説明

接合型電界効果トランジスタ

【課題】 従来のJ−FETでは、動作領域内のゲート領域(トップゲート領域)は、動作領域外周に設けられた深いゲート領域を介してのみ、半導体基板(バックゲート領域)と接続していた。このため動作領域の中央と外周ではゲート抵抗にばらつきが生じ、ゲート抵抗の増加によるノイズ電圧の増加や、不均一動作によるゲインの低下が問題であった。
【解決手段】 格子状のゲート領域(トップゲート領域)を有するJ−FETにおいて、行列状にソース領域と交互に配置されていたドレイン領域の一部を深いゲート領域に置き換え、動作領域内にも深いゲート領域を設ける。ドレイン領域を一部省くことで生じるドレイン電流の流れない無効領域をできる限り減らすため、ソース領域が配置されるセルについてドレイン電流が流れない方向のゲート領域を短くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合型電界効果トランジスタに関し、特にノイズを抑制し、ゲインを向上させた接合型電界効果トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来の接合型電界効果トランジスタ(Junction FET(Field Effect Transistor):以下J−FET)の一例を示す図である。
【0003】
図6はJ−FET200の主要部を示す図であり、図6(A)が平面図、図6(B)が図6(A)のc−c線断面図である。J−FET200は、半導体チップを構成するp+型半導体基板221上にp型半導体層222を積層し、その上にn型半導体層224を設ける。n型半導体層224はp型半導体層222に達する深いp+型不純物領域223によって、動作領域250して区画され、動作領域250のn型半導体層224は動作ドレイン電流が流れるチャネル領域として機能する。
【0004】
動作領域250において、ゲート領域227は、格子状パターンに設けられる。そして、ゲート領域227で囲まれたn型半導体層224に、互いに離間した島状のソース領域225、ドレイン領域226を配置する。ソース領域225およびドレイン領域226は、行列状に交互に配置される。また、n型半導体層224表面には、ソース電極229およびドレイン電極230をそれぞれゲート領域227に対して傾斜させて配置する。格子状のゲート領域227は、その周囲のp+型不純物領域223と、p型半導体層222、p+型半導体基板221を介して裏面のゲート電極231と接続する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−32927号公報 (第10頁 第6図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6に示す従来構造において、格子状のゲート領域227は、その周囲に設けた深いp+型不純物領域223を介して、バックゲート領域となるp型半導体層222、p+型半導体基板221と接続し、ゲート電位が印加される。したがって、p+型不純物領域223で区画された動作領域250では、p+型不純物領域223から遠い(動作領域250の中央付近の)ゲート領域227が、p+型不純物領域223に近い(動作領域250の外周付近の)ゲート領域227と比較して、ゲート抵抗が高くなってしまう。
【0007】
そして、このようなゲート抵抗の増加は、ノイズ電圧の増加を招く問題があった。また、J−FETの不均一動作によって順伝達アドミタンスgmの低減および電圧利得の低減を引き起こす問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる課題に鑑みてなされ、一導電型半導体層と、前記一導電型半導体層上に設けた逆導電型半導体領域と、前記逆導電型半導体領域の表面を複数のセルに区画すると共に、前記逆導電型半導体領域の表面から前記一導電型半導体層には達しない、一導電型の第1ゲート領域と、前記第1ゲート領域に重複して、前記逆導電型半導体領域表面から前記一導電型半導体層にまで達する第2ゲート領域と、前記逆導電型半導体領域の周囲を囲んでこれを区画し、前記第1ゲート領域と連結し且つ前記第2ゲートとは離間して、前記一導電型半導体層にまで達する深さの第3ゲート領域と、を設けることにより解決するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、以下の効果が得られる、
