説明

成形方法及び成形治具

【課題】2枚の外板間を中間桁で保持した繊維強化樹脂複合材製の中空パネルをRTM法により成形し、品質及び生産効率を向上することができる成形方法及び成形治具を提供する。
【解決手段】一端が開口し収縮膨張可能なゴムバッグ4a〜eが挿入された筒状織物体8a〜eをキャビティ10内に側面同士を隣接させて敷き、ゴムバッグの開口端を下型1の相対する両側面に交互に配設されたバッグ挿通孔から外に出し、ゴムバッグとバッグ挿通孔との間を封止し、中間桁を形成するゴムバッグ間に向けて樹脂導入孔3a及び排気孔1dが配された状態にて、ゴムバッグ4内に加圧空気を導入して、樹脂導入孔3aから樹脂を導入し、その後樹脂を硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2枚の外板間を中間桁で保持した繊維強化樹脂複合材製の中空パネルをRTM(Resin Transfer Molding)法により成形する成形方法及び本法に用いる成形治具に関する。
【背景技術】
【0002】
2枚の外板間を中間桁で保持した繊維強化樹脂複合材製の中空パネルを成形する方法として、例えば、特許文献1の段落0014〜0017及び図3〜5に、芯金(同文献中符号10)に両端が開口したシリコンゴムの中空バッグ(同文献中符号11)を外装し、これにプリプレグを積層し、積層後に芯金を抜いたものを複数造り、これらの横面を当接させて下型の上に置き、この上に上型(同文献中カウルプレート26)を置き、プリプレグの部分を真空バッグ(同文献中符号27)で覆い、炉の中で加圧加熱して成形する方法が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、RTM法において膨張型の成形治具を用いることが記載されている。これは、下方の膨張袋を膨張して上型に繊維を押し付け、上側から樹脂を導入してハット材をRTM法で成形する方法である。
【特許文献1】特開2001−30997号公報
【特許文献2】特開平05−104573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の方法は、2枚の外板間の中間を保持する中間桁を有した繊維強化樹脂複合材製の中空パネルを一体成形することを可能にする。しかしながら、プリプレグを使用する方法によらずRTM法により成形することにより、さらなる品質及び生産効率の向上が可能である。
一方、特許文献2記載のRTM法は、ハット材をRTM法で成形する方法であって、中空パネルを成形することができない。
【0005】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、2枚の外板間を中間桁で保持した繊維強化樹脂複合材製の中空パネルをRTM法により成形し、品質及び生産効率を向上することができる成形方法及び成形治具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、端部に開口を有するバッグが挿入された筒状の織物体を複数、型内に側面同士を隣り合わせて敷き、前記バッグの開口のある端部を前記型に設けられた、外部に連通するバッグ挿通孔に挿入し、前記開口を外部に連通させた状態とする型収め工程と、
前記型を閉じ、前記バッグと前記バッグ挿通孔との間を封止して、前記バッグの外であって前記型内の空間を樹脂導入孔及び排気孔を確保した上で密閉する型閉め工程と、
前記バッグを内側から加圧して張った状態で前記樹脂導入孔より前記空間に樹脂を導入する樹脂導入工程と、
前記樹脂導入工程により導入した樹脂を硬化させる樹脂硬化工程とを以上の記載の順序で備える成形方法である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記型収め工程において、シート状の織物体を複数の前記筒状の織物体の上若しくは下又は上下双方に積層することを特徴とする請求項1に記載の成形方法である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記樹脂導入工程において、前記バッグ内に加圧気体を導入した状態で前記樹脂を導入することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の成形方法である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、凹部が形成された下型と、上型と、成形品の中空部を成形し一端が開口する複数のバッグとを備える成形治具であって、
