説明

懸架装置の制御装置および車両

【課題】所定の減衰力を高精度に得ることが可能な懸架装置の制御装置を提供する。
【解決手段】この制御部29a(懸架装置の制御装置)は、第1特性ラインL1および第2特性ラインL2の少なくともいずれか一方の基準となる特性ラインに基づいて減衰機構(圧縮側電子制御バルブ27、伸長側電子制御バルブ28、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53)に所定の電流値I0を供給することにより所定の減衰力特性モードに対応する所定の減衰力を減衰機構に発生させるように設定されている場合において、基準となる特性ラインとは異なる方の特性ラインに沿って電流値を増加または減少させる際に、減衰機構に供給する電流値を所定の電流値I0よりも大きいまたは小さい電流値(I1またはI2)の少なくともいずれか一方の電流値まで一旦変化させた後、所定の電流値I0に戻す制御を行うように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、懸架装置の制御装置および車両に関し、特に、減衰力特性を電気的に制御するように構成された懸架装置の制御装置および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の減衰力特性を電気的に制御する懸架装置の制御装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。上記特許文献1には、通電させることによりサスペンション(懸架装置)に減衰力を発生させることが可能なソレノイドバルブ(減衰機構)を備えたサスペンション制御装置(懸架装置の制御装置)が開示されている。このソレノイドバルブは、減衰力を増加させることによって所定の減衰力を得るのに必要な電流値と、減衰力を減少させることによって所定の減衰力を得るのに必要な電流値とが異なるヒステリシス特性を有している。この減衰力を増加させることによって所定の減衰力を得るのに必要な電流値と、減衰力を減少させることによって所定の減衰力を得るのに必要な電流値との差は、小さいことが望ましい。上記特許文献1のサスペンション制御装置は、減衰力を増加させることによって所定の減衰力を得るのに必要な電流値と、減衰力を減少させることによって所定の減衰力を得るのに必要な電流値との差を小さくするために、比較的高い周波数の電流(ディザ電流)をソレノイドバルブに印加するように構成されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−129229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたサスペンション制御装置(懸架装置の制御装置)では、比較的高い周波数の電流(ディザ電流)をソレノイドバルブに印加することにより、減衰力を増加させることによって所定の減衰力を得るのに必要な電流値と、減衰力を減少させることによって所定の減衰力を得るのに必要な電流値との差が小さくされているので、所定の減衰力に近い減衰力を得ることが可能である。その一方で、減衰力を増加させることによって所定の減衰力を得るのに必要な電流値と、減衰力を減少させることによって所定の減衰力を得るのに必要な電流値との差が残っている。このため、上記特許文献1に開示されたサスペンション制御装置では、所定の減衰力を高精度に得るのが困難であるという問題点がある。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、所定の減衰力を高精度に得ることが可能な車両および懸架装置の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による懸架装置の制御装置は、異なる減衰力特性を示す複数の減衰力特性モードが設けられており、運転者の操作により減衰力特性モードが切り替えられることに基づいて、供給される電流値が増加される際の電流値と減衰力との関係を規定する第1特性ラインと、供給される電流値が減少される際の電流値と減衰力との関係を規定する第2特性ラインとを有する減衰機構に供給される電流値を変更する制御部を備え、制御部は、第1特性ラインに基づいて減衰機構に所定の電流値を供給することにより所定の減衰力特性モードに対応する所定の減衰力を減衰機構に発生させるように設定されている場合には、電流値を減少させる際に、減衰機構に供給する電流値を所定の電流値よりも小さい電流値まで一旦変化させた後、所定の電流値に戻す制御を行い、第2特性ラインに基づいて減衰機構に所定の電流値を供給することにより所定の減衰力特性モードに対応する所定の減衰力を減衰機構に発生させるように設定されている場合には、電流値を増加させる際に、減衰機構に供給する電流値を所定の電流値よりも大きい電流値まで一旦変化させた後、所定の電流値に戻す制御を行うように構成されている。
【0007】
これにより、所定の減衰力を高精度に得ることができる。
【0008】
また、この発明の第2の局面による車両は、車輪と、車体と、車輪と車体との間に配置され、車輪と車体とが相対的に移動するときの伸長方向および圧縮方向の少なくとも一方向の力を減衰させるとともに、供給される電流値が増加される際の電流値と減衰力との関係を規定する第1特性ラインと、減衰機構に供給される電流値が減少される際の電流値と減衰力との関係を規定する第2特性ラインとを有する減衰機構を含む懸架装置と、異なる減衰力特性を示す複数の減衰力特性モードが設けられており、運転者の操作により減衰力特性モードが切り替えられることに基づいて減衰機構に供給される電流値を変更する制御部とを備え、制御部は、第1特性ラインに基づいて減衰機構に所定の電流値を供給することにより所定の減衰力特性モードに対応する所定の減衰力を減衰機構に発生させるように設定されている場合には、電流値を減少させる際に、減衰機構に供給する電流値を所定の電流値よりも小さい電流値まで一旦変化させた後、所定の電流値に戻す制御を行い、第2特性ラインに基づいて減衰機構に所定の電流値を供給することにより所定の減衰力特性モードに対応する所定の減衰力を減衰機構に発生させるように設定されている場合には、電流値を増加させる際に、減衰機構に供給する電流値を所定の電流値よりも大きい電流値まで一旦変化させた後、所定の電流値に戻す制御を行うように構成されている。
【0009】
これにより、所定の減衰力を高精度に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態による自動二輪車の全体構造を示した側面図である。図2〜図9は、図1に示した一実施形態による自動二輪車の構成を詳細に説明するための図である。なお、本実施形態では、本発明の車両の一例として、自動二輪車について説明する。図中、矢印FWDは、自動二輪車の走行方向の前方を示している。以下、図1〜図9を参照して、本発明の一実施形態による自動二輪車1の構成について詳細に説明する。
【0012】
本発明の一実施形態による自動二輪車1では、図1に示すように、ヘッドパイプ2の後方には、メインフレーム3が配置されている。また、メインフレーム3には、シートレール4が接続されている。これらのヘッドパイプ2、メインフレーム3およびシートレール4によって、車体フレームが構成されている。なお、ヘッドパイプ2、メインフレーム3およびシートレール4は、本発明の「車体」の一例である。
【0013】
また、ヘッドパイプ2には、ステアリングシャフト5が取り付けられている。このステアリングシャフト5の上部には、前輪6を操舵するためのハンドル7が取り付けられている。なお、前輪6は、本発明の「車輪」の一例である。また、ハンドル7には、図2に示すように、運転者の手が載置されるグリップ8が設けられており、グリップ8の近傍には、複数のスイッチ部9が設けられている。
【0014】
具体的には、グリップ8に最も近い部分には、ヘッドライト10(図1参照)が照射する方向を調整するためのビーム切替スイッチ9aが設けられている。また、ビーム切替スイッチ9aの下方には、左右(矢印X1方向および矢印X2方向)の各フラッシャー(方向指示ランプ)11(図1参照)を点滅させるための方向指示スイッチ9bが設けられている。また、方向指示スイッチ9bの下方には、図示しないホーン(警笛)を鳴らすためのホーンスイッチ9cが設けられている。
【0015】
ここで、本実施形態では、ビーム切替スイッチ9aの右側(矢印X2方向側)には、後述する減衰力特性モードの設定変更を行うためのUP/DOWNスイッチ9dが設けられている。このUP/DOWNスイッチ9dは、UPスイッチ部9eおよびDOWNスイッチ部9fにより構成されており、後述する予め定められた4つの減衰力特性モード(サーキットモードA、スポーツモードB、ノーマルモードCおよびコンフォートモードD)(図7参照)のうちいずれか1つの減衰力特性モードを選択する(入力する)際などに操作可能に構成されている。具体的には、UPスイッチ部9eは、運転者(ユーザ)に押圧されることにより減衰力の大きい上位の減衰力特性モードに切替可能に構成されているとともに、DOWNスイッチ部9fは、運転者に押圧されることにより減衰力の小さい下位の減衰力特性モードに切替可能に構成されている。なお、UP/DOWNスイッチ9dは、本発明の「切替部」の一例である。また、UPスイッチ部9eは、本発明の「第1スイッチ部」の一例であり、DOWNスイッチ部9fは、本発明の「第2スイッチ部」の一例である。
