搬送装置、基板処理システム及び姿勢制御機構
【課題】保持台の姿勢を正確に制御することができ、また高速で移動させても保持台がふらつくことがない搬送装置を提供する。
【解決手段】搬送装置に、第一の姿勢保持リンク56、及び第二の姿勢保持リンク57を設ける。第一の姿勢保持リンク56の一端と第二の姿勢保持リンク57の一端とは連結軸53によって回転可能に連結される。保持台21の基部プレート27にレール51,52を取り付ける。連結軸53にローラ54,55を所定の軸線の回りを回転可能に取り付ける。ローラ54,55はレール51,52のローラ転走部51a,52aに接触するように配置される。保持台21を移動させるとき、ローラ54,55がローラ転走部51a,52aを転がり運動する。
【解決手段】搬送装置に、第一の姿勢保持リンク56、及び第二の姿勢保持リンク57を設ける。第一の姿勢保持リンク56の一端と第二の姿勢保持リンク57の一端とは連結軸53によって回転可能に連結される。保持台21の基部プレート27にレール51,52を取り付ける。連結軸53にローラ54,55を所定の軸線の回りを回転可能に取り付ける。ローラ54,55はレール51,52のローラ転走部51a,52aに接触するように配置される。保持台21を移動させるとき、ローラ54,55がローラ転走部51a,52aを転がり運動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送対象物を搬送する搬送装置に関し、特に半導体ウェハ、液晶用基板、有機EL素子等の被処理体を処理チャンバに搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板や液晶用基板等の被処理体には、成膜、エッチング、酸化、拡散等の各種の処理が施される。これらの処理は処理チャンバ内で行われる。被処理体を処理チャンバ内に搬入したり、処理チャンバから搬出したりするための搬送装置として種々のタイプが存在するが、蛙の足のように伸縮する多関節ロボットが用いられることが多い。フロッグレッグ式の多関節ロボットは、タイミングベルトを使用しないで構成できるので、高真空や熱に強いという特徴を持つ。
【0003】
特許文献1には、フロッグレッグ式の多関節ロボットが開示されている。フロッグレッグ式の多関節ロボットはひし形に組み合わされた四本のリンク(二本の駆動アーム+二本のリンク)を備える。中央ハブには、二本の駆動アームが中央ハブの回りを回転するように結合される。二本の駆動アームの先端には、二本のリンクの一端が回転可能に連結される。二本のリンクの他端は、被処理体を保持する板状の保持台に回転可能に連結される。フロッグレッグ式の多関節ロボットによれば、二本の駆動アームを互いに逆方向に回転させることで、保持台が中央ハブから半径方向に離間したり、保持台が中央ハブに近づいたりする。
【0004】
上記のフロッグレッグ式の多関節ロボットにおいて、二本のリンクの先端に保持台を回転可能に連結しただけでは、保持台の姿勢を一定に保つことができない。保持台の姿勢を一定に保つために、二本のリンクの先端の連結軸には歯車が取り付けられる。二つの連結軸に取り付けられる二つの歯車を互いに噛み合わせ、二本のリンクの同期をとることによって、二本のリンクの先端に取り付けられる保持台の姿勢を一定に保っている。
【0005】
特許文献2にも、フロッグレッグ式の多関節ロボットの他の例が開示されている。特許文献2に記載の多関節ロボットにおいては、保持台の姿勢を制御するために、二つの連結軸には、歯車の替わりにたすき掛けにスチールベルトが架け渡されている。スチールベルトによって二つの連結軸は互いに反対方向に回転するように同期がとれている。このため、二本のリンクの先端に取り付けられる保持台の姿勢を一体に保つことができる。
【0006】
特許文献3には、フロッグレッグ式の多関節ロボットのさらに他の例が開示されている。このフロッグレッグ式の多関節ロボットにおいては、保持台の姿勢を制御するために、ひし形に組み合わせた四本のリンクにさらに方向維持機構が追加されている。
【0007】
方向維持機構は、保持台に固定される方向付けアーム軸を備える。方向付けアーム軸は保持台から中央ハブに向かって伸びる。方向付けアーム軸は、磁石の反発力によって一対のガイドマグネット間にその位置が保たれる。保持台が中央ハブから半径方向に離間したり、中央ハブに近づいたりするとき、方向付けアーム軸は一対のガイドマグネットに対して方向付けアーム軸の軸線方向に移動するものの、一対のガイドマグネット間に位置する状態が保たれる。これにより、方向付けアーム軸に固定される保持台の姿勢を一定に保つ。さらに、上記特許文献3には、方向付けアーム軸とガイドマグネットの替わりに、シャフトとシャフトに回転自在かつスライド自在なボールスプラインを用いてもよいことも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−15592号公報
【特許文献2】特表平7−504128号公報
【特許文献3】特開平11−313477号公報(段落0108〜段落0115、図7参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に記載のような、歯車の噛合いを利用した姿勢制御機構にあっては、歯車の噛合いを利用する以上、バックラッシ(互いに噛み合う歯と歯の間に生ずるすきま)が発生するのが避けられない。このバックラッシは、歯車が取り付けられる連結軸の回転角度の誤差、ひいては保持台の姿勢のずれを招く。
【0010】
特許文献2に記載の、スチールベルトを利用した姿勢制御機構にあっては、歯車のようなバックラッシは存在しないものの、たすき掛けされたスチールベルトの剛性が低いので、保持台を高速で移動させると、スチールベルトが伸縮し、これが原因で保持台がふらつくという問題を招く。
【0011】
特許文献3に記載の方向維持機構にあっては、磁石の反発力だけでは、保持台の姿勢を正確に制御できないという問題がある。磁石の替わりにボールスプラインを用いても、シャフトとボールスプラインとの間にすきまが発生し、このすきまが原因で、保持台の姿勢を正確に制御できないという問題がある。
【0012】
シャフトとボールスプラインとの間のすきまをなくすために、シャフトとボールスプラインとの間のすきまをマイナスすきまにし、ボールスプラインに予圧を付与することも考えられる。しかし、予圧を付与すると、ボールスプラインに転動体として組み込まれる多数のボールの運動が転がり運動からすべり運動に近づき、ボールの滑りに起因したパーティクルが発生し易くなるという新たな問題を招く。
【0013】
そこで本発明は、保持台の姿勢を正確に制御することができ、また高速で移動させても保持台がふらつくことがない搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、第一の軸線の回りを回転する第一のアームと、前記第一の軸線の回り又は前記第一の軸線と異なる位置の第二の軸線の回りを回転する第二のアームと、前記第一のアームの先端に一端が回転可能に連結される第一のリンクと、前記第二のアームの先端に一端が回転可能に連結される第二のリンクと、前記第一のリンクの他端、及び前記第二のリンクの他端に回転可能に連結され、搬送対象物を保持する保持台と、を備え、前記第一のアーム及び前記第二のアームを回転させると、前記保持台が前記第一の軸線又は前記第二の軸線から離れたり、前記保持台が前記第一の軸線又は前記第二の軸線に近づいたりする搬送装置において、前記搬送装置はさらに、前記第一のリンクに一端が回転可能に連結される第一の姿勢保持リンクと、前記第二のリンクに一端が回転可能に連結される第二の姿勢保持リンクと、前記第一の姿勢保持リンクの他端と第二の姿勢保持リンクの他端とを回転可能に連結する連結軸と、前記保持台及び前記連結軸のいずれか一方に設けられ、所定の軸線の回りを回転可能なローラと、前記保持台及び前記連結軸の他方に設けられ、前記ローラが転がり運動可能なローラ転走部と、を備え、前記第一のアーム及び前記第二のアームを回転させるとき、前記ローラ転走部に接触する前記ローラが前記ローラ転走部を転がり運動する搬送装置である。
【0015】
本発明の他の態様は、真空チャンバ内に配置され、被処理体を搬送する搬送装置であって、第一の軸線の回りを回転する第一のアームと、前記第一の軸線の回り又は前記第一の軸線と異なる位置の第二の軸線の回りを回転する第二のアームと、前記第一のアームの先端に一端が回転可能に連結される第一のリンクと、前記第二のアームの先端に一端が回転可能に連結される第二のリンクと、前記第一のリンクの他端、及び前記第二のリンクの他端に回転可能に連結され、搬送対象物を保持する保持台と、を備え、前記第一のアーム及び前記第二のアームを回転させると、前記保持台が前記第一の軸線又は前記第二の軸線から離れたり、前記保持台が前記第一の軸線又は前記第二の軸線に近づいたりする搬送装置において、前記搬送装置はさらに、前記第一のリンクに一端が回転可能に連結される第一の姿勢保持リンクと、前記第二のリンクに一端が回転可能に連結される第二の姿勢保持リンクと、前記第一の姿勢保持リンクの他端と第二の姿勢保持リンクの他端とを回転可能に連結する連結軸と、前記保持台及び前記連結軸のいずれか一方に設けられ、所定の軸線の回りを回転可能なローラと、前記保持台及び前記連結軸の他方に設けられ、前記ローラが転がり運動可能なローラ転走部と、を備え、前記第一のアーム及び前記第二のアームを回転させるとき、前記ローラ転走部に接触する前記ローラが前記ローラ転走部を転がり運動する搬送装置である。
【0016】
本発明のさらに他の態様は、第一の軸線の回りを回転する第一のアーム、前記第一の軸線の回り又は前記第一の軸線と異なる位置の第二の軸線の回りを回転する第二のアーム、前記第一のアームの先端に一端が回転可能に連結される第一のリンク、前記第二のアームの先端に一端が回転可能に連結される第二のリンク、及び前記第一のリンクの他端、及び前記第二のリンクの他端に回転可能に連結され、搬送対象物を保持する保持台と、を備えるフロッグレッグ式の基板搬送装置に用いられる姿勢制御機構であって、前記第一のリンクに一端が回転可能に連結される第一の姿勢保持リンクと、前記第二のリンクに一端が回転可能に連結される第二の姿勢保持リンクと、前記第一の姿勢保持リンクの他端と第二の姿勢保持リンクの他端とを回転可能に連結する連結軸と、前記保持台及び前記連結軸のいずれかに設けられ、所定の軸線の回りを回転可能なローラと、前記保持台及び前記連結軸の他方に設けられ、前記ローラが転がり運動可能なローラ転走部と、を備え、前記第一のアーム及び前記第二のアームを回転させるとき、前記ローラ転走部に接触する前記ローラが前記ローラ転走部を転がり運動する姿勢制御機構である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ローラ転走部にすきまがない状態で接触するローラの転がり運動を利用して、保持台の姿勢を制御するので、すきまに起因した保持台のがたつきが発生することがなく、したがって保持台の姿勢を正確に制御することができる。また、ローラとローラ転走部とは線接触するので、案内の剛性が高くなり、高速で移動させても保持台がふらつく(振動する)ことがない。さらに、ローラとローラ転走部との接触面圧を高くしても、ローラの転がり運動は保たれ、ボールに比べて滑り運動が発生するのが抑制されるので、滑り運動に起因したパーティクル(粒子)が発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】半導体デバイス製造システム(クラスタ型プラットフォーム)の平面図
【図2】本発明の一実施形態の搬送装置の斜視図
