、端子16が形成された半導体素子搭載用支持部材13に接着され、一段目の半導体素子12aの上に更にフィルム状接着剤1を介して二段目の半導体素子12bが接着されている。一段目の半導体素子12a及び二段目の半導体素子12bの接続端子(図示せず)は、ワイヤ14を介して外部接続端子と電気的に接続され、封止材によって封止されている。このように、本発明のフィルム状接着剤は、半導体素子を複数重ねる構造の半導体装置にも好適に使用できる。
【0133】
図11及び図12に示す半導体装置(半導体パッケージ)は、例えば、図9に示す接着剤層付半導体ウェハ20を破線Dに沿ってダイシングし、ダイシング後の接着剤層付き半導体素子を半導体素子搭載用支持部材13に加熱圧着して両者を接着させ、その後、ワイヤボンディング工程、必要に応じて封止材による封止工程等の工程を経ることにより得ることができる。上記加熱圧着における加熱温度は、通常、20〜250℃であり、荷重は、通常、0.01〜20kgfであり、加熱時間は、通常、0.1〜300秒間である。
【0134】
その他、本発明の半導体装置の実施形態としては、図18に示すようなものがある。以下、図18に示す半導体装置の製造方法について、図面を用いて詳しく説明する。図13、14及び16〜19は、本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す端面図であり、図15は本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す上面図である。
【0135】
本実施形態の半導体装置の製造方法は、以下の(工程1)〜(工程7)を備える。
(工程1)半導体ウェハ8内に形成された半導体チップ(半導体素子)12の回路面18上にフィルム状接着剤(接着剤層)1を積層する工程(図13(a)及び(b))。
(工程2)半導体チップ12の回路面18上に設けられた接着剤層1を露光及び現像によってパターニングする工程(図13(c)及び図14(a))。
(工程3)半導体ウェハ8を回路面18とは反対側の面から研磨して半導体ウェハ8を薄くする工程(図14(b))。
(工程4)半導体ウェハ8をダイシングにより複数の半導体チップ12に切り分ける工程(図14(c)及び図16(a))。
(工程5)半導体チップ12をピックアップして半導体装置用の板状の支持部材(半導体素子搭載用支持部材)13にマウントする工程(図16(b)及び図17(a))。
(工程6)支持部材13にマウントされた半導体チップ12aの回路面18上でパターニングされた接着剤層1に2層目の半導体チップ12bを積層する工程(図17(b))。
(工程7)半導体チップ12a及び12bをそれぞれ外部接続端子と接続する工程(図18)。
【0136】
以下、(工程1)〜(工程7)について詳述する。
(工程1)
図13(a)に示す半導体ウェハ8内には、ダイシングラインDによって区分された複数の半導体チップ12が形成されている。この半導体チップ12の回路面18側の面にフィルム状接着剤(接着剤層)1を積層する(図13(b))。接着剤層1を積層する方法としては、予めフィルム状に成形されたフィルム状接着剤を準備し、これを半導体ウェハ8に貼り付ける方法が簡便であるが、スピンコート法などを用いて液状の感光性接着剤組成物のワニスを半導体ウェハ8に塗布し、加熱乾燥する方法によってもよい。
【0137】
(工程2)
接着剤層1は、露光及び現像によってパターニングされた後に被着体に対する接着性を有し、アルカリ現像が可能なネガ型の感光性接着剤である。より詳細には、接着剤層1を露光及び現像によってパターニングして形成されるレジストパターン(接着剤パターン)が、半導体チップや支持部材等の被着体に対する接着性を有している。例えば接着剤パターンに被着体を必要により加熱しながら圧着することにより、接着剤パターンと被着体とを接着することが可能である。
【0138】
半導体ウェハ8に積層された接着剤層1に対して、所定の位置に開口を形成しているマスク4を介して活性光線(典型的には紫外線)を照射する(図13(c))。これにより接着剤層1が所定のパターンで露光される。
【0139】
露光後、接着剤層1のうち露光されなかった部分をアルカリ現像液を用いた現像によって除去することにより、開口11が形成されるように接着剤層1をパターニングする(図14(a))。なお、ネガ型に代えてポジ型の感光性接着剤組成物を用いることも可能であり、その場合は接着剤層1のうち露光された部分が現像により除去される。
【0140】
図15は、接着剤層1がパターニングされた状態を示す上面図である。開口11において半導体チップ12のボンディングパッドが露出する。すなわち、パターニングされた接着剤層1は、半導体チップ12のバッファーコート膜である。矩形状の開口11は、各半導体チップ12上に複数並んで形成されている。開口11の形状、配置及び数は本実施形態のような形態に限られるものではなく、ボンディングパッド等の所定の部分が露出するように適宜変形が可能である。なお、図15のII−II線に沿った端面図が図14である。
【0141】
(工程3)
パターニングの後、半導体ウェハ8の接着剤層1とは反対側の面を研磨して、半導体ウェハ8を所定の厚さまで薄くする(図14(b))。研磨は、例えば、接着剤層1上に粘着フィルムを貼り付け、粘着フィルムによって半導体ウェハ8を研磨用の治具に固定して行う。
【0142】
(工程4)
研磨後、半導体ウェハ8の接着剤層1とは反対側の面に、ダイボンディング材30及びダイシングテープ40を有しこれらが積層している複合フィルム5を、ダイボンディング材30が半導体ウェハ8に接する向きで貼り付ける。貼り付けは必要により加熱しながら行う。
