説明

感光性樹脂組成物及びシルセスキオキサン重合体

【課題】成膜性が良好であり、感光性を有し、かつ成膜後に焼成することにより容易に耐熱性が高い膜が得られる感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】かご状シルセスキオキサン構造が平均1箇所を超えて他のかご状シルセスキオキサン構造と結合してなるシルセスキオキサン重合体であって、該かご状シルセスキオキサン構造が平均1個以上の感光性付与基を含むシルセスキオキサン重合体と、感光剤と、を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物及びシルセスキオキサン重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シルセスキオキサン構造を有する化合物は、無機材料の特徴である高耐熱性及び低誘電率を有することから、樹脂へ分散させることにより、難燃性材料や絶縁材料などの用途に使用されている。特に、該シルセスキオキサン構造に有機基を導入した化合物は、無機材料の特徴に加えて、有機材料の特徴である成形性、有機溶媒可溶性などを有していることから、各種皮膜材料や電気絶縁材料として有用である。
【0003】
特許文献1には、オクタキス(シルセスキオキサン)とジイン化合物を重合した化合物が高い耐熱性を示すことが記載されている。この重合体を硬化して得られる硬化物は、高い耐熱性を有しているものの、感光性がないため、パターニングするためにフォトレジストが必要である、という問題があった。
【0004】
また、特許文献2,3には、グラフト型の感光性かご状シルセスキオキサン重合体が記載されている。しかしながら、これらの化合物は高耐熱性が得られない場合がある。
【特許文献1】特許第2884073号公報
【特許文献2】特開2005−42085号公報
【特許文献3】特開2004−264767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、成膜性が良好であり、感光性を有し、かつ成膜後に焼成することにより容易に耐熱性が高い膜が得られる感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の感光性樹脂組成物は、かご状シルセスキオキサン構造が平均1箇所を超えて他のかご状シルセスキオキサン構造と結合してなるシルセスキオキサン重合体であって、該かご状シルセスキオキサン構造が平均1個以上の感光性付与基を含むシルセスキオキサン重合体と、感光剤と、を含むことを特徴とする。
【0007】
本発明の感光性樹脂組成物においては、前記感光性付与基がアルカリ溶解性官能基であることが好ましい。
【0008】
本発明の感光性樹脂組成物においては、前記感光剤が溶解抑止剤であることが好ましい。
【0009】
本発明のシルセスキオキサン重合体は、かご状シルセスキオキサン構造が平均1箇所を超えて他のかご状シルセスキオキサン構造と結合してなるシルセスキオキサン重合体であって、該かご状シルセスキオキサン構造が平均1個以上のアルカリ溶解性官能基を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明のシルセスキオキサン重合体においては、前記アルカリ溶解性官能基がカルボキシル基又は芳香族性水酸基であることが好ましい。
【0011】
本発明のシルセスキオキサン重合体においては、前記アルカリ溶解性基が酸又は塩基により脱保護可能な保護基で保護されていることが好ましい。
【0012】
本発明の硬化物は、上記感光性樹脂組成物を硬化してなることを特徴とする。
【0013】
本発明の厚膜誘電体は、上記硬化物で構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物は、かご状シルセスキオキサン構造が平均1箇所を超えて他のかご状シルセスキオキサン構造と結合してなるシルセスキオキサン重合体であって、該かご状シルセスキオキサン構造が平均1個以上の感光性付与基を含むシルセスキオキサン重合体と、感光剤と、を含むので、成膜性が良好であり、感光性を有し、かつ成膜後に焼成することにより容易に耐熱性が高い膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の感光性樹脂組成物は、かご状シルセスキオキサン構造が平均1箇所を超えて他のかご状シルセスキオキサン構造と結合し、かご状シルセスキオキサン構造が平均1個以上の感光性付与基を含むシルセスキオキサン重合体を有することを特徴とする。
【0016】
この感光性樹脂組成物においては、かご状シルセスキオキサン構造が平均1箇所を超えて他のかご状シルセスキオキサン構造と結合する結合様式が耐熱性に寄与する。このような結合様式によれば、かご状シルセスキオキサン構造が他のかご状シルセスキオキサン構造と複数の結合を有することができるので、主鎖が熱分解を起こすことを防止でき、その結果耐熱性が向上する。特に、かご状シルセスキオキサン構造が2個以上の結合部位を有する平均2箇所を超えて他のかご状シルセスキオキサン構造と結合する場合には、3次元ネットワーク構造をとり易くなり、より耐熱性が向上する。
【0017】
また、この感光性樹脂組成物において、かご状シルセスキオキサン構造が平均1個以上の感光性付与基を含むことにより、感光性を発揮する。したがって、本発明に係る感光性樹脂組成物は、感光性と耐熱性を併せ持つことになる。
【0018】
本発明におけるかご状シルセスキオキサン構造には、下記一般式(1)で表されるかご状シルセスキオキサン及び下記一般式(2)で表されるかご状シルセスキオキサンの部分開裂構造体などが挙げられる。
(RSiO3/2 (1)
(RSiO3/2(RXSiO3/2 (2)
ここで、nは6以上14以下の整数であり、lは2以上12以下の整数であり、kは2又は3である。例えば、n=6の場合は、下記一般式(3)で表される構造となり、n=8の場合は、下記一般式(4)で表される構造となり、n=10の場合は、下記一般式(5)で表される構造となり、n=12の場合は、下記一般式(6)で表される構造となり、n=14の場合は、下記一般式(7)で表される構造となる。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【0019】