第1に、格子状のゲート領域(第1ゲート領域)と接続し、バックゲート領域を構成する逆導電型半導体層に到達する深いゲート領域(第2ゲート領域)を動作領域内に複数設けるので、動作領域の中央付近においても第1ゲート領域を直接的にバックゲート領域に接続できる。これにより、J−FET全体として、ゲート抵抗の低減によるノイズ電圧の低減が図れる。また、動作領域の外周付近と中央付近の第1ゲート領域においてゲート抵抗のばらつきを低減でき、不均一動作を抑制できるので、順伝達アドミタンスgmの低減および電圧利得の低減を回避できる。
【0010】
第2ゲート領域は、従来、行列状に配置されていたソース領域とドレイン領域のうち、ドレイン領域の数を減じて設ける。つまり、第1ゲート領域で第1セル、第2セル、第3セルを区画し、それぞれに第2ゲート領域、ソース領域、ドレイン領域を設けて、第2セルが第1セルと隣り合い、且つ第3セルとも隣り合うように配置する。このため、第1セルと第2セルが隣り合って配置された領域では、第1セルと第2セルの間にドレイン電流が流れず、チャネル領域として機能しない領域(無効領域)が生じてしまう。
【0011】
そこで、第2セルは平面視において、第1セルと隣り合う第1の辺が短く、第3セルと隣り合う第2の辺が長いパターンとする。これにより、無効領域の大幅な増加を抑制できる。
【0012】
第2に、第2ゲート領域は、第1ゲート領域より不純物濃度が高いため、動作領域の中央付近のゲート抵抗の低減に寄与できる。
【0013】
第3に、第2セルと第3セルの間で、ソース領域の一辺から第1ゲート領域までの距離を、ドレイン領域の一辺から当該第1ゲート領域までの距離より小さくすることにより、第2セルの面積を小さくし、第3セルの動作領域全体としての面積低減を抑えることができる。
【0014】
J−FETではゲート−ドレイン間に最も高い電圧が印加されるため、第1ゲート領域とドレイン領域間の距離を所望の耐圧を確保できる距離に維持すれば、第1ゲート領域とソース領域間の距離はそれより低減することができる。従って、従来、ドレイン領域側と同等であった、第1ゲート領域とソース領域間の距離を縮小することで、第2セルの面積を低減できる。そして第2セルの面積を低減した分を第3セルの配置領域として確保できるため、第2ゲート領域(第1セル)を配置することによる第3セルの動作領域全体としての大幅な面積低減を抑制できる。
【0015】
第4に、動作領域上の電極構造を2層構造とし、1層目のドレイン電極(第1ドレイン電極)をドレイン領域上に島状に配置し、パッド電極となる2層目のドレイン電極(第2ドレイン電極)を第1ドレイン電極直上に平板状に配置することで、最短距離でドレイン領域にドレイン電圧を印加できる。これによりドレインの配線抵抗を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態のJ−FETを示す平面図である。
【図2】本発明の実施形態のJ−FETを示す平面図である。
【図3】本発明の実施形態のJ−FETを示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態のJ−FETを説明するための平面概要図である。
【図5】本発明の他の実施形態のJ−FETを示す平面図である。
【図6】従来技術を説明するための(A)平面図、(B)断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態について、n型接合型電界効果トランジスタ(J−FET)を例に、図1から図5を参照して説明する。
【0018】
図1は、第1の実施形態のJ−FET100を示す平面図である。図1(A)がJ−FET100の主要部を示す平面図であり、図1(B)が図1(A)の一部拡大図であり、いずれも表面の電極層を省略している。
【0019】
本実施形態のJ−FET100は、p型シリコン半導体基板と、p型半導体層と、n型半導体領域3と、第1ゲート領域4と、第2ゲート領域5と、第3ゲート領域6と、ソース領域7と、ドレイン領域8と、第1セル11と、第2セル12と、第3セル13とを有する。