【0143】
次いで、ダイシングラインDに沿って半導体ウェハ8を接着剤層1及び複合フィルム5とともに切断する。これにより、接着剤層1及び複合フィルムをそれぞれ備えた複数の半導体チップ12が得られる(図16(a))。このダイシングは、例えば、ダイシングテープ40によって全体をフレームに固定した状態でダイシングブレードを用いて行われる。
【0144】
(工程5)
ダイシングの後、切り分けられた半導体チップ12を、接着剤層1及びダイボンディング材30とともにピックアップし(図16(b))、支持部材13にダイボンディング材30を介してマウントする(図17(a))。
【0145】
(工程6)
支持部材13にマウントされた半導体チップ12a上の接着剤層1上に、2層目の半導体チップ12bを積層する(図17(b))。すなわち、半導体チップ12aと、その上層に位置する半導体チップ12bとが、それらの間に介在するパターニングされた接着剤層1(バッファーコート膜)によって接着される。半導体チップ12bは、パターニングされた接着剤層1のうち開口11は塞がないような位置に接着される。なお、半導体チップ12bの回路面18上にもパターニングされた接着剤層1(バッファーコート膜)が形成されている。
【0146】
半導体チップ12bの接着は、例えば、接着剤層1が流動性を発現するような温度にまで加熱しながら熱圧着する方法により行われる。熱圧着後、必要により接着剤層1を加熱して更に硬化を進行させる。
【0147】
(工程7)
その後、半導体チップ12aはそのボンディングパッドに接続されたワイヤ14aを介して支持部材13上の外部接続端子と接続され、半導体チップ12bはそのボンディングパッドに接続されたワイヤ14bを介して支持部材13上の外部接続端子と接続される。次いで、半導体チップ12a及び12bを含む積層体を封止材15によって封止することにより、半導体装置200が得られる(図18)。
【0148】
本発明の半導体装置の製造方法は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。例えば、(工程1)〜(工程7)の順序を適宜入れ替えることが可能である。図19に示すように、接着剤層1が形成された半導体ウェハ8を研磨により薄くした後、ダイシングを行ってもよい。この場合、ダイシング後、露光及び現像によって接着剤層1をパターニングすることにより、図16(a)と同様の積層体が得られる。また、半導体ウェハを研磨により薄くし、ダイシングしてから、フィルム状接着剤1の貼り付けとその露光及び現像を行ってもよい。また、3層以上の半導体チップ12が積層されていてもよい。その場合、少なくとも1組の隣り合う半導体チップ同士が、パターニングされた接着剤層1(下層側のバッファーコート膜)によって直接接着される。
【0149】
図20は、本発明の半導体装置の他の一実施形態を示す端面図である。図20に示す半導体装置200は、接続端子(第1の接続部:図示せず)を有する支持部材(第1の被着体)13と、接続用電極部(第2の接続部:図示せず)を有する半導体チップ(第2の被着体)12と、絶縁材からなる接着剤層1と、導電材からなる導電層9とを備えている。支持部材13は、半導体チップ12と対向する回路面18を有しており、半導体チップ12と所定の間隔をおいて配置されている。接着剤層1は、支持部材13及び半導体チップ12の間において、それぞれと接して形成されており、所定のパターンを有している。導電層9は、支持部材13及び半導体チップ12の間における、接着剤層1が配置されていない部分に形成されている。半導体チップ12の接続用電極部は、導電層9を介して支持部材13の接続端子と電気的に接続されている。
【0150】
以下、図21〜25を用いて、図20に示す半導体装置の製造方法について詳述する。図21〜25は、本発明の半導体装置の製造方法の一実施形態を示す端面図である。本実施形態の半導体装置の製造方法は、以下の(第1工程)〜(第4工程)を備える。
(第1工程)接続端子を有する支持部材13上に接着剤層1を設ける工程(図21及び図22)。
(第2工程)接着剤層1を露光及び現像により、接続端子が露出する開口11が形成されるようにパターニングする工程(図23及び図24)。
(第3工程)開口11に導電材を充填して導電層9を形成する工程(図25)。
(第4工程)接続用電極部を有する半導体チップ12を、支持部材13と接着剤層1との積層体の接着剤層1側に接着すると共に、支持部材13の接続端子と半導体チップ12の接続用電極部とを導電層9を介して電気的に接続する工程(図20)。
【0151】
以下、(第1工程)〜(第4工程)について詳しく説明する。
(第1工程)
図21に示す支持部材13の回路面18上に、接着剤層1を積層する(図22)。積層方法としては、予めフィルム状に成形されたフィルム状接着剤を準備し、これを支持部材13に貼り付ける方法が簡便であるが、スピンコート法などを用いて、感光性接着剤組成物を含有する液状のワニスを支持部材13上に塗布し、加熱乾燥する方法によって積層してもよい。
【0152】
感光性接着剤組成物は、露光及び現像によってパターニングされた後に被着体に対する接着性を有し、アルカリ現像が可能なネガ型の感光性接着剤である。より詳細には、感光性接着剤を露光及び現像によってパターニングして形成されるレジストパターンが、半導体チップ及び基板等の被着体に対する接着性を有している。例えばレジストパターンに被着体を必要により加熱しながら圧着することにより、レジストパターンと被着体とを接着することが可能である。
【0153】
(第2工程)
支持部材13上に設けられた接着剤層1に対して、所定の位置に開口が形成されているマスク4を介して活性光線(典型的には紫外線)を照射する(図23)。これにより接着剤層1が所定のパターンで露光される。
