説明

感光性樹脂組成物及び感光性樹脂積層体

【課題】新規感光性樹脂組成物及びそれから得られる感光性樹脂積層体の提供。
【解決手段】本発明に係る感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性高分子化合物:20〜80質量%、(B)ポリウレタンプレポリマー:10〜70質量%、(C)少なくとも一つの末端エチレン性不飽和基を有する付加重合性モノマー:5〜60質量%、(D)光重合開始剤:0.01〜20質量%を含有してなる感光性樹脂組成物であって、該(B)ポリウレタンプレポリマーが、下記一般式(I):


{式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基又はハロゲン原子を表し、そしてaとbはそれぞれ0〜2の整数であり、かつ、0≦a+b≦4である。}で表される構造を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物及びそれから得られる感光性樹脂積層体に関する、更に詳しくは、本発明は、ガラス、低融点ガラス、セラミック等の被加工基材をサンドブラスト処理する際に、特にプラズマディスプレイパネルの背面板の隔壁パターンの作製工程におけるサンドブラスト処理に、好適に用いられる感光性樹脂組成物及びそれから得られる感光性樹脂積層体、並びにそれらを用いたガラス基材のサンドブラスト表面加工方法及びプラズマディスプレイパネルの背面板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フォトリソグラフィー技術及びサンドブラスト技術の進歩に伴い、ガラスやセラミックを微細なパターンに加工することが可能になってきた。特に低融点ガラス等のガラス基材をサンドブラストで加工して、格子状やストライプ状、又はワッフル形状に隔壁を形成することが必要なプラズマディスプレイパネルの背面板(以下、単にパネルともいう。)の製造においては、画素ピッチの狭幅化に伴い、最近では150μmピッチ以下のパターン形成が要求されるようになってきた。
【0003】
このような微細な隔壁パターンを歩留り良く製造する為に、支持体となるフィルム上に感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層を積層し、更に必要に応じ保護層を積層した感光性樹脂積層体が用いられている。
以下、この感光性樹脂積層体を用いる例として、プラズマディスプレイパネルの背面板の隔壁パターンを形成する方法を説明する。プラズマディスプレイパネルの背面板の隔壁パターンは、一般に、以下の工程を経て形成される:
(I)感光性樹脂積層体の保護層がある場合にはこれを剥がしながら、ホットロールラミネーターを用いて、ガラス基板(以下、単に「基板」と略記する場合もある。)上に、支持体に積層された感光性樹脂積層を、密着させるラミネート工程、
(II)所望の微細パターンを有するフォトマスクを支持体上に密着させた状態で又はは数10〜数100μm離した状態で、活性光線源を用いて露光を施す露光工程、
(III)支持体を剥離した後、アルカリ現像液を用いて感光性樹脂層の未露光部分を溶解除去し、微細な硬化レジストパターン(以下、単に「レジストパターン」と略記する場合もある。)を基板上に形成する現像工程、
(IV)形成されたレジストパターンを有する基板上にらブラスト材を吹き付け、基板を目的の深さに切削するサンドブラスト処理工程、及び
(V)レジストパターンを、アルカリ剥離液を用いて基板から除去する剥離工程。
【0004】
最近、プラズマディスプレイパネルの需要が急速に拡大していることに伴い、パネルの生産性を向上させる為に、1枚の大型の基板に2〜3枚又はそれ以上のパネルを同時に一括製造し、その後で個々のパネルに切り分ける、いわゆるパネルの多面取りが進んでいる。現状、1m幅で1.5m長さ程度の大型の基板を使用し、42インチサイズのパネルを3面取りする場合もある。同時に、隔壁パターンの微細化・高精細化も進んでいる。
【0005】
このような大型の基板上に、上記のようなレジストパターンを形成する場合、大きく3つの課題がある。
第一の課題は、レジストパターンの解像性及びその形状である。レジストパターンの解像性が良好であるほど、サンドブラスト後に微細な加工パターンを得ることができる。しかしながら、耐サンドブラスト性と解像性はトレードオフになることがわかっており、これらを両立できる技術が必要である。また、解像したレジストパターンの形状が矩形に近いほど、良好な隔壁パターンを形成できるため、レジストパターン形状を矩形に保ったまま解像性を向上させることが求められている。
【0006】
第二の課題は、現像工程後におけるレジストパターンの密着性である。大型の基板の中央部と周辺部において、感光性樹脂層の未露光部分の現像液に対する溶解速度は中央部が遅く周辺部が速くなる。すなわち、中央部のレジストパターンが正常に形成するような現像時間に設定してパネルを作成しようとすると、基板の周辺部においてはレジストパターンが正常に形成する現像時間より長い時間現像(過剰現像)されることになる。レジストパターンは現像される時間が長くなれば長くなるほど膨潤し、その膨潤によってレジストパターン内部に応力が発生し、レジストパターン自体を基材から引き剥がす力となって作用する為、密着性を確保するのが非常に困難になる。
【0007】
また、最近の世界的な環境に対する取り組みの中から鉛フリーの材料に対する要望が強くなってきている。プラズマディスプレイパネルの背面板に好適に使用される低融点ガラスには通常鉛が含有されており、鉛フリーの低融点ガラスに転換するべく開発が進められている。鉛を含有させずに低融点を達成する一つの方法としては、アルカリガラスを鉛フリーの低融点ガラスの構成成分に加えることが知られている。
ところが、このようなアルカリ成分を多量に含む鉛フリーの低融点ガラス基板上に、従来の感光性樹脂積層体を用いてレジストパターンを形成する場合には、現像工程においてレジストパターンが基板に十分に密着せずに剥がれてしまう傾向がある(以下、特許文献1を参照のこと)。特に、現像工程における現像時間や、その後にこれに続く水洗時間が増大(過剰水洗)すると、かかる密着性の低下に因る剥がれ傾向がさらに顕著となる。
【0008】
レジストパターンの密着性が低下することは、パネルの量産において、プロセスマージンが極めて狭くなり、生産性や生産歩留まりの点で好ましくない。従って、現像時間や水洗時間が過剰に行われた場合でも、レジストパターンが基材に正常に、かつ、十分に密着していることが求められている。レジストパターンの密着性の低下は、レジストパターン内に必須成分として含まれるポリウレタンモノマーの構造を選択することによって改善できることがわかっている(以下、特許文献2を参照のこと)が、さらなる微細化に対応すべくより高い密着性能が求められている。
【0009】
第三の課題は、現像時間の短縮である。ガラス基板が大型化しているのは前記したとりであるが、現像時間を短縮することによってまず生産性を向上することができる。さらに、ガラス基板の中心部と周辺部の現像時間差が小さくなり、歩留まり向上も期待できる。
この現像時間に最も大きく影響するものの一つとして、ポリウレタンモノマーが挙げられる。これまでにポリウレタンモノマーがいくつか報告されているが、現像時間、解像度、レジストパターン形状及び密着性の全てに関して満足できるものはなく、前述したプラズマディスプレイパネルの高精細化や鉛フリー化に伴う要望に十分に応えられていないのが現状である(以下、特許文献3と4を参照のこと)。
【特許文献1】特開2002−326839号公報
【特許文献2】特開2006−23369号公報
【特許文献3】特開2005−37830号公報
【特許文献4】特開平9−199013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題を解決しうる、すなわち、現像後の解像性、レジストパターンの形状及び密着性が良好であり、かつ、現像時間が短く耐サンドブラスト密着性に優れることに因り微細なパターンを歩留まりよく形成しうる感光性樹脂組成物及びそれから得られる感光性樹脂積層体、並びに該組成物又は積層体を用いたガラス基材等の表面加工方法及びプラズマディスプレイパネルの背面板の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
具体的には、上記課題は、以下の解決手段[1]〜[9]により解決されうる。
[1](A)アルカリ可溶性高分子化合物:20〜80質量%、(B)ポリウレタンプレポリマー:10〜70質量%、(C)少なくとも一つの末端エチレン性不飽和基を有する付加重合性モノマー:5〜60質量%、(D)光重合開始剤:0.01〜20質量%を含有してなる感光性樹脂組成物であって、該(B)ポリウレタンプレポリマーが、下記一般式(I):
【化1】

