説明

感光性組成物及びその用途

【課題】不飽和二重結合を有し変性ポリビニルアルコールを含む感光性組成物の提供。
【解決手段】分子主鎖中に、一般式で表される不飽和二重結合を有する結合単位を含有する変性ポリビニルアルコールを含む感光性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性組成物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
異方的に複数層の回路を有するプリント基板を製造するには、基板上に形成させたレジスト層をソフトベークした後に、さらにレジスト材料を塗布して多層構造とする必要がある。この場合には、後から塗布したレジスト材料が下層のレジスト材料と混ざり合ってしまい、本来のレジスト材料の性能が損なわれる場合がある。
【0003】
レジスト材料同士が混ざり合わないようにする手段として、アルカリ現像液には可溶でかつ未露光部のレジスト材料を溶解させる溶媒には不溶な樹脂薄膜を、これらレジスト材料同士の層間分離膜として介在させ、レジスト層に回路を形成させた後に層間分離膜を溶解除去させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、希アルカリ水溶液で現像可能な水溶性のレジスト材料は、この層間分離膜を必要とせず、現像時に溶剤を用いる必要がないため、環境汚染防止性、火災防止性などに優れており、近年、特にプリント配線板製造用インク、グラビアロール蝕刻用インク、カラーフィルタ画素製造用インク、スクリーン印刷版製造用感光性組成物、カラーフィルタ保護膜製造用インク等の分野に盛んに利用されている(例えば、特許文献2〜3参照)。
【0004】
水溶性のレジスト材料として、ベース材料としてポリビニルアルコールを用いたものも知られている(例えば、特許文献4〜6参照)。
【0005】
【特許文献1】特開昭63−202026号公報
【特許文献2】特開平05−224413号公報
【特許文献3】特開平05−241340号公報
【特許文献4】特開2006−064851号公報
【特許文献5】特開2004−348141号公報
【特許文献6】特開平11−172179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、分子内の主鎖に特定モノマー由来の不飽和二重を有する変性ポリビニルアルコールを用いた感光性組成物及びその用途を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
特定のモノマーを共重合させて、ケン化させて得られた変性ポリビニルアルコールと、光重合開始剤とを含む感光性組成物により上記の課題を解決できる。
【0008】
すなわち本発明は、分子主鎖中に、一般式(化9)で表される結合単位を含有する変性ポリビニルアルコールと、光重合開始剤とを含有する感光性組成物である。変性ポリビニルアルコールは、0.2質量%の、水溶液、メタノール溶液または水メタノール混合溶液の紫外線吸収スペクトルによる270nmの吸光度0.05以上のものであることが好ましく、未変性ポリビニルアルコールの量が25%以下であることが好ましい。
感光性組成物は、光重合性モノマーを含有させることでレジスト材料とすることができる。得られたレジスト材料は、支持体上に塗布、乾燥させることで、感光性フィルムとしたり、直接基板上に塗布、乾燥させてレジスト層を作成したりできる。
レジスト層は、画像露光した後、未露光部を溶解除去してプリント基板を得る際に、未露光部を溶解除去するエッジング液として、酸触媒とアルデヒド類を含有するエッジング液を使用して変性ポリビニルアルコールをアセタール化させることもできる。
【化9】

(式中、X1とX2は、炭素数1〜12の低級アルキル基、水素原子、金属塩のいずれか一種を表す。gは、0〜3の整数を表す。hは、0〜12の整数を表す。Y1は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩、水素原子のいずれか一種を表す。)
【発明の効果】
【0009】
分子内の主鎖に特定モノマー由来の不飽和二重を有する変性ポリビニルアルコールを含有する感光性組成物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
変性ポリビニルアルコールは、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーと、ビニルエステル単位を有するモノマーを共重合させた後に、ケン化させてカルボニル基含有ポリビニルアルコールを得、洗浄、乾燥を行って得られるものであり、主鎖にカルボキシル基を起点とする不飽和二重結合をランダムに導入させたものである。
【0011】
エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとしては、一般式(化10)で表されるものを好適に使用出来る。
【化10】

(式中、X3とX4は、炭素数1〜12の低級アルキル基、水素原子のいずれか一種を表す。iは、0〜12の整数を表す。Y2は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩、水素原子のいずれか一種を表す。)
これらモノマーとしては、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等がある。
【0012】
また、一般式(化11)で表されるモノマーも好適に使用出来る。
【化11】

