説明

排気ガス浄化システム

【課題】再生禁止時でもDPF破損を防止するとともに、作業時間を確保できる排気ガス浄化システムを提供する。
【解決手段】車体コントローラ41は、再生禁止が指令され、非操作状態にあり、排気ガス温度が250℃未満であると、昇温制御を開始する(S21→S22→S23→S24)。具体的には、エンジン1の目標回転数をエンジンコントロールダイヤル2が指示する目標回転数からやや高めの回転数に切り換える。エンジン回転数上昇によりエンジン1に負荷が掛かり、排気ガス温度は上昇する。これにより、自己再生がおこなわれると、堆積したPMの一部は燃焼除去され、PMは継続して堆積するものの、PM堆積進行を緩和することができる。その結果、PM堆積量が限界値に達するまでの時間を延長でき、作業時間を確保できる。オペレータは、作業時間内に作業を完了させ、再生可能場所にて強制再生を行い、DPF破損を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排気ガス浄化システムに係わり、特に、フィルタにより排気ガス中に含まれる粒子状物質を捕集して排気ガスを浄化するとともに、適宜フィルタに捕集した粒子状物質を焼却除去し、フィルタを再生させる排気ガス浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の作業車両はその駆動源としてディーゼルエンジンを搭載しているが、このディーゼルエンジンから排出される粒子状物質(PM:パティキュレート・マター:以下PMとする)の排出量は、NOx、CO、HC等とともに年々規制が強化されてきている。このような規制に対して、PMをディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter )と呼ばれるフィルタで捕集して、外部へ排出されるPMの量を低減する排気ガス浄化システムが知られている。この排気ガス浄化システムでは、フィルタのPM堆積量が増加してくるとフィルタは目詰まりを起こしてゆき、そのことによりエンジンの排圧が上昇し、燃費の悪化等を誘発するため、フィルタに捕集したPMを適宜燃焼してフィルタの目詰まりを除去し、フィルタを再生している。
【0003】
フィルタの再生は、通常、酸化触媒を用いることにより行われる。酸化触媒はフィルタの上流側に配置される場合と、フィルタに直接担持される場合と、その両方の場合とがあるが、いずれの場合も酸化触媒を活性化するためには、排気ガスの温度が酸化触媒の活性温度よりも高くなければならない。排気ガス温度が充分高い場合は自己再生するが、排気ガス温度が充分でなく自己再生できない場合や、自己再生では充分にPMを焼却除去できない場合も有り、排気ガス温度を強制的に酸化触媒の活性温度よりも高い温度以上に上昇させる強制再生と呼ばれる技術がある。この強制再生には、エンジンの筒内主噴射後の膨張行程において燃料を噴射する副噴射(後噴射)を行って排気ガスを昇温する手法、排気管に設けた再生用燃料噴射装置により排気管を流れる排気ガス中に燃料を噴射して排気ガスを昇温する手法等がある。
【0004】
また、フィルタの強制再生にはオペレータの操作入力により再生を開始する手動再生と、自動的に再生を開始する自動再生とがある。手動再生は以下のように行われる。まず、フィルタのPM堆積量(蓄積量)を推定し、そのPM堆積量が予め設定した閾値に到達すると、手動再生を行う旨をオペレータに警告する。オペレータが手動再生スイッチを操作すると、再生が開始する。特許文献1には、手動再生に係る技術が開示されている。一方、PM堆積量が閾値に到達するか、予め設定した所定時間が経過すると、自動再生が行われる。特許文献2には、自動再生に係る技術が開示されている。手動再生、自動再生とも、PM堆積量は、フィルタの前後差圧を検出し、この差圧の検出値に基づいて演算することにより求めるのが一般的である。
【0005】
ところで、ホイールローダや油圧ショベル等の作業車両は、周囲に可燃物が存在する環境で作業することもある。例えば、そのような作業として、屋内での木材チップの運搬作業や、粉塵等が発生する解体作業などがある。フィルタを強制再生する際には、排気温度が所定の時間(例えば数分間)にわたって高温に保持されるので、上記のような環境でフィルタを強制再生すると、引火のおそれがあり危険である。
【0006】
このような状況で手動再生においては、オペレータの判断により手動再生スイッチを操作せず、周囲に可燃物がない場所(再生可能場所)まで作業車両を移動させ、安全を確保して手動再生を開始する。
【0007】
一方、自動再生においては、オペレータの判断によらず自動的に再生が開始するため、再生禁止手段を設け、オペレータの判断により再生禁止手段を操作して自動再生を禁止する(特許文献2)。そして、オペレータは適切に作業を中断し、周囲に可燃物がない場所(再生可能場所)まで作業車両を移動させ、安全を確保して再生禁止を解除し、自動再生を再開する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第WO2009/060719号公報
【特許文献2】特開2009−79500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、頻繁に作業を中断していたのでは、作業効率が著しく悪化する。オペレータの立場からすれば、なるべく長く作業時間を確保することが好ましい。一方、自動再生(強制再生)を禁止したまま作業を継続すると、PMは堆積し続け、多量に捕集されたPMの燃焼によるフィルタの内部温度の異常上昇やそれに由来するDPFの破損といった問題を引起す可能性ある。
