説明

成膜装置および成膜方法

【課題】長尺な基板を巻回してなる供給ロールから基板を送り出して、基板を搬送しつつプラズマCVDによって成膜を行い、成膜済の基板をロール上に巻回する成膜において、成膜を停止することなく、基板への成膜中に電極のクリーニングを行なうことができる成膜方法および成膜装置を提供する。
【解決手段】プラズマCVDによって成膜を行なう成膜部を、基板の搬送方向に、複数、配列して設けると共に、各成膜部に電極のクリーニング手段を設け、常に少なくとも1つの成膜部は、他の空間と気密に分離して成膜を停止した状態としておき、この停止状態の成膜部において、必要に応じて、クリーニング手段によって電極のクリーニングを行なうことにより、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマCVDによる基板への成膜に関し、詳しくは、成膜中に電極のクリーニングを行なうことができ、長期の連続的な成膜を安定して行なうことができる成膜方法、および、この成膜方法を行なう成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学素子の製造、光学素子に用いられる防湿膜や保護膜の製造、半導体装置の製造、薄膜太陽電池の製造等に、プラズマCVDによる薄膜形成が利用されている。
【0003】
プラズマCVDによって、効率良く、高い生産性を確保して成膜を行なうためには、長尺な基板に連続的に成膜を行なうのが好ましい。
このような成膜方法を実施する設備として、長尺な基板(ウェブ状の基板)をロール状に巻回してなる供給ロールと、成膜済の基板をロール状に巻回する巻取りロールとを用いる、いわゆるロール・ツー・ロールの成膜装置が知られている。このロール・ツー・ロールの成膜装置は、プラズマCVDによって基板に成膜を行なう成膜室を通過する所定の経路で、供給ロールから巻取りロールまで長尺な基板を挿通し、供給ロールからの基板の送り出しと、巻取りロールによる成膜済基板の巻取りとを同期して行いつつ、成膜室において、搬送される基板に連続的に成膜を行なう。
【0004】
ところで、プラズマCVDでは、通常、反応ガスをプラズマ励起させるための電極が、成膜系内(成膜空間内)に位置している。そのため、基板のみならず、電極にも膜が付着してしまう。
前述のようなロール・ツー・ロールの成膜装置では、長尺な基板にプラズマCVDによって連続的に成膜を行なう。そのため、成膜を続けていると、電極には、次第に膜が付着/堆積していく。電極に堆積した膜(付着物)は、いずれは剥がれ落ちてパーティクルとなってしまい、基板等を汚染してしまう可能性もある。
そのため、ロール・ツー・ロールの成膜装置では、適正な製品を製造するために、適度なタイミングで電極のクリーニング(清掃)を行い、付着/堆積した膜を除去する必要が生じてしまう。
【0005】
このようなプラズマCVDにおける電極のクリーニングのために、各種の提案が行なわれている。
例えば、特許文献1には、プラズマCVD装置において、高周波電極を電極板と電極本体とに分けて、電極板に第1の孔を、電極板本体に前記第1の孔に対応する第2の孔を、それぞれ設けると共に、第1の孔に挿通して第2の孔に嵌合する装着ピンを用いて、電極板を電本体に装着するプラズマCVD装置(薄膜形成装置)が開示されている。
また、特許文献2には、基板の幅方向に長尺な棒電極と、基板の幅方向両側に配置された棒電極のクリーニング手段(汚れ除去手段)と、棒電極を長手方向(基板幅方向)に移動する移動機構とを有し、成膜中に、移動機構によって棒電極を移動することにより、基板から外れた領域で棒電極のクリーニングを行なうプラズマCVD装置(薄膜形成装置)が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−2423号公報
【特許文献2】特開2005−307289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されるプラズマCVD装置によれば、装着ピンを用いた簡易な作業で、電極板の脱着を行なうことができ、電極清掃作業の時間短縮や作業効率の向上、装置可動効率の向上等を図ることができる。
しかしながら、電極をクリーニングするためには、真空チャンバを真空ブレーク(大気開放)して、電極板を取り外す必要があるので、メンテナンスのための装置の停止時間が長くなってしまう。また、ロール・ツー・ロールの装置では、電極板への膜の堆積量が限界を超えた場合には、供給ロールに巻回された全ての基板への成膜を終了する前に、成膜を停止して電極のクリーニングを行なう必要がある。さらに、供給ロールの基板が終了する前に電極のクリーニングを行なう場合には、真空チャンバ内に基板が存在する状態で真空ブレークする必要があるので、この際に電極や真空チャンバ内壁に付着/堆積した膜が剥離してパーティクルとなって舞い上がり、基板を汚染してしまう可能性もある。
【0008】
他方、特許文献2に開示されるプラズマCVD装置によれば、成膜中に(棒)電極のクリーニングが可能であり、ロール・ツー・ロールの装置であっても、電極の汚れに起因する成膜の停止をすることなく、供給ロールの基板が終了するまで連続的にプラズマCVDによる成膜を行なうことができる。
その半面、特許文献2に開示される装置では、機械的な方法で電極に付着した膜を除去して、除去した膜を吸引によってチャンバ外に排出するので、大気圧近傍の環境でしか使用することができず、真空でのプラズマCVDに利用できないため、非常に用途が限られてしまう。
【0009】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解決することにあり、長尺な基板をロール状に巻回してなる供給ロールから基板を送り出して、基板を搬送しつつ連続的にプラズマCVDによる成膜を行い、成膜を終了した基板をロール状に巻回する、プラズマCVDによるロール・ツー・ロールの成膜において、長尺な基板に連続的に成膜を行いつつ、成膜の停止や真空ブレークを行することなく電極のクリーニングを行なうことができ、供給ロールの基板が終了するまで、電極への膜の付着/堆積に起因して成膜を停止することなく、連続して成膜を行なうことができる成膜方法、および、この成膜方法を実施する成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の成膜装置は、基板の表面にプラズマCVDによる成膜を行なう成膜室と、長尺な基板を巻回してなる供給ロールから前記成膜室に基板を供給する供給室と、前記成膜室で成膜された基板をロール状に巻回する巻取り室とを有し、