【0154】
露光後、接着剤層1のうち露光されなかった部分を、アルカリ現像液を用いた現像によって除去することにより、支持部材13の接続端子が露出する開口11が形成されるように接着剤層1がパターニングされる(図24)。なお、ネガ型に代えてポジ型の感光性接着剤を用いることも可能であり、その場合は接着剤層1のうち露光された部分が現像により除去される。
【0155】
得られたレジストパターンの開口11に導電材を充填して導電層9を形成する(図25)。導電材の充填方法は、グラビア印刷、ロールによる押し込み、減圧充填等各種の方法が採用できる。ここで使用する導電材は、半田、金、銀、ニッケル、銅、白金、パラジウム若しくは酸化ルテニウム等の金属、又は、金属酸化物等からなる電極材料、上記金属のバンプの他、例えば、導電性粒子と樹脂成分とを少なくとも含有してなるものが挙げられる。導電性粒子としては、例えば、金、銀、ニッケル、銅、白金、パラジウム若しくは酸化ルテニウム等の金属若しくは金属酸化物、又は有機金属化合物等の導電性粒子が用いられる。また、樹脂成分としては、例えば、エポキシ樹脂及びその硬化剤等の上述した硬化性樹脂組成物が用いられる
【0156】
支持部材13上の接着剤層1に対して、半導体チップ12が直接接着される。半導体チップ12の接続用電極部は、導電層9を介して支持部材13の接続端子と電気的に接続される。なお、半導体チップ12における接着剤層1と反対側の回路面上に、パターン化された接着剤層(バッファーコート膜)が形成されていてもよい。
【0157】
半導体チップ12の接着は、例えば、接着剤層1(感光性接着剤組成物)が流動性を発現するような温度にまで加熱しながら熱圧着する方法により行われる。熱圧着後、必要により接着剤層1を加熱して更に硬化を進行させる。
【0158】
半導体チップ12における接着剤層1と反対側の回路面(裏面)には、裏面保護フィルムを貼り付けることが好ましい。
【0159】
以上の方法により、図20に示す半導体装置200が得られる。本発明の半導体装置の製造方法は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
【0160】
例えば、接着剤層1は、最初に支持部材13上に設けられることに限られるものではなく、半導体チップ12上に最初に設けることもできる。この場合、半導体装置の製造方法は、例えば、接続用電極部を有する半導体チップ12上に接着剤層1を設ける第1の工程と、接着剤層1を露光及び現像により、接続用電極部が露出する開口11が形成されるようにパターニングする第2の工程と、開口11に導電材を充填して導電層9を形成する第3の工程と、接続端子を有する支持部材13を、半導体チップ12と接着剤層1との積層体の接着剤層1に直接接着すると共に、支持部材13の接続端子と半導体チップ12の接続用電極部とを導電層9を介して電気的に接続する第4の工程と、を備える。
【0161】
上記製造方法では、それぞれ個片化された支持部材13及び半導体チップ12間の接続であるため、支持部材13上の接続端子と半導体チップ12上の接続用電極部との接続が容易である点において好ましい。
【0162】
また、接着剤層1は、複数の半導体チップ12から構成される半導体ウェハ上に最初に設けることもできる。この場合、半導体装置の製造方法は、例えば、接続用電極部を有する複数の半導体チップ12から構成される半導体ウェハ上に接着剤層1を設ける第1の工程と、接着剤層1を露光及び現像により、接続用電極部が露出する開口11が形成されるようにパターニングする第2の工程と、開口11に導電材を充填して導電層9を形成する第3の工程と、接続端子を有するウェハサイズの支持部材13(半導体ウェハと同程度の大きさを有する支持部材)を、半導体ウェハと接着剤層1との積層体の接着剤層1側に直接接着すると共に、支持部材13の接続端子と半導体ウェハを構成する半導体チップ12の接続用電極部とを導電層9を介して電気的に接続する第4の工程と、半導体ウェハと接着剤層1と支持部材13との積層体を半導体チップ12ごとに切り分ける(ダイシング)第5の工程と、を備える。
【0163】
また、上記製造方法は、第1の工程において、ウェハサイズの支持部材13上に接着剤層1を設け、第4の工程において、半導体ウェハを、支持部材13と接着剤層1との積層体の接着剤層1側に直接接着すると共に、支持部材13の接続端子と半導体ウェハを構成する半導体チップ12の接続用電極部とを導電層9を介して電気的に接続し、第5の工程において、半導体ウェハと接着剤層1と支持部材13との積層体を半導体チップ12ごとに切り分けてもよい。
【0164】
上記製造方法では、半導体ウェハと支持部材13との接続までの工程(第4の工程)をウェハサイズでできるので作業効率の点において好ましい。なお、半導体ウェハにおける接着剤層1と反対側の回路面(裏面)には、裏面保護フィルムを貼り付けることが好ましい。
【0165】
また、他の半導体装置の製造方法は、接続用電極部を有する複数の半導体チップ12から構成される半導体ウェハ上に接着剤層1を設ける第1の工程と、接着剤層1を露光及び現像により、接続用電極部が露出する開口11が形成されるようにパターニングする第2の工程と、開口11に導電材を充填して導電層9を形成する第3の工程と、半導体ウェハと接着剤層1との積層体を半導体チップ12ごとに切り分ける(ダイシング)第4の工程と、接続端子を有する支持部材13を、個片化された半導体チップ12と接着剤層1との積層体の接着剤層1側に直接接着すると共に、支持部材13の接続端子と半導体チップ12の接続用電極部とを導電層9を介して電気的に接続する第5の工程と、を備える。