また、例えば、l=4かつk=3の場合は、下記一般式(8)で表される構造となり、l=6かつk=2の場合は、下記一般式(9)あるいは(10)で表される構造となり、l=4かつk=4の場合は、下記一般式(11)で表される構造となる。
【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【0020】
上記一般式(1)及び(2)におけるRは、炭素数1以上30以下の官能基、水素原子、ハロゲン原子又は他のシルセスキオキサン構造への結合手であり、同じであっても、異なっていても良い。そして、1個のかご状シルセスキオキサン構造が、平均1箇所を超える箇所で他のかご状シルセスキオキサン構造と結合する構造を有し、かつ平均1個以上の感光性付与基を有する。
【0021】
該炭素数1以上30以下の官能基(R)は、ハロゲン原子、ヘテロ原子及び金属原子を含んでいても良い。本発明におけるハロゲン原子には、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。また、本発明におけるヘテロ原子とは、酸素、硫黄、窒素、リンが挙げられる。また、本発明における金属原子とは、ケイ素、チタンが挙げられる。
【0022】
また、本発明における炭素数1以上30以下の官能基(R)は、Rが結合するケイ素原子に直接結合していても良く、ヘテロ原子を介して結合していても良い。
【0023】
一般式(2)におけるXは、OR(Rは炭素数1以上30以下の官能基及び第四級アンモニウムラジカル)構造、炭素数1以上30以下の官能基又はハロゲンで定義された基の中から選ばれる基であり、複数のXは同じでも異なっていても良い。また、(RXSiO3/2中の複数のXが互いに連結して連結構造を形成しても良い。
【0024】
本発明における炭素数1以上30以下の官能基(R)には、脂肪族飽和炭化水素基、脂肪族不飽和炭化水素基、環状構造を含む官能基、オルガノシロキサン基、及びそれらを組み合わせた基などが挙げられる。本発明において、該炭化水素基にハロゲン原子及び/又はヒドロキシル基などのヘテロ原子及び/又はシラノール基等の金属原子を含む官能基を有していても良い。
【0025】
上記脂肪族飽和炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの第一級炭化水素基;イソブチル基、イソペンチル基などの第二級炭化水素基;t−ブチル基などの第三級炭化水素基などが挙げられる。
【0026】
上記脂肪族不飽和炭化水素基としては、ビニル基、アリル基などの二重結合を含む炭化水素基;エチニル基などの三重結合を含む炭化水素基などが挙げられる。
【0027】
上記環状構造を含む官能基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロデシル基、シクロオクチル基などの単環式官能基;ノルボルニル基、アダマンチル基などの多環式官能基;ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、テトラヒドロフラン、ジオキサン構造を有する複素環式官能基;ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環構造を含む芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0028】
本発明において、一般式(1)及び一般式(2)のRの炭素数は、該かご状シルセスキオキサンと他のかご状シルセスキオキサンとの間の反応性を考慮すると、1以上30以下であることが好ましく、1以上20以下がより好ましく、1以上10以下が特に好ましい。
【0029】
本発明における感光性付与基とは、1)光照射、又は光照射による酸発生、又は光照射による塩基発生、又は光照射によるラジカル発生、により重合、架橋、分解などを起こして溶剤溶解性が変化する官能基、2)溶解抑止剤との相互作用で光照射前は溶剤に溶解しないが、光照射後溶解抑止剤と相互作用しなくなる官能基、である。
【0030】
光照射により重合、架橋を起こす官能基としては、アリル基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基などの炭素−炭素二重結合をもつ官能基が挙げられる。これらの官能基は光ラジカル発生剤と共存下で光照射すると、発生したラジカルにより二重結合が重合を起こすことで溶剤溶解性が変化する。
【0031】
光照射による分解を起こす官能基としては、酸又は塩基で脱保護可能な保護基によって保護されたアルカリ溶解性基が挙げられる。アルカリ溶解性基としてはカルボキシル基、芳香族性水酸基などが挙げられる。また、保護基としては、芳香族性水酸基に対しては、メチル基、エチル基、t−ブチル基などのようなアルキル基;メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基のようなアルコキシアルキル基;t−ブトキシカルボニル基のようなアルコキシカルボニル基;トリメチルシリル基などのようなシリル基などが挙げられる。カルボキシル基に対する保護基としては、メチル基、エチル基、t−ブチル基などのようなアルキル基;メトキシメチル基のようなアルコキシアルキル基;トリメチルシリル基、トリエチルシリル基などのようなシリル基などが挙げられる。これらの官能基は、光酸発生剤などとの共存下で光照射すると、発生した酸などにより分解することで溶剤溶解性が変化する。
【0032】
溶解抑止剤との相互作用で光照射前は溶剤に溶解しないが、光照射後溶解抑止剤と相互作用しなくなる官能基としては、芳香族性水酸基、カルボキシル基などのアルカリ溶解性基が挙げられる。これらはナフトキノンジアジド化合物などの溶解抑止剤と混合すると、アルカリ溶液に溶解しないが、光照射後溶解抑止剤が変化するとアルカリ溶液に溶解し易くなる。
【0033】
該感光性付与基のうち、溶解抑止剤との相互作用で光照射前は溶剤に溶解しないが、光照射後溶解抑止剤と相互作用しなくなる官能基は、アルカリ現像型の感光性を付与することが容易であるため好ましい。中でも芳香族性水酸基、カルボキシル基は、ナフトキノンジアジド化合物との相互作用が強く、感光性のコントラストが高いため、特に好ましい。
【0034】
これら感光性付与基は、シルセスキオキサン構造のケイ素原子と直接結合していても良く、任意の原子又は官能基を介して結合していても良い。例えば、酸素原子や有機基を介して結合していても良い。
【0035】