【図3】初期状態の搬送装置を示す図(図中(a)は平面図を示し、図中(b)は底面図を示す)
【図4】伸長した状態の搬送装置を示す図(図中(a)は平面図を示し、図中(b)は部分底面図を示す)
【図5】搬送装置の模式図
【図6】姿勢制御機構の斜視図
【図7】姿勢制御機構の拡大斜視図
【図8】スタッドに回転可能に取り付けられたローラを示す断面図
【図9】姿勢制御機構の断面図(図4のIX-IX線断面図)
【図10】姿勢制御機構のローラ及びレールの他の例を示す断面図
【図11】姿勢制御機構のローラ及びレールのさらに他の例を示す斜視図
【図12】図11のレールを傾けた例を示す平面図
【図13】図11のレールを湾曲させた例を示す平面図
【図14】本発明が適用されるフロッグレッグ式の搬送機能の例を示す図(図中(a)は二つのフロッグレッグ式の搬送機構を設けた例を示し、図中(b)はアームの回転中心の位置を異ならせた例を示す、図中(c)は二つのピックを中央ハブの片側に設けた例を示し、図中(d)は二つのフロッグレッグ式の搬送機構を上下に二段設け、合計四つのフロッグレッグ式の搬送機構を設けた例を示す)
【図15】減衰特性を示すグラフ(図中(a)は本実施形態の減衰特性を示し、図中(b)は比較例の減衰特性を示す)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態の搬送装置を説明する。図1は、クラスタ型プラットフォームと呼ばれる半導体デバイス製造システムの平面図を示す。この半導体デバイス製造システムは、入口搬送系1と処理システム系2の二つに分類される。入口搬送系は、基板を大気中で搬送する大気搬送系4−1〜4−3⇔3⇔6−1〜6−2と、基板を真空中で搬送する真空搬送系6−1〜6−2⇔10⇔11−1〜11−6と、を含む。処理システム系2である半導体デバイス製造装置は、真空処理装置としての多数のプロセスチャンバー11−1〜11−6を備え、基板にプラズマ処理等の各種の処理を施す。
【0020】
まず、半導体デバイス製造システムの全体概要について説明する。入口搬送系1には、縦長に形成されるローダーモジュール3が設けられる。ローダーモジュール3の側面のポート4−1〜4−3には、被処理体としての基板を複数枚収容するカセット容器が設置される。ローダーモジュール3の長手方向の端部には、基板のノッチ等を認識して基板の位置決めを行う位置決め装置5が設けられる。ローダーモジュール3には、ポート4−1〜4−3とロードロック室6−1,6−2との間で基板の受け渡しを行う多関節ロボット7が搭載される。多関節ロボット7は、ローダーモジュール3の長手方向にスライドできるようスライド軸8を有する。多関節ロボット7の、基板を保持するピック7aは、基板を受け渡しできるように垂直方向にかつ水平方向に移動する。ローダーモジュール3の天井部には図示しないFFUが配置される。ローダーモジュール3内には、ローダーモジュール3の天井部から清浄な空気が降りてきて、ローダーモジュール3の床面から流出されるダウンフローが形成される。
【0021】
処理システム系2の中央には、多角形に形成されたトランスファーモジュール10が配置される。トランスファーモジュール10は、四角形、六角形、八角形等の、プロセスモジュールの数や配置に対応した多角形に形成される。トランスファーモジュール10の周囲には放射状に複数のプロセスモジュール11が配置される。各プロセスモジュール11は、真空引きされた処理チャンバ内で基板に成膜、エッチング、酸化、拡散等の各種の処理を行う。トランスファーモジュール10のチャンバも真空引きされる。トランスファーモジュール10にはロードロック室6−1,6−2が連結される。ロードロック室6−1,6−2は、真空引きと大気圧復帰が繰り返し行われる小部屋からなる。トランスファーモジュール10とプロセスモジュール11−1〜11−6、及びトランスファーモジュール10とロードロック室6−1,6−2は、ゲートバルブ16,13を介して連結される。ロードロック室6−1,6−2とローダーモジュール3とは、ゲートバルブ15を介して連結される。
【0022】
トランスファーモジュール10には、搬送装置12が搭載される。この搬送装置12は、ロードロック室6−1,6−2のいずれか一方に搬送された未処理の基板を受け取り、トランスファーモジュール10内に引き入れた後、プロセスモジュール11に渡す。基板は複数のプロセスモジュール11−1〜11−6でシリアル処理される場合と、パラレル処理される場合とがある。基板をシリアル処理する場合、搬送装置12は複数のプロセスモジュール11−1〜11−6の少なくとも二つに亘って基板を渡り歩かせ、基板に複数の異なる処理(シリアル処理)を施す。その後、搬送装置12は基板をロードロック室6−1,6−2の他方に戻す。一方、基板をパラレル処理する場合、複数のプロセスモジュール11−1〜11−6の少なくとも二つには同一の処理を行うものが用意されていて、搬送装置12は同一の処理を行うプロセスモジュール11−1〜11−6のいずれか一つに基板を搬送する。その後、搬送装置12は基板を残りのプロセスモジュール11−1〜11−6に渡らせることなく、ロードロック室6−1,6−2の他方に戻す。同一の処理を行う少なくとも二つのプロセスモジュール11−1〜11−6で同時に処理を行うことができるように、搬送装置12は併行して少なくとも二つのプロセスモジュール11−1〜11−6に基板を渡す。
【0023】
この搬送装置12は、ウェハ基板を保持する保持台としてピック21を備える。この実施形態では、搬送装置12に一つのピック21を設けているが、スループットを向上させるために、二つ以上のピック21を設けてもよい。
【0024】
搬送装置12は、トランスファーモジュール10の真空チャンバ内で、水平面内において基板を旋回させる機能と、放射方向に基板を直線運動させる機能を併せ持つ。搬送装置12は、まず水平面内で基板を旋回させて、放射状に配列されたプロセスモジュール11−1〜11−6のいずれか一つ又はロードロック室6−1,6−2のいずれか一つの方向に向ける。そして、基板を放射方向に直線運動させて、基板をプロセスモジュール11−1〜11−6のいずれか一つ又はロードロック室6−1,6−2のいずれか一つに搬送する。
【0025】
半導体デバイス製造システムの全体の動きは、以下のとおりである。まず多関節ロボット7が、ポート4−1〜4−3のカセット容器内に収容された基板を保持し、位置決め装置5に搬送する。位置決め装置5が基板の位置合わせをした後、多関節ロボット7が基板をロードロック室6−1に搬送する。このとき、ロードロック室6−1の内部は大気圧になっている。
【0026】
次に、ロードロック室6−1のローダーモジュール3側のゲートバルブ15を閉じ、ロードロック室6−1を図示しない排気装置により減圧する。その後、ゲートバルブ13を開け、ロードロック室6−1とトランスファーモジュール10とを連通させる。トランスファーモジュール10は図示しない排気装置により減圧されている。トランスファーモジュール10に配置される搬送装置12は、ロードロック室6内の基板を受け取り、トランスファーモジュール10内に取り込む。そして、プロセスモジュール11−1〜11−6のいずれかに基板を渡す。基板は複数のプロセスモジュール11−1〜11−6でシリアル処理されるか、又はパラレル処理される。プロセスモジュール11−1〜11−6での処理が終わると、搬送装置12はプロセスモジュール11−1〜11−6から基板を取り出し、ロードロック室6−2に搬送する。
【0027】
次に、ロードロック室6−2のゲートバルブ13を閉じ、ゲートバルブ15を開け、ロードロック室6−2を大気圧に復帰させる。多関節ロボット7は、処理が終了した基板をロードロック室6−2から取り出し、ローダーモジュール3を経由した後、ポート4−1〜4−3のカセット容器内に戻す。
【0028】
図2は、トランスファーモジュール10に配置される搬送装置12の斜視図を示す。搬送装置12は、中央ハブ22の回りを回転する第一のアーム31、及び中央ハブ22の回りを回転する第二のアーム32を備える。第一のアーム31は、その一端が中央ハブ22に結合され、第一のモータ23によって中央ハブ22の第一の軸線の回りを回転駆動される。第二のアーム32も、その一端が中央ハブ22に結合され、第二のモータ24によって中央ハブ22の第一の軸線の回りを回転駆動される。正確にいえば、中央ハブ22には同心に配置された内側の中実軸及び外側の中空軸からなる二重の軸が設けられる。内側の中実軸及び外側の中空軸のいずれか一方に第一及び第二のアーム31,32のいずれか一方が結合され、内側の中実軸及び外側の中空軸の他方に第一及び第二のアーム31,32の他方が結合される。第一及び第二のアーム31,32は、中央ハブ22の中心となる第一の軸線A1の回りを回転する。第一及び第二のモータ23,24には、公知のダイレクトドライブモータ、減速機付きモータ等を用いることができる。第一及び第二のモータ23,24は、第一及び第二のアーム31,32を逆方向に回転させたり、同方向に回転させたりする。
【0029】
ピック21は、U字形状に形成されるピック本体26と、ピック本体26が取り付けられる基部プレート27と、を備える。ピック本体26は、ボルトねじ等の結合手段によって基部プレート27に取り付けられる。
【0030】
ピック21の基部プレート27には、第一のリンク41の一端及び第二のリンク42の一端が回転可能に連結される。第一のリンク41の他端は第一のアーム31の先端に回転可能に連結され、第二のリンク42の他端は第二のアーム32の先端に回転可能に連結される。これらピック21、第一及び第二のリンク41,42、第一及び第二のアーム31,32によって、フロッグレッグ式の搬送機構が構成される。
【0031】
図3は、フロッグレッグ式の搬送機構の初期状態(第一のアーム31と第二のアーム32のなす角度が180度の状態)を示し、図4は、フロッグレッグ式の搬送機構の伸長状態を示す。図3及び図4において、(a)は平面図を示し、(b)は底面図を示す。
【0032】
図3に示す初期状態において、フロッグレッグ式の搬送機構は収縮した状態にある。第一及び第二のアーム31,32を逆方向に回転させると、図4に示すように、フロッグレッグ式の搬送機構12が伸びた伸長状態になる。このとき、ピック21が中央ハブ22から半径方向に離間する。また、図3に示す初期状態において、第一及び第二のアーム31,32を同じ方向に回転させると、ピック21が半径方向の位置を一定にしたまま中央ハブ22の周囲を回転する。
【0033】
図3及び図4に示すように、第一のリンク及び第二のリンク41,42の先端には、ピック21が回転可能に連結される。第一のリンク41とピック21を回転可能に連結する軸36と第二のリンク42とピック21を回転可能に連結する軸36とは、同一である。第一のリンク及び第二のリンク41,42の先端付近には、ピック21の姿勢を制御するための姿勢制御機構が設けられる。図5に示すように、姿勢制御機構は、第一のリンク41に一端56aが回転可能に連結される第一の姿勢保持リンク56と、第二のリンク42に一端57aが回転可能に連結される第二の姿勢保持リンク57と、第一の姿勢保持リンク56の他端と第二の姿勢保持リンク57の他端とを回転可能に連結する連結軸53と、を備える。第一の姿勢保持リンク56の長さと第二の姿勢保持リンク57の長さは互いに等しい。第一の姿勢保持リンク56の一端56aから軸36までの長さと第二の姿勢保持リンク57の一端57aから軸36までの長さは互いに等しい。このため、第一の姿勢保持リンク56と第二の姿勢保持リンク57とを連結する連結軸53は、軸36と中央ハブ22の中心とを結んだ線L1上を移動する。連結軸53は、ピック21に設けられたレール51,52(詳しくは後述する)に沿って移動するので、ピック21の姿勢が一定に保たれる。姿勢制御機構を設けないと、ピック21は軸36の回りを水平面内で旋回してしまうので、ピック21の姿勢を制御することができない。