【0016】
また、ヘッドパイプ2の前方には、図1に示すように、ヘッドパイプ2の前方を覆うフロントカウル12が設けられている。また、フロントカウル12の後部には、図1および図3に示すように、後述するエンジン37(図1参照)の回転数を表示する回転速度計13aが設けられている。また、回転速度計13aの矢印X1方向側には、図3に示すように、液晶パネルにより構成されている速度計13bが設けられている。また、回転速度計13aの矢印X2方向側には、液晶パネルにより構成されている表示パネル14が設けられている。この表示パネル14は、自動二輪車1が走行した距離などを表示する機能を有するとともに、後述する減衰力特性モード(サーキットモードA、スポーツモードB、ノーマルモードCおよびコンフォートモードD)(図7参照)などを表示する機能を有する。
【0017】
また、フロントカウル12の下方には、図1に示すように、前輪6の上方に配置されるフロントフェンダ15が配置されている。また、前輪6は、一対のフロントフォーク16の下端部に回転可能に取り付けられている。なお、フロントフォーク16は、本発明の「懸架装置」の一例である。このフロントフォーク16は、前輪6と車体とが相対的に移動するときの伸縮する力を減衰させる機能を有する。
【0018】
また、フロントフォーク16は、図4に示すように、走行方向に向かって前輪6の左側に配置される左側フロントフォーク17と、走行方向に向かって右側に配置される右側フロントフォーク18とにより構成されている。この左側フロントフォーク17は、アウターチューブ19およびインナーチューブ20が軸方向に摺動して伸縮可能に設けられるとともに、右側フロントフォーク18は、アウターチューブ21およびインナーチューブ22が軸方向に摺動して伸縮可能に設けられることによって、テレスコピック型に構成されている。また、アウターチューブ19および21は、ステアリングシャフト5に固定されたアンダーブラケット23aおよびアッパーブラケット23bに固定されている。また、インナーチューブ20および22には、アクスルブラケット24および25がそれぞれ設けられているとともに、アクスルブラケット24および25には、前輪6の車軸6aが取り付けられている。
【0019】
また、左側フロントフォーク17には、左側フロントフォーク17の伸縮量を検出するための検出装置26が設けられている一方、右側フロントフォーク18には、右側フロントフォーク18の減衰力特性を調整可能に構成されている圧縮側電子制御バルブ27および伸長側電子制御バルブ28が設けられている。なお、圧縮側電子制御バルブ27および伸長側電子制御バルブ28は、本発明の「減衰機構」および「ソレノイド」の一例である。これら圧縮側電子制御バルブ27および伸長側電子制御バルブ28は、それぞれ、比例ソレノイドバルブにより構成されており、供給される電流値に略比例して弁を流れるオイルの圧力(減衰力)を発生可能なように構成されている。
【0020】
具体的には、本実施形態では、圧縮側電子制御バルブ27および伸長側電子制御バルブ28は、それぞれ、供給される電流量が増加されるのに伴って弁を流れるオイルの圧力(減衰力)が増加されるように構成されているとともに、供給される電流量が減少されるのに伴って弁を流れるオイルの圧力(減衰力)が減少されるように構成されている。
【0021】
また、本実施形態では、これら圧縮側電子制御バルブ27および伸長側電子制御バルブ28は、それぞれ、図8に示すように、供給される電流値が増加される際の電流値と減衰力(オイルの圧力)との関係を規定する第1特性ラインL1と、供給される電流値が減少される際の電流値と減衰力(オイルの圧力)との関係を規定する第2特性ラインL2とにより構成されたヒステリシス特性(減衰力特性)を有する。つまり、これら圧縮側電子制御バルブ27および伸長側電子制御バルブ28は、それぞれ、所定の電流値I0である場合に、第1特性ラインL1および第2特性ラインL2にそれぞれ異なる減衰力F1および減衰力F2の減衰力を取り得る。なお、本実施形態による電子制御バルブのヒステリシス特性において、減衰力F3近傍は、後述するコンフォートモードDに対応しているとともに、減衰力F4は、後述するノーマルモードCに対応している。また、減衰力F5は、後述するスポーツモードBに対応しているとともに、減衰力F6は、後述するサーキットモードAに対応している。
【0022】
また、本実施形態による電子制御バルブのヒステリシス特性は、電流値が増加する第1特性ラインL1の途中で電流値を減少させた場合、第2特性ラインL2に収束する特性を有するとともに、電流値が減少する第2特性ラインL2の途中で電流値を増加させた場合、第1特性ラインL1に収束する特性を有する。
【0023】
また、検出装置26、圧縮側電子制御バルブ27および伸長側電子制御バルブ28は、それぞれ、ECU(電子制御ユニット)29と接続されている。なお、ECU29は、本発明の「懸架装置の制御装置」の一例である。このECU29は、フロントフォーク16および後述するリヤサスペンション41において発生される減衰力を制御する機能を有する。具体的には、ECU29は、図5に示すように、フロントフォーク16、後述するエンジン37およびリヤサスペンション41などを電気的に制御する制御部29aと、後述する圧縮側電子制御バルブ27および伸長側電子制御バルブ28のそれぞれの減衰力特性モード(図7参照)などが記憶されている記憶部29bとを含んでいる。また、ECU29の制御部29aには、メインスイッチ30が接続されており、ECU29は、メインスイッチ30をオンすることにより起動される。なお、ECU29の詳細な構成については、後述する。
【0024】
また、左側フロントフォーク17の検出装置26は、ストロークセンサにより構成されている。また、検出装置26は、検出された左側フロントフォーク17の伸縮量をECU29に送信可能に構成されている。そして、ECU29の制御部29aは、左側フロントフォーク17の伸縮量から左側フロントフォーク17が圧縮および伸長する際のそれぞれのストロークスピードを検出可能に構成されている。また、制御部29aは、図9に示すように、後述する減衰力特性モードに基づいて、検出したストロークスピードに対応した減衰力により右側フロントフォーク18を減衰させるように、圧縮側電子制御バルブ27および伸長側電子制御バルブ28に対して所定の電流を供給する機能を有する。
【0025】
また、右側フロントフォーク18は、図4に示すように、アウターチューブ21に固定されたロッド部31と、ロッド部31の端部に設けられているピストン部32とを含んでいる。そして、右側フロントフォーク18の内部は、ピストン部32により、圧縮側オイル室18aと、伸長側オイル室18bとに隔てられている。この圧縮側オイル室18aには、オイル通路部33のオイル通路33aが接続されており、オイル通路部33は、圧縮側オイル室18aに充填されているオイルがオイル通路33aに流入され、圧縮側電子制御バルブ27、中間通路33b、33c、チェックバルブ34aおよびオイル通路33dを介して伸長側オイル室18bに流入可能に構成されている。また、伸長側オイル室18bには、オイル通路部33のオイル通路33dが接続されている。オイル通路部33は、伸長側オイル室18bに充填されているオイルがオイル通路33dに流入され、伸長側電子制御バルブ28、中間通路33e、33c、チェックバルブ34bおよびオイル通路33aを介して圧縮側オイル室18aに流入可能に構成されている。また、中間通路33b、33cおよび33eには、リザーバ35に接続されるオイル通路33fが設けられている。
【0026】
また、メインフレーム3の上部には、図1に示すように、燃料タンク36が配置されている。また、メインフレーム3の下方には、エンジン37が取り付けられている。また、メインフレーム3の後部には、図示しないピボット軸が設けられている。このピボット軸により、リヤアーム38の前端部が上下に揺動可能に支持されている。このリヤアーム38の後端部には、後輪39が回転可能に取り付けられている。なお、後輪39は、本発明の「車輪」の一例である。
【0027】
また、メインフレーム3の後部の上側には、支持部40が設けられている。この支持部40には、リヤサスペンション41の上部取付部42が軸部材43により取り付けられている。なお、リヤサスペンション41は、本発明の「懸架装置」の一例である。また、リヤサスペンション41の下部取付部44は、メインフレーム3の後部の下側に設けられた支持部45を中心として揺動可能に設けられた揺動部材46に取り付けられている。この揺動部材46の下部は、リヤアーム38の支持部38aに連結部材47によって連結されている。これにより、リヤアーム38が上下に揺動するにともなって、揺動部材46がメインフレーム3の支持部45を中心として揺動するとともに、リヤサスペンション41を伸縮させることが可能となる。
【0028】
