説明

感光性樹脂組成物及びその硬化物

活性エネルギー線に対する感光性(光感度)に優れ、短時間で硬化し、希アルカリ水溶液による現像によりパターン形成できると共に、後硬化(ポストキュア)工程で熱硬化させて得られる硬化膜が十分なフレキシブル性を有し、高絶縁性で密着性、金メッキ耐性、無電解金メッキ耐性、スズメッキ耐性に優れたソルダーマスクインキに適する樹脂組成物及びその硬化物が望まれているところ、▲1▼ジイソシアネート化合物(a)、分子中にエチレン性不飽和基を有するジオール化合物(b)、分子中にカルボキシル基を有するジオール化合物(c)、任意成分として、分子中にエチレン性不飽和基またはカルボキシル基を有しないジオール化合物(d)を無触媒下でウレタン化反応させ、環状酸無水物(e)を反応させて得られるアルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)、▲2▼光重合開始剤(B)、▲3▼反応性架橋剤(C)を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、無触媒下でウレタン化反応を行い、次いで環状酸無水物と反応をして得られるアルカリ水溶液可溶性ポリウレタン樹脂を用いた感光性樹脂組成物及びその硬化物の製造法等に関し、さらに詳しくは、フレキシブルプリント配線板用ソルダーマスク、多層プリント配線板用層間絶縁膜、感光性光導波路等として有用な、現像性、フレキシブル性、密着性、半田耐熱性、耐薬品性、耐メッキ性、高絶縁性等に優れた硬化物を与える樹脂組成物並びにその硬化物の製造法、その硬化物の層を有する基材等に関する。
【背景技術】
現在、一部の民生用プリント配線板及びほとんどの産業用プリント配線板のソルダーマスクは、フォトリソグラフ法を利用した、即ち、露光して硬化後に現像処理をすることによって画像形成し、さらに熱及び/または光照射で仕上げ硬化する光硬化型組成物を使用したものである。そして、環境問題への配慮から、現像液として希アルカリ水溶液を用いるアルカリ現像タイプのソルダーマスク用液状組成物の使用が主流になっている。このような希アルカリ水溶液を用いるアルカリ現像タイプのソルダーマスク用液状組成物としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸の反応生成物に酸無水物を付加した感光性樹脂、光重合開始剤、架橋剤、及びエポキシ樹脂からなるソルダーマスク用組成物が知られている(特許文献1等)。しかしながら、この組成物の硬化物は硬く、近年の携帯機器のような分野に多く使用されつつあるボールグリッドアレイ(以下BGAという)基板やフレキシブル基板へ適用すると、表面にクラックが生じたり基板の折り曲げに追随できないという不具合を生ずる。
この、BGA基板やフレキシブル基板に適用する材料として、多官能ビスフェノール系エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応物に多塩基酸無水物を反応させて得られる多塩基酸無水物変性エポキシアクリレート樹脂とウレタンアクリレート等を使用した組成物が特許文献2に記載されている。しかしながら、これを用いた場合、表面の耐クラック性は改善されるものの、フレキシブル性の点でまだ不十分であり極度の折り曲げに関しては追随できない点が課題であった。
さらに、ジエポキシドのエポキシ基1モルに対して1分子中に平均1個のカルボキシル基と平均1個のエチレン性不飽和基を含有する数平均分子量72〜1000のエチレン性不飽和カルボン酸0.8〜1.2モルを反応させてなる水酸基含有不飽和樹脂、カルボキシル基含有ジオール化合物、ジイソシアネート化合物及び必要に応じてポリオール化合物を反応させてなる不飽和基含有ウレタン樹脂を含有する樹脂組成物が特許文献3及び特許文献4に開示されている。しかしながら、樹脂設計上、分子量を上げようとした場合、樹脂の酸価も大きくなること、また、感度を高めようとエチレン性不飽和基の含有量を上げようとした場合、樹脂の酸価が低下してしまう等、分子量、感度、現像性のバランスをとることが困難であり、ソルダーマスク組成物の最適化に問題があった。
特許文献5には、1分子中に1.2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と不飽和一塩基酸とを反応させて得られるビニルエステル樹脂等からなるウレタン変性ビニルエステル樹脂に多塩基酸無水物を付加させて得られるウレタン変性酸付加ビニルエステル樹脂を含む光重合性樹脂組成物が開示されているが、ここに示されているウレタン変性ビニルエステル樹脂はウレタン製造時に触媒を用いており、その硬化物は絶縁性の低下等の電気特性が課題となっていた。
【特許文献1】特開昭61−243869号公報
【特許文献2】日本特許2868190号公報
【特許文献3】特開2001−33959号公報
【特許文献4】特開2001−33960号公報
【特許文献5】特開平9−52925号公報
プリント配線板は、携帯機器の小型軽量化や通信速度の向上をめざして高精度、高密度化が求められており、それに伴いソルダーマスクへの要求もますます高度となり、よりフレキシブル性を保ちながら金メッキ耐性、無電解金メッキ耐性、スズメッキ耐性、基板密着性、高絶縁性等の電気特性の向上が要求されている。しかしながら、現在知られているソルダーマスクでは、これら要求に十分に対応できていない。
【発明の開示】
本発明の目的は、今日のプリント配線板の高機能に対応し得る微細な画像を描画可能な活性エネルギー線に対する感光性に優れ、希アルカリ水溶液による現像によりパターン形成できると共に、後硬化(ポストキュア)工程として熱硬化させて得られる硬化膜が十分なフレキシブル性を有し、高絶縁性で密着性、金メッキ耐性、無電解金メッキ耐性、スズメッキ耐性に優れ、剥がれやふくれが起きない信頼性を有するソルダーマスクインキ、特にフレキシブルプリント配線板用ソルダーマスク、多層プリント配線板用層間絶縁膜または感光性光導波路等に適する樹脂組成物及びその硬化物を提供することにある。
本発明者らは前述の目的を達成するため、鋭意研究の結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、
(1)▲1▼ジイソシアネート化合物(a)、分子中にエチレン性不飽和基を有するジオール化合物(b)、分子中にカルボキシル基を有するジオール化合物(c)、任意成分として、分子中にエチレン性不飽和基またはカルボキシル基を有しないジオール化合物(d)を無触媒下でウレタン化反応させ、環状酸無水物(e)を反応させて得られるアルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)、
▲2▼光重合開始剤(B)、
▲3▼反応性架橋剤(C)
を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物;
(2)さらに、任意成分として硬化成分(D)を含有することを特徴とする上記(1)記載の感光性樹脂組成物;
(3)アルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)の固形分酸価が30〜150mgKOH/gである上記(1)または(2)に記載の感光性樹脂組成物;
(4)分子中にエチレン性不飽和基を有するジオール化合物(b)が、分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸または桂皮酸との反応生成物であり、環状酸無水物(e)が2塩基酸1無水物及び/または3塩基酸1無水物である上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物;
(5)ジイソシアネート化合物(a)がイソホロンジイソシアネート及び/またはトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートであり、分子中にエチレン性不飽和基を有するジオール化合物(b)が、ビスフェノール−A型エポキシ樹脂とメタクリル酸との反応生成物であり、分子中にカルボキシル基を有するジオール化合物(c)がジメチロールプロピオン酸であり、環状酸無水物(e)が無水コハク酸である上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物;
(6)アルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)が、ビスフェノール−A型エポキシ樹脂とメタクリル酸との反応生成物と、ジメチロールプロピオン酸の混合物にトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを加えて反応させ、次いで無水コハク酸を反応させて得られる樹脂である上記(1)または(2)に記載の感光性樹脂組成物;
(7)ビスフェノール−A型エポキシ樹脂のエポキシ当量が100〜900g/当量である上記(5)または(6)に記載の感光性樹脂組成物;
(8)アルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)を得る反応に際し、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアネート基に対する、ビスフェノール−A型エポキシ樹脂とメタクリル酸との反応生成物と、ジメチロールプロピオン酸の混合物中の水酸基の当量比が、1.1〜2.0である上記(6)記載の感光性樹脂組成物;