本発明における芳香族性水酸基とは、水酸基が直接芳香環に結合している化合物に由来する官能基である。具体的には、フェノール、カテコール、レソルシノール、ヒドロキノン、1−ナフトール、2−ナフトールなどベンゼン環に水酸基が直接結合した化合物に由来する官能基などが挙げられる。
【0036】
本発明における、アルカリ溶解性官能基とは、カルボキシル基、芳香族性水酸基、スルホニル基などのアルカリに溶解する官能基であれば、限定されない。その中で、溶解抑止の観点から、カルボキシル基、芳香族性水酸基が好ましい。本発明における芳香族性水酸基とは、前述のように水酸基が直接芳香環に結合している化合物に由来する官能基である。具体的には、フェノール、カテコール、レソルシノール、ヒドロキノン、1−ナフトール、2−ナフトールなどベンゼン環に水酸基が直接結合した化合物に由来する官能基などが挙げられる。
【0037】
本発明における他のシルセスキオキサン構造への結合手の構造は、1個のかご状シルセスキオキサン構造が、平均1箇所を超える箇所で他のかご状シルセスキオキサン構造と結合し得る構造であれば、限定されない。このような様式として、炭素数1以上30以下のアルキレン基、オキシアルキレン基などの2価のアルキル基を含む構造;シロキサン、ジシロキサンなどのケイ素原子を含む構造;及び酸素原子、窒素原子などのヘテロ原子などが挙げられる。また、これらは1種であっても、2種以上であっても良い。その中で特に、下記一般式(12)で表される構造が好ましい。
【化10】

一般式(12)におけるR、R、R’、R’は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の官能基から選ばれる少なくとも1種類であり、同じであっても異なっていても良い。R及びRは炭素数1〜30のアルキレン基を表す。aは1以上10以下の自然数であり、bは0又は1である。反応性の良さ、取扱いの良さから1≦a≦20、b=1の場合が好ましい。また、R及びRはエチレン基、プロピレン基が好ましい。
【0038】
本発明における該かご状シルセスキオキサン構造に結合する感光性付与基の数(M)は、感光性の発現、他のかご状シルセスキオキサン構造との間の結合を考慮すると、1個以上16個未満であることが好ましい。感光性コントラストの観点から2個以上7個未満がより好ましく、3個以上6.5個未満が特に好ましい。
【0039】
本発明における数平均分子量とは、既知の数平均分子量のポリスチレンを標準として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定される。本発明に用いる共重合体の数平均分子量は、硬化物の耐熱性、感光性樹脂組成物の粘度や成型性を考慮して、500以上500000以下であることが好ましい。本発明において、該分子量は1000以上250000以下がより好ましく、5000以上100000以下が特に好ましい。
【0040】
本発明のおける該重合体中の1個のかご状シルセスキオキサン構造が他のかご状シルセスキオキサン構造と結合する個数(N)は、平均1個を超える。平均1個を超える数であれば、得られるかご状シルセスキオキサン重合体が重合体の主鎖に入るため、その結果得られる硬化物の耐熱性が向上する。さらに該Nの数が平均2個以上であれば、得られるかご状シルセスキオキサン重合体が3次元ネットワーク構造をとり易い傾向にあり、その結果得られる硬化体の耐熱性がさらに向上するためより好ましい。
【0041】
本発明における該かご状シルセスキオキサン構造に結合する感光性付与基の数(M)及び1個のかご状シルセスキオキサン構造が他のかご状シルセスキオキサンと構造結合する個数(N)は、核磁気共鳴スペクトル(以下NMRと略称する)によって算出することができる。
【0042】
本発明における感光剤とは、光ラジカル発生剤、光酸発生剤、光塩基発生剤などの光照射によりラジカル、酸、塩基などを発生するもの、溶解抑止剤のように、光照射により構造が変化し、溶媒に対する溶解性が変化するもの、などが挙げられる。この中で特に、フェノール基を有する本発明の重合体と溶解抑止剤とを組み合わせると、後述するポストエクスポージャベーク(以下PEBと略称する)工程を必要としない感光性樹脂組成物が得られるため好ましい。溶解抑止剤としては、キノンジアジド構造を含有する化合物などが挙げられる。
【0043】
該キノンジアジド構造を含有する化合物としては、1,2−ベンゾキノンジアジドスルホン酸エステル類、1,2−ベンゾキノンジアジドスルホン酸アミド類、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸アミド類が挙げられる。具体的には、例えば、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどのトリヒドロキシベンゾフェノン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類;2,2’,4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,2’,4,3’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2’,4,3’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4,2’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,2’−テトラヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシ−3’−メトキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシ−3’−メトキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどのテトラヒドロキシベンゾフェノン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類;2,3,4,2’,6’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,3,4,2’,6’−ペンタヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどのペンタヒドロキシベンゾフェノン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