また、リヤサスペンション41は、図6に示すように、一方端部に上部取付部42が設けられたシリンダ部48と、シリンダ部48の内周面を摺動可能に設けられたピストン49と、一方端部がピストン49に取り付けられているとともに、他方端部が下部取付部44に取り付けられているロッド部50とを含んでいる。また、リヤサスペンション41には、リヤサスペンション41の伸縮量を検出するための検出装置51が設けられているとともに、リヤサスペンション41の減衰力特性を調整可能に構成されている圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53が設けられている。なお、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53は、本発明の「減衰機構」および「ソレノイド」の一例である。これら圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53は、それぞれ、比例ソレノイドバルブにより構成されており、供給される電流値に略比例して弁を流れるオイルの圧力(減衰力)を発生可能なように構成されている。
【0029】
具体的には、本実施形態では、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53は、それぞれ、圧縮側電子制御バルブ27および伸長側電子制御バルブ28と同様、供給される電流量が増加されるのに伴って弁を流れるオイルの圧力(減衰力)が増加されるように構成されているとともに、供給される電流量が減少されるのに伴って弁を流れるオイルの圧力(減衰力)が減少されるように構成されている。
【0030】
また、図8に示すように、本実施形態では、これら圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53は、それぞれ、圧縮側電子制御バルブ27および伸長側電子制御バルブ28と同様、供給される電流値が増加される際の電流値と減衰力(オイルの圧力)との関係を規定する第1特性ラインL1と、供給される電流値が減少される際の電流値と減衰力(オイルの圧力)との関係を規定する第2特性ラインL2とにより構成されたヒステリシス特性(減衰力特性)を有する。つまり、これら圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53は、それぞれ、所定の電流値I0である場合に、第1特性ラインL1および第2特性ラインL2にそれぞれ異なる減衰力F1および減衰力F2の減衰力を取り得る。なお、上記したフロントフォーク16におけるヒステリシス特性と同様、本実施形態によるリヤサスペンション41の電子制御バルブのヒステリシス特性において、減衰力F3近傍は、後述するコンフォートモードDに対応しているとともに、減衰力F4は、後述するノーマルモードCに対応している。また、減衰力F5は、後述するスポーツモードBに対応しているとともに、減衰力F6は、後述するサーキットモードAに対応している。また、上記したフロントフォーク16におけるヒステリシス特性と同様、本実施形態によるリヤサスペンション41の電子制御バルブのヒステリシス特性は、電流値が増加する第1特性ラインL1の途中で電流値を減少させた場合に、第2特性ラインL2に収束する特性を有するとともに、電流値が減少する第2特性ラインL2の途中で電流値を増加させた場合に、第1特性ラインL1に収束する特性を有する。
【0031】
また、図5に示すように、検出装置51、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53は、それぞれ、フロントフォーク16の検出装置26、圧縮側電子制御バルブ27および伸長側電子制御バルブ28と同様、ECU(電子制御ユニット)29と接続されている。
【0032】
また、リヤサスペンション41の検出装置51は、ストロークセンサにより構成されている。また、検出装置51は、検出されたリヤサスペンション41の伸縮量(ストローク)をECU29に送信可能に構成されている。そして、ECU29の制御部29aは、リヤサスペンション41の伸縮量からリヤサスペンション41が圧縮および伸長する際のそれぞれのストロークスピードを検出可能に構成されている。また、制御部29aは、図9に示すように、後述する減衰力特性モードに基づいて、検出したストロークスピードに対応した減衰力によりリヤサスペンション41を減衰させるように、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53に対して所定の電流を供給する機能を有する。
【0033】
また、リヤサスペンション41の内部は、ピストン49により、圧縮側オイル室41aと伸長側オイル室41bとに隔てられている。この圧縮側オイル室41aには、オイル通路部54のオイル通路54aが接続されており、オイル通路部54は、圧縮側オイル室41aに充填されているオイルがオイル通路54aに流入され、圧縮側電子制御バルブ52、中間通路54b、54c、チェックバルブ55aおよびオイル通路54dを介して伸長側オイル室41bに流入可能に構成されている。また、伸長側オイル室41bには、オイル通路部54のオイル通路54dが接続されており、オイル通路部54は、伸長側オイル室41bに充填されているオイルがオイル通路54dに流入され、伸長側電子制御バルブ53、中間通路54e、54c、チェックバルブ55bおよびオイル通路54aを介して圧縮側オイル室41aに流入可能に構成されている。また、中間通路54b、54cおよび54eには、リザーバ56に接続されるオイル通路54fが設けられている。
【0034】
図10は、図1に示した一実施形態による自動二輪車に搭載されたECUの制御部により電子制御バルブの減衰力特性モードの移行を説明するためのモード遷移図である。次に、図2、図5および図7〜図10を参照して、本発明の一実施形態による自動二輪車1のECU29の構成について詳細に説明する。
【0035】
図5に示すように、本実施形態による自動二輪車1のECU29は、上記したように、自動二輪車1の各部を電気的に制御する制御部29aと、右側フロントフォーク18の圧縮側電子制御バルブ27および伸長側電子制御バルブ28、および、リヤサスペンション41の圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53のそれぞれの減衰力特性が記憶されている記憶部29bとを含んでいる。この記憶部29bに記憶されている減衰力特性モードは、サーキットモードA(CIRCUIT)、スポーツモードB(SPORTS)、ノーマルモードC(NORMAL)およびコンフォートモードD(COMFORT)(それぞれ図7参照)の走行状態に応じた減衰力特性モードによって構成されている。なお、サーキットモードA(CIRCUIT)、スポーツモードB(SPORTS)、ノーマルモードC(NORMAL)およびコンフォートモードD(COMFORT)は、それぞれ、本発明の「減衰力特性モード」の一例である。
【0036】
なお、図7に示した各減衰力特性モードは、フロントフォーク16およびリヤサスペンション41が相対的に伸縮する際のストロークスピードと、そのストロークスピードに対応する減衰力との関係を表したマップである。また、サーキットモードA、スポーツモードB、ノーマルモードCおよびコンフォートモードDは、圧縮側電子制御バルブ27、伸長側電子制御バルブ28、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53について、それぞれ、別々に設けられている。すなわち、サーキットモードA、スポーツモードB、ノーマルモードCおよびコンフォートモードDは、フロントフォーク16の圧側および伸び側の両方について設けられているとともに、リヤサスペンション41の圧側および伸び側の両方について設けられている。
【0037】
サーキットモードAは、図7に示すように、自動二輪車1をサーキットなどで走行させる際に最も適した減衰力特性を示す減衰力特性モードである。サーキットモードAは、ストロークスピードVに対応する減衰力FAが、スポーツモードB、ノーマルモードCおよびコンフォートモードDのそれぞれのストロークスピードVに対応する減衰力FB、FCおよびFDと比べて、大きくなるように構成されている。すなわち、サーキットモードAは、障害物を乗り越えた時の周期運動が素早く収束されるような特性を有しており、スポーツモードB、ノーマルモードCおよびコンフォートモードDと比べて、自動二輪車1の姿勢を素早く安定させることが可能である。その一方、サーキットモードAは、スポーツモードB、ノーマルモードCおよびコンフォートモードDと比べて、最も路面の凹凸が吸収され難い特性を有する。
【0038】
また、スポーツモードBは、自動二輪車1を高速走行させる際に最も適した減衰力特性を示す減衰力特性モードである。スポーツモードBは、ストロークスピードVに対応する減衰力FBが、ノーマルモードCおよびコンフォートモードDのそれぞれのストロークスピードVに対応する減衰力FCおよびFDと比べて、大きくなるように構成されている。すなわち、スポーツモードBは、ノーマルモードCおよびコンフォートモードDと比べて、障害物を乗り越えた時の周期運動が素早く収束されるような特性を有しており、ノーマルモードCおよびコンフォートモードDと比べて、自動二輪車1の姿勢を素早く安定させることが可能である。その一方、スポーツモードBは、サーキットモードAと比べて、路面の凹凸が吸収されやすい特性を有する。
【0039】
