説明

放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置

【課題】放射線画像撮影装置を用いて連携方式でも非連携方式でも放射線画像撮影を行うことができるように構成する場合に、放射線画像に輝度の段差が生じることを的確に防止し、放射線技師にとって使い勝手の良い放射線画像撮影システムを提供する。
【解決手段】放射線画像撮影システム50における放射線画像撮影装置1は、撮影方式を、放射線発生装置55との間で連携を取りながら放射線画像撮影を行う連携方式と、放射線発生装置55との間で連携をとらずに放射線画像撮影を行う非連携方式との間で切り替え可能とされており、コンソール58は、放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった後、放射線源52から当該放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射させることが許容されるまでの待機時間WTc、WTncを、連携方式の場合と非連携方式の場合とで切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照射されたX線等の放射線の線量に応じて検出素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる直接型の放射線画像撮影装置や、照射された放射線をシンチレーター等で可視光等の他の波長の電磁波に変換した後、変換され照射された電磁波のエネルギーに応じてフォトダイオード等の光電変換素子で電荷を発生させて電気信号(すなわち画像データ)に変換するいわゆる間接型の放射線画像撮影装置が種々開発されている。なお、本発明では、直接型の放射線画像撮影装置における検出素子や、間接型の放射線画像撮影装置における光電変換素子を、あわせて放射線検出素子という。
【0003】
このタイプの放射線画像撮影装置はFPD(Flat Panel Detector)として知られており、従来は支持台と一体的に形成された、いわゆる専用機型として構成されていたが(例えば特許文献1参照)、近年、放射線検出素子等を筐体内に収納し、持ち運び可能とした可搬型の放射線画像撮影装置が開発され、実用化されている(例えば特許文献2、3参照)。
【0004】
このような放射線画像撮影装置では、例えば後述する図7等に示すように、通常、複数の放射線検出素子7が、検出部P上に二次元状(マトリクス状)に配列され、各放射線検出素子7にそれぞれ薄膜トランジスター(Thin Film Transistor。以下、TFTという。)8で形成されたスイッチ手段が接続されて構成される。
【0005】
そして、放射線画像撮影では、放射線発生装置の放射線源から放射線画像撮影装置に対して、被写体を介した状態で放射線が照射されて行われる。そして、放射線の照射により放射線検出素子7内に蓄積された電荷が信号線6に順次放出され、画像データに変換されて読み出される。
【0006】
従来の放射線画像撮影装置では、後述するように、放射線画像撮影前に走査線5にオン電圧が順次印加されて各放射線検出素子7のリセット処理が行われる(後述する図13参照)。そして、放射線を照射するために、放射線技師により放射線発生装置55(後述する図11や図12参照)の曝射スイッチ56が操作されると、後述する図14に示すように、放射線発生装置55から放射線画像撮影装置に対して照射開始信号が送信される。
【0007】
そして、放射線画像撮影装置が1面分のリセット処理Rmを終了した時点で電荷蓄積状態に移行するとともに、放射線発生装置55にインターロック解除信号を送信する。そして、放射線発生装置55はこのインターロック解除信号を受信して初めて放射線源52から放射線を照射する。このようにして放射線画像撮影が行われることが多かった。
【0008】
なお、これらの処理の流れについては後で詳しく説明する。また、以下、このように放射線画像撮影装置と放射線発生装置との間で信号のやり取りを行い、放射線発生装置との間で連携を取りながら放射線画像撮影を行う方式を、連携方式という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−73144号公報
【特許文献2】特開2006−058124号公報
【特許文献3】特開平6−342099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、放射線画像撮影装置と放射線発生装置の製造メーカーが異なっているような場合には、両者の間でインターフェースを構築して上記のように互いに信号等をやり取りして連携しながら放射線画像撮影を行うように構成することが必ずしも容易でない場合がある。
【0011】
そのため、このような場合には、放射線画像撮影装置自体で放射線の照射が開始されたことを検出して放射線画像撮影を行うように構成することが必要となる。なお、以下、このように、放射線画像撮影装置と放射線発生装置との間で連携をとれない(或いはとらない)状態で放射線画像撮影を行う方式を、非連携方式という。
【0012】
そして、本発明者らが研究を重ねた結果、放射線画像撮影装置自体で放射線の照射が開始されたことを的確に検出できるいくつかの新たな検出手法を開発することができた。そして、このような新たな検出手法を用いれば、放射線発生装置側との間で信号等のやり取りを行うことができない非連携方式においても、的確に放射線画像撮影を行うことが可能となることが分かっている。
【0013】
しかし、その一方で、例えば、従来の連携方式で放射線画像撮影を行う場合に放射線画像撮影装置に設定されるパラメーターを、このような新たな検出手法を採用した場合にそのまま適用すると、必ずしも好適な放射線画像が得られない場合があることも分かってきた。
【0014】
そして、このような場合に、放射線画像撮影装置を、連携方式でも非連携方式でも放射線画像撮影を行うことができるように構成する場合、連携方式におけるパラメーターを非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に適用すると上記のような弊害が生じ得るが、逆に、非連携方式に適するようにパラメーターを替えた場合には、今度は連携方式で放射線画像撮影を行う際に、例えば放射線画像撮影装置や放射線画像撮影システムが放射線技師にとって使い勝手が悪くなる等の弊害が生じ得ることも分かってきた。
【0015】
例えば、放射線画像撮影装置における消費電力を低減させるために、走査駆動手段15や各読み出し回路17(後述する図7参照)に電力を供給したりバイアス電源14から各放射線検出素子7に逆バイアス電圧を印加する等して放射線画像撮影を行うことができる状態である撮影可能モードと、それらの電力の供給を停止し、アンテナ装置41等の必要な機能部にのみ電力を供給するスリープ(sleep)モードとの間で、放射線画像撮影装置の電力消費モードを切り替えることができるように構成されている場合がある。なお、スリープモードでは、放射線画像撮影を行うことができない。
【0016】
このような場合、放射線画像撮影装置の電力消費モードをスリープモードから撮影可能モードに切り替えると、後述するように、通常、切り替え直後にすぐに放射線画像撮影を行うことができず、放射線画像撮影装置を所定時間待機させた後で初めて、放射線源52から放射線画像撮影装置に対して放射線を照射させることが許容される。
【0017】
なお、このように放射線画像撮影装置の電力消費モードがスリープモードから撮影可能モードに切り替えられたり、或いは放射線画像撮影装置の電源がオンされる等して、放射線画像撮影装置が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった後、実際に放射線源52から放射線画像撮影装置に対して放射線を照射させることが許容されるまでの経過時間を、以下、待機時間という。
【0018】
そして、放射線画像撮影装置では、連携方式で放射線画像撮影を行う場合における待機時間が設定されている場合があるが、非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に、この待機時間だけ待機させた後で放射線画像撮影を行うと、後述するように、放射線画像中に輝度の段差が現れてしまう場合がある。
【0019】
一方、非連携方式の場合に上記のような輝度の段差が生じないように待機時間を設定すると、今度は、連携方式で放射線画像撮影を行う場合に、必要以上に長い時間待機しなければならなくなり、放射線画像撮影装置や放射線画像撮影システムが放射線技師にとって使い勝手が悪くなってしまうといった問題が生じる。
【0020】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、放射線画像撮影装置を用いて連携方式でも非連携方式でも放射線画像撮影を行うことができるように構成する場合に、放射線画像に輝度の段差が生じることを的確に防止し、かつ、放射線技師にとって使い勝手の良い放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記の問題を解決するために、本発明の放射線画像撮影システムは、
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子を備える検出部と、
前記各走査線に対して印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替える走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置との間で信号の送受信を行い、前記画像データを送信するための通信手段と、
を備える放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置に放射線を照射する放射線源を備える放射線発生装置と、
前記放射線画像撮影装置と通信可能なコンソールと、
を備え、
前記放射線画像撮影装置は、撮影方式を、前記放射線発生装置との間で連携を取りながら放射線画像撮影を行う連携方式と、前記放射線発生装置との間で連携をとらずに放射線画像撮影を行う非連携方式との間で切り替え可能とされており、
前記コンソールは、前記放射線画像撮影装置が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった後、前記放射線源から当該放射線画像撮影装置に対して放射線を照射させることが許容されるまでの待機時間を、前記連携方式の場合と前記非連携方式の場合とで切り替えることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の放射線画像撮影装置は、
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子を備える検出部と、
前記各走査線に対して印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替える走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
コンソールとの間で信号の送受信を行い、前記画像データを送信するための通信手段と、
を備え、
前記制御手段は、読み出される前記リークデータの値または前記照射開始検出用の画像データの値を解析して、前記リークデータまたは前記照射開始検出用の画像データの微分値が所定の閾値以下になった時点で、前記コンソールに対して、放射線を照射することを許容する旨の信号を送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明のような方式の放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置によれば、連携方式でも非連携方式でも放射線画像撮影を行うことができるように構成された放射線画像撮影装置を用いる場合に、放射線画像撮影を連携方式で行う場合には連携方式の場合の待機時間WTcが、また、放射線画像撮影を非連携方式で行う場合には非連携方式の場合の待機時間WTncが、それぞれ的確に適用されるようになる(なお、待機時間WTc、WTncについては例えば後述する図30等参照)。