(式中、X5とX6は、炭素数1〜12の低級アルキル基、水素原子のいずれか一種を表す。jは、0〜12の整数を表す。Y3は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩、水素原子のいずれか一種を表す。)
これらモノマーとしては、例えば、フマル酸ジメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、シトラスコン酸ジメチル等がある。
【0013】
また、一般式(化12)で表されるモノマーも好適に使用出来る。
【化12】

(式中、kは、0〜12の整数を表す。Y4は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩、水素原子のいずれか一種を表す。)
これらモノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水シトラスコン酸等がある。
【0014】
これらモノマーの含有量(共重合量)は、特に限定するものではないが、分子内の不飽和二重結合量と水溶性を確保する観点から、0.1〜50モル%が好ましく、0.1〜10モル%がより好ましい。
【0015】
ビニルエステル単位を有するモノマーとしては、特に限定するものではないが、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等があり、安定して重合を行えるという観点から酢酸ビニルが好ましい。
【0016】
また、必要に応じて、これらのモノマーと共重合可能なモノマーを共重合させてもよい。共重合可能なモノマーとしては、特に限定するものではないが、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フタル酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和酸類、またはその塩類、または炭素数1〜18のモノアルキルエステル類もしくはジアルキルエステル類、アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩などのアクリルアミド類、メタクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩などのメタクリルアミド類、炭素数1〜18のアルキル鎖長を有するアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドなどのN−ビニルアミド類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類、トリメトキシビニルシランなどのビニルシラン類、酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール等のアリル化合物、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物、酢酸イソプロペニル等がある。これら共重合可能なモノマーの使用量は、特に限定するものではないが、使用する全モノマーに対して0.001〜20モル%が好ましい。
【0017】
変性ポリビニルアルコールの数平均分子量(以下Mnと略記する。)は、特に限定するものではないが、一般に使用されている1900〜66500の範囲がよく、水溶性、保護コロイド性のバランスを向上させる観点から3800〜28500の範囲がより好ましい。
【0018】
モノマーの重合方法は、特に限定するものではないが、公知の重合方法が用いられ、通常、メタノール、エタノールあるいはイソプロピルアルコールなどのアルコールを溶媒とする溶液重合が行なわれる。バルク重合、乳化重合、懸濁重合を行なうことも可能である。かかる溶液重合において、連続重合でもバッチ重合でもよく、モノマーは、分割して仕込んでもよいし、一括で仕込んでもよく、あるいは連続的にまたは断続的に添加するなど任意の手段を用いてよい。
【0019】
溶液重合において使用する重合開始剤は、特に限定するものではないが、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルパレロニトリル、アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルパレロニトリル)等のアゾ化合物、アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド、2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテート等の過酸化物、ジイソプピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物、t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート等のパーエステル化合物、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスメトキシバレロニトリルなどの公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。重合反応温度は、通常30℃〜90℃程度の範囲から選択される。
【0020】
ケン化は、モノマーを共重合させて得られた共重合体をアルコールに溶解し、アルカリ触媒又は酸触媒の存在下で分子中のエステルを加水分解するものである。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等がある。アルコール中の共重合体の濃度は、特に限定するものではないが、10〜80重量%の範囲から選ばれる。アルカリ触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒を用いることができ、酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸等の無機酸水溶液、p−トルエンスルホン酸等の有機酸を用いることができる。これら触媒の使用量は、共重合体に対して1〜100ミリモル当量にすることがよい。ケン化温度は、特に限定するものではないが、10〜70℃、好ましくは30〜40℃の範囲がよい。反応時間は、特に限定するものではないが、30分〜3時間にわたって行われる。
【0021】
変性ポリビニルアルコールの吸光度は、特に限定するものではないが、0.2質量%の、水溶液、メタノール溶液または水メタノール混合溶液の紫外線吸収スペクトルによる270nmの吸光度が、0.05以上のものが好ましい。この吸光度は、ケン化工程において使用する触媒の量、ケン化時間、ケン化温度を変更することによって任意の値に調整することができる。
【0022】
ここで、紫外線吸収スペクトルの帰属については、特開2004−250695公報等に、215nmの吸収はポリビニルアルコール系樹脂中の−CO−CH=CH−の構造に帰属し、280nmの吸収はポリビニルアルコール系樹脂中の−CO−(CH=CH)−の構造に帰属し、320nmの吸収はポリビニルアルコール系樹脂中の−CO−(CH=CH)−の構造に帰属に関するという記載がある。
【0023】
一般的なアルデヒド類を連鎖移動剤として用いたポリビニルアルコールの不飽和二重結合の二連鎖構造(−CO−(CH=CH)−)由来の紫外線吸収スペクトルは、280nm近傍にピークトップがくるが、本発明の変性ポリビニルアルコールにおける、一般式(化13)の構造に由来し270nm中心で265〜275nmの範囲に含まれるピークを有するものである。比較のチャートを(図1)に示す。
【化13】

