説明

放熱性樹脂組成物、LED実装用基板、リフレクター、及び、リフレクター部を備えるLED実装用基板

【課題】LED実装用基板、又は、このLED実装用基板に配設されるリフレクターの形成に用いられ、LED素子が発光しているときの放熱性、電気絶縁性、耐熱性及び耐光性に優れる放熱性樹脂組成物、並びに、それを含むLED実装用基板及びリフレクターを提供する。
【解決手段】本発明の放熱性樹脂組成物は、変性PBT等の熱可塑性樹脂と、鱗片状窒化ホウ素等の熱伝導性フィラーとを含有し、熱変形温度が120℃以上であり、熱伝導率が2.0W/(m・K)以上であり、且つ、熱放射率が0.7以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱性樹脂組成物及びそれを含む成形品に関し、更に詳しくは、表面実装型LEDパッケージを構成する、LED実装用基板、及び、このLED実装用基板に配設されるリフレクターの形成に好適な放熱性樹脂組成物並びに上記各物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LED素子は、小型であり、長寿命であり、省電力性に優れることから、表示灯等の光源として利用されている。また、近年、より輝度の高いLED素子が比較的安価に製造されるようになったことから、蛍光ランプ及び白熱電球に替わる光源としての利用が検討されている。このような光源に適用する場合、大きな照度を得るために、表面実装型LEDパッケージ、即ち、例えば、アルミニウム等の金属製のベース基板(LED実装用基板)上に複数のLED素子を配置し、各LED素子の周りに光を所定方向に反射させるリフレクターを配設する方式が多用されている。しかし、LED素子は発光時に発熱を伴うため、このような方式のLED照明装置では、LED素子の発光時の温度上昇が、輝度の低下、LED素子の短寿命化等を招くこととなる。そこで、放熱性の高い金属からなるベース基板上にLED素子のベアチップを実装して、発光時の発熱をベース基板に拡散するような構造のLED照明装置が提案されている。(例えば、特許文献1、2等)。
【0003】
【特許文献1】特開昭62−149180号公報
【特許文献2】特開2002−344031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、表面実装型LEDパッケージを構成する、LED実装用基板とした場合、及び、リフレクターとした場合、のいずれにおいても、LED素子が発光しているときの放熱性、電気絶縁性(以下、「絶縁性」という。)、耐熱性及び耐光性に優れる放熱性樹脂組成物、並びに、それを含むLED実装用基板及びリフレクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究した結果、特定の熱可塑性樹脂と、特定の熱伝導性フィラーとを含む組成物を用いて、LED実装用基板とした場合、及び、リフレクターとした場合、のいずれにおいても、LED素子が発光しているときの放熱性、絶縁性、耐熱性及び耐光性に優れていたことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、以下に示される。
1.LED実装用基板、又は、該LED実装用基板に配設されるリフレクターの形成に用いられる放熱性樹脂組成物であって、熱可塑性樹脂と、熱伝導性フィラーとを含有し、熱変形温度が120℃以上であり、熱伝導率が2.0W/(m・K)以上であり、且つ、熱放射率が0.7以上であることを特徴とする放熱性樹脂組成物。
2.上記熱伝導性フィラーの含有割合は、上記熱可塑性樹脂及び上記熱伝導性フィラーの合計を100質量%とした場合、20〜90質量%である上記1に記載の放熱性樹脂組成物。
3.絶縁性である上記1又は2に記載の放熱性樹脂組成物。
4.上記熱伝導性フィラー中の酸化鉄含有量が0.01質量%以下である上記1乃至3のいずれかに記載の放熱性樹脂組成物。
5.上記熱伝導性フィラーが、鱗片状である上記1乃至4のいずれかに記載の放熱性樹脂組成物。
6.上記熱伝導性フィラーが、窒化ホウ素である上記1乃至5のいずれかに記載の放熱性樹脂組成物。
7.上記熱可塑性樹脂が、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂若しくはポリアミド系重合体、又は、ゴム強化樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂及びポリアミド系重合体から選ばれた少なくとも2種の混合物、である上記1乃至6のいずれかに記載の放熱性樹脂組成物。
8.上記ポリエステル樹脂が、共重合ポリエステルを含む上記7に記載の放熱性樹脂組成物。
9.上記共重合ポリエステルが、共重合ポリブチレンテレフタレートを含む上記8に記載の放熱性樹脂組成物。
10.更に、難燃剤を含有する上記1乃至9のいずれかに記載の放熱性樹脂組成物。
11.更に、紫外線吸収剤及び/又は光安定剤を、上記熱可塑性樹脂及び上記熱伝導性フィラーの合計を100質量部とした場合に、0.05〜10質量部含有する上記1乃至10のいずれかに記載の放熱性樹脂組成物。
12.上記光安定剤が、下記構造を含むヒンダードアミン系化合物である上記11に記載の放熱性樹脂組成物。
【化1】

〔式中、R、R、R、R及びRは、互いに、同一又は異なって、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は、炭素数7〜20のアラルキル基である。〕
13.曲げ歪みが1.5%以上であり、且つ、白色度が80%以上である上記1乃至12のいずれかに記載の放熱性樹脂組成物。
14.上記1乃至13のいずれかに記載の放熱性樹脂組成物を含むことを特徴とするLED実装用基板。
15.上記1乃至13のいずれかに記載の放熱性樹脂組成物を含むことを特徴とするリフレクター。
16.上記1乃至13のいずれかに記載の放熱性樹脂組成物を含むことを特徴とする、リフレクター部を備えるLED実装用基板。