類;2,4,6,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,4,6,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、3,4,5,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、3,4,5,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどのヘキサヒドロキシベンゾフェノン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類;ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,2’−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2’−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステル、2,2,4−トリメチル−7,2’,4’−トリヒドロキシフラバン−1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、2,2,4−トリメチル−7,2’,4’−トリヒドロキシフラバン−1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルなどの(ポリヒドロキシフェニル)アルカン類の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類などが挙げられる。溶解抑止能の観点から、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類が好ましく、該シルセスキオキサン重合体との相溶性の観点から、一般式(13)に示す化合物や、一般式(14)に示す化合物がより好ましい。
【化11】

【化12】

【0044】
本発明における溶解抑止剤の量としては、本発明の重合体の量を100とした場合、感光性コントラスト、溶解抑止性、感度の観点から、1重量%以上50重量%以下、より好ましくは5重量%以上20重量%以下である。
【0045】
本発明における樹脂組成物には、該重合体及び感光剤が均一に溶解及び/又は分散し得る溶媒を含んでも良い。また、必要に応じて、界面活性剤などのその他の成分を含んでも良い。
【0046】
本発明の重合体、感光剤と溶媒とを含む感光性樹脂組成物における重合体の濃度は、硬化物が製造される濃度であれば、特に制限されない。その中でも、重合体の濃度は、所望の膜厚の硬化物が得られるか、組成物の粘度などを考慮して、1重量%以上90重量%以下が好ましい。得られる硬化体の膜厚の観点から、2重量%以上80重量%以下がより好ましい。
【0047】
本発明における感光性樹脂組成物に含むことができる溶媒は、本発明の重合体及び感光剤を均一に溶解及び/又は分散させ得るものであれば限定されない。このような溶媒として、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルアセテートのような炭素数2以上6以下のエーテル化合物;アセトン、メチルエチルケトンのような炭素数2以上6以下のケトン化合物;ノルマルペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリンのような炭素数5以上10以下の飽和炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリンのような炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素化合物;酢酸メチル、酢酸エチルのような炭素数3以上6以下のエステル化合物;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの炭素数1以上6以下のカルボン酸;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンのような炭素数1以上10以下の含塩素化合物;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンのような炭素数2以上10以下の含窒素化合物;ジメチルスルホキシドのような含硫黄化合物;γ−ブチロラクトンのような環状エステル、及び水が挙げられる。重合体の溶解性の観点から、プロピレングリコールモノメチルアセテート、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフランが特に好ましい。
【0048】
次に、本発明に用いる重合体の製造方法について説明する。
本発明の重合体は、かご状シルセスキオキサンと分子内に少なくとも1個の不飽和結合を有する感光性付与基を含む化合物及び分子内に少なくとも2個の不飽和結合を有する化合物との反応させることによって、得ることができる。
【0049】
本発明で用いられる重合法は、特に制限は無いが、通常のケイ素−炭素結合形成反応に用いられる、触媒を用いたヒドロシリル化反応が好適に用いられる。
【0050】
本発明におけるかご状シルセスキオキサンと分子内に少なくとも1個の不飽和結合を有する感光性付与基を含む化合物及び分子内に少なくとも2個の不飽和結合を有する化合物との反応は、該2種類の化合物を同時に反応させても良く、分子内に少なくとも1個の不飽和結合を有する感光性付与基を含む化合物を反応させた後に、分子内に少なくとも2個の不飽和結合を有する化合物と反応させても良い。なお、所望の感光性付与官能基の導入量の制御が容易である観点から、分子内に少なくとも1個の不飽和結合を有する感光性付与基を含む化合物を反応させた後に、分子内に少なくとも2個の不飽和結合を有する化合物と反応させる方法が、好適である。
【0051】