前記凹部と当該凹部の上端開口を覆う前記上型の下面とにより成形品の外形を成形するキャビティを形成し、
前記バッグを挿通させる該バッグと同数のバック挿通孔が前記凹部の一方向側の側壁部に貫通形成され、
前記バッグの開口のある端部がそれぞれ前記バック挿通孔に挿入されて前記開口が外部に連通するとともに、内側から加圧されて張りを得た前記複数のバッグが前記凹部の底面上に側面同士を隣り合わせて敷かれて前記キャビティ内に収められ、
前記上型に樹脂導入孔が、前記下型に排気孔がそれぞれ形成されてなる成形治具である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、前記キャビティの内面に開口する前記樹脂導入孔の一端は、張りを得た前記複数のバッグが前記凹部の底面上に側面同士を隣り合わせて敷かれて前記キャビティ内に収められた状態において、隣り合う2つの前記バッグの狭間近傍位置に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の成形治具である。
【0011】
請求項6に記載の発明は、前記キャビティの内面に開口する前記排気孔の一端は、張りを得た前記複数のバッグが前記凹部の底面上に側面同士を隣り合わせて敷かれて前記キャビティ内に収められた状態において、隣り合う2つの前記バッグの狭間近傍位置に配置されていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の成形治具である。
【0012】
請求項7に記載の発明は、前記バック挿通孔は、前記下型の1側面とこれに相対する1側面とに交互に配設されてなることを特徴とする請求項4、請求項5又は請求項6に記載の成形治具である。
【0013】
請求項8に記載の発明は、表裏を貫通する孔を有し、前記上型の上面を覆い、前記上型を押さえる蓋体を備え、前記上型の上面と前記蓋体の内面との間に空間が形成され、当該空間を介して前記蓋体の孔と前記樹脂導入孔とが連通することを特徴とする請求項4から請求項7のうちいずれか一に記載の成形治具である。
【0014】
請求項9に記載の発明は、前記上型の上面と前記蓋体の内面との間に形成される前記空間から前記上型の端部を経て前記キャビティを形成する範囲の前記上型の下面まで溝部が形成されてなることを特徴とする請求項8に記載の成形治具である。
【0015】
請求項10に記載の発明は、張りを得た前記バッグの外周に密着する密封部材が内周面に周設され孔部を有し、下型の前記バッグ挿通孔から外部に突出させた前記バッグの端部を前記孔部に通して前記密封部材に密着させるとともに前記バッグの周囲で前記下型に密着固定されることにより前記バッグと前記バッグ挿通孔との間を封止する封止具を備えることを特徴とする請求項4から請求項9のうちいずれか一に記載の成形治具である。
【0016】
請求項11に記載の発明は、前記封止具に連結され前記バッグの開口を密閉する密閉具を備える請求項10に記載の成形治具である。
【0017】
請求項12に記載の発明は、前記密閉具に気体管路を接続可能な開閉自在の接続口が設けられていることを特徴とする請求項11に記載の成形治具である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の成形方法によれば、単一の筒状の織物体により強化されてなる繊維強化樹脂複合材の筒状体が隣接する側面同士を結合させて複数連接されてなる維強化樹脂複合材製の中空パネルを、RTM法により一体成形することができる。
すなわち、隣り合う2つの筒状体の側部同士が結合して中空パネルの中間桁となり、この中間桁を構成する筒状体の側部に連続する各筒状体の側部が中間桁の両端側でそれぞれ連なって一定の成型された平面又は曲面を形成して2枚の外板を構成する。かかる構造により、2枚の外板間を中間桁で保持した繊維強化樹脂複合材製の中空パネルが成形でき、これをRTM法により一体成形できる。
RTM法により一体成形可能となったことにより、品質及び生産効率を向上することができる。中空部の成形にバッグを使用することにより、型収め作業及び成形後の当該バッグの除去作業が容易になり生産効率が向上する。
例えば本発明の成形治具により、本法を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0020】