【0024】
そのため、放射線画像撮影を非連携方式で行うにもかかわらず、非連携方式の場合の待機時間よりも短い連携方式の場合の待機時間が適用されてしまい、読み出される画像データDやそれに基づいて生成される放射線画像I中に輝度の段差が生じてしまうことを的確に防止することが可能となる。
【0025】
また、放射線画像撮影を連携方式で行うにもかかわらず、連携方式の場合の待機時間よりも長い非連携方式の場合の待機時間が適用されてしまい、放射線技師が、放射線を照射させるまでに必要以上に長い時間待機しなければならなくなることを的確に防止することが可能となる。そのため、放射線画像撮影システムや放射線画像撮影装置が放射線技師にとって使い勝手が良いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図1におけるX−X線に沿う断面図である。
【図3】放射線画像撮影装置のコネクターにケーブルのコネクターを接続した状態を表す斜視図である。
【図4】放射線画像撮影装置の基板の構成を示す平面図である。
【図5】図4の基板上の小領域に形成された放射線検出素子とTFT等の構成を示す拡大図である。
【図6】フレキシブル回路基板やPCB基板等が取り付けられた基板を説明する側面図である。
【図7】放射線画像撮影装置の等価回路を表すブロック図である。
【図8】検出部を構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【図9】各放射線検出素子のリセット処理における電荷リセット用スイッチやTFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図10】画像データの読み出し処理における電荷リセット用スイッチ、パルス信号、TFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図11】放射線画像撮影室等に構築された本実施形態に係る放射線画像撮影システムの構成例を示す図である。
【図12】回診車上に構築された本実施形態に係る放射線画像撮影システムの構成例を示す図である。
【図13】放射線画像撮影装置で行われる各放射線検出素子のリセット処理におけるタイミングチャートである。
【図14】連携方式における照射開始信号の送信、リセット処理の終了および電荷蓄積状態への移行、インターロック解除信号の送信、および放射線の照射のタイミングを表すタイミングチャートである。
【図15】連携方式における各走査線にオン電圧を順次印加するタイミングを表すタイミングチャートである。
【図16】検出手法1においてTFTを介して各放射線検出素子からリークした各電荷がリークデータとして読み出されることを説明する図である。
【図17】リークデータの読み出し処理における電荷リセット用スイッチやTFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図18】放射線画像撮影前にリークデータの読み出し処理と各放射線検出素子のリセット処理を交互に行うように構成した場合の電荷リセット用スイッチ、パルス信号、TFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図19】検出手法1において各走査線にオン電圧を印加するタイミング等を説明するタイミングチャートである。
【図20】読み出されるリークデータの時間的推移の例を表すグラフである。
【図21】検出手法2において放射線画像撮影前に画像データの読み出し処理が繰り返し行われる際の各走査線にオン電圧を順次印加するタイミングを表すタイミングチャートである。
【図22】放射線画像撮影前に画像データの読み出し処理における電荷リセット用スイッチ、パルス信号、TFTのオン/オフのタイミングおよびオン時間ΔTを表すタイミングチャートである。
【図23】検出手法2において各走査線にオン電圧を印加するタイミング等を説明するタイミングチャートである。
【図24】検出部が4つの領域に分割され、各領域に読み出しICがそれぞれ割り当てられた状態を表す図である。
【図25】画像データの中から間引きデータを抽出する仕方の一例を説明する図である。
【図26】電力消費モードがスリープモードから撮影可能モードに切り替えられた時点や電源がオンされた時点からの経過時間tと、各放射線検出素子内で発生する単位時間当たりの電荷量dQとの関係を表すグラフである。
【図27】非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に画像データDや放射線画像I中に生じる輝度の段差を説明する図である。
【図28】(A)は検出ライン、(B)は検出ラインおよび読み出し開始ラインに接続された各放射線検出素子内で蓄積される電荷等を表すグラフである。
【図29】連携方式の場合には画像データDや放射線画像I中に輝度の段差が現れないことを説明する図である。
【図30】読み出し開始ラインと検出ラインとの間で画像データDの輝度の差が許容される差の範囲内に収まる最短時間が非連携方式における待機時間として設定されることを説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0028】
なお、以下では、放射線画像撮影装置として、シンチレーター等を備え、放射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置について説明するが、本発明は、シンチレーター等を介さずに放射線を放射線検出素子で直接検出する、いわゆる直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することができる。
【0029】
また、本発明は、本実施形態で説明する、いわゆる可搬型の放射線画像撮影装置のみならず、例えば支持台等と一体的に形成された専用機型の放射線画像撮影装置に対しても適用することが可能である。
【0030】
[放射線画像撮影装置]
図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観を示す斜視図であり、図2は、図1のX−X線に沿う断面図である。放射線画像撮影装置1は、図1や図2に示すように、筐体2内にシンチレーター3や基板4等で構成されるセンサーパネルSPが収納されている。
【0031】
本実施形態では、筐体2のうち、放射線入射面Rを有する中空の角筒状の筐体本体部2Aは、放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されており、筐体本体部2Aの両側の開口部を蓋部材2B、2Cで閉塞することで筐体2が形成されている。また、筐体2の一方側の蓋部材2Bには、電源スイッチ37や切替スイッチ38、コネクター39、バッテリー状態や放射線画像撮影装置1の稼働状態等を表示するLED等で構成されたインジケーター40等が配置されている。
【0032】
本実施形態では、コネクター39は、例えば図3に示すように、ケーブルCaの先端に設けられたコネクターCが接続されることにより、例えば外部のコンソール58(後述する図11や図12参照)等の装置との間でケーブルCaを介して信号等を送受信したり画像データD等を送信したりする際の有線方式の通信手段として機能するようになっている。
【0033】
また、図示を省略するが、例えば筐体2の反対側の蓋部材2C等に、アンテナ装置41(後述する図7参照)が例えば蓋部材2Cに埋め込む等して設けられており、本実施形態では、このアンテナ装置41が、放射線画像撮影装置1とコンソール58等との間で信号等の無線方式で送受信する場合の通信手段として機能するようになっている。
【0034】
図2に示すように、筐体2の内部には、基板4の下方側に図示しない鉛の薄板等を介して基台31が配置され、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33やバッテリー24等が取り付けられている。また、基板4やシンチレーター3の放射線入射面Rには、それらを保護するためのガラス基板34が配設されている。また、本実施形態では、センサーパネルSPと筐体2の側面との間に緩衝材35が設けられている。
【0035】
シンチレーター3は、基板4の後述する検出部Pに対向する位置に設けられるようになっている。本実施形態では、シンチレーター3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
【0036】
また、本実施形態では、基板4は、ガラス基板で構成されており、図4に示すように、基板4のシンチレーター3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。また、基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
【0037】
このように、走査線5と信号線6で区画された各小領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた小領域rの全体、すなわち図4に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。
【0038】
放射線検出素子7は、放射線画像撮影装置1の筐体2の放射線入射面Rから放射線が入射し、シンチレーター3で放射線から変換された可視光等の電磁波が照射されると、その内部で電子正孔対を発生させる。放射線検出素子7は、このようにして、照射された放射線(本実施形態ではシンチレーター3で放射線から変換された電磁波)を電荷に変換するようになっている。
【0039】
本実施形態では、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスター等を用いることも可能である。各放射線検出素子7は、図4の拡大図である図5に示すように、スイッチ手段であるTFT8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
【0040】
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15から走査線5を介してゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、ソース電極8sやドレイン電極8dを介して放射線検出素子7内に蓄積されている電荷を信号線6に放出させるようになっている。また、TFT8は、接続された走査線5を介してゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、放射線検出素子7内に電荷を蓄積させるようになっている。
【0041】
本実施形態では、図5に示すように、それぞれ列状に配置された複数の放射線検出素子7に1本のバイアス線9が接続されており、図4に示すように、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、各バイアス線9は、基板4の検出部Pの外側の位置で結線10に結束されている。
【0042】
図4に示すように、本実施形態では、各走査線5や各信号線6、バイアス線9の結線10は、それぞれ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう。)11に接続されている。各入出力端子11には、図6に示すように、後述する読み出しIC16や走査駆動手段15のゲートドライバー15bを構成するゲートIC15c等のチップがフィルム上に組み込まれたフレキシブル回路基板(Chip On Film等ともいう。)12が、異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
【0043】
そして、フレキシブル回路基板12は、基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1のセンサーパネルSPが形成されている。なお、図6では、電子部品32等の図示が省略されている。
【0044】