(9)上記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射することを特徴とする硬化物の製造法;
(10)上記(9)記載の製造法による硬化物の層を有する基材;
(11)上記(10)記載の基材を有する物品;
(12)上記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化し、アルカリ処理及び/または熱処理する工程を含むことを特徴とするフレキシブルプリント配線板用ソルダーマスク、多層プリント配線板用層間絶縁膜または感光性光導波路の製造法;
に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の感光性樹脂組成物は、▲1▼ジイソシアネート化合物(a)、分子中にエチレン性不飽和基を有するジオール化合物(b)、分子中にカルボキシル基を有するジオール化合物(c)、任意成分として、分子中にエチレン性不飽和基またはカルボキシル基を有しないジオール化合物(d)を無触媒下でウレタン化反応させ、環状酸無水物(e)を反応させて得られるアルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)、▲2▼光重合開始剤(B)、▲3▼反応性架橋剤(C)を含有することを特徴とし、さらに、任意成分として硬化成分(D)を含有することを特徴とする。
本発明の感光性樹脂組成物に使用されるアルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)製造におけるジイソシアネート化合物(a)としては、分子中に2個のイソシアネート基を有するものであれば特に限定されず、また同時に複数種のジイソシアネート化合物を使用してもよい。なかでも柔軟性等の点から優れたジイソシアネート化合物としては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリデンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、アリレンスルホンエーテルジイソシアネート、アリルシアンジイソシアネート、N−アシルジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンまたはノルボルナン−ジイソシアネートメチルが挙げられ、イソホロンジイソシアネートまたはトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが特に好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物に使用されるアルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)製造における分子中にエチレン性不飽和基を有するジオール化合物(b)としては、分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸または桂皮酸との反応生成物が好ましく、ビスフェノール−A型エポキシ樹脂または水素化ビスフェノール−A型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物が特に好ましい。分子中にエチレン性不飽和基を有するジオール化合物の具体例としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応生成物、ジメチロールプロピオン酸と2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとの反応生成物、ジメチロールブタン酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応生成物、ジメチロールブタン酸と2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとの反応生成物、分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸または桂皮酸との反応生成物、分子中に2個のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物とグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物等が挙げられる。
分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物とは、例えば、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、カテコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル等のフェニルジグリシジルエーテル;ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、ビスフェノール−F型エポキシ樹脂、ビスフェノール−S型エポキシ樹脂、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンのエポキシ化合物等のビスフェノール型エポキシ化合物;水素化ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノール−F型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノール−S型エポキシ樹脂、水素化2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンのエポキシ化合物等の水素化ビスフェノール型エポキシ化合物;臭素化ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール−F型エポキシ樹脂等のハロゲノ化ビスフェノール型エポキシ化合物;シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル化合物等の脂環式ジグリシジルエーテル化合物;1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル等の脂肪族ジグリシジルエーテル化合物;ポリサルファイドジグリシジルエーテル等のポリサルファイド型ジグリシジルエーテル化合物;ビフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
分子中に2個のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物とは、例えば、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)エーテル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン、4,4’−ビフェノール、3,3’−ビフェノール等が挙げられる。
本発明の感光性樹脂組成物に使用されるアルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)製造における分子中にエチレン性不飽和基を有するジオール化合物(b)として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とメタクリル酸との反応物が殊更好ましい。活性エネルギー線照射により硬化物を得る際の感度及び硬化物の柔軟性の点からメタクリル酸が選ばれる。
ビスフェノール−A型エポキシ樹脂としては、特にエポキシ当量が100〜900g/当量のエポキシ化合物が好ましい。エポキシ当量が100未満の場合、得られるアルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)の分子量が小さく成膜が困難となったり、フレキシブル性が十分得られなくなる恐れが有り、また、エポキシ当量が900を超える場合、メタクリル酸の導入率が低くなり感光性(光感度)が低下する恐れがある。
本発明においてエポキシ当量とは、通常用いられている意味と同様に、1g当量のエポキシ基を含むエポキシ化合物の質量のことであり、g/当量の単位で表し、通常はJIS K 7236記載の方法により測定される。
本発明の感光性樹脂組成物に使用されるアルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)の製造に用いられるビスフェノール−A型エポキシ樹脂としては特に限定されず、例えば、市販品としての、エピコート828、エピコート1001、エピコート1002、エピコート1003、エピコート1004(いずれもジャパンエポキシレジン(株)製)、エポミックR−140、エポミックR−301、エポミックR−304(いずれも三井化学(株)製)、D.E.R−331、D.E.R−332、D.E.R−324(いずれもダウ・ケミカル(株)製)、エピクロン840、エピクロン850(いずれも大日本インキ(株)製)、UVR−6410(ユニオンカーバイド(株)製)、YD−8125(東都化成(株)製)等が挙げられ、特に好ましくはアルコール性水酸基を有しないビスフェノール−A型エポキシ樹脂であるところの、例えば、RE310S(日本化薬(株)製)等である。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂とメタクリル酸との反応における原料の仕込み割合としては、メタクリル酸を、ビスフェノール−A型エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対し80〜120当量%であることが好ましい。この範囲を逸脱した場合、第二の反応中にゲル化を引き起こす恐れや、最終的に得られるアルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)の熱安定性が低くなる恐れがある。