また、ノーマルモードCは、自動二輪車1を郊外路において走行させる際に最も適した標準的な減衰力特性を示す減衰力特性モードである。ノーマルモードCは、ストロークスピードVに対応する減衰力FCが、コンフォートモードDのストロークスピードVに対応する減衰力FDと比べて、大きくなるように構成されている。すなわち、ノーマルモードCは、コンフォートモードDと比べて、障害物を乗り越えた時の周期運動が素早く収束されるような特性を有しており、コンフォートモードDと比べて、自動二輪車1の姿勢を素早く安定させることが可能である。その一方、ノーマルモードCは、サーキットモードAおよびスポーツモードBと比べて、路面の凹凸が吸収されやすい特性を有する。
【0040】
また、コンフォートモードDは、自動二輪車1を石畳のような凹凸が多い路面において走行させる際に最も適した減衰力特性を示す減衰力特性モードである。コンフォートモードDは、ストロークスピードVに対応する減衰力FDが、サーキットモードA、スポーツモードBおよびノーマルモードCのそれぞれのストロークスピードVに対応する減衰力FA,FBおよびFCと比べて、小さくなるように構成されている。すなわち、コンフォートモードDは、サーキットモードA、スポーツモードBおよびノーマルモードCと比べて、路面の凹凸が吸収されやすい特性を有している。その一方、コンフォートモードDは、サーキットモードA、スポーツモードBおよびノーマルモードCと比べて、障害物を乗り越えた時の周期運動が素早く収束され難い特性を有する。
【0041】
また、本実施形態では、図9に示すように、制御部29aは、上記したように減衰力特性モードに基づいて、検出した右側フロントフォーク18およびリヤサスペンション41のストロークスピードに対応した減衰力により右側フロントフォーク18およびリヤサスペンション41を減衰させるように、各電子制御バルブに対して所定の電流を供給する機能を有する。具体的には、制御部29aは、サーキットモードA、スポーツモードBおよびノーマルモードCにおいて、フロントフォーク16またはリヤサスペンション41のストロークスピードに応じて、圧縮側電子制御バルブ27、伸長側電子制御バルブ28、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53に、それぞれ、異なる電流値を供給することにより所定の減衰力を発生させる制御を行うように構成されている。その一方、制御部29aは、コンフォートモードDにおいて、フロントフォーク16またはリヤサスペンション41が伸縮する際のストロークスピードに関わらず略一定の電流値により所定の減衰力を発生させる制御を行うように構成されている。
【0042】
また、本実施形態では、図10に示すように、メインスイッチ30(図5参照)がオンされることにより、制御部29a(図5参照)は、記憶部29b(図5参照)より前回オフされた時点で実行されていた減衰力特性モードを呼び出すように構成されている。そして、制御部29aは、記憶部29b(図5参照)に格納されているサーキットモードA、スポーツモードB、ノーマルモードCおよびコンフォートモードDの4種類の減衰力特性モードのいずれか1つの減衰力特性モードを選択可能なモードに移行するように構成されている。
【0043】
具体的には、制御部29aは、UP/DOWNスイッチ9d(図2参照)のUPスイッチ部9eが運転者により押圧されることにより、コンフォートモードD、ノーマルモードC、スポーツモードBおよびサーキットモードAの順に減衰力特性モードを選択可能に構成されている。また、制御部29aは、DOWNスイッチ部9fが押圧されることにより、サーキットモードA、スポーツモードB、ノーマルモードCおよびコンフォートモードDの順に減衰力特性モードを選択可能に構成されている。この際、表示パネル14は、現在選択されている減衰力特性モードが点灯されるように構成されており、減衰力特性モードがサーキットモードA、スポーツモードB、ノーマルモードCおよびコンフォートモードDのいずれの減衰力特性モードが選択されているかを示す機能を有する。
【0044】
ここで、本実施形態では、制御部29aは、ヒステリシス特性の第1特性ラインL1および第2特性ラインL2のいずれか一方の基準となる特性ラインに基づいて各電子制御バルブ(圧縮側電子制御バルブ27、伸長側電子制御バルブ28、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53)に所定の電流値を供給することにより所定の減衰力特性モードに対応する所定の減衰力を各電子制御バルブに発生させるように設定可能に構成されている。この場合において、制御部29aは、基準となる特性ラインとは異なる方の特性ラインに沿って電流値を増加または減少させる際に、供給する電流値を所定の電流値よりも大きいまたは小さい電流値まで一旦変化させた後、所定の電流値に戻す制御を行うように構成されている。この供給する電流値を所定の電流値よりも大きいまたは小さい電流値の少なくともいずれか一方の電流値まで一旦変化させた後所定の電流値に戻す制御は、第1特性ラインL1に基づいて所定の減衰力を各電子制御バルブに発生させるように設定されている場合と、第2特性ラインL2に基づいて所定の減衰力を各電子制御バルブに発生させるように設定されている場合とで異なる。
【0045】
図11および図13は、図1に示した一実施形態による自動二輪車に搭載された電子制御バルブのヒステリシス特性を説明するための図である。図12および図14は、図1に示した一実施形態による自動二輪車に搭載された電子制御バルブに供給される電流制御を説明するためのタイミングチャートである。まず、運転者の操作により減衰力特性モードが切り替えられるのに対応して、第1特性ラインL1に基づいて所定の減衰力を各電子制御バルブに発生させるように設定されている場合において制御部29aが行う制御について説明する。
【0046】
図11に示すように、減衰力の小さい下位の減衰力特性モードから減衰力の大きい上位の減衰力特性モードに減衰力特性モードの切替を行う場合(第1特性ラインL1上に位置している場合)、制御部29aは、各電子制御バルブに対して、上位の減衰力特性モードで発生させる減衰力(たとえば減衰力F1)に対応する所定の電流値(たとえば電流値I0)を供給するように構成されている。この場合、制御部29aは、第1特性ラインL1上のL1a方向に沿って電流値を電流値I0に増加させるように構成されている。
【0047】
その一方で、上位の減衰力特性モードから下位の減衰力特性モードに減衰力特性モードの切替を行う場合(第2特性ラインL2上に位置している場合)、制御部29aは、各電子制御バルブに対して、下位の減衰力特性モードで電子制御バルブに発生させる減衰力(たとえば減衰力F1)に対応する所定の電流値(たとえば電流値I0)よりも所定値α1小さい電流値(たとえば電流値I1)まで一旦減少させた後、所定の電流値(たとえば電流値I0)に増加する制御を行うように構成されている。すなわち、制御部29aは、第2特性ラインL2上のL2a方向に沿って、電流値I0よりも所定値α1分さらに減少させた電流値I1まで減少させるように構成されている。その後、制御部29aは、電流値I1からL3aに沿って電流値I0に増加させるように構成されている。この際、制御部29aは、図12に示すように、上記所定の電流値(たとえば電流値I0)よりも所定値α1小さい電流値(たとえば電流値I1)を所定時間t1(約50msec〜約100msec)の間維持した後、所定の電流値に減少させる制御を行う。
【0048】
次に、運転者の操作により減衰力特性モードが切り替えられるのに対応して、第2特性ラインL2に基づいて所定の減衰力を各電子制御バルブに発生させるように設定されている場合において制御部29aが行う制御について説明する。
【0049】
図13に示すように、減衰力の大きい上位の減衰力特性モードから減衰力の小さい下位の減衰力特性モードに減衰力特性モードの切替を行う場合(第2特性ラインL2上に位置している場合)、制御部29aは、各電子制御バルブに対して、下位の減衰力特性モードで発生させる減衰力(たとえば減衰力F2)に対応する所定の電流値(たとえば電流値I0)を供給するように構成されている。この場合、制御部29aは、第2特性ラインL2上のL2b方向に沿って電流値を電流値I0に減少させるように構成されている。
【0050】
その一方で、下位の減衰力特性モードから上位の減衰力特性モードに減衰力特性モードの切替を行う場合(第1特性ラインL1上に位置している場合)、制御部29aは、各電子制御バルブに対して、上位の減衰力特性モードで電子制御バルブに発生させる減衰力(たとえば減衰力F2)に対応する所定の電流値(たとえば電流値I0)よりも所定値α2大きい電流値(たとえば電流値I2)まで一旦増加させた後、所定の電流値(たとえば電流値I0)に減少する制御を行うように構成されている。すなわち、制御部29aは、第1特性ラインL1上のL1b方向に沿って、電流値I0よりも所定値α2分さらに増加させた電流値I2まで増加させるように構成されている。その後、制御部29aは、電流値I2からL3bに沿って電流値I0に減少させるように構成されている。この際、制御部29aは、図14に示すように、上記所定の電流値よりも所定値α2大きい電流値を所定時間t1(約50msec〜約100msec)の間維持した後、所定の電流値に増加させる制御を行う。
【0051】
なお、本実施形態では、この第1特性ラインL1に基づいて所定の減衰力を各電子制御バルブに発生させるように設定されている場合と、第2特性ラインL2に基づいて所定の減衰力を各電子制御バルブに発生させるように設定されている場合とは、運転者が図示しないスイッチなどを操作することにより予め切替可能である。