かつ、前記成膜室は、基板を所定の搬送経路で搬送する搬送手段と、前記搬送手段による基板の搬送経路に対応して基板の搬送方向に配列される、電極、ガス導入手段および前記電極のクリーニング手段を有する、互いに独立した複数の成膜部と、少なくとも1つの成膜部を、前記成膜室内の空間と気密に分離する分離手段とを有することを特徴とする成膜装置を提供する。
【0011】
また、本発明の成膜方法は、ロール状に巻回された長尺な基板を送り出して、基板を搬送しつつプラズマCVDによって連続的に成膜を行い、成膜された長尺な基板をロール状に巻回するに際し、電極のクリーニング手段を有する互いに独立した成膜部を、基板の搬送経路に対応して基板の搬送方向に複数配列すると共に、前記基板への成膜中には、常に少なくとも1つの前記成膜部は他の空間と気密に分離して成膜に寄与しない状態としておき、この成膜に寄与しない成膜部以外の成膜部による基板への成膜中に、必要に応じて、前記成膜に寄与していない成膜部は、前記クリーニング手段によって電極のクリーニングを行なうことを特徴とする成膜方法を提供する。
【0012】
このような本発明の成膜装置において、常に前記成膜部の少なくとも1つを前記分離手段で分離して成膜停止状態としておき、この成膜停止状態以外の成膜部による基板への成膜中に、必要に応じて前記成膜停止状態の成膜部において前記クリーニング手段によるクリーニングを行なう、前記成膜部の駆動制御手段を有するのが好ましい。
また、本発明の成膜装置および成膜方法において、前記クリーニング手段が、クリーニングガスの導入手段と、前記電極への高周波電力の投入手段であるのが好ましく、また、前記クリーニング手段が、前記成膜部とは別の空間で生成されたラジカルの導入手段であるのが好ましく、さらに、個々の成膜部毎に、独立して真空度が調整可能であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上記構成を有する本発明は、供給ロールから基板を送り出して、成膜室において基板を搬送しつつ連続的にプラズマCVDによる成膜を行い、成膜した基板をロール状に巻回する、ロール・ツー・ロールのプラズマCVDによる成膜において、成膜室に、基板にプラズマCVDによる成膜を行なうと共に、電極(あるいはさらに内壁等のその他の領域)のクリーニング手段を有する成膜部を、基板の搬送方向に配列して、複数、設ける。
その上で、基板への成膜中は、常に少なくとも1つの成膜部は成膜に寄与しない状態としておき、必要に応じて、この成膜に寄与しない成膜部は、クリーニング手段によって電極のクリーニングを行なう。
【0014】
従って、本発明によれば、電極に膜が付着/堆積した成膜部は、成膜に寄与しない状態にすると共に、それまで成膜に寄与していなかった成膜部(未使用あるいは電極のクリーニングが終了した成膜部)を成膜に寄与させることで、成膜を続けて連続的に行なうことができる。また、電極に膜(付着物)が堆積した成膜部は、成膜に寄与していない状態として、他の成膜部による成膜中に、クリーニング手段によって電極のクリーニングを行なうことができる。
すなわち、本発明によれば、ロール・ツー・ロールのプラズマCVDによる成膜において、長尺な基板に連続的に成膜を行いつつ、成膜の停止や真空ブレークを行することなく電極のクリーニングを行なうことができ、供給ロールの基板が終了するまで、電極への膜の付着/堆積に起因して成膜を停止することなく、連続して成膜を行なうことができる。
【0015】
そのため、本発明によれば、電極に堆積した膜に起因するパーティクル等の悪影響を受けることなく、非常に長尺な基板に、成膜を停止することなく連続して形成することができ、パーティクルによる汚染を好適に抑制した高品質の膜を形成した製品を、高い生産性および生産効率で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の成膜装置および成膜方法について、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
【0017】
図1に、本発明の成膜方法を実施する、本発明の成膜装置の一例の概念図を示す。
図1に示す成膜装置10は、光学素子の製造、光学素子等に用いられる防湿膜(ガスバリアフィルム)の製造、光学素子等に用いられる保護膜の製造、半導体装置の製造、薄膜太陽電池の製造等に利用される、長尺な基板Z(ウェブ状の基板Z)に連続で成膜を行なう装置である。
【0018】
この成膜装置10は、一例として、基板Zを供給する供給室12と、プラズマCVDによって基板Zに連続的に成膜を行なう成膜室14と、成膜済の基板Zを巻き取る巻取り室16とを有して構成される。成膜装置10においては、供給室12から成膜室14を経て巻取り室16に至る所定の経路で基板Zを通して(挿通して)、供給室12から、成膜室14を経て巻取り室16に至る基板Zの搬送(長手方向への基板Zの搬送)を行いつつ、成膜室14において基板Zに連続的に成膜を行なう。
【0019】
供給室12は、長尺な基板Zを供給する部位であり、供給ロール20と、ガイドローラ22とを有する。
供給ロール20は、長尺な基板Zを中心軸24にロール状に巻回してなるものである。この供給ロール20は、中心軸24が支軸(図示省略)に軸支されて供給室12の所定位置に装填され、基板Zを巻き戻す方向(図示例においては、時計回り(矢印r方向))に回転されることにより、基板Zを連続的に送り出す。
ガイドローラ22は基板Zを所定の搬送経路で成膜室14に案内する、公知のガイドローラである。成膜装置10において、ガイドローラ22は、駆動ローラでも従動ローラでもよい。供給室12において、ガイドローラ22は、基板Zの張力を調整するテンションローラとして作用するローラであってもよく、あるいは、別途、テンションローラを設けてもよい。
【0020】
なお、本発明において、成膜をする基板Zには、特に限定は無く、PETフィルム等の各種の樹脂フィルム、アルミニウムシートなどの各種の金属シート等、プラズマCVDによる成膜が可能な各種の基板が、全て利用可能である。
【0021】
他方、巻取り室16は、成膜室14において表面に成膜(薄膜を形成)された長尺な基板Z(シート材(フィルム材))を巻取る部位であり、巻取り軸28と、ガイドローラ30とを有する。
巻取り軸28は、成膜された基板Zをロール状に巻き取るものであって、図示しない駆動源によって基板Zを巻き取る方向(図示例においては、時計回り(矢印r方向))に回転されて、成膜済の基板Zを巻き取る。