反応時には、反応を促進させるために触媒を使用することが好ましく、該触媒の使用量は、反応物に対して0.1〜10重量%である。使用する触媒の具体例としては、例えばトリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、塩化トリエチルアンモニウム、臭化ベンジルトリメチルアンモニウム、沃化ベンジルトリメチルアンモニウム、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン、メチルトリフェニルスチビン、オクタン酸クロム、オクタン酸ジルコニウム等が挙げられる。反応温度は60〜150℃であり、また、反応時間は後記する酸価の値のモニタリングにより適宜決められるが、凡そ5〜60時間である。
また、熱重合禁止剤として、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2−メチルヒドロキノン、ヒドロキノン、ジフェニルピクリルヒドラジン、ジフェニルアミン、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール等を使用するのが好ましい。
反応液の酸価が1mgKOH/g以下、好ましくは0.5mgKOH/g以下となった時点を終点とする。
本発明において固形分酸価とは、樹脂1g中のカルボン酸の酸性を中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg)であり、また、酸価とは樹脂を含む溶液1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg)であり、JIS K0070に準じて、通常の中和滴定法により測定される。また、溶液中の該樹脂の濃度がわかれば、溶液の酸価から固形分酸価を計算して求めることもできる。
アルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)における分子中にカルボキシル基を有するジオール化合物(c)とは、分子中に2個のアルコール性水酸基と1個以上のカルボキシル基を同時に有する化合物であり、特に限定されないが、組成物の現像液として用いるアルカリ水溶液に良好な溶解性を示すジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸)が特に好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物に使用されるアルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)製造における任意成分としてのジオール化合物(d)としては、分子中にエチレン性不飽和基またはカルボキシル基を有せず、2個のアルコール性水酸基が相違なる炭素原子に結合している脂肪族ジオール化合物あるいは脂環式ジオール化合物が挙げられ、このジオール化合物の具体例としては、例えば、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ヒドロベンゾイン、ベンズピナコール、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジメタノール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、末端に水酸基を有するブタジエン−アクリロニトリル共重合体(例えば、宇部興産(株)製AT×013)、末端に水酸基を有するスピログリコール(例えば3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等)、末端に水酸基を有するジオキサングリコール(例えば2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−エチル−5−ヒドロキシ−1,3−ジオキサン等)、末端に水酸基を有するトリシクロデカン−ジメタノール、末端に水酸基を有しポリスチレンを側鎖に持つマクロモノマー(例えば、東亞合成(株)製HS−6等)、末端に水酸基を有しポリスチレン−アクリロニトリル共重合体を側鎖に持つマクロモノマー(例えば、東亞合成(株)製HN−6等)等のジオール化合物、水素化ビスフェノール−A、水素化ビスフェノール−F、若しくは、これらのジオール化合物とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のオキサイド類との反応物等が挙げられる。
本発明の感光性樹脂組成物に使用されるアルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)製造において環状酸無水物(e)としては、2塩基酸が分子内で酸無水物を形成している2塩基酸1無水物、3塩基酸の任意の2個のカルボキシル基が分子内で酸無水物を形成している3塩基酸1無水物、若しくはそれら酸1無水物の混合物である。2塩基酸1無水物の具体例としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、好ましくは無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸である。また、3塩基酸1無水物の具体例としては、例えば、無水トリメリット酸、テトラヒドロ無水トリメリット酸、ヘキサヒドロ無水トリメリット酸が挙げられ、好ましくは無水トリメリット酸である。
中でも、無水コハク酸(d)を用いて製造されるアルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)は、特に現像性に優れる。
本発明の感光性樹脂組成物に使用されるアルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)は、例えば、次のようにして合成することができる。即ち、無溶剤もしくはアルコール性水酸基を有さない溶媒、具体的には例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、グルタル酸ジアルキル(例えば、グルタル酸ジメチル等)、コハク酸ジアルキル(例えば、コハク酸ジメチル等)、アジピン酸ジアルキル(例えば、アジピン酸ジメチル等)等のエステル類、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤、さらには後述する反応性架橋剤(C)等の単独または混合溶媒中に、前述の分子中にエチレン性不飽和基を有するジオール化合物(b)、分子中にカルボキシル基を有するジオール化合物(c)、任意成分として、分子中にエチレン性不飽和基またはカルボキシル基を有しないジオール化合物(d)を所望の割合で混合しておき、必要に応じて加熱し、これにジイソシアネート化合物(a)を徐々に加え、ジブチルチンジラウレート等の有機金属化合物等の触媒を使用せずにウレタン化反応(以下第一反応という)を行った後、残存するアルコール性水酸基に環状酸無水物(e)を反応(以下第二反応という)させて得られる。
第一反応の各成分仕込み量において、分子中にカルボキシル基を有するジオール化合物(c)は、反応終了時の固形分酸価が10〜120mgKOH/gとなるような計算量を添加し反応させる。
また、ジイソシアネート化合物(a)としては、第一反応において、化合物(b)のモル数、化合物(c)のモル数及び化合物(d)のモル数の総和を、化合物(a)のモル数で割った値が1〜5の範囲になるように仕込むことが好ましい。この値が1未満の場合、第一反応終了時に得られる化合物の末端にイソシアネート基が残存することになり、ゲル化する恐れがあるので好ましくない。また、この値が5を超える場合、アルカリ水溶液可溶性ポリウレタン樹脂(A)の分子量が低くなり、タック性の問題や活性エネルギー線に対して低感度という問題が生じやすい。
具体的に説明すると、第一反応は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とメタクリル酸との反応液にジメチロールプロピオン酸を加え分散液、または溶液とした後、さらに、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及び/またはイソホロンジイソシアネートを徐々に加え反応させるウレタン化反応である。
第一反応の反応温度としては40〜120℃であり、また、反応時間は後記の赤外線吸収スペクトルのモニタリングにより適宜決められるが、凡そ5〜60時間である。なお、この際、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とメタクリル酸との反応に用いられる前記熱重合禁止剤を使用してもよい。