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図7は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図であり、図8は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【0045】
前述したように、基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極7bにそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極7bにそれぞれ逆バイアス電圧(すなわち放射線検出素子7の第1電極7a側にかかる電圧以下の電圧)を印加するようになっている。
【0046】
走査駆動手段15は、配線15dを介してゲートドライバー15bにオン電圧とオフ電圧を供給する電源回路15aと、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替えて各TFT8のオン状態とオフ状態とを切り替えるゲートドライバー15bとを備えている。本実施形態では、ゲートドライバー15bは、複数の前述したゲートIC15c(図6参照)が並設されて構成されている。
【0047】
図7や図8に示すように、各信号線6は、読み出しIC16内に内蔵された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。読み出し回路17は、増幅回路18と相関二重サンプリング回路19等で構成されている。読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサー21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、図7や図8中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。また、図8中では、アナログマルチプレクサー21は省略されている。
【0048】
本実施形態では、増幅回路18は、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列にコンデンサー18bおよび電荷リセット用スイッチ18cが接続され、オペアンプ18a等に電力を供給する電源供給部18dを備えたチャージアンプ回路で構成されている。また、増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子には信号線6が接続されており、増幅回路18の入力側の非反転入力端子には基準電位Vが印加されるようになっている。
【0049】
また、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cは、制御手段22に接続されており、制御手段22によりオン/オフが制御されるようになっている。また、オペアンプ18aと相関二重サンプリング回路19との間には、電荷リセット用スイッチ18cと連動して開閉するスイッチ18eが設けられており、スイッチ18eは、電荷リセット用スイッチ18cがオン/オフ動作と連動してオフ/オン動作するようになっている。
【0050】
放射線画像撮影装置1で、各放射線検出素子7内に残存する電荷を除去するための各放射線検出素子7のリセット処理を行う際には、図9に示すように、電荷リセット用スイッチ18cがオン状態(およびスイッチ18eがオフ状態)とされた状態で、各TFT8がオン状態とされる。
【0051】
そして、オン状態とされた各TFT8を介して各放射線検出素子7から電荷が信号線6に放出され、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cを通過して、オペアンプ18aの出力端子側からオペアンプ18a内を通り、非反転入力端子から出てアースされたり、電源供給部18dに流れ出す。このようにして、各放射線検出素子7のリセット処理が行われるようになっている。
【0052】
一方、各放射線検出素子7からの画像データDの読み出し処理の際には、図10に示すように、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cがオフ状態(およびスイッチ18eがオン状態)とされた状態で、オン状態とされた各TFT8を介して各放射線検出素子7から電荷が信号線6に放出されると、電荷が増幅回路18のコンデンサー18bに蓄積される。
【0053】
増幅回路18では、コンデンサー18bに蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力側から出力されるようになっており、増幅回路18により、各放射線検出素子7から流出した電荷が電荷電圧変換されるようになっている。
【0054】
そして、増幅回路18の出力側に設けられた相関二重サンプリング回路(CDS)19は、各放射線検出素子7から電荷が流出する前に制御手段22からパルス信号Sp1(図10参照)が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vinを保持し、上記のように各放射線検出素子7から流出した電荷が増幅回路18のコンデンサー18bに蓄積された後で、制御手段22からパルス信号Sp2が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vfiを保持する。
【0055】
そして、相関二重サンプリング回路19は、それらの電圧値の差分Vfi−Vinを算出し、算出した差分Vfi−Vinをアナログ値の画像データDとして下流側に出力するようになっている。そして、相関二重サンプリング回路19から出力された各放射線検出素子7の画像データDは、アナログマルチプレクサー21を介して順次A/D変換器20に送信され、A/D変換器20で順次デジタル値の画像データDに変換されて記憶手段23に出力されて順次保存されるようになっている。
【0056】
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピューターや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。そして、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。また、図7等に示すように、制御手段22には、SRAM(Static RAM)やSDRAM(Synchronous DRAM)等で構成される記憶手段23が接続されている。
【0057】
また、本実施形態では、制御手段22には、前述したアンテナ装置41が接続されており、さらに、検出部Pや走査駆動手段15、読み出し回路17、記憶手段23、バイアス電源14等の各部材に電力を供給するためのバッテリー24が接続されている。また、バッテリー24には、図示しない充電装置からバッテリー24に電力を供給してバッテリー24を充電する際の接続端子25が取り付けられている。
【0058】
前述したように、制御手段22は、走査駆動手段15や読み出し回路17等を制御して画像データDの読み出し処理や各放射線検出素子7のリセット処理等を行わせるなど、放射線画像撮影装置1の各機能部の動作を制御するようになっている。
【0059】
また、本実施形態では、前述したように、放射線画像撮影装置1は、消費電力を低減させるために、走査駆動手段15や各読み出し回路17に電力を供給したりバイアス電源14から各放射線検出素子7に逆バイアス電圧を印加する等して放射線画像撮影を行うことが可能な撮影可能モードと、それらの電力の供給を停止し、アンテナ装置41等の必要な機能部にのみ電力を供給するスリープモードとの間で、電力消費モードを切り替えることができるように構成されている。なお、スリープモードでは、放射線画像撮影を行うことができない。
【0060】
この電力消費モードの切り替えは、本実施形態では、コンソール58から放射線画像撮影装置1に対してスリープモードから撮影可能モードに切り替えるための覚醒(wake up)信号等を送信したり、放射線技師が切替スイッチ38(図1参照)を操作することにより行うことができるようになっている。
【0061】
なお、制御手段22は、切替スイッチ38が操作されて電力消費モードがスリープモードから撮影可能モードに切り替えられた場合には、コンソール58に対して撮影可能モードに切り替えられたことを表す信号を送信するようになっている。また、制御手段22は、放射線技師により電源スイッチ37が操作されて電源がオンされた際、および電源がオフされる際には電源がオフになる前に、コンソール58に対して電源がオン或いはオフされたことを表す信号を送信するようになっている。
【0062】
また、本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、非連携方式で放射線画像撮影を行う場合には、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射開始を検出するようになっているが、そのための制御構成等については、本実施形態に係る放射線画像撮影システムの構成等を説明した後で説明する。
【0063】
[放射線画像撮影システム]
次に、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50について説明する。図11は、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50の構成例を示す図である。図11では、放射線画像撮影システム50が放射線画像撮影室R1内等に構築されている場合が示されている。
【0064】
放射線画像撮影室R1には、ブッキー装置51が設置されており、ブッキー装置51は、そのカセッテ保持部(カセッテホルダともいう。)51aに上記の放射線画像撮影装置1を装填して用いることができるようになっている。なお、図11では、ブッキー装置51として、立位放射線画像撮影用のブッキー装置51Aと臥位放射線画像撮影用のブッキー装置51Bが設置されている場合が示されているが、例えば一方のブッキー装置51のみが設けられていてもよい。
【0065】
図11に示すように、放射線画像撮影室R1には、被写体を介してブッキー装置51に装填された放射線画像撮影装置1に放射線を照射する放射線源52Aが少なくとも1つ設けられている。本実施形態では、放射線源52Aの位置を移動させたり、放射線の照射方向を変えることで、立位放射線画像撮影用のブッキー装置51Aと臥位放射線画像撮影用のブッキー装置51Bのいずれにも放射線を照射することができるようになっている。
【0066】
放射線画像撮影室R1には、放射線画像撮影室R1内の各装置等や放射線画像撮影室R1外の各装置等の間の通信等を中継するための中継器(基地局等ともいう。)54が設けられている。なお、本実施形態では、中継器54には、放射線画像撮影装置1が無線方式で画像データDや信号等の送受信を行うことができるように、無線アンテナ(アクセスポイントともいう。)53が設けられている。
【0067】
また、中継器54は、放射線発生装置55やコンソール58と接続されており、中継器54には、放射線画像撮影装置1やコンソール58等から放射線発生装置55に送信するLAN(Local Area Network)通信用の信号等を放射線発生装置55用の信号等に変換し、また、その逆の変換も行う図示しない変換器が内蔵されている。
【0068】
前室(操作室等ともいう。)R2には、本実施形態では、放射線発生装置55の操作卓57が設けられており、操作卓57には、放射線技師等の操作者が操作して放射線発生装置55に対して放射線の照射開始等を指示するための曝射スイッチ56が設けられている。
【0069】
放射線発生装置55は、放射線源52を所定の位置に移動させたり、その放射方向を調整したり、放射線画像撮影装置1の所定の領域内に放射線が照射されるように図示しない絞りやコリメーター等を調整したり、或いは、適切な線量の放射線が照射されるように放射線源52を調整する等の種々の制御を行うようになっている。
