説明

成膜装置及び磁気記録媒体の製造方法

【課題】成膜装置及び磁気記録媒体の製造方法において、チャンバ内のターゲットから飛散した材料の塵埃による汚染を防止すると共に、防着板の頻繁な清掃又は交換を不要とすることを目的とする。
【解決手段】チャンバと、第1の材料で形成された第1のターゲットをチャンバ内で第1のカソード上に保持する主ホルダと、第2の材料で形成された第2のターゲットをチャンバ内で第2のカソード上に保持する副ホルダと、成膜処理時に第1のカソードに電流を印加してチャンバ内の基板の表面に第1の材料を形成する第1のDC電源と、コーティング処理時に第2のカソードに電流を印加してチャンバ内の基板の表面以外の部分の第1の材料を覆うように第2の材料を形成する第2のDC電源を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置及び磁気記録媒体の製造方法に係り、特に成膜中にアークによりターゲットから飛散する塵埃を付着させる防着板を有する成膜装置及びそのような成膜装置を用いる磁気記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスクに代表される磁気記録媒体を用いる磁気記憶装置では、高密度記録を実現するために、水平磁気記録方式から垂直磁気記録方式へ移行しつつある。垂直磁気記録方式を採用する磁気記録媒体には、例えばCo基合金相を酸化物相が囲んだグラニュラ構造を有する磁性膜等の、グラニュラ構造を有する膜を有する媒体も含まれる。
【0003】
このようなグラニュラ構造を有する磁性膜をスパッタリング装置で成膜する際には、酸化物とCo基合金の原料粉を混合して焼結法により作製されたスパッタリングターゲットを用いるのが一般的である。しかし、このようなスパッタリングターゲットを用いてグラニュラ構造を有する磁性膜を成膜すると、絶縁体である酸化物塵埃がアークにより飛散する。DCスパッタリングの場合、スパッタ面の酸化物表面が帯電するために、アークの発生は回避できない。
【0004】
飛散する酸化物塵埃のうち、チャンバ内の成膜対象の基板上に到達する酸化物塵埃は基板上に固着されて成膜処理後にチャンバ外に搬出される。一方、チャンバ内の防着板に到達した酸化物塵埃は、防着板に付着するが、防着板から脱落するとチャンバ内で堆積或いは拡散してチャンバ内部を汚染する。チャンバ内が酸化物塵埃で汚染されてしまうと、成膜対象の基板上への酸化物塵埃の付着量が増加して磁性膜の品質、即ち、磁気記録媒体の品質を低下させてしまう。
【0005】
又、チャンバ内の酸化物塵埃による汚染は、成膜処理の回数に応じて増加するので、一定回数の成膜処理の後には防着板を取り外して清掃或いは交換する必要が生じる。しかし、防着板の清掃或いは交換時には、成膜処理を停止する必要があるため、防着板の清掃又は交換を頻繁に行ったのでは成膜装置による磁気記録媒体の生産性が低下してしまう。
【0006】
尚、アークの発生を防止するためにカソードの電位を定期的に逆転させるパルス電圧印加やRFスパッタリングを採用することも可能であるが、これらの方法ではスパッタレートが低下していしまい、磁気記録媒体の生産性が低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−92764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の成膜装置では、チャンバ内がターゲットから飛散した材料の塵埃で汚染されてしまうと成膜対象の基板上への塵埃の付着量が増加して成膜される膜の品質を低下させてしまうが、防着板の清掃又は交換を頻繁に行ったのでは成膜装置の生産性が低下してしまうという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、チャンバ内のターゲットから飛散した材料の塵埃による汚染を防止すると共に、防着板の頻繁な清掃又は交換を不要とする成膜装置及び磁気記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一観点によれば、チャンバと、第1の材料で形成された第1のターゲットを前記チャンバ内で第1のカソード上に保持する主ホルダと、第2の材料で形成された第2のターゲットを前記チャンバ内で第2のカソード上に保持する副ホルダと、成膜処理時に前記第1のカソードに電流を印加して前記チャンバ内の基板の表面に前記第1の材料を形成する第1のDC電源と、コーティング処理時に前記第2のカソードに電流を印加して前記チャンバ内の前記基板の表面以外の部分の前記第1の材料を覆うように前記第2の材料を形成する第2のDC電源を備えた成膜装置が提供される。
【0011】