【0020】
図1(A)を参照して、p型シリコン半導体基板(ここでは不図示)はその上に設けられたp型半導体層(不図示)とともに、J−FET100のバックゲート領域となり、更にp型半導体層上にn型半導体領域3が設けられる。
【0021】
n型半導体領域3は、p型半導体層上に形成されたn型エピタキシャル層、またはp型半導体層上に選択的にn型不純物を注入及び拡散したn型不純物拡散領域である。n型半導体層3の表面にp+型不純物領域である第1ゲート領域4と第2ゲート領域5が設けられる。第2ゲート領域5は第1ゲート領域4より不純物濃度が高い。
【0022】
また、第1ゲート領域4間に露出したn型半導体層3の表面にそれぞれn+型不純物領域であるソース領域7およびドレイン領域8が設けられる。第1ゲート領域4、第2ゲート領域5、ソース領域7およびドレイン領域8の外周を囲むようにn型半導体層3の周辺部に環状にp+型不純物領域の第3ゲート領域6が設けられる。第2ゲート領域5と第3ゲート領域6は不純物濃度が同等である。
【0023】
第1ゲート領域4は、第3ゲート領域6内のn型半導体領域3に格子状に配置される。第1ゲート領域4によって、n型半導体領域3が第1セル11、第2セル12、第3セル13として区画される。
【0024】
このように、本実施形態の格子状の第1ゲート領域4とは、互いに平行に配置されたストライプ状のp+型不純物領域が異なる方向(X方向とY方向)に延在し、互いに交差することで第1セル11、第2セル12、第3セル13を区画するものである。ここでは、X方向に延在し互いに平行な複数の第1ゲート領域4と、Y方向に延在し互いに平行な複数の第1ゲート領域4とが直交するように配置され、第1セル11、第2セル12および第3セル13はそれぞれ、矩形のパターンで示されている。
【0025】
第1セル11では、内側の略中央付近に第1ゲート領域4と電気的に接続する島状の第2ゲート領域5が配置される。第1セル11内側のn型半導体領域3表面には、第1ゲート領域4と連続し、これと同等の不純物濃度のp+型不純物領域4cが設けられる。つまり、第1セル11は、周囲の第1ゲート領域4が内側全面まで拡張された構成といえる。第2ゲート領域5は、p+型不純物領域4cと重畳し、これにより第1ゲート領域4と電気的に接続する。
【0026】
第2セル12では、内側に第1ゲート領域4と離間して島状にソース領域7が配置される。第2セル12は第1の辺E1と第2の辺E2を有し、第2の辺E2は第1の辺E1より長さが長く、第2の辺E2は例えば、第1の辺E1の2倍の長さである。第2セル12は、図1(A)では長方形状である。そして第2セル12は、第1の辺E1が第1セル11と隣り合い、第2の辺E2が第3セル13と隣り合うように配置される。
【0027】
第3セル13では、内側に第1ゲート領域4と離間して島状にドレイン領域8が配置される。第3セル13は、対向する2辺がいずれも第2セル12の第2の辺E2と同じ長さであり、図1(A)では正方形状である。第1セル11は、対向する2辺がいずれも第1の辺E1と同じ長さであり、図1(A)では正方形状である。第1セル11と第3セル13はそれぞれ、行列状に配置される。また、第1セル11の第2ゲート領域5と第3セル13のドレイン領域8は、例えばいずれも正方形状であり、ソース領域7は第2セル12と同様の長方形状である。
【0028】
本実施形態では、第1セル11、第2セル12および第3セル13と第1ゲート領域4が配置される領域を一括して、動作領域50と称する。動作領域50は、図1においては最外周の第3ゲート領域6から内側の全域とする。
【0029】
図1(B)を参照して、隣り合う第2セル12と第3セル13において、ソース領域7の一辺(ここでは長辺e2)から対向する第1ゲート領域4までの距離L1は、ドレイン領域8の一辺から対向する第1ゲート領域4までの距離L2より小さい。ソース領域7は長方形状であり、第1の辺E1側では、ソース領域7の短辺e1と第1ゲート領域4が距離L3で離間される。本実施形態では一例として、距離L2は距離L3と同等である。
【0030】