【0052】
図15〜図18は、図1に示した一実施形態において第1特性ラインに基づいて減衰力の制御が行われる場合の処理動作を説明するためのフローチャートである。図19〜図22は、図1に示した一実施形態において第2特性ラインに基づいて減衰力の制御が行われる場合の処理動作を説明するためのフローチャートである。次に、図5、図7〜図22を参照して、自動二輪車1の記憶部29bに記憶された減衰力特性モードを切り替える際に制御部29aが行う電流制御の処理動作について詳細に説明する。
【0053】
まず、第1特性ラインL1に基づいて所定の減衰力を各電子制御バルブに発生させるように設定されている場合で、かつ、減衰力特性モードがコンフォートモードD(図7参照)に滞在している場合について説明する。図15に示すように、ステップS1において、制御部29a(図5参照)により、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ部9eが押圧されたか否かが判断される。そして、ステップS1において、UPスイッチ部9eが押圧されていないと判断された場合には、減衰力特性モードを切り替えることなく、減衰力特性モードの切替処理動作が終了される。また、ステップS1において、UPスイッチ部9eが押圧されたと判断された場合には、ステップS2に進む。
【0054】
そして、ステップS2において、制御部29aにより、ノーマルモードCの減衰力に対応する電流値が各電子制御バルブに供給される。すなわち、コンフォートモードDの減衰力に対応する電流値は、第1特性ラインL1(図8および図11参照)に沿って、ノーマルモードCの減衰力に対応する電流値に増加され、コンフォートモードDは、図10に示すように、ノーマルモードCに移行される。その後、減衰力特性モードの切替処理動作が終了される。
【0055】
次に、第1特性ラインL1に基づいて所定の減衰力を各電子制御バルブに発生させるように設定されている場合で、かつ、減衰力特性モードがノーマルモードC(図7参照)に滞在している場合について説明する。図16に示すように、ステップS11において、制御部29a(図5参照)により、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ部9eおよびDOWNスイッチ部9fのいずれか一方が押圧されたか否かが判断される。そして、ステップS11において、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ部9eおよびDOWNスイッチ部9fのいずれか一方が押圧されていないと判断された場合には、減衰力特性モードを切り替えることなく、減衰力特性モードの切替処理動作が終了される。また、ステップS11において、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ部9eおよびDOWNスイッチ部9fのいずれか一方が押圧されたと判断された場合には、ステップS12に進む。
【0056】
そして、ステップS12において、制御部29aにより、UPスイッチ部9eが押圧されたか否かが判断される。そして、ステップS12において、UPスイッチ部9eが押圧されたと判断された場合には、ステップS13に進み、制御部29aにより、スポーツモードBの減衰力に対応する電流値が各電子制御バルブに供給される。すなわち、ノーマルモードCの減衰力に対応する電流値は、第1特性ラインL1(図8および図11参照)に沿って、スポーツモードBの減衰力に対応する電流値に増加され、ノーマルモードCは、図10に示すように、スポーツモードBに移行される。その後、減衰力特性モードの切替処理動作が終了される。
【0057】
また、図16に示すように、ステップS12において、UPスイッチ部9eが押圧されていないと判断された場合には、ステップS14に進む。換言すると、DOWNスイッチ部9fが押圧されていると判断された場合には、ステップS14に進む。そして、ステップS14において、制御部29aにより、コンフォートモードDの減衰力に対応する電流値よりも所定値α1(図12参照)分だけ小さい電流値が時間t1(図12参照)の間出力され、ステップS15に進む。その後、ステップS15において、コンフォートモードDの減衰力に対応する電流値に増加され、ノーマルモードCは、図10に示すように、コンフォートモードDに移行される。その後、減衰力特性モードの切替処理動作が終了される。
【0058】
次に、第1特性ラインL1に基づいて所定の減衰力を各電子制御バルブに発生させるように設定されている場合で、かつ、減衰力特性モードがスポーツモードB(図7参照)に滞在している場合について説明する。図17に示すように、ステップS21において、制御部29a(図5参照)により、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ部9eおよびDOWNスイッチ部9fのいずれか一方が押圧されたか否かが判断される。そして、ステップS21において、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ部9eおよびDOWNスイッチ部9fのいずれか一方が押圧されていないと判断された場合には、減衰力特性モードを切り替えることなく、減衰力特性モードの切替処理動作が終了される。また、ステップS21において、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ部9eおよびDOWNスイッチ部9fのいずれか一方が押圧されたと判断された場合には、ステップS22に進む。
【0059】
そして、ステップS22において、制御部29aにより、UPスイッチ部9eが押圧されたか否かが判断される。そして、ステップS22において、UPスイッチ部9eが押圧されたと判断された場合には、ステップS23に進み、制御部29aにより、サーキットモードAの減衰力に対応する電流値が各電子制御バルブに供給される。すなわち、スポーツモードBの減衰力に対応する電流値は、第1特性ラインL1(図8および図11参照)に沿って、サーキットモードAの減衰力に対応する電流値に増加され、スポーツモードBは、図10に示すように、サーキットモードAに移行される。その後、減衰力特性モードの切替処理動作が終了される。
【0060】
また、図17に示すように、ステップS22において、UPスイッチ部9eが押圧されていないと判断された場合には、ステップS24に進む。換言すると、DOWNスイッチ部9fが押圧されていると判断された場合には、ステップS24に進む。そして、ステップS24において、制御部29aにより、ノーマルモードCの減衰力に対応する電流値よりも所定値α1(図12参照)分だけ小さい電流値が時間t1(図12参照)の間出力され、ステップS25に進む。その後、ステップS25において、ノーマルモードCの減衰力に対応する電流値に増加され、スポーツモードBは、図10に示すように、ノーマルモードCに移行される。その後、減衰力特性モードの切替処理動作が終了される。
【0061】
次に、第1特性ラインL1に基づいて所定の減衰力を各電子制御バルブに発生させるように設定されている場合で、かつ、減衰力特性モードがサーキットモードA(図7参照)に滞在している場合について説明する。図18に示すように、ステップS31において、制御部29a(図5参照)により、UP/DOWNスイッチ9dのDOWNスイッチ部9fが押圧されたか否かが判断される。そして、ステップS31において、UP/DOWNスイッチ9dのDOWNスイッチ部9fが押圧されていないと判断された場合には、減衰力特性モードを切り替えることなく、減衰力特性モードの切替処理動作が終了される。また、ステップS31において、UP/DOWNスイッチ9dのDOWNスイッチ部9fが押圧されたと判断された場合には、ステップS32に進む。
【0062】
そして、ステップS32において、制御部29aにより、スポーツモードBの減衰力に対応する電流値よりも所定値α1(図12参照)分だけ小さい電流値が時間t1(図12参照)の間出力され、ステップS33に進む。その後、ステップS33において、スポーツモードBの減衰力に対応する電流値に増加され、サーキットモードAは、図10に示すように、スポーツモードBに移行される。その後、減衰力特性モードの切替処理動作が終了される。
【0063】
次に、第2特性ラインL2に基づいて所定の減衰力を各電子制御バルブに発生させるように設定されている場合で、かつ、減衰力特性モードがコンフォートモードD(図7参照)に滞在している場合について説明する。図19に示すように、ステップS51において、制御部29a(図5参照)により、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ部9eが押圧されたか否かが判断される。そして、ステップS51において、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ部9eが押圧されていないと判断された場合には、減衰力特性モードを切り替えることなく、減衰力特性モードの切替処理動作が終了される。また、ステップS51において、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ部9eが押圧されたと判断された場合には、ステップS52に進む。