【0034】
図6は姿勢制御機構の斜視図を示し、図7は姿勢制御機構の拡大斜視図を示す。ピック21の基部プレート27は中央ハブ22に向かって拡張されている(図3参照)。基部プレート27の底面には、互いに平行な一対のレール51,52が取り付けられる。一対のレール51,52は、軸36と中央ハブ22の中心とを結んだ線L1に沿って伸びる(図3参照)。一対のレール51,52の内側面には、互いに平行に直線的に伸びる一対のローラ転走部51a,52aが形成される。一方のレール51の下段側は上段側よりも僅かに内側に突出しており、このレール51の下段側にローラ転走部51aが形成される。他方のレール52の上段側は下段側よりも僅かに内側に突出しており、このレール52の上段側にローラ転走部52aが形成される。一対のローラ転走部51a,52aは、上下方向に位置を異ならせて形成される。
【0035】
一対のレール51,52の内側には、上下一対(上下二段)のローラ54,55が挟まれる。上下一対のローラ54,55は共通する軸線A2の回りを回転可能に設けられる。この実施形態では、上下一対のローラ54,55は後述する連結軸53(図9参照)に連結される。上下一対のローラ54,55の回転中心と連結軸53の軸線とは一致する。上側のローラ54はローラ転走部52aに接触していて、所定の荷重でローラ転走部52aに付勢される。下側のローラ55はローラ転走部51aに接触していて、所定の荷重でローラ転走部に51aに付勢される。上側のローラ54とローラ転走部52aとの間に働く荷重は、下側のローラ55とローラ転走部51aとの間に働く荷重と等しい。上下一対のローラ54,55が一対のレール51,52に沿って移動するとき、上下一対のローラ54,55は互いに反対方向に回転する。
【0036】
ローラ54,55には、カムフォロアが用いられる。すなわち、図8に示すように、連結軸53にはスタッド59が取り付けられていて、スタッド59の周囲には、上下二段の転動体転走面59a,59bが形成される。下段の転動体転走面59aの周囲には、転動体としてニードルローラ60が周方向に多数配列される。円筒状のローラ55は多数のニードルローラ60の周囲にスタッド59と同心に配置される。上段の転動体転走面59bの周囲には、転動体としてニードルローラ60が周方向に多数配列され、多数のニードルローラ60の周囲には、円筒状のローラ54がスタッド59と同心に配置される。ローラ54,55が回転すると、多数のニードルローラ60もスタッド59とローラ54,55との間を転がり運動する。
【0037】
図6及び図7に示すように、第一のリンク41の下側の一部は切り欠かれており、切り欠かれた部分に第一の姿勢保持リンク56の一端が回転可能に連結される。第二のリンク42の上側の一部は切り欠かれており、切り欠かれた部分に第二の姿勢保持リンク57の一端が回転可能に連結される。第一及び第二の姿勢保持リンク56,57の長さは、互いに等しく、第一及び第二のリンク41,42の長さよりも短い。上述のように、軸36から第一の姿勢保持リンク56の一端56aまでの距離は、軸36から第二の姿勢保持リンク57の一端57aまでの距離に等しい(図5参照)。第一の姿勢保持リンク56の他端と第二の姿勢保持リンク57との他端とは共通する連結軸53によって回転可能に連結される(図5参照)。
【0038】
図9は姿勢制御機構の断面図を示す。上記のように、第一の姿勢保持リンク56の他端は連結軸53に回転可能に連結される。第二の姿勢保持リンク57の他端も連結軸53に回転可能に連結される。連結軸53の中心線上には、上下一対のローラ54,55が回転可能に連結される。
【0039】
図9に示すように、レール51,52には、ねじ孔51b,52bが形成される。ピック21の基部プレート27には、レール51,52のねじ孔51b,52bに対応したボルト挿入孔27aが形成される。ボルト挿入孔27aにボルト58を通し、レール51,52のねじ孔51b,52bにねじ込むことにより、基部プレート27にレール51,52を固定することができる。
【0040】
基部プレート27には、レール51,52の位置を調節する位置調節機構として、位置調節ねじ62が設けられる。基部プレート27には水平方向に伸びる雌ねじ64が形成されていて、雄ねじからなる位置調節ねじ62がこの雌ねじ64に螺合する。位置調節ねじ62のねじ込み量を調節することにより、ローラ54,55に向かうレール51,52の進退量が調節され、ローラ54,55とレール51,52との接触面圧が調節される。
【0041】
図3に示すように、第一及び第二のリンク41,42、並びに第一及び第二の姿勢保持リンク56,57によってひし形の四節回転連鎖が構成され、これらによってフロッグレッグ式の姿勢制御機構が構成される。フロッグレッグ式の搬送機構を図3に示す初期状態から図4に示す伸長状態に変化させると、フロッグレッグ式の姿勢制御機構も図3に示す初期状態から図4に示す伸長状態に変化する。第一及び第二の姿勢保持リンク56,57の長さは等しく、軸36から第一の姿勢保持リンク56の一端56aまでの長さは、軸36から第二の姿勢保持リンク57の一端57aまでの長さに等しく設定されるから、姿勢制御機構が伸縮するとき、連結軸53は軸36と中央ハブ22の中心を結んだ線L1上を直線運動する。連結軸53には上下一対のローラ54,55が取り付けられ、この上下一対のローラ54,55は一対のレール51,52で挟まれている。このため、レール51,52に取り付けられるピック21の姿勢を一定に保持できる。連結軸53が直線運動するとき、上下一対のローラ54,55は互いに反対方向に回転しながら一対のレール51,52のローラ転走部51a,52aを転がり運動する(図7参照)。
【0042】
本実施形態の姿勢制御機構によれば、以下の効果を奏する。
ローラ転走部51a,52aにすきまがない状態で接触するローラ54,55の転がり運動を利用して、ピック21の姿勢を制御するので、すきまに起因したピック21のがたつきが発生することがなく、したがってピック21の姿勢を正確に制御することができる。また、ピック21のがたつきがないことから、ピック21と基板との間での滑りや衝突を防ぐことができ、基板に損傷が発生することもない。
【0043】
ローラ54,55とローラ転走部51a,52aとは線接触するので、連結軸53を高い剛性で案内することができ、高速で移動させてもピック21が水平面内でふらつく(振動する)ことがない。本実施形態によれば、従来のフロッグレッグ式の搬送機構に比べて伸縮動作のスピードを約3倍に上げることができ、一回の伸縮動作にかかる時間を1秒から0.3秒に低減できた。ピック21が基板を保持した状態では、フロッグレッグ式の搬送機構の伸縮動作のスピードを上げるのには限界があるが、ピック21が基板を保持していない状態では、フロッグレッグ式の搬送機構の伸縮動作のスピードを高くすることができる。伸縮動作は繰り返し行われるので、伸縮動作のスピードを上げることができれば、半導体デバイス製造装置全体のスループットが向上する。
【0044】
水平面内の剛性だけでなく、上下方向(Z軸)の剛性も向上させることができる。図15に示すデータは、第一のアーム31と第二のアーム32が最大まで伸びたとき(ピック21が中央ハブ22から最も遠い位置に移動したとき)の上下方向(Z軸)の減衰特性(振動が止まるまでの時間)を示す。ピック21に上方向からレーザーを当てて、ピック21の上下方向の変位を時間の経過と共に測定している。図中(a)は本実施形態の場合を示し、図中(b)は姿勢を制御するために、たすき掛けにしたスチールベルトを使用した比較例(特許文献2に記載の比較例)の場合を示す。図中(b)に示すように、比較例では、5秒経過しても上下方向の振動が収まっていないのに対し、図(a)に示すように、本実施形態では、1秒で振動がほぼ収まっている。ローラ54,55がレール51,52上を転がり運動するときに、上下方向(Z軸)のエネルギも吸収されることが原因であると推測される。本実施形態においては、減衰特性がよいので、第一のアーム31及び第二のアーム32を最大まで伸ばした直後に、精度よく基板を受け渡すことが可能になる。
【0045】
本実施形態によれば、ピック21にがたつきが発生することがないので、大型化した搬送装置を容易に設計できる。近年、基板口径の300mmから450mmへの大口径化が求められている。基板口径が大口径化すると、基板重量が重くなるため、搬送装置にはより剛性が求められる。さらに、搬送機構の最大伸長時の長さは1.5倍となり、搬送機構の重量が重くなるため、がたつきやふらつきによる搬送誤差は顕著となる。
【0046】
ローラ54,55とローラ転走部51a,52aとの接触面圧を高くしても、ローラ54,55の転がり運動は保たれる。ボールに比べて滑り運動が発生するのが抑制されるので、滑り運動に起因したパーティクル(粒子)が発生するのを防止することができる。
【0047】
連結軸53に上下二段のローラ54,55を配置し、ピック21に一対のレール51,52を配置することにより、姿勢制御機構のコンパクト化、軽量化が図れる。フロッグレッグ式の搬送機構の先端のたわみを減少させることができるので、より高精度な位置決めが可能になる。
【0048】
図10は、ローラ及びレールの他の例を示す。この例では、ピック21に一本のレール71が取り付けられ、一本のレール71の左右側面にローラ転走部71aが形成される。一対のローラ72,73はレール71の外側に、レール71を挟むように配置され、レール71の左右側面のローラ転走部71aに接触する。一対のローラ72,73の回転中心は、連結軸53の軸線と平行である。この例のように、一対のローラ72,73は一対のローラ転走部71aの外側に配置されてもよい。
【0049】
図11は、ローラ及びレールのさらに他の例を示す。この例では、ローラ81及びローラ82は、互いに独立した回転軸81a,82aを有する。回転軸81aと回転軸82aとは、互いに平行であり、水平面内の異なった位置で固定プレート87に固定される。固定プレート87は、第一及び第二の姿勢保持リンク56,57に回転可能に連結される。二つのローラ81,82は二本のレール83,84間に挟まれる。二本のレール83,84は平行であり、基部プレート27に接続される。レール83はローラ81の外周面に接触している。レール83とローラ81との間の圧力は、レール83の位置を図中(1)方向に調節することによって調節される。同様に、レール84はローラ82の外周面に接触していて、レール84とローラ82との間の圧力は、レール84の位置を図中(2)方向に調節することによって調節される。ローラ81及びローラ82の上下方向の位置は一致しており、レール83及びレール84の上下方向の位置も一致している。この例によれば、二つのローラ81,82が上下方向に重なっていないので、姿勢制御機構を薄く作ることができる。
【0050】
図12は、図11に示すレール83,84を半径方向の内側に向かって徐々に幅が狭くなるように傾けた例を示す。すなわち、平行なレールをハの字又はV字に配置した例を示す。本実施形態では、少なくとも第一及び第二のアーム31,32が最大まで伸びたときに、剛性高くピック21の姿勢を制御できればよい。この例によれば、第一及び第二のアーム31,32が最大まで伸びたとき、ローラ81がレール83に高い圧力で接触し、ローラ82がレール84に高い圧力で接触するので、剛性高くピック21の姿勢を制御できる。その一方、他の部分では、ローラ81とレール83との圧力、及びローラ82とレール84との圧力が小さくなるので、ピック21を高速搬送することができる。このように、レール83,84の形状を変化させることによって、ピック21の動きを自由に設計できるようになる。なお、レール83,84の間隔の差(W1−W2)は、数μm程度でもよい。また、ここでは、二つの回転軸を有する構成にて説明したがこれに囚われず、図7に示す一つの回転軸を有する構成においても適用することができる。