【0070】
図11に示すように、本実施形態では、コンピューター等で構成されたコンソール58が前室R2に設けられている。なお、コンソール58を放射線画像撮影室R1や前室R2の外側や別室等に設けるように構成することも可能であり、適宜の場所に設置される。
【0071】
また、コンソール58には、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等を備えて構成される表示部58aが設けられており、また、図示しないマウスやキーボード等の入力手段を備えている。また、コンソール58には、HDD(Hard Disk Drive)等で構成された記憶手段59が接続され、或いは内蔵されている。
【0072】
一方、放射線画像撮影装置1は、図12に示すように、ブッキー装置51には装填されずに、いわば単独の状態で用いることもできるようになっている。例えば、患者Hが病室R3のベッドBから起き上がれず、放射線画像撮影室R1に行くことができないような場合には、図12に示すように、放射線画像撮影装置1を病室R3内に持ち込み、ベッドBと患者の身体との間に差し込んだり患者の身体にあてがったりして用いることができる。
【0073】
また、放射線画像撮影装置1を病室R3等で用いる場合、前述した放射線画像撮影室R1に据え付けられた放射線発生装置55に代えて、図12に示すように、いわゆるポータブルの放射線発生装置55が例えば回診車71に搭載される等して病室R3に持ち込まれる。この場合、ポータブルの放射線発生装置55の放射線52Pは、任意の方向に放射線を照射できるように構成されており、ベッドBと患者の身体との間に差し込まれたり患者の身体にあてがわれたりした放射線画像撮影装置1に対して、適切な距離や方向から放射線を照射することができるようになっている。
【0074】
また、この場合、無線アンテナ53が設けられた中継器54が放射線発生装置55内に内蔵されており、上記と同様に、中継器54が放射線発生装置55とコンソール58との間の通信や、放射線画像撮影装置1とコンソール58との間の通信や画像データDの送信等を中継するようになっている。
【0075】
なお、図11に示したように、放射線画像撮影装置1を、放射線画像撮影室R1の臥位放射線画像撮影用のブッキー装置51B上に横臥した患者の身体と臥位放射線画像撮影用のブッキー装置51Bとの間に差し込んだり、臥位放射線画像撮影用のブッキー装置51B上で患者の身体にあてがったりして用いることも可能であり、その場合は、ポータブルの放射線52Pや、放射線画像撮影室R1に据え付けられた放射線源52Aのいずれを用いることも可能である。
【0076】
コンソール58は、放射線画像撮影装置1と無線方式や有線方式で通信できるように構成されており、前述したように、放射線画像撮影装置1に覚醒信号を送信して、放射線画像撮影装置1の電力消費モードをスリープモードから撮影可能モードに切り替えることができるように構成されている。また、コンソール58から放射線画像撮影装置1にスリープ信号を送信して、放射線画像撮影装置1の電力消費モードを撮影可能モードからスリープモードに切り替えることができるように構成することも可能である。
【0077】
そして、コンソール58は、例えば管理する対象となる放射線画像撮影装置1が1機の場合は勿論、複数存在する場合でも、それらの電力消費モードの情報(すなわち撮影可能モードであるかスリープモードであるか)や電源のオン/オフの情報を記憶手段59(図11参照。図12では図示が省略されているがコンソール58に接続されている。)に保存する等して、それらの状態を管理するようになっている。
【0078】
また、本実施形態では、コンソール58は、後述するように、放射線画像撮影装置1からプレビュー画像用のデータとして間引きデータDtが送信されてくると、間引きデータDtが送信されてくるごとにプレビュー画像I_preを生成して表示部58a上に表示させるようになっているが、この点については後で説明する。
【0079】
また、コンソール58は、後述するように、続いて放射線画像撮影装置1から残りの画像データD等が送信されてくると、間引きデータDtと残りの画像データDから元の全画像データDを復元し、それらと後述するオフセットデータO等に基づいてゲイン補正や欠陥画素補正、放射線画像撮影部位に応じた諧調処理等の精密な画像処理を行って、最終的な放射線画像Iを生成するようになっている。
【0080】
[各方式で放射線画像撮影を行う場合の処理について]
次に、上記の放射線画像撮影装置1を用い、連携方式で放射線画像撮影を行う場合の処理と、非連携方式で放射線画像撮影を行う場合の処理についてそれぞれ説明する。
【0081】
[連携方式で放射線画像撮影を行う場合の処理]
本実施形態では、放射線画像撮影が連携方式で行われる場合、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、通常、まず、各放射線検出素子7のリセット処理を行うようになっている。各放射線検出素子7のリセット処理では、例えば図13に示すように、走査駆動手段15のゲートドライバー15b(図7参照)から走査線5の各ラインL1〜Lxに対してオン電圧をそれぞれ印加し、各TFT8のゲート電極8gにオン電圧を印加してTFT8をオン状態として、各放射線検出素子7内に残存する電荷を各放射線検出素子7から各信号線6に放出させて除去する。
【0082】
そして、図13に示すように、オン電圧を印加する走査線5を順次切り替えて、走査線5の各ラインL1〜Lxに順次オン電圧を印加して、各放射線検出素子7のリセット処理を繰り返す。制御手段22は、このようにして、走査線5の最初のラインL1から最終ラインLxまで順次オン電圧を印加して行う検出部Pの1面分のリセット処理Rmを繰り返して行うように構成される。
【0083】
そして、図14に示すように、1面分のリセット処理Rmの最中に、前述したように放射線発生装置55側で曝射スイッチ56が操作されて、放射線発生装置55から放射線画像撮影装置1に照射開始信号が送信されてくると、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、照射開始信号が送信されてきた時点で行っている1面分のリセット処理Rmが完了した時点で、各放射線検出素子7のリセット処理を終了する。
【0084】
そして、走査駆動手段15から走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧を印加させて全TFT8をオフ状態として、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生する電荷を各放射線検出素子7内に蓄積させる電荷蓄積状態に移行させる。
【0085】
また、制御手段22は、上記のように1面分のリセット処理Rmが完了した時点で、放射線発生装置55に対してインターロック解除信号を送信する。放射線発生装置55は、中継器54を介して放射線画像撮影装置1からインターロック解除信号を受信すると、放射線源52から放射線を照射させる。
【0086】
放射線画像撮影装置1の制御手段22は、インターロック解除信号を送信した後、放射線発生装置55から放射線の照射を終了したことを表す終了信号が送信されてくると、或いは電荷蓄積状態に移行してから所定の時間が経過した時点で、図15に示すように、走査線5の最初のラインL1から順に、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して、各放射線検出素子7から画像データDをそれぞれ読み出すように構成される。
【0087】
なお、図15中の斜線は、その期間に放射線が照射されたことを表す。また、放射線画像撮影装置1で、照射された放射線の線量を測定できるように構成し、所定の線量の放射線が照射された時点で放射線画像撮影装置1から放射線発生装置55に放射線の照射を終了する信号を送信するように構成することも可能である。
【0088】
[非連携方式で放射線画像撮影を行う場合の処理]
次に、放射線画像撮影が連携方式で行われる場合の放射線画像撮影装置1における処理について説明する。
【0089】
前述したように、非連携方式の場合、放射線画像撮影装置1と放射線発生装置55との間で信号等のやり取りが行われないため、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射が開始されたことを検出して放射線画像撮影を行うことが必要となる。以下、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1で行われる放射線の照射開始の検出の仕方について説明する。
【0090】
なお、本実施形態に係る検出手法は、前述したように、本発明者らの研究により新たに見出された検出手法である。本発明者らの研究により新たに見出された検出手法としては、例えば、下記の2つの検出手法のいずれかを採用することが可能である。
【0091】
[検出手法1]
例えば、放射線画像撮影において放射線画像撮影装置1に放射線が照射される前に、リークデータdleakの読み出し処理を繰り返し行うように構成することが可能である。ここで、リークデータdleakとは、図16に示すように、各走査線5にオフ電圧を印加した状態で、オフ状態になっている各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷qの信号線6ごとの合計値に相当するデータである。
【0092】
そして、リークデータdleakの読み出し処理では、図9に示した各放射線検出素子7のリセット処理や図10に示した画像データDの読み出し処理の場合と異なり、図17に示すように、走査線5の各ラインL1〜Lxにオフ電圧を印加して各TFT8をオフ状態とした状態で、制御手段22から各読み出し回路17の相関二重サンプリング回路19(図7や図8のCDS参照)にパルス信号Sp1、Sp2を送信するようになっている。
【0093】
相関二重サンプリング回路19は、制御手段22からパルス信号Sp1が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vinを保持する。そして、増幅回路18のコンデンサー18bに各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷qが蓄積されて増幅回路18から出力される電圧値が上昇し、制御手段22からパルス信号Sp2が送信されると、相関二重サンプリング回路19は、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vfiを保持する。
【0094】
そして、相関二重サンプリング回路19が電圧値の差分Vfi−Vinを算出して出力した値が、リークデータdleakとなる。リークデータdleakが、その後、A/D変換器20でデジタル値に変換されることは、前述した画像データDの読み出し処理の場合と同様である。
【0095】
ところで、リークデータdleakの読み出し処理のみを繰り返し行うように構成すると、各TFT8がオフ状態のままとなってしまい、各放射線検出素子7内で発生した暗電荷が各放射線検出素子7内に蓄積され続ける状態になってしまう。
【0096】
そのため、上記のように、放射線画像撮影前に、リークデータdleakの読み出し処理を繰り返し行うように構成する場合には、図18に示すように、各走査線5にオフ電圧を印加した状態で行うリークデータdleakの読み出し処理と、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して行う各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に繰り返し行うように構成することが望ましい。なお、図18や後述する図19等のTやτ、Tacについては後で説明する。
【0097】