{式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基又はハロゲン原子を表し、そしてaとbはそれぞれ0〜2の整数であり、かつ、0≦a+b≦4である。}で表される構造を有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【0012】
[2]前記(B)ポリウレタンプレポリマーが、下記一般式(II):
【化2】

{式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、そしてcとdはそれぞれ0〜2の整数であり、かつ、0≦c+d≦4である。}で表される構造を有する、前記[1]に記載の感光性樹脂組成物。
【0013】
[3]前記(B)ポリウレタンプレポリマーが、(a)末端に水酸基を有するポリマー又はモノマーと(b)ポリイソシアネートとの付加重合により得られるポリウレタンの末端イソシアネート基を、(c)活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合の両者を分子内に有する化合物と、反応させて得られるポリウレタンプレポリマーであり、ここで、該(c)活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合の両者を分子内に有する化合物が、下記一般式(III):
【化3】

{式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基又はハロゲン原子を表し、そしてeとfはそれぞれ0〜2の整数であり、かつ、0≦e+f≦4である。}で表される構造を有する、前記[1]に記載の感光性樹脂組成物。
【0014】
[4]前記(b)ポリイソシアネートが、イソホロンジイソシアネートである、前記[3]に記載の感光性樹脂組成物。
【0015】
[5]前記(c)活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合の両者を分子内に有する化合物が、下記一般式(IV):
【化4】

{式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。}で表される構造を有する、前記[3]に記載の感光性樹脂組成物。
【0016】
[6]前記(C)少なくとも一つの末端エチレン性不飽和基を有する付加重合性モノマーが、下記一般式(V):
【化5】

{式中、R及びRは、それぞれ独立に、H又はCHであり、また、A及びBは、それぞれ独立に、炭素数が2〜4個のアルキレン基であり、g1、g2、h1及びh2は、それぞれ、正の整数であり、かつ、g1、g2、h1及びh2の合計は、2〜30であり、そして−(A−O)−と−(B−O)−は、ブロックでもランダムでよい。}で表される化合物;及び
下記一般式(VI):
【化6】