【0024】
変性ポリビニルアルコールのケン化度は、特に限定するものではないが、十分な不飽和二重結合を生成させるという観点から30モル%〜99.9モル%がよい。
【0025】
光重合開始剤は、光の照射によってラジカルを発生させて変性ポリビニルアルコールを架橋させるために配合する化合物であり、約300〜800nm、より好ましくは330〜500nmの範囲に少なくとも約50の分子吸光係数を有する成分を1種以上含有していることが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、ロフィン2量体、ベンゾインおよびベンゾインエーテル類、ポリハロゲン類およびこれらの2種以上を組合せたものなどがある。
【0026】
これら光重合開始剤の具体例としては、特に限定するものではないが、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−ジメチルアミノアセトフェノン、ベンジル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン、キサントン、チオキサントン、2−クロルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、フルオレノン、アクリドンなどがある。
【0027】
光重合開始剤の含有量は、光重合性組成物の固形分に対して、好ましくは0.1〜20wt%、より好ましくは0.2〜10wt%である。この範囲に限定することにより、変性ポリビニルアルコールを架橋させるための十分な効果が得られ、感光性組成物の製膜性を維持することができる。
【0028】
感光性組成物は、光重合性モノマーを添加することにより、レジスト材料として利用することができる。
光重合性モノマーとしては、例えば、特開昭60−258539号、特開平2−269721号明細書に記載されているような、公知の(メタ)アクリル酸エステルを挙げることができる。
【0029】
これら化合物の具体例としては、特に限定するものではないが、多価アルコールにα、β不飽和カルボン酸を付加して得られる化合物、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリットペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリットヘキサ(メタ)アクリレート等;グリシジル基含有化合物にα、β−不飽和カルボン酸を付加して得られる化合物、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート等;多価カルボン酸、例えば、無水フタル酸等と水酸基及びエチレン性不飽和基を有する物質、例えば、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等とのエステル化物;アクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、例えば(メタ)アクリル酸メチルエチル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル等が用いられ、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2価アルコール及び2価アルコールの(メタ)アクリル酸のモノエステルを反応させて得られるウレタンジアクリレート化合物、ビスフェノールA、アルキレングリコール及びアクリル酸又はメタクリル酸の付加物、β−フェノキシエトキシエチルアクリレート等も用いられる。これらの化合物は、単独であるいは2種以上組み合わせて用いられる。
【0030】
レジスト材料には、必要に応じて、熱重合禁止剤、可塑剤、色素、変色剤、密着促進剤、タルク等の公知の添加物を添加してもよく、露光部が変色するように四臭化炭素等のハロゲン化合物とロイコ染料との組合せを添加してもよい。また、これによって目的とするレジスト材料、樹脂凸版、平版印刷版、フォトマスク等を広範に調製できる。
【0031】
レジスト材料には、染料、顔料等の着色剤を含有させてもよい。着色剤としては、例えば、フクシン、オーラミン塩基、クリスタルバイオレット、ビクトリアピアブルー、マラカイトグリーン、メチルオレンジ、アシッドバイオレットRRH等が用いられる。
【0032】
熱重合禁止剤は、レジスト材料の熱的な重合や経時的な重合を防止するために添加するもので、これにより光重合性組成物の調製時や金属板に積層して使用するまでの保存時の化学的な安定性を高めることができる。熱重合禁止剤の例としては、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、ベンゾキノン、o−トルキノン、p−トルキノン、t−ブチルカテコール、ピロガロール、2−ヒドロキシベンゾフェノン、4−メトキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、塩化第一銅、フェノチアジン、フェニドン、フロラニル、クロラニル、ナフチルアミン、ピリジン、p−トルイジン、β−ナフトール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、ピクリン酸、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアルミニウム塩もしくはアンモニウム塩、メチレンブルー有機銅、サリチル酸メチル、アリールフォスファイト等が挙げられる。熱重合禁止剤の好ましい添加量は、レジスト材料の固形分に対して、0.001〜10wt%、より好ましくは、0.01〜3wt%である。この範囲に限定することにより、熱安定性を向上させるとともに、感光時の光に対する感度を維持することができる。
下する。
【0033】
可塑剤は、レジスト材料の光硬化前後の膜質やその他の物性、感光性等を調整するために添加する。可塑剤の例としては、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジアリル等のフタル酸エステル類、トリエチレングリコールジアセテート、テトラエチレングリコールジアセテート等のグリコールエステル類、p−トルエンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、N−n−ブチルベンゼンスルホンアミド等の酸アミド類、アジピン酸ジイソブチル、アゼライン酸ジオクチル、マレイン酸ジブチル等の脂肪族2塩基酸エステル類、クエン酸トリブチル、グリセリントリアセテート、ラウリン酸ブチル4,5−ジエポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジオクチルなどが挙げられる。可塑剤の好ましい添加量は、レジスト材料の固形分の0.001〜50wt%であり、より好ましくは、0.01〜20wt%である。この範囲に限定することにより、現像性や画質に影響を低下させずに、上記効果を得ることができる。
【0034】
