説明

攪拌調理装置

【課題】 流動性の乏しい被撹拌物であっても、混合効率の低下、焦げ付きや変質を未然に回避可能な攪拌調理装置を得る。
【解決手段】 駆動制御部25は、支持腕17の回転方向を正転方向及び反転方向に切り換える駆動制御を行い、一対の攪拌羽根19a,19bは、その正転回転時には、被攪拌物を加熱容器2の底部から掻き取ってすくい上げるとともに加熱容器2の外周方向へと流動させる攪拌動作を行う一方、その反転回転時には、加熱容器2の底部から浮上しつつ被攪拌物を前記底部側へと押し付けるように動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理対象となる食材等の被撹拌物を加熱下で撹拌しながら調理する攪拌調理装置に係り、特に、流動性の乏しい被撹拌物であっても、混合効率の低下、焦げ付きや変質を未然に回避可能な攪拌調理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱釜内に垂下させた攪拌駆動軸の下端部に、加熱釜の内面に摺接する攪拌羽根を軸周りに回動自在に枢着し、この攪拌羽根で加熱釜内の食材等の被撹拌物を加熱下で攪拌することによって、被撹拌物を焦げ付かせないようにする攪拌調理装置が知られている。
【0003】
こうした攪拌調理装置の一例として、本願出願人は、攪拌駆動軸の下端部に外周方向に延びる支持腕を軸周りに回動自在に配設し、この支持腕の先端部に軸線方向に対し被攪拌物を加熱釜の外周方向に移動させるように所定角度傾斜させた少なくとも1つの攪拌羽根を装着し、攪拌羽根の下端部を加熱釜内底面形状に沿わせて形成すると共に、攪拌駆動軸に、攪拌羽根の下端部を加熱釜内底面に摺接させる方向に付勢する付勢手段を設け、攪拌羽根に独自の軌跡をもって攪拌運動を行わせるように構成した攪拌調理装置を提案している(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に係る技術によれば、被撹拌物が加熱釜における特定箇所に偏在し攪拌残しが生じる事態を効果的に回避することができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る従来技術では、例えばあんなどの比較的流動性の乏しい被撹拌物を加熱下で撹拌すると、被撹拌物が攪拌羽根や攪拌駆動軸等と連廻りして混合効率の低下を招来するおそれがあった。
【0006】
また、流動性の乏しい被撹拌物は、その大半が攪拌羽根によって掻き取られるが、この掻き取りの際に、一部が加熱釜の内底面に膜状に残留する場合がある。この場合、かかる残留物が焦げ付いてしまうおそれがあった。
【0007】
そして、前述した流動性の乏しい被撹拌物の掻き取りの際に、攪拌羽根の裏面側に被撹拌物が付着する場合がある。かかる攪拌羽根の裏面側では、そこに付着した被撹拌物の入れ替わりはほどんどなく、加熱下で長時間にわたり滞留する。このため、付着滞留した被撹拌物が加熱撹拌の進行に伴って固形物等に変質するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−107031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、流動性の乏しい被撹拌物では、混合効率の低下を招来すると共に、焦げ付きや変質が生じがちであった点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、流動性の乏しい被撹拌物であっても、混合効率の低下、焦げ付きや変質を未然に回避可能な攪拌調理装置を得ることを目的として、調理対象となる被撹拌物を収容し加熱可能な加熱容器と、前記加熱容器内に垂下させて設けられた攪拌駆動軸と、前記攪拌駆動軸の下端部に、当該駆動軸の外周方向に延びて前記軸線方向に対する傾斜姿勢を保ち当該軸線方向に移動可能に支持された少なくとも1つの攪拌羽根と、前記攪拌駆動軸の回動に連れて回動する前記攪拌羽根によって前記被撹拌物を撹拌するための駆動制御を行う駆動制御部と、を備え、前記駆動制御部は、前記攪拌羽根の回動方向を正転方向及び反転方向に切り換える駆動制御を行い、前記攪拌羽根は、その正転回動時には、前記被攪拌物を前記加熱容器の底部から掻き取ってすくい上げる攪拌動作を行う一方、その反転回動時には、前記加熱容器の底部から浮上しつつ前記被攪拌物を全体的に前記底部側へと押し付けるように動作する、ことを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る攪拌調理装置では、駆動制御部は、攪拌羽根の回動方向を正転方向及び反転方向に切り換える駆動制御を行い、攪拌羽根は、その正転回動時には、被攪拌物を加熱容器の底部から掻き取ってすくい上げる攪拌動作を行う一方、その反転回動時には、加熱容器の底部から浮上しつつ被攪拌物を全体的に底部側へと押し付けるように動作する。
【0012】
このように、被攪拌物を加熱容器の底部から掻き取ってすくい上げる攪拌動作と、攪拌羽根が加熱容器の底部から浮上しつつ被攪拌物を全体的に底部側へと押し付ける動作と、が交互に行われる結果として、水平方向のみならず、垂直方向における被攪拌物の混合を効果的に促進することができる。従って、流動性の乏しい被撹拌物であっても、その混合効率を高水準に維持することができる。
【0013】