まず、本実施形態の成形治具の構造につき説明する。図1は、本実施形態の成形治具の上面図(a)、左側面図(b)、右側面図(c)及び正面図(d)であり、1は下型、2は蓋体である。図2は、蓋体2を外した状態の上面図であり、3は上型である。図3は、下型の上面図である。図4は、ゴムバッグ、封止具板、及び接続具の組立斜視図であり、4はゴムバッグ、5は封止具板、6は接続具である。図5は、織物体がセットされた本実施形態の成形治具の上面図(a)、左側面図(b)及び右側面図(c)である。図6は、図5(a)におけるA−A断面図(但し、上型については図2に示すA−Aの位置の断面図を、下型については図3に示すA−Aの位置の断面図を示す。)である。図7は、図5(a)におけるB−B断面図である。
【0021】
図3等に示すように、下型1には凹部1aが形成されている。凹部1aの周囲に当たる下型1の上端には、中段部1b及び周壁1cが形成されている。図3で良くわかるように、凹部1aを中段部1bが囲み、周壁1cが中段部1bを囲む配置である。凹部1aの底部には表裏を貫通する複数の排気孔1dが所定の配列で設けられている。この排気孔1dは樹脂排出孔を兼ねる。
【0022】
図2、図6、図7に示すように、上型3が中段部1bに載置されるとともに、上型3が周壁1cの内側に嵌合することにより上型3は凹部1a上の定位置に保持される。凹部1aと凹部1aの上端開口を覆う上型3の下面とにより成形品の外形を成形するキャビティ10が形成される。上型3の中段部1bを、凹部1aの周り一周に設けず、長辺側のみなど一組の相対する端部のみに設けた構造としても良い。すなわち、上型3が下型1に閉じ合わされるとき、上型3の少なくとも一組の相対する端部が凹部1aの周囲上端上に載置される。これにより上型3の高さ方向の位置を固定することができる。
【0023】
図1,図5,図6に示すように、蓋体2には、表裏を貫通する樹脂導入孔2aが設けられている。樹脂導入孔2aは本実施の形態では中央に一箇所しか設けていないが、成形体の大きさにより複数設けてもよい。
【0024】
上型3にも、表裏を貫通する複数の樹脂導入孔3aが所定の配列で設けられている。
上型3の上面中央部には、すべての樹脂導入孔3aが接続する一体の主溝3bが形成されている。上型3の上面周囲部には、主溝3bに連続する副溝3cが端面まで形成されている。さらに、上型3の端面には副溝3cに連続する副溝3dが形成されている。さらに、図6に示すように上型3の下面には副溝3dに連続する副溝3eが形成されている。副溝3dはキャビティ10を形成する範囲の上型3の下面まで形成されている。
【0025】
蓋体2を樹脂導入孔2aと上型3の複数の樹脂導入孔3aとが主溝3bを介して連通する。上型3の樹脂導入孔3aはキャビティ10に開口する。また、蓋体2の樹脂導入孔2aとキャビティ10とが主溝3b及び副溝3c〜eを介して連通する。主溝3bを一体とすることにより樹脂導入時の樹脂の圧力の不均衡を軽減し、樹脂まわりを良好にする。副溝3c〜eは複数設けられ、上型3の周囲部に分散配置されている。
【0026】
上型3は蓋体2で押さえられる。成形中などに上型3が動かないようにするためである。上型3の最厚部は、周壁1cの高さよりわずかに厚くされており、蓋体2により押圧されて、成形中などに動かないように保持される。逆に、上型3の最厚部を周壁1cの高さより薄くする場合には、蓋体2の内面に周壁1cの内側に落ち込む凸部を形成し、これにより上型3を押さえても良い。
【0027】
蓋体2は、その周縁部を周壁1cに対向させて周壁1cの内側を覆う。蓋体2と下型1との相対的位置を固定する構造が設けられる。この構造は、例えば、図6に示す凹部1eと凸部2bのように、蓋体2と下型1とが互いに嵌合する形状のほか、蓋体2及び下型1の両者に嵌る枠やピンなどの第三の治具であっても良い。また、上型3の最厚部を周壁1cの高さより薄くする場合に、蓋体2の内面に周壁1cの内側に嵌合する凸部を形成し、これにより上型3を押さえるとともに下型1に対する位置を固定しても良い。蓋体2の樹脂導入孔2aと上型3の樹脂導入孔3aとの相対的位置が固定されることにより、常に一定の樹脂導入路を形成できる。
【0028】