【0166】
上記製造方法は、第1の工程において、ウェハサイズの支持部材13上に接着剤層1を設け、第4の工程において、ウェハサイズの支持部材13と接着剤層1との積層体を半導体チップ12ごとに切り分け、第5の工程において、半導体チップ12を、個片化された支持部材13と接着剤層1との積層体の接着剤層1側に直接接着すると共に、支持部材13の接続端子と半導体チップ12の接続用電極部とを導電層9を介して電気的に接続してもよい。
【0167】
上記製造方法では、接着剤層1の形成から導電材の充填工程(第3の工程)までをウェハサイズで行え、またダイシング工程(第4の工程)をスムーズにできる点において好ましい。
【0168】
また、フィルム状接着剤を用いて、半導体ウェハ同士又は半導体チップ同士を接着することにより半導体装置(半導体積層体)を構成することができる。この積層体には、貫通電極を形成することも可能である。
【0169】
この場合、半導体装置の製造方法は、例えば、貫通電極の接続用電極部を有する第1の半導体チップ12上に感光性接着剤からなる接着剤層1を設ける第1の工程と、接着剤層1を露光及び現像により、上記接続用電極部が露出する開口11が形成されるようにパターニングする第2の工程と、開口11に導電材を充填して貫通電極接続を形成する第3の工程と、接続用電極部を有する第2の半導体チップ12を、第1の半導体チップ12と接着剤層1との積層体の接着剤層1に直接接着すると共に、第1及び第2の半導体チップ12の接続用電極部同士を導電層9を介して電気的に接続する第4の工程と、を備える。上記製造方法において、半導体チップに替えて、半導体ウェハを用いてもよい。
【0170】
本発明の半導体装置は、図26に示すような固体撮像素子であってもよい。図26は、本発明の半導体装置の一実施形態を示す端面図である。図26に示す半導体装置(固体撮像素子)200は、ガラス基板7、半導体チップ12、接着剤層1及び有効画素領域17を備える。ガラス基板7と半導体チップ12とは、パターニングされた接着剤層1を介して接着されており、半導体チップ12の支持部材13側の面には有効画素領域17が形成されている。
【0171】
上記半導体装置(固体撮像素子)200は、例えば、図27に示すようなCMOSセンサの製造に用いられる。図27は、図26に示す半導体素子を固体撮像素子として用いたCMOSセンサの例を示す端面図である。図27に示すCMOSセンサ300において、半導体装置200は、複数の導電性バンプ32を介して半導体素子搭載用支持部材13上の接続端子(図示せず)と電気的に接続されている。なお、導電性バンプ32を用いて半導体装置200が接着された構成に代えて、導電性ワイヤを介して半導体装置200が半導体素子搭載用支持部材13上の接続端子に接続された構成を有していてもよい。
【0172】
CMOSセンサ300は、有効画素領域17の真上(半導体チップ12の反対側)に位置するように設けられたレンズ38と、レンズ38と共に半導体装置200を内包するように設けられた側壁50と、レンズ38が嵌め込まれた状態でレンズ38及び側壁50の間に介在する嵌め込み用部材42とが半導体素子搭載用支持部材13上に搭載された構成を有する。
【0173】
CMOSセンサ300は、上述のような方法により製造された半導体装置200を、半導体素子搭載用支持部材13上の接続端子と半導体チップ12を導電性バンプ32を介して接続し、半導体装置200を内包するようにレンズ38、側壁50及び嵌め込み用部材42を半導体素子搭載用支持部材13上に形成することにより製造される。
【実施例】
【0174】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0175】
<(A)成分:フィルム形成能を有する樹脂>
ポリイミド樹脂
(PI−1)
撹拌機、温度計及び窒素置換装置(窒素流入管)を備えた300mLフラスコ内に、ジアミンである5,5´−メチレンビス(アントラニル酸)(分子量286.3)(以下「MBAA」と略す。)2.16g(0.0075mol)、ポリオキシプロピレンジアミン(商品名「D−400」(分子量:452.4)、BASF製製)15.13g(0.0335mol)、及び1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン(商品名「BY16−871EG」、東レ・ダウコーニング(株)製)1.63g(0.0065mol)と、溶媒であるNMP(N−メチル−2−ピロリドン)115gを仕込み、撹拌してジアミンを溶媒に溶解させた。
【0176】
上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、4,4´−オキシジフタル酸二無水物(以下「ODPA」と略す。)16.51g(0.051mol)を、フラスコ内の溶液に少量ずつ添加した。添加終了後、室温で5時間撹拌した。その後、フラスコに水分受容器付きの還流冷却器を取り付け、キシレン81gを加え、窒素ガスを吹き込みながら溶液を180℃に昇温させて5時間保温し、水と共にキシレンを共沸除去して、ポリイミド樹脂(PI−1)を得た。(PI−1)のGPC測定を行ったところ、ポリスチレン換算で重量平均分子量(Mw)=30000であった。また、(PI−1)のTgは31℃であった。
【0177】
(PI−2)
撹拌機、温度計及び窒素置換装置を備えたフラスコ内に、ジアミンであるMBAA5.72g(0.02mol)、「D−400」13.57g(0.03mol)、「BY16−871EG」2.48g(0.01mol)、及び1,4−ブタンジオール ビス(3−アミノプロピル)エーテル(商品名「B−12」、東京化成製、分子量204.31)8.17g(0.04mol)と、溶媒であるNMP110gを仕込み、撹拌してジアミンを溶媒に溶解させた。