また、正転回動での掻き取り時に底部に残留した被攪拌物では、反転回動での押し付け動作時に新たな被攪拌物がその上に押し付けられる。この結果、前記残留した被攪拌物では、新たな被攪拌物を通して水分移動及び熱移動が起こり、その過熱が未然に回避されるのみならず、水分吸収によって膨軟状態となって、次回の正転回動での掻き取り時に容易に掻き取られる。従って、被攪拌物の焦げ付きを未然に回避するとともに、被攪拌物の均一な加熱処理を遂行することができる。
【0014】
そして、攪拌羽根の回転方向を正転方向及び反転方向に交互に切り換えることによって、攪拌羽根の表裏両面が被撹拌物に対する接触作用面として利用され、攪拌羽根の裏面側に被撹拌物が長時間にわたり付着滞留する事態を効果的に抑制することが可能となる結果として、被撹拌物の変質を確実かつ高水準をもって抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明実施例1に係る攪拌調理装置の要部縦断面図である。
【図2】図2(A)は、攪拌駆動軸周辺の構成を部分的に断面して示す正面図、図2(B)は、図3の矢印A方向から見た右側面図である(実施例1)。
【図3】攪拌駆動軸の下端部に支持腕を介して配設される攪拌羽根の取付状態を示す平面図である(実施例1)。
【図4】攪拌羽根の移動軌跡を示す説明図である(実施例1)。
【図5】図5(A)は、攪拌羽根の取付に係るナガレ角αに起因する食材の流動状態を示す説明図、図5(B)は、攪拌羽根の取付に係るスクイ角βに起因する食材の流動状態を示す説明図である(実施例1)。
【図6】実施例2に係る攪拌調理装置に用いられる支持腕を示す図であり、図6(A)は、実施例2に係る支持腕の平面図、図6(B)は、実施例2に係る支持腕の正面図、図6(C)は、実施例2に係る支持腕の右側面図、図6(D)は、実施例2に係る支持腕における攪拌羽根の取付座金を図6(A)のB矢視方向から視た正面図、図6(E)は、図6(D)に示した取付座金の側面図である(実施例2)。
【図7】実施例2に係る支持腕に対する攪拌羽根の取付状態を示す説明図である(実施例2)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
流動性の乏しい被撹拌物であっても、混合効率の低下、焦げ付きや変質を未然に回避可能な攪拌調理装置を得るといった目的を、支持腕に配設された攪拌羽根に、その正転回動時には、被攪拌物を加熱容器の底部から掻き取ってすくい上げる攪拌動作を行わせる一方、その反転回動時には、加熱容器の底部から浮上しつつ被攪拌物を全体的に底部側へと押し付ける動作を交互に行わせることによって実現した。
【実施例1】
【0017】
本発明実施例1に係る攪拌調理装置について、図1〜図3を参照して説明する。
[本発明実施例1に係る攪拌調理装置の概略構成]
図1は、本発明実施例1に係る攪拌調理装置の要部縦断面図、図2(A)は、攪拌駆動軸周辺の構成を部分的に断面して示す正面図、図2(B)は、図3の矢印A方向から見た右側面図、図3は、攪拌駆動軸の下端部に支持腕を介して配設される攪拌羽根の取付状態を示す平面図、図4は、攪拌羽根の移動軌跡を示す説明図、図5(A)は、攪拌羽根の取付に係るナガレ角αに起因する食材の流動状態を示す説明図、図5(B)は、攪拌羽根の取付に係るスクイ角βに起因する食材の流動状態を示す説明図である。
【0018】
本発明実施例1に係る攪拌調理装置1は、流動性のある被撹拌物の加熱撹拌に用いられ、特に、例えば含水粉体やあん等の粉体或いは固体などの流動性の乏しい被撹拌物質、又は塑性流動する物質等の加熱撹拌に好適に用いられるものである。ただし、流動性の良い被撹拌物に適用してもよい。
【0019】
本発明実施例1に係る攪拌調理装置1は、図1に示すように、調理対象となるあんなどの食材(本発明の「被撹拌物」に相当する。)を収容し加熱可能な加熱釜(本発明の「加熱容器」に相当する。)2を備える。
【0020】
加熱釜2は、鉄、銅、ステンレス、又は銅とステンレスの張り合わせ鋼板等の材質をもって、底面が曲面状又は半円状等に成形されている。加熱釜2は、ガス、電気、又はその底部外周を覆う蒸気室(不図示)に供給される蒸気などの適宜の加熱手段によって加熱可能に構成されている。
【0021】
加熱釜2の上方には、筐体カバー3によって覆われたモータMの回転駆動力を減速する減速機(不図示)が設けられており、この減速機の出力軸に固定されたチェーンスプロケット(不図示)に無端チェーン4が掛けられ、無端チェーン4が駆動側の回転機構である駆動伝達軸5のチェーンスプロケット6に噛合されている。
【0022】
駆動伝達軸5には主動歯車7が固着されており、この主動歯車7と噛合する従動歯車8が太陽軸9の上端部9aに固着されている。
【0023】
太陽軸9は、カバー3の先端下部に軸受10を介して回転自在に支持されている。また、太陽軸9の下端部には太陽歯車11が固定され、遊星軸12の先端部に取付けた遊星歯車13と噛合されている。
【0024】
遊星軸12は、太陽軸9に固定された回動部材14に回転自在に支持されると共に、遊星軸12と軸線を一致させた攪拌駆動軸15が連結機構16によって取り外し自在に連結され、斜め上方から加熱釜2内に向けて傾斜されて配設されている。具体的には、遊星軸12は、鉛直方向に対して所定の傾斜角度γ、好ましくは15〜25度だけ傾斜配置されている。
【0025】
攪拌駆動軸15は、後述する攪拌羽根19a,19bの下端部を加熱釜2の内底面側に付勢するためのコイルスプリング(弾性部材)16aが内装された連結軸15aと、連結軸15aの下端部に装着したベアリングやローラ等の摺動部材15dを介して、連結軸15aの軸線方向に摺動自在に嵌合される中空軸管15bと、から構成されている。