尚、ソース領域7は、四辺が短辺e1の長さの正方形状でもよい。その場合、ソース領域7の短辺e1から第1セル11側の第1ゲート領域4までの距離は、図示の距離L3より大きくなるが、第3セル13側ではソース領域7の長辺e2から第1ゲート領域4までの距離L1が、ドレイン領域8から第1ゲート領域4までの距離L2より小さい点は同様である。
【0031】
ドレイン領域8に正の電圧が印加されると、電子は動作領域50のn型半導体領域3内をソース領域7からドレイン領域8に向かって流れる。つまり、本実施形態では第2セル12と第3セル13が並ぶ領域ではこの並びに沿ってn型半導体領域3にドレイン電流が流れる。一方、第1セル11と第2セル12が並ぶ領域ではこの並びに沿うn型半導体領域3にドレイン電流が流れない。つまり、本実施形態では第2セル12と第3セル13が隣り合って配置される部分の第1ゲート領域4下方のn型半導体領域3が、チャネル領域として機能する。
【0032】
図2を参照して、J−FET100の電極層について説明する。電極層は2層構造であり、図2(A)は1層目の電極層を示す平面図であり、図2(B)は、2層目の電極層を示す平面図である。尚図2(B)においては、1層目の電極層を破線で示した。
【0033】
ソース領域7およびドレイン領域8に接続する電極層は2層構造を有し、1層目の電極層は第1ソース電極21および第1ドレイン電極22を構成し、2層目の電極層は第2ソース電極31および第2ドレイン電極32を構成する。
【0034】
図2(A)を参照して、第1ソース電極21は格子状に設けられ、動作領域50のソース領域7とコンタクトする。すなわち、第1セル11および第2セル12の上を覆い、第3セル13および、第3セル13周囲の第1ゲート領域4が露出するパターンを有する。第1ソース電極21は、第3ゲート領域6上も覆う。
【0035】
第1ドレイン電極22は、第3セル13の直上にこれと同程度の面積および同様の形状で設けられ、ドレイン領域8とコンタクトする。第1ドレイン電極22は島状で第1ソース電極21と離間してこれらの間に配置される。
【0036】
図2(B)を参照して、第2ソース電極31は、配線部31wとパッド部31pを有する。配線部31wは第1ソース電極21の周辺部においてこれとコンタクトして、第1ソース電極21の外側まで延在し、パッド部31pに接続する。パッド部31pは、チップを構成する半導体基板(p+型シリコン半導体基板1とp型半導体層2)上に設けられた絶縁膜の上に配置される。パッド部31pには例えば金属細線などが熱圧着され、ソース電圧が印加される。
【0037】
第2ドレイン電極32は、全ての第1ドレイン電極22上を覆ってこれとコンタクトし、例えば矩形又は円形の一つの平板状に設けられる。第2ドレイン電極32には例えば金属細線などが熱圧着され、ドレイン電圧が印加される。
【0038】
図3は、J−FET100の断面構造を示す図であり、図3(A)が図2(B)のa−a線断面図であり、図3(B)が図2(B)のb−b線断面図である。
【0039】
J−FET100のチップを構成する半導体基板はp+型シリコン半導体基板1にp型半導体層2を積層してなり、バックゲート領域BGを構成する。p型半導体層2の表面にはn型半導体領域3が設けられる。
【0040】
n型半導体領域3は、半導体基板の外周にp型半導体層2まで達する深さに設けられたた第3ゲート領域6によって、一つの動作領域50として区画され、その一部がチャネル領域9を構成する。
【0041】
図3(A)に示す断面において、n型半導体領域3表面には、ソース領域7およびドレイン領域8が交互に配置され、これらの間に第1ゲート領域4が配置される。ソース領域7、ドレイン領域8および第1ゲート領域4は例えば同等の深さに設けられ、ここではいずれもp型半導体層2には達しない。第1ゲート領域4は最外周で第3ゲート領域3と一部重畳し、これと電気的に接続する。
【0042】
この断面においてn型半導体領域3は、ソース領域7からドレイン領域8に向かう電流の経路となり、チャネル領域9として機能する。
【0043】
ソース領域7とドレイン領域8はそれぞれ島状で等間隔で離間して配置されるが、第1ゲート領域4とドレイン領域8間の距離L2は、第1ゲート領域4とソース領域7間の距離L1より大きい。
【0044】