{式中、R及びR10は、それぞれ独立に、H又はCHであり、D及びEは、それぞれ独立に、炭素数が2〜4個のアルキレン基であり、g3、g4、h3及びh4は、それぞれ、正の整数であり、かつ、g3、g4、h3及びh4の合計は、2〜30であり、そして−(A−O)−と−(B−O)−は、ブロックでもランダムでよい。}で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【0017】
[7]支持体と、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層とを含む感光性樹脂積層体。
【0018】
[8]被加工基材の表面加工方法であって、該被加工基材上に、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物又は請求項7に記載の感光性樹脂積層体を適用して感光性樹脂層を形成し、該感光性樹脂層を露光し、未露光の感光性樹脂層を除去してレジストパターンを形成し、その後、得られた被加工基材をサンドブラスト処理することを特徴とする前記方法。
【0019】
[9]プラズマディスプレイパネルの背面板の製造方法であって、ガラス基材上に、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物又は請求項7に記載の感光性樹脂積層体を適用して感光性樹脂層を形成し、該感光性樹脂層を露光し、未露光の感光性樹脂層を除去してレジストパターンを形成し、その後、得られたガラスも基材をサンドブラスト処理することを特徴とする前記方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る感光性樹脂組成物及びこれから得られる感光性樹脂積層体は、該組成物又は積層体を用いた表面加工方法において、現像後の解像性、レジストパターンの形状及び密着性が良好であり、かつ、現像時間が短く耐サンドブラスト密着性に優れることに因り微細なパターンを歩留まりよく形成しうるという効果を有する。本発明に係る感光性樹脂組成物及びこれから得られる感光性樹脂積層体は、ガラス、低融点ガラス、セラミック等の被加工基材、プラズマディスプレイパネル基板等の特に大型の基板に適用する場合により顕著な効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本願発明について具体的に説明する。
(A)アルカリ可溶性高分子化合物
本発明に係る感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性高分子化合物を20〜80質量%含有する。(A)アルカリ可溶性高分子化合物はカルボキシル基を含有する。カルボキシル基の量は、酸当量で100以上600以下が好ましく、より好ましくは250以上450以下である。酸当量とは、1当量のアルカリ可溶性高分子化合物の質量を言う。
(A)アルカリ可溶性高分子化合物中のカルボキシル基は、感光性樹脂層にアルカリ水溶液に対する現像性や剥離性を与えるために必要である。酸当量は、現像耐性が向上し、解像度及び密着性が向上する点から100以上であり、現像性及び剥離性が向上する点から600以下である。酸当量の測定は、平沼産業(株)製平沼自動滴定装置(COM−555)を使用し、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムを用いて電位差滴定法により行われる。
【0022】
(A)アルカリ可溶性高分子化合物の重量平均分子量は、5,000以上500,000以下が好ましい。重量平均分子量は、現像性が向上する点から500,000以下が好ましく、耐サンドブラスト性が向上し、感光性樹脂積層体をロール状に巻き取った場合にロール端面から感光性樹脂組成物が染み出す現象すなわちエッジフューズが抑制される点から5,000以上が好ましい。重量平均分子量は、20,000以上300,000以下であることがより好ましい。
重量平均分子量及び数平均分子量は、日本分光(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)[ポンプ:Gulliver、PU−1580型、カラム:昭和電工(株)製Shodex(登録商標)(KF−807、KF−806M、KF−806M、KF−802.5)4本直列、移動層溶媒:テトラヒドロフラン、ポリスチレン標準サンプル(昭和電工(株)製Shodex STANDARD SM−105)による検量線使用]によりポリスチレン換算として求められる。
【0023】
本発明に用いられる(A)アルカリ可溶性高分子化合物は、後述する第一の単量体の少なくとも1種以上からなる共重合体であるか、又は該第一の単量体の少なくとも1種以上と後述する第二の単量体の少なくとも一種以上からなる共重合体であることが好ましい。
第一の単量体は、分子中にα,β−不飽和カルボキシル基を含有する単量体である。例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸無水物、及びマレイン酸半エステルが挙げられる。中でも、特に(メタ)アクリル酸が好ましい。
ここで(メタ)アクリルとはアクリル及び/又はメタクリルを示す。以下同じである。
【0024】
第二の単量体は、酸性ではなく、分子中に重合性不飽和基を少なくとも一個有する単量体である。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等のビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、及び重合可能なスチレン誘導体等が挙げられる。中でも、特にメチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、ベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0025】
感光性樹脂組成物全体に対する(A)アルカリ可溶性高分子化合物の含有量は、20〜80質量%の範囲であり、好ましくは、30〜70質量%の範囲である。アルカリ現像性を維持する点から20質量%以上であり、また、露光によって形成されるレジストパターンがサンドブラスト耐性を十分に発揮する点から80質量%以下である。
【0026】
(B)ポリウレタンプレポリマー
(B)ポリウレタンプレポリマーは、下記一般式(I):
【化7】

{式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基又はハロゲン原子を表し、そしてaとbはそれぞれ0〜2の整数であり、かつ、0≦a+b≦4である。}で表される構造を有する。
【0027】
上記一般式(I)の例としては、R=R=H、a=b=1である化合物、R=CH、R=H、a=b=1である化合物、R=R=H、a=b=2である化合物、R=R=H、a=1、b=3である化合物、R=R=H、a=3、b=1である化合物、R=R=H、a=0、b=4である化合物、R=R=H、a=4、b=0である化合物、R=R=H、a=0、b=2である化合物、R=R=H、a=2、b=0である化合物、R=H、R=メチル基、a=b=1である化合物、R=H、R=エチル基、a=b=1である化合物、R=H、R=プロピル基、a=b=1である化合物、R=H、R=ブチル基、a=b=1である化合物、R=H、R=ペンチル基、a=b=1である化合物、R=H、R=ヘキシル基、a=b=1である化合物、R=H、R=ヘプチル基、a=b=1である化合物、R=H、R=オクチル基、a=b=1である化合物、R=H、R=ノニル基、a=b=1である化合物、R=H、R=デシル基、a=b=1である化合物、R=H、R=イソプロピル基、a=b=1である化合物、R=H、R=イソブチル基、a=b=1である化合物、R=H、R=イソペンチル基、a=b=1である化合物、R=H、R=イソヘキシル基、a=b=1である化合物、R=H、R=イソヘプチル基、a=b=1である化合物、R=H、R=イソオクチル基、a=b=1である化合物、R=H、R=t−ブチル基、a=b=1である化合物、R=H、R=クロロ基、a=b=1である化合物、R=H、R=ブロモ基、a=b=1である化合物が挙げられる。
【0028】
また、(B)ポリウレタンプレポリマーは、下記一般式(II):
【化8】