【0051】
図13は、図11に示すレール83,84を湾曲させ、二つのローラ81,82間に弾性体としてコイルばね86を配置した例を示す。平行な二本のレール83,84は、平行半径方向の内側に向かって途中から両者間の距離が短くなるように湾曲し、その後、再び平行になる。二つのローラ81,82間にはコイルばね86が介在されていて、二本のレール83,84間の距離が変わっても、ローラ81をレール83に付勢でき、ローラ82をレール84に付勢できるようになっている。この例によれば、第一及び第二のアーム31,32が最大まで伸びたとき、コイルばね86によってローラ81がレール83に高い圧力で付勢され、ローラ82がレール84に高い圧力で付勢されるので、剛性高くピック21の姿勢を制御できる。なお、コイルばね86以外にも板ばねやゴムなどの弾性体、ピエゾ素子、エアシリンダ等を付勢手段として利用することができる。
【0052】
なお、本発明は上記実施形態に限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲でさまざまに変更可能である。
【0053】
例えば、本発明の搬送装置は、半導体デバイスの製造装置に限られることなく、FPD、有機EL、太陽電池の製造装置に適用することもできる。また、本発明の搬送装置は、基板の入口と出口とが異なるインライン型の半導体デバイス製造装置にも使用することができる。
【0054】
上記実施形態では、レールの位置を調節してローラとレールとの接触面圧を調節しているが、ローラの位置を調節してローラとレールとの接触面圧を調節してもよい。偏心しているカムフォロアを使用すれば、ローラの位置の調整が容易になる。
【0055】
上記実施形態では、ローラの数は二つ設けられているが、一つでも三つ以上であってもよい。ローラ転走部の数も二つ設けられているが、一つでも三つ以上であってもよい。
【0056】
本発明は、上記実施形態のピックが一つのみで且つ第一及び第二のアームが同一の中心線の回りを回転する(いわゆる同軸2軸)のフロッグレッグ式の搬送機構に限られることはなく、例えば図14(a)〜(d)に示すような、他の構造を備えるフロッグレッグ式の搬送機構にも適用することができる。
【0057】
図14(a)は、ピック21a,21bを中央ハブ22の周囲に180度の間隔を空けて二つ設け、二つのピック21a,21bを二つのフロッグレッグ式の搬送機構で駆動させる例を示す。この例において、一方のピック21aには、第一のリンク41aの一端及び第二のリンク42aの一端が回転可能に連結される。第一のリンク41aの他端は第一のアーム31の先端に回転可能に連結され、第二のリンク42aの他端は第二のアーム32の先端に回転可能に連結される。また、他方のピック21bには、第一のリンク41bの一端及び第二のリンク42bの一端が回転可能に連結される。第一のリンク41bの他端は第一のアーム31の先端に回転可能に連結され、第二のリンク42bの他端は第二のアーム32の先端に回転可能に連結される。二つのフロッグレッグ式の搬送機構は、中央ハブ22中心にして周方向に180度離れた位置に配置される。
【0058】
図14(b)は、第一のアームの回転中心31cと第二のアームの回転中心32cとを水平面内で異なった位置に配置した例(いわゆる同軸2軸ではない例)を示す。第一のアーム31は基台91上の第一の回転中心31cの回りを回り、第二のアーム32は第一の回転中心線31cとは水平面内で異なる位置の第二の中心線32cの回りを回る。この例のように、第一のアームの回転中心31cと第二のアームの回転中心32cとは、水平面内で異なった位置に配置されてもよい。
【0059】
図14(c)は、二つのフロッグレッグ式の搬送機構を設け、二つのピック21a,21bを中央ハブ22の片側(図中右側)に配置した例を示す。二つのピック21a,21bは上下方向に高さを異ならせて配置される。この例では、合計二つの21a,21b及び合計四本のアーム31a,32a,31b,32bが設けられる。合計四本のアーム31a,32a,31b,32bは二つの駆動軸によって回転駆動される。二つのフロッグレッグ式の搬送機構を設けた場合、この例のように、二つのピック21a,21bを中央ハブ22の片側にのみ配置してもよい。
【0060】
図14(d)は、図14(a)に示す二つのフロッグレッグ式の搬送機構を上下方向に2段重ねて配置した例を示す。この例では、合計四個のピック21a〜21d及び合計四つのフロッグレッグ式の搬送機構が設けられる。合計四本のアーム31a,32a,31b,32bは四つの駆動軸によって回転駆動される。
【符号の説明】
【0061】
11−1〜11−6…プロセスモジュール(真空処理装置)
12…搬送装置
21,21a,21b…ピック(保持台)
27…基部プレート(保持台)
22…中央ハブ(第一の軸線)
31…第一のアーム
32…第二のアーム
41,41a,41b…第一のリンク
42,42a,42b…第二のリンク
51,52…一対のレール
51a,52a…一対のローラ転走部
53…連結軸
54,55…一対のローラ
56…第一の姿勢保持リンク
57…第二の姿勢保持リンク
59…スタッド
60…ニードルローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送対象物を搬送する搬送装置に関し、特に半導体ウェハ、液晶用基板、有機EL素子等の被処理体を処理チャンバに搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板や液晶用基板等の被処理体には、成膜、エッチング、酸化、拡散等の各種の処理が施される。これらの処理は処理チャンバ内で行われる。被処理体を処理チャンバ内に搬入したり、処理チャンバから搬出したりするための搬送装置として種々のタイプが存在するが、蛙の足のように伸縮する多関節ロボットが用いられることが多い。フロッグレッグ式の多関節ロボットは、タイミングベルトを使用しないで構成できるので、高真空や熱に強いという特徴を持つ。
【0003】
特許文献1には、フロッグレッグ式の多関節ロボットが開示されている。フロッグレッグ式の多関節ロボットはひし形に組み合わされた四本のリンク(二本の駆動アーム+二本のリンク)を備える。中央ハブには、二本の駆動アームが中央ハブの回りを回転するように結合される。二本の駆動アームの先端には、二本のリンクの一端が回転可能に連結される。二本のリンクの他端は、被処理体を保持する板状の保持台に回転可能に連結される。フロッグレッグ式の多関節ロボットによれば、二本の駆動アームを互いに逆方向に回転させることで、保持台が中央ハブから半径方向に離間したり、保持台が中央ハブに近づいたりする。
【0004】
上記のフロッグレッグ式の多関節ロボットにおいて、二本のリンクの先端に保持台を回転可能に連結しただけでは、保持台の姿勢を一定に保つことができない。保持台の姿勢を一定に保つために、二本のリンクの先端の連結軸には歯車が取り付けられる。二つの連結軸に取り付けられる二つの歯車を互いに噛み合わせ、二本のリンクの同期をとることによって、二本のリンクの先端に取り付けられる保持台の姿勢を一定に保っている。
【0005】
特許文献2にも、フロッグレッグ式の多関節ロボットの他の例が開示されている。特許文献2に記載の多関節ロボットにおいては、保持台の姿勢を制御するために、二つの連結軸には、歯車の替わりにたすき掛けにスチールベルトが架け渡されている。スチールベルトによって二つの連結軸は互いに反対方向に回転するように同期がとれている。このため、二本のリンクの先端に取り付けられる保持台の姿勢を一体に保つことができる。
【0006】
特許文献3には、フロッグレッグ式の多関節ロボットのさらに他の例が開示されている。このフロッグレッグ式の多関節ロボットにおいては、保持台の姿勢を制御するために、ひし形に組み合わせた四本のリンクにさらに方向維持機構が追加されている。
【0007】
方向維持機構は、保持台に固定される方向付けアーム軸を備える。方向付けアーム軸は保持台から中央ハブに向かって伸びる。方向付けアーム軸は、磁石の反発力によって一対のガイドマグネット間にその位置が保たれる。保持台が中央ハブから半径方向に離間したり、中央ハブに近づいたりするとき、方向付けアーム軸は一対のガイドマグネットに対して方向付けアーム軸の軸線方向に移動するものの、一対のガイドマグネット間に位置する状態が保たれる。これにより、方向付けアーム軸に固定される保持台の姿勢を一定に保つ。さらに、上記特許文献3には、方向付けアーム軸とガイドマグネットの替わりに、シャフトとシャフトに回転自在かつスライド自在なボールスプラインを用いてもよいことも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−15592号公報
【特許文献2】特表平7−504128号公報
【特許文献3】特開平11−313477号公報(段落0108〜段落0115、図7参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に記載のような、歯車の噛合いを利用した姿勢制御機構にあっては、歯車の噛合いを利用する以上、バックラッシ(互いに噛み合う歯と歯の間に生ずるすきま)が発生するのが避けられない。このバックラッシは、歯車が取り付けられる連結軸の回転角度の誤差、ひいては保持台の姿勢のずれを招く。
【0010】
特許文献2に記載の、スチールベルトを利用した姿勢制御機構にあっては、歯車のようなバックラッシは存在しないものの、たすき掛けされたスチールベルトの剛性が低いので、保持台を高速で移動させると、スチールベルトが伸縮し、これが原因で保持台がふらつくという問題を招く。
【0011】
特許文献3に記載の方向維持機構にあっては、磁石の反発力だけでは、保持台の姿勢を正確に制御できないという問題がある。磁石の替わりにボールスプラインを用いても、シャフトとボールスプラインとの間にすきまが発生し、このすきまが原因で、保持台の姿勢を正確に制御できないという問題がある。
【0012】
シャフトとボールスプラインとの間のすきまをなくすために、シャフトとボールスプラインとの間のすきまをマイナスすきまにし、ボールスプラインに予圧を付与することも考えられる。しかし、予圧を付与すると、ボールスプラインに転動体として組み込まれる多数のボールの運動が転がり運動からすべり運動に近づき、ボールの滑りに起因したパーティクルが発生し易くなるという新たな問題を招く。
【0013】
そこで本発明は、保持台の姿勢を正確に制御することができ、また高速で移動させても保持台がふらつくことがない搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、第一の軸線の回りを回転する第一のアームと、前記第一の軸線の回り又は前記第一の軸線と異なる位置の第二の軸線の回りを回転する第二のアームと、前記第一のアームの先端に一端が回転可能に連結される第一のリンクと、前記第二のアームの先端に一端が回転可能に連結される第二のリンクと、前記第一のリンクの他端、及び前記第二のリンクの他端に回転可能に連結され、搬送対象物を保持する保持台と、を備え、前記第一のアーム及び前記第二のアームを回転させると、前記保持台が前記第一の軸線又は前記第二の軸線から離れたり、前記保持台が前記第一の軸線又は前記第二の軸線に近づいたりする搬送装置において、前記搬送装置はさらに、前記第一のリンクに一端が回転可能に連結される第一の姿勢保持リンクと、前記第二のリンクに一端が回転可能に連結される第二の姿勢保持リンクと、前記第一の姿勢保持リンクの他端と第二の姿勢保持リンクの他端とを回転可能に連結する連結軸と、前記保持台及び前記連結軸のいずれか一方に設けられ、所定の軸線の回りを回転可能なローラと、前記保持台及び前記連結軸の他方に設けられ、前記ローラが転がり運動可能なローラ転走部と、を備え、前記第一のアーム及び前記第二のアームを回転させるとき、前記ローラ転走部に接触する前記ローラが前記ローラ転走部を転がり運動する搬送装置である。