【0178】
上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、ODPA29.35g(0.09mol)及びTAA(無水トリメリット酸)3.84g(0.02mol)を、フラスコ内の溶液に少量ずつ添加した。添加終了後、室温で5時間撹拌した。その後、フラスコに水分受容器付きの還流冷却器を取り付け、キシレン70.5gを加え、窒素ガスを吹き込みながら溶液を180℃に昇温させて5時間保温し、水と共にキシレンを共沸除去して、ポリイミド樹脂(PI−2)を得た。(PI−2)のGPC測定を行ったところ、ポリスチレン換算でMw=21000であった。また、(PI−2)のTgは55℃であった。
【0179】
(PI−3)
撹拌機、温度計及び窒素置換装置を備えた500mLフラスコ内に、ジアミンであるMBAA34.32g(0.12mol)、「D−400」17.32g(0.04mol)、及び「BY16−871EG」7.454g(0.03mol)と、溶媒であるNMP140gを仕込み、撹拌してジアミンを溶媒に溶解させた。
【0180】
上記フラスコを氷浴中で冷却しながら、ODPA55.8g(0.18mol)及びTAA11.52g(0.06mol)を、フラスコ内の溶液に少量ずつ添加した。添加終了後、室温で5時間撹拌した。その後、フラスコに水分受容器付きの還流冷却器を取り付け、キシレン81gを加え、窒素ガスを吹き込みながら溶液を180℃に昇温させて5時間保温し、水と共にキシレンを共沸除去して、ポリイミド樹脂(PI−3)を得た。(PI−3)のGPC測定を行ったところ、ポリスチレン換算でMw=20000であった。また、(PI−3)のTgは100℃であった。
【0181】
(メタ)アクリル共重合体
(Polymer―1)
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート240g、乳酸メチル60g、メタクリロイルオキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン(日立化成工業(株)社製、「FANCRYL FA−513M」)86.4g、N−シクロヘキシルマレイミド36.5g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート106.7g、及びメタクリル酸40.5gを混合し、窒素バブリングしながら溶解させた。N−シクロヘキシルマレイミドの溶解を確認した後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル3gを溶解させ、混合溶液(a)を調製した。
【0182】
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.6gをジエチレングリコールジメチルエーテル40gに溶解させ、溶液(b)を調製した。
【0183】
四つ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート264gと乳酸メチル66gを仕込み、90℃に昇温させた。フラスコ内の温度を90℃に保ったまま、上記混合溶液(a)をフラスコ内に3時間かけて連続的に滴下した。その後、3時間90℃に保持し、その間、残存モノマー低減のため、上記溶液(b)を数回に分けて添加した。合計6時間、90℃で反応を行った後、フラスコ内の溶液を120℃まで昇温させ、1時間120℃に保持した後自然冷却して、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを単量体単位として含む重合体の溶液を得た。
【0184】
エチレン性不飽和結合(メタクリロイル基)を導入するために、得られた重合体の溶液に、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナートと錫系の触媒とを添加した。2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナートは、重合体に対し、1.5mmol/gとなるように添加した。その後、80℃で2〜3時間保持した後自然冷却して、側鎖及び/又は末端にエチレン性不飽和結合を有する(メタ)アクリル共重合体(Polymer−1)の溶液を得た。(Polymer−1)のGPC測定を行ったところ、ポリスチレン換算でMw=30000であった。また、(Polymer−1)のTgは60℃であった。
【0185】
<(B)成分:エチレン性不飽和基及びエポキシ基を有する化合物>
(B−1)
撹拌機、温度計及び窒素置換装置を備えた500mLフラスコ内に、液状の高純度ビスフェノールAビスグリシジルエーテルエポキシ樹脂(エポキシ当量178g/eq、東都化成社製 YD−825GS)178g(1.0当量)、アクリル酸36g(0.5当量)、トリフェニルホスフィン0.5g、及びヒドロキノン0.15gを仕込み、100℃で7時間撹拌し、分子内にエチレン性不飽和基及びエポキシ基を有する化合物(B−1)を得た。(B−1)を水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定し、酸価が0.3KOHmg/g以下であることを確認した。(5%重量減少温度:300℃、エポキシ基数:約1、エチレン性不飽和基数:約1、全塩素含量:<400ppm)
【0186】
(B−2)