{式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、そしてcとdはそれぞれ0〜2の整数であり、かつ、0≦c+d≦4である。}で表される構造を有することが好ましい。
【0029】
上記一般式(II)の例としては、R=H、c=d=1である化合物、R=CH、c=d=1である化合物、R=H、c=d=2である化合物、R=H、c=1、d=3である化合物、R=H、c=3、d=1である化合物、R=H、c=0、d=4である化合物、R=H、c=4、d=0である化合物、R=H、c=0、d=2である化合物、R=H、c=2、d=0である化合物が挙げられる。
これらの中でも、R=R=H、a=b=1である化合物とR=CH、R=H、a=b=1である化合物が好ましい。これらは、単独で使用しても、2種類以上併用してもよい。
【0030】
上記一般式(I)で表される構造を有するウレタンプレポリマーは、(a)末端に水酸基を有するポリマー又はモノマーと(b)ポリイソシアネートとの付加重合により得られるポリウレタンの末端イソシアネート基を、(c)活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合の両者を分子内に有する化合物と、反応させて得ることが好ましい。(B)ポリウレタンプレポリマーの重量平均分子量は2,000〜40,000のものが好ましく、より好ましくは5,000〜30,000である。重量平均分子量は、サンドブラスト耐性を発揮する点から2,000以上が好ましく、また、現像性を維持する点から40,000以下が好ましい。
【0031】
(a)末端に水酸基を有するポリマー又はモノマーの具体例を以下に挙げる。末端に水酸基を有するポリマーとしては、ポリエステルポリオールやポリエーテルポリオールなどのポリオールや、末端水酸基を有する1、4−ポリブタジエン、水添又は非水添1、2−ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体が挙げられる。末端に水酸基を有するモノマーとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのグリコール類や、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸などの分子内にカルボキシル基を有するジオール等が挙げられる。
【0032】
(b)ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4、4’−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、α、α’−ジメチル−o−キシリレンジイソシアネート、α、α’−ジメチル−m−キシリレンジイソシアネート、α、α’−ジメチル−p−キシリレンジイソシアネート、α、α、α’−トリメチル−o−キシリレンジイソシアネート、α、α、α’−トリメチル−m−キシリレンジイソシアネート、α、α、α’−トリメチル−p−キシリレンジイソシアネート、α、α、α’、α’−テトラメチル−o−キシリレンジイソシアネート、α、α、α’、α’−テトラメチル−m−キシリレンジイソシアネート、α、α、α’、α’−テトラメチル−p−キシリレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネートが挙げられる。ジイソシアネート化合物の芳香環を水添化した化合物、例えばm−キシリレンジイソシアネートの水添化物(三井武田ケミカル製タケネート600)なども挙げられる。これらの中でも、イソホロンジイソシアネートが最も好ましい。イソホロンジイソシアネートを用いる場合、全(b)ポリイソシアネート中に、30〜100質量%の割合で用いることが好ましい。
【0033】
(c)活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合の両者を分子内に有する化合物としては、下記一般式(III):
【化9】

{式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基又はハロゲン原子を表し、そしてeとfはそれぞれ0〜2の整数であり、かつ、0≦e+f≦4である。}で表される化合物を用いることが好ましい。
【0034】
上記一般式(III)で表される化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でも、フェノキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートが好ましく、更には2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートが最も好ましい。
(c)活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合の両者を分子内に有する化合物としては、上記一般式(III)で表される化合物以外にも、一般式(III)で表される化合物に対して0.5モル比未満の範囲で下記の化合物を含有してもよい。例えば、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オリゴテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0035】
本発明の(B)ポリウレタンプレポリマーは、例えば、特開平11−188631号公報の実施例に開示されている方法で調製することができる。具体的には、(a)末端に水酸基を有するポリマー又はモノマー100重量部に対して(b)ポリイソシアネートを5〜50重量部付加重合させる。この際、触媒(例えば、ジブチル錫ラウレート)を添加し、よく撹拌してから外温を40〜80℃に昇温し、5時間撹拌する。得られたポリウレタン100重量部に対して、(c)活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合の両者を分子内に有する化合物を5〜30重量部の割合で添加し、約2時間反応させた後で反応を止めることで得ることができる。
【0036】
(B)ポリウレタンプレポリマーの含有量は、感光性樹脂組成物全体の10〜70質量%の範囲であり、好ましくは、15〜60質量%の範囲である。(B)ポリウレタンプレポリマーの含有量は、耐サンドブラスト性を充分に発現する点から10質量%以上であり、また、保存安定性を維持する点から70質量%以下である。
【0037】
(C)少なくとも一つの末端エチレン性不飽和基を有する付加重合性モノマー
(C)少なくとも一つの末端エチレン性不飽和基を有する付加重合性モノマーとしては、例えば、4−ノニルフェニルヘプタエチレングリコールジプロピレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコールアクリレート、無水フタル酸と2−ヒドロキシプロピルアクリレートとの半エステル化合物とプロピレンオキシドとの反応物(日本触媒化学製、商品名OE−A 200)、4−ノルマルオクチルフェノキシペンタプロピレングリコールアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、ヘキサメチレンジイソシアネートとノナプロピレングリコールモノメタクリレートとのウレタン化物等のウレタン基を含有する多官能基(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エステル化合物の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0038】
特に、(C)付加重合性モノマーとして、下記一般式(V):
【化10】

{式中、R及びRは、それぞれ独立に、H又はCHであり、また、A及びBは、それぞれ独立に、炭素数が2〜4個のアルキレン基であり、g1、g2、h1及びh2は、それぞれ、正の整数であり、かつ、g1、g2、h1及びh2の合計は、2〜30であり、そして−(A−O)−と−(B−O)−は、ブロックでもランダムでよい。}で表される化合物;及び
下記一般式(VI):
【化11】