本発明の一観点によれば、上記の成膜装置を用いる磁気記録媒体の製造方法であって、前記成膜処理により、順次搬送されてくる基板上に前記第1の材料でグラニュラ構造を有する膜を形成する磁気記録媒体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
開示の成膜装置及び磁気記録媒体の製造方法によれば、チャンバ内のターゲットから飛散した材料の塵埃による汚染を防止すると共に、防着板の頻繁な清掃又は交換を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例における成膜装置を示す断面図である。
【図2】成膜装置の成膜処理時の動作を説明する図である。
【図3】酸化物ターゲットによる成膜を説明する断面図である。
【図4】成膜装置のコーティング処理時の動作を説明する図である。
【図5】金属ターゲットによる成膜を説明する断面図である。
【図6】ダミーキャリアの自動ロード処理を説明する図である。
【図7】シャッタを備えた成膜装置の一例を示す図である。
【図8】シャッタを備えた成膜装置の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
開示の成膜装置及び磁気記録媒体の製造方法では、成膜処理時に第1のターゲットを用いてチャンバ内の基板の表面に第1の材料を形成し、コーティング処理時に第2のターゲットを用いてチャンバ内の基板の表面以外の部分の第1の材料を覆うように第2の材料を形成する。これにより、チャンバ内の第1のターゲットから飛散した第1の材料の塵埃による汚染を防止すると共に、チャンバ内に設けられた防着板の頻繁な清掃又は交換を不要とすることができる。
【0015】
以下に、本発明の成膜装置及び磁気記録媒体の製造方法の各実施例を、図面と共に説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明の一実施例における成膜装置を側面から見て示す断面図である。図1に示すように、成膜装置1は、チャンバ11と、チャンバ11に接続された真空ポンプ12を有する。主ホルダ13は、チャンバ11内でターゲット21をカソード14上に保持する。モータ15は、主ホルダ13により保持されたターゲット21に対して回転マグネット16を回転させる。DC電源17は、カソード14と電気的に接続されている。チャンバ11内の上部及び下部には、防着板18が取り外し可能に設けられている。プロセスガス導入口19は、チャンバ11内のプロセスガスを導入する。ここでは説明の便宜上、プロセスガスの排出口の図示は省略する。
【0017】
基板搬送用キャリア31は、成膜対象の基板32を保持すると共に、基板32の表面を露出する開口部310を有する周知の構造を有する。基板搬送用キャリア31は、周知の方法で外部からチャンバ11内にロードされると共に、チャンバ11内から外部へアンロードされる。基板搬送用キャリア31は、例えばキャリアレール51上を搬送される。この例では基板32の両面に対して同時に成膜処理を行うため、チャンバ11内には一対の主ホルダ13が互いに対向する位置に設けられている。
【0018】
成膜装置1の上記の部分の構成自体には、周知の構成を採用可能である。
【0019】
本実施例では、成膜装置1は更に副ホルダ33と、主及び副ホルダ13,33間に設けられた碍石35と、マグネット36を有する。副ホルダ33は、チャンバ11内でターゲット25をカソード34上に保持する。DC電源37は、カソード34と電気的に接続されている。この例では、チャンバ内には一対の副ホルダ33が互いに対向する位置に設けられている。
【0020】
図1では、一対のカソード14は別々のDC電源17に接続されているが、単一のDC電源を一対のカソード14に接続するようにしても良い。又、一対のカソード34は別々のDC電源37に接続されているが、単一のDC電源を一対のカソード34に接続するようにしても良い。
【0021】
成膜装置1により基板32上にグラニュラ構造を有する膜を成膜する成膜処理時には、酸化物スパッタリングターゲットをターゲット21として用いる。一例として、グラニュラ構造を有する磁性膜を成膜する成膜処理時には、例えば酸化物とCo基合金の原料粉を混合して焼結法により作製されたスパッタリングターゲットをターゲット21として用いる。尚、基板32上に磁性膜を成膜する成膜処理時には、通常は基板32上に既に一又は複数の層が積層されており、磁性膜は既に積層されている1つの層上に形成される。又、後述するコーティング処理時には、例えばCr,Al等の金属材料で作製されたスパッタリングターゲットをターゲット25として用いる。この例では基板32はディスク形状を有するので、ターゲット21もディスク形状を有する。又、碍石35及びターゲット25は、ディスク形状を有するターゲット21の外側に配置されるので、いずれもリング形状を有する。