反応は反応液の赤外線吸収スペクトルにおけるイソシアネート基に因る2250cm−1付近の吸収がなくなる時点を終点とする。
第一反応においてトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(a’)は、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(a’)のイソシアネート基に対する、ビスフェノール−A型エポキシ樹脂のメタクリル酸反応物(b’)とジメチロールプロピオン酸(c’)混合物中の水酸基の当量比が1.1〜2.0の範囲になるように仕込むことが好ましい。即ち、該当量比はビスフェノール−A型エポキシ樹脂がアルコール性水酸基を有しない場合には、(化合物(b’)のモル数+化合物(c’)のモル数)/(化合物(a’)のモル数)により求められる。この値が1.1未満の場合、本発明のアルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)の末端にイソシアネートが残存することになり、熱安定性が低く保存中にゲル化する恐れがあるので好ましくない。また、この値が2を超える場合、アルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)の分子量が低くなり、硬化物のタック性の問題や硬化の際に活性エネルギー線に対する光感度の低下という問題が生じる恐れがある。
第二反応は、第一反応で得られた化合物の末端のアルコール性水酸基に環状酸無水物(e)を付加させる反応である。前述の条件で製造した化合物の末端は、アルコール性水酸基が残存しており、これに、例えば、2塩基酸1無水物及び/または3塩基酸1無水物、具体的には例えば、無水コハク酸を反応させハーフエステルとすることで、現像性に寄与する酸価を調整するとともに、さらに後述する硬化剤(D)を含有する場合には、それとの反応による直線的な及び/または梯子的な分子量増大効果により組成物の耐熱性をより上げることができる。
環状酸無水物(e)の仕込み量としては、第一反応で残存した水酸基当量以下で、且つ、本発明の感光性樹脂に使用されるアルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)の固形分酸価が、30〜150mgKOH/gの範囲になる計算量を仕込むことが好ましい。この固形分酸価が30mgKOH/g未満の場合、感光性樹脂組成物のアルカリ水溶液可溶性が著しく低下し、最悪の場合現像処理ができず、その結果パターニングができなくなる。また、逆に固形分酸価が、150mgKOH/gを超えると、アルカリ水溶液可溶性が大きくなりすぎ、密着性の低下やパターンの流れ等の不具合を生じやすく好ましくない。
第二反応の際には、環状酸無水物(e)、特に2塩基酸1無水物及び/または3塩基酸1無水物とアルコール性水酸基との反応性を高めるため、触媒を用いることもできる。この触媒の具体例としては、例えば、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、塩化トリエチルアンモニウム、臭化ベンジルトリメチルアンモニウム、沃化ベンジルトリメチルアンモニウム、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、ジフェニルスルフィド、ジメチルスルフィド等が挙げられる。反応温度としては、60〜130℃が好ましい。
アルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)の製造における各成分の仕込み量について、ジメチロールプロピオン酸及び無水コハク酸は、本発明のアルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)の固形分酸価が30〜150mgKOH/gとなるように計算して添加するのがよい。固形分酸価が30mgKOH/g未満の場合、アルカリ水溶液に対する溶解性が不十分であり、パターニングを行った場合、残渣として残る恐れや最悪の場合パターニングができなくなる。また、固形分酸価が150mgKOH/gを超える場合、アルカリ水溶液に対する溶解性が高くなりすぎ光硬化したパターンが剥離する等の恐れがあり好ましくない。
本発明の感光性樹脂組成物に用いる前述のアルカリ水溶液可溶性ポリウレタン樹脂(A)の含有割合は、感光性樹脂組成物の固形分を100重量%としたとき、通常15〜70重量%、好ましくは、20〜60重量%である。
こうして得られたアルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)は、溶剤を使用して製造した場合、これを適当な方法で除去することにより単離し感光性樹脂組成物として使用してもよいが、溶剤を除去せずに液剤として使用してもよい。
本発明に使用されるアルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)は当然アルカリ水溶液に可溶であるが、上述した製造に使用可能な有機溶媒にも可溶であり、ソルダーレジスト、メッキレジスト等として使用する場合、溶剤で現像することも可能である。
本発明の感光性樹脂組成物には、前述のアルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)、光重合開始剤(B)及び反応性架橋剤(C)を含有することを特徴とし、さらに、任意成分として硬化成分(D)を含有することを特徴とする。
本発明の感光性樹脂組成物に含有される光重合開始剤(B)としては、通常の光重合硬化に用いられる化合物が全て挙げられるが、具体的には例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン等のアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類等が挙げられる。光重合開始剤(B)の含有割合としては、感光性樹脂組成物の固形分を100重量%としたとき、通常1〜30重量%、好ましくは2〜25重量%である。
これらは、単独または2種以上の混合物として使用でき、さらにはトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等の第3級アミン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル等の安息香酸誘導体等の反応促進剤と組み合わせて使用することができる。これらの反応促進剤の添加量としては、光重合開始剤(B)に対して、100重量%以下となる量を必要に応じて添加する。
本発明の感光性樹脂組成物に用いられる反応性架橋剤(C)としては(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられ、具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、水酸基含有(メタ)アクリレートと多カルボン酸化合物の酸無水物との反応物であるハーフエステル、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールとε−カプロラクトンとの反応物のジ(メタ)アクリレート(例えば、日本化薬(株)製、KAYARAD HX−220、HX−620等)、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールとε−カプロラクトンとの反応物のポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、モノまたはポリグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
反応性架橋剤(C)としての水酸基含有(メタ)アクリレートと多カルボン酸化合物の酸無水物の反応物であるハーフエステルにおける水酸基含有(メタ)アクリレートとは、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
多カルボン酸化合物の酸無水物としては例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
反応性架橋剤(C)としてのモノまたはポリグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレートにおけるモノまたはポリグリシジル化合物とは、例えば、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、グリセリンポリグリシジルエーテル、グリセリンポリエトキシグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリエトキシポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
反応性架橋剤(C)の含有割合としては、感光性樹脂組成物の固形分を100重量%としたとき、通常2〜40重量%、好ましくは3〜30重量%である。