本発明において使用される反応溶媒としてはジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテルのような炭素数2以上6以下のエーテル化合物;アセトン、メチルエチルケトンのような炭素数2以上6以下のケトン化合物;ノルマルペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリンのような炭素数5以上10以下の飽和炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリンのような炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素化合物;酢酸メチル、酢酸エチルのような炭素数3以上6以下のエステル化合物;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの炭素数1以上6以下のカルボン酸;クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタンのような炭素数1以上10以下の含ハロゲン化合物;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンのような炭素数2以上10以下の含窒素化合物;ジメチルスルホキシドのような含硫黄化合物及び水が挙げられる。また、無溶媒中でも実施することができる。これらは工業的な生産性、次反応への影響などを考慮して任意に選択可能であり、必要に応じて1種あるいは2種以上の混合物であっても良い。特に好ましい溶媒としては、炭素数2以上6以下エーテル化合物及び炭素数6以上10以下の芳香族炭化水素化合物が挙げられる。
【0052】
本発明における反応触媒は特に制限されないが、ラジカル開始剤や遷移金属触媒などの公知の化合物から適宜選択できる。具体的なこれらの化合物には、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−t−ブチルなどのラジカル開始剤;活性白金、Pt(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、塩化白金酸、Pt(COD)(式中、CODは1,5−シクロオクタジエニル基を表す。)、H(C)PtClなどの白金触媒;RhCl(PPh(式中、PPhはトリフェニルホスフィン基を表す。)、RhCl(CO)(PPh、RhCl(CO)(PEt(式中、PEtはトリエチルホスフィン基を表す。)、HRh(CO)(PPh、[Rh(CO)Cl]、Rh(acac)(CO)(式中、acacはアセチルアセトナート基を表す。)などのロジウム触媒;[Ni(CO)(Cp)](式中、Cpはシクロペンタジエニル基を表す。)、Ni(acac)などのニッケル触媒;HCo(PPh、HCo[Si(OEt)](PPh(式中、Etはエチル基を表す。)、コバルトカーボンなどのコバルト触媒;RuCl、RuCl(PPh、RuHCl(PPhなどのルテニウム触媒;PdCl、パラジウムカーボンなどのパラジウム触媒などが挙げられる。また、必要に応じて1種あるいは2種以上の混合物であっても良い。この中でも特に、反応性の高さの観点から白金触媒が好ましく、特に活性白金、Pt(0)ジビニルテトラメチルジシロキサン、塩化白金酸が好ましい。
【0053】
本発明における脱保護試薬は、選択した保護基によって、適宜公知の方法を選択可能である。アルキル基に対する脱保護試薬として、塩酸、蟻酸、トリフルオロ酢酸、臭化水素酸などの酸や三臭化ホウ素、ヨウ化トリメチルシランなどのルイス酸などが挙げられる。
【0054】
本発明における反応温度は、反応開始や触媒の活性を考慮して、15℃以上120℃以下で実施することが好ましい。より好ましくは20℃以上100℃以下であり、さらに好ましくは30℃以上90℃以下である。
【0055】
反応に要する時間は、目的あるいは反応条件によって異なるが、通常は96時間以内であり、特に好適には30分から30時間の範囲で実施される。
【0056】
重合終了後における、本発明の重合体の回収は、重合溶液中の溶媒を減圧留去することに行うことができる。
【0057】
本発明の重合体の精製方法としては、重合反応溶液中の不溶解な触媒を減圧濾過、加圧濾過などで除去する方法が挙げられる。また、重合反応溶液を貧溶媒に加え析出させる、いわゆる再沈精製法を実施することができる。さらに、特別に高純度な共重合体が必要な場合は二酸化炭素超臨界法による抽出法も可能である。
【0058】
次に、本発明に係る感光性樹脂組成物で構成された硬化物の製造方法について説明する。まず、本発明の感光性樹脂組成物を基材に被覆して感光層を形成する。該基材としては、硬化物形成の際に損傷しない基材であれば、限定されない。このような基材として、シリコンウエハ、金属、ガラス、セラミック、耐熱性樹脂などが挙げられる。取扱いの良さから、シリコンウエハ及びガラスが好適に用いられる。コート方法としては、バーコート、ローラーコート、ダイコート、ブレードコート、ディップコート、ドクターナイフ、スプレーコート、フローコート、スピンコート、スリットコート、はけ塗り、などが例示できる。被覆後に必要に応じてホットプレートなどによりプリベークと呼ばれる加熱処理を行っても良い。
【0059】
次いで、該感光層に対してマスクを用いて光照射することによりパターニングする。光照射の光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、固体レーザ、気体レーザ、半導体レーザ、エキシマレーザ、キセノンランプ、メタルハライドランプなどが例示できる。光照射の方法としては、コンタクト露光法、プロキシミティ露光法、スキャニング露光法などが例示できる。光照射後に必要に応じてPEB(Post Exposure Bake)と呼ばれる加熱処理を行っても良い。
【0060】
次いで、該光照射した感光層を現像する。現像液は、該シルセスキオキサン重合体の感光性付与基に応じて適宜選択することができる。例えば、アルカリ現像型の感光性付与基を選択した場合は、現像液として水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液が好適に用いられる。現像後には必要に応じて水洗、乾燥などを実施しても良い。
【0061】
最後に、該パターニングした膜を焼成することにより硬化させる。焼成温度は、十分な硬化ができることや、副反応や分解が起こらないことなどを考慮して、30℃以上500℃以下であることが好ましい。好ましくは、100℃以上400℃以下である。また、該シルセスキオキサン重合体に反応性基がある場合には、その反応性基が反応する温度より高温で焼成するのが好ましい。
【0062】
該製造方法における反応雰囲気は、空気雰囲気下でも不活性ガス雰囲気下でも実施可能である。重合体の熱分解の観点から、不活性ガス雰囲気下が好ましい。また、該硬化物の製造に要する時間は、反応条件によって異なるが、通常は24時間以内であり、特に好適には1時間から8時間の範囲である。
