説明

接着樹脂組成物、カバーレイ、金属張積層板及びフレキシブルプリント配線板

【課題】吸湿後の半田耐熱性に優れる接着樹脂組成物、カバーレイ、金属張積層板およびフレキシブルプリント配線板を提供すること。
【解決手段】(1)エポキシ樹脂と、硬化剤と、熱可塑性樹脂と、金属水酸化物とを含み、前記エポキシ樹脂が、トリアジン骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも20質量%の割合で含むこと、(2)前記金属水酸化物の含有率が1〜20質量%であることを特徴とする接着樹脂組成物。(3)絶縁フィルム5と、前記絶縁フィルム上に設けられる接着剤層14とを備え、前記接着剤層が、(1)又は(2)の接着樹脂組成物で構成されていることを特徴とするカバーレイ10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着樹脂組成物、カバーレイ、金属張積層板及びフレキシブルプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板(FPC:Flexible Printed Circuit)は、屈曲性に優れるため、その優れた屈曲性能を生かして、ハードディスクドライブのヘッド部分における回路基板や、携帯電話に内蔵される回路基板としてよく用いられている。
【0003】
フレキシブルプリント配線板は一般に、金属張積層板とカバーレイとを熱圧着することによって得ることができる。ここで、金属張積層板は、ポリイミドなどからなるべースフィルム上に銅などからなる金属層を設けてなるものであり、カバーレイは、ポリイミドなどからなる絶縁フィルム上に接着剤層を設けてなるものである。なお、金属張積層板には、金属箔とベースフィルムとの間に接着剤層が介在されることがある。
【0004】
このように接着剤層は、フレキシブルプリント配線板の製造には不可欠の要素となっている。
【0005】
このような接着剤層に用いられる接着樹脂組成物としては、リン原子を骨格中に有するエポキシ樹脂100質量部に、トリアジン骨格を有するフェノールノボラック樹脂を20質量部以上、40質量部以下、カルボキシ化ゴムを40質量部以上、80質量部以下、金属水和物を40質量部以上、100質量部以下添加してなるエポキシ系接着剤が知られている(下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−277711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した特許文献1記載の接着樹脂組成物は吸湿しやすい。このため、半田を溶融するための加熱時に膨れや剥がれを生じにくくする必要があり、吸湿後の半田耐熱性の点で改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、吸湿後の半田耐熱性に優れる接着樹脂組成物、カバーレイ、金属張積層板およびフレキシブルプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その結果、意外なことに、特開2008−24805号公報に記載のエポキシ系接着剤に硬化剤として含まれるフェノールノボラック樹脂中に導入していたトリアジン骨格をエポキシ樹脂中に導入し、このエポキシ樹脂を、エポキシ樹脂中に特定の割合で含有させることによって、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、熱可塑性樹脂と、金属水酸化物とを含み、前記エポキシ樹脂が、トリアジン骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも20質量%の割合で含むことを特徴とする接着樹脂組成物である。
【0010】
この接着樹脂組成物は、吸湿後の半田耐熱性に優れる。このため、フレキシブルプリント配線板の製造に上記接着樹脂組成物が使用されると、半田を溶融するために加熱されても、そのフレキシブルプリント配線板において膨れや剥がれが発生することを十分に抑制することができる。
【0011】
上記接着樹脂組成物において、前記金属水酸化物の含有率が1〜20質量%であることが好ましい。
【0012】
この接着樹脂組成物は、カバーレイに使用される絶縁フィルム、金属張積層板に使用されるベースフィルムや金属層のみならず、ステンレスに対しても優れた接着性を有する。このため、本発明の接着樹脂組成物は、カバーレイや金属張積層板に使用する接着剤にはもちろん、ステンレスからなる補強材を金属張積層板に貼り付けるための接着剤としても有用であり、高い汎用性を有することとなる。
【0013】