キャビティ10は、成形品、すなわち、中空パネルの外形を成形する内面を有する。従って、キャビティ10に露出する下型1の凹1aの内面及び上型3の下面は、成形品の形状に応じた形状に形成されている。成形される中空パネルの厚みを変化させる場合には、凹1aの底面や上型3の下面のキャビティ10に露出する部分は、中空パネルの厚みの変化に応じた曲面に形成される。凹1aの縁一周は同一高さとならないことがある。いずれの場合でも周壁1cの上端を同一高さに形成して、蓋体2との合いを都合良くする。例えば、蓋体2を異なる型で共通に使用することが可能となる。
【0029】
中空パネルの中空部はゴムバッグ4により成形する。図4,6,7に示すように、ゴムバッグ4は、長手方向の一端に開口41を有した長尺袋状の構造を有するとともに、外皮はある程度自由に折り曲げられる柔らかさを持つ。本実施形態の成形治具は、5本のゴムバッグ4を備える。ゴムバッグ4の本数はパネルの幅広度に応じて選択すればよいが、中間桁を構成するには2本以上必要である。
【0030】
説明上5本のゴムバッグ4を区別するため、図6において左から順に4a,4b,4c,4d,4eと符号を付す。5本のゴムバッグ4を、キャビティ10から中空パネルの外板(ここでは端部含む)の所望の厚み分を差し引いた空間を占める形状、大きさに形成しておく。但し、厳密に設計せず、ゴムバッグ4の柔軟性により現物に対応させてもよい。さらに中間桁を配置したい部分で5つに分割して(必要により中間桁の所望の厚み分を差し引く)、各ゴムバッグ4a〜4eを構成する。中間桁は隣り合うゴムバッグ4,4の間に形成される。本実施形態では、ゴムバッグ4が5本のため中間桁は4本形成される。
各ゴムバッグ4a〜4eを同一の形状、大きさにすることができる場合もあるが、成形する中空パネルの形状やゴムバッグ4の対応力次第では、各ゴムバッグ4a〜4eを異なる個別の形状にして、配置まで固定すべき場合がある。
【0031】
下型1の左右側面とキャビティ10とを連通する5つのバック挿通孔7が凹部1aの壁部に貫通形成されている。
説明上5つのバック挿通孔7を区別するため、図1において左から順に7a,7b,7c,7d,7eと符号を付す。一番目から一つ置き3つのバック挿通孔7a,7c,7eが左側面(図1(b))に設けられ、二番目から一つ置き2つのバック挿通孔7b,7dが右側面(図1(c))に設けられる。このように、バック挿通孔7は、下型1の1側面とこれに相対する1側面とに交互に配設されている。
【0032】
図4に示すように型収め時においは、ゴムバッグ4の開口41のある端部はバック挿通孔7に挿入され外部に突出する。1番目のゴムバッグ4aの開口41のある端部はバック挿通孔7aに挿入される。同様にしてゴムバッグ4b〜4eは順にバック挿通孔7b〜7eに挿入される。その結果、隣り合うゴムバッグ4,4は逆方向を向く。すべてのゴムバッグ4,4,・・・の長手方向は同方向に揃う。したがって、ゴムバッグ4,4,・・・は、凹部1aの底面上において側面同士を隣り合わせて敷設される。ゴムバッグ4が張りを得たとき、各バック挿通孔7は挿入されるゴムバッグ4の外周一周に接触する一方、成形品に影響を与えるような不都合な歪みをゴムバッグ4に与えない形状、大きさとする。好ましくは、各バック挿通孔7の断面は挿入されるゴムバッグ4の張りを得た状態での断面外形に一致させる。
以上の構成により本成形治具は、張りを得たこれらのゴムバッグ4,4,・・・を凹部1aの底面上に側面同士を隣り合わせて敷きキャビティ10内に収めることが可能とされている。
【0033】
図6に示すように、樹脂導入孔3a及び排気孔1dのキャビティ10への開口端は、隣り合う2つのゴムバッグ4,4の狭間に直面する位置に配置されている。また、隣り合う2つのゴムバッグ4,4の間に中間桁を強化する織物体が挟まれ、中間桁及び外板を形成する織物体への樹脂導入速度を高めることができる。
【0034】
また、樹脂導入孔3a及び排気孔1dは、図6に示すように各中間桁を形成する空間に向けて配されるとともに、図2、図3に示すように所定間隔でキャビティ10全体に分散配置されている。
【0035】
次に、封止具及び密閉具につき説明する。図4、図5、図7に示すように、封止具5はゴムバッグ4とバッグ挿通孔7との間における空気や樹脂の漏れ防ぐために封止するもので、ゴムバッグ4を通す孔部が設けられた枠状の構造を有する。本体5aの内周面には張りを得たゴムバッグ4の外周に密着するゴムパッキン(密封部材)5bが周設されている。本体5aは、下型1と同一の金属等で構成される。ゴムパッキン5bは樹脂硬化工程時の加熱に耐える耐熱性を有するものが好ましい。