【0010】
ところで、強制再生が禁止されていても、上述の通り、排気ガス温度が適度である場合は自己再生が行われる。自己再生時の排気ガス温度は、強制再生時の排気ガス温度に比べて低く、自己再生時のPM焼却除去量は、強制再生時のPM焼却除去量に比べ少ないものの、自己再生が行われれば、PMの一部は焼却除去される。
【0011】
なお、強制再生時の排気ガス温度は高温であり、周囲に可燃物があると引火の危険性があるのに対し、自己再生時の排気ガス温度(250℃以上)は、強制再生時の排気ガス温度(600℃程度)に比べて低く、引火の危険性は著しく低い。
【0012】
すなわち、作業中には自己再生によるPM焼却除去をある程度期待できる。しかし、作業中でもアイドル時(非操作時)には、排気ガス温度が急激に低下(例えば100℃程度)する可能性も有り、自己再生によるPM焼却除去は期待できず、PM堆積が進行し、DPFの破損の可能性が高まる。
【0013】
本発明の目的は、PM堆積進行を緩和することで、再生禁止時でもDPF破損を防止するとともに、作業時間を確保できる排気ガス浄化システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、ディーゼルエンジンと、このエンジンの動力により駆動される複数の被駆動体とを備えた建設機械に搭載され、前記エンジンの排気系に配置され、排気ガス中に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタと、前記フィルタに堆積した粒子状物質を焼却除去し、前記フィルタを再生する強制再生装置と、前記強制再生装置の作動の開始と停止を制御する再生制御装置とを備えた排気ガス浄化システムにおいて、前記複数の被駆動体の非操作状態を検出する非操作状態検出手段と、前記強制再生装置の作動を禁止する再生禁止手段と、前記非操作状態検出手段が非操作状態を検出し、前記再生禁止手段が強制再生装置の作動を禁止するときに、排気ガスの温度を上昇させる昇温手段とを備える。
【0015】
このように昇温制御を備えることにより、排気ガス温度が上昇し、自己再生がおこなわれると、堆積したPMの一部は燃焼除去され、PMは継続して堆積するものの、PM堆積進行を緩和することができる。PM堆積進行が緩和することにより、PM堆積量が限界値に達するまでの時間を延長でき、作業時間を確保できる。オペレータは、作業時間内に作業を完了させ、再生可能場所にて強制再生を行うため、DPF破損を防止することができる。
【0016】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記排気ガスの温度を検出する排気温度検出装置を更に備え、前記昇温手段は、更に前記排気温度検出装置が閾値未満の温度を検出したとき、作動する。
【0017】
これにより、排気ガス温度が自己再生可能な温度の場合、不要の昇温を回避して燃費を改善できる。
【0018】
(3)上記(1)において、好ましくは、前記昇温手段は、エンジン回転数を上げることにより、前記エンジンに負荷をかける。
【0019】
これにより、昇温手段は、排気ガスの温度を上昇させることができる。
【0020】
(4)上記(1)において、好ましくは、前記建設機械は、前記エンジンにより駆動される油圧ポンプと、この油圧ポンプの吐出油により駆動され前記被駆動体を駆動する油圧アクチュエータとを含む油圧回路を更に備え、前記昇温手段は、前記油圧回路に設けられ、前記エンジンに油圧的な負荷をかける。
【0021】
これにより、昇温手段は、排気ガスの温度を上昇させることができる。
【0022】
(5)上記(1)において、好ましくは、前記建設機械は、前記非操作状態検出手段が前記複数の被駆動体の所定の第2非操作状態を検出すると、エンジン回転数をアイドル回転数に設定するオートアイドル制御手段を更に備え、前記昇温手段は、オートアイドル制御を無効とし、エンジン回転数を維持する。
【0023】
これにより、昇温手段は、排気ガス温度低下を抑制し、排気ガス温度を維持(オートアイドル制御時に比べて昇温)することができる。
【0024】
昇温制御開始条件の非操作状態とオートアイドル制御開始条件の非操作状態(第2非操作状態)とを区別してもよいし、区別しなくてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、PM堆積進行を緩和することで、再生禁止時でもDPF破損を防止するとともに、作業時間を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】排気ガス浄化システムの全体構成を示す図である(第1実施形態)。
【図2】油圧ショベルに搭載される油圧回路を示す図である。
【図3】油圧ショベルの外観を示す図である。
【図4】コントローラの機能ブロックを示す図である。
【図5】エンジンコントローラによる再生制御の演算処理の内容を示すフローチャートである。
【図6】車体コントローラによる再生禁止時における昇温制御の演算処理の内容を示すフローチャートである。
【図7】排気ガス温度の時間経過の一例である。
【図8】PM堆積量の時間経過を示す図である。