【0064】
そして、ステップS52において、制御部29aにより、ノーマルモードCの減衰力に対応する電流値よりも所定値α2(図14参照)分だけ大きい電流値が時間t1(図14参照)の間出力され、ステップS53に進む。その後、ステップS53において、ノーマルモードCの減衰力に対応する電流値に減少され、コンフォートモードDは、図10に示すように、ノーマルモードCに移行される。その後、減衰力特性モードの切替処理動作が終了される。
【0065】
次に、第2特性ラインL2に基づいて所定の減衰力を各電子制御バルブに発生させるように設定されている場合で、かつ、減衰力特性モードがノーマルモードC(図7参照)に滞在している場合について説明する。図20に示すように、ステップS61において、制御部29a(図5参照)により、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ部9eおよびDOWNスイッチ部9fのいずれか一方が押圧されたか否かが判断される。そして、ステップS61において、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ部9eおよびDOWNスイッチ部9fのいずれか一方が押圧されていないと判断された場合には、減衰力特性モードを切り替えることなく、減衰力特性モードの切替処理動作が終了される。また、ステップS61において、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ部9eおよびDOWNスイッチ部9fのいずれか一方が押圧されたと判断された場合には、ステップS62に進む。
【0066】
そして、ステップS62において、制御部29aにより、UPスイッチ部9eが押圧されたか否かが判断される。そして、ステップS62において、UPスイッチ部9eが押圧されていないと判断された場合には、ステップS63に進む。換言すると、DOWNスイッチ部9fが押圧されていると判断された場合には、ステップS63に進む。そして、ステップS63において、制御部29aにより、コンフォートモードDの減衰力に対応する電流値が各電子制御バルブに供給される。すなわち、ノーマルモードCの減衰力に対応する電流値は、第2特性ラインL2(図8および図13参照)に沿って、コンフォートモードDの減衰力に対応する電流値に減少され、ノーマルモードCは、図10に示すように、コンフォートモードDに移行される。その後、減衰力特性モードの切替処理動作が終了される。
【0067】
また、図20に示すように、ステップS62において、UPスイッチ部9eが押圧されたと判断された場合には、ステップS64に進む。そして、ステップS64において、制御部29aにより、スポーツモードBの減衰力に対応する電流値よりも所定値α2(図14参照)分だけ大きい電流値が時間t1(図14参照)の間出力され、ステップS65に進む。その後、ステップS65において、スポーツモードBの減衰力に対応する電流値に減少され、ノーマルモードCは、スポーツモードBに移行される。その後、減衰力特性モードの切替処理動作が終了される。
【0068】
次に、第2特性ラインL2に基づいて所定の減衰力を各電子制御バルブに発生させるように設定されている場合で、かつ、減衰力特性モードがスポーツモードB(図7参照)に滞在している場合について説明する。図21に示すように、ステップS71において、制御部29a(図5参照)により、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ部9eおよびDOWNスイッチ部9fのいずれか一方が押圧されたか否かが判断される。そして、ステップS71において、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ部9eおよびDOWNスイッチ部9fのいずれか一方が押圧されていないと判断された場合には、減衰力特性モードを切り替えることなく、減衰力特性モードの切替処理動作が終了される。また、ステップS71において、UP/DOWNスイッチ9dのUPスイッチ部9eおよびDOWNスイッチ部9fのいずれか一方が押圧されたと判断された場合には、ステップS72に進む。
【0069】
そして、ステップS72において、制御部29aにより、UPスイッチ部9eが押圧されたか否かが判断される。そして、ステップS72において、UPスイッチ部9eが押圧されていないと判断された場合には、ステップS73に進む。換言すると、DOWNスイッチ部9fが押圧されていると判断された場合には、ステップS73に進む。そして、ステップS73において、制御部29aにより、ノーマルモードCの減衰力に対応する電流値が各電子制御バルブに供給される。すなわち、スポーツモードBの減衰力に対応する電流値は、第2特性ラインL2(図8および図13参照)に沿って、ノーマルモードCの減衰力に対応する電流値に減少され、スポーツモードBは、図10に示すように、ノーマルモードCに移行される。その後、減衰力特性モードの切替処理動作が終了される。
【0070】
また、図21に示すように、ステップS72において、UPスイッチ部9eが押圧されたと判断された場合には、ステップS74に進む。そして、ステップS74において、制御部29aにより、サーキットモードAの減衰力に対応する電流値よりも所定値α2(図14参照)分だけ大きい電流値が時間t1(図14参照)の間出力され、ステップS75に進む。その後、ステップS75において、サーキットモードAの減衰力に対応する電流値に減少され、スポーツモードBは、図10に示すように、サーキットモードAに移行される。その後、減衰力特性モードの切替処理動作が終了される。
【0071】
次に、第2特性ラインL2に基づいて所定の減衰力を各電子制御バルブに発生させるように設定されている場合で、かつ、減衰力特性モードがサーキットモードA(図7参照)に滞在している場合について説明する。図22に示すように、ステップS81において、制御部29a(図5参照)により、UP/DOWNスイッチ9dのDOWNスイッチ部9fが押圧されたか否かが判断される。そして、ステップS81において、DOWNスイッチ部9fが押圧されていないと判断された場合には、減衰力特性モードを切り替えることなく、減衰力特性モードの切替処理動作が終了される。また、ステップS81において、DOWNスイッチ部9fが押圧されたと判断された場合には、ステップS82に進む。
【0072】
そして、ステップS82において、制御部29aにより、スポーツモードBの減衰力に対応する電流値が各電子制御バルブに供給される。すなわち、サーキットモードAの減衰力に対応する電流値は、第2特性ラインL2(図8および図13参照)に沿って、スポーツモードBの減衰力に対応する電流値に減少され、サーキットモードAは、図10に示すように、スポーツモードBに移行される。その後、減衰力特性モードの切替処理動作が終了される。
【0073】
本実施形態では、上記のように、制御部29a(懸架装置の制御装置)を、第1特性ラインL1が基準の特性ラインである場合において、基準となる第1特性ラインL1とは異なる第2特性ラインL2に沿って電流値を減少させる際に、各電子制御バルブ(圧縮側電子制御バルブ27、伸長側電子制御バルブ28、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53)に供給する電流値を所定の電流値I0よりも小さい電流値I1まで一旦減少させた後、所定の電流値I0に増加させる制御を行うように構成することによって、所定の電流値I0よりも小さい電流値I1に減少した後所定の電流値I0に増加させる際に、電流値が増加される際の電流値と減衰力との関係を規定する第1特性ラインL1に沿って所定の電流値I0に増加されるので、基準となる第1特性ラインL1の所定の電流値I0に対する所定の減衰力F1を得ることができる。これにより、所定の減衰力を高精度に得ることができる。また、制御部29a(懸架装置の制御装置)を、第2特性ラインL2が基準の特性ラインである場合においても、基準となる第2特性ラインL2とは異なる第1特性ラインL1に沿って電流値を増加させる際に、各電子制御バルブに供給する電流値を所定の電流値I0よりも大きい電流値I2まで一旦増加させた後、所定の電流値I0に減少させる制御を行うように構成することによって、所定の電流値I0よりも大きい電流値I2に増加した後所定の電流値I0に減少させる際に、電流値が減少される際の電流値と減衰力との関係を規定する第2特性ラインL2に沿って所定の電流値に減少されるので、基準となる第2特性ラインL2の所定の電流値I0に対する所定の減衰力F2を得ることができる。これにより、所定の減衰力を高精度に得ることができる。
【0074】
つまり、ヒステリシス特性の電流値が増加するライン(第1特性ラインL1)上の所定の電流値に対応する減衰力と電流値が減少するライン(第2特性ラインL2)上の所定の電流値に対応する減衰力とが異なることに基づいて、電流値が増加する場合と減少する場合とで減衰力が変化するのを抑制することができる。これにより、減衰力が変化するのに起因して、運転者が違和感を感じるのを抑制することができるので、運転者の乗り心地を向上することができる。この場合、制御部29a(懸架装置の制御装置)を、自動車などの重量が大きい車両よりも、運転者が違和感を感じ易い小さい重量の自動二輪車1に適用することによって、上記運転者の乗り心地を向上する効果をさらに向上することができる。