【0026】
弾性部材16a、摺動部材15d、及び中空軸管15bによって、攪拌羽根19a,19bの下端部を加熱釜2の内底面側に付勢する付勢手段16Aが構成されている。
【0027】
中空軸管15bの下端部15cには支持腕17が配設されている。この支持腕17は、軸線方向のほぼ中央部が枢支ピン18によって枢支され、この枢支点をもって上下方向にシーソー揺動自在に枢着されている。支持腕17は、攪拌駆動軸15における軸回り方向の回動が規制されている。従って、攪拌駆動軸15が軸回り方向に回転動作すると、これに連れて支持腕17が回転動作するように構成されている。
【0028】
支持腕17の左,右両先端部17a,17bには、図2(A)に示すように、例えば耐熱性の優れた樹脂製の攪拌羽根19a,19bが、取付金具20aによってそれぞれ固定されている。なお、図1、図2(A),(B)では、攪拌羽根19a,19bの大きさが相互に異なる態様を例示しているが、本発明はこれに限定されることなく、攪拌羽根19a,19bの大きさが同じであってもよい。
【0029】
支持腕17は、その長手方向左,右先端部17a,17bをそれぞれ前後方向に相互逆向きに折り曲げるとともに、下方側に向けて略垂直方向に折り曲げることで折曲端部17c,17dが形成されている。
【0030】
攪拌羽根19a,19bは、図3及び図5(A)に示すように、支持腕17の軸線方向17eに対して正転方向後方側へ鋭角に開く所定の角度、例えば5度〜45度、好ましくは25〜35度の範囲のナガレ角αを形成するように、支持腕17における折曲端部17c,17dにそれぞれ傾斜配置されている。
【0031】
また、攪拌羽根19a,19bは、図2(B)及び図5(B)に示すように、支持腕17の正転方向前方に鈍角となる所定の角度、例えば、95度(鉛直方向に対して5度)〜160度(鉛直方向に対して70度)、好ましくは115度(鉛直方向に対して25度)〜125度(鉛直方向に対して35度)の範囲のスクイ角βを形成するように、支持腕17における折曲端部17c,17dにそれぞれ傾斜配置されている。
【0032】
符合21は、中空軸管15bの上端開口部分に設けた蛇腹であり、連結軸15a,コイルスプリング16aに食材が付着したり、潤滑油などの飛散を防止する役割を果たす。
【0033】
符合22は、中空軸管15bの内壁面に固定したレールであり、連結軸15aの先端に取付けたローラやベアリングなどの摺動部材15dを上下方向に案内する役割を果たす。コイルスプリング16aは、連結軸15aの係止部材15eとレール22の上端部の間にそれぞれ支持されている。
【0034】
さて、攪拌羽根19a,19bが配設された支持腕17の回転方向を、正転方向及び反転方向に交互に切り換える駆動制御を行うために、モータMには、その回転方向及び回転速度を制御するための駆動制御部25が接続されている。この駆動制御部25には、食材の重量を検出可能な重量センサ27が接続されている。
【0035】
この重量センサ27の重量検出値は、被攪拌物となる食材の粘性に係る情報を取得する目的で利用される。すなわち、加熱攪拌工程の初期では、食材の重量検出値が大きい(食材中における水分の占める割合が大きく、従って、流動性が高く、粘性が低い。)のに対し、加熱攪拌工程の後期では、食材の重量検出値が相対的に小さくなる(食材中における水分の占める割合が小さく、従って、流動性が低く、粘性が高い。)ことに基づき、食材の重量検出を通じて、食材の粘性に係る情報を取得するようにしている。
【0036】
駆動制御部25は、被攪拌物の粘性に基づいて攪拌羽根19を反転回動させる頻度を変更し、当該変更した頻度に従って攪拌羽根19を正転方向及び反転方向に交互に回動させる駆動制御を行うように構成されている。具体的には、駆動制御部25は、被攪拌物の粘性が低い時には攪拌羽根19を正転方向(一方向のみ)に回動させる駆動制御を行う一方、被攪拌物の粘性が所定の閾値を超えた時(具体的には、重量センサ27の重量検出値が予め定められる所定値を超えた時)には攪拌羽根19を正転方向及び反転方向に交互に回動させる駆動制御を行うように構成されている。
[本発明実施例1に係る攪拌調理装置の動作]
次に、本発明実施例1に係る攪拌調理装置の動作について説明する。
【0037】
初めに、正転方向での食材の攪拌混合動作について説明する。調理対象となるあんなどの食材(被撹拌物)を加熱釜2内に投入しておき、ガス等の加熱手段によって加熱釜2を加熱しつつ、駆動制御部25からの駆動制御信号(正転指令)に従ってモータMを駆動させて、無端チェーン4を介してその回転駆動力を駆動伝達軸5に伝達させる。
【0038】
駆動伝達軸5の駆動力は、太陽軸9の従動歯車8を介して太陽歯車11に伝達され、太陽歯車11の外周に噛合した遊星歯車13及び遊星軸12はそれぞれが公転及び自転を繰り返しながら、遊星軸12の下端に連結された攪拌駆動軸15を正転方向に回転駆動する。
【0039】
これにより、攪拌駆動軸15の下端部に支持腕17を介して配設された攪拌羽根19a,19bを正転方向(図3の実線矢印で示す方向を参照)に公転、自転させながら移動させ、加熱釜2内の食材を加熱下で攪拌混合する。
【0040】
かかる正転方向での食材の攪拌混合時では、攪拌駆動軸15の下端部に配設される攪拌羽根19a,19bの各々が、図3及び図5(A)に示すように、支持腕17の軸線方向17eに対して所定のナガレ角αをもって支持腕17に取り付けられているので、従って、攪拌羽根19a,19bの正転移動に伴って食材が攪拌羽根19a,19bの食材当接面23を外周方向に滑りながら移動する(図5(A)の実線矢印参照)結果として、加熱釜2の中心部分に食材が偏って集まる事態を解消することができる。