{式中、R及びR10は、それぞれ独立に、H又はCHであり、D及びEは、それぞれ独立に、炭素数が2〜4個のアルキレン基であり、g3、g4、h3及びh4は、それぞれ、正の整数であり、かつ、g3、g4、h3及びh4の合計は、2〜30であり、そして−(A−O)−と−(B−O)−は、ブロックでもランダムでよい。}からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含有することは、本発明の好ましい実施形態である。
【0039】
上記一般式(V)で表される化合物の具体例としては、2,2−ビス{(4−アクリロキシポリエチレンオキシ)シクロヘキシル}プロパン又は2,2−ビス{(4−メタクリロキシポリエチレンオキシ)シクロヘキシル}プロパンが挙げられる。該化合物が有するポリエチレンオキシ基は、モノエチレンオキシ基、ジエチレンオキシ基、トリエチレンオキシ基、テトラエチレンオキシ基、ペンタエチレンオキシ基、ヘキサエチレンオキシ基、ヘプタエチレンオキシ基、オクタエチレンオキシ基、ノナエチレンオキシ基、デカエチレンオキシ基、ウンデカエチレンオキシ基、ドデカエチレンオキシ基、トリデカエチレンオキシ基、テトラデカエチレンオキシ基、及びペンタデカエチレンオキシ基からなる群から選択されることが好ましい。また、2,2−ビス{(4−アクリロキシポリアルキレンオキシ)シクロヘキシル}プロパン又は2,2−ビス{(4−メタクリロキシポリアルキレンオキシ)シクロヘキシル}プロパンも挙げられる。該化合物が有するポリアルキレンオキシ基としては、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の混合物が挙げられ、オクタエチレンオキシ基とジプロピレンオキシ基のブロック構造の付加物又はランダム構造の付加物、及びテトラエチレンオキシ基とテトラプロピレンオキシ基のブロック構造の付加物又はランダム構造の付加物、ペンタデカエチレンオキシ基とジプロピレンオキシ基のブロック構造の付加物又はランダム構造の付加物が好ましい。式中、g1、g2、h1、及びh2の合計は、2〜30がより好ましい。これらの中でも、2,2−ビス{(4−メタクリロキシペンタエチレンオキシ)シクロヘキシル}プロパンが最も好ましい。
【0040】
上記一般式(VI)で表される化合物の具体例としては、2,2−ビス{(4−アクリロキシポリエチレンオキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−メタクリロキシポリエチレンオキシ)フェニル}プロパンが挙げられる。該化合物が有するポリエチレンオキシ基は、モノエチレンオキシ基、ジエチレンオキシ基、トリエチレンオキシ基、テトラエチレンオキシ基、ペンタエチレンオキシ基、ヘキサエチレンオキシ基、ヘプタエチレンオキシ基、オクタエチレンオキシ基、ノナエチレンオキシ基、デカエチレンオキシ基、ウンデカエチレンオキシ基、ドデカエチレンオキシ基、トリデカエチレンオキシ基、テトラデカエチレンオキシ基、及びペンタデカエチレンオキシ基からなる群から選択されることが好ましい。また、2,2−ビス{(4−アクリロキシポリアルキレンオキシ)フェニル}プロパン又は2,2−ビス{(4−メタクリロキシポリアルキレンオキシ)フェニル}プロパンが挙げられる。該化合物が有するポリアルキレンオキシ基としては、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の混合物が挙げられ、オクタエチレンオキシ基とジプロピレンオキシ基のブロック構造の付加物又はランダム構造の付加物、及びテトラエチレンオキシ基とテトラプロピレンオキシ基のブロック構造の付加物又はランダム構造の付加物、ペンタデカエチレンオキシ基とジプロピレンオキシ基のブロック構造の付加物又はランダム構造の付加物が好ましい。式中、g3、g4、h3、及びh4は0又は正の整数であり、g3、g4、h3、及びh4の合計は、2〜30が好ましい。これらの中でも、2,2−ビス{(4−メタクリロキシペンタエチレンオキシ)フェニル}プロパンが最も好ましい。
これらは、単独で使用しても、2種類以上併用しても構わない。
【0041】
(C)付加重合性モノマーの量は、感光性樹脂組成物全体の5〜60質量%の範囲であり、より好ましい範囲は10〜50質量%である。この量は、硬化不良、及び現像時間の遅延を抑える点から5質量%以上であり、また、コールドフロー、及び硬化レジストの剥離遅延を抑える点から60質量%以下である。
【0042】
(D)光重合開始剤
(D)光重合開始剤としては、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジプロピルケタール、ベンジルジフェニルケタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、チオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−フルオロチオキサントン、4−フルオロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、4−クロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン[ミヒラーズケトン]、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどの芳香族ケトン類、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体等のビイミダゾール化合物、9−フェニルアクリジン等のアクリジン類、α、α−ジメトキシ−α−モルホリノ−メチルチオフェニルアセトフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、フェニルグリシン、N−フェニルグリシン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−O−ベンゾイルオキシム、2,3−ジオキソ−3−フェニルプロピオン酸エチル−2−(O−ベンゾイルカルボニル)−オキシム等のオキシムエステル類、p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジエチルアミノ安息香酸及びp−ジイソプロピルアミノ安息香酸並びにこれらのアルコールとのエステル化物、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾールなどのトリアゾール類、テトラゾール類、N−フェニルグリシン、N−メチル−N−フェニルグリシン、N−エチル−N−フェニルグリシン等のN−フェニルグリシン類、1−フェニル−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−(4−tert−ブチル−フェニル)−3−スチリル−5−フェニル−ピラゾリン、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリンなどのピラゾリン類が挙げられる。その中でも特に2−(o−クロロフェニル)−4、5−ジフェニルイミダゾリル二量体とミヒラーズケトン又は4,4’−(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンとの組み合わせが好ましい。
【0043】
(D)光重合開始剤の含有量は、感光性樹脂組成物全体に対して、0.01質量%以上20質量%以下含まれることが好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。十分な感度を得る点から0.01質量%以上が好ましく、感光性樹脂層の基板との密着している側の部分を十分に硬化させる為に、20質量%以下であることが好ましい。
【0044】
本発明に係る感光性樹脂組成物は着色物質を含有してもよい。このような着色物質としては、例えば、フクシン、フタロシアニングリーン、オーラミン塩基、カルコキシドグリーンS、パラマジェンタ、クリスタルバイオレット、メチルオレンジ、ナイルブルー2B、ビクトリアブルー、マラカイトグリーン、ベイシックブルー20、ダイヤモンドグリーンが挙げられる。感光性樹脂組成物が上記の着色物質を含む場合、感光性樹脂組成物全体に対する着色物質の含有量は、0.005〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.01〜1質量%の範囲にあることが更に好ましい。レジスト視認性の点から、感光性樹脂組成物全体に対する着色物質の含有量は0.005質量%以上が好ましく、感度の点から10質量%以下が好ましい。
【0045】
また、本発明の感光性樹脂組成物に、光照射により発色する発色系染料を含有させてもよい。このような発色系染料としては、ロイコ染料とハロゲン化合物の組み合わせがよく知られている。ロイコ染料としては、例えば、トリス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)メタン[ロイコクリスタルバイオレット]、トリス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)メタン[ロイコマラカイトグリーン]等が挙げられる。一方、ハロゲン化合物としては、例えば、臭化アミル、臭化イソアミル、臭化イソブチレン、臭化エチレン、臭化ジフェニルメチル、臭化ベンザル、臭化メチレン、トリブロモメチルフェニルスルホン、四臭化炭素、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリクロロアセトアミド、ヨウ化アミル、ヨウ化イソブチル、1,1,1−トリクロロ−2,2−ビス(p−クロロフェニル)エタン、ヘキサクロロエタンが挙げられる。