【0022】
図2は、図1に示す成膜装置1の成膜処理時の動作を説明する図である。図2中、(a)は、図1に示す成膜装置1の左側の部分を時計方向に90度回転して示す断面図であり、(b)は(a)を下側から見た図である。説明の便宜上、図2において主ホルダ13及び副ホルダ33の図示は省略する。
【0023】
図2では、DC電源17をオンにしてカソード14に電流を印加することで、基板搬送用キャリア31が保持する基板32に対してターゲット21の材料がスパッタ領域SP1でスパッタリングされる。この状態では、DC電源37はオフである。これにより、図2(a)においてR1で示す部分では、図3に示すようにターゲット21の酸化物材料の膜210が防着板18上に形成される。図3は、酸化物ターゲット21による成膜を説明する断面図である。酸化物材料の膜210には、酸化物211が含まれるが、一部の酸化物212は防着板18から脱落する可能性がある。尚、酸化物211は、膜厚方向の高さが最大でも10μm程度である。DC電源17をオフにした後、成膜処理を施された基板32を保持する基板搬送用キャリア31がチャンバ11内から外部へアンロードされる。
【0024】
図4は、図1に示す成膜装置1のコーティング処理時の動作を説明する図である。図4中、(a)は、図1に示す成膜装置1の左側の部分を時計方向に90度回転して示す断面図であり、(b)は(a)を下側から見た図である。説明の便宜上、図4において主ホルダ13及び副ホルダ33の図示は省略する。
【0025】
図2の如き成膜処理が予め設定された回数行われると、図3において酸化物212が防着板18から脱落する可能性が増加するため、酸化物212の脱落を防止するためのコーティング処理を行う。コーティング処理時には、基板搬送用キャリア31の代わりに基板32を保持しないダミーキャリア320がチャンバ11内にロードされる。基板搬送用キャリア31の開口310の部分に相当するダミーキャリア320の部分は、図4(b)に示すように塞がれている。コーティング処理時にダミーキャリア320を使用することで、図1において左側のターゲット25からの金属が右側のターゲット21,25に付着したり、右側のターゲット25からの金属が左側のターゲット21,25に付着したりする不都合を防止することができる。
【0026】
図4では、DC電源37をオンにしてカソード34に電流を印加することで、ダミーキャリア320に対してターゲット25の材料がスパッタ領域SP2でスパッタリングされる。この状態では、DC電源17はオフである。これにより、図4(a)においてR2で示す部分では、図5に示すようにターゲット25の金属材料の膜250が防着板18上に形成される。図5は、金属ターゲット25による成膜を説明する断面図である。酸化物材料の膜210には、酸化物211が含まれるが、金属材料の膜250は膜210及び酸化物211を覆うように形成されるので、一部の酸化物212が防着板18から脱落又は拡散することを防止可能となる。又、金属材料の膜250は膜210及び酸化物211を覆うように形成されるので、一部の酸化物212がチャンバ11内の防着板18以外の部分から脱落又は拡散することを防止可能となることは言うまでもない。DC電源37をオフにした後、コーティング処理を施されたダミーキャリア320がチャンバ11内から外部へアンロードされる。
【0027】
尚、防着板18は、成膜処理又はコーティング処理が一定回数行われた時点で取り外して清掃或いは交換可能であるが、チャンバ11内の酸化物塵埃による汚染は金属材料の膜250により抑制されるので、防着板18の清掃或いは交換の頻度は従来に比べて大幅に低くて済む。
【0028】
本実施例では、成膜処理時のターゲット21によるスパッタ領域SP1と、コーティング処理時のターゲット25によるスパッタ領域SP2は略一致するが、スパッタ領域SP2は基板搬送用キャリア31の開口310に相当するダミーキャリア320の部分をカバーする必要はない。ターゲット21によるスパッタ領域SP1がターゲット25に達しないように、碍石35はターゲット21とターゲット25の間に配置されている。
【0029】
コーティング処理時に基板搬送用キャリア31に代えてダミーキャリア320をチャンバ11内にロードする処理は、ユーザにより手動で行っても、自動的に行っても良い。
【0030】
図6は、ダミーキャリア320の自動ロード処理を説明する図である。説明の便宜上、自動ロード処理は磁気記録媒体の製造方法に適用されているものとする。図6中、図1、図2及び図4と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。図6において、各チャンバ11−1〜11−10は、上面から見た断面図で示す。