ゴムパッキン5bの端面をゴムバッグ4の周囲で下型1に密着させるようにボルト等の締結具により封止具5が下型1に固定される。これによりゴムバッグ4とバッグ挿通孔7との間を封止する。
【0036】
図4、図7に示すように、密閉具6は、封止具5に連結されゴムバッグ4の開口41を密閉するものである。即ち、図示しない加圧空気源に設けられた開閉バルブから延長された高圧ホースが結合される口金9が接続口6aにねじ結合され、開閉バルブを閉じてゴムバッグ4内の空気量を保つことができ、開閉バルブを開けばゴムバッグ4内に加圧空気を導入することができる。開閉バルブと口金9の間には大気に通じる別の開閉バルブを設けておく。
【0037】
次に、上記成形治具を用いた成形方法を例にして本発明の成形方法の実施形態につき説明する。
【0038】
(1)筒状織物体8を作製する。各筒状織物体8は成形する中空パネルのそれぞれが配置される部分に応じた外周長及び長さに作製する。
なお、筒状織物体8の長さは、長くてもキャビティに収まる長さであり、一方、ゴムバッグ4はゴムバッグ4で筒状織物体8の形状を保持するため、ゴムバッグ4は筒状織物体8より長くなる。
【0039】
(2)ゴムバッグ4を対応する筒状織物体8に挿入し、筒状織物体8の形状を整える。ゴムバッグ4の開口41のある端部は筒状織物体8から突出させた状態とし、他端は筒状織物体8の端部に合わせる。
ゴムバッグ4の外周は、筒状織物体8の外周より小さく作られているため、ゴムバッグ4を筒状織物体8に容易に挿入することができる。また、この時、ゴムバッグ4を張っておく必要はない。挿入が円滑に行かない場合は、作業者がゴムバッグ4をつぶしたり、縦に畳んだり曲げたりして細くして挿入する。
【0040】
(3)型収め工程
次に、ゴムバッグ4が挿入された筒状織物体8を凹部1a内に複数、側面同士を隣り合わせて敷いて収め、ゴムバッグ4の開口41のある端部をバッグ挿通孔7に挿入した状態とする。このとき、隣り合う筒状織物体8、8は対向する側面同士を接触させていることが好ましい。
筒状の織物体8は、ゴムバッグ4に対応して5本用いられる。説明上5本の筒状織物体8を区別するため、図6において左から順に8a,8b,8c,8d,8eと符号を付す。筒状織物体8aにゴムバッグ4aが挿入されて、ゴムバッグ4aの開口41のある端部がバッグ挿通孔7aに挿入され、さらに外部に突出した状態とする。それぞれ同様に、筒状織物体8b〜8eにゴムバッグ4b〜4eが挿入されて、ゴムバッグ4b〜4eの開口41のある端部がバッグ挿通孔7b〜7eに挿入され、さらに外部に突出した状態とする。
【0041】
図7に示すように、ゴムバッグ4cの遮蔽された端部を筒状織物体8cの端部に揃える一方、開口41のある端部をバッグ挿通孔7cを通して、外部に突出させた状態とする。ゴムバッグ4a、4b、4d,4eについても同様にする。
【0042】
外板強化用の織物体を追加する場合は、ゴムバッグ4及び筒状織物体8を凹部1a内に設置する前に、織物体11を凹部1aの底面に積層する。
また、ゴムバッグ4及び筒状織物体8を凹部1a内に設置した後に、織物体12を凹部1aの筒状織物体8の上に置く。ただし、織物体11及び織物体12は強度等を検討して必要であれば積層される。
【0043】
(4)型閉め工程
型収め工程の後、バッグ挿通孔7から外部に突出した筒状織物体8の開口41のある端部を封止具5に通し、封止具5を下型1に固定して、(又は、先に下型1に固定された封止具5に筒状織物体8の開口41のある端部を通してもよい。)ゴムバッグ4とバッグ挿通孔7との間を封止する。
同じく、型収め工程の後、上型3を下型1に閉じ合わせる。次に、上型3の上に蓋体2を設置する。必要に応じて下型1と蓋体2を連結する。
【0044】
(5)次に、樹脂導入孔2aを覆う樹脂溜を形成し、当該樹脂溜に連通する開閉自在の樹脂導入口が付設されたブロックを設置した後、プレス装置により型を上下にプレスする。プレスするのは、樹脂導入圧やゴムバッグ4の膨張圧に抗するためである。
【0045】
(6)前記(5)の後、加圧空気源に設けられた開閉バルブから延長された高圧ホースを口金9に接続し、ゴムバッグ4内に加圧空気を導入し、徐々に加圧空気を増加させてゴムバッグ4に0.65Mpaの内圧を負荷する。
【0046】
(7)前記(5)の後、樹脂導入口に樹脂タンクに繋ぎ、樹脂導入口を閉じ、下型の排気孔を吸引口として吸引装置を繋ぎ織物材が配置されたゴムバッグ4の外であってキャビティ10内の空間を所定圧以下の真空に排気する。
【0047】