また本発明は、絶縁フィルムと、前記絶縁フィルム上に設けられる接着剤層とを備え、前記接着剤層が、上記の接着樹脂組成物で構成されていることを特徴とするカバーレイである。
【0014】
このカバーレイによれば、接着剤層が、吸湿後の半田耐熱性に優れる接着樹脂組成物で構成されるため、フレキシブルプリント配線板のカバーレイとして有用である。
【0015】
さらに本発明は、ベースフィルムと、前記ベースフィルムの一面側に設けられる金属層と、前記ベースフィルムと前記金属層との間に設けられる接着剤層とを備え、前記接着剤層が、上記の接着樹脂組成物で構成されていることを特徴とする金属張積層板である。
【0016】
この金属張積層板によれば、接着剤層が、吸湿後の半田耐熱性に優れる接着樹脂組成物で構成されるため、フレキシブルプリント配線板の金属張積層板として有用である。
【0017】
さらにまた本発明は、上記のカバーレイと、ベースフィルムの一面側に金属層を設けてなる金属張積層板とを、前記カバーレイの前記接着剤層と前記金属張積層板の前記金属層とを対向させた状態で熱圧着してなることを特徴とするフレキシブルプリント配線板である。
【0018】
このフレキシブルプリント配線板によれば、カバーレイの接着剤層が、吸湿後の半田耐熱性に優れる接着樹脂組成物で構成されるため、半田を溶融するために加熱されても、膨れや剥がれが発生することを十分に抑制することができる。
【0019】
また本発明は、補強材と、ベースフィルムの一面側に金属層を設けてなる金属張積層板と、上記のカバーレイとを、前記カバーレイの前記接着剤層と、前記金属張積層板の前記金属層とを対向させた状態で且つ前記補強材と前記金属張積層板との間に接着剤シートを介在させた状態で熱圧着してなり、前記接着剤シートが上記の接着剤組成物で構成されていることを特徴とするフレキシブルプリント配線板である。
【0020】
このフレキシブルプリント配線板によれば、カバーレイの接着剤層及び接着剤シートが、吸湿後の半田耐熱性に優れる接着樹脂組成物で構成されるため、半田を溶融するために加熱されても、膨れや剥がれが発生することを十分に抑制することができる。
【0021】
ここで、補強材がステンレスで構成され、接着樹脂組成物において、金属水酸化物の含有率が1〜20質量%であることが好ましい。この場合、接着樹脂組成物が、金属張積層板に使用される金属層のみならず、ステンレスに対しても優れた接着性を有する。このため、本発明のフレキシブルプリント配線板によれば、補強材の剥離を十分に抑制することができる。
【0022】
上記フレキシブルプリント配線板において、上記金属張積層板が、ベースフィルムと前記金属層との間に接着剤層を備えてもよく、この場合、前記接着剤層が上記の接着樹脂組成物で構成されていることが好ましい。
【0023】
このフレキシブルプリント配線板によれば、カバーレイの接着剤層及び接着剤シートのみならず、金属張積層板の接着剤層も吸湿後の半田耐熱性に優れる接着樹脂組成物で構成されるため、半田を溶融するために加熱されても、膨れや剥がれが発生することを十分に抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、吸湿後の半田耐熱性に優れる接着樹脂組成物、カバーレイ、金属張積層板およびフレキシブルプリント配線板が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、全図中、同一又は同等の構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0026】
図1は、本発明に係るフレキシブルプリント配線板の好適な実施形態を示す断面図である。図1に示すように、フレキシブルプリント配線板100はベースフィルム1を備えている。ベースフィルム1の表面1a上には接着層2が設けられ、接着層2上には回路を形成する金属層3が設けられ、接着層2の上には、金属層3を覆うように接着層4が設けられ、接着層4上には絶縁フィルム5が設けられている。
【0027】
一方、ベースフィルム1の裏面1b上には接着層6を介して補強板7が設けられている。補強板7はステンレス、ポリイミドなどから構成されている。
【0028】
次に、フレキシブルプリント配線板100の製造方法について図2を参照しながら説明する。図2は、図1のフレキシブルプリント配線板の製造に必要な部品を示す断面図である。
【0029】
まず図2に示すように、カバーレイ10と、金属張積層板20と、補強板7と、金属張積層板20及び補強板7同士を貼り合わせるための接着剤シート30とを準備する。
【0030】