【図9】車体コントローラによる再生禁止時における昇温制御の演算処理の内容を示すフローチャートである(変形例)。
【図10】油圧ポンプの吐出圧・吐出流量とエンジン出力との関係を示す図である。
【図11】車体コントローラによる再生禁止時における昇温制御の演算処理の内容を示すフローチャートである(第2実施形態)。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を図面を用いて説明する。
【0028】
〜構成〜
図1は本発明の本実施形態に係わる建設機械の排気ガス浄化システムの全体構成を示す図である。図1において、建設機械(例えば油圧ショベル)はディーゼルエンジン1を搭載しており、このエンジン1は電子式の燃料噴射制御装置である電子ガバナ1aを備えている。エンジン1の目標回転数はエンジンコントロールダイヤル2により指令され、エンジン1の実回転数は回転数検出装置3により検出される。エンジンコントロールダイヤル2の指令信号及び回転数検出装置3の検出信号はコントローラ4に入力され、コントローラ4はその指令信号(目標回転数)と検出信号(実回転数)とに基づいて電子ガバナ1aを制御し、エンジン1の回転数とトルクを制御する。
【0029】
油圧ショベルのキャビン107には、操作レバー28,29(図2参照)やゲートロックレバー5が設けられている。ゲートロックレバー5は運転席108の入り口を制限する下げ位置である第1位置Aと運転席108の入り口を開放する上げ位置である第2位置Bとに選択的に操作可能である。ゲートロックレバー5は、その操作位置を検出する位置検出センサ5aを有している。
【0030】
排気ガス浄化システムは、エンジン1の排気系を構成する排気管31に配置され、排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集するフィルタ32及びフィルタ32の上流側に配置された酸化触媒33を含むDPF装置34と、フィルタ32の上流側と下流側の前後差圧(フィルタ32の圧力損失)を検出する差圧検出装置36と、フィルタの上流側に設置され、排気ガスの温度を検出する排気温度検出装置37と、再生禁止を指示する再生禁止スイッチ38と、排気管31のエンジン1とDPF装置34との間に設けられ排気ガスの温度を上昇させる再生用燃料噴射装置39とを備えている。酸化触媒33と再生用燃料噴射装置39はフィルタ32に堆積したPM(粒子状物質)を焼却除去し、フィルタ32を再生する再生装置を構成する。
【0031】
再生禁止スイッチ38は、油圧ショベルのキャビン107内のオペレータが操作しやすい位置に配置されており、再生用燃料噴射装置39の作動禁止(フィルタ32の再生禁止)を指示する操作手段であり、再生禁止スイッチ38がON位置に操作されると再生禁止を指示する指令信号が出力される。なお、再生禁止スイッチ38は、表示装置6に表示される設定画面であってもよい。操作スイッチ6bを操作してON/OFFを設定する。
【0032】
図2は、建設機械(例えば油圧ショベル)に搭載される油圧回路を示す図である。油圧回路は、エンジン1により駆動される可変容量型のメインの油圧ポンプ11及び固定容量型のパイロットポンプ12と、油圧ポンプ11から吐出される圧油によって駆動される油圧モータ13及び油圧シリンダ14,15を含む複数の油圧アクチュエータと、油圧ポンプ11から油圧モータ13及び油圧シリンダ14,15に供給される圧油の流れ(流量と方向)を制御するパイロット操作式の流量制御弁17〜19を含む複数の流量制御弁と、パイロットポンプ12から吐出される圧油の圧力を一定に保ち、パイロット油圧源20を形成するパイロットリリーフ弁21と、メインの油圧ポンプ11の吐出圧力の上限を規定するメインリリーフ弁22と、流量制御弁17〜19を直列に接続するセンターバイパスラインの下流側に設けられた制御弁30と、パイロット油圧原20の下流側に接続され、油圧ショベルの運転席入り口に設けられたゲートロックレバー5の開閉状況によってON/OFF制御される電磁切換弁23と、電磁切換弁23の下流側のパイロット油路24に接続され、パイロット油圧源20の油圧を元圧として流量制御弁17〜19を操作するための制御パイロット圧a〜fを生成するリモコン弁25,26,27とを備えている。
【0033】
油圧ポンプ11は、その吐出圧力に基づいて油圧ポンプ11の吸収トルク(消費トルク)が予め定めた値である最大吸収トルクを超えないように油圧ポンプ11の傾転(斜板の傾転量;押しのけ容積或いは容量)を制御するレギュレータ11aを有している。
【0034】
リモコン弁25,26,27は運転席108(図1参照)の左右に設けられた左右の操作レバー28,29により操作されるものである。操作レバー28,29は、それぞれ、十字方向に操作可能であり、操作レバー28を十字の一方向に操作するとリモコン弁25が操作され、操作レバー28を十字の他方向に操作するとリモコン弁27が操作され、操作レバー29を十字の一方向に操作するとリモコン弁26が操作され、操作レバー29を十字の他方向に操作すると図示しないリモコン弁が操作される。また、操作レバー28を十字の一方向に操作するとき、中立位置から一方向に操作するとリモコン弁25は制御パイロット圧aを生成し、中立位置から反対方向に操作するとリモコン弁25は制御パイロット圧bを生成する。制御パイロット圧a,bは、それぞれのパイロットライン25a,25bを介して流量制御弁17の対応する受圧部に導かれ、これにより流量制御弁17が中立位置から切り換えられる。