(8)内部の気圧が所定圧以下に降下したのを確認し、吸引装置による吸引をつづけながら、樹脂導入口を開いて樹脂を導入する。
【0048】
(9)樹脂導入圧力が所定値以上になったら樹脂を加圧導入する。その圧力を0.3Mpaまで徐々に増加させ、樹脂が導入されなくなったら吸引口を閉じてさらに0.6Mpaまで徐々に加圧しながら樹脂を導入する。
【0049】
(10)その後、加熱して樹脂を硬化させる。
【0050】
(11)樹脂硬化後、型開きし、成形された中空パネルからゴムバッグ4を除去する。ゴムバッグ4の除去は、口金9の上流の開閉バルブを閉じ、別の開閉バルブからゴムバッグ4の圧力を開放して行うことにより容易に行える。
以上により中空パネルが成形される。
【0051】
前記(6)の加圧空気導入工程と(7)の真空吸引工程の開始は、いずれかが先でも同時でもよく、樹脂導入までに必要な圧力に制御しておけばよい。
【0052】
上記工程(2)において、ゴムバッグ4を筒状織物体8に挿入した後に、上記(3)の型収め工程においてゴムバッグ4が挿入された筒状織物体8を凹部1a内に収めたが、最終的に上記(3)に示した状態になっていれば良く、筒状織物体8を凹部1a内に収めた後に、(例えば、ゴムバッグ4をバッグ挿通孔7の外側から凹部1a内へ挿入して)ゴムバッグ4を筒状織物体8に挿入しても良い。
【0053】
上記実施形態においては、バッグ挿通孔7が下型1の両側面に交互に配設されている。上記実施形態に拘わらず、バッグ挿通孔7一側面のみに設けても良い。この場合は、隣り合うバッグ挿通孔7間の間隔が狭くなり、下型、封止具及び密閉具が作りにくくなるとともに、ゴムバッグ4とバッグ挿通孔7との間を封止が困難となる。これに対し上記実施形態によれば、バッグ挿通孔7が下型1の両側面に交互に配設されているので、下型、封止具及び密閉具が作り易いとともに、ゴムバッグ4とバッグ挿通孔7との間を封止が容易に行える。
【0054】
上記実施形態においては、ゴムバッグ4の開口41のある端部をバッグ挿通孔7から外部に突出させた上で、ゴムバッグ4とバッグ挿通孔7との間を封止具5により封止した。上記実施形態に拘わらず、ゴムバッグの開口のある端部を外部に突出させずにバッグ挿通孔7の内側に封止樹脂で接着固定して封止してもよい。この場合は、ゴムバッグの除去の作業性、繰り返しの使用性が悪くなる。これに対し上記実施形態によれば、圧力により密封性が高まる密封部材を有した封止具5により封止するので、ゴムバッグの除去の作業性、繰り返しの使用性が良好である。
【0055】
その他、本発明の成形方法は、本発明の成形治具を用いた成形方法に限定されず、キャビティに対する型の分離位置や分離数、分離方向、バッグ挿通孔を設ける部位など種々の形態の成形治具を用いてよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態に係る成形治具の上面図(a)、左側面図(b)、右側面図(c)及び正面図(d)である。
【図2】本発明の一実施形態に係る成形治具の蓋体を外した状態の上面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る下型の上面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るゴムバッグ、封止具板、及び接続具の組立斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る織物体がセットされた成形治具の上面図(a)、左側面図(b)及び右側面図(c)である。
【図6】図5(a)におけるA−A断面図(但し、上型については図2に示すA−Aの位置の断面図を、下型については図3に示すA−Aの位置の断面図を示す。)である。
【図7】図5(a)におけるB−B断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 下型
1a 凹部
1b 中段部
1c 周壁
1d 排気孔
2 蓋体
2a 樹脂導入孔
3 上型
3a 樹脂導入孔
3b 主溝
3c-e 副溝
4(4a-e) ゴムバック
41 開口
5 封止具
5b ゴムパッキン
6 密閉具
6a 接続口
7(7a-e) バック挿通孔
8(8a-e) 筒状織物体
9 口金
10 キャビティ
11 織物体