【0031】
図6は、システム(又は、ライン)にキャリアレール51で接続されたチャンバ11−1〜11−10が設けられている場合を示す。チャンバ11−1は、システム制御部55の制御下で、基板搬送用キャリア31を一時的に収納すると共に、各チャンバ11−2〜11−10にロードしてチャンバ11−9を介して搬送されてくる基板搬送用キャリア31を外部へアンロードするキャリアロード・アンロード部を形成する。
【0032】
チャンバ11−2は、チャンバ11−2を通過する基板搬送用キャリア31を検出して検出信号をシステム制御部55に供給するキャリア通過センサ61を有する。システム制御部55は、キャリア通過センサ61からの検出信号に基づいてチャンバ11−2を通過する基板搬送用キャリア31の数をカウントする。チャンバ11−2を通過する基板搬送用キャリア31のカウント値が所定値に達すると、チャンバ11−1はシステム制御部55の制御下で基板搬送用キャリア31のキャリアレール51へのロードを停止し、又、未使用のダミーキャリア320を収納するダミーキャリア収納部52はシステム制御部55の制御下で未使用のダミーキャリア320をチャンバ11−2へロードする。
【0033】
各チャンバ11−3,11−9は、図1に示すチャンバ11のうち、副ホルダ33と関連する部分が設けられていない構造を有し、既存の成膜装置のチャンバと同じ構造であっても良い。一方、各チャンバ11−4,11−6,11−8は、図1に示すチャンバ11と同じ構造を有する。成膜処理時には、システム制御部55の制御下で、各チャンバ11−3,11−9では基板搬送用キャリア31が保持する基板32に対して金属膜が成膜され、各チャンバ11−4,11−6,11−8では基板搬送用キャリア31が保持する基板32に対してグラニュラ構造を有する酸化物膜が成膜される。一方、コーティング処理時には、システム制御部55の制御下で、各チャンバ11−3,11−9では成膜処理が行われず、各チャンバ11−4,11−6,11−8ではダミーキャリア320に対して金属膜が成膜される。図6は、説明の便宜上、各チャンバ11−4,11−6,11−8ではダミーキャリア320に対して金属膜が成膜されるコーティング処理が行われている状態を示す。
【0034】
チャンバ11−2,11−5,11−7,11−10は、基板搬送用キャリア31又はダミーキャリア320の搬送方向を変える方向変換部分を形成する。チャンバ11−10は、ダミーキャリア320を識別して識別信号をシステム制御部55に供給するダミーキャリア識別センサ62を有する。チャンバ11−9から使用済みのダミーキャリア320が搬送されてくると、チャンバ11−10及びダミーキャリア収納部53はシステム制御部55の制御下で、使用済みのダミーキャリア320をダミーキャリア収納部53へアンロードしてダミーキャリア320をダミーキャリア収納部53に収納する。一方、チャンバ11−9から搬送されてくる基板搬送用キャリア31は、システム制御部55が識別信号を供給されないので、そのままチャンバ11−1へ搬送される。
【0035】
ダミーキャリア識別センサ62は、ダミーキャリア320に設けられたマーク等を検出する等の周知の方法で基板搬送用キャリア31とは区別してダミーキャリア320を検出する。
【0036】
ところで、コーティング処理を行う場合、図1において左側のターゲット25からの金属が右側のターゲット21,25に付着したり、右側のターゲット25からの金属が左側のターゲット21,25に付着したりする不都合をシャッタ等を設けることで防止することができるのであれば、ダミーキャリア320をチャンバ11内にロードしなくても良い。
【0037】
図7は、シャッタを備えた成膜装置の一例を示す図である。図7中、図1と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。図7において、(a)は成膜装置1Aを上面から見た断面図、(b)は成膜装置1Aを側面から見た断面図、(c)は成膜装置1Aの片側を正面から見た断面図である。
【0038】
図7において、シャッタ装置60は、巻き取りシャフト61、モータ62、巻き取りギア63,駆動ベルト64、シャフト押さえ65、ガイドレール66、シャッタガイド67、及びシャッタ68を有する。図7は、シャッタ68の閉成状態を示し、この状態ではシャッタ68が対向するターゲット21,25の間に配置される。シャッタ68は、所謂キャタピラ式であり、例えばTi,Al等で形成されているので、ブラスト洗浄等により分解清掃が可能であるため、繰り返し使用が可能である。尚、シャッタ68に付着する膜の密着性を向上させるため、シャッタ68の表面をブラスト処理等により所定の粗さ以上にしておいても良い。