色素は、レジスト材料の着色のために添加される。色素の例としては、マラカイトグリーン、メチルグリーン、ブリリアトグリーン、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、エチルバイオレット、ビクトリアピュアブルーBOH、オイルブルー#603(オリエント化学工業株式会社製)、エオシン、エリスロシンB、ローズベンガル、ローダミンB、ローダミン6G、2,7−ジクロロフルオレセイン、フェノールフタレイン、アリザリンレッドS、チモールフタレイン、キナルジンレッド、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、ジフェニルトリアゼン、キシレノールブルー、メチルコンゴレッド、ジフェニルチオカルバゾン、パラメチルレッド、コンゴーレッド、ベンゾブルブリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルーA、フェナセタリン、パラフクシン、ベーシックフクシン等を挙げることができる。色素の好ましい添加量は、レジスト材料の固形分の0.001〜10wt%、より好ましくは0.1〜5wt%である。この範囲に限定することにより、感光時の光に対する感度を維持しつつ上記効果をえることができる。
【0035】
変色剤は、レジスト材料上へフォトマスクを通して光照射したときに可視像が得られるように添加される。変色剤の例としては、前記の色素の他にジフェニルアミン、ジベンジルアニリン、トリフェニルアミン、ジエチルアニリン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、p−トルイジン、4,4’−ビフェニルジアミン、o−クロロアニリン、p,p’,p”−ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン、p,p’−テトラメチルジアミノトリフェニルメタン、 p,p’,p”−トリアミノトリフェニルカルビノール等が挙げられる。変色剤の好ましい添加量は、レジスト材料の固形分の0.001〜10wt%、より好ましくは0.01〜5wt%である。この範囲に限定することにより、感光時の光に対する感度を維持しつつ画像のカブリを抑えることができる。
【0036】
レジスト材料は、公知の方法により基板に塗布、乾燥させてレジスト層とすることができ、これに光源を用いて画像を露光した後、未露光部を現像液によって溶解除去(現像)することにより、基板上にレジスト像を形成することができる。こうして得られたレジスト像を有する基板は、その後、塩化第二鉄、塩化第二銅、過酸化水素−硫酸、アルカリ状アンモニアなどのエッチング液を用いて、露呈した基板上の金属板や金属箔部分を除去し、さらに、苛性ソーダ、苛性カリなどのアルカリ水溶液や塩化メチレンなどでレジスト像自体を除去してプリント基板とすることができる。
【0037】
レジスト材料を露光するための光源は、紫外線を多量に発生できる装置が好ましく、例えば、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、紫外光用各種レーザーランプ、蛍光灯、タングステンランプ等が挙げられる。
【0038】
レジスト層の未露光部を溶解除去する現像液としては、例えば、水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、アンモニア等の0.1〜10wt%のアルカリ水溶液を用いることができ、さらに、アミン類、例えばブチルアミン、ヘキシルアミン、ベンジルアミン、アリルアミン等の1級アミン、ジエチルアミン、ベンジルエチルアミン等の2級アミン、トリエチルアミン等の3級アミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−1,3−プロパンジオール等のヒドロキシルアミン、モルホリン、ピリジン、ピペラジン、ピペリジン等の環状アミン、前記アミンの硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、ピロリン酸塩等の塩基性塩、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等のヒドロキシ塩等を使用することもできる。
【0039】
レジスト材料は、これを支持体上に塗布、乾燥した後、支持体から剥離して感光性フィルムとして使用することもできる。支持体としては、ポリマーフィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等からなるフィルムが用いられ、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。これらの重合体フィルムは、後に感光層から除去可能でなくてはならないため、除去が不可能となるような材質であったり、表面処理が施されたものであってはならない。これらの重合体フィルムの厚さは、通常5〜100μm、好ましくは10〜30μmである。これらの重合体フィルムの一つは感光層の支持フィルムとして、他の一つは感光層の保護フィルムとして感光層の両面に積層してもよい。
【0040】
感光性フィルムを製造するに際しては、まず、レジスト材料を溶媒に溶解または分散する。溶媒は、レジスト材料を溶解または分散する溶媒であればよく、例えば、水、アセトン、メチルエチメルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のエーテル系溶剤、ジクロルメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール系溶剤などが用いられる。これらの溶剤は単独で又は2種以上混合して用いられる。
【0041】
次いで、溶液状またはエマルジョン状となったレジスト材料をポリマーフィルム上に均一に塗布し、加熱及び/又は熱風吹き付けにより溶媒を除去し、乾燥させた後、支持体から剥離して感光性フィルムとする。感光性フィルムの厚さには特に制限はなく、通常10〜100μm、好ましくは20〜60μmとされる。
【0042】
感光性フィルムは、基板上にラミネートすることでレジスト層とすることができる。このレジスト層は、直接レジスト材料を基板に塗布、乾燥させて得られたレジスト層と同様の方法によって、基板上にレジスト像を形成することができ、さらに同様の方法によって、プリント基板を得ることができる。
【0043】
感光性フィルムは、基板上にラミネートせずに、画像を露光した後、未露光部を現像液によって溶解除去(現像)することにより、テンティング用やエッチング用のレジストフィルムとすることもできる。この際に、現像液中へ酸触媒とアルデヒド類を含有させることで、変性ポリビニルアルコールをアセタール化させて、耐水性を向上させてもよい。なお、現像液は、前述のものを使用すればよい。
【0044】
アルデヒド類としては、特に限定するものではないが、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、t−ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド類、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラールなどの脂環族アルデヒド類、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ハロゲン置換ベンズアルデヒド、フェニル置換アルキルアルデヒドなどの芳香族アルデヒド類などがある。これらの中でも、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒドは、取り扱いが容易であるため好ましく用いられる。これらのアルデヒドは単独で用いてもよく、2種以上のものを併用してもよい。