本発明の感光性樹脂組成物に任意成分として使用してもよい硬化成分(D)としては、エポキシ化合物、オキサジン化合物等が挙げられる。硬化成分(D)は、光硬化後の樹脂塗膜に残存するカルボキシル基等と加熱により反応し、さらに強固な薬品耐性を有する硬化塗膜を得ようとする場合に特に好ましく用いられる。
硬化成分(D)としてのエポキシ化合物の具体例としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、ビスフェノール−F型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール−Aノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロンN−770(大日本インキ化学工業(株)製)、D.E.N438(ダウ・ケミカル社製)、エピコート154(ジャパンエポキシレジン(株)製)、RE−306(日本化薬(株)製)等が挙げられる。
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロンN−695(大日本インキ化学工業(株)製)、EOCN−102S、EOCN−103S、EOCN−104S(いずれも日本化薬(株)製)、UVR−6650(ユニオンカーバイド社製)、ESCN−195(住友化学工業(株)製)等が挙げられる。
トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂としては、例えばEPPN−503、EPPN−502H、EPPN−501H(いずれも日本化薬(株)製)、TACTIX−742(ダウ・ケミカル社製)、エピコートE1032H60(ジャパンエポキシレジン(株)製)等が挙げられる。
ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロンEXA−7200(大日本インキ化学工業(株)製)、TACTIX−556(ダウ・ケミカル社製)等が挙げられる。
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えばエピコート828、エピコート1001(いずれもジャパンエポキシレジン(株)製)、UVR−6410(ユニオンカーバイド社製)、D.E.R−331(ダウ・ケミカル社製)、YD−8125(東都化成(株)製)等のビスフェノール−A型エポキシ樹脂;UVR−6490(ユニオンカーバイド社製)、YDF−8170(東都化成(株)製)等のビスフェノール−F型エポキシ樹脂等が挙げられる。
ビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、NC−3000、NC−3000H(いずれも日本化薬(株)製)等のビフェノール型エポキシ樹脂、YX−4000(ジャパンエポキシレジン(株)製)のビキシレノール型エポキシ樹脂、YL−6121(ジャパンエポキシレジン(株)製)等が挙げられる。
ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロンN−880(大日本インキ化学工業(株)製)、エピコートE157S75(ジャパンエポキシレジン(株)製)等が挙げられる。また、YX−8000(ジャパンエポキシレジン(株)製)等も使用可能である。
ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂としては、例えばNC−7000、NC−7300(いずれも日本化薬(株)製)、EXA−4750(大日本インキ化学工業(株)製)等が挙げられる。
脂環式エポキシ樹脂としては、例えばEHPE−3150(ダイセル化学工業(株)製)等が挙げられる。複素環式エポキシ樹脂としては、例えばTEPIC−L、TEPIC−H、TEPIC−S(いずれも日産化学工業(株)製)等が挙げられる。
硬化成分(D)としてのオキサジン化合物の具体例としては、例えば、B−m型ベンゾオキサジン、P−a型ベンゾオキサジン、B−a型ベンゾオキサジン(いずれも四国化成工業(株)製)が挙げられる。
硬化成分(D)として好ましくは、ビフェノール型エポキシ樹脂であるNC−3000やYX−4000、複素環式エポキシ樹脂であるTEPIC−L、TEPIC−H、TEPIC−S等が挙げられる。
硬化成分(D)の添加割合としては、本発明のアルカリ水溶液可溶性ポリウレタン樹脂(A)の固形分酸価と使用量から計算された当量の200%以下の量が好ましい。この量が200%を超えると本発明の感光性樹脂組成物の現像性が著しく低下し好ましくない。
さらに必要に応じて各種のフィラーや添加剤等、例えば、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、シリカ、クレー等の充填剤;アエロジル等のチキソトロピー付与剤;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン等の着色剤;シリコーン、フッ素系のレベリング剤や消泡剤;ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤等を組成物の諸性能を高める目的で添加することができる。
また、熱硬化触媒として、例えばメラミン等を添加してもよい。
なお、前述の硬化成分(D)を使用する場合、予め前記樹脂組成物に混合してもよいが、プリント配線板への塗布前に混合して用いることもできる。即ち、前記(A)成分を主体とし、これにエポキシ硬化促進剤等を配合した主剤溶液と、硬化成分(D)を主体とした硬化剤溶液の二液型に配合し、使用に際してこれらを混合して用いる方法である。この際、B成分及びC成分は適宜、主剤溶液または硬化剤溶液に配合して用いる。溶液として使用する場合の溶媒としては、アルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)合成の際の溶媒をそのまま用いてもよく、また、ウレタン化反応の際の溶媒として例示した溶媒を別途使用しても、混合して用いてもよい。
本発明の感光性樹脂組成物は、樹脂組成物が支持フィルムと保護フィルムでサンドイッチされた構造からなるドライフィルム型のソルダーマスクとして用いることもできる。
本発明の感光性樹脂組成物(液状またはフィルム状)は、電子部品の層間の絶縁材、光部品間を接続する光導波路やプリント基板用のソルダーマスク、カバーレイ等のレジスト材料として有用である他、カラーフィルター、印刷インキ、封止剤、塗料、コーティング剤、接着剤等としても使用できる。
本発明には、上記の感光性樹脂組成物に紫外線等の活性エネルギー線照射により硬化させる硬化物の製造法も含まれる。紫外線等の活性エネルギー線照射による硬化は常法により行うことができ、例えば紫外線を照射する場合、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、紫外線発光レーザー(エキシマーレーザー等)等の紫外線発生装置を用いればよい。
本発明の感光性樹脂組成物の硬化物は、基材、例えばレジスト膜、ビルドアップ工法用の層間絶縁膜や光導波路としてプリント基板、光電子基板や光基板のような電気・電子・光部品に使用される。これらの基材を有する物品の具体例としては、例えば、コンピューター、液晶ディスプレイ等の家庭電化製品、携帯電話等の携帯機器等が挙げられる。
この硬化物層の膜厚は0.5〜160μm程度で、1〜100μm程度が好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物を塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化し、アルカリ処理及び/または熱処理する工程を含むことを特徴とするフレキシブルプリント配線板用ソルダーマスク、多層プリント配線板用層間絶縁膜または感光性光導波路の製造法も本発明に含まれる。例えば、フレキシブルプリント配線板について具体的に説明すると、液状の樹脂組成物を使用する場合、プリント配線用基板に、スクリーン印刷法、スプレー法、ロールコート法、静電塗装法、カーテンコート法等の方法により0.5〜160μmの膜厚で本発明の感光性樹脂組成物を塗布し、通常50〜110℃、好ましくは60〜100℃の温度で乾燥させ、塗膜を形成する。
その後、ネガフィルム等の露光パターンを形成したフォトマスクを通して塗膜に直接または間接に、紫外線等の活性エネルギー線を通常10〜2000mJ/cm程度の強さで照射し、未露光部分を後述する現像液を用いて、例えば、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッビング等により現像する。必要に応じてさらに紫外線等の活性エネルギー線を照射し、次いで通常100〜200℃、好ましくは140〜180℃の温度で加熱処理をすることにより、金メッキ性に優れ、反そり性、高絶縁性、耐熱性、耐溶剤性、耐酸性、密着性、屈曲性等の諸特性を満足する永久保護膜を有するプリント配線板を得る。
上記現像に使用するアルカリ水溶液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等の無機アルカリ水溶液やテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリ水溶液が挙げられる。
【実施例】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでない。