【0041】
また、攪拌駆動軸15の下端部に配設される攪拌羽根19a,19bの各々が、図2(B)及び図5(B)に示すように、正転方向前方に鈍角となる所定のスクイ角βをもって支持腕17に取り付けられているので、従って、攪拌羽根19a,19bが加熱釜2の底部付近の食材を掻き取り上縁に向けてすくい上げながら(図5(B)の実線矢印参照)攪拌させることができる。なお、反転回動時における加熱釜2の内底面への食材押し付け効果を高める観点からは、攪拌羽根のスクイ角βを寝かせる(正転方向前方の鈍角を大とする)方が好ましい。
【0042】
ここで、一対の各攪拌羽根19a,19bは、個々に独自の動きをとることができる。各攪拌羽根19a,19bの加熱釜2内底面における相対運動に言及すると、一方の攪拌羽根19aが加熱釜2の内底面に対して最も起立した状態から180度回転してほぼ水平状態になる過程において、他方の攪拌羽根19bは、前記攪拌羽根19aとは逆に、ほぼ水平状態から180度回転して最も起立した状態となるように相対運動を行う。
【0043】
特に、加熱釜2内において食材が偏在しがちな中心部分では、各攪拌羽根19a,19bのうちいずれか一方が食材当接面23を起立させた背高状態となるため、攪拌羽根19の上縁を越えて逸脱する食材量を極力少なくした状態で、被攪拌物である食材を攪拌羽根19の上縁に向けてすくい上げながら攪拌することができる。
【0044】
攪拌羽根19a,19bの一側における特定点(図では先端部を示す)の動きに注目すると、図4に示すように、トロコイド曲線やサイクロイド曲線の軌跡を描くことになる。これを一対の攪拌羽根19a,19bにそれぞれ適用してみると、加熱釜2の内底面における全領域にわたり隈無く食材を攪拌することができることがわかる。
【0045】
また、連結軸15aに取付けた付勢手段16Aの付勢作用によって、加熱釜2の内面形状が円の一部である円弧状以外の曲面を有する特殊な形状に対しても適応できると共に、攪拌羽根19a,19bの下端面を加熱釜2の内底面に常時密着させることができ、食材を加熱釜2の内底面に焦げ付かせることなく、確実な攪拌混合を遂行することができる。
【0046】
一方、駆動制御部25からの駆動制御信号(反転指令)に従ってモータMが反転方向に駆動すると、無端チェーン4を介してその回転駆動力が駆動伝達軸5に伝達される。
【0047】
駆動伝達軸5の駆動力は、太陽軸9の従動歯車8を介して太陽歯車11に伝達され、太陽歯車11の外周に噛合した遊星歯車13及び遊星軸12はそれぞれが公転及び自転を繰り返しながら、遊星軸12の下端に連結された攪拌駆動軸15を反転方向に回転駆動する。
【0048】
これにより、攪拌駆動軸15の下端部に支持腕17を介して配設された攪拌羽根19a,19bを反転方向(図3の点線矢印で示す方向を参照)に公転、自転させながら移動させる。
【0049】
かかる反転回動時では、前述したナガレ角αによって、正転回動時とは逆に、攪拌羽根19a,19bの反転移動に伴って食材が攪拌羽根19a,19bの食材当接面23を内周方向に滑りながら移動しようとする。これによって、各攪拌羽根19a,19bには、その外周方向から巻き込まれた新しい食材が常に供給される。従って、ナガレ角αは、次述するスクイ角βによって生じる浮上力を、各攪拌羽根19a,19bへの食材供給の側面から補助するように作用する。
【0050】
また、前述したスクイ角βによって、正転回動時とは逆に、攪拌羽根19a,19bの反転移動に伴って食材が攪拌羽根19a,19bの下方側へ潜り込もうとする。このとき、各攪拌羽根19a,19bには、食材との相互作用によって加熱釜2の内底面から離れる方向に浮上力が働く。
【0051】
要するに、本発明実施例1では、攪拌羽根19の反転回動時に攪拌羽根19に生じる浮上力が付勢手段16Aの付勢力に抗して攪拌羽根19を食材の上部まで浮上させ得るように、付勢手段16Aの付勢力(具体的には、弾性部材であるコイルスプリング16aのばね力)の大きさが設定されている。このため、反転回動時における各攪拌羽根19a,19bには、前述したナガレ角α及びスクイ角βに起因した食材との相乗的な相互作用によって、加熱釜2の内底面から離れる方向に強い浮上力が働く結果として、ある程度の反転回動が遂行された後では、各攪拌羽根19a,19bは付勢手段16Aの付勢力に抗して、食材の上部(上面乃至上面付近)まで浮上するに至る。
【0052】
従って、正転回動時における各攪拌羽根19a,19bは、食材を加熱釜2の底部から掻き取ってすくい上げるとともに加熱釜2の外周方向へと流動させる攪拌動作を行う一方で、反転回動時における各攪拌羽根19a,19bは、加熱釜2の底部から浮上しつつ食材の大半を全体的に加熱釜2の底部側へと押し付けるように動作する。
【0053】
次いで、支持腕17の回転方向が、上述した反転方向から正転方向へと切り換えられると、反転回動時における各攪拌羽根19a,19bには、ナガレ角α及びスクイ角βに起因した食材との相乗的な相互作用によって、加熱釜2の内底面から離れる方向に強い浮上力が働いていたのに対し、正転回動時における各攪拌羽根19a,19bには、ナガレ角α及びスクイ角βに起因した食材との相乗的な相互作用によって、反転回動時とは逆に、加熱釜2の内底面側へと向かう強い潜行力が働く結果として、下方側の食材を削りながら加熱釜2の内底面(底部)へと到達する。