【0045】
酸触媒は、特に限定するものではないが、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、蓚酸、コハク酸、クエン酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸;塩酸、リン酸、硫酸、硝酸等の無機酸等などがあり、これらの酸触媒を、単独で用いてもよく、2種以上のものを併用してもよい。これらの酸触媒は、一般に反応液のpHが0.3〜2.0となるように調整して添加することが好ましい。
【実施例】
【0046】
以下、本発明について実施例を挙げて更に詳しく説明する。
尚、特に断りがない限り、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0047】
実施例1
<変性ポリビニルアルコールの製造>
酢酸ビニル17部、メタノール14部、マレイン酸ジメチル0.023部及び酢酸ビニルに対して0.10%のアゾビスイソブチロニトリルを重合缶に仕込み、窒素置換後加熱して沸点まで昇温し、更に、酢酸ビニル6部、メタノール5部及びマレイン酸ジメチル0.207部の混合液を重合率75%に達するまで連続的に添加して重合させ、重合率90%に達した時点で重合を停止した。次いで常法により未重合の酢酸ビニルを除去し、得られた重合体を水酸化ナトリウムで常法によりケン化した。その後、90℃で90分熱風乾燥し、分子量(Mn)11000、ケン化度88.0モル%、マレイン酸ジメチル0.6モル%、0.2%水溶液の波長270nmにおける吸光度0.9、無変性ポリビニルアルコール量13%の変性ポリビニルアルコールを得た。
【0048】
<分析方法>
変性ポリビニルアルコールのケン化度は、JIS K 6276「3.5ケン化度」に準じて測定したものであり、変性ポリビニルアルコールの分子量は、GPCを使用し、試料濃度0.25w/v%水溶液を40℃で測定し、標準ポリエチレングリコール換算でMnを計算しものである。無変性ポリビニルアルコールの含有量は、変性ポリビニルアルコールをメタノール中でアルカリ触媒にて完全ケン化し、ソックスレー抽出した試料を濃度0.01w/v%水溶液に調整し、イオン排除のHPLCを使用し、IR検出器の面積比で計算したものである。270nm吸光度は、変性ポリビニルアルコールを0.2質量%の水溶液に調整し、270nmの紫外線の吸光度を測定したものである。
【0049】
得られたポリビニルアルコール10質量部と、水70質量部、メタクリル酸メチル10質量部、メタクリル酸5質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)5質量部、2−ヒドロキシエトキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(光触媒)0.4質量部を混合して感光性組成物を得た。
得られた感光性組成物を、厚さ20μmのポリエチレンテレフタレート製の支持体上に塗布し、100℃で2分間乾燥して約40μm厚の感光性フィルムを得た。
この感光性フィルムを、清浄化した銅張積層板(銅厚35μ)上に105℃で積層した。15分後に以下に述べる特性を有するネガ原稿を介して、100w水銀灯(SZAX(株)製SBL−100B)を用いて、露光量1500mJ/cmで露光した。
【0050】
ネガ原稿は、ライン幅/スペース幅(L/S)=1/3、ライン幅=100μm〜600μm(100μステップ、各幅のラインは5本ずつある)を使用した。
【0051】
<露光直後の性能評価>
露光20分後、30℃の水で40秒間スプレー現像したのち、20℃の水で40秒間水洗した。このようにして得られた原稿によるレジストパターンを目視、および光学顕微鏡で観察した。評価は以下のように行った。
【0052】
<光硬化性>
レジストパターンを観察し、5本のライン全てが、よれたり剥がれたりせずに残っている最も細い線のライン幅を、光硬化性として記録した。この方法では、ライン幅が小さいほど光硬化性が高いことがわかる。
【0053】
<エッチング性>
同サンプルを以下の条件でエッチング処理した。得られたサンプルの非画像部に銅が残っていないものが良い。
・液組成:塩化第二鉄二水和物400g/l、35%塩酸100g/l、ブチルアルデヒド10g/l
・液温50℃
・エッチング時間20分
・水洗時間2.0分
【0054】
実施例2〜6
ケン化度、分子量(Mn)、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーの種類、変性量をそれぞれ表1に記載したように変えた以外は、実施例1と同様にして変性ポリビニルアルコールを作成し、実施例1と同様に評価を行った。
【0055】
比較例1〜3
ケン化度、分子量(Mn)をそれぞれ表1に記載したように変えた以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアルコールを作成し、実施例1と同様に評価を行った。
【0056】
比較例4
けん化度、分子量(Mn)、メタノール以外の連鎖移動剤種、連鎖移動剤量をそれぞれ表1に記載したように変えた以外は、実施例1と同様にして変性ポリビニルアルコールを作成し、実施例1と同様に評価を行った。
【0057】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の感光性組成物は、半導体デバイス、磁気バブル素子、光ディスク、液晶等の製造時のリソグラフィー技術を用いる際にパタン形成可能な水溶性の感光性組成物であって、特にプリント配線板製造用フォトレジストインクとして有用である。また、紫外線、電子線等のエネルギー線で容易に硬化させることが可能であり、塗料、インキ、接着剤、印刷版、エッチングレジスト、ソルダーレジストに用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施例2、実施例4の紫外線吸収スペクトルと、従来のアルデヒド変性ポリビニルアルコールの紫外線吸収スペクトルを比較した図
【符号の説明】
【0060】
1 実施例2の紫外線吸収スペクトル
2 実施例4の紫外線吸収スペクトル
3 従来のアルデヒド変性ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製L−8)の紫外線吸収スペクトル
4 従来のアルデヒド変性ポリビニルアルコール(シントマー・リミテッド製アルコテックス72.5)の紫外線吸収スペクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子主鎖中に一般式(化1)で表される結合単位を含有する変性ポリビニルアルコールと、光重合開始剤とを含有する感光性組成物。
【化1】