カバーレイ10は、絶縁フィルム5上に接着剤層14を設けてなるものであり、接着樹脂組成物を含む接着剤溶液を絶縁フィルム5上に塗布し乾燥することにより得ることができる。絶縁フィルム5としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アラミド樹脂等からなる厚み3μm〜50μm程度のフィルム等を用いることができる。
【0031】
金属張積層板20は、ベースフィルム1上に接着剤層22および金属層3を順次設けてなるものであり、接着樹脂組成物を含む接着剤溶液をベースフィルム1上に塗布し乾燥することにより形成した接着剤層22上に金属層3を貼り付けることによって得ることができる。ベースフィルム1としては、電気絶縁性及び可撓性を有する樹脂フィルムが用いられ、例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン等の樹脂からなるフィルムが挙げられる。金属層3は銅箔等からなる。
【0032】
接着剤シート30も、離型処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルムなどからなる基板上に接着樹脂組成物を含む接着剤溶液をベースフィルム1上に塗布し乾燥した後、基板上から剥離することにより得ることができる。
【0033】
そして、補強板7の上に、接着剤シート30、金属張積層板20、カバーレイ10を順次配置する。このとき、金属張積層板20のベースフィルム1と接着剤シート30とを対向させた状態とし、カバーレイ10の接着剤層14と金属張積層板20の接着剤層22及び金属層3とを対向させた状態とする。
【0034】
そして、補強板7、接着剤シート30、金属張積層板20及びカバーレイ10を熱圧着する。これによりカバーレイ10の接着剤層14は硬化して接着層4となり、金属張積層板20の接着剤層22は硬化して接着層2となり、接着剤シート30は硬化して接着層6となる。こうしてフレキシブルプリント配線板100が得られる。
【0035】
ここで、カバーレイ10の接着剤層14、金属張積層板20の接着剤層22及び接着剤シート30に使用される接着樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、熱可塑性樹脂と、金属水酸化物とを含有する。
【0036】
そして、接着樹脂組成物中の金属水酸化物の含有率は1〜20質量%であり、エポキシ樹脂は、トリアジン骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも20質量%の割合で含有している。
【0037】
この接着樹脂組成物は、吸湿後の半田耐熱性に優れる。このため、フレキシブルプリント配線板100によれば、半田を溶融するために加熱されても、膨れや剥がれが発生することを十分に抑制することができる。言い換えると、部品実装後も、製品として問題なく使用することができる。
【0038】
また上記接着樹脂組成物では、金属水酸化物の含有率が1〜20質量%となっていることにより、カバーレイ10に使用される絶縁フィルム5、金属張積層板20に使用されるベースフィルム1や金属層3のみならず、ステンレスに対しても優れた接着性を有する。このため、上記接着樹脂組成物は、カバーレイ10や金属張積層板20に使用する接着剤層14,22にはもちろん、補強材7がステンレスからなる場合にその補強材7を金属張積層板20に貼り付けるための接着剤シート30としても有用であり、高い汎用性を有している。従って、接着剤層14,22、接着剤シート30を構成する接着樹脂組成物として、上記の接着樹脂組成物を共通に使用しながらも、補強材7などの剥離を十分に抑制することができる。よって、フレキシブルプリント配線板100は、携帯電話の回路基板やハードディスクドライブのヘッド部分に使用する回路基板として使用した場合、交換や修理の頻度を減らすことができ、フレキシブルプリント配線板として有用である。
【0039】
なお、上記製造方法では、補強板7、接着剤シート30、金属張積層板20及びカバーレイ10を重ね合わせて一括して接着剤層14,22及び接着剤シート30を硬化させているが、フレキシブルプリント基板100を得るためには、接着剤層14,22及び接着剤シート30を必ずしも一括して硬化させる必要はない。例えば補強板7、接着剤シート30及び金属張積層板20を重ね合わせ、接着剤層22及び接着剤シート30を硬化させ、積層体を得た後、この積層体と、カバーレイ10とを重ね合わせ、接着剤層14を硬化させてもフレキシブルプリント配線板100を得ることができる。
【0040】
次に、上記接着樹脂組成物についてさらに詳細に説明する。
【0041】