【0063】
本発明における重合体を用いて製造される硬化物は、無機化合物の特徴である高耐熱性と有機化合物の特徴である良好な成膜性を有しており、かつ感光性、低誘電率性などの特徴を有することから、誘電体膜、半導体層間絶縁膜、薄膜トランジスタ用層間絶縁膜、回路基板フォトレジスト膜、セラミックセンサー用耐熱膜、耐熱塗料、難燃・耐火塗料、建材類コート剤、プラズマディスプレイパネル用誘電体膜などに使用することができる。
【0064】
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。
(試薬)
実施例及び比較例において、用いた試薬であるPSS−オクタキス(ジメチルシリロキシ)置換(Aldrich社製)、p−t−ブトキシスチレン(和光純薬工業社製)、Pt(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン3%キシレン溶液(Aldrich社製)、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン(チッソ社製)、ビニル終端ポリジメチルシロキサン(DMS−V05)(GELEST社製)、トルエン(和光純薬工業社製、有機合成用)、塩酸、4.0M 1,4−ジオキサン溶液(Aldrich社製)、メタノール(和光純薬工業社製、特級)、テトラヒドロフラン(和光純薬工業社製、安定剤不含、特級)は、特別な精製を実施せずに反応に用いた。
【0065】
(重合体の精製)
重合により得られた重合体含有反応溶液を、メタノールに注ぎ、室温で10分間撹拌し、透明固体が沈殿した後に、デカンテーションにより上澄み液を除去することにより精製を行った。透明固体が沈殿しない場合は、遠心分離器(久保田製作所社製)を用いて遠心分離を行い、透明固体を沈殿させた後に、同様の操作を行い、精製を行った。
【0066】
(数平均分子量測定)
数平均分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、下記の条件により行った。
カラム:Shodex KF−804L(昭和電工社製)
移動相:テトラヒドロフラン(和光純薬工業社製、安定剤不含)
流速:0.6mL/分
カラム温度:40℃
ポンプ:LC−10AT(島津製作所社製)
検出器:RID−6A(RI:示差屈折計、島津製作所社製)
SPD−10A(UV−VIS:紫外可視吸光計、島津製作所社製)
また、該分子量を算出するための検量線は、スタンダードポリスチレン(Aldrich社製)を用いて作成した。
【0067】
(NMR測定)
NMR測定は、JEOL社製、JNM−GSX400を用いた。測定に用いた溶媒は、重クロロホルム(和光純薬工業社製、純度99.8重量%)であり、共重合体5.0×10−3gに対して重クロロホルム5.0×10−4リットルの濃度とした。また、測定温度は30℃とした。なお、内部標準は、重クロロホルムの重水素化されていないピークである7.26ppmを基準とした。
【0068】
(かご状シルセスキオキサン構造に結合する感光性付与基の結合数(M)の算出)
本発明における該かご状シルセスキオキサン構造に結合する感光性付与基の結合数は、前述のNMR測定により求めた。前述の測定条件において、フェノール基に由来するピークは、δ6.6〜7.1に観測された。また、ヒドロシリル化反応後に生成するSi−CHCH−Siのピークは、δ0.5に観測された。そしてこれらの積分比から、かご状シルセスキオキサン構造に結合する感光性付与基の結合数(M)を求めた。この結合数(M)が1.0を超えると、かご状シルセスキオキサン構造が平均1個以上の感光性付与基を含むことになる。
【0069】
(1個のかご状シルセスキオキサン構造が他のかご状シルセスキオキサン構造と結合する個数(N))
本発明における1個のかご状シルセスキオキサン構造が他のかご状シルセスキオキサン構造と結合する個数(N)は、前述のNMR測定により求めた。前述の測定条件において、ヒドロシリル化反応後に生成するSi−CHCH−Siのピークは、δ0.5に観測された。また、不飽和結合が1つ残存しているビニル基に由来するピークは、δ5.0〜6.3に観測された。そして、不飽和結合が残存していないものは、すべて他のかご状シルセスキオキサンと結合していると仮定して、算出した。この結合数(N)が1.0を超えると、かご状シルセスキオキサン構造が平均1箇所を超えて他のかご状シルセスキオキサン構造と結合してなることになる。
【0070】
(膜厚測定)
本発明における硬化体の膜厚測定は、反射分光膜厚計FE−3000(大塚電子社製)により行った。測定手法は絶対反射率を採用し、測定モードはマニュアルにて行った。また、リファレンスとしてアルミニウムを用い、標準反射板としてAl吸着ホルダを用いた。アルゴリズムは、ピークバレイ+最小二乗法を用い、スムージングポイントは7点とし、最小二乗法演算波長範囲は240〜800nmとし、ピーク&バレイ法演算波長範囲は500〜800nmとした。
【0071】
(被覆方法)
本発明における感光性樹脂組成物の被覆方法は、MIKASA COATER(MIKASA製、1H−D7)を用いるスピンコート法を採用した。具体的には、無アルカリガラス(コーニング社製、1737 AMLCD)に該感光性樹脂組成物を滴下し、1000rpmで30秒間コーティングを行った。
【0072】
(硬化物製造方法)
本発明に係る硬化物の製造は、前述の方法により該感光性樹脂組成物をスピンコートした無アルカリガラスを、縦型焼成炉(光洋リンドバーグ社製、VF−1000)を用いて焼成することにより行った。焼成は、窒素雰囲気下で行い、150℃で60分間、続いて350℃で60分間行った。このようにして、該感光性樹脂組成物で構成された硬化物を得た。
【0073】
(耐熱性試験)
上記硬化物の耐熱性試験は、TGA2950(TAインスツルメント社製)を用いて、350℃で30分間保持した後の重量減少率を求めることにより行った。
【0074】
(感光性試験)