【0015】
本発明の他の態様は、真空チャンバ内に配置され、被処理体を搬送する搬送装置であって、第一の軸線の回りを回転する第一のアームと、前記第一の軸線の回り又は前記第一の軸線と異なる位置の第二の軸線の回りを回転する第二のアームと、前記第一のアームの先端に一端が回転可能に連結される第一のリンクと、前記第二のアームの先端に一端が回転可能に連結される第二のリンクと、前記第一のリンクの他端、及び前記第二のリンクの他端に回転可能に連結され、搬送対象物を保持する保持台と、を備え、前記第一のアーム及び前記第二のアームを回転させると、前記保持台が前記第一の軸線又は前記第二の軸線から離れたり、前記保持台が前記第一の軸線又は前記第二の軸線に近づいたりする搬送装置において、前記搬送装置はさらに、前記第一のリンクに一端が回転可能に連結される第一の姿勢保持リンクと、前記第二のリンクに一端が回転可能に連結される第二の姿勢保持リンクと、前記第一の姿勢保持リンクの他端と第二の姿勢保持リンクの他端とを回転可能に連結する連結軸と、前記保持台及び前記連結軸のいずれか一方に設けられ、所定の軸線の回りを回転可能なローラと、前記保持台及び前記連結軸の他方に設けられ、前記ローラが転がり運動可能なローラ転走部と、を備え、前記第一のアーム及び前記第二のアームを回転させるとき、前記ローラ転走部に接触する前記ローラが前記ローラ転走部を転がり運動する搬送装置である。
【0016】
本発明のさらに他の態様は、第一の軸線の回りを回転する第一のアーム、前記第一の軸線の回り又は前記第一の軸線と異なる位置の第二の軸線の回りを回転する第二のアーム、前記第一のアームの先端に一端が回転可能に連結される第一のリンク、前記第二のアームの先端に一端が回転可能に連結される第二のリンク、及び前記第一のリンクの他端、及び前記第二のリンクの他端に回転可能に連結され、搬送対象物を保持する保持台と、を備えるフロッグレッグ式の基板搬送装置に用いられる姿勢制御機構であって、前記第一のリンクに一端が回転可能に連結される第一の姿勢保持リンクと、前記第二のリンクに一端が回転可能に連結される第二の姿勢保持リンクと、前記第一の姿勢保持リンクの他端と第二の姿勢保持リンクの他端とを回転可能に連結する連結軸と、前記保持台及び前記連結軸のいずれかに設けられ、所定の軸線の回りを回転可能なローラと、前記保持台及び前記連結軸の他方に設けられ、前記ローラが転がり運動可能なローラ転走部と、を備え、前記第一のアーム及び前記第二のアームを回転させるとき、前記ローラ転走部に接触する前記ローラが前記ローラ転走部を転がり運動する姿勢制御機構である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ローラ転走部にすきまがない状態で接触するローラの転がり運動を利用して、保持台の姿勢を制御するので、すきまに起因した保持台のがたつきが発生することがなく、したがって保持台の姿勢を正確に制御することができる。また、ローラとローラ転走部とは線接触するので、案内の剛性が高くなり、高速で移動させても保持台がふらつく(振動する)ことがない。さらに、ローラとローラ転走部との接触面圧を高くしても、ローラの転がり運動は保たれ、ボールに比べて滑り運動が発生するのが抑制されるので、滑り運動に起因したパーティクル(粒子)が発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】半導体デバイス製造システム(クラスタ型プラットフォーム)の平面図
【図2】本発明の一実施形態の搬送装置の斜視図
【図3】初期状態の搬送装置を示す図(図中(a)は平面図を示し、図中(b)は底面図を示す)
【図4】伸長した状態の搬送装置を示す図(図中(a)は平面図を示し、図中(b)は部分底面図を示す)
【図5】搬送装置の模式図
【図6】姿勢制御機構の斜視図
【図7】姿勢制御機構の拡大斜視図
【図8】スタッドに回転可能に取り付けられたローラを示す断面図
【図9】姿勢制御機構の断面図(図4のIX-IX線断面図)
【図10】姿勢制御機構のローラ及びレールの他の例を示す断面図
【図11】姿勢制御機構のローラ及びレールのさらに他の例を示す斜視図
【図12】図11のレールを傾けた例を示す平面図
【図13】図11のレールを湾曲させた例を示す平面図
【図14】本発明が適用されるフロッグレッグ式の搬送機能の例を示す図(図中(a)は二つのフロッグレッグ式の搬送機構を設けた例を示し、図中(b)はアームの回転中心の位置を異ならせた例を示す、図中(c)は二つのピックを中央ハブの片側に設けた例を示し、図中(d)は二つのフロッグレッグ式の搬送機構を上下に二段設け、合計四つのフロッグレッグ式の搬送機構を設けた例を示す)
【図15】減衰特性を示すグラフ(図中(a)は本実施形態の減衰特性を示し、図中(b)は比較例の減衰特性を示す)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態の搬送装置を説明する。図1は、クラスタ型プラットフォームと呼ばれる半導体デバイス製造システムの平面図を示す。この半導体デバイス製造システムは、入口搬送系1と処理システム系2の二つに分類される。入口搬送系は、基板を大気中で搬送する大気搬送系4−1〜4−3⇔3⇔6−1〜6−2と、基板を真空中で搬送する真空搬送系6−1〜6−2⇔10⇔11−1〜11−6と、を含む。処理システム系2である半導体デバイス製造装置は、真空処理装置としての多数のプロセスチャンバー11−1〜11−6を備え、基板にプラズマ処理等の各種の処理を施す。
【0020】
まず、半導体デバイス製造システムの全体概要について説明する。入口搬送系1には、縦長に形成されるローダーモジュール3が設けられる。ローダーモジュール3の側面のポート4−1〜4−3には、被処理体としての基板を複数枚収容するカセット容器が設置される。ローダーモジュール3の長手方向の端部には、基板のノッチ等を認識して基板の位置決めを行う位置決め装置5が設けられる。ローダーモジュール3には、ポート4−1〜4−3とロードロック室6−1,6−2との間で基板の受け渡しを行う多関節ロボット7が搭載される。多関節ロボット7は、ローダーモジュール3の長手方向にスライドできるようスライド軸8を有する。多関節ロボット7の、基板を保持するピック7aは、基板を受け渡しできるように垂直方向にかつ水平方向に移動する。ローダーモジュール3の天井部には図示しないFFUが配置される。ローダーモジュール3内には、ローダーモジュール3の天井部から清浄な空気が降りてきて、ローダーモジュール3の床面から流出されるダウンフローが形成される。
【0021】
処理システム系2の中央には、多角形に形成されたトランスファーモジュール10が配置される。トランスファーモジュール10は、四角形、六角形、八角形等の、プロセスモジュールの数や配置に対応した多角形に形成される。トランスファーモジュール10の周囲には放射状に複数のプロセスモジュール11が配置される。各プロセスモジュール11は、真空引きされた処理チャンバ内で基板に成膜、エッチング、酸化、拡散等の各種の処理を行う。トランスファーモジュール10のチャンバも真空引きされる。トランスファーモジュール10にはロードロック室6−1,6−2が連結される。ロードロック室6−1,6−2は、真空引きと大気圧復帰が繰り返し行われる小部屋からなる。トランスファーモジュール10とプロセスモジュール11−1〜11−6、及びトランスファーモジュール10とロードロック室6−1,6−2は、ゲートバルブ16,13を介して連結される。ロードロック室6−1,6−2とローダーモジュール3とは、ゲートバルブ15を介して連結される。
【0022】
トランスファーモジュール10には、搬送装置12が搭載される。この搬送装置12は、ロードロック室6−1,6−2のいずれか一方に搬送された未処理の基板を受け取り、トランスファーモジュール10内に引き入れた後、プロセスモジュール11に渡す。基板は複数のプロセスモジュール11−1〜11−6でシリアル処理される場合と、パラレル処理される場合とがある。基板をシリアル処理する場合、搬送装置12は複数のプロセスモジュール11−1〜11−6の少なくとも二つに亘って基板を渡り歩かせ、基板に複数の異なる処理(シリアル処理)を施す。その後、搬送装置12は基板をロードロック室6−1,6−2の他方に戻す。一方、基板をパラレル処理する場合、複数のプロセスモジュール11−1〜11−6の少なくとも二つには同一の処理を行うものが用意されていて、搬送装置12は同一の処理を行うプロセスモジュール11−1〜11−6のいずれか一つに基板を搬送する。その後、搬送装置12は基板を残りのプロセスモジュール11−1〜11−6に渡らせることなく、ロードロック室6−1,6−2の他方に戻す。同一の処理を行う少なくとも二つのプロセスモジュール11−1〜11−6で同時に処理を行うことができるように、搬送装置12は併行して少なくとも二つのプロセスモジュール11−1〜11−6に基板を渡す。
【0023】
この搬送装置12は、ウェハ基板を保持する保持台としてピック21を備える。この実施形態では、搬送装置12に一つのピック21を設けているが、スループットを向上させるために、二つ以上のピック21を設けてもよい。
【0024】
搬送装置12は、トランスファーモジュール10の真空チャンバ内で、水平面内において基板を旋回させる機能と、放射方向に基板を直線運動させる機能を併せ持つ。搬送装置12は、まず水平面内で基板を旋回させて、放射状に配列されたプロセスモジュール11−1〜11−6のいずれか一つ又はロードロック室6−1,6−2のいずれか一つの方向に向ける。そして、基板を放射方向に直線運動させて、基板をプロセスモジュール11−1〜11−6のいずれか一つ又はロードロック室6−1,6−2のいずれか一つに搬送する。
【0025】
半導体デバイス製造システムの全体の動きは、以下のとおりである。まず多関節ロボット7が、ポート4−1〜4−3のカセット容器内に収容された基板を保持し、位置決め装置5に搬送する。位置決め装置5が基板の位置合わせをした後、多関節ロボット7が基板をロードロック室6−1に搬送する。このとき、ロードロック室6−1の内部は大気圧になっている。
【0026】
次に、ロードロック室6−1のローダーモジュール3側のゲートバルブ15を閉じ、ロードロック室6−1を図示しない排気装置により減圧する。その後、ゲートバルブ13を開け、ロードロック室6−1とトランスファーモジュール10とを連通させる。トランスファーモジュール10は図示しない排気装置により減圧されている。トランスファーモジュール10に配置される搬送装置12は、ロードロック室6内の基板を受け取り、トランスファーモジュール10内に取り込む。そして、プロセスモジュール11−1〜11−6のいずれかに基板を渡す。基板は複数のプロセスモジュール11−1〜11−6でシリアル処理されるか、又はパラレル処理される。プロセスモジュール11−1〜11−6での処理が終わると、搬送装置12はプロセスモジュール11−1〜11−6から基板を取り出し、ロードロック室6−2に搬送する。