エポキシ樹脂は、トリアジン骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも20質量%含有するものであればよい。従って、トリアジン骨格を有するエポキシ樹脂を100質量%含有するものであってもよく、トリアジン骨格を有するエポキシ樹脂と、トリアジン骨格を有しないエポキシ樹脂との混合物であってもよい。接着樹脂組成物中の全エポキシ樹脂のうちトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂の含有率はポリイミドに対する接着強度が低下するという理由から、20〜70質量%であることが好ましく、20〜50質量%であることがより好ましい。
【0042】
なお、エポキシ樹脂中におけるトリアジン骨格を有するエポキシ樹脂の割合が20質量%未満になると、吸湿後の半田耐熱性が悪くなり、フレキシブルプリント配線板100において膨れや剥がれが発生する。
【0043】
トリアジン骨格を有するエポキシ樹脂としては、例えば1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオンなどが挙げられる。
【0044】
トリアジン骨格を有しないエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、アクリル酸変性エポキシ樹脂(エポキシアクリレート)などであってトリアジン骨格を有しないものが挙げられる。
【0045】
硬化剤は、上記のエポキシ樹脂を硬化させることが可能な材料であればよく、このような硬化剤としては、例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、4,4´−ジアミノジフェニルスルフォンなどが挙げられる。
【0046】
熱可塑性樹脂は、エポキシ樹脂に柔軟性を付与するものであればよく、このような熱可塑性樹脂としては、カルボキシ化アクリロニトリルブタジエンゴム(カルボキシ化NBR)、カルボキシ化エチレンアクリルゴムなどが用いられる。エポキシ樹脂に対する熱可塑性樹脂の添加量は特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂100質量部に対して、10〜300質量部であることが好ましく、50〜250質量部であることがより好ましい。
【0047】
金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどが挙げられる。金属水酸化物の含有率は、上記の通り1〜20質量%であることが好ましいが、金属水酸物の含有率は接着強度への影響という理由から、好ましくは3〜20質量%であり、より好ましくは5〜15質量%である。
【0048】
また、本発明のエポキシ系接着剤は、必要に応じて、添加剤等を含有してもよい。添加剤としては、例えば、シリカ、マイカ、クレー、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、シランカップリング剤、イミダゾール等が挙げられる。
【0049】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、フレキシブルプリント配線板100は、補強板7及び接着剤シート30を用いて製造されているが、これらは必ずしも必要なものではなく、省略が可能である。また金属張積層板20に使用される接着剤層22も省略が可能である。
【0050】
さらに、上記実施形態では、接着樹脂組成物が1〜20質量%の金属水酸化物を含んでいるが、吸湿後の半田耐熱性を向上させるという観点からは、金属水酸化物の含有率は上記範囲に限定されるものではなく、上記範囲を外れてもよい。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の内容を、実施例及び比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
以下のようにして接着樹脂組成物を調製した。
【0053】
即ち、エポキシ樹脂A、エポキシ樹脂B、トリアジン骨格を有するエポキシ樹脂、硬化剤A、硬化剤B、硬化剤C、熱可塑性樹脂A、熱可塑性樹脂B、熱可塑性樹脂C、金属水酸化物Aおよび金属水酸化物Bを表1に示す配合でメチルエチルケトンなどの有機溶媒に溶解、分散させて、固形分(エポキシ樹脂A、エポキシ樹脂B、トリアジン骨格を有するエポキシ樹脂、硬化剤A、硬化剤B、硬化剤C、熱可塑性樹脂A、熱可塑性樹脂B、熱可塑性樹脂C、金属水酸化物Aおよび金属水酸化物B)の濃度が20質量%の接着剤溶液を調製した。
【0054】
[接着性評価]
(1)ステンレス(SUS)に対する接着性評価