J−FET100の一般的な使用方法では、第1ゲート領域4とドレイン領域8間に、最も高い電圧が印加される。つまり、第1ゲート領域4からドレイン領域8方向に広がる空乏層幅は、第1ゲート領域4からソース領域7方向に広がる空乏層幅より広くなる。このため、第1ゲート領域4とドレイン領域8間の距離L2について所望の耐圧が確保できる値を維持すれば、第1ゲート領域4とソース領域7間の距離L1はそれより小さくできる。
【0045】
n型半導体領域3の表面は第1の絶縁膜(例えば酸化膜)41で覆われ、第1の絶縁膜41のソース領域7及びドレイン領域8のそれぞれの中央付近に相当する箇所にはコンタクトホールCHが設けられる。第1の絶縁膜41上には1層目の電極層である第1ソース電極21および第1ドレイン電極22が設けられる。
【0046】
第1ソース電極21は全てのソース領域7上に連続して延在する。すなわち平面視において格子状に設けられ(図2(A)参照)、コンタクトホールCHを介してソース領域7とコンタクトする。第1ドレイン電極22は、それぞれのドレイン領域8と重畳するようにこれらの上に独立した島状に設けられ、コンタクトホールCHを介してドレイン領域8とコンタクトする。
【0047】
第1ソース電極21および第1ドレイン電極22上を覆って、第2の絶縁膜(例えば酸化膜)42が設けられ、第1ドレイン電極22の中央付近に相当する箇所の第2の絶縁膜42にスルーホールTHが設けられる。
【0048】
全ての第1ドレイン電極22を覆って1つの平板状の第2ドレイン電極32が設けられ、スルーホールTHを介して第1ドレイン電極22とコンタクトする。
【0049】
第2ドレイン電極32には例えば金属細線などが熱圧着され、ドレイン電圧が印加される。本実施形態ではドレイン領域8の直上に第1ドレイン電極22および第2ドレイン電極32が配置され、ドレイン電圧は最短距離でドレイン領域8に印加できるため、ドレインの配線抵抗の低減に寄与できる。
【0050】
図3(B)を参照して、この断面において、n型半導体領域3表面には、第1ゲート領域4、p+型不純物領域4c、第2ゲート領域5およびソース領域7が設けられる。p+型不純物領域4cは、第1ゲート領域4と連続してこれと同等の深さに設けられる。島状の第2ゲート領域5は、それぞれ所定の間隔で離間してp型半導体層2に達する深さに設けられる。第1ゲート領域4はp+型不純物領域4cを介して第2ゲート領域5と電気的に接続する。また、第1ゲート領域4は最外周で第3ゲート領域3と一部重畳し、これとも電気的に接続する。
【0051】
図3(B)に示す断面においてはドレイン領域が配置されず、n型半導体領域3は半導体基板の主面に水平な方向(図3(B)の左右方向)に電流が流れない。またこの断面に限らず、第1セル11と第2セル12が並ぶ領域では、ドレイン領域が配置されないため(図1参照)、第1セル11と第2セル12が並ぶ領域のn型半導体領域3はチャネル領域として機能しない。
【0052】
第1の絶縁膜41のソース領域7の中央付近に相当する箇所にはコンタクトホールCHが設けられる。第1の絶縁膜41上には第1ソース電極21が設けられる。第1ソース電極21上を覆って第2の絶縁膜42が設けられ、第2の絶縁膜42上に第2ドレイン電極32が配置される。第2の絶縁膜42は、動作領域50外にも延在し、第1ソース電極21の周辺部に相当する領域に、スルーホールTHが設けられる。第2ソース電極31の配線部31wは第1ソース領域21の周辺部に設けられ、スルーホールTHを介して第1ソース電極21とコンタクトする。配線部31wは第1ソース電極21(動作領域50)の外側まで延在し、第1の絶縁膜41および第2の絶縁膜42上に設けられたパッド部31pと接続する(図2(A)参照)。
【0053】
ゲート電極23は、p+型シリコン半導体基板1の裏面に設けられる。ゲート電極23に印加されたゲート電圧は、p+型シリコン半導体基板1、p型半導体層2、第3ゲート領域6および第2ゲート領域5を介して、第1ゲート領域4に印加される。
【0054】
本実施形態では、動作領域50内に、第1ゲート領域4と接続し、バックゲート領域BGとなるp型半導体層2に達する第2ゲート領域5を複数設ける。動作領域50内に抵抗の低い第2ゲート領域5を配置して第1ゲート領域4と接続することにより、動作領域50の中央付近のゲート抵抗を低減することができる。
【0055】