【0035】
同様に、操作レバー28を十字の他方向に操作するとき、中立位置から一方向に操作するとリモコン弁27は制御パイロット圧eを生成し、中立位置から反対方向に操作するとリモコン弁27は制御パイロット圧fを生成し、制御パイロット圧e,fは、それぞれのパイロットライン27a,27bを介して流量制御弁19の対応する受圧部に導かれ、これにより流量制御弁19が中立位置から切り換えられる。操作レバー29を十字の一方向に操作するとき、中立位置から一方向に操作すると制御パイロット圧cを生成し、中立位置から反対方向に操作すると制御パイロット圧dを生成し、制御パイロット圧c,dは、それぞれのパイロットライン26a,26bを介して流量制御弁18の対応する受圧部に導かれ、これにより流量制御弁18が中立位置から切り換えられる。
【0036】
油圧回路は、さらに、シャトル弁群46と圧力センサ47を備えている。シャトル弁群46はリモコン弁26〜27の制御パイロット圧a〜fや他の操作手段の制御パイロット圧のうちの最高圧力を抽出する。圧力センサ47は、シャトル弁群46のうち最下流に設けられたシャトル弁の出力ポートに接続され、制御パイロット圧のうち最高圧力を検出し、操作の有無を検出する。
【0037】
制御パイロット圧a〜fはゲートロックレバー5の位置に基づき連通・遮断される。
【0038】
ゲートロックレバー5が第1位置Aにあるときは電磁切換弁23のソレノイドを励磁して電磁切換弁23を図示の位置から切り換え、パイロット油圧源20の圧力をリモコン弁25,26,27に導き、これによりリモコン弁25,26,27による流量制御弁17〜19の操作を可能とする。ゲートロックレバー5が第2位置Bに上げ操作されると、電磁切換弁23のソレノイドを励磁を解除して電磁切換弁23を図示の位置に切り換え、パイロット油圧源20とリモコン弁25,26,27の連通を遮断し、これによりリモコン弁25,26,27による流量制御弁17〜19の操作を不能とする。すなわち、ゲートロックレバー5が第2位置Bに上げ操作されるとリモコン弁25,26,27(コントロールレバーユニット)に対してロック入りの状態となる。再びゲートロックレバー5が第1位置Aに下げ操作されるとロック解除状態となる。ゲートロックレバー5による電磁切換弁23の位置の切り換えは、例えば電磁切換弁23のソレノイドと電源との間に図示しないスイッチを設け、ゲートロックレバー5が第1位置AにあるときはそのスイッチをON(閉)してソレノイドを励磁し、ゲートロックレバー5が第2位置Bに操作されるとそのスイッチをOFF(開)してソレノイドの励磁を解除することにより行う。
【0039】
制御弁30は開位置と閉位置とを有する2位置切換弁であり、ソレノイドが励磁されていないときは開位置にあり、ソレノイドが励磁されると図示の開位置から閉位置に切り換えられる。
【0040】
図3は、油圧ショベルの外観を示す図である。油圧ショベルは下部走行体100と上部旋回体101とフロント作業機102を備えている。下部走行体100は左右のクローラ式走行装置103a,103bを有し、左右の走行モータ104a,104bにより駆動される。上部旋回体101は旋回モータ105により下部走行体100上に旋回可能に搭載され、フロント作業機102は上部旋回体101の前部に俯仰可能に取り付けられている。上部旋回体101にはエンジンルーム106、キャビン107が備えられ、エンジンルーム106にエンジン1が配置され、キャビン107内の運転席108の入り口にゲートロックレバー5(図1)が設けられ、運転席108の左右にリモコン弁25,26,27を内蔵したコントロールレバーユニット(図2)が配置されている。
【0041】
フロント作業機102はブーム111、アーム112、バケット113を有する多関節構造であり、ブーム111はブームシリンダ114の伸縮により上下方向に回動し、アーム112はアームシリンダ115の伸縮により上下、前後方向に回動し、バケット113はバケットシリンダ116の伸縮により上下、前後方向に回動する。
【0042】
図2において、油圧モータ13は例えば旋回モータ105に対応し、油圧シリンダ14は例えばアームシリンダ115に対応し、油圧シリンダ15は例えばブームシリンダ114に対応する。図2に示す油圧駆動装置には走行モータ104a,104b、バケットシリンダ116等に対応するその他の油圧アクチュエータや制御弁も備えられているが、図2では図示を省略している。
【0043】
なお、建設機械はホイルローダでもホイール式油圧ショベルでもよい。
【0044】
〜制御〜
図4はコントローラ4の機能ブロックを示す図である。コントローラ4は、車体コントローラ41と、エンジンコントローラ42と、表示コントローラ43を含み、これらのコントローラは通信ライン44を介して相互に接続され、車体ネットワークを構成している。エンジンコントロールダイヤル2の指令信号、位置検出センサ5aや圧力センサ47の検出信号や、再生禁止スイッチ38の指令信号は車体コントローラ41に入力され、回転数検出装置3の検出信号や、差圧検出装置36、排気温度検出装置37の検出信号はエンジンコントローラ42に入力される。
【0045】
車体コントローラ41は、油圧駆動装置など車体全般を制御する。例えば、制御弁30や油圧ポンプ11のレギュレータ11aを制御することにより、油圧ポンプ11の吐出圧と吐出流量を制御する.