(式中、X1とX2は、炭素数1〜12の低級アルキル基、水素原子、金属塩のいずれか一種を表す。gは、0〜3の整数を表す。hは、0〜12の整数を表す。Y1は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩、水素原子のいずれか一種を表す。)
【請求項2】
変性ポリビニルアルコールが、0.2質量%の、水溶液、メタノール溶液または水メタノール混合溶液の紫外線吸収スペクトルによる270nmの吸光度が0.05以上のものであることを特徴とする請求項1に記載した感光性組成物。
【請求項3】
変性ポリビニルアルコールが、265〜275nmの間に一般式(化2)で表される不飽和二重結合由来の紫外線吸収スペクトルのピークトップを有するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載した感光性組成物。
【化2】

【請求項4】
未変性ポリビニルアルコールの含有量が、25%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載した感光性組成物。
【請求項5】
変性ポリビニルアルコールが、一般式(化3)〜一般式(化5)で表されるモノマーの少なくとも一種と、ビニルエステル単位を有するモノマーとを共重合させた後、ケン化させて得られたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載した感光性組成物。
【化3】

(式中、X3とX4は、炭素数1〜12の低級アルキル基、水素原子、金属塩のいずれか一種を表す。iは、0〜12の整数を表す。Y2は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩、水素原子のいずれか一種を表す。)
【化4】