【0039】
シャッタ装置60は、シャッタ制御部59により制御される。成膜装置1A単体で手動でシャッタ装置60を制御する場合は、ユーザはシャッタ制御部59を操作することでシャッタ68を開閉する。一方、システム(又は、ライン)内の各成膜装置のシャッタ装置60を自動的に制御する場合は、成膜装置1Aを含む各成膜装置のシャッタ装置60がシステム制御部55からシャッタ制御部59を介して制御されることで各シャッタ68を自動的に開閉する。
【0040】
モータ62は、駆動ベルト64及び巻き取りギア63を介して巻き取りシャフト61の一端を駆動して回転させる。巻き取りシャフト61の他端にはシャフト押さえ65が固定されている。巻き取りシャフト61は、回転可能にガイドレール66に支持されており、シャッタ68の一端が固定されている。巻き取りシャフト61が図7(b)中時計方向に回転すると、シャッタ68はシャッタガイド67に案内されて巻き取られることで開成状態となり、成膜処理が可能となる。一方、巻き取りシャフト61が図7(b)中反時計方向に回転すると、シャッタ68はシャッタガイド67に案内されて閉成状態となり、コーティング処理が可能となる。シャッタガイド67は、シャッタ68の対向するターゲット21,25間の空間に対する入出力角度を一定にするために設けられている。
【0041】
図8は、シャッタを備えた成膜装置の他の例を示す図である。図8中、図1と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。図8において、(a)は成膜装置1Bを上面から見た断面図、(b)は成膜装置1Bを側面から見た断面図、(c)は成膜装置1Bの片側を正面から見た断面図である。
【0042】
図8において、シャッタ装置80は、巻き取りシャフト81、モータ82、ガイドレール86、及びシャッタ88を有する。図8は、シャッタ88の閉成状態を示し、この状態ではシャッタ88が対向するターゲット21,25の間に配置される。シャッタ88は、所謂扇子式であり、例えばTi,Al等で形成されているので、ブラスト洗浄等により分解清掃が可能であるため、繰り返し使用が可能である。尚、シャッタ88に付着する膜の密着性を向上させるため、シャッタ88の表面をブラスト処理等により所定の粗さ以上にしておいても良い。
【0043】
シャッタ装置80は、シャッタ制御部59により制御される。成膜装置1B単体で手動でシャッタ装置80を制御する場合は、ユーザはシャッタ制御部59を操作することでシャッタ88を開閉する。一方、システム(又は、ライン)内の各成膜装置のシャッタ装置80を自動的に制御する場合は、成膜装置1Bを含む各成膜装置のシャッタ装置80がシステム制御部55からシャッタ制御部59を介して制御されることで各シャッタ88を自動的に開閉する。
【0044】
モータ82は、巻き取りシャフト81の一端を駆動して回転させる。巻き取りシャフト81は、ガイドレール66に回転可能に支持されており、シャッタ88の各ブレードの一端は巻き取りシャフト81に繋がっている。巻き取りシャフト81が図7(c)中反時計方向に回転すると、シャッタ88は開成状態となり、成膜処理が可能となる。一方、巻き取りシャフト81が図7(c)中時計方向に回転すると、シャッタ88は閉成状態となり、コーティング処理が可能となる。
【0045】
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
チャンバと、
第1の材料で形成された第1のターゲットを前記チャンバ内で第1のカソード上に保持する主ホルダと、
第2の材料で形成された第2のターゲットを前記チャンバ内で第2のカソード上に保持する副ホルダと、
成膜処理時に前記第1のカソードに電流を印加して前記チャンバ内の基板の表面に前記第1の材料を形成する第1のDC電源と、
コーティング処理時に前記第2のカソードに電流を印加して前記チャンバ内の前記基板の表面以外の部分の前記第1の材料を覆うように前記第2の材料を形成する第2のDC電源を備えた、成膜装置。
(付記2)
前記チャンバ内の前記基板の表面以外の部分は、前記チャンバ内に取り外し可能に設けられた防着板を含む、付記1記載の成膜装置。
(付記3)
前記副ホルダは、前記成膜処理時の前記第1のターゲットによる第1のスパッタ領域と前記コーティング処理時の前記第2のターゲットによる第2のスパッタ領域が一致するように配置されている、付記1又は2記載の成膜装置。
(付記4)
前記基板はディスク形状を有し、前記第1のターゲットはディスク形状を有し、前記第2のターゲットは前記第1のターゲットの外側に配置されるリング形状を有する、付記3記載の成膜装置。
(付記5)