エンジンコントローラ42は、エンジンコントロールダイヤル2の指令信号を通信ライン44を介して受信し、この指令信号と回転数検出装置3の検出信号に基づいてエンジン1の回転数とトルクを制御する。
【0046】
また、エンジンコントローラ42は、差圧検出装置36の検出信号を受信してPM堆積量を推定し、推定PM堆積量に基づき再生制御の演算処理を行い、その演算結果に応じて、電子ガバナ1a及び再生用燃料噴射装置39を制御する(自動再生制御)。
【0047】
表示コントローラ43は、回転数検出装置3、差圧検出装置36、再生禁止スイッチ38からの各種信号や強制再生制御の演算処理結果を通信ライン44を介して受信し、表示信号として表示装置6に送り、それら情報を表示画面6aに表示する。また、ユーザーインターフェースとしての操作スイッチ6bによる指令信号を入力する。
【0048】
図5は、エンジンコントローラ42による再生制御の演算処理の内容を示すフローチャートである。
【0049】
差圧検出装置36の検出信号に基づいた推定堆積量が自動再生開始値である第1閾値より多いかどうかを判定し(ステップS11)、推定堆積量が第1閾値より多くないと判定すると、推定堆積量が第1閾値より多くなるまで、ステップS11の処理を繰り返す。
【0050】
ステップS11において、推定堆積量が第1閾値より多いと判定すると、再生禁止が指令されているかどうかを判定し(ステップS12)、再生禁止が指令されていない(再生可能)と判定すると、自動再生制御を開始する(ステップS13)。再生禁止が指令されていると判定すると、再生制御をせずに演算処理を終了する。
【0051】
自動再生制御中に、再生禁止が指令されたどうかを判定し(ステップS14)、再生禁止が指令されていない(再生可能)と判定すると、推定堆積量が再生終了値である第2閾値より少なくなったかどうかを判定し(ステップS15)、推定堆積量が第2閾値より少なくないと判定すると、再生禁止が指令されるか、推定堆積量が第2閾値より少なくなるまで、ステップS14、15の処理を繰り返す。
【0052】
ステップS15において、推定堆積量が第2閾値より少なくなったと判定すると、自動再生制御を停止し(ステップS16)、演算処理を終了する。
【0053】
自動再生制御は、例えば次のように行う。まず、エンジン1の回転数を強制再生制御に適した所定の回転数Naに制御する。強制再生制御に適した所定の回転数Naとは、そのときの排気ガスの温度を酸化触媒33の活性温度よりも高い温度まで上昇させることができる中速回転数である。この制御では、車体コントローラ41は、エンジン1の目標回転数をエンジンコントロールダイヤル2が指示する目標回転数から所定の回転数Naに切り換え、その所定の回転数Na(目標回転数)を通信ライン44を介してエンジンコントローラ42に送信する。エンジンコントローラ42は、その目標回転数(所定の回転数Na)と回転数検出装置3により検出したエンジン1の実回転数とに基づいて電子ガバナ1aの燃料噴射量をフィードバック制御し、エンジン1の回転数がその所定の回転数Naとなるよう制御する。
【0054】
次いで、排気温度検出装置37により検出した排気ガス温度が所定の温度(酸化触媒33の活性温度よりも高い温度)まで上昇したことが確認されると、再生用燃料噴射装置39を制御して排気管31内への燃料噴射を行う。排気管31内に燃料噴射を行うことで未燃燃料が酸化触媒33に供給され、その未燃燃料を酸化触媒33によって酸化させ、そのときに得られる反応熱により排気ガス温度が更に上昇し、フィルタ32に堆積したPMが焼却除去される。
【0055】
再生制御を停止するときは、目標回転数をエンジンコントロールダイヤル2が指示する目標回転数(低速アイドル回転数)に戻し、再生用燃料噴射装置39の制御を停止させる。目標回転数をエンジンコントロールダイヤル2が指示する目標回転数(低速アイドル回転数)に戻す代わりに、エンジン1を停止させてもよい。
【0056】
図6は、本実施形態の特徴である、車体コントローラ41による再生禁止時における昇温制御の演算処理の内容を示すフローチャートである。
【0057】
車体コントローラ41は、まず、再生禁止が指令されているかどうかを判定し(ステップS21)、再生禁止が指令されていると判定すると、非操作状態にあるかどうかを判定し(ステップS22)、非操作状態にあると判定すると、排気温度検出装置37の検出信号に基づいて、排気ガス温度が閾値(自己再生可能な温度の下限)未満であるかどうかを判定し(ステップS23)、排気ガス温度が閾値未満であると判定すると、昇温制御を開始する(ステップS24)。
【0058】
ステップS22において、非操作状態にない(操作状態にある)と判定する場合、ステップS23において、排気ガス温度が閾値未満でない(自己再生可能な温度にある)と判定する場合、ステップS22〜S23の手順を繰り返す。
【0059】
昇温制御開始後、ステップ21における判定(条件1)、ステップ22における判定(条件2)、ステップ23における判定(条件3)、の何れかがNOであるか(条件1〜3のいずれかを満たさない)どうかを判定し(ステップS25)、何れかがNOであると判定すると、昇温制御を停止する(ステップS26)。
【0060】
ステップS25において、何れもNOでない(条件1〜3のいずれも満たす)と判定する場合、ステップS25の手順を繰り返し、昇温制御を継続する。
【0061】
なお、ステップS21において、再生禁止が指令されていない(再生可能である)と判定すると、その旨を通信ライン44を介してエンジンコントローラ42に送信する。エンジンコントローラ42は、図5に示す再生制御をおこなう(ステップS10)。
【0062】
ステップS22における、非操作状態にあるかどうかの判定は、例えば次のようにおこなう。車体コントローラ41は、操作レバー28,29非操作時のリモコン弁25〜27の出力圧より若干高めの圧力を閾値として予め設定しておき、圧力センサ47の圧力検出値がその閾値より低く、この状態が所定時間Ta継続したと判定すると、非操作状態と判定する。