ガイドローラ30は、先のガイドローラ22と同様、成膜室14から搬送された基板Zを、所定の搬送経路で巻取りローラ28に案内する、公知のガイドローラである。なお、先のガイドローラ22と同様、ガイドローラ30も、駆動ローラでも従動ローラでもよく、また、テンションローラとして作用してもよく、さらに、巻取り室16が、別途、テンションローラを有してもよい。
【0022】
図示例において、長尺な基板Zは、供給ロール20から送り出されてスリット12aから成膜室14に搬入され、成膜室14における所定の搬送経路を経て、スリット16aから巻取り室16に搬入されて巻取り軸28に巻回される、所定の搬送経路を挿通される。
成膜装置10は、この状態で、前述のように、供給室12からの基板Zの供給(すなわち供給ロール20からの基板Zの送り出し)、および、巻取り室16における成膜済の基板Zの巻取り(すなわち巻取り軸28での基板Zの巻取り)を同期して行いながら、成膜室14において、基板Zを長手方向に搬送しつつ、基板ZにプラズマCVDによって連続的に成膜を行なう。
従って、供給ロール20および巻取り軸28は、線速が等しくなるように図示しない駆動源によって回転される。あるいは、供給ロール20には駆動源を設けずに従動として、供給ロール20から基板Zを引き出すような構成としてもよい。
【0023】
図示例の成膜装置10において、スリット12aおよびスリット16aは、共に、基板Zが妨害されることなく通過可能なギリギリの幅および長さのスリットであり、必要に応じて、隣接する部屋を略気密に分離するためのローラ対等の気密保持部材が設けられている。成膜装置10においては、これにより、成膜室14と、供給室12および巻取り室16とを、略気密に分離している。
そのため、図示例において、供給室12および巻取り室16には、真空ポンプ等の真空排気手段が設けられていない(真空排気手段に接続されていない)。
しかしながら、本発明は、これに限定はされず、必要に応じて、供給室12および巻取り室16にも、真空排気手段を設け、両室内を所定の真空度を保つようにしてもよい。
【0024】
成膜室14は、基板Zを搬送しつつ、基板Zの表面にプラズマCVDによって連続的に成膜を行なう部位で、ドラム32と、ガイドローラ34および36と、第1成膜部38、第2成膜部40、および第3成膜部42の3つの成膜部と、シャッタ46と、排気手段48と、制御部50とを有して構成される。
なお、成膜室14は、例えばステンレスなど、各種の真空成膜装置の真空チャンバで利用されている材料を用いて構成すればよい。
【0025】
ドラム32は、基板Zの搬送方向と直交する方向(基板Zの幅方向)に回転軸を有する円筒状のドラムで、側面の所定領域に基板Zを巻き掛けて所定の速度で回転することにより、成膜室14内の所定位置(成膜位置)に位置しつつ、基板Zを長手方向に搬送する。
図示例において、ドラム32は接地(アース)されている。すなわち、図示例においては、ドラム32は、後述する3つの成膜部の電極56の対向電極として作用する。
なお、本発明は、ドラム32を接地する構成に限定はされず、ドラム32を電源に接続して、電極としても作用可能な構成としてもよい。また、好ましくは、ドラム32は温度調整手段を有しており、プラズマCVDによる成膜中に、裏面(非成膜面)から、基板Zを冷却(もしくは加熱)する。
【0026】
ガイドローラ34および36は、供給室12から搬送された基板Zを案内して、ドラム32の側面の所定領域に巻き掛け、さらに、ドラム32から巻取り室16に搬送する、ガイドローラである。すなわち、基板Zは、ガイドローラ34および36によって、ドラム32側面の所定領域に巻き掛けられて、所定領域に保持されつつ長手方向に搬送される。
なお、ガイドローラ34および36は、駆動ローラでも従動ローラでもよい。
【0027】
排気手段48は、成膜室14内を(真空)排気して、所定の真空度にするものである。
排気手段48には、特に限定はなく、ターボポンプ、メカニカルブースターポンプ、ロータリーポンプなどの真空ポンプ、さらには、クライオコイル等の補助手段や到達真空度や排気量の調整手段等を利用する、プラズマCVD装置に用いられている公知の(真空)排気手段が、各種、利用可能である。なお、この点に関しては、後述する第1成膜部38、第2成膜部40、および第3成膜部42に配置される排気手段62も同様であり、また、前記供給室12および巻取り室16に排気手段を設ける場合も、同様である。
【0028】
第1成膜部38、第2成膜部40、および第3成膜部42は、共に、プラズマCVDによる成膜を行なうもので、互いに独立して、成膜や後述するクリーニングを行なう。すなわち、第1成膜部38、第2成膜部40、および第3成膜部42は、互いに独立した成膜系を構成するものである。
各成膜部は、ドラム32の基板Zが巻き掛けられる領域すなわち基板Zの搬送経路に対応(対面)して、基板Zの搬送方向に(基板搬送方向の上流から下流)に、第1成膜部38、第2成膜部40、第3成膜部42の順番で配列される。
【0029】
また、成膜室14の内部には、基板Zの搬送方向に配列して、成膜室14の内壁面からドラム32に向けて立設する4枚の仕切り板54a〜54dが設けられており、この4枚の仕切り板54a〜54d(ならびに、ドラム32および成膜室14の内壁面)によって、基板Zの搬送方向に配列された3つの独立した空間が形成される。言い換えれば、4枚の仕切り板54a〜54dによって仕切られて、3つの独立した空間が形成される。
第1成膜部38は仕切り板54aと54bとによって形成される空間に、第2成膜部40は仕切り板54bと54cとによって形成される空間に、第3成膜部42は仕切り板54cと54dとによって形成される空間に、それぞれ形成される。
【0030】
なお、本発明において、成膜室に配列される成膜部(電極、ガス導入手段、および、クリーニング手段を有するユニット)は、図示例の3つに限定はされず、複数であれば、2つでも、4つ以上でもよい。
【0031】
図示例の成膜装置10において、第1成膜部38、第2成膜部40、および第3成膜部42は、基本的に同じ構成を有するので、以下の説明は、第1成膜部38を代表例として行なう。
【0032】
第1成膜部38は、前述のように、ドラム32に保持/搬送される基板Zの表面にプラズマCVDによる成膜(薄膜の形成)を行なうものである。
第1成膜部38(第2成膜部40および第3成膜部42)は、電極56と、高周波電源58と、ガス供給手段60と、排気手段62とを有して構成される。
【0033】