12 織物体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部に開口を有するバッグが挿入された筒状の織物体を複数、型内に側面同士を隣り合わせて敷き、前記バッグの開口のある端部を前記型に設けられた、外部に連通するバッグ挿通孔に挿入し、前記開口を外部に連通させた状態とする型収め工程と、
前記型を閉じ、前記バッグと前記バッグ挿通孔との間を封止して、前記バッグの外であって前記型内の空間を樹脂導入孔及び排気孔を確保した上で密閉する型閉め工程と、
前記バッグを内側から加圧して張った状態で前記樹脂導入孔より前記空間に樹脂を導入する樹脂導入工程と、
前記樹脂導入工程により導入した樹脂を硬化させる樹脂硬化工程とを以上の記載の順序で備える成形方法。
【請求項2】
前記型収め工程において、シート状の織物体を複数の前記筒状の織物体の上若しくは下又は上下双方に積層することを特徴とする請求項1に記載の成形方法。
【請求項3】
前記樹脂導入工程において、前記バッグ内に加圧気体を導入した状態で前記樹脂を導入することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の成形方法。
【請求項4】
凹部が形成された下型と、上型と、成形品の中空部を成形し一端が開口する複数のバッグとを備える成形治具であって、
前記凹部と当該凹部の上端開口を覆う前記上型の下面とにより成形品の外形を成形するキャビティを形成し、
前記バッグを挿通させる該バッグと同数のバック挿通孔が前記凹部の一方向側の側壁部に貫通形成され、
前記バッグの開口のある端部がそれぞれ前記バック挿通孔に挿入されて前記開口が外部に連通するとともに、内側から加圧されて張りを得た前記複数のバッグが前記凹部の底面上に側面同士を隣り合わせて敷かれて前記キャビティ内に収められ、
前記上型に樹脂導入孔が、前記下型に排気孔がそれぞれ形成されてなる成形治具。
【請求項5】
前記キャビティの内面に開口する前記樹脂導入孔の一端は、張りを得た前記複数のバッグが前記凹部の底面上に側面同士を隣り合わせて敷かれて前記キャビティ内に収められた状態において、隣り合う2つの前記バッグの狭間近傍位置に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の成形治具。
【請求項6】
前記キャビティの内面に開口する前記排気孔の一端は、張りを得た前記複数のバッグが前記凹部の底面上に側面同士を隣り合わせて敷かれて前記キャビティ内に収められた状態において、隣り合う2つの前記バッグの狭間近傍位置に配置されていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の成形治具。
【請求項7】
前記バック挿通孔は、前記下型の1側面とこれに相対する1側面とに交互に配設されてなることを特徴とする請求項4、請求項5又は請求項6に記載の成形治具。
【請求項8】
表裏を貫通する孔を有し、前記上型の上面を覆い、前記上型を押さえる蓋体を備え、前記上型の上面と前記蓋体の内面との間に空間が形成され、当該空間を介して前記蓋体の孔と前記樹脂導入孔とが連通することを特徴とする請求項4から請求項7のうちいずれか一に記載の成形治具。
【請求項9】
前記上型の上面と前記蓋体の内面との間に形成される前記空間から前記上型の端部を経て前記キャビティを形成する範囲の前記上型の下面まで溝部が形成されてなることを特徴とする請求項8に記載の成形治具。
【請求項10】
張りを得た前記バッグの外周に密着する密封部材が内周面に周設され孔部を有し、下型の前記バッグ挿通孔から外部に突出させた前記バッグの端部を前記孔部に通して前記密封部材に密着させるとともに前記バッグの周囲で前記下型に密着固定されることにより前記バッグと前記バッグ挿通孔との間を封止する封止具を備えることを特徴とする請求項4から請求項9のうちいずれか一に記載の成形治具。
【請求項11】
前記封止具に連結され前記バッグの開口を密閉する密閉具を備える請求項10に記載の成形治具。
【請求項12】
前記密閉具に気体管路を接続可能な開閉自在の接続口が設けられていることを特徴とする請求項11に記載の成形治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−130801(P2007−130801A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323687(P2005−323687)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】