このように放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理と各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に繰り返して行うように構成した場合、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると、シンチレーター3(図2参照)で放射線から変換された電磁波が、各TFT8に照射される。そして、それにより、各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷q(図18参照)がそれぞれ増加することが本発明者らの研究で分かっている。
【0098】
そして、例えば図19に示すように、放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理と各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に繰り返して行う場合、図20に示すように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始された時点で読み出されたリークデータdleakが、それ以前に読み出されたリークデータdleakよりも格段に大きな値になる。
【0099】
なお、図19および図20では、図19で走査線5のラインL4にオン電圧が印加されてリセット処理が行われた後の4回目の読み出し処理で読み出されたリークデータdleakが、図20の時刻t1におけるリークデータdleakに対応する。また、図19において「R」は各放射線検出素子7のリセット処理を表し、「L」はリークデータdleakの読み出し処理を表す。
【0100】
そこで、放射線画像撮影装置1の制御手段22で、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理で読み出されたリークデータdleakを監視するように構成し、読み出されたリークデータdleakが、例えば予め設定された所定の閾値dleak_th(図20参照)を越えた時点で、放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することができる。なお、以下、上記の走査線5のラインL4のように、放射線の照射が開始された際、或いはその直前にオン電圧が印加された走査線5を、以下、検出ラインという。
【0101】
[検出手法2]
また、上記の検出手法1のように、放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理を行うように構成する代わりに、放射線画像撮影前に、図21に示すように、走査駆動手段15のゲートドライバー15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して、各放射線検出素子7からの画像データdの読み出し処理を繰り返し行うように構成することも可能である。
【0102】
なお、前述したように、放射線画像撮影直後に行われる上記の本画像としての画像データDと区別して、以下、この放射線画像撮影前に放射線の照射開始の検出用に読み出される画像データを、照射開始検出用の画像データdという。
【0103】
また、照射開始検出用の画像データdの読み出し処理における読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフや、相関二重サンプリング回路19へのパルス信号Sp1、Sp2の送信等は、図22に示すように、図10に示した画像データDの読み出し処理における処理と同様に行われる。なお、図22等におけるTやΔTについては後で説明する。
【0104】
上記のように放射線画像撮影前に照射開始検出用の画像データdの読み出し処理を行うように構成した場合、図23に示すように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると、その時点で読み出された照射開始検出用の画像データd(図23では走査線5のラインLnにオン電圧が印加されて読み出された照射開始検出用の画像データd)が、前述した図20に示したリークデータdleakの場合と同様に、それ以前に読み出された照射開始検出用の画像データdよりも格段に大きな値になる。
【0105】
そこで、放射線画像撮影装置1の制御手段22で、放射線画像撮影前の読み出し処理で読み出された照射開始検出用の画像データdを監視するように構成し、読み出された照射開始検出用の画像データdが予め設定された所定の閾値dthを越えた時点で、放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することができる。
【0106】
なお、図23中のΔTやτ、Tacについては以下で説明する。また、図23の場合、検出ラインは走査線5のラインLnである。
【0107】
[検出感度を向上させるための処理について]
また、上記の検出手法1において、放射線画像撮影前の各放射線検出素子7のリセット処理で、ある走査線5に対するオン電圧の印加を開始してから次の走査線5に対するオン電圧の印加を開始するまでの周期τ(図18や図19等参照)を長くして、リークデータdleakの読み出し処理において制御手段22から送信する2回のパルス信号Sp1、Sp2の送信間隔Tを長くすると、1回のリークデータdleakの読み出し処理で読み出されるリークデータdleakの値が大きくなる。
【0108】
また、上記の検出手法2において、放射線画像撮影前の照射開始検出用の画像データdの読み出し処理において、各TFT8をオン状態とする時間ΔT(図22や図23参照)、すなわち走査駆動手段15のゲートドライバー15bから走査線5にオン電圧を印加してからオフ電圧に切り替えるまでの時間ΔT(以下、オン時間ΔTという。)を長くすると、1回の読み出し処理で読み出される照射開始検出用の画像データdの値が大きくなる。
【0109】
そのため、上記のように構成することで、放射線画像撮影装置1における放射線の照射開始の検出感度を向上させることが可能となる。
【0110】
また、図24に示すように、例えば、検出部P(図4や図7等参照)が4つの領域Pa〜Pdに分割されるなど、検出部Pが複数の領域に分割されるように構成される場合がある。このような場合、検出部Pの各領域Pa〜Pdごとに、上記の検出手法1や検出手法2を用いて放射線の照射開始を検出するように構成することが可能である。
【0111】
そして、このように構成すれば、例えば、放射線が放射線画像撮影装置1に対して照射野が狭められて照射され、検出部Pの複数の領域Pa〜Pdのうち1つ或いはいくつかの領域のみに放射線が照射される状態になる場合があるが、そのような場合でも、放射線の照射開始を的確に検出することが可能となる。
【0112】
上記の検出手法1、2のいずれの場合においても、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、上記のようにして放射線の照射が開始されたことを検出すると、図19(検出方法1の場合)や図23(検出方法2の場合)に示すように、放射線の照射開始を検出した時点で各走査線5へのオン電圧の印加を停止して、ゲートドライバー15bから走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧を印加させ、各TFT8をオフ状態にして電荷蓄積状態に移行させる。
【0113】
そして、例えば放射線の照射開始を検出してから所定時間が経過した時点で、制御手段22は、本画像としての画像データDの読み出し処理を行わせるようになっている。
【0114】
本実施形態では、制御手段22は、図19や図23に示すように、前述した検出ライン(図19の場合は走査線5のラインL4、図23の場合は走査線5のラインLn)の次にオン電圧を印加すべき走査線5(図19の場合は走査線5のラインL5、図23の場合は走査線5のラインLn+1)からオン電圧の印加を開始し、各走査線5にオン電圧を順次印加させて、画像データDの読み出し処理を行うようになっている。
【0115】
なお、以下、画像データDの読み出し処理の最初にオン電圧を印加する走査線5(すなわち図19の場合は走査線5のラインL5、図23の場合は走査線5のラインLn+1)を、読み出し開始ラインという。すなわち、本実施形態では、画像データDの読み出し処理では、制御手段22は、検出ラインの次の走査線5(すなわち読み出し開始ライン)からオン電圧の印加を開始して画像データDの読み出し処理を行うようになっている。
【0116】
また、本実施形態では、画像データDの読み出し処理の際に、ゲートドライバー15bから各走査線5にオン電圧を印加する周期が、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理と交互に行われる各放射線検出素子7のリセット処理(検出方法1の場合。図19等参照)や照射開始検出用の画像データdの読み出し処理(検出方法2の場合。図23参照)における周期τと同じ周期になるように、各走査線5にオン電圧を順次印加するようになっている。
【0117】
このように構成すると、電荷蓄積状態への移行前に走査線5に印加したオン電圧をオフ電圧に切り替えてから、電荷蓄積状態を経て画像データDの読み出し処理において当該走査線5に印加したオン電圧をオフ電圧に切り替えるまでの時間Tac(図19や図23参照。以下、実効蓄積時間Tacという。)が、各走査線5で同じ時間になり好ましい。
【0118】
[画像データの読み出し処理後の処理について]
本実施形態では、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、連携方式或いは非連携方式で放射線画像撮影を行い、上記のようにして画像データDの読み出し処理を終了すると、画像データDを所定の割合で間引いて作成した間引きデータDtをプレビュー画像用のデータとしてコンソール58に送信するようになっている。
【0119】
間引きデータDtは、例えば図25に示すように、放射線画像撮影装置1の検出部P(図4や図7参照)のn行、m列目の放射線検出素子7(n,m)から読み出された画像データDをD(n,m)で表すとすると、例えば図中に斜線を付して示すように、予め所定本数(図25の場合は4本)の走査線5の各ラインL1〜Lxごとに1本の割合で指定された走査線5に接続されている各放射線検出素子7から読み出された画像データD(n,m)を抽出して、間引きデータDtを作成するように構成することが可能である。
【0120】
なお、間引きデータDtを、例えば3×3画素や4×4画素ごとに1個の割合で抽出して作成するなど、他の仕方で作成するように構成することも可能である。
【0121】
また、前述したように、コンソール58は、放射線画像撮影装置1からプレビュー画像用のデータとしての間引きデータDtが送信されてくると、間引きデータDtに基づいてプレビュー画像I_pre(図示省略)を生成して表示部58a上に表示させるようになっている。
【0122】
そして、放射線技師等がこのプレビュー画像I_preを見て、撮影が適切に行われたか否かや再撮影が必要か否か等を判断するようになっている。なお、放射線技師等が再撮影が必要と判断した場合には、放射線画像撮影が最初からやり直される。
【0123】
一方、図19や図23に示したように、電荷蓄積状態の間、各TFT8はオフ状態とされるため、各放射線検出素子7内で発生した電荷が各放射線検出素子7内に蓄積される。その際、各放射線検出素子7の内部では、各放射線検出素子7自体の熱(温度)による熱励起等によりいわゆる暗電荷が常時発生しており、その暗電荷も各放射線検出素子7内に蓄積される。
【0124】
そして、読み出し処理で読み出された画像データD中には、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷に起因する有用なデータとともに、暗電荷に起因するオフセット分に相当するデータが含まれる。
【0125】
そこで、本実施形態では、上記のプレビュー画像用のデータの送信後、或いはそれと併行して、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、画像データD中に含まれる上記の暗電荷に起因するオフセット分に相当するデータをオフセットデータOとして読み出すためのオフセットデータOの読み出し処理を行うようになっている。なお、オフセットデータOの読み出し処理が放射線画像撮影の前に行われるように構成することも可能である。