【0054】
加熱釜2の底部に到達した各攪拌羽根19a,19bは、その正転回動時において、食材を加熱釜2の底部から掻き取ってすくい上げるとともに加熱釜2の外周方向へと流動させる攪拌動作を行い、以下、前述した攪拌動作と押し付け動作を交互に(周期的に)繰り返すことになる。
[実施例1の効果]
実施例1の効果の説明に先だって、食材の加熱攪拌時における課題に言及する。例えばあん煉りは、煮熟した小豆と糖を加熱・混煉・蒸発・濃縮する操作であるが、固いあんの場合、均一な混合が難しく、焦げ付きを生じやすい。特に、固いあんのあん煉りを、平釜に撹拌機を組み合わせた攪拌調理装置で行う場合、撹拌羽根を回すと、あんが内底面を滑り攪拌羽根と共に回る「連廻り」現象を生じる。
【0055】
この場合、あん同士の混合が起こらないだけでなく、伝熱面(高温壁面である内底面)にあんが密着せず、熱伝導率の低い、空気又は水蒸気層があんと内底面との間に介在するので、熱移動効率が極端に低下する。更に、壁面に付着した少量のあんは、熱を他のあんに移動させる事が出来ないので、過熱されて焦げ付きを起こす。
【0056】
また、大部分のあんは一つの固まりとして羽根と同方向に回転運動し、あん内部に混合が生じないので、壁面近くの温度の高いあんと、内部にある温度の低いあんとの混合による製品温度の均一化も生じない。
【0057】
このように、あんの連廻りにより、製品の混合不十分、壁面でのあんの焦げ付き、加熱量の減少、混合不良による内部への伝熱不良が生じる結果、蒸発濃縮の進行が遅くなって加熱攪拌工程の所要時間が長くなり、焦げ付き・熱劣化などによる品質の低下を招来するといった諸課題が山積していた。
【0058】
実施例1に係る攪拌調理装置によれば、各攪拌羽根19a,19bが食材を加熱釜2の底部から掻き取ってすくい上げるとともに加熱釜2の外周方向へと流動させる攪拌動作と、各攪拌羽根19a,19bが加熱釜2の底部から浮上しつつ食材を底部側へと押し付ける動作と、が交互に(周期的に)行われる結果として、水平方向のみならず、垂直方向における食材の混合を効果的に促進することができる。
【0059】
従って、流動性の乏しい食材(被撹拌物)であっても、その混合効率を高水準に維持することができる。
【0060】
仮に、正転回動での掻き取り時に加熱釜2の底部に食材が残留したとしても、反転回動での押し付け動作時に新たな食材がその上に押し付けられる。この結果、前記残留食材では、前記新たな食材を通して水分移動及び熱移動が起こり、その過熱が未然に回避されるのみならず、水分吸収によって膨軟状態となって、次回の正転回動での掻き取り時に容易に掻き取られることになる。
【0061】
従って、食材の焦げ付きを未然に回避するとともに、食材製品温度の均一化を実現することができる。
【0062】
そして、支持腕17の回転方向が正転方向及び反転方向に交互に切り換えられることにより、各攪拌羽根19a,19bの表裏両面が食材に対する接触作用面として利用され、各攪拌羽根19a,19bの裏面側に食材が長時間にわたり付着滞留する事態を抑制可能となる結果として、食材の変質(濃縮・乾燥等)を高水準で抑制することができる。
【0063】
ところで、本発明実施例に係る反転回動では、混合効率向上の観点からの貢献度はきわめて大きいところ、反転回動時には攪拌羽根19a,19bが食材の上部に浮上することから、混合それ自体への貢献度はあまり高くない。従って、加熱攪拌工程全体としての混合効率向上を踏まえて、正転回動に係る運転時間と、反転回動に係る運転時間との比率を、どのように決定すべきか、が問題となる。
【0064】
そうした観点から、駆動制御部25は、重量センサ27で検出取得した食材の粘性情報に基づいて攪拌羽根19を反転回動させる頻度(正転回動に係る運転時間と、反転回動に係る運転時間との比率)を変更し、当該変更した頻度に従って攪拌羽根19を正転方向及び反転方向に交互に回動させる駆動制御を行う構成を採用してもよい。
【0065】
具体的には、例えば、重量センサ27で検出取得した食材の粘性情報に基づいて、加熱攪拌工程の初期である(被攪拌物の粘性が低い)旨の判定が下されたとき、駆動制御部25は、攪拌羽根19を正転方向(一方向のみ)に回動させる駆動制御を行う。一方、重量センサ27で検出取得した食材の粘性情報に基づいて、加熱攪拌工程の後期である(被攪拌物の粘性が予め定められる所定値を超えた)旨の判定が下されたとき、駆動制御部25は、正転を4回行った後、反転を2回行うといったように、支持腕17の回転方向を正転方向及び反転方向に交互に切り換える駆動制御を行う。なお、正転回数に対する反転回数の頻度は、食材の粘性、煮詰まり状態、混合状態などを参酌して、加熱攪拌工程の進捗状況に従って適宜変更してゆく構成を採用してもよい。
【0066】
このように構成すれば、加熱攪拌工程の進捗状況に従う適切な回転方向の切り換え制御が逐次実行可能となる結果として、仕上がりの良好な食材調理を実現することができる。
【0067】
ただし、反転によりもたらされる効果は、被攪拌物である食材を加熱釜2の内底壁にナッペするのみならず、反転時に攪拌羽根19に生じる慣性変化に起因した攪拌混合の効果も少なからずある。
【0068】
すなわち、例えばあん煉りの場合、糖液にケーキ状の生あんを追加投入することが行われる。この場合、ダマ状に生あんの塊ができ、糖液中にダマが浮いている状況となる。かかる状況下では、攪拌羽根19を一方向にのみ回転させても、ダマに適切な外力を作用させることは出来ないため、ダマを崩すことは難しい。かかる状況下で攪拌羽根19を反転させると、攪拌羽根19に生じる慣性変化に起因した外力がダマに作用する結果として、容易にダマを崩すことができる。