【0027】
次に、ロードロック室6−2のゲートバルブ13を閉じ、ゲートバルブ15を開け、ロードロック室6−2を大気圧に復帰させる。多関節ロボット7は、処理が終了した基板をロードロック室6−2から取り出し、ローダーモジュール3を経由した後、ポート4−1〜4−3のカセット容器内に戻す。
【0028】
図2は、トランスファーモジュール10に配置される搬送装置12の斜視図を示す。搬送装置12は、中央ハブ22の回りを回転する第一のアーム31、及び中央ハブ22の回りを回転する第二のアーム32を備える。第一のアーム31は、その一端が中央ハブ22に結合され、第一のモータ23によって中央ハブ22の第一の軸線の回りを回転駆動される。第二のアーム32も、その一端が中央ハブ22に結合され、第二のモータ24によって中央ハブ22の第一の軸線の回りを回転駆動される。正確にいえば、中央ハブ22には同心に配置された内側の中実軸及び外側の中空軸からなる二重の軸が設けられる。内側の中実軸及び外側の中空軸のいずれか一方に第一及び第二のアーム31,32のいずれか一方が結合され、内側の中実軸及び外側の中空軸の他方に第一及び第二のアーム31,32の他方が結合される。第一及び第二のアーム31,32は、中央ハブ22の中心となる第一の軸線A1の回りを回転する。第一及び第二のモータ23,24には、公知のダイレクトドライブモータ、減速機付きモータ等を用いることができる。第一及び第二のモータ23,24は、第一及び第二のアーム31,32を逆方向に回転させたり、同方向に回転させたりする。
【0029】
ピック21は、U字形状に形成されるピック本体26と、ピック本体26が取り付けられる基部プレート27と、を備える。ピック本体26は、ボルトねじ等の結合手段によって基部プレート27に取り付けられる。
【0030】
ピック21の基部プレート27には、第一のリンク41の一端及び第二のリンク42の一端が回転可能に連結される。第一のリンク41の他端は第一のアーム31の先端に回転可能に連結され、第二のリンク42の他端は第二のアーム32の先端に回転可能に連結される。これらピック21、第一及び第二のリンク41,42、第一及び第二のアーム31,32によって、フロッグレッグ式の搬送機構が構成される。
【0031】
図3は、フロッグレッグ式の搬送機構の初期状態(第一のアーム31と第二のアーム32のなす角度が180度の状態)を示し、図4は、フロッグレッグ式の搬送機構の伸長状態を示す。図3及び図4において、(a)は平面図を示し、(b)は底面図を示す。
【0032】
図3に示す初期状態において、フロッグレッグ式の搬送機構は収縮した状態にある。第一及び第二のアーム31,32を逆方向に回転させると、図4に示すように、フロッグレッグ式の搬送機構12が伸びた伸長状態になる。このとき、ピック21が中央ハブ22から半径方向に離間する。また、図3に示す初期状態において、第一及び第二のアーム31,32を同じ方向に回転させると、ピック21が半径方向の位置を一定にしたまま中央ハブ22の周囲を回転する。
【0033】
図3及び図4に示すように、第一のリンク及び第二のリンク41,42の先端には、ピック21が回転可能に連結される。第一のリンク41とピック21を回転可能に連結する軸36と第二のリンク42とピック21を回転可能に連結する軸36とは、同一である。第一のリンク及び第二のリンク41,42の先端付近には、ピック21の姿勢を制御するための姿勢制御機構が設けられる。図5に示すように、姿勢制御機構は、第一のリンク41に一端56aが回転可能に連結される第一の姿勢保持リンク56と、第二のリンク42に一端57aが回転可能に連結される第二の姿勢保持リンク57と、第一の姿勢保持リンク56の他端と第二の姿勢保持リンク57の他端とを回転可能に連結する連結軸53と、を備える。第一の姿勢保持リンク56の長さと第二の姿勢保持リンク57の長さは互いに等しい。第一の姿勢保持リンク56の一端56aから軸36までの長さと第二の姿勢保持リンク57の一端57aから軸36までの長さは互いに等しい。このため、第一の姿勢保持リンク56と第二の姿勢保持リンク57とを連結する連結軸53は、軸36と中央ハブ22の中心とを結んだ線L1上を移動する。連結軸53は、ピック21に設けられたレール51,52(詳しくは後述する)に沿って移動するので、ピック21の姿勢が一定に保たれる。姿勢制御機構を設けないと、ピック21は軸36の回りを水平面内で旋回してしまうので、ピック21の姿勢を制御することができない。
【0034】
図6は姿勢制御機構の斜視図を示し、図7は姿勢制御機構の拡大斜視図を示す。ピック21の基部プレート27は中央ハブ22に向かって拡張されている(図3参照)。基部プレート27の底面には、互いに平行な一対のレール51,52が取り付けられる。一対のレール51,52は、軸36と中央ハブ22の中心とを結んだ線L1に沿って伸びる(図3参照)。一対のレール51,52の内側面には、互いに平行に直線的に伸びる一対のローラ転走部51a,52aが形成される。一方のレール51の下段側は上段側よりも僅かに内側に突出しており、このレール51の下段側にローラ転走部51aが形成される。他方のレール52の上段側は下段側よりも僅かに内側に突出しており、このレール52の上段側にローラ転走部52aが形成される。一対のローラ転走部51a,52aは、上下方向に位置を異ならせて形成される。
【0035】
一対のレール51,52の内側には、上下一対(上下二段)のローラ54,55が挟まれる。上下一対のローラ54,55は共通する軸線A2の回りを回転可能に設けられる。この実施形態では、上下一対のローラ54,55は後述する連結軸53(図9参照)に連結される。上下一対のローラ54,55の回転中心と連結軸53の軸線とは一致する。上側のローラ54はローラ転走部52aに接触していて、所定の荷重でローラ転走部52aに付勢される。下側のローラ55はローラ転走部51aに接触していて、所定の荷重でローラ転走部に51aに付勢される。上側のローラ54とローラ転走部52aとの間に働く荷重は、下側のローラ55とローラ転走部51aとの間に働く荷重と等しい。上下一対のローラ54,55が一対のレール51,52に沿って移動するとき、上下一対のローラ54,55は互いに反対方向に回転する。
【0036】
ローラ54,55には、カムフォロアが用いられる。すなわち、図8に示すように、連結軸53にはスタッド59が取り付けられていて、スタッド59の周囲には、上下二段の転動体転走面59a,59bが形成される。下段の転動体転走面59aの周囲には、転動体としてニードルローラ60が周方向に多数配列される。円筒状のローラ55は多数のニードルローラ60の周囲にスタッド59と同心に配置される。上段の転動体転走面59bの周囲には、転動体としてニードルローラ60が周方向に多数配列され、多数のニードルローラ60の周囲には、円筒状のローラ54がスタッド59と同心に配置される。ローラ54,55が回転すると、多数のニードルローラ60もスタッド59とローラ54,55との間を転がり運動する。
【0037】
図6及び図7に示すように、第一のリンク41の下側の一部は切り欠かれており、切り欠かれた部分に第一の姿勢保持リンク56の一端が回転可能に連結される。第二のリンク42の上側の一部は切り欠かれており、切り欠かれた部分に第二の姿勢保持リンク57の一端が回転可能に連結される。第一及び第二の姿勢保持リンク56,57の長さは、互いに等しく、第一及び第二のリンク41,42の長さよりも短い。上述のように、軸36から第一の姿勢保持リンク56の一端56aまでの距離は、軸36から第二の姿勢保持リンク57の一端57aまでの距離に等しい(図5参照)。第一の姿勢保持リンク56の他端と第二の姿勢保持リンク57との他端とは共通する連結軸53によって回転可能に連結される(図5参照)。
【0038】
図9は姿勢制御機構の断面図を示す。上記のように、第一の姿勢保持リンク56の他端は連結軸53に回転可能に連結される。第二の姿勢保持リンク57の他端も連結軸53に回転可能に連結される。連結軸53の中心線上には、上下一対のローラ54,55が回転可能に連結される。
【0039】
図9に示すように、レール51,52には、ねじ孔51b,52bが形成される。ピック21の基部プレート27には、レール51,52のねじ孔51b,52bに対応したボルト挿入孔27aが形成される。ボルト挿入孔27aにボルト58を通し、レール51,52のねじ孔51b,52bにねじ込むことにより、基部プレート27にレール51,52を固定することができる。
【0040】
基部プレート27には、レール51,52の位置を調節する位置調節機構として、位置調節ねじ62が設けられる。基部プレート27には水平方向に伸びる雌ねじ64が形成されていて、雄ねじからなる位置調節ねじ62がこの雌ねじ64に螺合する。位置調節ねじ62のねじ込み量を調節することにより、ローラ54,55に向かうレール51,52の進退量が調節され、ローラ54,55とレール51,52との接触面圧が調節される。
【0041】
図3に示すように、第一及び第二のリンク41,42、並びに第一及び第二の姿勢保持リンク56,57によってひし形の四節回転連鎖が構成され、これらによってフロッグレッグ式の姿勢制御機構が構成される。フロッグレッグ式の搬送機構を図3に示す初期状態から図4に示す伸長状態に変化させると、フロッグレッグ式の姿勢制御機構も図3に示す初期状態から図4に示す伸長状態に変化する。第一及び第二の姿勢保持リンク56,57の長さは等しく、軸36から第一の姿勢保持リンク56の一端56aまでの長さは、軸36から第二の姿勢保持リンク57の一端57aまでの長さに等しく設定されるから、姿勢制御機構が伸縮するとき、連結軸53は軸36と中央ハブ22の中心を結んだ線L1上を直線運動する。連結軸53には上下一対のローラ54,55が取り付けられ、この上下一対のローラ54,55は一対のレール51,52で挟まれている。このため、レール51,52に取り付けられるピック21の姿勢を一定に保持できる。連結軸53が直線運動するとき、上下一対のローラ54,55は互いに反対方向に回転しながら一対のレール51,52のローラ転走部51a,52aを転がり運動する(図7参照)。
【0042】
本実施形態の姿勢制御機構によれば、以下の効果を奏する。
ローラ転走部51a,52aにすきまがない状態で接触するローラ54,55の転がり運動を利用して、ピック21の姿勢を制御するので、すきまに起因したピック21のがたつきが発生することがなく、したがってピック21の姿勢を正確に制御することができる。また、ピック21のがたつきがないことから、ピック21と基板との間での滑りや衝突を防ぐことができ、基板に損傷が発生することもない。
【0043】
ローラ54,55とローラ転走部51a,52aとは線接触するので、連結軸53を高い剛性で案内することができ、高速で移動させてもピック21が水平面内でふらつく(振動する)ことがない。本実施形態によれば、従来のフロッグレッグ式の搬送機構に比べて伸縮動作のスピードを約3倍に上げることができ、一回の伸縮動作にかかる時間を1秒から0.3秒に低減できた。ピック21が基板を保持した状態では、フロッグレッグ式の搬送機構の伸縮動作のスピードを上げるのには限界があるが、ピック21が基板を保持していない状態では、フロッグレッグ式の搬送機構の伸縮動作のスピードを高くすることができる。伸縮動作は繰り返し行われるので、伸縮動作のスピードを上げることができれば、半導体デバイス製造装置全体のスループットが向上する。
【0044】