【0126】
本実施形態では、オフセットデータOの読み出し処理は、図15(連携方式の場合)や図19(検出手法1を採用した場合)、図23(検出手法2を採用した場合)に示した一連の処理と同じ処理シーケンスを繰り返して、オフセットデータOの読み出し処理を行うようになっている。なお、その際、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射は行われない。
【0127】
そして、オフセットデータOの読み出し処理が終了すると、本実施形態では、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、前述したプレビュー画像用のデータとしての間引きデータDtに対応するオフセットデータO(すなわち例えば図25の斜線を付した各画像データDに対応するオフセットデータO)、残りの画像データD、および残りのオフセットデータOをそれぞれコンソール58に送信するようになっている。
【0128】
そして、コンソール58は、放射線画像撮影装置1から残りの画像データD等が送信されてくると、前述したように、間引きデータDtと残りの画像データDから元の全ての画像データDを復元し、下記(1)式に従って放射線検出素子7ごとに画像データDからオフセットデータOを減算して、いわゆる真の画像データDを算出する。
=D−O …(1)
【0129】
上記のようにオフセットデータOは、画像データD中に含まれる暗電荷に起因するオフセット分に相当するデータであるため、それを画像データDから減算して算出される真の画像データDは、放射線の照射により放射線検出素子7内で発生した電荷のみに起因する、被写体の情報が担持されたデータになる。
【0130】
そして、コンソール58は、放射線検出素子7ごとに算出した真の画像データDに対してゲイン補正や欠陥画素補正、放射線画像撮影部位に応じた階調処理等の精密な画像処理を行って、最終的な放射線画像Iを生成するようになっている。
【0131】
[待機時間の問題について]
ところで、上記のような構成の放射線画像撮影システム50では、前述したように、放射線画像撮影装置1の電力消費モードがスリープモードから撮影可能モードに切り替えられたり、放射線画像撮影装置1の電源がオンされて、放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になってから、実際に放射線源52から放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射させることが許容されるまでの待機時間が問題になる。
【0132】
以下、この待機時間の設定の仕方等を含む、放射線画像撮影装置1における電力消費モードや電源のオン/オフを切り替えた直後の処理について説明する。また、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50や放射線画像撮影装置1の作用についてもあわせて説明する。
【0133】
[待機時間の設定の仕方について]
[連携方式の場合]
前述したように、従来から、放射線画像撮影装置1の電力消費モードをスリープモードから撮影可能モードに切り替えたり電源をオンする際、連携方式で放射線画像撮影を行う放射線画像撮影装置1の場合、切り替え直後にすぐに放射線源52(図11等参照)から放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射させないように構成される場合がある。
【0134】
これは、図26に示すように、スリープモードから撮影可能モードに切り替えられた直後や電源がオンされた直後(図中の時刻0)には、各放射線検出素子7内で発生する単位時間当たりの電荷量dQが多く、その時点で画像データDの読み出し処理を行うと、上記の電荷蓄積状態(図15参照)の継続中に各放射線検出素子7内に蓄積される、放射線の照射により発生する電荷以外の電荷の量が多くなり過ぎる場合があるためである。
【0135】
例えば、この状態で放射線画像撮影を行って画像データDを読み出すと、画像データD中に含まれる上記の電荷量dQに対応するオフセット分が大きくなるため、画像データDのS/N比が悪化する。そして、そのような画像データDに基づいて放射線画像Iを生成すると、生成された放射線画像I中に比較的大きなノイズが重畳された状態になり、放射線画像Iの画質が劣化したものになってしまう。
【0136】
なお、図26は、スリープモードから撮影可能モードに切り替えられた時点や電源がオンされた時点(時刻0)からの経過時間tと、各放射線検出素子7内で発生する単位時間当たりの電荷量dQとの関係を表すグラフである。また、時間tが経過するにつれて各放射線検出素子7内で発生する単位時間当たりの電荷量dQは減少していき、前述した暗電荷の発生量に等しい値に落ち着いていく。
【0137】
そして、上記のような事態が生じることを防止し、画像データDのS/N比等が許容される範囲内に収まるようにするために、図26に示すように、各放射線検出素子7内で発生する単位時間当たりの電荷量dQに対して閾値dQthが設けられる。そして、スリープモードから撮影可能モードに切り替えられる等してから、各放射線検出素子7内で発生する単位時間当たりの電荷量dQが閾値dQth以下に低下するまで、放射線源52(図11等参照)から放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射させないように構成される。
【0138】
この各放射線検出素子7内で発生する単位時間当たりの電荷量dQが閾値dQthに低下するまで待機させる時間WTが、前述した待機時間になる。
【0139】
なお、この場合の待機時間WTを、連携方式における待機時間という意味で、待機時間WTcと表す。そして、この待機時間WTcが経過した後は、少なくとも各放射線検出素子7内で発生する単位時間当たりの電荷量dQが十分小さくなり、それによる画像データDのS/N比の劣化を許容範囲内に抑制することが可能となる。
【0140】
ところで、上記の連携方式における待機時間WTcは、必ずしも1つの待機時間WTcとして設定される訳ではない。すなわち、放射線画像撮影装置1の電力消費モードがスリープモードから撮影可能モードに切り替えられた場合には、上記のように放射線画像撮影装置1では速やかに各放射線検出素子7のリセット処理(図13等参照)が開始される。
【0141】
それに対し、電源がオンされて放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった場合には、各放射線検出素子7のリセット処理を開始する前に、走査駆動手段15や各読み出し回路17、バイアス電源14(図7参照)等を起動させる等の処理が必要になる。また、それらを起動させた後、所定時間、図13に示した各放射線検出素子7のリセット処理等を行うように構成される場合もある。
【0142】
そのため、同じ連携方式で放射線画像撮影を行う場合であっても、スリープモードから撮影可能モードに切り替えられた場合と、電源がオンされた場合とでは、上記の待機時間WTcは、通常、異なる時間とされる。そして、これらの各待機時間WTcは、放射線画像撮影装置1ごとに、工場出荷時や施設への導入時等に予め設定され、通常、固定された時間WTcとして設定される。なお、放射線画像撮影装置1のメンテナンス時等にこれらの待機時間WTcを設定し直すように構成することも可能である。
【0143】
[非連携方式の場合]
一方、本発明者らの研究では、非連携方式で放射線画像撮影が行われる際に、すなわち上記の検出手法1や検出手法2を用いて放射線画像撮影が行われる際に、上記の連携方式の場合の待機時間WTcを用いると、弊害が生じ得ることが分かった。
【0144】
いま仮に、非連携方式で放射線画像撮影を行う際に、放射線画像撮影装置1の電力消費モードが撮影可能モードに切り替えられたり電源がオンされてから連携方式の場合の待機時間WTcが経過した時点やその直後に、放射線画像撮影装置1に対して放射線源52から放射線を照射させて放射線画像撮影を行ったとする。
【0145】
すると、図27に示すように、読み出される画像データDやそれに基づいて生成される放射線画像I中の、上記の検出ライン(図中のLn参照)と読み出し開始ライン(図中のLn+1参照)の間に輝度の段差が現れる場合があることが分かった。なお、図27および後述する図29では、輝度の違いが濃淡で表されており(なお明るい方が画像データD等の値が大きい。)、輝度の違いが極端に強調して表現されているが、実際には、輝度の違いや段差は僅かである。
【0146】
このような現象が現れる原因は、以下のように考えられている。すなわち、例えば図26における待機時間WTcに放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されたとする。また、その際、検出ラインが例えば走査線5のラインLnであったとする。すると、放射線画像撮影装置1はその時点WTcから電荷蓄積状態に移行するため、検出ラインLnでは、その時点WTcからTFT8がオフ状態とされる。
【0147】
そして、図19や図23に示したように、検出ラインLn(図19では検出ラインL4)では、その後、画像データDの読み出し処理が行われるまで、実効蓄積時間Tacの間、TFT8がオフされる状態が続く。そのため、検出ラインLnでは、図28(A)に示すように、待機時間WTcから実効蓄積時間Tacの間、TFT8がオフ状態とされ、その間、図中に斜線を付して示した面積に相当する電荷Q(すなわち上記の単位時間当たりに発生する電荷量dQの積分値)が、各放射線検出素子7内に、画像データDに重畳されるオフセット分に相当する電荷Qとして蓄積される。
【0148】
一方、図19や図23では図示を省略したが、読み出し開始ラインLn+1(図19では検出ラインL5)では、検出ラインLn(図19では検出ラインL4)にオン電圧が印加されるよりも前にオン電圧が印加され、先に実効蓄積時間Tacの経過が開始されている。
【0149】
そのため、読み出し開始ラインLn+1では、図28(B)に示すように、検出ラインLnよりも先に実効蓄積時間Tacが始まり、検出ラインLnよりも先に実効蓄積時間Tacの経過が終了して画像データDの読み出し処理が行われる。
【0150】
なお、前述したように、本実施形態では、検出ラインLnの実効蓄積時間Tacと読み出し開始ラインLn+1の実効蓄積時間Tacは同じ時間とされている。また、図28(B)において読み出し開始ラインLn+1の実効蓄積時間Tacと検出ラインLnの実効蓄積時間Tacとが重なっている時間が、上記の電荷蓄積状態の継続時間に相当する。
【0151】
上記の場合、図28(B)に示すように、読み出し開始ラインLn+1に接続されている各放射線検出素子7の方が、検出ラインLnに接続されている各放射線検出素子7よりも、その内部に蓄積される電荷Q、すなわち画像データDに重畳されるオフセット分に相当する電荷Qが多くなる。
【0152】
そのため、例えば放射線画像撮影装置1に被写体が存在しない状態で一様に放射線を照射した場合でも、読み出される画像データDは、読み出し開始ラインLn+1に接続されている各放射線検出素子7の方が、検出ラインLnに接続されている各放射線検出素子7よりも大きくなるのである。
【0153】
なお、前述したように、放射線画像Iは、上記(1)式に従って画像データDからオフセットデータOが減算されて算出された真の画像データDに基づいて生成されるが、オフセットデータOが読み出されるのは、図28(B)の待機時間WTcよりもずっと後であり、その時点では、読み出し開始ラインLn+1と検出ラインLnとでは、オフセットデータOに重畳される電荷Qに起因するオフセット分の差は非常に小さくなっている。
【0154】
そのため、真の画像データDには、画像データDに重畳されている電荷Qに起因するオフセット分の影響が強く残るため、それに基づいて生成される放射線画像Iにも、やはり検出ラインLnと読み出し開始ラインLn+1の部分で輝度の段差が生じ得るのである。