【0046】
さらに、本発明の感光性樹脂組成物に、必要に応じて可塑剤を含有させてもよい。このような可塑剤としては、例えば、ジエチルフタレート等のフタル酸エステル類、o−トルエンスルホン酸アミド、p−トルエンスルホン酸アミド、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリ−n−プロピル、アセチルクエン酸トリ−n−ブチル、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル等が挙げられる。
【0047】
さらに、感光性樹脂組成物の熱安定性、保存安定性を向上させるために、感光性樹脂組成物に、ラジカル重合禁止剤やベンゾトリアゾール類を含有させることは好ましいことである。
このようなラジカル重合禁止剤としては、例えば、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ナフチルアミン、tert−ブチルカテコール、塩化第一銅、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、ジフェニルニトロソアミンが挙げられる。
【0048】
また、ベンゾトリアゾール類としては、例えば、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−クロロ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、ビス(N−2−エチルヘキシル)アミノメチレン−1,2,3−ベンゾトリアゾール、ビス(N−2−エチルヘキシル)アミノメチレン−1,2,3−トリルトリアゾール、ビス(N−2−ヒドロキシエチル)アミノメチレン−1,2,3−ベンゾトリアゾール、4−カルボキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、5−カルボキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0049】
ラジカル重合禁止剤及びベンゾトリアゾール類を感光性樹脂組成物中に含有する場合の合計含有量は、好ましくは0.01〜3質量%であり、より好ましくは0.05〜1質量%である。この量は、感光性樹脂組成物に保存安定性を付与する点から0.01質量%以上が好ましく、また、感度を維持する点から3質量%以下が好ましい。
これらラジカル重合禁止剤やベンゾトリアゾール類化合物は単独で使用しても、2種類以上併用してもよい。
【0050】
支持体は、本発明の感光性樹脂層を支持する為のフィルムであり、活性光線を透過させる透明な基材フィルムからなるものが好ましい。このような基材フィルムとしては10μm以上100μm以下の厚みのポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂フィルムがあるが、通常適度な可とう性と強度を有するポリエチレンテレフタレート製の基材フィルムが好ましく用いられる。また、感光性樹脂層からの剥離性を向上させる為に、活性光線を透過させる透明な基材フィルムの片方の表面又は両方の表面に剥離剤を形成したものを用いることもできる。ここでいう剥離剤は、基材フィルムを感光性樹脂層から容易に剥離させる性能を有する化合物であり、公知のものを使用することができるが、シリコーンを含有する剥離剤やアルキッド樹脂などが挙げられる。
【0051】
本発明に係る感光性樹脂積層体は、必要に応じて保護層が積層される。感光性樹脂層との密着力において、感光性樹脂層と支持体との密着力よりも感光性樹脂層と保護層の密着力が充分小さいことがこの保護層に必要な特性であり、これにより保護層が容易に剥離できる。このようなフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム等がある。保護層の厚みは、5〜50μmであることが好ましく、より好ましくは、15〜30μmであることが特に好ましい。破れ難さの点から5μm以上が好ましく、経済性の点から50μm以下が好ましい。
【0052】
支持体、感光性樹脂層、及び保護層を順次積層して感光性樹脂積層体を作製する方法は、従来知られている方法で行うことができる。例えば、感光性樹脂層に用いる感光性樹脂組成物を、これらを溶解する溶剤と混ぜ合わせ均一な溶液にしておき、まず支持体上にバーコーターやロールコーターを用いて塗布して乾燥することで、支持体上に感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層を積層し、感光性樹脂積層体とする。均一な溶液とするために用いる溶剤としては、公知のものを用いることができ、例えば、メチルエチルケトン(MEK)に代表されるケトン類、並びにメタノール、エタノール、及びイソプロピルアルコールなどのアルコール類が挙げられる。感光性樹脂組成物の溶液の粘度が25℃で500〜4000mPa・秒となるように、溶剤を感光性樹脂組成物に添加して粘度調整することが好ましい。
感光性樹脂積層体は、必要により、感光性樹脂層上に更に保護層をラミネートして三層構造としてもよい。
【0053】
以下、本発明に係る感光性樹脂積層体を用いて被加工基材上に微細なパターンを加工する方法の1例について説明する。感光性樹脂積層体の保護層を剥がしながら被加工基材上にホットロールラミネーターを用いて密着させるラミネート工程、所望の微細パターンを有するフォトマスクを支持体上に密着させ活性光線源を用いて露光を施す露光工程、支持体を剥離した後アルカリ現像液を用いて感光性樹脂層の未露光部分を溶解除去して微細なレジストパターンを被加工基材上に形成する現像工程、形成されたレジストパターン上から吹き付けられたブラスト材によって被加工基材を目的の深さに切削するサンドブラスト処理工程、レジストパターンをアルカリ剥離液によって被加工基材から除去する剥離工程を経て、被加工基材上に微細なパターンを加工することができる。
【0054】
前記露光工程において用いられる活性光線源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、カーボンアーク灯、キセノンランプなどが挙げられる。
また、より微細なレジストパターンを得るためには平行光光源を用いるのがより好ましい。ゴミや異物の影響を極力少なくしたい場合には、フォトマスクを支持体上から数十〜数百μm浮かせた状態で露光(プロキシミティー露光)する場合もある。
さらに、マスクレス露光方法を用いることもできる。マスクレス露光はフォトマスクを使用せず基板上に直接描画装置によって露光する。光源としては波長350〜410nmの半導体レーザーや超高圧水銀灯などが用いられる。描画パターンはコンピューターによって制御され、この場合の露光量は、光源照度および基板の移動速度によって決定される。
【0055】
前記現像工程において用いられるアルカリ現像液としては通常炭酸ナトリウム水溶液や界面活性剤水溶液等が用いられる。
【0056】
前記サンドブラスト処理工程には、公知のブラスト材が用いられ、例えば、SiC,SiO、Al、CaCO、ZrO、ガラス、ステンレス等の2〜100μm程度の微粒子が用いられる。
【0057】
前記剥離工程に用いる剥離液としては、通常水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの水溶液等が用いられる。なお、剥離工程の代わりに高温でレジストパターンを焼き飛ばす工程を設けることも可能である。
【0058】
被加工基材としては、ガラス基材、ガラスリブペーストを塗布したガラス基材、セラミック基材、ステンレスなどの金属基材、シリコンウエハー、サファイアなど鉱石の加工、合成樹脂層などの有機基材などが挙げられる。
上述した微細なパターンを加工する方法の好適な応用例として、低融点ガラス等のガラス基板を加工してプラズマディスプレイパネルの背面板を製造することが挙げられる。
以下、実施例及び参考例によって本発明を説明する。
【実施例】
【0059】
実施例1〜8、及び比較例1〜2
以下、実施例1〜8及び比較例1〜2の評価用サンプルの作製方法、並びに得られたサンプルについての評価方法及び評価結果について示す。
1.評価用サンプルの作製
実施例1〜8及び比較例1〜2における感光性樹脂積層体は次の様にして作製した。
<感光性樹脂積層体の作製>
以下の表1に示す組成の感光性樹脂組成物を、よく攪拌、混合し、感光性樹脂組成物の溶液を厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムにバーコーターを用いて均一に塗布し、90℃の乾燥機中で3分間乾燥して35μm厚みの感光性樹脂層を形成した。次に、感光性樹脂層の表面上に30μm厚みのポリエチレンフィルムを張り合わせて感光性樹脂積層体を得た。
【0060】
【表1】