【0063】
ステップS24における昇温制御開始は、例えば次のようにおこなう。車体コントローラ41は、エンジン1の目標回転数をエンジンコントロールダイヤル2が指示する目標回転数からやや高めの回転数に切り換え、切換え後の目標回転数を通信ライン44を介してエンジンコントローラ42に送信する。エンジンコントローラ42は、その目標回転数と回転数検出装置3により検出したエンジン1の実回転数とに基づいて電子ガバナ1aの燃料噴射量をフィードバック制御し、エンジン1の回転数がエンジンコントロールダイヤル2が指示する目標回転数より高い回転数となるよう制御する。エンジン回転数上昇によりエンジン1に負荷が掛かり、排気ガス温度は上昇する。
【0064】
ステップS26における昇温制御停止は、例えば次のようにおこなう。車体コントローラ41は、エンジン1の目標回転数をエンジンコントロールダイヤル2が指示する元の目標回転数に切り換えて通常のエンジン制御に復帰する。エンジンコントローラ42は、通信ライン44を介して目標回転数を入力し、その目標回転数と回転数検出装置3により検出したエンジン1の実回転数とに基づいて電子ガバナ1aの燃料噴射量をフィードバック制御し、エンジン1の回転数がエンジンコントロールダイヤル2が指示する目標回転数となるよう制御する。
【0065】
〜請求項との対応関係〜
本実施形態において、操作レバー28,29、リモコン弁25〜27、シャトル弁群46、圧力センサ47と車体コントローラ41のステップS22の処理は、油圧ショベルの非操作状態を検出する非操作状態検出手段を構成し、再生禁止スイッチ38は、強制再生を禁止する再生禁止手段構成する。
【0066】
また、エンジンコントローラ42とエンジン1の電子ガバナ1aと車体コントローラ41のステップS24の処理は、非操作状態検出手段が非操作状態を検出し、再生禁止手段が強制再生装置の作動を禁止するときに、排気ガスの温度を上昇させる昇温手段構成する。
【0067】
〜動作〜
本実施形態の排気ガス浄化システムの動作を説明する。
【0068】
一般的な作業時には、再生禁止スイッチ38はOFF位置にあり、適宜、自動再生制御が行われる(S21→S10→S11→S12→S13→S14→S15→S16)。強制再生により、排気ガス温度は600℃程度となり、堆積したPMを燃焼除去できる。
【0069】
ここでは、屋内での作業を想定する。図7は理解の補助の為に示す、排気ガス温度の時間経過の一例である。屋内での作業では粉塵等が舞いやすく、PMがフィルタに堆積する。再生禁止スイッチ38がOFF位置にあり、PM堆積量が第1閾値より多ければ、自動再生が開始する(S21→S10→S11→S12→13)。
【0070】
しかし、周囲に可燃物が有り引火のおそれがあるとオペレータが判断し、再生禁止スイッチ38をON位置に操作すると、自動再生が停止する(S13→S14→16→21)。これにより、PMは継続して堆積する。
【0071】
また、屋内作業をするとき、予め再生禁止スイッチ38をON位置に操作する場合もある。この場合、PM堆積量が第1閾値より多くなっても、自動再生は開始せず、PMは継続して堆積する(S21→S10→S11→S12→S21)。
【0072】
ところで、エンジン出力と排気ガス温度とは密接な関係があり、作業中、排気ガス温度が250度以上あれば、自己再生がおこなわれ、堆積したPMの一部は燃焼除去される。ところが、作業中であっても、工程と工程の合間の待機時間など、油圧ショベルが非操作状態になることも多い。非操作状態においては、エンジン出力が低下するに伴って、排気ガス温度も低下し、100℃程度になる可能性も有る。排気ガス温度が250度未満であると、自己再生に期待できず、PM堆積は更に進行する。
【0073】
車体コントローラ41は、再生禁止が指令され、非操作状態にあり、排気ガス温度が250℃未満であると、昇温制御を開始する(S21→S22→S23→S24)。エンジン回転数上昇によりエンジン1に負荷が掛かり、排気ガス温度は上昇する。これにより、自己再生がおこなわれると、堆積したPMの一部は燃焼除去され、PMは継続して堆積するものの、PM堆積進行を緩和することができる。
【0074】
車体コントローラ41は、排気ガス温度が250℃以上になると、昇温制御を停止する(S25→S26)。昇温制御を停止すると、排気ガス温度は徐々に低下するが、排気ガス温度が250℃以上であれば、昇温制御を行わない(S21→S22→S23→22)。
【0075】
その後、油圧ショベルが操作状態になると、排気ガス温度は250℃以上を維持し、自己再生がおこなわれる。
【0076】
なお、本実施形態の排気ガス浄化システムは、PM堆積進行を緩和することができるが、PM堆積進行を抑止するものではない。強制再生は禁止されているため、屋内作業を継続していると、やがてPM堆積量が限界値(第3閾値)に達し、DPF破損に至る。DPF破損を防止するため、PM堆積量が限界値(第3閾値)に達するまえに、「作業を中断して、強制再生を行う」旨の警告を表示画面6aに表示する。併せて、限界値に対する現在のPM堆積量を視覚的に表示してもよい。残り作業可能時間の推定値を表示してもよい。
【0077】
オペレータは、警告表示される前に作業を完了させるか、警告表示されると作業を中断して、屋外の再生可能場所まで油圧ショベルを移動させる。そして、周囲の安全を確認し、再生禁止スイッチ38をOFF位置に操作する。このとき、PM堆積量は第1閾値より多く、自動再生制御が行なわれる(S21→S10→S11→S12→S13→S14→S15→S16)。自動再生制御が行なわれない場合は、手動再生制御を行ってもよい。これにより、DPF破損を防止することができる。
【0078】
再生終了後、オペレータは屋内での作業を再開する。