撹拌機、温度計及び窒素置換装置を備えた500mLフラスコ内に、液状の高純度ビスフェノールFビスグリシジルエーテルエポキシ樹脂(エポキシ当量160g/eq、東都化成社製 YDF−870GS)168g(1.0当量)、アクリル酸36g(0.5当量)、トリフェニルホスフィン0.5g、及びヒドロキノン0.15gを仕込み、100℃で7時間撹拌し、分子内にエチレン性不飽和基及びエポキシ基を有する化合物(B−2)を得た。(B−2)を水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定し、酸価が0.3KOHmg/g以下であることを確認した。(5%重量減少温度:300℃、エポキシ基数:約1、エチレン性不飽和基数:約1、全塩素含量:<400ppm)
【0187】
(B−3)
撹拌機、温度計及び窒素置換装置を備えた500mLフラスコ内に、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量174g/eq、東都化成社製「YDPN−638」)174g(1.0当量)、アクリル酸36g(0.5当量)、トリフェニルホスフィン0.48g、及びヒドロキノン0.10gを仕込み、90℃〜100℃で7時間撹拌し、分子内にエチレン性不飽和基及びエポキシ基を有する化合物(B−3)を得た。(B−3)を水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定し、酸価が0.3KOHmg/g以下であることを確認した。(5%重量減少温度:310℃、エポキシ基数:約1.7、エチレン性不飽和基数:約1.7、全塩素含量:<400ppm)
【0188】
<感光性接着剤組成物>
上記で得られた(PI−1)〜(PI−3)、(Polymer−1)及び(B−1)〜(B−3)を用いて、下記表1及び2に示す組成比(単位:質量部)にて各成分を配合し、実施例1〜8及び比較例1〜6の感光性接着剤組成物(接着剤層形成用ワニス)を得た。
【0189】
表1及び2において、各記号は下記のものを意味する。
BPE−100:新中村化学工業社製、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(5%重量減少温度:330℃)
A−9300:新中村化学工業社製、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート(5%重量減少温度:>400℃)
EA−1020:新中村化学工業社製、ビスフェノールAビスグリシジルエーテル型ジアクリレート(5%重量減少温度:300℃)
M−140:東亜合成社製、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチルアクリレート(5%重量減少温度:200℃、グリシジル基数:0、アクリル基数:1)
VG−3101:プリンテック社製、3官能エポキシ樹脂(5%重量減少温度:350℃)
YDF−870GS:東都化成社製、ビスフェノールF型ビスグリシジルエーテル(5%重量減少温度:270℃)
TrisP−PA:本州化学社製、トリスフェノール化合物(α,α,α´−トリス(4−ヒドロキシフェノル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン)(5%重量減少温度:350℃)
R−972:日本アエロジル社製、疎水性フュームドシリカ(平均粒径:約16nm)
I−819:チバ・ジャパン社製、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド
パークミルD:日油社製、ジクミルパーオキサイド
NMP:関東化学社製、N−メチル−2−ピロリドン
【0190】
なお、5%重量減少温度の測定は、サンプルを示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、商品名「TG/DTA6300」)を用いて、昇温速度10℃/min、窒素フロー(400ml/分)下で行った。
【0191】
また、全塩素含量の測定は、JIS K7243−3に準じて行った。
【0192】
【表1】
【0193】
【表2】
【0194】
<接着シート>
得られた感光性接着剤組成物を、乾燥後の膜厚が50μmとなるように、それぞれ基材(剥離剤処理PETフィルム)上に塗布し、オーブン中にて80℃で20分間加熱し、続いて120℃で20分間加熱して、基材上に感光性接着剤組成物からなる接着剤層を形成した。このようにして、基材及び基材上に形成された接着剤層を有する接着シートを得た。
【0195】
<評価試験>
(貼付性)
支持台上にシリコンウェハ(6インチ径、厚さ400μm)を載せ、その上に、上記接着シートを、接着剤層がシリコンウェハの裏面(支持台と反対側の面)と接するように、ロール加圧(温度100℃、線圧4kgf/cm、送り速度0.5m/分)により積層した。基材(PETフィルム)を剥離除去した後、露出した接着剤層上に、厚み80μm、幅10mm、長さ40mmのポリイミドフィルム(宇部興産社製、「ユーピレックス」(商品名))を、上記と同様の条件でロール加圧して積層した。このようにして、シリコンウェハ、接着剤層及びポリイミドフィルムからなり、これらがこの順に積層する積層体のサンプルを得た。
【0196】
得られたサンプルについて、レオメータ(東洋製機製作所社製、「ストログラフE−S」(商品名))を用いて、室温で90°ピール試験を行って、接着剤層とポリイミドフィルムとのピール強度を測定した。その測定結果に基づいて、ピール強度が2N/cm以上のサンプルをA、2N/cm未満のサンプルをBとして、貼付性の評価を行った。評価結果を表3及び4に示す。
【0197】
(高温接着性)