合成例1
2Lの4口フラスコに、分子中にエチレン性不飽和基を有するジオール化合物(b)としてカヤラッドR−115(商品名:日本化薬(株)製 ビスフェノール−A型エポキシアクリレート 分子量508.52)を508.52g(1.000モル)、分子中にカルボキシル基を有するジオール化合物(c)としてジメチロールプロピオン酸を134.93g(1.006モル)、ジイソシアネート化合物(a)としてイソホロンジイソシアネートを297.26g(1.337モル)、溶剤としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを561.04g及び熱重合禁止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを4.81g仕込み、赤外吸収スペクトル測定法により、2250cm付近の吸収がなくなるまで60℃の温度で3時間、80℃の温度で4時間反応させた。反応後の固形分酸価を測定したところ、60mgKOH/gであった。次いで、この反応溶液に、環状酸無水物(e)としてテトラヒドロ無水フタル酸を101.22g(0.665モル)及び反応触媒として4−ジメチルアミノピリジンを0.16g加え、95℃の温度で4時間反応させ、アルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)を65重量%含む樹脂溶液を得た。この樹脂溶液をA−1とする。酸価を測定したところ、59mgKOH/g(固形分酸価:91mgKOH/g)であった。
合成例2
2Lの4口フラスコに、分子中にエチレン性不飽和基を有するジオール化合物(b)としてカヤラッドR−9467(商品名:日本化薬(株)製 ビスフェノール−A型エポキシメタクリレート 分子量540.18)を540.18g(1.000モル)、分子中にカルボキシル基を有するジオール化合物(c)としてジメチロールプロピオン酸を139.20g(1.038モル)、ジイソシアネート化合物(a)としてイソホロンジイソシアネートを100.66g(0.453モル)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを190.43g(0.906モル)、溶剤としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを578.76g及び熱重合禁止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを4.81g仕込み、赤外吸収スペクトル測定法により、2250cm−1付近の吸収がなくなるまで60℃の温度で3時間、80℃の温度で4時間反応させた。反応後の固形分酸価を測定したところ、60mgKOH/gであった。次いで、この反応溶液に、環状酸無水物(e)としてテトラヒドロ無水フタル酸を104.37g(0.686モル)及び反応触媒として4−ジメチルアミノピリジンを、0.16g加え、95℃の温度で4時間反応させ、アルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)を65重量%含む樹脂溶液を得た。この樹脂溶液をA−2とする。酸価を測定したところ、58mgKOH/g(固形分酸価:89mgKOH/g)であった。
合成例3
2Lの4口フラスコに、分子中にエチレン性不飽和基を有するジオール化合物(b)としてカヤラッドR−115(商品名:日本化薬(株)製 ビスフェノール−A型エポキシアクリレート 分子量508.52)を508.52g(1.000モル)、分子中にカルボキシル基を有するジオール化合物(c)としてジメチロールプロピオン酸を104.88g(0.782モル)、ジイソシアネート化合物(a)としてイソホロンジイソシアネートを264.06g(1.188モル)、溶剤としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを510.76g及び熱重合禁止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを4.81g仕込み、赤外吸収スペクトル測定法により、2250cm付近の吸収がなくなるまで60℃の温度で3時間、80℃の温度で4時間反応させた。反応後の固形分酸価を測定したところ、50mgKOH/gであった。次いで、この反応溶液に、環状酸無水物(e)として無水トリメリット酸を71.09g(0.370モル)及び反応触媒として4−ジメチルアミノピリジンを0.16g加え、95℃の温度で4時間反応させ、アルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)を65重量%含む樹脂溶液を得た。この樹脂溶液をA−3とする。酸価を測定したところ、60mgKOH/g(固形分酸価:92mgKOH/g)であった。
合成例4
2Lの4口フラスコに、分子中にエチレン性不飽和基を有するジオール化合物(b)としてカヤラッドR−9467(商品名:日本化薬(株)製 ビスフェノール−A型エポキシメタクリレート 分子量540.18)を540.18g(1.000モル)、分子中にカルボキシル基を有するジオール化合物(c)としてジメチロールプロピオン酸を261.38g(1.949モル)、ジイソシアネート化合物(a)としてトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを413.35g(1.966モル)、溶剤としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを678.49g及び熱重合禁止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール5.0g仕込み、赤外吸収スペクトル測定法により、2250cm−1付近の吸収がなくなるまで60℃の温度で3時間、80℃の温度で4時間反応させた。反応後の固形分酸価を測定したところ、90mgKOH/gであった。次いで、この反応溶液に、環状酸無水物(e)としてテトラヒドロ無水フタル酸を45.14g(0.297モル)及び反応触媒として4−ジメチルアミノピリジンを0.15g加え、95℃の温度で4時間反応させ、アルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)を65重量%含む樹脂溶液を得た。この樹脂溶液をA−4とする。酸価を測定したところ、66mgKOH/g(固形分酸価:102mgKOH/g)であった。
合成例5
4Lの4口フラスコに、分子中にエチレン性不飽和基を有するジオール化合物(b)としてカヤラッドR−9451(商品名:日本化薬(株)製 ビスフェノール−A型エポキシアクリレート 分子量512.12)を512.12g(1.000モル)、分子中にカルボキシル基を有するジオール化合物(c)としてジメチロールブタン酸508.01g(3.429モル)、分子中にエチレン性不飽和基またはカルボキシル基を有しないジオール化合物(d)として1,6−ヘキサンジオールを101.26g(0.857モル)、ジイソシアネート化合物(a)としてイソホロンジイソシアネートを903.77g(4.066モル)、溶剤としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを1350.11g及び熱重合禁止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを6.87g仕込み、赤外吸収スペクトル測定法により、2250cm−1付近の吸収がなくなるまで60℃の温度で3時間、80℃の温度で4時間反応させた。反応後の固形分酸価を測定したところ、95mgKOH/gであった。次いで、この反応溶液に、環状酸無水物(e)としてテトラヒドロ無水フタル酸を37.63g(0.247モル)及び溶剤としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを25.09g加え、95℃の温度で4時間反応させ、アルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)を60重量%含む樹脂溶液を得た。この樹脂溶液をA−5とする。酸価を測定したところ、60mgKOH/g(固形分酸価:100mgKOH/g)であった。
合成例6
攪拌装置、還流管をつけた3Lフラスコ中に、ビスフェノール−A型エポキシ樹脂としてRE310S(商品名:日本化薬(株)製 2官能ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、エポキシ当量:184g/当量)を368.0g、メタクリル酸(分子量:86.09)を172.2g、熱重合禁止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを4.37g及び反応触媒としてトリフェニルホスフィンを1.62g仕込み、98℃の温度で反応液の酸価が0.5mgKOH/g以下になるまで反応させ、分子中にエチレン性不飽和基を有するジオール化合物(b)(理論分子量:540.18)を得た。