【0069】
また、羽根面に付着したあんの固まりも、攪拌羽根19の回転方向が変わる時、その慣性力によって攪拌羽根19から容易に離脱する。さらに、反転時では、攪拌羽根19と加熱釜2の内底壁との間にダマを挟み込みこんだ状態で、これを潰す機能も生まれる。
【0070】
このように、攪拌羽根19の正転、反転を繰り返すことにより、生あんと糖液を短時間で均一に混ぜることが可能となる。
【0071】
これは、あん煉り工程でのみもたらされる効果ではなく、例えば、味噌を出汁で希釈し味噌ダレを製造する工程でも同様である。すなわち、一方向回転では、羽根裏に付着した味噌が溶けずに残る問題を、攪拌羽根19の正転、反転を繰り返すことによって、いとも簡単に解決することができる。
【0072】
前述したように、食材攪拌工程において、攪拌羽根19を正転及び反転駆動させるタイミングは、その後半部分のみに限定されるわけではなく、あんを混合する初期段階や、羽根への付着物除去が必要な段階などに、適宜適用することが好ましい。なお、食材の種類等によっては、食材攪拌工程の最初から最後まで反転、正転を繰り返すことが好ましいケースもあることを念のため付言しておく。
【実施例2】
【0073】
図6は、実施例2に係る攪拌調理装置に用いられる支持腕を示す図であり、図6(A)は実施例2に係る支持腕の平面図、図6(B)は実施例2に係る支持腕の正面図、図6(C)は実施例2に係る支持腕の右側面図、図6(D)は実施例2に係る支持腕における攪拌羽根の取付座金を図6(A)のB矢視方向から視た正面図、図6(E)は図6(D)に示した取付座金の側面図、図7は、実施例2に係る支持腕に対する攪拌羽根の取付状態を示す説明図である。
【0074】
前述した実施例1に係る支持腕17と、実施例2に係る支持腕31と、の主な相違点は下記の通りである。
【0075】
すなわち、実施例1に係る支持腕17では、軸線方向のほぼ中央部が枢支ピン18によって枢支され、この中央部を境界として左右対称に構成されているのに対し、実施例2に係る支持腕31では、図6(A),(B)に示すように、軸線方向の中央部から所定距離オフセットした位置に枢支部33が設けられて左右非対称に構成されており、支持腕に係る対称性の点で、実施例1と相違している。
【0076】
また、実施例1に係る支持腕17では、その両先端部17a,17bに、ほぼ同等の大きさ、形状、及び材質を有する攪拌羽根19a,19bがそれぞれ配設されているのに対し、実施例2に係る支持腕31では、図6に示すように、その両先端部35,37に、相互に異なる大きさ(相互に異なる形状、材質としてもよい)を有する攪拌羽根41a,41bがそれぞれ配設されており、支持腕に配設される攪拌羽根の大きさ等の物性の点で、実施例1と相違している。
【0077】
さらに、実施例1では、一対の各攪拌羽根19a,19bに設定されるナガレ角αは共通であり、各攪拌羽根19a,19bの正転回動時には、加熱釜2の外周方向へと流動させるように各攪拌羽根19a,19bが食材を攪拌するのに対し、実施例2では、一対の各攪拌羽根41a,41bに設定されるナガレ角αは相互に異なっており、各攪拌羽根41a,41bの正転回動時には、図6に示すように、小型の攪拌羽根41aは内周方向へと巻き込み流動させながら食材を攪拌する一方、大型の攪拌羽根41bは外周方向へと押し出し流動させながら食材を攪拌するように構成されており、一対の各攪拌羽根に設定されるナガレ角αの点で、実施例1と相違している。
【0078】
次に、実施例2に係る支持腕31について詳しく説明すると、支持腕31には、図6(A),(B)に示すように、軸線方向の中央部分からオフセットした位置に、枢支ピン18が挿通される枢支孔33aを有する枢支部33が設けてある。
【0079】
支持腕31における枢支部33を境とした一側には、短軸の第1腕部31aと、この第1腕部31aからほぼ直角方向に延びる第1枝部32aと、第1枝部32aの先端部分に設けられ、第1攪拌羽根41aを取り付けるための取付孔35aを有する第1取付座金(図6(D),(E)参照)35と、がそれぞれ設けてある。この第1取付座金35は、図6(A)に示すように、支持腕31の軸線方向に対して所定の角度θ1をもって傾斜配置されている。
【0080】
支持腕31における枢支部33を境とした他側には、長軸の第2腕部31bと、この第2腕部31bからほぼ直角方向に延びる第2枝部32bと、第2枝部32bの先端部分に設けられ、第2攪拌羽根41bを取り付けるための取付孔37aを有する第2取付座金37と、がそれぞれ設けてある。この第2取付座金37は、図6(A)に示すように、支持腕31の軸線方向に対して所定の角度θ2をもって傾斜配置されている。
【0081】
第1,第2腕部31a,31bのそれぞれからほぼ直角方向に延びる第1,第2枝部32a,32bの各々は、図6(C)に示すように、側面方向から視て鉛直方向に対して左右対称となるように所定の角度θ3(例えば20度等の、適宜変更可能な角度)をもって傾斜配置されている。
【0082】
なお、図7において、P点は公転軸芯を示し、Q点は自転軸芯を示す。また、図7に示すように、第2攪拌羽根41bでは、食材を外周方向へと押し出し流動させながら攪拌する効果を高める目的で、その外周側先端部分43が湾曲形成されている。
【0083】