ロール加圧の温度を80℃としたこと以外は上記貼付性の評価試験と同様にして、シリコンウェハ上に接着シートを積層した。得られた積層体を、接着シート側から、高精度平行露光機(オーク製作所製、「EXM−1172−B−∞」(商品名))により1000mJ/cm2で露光し、80℃のホットプレート上で約30秒間放置した。基材(PETフィルム)を剥離除去した後、コンベア現像機(ヤコー社製)を用いて、テトラメチルアンモニウムハイドライド(TMAH)2.38質量%溶液を現像液とし、温度26℃、スプレー圧0.18MPaの条件でスプレー現像した後、温度25℃の純水にてスプレー圧0.02MPaの条件で6分間水洗し、150℃で1分間乾燥させた。このようにして、シリコンウェハ上に、感光性接着剤組成物の硬化物からなる硬化物層を形成した。
【0198】
得られたシリコンウェハ及び硬化物層からなる積層体を、3mm×3mmの大きさに個片化した。個片化した積層体を、実施例1〜6及び8、比較例1〜5及び7については150℃で10分間、実施例7及び比較例6については120℃で10分間、ホットプレート上で乾燥させた後、ガラス基板(10mm×10mm×0.55mm)上に、硬化物層がガラス基板と接するようにして積層し、2kgfで加圧しながら、150℃で10秒間圧着した。このようにして、シリコンウェハ、硬化物層及びガラス基板からなり、これらがこの順に積層する積層体のサンプルを得た。
【0199】
得られたサンプルを、オーブン中で180℃、3時間の条件で加熱し、さらに、260℃の熱盤上で10秒間加熱した後、せん断接着力試験機「Dage−4000」(商品名)を用いて接着力を測定した。測定結果を表3及び4に示す。
【0200】
(パターン形成性)
ロール加圧の温度を80℃としたこと以外は上記高温接着性の評価試験と同様にして、シリコンウェハ上に接着シートを積層した。得られた積層体を、接着シート側から、ネガ型パターン用マスク(日立化成社製、「No.G−2」(商品名))を介して、上記試験と同様に露光した。次いで、上記試験と同様に、ホットプレート上で放置後、基材を除去し、現像・水洗・乾燥を行った。このようにして、シリコンウェハ上に、感光性接着剤組成物の接着剤パターンを形成した。
【0201】
形成された接着剤パターンを顕微鏡(倍率:50倍)で観察し、ライン幅/スペース幅=400μm/400μmのパターンが形成されていた場合をA、形成されていなかった場合をBとして、パターン形成性の評価を行った。評価結果を表3及び4に示す。
【0202】
(熱圧着性)
ロール加圧の温度を80℃とし、上記ネガ型パターン用マスクに代えて額縁状6インチサイズマスクパターン(中空部2mm、線幅0.5mm)を用いたこと以外は、上記パターン形成性の評価試験と同様にして、シリコンウェハ上に、感光性接着剤組成物の接着剤パターンを形成した。
【0203】
実施例1〜6及び8、比較例1〜5及び7については150℃で10分間、実施例7及び比較例6については120℃で10分間、ホットプレート上で乾燥させた後、形成された接着剤パターンのシリコンウェハと反対側の面上に、ガラス基板(15mm×40mm×0.55mm)を積層し、0.5MPaで加圧しながら、150℃で10分間圧着し、シリコンウェハ、接着剤パターン及びガラス基板からなり、これらがこの順に積層する積層体のサンプルを得た。
【0204】
得られたサンプルを顕微鏡(倍率:50倍)で観察し、未接着部分(空隙)がガラス基板と接着剤パターンとの接着面積に対して20%以下であるものをA、20%以上であるものをBとして、熱圧着性の評価を行った。評価結果を表3及び4に示す。
【0205】
(耐熱性)
上記熱圧着性の評価試験と同様にして、シリコンウェハ、接着剤パターン及びガラス基板からなり、これらがこの順に積層する積層体のサンプルを得た。得られたサンプルを、オーブン中で180℃、3時間の条件で加熱し、さらに、260℃のホットプレート上に30分間静置した。その後、サンプルを目視にて観察し、1ICサイズ以上の剥離が見られなかったものをA、1ICサイズ以上の剥離が見られたものをBとして、耐熱性の評価を行った。評価結果を表3及び4に示す。
【0206】
(耐湿性)
上記耐熱性の評価試験と同様に、積層体のサンプルをオーブン中で180℃にて3時間加熱した。加熱後のサンプルを、温度85℃、湿度60%の条件下で168時間処理した後、温度25℃、湿度50%の環境に置き、サンプルのガラス内部が結露するか顕微鏡で観察した。結露が見られなかったものをA、結露が見られたものをBとして、耐湿性(耐結露性)の評価を行った。評価結果を表3及び4に示す。
【0207】
上記耐熱性の評価試験と同様に、積層体のサンプルをオーブン中で180℃にて3時間加熱した。加熱後のサンプルを、温度60℃、湿度90%の条件下で168時間処理した後、上記で温度25℃、湿度50%の環境下に置いた後、250℃、10秒のIRリフローを行い、剥離の有無を顕微鏡(倍率:15倍)で観察した。剥離が見られなかったものをA、剥離が見られたものをBとして、耐湿性(耐リフロー性)の評価を行った。評価結果を表3及び4に示す。
【0208】
【表3】
【0209】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0210】
本発明の感光性接着剤組成物は、貼付性、高温接着性、パターン形成性、熱圧着性、耐熱性及び耐湿性の全ての点で十分に優れるため、高精細な半導体パッケージの製造に用いる接着剤として好適に用いられる。また、本発明のフィルム状接着剤又は接着シートは、基板、ガラス、シリコンウェハ等の被着体又は支持部材上に適用したときに、液状の樹脂組成物を用いる場合よりも位置合わせ精度に優れる上に、露光によるパターン化の解像度を向上させることができ、更に、パターン形成後の基板、ガラス、半導体素子等の被着体との低温熱圧着性を有すると共に、熱硬化後の優れた耐熱性を有するため、半導体素子、光学素子、固体撮像素子等の保護の用途、又は微細な接着領域が求められる接着剤又はバッファーコート用途に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0211】