続いて、この反応液に反応用溶媒としてカルビトールアセテートを757.4g、分子中にカルボキシル基を有するジオール化合物(c)としてジメチロールプロピオン酸(分子量:134.16)を319.4g加え、45℃に昇温させた。この溶液にジイソシアネート化合物(a)としてトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(分子量:210.27)を546.9g、反応温度が65℃を超えないように、徐々に滴下した。滴下終了後、温度を80℃に上昇させ、赤外吸収スペクトル測定法により、2250cm−1付近の吸収がなくなるまで6時間反応させた。
次いで、この反応溶液に、環状酸無水物(e)として無水コハク酸(分子量:100.07)を15.3g及び反応溶媒としてカルビトールアセテートを8.25g加え、98℃の温度で3時間反応させ、アルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)を65重量%含む樹脂溶液を得た。(この溶液をA−6とする)。酸価を測定したところ、63.0mgKOH/g(固形分酸価:96.9mgKOH/g)であった。
合成例7
攪拌装置、還流管をつけた3Lフラスコ中に、ビスフェノール−A型エポキシ樹脂としてRE310S(商品名:日本化薬(株)製 2官能ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、エポキシ当量:184g/当量)を368.0g、メタクリル酸(分子量:86.09)を172.2g、熱重合禁止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを4.37g及び反応触媒としてトリフェニルホスフィンを1.62g仕込み、98℃の温度で反応液の酸価が0.5mgKOH/g以下になるまで反応させ、分子中にエチレン性不飽和基を有するジオール化合物(b)(理論分子量:540.18)を得た。
続いて、この反応液に反応用溶媒としてカルビトールアセテートを654.2g、分子中にカルボキシル基を有するジオール化合物(c)としてジメチロールプロピオン酸(分子量:134.16)を261.4g加え、45℃に昇温させた。この溶液にジイソシアネート化合物(a)としてトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(分子量:210.27)を413.4g、反応温度が65℃を超えないように、徐々に滴下した。滴下終了後、温度を80℃に上昇させ、赤外吸収スペクトル測定法により、2250cm−1付近の吸収がなくなるまで6時間反応させた。
次いで、この反応溶液に、環状酸無水物(e)として無水コハク酸(分子量:100.07)を26.4g及び反応溶媒としてカルビトールアセテート14.2gを加え、98℃の温度で3時間反応させ、アルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)を65重量%含む樹脂溶液を得た。(この溶液をA−7とする)。酸価を測定したところ、64.3mgKOH/g(固形分酸価:98.9mgKOH/g)であった。
【実施例1】
上記合成例1で得られた(A−1)を表1に示す配合割合で混合し、3本ロールミルで混練し、感光性樹脂組成物を得た。これをスクリーン印刷法により、乾燥膜厚が15〜25μmの厚さになるようにプリント基板に塗布し塗膜を80℃の熱風乾燥器で30分乾燥させた。次いで、紫外線露光装置((株)オーク製作所、型式HMW−680GW)を用い回路パターンの描画されたマスクを通して紫外線を照射した。その後、1%炭酸ナトリウム水溶液でスプレー現像を行い、紫外線未照射部の樹脂を除去した(現像)。水洗乾燥した後、プリント基板を150℃の熱風乾燥器で60分加熱硬化反応させ硬化膜を得た。得られた硬化物について、後述の試験例に示すとおり、光感度、表面光沢、基板そり、屈曲性、密着性、鉛筆硬度、耐溶剤性、耐酸性、耐熱性、耐金メッキ性の試験を行なった。それらの結果を表2に示す。
【実施例2】
上記合成例2で得られた(A−2)を表1に示す配合割合で混合し、3本ロールミルで混練し、感光性樹脂組成物を得た。これをスクリーン印刷法により、乾燥膜厚が15〜25μmの厚さになるようにプリント基板に塗布し塗膜を80℃の熱風乾燥器で30分乾燥させた。次いで、紫外線露光装置((株)オーク製作所、型式HMW−680GW)を用い回路パターンの描画されたマスクを通して紫外線を照射した。その後、1%炭酸ナトリウム水溶液でスプレー現像を行い、紫外線未照射部の樹脂を除去した。水洗乾燥した後、プリント基板を150℃の熱風乾燥器で60分加熱硬化反応させ硬化膜を得た。得られた硬化物について、後述の試験例に示すとおり、各特性の試験を行なった。それらの結果を表2に示す。
【実施例3】
合成例3で得られた樹脂溶液(A−3)54.44g、反応性架橋剤(C)としてHX−220(商品名:日本化薬(株)製 2官能アクリレート樹脂)3.54g、光重合開始剤(B)としてイルガキュアー907(商品名:バンティコ製光重合開始剤)を4.72g及びカヤキュアーDETX−S(商品名:日本化薬(株)製 光重合開始剤)を0.47g、硬化成分(D)としてYX−8000(商品名:ジャパンエポキシレジン製 2官能水素化ビスフェノール−A型エポキシ樹脂、エポキシ当量:202.06g/当量)を14.83g、熱硬化触媒としてメラミンを1.05g及び濃度調整溶媒としてメチルエチルケトンを20.95g加え、ビーズミルにて混練し均一に分散させ感光性樹脂組成物を得た。
得られた組成物をロールコート法により、支持フィルムとなるポリエチレンテレフタレートフィルムに均一に塗布し、温度70℃の熱風乾燥炉を通過させ、厚さ30μmの樹脂層を形成した後、この樹脂層上に保護フィルムとなるポリエチレンフィルムを貼り付け、ドライフィルムを得た。得られたドライフィルムをポリイミドプリント基板(銅回路厚:12μm、ポリイミドフィルム厚:25μm)に、温度80℃の加熱ロールを用いて、保護フィルムを剥離しながら樹脂層を基板全面に貼り付けた。
次いで、光導波路パターンを有するネガマスクを装着した紫外線縮小投影露光装置を用いて、紫外線を照射した(照射量500mJ/cm)。
照射後、支持フィルムを樹脂から剥離し、0.25%のテトラメチルアンモニウム水溶液で30秒間現像し、未照射部分を溶解除去した。水洗乾燥した後、プリント基板を150℃の熱風乾燥器で30分加熱硬化反応させ硬化膜を得た。得られた硬化物は透明性が良好で50μmのパターンが解像されていた。
実施例4,5
前記合成例6または合成例7で得られた(A−6)または(A−7)を表1に示す配合割合で混合し、3本ロールミルで混練し、本発明の感光性樹脂組成物を得た。これをスクリーン印刷法により、乾燥膜厚が15〜25μmの厚さになるようにプリント基板に塗布し塗膜を80℃の熱風乾燥器で30分乾燥させた。次いで、紫外線露光装置((株)オーク製作所、型式HMW−680GW)を用い回路パターンの描画されたマスクを通して紫外線を照射した。
その後、1%炭酸ナトリウム水溶液でスプレー現像を行い、紫外線未照射部の樹脂を除去した。水洗乾燥した後、プリント基板を150℃の熱風乾燥器で60分加熱硬化反応させ硬化膜を得た。得られた硬化物について、後述の試験例に示すとおり、光感度、表面光沢、基板そり、屈曲性、密着性、鉛筆硬度、耐溶剤性、耐酸性、耐熱性、耐金メッキ性の試験を行なった。それらの結果を表2に示す。

比較例
前記の特許文献5(特開平9−52925号公報)の実施例中の光重合成性樹脂組成物を製造すべく、同文献の合成例1に記載の樹脂の製造を試みた。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としてYD128(東都化成(株)製、エポキシ当量186.3)48.45g、アクリル酸18.66g、ハイドロキノン0.007g、カルビトールアセテート41.97g及びソルベントナフサ28.03gを仕込み、100℃で30分間加熱溶解させた。次いで、ジメチルベンジルアミン0.0704gを加え、空気を吹き込みながら110℃まで昇温し、攪拌を続けたところ約5時間経った時点でゲル化し、目的とする樹脂は得られなかった。
試験例
各特性試験の方法を示す。
(タック性)基板に塗布した乾燥後の膜に脱脂綿をこすりつけ、膜のタック性を評価した。
○・・・・脱脂綿は張り付かない。
×・・・・脱脂綿の糸くずが、膜に張り付く。
(現像性)下記の評価基準を使用した。
○・・・・現像時、完全にインキが除去され、現像できた。
×・・・・現像時、現像されない部分がある。
(解像性)乾燥後の塗膜に、50μmのネガパターンを密着させ積算光量200mJ/cmの紫外線を照射露光する。次に1%の炭酸ナトリウム水溶液で60秒間、2.0kg/cmのスプレー圧で現像し、転写パターンを顕微鏡にて観察する。下記の基準を使用した。
○・・・・パターンエッジが直線で、解像されている。
×・・・・剥離もしくはパターンエッジがぎざぎざである。
(光感度)乾燥後の塗膜に、ステップタブレット21段(コダック社製)を密着させ積算光量500mJ/cmの紫外線を照射露光する。次に1%の炭酸ナトリウム水溶液で60秒間、2.0kg/cmのスプレー圧で現像し、現像されずに残った塗膜の段数を確認する。
(表面光沢)乾燥後の塗膜に、500mJ/cmの紫外線を照射露光する。次に1%の炭酸ナトリウム水溶液で60秒間、2.0kg/cmのスプレー圧で現像し、乾燥後の硬化膜を観察する。下記の基準を使用した。
○・・・・曇りが全く見られない。
×・・・・若干の曇りが見られる。