【発明の効果】
【0007】
本発明の放熱性樹脂組成物によれば、成形加工性及び耐衝撃性に優れ、LED実装用基板とした場合、及び、リフレクターとした場合、のいずれにおいても、LED素子が発光しているときの放熱性、絶縁性、耐熱性及び耐光性に優れる。
上記熱伝導性フィラー中の酸化鉄含有量が0.01質量%以下である場合には、白色性に優れ、その結果、光に対する反射特性がより優れる。
また、上記熱伝導性フィラーが、窒化ホウ素である場合には、LED素子が発光しているときの放熱性、絶縁性、耐熱性、及び、光に対する反射特性がより優れる。従って、本発明の放熱性樹脂組成物を含むLED実装用基板及びリフレクターは、LED素子が発光している時の発熱による温度上昇は、放熱により抑制されることから、輝度の低下を招くことなく、LED素子の長寿命化を図ることができる。
更に、特定の構造を含むヒンダードアミン系化合物を光安定剤として含有する放熱性樹脂組成物を用いて形成されたLED実装用基板上で、LED素子等を包埋する場合には、シリコーン等を含む透明性封止剤組成物等の硬化性に優れ、機械的強度の優れたLED照明装置を得ることができる。
【0008】
本発明のLED実装用基板によれば、LED素子が発光しているときの放熱性、絶縁性、耐熱性及び耐光性に優れる。本発明のリフレクターによれば、LED素子が発光しているときの放熱性、絶縁性、耐熱性、光に対する反射特性及び耐光性に優れる。そして、本発明の放熱性樹脂組成物は、基板とリフレクター部とが連続相となった一体成形品として得られることから、その生産性に優れ、その結果、LED照明装置の生産性にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明において、「(共)重合」とは、単独重合及び共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味する。
【0010】
1.放熱性樹脂組成物
本発明の放熱性樹脂組成物は、LED実装用基板、及び、リフレクターの形成に好適な放熱性樹脂組成物であって、熱可塑性樹脂と、熱伝導性フィラーとを含有し、熱変形温度が120℃以上であり、熱伝導率が2.0W/(m・K)以上であり、且つ、熱放射率が0.7以上であることを特徴とする。
上記LED実装用基板は、その一方の面に、LED素子、レンズ、リフレクター等を備えることができる態様(図1の11a)であってよいし、基板及びリフレクター(リフレクター部)が連続相となっており、リフレクター部の内側であり且つ基板の表面側(図3の上方側)にLED素子、レンズ等を備えることができる態様(図3の11b、以下、この態様を「リフレクター部を備えるLED実装用基板」という。)であってもよい。
尚、図1等では、LED素子13の基板上の配設形態は、リード線15を用いたワイヤーボンディング実装であることを示しているが、基板上のバンプを介して、LED素子13の近くに配設された配線パターンにフリップチップ実装される形態であってもよい。
【0011】
1−1.熱可塑性樹脂
この熱可塑性樹脂としては、熱可塑性を有する重合体を含むものであれば、特に限定されず、ポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ABS樹脂、ASA樹脂、AES樹脂等のゴム強化樹脂;ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル・スチレン共重合体等のスチレン系(共)重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリアミド系重合体;ポリアセタール樹脂;ポリ塩化ビニル、エチレン・塩化ビニル重合体、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂;ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の(メタ)アクリル酸エステルの1種以上を用いた(共)重合体等のアクリル系樹脂;ポリフェニレンエーテル;ポリフェニレンサルファイド;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂;液晶ポリマー;ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のイミド系樹脂;ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等のケトン系樹脂;ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のスルホン系樹脂;ウレタン系樹脂;ポリ酢酸ビニル;ポリエチレンオキシド;ポリビニルアルコール;ポリビニルエーテル;ポリビニルブチラール;フェノキシ樹脂;感光性樹脂;生分解性プラスチック等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、ポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアミド系重合体;ゴム強化樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂及びポリアミド系重合体から選ばれた少なくとも2種の混合物が好ましい。該混合物としては、ポリエステル樹脂及びポリカーボネート樹脂のアロイ;ゴム強化樹脂及びポリカーボネート樹脂のアロイ;ゴム強化樹脂、ポリエステル樹脂及びポリカーボネート樹脂のアロイが好ましい。
【0012】
1−1−1.ポリエステル樹脂
このポリエステル樹脂は、分子の主鎖中にエステル結合を有する樹脂であれば、特に限定されず、飽和ポリエステル樹脂であってよいし、不飽和ポリエステル樹脂であってもよい。これらのうち、飽和ポリエステル樹脂が好ましい。また、ホモ型ポリエステルであってよいし、共重合ポリエステルであってもよい。本発明においては、曲げ歪み特性が優れることから、共重合ポリエステルを含むことが好ましく、その結果、本発明の放熱性樹脂組成物を含む成形品である各種部材の組み付け、組み込み等の作業を行う場合に、部材の破損等を抑制することができ、作業性及び作業効率に優れる。