上記のようにして得られた接着剤溶液を、厚さ25μmのポリイミドフィルム(東レデュポン社製、商品名:カプトン100H)に乾燥後の厚みが10μmとなるように塗布し、さらに120℃にて5分間乾燥して、ポリイミドフィルム上に接着剤層を形成した。その後、接着剤層上に厚さ18μmの圧延銅箔を貼り合わせて片面板(CCL)を得た。
【0055】
一方、上記のようにして得られた接着剤溶液を用いて、厚さ25μmの接着剤シートを作製した。そして、この接着剤シートを、上記のようにして得られたCCLのポリイミドフィルムと、厚さ100μmのステンレス板との間に挟み、170℃、圧力40kg/cmにて40分間プレスし、評価用サンプル板Aを得た。
【0056】
こうして得られた評価用サンプル板Aから、PI引き、90度剥離強度、即ちCCL及びステンレス間の接着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0057】
(2)ポリイミド(PI)に対する接着性評価
上記のようにして得られた接着剤溶液を用いて、厚さ25μmの接着剤シートを作製した。そして、上記と同様にして得られたCCLのポリイミドフィルムと、厚さ125μmのポリイミドフィルムとによってこの接着剤シートを挟み、170℃、圧力40kg/cmにて40分間プレスし、評価用サンプル板Bを得た。
【0058】
こうして得られた評価用サンプル板Bから、CCL引き、90度剥離強度、即ちCCL及びPI間の接着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0059】
(3)銅(Cu)に対する接着性評価
上記のようにして得られた接着剤溶液を、乾燥後の厚さが25μmとなるように、厚さ25μmのポリイミドフィルムに塗布し、さらに120℃にて5分間乾燥して、カバーレイ(CL)を作製した。そして、CLと、上記と同様にして得られたCCLとを、CLの接着剤層とCCLの銅箔とを対向させた状態で貼り合わせ、170℃、圧力40kg/cmにて40分間プレスし、評価用サンプル板Cを得た。
【0060】
こうして得られた評価用サンプル板Cから、CCL引き、90度剥離強度、即ちCL及びCu間の接着強度を測定した。結果を表1に示す。
【0061】
[吸湿後半田耐熱性の評価]
上記のようにして得られた接着剤溶液を用いて、厚さ25μmの接着剤シートを作製した。そして、この接着剤シートを、上記のようにして得られたCCLのポリイミドフィルムと、厚さ100μmのステンレス板との間に挟み、170℃、圧力40kg/cmにて40分間プレスした後、得られた積層体を20mm角に切り出し、評価用サンプル板Dを得た。
【0062】
こうして得られた評価用サンプル板Dを40℃、90%RHに保たれた湿熱オーブン中に4日間置いた後、オーブンから取り出し、その直後に260℃のはんだ浴にステンレス板が下側になるようにして60秒間浮かべ、30秒未満で膨れや剥がれが発生するかどうかを評価した。結果を表1に示す。
【0063】
なお、表1〜3中、30秒未満で膨れや剥がれが発生したものについては吸湿後の半田耐熱性が良好でないと評価して「×」と表示し、30秒以上60秒未満で膨れや剥がれが発生したものを良好であると評価して「○」と表示し、膨れや剥がれが発生しなかったものを極めて良好であると評価して「◎」と表示した。

【表1】


【表2】


【表3】

【0064】
なお、表1〜3中、エポキシ樹脂A、エポキシ樹脂B、トリアジン骨格を有するエポキシ樹脂、硬化剤A、硬化剤B、硬化剤C、熱可塑性樹脂A、熱可塑性樹脂B、熱可塑性樹脂C、金属水酸化物Aおよび金属水酸化物Bとしては、それぞれ以下のものを用いた。

(1)エポキシ樹脂A
ジャパレンエポキシレジン社製 エピコート828EL
(2)エポキシ樹脂B
日本化薬社製 NC−3000
(3)トリアジン骨格を有するエポキシ樹脂
日本化学工業社製 TEPIC−SP
(4)硬化剤A(フェノール樹脂)
群栄化学工業社製 PSM−4326
(5)硬化剤B(メラミン樹脂)
日本カーバイド工業社製 MS−001
(6)硬化剤C(4,4´−ジアミノジフェニルスルフォン)
和光純薬工業社製 試薬
(7)熱可塑性樹脂A(ポリビニルブチラール樹脂)
電気化学工業社製 デンカブチラール#6000CS
(8)熱可塑性樹脂B(カルボキシ化エチレン−アクリルゴム)
三井・デュポンポリケミカル社製 ベイマックGLS
(9)熱可塑性樹脂C(カルボキシ化NBR)
日本ゼオン社製 ニポール1072
(10)金属水酸化物(水酸化アルミニウム)
昭和電工社製 ハイジライトH−43S
(11)金属水酸化物(水酸化マグネシウム)
協和化学社製 キスマ5A
【0065】
なお、表1〜3中、金属水酸化物についての単位は質量%であり、それ以外についての単位は質量部である。
【0066】
(実施例2〜14及び比較例1〜2)