水平面内の剛性だけでなく、上下方向(Z軸)の剛性も向上させることができる。図15に示すデータは、第一のアーム31と第二のアーム32が最大まで伸びたとき(ピック21が中央ハブ22から最も遠い位置に移動したとき)の上下方向(Z軸)の減衰特性(振動が止まるまでの時間)を示す。ピック21に上方向からレーザーを当てて、ピック21の上下方向の変位を時間の経過と共に測定している。図中(a)は本実施形態の場合を示し、図中(b)は姿勢を制御するために、たすき掛けにしたスチールベルトを使用した比較例(特許文献2に記載の比較例)の場合を示す。図中(b)に示すように、比較例では、5秒経過しても上下方向の振動が収まっていないのに対し、図(a)に示すように、本実施形態では、1秒で振動がほぼ収まっている。ローラ54,55がレール51,52上を転がり運動するときに、上下方向(Z軸)のエネルギも吸収されることが原因であると推測される。本実施形態においては、減衰特性がよいので、第一のアーム31及び第二のアーム32を最大まで伸ばした直後に、精度よく基板を受け渡すことが可能になる。
【0045】
本実施形態によれば、ピック21にがたつきが発生することがないので、大型化した搬送装置を容易に設計できる。近年、基板口径の300mmから450mmへの大口径化が求められている。基板口径が大口径化すると、基板重量が重くなるため、搬送装置にはより剛性が求められる。さらに、搬送機構の最大伸長時の長さは1.5倍となり、搬送機構の重量が重くなるため、がたつきやふらつきによる搬送誤差は顕著となる。
【0046】
ローラ54,55とローラ転走部51a,52aとの接触面圧を高くしても、ローラ54,55の転がり運動は保たれる。ボールに比べて滑り運動が発生するのが抑制されるので、滑り運動に起因したパーティクル(粒子)が発生するのを防止することができる。
【0047】
連結軸53に上下二段のローラ54,55を配置し、ピック21に一対のレール51,52を配置することにより、姿勢制御機構のコンパクト化、軽量化が図れる。フロッグレッグ式の搬送機構の先端のたわみを減少させることができるので、より高精度な位置決めが可能になる。
【0048】
図10は、ローラ及びレールの他の例を示す。この例では、ピック21に一本のレール71が取り付けられ、一本のレール71の左右側面にローラ転走部71aが形成される。一対のローラ72,73はレール71の外側に、レール71を挟むように配置され、レール71の左右側面のローラ転走部71aに接触する。一対のローラ72,73の回転中心は、連結軸53の軸線と平行である。この例のように、一対のローラ72,73は一対のローラ転走部71aの外側に配置されてもよい。
【0049】
図11は、ローラ及びレールのさらに他の例を示す。この例では、ローラ81及びローラ82は、互いに独立した回転軸81a,82aを有する。回転軸81aと回転軸82aとは、互いに平行であり、水平面内の異なった位置で固定プレート87に固定される。固定プレート87は、第一及び第二の姿勢保持リンク56,57に回転可能に連結される。二つのローラ81,82は二本のレール83,84間に挟まれる。二本のレール83,84は平行であり、基部プレート27に接続される。レール83はローラ81の外周面に接触している。レール83とローラ81との間の圧力は、レール83の位置を図中(1)方向に調節することによって調節される。同様に、レール84はローラ82の外周面に接触していて、レール84とローラ82との間の圧力は、レール84の位置を図中(2)方向に調節することによって調節される。ローラ81及びローラ82の上下方向の位置は一致しており、レール83及びレール84の上下方向の位置も一致している。この例によれば、二つのローラ81,82が上下方向に重なっていないので、姿勢制御機構を薄く作ることができる。
【0050】
図12は、図11に示すレール83,84を半径方向の内側に向かって徐々に幅が狭くなるように傾けた例を示す。すなわち、平行なレールをハの字又はV字に配置した例を示す。本実施形態では、少なくとも第一及び第二のアーム31,32が最大まで伸びたときに、剛性高くピック21の姿勢を制御できればよい。この例によれば、第一及び第二のアーム31,32が最大まで伸びたとき、ローラ81がレール83に高い圧力で接触し、ローラ82がレール84に高い圧力で接触するので、剛性高くピック21の姿勢を制御できる。その一方、他の部分では、ローラ81とレール83との圧力、及びローラ82とレール84との圧力が小さくなるので、ピック21を高速搬送することができる。このように、レール83,84の形状を変化させることによって、ピック21の動きを自由に設計できるようになる。なお、レール83,84の間隔の差(W1−W2)は、数μm程度でもよい。また、ここでは、二つの回転軸を有する構成にて説明したがこれに囚われず、図7に示す一つの回転軸を有する構成においても適用することができる。
【0051】
図13は、図11に示すレール83,84を湾曲させ、二つのローラ81,82間に弾性体としてコイルばね86を配置した例を示す。平行な二本のレール83,84は、平行半径方向の内側に向かって途中から両者間の距離が短くなるように湾曲し、その後、再び平行になる。二つのローラ81,82間にはコイルばね86が介在されていて、二本のレール83,84間の距離が変わっても、ローラ81をレール83に付勢でき、ローラ82をレール84に付勢できるようになっている。この例によれば、第一及び第二のアーム31,32が最大まで伸びたとき、コイルばね86によってローラ81がレール83に高い圧力で付勢され、ローラ82がレール84に高い圧力で付勢されるので、剛性高くピック21の姿勢を制御できる。なお、コイルばね86以外にも板ばねやゴムなどの弾性体、ピエゾ素子、エアシリンダ等を付勢手段として利用することができる。
【0052】
なお、本発明は上記実施形態に限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲でさまざまに変更可能である。
【0053】
例えば、本発明の搬送装置は、半導体デバイスの製造装置に限られることなく、FPD、有機EL、太陽電池の製造装置に適用することもできる。また、本発明の搬送装置は、基板の入口と出口とが異なるインライン型の半導体デバイス製造装置にも使用することができる。
【0054】
上記実施形態では、レールの位置を調節してローラとレールとの接触面圧を調節しているが、ローラの位置を調節してローラとレールとの接触面圧を調節してもよい。偏心しているカムフォロアを使用すれば、ローラの位置の調整が容易になる。
【0055】
上記実施形態では、ローラの数は二つ設けられているが、一つでも三つ以上であってもよい。ローラ転走部の数も二つ設けられているが、一つでも三つ以上であってもよい。
【0056】
本発明は、上記実施形態のピックが一つのみで且つ第一及び第二のアームが同一の中心線の回りを回転する(いわゆる同軸2軸)のフロッグレッグ式の搬送機構に限られることはなく、例えば図14(a)〜(d)に示すような、他の構造を備えるフロッグレッグ式の搬送機構にも適用することができる。
【0057】
図14(a)は、ピック21a,21bを中央ハブ22の周囲に180度の間隔を空けて二つ設け、二つのピック21a,21bを二つのフロッグレッグ式の搬送機構で駆動させる例を示す。この例において、一方のピック21aには、第一のリンク41aの一端及び第二のリンク42aの一端が回転可能に連結される。第一のリンク41aの他端は第一のアーム31の先端に回転可能に連結され、第二のリンク42aの他端は第二のアーム32の先端に回転可能に連結される。また、他方のピック21bには、第一のリンク41bの一端及び第二のリンク42bの一端が回転可能に連結される。第一のリンク41bの他端は第一のアーム31の先端に回転可能に連結され、第二のリンク42bの他端は第二のアーム32の先端に回転可能に連結される。二つのフロッグレッグ式の搬送機構は、中央ハブ22中心にして周方向に180度離れた位置に配置される。
【0058】
図14(b)は、第一のアームの回転中心31cと第二のアームの回転中心32cとを水平面内で異なった位置に配置した例(いわゆる同軸2軸ではない例)を示す。第一のアーム31は基台91上の第一の回転中心31cの回りを回り、第二のアーム32は第一の回転中心線31cとは水平面内で異なる位置の第二の中心線32cの回りを回る。この例のように、第一のアームの回転中心31cと第二のアームの回転中心32cとは、水平面内で異なった位置に配置されてもよい。
【0059】
図14(c)は、二つのフロッグレッグ式の搬送機構を設け、二つのピック21a,21bを中央ハブ22の片側(図中右側)に配置した例を示す。二つのピック21a,21bは上下方向に高さを異ならせて配置される。この例では、合計二つの21a,21b及び合計四本のアーム31a,32a,31b,32bが設けられる。合計四本のアーム31a,32a,31b,32bは二つの駆動軸によって回転駆動される。二つのフロッグレッグ式の搬送機構を設けた場合、この例のように、二つのピック21a,21bを中央ハブ22の片側にのみ配置してもよい。
【0060】
図14(d)は、図14(a)に示す二つのフロッグレッグ式の搬送機構を上下方向に2段重ねて配置した例を示す。この例では、合計四個のピック21a〜21d及び合計四つのフロッグレッグ式の搬送機構が設けられる。合計四本のアーム31a,32a,31b,32bは四つの駆動軸によって回転駆動される。
【符号の説明】
【0061】
11−1〜11−6…プロセスモジュール(真空処理装置)
12…搬送装置
21,21a,21b…ピック(保持台)
27…基部プレート(保持台)
22…中央ハブ(第一の軸線)
31…第一のアーム
32…第二のアーム
41,41a,41b…第一のリンク
42,42a,42b…第二のリンク
51,52…一対のレール
51a,52a…一対のローラ転走部
53…連結軸
54,55…一対のローラ
56…第一の姿勢保持リンク
57…第二の姿勢保持リンク
59…スタッド
60…ニードルローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の軸線の回りを回転する第一のアームと、
前記第一の軸線の回り又は前記第一の軸線と異なる位置の第二の軸線の回りを回転する第二のアームと、
前記第一のアームの先端に一端が回転可能に連結される第一のリンクと、
前記第二のアームの先端に一端が回転可能に連結される第二のリンクと、
前記第一のリンクの他端、及び前記第二のリンクの他端に回転可能に連結され、搬送対象物を保持する保持台と、を備え、
前記第一のアーム及び前記第二のアームを回転させると、前記保持台が前記第一の軸線又は前記第二の軸線から離れたり、前記保持台が前記第一の軸線又は前記第二の軸線に近づいたりする搬送装置において、
前記搬送装置はさらに、
前記第一のリンクに一端が回転可能に連結される第一の姿勢保持リンクと、
前記第二のリンクに一端が回転可能に連結される第二の姿勢保持リンクと、
前記第一の姿勢保持リンクの他端と第二の姿勢保持リンクの他端とを回転可能に連結する連結軸と、
前記保持台及び前記連結軸のいずれかに設けられ、所定の軸線の回りを回転可能なローラと、
前記保持台及び前記連結軸の他方に設けられ、前記ローラが転がり運動可能なローラ転走部と、を備え、
前記第一のアーム及び前記第二のアームを回転させるとき、前記ローラ転走部に接触する前記ローラが前記ローラ転走部を転がり運動する搬送装置。
【請求項2】
前記ローラ転走部は、直線的に伸びる平行な一対のローラ転走部を有し、
前記ローラは、所定の軸線の回りを回転可能な一対のローラを有し、
前記一対のローラは前記一対のローラ転走部の内側又は外側に、前記一対のローラの一方が前記一対のローラ転走部の一方に接触し、前記一対のローラの他方が前記一対のローラ転走部の他方に接触するように配置され、