電極56は、成膜系内すなわち仕切り板54aおよび54b(ならびに成膜室14の内壁面)によって形成される空間内(以下、成膜空間とする)において、ドラム56に対面して配置される、プラズマCVDによる成膜を行なうための平板状(あるいはドラム56の側面に平行な曲面状)の電極である。また、高周波電源58は、プラズマCVDによる成膜を行なうための高周波電力を電極56に供給する電源である。
電極56および高周波電源58には、共に限定は無く、成膜する膜や要求される成膜レート等に応じて、プラズマCVDで利用される公知のものを利用すればよい。また、高周波電源58と電極50とは、必要に応じて、インピーダンス整合をとるためのマッチングボックスを介して接続されてもよい。
【0034】
なお、図示例の第1成膜部38(成膜装置10)において、電極56および高周波電源58は、電極56(あるいはさらに、成膜室14の内壁や仕切り板表面等)のクリーニングを行なうためのクリーニング手段としても作用する。
具体的には、第1成膜部38(第2成膜部40および第3成膜部42)は、クリーニングガスによるプラズマクリーニングを行なうものであり、成膜時のみならず、電極56のクリーニングを行なう際にも、クリーニングガスを励起してプラズマとするための高周波電力が、高周波電源58から電極56に供給する。
【0035】
ガス供給手段60は、成膜空間にプラズマCVDによる成膜を行なうための反応ガスを導入するもので、ガスの供給源(ガス供給源との接続手段)や流量調整手段等を有する、公知のガス導入手段である。
また、ガス供給手段60は、反応ガスのみならず、アルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガス等、プラズマCVDで用いられている各種のガスを、反応ガスと共に供給してもよい。また、反応ガスと、それ以外の不活性ガス等とを、別の供給手段で成膜空間に供給してもよい。
【0036】
ここで、図示例の第1成膜部38においては、ガス供給手段60も、クリーニング手段として作用する。すなわち、ガス供給手段60は、電極56のクリーニングに行なう際には、ガス供給手段60は、反応ガスに変えて、クリーニングガスを成膜空間に導入する。
なお、本発明において、使用するクリーニングガスには、特に限定はなく、8フッ化プロパン(C38)や窒化フッ素(NF3)などのフッ化物ガス等、プラズマCVD装置等において、電極やチャンバ内壁面などのクリーニングガスとして用いられている全てのガスが利用可能である。
【0037】
なお、本発明においては、反応ガスとクリーニングガスとを、同じガス供給手段から成膜空間に供給するのに限定はされず、反応ガスとクリーニングガスとを、別のガス供給手段によって成膜空間に供給してもよい。
また、図示例では、3つの成膜部の個々にガス供給手段60を設けているが、本発明は、これに限定はされず、3つの成膜部に対して1つのガス供給手段60を有する構成でもよい。この際には、個々の成膜部毎にガス供給量を調整可能であるのが好ましい。
【0038】
排気手段62は、成膜空間を排気して所定の真空度とするものであり、前記排気手段48と同様に、プラズマCVD装置等に利用される公知の排気手段である。
なお、図示例においては、3つの成膜部の個々に排気手段62を設けているが、本発明は、これに限定はされず、3つの成膜部に対して1つの排気手段、あるいは、3つの成膜部と成膜室14に対して1つの排気手段としてもよい。この際には、個々の成膜空間毎に排気を調整可能にするのが好ましい。
【0039】
シャッタ46は、第1成膜部38、第2成膜部40、および第3成膜部42のいずれかの成膜空間の開放面(すなわち、ドラム32と対面する開放面)を閉塞して、各成膜部の成膜空間(成膜系)と、成膜室14内の空間とを、気密に分離(以下、単に「成膜部を閉塞」とする)するものである。
図示例の成膜装置10においては、成膜中には、シャッタ46は、常に、第1成膜部38、第2成膜部40、および第3成膜部42のいずれかの成膜部を閉塞している。すなわち、図示例の成膜装置10(成膜室14)においては、成膜中、常に3つの成膜部の内の1つの成膜部は、成膜を行なわない状態となっている(成膜に寄与しない状態となっている)。この点に関しては、後に詳述する。
【0040】
シャッタ46は、仕切り板54a〜54dおよび成膜室14の内壁面によって形成される成膜空間の開放面の形状等に応じて、成膜部を閉塞可能(成膜空間の開放面を気密に閉塞可能)な板状物や蓋体等を利用すればよい。
ここで、開放面を閉塞する板状物や蓋体では、完全に気密に成膜部を閉塞するのが困難な場合もある。しかしながら、本発明においては、成膜条件、クリーニングの処理、各排気手段の能力やシャッタ46の性能等に応じて、各成膜部における基板Zへの成膜と電極56のクリーニングとが、互いに悪影響を与えない範囲であれば、シャッタ46は、完全に気密に成膜部を閉塞するのではなく、成膜部を略気密に閉塞するものでもよい。
【0041】
なお、シャッタ46による成膜部の閉塞、および、各成膜部へのシャッタ46の移動は、公知の板状物(あるいは筐体)の移動手段によればよい。
また、図示例の成膜装置10は、1つのシャッタ46を移動することによって、第1成膜部38、第2成膜部40、および第3成膜部42を閉塞しているが、本発明は、これに限定はされず、第1成膜部38、第2成膜部40、および第3成膜部42の個々に対応してシャッタを配置し、各成膜部を対応するシャッタで閉塞するようにしてもよい。
【0042】
制御部50は、成膜装置10の全体の動作の制御や管理を行なうものである。
従って、制御部50は、各成膜部の駆動(高周波電源58、ガス供給手段60、および排気手段62の動作)の制御、シャッタ46の動作の制御等の制御も行なう。
【0043】
以下、成膜装置10の作用を説明することにより、本発明、および制御部50について、より詳細に説明する。なお、以下の各部位の動作は、制御部50によって制御されるのは、前述のとおりである。
また、以下の例は、成膜を行なわない(成膜に寄与しない)成膜部は、1つであるが、本発明は、これに限定はされず、複数の成膜部を成膜を行なわない状態として、基板Zへの成膜を行なってもよい。
【0044】
成膜装置10において、成膜を開始する際には、基板Zを巻回してなる供給ロール20を供給部12に装填して、長尺な基板Zの先端を、ガイドローラ22からスリット12aを経て成膜室14に通し、成膜室14において、ガイドローラ36、ドラム32、およびガイドローラ34の順で所定の経路で通して、ドラム32の所定領域に基板Zを巻き掛けて、スリット16aから巻取り室16に通し、ガイドローラ30から巻取り軸28に通して、巻取り軸28に所定量を巻回する。