本発明における感光性樹脂組成物の感光性試験は、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド溶液(25%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド溶液(和光純薬工業社製、精密分析用)を精製水(共栄製薬社製)で希釈したもの)を用いて行った。前述の方法により感光性樹脂組成物を無アルカリガラスに被覆して得られた膜を、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド溶液に浸漬し、膜が溶解し始めるまでの時間を計測した。ここで、5分間浸漬しても溶解しないものを、不溶とした。また、該膜を露光(低圧水銀ランプ、フィリップスTL/10、2000mJ/cm)した後にも同様に計測した。
【0075】
(実施例1)
窒素雰囲気下、セプタム及び還流器を付けた三口フラスコに、PSS−オクタキス(ジメチルシリロキシ)置換(4.915mmol)、p−t−ブトキシスチレン(29.564mmol)、トルエン(40ml)、Pt(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン3%キシレン溶液(40μl)を入れ、60℃で2時間加熱撹拌した。次いで、ビニル終端ポリジメチルシロキサン(DMS−V05)(19.74mmol)を加え、90℃で5時間加熱撹拌した。室温まで冷却した後に、反応溶液をメタノール(400ml)に注ぎ、室温で10分間撹拌し、上澄み液をデカンテーションし、真空乾燥器中で乾燥することにより、t−ブチル保護体を得た。
【0076】
続いて、該t−ブチル保護体(5.03g)、塩酸、4.0Mの1,4−ジオキサン溶液(50mL)をナス型フラスコに入れ、80℃で4時間加熱撹拌した。室温まで冷却した後に、反応溶液を濃縮し、真空乾燥器中で乾燥することにより、目的の重合体(実施例1)を得た。
【0077】
得られた重合体(実施例1)について、かご状シルセスキオキサン構造に結合する感光性付与基の結合数(M)、1個のかご状シルセスキオキサン構造が他のかご状シルセスキオキサン構造と結合する個数(N)及び数平均分子量を調べた。その結果を下記表1に示した。
【0078】
次いで、実施例1で製造した重合体(1.0g)をテトラヒドロフラン(4.0g)に溶解させ、続いて化合物1(300mg)を加え、室温で撹拌することにより、均一な感光性樹脂組成物(実施例1)を得た。この感光性樹脂組成物について感光性試験を行った。その結果を下記表2に示した。
【0079】
次いで、得られた感光性樹脂組成物(2.0g)を、1000rpmで30秒間無アルカリガラスにスピンコートした後に、縦型焼成炉にて窒素雰囲気下、150℃で60分間、続いて350℃で60分間焼成することにより、目的の硬化物(実施例1)を得た。
【0080】
得られた硬化物について反射分光膜厚計FE−3000を用いて膜厚測定を行った。その結果を下記表3に示した。また、硬化物をスパチュラで無アルカリガラスより剥がし、得られた固体について、TGA2950を用いて、350℃で30分間保持した前後の重量を求め、それらの重量から重量減少率を求めた。その結果を下記表3に結果を示した。
【0081】
(実施例2)
窒素雰囲気下、セプタム及び還流器を付けた三口フラスコに、PSS−オクタキス(ジメチルシリロキシ)置換(4.914mmol)、p−t−ブトキシスチレン(24.628mmol)、トルエン(40ml)、Pt(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン3%キシレン溶液(40μl)を入れ、60℃で2時間加熱撹拌した。次いで、ビニル終端ポリジメチルシロキサン(DMS−V05)(15.237mmol)を加え、90℃で5時間加熱撹拌した。実施例1と同様の条件で回収、精製を行いt−ブチル保護体を得た。
【0082】
次いで、該t−ブチル保護体(5.12g)、塩酸、4.0Mの1,4−ジオキサン溶液(50mL)をナス型フラスコに入れ、80℃で4時間加熱撹拌した。実施例1と同様の条件で回収を行い、目的の重合体(実施例2)を得た。
【0083】
得られた重合体(実施例2)について、かご状シルセスキオキサン構造に結合する感光性付与基の結合数(M)、1個のかご状シルセスキオキサン構造が他のかご状シルセスキオキサン構造と結合する個数(N)及び数平均分子量を調べた。その結果を下記表1に併記した。
【0084】
次いで、得られた重合体(1.0g)をテトラヒドロフラン(4.0g)に溶解させ、続いて化合物1(300mg)を加え、室温で撹拌することにより、均一な感光性樹脂組成物(実施例2)を得た。この感光性樹脂組成物について感光性試験を行った。その結果を下記表2に併記した。
【0085】
次いで、得られた感光性樹脂組成物(2.0g)を、1000rpmで30秒間無アルカリガラスにスピンコートした後に、縦型焼成炉にて窒素雰囲気下、150℃で60分間、続いて350℃で60分間焼成することにより、目的の硬化物(実施例2)を得た。得られた硬化物について、実施例1と同様に、膜厚測定を行うと共に、重量減少率を求めた。その結果を下記表3に併記した。
【0086】
(実施例3)
窒素雰囲気下、セプタム及び還流器を付けた三口フラスコに、PSS−オクタキス(ジメチルシリロキシ)置換(4.927mmol)、p−t−ブトキシスチレン(29.672mmol)、トルエン(40ml)、Pt(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン3%キシレン溶液(40μl)を入れ、60℃で2時間加熱撹拌した。次いで、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン(15.021mmol)を加え、90℃で8時間加熱撹拌した。実施例1と同様の条件で回収、精製を行いt−ブチル保護体を得た。
【0087】
次いで、該t−ブチル保護体(5.11g)、塩酸、4.0Mの1,4−ジオキサン溶液(50mL)をナス型フラスコに入れ、80℃で4時間加熱撹拌した。実施例1と同様の条件で回収を行い、目的の重合体(実施例3)を得た。
【0088】
得られた重合体(実施例3)について、かご状シルセスキオキサン構造に結合する感光性付与基の結合数(M)、1個のかご状シルセスキオキサン構造が他のかご状シルセスキオキサン構造と結合する個数(N)及び数平均分子量を調べた。その結果を下記表1に併記した。
【0089】
次いで、得られた重合体(1.0g)をテトラヒドロフラン(4.0g)に溶解させ、続いて化合物2(300mg)を加え、室温で撹拌することにより、均一な感光性樹脂組成物(実施例3)を得た。この感光性樹脂組成物について感光性試験を行った。その結果を下記表2に併記した。