表1中のP−1及びU−1〜U−6の質量部はメチルエチルケトンを含む値である。尚、比較例1〜2中の(B)ウレタンプレポリマー成分には、一般式(I)で表される構造を有する化合物を含まない。
【0061】
表1における略号で表わした感光性樹脂組成物調合液中の材料成分の名称を以下の表2及び表3に示す。
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
<被加工基材の準備>
被加工基材は3mm厚みのソーダガラス及び以下の方法で作成したガラスペースト塗工済みソーダガラスの2種類を用いた。3mm厚みのソーダガラス上に、プラズマディスプレイ用ガラスペースト(日本電気硝子(株)製 PLS−3553)を、スクリーン印刷法を用いて、ガラスペーストの乾燥後の厚みが150μmとなるように、ソーダガラス上に塗布、乾燥しガラスペースト塗工済みソーダガラスを作製した。
【0064】
<ラミネート>
感光性樹脂積層体のポリエチレンフィルムを剥がしながら、被加工基材にホットロールラミネーター(旭化成エンジニアリング(株)製「AL−70」)により105℃でラミネートした。エア圧力は0.15MPaとし、ラミネート速度は2.0m/minとした。
【0065】
<露光>
支持体越しに感光性樹脂層に、必要なフォトマスクを通して、超高圧水銀ランプ(オーク製作所製HMW−801)により200mJ/cmで露光した。
【0066】
<現像>
支持体を剥離した後、30℃の0.4質量%の炭酸ナトリウム水溶液を最小現像時間の1.5倍の現像時間でスプレーし、感光性樹脂層の未露光部分を溶解除去した。
【0067】
<サンドブラスト>
被加工基材上に形成されたレジストパターンに対し、Xハイパーブラスト装置HCH−3X7BBART−411M(不二製作所(株)製)を用いて、サンドブラスト加工を施した。研磨剤にS9#1200(不二製作所(株)製)を使用し、ホース内圧0.08MPa、ガン移動速度20m/分、コンベア移動速度100mm/分、研磨剤噴射量500g/分とした。
【0068】
2.評価方法
(1)最小現像時間
上記<露光>操作をし、支持体を剥離した後、30℃の0.4質量%炭酸ナトリウム水溶液をスプレーし、未露光の感光性樹脂層が溶解するのに要する時間を測定し、これを最小現像時間とした。この最小現像時間により次の様にランク分けした。
40秒以下:○
40秒を越え60秒以下:△
60秒以上:×
【0069】
(2)解像性
上記<露光>の際に、露光部と未露光部の幅が1:1の比率のラインパターンマスクを通して露光した。最小現像時間の1.5倍の現像時間で現像し、硬化レジストラインが正常に形成されている最小マスクライン幅を解像性の値とした。この解像性により次の様にランク分けした。
70μm以下:○
70μmを越え90μm以下:△
90μmを越える:×
【0070】
(3)レジストパターン形状
上記<現像>の後に、硬化レジストパターンのマスクライン幅が100μmのレジストパターン部分を光学顕微鏡で観察することにより次の様にランク分けした。
レジストパターン形状が矩形である:○
レジストパターン形状が矩形でない:×
【0071】
(4)密着性
上記<露光>の際に、露光部と未露光部の幅が1:100の比率のラインパターンマスクを通して露光した。最小現像時間の1.5倍の現像時間で現像し、硬化レジストラインが正常に形成されている最小マスクライン幅を密着性の値とした。この密着性により次の様にランク分けした。
50μm以下:○
50μmを越え70μm以下:△
70μmを越える:×
【0072】
(5)耐サンドブラスト密着性
上記<露光>の際に、露光部と未露光部の幅が1:2の比率のラインパターンを有するフォトマスクを通して、露光・現像した。次いで、サンドブラスト処理を行い、硬化レジストラインが欠けたり剥がれたりせずに正常に形成されている最小マスク幅を耐サンドブラスト密着性の値とした。この耐サンドブラスト密着性により次の様にランク分けした。
50μm以下:○
50μmを越え80μm以下:△
80μmを越える:×
【0073】
3.評価結果
実施例1〜8及び比較例1〜2の評価結果を先の表1に示す。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係る感光性樹脂組成物及びこれから得られる感光性樹脂積層体は、該組成物又は積層体を用いた表面加工方法において、現像後の解像性、レジストパターンの形状及び密着性が良好であり、かつ、現像時間が短く耐サンドブラスト密着性に優れることに因り微細なパターンを歩留まりよく形成しうるという効果を有する。したがって、本発明に係る感光性樹脂組成物及びこれから得られる感光性樹脂積層体は、ガラス、低融点ガラス、セラミック等の被加工基材、プラズマディスプレイパネル基板等の特に大型の基板に好適に使用されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ可溶性高分子化合物:20〜80質量%、(B)ポリウレタンプレポリマー:10〜70質量%、(C)少なくとも一つの末端エチレン性不飽和基を有する付加重合性モノマー:5〜60質量%、(D)光重合開始剤:0.01〜20質量%を含有してなる感光性樹脂組成物であって、該(B)ポリウレタンプレポリマーが、下記一般式(I):
【化1】