図4を参照して、本実施形態のパターンについて更に説明する。図4(A)は、第2ゲート領域5を配置する場合の他のパターンを示す平面図であり、図4(B)は図1に示す本実施形態のパターンを示す平面図であり、いずれも主要部について概要で示す。
【0056】
本実施形態では従来構造におけるドレイン領域126を一部減じて、その領域に第2ゲート領域5配置する。
【0057】
具体的には、図4(A)の如く、矩形の第1セル11’(第2ゲート領域5’が配置されるセルG)および第3セル13’(ドレイン領域8’が配置されるセルD)の、それぞれの4辺に沿って、第2セル12’(ソース領域7’が配置されるセルS)を配置する。これにより、第1セル11’と第2セル12’が交互に配置され、且つ第2セル12’と第3セル13’が交互に配置される。
【0058】
ここで、既述の如く、第1セル11’と第2セル12’が隣り合う破線の領域では、ドレイン電流が流れず、これらが並ぶ領域のn型半導体領域3は、チャネル領域として機能しない無効領域となる。無効領域は小さいほうが望ましいが、一方で、ドレイン電流が流れる第2セル12’と第3セル13’が隣り合う一点鎖線の領域は、可能な限り確保する必要がある。
【0059】
そこで、第2セル12’(第1セル11’)の第1の辺E1’の長さを縮小し、図4(B)に示す本実施形態の構成とした。矩形の第1セル11(セルG)および第3セル13(セルD)の、それぞれの4辺に沿って第2セル12(セルS)を配置する構成は図4(A)と同様であるが、第2セル12は第1セル11と隣り合う第1の辺E1が短く、第3セル13と隣り合う第2の辺E2が第1の辺E1より長いパターンとなる。これにより、動作領域50内に第2ゲート領域5を複数配置する構成であっても、ドレイン電流が流れない無効領域を少なくすることができる。
【0060】
図4(B)の如く第1の辺E1の長さを縮小することにより、第2ゲート領域5(第1セル11)の面積も小さくなる。しかし、第2ゲート領域5からバックゲート領域に至る、半導体基板の主面に対して垂直方向(厚み方向)の抵抗は、従来構造においてゲート領域127を半導体基板の主面に水平方向に電流が流れるときの抵抗より小さくできる。
【0061】
更に、ゲート−ソース間に印加される電圧は、ゲート−ドレイン間に印加される電圧より低いことから、隣り合う第2セル12と第3セル13において、第1ゲート領域4とソース領域7間の距離L1は、第1ゲート領域4とドレイン領域8間の距離L2より小さくできる。従って、第1ゲート領域4とソース領域7間の距離L1を可能な限り小さくして、第2セル12の面積を小さくすることにより、第3セル13を配置する領域を確保している。
【0062】
第2ゲート領域5はドレイン領域8を減じて配置し、ソース領域7(第2セル12)の数は減じないため、静電気放電(ESD:Electrostatic Discharge)破壊対策に有利である。第2セル12の面積が小さくても、分散して第3セル13よりも多く配置することにより、静電破壊耐量の向上が期待できる。
【0063】
尚、ドレイン領域8の面積は、ゲート−ドレイン間の耐圧を考慮して適宜選択される。
【0064】
また、本実施形態ではソース領域7が長方形の場合を例に示したが、四辺が短辺e1と同等の長さの正方形状であってもよい。
【0065】
図5の平面図を参照して本発明の他の実施形態について説明する。図5は、電極層を省略したJ−FET100の動作領域50を示す平面図である。
【0066】
第1セル11、第2セル12、第3セル13の形状はそれぞれ、例えば八角形状であってもよい。その場合格子状の第1ゲート領域4は、X方向とY方向の交差点が十字状ではなく、十字状に交差する場合より面積が大きい四角形状の節を有するが、本実施形態の格子状の第1ゲート電極4とは、異なる方向(X方向とY方向)に延在し、互いに交差することで第1セル11、第2セル12、第3セル13を区画するパターンであればよい。
【0067】
また、ソース領域7、ドレイン領域8および第2ゲート領域5も各セルに合わせた八角形状としてもよい。これ以外の構成は、図1と同様であるので、説明は省略する。
【0068】
この場合であっても、ドレイン電流の流れない無効領域をできる限り減らすため、第2セル12において第1セル11と隣り合う第1の辺E1を、第3セル13と隣り合う第2の辺E2より短くする。