【0090】
次いで、得られた感光性樹脂組成物(2.0g)を、1000rpmで30秒間無アルカリガラスにスピンコートした後に、縦型焼成炉にて窒素雰囲気下、150℃で60分間、続いて350℃で60分間焼成することにより、目的の硬化物(実施例3)を得た。得られた硬化物について、実施例1と同様に、膜厚測定を行うと共に、重量減少率を求めた。その結果を下記表3に併記した。
【0091】
(比較例)
窒素雰囲気下、セプタム及び還流器を付けた三口フラスコに、PSS−オクタキス(ジメチルシリロキシ)置換(4.922mmol)、p−t−ブトキシスチレン(2.456mmol)、トルエン(40ml)、Pt(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン3%キシレン溶液(40μl)を入れ、60℃で2時間加熱撹拌した。次いで、ビニル終端ポリジメチルシロキサン(DMS−V05)(166.447mmol)を加え、90℃で5時間加熱撹拌した。実施例1と同様の条件で回収、精製を行いt−ブチル保護体を得た。
【0092】
次いで、該t−ブチル保護体(5.05g)、塩酸、4.0Mの1,4−ジオキサン溶液(50mL)をナス型フラスコに入れ、80℃で4時間加熱撹拌した。実施例1と同様の条件で回収を行い、重合体(比較例)を得た。この重合体について、かご状シルセスキオキサン構造に結合する感光性付与基の結合数(M)、1個のかご状シルセスキオキサン構造が他のかご状シルセスキオキサン構造と結合する個数(N)および数平均分子量の値を調べた。その結果を下記表1に併記した。
【0093】
次いで、得られた重合体(1.0g)をテトラヒドロフラン(4.0g)に溶解させ、続いて化合物1(300mg)を加え、室温で撹拌することにより、均一な感光性樹脂組成物(比較例)を得た。この感光性樹脂組成物について感光性試験を行った。その結果を下記表2に併記した。
【0094】
次いで、得られた感光性樹脂組成物(2.0g)を、1000rpmで30秒間無アルカリガラスにスピンコートした後に、縦型焼成炉にて窒素雰囲気下、150℃で60分間、続いて350℃で60分間焼成することにより、目的の硬化物(比較例)を得た。得られた硬化物について、実施例1と同様に、膜厚測定を行うと共に、重量減少率を求めた。その結果を下記表3に併記した。
【0095】
【表1】

【表2】

【表3】

【0096】
表2から分かるように、比較例の感光性樹脂組成物では、露光前後ともに2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド溶液に溶解しないことから感光性を有しない。一方、実施例1〜3の感光性樹脂組成物では、露光前には5分間以上溶解抑止を発現し、かつ露光後にいずれも60秒以内に溶解することから感光性を発現している。また、表3から分かるように、実施例1〜3の硬化物は、所望の膜厚の膜が得られ、かつ耐熱性試験後の重量減少率は3%未満と非常に良好であった。以上のことから、本発明に係る重合体を含む感光性樹脂組成物は、良好な感光性を示すことが分かった。また、本発明に係る重合体を用いて得られた硬化物は、良好な成膜性と良好な耐熱性を併せ持つことが分かった。
【0097】
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態における数値や成分についてこれに限定されず、適宜変更して実施することが可能である。その他、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明に係る重合体は、溶媒に可溶であり、かつ溶媒溶解時に十分な流動性を有していることから、成型性に優れた重合体として使用される。また、該重合体を含む感光性樹脂組成物は、良好な感光性を有することから、感光性材料として使用される。また、該感光性樹脂組成物を硬化することによって得られる硬化物は、耐熱性に優れていることから、誘電体材料分野で使用される。また、本発明に係る感光性樹脂組成物により得られた硬化物は、耐薬品性、低誘電率性も併せ持つことから、誘電体膜、半導体層間絶縁膜、回路基板フォトレジスト膜、セラミックセンサー用耐熱膜、耐熱塗料、難燃・耐火塗料、建材類コート剤、プラズマディスプレイパネル用誘電体膜などに使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
かご状シルセスキオキサン構造が平均1箇所を超えて他のかご状シルセスキオキサン構造と結合してなるシルセスキオキサン重合体であって、該かご状シルセスキオキサン構造が平均1個以上の感光性付与基を含むシルセスキオキサン重合体と、感光剤と、を含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記感光性付与基がアルカリ溶解性官能基であることを特徴とする請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記感光剤が溶解抑止剤であることを特徴とする請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
かご状シルセスキオキサン構造が平均1箇所を超えて他のかご状シルセスキオキサン構造と結合してなるシルセスキオキサン重合体であって、該かご状シルセスキオキサン構造が平均1個以上のアルカリ溶解性官能基を含むことを特徴とするシルセスキオキサン重合体。
【請求項5】
前記アルカリ溶解性官能基がカルボキシル基又は芳香族性水酸基であることを特徴とする請求項4記載のシルセスキオキサン重合体。
【請求項6】
前記アルカリ溶解性基が酸又は塩基により脱保護可能な保護基で保護されていることを特徴とする請求項4又は請求項5記載のシルセスキオキサン重合体。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を硬化してなることを特徴とする硬化物。
【請求項8】
請求項7記載の硬化物で構成されたことを特徴とする厚膜誘電体。

【公開番号】特開2007−293159(P2007−293159A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−123170(P2006−123170)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】