エポキシ樹脂A、エポキシ樹脂B、トリアジン骨格を有するエポキシ樹脂、硬化剤A、硬化剤B、硬化剤C、熱可塑性樹脂A、熱可塑性樹脂B、熱可塑性樹脂C、金属水酸化物Aおよび金属水酸化物Bの配合を表1〜3に示すものとしたこと以外は、実施例1と同様にして接着剤溶液を調製した。
【0067】
そして、実施例1と同様にして、評価用サンプル板A〜Dを作製し、接着樹脂組成物の接着性及び吸湿後の半田耐熱性の評価を行った。結果を表1〜3に示す。
【0068】
表1〜3に示す結果より、実施例1〜14の接着樹脂組成物は、比較例1〜2の接着樹脂組成物に比べて、吸湿後の半田耐熱性に優れていることが分かった。また実施例1〜14の中でも、金属水酸化物を1〜20質量%含有する接着樹脂組成物は、PIやCuのみならず、ステンレスに対してもより高い接着性を有することが分かった。
【0069】
以上のことから、本発明の接着樹脂組成物によれば、吸湿後の半田耐熱性に優れることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係るフレキシブルプリント配線板の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1のフレキシブルプリント配線板の製造に必要な部品を示す断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1…ベースフィルム、2…接着層、3…金属層、4…接着層、5…絶縁フィルム、6…接着層、7…補強板、10…カバーレイ、14…接着剤層、20…金属張積層板、22…接着剤層、30…接着剤シート、100…フレキシブルプリント配線板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、硬化剤と、熱可塑性樹脂と、金属水酸化物とを含み、
前記エポキシ樹脂が、トリアジン骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも20質量%の割合で含むこと、
を特徴とする接着樹脂組成物。
【請求項2】
前記金属水酸化物の含有率が1〜20質量%であること、
を特徴とする請求項1に記載の接着樹脂組成物。
【請求項3】
絶縁フィルムと、
前記絶縁フィルム上に設けられる接着剤層とを備え、
前記接着剤層が、請求項1又は2に記載の接着樹脂組成物で構成されていること、
を特徴とするカバーレイ。
【請求項4】
ベースフィルムと、
前記ベースフィルムの一面側に設けられる金属層と、
前記ベースフィルムと前記金属層との間に設けられる接着剤層とを備え、
前記接着剤層が、請求項1又は2に記載の接着樹脂組成物で構成されていること、
を特徴とする金属張積層板。
【請求項5】
ベースフィルムの一面側に金属層を設けてなる金属張積層板と、請求項3記載のカバーレイとを、前記カバーレイの前記接着剤層と、前記金属張積層板の前記金属層とを対向させた状態で熱圧着してなること、
を特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【請求項6】
補強材と、ベースフィルムの一面側に金属層を設けてなる金属張積層板と、請求項3記載のカバーレイとを、前記カバーレイの前記接着剤層と前記金属張積層板の前記金属層とを対向させた状態で且つ前記補強材と前記金属張積層板との間に接着剤シートを介在させた状態で熱圧着してなり、前記接着剤シートが請求項1又は2に記載の接着樹脂組成物で構成されていること、
を特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【請求項7】
前記補強材がステンレスで構成され、前記接着剤シートが請求項2に記載の接着樹脂組成物で構成されていること、
を特徴とする請求項6に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項8】
前記金属張積層板が、前記ベースフィルムと前記金属層との間に接着剤層を備え、前記接着剤層が請求項1又は2に記載の接着樹脂組成物で構成されていること、
を特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載のフレキシブルプリント配線板。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−144141(P2010−144141A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325983(P2008−325983)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】