【0155】
また、連携方式で放射線画像撮影を行った場合にも、実際には読み出し開始ラインLn+1と検出ラインLnとの間で輝度の差が生じている。なお、連携方式の場合には放射線の照射開始の検出処理は行われないため、この場合の「検出ラインLn」とは読み出し開始ラインLn+1のいわば上側に隣接する走査線5ということになる。
【0156】
しかし、連携方式の場合には、図15に示したように、画像データDの読み出し処理は走査線5の最初のラインL1(上記の読み出し開始ラインLn+1に相当する。)から始まって走査線5の最終ラインLx(上記の「検出ラインLn」に相当する。)までオン電圧が順次印加されて行われる。
【0157】
そのため、走査線5の各ラインL1〜Lxごとの各画像データDの輝度や、それらに基づいて生成された放射線画像Iにおける走査線5の各ラインL1〜Lxに相当する部分の輝度は、図29に示すようにグラデーション状に変化する状態になり、少なくとも画像データDや放射線画像I中に輝度の段差は現れない状態になる。そのため、連携方式における待機時間WTcは、上記の待機時間WTcのままで良い。
【0158】
上記のように、連携方式におけるこの待機時間WTcをそのまま非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に適用すると、図27や図28(B)に示したように、画像データDや放射線画像I中に輝度の段差が生じてしまう。
【0159】
そこで、本実施形態では、非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に、放射線画像撮影装置1の電力消費モードが撮影可能モードに切り替えられたり電源がオンされて放射線画像撮影装置が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になってから、放射線源52から当該放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射させることが許容されるまでの待機時間として、連携方式の場合の待機時間WTcとは別の待機時間WTncとして設定するようになっている。
【0160】
そして、本実施形態では、上記のように、放射線画像撮影装置1は、放射線画像撮影を連携方式と非連携方式のいずれの方式でも行うことができるように構成されており、その場合、撮影方式を連携方式と非連携方式との間で切り替える際に、待機時間を、連携方式の場合の待機時間WTcと、非連携方式の場合の待機時間WTncとの間で切り替えて適用するようになっている。
【0161】
非連携方式の場合の待機時間WTncの求め方は、上記の図28(B)に示した場合と同様にして行われる。すなわち、放射線画像撮影装置1の電力消費モードを撮影可能モードに切り替えたり、電源をオンした後(時刻0)、時間tを種々変化させて放射線画像撮影装置1に放射線を照射する。
【0162】
そして、図30に示すように、読み出し開始ラインLn+1と検出ラインLnとの間で画像データDの輝度の差が許容される差の範囲内に収まる時間のうち、最も短い時間が、非連携方式における待機時間WTncとして設定される。非連携方式において、この待機時間WTncの経過後に放射線が照射されれば、読み出し開始ラインLn+1と検出ラインLnとの間で画像データDの輝度の差が許容される差の範囲内に収まり、画像データDに基づいて生成される放射線画像I中に、輝度の段差がほとんど視認されない状態になる。
【0163】
なお、この場合も、スリープモードから撮影可能モードに切り替えられた場合と、電源がオンされた場合とで、待機時間WTncは異なる時間とされる。
【0164】
[電力消費モードや電源のオン/オフを切り替えた直後の処理について]
本実施形態では、コンソール58は、前述したように、管理する対象となる1機または複数の放射線画像撮影装置1について、それぞれ電力消費モードの状態(すなわち撮影可能モードであるかスリープモードであるか)や電源のオン/オフの状態を管理している。
【0165】
また、本実施形態では、コンソール58は、各放射線画像撮影装置1について、それぞれ連携方式の場合の待機時間WTcの情報と非連携方式の場合の待機時間WTncの情報を管理している。なお、本実施形態では、連携方式や非連携方式の場合の待機時間WTc、WTncは、それぞれ、工場出荷時や施設への導入時等に予め設定され、或いは、放射線画像撮影装置1のメンテナンス時等に設定し直される固定された時間として、コンソール58に予め設定されるようになっている。
【0166】
そして、コンソール58は、放射線画像撮影に使用される放射線画像撮影装置1や、放射線画像撮影の撮影方式(すなわち連携方式で行うか非連携方式で行うか)が判明すると、その放射線画像撮影装置1や撮影方式に対応する待機時間WTc或いは待機時間WTncを記憶手段59から読み出す。
【0167】
そして、当該放射線画像撮影装置1に対して覚醒信号を送信して当該放射線画像撮影装置1の電力消費モードをスリープモードから撮影可能モードに切り替えたり、或いは、放射線技師により放射線画像撮影装置1の切替スイッチ38(図1参照)が操作される等して撮影可能モードに切り替えられたことを表す信号が送信されてきた時点から経過時間tのカウントを開始する。
【0168】
また、コンソール58は、放射線画像撮影装置1から、放射線技師により電源スイッチ37が操作されて電源がオンされたことを表す信号が送信されてきた場合には、当該放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影に使用されると判断して、その放射線画像撮影装置1や撮影方式に対応する待機時間WTc或いは待機時間WTncを記憶手段59から読み出す。そして、信号が送信されてきた時点から経過時間tのカウントを開始する。
【0169】
そして、本実施形態では、コンソール58は、上記のいずれの場合も、経過時間tのカウントを開始すると同時に、表示部58a(図11や図12参照)上に、放射線の照射を行わないように放射線技師に警告する表示を表示させるようになっている。経過時間tが待機時間WTc、WTncになるまでの間に放射線画像撮影装置1に放射線が照射されると、上記のように、放射線画像Iの画質が劣化したり、放射線画像Iに輝度の段差が現れたりする可能性があるためであり、それを防止するためである。
【0170】
そして、コンソール58は、経過時間tが待機時間WTc、WTncに達すると、表示部58a上の表示を、上記の警告表示から通常の表示に切り替えるようになっている。放射線技師は、この表示の切り替えを確認した後で、曝射スイッチ56を操作して放射線源52から放射線を照射させる。
【0171】
また、経過時間tが待機時間WTc、WTncに達する前に、放射線源52から放射線が照射されてしまった場合には、上記のように、放射線画像Iの画質が劣化したり、放射線画像Iに輝度の段差が現れたりする可能性が生じる。
【0172】
そこで、本実施形態では、それを放射線技師に知らせるために、コンソール58は、上記の待機時間WTc、WTncの間に放射線源52から放射線画像撮影装置1に放射線が照射された場合には、例えば放射線画像撮影装置1から送信されてきたプレビュー画像用のデータ(すなわち間引きデータDt)に基づいて生成したプレビュー画像I_preを表示部58aに表示させる際に、画質が悪くなっている可能性がある旨を警告する表示をあわせて表示させるようになっている。
【0173】
このように構成すれば、前述したように、放射線技師がプレビュー画像I_preを見て再撮影の要否を判断する際に、放射線の照射が早すぎて画質が劣化したり輝度の段差が生じる等して画質が悪くなっている可能性があることを認識したうえで、再撮影の要否を判断することが可能となる。
【0174】
[変形例1]
上記の実施形態では、連携方式の場合の待機時間WTcや、非連携方式の場合の待機時間WTncが、それぞれ固定された時間としてコンソール58に予め設定されている場合について説明した。しかし、少なくとも非連携方式で放射線画像撮影を行う場合には、放射線画像撮影装置1の制御手段22で、読み出されたリークデータdleakの値や照射開始検出用の画像データdの値を解析して、解析した結果に基づいて待機時間WTncを可変させることができるように構成することも可能である。
【0175】
この場合は、コンソール58は、表示部58a上に、放射線の照射を行わないように放射線技師に警告する表示を表示させて、放射線の照射を禁止しておく。そして、放射線画像撮影装置1から可変させた待機時間WTncの情報が送信されて通知されると、それを今回の非連携方式での放射線画像撮影における待機時間WTncとして設定する。そして、経過時間tが、可変された待機時間WTc、WTncに達するまで、上記の表示を表示部58a上に表示させるように構成される。
【0176】
[変形例2]
また、少なくとも非連携方式で放射線画像撮影を行う場合、放射線画像撮影装置の制御手段22で、読み出されるリークデータdleakの値や照射開始検出用の画像データdの値を解析し、例えばリークデータdleakや照射開始検出用の画像データdの微分値を算出して、微分値が所定の閾値以下になったことを検出するように構成することも可能である。
【0177】
すなわち、図30に示した、読み出し開始ラインLn+1と検出ラインLnとの間で画像データDの輝度の差が許容される差の範囲内に収まる状態になったか否かの判断処理を、読み出したリークデータdleakや照射開始検出用の画像データdの微分値に基づいて放射線画像撮影装置1自体で判断するように構成することが可能である。
【0178】
この場合、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、リークデータdleakや照射開始検出用の画像データdの微分値が所定の閾値以下になった時点で、コンソール58に対して、放射線を照射することを許容する旨の信号を送信するように構成される。
【0179】
そして、コンソール58は、放射線画像撮影装置1の電力消費モードがスリープモードから撮影可能モードに切り替えられた時点(或いはこの手法を連携方式に適用する場合は放射線画像撮影装置1の電源がオンされた時点)、表示部58a上に放射線の照射を行わないように警告する表示を表示させる。そして、放射線画像撮影装置1から上記の信号が送信されてくるまで、上記の表示を継続するように構成される。
【0180】
このように、変形例2を採用する場合、少なくとも非連携方式で放射線画像撮影を行う場合の待機時間WTncについては、コンソール58に対して事前に設定されることはない。しかし、上記のように、放射線画像撮影装置1からコンソール58に対して放射線を照射することを許容する旨の信号を送信することをもって、コンソール58に対する待機時間WTncの設定と見なすことが可能である。
【0181】
なお、この変形例2の場合、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、上記のように、リークデータdleakや照射開始検出用の画像データdの微分値が所定の閾値以下になった時点で、コンソール58に対して放射線を照射することを許容する旨の信号を送信する代わりに、或いはそれと併行して、例えばインジケーター40(図1参照)等の放射線画像撮影装置1自体の表示手段を所定の仕方で点灯させる等して、放射線を照射することを許容する旨の表示を行うように構成することも可能である。
【0182】
このように構成すれば、放射線技師が、放射線画像撮影装置1の表示手段の表示を見て、放射線を照射し得る状態になったことを認識することが可能となる。そして、表示手段の表示後に放射線が照射されれば、画像データDやそれに基づいて生成される放射線画像I中に輝度の段差が生じることを的確に防止することが可能となる。
【0183】