これにより、成膜室14を経る所定経路で、供給部12(供給ロール20)から巻取り室16(巻取り軸28)に、基板Zを挿通する。なお、このような基板Zの挿通は、人手で行なってもよく、あるいは、公知のシート状物の搬送手段を利用して、自動で行なうようにしてもよい。
【0045】
基板Zの挿通、および、それ以外の必要な準備や操作が終了して、基板Zへの成膜開始の準備が終了したら、成膜室14の排気手段48、ならびに、第1成膜部38、第2成膜部40、および第3成膜部42の各排気手段48を駆動して、それぞれの空間を所定の真空度にする。
また、前述のように、成膜装置10では、成膜中は常に、第1成膜部38、第2成膜部40、および第3成膜部42の1つが成膜を行なわない。
本例においては、一例として、最初は、第1成膜部38が成膜を行なわず、従って、シャッタ46は、第1成膜部38を閉塞している。また、本例においては、この成膜開始時には、全ての成膜部の電極56が、未使用状態(クリーニングが終了した状態)となっているものとする。
【0046】
成膜室14内、および、各成膜部の成膜空間が所定の真空度となったら、所定の搬送速度で基板Zの搬送(巻取り軸28による基板Zの巻取りおよび供給ロール20からの基板Zの送り出し)を開始する。
さらに、第2成膜部40および第3成膜部42において、高周波電源58を駆動して成膜に対応する出力の高周波電力を電極56に供給し、また、ガス供給手段60が成膜を行なうための反応ガス(あるいはさらに、その他の必要なガス)を、目的とする成膜レート等に応じた所定量、成膜空間に供給して、基板Zの表面に、プラズマCVDによる成膜を開始する。すなわち、この時点では、第2成膜部40および第3成膜部42の2つの成膜部によって、基板Zへの成膜が行なわれる。
【0047】
前述のように、プラズマCVDによる成膜を続けると、電極56の表面にも膜が付着/堆積する。
第2成膜部40および/または第3成膜部42の電極56に、予め設定した所定量の膜が付着(/堆積)したら、シャッタ46を移動して、一例として第2成膜部40を閉塞し、さらに、高周波電源58およびガス供給手段60の駆動を停止し、第2成膜部40による成膜を停止する。
この第2成膜部40における成膜の停止と並行して、第1成膜部38において、高周波電源58を駆動して成膜に対応する出力の高周波電力を電極56に供給し、また、ガス供給手段60から第1成膜部38の成膜空間に、成膜を行なうための反応ガスを、目的とする成膜レート等に応じた所定量、供給して、第1成膜部38による成膜を開始する。すなわち、この時点では、第1成膜部38および第3成膜部42の2つの成膜部による成膜が行なわれている状態となる。
【0048】
なお、本発明において、電極56に所定量の膜が付着したことの検出は、一例として、レーザ変位計を用いて電極に付着した膜の量(膜厚)を直接検出する方法など、公知の手段によって、電極56に付着した膜の量を直接的に検出する方法; 予め行なった実験やシミュレーションによって、電極56に所定量の膜が付着する時間や付着速度などを知見しておき、これらを用いて成膜時間の経過によって電極56に付着した膜の量を検出(予測)する方法; 成膜レート等に応じて、適宜、設定した成膜時間が経過することを以て、電極56に所定量の膜が付着したと見なす方法; これらの2以上の方法を併用して、最も早く(もしくは最も遅く、もしくは所定の順番で)、電極56への膜の付着量が所定量になったことが検出された方法を採用する方法等、各種の方法が利用可能である。この点に関しては、以下も同様である。
【0049】
成膜を停止した第2成膜部40においては、所定のタイミングで、ガス供給手段60からクリーニングに応じた所定量のクリーニングガスの供給を開始し、かつ、高周波電源58からクリーニングに応じた出力の高周波電力を電極56に供給して、電極56あるいはさらに仕切り板の表面および成膜室14の内壁面等のプラズマクリーニングを開始する。また、必要に応じて、第2成膜部40の排気手段62による排気を、クリーニングに応じた所定の状態とする。
これにより、電極56等に付着した膜が除去され、電極56が清浄化される。また、電極56等から除去されたパーティクルは、排気手段62によって成膜空間の外部に排気される。
【0050】
第2成膜部40のクリーニングを開始して、所定の時間が経過したら、ガス供給手段60および高周波電源58の駆動を停止して、クリーニングを終了する。また、クリーニングに応じて第2成膜部40の排気手段62の駆動を調整した場合には、排気手段62による排気の状態を、成膜に応じた状態に戻す。
なお、クリーニングの終了時間は、予め行なった実験やシミュレーション等に応じて、適宜、設定すればよい。あるいは、前記膜の付着の検出と同様に、直接的に電極56に付着する膜の量を検出して、クリーニングを終了してもよい。
【0051】
基板Zへの成膜を続け、第3成膜部42の電極56への膜の付着量が所定量となったら、シャッタ46を移動して第3成膜部42を閉塞し、先の第2成膜部40と同様にして、第3成膜部42による成膜を停止する。
同時に、先の第1成膜部38と同様にして、電極56のクリーニングを終了している第2成膜部40による成膜を再開する。すなわち、この時点では、第1成膜部38および第2成膜部40の2つの成膜部による成膜が行なわれている状態となる。
また、所定のタイミングで、先の第2成膜部40と同様にして、第3成膜部42の電極56(あるいはさらに他の位置)のクリーニングを行なう。
【0052】
さらに基板Zへの成膜を続け、第1成膜部38の電極56への膜の付着量が所定量となったら、先と同様にして、シャッタ46による閉塞等を行なって第1成膜部38による成膜を停止し、同時に、電極56のクリーニングを終了している第3成膜部42による成膜を再開すると共に、所定のタイミングで第1成膜部38の電極のクリーニングを行なう。
【0053】
以下、同様にして、第2成膜部40の成膜停止/クリーニング、および、第1成膜部38による成膜の再開を行い、次いで、第3成膜部42の成膜停止/クリーニング、および、第2成膜部40による成膜の再開を、順次、繰り返すことにより、成膜を連続して行い、供給ロール20の基板Zが終了したら、あるいは、所定長の成膜済の基板Zを巻取り軸28に巻回したら、成膜を終了する。
なお、成膜の終了は、通常の供給ロール20から基板Zを送り出し、成膜済の基板Zに巻回する、公知のロール・ツー・ロールの成膜装置と同様に行なえばよい。
【0054】