小型の第1攪拌羽根41aは、加熱釜2の中心部における食材を掻き取る役割を主として果たす一方、大型の第2攪拌羽根41bは、加熱釜2の外周部における食材を掻き取る役割を主として果たす。これら一対の攪拌羽根41a,41bの連係動作によって、加熱釜2内に置かれた食材を隈無く掻き取り得るように構成されている。
【0084】
上述した構成を採る一対の攪拌羽根41a,41bでは、両羽根間の狭間をできるだけ広く空けるように構成することで、この狭間を通してあん等の食材が円滑に移動できるように配慮することが重要である。
【0085】
次に、実施例2に係る攪拌調理装置の動作について説明する。
【0086】
食材の粘度が低い時には正転回動のみを行い、食材の粘度が所定値を越えてきた時には正転回動及び反転回動を周期的に繰り返す。なお、駆動制御部25の動作については、実施例1と同様である。
【0087】
反転回動によって、加熱釜2の内底面に食材が層状に塗りつけられて、底面から食材が加熱されて温度が上昇し、食材の含有水分の蒸発が促進される。
【0088】
正転回動に移ると、攪拌羽根41a,41bは徐々に層を削りながら加熱釜2の内底面に到達し、全体を掻き取る。このとき、食材における上下方向の混合が促進され均一な混合ができ、内部への熱移動が促進され、食材の温度がほぼ均一化する。このように、効率の良い攪拌動作が、加熱時間の短縮化をもたらすことになる。
【0089】
そして、再び反転回動すると、加熱釜2の内底面に食材が層状に再び塗りつけられる。こうした工程を繰り返すことにより、高粘度物、塑性物の加熱混合、蒸発濃縮などの場面において、食材を焦げ付かせることなく効率良く加熱混合することができる。
【0090】
上述した基本的な動作に加えて、実施例2に係る一対の攪拌羽根41a,41bでは、両羽根間の狭間を通してあん等の食材が円滑に移動可能となる結果として、従来の攪拌羽根と比べて食材の混合効率を格段に向上することができる。
【0091】
ここで、攪拌羽根の面積を大きく構成すると、食材の連廻りが起き易くなる。従って、食材の連廻りを抑制する観点からは、攪拌羽根の面積は小さい方が好ましい。ところが、本発明に係る攪拌調理装置では、加熱釜2の内底面全体の食材を隈無く掻き取るべき要請がある。
【0092】
こうした諸点を勘案し、これらをバランスよく調整したのが、実施例2に係る攪拌羽根41a,41bである。
【0093】
なお、実施例2に係る一対の攪拌羽根41a,41bでは、攪拌羽根の大きさ及び支持腕の長さを左右非対称に構成したので、支持腕及び攪拌羽根の左右のモーメントはアンバランスとなる。
【0094】
これにより、食材に乱流を生じさせて攪拌能力を高めることができる反面、食材の負荷が増大すると、正転回動時では加熱釜2の内底面から一方の攪拌羽根が離れて、加熱釜2の内底面に密着せず食材の掻き取りが不十分になるおそれがある。一方、反転回動時では、攪拌羽根は傾斜した状態で食材の上へと移動してゆく。すなわち、攪拌羽根は、加熱釜2の外周側では水平状態から起立してゆく。
【0095】
こうした攪拌羽根の挙動を抑制するために、支持腕31の揺動範囲を水平から所定角度(例えば12度等の、適宜変更可能な角度)までに規制するとともに、支持腕31に配設した攪拌羽根の揺動範囲を水平から所定角度(例えば15度等の、適宜変更可能な角度)までに規制する構成を採用することができる。
【0096】
このように構成すれば、高負荷時の正転回動時であっても、一対の攪拌羽根41a,41bが加熱釜2の内底面に密着しながら食材を隈無く掻き取る効果を期待することができ、食材を焦げ付かせることなく、加熱下で効率良く攪拌混合することができる。
[その他]
本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、あるいは技術思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う攪拌調理装置もまた、本発明における技術的範囲の射程に包含される。
【0097】
すなわち、例えば、本発明実施例において、攪拌駆動軸15の下端部に枢着された支持腕17に一対の攪拌羽根19a,19bを配設する例をあげて説明したが、本発明はこの例に限定されることなく、支持腕の構成を省略し、攪拌駆動軸の外周方向に延びて軸線方向に対する傾斜姿勢を保ち当該軸線方向に移動可能に攪拌羽根を設ける構成を採用してもよい。
【0098】
また、支持腕17における一方の端部のみに一つの攪拌羽根19aを配設する構成を採用してもよい。この場合、図4に示すように、攪拌羽根19aの外周側の先端L1が実線に示す軌跡を描いて回動し、かつ、加熱釜2の中心側に位置する攪拌羽根19aの後端L2は鎖線に示す軌跡を描いて回動するため、攪拌羽根19a全体では加熱釜2の内底面の全領域にわたり摺接移動して、被攪拌物である食材を隈無く攪拌することができる。
【0099】
最後に、本発明実施例において、公転及び自転可能な攪拌駆動軸15を有する攪拌調理装置を例示して説明したが、本発明はこの例に限定されることなく、自転のみが可能な攪拌駆動軸15を有する攪拌調理装置であっても、本発明を適用可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0100】
1 攪拌調理装置(実施例1)
2 加熱釜(加熱容器、実施例1,2)
3 筐体カバー(実施例1,2)
4 無端チェーン(実施例1,2)
5 駆動伝達軸(実施例1,2)
7 主動歯車(実施例1,2)
8 従動歯車(実施例1,2)