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50および放射線画像撮影装置1によれば、コンソール58は、放射線画像撮影装置1の電力消費モードが撮影可能モードに切り替えられたり電源がオンされる等して放射線画像撮影装置1が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった後、放射線源52から当該放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射させることが許容されるまでの待機時間WTc、WTncを、連携方式の場合と非連携方式の場合とで切り替える。
【0184】
そのため、連携方式でも非連携方式でも放射線画像撮影を行うことができるように構成された放射線画像撮影装置1を用いる場合に、放射線画像撮影を連携方式で行う場合には連携方式の場合の待機時間WTcが、また、放射線画像撮影を非連携方式で行う場合には非連携方式の場合の待機時間WTncが、それぞれ的確に適用されるようになる。
【0185】
そのため、放射線画像撮影を非連携方式で行うにもかかわらず、非連携方式の場合の待機時間WTncよりも短い連携方式の場合の待機時間WTcが適用されてしまい、読み出される画像データDやそれに基づいて生成される放射線画像I中に輝度の段差が生じてしまうことを的確に防止することが可能となる。
【0186】
また、放射線画像撮影を連携方式で行うにもかかわらず、連携方式の場合の待機時間WTcよりも長い非連携方式の場合の待機時間WTncが適用されてしまい、放射線技師が、放射線を照射させるまでに必要以上に長い時間待機しなければならなくなることを的確に防止することが可能となる。そのため、放射線画像撮影システム50や放射線画像撮影装置1が放射線技師にとって使い勝手が良いものとなる。
【0187】
なお、本実施形態の非連携方式における上記の検出手法1や検出手法2をさらに改良して、より的確に放射線の照射開始を検出するように構成することが可能であり、そのような改良は適宜行われる。
【0188】
また、本実施形態では、前述したように、画像データDの読み出し処理後にプレビュー画像用のデータである間引きデータDtを送信するように構成する場合について説明したが、間引きデータDtの代わりに、例えば全画像データDを送信するように構成することも可能である。
【0189】
さらに、画像データDの読み出し処理後にプレビュー画像用のデータを送信せず、その後のオフセットデータOの読み出し処理を終了した時点で、全ての画像データDおよびオフセットデータOを送信するように構成することも可能である。この場合、上記の画質が悪くなっている可能性がある旨を警告表示を行う場合には、生成された放射線画像Iが表示部58a上に表示される際に、あわせて表示されるように構成される。
【0190】
このように、放射線画像撮影装置1からコンソール58への画像データD等の送信の仕方は、適宜決められる。
【0191】
また、本発明が上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0192】
1 放射線画像撮影装置
5 走査線
6 信号線
7 放射線検出素子
8 TFT(スイッチ手段)
15 走査駆動手段
17 読み出し回路
22 制御手段
39 コネクター(通信手段)
41 アンテナ装置(通信手段)
50 放射線画像撮影システム
52 放射線源
55 放射線発生装置
58 コンソール
58a 表示部
D 画像データ
d 照射開始検出用の画像データ
dleak リークデータ
dleak_th 閾値
Dt 間引きデータ(データ)
dth 閾値
I 放射線画像
I_pre プレビュー画像(画像)
P 検出部
q 電荷
r 小領域
WTc 連携方式の場合の待機時間
WTnc 非連携方式の場合の待機時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子を備える検出部と、
前記各走査線に対して印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替える走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
外部装置との間で信号の送受信を行い、前記画像データを送信するための通信手段と、
を備える放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置に放射線を照射する放射線源を備える放射線発生装置と、
前記放射線画像撮影装置と通信可能なコンソールと、
を備え、
前記放射線画像撮影装置は、撮影方式を、前記放射線発生装置との間で連携を取りながら放射線画像撮影を行う連携方式と、前記放射線発生装置との間で連携をとらずに放射線画像撮影を行う非連携方式との間で切り替え可能とされており、
前記コンソールは、前記放射線画像撮影装置が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になった後、前記放射線源から当該放射線画像撮影装置に対して放射線を照射させることが許容されるまでの待機時間を、前記連携方式の場合と前記非連携方式の場合とで切り替えることを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項2】
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、前記非連携方式で放射線画像撮影を行う場合には、放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段から前記各走査線にオフ電圧を印加して前記各スイッチ手段をオフ状態とした状態で前記各スイッチ手段を介して前記各放射線検出素子からリークした前記電荷をリークデータに変換するリークデータの読み出し処理を行わせ、読み出した前記リークデータが閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項3】
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、前記非連携方式で放射線画像撮影を行う場合には、放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段から前記各走査線にオン電圧を順次印加して照射開始検出用の画像データの読み出し処理を行わせ、読み出した前記照射開始検出用の画像データが閾値を越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項4】
前記連携方式の場合の前記待機時間と、前記非連携方式の場合の前記待機時間とが、それぞれ固定された時間として設定されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項5】
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、読み出される前記リークデータの値または前記照射開始検出用の画像データの値を解析して、少なくとも前記非連携方式の場合の前記待機時間を可変させることが可能とされていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項6】
前記放射線画像撮影装置の前記制御手段は、前記待機時間を可変させた場合には、当該可変させた待機時間を前記コンソールに送信して通知することを特徴とする請求項5に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項7】
前記放射線画像撮影装置は、電力消費モードを、少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路に電力を供給して放射線画像撮影を行うことが可能な撮影可能モードと、必要な機能部にのみ電力を供給し放射線画像撮影を行うことができないスリープモードとの間で切り替え可能とされており、
前記待機時間は、前記放射線画像撮影装置の電力消費モードがスリープモードから撮影可能モードに切り替えられた後、前記放射線源から当該放射線画像撮影装置に対して放射線を照射させることが許容されるまでの時間として設定されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項8】
前記コンソールは、前記放射線画像撮影装置の電力消費モードを、少なくともスリープモードから撮影可能モードに切り替えることができるように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項9】
前記待機時間は、前記放射線画像撮影装置の電源がオンされた後、前記放射線源から当該放射線画像撮影装置に対して放射線を照射させることが許容されるまでの時間として設定されることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項10】
前記放射線画像撮影装置を複数備え、
前記待機時間は、前記各放射線画像撮影装置ごとにそれぞれ設定されていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項11】
前記コンソールは、表示部を備え、前記放射線画像撮影装置が放射線画像撮影を行うことが可能な状態になってから前記待機時間が経過するまでの間、前記表示部に放射線の照射を行わないように警告する表示を表示させることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項12】
前記コンソールは、表示部を備え、前記待機時間の間に前記放射線源から前記放射線画像撮影装置に放射線が照射された場合には、前記放射線画像撮影装置から送信されてきたデータに基づいて生成した画像を前記表示部に表示させる際に、画質が悪くなっている可能性がある旨を警告する表示を表示させることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項13】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各小領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子を備える検出部と、
前記各走査線に対して印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替える走査駆動手段と、
前記各走査線に接続され、オン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から放出された前記電荷を画像データに変換して読み出す読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記放射線検出素子からの前記画像データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
コンソールとの間で信号の送受信を行い、前記画像データを送信するための通信手段と、
を備え、
前記制御手段は、読み出される前記リークデータの値または前記照射開始検出用の画像データの値を解析して、前記リークデータまたは前記照射開始検出用の画像データの微分値が所定の閾値以下になった時点で、前記コンソールに対して、放射線を照射することを許容する旨の信号を送信することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項14】
前記制御手段は、前記コンソールに対して放射線を照射することを許容する旨の信号を送信する代わりに、またはそれと併行して、装置の表示手段に、放射線を照射することを許容する旨の表示を行わせることを特徴とする請求項13に記載の放射線画像撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2013−78410(P2013−78410A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218892(P2011−218892)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】