(式中、X5とX6は、炭素数1〜12の低級アルキル基、水素原子、金属塩のいずれか一種を表す。jは、0〜12の整数を表す。Y3は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩、水素原子のいずれか一種を表す。)
【化5】

(式中、kは、0〜12の整数を表す。Y4は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩、水素原子のいずれか一種を表す。)
【請求項6】
変性ポリビニルアルコールが、一般式(化6)〜一般式(化8)で表されるモノマーの少なくとも一種と、ビニルエステル単位を有するモノマーと、これらのモノマーと共重合可能なモノマーを共重合させた後、ケン化させて得られたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載した感光性組成物。
【化6】

(式中、X3とX4は、炭素数1〜12の低級アルキル基、水素原子、金属塩のいずれか一種を表す。iは、0〜12の整数を表す。Y2は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩、水素原子のいずれか一種を表す。)
【化7】

(式中、X5とX6は、炭素数1〜12の低級アルキル基、水素原子、金属塩のいずれか一種を表す。jは、0〜12の整数を表す。Y3は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩、水素原子のいずれか一種を表す。)
【化8】

(式中、kは、0〜12の整数を表す。Y4は、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸金属塩、水素原子のいずれか一種を表す。)
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載した感光性組成物と、光重合性モノマーを含有するレジスト材料。
【請求項8】
請求項7に記載したレジスト材料を、支持体上に塗布、乾燥した後、支持体から剥離して得られた感光性フィルム。
【請求項9】
請求項8に記載した感光性フィルムを基板にラミネートして得られたレジスト層に画像露光した後、未露光部を溶解除去してプリント基板を得る際に、未露光部を溶解除去するエッジング液として、酸触媒とアルデヒド類を含有するエッジング液を使用して変性ポリビニルアルコールをアセタール化させることを特徴とするプリント基板の製造方法。
【請求項10】
請求項7に記載したレジスト材料を、基板上に塗布、乾燥させて得られたレジスト層
【請求項11】
請求項10に記載したレジスト層に画像露光した後、未露光部を溶解除去してプリント基板を得る際に、未露光部を溶解除去するエッジング液として、酸触媒とアルデヒド類を含有するエッジング液を使用して変性ポリビニルアルコールをアセタール化させることを特徴とするプリント基板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−116854(P2008−116854A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302167(P2006−302167)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】