以上の説明より明らかなように、本発明の成膜装置によれば、複数の成膜部を切り換えて使用して、未使用状態の成膜部における電極のクリーニングを行なうことができるので、成膜を連続的に行ないつつ、かつ、真空をブレイクすることなく、薄膜が付着した電極のクリーニングを行なうことができ、いわゆるロール・ツー・ロールのプラズマCVDによる成膜において、長尺な基板に連続的に成膜を行いつつ電極のクリーニングを行って、供給ロールの基板が終了するまで、電極への膜の付着に起因する成膜停止を行なうことなく、連続して成膜を行なうことができる。
従って、本発明によれば、電極に堆積した膜に起因するパーティクル等の悪影響を受けることなく、非常に長尺な基板に、成膜を停止することなく連続して形成することができ、パーティクルによる汚染を好適に抑制した高品質の膜を形成した製品を、高い生産性および生産効率で製造することができる。
【0055】
以上の例は、本発明をドラムを利用して基板Zを支持/搬送しつつ、プラズマCVD装置によって成膜を行なう装置に利用した例であるが、本発明は、これに限定はされず、各種の構成のプラズマCVD装置に利用可能である。
図2に、その一例の概念図を示す。
【0056】
図2に示す成膜装置70は、前記図1の成膜装置10と同様に、長尺な基板をロール状に巻回してなる供給ロール20からの基板Zの送り出し、および、巻取り軸28による成膜済の基板Zの巻取りを同期して行いつつ、搬送する基板ZにプラズマCVDによる成膜を行なうことにより、長尺な基板Zに連続的に成膜を行なう、ロール・ツー・ロールの成膜装置である。
なお、この成膜装置70は、先の図1の成膜装置10と同様の部材を多く用いているので、同じ部材には同じ符号を付し、以下の説明は、異なる部位を主に行なう。
【0057】
前記成膜装置10と同様、図2に示す成膜装置70も、長尺な基板Zを中心軸24にロール状に巻回してなる供給ロール20を装填される供給室72と、搬送される基板ZにプラズマCVDによる成膜を行なう成膜室74と、成膜済の基板Zを巻取り軸28にロール状に巻き取る巻取り室76とを有して構成される。
成膜装置70において、供給室72はガイドローラ22が1つ多い以外は、また、巻取り室76もガイドローラ30が1つ多い以外は、共に、先の成膜装置10の供給室12および巻取り室16と同様の構成を有するものである。すなわち、図示例の成膜装置70は、実質的に、成膜室74のみが前記成膜装置10と異なる。
【0058】
成膜装置70において、成膜室72は、先と同様に互いに独立してプラズマCVDによる成膜やクリーニングを行なう(すなわち互いに独立した成膜系を構成する)第1成膜部80、第2成膜部82および第3成膜部84の3つの成膜部と、ローラ86および88と、折り返しローラ90と、排気手段92と、シャッタ94とを有する。
【0059】
排気手段92は、先の排気手段48と同様に、成膜室72内を、排気して所定の真空度にするものである。
なお、図示例においては、成膜室72は、1つの排気手段92しか有さないが、本発明は、これに限定はされず、先の例と同様に、第1成膜部80、第2成膜部82および第3成膜部84の3つの成膜部に、個々に排気手段を設けてもよい。
【0060】
成膜室74において、供給室72から供給された基板Zは、ローラ86によって上方の折り返しローラ90に搬送され、折り返しローラ90によって下方のローラ88に案内され、ローラ88によって搬送経路を巻取り室76に搬送される。すなわち、基板Zは、折り返しローラ90によって搬送経路を180°折り返されて、成膜室74内を上下方向に1往復するように搬送される。
また、折り返しローラ90によって折り返される前後の基板Zは、互いに平行になるように、ローラ86および88と、折り返しローラ90とが配置される。
【0061】
ここで、3つの成膜部は、折り返しローラ90によって180°折り返し搬送される基板Zの搬送経路の間(折り返し搬送される基板Zの内側)に、上下方向に配列されて配置される。図示例においては、下方から、第1成膜部80、第2成膜部82、および第3成膜部84の順番で、折り返し搬送される基板Zの間に配置される。
従って、この成膜装置70においては、基板Zは、ローラ86から折り返しローラ90に向かう上方への搬送経路において、3つの成膜部に対面して成膜を行なわれ、折り返しローラ90によって折り返されて、折り返しローラ90からローラ88に向かう下方への搬送経路において、再度、3つの成膜部に対面して成膜を行なわれる。
【0062】
すなわち、図示例の成膜装置70では、成膜室74内を上下方向に往復搬送される間に、基板Zは、全く同じ成膜系によってプラズマCVDによる成膜を2回、行なわれる結果となり、非常に効率よく、高い成膜レートでの成膜が可能となる。
このような、基板Zを往復搬送して、基板Zの内側で成膜を行なう成膜装置は、例えば、本件出願人による特開平8−63746号公報等に詳述される。
【0063】
前述のように、成膜装置70は、上下方向に折り返し搬送される基板Zの間に、上下方向に配列されて、第1成膜部80、第2成膜部82、および第3成膜部84の、3つの成膜部が配置される。
ここで、先の成膜装置10と同様に、第1成膜部80、第2成膜部82、および第3成膜部84は、基本的に同じ構成を有するので、以下の説明は、第1成膜部80と代表例として行う。
【0064】
第1成膜部80(第2成膜部82および第3成膜部84)は、プラズマCVDによる成膜を行なうものであり、電極56と、高周波電源58と、対向電極96および98とを有する。また、各成膜部には、前記ガス供給手段60と同様の反応ガス(あるいはさらに、アルゴン等のその他の必要なガス)およびクリーニングガスを供給するガス供給手段に接続され、このガス供給手段から供給されたガスを成膜部内(成膜系(成膜空間))に供給(排出)するガス供給口99が配置される。
【0065】
電極56は、往復搬送される基板Zの中央に、基板Zに平行に配置される板状の電極で、高周波電源58が接続される。
他方、対向電極96および98は、往復搬送される基板Zを両側から挟むように、基板Zに平行に配置される板状の電極で、接地されている。なお、図示例においては、対向電極96および98は3つの成膜部で共通であり、全ての成膜部に対して延在するものであるが、本発明は、これに限定はされず、各成膜部毎に独立して対向電極を設けてもよい。
ガス供給手段も、先の例と同様のものであり、プラズマCVDによる成膜を行なうための反応ガス(あるいはさらに、その他の必要なガス)、および、クリーニングガスを、ガス供給口99から成膜空間内に供給する。
【0066】