(基板そり)下記の基準を使用した。
○・・・・基板にそりは見られない。
△・・・・ごくわずか基板がそっている。
×・・・・基板のそりが見られる。
(屈曲性)硬化膜を180℃に折り曲げ観察する。下記の基準を使用した。
○・・・・膜面に割れは見られない。
×・・・・膜面が割れる。
(密着性)JIS K5400に準じて、試験片に1mm幅のごばん目を100個作りセロテープ(R)によりピーリング試験を行った。ごばん目の剥離状態を観察し、次の基準で評価した。
○・・・・剥れのないもの。
×・・・・剥離するもの。
(鉛筆硬度)JIS K5400に準じて評価を行った。
(耐溶剤性)試験片をイソプロピルアルコールに室温で30分間浸漬する。外観に異常がないか確認した後、セロテープ(R)によるピーリング試験を行い、次の基準で評価した。
○・・・・塗膜外観に異常がなく、フクレや剥離のないもの。
×・・・・塗膜にフクレや剥離のあるもの。
(耐酸性)試験片を10%塩酸水溶液に室温で30分浸漬する。外観に異常がないか確認した後、セロテープ(R)によるピーリング試験を行い、次の基準で評価した。
○・・・・塗膜外観に異常がなく、フクレや剥離のないもの。
×・・・・塗膜にフクレや剥離があるもの。
(耐熱性)試験片にロジン系プラックスを塗布し260℃の半田槽に5秒間浸漬した。これを1サイクルとし、3サイクル繰り返した。室温まで放冷した後、セロテープ(R)によるピーリング試験を行い、次の基準で評価した。
○・・・・塗膜外観に異常がなく、フクレや剥離のないもの。
×・・・・塗膜にフクレや剥離のあるもの。
(耐金メッキ性)試験基板を、30℃の酸性脱脂液(日本マクダーミット製、Metex L−5Bの20vol%水溶液)に3分間浸漬した後、水洗し、次いで、14.4wt%過硫酸アンモン水溶液に室温で3分間浸漬した後、水洗し、さらに10vol%硫酸水溶液に室温で試験基板を1分間浸漬した後水洗した。次に、この基板を30℃の触媒液(メルテックス製、メタルプレートアクチベーター350の10vol%水溶液)に7分間浸漬し、水洗し、85℃のニッケルメッキ液(メルテックス製、メルプレートNi−865Mの20vol%水溶液、pH4.6)に20分間浸漬し、ニッケルメッキを行った後、10vol%硫酸水溶液に室温で1分間浸漬し、水洗した。次いで、試験基板を95℃の金メッキ液(メルテックス製、オウロレクトロレスUP15vol%とシアン化金カリウム3vol%の水溶液、pH6)に10分間浸漬し、無電解金メッキを行った後、水洗し、さらに60℃の温水で3分間浸漬し、水洗し、乾燥した。得られた無電解金メッキ評価基板にセロハン粘着テープを付着し、剥離したときの状態を観察した。
○・・・・全く異常が無いもの。
×・・・・若干剥がれが観られたもの。
(耐PCT性)試験基板を121℃、2気圧の水中で96時間放置後、外観に異常がないか確認した後、セロテープ(R)によるピーリング試験を行い、次の基準で評価した。
○・・・・塗膜外観に異常がなく、フクレや剥離のないもの。
×・・・・塗膜にフクレや剥離があるもの。
(耐熱衝撃性)試験片を、−55℃/30分、125℃/30分を1サイクルとして熱履歴を加え、1000サイクル経過後、試験片を顕微鏡観察し、次の基準で評価した。
○・・・・塗膜にクラックの発生のないもの。
×・・・・塗膜にクラックが発生したもの。

上記の結果から明らかなように、本発明のアルカリ水溶液可溶性ポリウレタン化合物及びそれを用いた感光性樹脂組成物は、タック性も無く、高光感度であり、その硬化膜も半田耐熱性、耐薬品性、耐金メッキ性、高絶縁性等の電気特性に優れ、また硬化物表面にクラックが発生せず、薄膜化された基板を用いた場合でも基板にそりの少ないプリント基板用感光性樹脂組成物である。
【産業上の利用可能性】
無触媒下で製造され酸付加したアルカリ水溶液可溶性ポリウレタン化合物及びそれを用いた感光性樹脂組成物は、活性エネルギー線による露光硬化塗膜の形成において光感度に優れ、高機能プリント配線板に対応する微細な画像を得るための活性エネルギー線に対する感光性に優れ、希アルカリ水溶液による現像によりパターン形成できると共に、必要に応じて後硬化(ポストキュア)工程で熱硬化させ、得られる硬化膜が十分なフレキシブル性、屈曲性、密着性、鉛筆硬度、耐溶剤性、耐酸性、耐熱性、耐金メッキ性、無電解金メッキ耐性、スズメッキ耐性、高絶縁性等も十分に満足するものであり、特に、フレキシブルプリント配線板用ソルダーマスク、多層プリント配線板用層間絶縁膜及び光導波路の製造に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
▲1▼ジイソシアネート化合物(a)、分子中にエチレン性不飽和基を有するジオール化合物(b)、分子中にカルボキシル基を有するジオール化合物(c)、任意成分として、分子中にエチレン性不飽和基またはカルボキシル基を有しないジオール化合物(d)を無触媒下でウレタン化反応させ、環状酸無水物(e)を反応させて得られるアルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)、
▲2▼光重合開始剤(B)、
▲3▼反応性架橋剤(C)
を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、任意成分として硬化成分(D)を含有することを特徴とする請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
アルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)の固形分酸価が30〜150mgKOH/gである請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
分子中にエチレン性不飽和基を有するジオール化合物(b)が、分子中に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸または桂皮酸との反応生成物であり、環状酸無水物(e)が2塩基酸1無水物及び/または3塩基酸1無水物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
ジイソシアネート化合物(a)がイソホロンジイソシアネート及び/またはトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートであり、分子中にエチレン性不飽和基を有するジオール化合物(b)が、ビスフェノール−A型エポキシ樹脂とメタクリル酸との反応生成物であり、分子中にカルボキシル基を有するジオール化合物(c)がジメチロールプロピオン酸であり、環状酸無水物(e)が無水コハク酸である請求項1〜4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
アルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)が、ビスフェノール−A型エポキシ樹脂とメタクリル酸との反応生成物と、ジメチロールプロピオン酸の混合物にトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートを加えて反応させ、次いで無水コハク酸を反応させて得られる樹脂である請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
ビスフェノール−A型エポキシ樹脂のエポキシ当量が100〜900g/当量である請求項5または6に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
アルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂(A)を得る反応に際し、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアネート基に対する、ビスフェノール−A型エポキシ樹脂とメタクリル酸との反応生成物と、ジメチロールプロピオン酸の混合物中の水酸基の当量比が、1.1〜2.0である請求項6記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射することを特徴とする硬化物の製造法。
【請求項10】
請求項9に記載の製造法による硬化物の層を有する基材。
【請求項11】
請求項10に記載の基材を有する物品。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化し、アルカリ処理及び/または熱処理する工程を含むことを特徴とするフレキシブルプリント配線板用ソルダーマスク、多層プリント配線板用層間絶縁膜または感光性光導波路の製造法。

【国際公開番号】WO2004/079452
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【発行日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503090(P2005−503090)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002718
【国際出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】