前記第一のアーム及び前記第二のアームを回転させるとき、前記一対のローラが直線的に伸びる前記一対のローラ転走部を転がり運動することを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記一対のローラは、共通する所定の軸線上に軸線方向に位置を異ならせて前記連結軸に配置されると共に、前記一対のローラ転走部の内側に配置され、
前記一対のローラ転走部は、前記保持台に取り付けられる一対のレールの内側に、前記所定の軸線の方向に位置を異ならせて形成されることを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記搬送装置はさらに、ローラとローラ転走部との接触面圧を調節できるように、前記ローラ及び前記ローラ転走部の少なくとも一方の位置を調節する位置調節機構を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項5】
前記ローラは、前記保持台及び前記連結軸の他方に結合されるスタッドの回りに回転可能に設けられ、
前記スタッドと前記ローラとの間には、転動体として複数のニードルローラが設けられることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項6】
前記第一のアーム及び前記第二のアームは、前記第一の軸線のみの回りを回転駆動され、
前記搬送装置を平面図で見たとき、
前記第一及び前記第二のリンク、並びに前記保持台が、前記第一の軸線中心にして周方向に180度離れた位置に二組配置され、
前記第一及び前記第二の姿勢保持リンク、前記ローラ転走部、並びに前記ローラが、前記第一の軸線を中心にして周方向に180度離れた位置に二組配置されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項7】
真空チャンバ内に配置され、被処理体を搬送する搬送装置であって、
第一の軸線の回りを回転する第一のアームと、
前記第一の軸線の回り又は前記第一の軸線と異なる位置の第二の軸線の回りを回転する第二のアームと、
前記第一のアームの先端に一端が回転可能に連結される第一のリンクと、
前記第二のアームの先端に一端が回転可能に連結される第二のリンクと、
前記第一のリンクの他端、及び前記第二のリンクの他端に回転可能に連結され、搬送対象物を保持する保持台と、を備え、
前記第一のアーム及び前記第二のアームを回転させると、前記保持台が前記第一の軸線又は前記第二の軸線から離れたり、前記保持台が前記第一の軸線又は前記第二の軸線に近づいたりする搬送装置において、
前記搬送装置はさらに、
前記第一のリンクに一端が回転可能に連結される第一の姿勢保持リンクと、
前記第二のリンクに一端が回転可能に連結される第二の姿勢保持リンクと、
前記第一の姿勢保持リンクの他端と第二の姿勢保持リンクの他端とを回転可能に連結する連結軸と、
前記保持台及び前記連結軸のいずれか一方に設けられ、所定の軸線の回りを回転可能なローラと、
前記保持台及び前記連結軸の他方に設けられ、前記ローラが転がり運動可能なローラ転走部と、を備え、
前記第一のアーム及び前記第二のアームを回転させるとき、前記ローラ転走部に接触する前記ローラが前記ローラ転走部を転がり運動する搬送装置。
【請求項8】
請求項7に記載の搬送装置を用いて前記被処理基板を真空処理装置内へ搬入することを特徴とする基板処理システム。
【請求項9】
第一の軸線の回りを回転する第一のアーム、前記第一の軸線の回り又は前記第一の軸線と異なる位置の第二の軸線の回りを回転する第二のアーム、前記第一のアームの先端に一端が回転可能に連結される第一のリンク、前記第二のアームの先端に一端が回転可能に連結される第二のリンク、及び前記第一のリンクの他端、及び前記第二のリンクの他端に回転可能に連結され、搬送対象物を保持する保持台と、を備えるフロッグレッグ式の基板搬送装置に用いられる姿勢制御機構であって、
前記第一のリンクに一端が回転可能に連結される第一の姿勢保持リンクと、
前記第二のリンクに一端が回転可能に連結される第二の姿勢保持リンクと、
前記第一の姿勢保持リンクの他端と第二の姿勢保持リンクの他端とを回転可能に連結する連結軸と、
前記保持台及び前記連結軸のいずれかに設けられ、所定の軸線の回りを回転可能なローラと、
前記保持台及び前記連結軸の他方に設けられ、前記ローラが転がり運動可能なローラ転走部と、を備え、
前記第一のアーム及び前記第二のアームを回転させるとき、前記ローラ転走部に接触する前記ローラが前記ローラ転走部を転がり運動する姿勢制御機構。
【請求項1】
第一の軸線の回りを回転する第一のアームと、
前記第一の軸線の回り又は前記第一の軸線と異なる位置の第二の軸線の回りを回転する第二のアームと、
前記第一のアームの先端に一端が回転可能に連結される第一のリンクと、
前記第二のアームの先端に一端が回転可能に連結される第二のリンクと、
前記第一のリンクの他端、及び前記第二のリンクの他端に回転可能に連結され、搬送対象物を保持する保持台と、を備え、
前記第一のアーム及び前記第二のアームを回転させると、前記保持台が前記第一の軸線又は前記第二の軸線から離れたり、前記保持台が前記第一の軸線又は前記第二の軸線に近づいたりする搬送装置において、
前記搬送装置はさらに、
前記第一のリンクに一端が回転可能に連結される第一の姿勢保持リンクと、
前記第二のリンクに一端が回転可能に連結される第二の姿勢保持リンクと、
前記第一の姿勢保持リンクの他端と第二の姿勢保持リンクの他端とを回転可能に連結する連結軸と、
前記保持台及び前記連結軸のいずれかに設けられ、所定の軸線の回りを回転可能なローラと、
前記保持台及び前記連結軸の他方に設けられ、前記ローラが転がり運動可能なローラ転走部と、を備え、
前記第一のアーム及び前記第二のアームを回転させるとき、前記ローラ転走部に接触する前記ローラが前記ローラ転走部を転がり運動する搬送装置。
【請求項2】
前記ローラ転走部は、直線的に伸びる平行な一対のローラ転走部を有し、
前記ローラは、所定の軸線の回りを回転可能な一対のローラを有し、
前記一対のローラは前記一対のローラ転走部の内側又は外側に、前記一対のローラの一方が前記一対のローラ転走部の一方に接触し、前記一対のローラの他方が前記一対のローラ転走部の他方に接触するように配置され、
前記第一のアーム及び前記第二のアームを回転させるとき、前記一対のローラが直線的に伸びる前記一対のローラ転走部を転がり運動することを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記一対のローラは、共通する所定の軸線上に軸線方向に位置を異ならせて前記連結軸に配置されると共に、前記一対のローラ転走部の内側に配置され、
前記一対のローラ転走部は、前記保持台に取り付けられる一対のレールの内側に、前記所定の軸線の方向に位置を異ならせて形成されることを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記搬送装置はさらに、ローラとローラ転走部との接触面圧を調節できるように、前記ローラ及び前記ローラ転走部の少なくとも一方の位置を調節する位置調節機構を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項5】
前記ローラは、前記保持台及び前記連結軸の他方に結合されるスタッドの回りに回転可能に設けられ、
前記スタッドと前記ローラとの間には、転動体として複数のニードルローラが設けられることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項6】
前記第一のアーム及び前記第二のアームは、前記第一の軸線のみの回りを回転駆動され、
前記搬送装置を平面図で見たとき、
前記第一及び前記第二のリンク、並びに前記保持台が、前記第一の軸線中心にして周方向に180度離れた位置に二組配置され、
前記第一及び前記第二の姿勢保持リンク、前記ローラ転走部、並びに前記ローラが、前記第一の軸線を中心にして周方向に180度離れた位置に二組配置されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項7】
真空チャンバ内に配置され、被処理体を搬送する搬送装置であって、
第一の軸線の回りを回転する第一のアームと、
前記第一の軸線の回り又は前記第一の軸線と異なる位置の第二の軸線の回りを回転する第二のアームと、
前記第一のアームの先端に一端が回転可能に連結される第一のリンクと、
前記第二のアームの先端に一端が回転可能に連結される第二のリンクと、
前記第一のリンクの他端、及び前記第二のリンクの他端に回転可能に連結され、搬送対象物を保持する保持台と、を備え、
前記第一のアーム及び前記第二のアームを回転させると、前記保持台が前記第一の軸線又は前記第二の軸線から離れたり、前記保持台が前記第一の軸線又は前記第二の軸線に近づいたりする搬送装置において、
前記搬送装置はさらに、
前記第一のリンクに一端が回転可能に連結される第一の姿勢保持リンクと、
前記第二のリンクに一端が回転可能に連結される第二の姿勢保持リンクと、
前記第一の姿勢保持リンクの他端と第二の姿勢保持リンクの他端とを回転可能に連結する連結軸と、
前記保持台及び前記連結軸のいずれか一方に設けられ、所定の軸線の回りを回転可能なローラと、
前記保持台及び前記連結軸の他方に設けられ、前記ローラが転がり運動可能なローラ転走部と、を備え、
前記第一のアーム及び前記第二のアームを回転させるとき、前記ローラ転走部に接触する前記ローラが前記ローラ転走部を転がり運動する搬送装置。
【請求項8】
請求項7に記載の搬送装置を用いて前記被処理基板を真空処理装置内へ搬入することを特徴とする基板処理システム。
【請求項9】
第一の軸線の回りを回転する第一のアーム、前記第一の軸線の回り又は前記第一の軸線と異なる位置の第二の軸線の回りを回転する第二のアーム、前記第一のアームの先端に一端が回転可能に連結される第一のリンク、前記第二のアームの先端に一端が回転可能に連結される第二のリンク、及び前記第一のリンクの他端、及び前記第二のリンクの他端に回転可能に連結され、搬送対象物を保持する保持台と、を備えるフロッグレッグ式の基板搬送装置に用いられる姿勢制御機構であって、
前記第一のリンクに一端が回転可能に連結される第一の姿勢保持リンクと、
前記第二のリンクに一端が回転可能に連結される第二の姿勢保持リンクと、
前記第一の姿勢保持リンクの他端と第二の姿勢保持リンクの他端とを回転可能に連結する連結軸と、
前記保持台及び前記連結軸のいずれかに設けられ、所定の軸線の回りを回転可能なローラと、
前記保持台及び前記連結軸の他方に設けられ、前記ローラが転がり運動可能なローラ転走部と、を備え、
前記第一のアーム及び前記第二のアームを回転させるとき、前記ローラ転走部に接触する前記ローラが前記ローラ転走部を転がり運動する姿勢制御機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−61568(P2012−61568A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208406(P2010−208406)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(390006585)株式会社三共製作所 (46)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(390006585)株式会社三共製作所 (46)
【Fターム(参考)】
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