【0069】
以上、本実施形態では、J−FET100の1つのチップにおいて、1つの動作領域50を設ける場合を例に説明したが、n型半導体領域3が、第3ゲート領域6によって複数個に分割され、動作領域50が複数設けられるものであってもよい。
【0070】
更に、導電型を逆にした、p型J−FETであっても同様に実施ができる。
【符号の説明】
【0071】
1 p+シリコン半導体基板
2 p型半導体層
3 n型半導体領域
4 第1ゲート領域
5 第2ゲート領域
6 第3ゲート領域
7 ソース領域
8 ドレイン領域
9 チャネル領域
11 第1セル
12 第2セル
13 第3セル
21 第1ソース電極
22 第1ドレイン電極
23 ゲート電極
31 第2ソース電極
32 第2ドレイン電極
100 J−FET

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一導電型半導体層と、
前記一導電型半導体層上に設けた逆導電型半導体領域と、
前記逆導電型半導体領域の表面を複数のセルに区画すると共に、前記逆導電型半導体領域の表面から前記一導電型半導体層には達しない、一導電型の第1ゲート領域と、
前記第1ゲート領域に重複して、前記逆導電型半導体領域表面から前記一導電型半導体層にまで達する第2ゲート領域と、
前記逆導電型半導体領域の周囲を囲んでこれを区画し、前記第1ゲート領域と連結し且つ前記第2ゲートとは離間して、前記一導電型半導体層にまで達する深さの第3ゲート領域と、を設けたことを特徴とする接合型電界効果トランジスタ。
【請求項2】
前記第1ゲート領域は、前記逆導電型半導体領域に格子状に設けられて第1セル、第2セルおよび第3セルを区画し、
前記第1セルは、内側に前記第2ゲート領域が配置され、
前記第2セルは、内側に島状の逆導電型のソース領域が配置され、
前記第3セルは、内側に島状の逆導電型のドレイン領域が配置され、
前記第2セルは第1の辺と該第1の辺より長い第2の辺を有し、前記第1の辺が前記第1セルと隣り合い、前記第2の辺が前記第3セルと隣り合うことを特徴とする請求項1に記載の接合型電界効果ランジスタ。
【請求項3】
前記第1セルおよび前記第3セルはそれぞれ行列状に配置されることを特徴とする請求項2に記載の接合型電界効果トランジスタ。
【請求項4】
前記第2ゲート領域は前記第1ゲート領域より不純物濃度が高いことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の接合型電界効果トランジスタ。
【請求項5】
前記第1セルは内側の全面に一導電型不純物領域が配置されることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の接合型電界効果トランジスタ。
【請求項6】
前記ソース領域の一辺から前記第3セル側で対向する前記第1ゲート領域までの距離は、前記ドレイン領域の一辺から該第1ゲート領域までの距離より小さいことを特徴とする請求項2から請求項5のいずれかに記載の接合型電界効果トランジスタ。
【請求項7】
前記ソース領域とコンタクトする格子状の第1ソース電極と、前記ドレイン領域とコンタクトする第1ドレイン電極とを有することを特徴とする請求項2から請求項6のいずれかに記載の接合型電界効果トランジスタ。
【請求項8】
前記第1ドレイン電極とコンタクトし、前記第1ドレイン電極上に設けられた平板状の第2ドレイン電極と、前記第1ソース電極とコンタクトし、該第1ソース電極の外側に設けられた第2ソース電極と、を具備することを特徴とする請求項7に記載の接合型電界効果トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−19123(P2012−19123A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156469(P2010−156469)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(311003743)オンセミコンダクター・トレーディング・リミテッド (166)
【Fターム(参考)】