【0075】
また、本実施形態では、上記のように、制御部29a(懸架装置の制御装置)を、第1特性ラインL1に基づいて所定の減衰力F0を各電子制御バルブに発生させるように設定されている場合において、減衰力の大きい上位の減衰力特性モードから減衰力の小さい下位の減衰力特性モードに減衰力特性モードの切替を行う際に、下位の減衰力特性モードで電子制御バルブに所定の減衰力を発生させるために所定の電流値I0よりも小さい電流値I1に一旦減少させた後、所定の電流値I0に増加させる制御を行うように構成する。このように減衰力の大きい上位の減衰力特性モードから減衰力の小さい下位の減衰力特性モードに減衰力特性モードの切替を行う場合にも、基準となる第1特性ラインL1の所定の電流値(たとえば電流値I0)に対する所定の減衰力を高精度に得ることができる。
【0076】
また、本実施形態では、上記のように、制御部29a(懸架装置の制御装置)を、第1特性ラインL1に基づいて所定の減衰力F0を各電子制御バルブに発生させるように設定されている場合において、上位の減衰力特性モードから下位の減衰力特性モードに減衰力特性モードの切替を行う際に、下位の減衰力特性モードで電子制御バルブに所定の減衰力を発生させるために所定の電流値I0よりも小さい電流値I1に減少させて所定時間t1維持した後、所定の電流値I0に増加させる制御を行うように構成する。これにより、所定の電流値I0よりも小さい電流値I1が維持される分、電流値をより確実に第1特性ラインL1に乗せることができるので、より確実に、基準となる第1特性ラインL1の所定の電流値(たとえば電流値I0)に対する所定の減衰力を得ることができる。
【0077】
また、本実施形態では、上記のように、制御部29a(懸架装置の制御装置)を、第2特性ラインL2に基づいて所定の減衰力F0を各電子制御バルブに発生させるように設定されている場合において、減衰力の小さい下位の減衰力特性モードから減衰力の大きい上位の減衰力特性モードに減衰力特性モードの切替を行う際に、上位の減衰力特性モードで電子制御バルブに所定の減衰力を発生させるために所定の電流値I0よりも大きい電流値I2に一旦増加させた後、所定の電流値I0に減少させる制御を行うように構成する。このように減衰力の小さい下位の減衰力特性モードから減衰力の大きい上位の減衰力特性モードに減衰力特性モードの切替を行う場合にも、基準となる第2特性ラインL2の所定の電流値(たとえば電流値I0)に対する所定の減衰力を高精度に得ることができる。
【0078】
また、本実施形態では、上記のように、制御部29a(懸架装置の制御装置)を、下位の減衰力特性モードから上位の減衰力特性モードに減衰力特性モードの切替を行う際に、上位の減衰力特性モードで各電子制御バルブに所定の減衰力を発生させるために所定の電流値I0よりも大きい電流値I2に増加させて所定時間維持した後、所定の電流値I0に減少させる制御を行うように構成する。これにより、所定の電流値I0よりも大きい電流値I2が維持される分、電流値をより確実に第2特性ラインL2に乗せることができるので、より確実に、基準となる第2特性ラインL2の所定の電流値(たとえば電流値I0)に対する所定の減衰力を得ることができる。
【0079】
また、本実施形態では、上記のように、制御部29a(懸架装置の制御装置)を、複数の減衰力特性モードのうちコンフォートモードDにおいて、フロントフォーク16およびリヤサスペンション41が伸縮する際のストロークスピードに関わらず略一定の電流値により所定の減衰力の制御を行うように構成する。これにより、コンフォートモードDにおいて、電子制御バルブに供給される電流値が変動するのを抑制することができるので、ストロークスピードに関わらず安定した減衰力を得ることができる。
【0080】
また、本実施形態では、上記のように、ハンドル7のグリップ8近傍に、運転者(ユーザ)に押圧されることにより減衰力特性が向上する減衰力特性モードに切替可能なUPスイッチ部9eと、運転者に押圧されることにより減衰力特性が低下する減衰力特性モードに切替可能なDOWNスイッチ部9fとを有するUP/DOWNスイッチ9dを設けることによって、運転者がハンドル7のグリップ8から手を離すことなく減衰力特性モードを変更するための操作を行うことができる。
【0081】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0082】
たとえば、上記実施形態では、減衰機構を含む懸架装置を備えた車両の一例として自動二輪車を示したが、本発明はこれに限らず、減衰機構を含む懸架装置を備えた車両であれば、自動車、自転車、三輪車、ATV(All Terrain Vehicle;不整地走行車両)などの他の車両にも適用可能である。
【0083】
また、上記実施形態では、制御部を、第1特性ラインを基準にすることと、第2特性ラインを基準にすることとを運転者により選択可能に構成した例について示したが、本発明はこれに限らず、制御部を、第1特性ラインを基準にすることと、第2特性ラインを基準にすることとを制御部自身により判断するように構成してもよい。また、制御部を、第1特性ラインのみを基準にするように構成してもよいし、第2特性ラインのみを基準にするように構成してもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、圧縮側電子制御バルブ27、伸長側電子制御バルブ28、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53に同じ減衰力特性のヒステリシス特性図を適用した例について示したが、本発明はこれに限らず、圧縮側電子制御バルブ27、伸長側電子制御バルブ28、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53ごとに異なるヒステリシス特性図を適用してもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、圧縮側電子制御バルブ27、伸長側電子制御バルブ28、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53それぞれについて、各減衰力特性モードに対応する減衰力(減衰力F3〜減衰力F6)を共通に設定した例について示したが、本発明はこれに限らず、圧縮側電子制御バルブ27、伸長側電子制御バルブ28、圧縮側電子制御バルブ52および伸長側電子制御バルブ53それぞれについて、減衰力を別々に設定してもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、減衰力特性モードを、サーキットモードA、スポーツモードB、ノーマルモードCおよびコンフォートモードDの4モード設けた例について示したが、本発明はこれに限らず、減衰力特性モードを、2モード、3モードまたは5モード以上設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の一実施形態による自動二輪車の全体構造を示した側面図である。
【図2】図1に示した一実施形態による自動二輪車のスイッチ部周辺を示した斜視図である。
【図3】図1に示した一実施形態による自動二輪車の表示パネル周辺を示した図である。
【図4】図1に示した一実施形態による自動二輪車のフロントフォークの構成を説明するための図である。
【図5】図1に示した一実施形態による自動二輪車の構成を示すブロック図である。
【図6】図1に示した一実施形態による自動二輪車のリヤサスペンションの構成を説明するための図である。
【図7】図1に示した一実施形態による自動二輪車に搭載されたフロントフォークまたはリヤサスペンションの減衰力特性モードを示したマップである。
【図8】図1に示した一実施形態による自動二輪車に搭載された電子制御バルブのヒステリシス特性を説明するための図である。
【図9】図1に示した一実施形態による自動二輪車に搭載されたフロントフォークまたはリヤサスペンションの減衰力特性モードの電流値とストロークスピードとの関係を示したマップである。
【図10】図1に示した一実施形態による自動二輪車に搭載されたECUの制御部により電子制御バルブの減衰力特性モードの移行を説明するためのモード遷移図である。
【図11】図1に示した一実施形態による自動二輪車に搭載された電子制御バルブのヒステリシス特性を説明するための図である。
【図12】図1に示した一実施形態による自動二輪車に搭載された電子制御バルブに供給される電流制御を説明するためのタイミングチャートである。
【図13】図1に示した一実施形態による自動二輪車に搭載された電子制御バルブのヒステリシス特性を説明するための図である。
【図14】図1に示した一実施形態による自動二輪車に搭載された電子制御バルブに供給される電流制御を説明するためのタイミングチャートである。