第1成膜部80の下には、折り返し搬送される基板Zの内側の空間を上下方向に仕切るように仕切り板100aが配置される。また、第1成膜部80と第2成膜部82との間にも、同様の仕切り板100bが配置され、第2成膜部82と第3成膜部84との間にも同様の仕切り板100cが配置され、さらに、第3成膜部84の上にも同様の仕切り板100dが配置される。
すなわち、成膜装置70(成膜室74)においては、上下方向に往復搬送される基板Zと、成膜部の上下および各成膜部の間に配置される各仕切り板とによって、個々の成膜部に対応する成膜空間(成膜系)を構成している。
【0067】
シャッタ94は、各仕切り板の間で、基板Zと電極56との間を遮蔽して、電極56と基板Zとの対面を防止し、これにより反応ガス等が基板Zに至ることを防止する遮蔽板であり、電極56と、折り返された基板Zとの間に配置される。すなわち、シャッタ94は、電極56と折り返しローラ90に向かう基板Zとの間に配置される遮蔽板と、電極56とローラ88に向かう基板Zとの間に配置される遮蔽板との、2枚で1対の遮蔽板によって構成される。
図示例においては、先の例と同様に、3つの成膜部に対して1つ(1対)のシャッタ94を有し、このシャッタ94を上下動することにより、各成膜部において、基板Zと電極
56との間を遮蔽する(以下、「成膜部を閉塞」とする)。
【0068】
図示例の成膜装置70においても、先の成膜装置10と同様に、常に1つの成膜部はシャッタで閉塞して成膜に寄与しない状態としておき、この寄与しない成膜部の電極56等を必要に応じてプラズマクリーニングすることにより、成膜中に、電極のクリーニング等を行なうことができ、すなわち、非常に長尺な基板に、成膜を停止することなく連続して形成することができ、パーティクルによる汚染を好適に抑制した高品質の膜を形成した製品を、高い生産性および生産効率で製造することができる。
【0069】
例えば、基板Zを供給ロール20から引き出して成膜室74に送り、ローラ86によって基板Zを上方に案内して、折り返しロール90によって搬送経路を折り返して基板Zを下方に案内して、ローラ88によって基板Zを巻取り室76に案内して、所定量を巻取り軸に巻回することで、供給室72から成膜室74を経て巻取り室74に至る所定の搬送経路で基板Zを挿通する。
【0070】
次いで、基板Zの搬送を開始して、成膜室74の排気を開始し、所定の真空度となった時点で、先の例と同様に、最初はシャッタ94によって第1成膜部80を閉塞して、第2成膜部82および第3成膜部84による成膜を行う。
第2成膜部82の電極56に付着した膜の量が所定量になったら、シャッタ94によって第2成膜部82を閉塞して、第2成膜部82の成膜を停止し、かつ、第1成膜部80において電極56への高周波電力の供給および成膜空間への反応ガスの導入を行なって、第1成膜部80および第3成膜部84による成膜を行なう。他方、成膜を停止した第2成膜部82は、クリーニングガスを導入して、電極等のプラズマクリーニングを行なう。
【0071】
成膜を続け、第3成膜部84の電極56に付着する膜が所定量になったら、シャッタ94によって第3成膜部84を閉塞して成膜を停止し、かつ、クリーニングを終了した第2成膜部80における成膜を再開して、第1成膜部80および第2成膜部82による成膜を行ない、さらに、成膜を停止した第3成膜部84は、クリーニングガスを導入して電極等のクリーニングを行なう。
以下、同様にして、第1成膜部80の成膜停止/クリーニング、および、第3成膜部84による成膜の再開を行い、次いで、第2成膜部82の成膜停止/クリーニング、および、第1成膜部80による成膜の再開を、順次、繰り返すことにより、成膜を連続して行い、供給ロール20の基板Zが終了したら、あるいは、所定長の成膜済の基板Zを巻取り軸28に巻回したら、成膜を終了する。
【0072】
図2に示す成膜装置70は、折り返し搬送される基板Zの間に、高周波電源に接続される電極56が配置され、折り返し搬送される基板Zを挟んで、接地される対向電極96および98が配置されている。
しかしながら、本発明は、これに限定はされず、折り返し搬送される基板Zを挟んで、高周波電源に接続される電極を配置し、折り返し搬送される基板Zの間に、接地される対向電極を配置してもよい。なお、この際には、対向電極に膜が付着/堆積するので、対向電極をクリーニングするために、対向電極にも高周波電源を接続する。あるいは、高周波電源の接続を、電極と対向電極とで切り換え可能にしてもよい。なお、後述するリモートプラズマ源を用いて電極のクリーニングを行なう場合には、対向電極に高周波電力を供給する必要はない。
また、図2に示す成膜装置70において、対向電極96を設けずに、成膜室74(真空チャンバ)を接地することで、成膜室74に対向電極の作用を持たせてもよい。
【0073】
以上の例は、クリーニングガスを成膜空間に導入し、かつ、プラズマCVDによる成膜を行なうための電極56に高周波電力を供給することにより、クリーニングガスを励起してプラズマ(ラジカル)として、電極56のプラズマクリーニングを行なうものであるが、本発明は、これに限定はされず、各種のクリーニング方法が利用可能である。
一例として、成膜空間内でプラズマの生成(プラズマ励起)を行なうのではなく、別の空間で作られたプラズマ(ラジカル)を、成膜空間に導入することによって、電極56のプラズマクリーニングを行なってもよい(リモートプラズマによるクリーニング)。このようなリモートプラズマ(成膜系外部でのクリーニング用のプラズマ生成)を利用することにより、クリーニングのための高周波が成膜中の基板Zに影響を与えることを防止でき、より安定した成膜が可能となる。
【0074】
例えば、図3に、先の成膜装置10の成膜室14を参照して概念的に示すように、成膜室14の第1成膜部38、第2成膜部40、および、第3成膜部42に、リモートプラズマ源104を設け、このリモートプラズマ源104においてプラズマ化したクリーニングガスを生成し、このクリーニングガスを、対応する成膜部に供給して、先の例と同様に、電極56(あるいはさらに、その他の部位)のプラズマクリーニングを行なう構成でもよい。
なお、図3においては、リモートプラズマ源104を有する構成を明確に示すために、高周波電源58、ガス供給手段60、および排気手段62は省略する。
【0075】
リモートプラズマ源104は、プラズマ化したクリーニングガスを生成して成膜部に供給可能なものであれは、各種のものが利用可能である。
一例として、誘導結合型プラズマを生成するリモートプラズマ源であれば、成膜部に連通する反応容器と、この反応容器内を(真空)排気する排気手段と、コイルと、このコイルに高周波電力を供給する高周波電源と、反応容器内にクリーニングガスを供給するガス供給手段等を有する、リモートプラズマ源が例示される。