更に、上記ポリエステル樹脂は、結晶性樹脂であってよいし、非晶性樹脂であってもよい。
【0013】
上記ポリエステル樹脂は、例えば、ジカルボン酸成分とジヒドロキシ成分との重縮合、オキシカルボン酸成分又はラクトン成分の重縮合等により得られたものを用いることができる。
上記ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸(2,6−ナフタレンジカルボン酸等)、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸等の炭素数8〜16程度の芳香族ジカルボン酸又はその誘導体等、シクロヘキサンジカルボン酸(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸)、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ハイミック酸等の炭素数8〜12程度の脂環式ジカルボン酸又はその誘導体等、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、ダイマー酸等の炭素数2〜40程度の脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体等が挙げられる。
【0014】
尚、上記誘導体には、エステル形成可能な誘導体、例えば、ジメチルエステル等の低級アルキルエステル、酸無水物、酸クロライド等の酸ハライド等が含まれる。
これらジカルボン酸成分は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
また、上記ジヒドロキシ成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、デカンジオール等の直鎖状又は分岐鎖状の炭素数2〜12程度のアルキレングリコール等の脂肪族アルキレングリコール;1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、水素化ビスフェノールA等の脂環族ジオール;ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシビフェニル、ナフタレンジオール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビスフェノールA、ビスフェノールAに対してエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが付加した付加体(ジエトキシ化ビスフェノールA等)等の芳香族ジオール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ジテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリオキシアルキレングリコール等が挙げられる。
【0016】
尚、上記ジヒドロキシ成分は、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン等の置換基を有してもよい。
上記ジヒドロキシ成分は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
上記オキシカルボン酸成分としては、オキシ安息香酸、オキシナフトエ酸、ジフェニレンオキシカルボン酸等のオキシカルボン酸及びその誘導体等が挙げられる。
上記オキシカルボン酸成分は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
上記ラクトン成分としては、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。
上記ラクトン酸成分は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
上記ポリエステル樹脂がホモ型ポリエステルである場合、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサン−1,4−ジメチルテレフタレート、ポリネオペンチルテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリヘキサメチレンナフタレート等のポリアルキレンナフタレート等が挙げられる。上記ホモ型ポリエステルとしては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)が好ましい。また、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
また、上記ポリエステル樹脂が共重合ポリエステルである場合、その形成に用いられる一般的なジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。また、ジヒドロキシ成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等の直鎖状アルキレングリコール等の脂肪族アルキレングリコール;ジエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリ(オキシ−アルキレン)単位を含み、繰り返し数が2〜4程度のオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレングリコール等が挙げられる。