前記成膜処理時の前記第1のターゲットによる第1のスパッタ領域が前記第2のターゲットに達しないように第1のターゲットと第2のターゲットの間に配置された碍石を更に備えた、付記4記載の成膜装置。
(付記6)
前記碍石はリング形状を有する、付記5記載の成膜装置。
(付記7)
前記主ホルダ及び前記副ホルダはいずれも対で主ホルダ同士及び副ホルダ同士が対向する位置に設けられており、前記基板は対の主ホルダ間及び対の副ホルダ間に配置される、付記1乃至6のいずれか1項記載の成膜装置。
(付記8)
前記成膜処理時には、前記基板は前記基板の表面を露出する基板搬送用キャリアに保持された状態で前記チャンバ内にロードされ、
前記コーティング処理時には、前記基板搬送用キャリアの代わりに基板を保持しないダミーキャリアが前記チャンバ内にロードされ、前記基板搬送用キャリアの開口部分に相当する前記ダミーキャリアの部分は塞がれている、付記7記載の成膜装置。
(付記9)
前記成膜処理時には開成状態にあり、前記コーティング処理時には前記対の主ホルダ及び前記対の副ホルダを遮断する閉成状態となるシャッタを備えた、付記7記載の成膜装置。
(付記10)
前記第1の材料は酸化物とCo基合金の混合材料であり、
前記第2の材料は、成膜処理時に前記第1のターゲットから飛散する酸化物を覆う金属材料である、付記1乃至9のいずれか1項記載の成膜装置。
(付記11)
前記コーティング処理は、定期的に行われるように前記成膜処理が予め設定された回数行われる毎に行われる、付記1乃至10のいずれか1項記載の成膜装置。
(付記12)
前記成膜処理時には、磁気記録媒体の磁性膜を成膜する、付記1乃至11のいずれか1項記載の成膜装置。
(付記13)
付記1乃至13のいずれか1項記載の成膜装置を用いる磁気記録媒体の製造方法であって、
前記成膜処理により、順次搬送されてくる基板上に前記第1の材料でグラニュラ構造を有する膜を形成する、磁気記録媒体の製造方法。
(付記14)
前記第1の材料は酸化物とCo基合金の混合材料であり、
前記グラニュラ構造を有する膜は磁性膜である、付記13記載の磁気記録媒体の製造方法。
(付記15)
前記コーティング処理を、前記成膜処理を一定回数行う度に行う、付記13又は14記載の磁気記録媒体の製造方法。
【0046】
以上、本発明を実施例により説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0047】
1 成膜装置
11 チャンバ
12 真空ポンプ
13 主ホルダ
17,37 DC電源
18 防着板
21,25 ターゲット
31 基板搬送用キャリア
32 基板
33 副ホルダ
35 碍石
55 システム制御部
68,88 シャッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
第1の材料で形成された第1のターゲットを前記チャンバ内で第1のカソード上に保持する主ホルダと、
第2の材料で形成された第2のターゲットを前記チャンバ内で第2のカソード上に保持する副ホルダと、
成膜処理時に前記第1のカソードに電流を印加して前記チャンバ内の基板の表面に前記第1の材料を形成する第1のDC電源と、
コーティング処理時に前記第2のカソードに電流を印加して前記チャンバ内の前記基板の表面以外の部分の前記第1の材料を覆うように前記第2の材料を形成する第2のDC電源を備えた、成膜装置。
【請求項2】
前記チャンバ内の前記基板の表面以外の部分は、前記チャンバ内に取り外し可能に設けられた防着板を含む、請求項1記載の成膜装置。
【請求項3】
前記副ホルダは、前記成膜処理時の前記第1のターゲットによる第1のスパッタ領域と前記コーティング処理時の前記第2のターゲットによる第2のスパッタ領域が一致するように配置されている、請求項1又は2記載の成膜装置。
【請求項4】
前記第1の材料は酸化物とCo基合金の混合材料であり、
前記第2の材料は、成膜処理時に前記第1のターゲットから飛散する酸化物を覆う金属材料である、請求項1乃至3のいずれか1項記載の成膜装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の成膜装置を用いる磁気記録媒体の製造方法であって、
前記成膜処理により、順次搬送されてくる基板上に前記第1の材料でグラニュラ構造を有する膜を形成する、磁気記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−176780(P2010−176780A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21729(P2009−21729)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】