【0079】
〜効果〜
第1実施形態の排気ガス浄化システムの効果を説明する。図8は第1実施形態の排気ガス浄化システムの効果を説明する為に示すPM堆積量の時間経過を示す図である。
【0080】
上述したように、再生禁止スイッチ38をON位置に操作すると、強制再生がおこなわれないためPM堆積は継続する。ただし、作業中、排気ガス温度が適度である場合は自己再生が行われ、PMの一部は焼却除去される。しかし、作業中でもアイドル時(非操作時)には、排気ガス温度が急激に低下する可能性も有り、自己再生によるPM焼却除去は期待できず、PM堆積が更に進行する。
【0081】
PM堆積が継続すると、やがてPM堆積量が限界値(第3閾値)に達し、DPFの破損の可能性が高まる。図8に昇温制御しない場合の仮想履歴を破線で示す。
【0082】
本実施形態では、再生禁止スイッチ38がON位置にあり、非操作状態にあり、排気ガス温度が250℃未満であると、昇温制御が開始する。これにより、排気ガス温度が上昇し、自己再生がおこなわれると、堆積したPMの一部は燃焼除去され、PMは継続して堆積するものの、PM堆積進行を緩和することができる。図8に昇温制御する場合の履歴を実線で示す。
【0083】
PM堆積進行が緩和することにより、PM堆積量が限界値に達するまでの時間を延長でき、作業時間を確保できる。オペレータは、作業時間内に作業を完了させ、再生可能場所にて強制再生を行うため、DPF破損を防止することができる。
【0084】
なお、自己再生時の排気ガス温度(250℃以上)は、強制再生時の排気ガス温度(600℃程度)に比べて低く、引火の危険性は著しく低い。
【0085】
〜変形例〜
1.本実施形態の排気ガス浄化システムは、排気温度検出装置37を備え、車体コントローラ41は、排気ガス温度が閾値未満であると判定する(ステップS23)と、昇温制御を開始する(ステップS24)ものであり、この構成は、不要の昇温を回避して燃費を改善する効果が得られるが、必須の構成ではない。
【0086】
図9は、昇温制御の演算処理の内容を示すフローチャートである。図6と同じ処理には同じ符号を付している。この変形例においても、再生禁止時において、DPF破損を防止するとともに、作業時間を確保できるという、本実施形態の効果が得られる。
【0087】
2.エンジンコントローラ42とエンジン1の電子ガバナ1aと車体コントローラ41のステップS24の処理は、非操作状態検出手段が非操作状態を検出し、再生禁止手段が強制再生装置の作動を禁止するときに、排気ガスの温度を上昇させる昇温手段を構成するが、これ以外の構成でもよい。
【0088】
例えば、ステップS24における昇温制御開始は、例えば次のようにおこなう。
【0089】
図11は油圧ポンプ11の吐出圧・吐出流量とエンジン1の出力との関係を示す図である。車体コントローラ41は、通常、非操作時には、省エネルギーの観点から、ポンプ吐出圧P1・ポンプ吐出流量Q1に制御し、最小エンジン出力PS1としている。
【0090】
車体コントローラ41は、昇温制御時には、制御弁30の変位量を制御することにより、ポンプ11の吐出圧をポンプ吐出圧P2(>P1)に制御する。また、レギュレータ11aの傾転を制御することにより、油圧ポンプ11の吐出流量をポンプ吐出流量Q2(>Q1)に制御する。その結果、油圧ポンプ11を駆動するためエンジン出力PS2となり、エンジン1の負荷が増大し、排気ガス温度が上昇する。
【0091】
このとき、併せて、エンジン回転数を上昇させてもよい。エンジン回転数上昇と油圧負荷により、より確実に昇温できる。
【0092】
3.操作レバー28,29、リモコン弁25〜27、シャトル弁群46、圧力センサ47車体とコントローラ41のステップS22の処理は、非操作状態を検出する非操作状態検出手段を構成するが、これ以外の構成でもよい。
【0093】
ステップS22における非操作状態にあるかどうかの判定は、例えば次のようにおこなう。車体コントローラ41は、位置検出センサ5aの検出信号に基づいて、ゲートロックレバー5が第2位置Bに上げ操作されると、すなわちゲートロックレバー5が制御パイロット圧を遮断するロック入り状態にあると、非操作状態と判定してもよい。さらに、圧力センサ47の検出信号と位置検出センサ5aとの両方に基づいて、非操作状態を判定してもよい。
【0094】
<第2実施形態>
〜構成・制御〜
油圧ショベル等の作業機においては、燃費の節減や騒音の低減等を目的として、作業機が所定の運転状態にあるときは、エンジンの回転数を回転数指示装置が指示する回転数より低下させる制御(エンジン回転数低下制御)を行うものがある。このようなエンジン低速制御の一例としてオートアイドル制御がある。オートアイドル制御は、被駆動体の動作を指示する操作レバー28,28の全てが中立状態となった時点から予め定められた遅延時間を経過したとき、エンジンの回転数をエンジンコントロールダイヤル2が指示する回転数より低いアイドル回転数に制御するものである。
【0095】
再生禁止時に、オートアイドル制御が開始すると、排気ガス温度が低下し、自己再生に期待できず、PM堆積は更に進行する。すなわち、第1実施形態と同様な課題が生じる。
【0096】
図11は、本実施形態の特徴である、車体コントローラ41による再生禁止時における昇温制御の演算処理の内容を示すフローチャートである。
【0097】
車体コントローラ41は、まず、非操作状態にあるかどうかを判定し(ステップS31)、非操作状態にない(操作状態にある)と判定する場合、エンジンコントロールダイヤル3からの指示信号に基づいてエンジン1の目標回転数を設定し、その目標回転数を指示する指令信号をエンジンコントローラ42に出力する(ステップS35)。
【0098】
ステップS31において、非操作状態にあると判定する場合、オートアイドル制御を開始する(ステップS32)。そして、オートアイドル制御中に、再生禁止が指令されたどうかを判定し(ステップS33)、再生禁止が指令されていないと判定すると、オートアイドル制御を継続する。