9 太陽軸(実施例1,2)
10 軸受(実施例1,2)
11 太陽歯車(実施例1,2)
12 遊星軸(実施例1,2)
13 遊星歯車(実施例1,2)
15 攪拌駆動軸(実施例1,2)
15a 連結軸(実施例1,2)
15b 中空軸管(実施例1,2)
15c 下端部(実施例1,2)
15d 摺動部材(実施例1,2)
16 連結機構(実施例1,2)
16a コイルスプリング(弾性部材)
16A 付勢手段(実施例1,2)
17 支持腕(実施例1)
17a,17b 左,右先端部(実施例1)
17c,17d 左,右折曲端部(実施例1)
17e 支持腕の軸線方向(実施例1)
18 枢支ピン(実施例1,2)
19a,19b 攪拌羽根(実施例1)
21 蛇腹(実施例1,2)
22 レール(実施例1,2)
23 食材当接面
25 駆動制御部(実施例1,2)
27 重量センサ(実施例1,2)
31 支持腕(実施例2)
33 枢支部(実施例2)
35 第1取付座金(実施例2)
37 第2取付座金(実施例2)
41a 第1攪拌羽根(実施例2)
41b 第2攪拌羽根(実施例2)
43 第2攪拌羽根の外周側先端部分(実施例2)
M モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理対象となる被撹拌物を収容し加熱可能な加熱容器と、
前記加熱容器内に垂下させて設けられた攪拌駆動軸と、
前記攪拌駆動軸の下端部に、当該駆動軸の外周方向に延びて前記軸線方向に対する傾斜姿勢を保ち当該軸線方向に移動可能に支持された少なくとも1つの攪拌羽根と、
前記攪拌駆動軸の回動に連れて回動する前記攪拌羽根によって前記被撹拌物を撹拌するための駆動制御を行う駆動制御部と、
を備え、
前記駆動制御部は、前記攪拌羽根の回動方向を正転方向及び反転方向に切り換える駆動制御を行い、
前記攪拌羽根は、その正転回動時には、前記被攪拌物を前記加熱容器の底部から掻き取ってすくい上げる攪拌動作を行う一方、その反転回動時には、前記加熱容器の底部から浮上しつつ前記被攪拌物を全体的に前記底部側へと押し付けるように動作する、
ことを特徴とする攪拌調理装置。
【請求項2】
請求項1記載の攪拌調理装置であって、
前記攪拌駆動軸を、軸線方向に伸縮可能に構成し、
前記攪拌駆動軸の下端部に、当該駆動軸の外周方向に延びて該駆動軸に連れて回動する支持腕を設け、
前記支持腕に、前記攪拌駆動軸の軸線方向に対して所定角度傾斜させて前記攪拌羽根を配設し、
前記攪拌駆動軸に、前記攪拌羽根を前記加熱容器の底部方向に付勢する付勢手段を設け、
前記攪拌羽根の反転回動時に当該攪拌羽根に生じる浮上力が前記付勢手段の付勢力に抗して当該攪拌羽根を前記被攪拌物の上部まで浮上させ得るように、前記付勢手段の付勢力の大きさを設定した、
ことを特徴とする攪拌調理装置。
【請求項3】
請求項2記載の攪拌調理装置であって、
前記攪拌羽根は、その正転方向前方に鈍角となるスクイ角を形成するとともに、前記支持腕の軸線方向に対して前記正転方向の後方側へ鋭角に開くナガレ角を形成するように、前記支持腕に傾斜配置され、
前記スクイ角を95度(鉛直方向に対して5度)乃至160度(鉛直方向に対して70度)の範囲に設定するとともに、前記ナガレ角を5度乃至45度の範囲に設定した、
ことを特徴とする攪拌調理装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の攪拌調理装置であって、
前記攪拌駆動軸の下端部に前記支持腕を左右対称に枢着し、当該支持腕の両端部にそれぞれ前記攪拌羽根を配設した、
ことを特徴とする攪拌調理装置。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の攪拌調理装置であって、
前記攪拌駆動軸の下端部に前記支持腕を左右非対称に枢着し、当該支持腕の両端部にそれぞれ配設される前記攪拌羽根の寸法又は形状を相互に異ならせた、
ことを特徴とする攪拌調理装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の攪拌調理装置であって、
前記攪拌駆動軸の下端部に前記支持腕をシーソー揺動自在に枢着し、当該シーソー揺動の動作範囲を規制する規制部材を前記支持腕の近傍に設けた、
ことを特徴とする攪拌調理装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の攪拌調理装置であって、
太陽歯車の外周に噛合い自転及び公転する遊星歯車を備え、鉛直方向に対して所定の傾斜角度をもつ遊星軸に前記攪拌駆動軸を連結した、
ことを特徴とする攪拌調理装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の攪拌調理装置であって、
前記駆動制御部は、前記被攪拌物の粘性に基づいて前記攪拌羽根を反転回動させる頻度を変更し、当該変更した頻度に従って前記攪拌羽根を正転方向及び反転方向に交互に回動させる駆動制御を行う、
ことを特徴とする攪拌調理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−187946(P2010−187946A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35882(P2009−35882)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000125587)梶原工業株式会社 (24)
【Fターム(参考)】