{式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基又はハロゲン原子を表し、そしてaとbはそれぞれ0〜2の整数であり、かつ、0≦a+b≦4である。}で表される構造を有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(B)ポリウレタンプレポリマーが、下記一般式(II):
【化2】

{式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、そしてcとdはそれぞれ0〜2の整数であり、かつ、0≦c+d≦4である。}で表される構造を有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)ポリウレタンプレポリマーが、(a)末端に水酸基を有するポリマー又はモノマーと(b)ポリイソシアネートとの付加重合により得られるポリウレタンの末端イソシアネート基を、(c)活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合の両者を分子内に有する化合物と、反応させて得られるポリウレタンプレポリマーであり、ここで、該(c)活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合の両者を分子内に有する化合物が、下記一般式(III):
【化3】

{式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基又はハロゲン原子を表し、そしてeとfはそれぞれ0〜2の整数であり、かつ、0≦e+f≦4である。}で表される構造を有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(b)ポリイソシアネートが、イソホロンジイソシアネートである、請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(c)活性水素を有する官能基とエチレン性不飽和結合の両者を分子内に有する化合物が、下記一般式(IV):
【化4】

{式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。}で表される構造を有する、請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(C)少なくとも一つの末端エチレン性不飽和基を有する付加重合性モノマーが、下記一般式(V):
【化5】

{式中、R及びRは、それぞれ独立に、H又はCHであり、また、A及びBは、それぞれ独立に、炭素数が2〜4個のアルキレン基であり、g1、g2、h1及びh2は、それぞれ、正の整数であり、かつ、g1、g2、h1及びh2の合計は、2〜30であり、そして−(A−O)−と−(B−O)−は、ブロックでもランダムでよい。}で表される化合物;及び
下記一般式(VI):
【化6】

{式中、R及びR10は、それぞれ独立に、H又はCHであり、D及びEは、それぞれ独立に、炭素数が2〜4個のアルキレン基であり、g3、g4、h3及びh4は、それぞれ、正の整数であり、かつ、g3、g4、h3及びh4の合計は、2〜30であり、そして−(A−O)−と−(B−O)−は、ブロックでもランダムでよい。}で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
支持体と、請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層とを含む感光性樹脂積層体。
【請求項8】
被加工基材の表面加工方法であって、該被加工基材上に、請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物又は請求項7に記載の感光性樹脂積層体を適用して感光性樹脂層を形成し、該感光性樹脂層を露光し、未露光の感光性樹脂層を除去してレジストパターンを形成し、その後、得られた被加工基材をサンドブラスト処理することを特徴とする前記方法。
【請求項9】
プラズマディスプレイパネルの背面板の製造方法であって、ガラス基材上に、請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物又は請求項7に記載の感光性樹脂積層体を適用して感光性樹脂層を形成し、該感光性樹脂層を露光し、未露光の感光性樹脂層を除去してレジストパターンを形成し、その後、得られたガラスも基材をサンドブラスト処理することを特徴とする前記方法。

【公開番号】特開2009−210898(P2009−210898A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55001(P2008−55001)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】