【図15】図1に示した一実施形態において第1特性ラインに基づいて減衰力の制御が行われる場合の処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図16】図1に示した一実施形態において第1特性ラインに基づいて減衰力の制御が行われる場合の処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図17】図1に示した一実施形態において第1特性ラインに基づいて減衰力の制御が行われる場合の処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図18】図1に示した一実施形態において第1特性ラインに基づいて減衰力の制御が行われる場合の処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図19】図1に示した一実施形態において第2特性ラインに基づいて減衰力の制御が行われる場合の処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図20】図1に示した一実施形態において第2特性ラインに基づいて減衰力の制御が行われる場合の処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図21】図1に示した一実施形態において第2特性ラインに基づいて減衰力の制御が行われる場合の処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図22】図1に示した一実施形態において第2特性ラインに基づいて減衰力の制御が行われる場合の処理動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0088】
1 自動二輪車(車両)
2 ヘッドパイプ(車体)
3 メインフレーム(車体)
4 シートレール(車体)
6 前輪(車輪)
7 ハンドル
8 グリップ
9d UP/DOWNスイッチ(切替部)
9e UPスイッチ部(第1スイッチ部)
9f DOWNスイッチ部(第2スイッチ部)
16 フロントフォーク(懸架装置)
27、52 圧縮側電子制御バルブ(減衰機構)
28、53 伸長側電子制御バルブ(減衰機構)
29 ECU(懸架装置の制御装置)
29a 制御部(懸架装置の制御装置)
39 後輪(車輪)
41 リヤサスペンション(懸架装置)
A サーキットモード(減衰力特性モード)
B スポーツモード(減衰力特性モード)
C ノーマルモード(減衰力特性モード)
D コンフォートモード(減衰力特性モード)
L1 第1特性ライン
L2 第2特性ライン
I1 電流値(小さい電流値)
I2 電流値(大きい電流値)
t1 時間(所定時間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる減衰力特性を示す複数の減衰力特性モードが設けられており、運転者の操作により前記減衰力特性モードが切り替えられることに基づいて、供給される電流値が増加される際の電流値と減衰力との関係を規定する第1特性ラインと、供給される電流値が減少される際の電流値と減衰力との関係を規定する第2特性ラインとを有する減衰機構に供給される電流値を変更する制御部を備え、
前記制御部は、
前記第1特性ラインに基づいて前記減衰機構に所定の電流値を供給することにより所定の前記減衰力特性モードに対応する所定の減衰力を前記減衰機構に発生させるように設定されている場合には、電流値を減少させる際に、前記減衰機構に供給する電流値を前記所定の電流値よりも小さい電流値まで一旦変化させた後、前記所定の電流値に戻す制御を行い、
前記第2特性ラインに基づいて前記減衰機構に所定の電流値を供給することにより所定の前記減衰力特性モードに対応する所定の減衰力を前記減衰機構に発生させるように設定されている場合には、電流値を増加させる際に、前記減衰機構に供給する電流値を前記所定の電流値よりも大きい電流値まで一旦変化させた後、前記所定の電流値に戻す制御を行うように構成されている、懸架装置の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1特性ラインに基づいて前記減衰機構に所定の電流値を供給することにより所定の前記減衰力特性モードに対応する所定の減衰力を前記減衰機構に発生させるように設定されている場合において、減衰力の小さい減衰力特性モードに切り替えられる際に、前記減衰機構に前記所定の減衰力を発生させるために前記所定の電流値よりも小さい電流値に一旦減少させた後、前記所定の電流値に増加させる制御を行うように構成されている、請求項1に記載の懸架装置の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記所定の電流値よりも小さい電流値に減少させて所定時間維持した後、前記所定の電流値に増加させる制御を行うように構成されている、請求項2に記載の懸架装置の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2特性ラインに基づいて前記減衰機構に所定の電流値を供給することにより所定の前記減衰力特性モードに対応する所定の減衰力を前記減衰機構に発生させるように設定されている場合において、減衰力の大きい減衰力特性モードに切り替えられる際に、前記減衰機構に前記所定の減衰力を発生させるために前記所定の電流値よりも大きい電流値に一旦増加させた後、前記所定の電流値に減少させる制御を行うように構成されている、請求項1に記載の懸架装置の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記所定の電流値よりも大きい電流値に増加させて所定時間維持した後、前記所定の電流値に減少させる制御を行うように構成されている、請求項4に記載の懸架装置の制御装置。
【請求項6】
車輪と、
車体と、
前記車輪と前記車体との間に配置され、前記車輪と前記車体とが相対的に移動するときの伸長方向および圧縮方向の少なくとも一方向の力を減衰させるとともに、供給される電流値が増加される際の電流値と減衰力との関係を規定する第1特性ラインと、前記減衰機構に供給される電流値が減少される際の電流値と減衰力との関係を規定する第2特性ラインとを有する減衰機構を含む懸架装置と、
異なる減衰力特性を示す複数の減衰力特性モードが設けられており、運転者の操作により前記減衰力特性モードが切り替えられることに基づいて前記減衰機構に供給される電流値を変更する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記第1特性ラインに基づいて前記減衰機構に所定の電流値を供給することにより所定の前記減衰力特性モードに対応する所定の減衰力を前記減衰機構に発生させるように設定されている場合には、電流値を減少させる際に、前記減衰機構に供給する電流値を前記所定の電流値よりも小さい電流値まで一旦変化させた後、前記所定の電流値に戻す制御を行い、
前記第2特性ラインに基づいて前記減衰機構に所定の電流値を供給することにより所定の前記減衰力特性モードに対応する所定の減衰力を前記減衰機構に発生させるように設定されている場合には、電流値を増加させる際に、前記減衰機構に供給する電流値を前記所定の電流値よりも大きい電流値まで一旦変化させた後、前記所定の電流値に戻す制御を行うように構成されている、車両。
【請求項7】
前記制御部は、前記複数の減衰力特性モードのうち少なくとも1つの減衰力特性モードにおいて、前記懸架装置が伸縮する際のストロークスピードに関わらず略一定の電流値により前記所定の減衰力の制御を行うように構成されている、請求項6に記載の車両。
【請求項8】
運転者の手が載置されるグリップを含み、前記車輪を操舵するためのハンドルと、
前記減衰力特性モードを切替可能な切替部とをさらに備え、
前記切替部は、前記ハンドルのグリップ近傍に設けられ、運転者の操作により前記減衰力特性を減衰力の大きい減衰力特性モードに切替可能な第1スイッチ部と、運転者の操作により前記減衰力特性を減衰力の小さい減衰力特性モードに切替可能な第2スイッチ部とを有する、請求項6に記載の車両。
【請求項9】
前記減衰機構は、供給される電流の電流値に略比例して減衰力を発生させるソレノイドを含む、請求項6に記載の車両。
【請求項10】
前記ソレノイドは、電流と減衰力との関係により生じるとともに、前記第1特性ラインおよび前記第2特性ラインとにより構成されるヒステリシス特性を有する、請求項9に記載の車両。
【請求項11】
前記懸架装置は、フロントフォークと、リヤサスペンションとをさらに含み、
前記制御部は、前記第1特性ラインおよび前記第2特性ラインの少なくともいずれか一方の基準となる特性ラインに基づいて前記フロントフォークおよび前記リヤサスペンションの減衰機構に所定の電流値を供給することにより所定の前記減衰力特性モードに対応する所定の減衰力を前記減衰機構に発生させるように設定されている場合において、前記基準となる特性ラインとは異なる方の特性ラインに沿って前記電流値を増加または減少させる際に、前記減衰機構に供給する電流値を前記所定の電流値よりも大きいまたは小さい電流値の少なくともいずれか一方の電流値まで一旦変化させた後、前記所定の電流値に戻す制御を行うように構成されている、請求項6に記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2009−269472(P2009−269472A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121585(P2008−121585)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】