【0099】
ステップS33において、再生禁止が指令されていると判定すると、オートアイドル制御を停止する(ステップS34)。
【0100】
〜動作・効果〜
一般的な作業時には、通常のエンジン回転数制御が行われる(S31→S35)。一方、非操作状態が検出されると、オートアイドル制御が開始する(S31→32)。このとき、予め再生禁止スイッチ38をON位置に操作されている場合、オートアイドル制御は無効となる。また、オートアイドル制御開始後に再生禁止スイッチ38をON位置に操作されている場合、オートアイドル制御は停止する(S33→S34)。そして、通常のエンジン回転数制御が行われる(S31→S35)。
【0101】
再生禁止時に、オートアイドル制御が開始すると、排気ガス温度が低下し、自己再生に期待できず、PM堆積は更に進行する。これにより、作業時間に係る課題または、DPF破損に係る課題が生じる。
【0102】
本実施形態では、再生禁止スイッチ38がON位置にあり、非操作状態にあると、オートアイドル制御は行われず、エンジンコントロールダイヤル2が指示する回転数が維持される。これにより、排気ガス温度が維持(オートアイドル制御時に比べて昇温)され、自己再生がおこなわれると、堆積したPMの一部は燃焼除去され、PMは継続して堆積するものの、PM堆積進行を緩和することができる。
【0103】
すなわち、車体コントローラ41のステップS34の処理は、非操作状態検出手段が非操作状態を検出し、再生禁止手段が強制再生装置の作動を禁止するときに、排気ガスの温度を上昇させる昇温手段を構成する。
【0104】
なお、本実施形態において、オートアイドル制御開始条件の非操作状態と、昇温制御開始(オートアイドル制御停止)条件の非操作状態とを区別しなかったが、操作レバー28,29非操作継続時間により区別してもよい。
【符号の説明】
【0105】
1 ディーゼルエンジン
1a 電子ガバナ
2 エンジンコントロールダイヤル
3 回転数検出装置
4 コントローラ
5 ゲートロックレバー
5a 位置検出センサ
6 表示装置
6a 表示画面
6b 操作スイッチ
11 油圧ポンプ
12 パイロットポンプ
13 油圧モータ
14,15 油圧シリンダ
17〜19 流量制御弁
20 パイロット油圧源
21 パイロットリリーフ弁
22 メインリリーフ弁
23 電磁切換弁
24 パイロット油路
25,26,27 リモコン弁
28,29 操作レバー
30 制御弁
31 排気管
32 フィルタ
33 酸化触媒
34 DPF装置
36 差圧検出装置
37 排気温度検出装置
38 再生禁止スイッチ
39 再生用燃料噴射装置
41 車体コントローラ
42 エンジンコントローラ
43 表示コントローラ
44 通信ライン
46 シャトル弁群
47 圧力センサ
100 下部走行体
101 上部旋回体
102 フロント作業機
103a,103b クローラ式走行装置
104a,104b 走行モータ
105 旋回モータ
106 エンジンルーム
107 キャビン
108 運転席
111 ブーム
112 アーム
113 バケット
114 ブームシリンダ
115 アームシリンダ
116 バケットシリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンと、このエンジンの動力により駆動される複数の被駆動体とを備えた建設機械に搭載され、
前記エンジンの排気系に配置され、排気ガス中に含まれる粒子状物質を捕集するフィルタと、
前記フィルタに堆積した粒子状物質を焼却除去し、前記フィルタを再生する強制再生装置と、
前記強制再生装置の作動の開始と停止を制御する再生制御装置と
を備えた排気ガス浄化システムにおいて、
前記複数の被駆動体の非操作状態を検出する非操作状態検出手段と、
前記強制再生装置の作動を禁止する再生禁止手段と、
前記非操作状態検出手段が非操作状態を検出し、前記再生禁止手段が強制再生装置の作動を禁止するときに、排気ガスの温度を上昇させる昇温手段と
を備えることを特徴とする建設機械の排気ガス浄化システム。
【請求項2】
請求項1記載の排気ガス浄化システムにおいて、
前記排気ガスの温度を検出する排気温度検出装置を更に備え、
前記昇温手段は、更に前記排気温度検出装置が閾値未満の温度を検出したとき、作動する
ことを特徴とする排気ガス浄化システム。
【請求項3】
請求項1記載の建設機械の排気ガス浄化システムにおいて、
前記昇温手段は、エンジン回転数を上げることにより、前記エンジンに負荷をかける
ことを特徴とする排気ガス浄化システム。
【請求項4】
請求項1記載の建設機械の排気ガス浄化システムにおいて、
前記建設機械は、前記エンジンにより駆動される油圧ポンプと、この油圧ポンプの吐出油により駆動され前記被駆動体を駆動する油圧アクチュエータとを含む油圧回路を更に備え、
前記昇温手段は、前記油圧回路に設けられ、前記エンジンに油圧的な負荷をかける
ことを特徴とする排気ガス浄化システム。
【請求項5】
請求項1記載の建設機械の排気ガス浄化システムにおいて、
前記建設機械は、前記非操作状態検出手段が前記複数の被駆動体の所定の第2非操作状態を検出すると、エンジン回転数をアイドル回転数に設定するオートアイドル制御手段を更に備え、
前記昇温手段は、オートアイドル制御を無効とし、エンジン回転数を維持する
ことを特徴とする排気ガス浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−140877(P2012−140877A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292885(P2010−292885)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】