1…フィルム状接着剤(接着剤層)、1a…接着剤パターン、2…カバーフィルム、3…基材、4…マスク、5…複合フィルム、6…粘着剤層、7…ガラス基板、8…半導体ウェハ、9…導電層、11…開口、12,12a,12b…半導体素子(半導体チップ)、13…半導体素子搭載用支持部材(支持部材)、14,14a,14b…ワイヤ、15…封止材、16…端子、17…有効画素領域、18…回路面、20…接着剤層付半導体ウェハ、30…ダイボンディング材、32…導電性バンプ、38…レンズ、40…ダイシングテープ、42…嵌め込み用部材、50…側壁、100…接着シート、200…半導体装置、300…CMOSセンサ、D…ダイシングライン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フィルム形成能を有する樹脂と、(B)エチレン性不飽和基及びエポキシ基を有する化合物と、(C)光開始剤と、を含む感光性接着剤組成物。
【請求項2】
前記(A)フィルム形成能を有する樹脂のTgが150℃以下である、請求項1に記載の感光性接着剤組成物。
【請求項3】
前記(A)フィルム形成能を有する樹脂がアルカリ可溶性樹脂である、請求項2に記載の感光性接着剤組成物。
【請求項4】
前記(A)フィルム形成能を有する樹脂がポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂である、請求項2又は3に記載の感光性接着剤組成物。
【請求項5】
エポキシ樹脂を更に含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物をフィルム状に成形することにより得られる、フィルム状接着剤。
【請求項7】
基材と、該基材上に形成された請求項6に記載のフィルム状接着剤からなる接着剤層と、を備える接着シート。
【請求項8】
被着体上に積層された請求項6に記載のフィルム状接着剤からなる接着剤層を、露光し、露光後の前記接着剤層をアルカリ現像液により現像処理することにより得られる接着剤パターン。
【請求項9】
半導体ウェハと、該半導体ウェハ上に積層された請求項6に記載のフィルム状接着剤からなる接着剤層と、を備える接着剤層付半導体ウェハ。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物を用いて、半導体素子同士、及び/又は、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とが接着された構造を有する半導体装置。
【請求項11】
前記半導体素子搭載用支持部材が透明基板である、請求項10に記載の半導体装置。
【請求項1】
(A)フィルム形成能を有する樹脂と、(B)エチレン性不飽和基及びエポキシ基を有する化合物と、(C)光開始剤と、を含む感光性接着剤組成物。
【請求項2】
前記(A)フィルム形成能を有する樹脂のTgが150℃以下である、請求項1に記載の感光性接着剤組成物。
【請求項3】
前記(A)フィルム形成能を有する樹脂がアルカリ可溶性樹脂である、請求項2に記載の感光性接着剤組成物。
【請求項4】
前記(A)フィルム形成能を有する樹脂がポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂である、請求項2又は3に記載の感光性接着剤組成物。
【請求項5】
エポキシ樹脂を更に含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物をフィルム状に成形することにより得られる、フィルム状接着剤。
【請求項7】
基材と、該基材上に形成された請求項6に記載のフィルム状接着剤からなる接着剤層と、を備える接着シート。
【請求項8】
被着体上に積層された請求項6に記載のフィルム状接着剤からなる接着剤層を、露光し、露光後の前記接着剤層をアルカリ現像液により現像処理することにより得られる接着剤パターン。
【請求項9】
半導体ウェハと、該半導体ウェハ上に積層された請求項6に記載のフィルム状接着剤からなる接着剤層と、を備える接着剤層付半導体ウェハ。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の感光性接着剤組成物を用いて、半導体素子同士、及び/又は、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とが接着された構造を有する半導体装置。
【請求項11】
前記半導体素子搭載用支持部材が透明基板である、請求項10に記載の半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
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【図26】
【図27】
【公開番号】特開2010−270293(P2010−270293A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202904(P2009−202904)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
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