このリモートプラズマ源は、排気手段によって反応容器内を所定の真空度にすると共に、ガス供給手段によってクリーニングガスを反応容器内に供給し、高周波電源からコイルに高周波電力を供給することによって誘導電界を形成して、クリーニングガスを励起して誘導結合型のプラズマとする。プラズマ化されたクリーニングガス(クリーニングガスのプラズマ)は、反応容器内に供給されるクリーニングガスの圧力によって反応容器内に供給され、先と同様に電極等をプラズマクリーニングする。
【0076】
なお、本発明においては、リモートプラズマ源を利用して電極のクリーニングを行なう成膜部と、成膜室にクリーニングガスを導入して、電極に高周波電力を供給することで電極のクリーニングを行なう成膜部とが、混在してもよい。
【0077】
本発明において、成膜部で形成する膜は、同じ膜であってもよく、あるいは、各成膜部で異なる膜を形成してもよい。
また、各成膜部で異なる膜を形成する際には、一例として、成膜部を4以上の偶数として、2以上の成膜部からなる組を作り、各組毎に、成膜とクリーニングとを交互に行なうようにする方法も、好適である。
【0078】
一例として、A〜Fの6つの成膜部を搬送方向に配列して、成膜部A〜Cを1つの組とし、成膜部D〜Fを1つの組とする。また、成膜部A、成膜部Bおよび成膜部Cは、互いに異なる膜を形成し、かつ、成膜部Aと成膜部Dは同じ膜を、成膜部Bと成膜部Eは同じ膜を、成膜部Cと成膜部Fは同じ膜を、それぞれ成膜する。
その上で、まず、成膜部A〜Cを停止状態(成膜に寄与しない状態)として、成膜部D〜Fによって基板に成膜を行い、成膜部D〜Fの電極に所定量の膜が付着したら、先の例に準じて、成膜部A〜Cでの成膜を開始して、成膜部D〜Fを停止状態として、その後、所定のタイミングで成膜部D〜Fのクリーニングを行なう。
さらに、成膜を続け、成膜部A〜Cの電極に所定量の膜が付着したら、クリーニングを終了した成膜部D〜Fでの成膜を再開して、成膜部A〜Cでの成膜を停止し、所定のタイミングで、成膜部A〜Cのクリーニングを行い、以下、同様に、成膜部A〜Cの組と、成膜部D〜Fの組とで、成膜と成膜停止/クリーニングとを、交互に行なう。
【0079】
以上、本発明の成膜装置および成膜方法について詳細に説明したが、本発明は、上記実施例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行なってもよいのは、もちろんである。
例えば、上述の例は、ドラムに基板を巻き掛けて搬送しつつ成膜を行なう装置や、基板を折り返し搬送して基板間で成膜を行なう装置であったが、本発明は、これに以外にも、例えば前記特許文献2に示されるような、基板を直線状に搬送して、この搬送経路に沿って複数の成膜部を配列した構成の装置にも好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の成膜装置の一例の概念図である。
【図2】本発明の成膜装置の別の例の概念図である。
【図3】本発明の成膜装置の別の例の概念図である。
【符号の説明】
【0081】
10,70 成膜装置
12,72 供給室
14,74 成膜室
16,76 巻取り室
20 供給ロール
22,30,34,36 ガイドローラ
24 中心軸
28 巻取り軸
32 ドラム
38,80 第1成膜部
40,82 第2成膜部
42,84 第3成膜部
46,94 シャッタ
48,62,92 排気手段
50 制御部
54a,54b,54c,54d,100a,100b,100c,100d 仕切り板
56 電極
58 高周波電源
60 ガス供給手段
86,88 ローラ
90 折り返しローラ
104 リモートプラズマ源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面にプラズマCVDによる成膜を行なう成膜室と、長尺な基板を巻回してなる供給ロールから前記成膜室に基板を供給する供給室と、前記成膜室で成膜された基板をロール状に巻回する巻取り室とを有し、
かつ、前記成膜室は、基板を所定の搬送経路で搬送する搬送手段と、前記搬送手段による基板の搬送経路に対応して基板の搬送方向に配列される、電極、ガス導入手段および前記電極のクリーニング手段を有する、互いに独立した複数の成膜部と、少なくとも1つの成膜部を、前記成膜室内の空間と気密に分離する分離手段とを有することを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
常に前記成膜部の少なくとも1つを前記分離手段で分離して成膜停止状態としておき、この成膜停止状態以外の成膜部による基板への成膜中に、必要に応じて前記成膜停止状態の成膜部において前記クリーニング手段によるクリーニングを行なう、前記成膜部の駆動制御手段を有する請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記クリーニング手段が、クリーニングガスの導入手段と、前記電極への高周波電力の投入手段である請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記クリーニング手段が、前記成膜部とは別の空間で生成されたラジカルの導入手段である請求項1〜3のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項5】
個々の成膜部毎に、独立して真空度が調整可能である請求項1〜4のいずれかに記載の成膜装置。
【請求項6】
ロール状に巻回された長尺な基板を送り出して、基板を搬送しつつプラズマCVDによって連続的に成膜を行い、成膜された長尺な基板をロール状に巻回するに際し、
電極のクリーニング手段を有する互いに独立した成膜部を、基板の搬送経路に対応して基板の搬送方向に複数配列すると共に、前記基板への成膜中には、常に少なくとも1つの前記成膜部は他の空間と気密に分離して成膜に寄与しない状態としておき、この成膜に寄与しない成膜部以外の成膜部による基板への成膜中に、必要に応じて、前記成膜に寄与していない成膜部は、前記クリーニング手段によって電極のクリーニングを行なうことを特徴とする成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−138239(P2009−138239A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316970(P2007−316970)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】