更に、上記化合物以外に、必要に応じて、グリコール酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸やアルコキシカルボン酸、及び、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、安息香酸、tert−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸等の単官能成分又はそのエステル誘導体;トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール等の多価アルコール;没食子酸等の3官能以上の多官能成分又はそのエステル誘導体の1種あるいは2種以上を、重縮合用成分として用いてもよい。
【0021】
本発明において、好ましい共重合ポリエステルは、テレフタル酸及び/又はその誘導体(ジメチルエステル等の低級アルキルエステル、酸無水物、酸クロライド等の酸ハライド等)を主として含むジカルボン酸成分と、1,4−ブタンジオールを含むジヒドロキシ成分との重縮合等により得られた重合体であって、ガラス転移温度が、好ましくは0〜75℃の範囲にある共重合型ポリブチレンテレフタレート;テレフタル酸及び/又はその誘導体(ジメチルエステル等の低級アルキルエステル、酸無水物、酸クロライド等の酸ハライド等)を主として含むジカルボン酸成分と、エチレングリコールを含むジヒドロキシ成分との重縮合等により得られた共重合型ポリエチレンテレフタレート等である。これらのうち、共重合ポリブチレンテレフタレートが特に好ましい。尚、共重合型ポリブチレンテレフタレートは、上記のポリブチレンテレフタレート(PBT)に比し、実質的に、柔軟性があることが知られており、「ソフトPBT」とも呼ばれている。
【0022】
上記共重合型ポリエチレンテレフタレートの製造に用いられるジカルボン酸成分は、その全量に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上のテレフタル酸及び/又はその誘導体を含む。テレフタル酸及びその誘導体以外の、他のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸等上記の通りである。この他のジカルボン酸成分は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
上記共重合型ポリエチレンテレフタレートの製造に用いられるジヒドロキシ成分は、その全量に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上の1,4−ブタンジオールを含む。1,4−ブタンジオール以外の、他のジヒドロキシ成分としては、エチレングリコール等の直鎖状又は分岐鎖状の炭素数2〜12程度のアルキレングリコール等の脂肪族アルキレングリコール;芳香族ジオール;ポリオキシアルキレングリコール等上記の通りである。この他のジヒドロキシ成分は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
本発明において、好ましい共重合型ポリブチレンテレフタレートは、以下に例示されるが、テレフタル酸及び/又はその誘導体を50質量%以上含むジカルボン酸成分と、1,4−ブタンジオール及び他のジヒドロキシ成分を含み、且つ、1,4−ブタンジオールを好ましくは50〜90質量%、より好ましくは60〜90質量%含むジヒドロキシ成分とを重縮合することにより得られた重合体であり、上記他のジヒドロキシ成分としては、ジエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリ(オキシ−アルキレン)単位を含み、繰り返し数が2〜4程度のオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレングリコール等が好ましい。
(1)テレフタル酸及び/又はその誘導体からなるジカルボン酸成分と、1,4−ブタンジオール及び他のジヒドロキシ成分を含み、且つ、1,4−ブタンジオールを好ましくは50〜90質量%、より好ましくは60〜90質量%含むジヒドロキシ成分とを重縮合することにより得られた重合体。
(2)好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上のテレフタル酸及び/又はその誘導体と、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下のイソフタル酸及び/又はその誘導体からなるジカルボン酸成分と、1,4−ブタンジオール及び他のジヒドロキシ成分を含み、且つ、1,4−ブタンジオールを好ましくは50〜90質量%、より好ましくは60〜90質量%含むジヒドロキシ成分とを重縮合することにより得られた重合体。
【0025】
上記共重合型ポリブチレンテレフタレートのガラス転移温度は、好ましくは0〜75℃である。下限温度は、より好ましくは0℃超えである。また、上限温度は、好ましくは70℃未満、より好ましくは65℃未満、更に好ましくは60℃未満、特に好ましくは50℃未満である。このガラス転移温度が低すぎると、本発明の組成物を含む成形品の機械的強度及び耐熱性が十分ではなく、一方、高すぎると、柔軟性が劣る。尚、上記ガラス転移温度は、動的粘弾性測定法により得ることができる。
【0026】
上記共重合型ポリブチレンテレフタレートの溶融粘度は、成形加工性の観点から、250℃、せん断速度91.2(1/秒)、ノズル口径1mmφ、ノズル流路長30mm(L/D=30)の条件で測定した場合、好ましくは400〜2500Pa・s、より好ましくは600〜1300Pa・sである。
【0027】
上記共重合型ポリブチレンテレフタレートの製造方法としては、テレフタル酸及び/又はその誘導体を含むジカルボン酸成分、1,4−ブタンジオールを含むジヒドロキシ成分等の原料成分を、単数若しくは複数のエステル化反応槽内で、エステル化反応触媒の存在下に、通常、150〜280℃、好ましくは180〜265℃の温度、及び、通常、50〜1000Torr(6666〜133322Pa)、好ましくは70〜760Torr(9333〜101325Pa)の圧力、の条件で、攪拌しながら2〜5時間エステル化反応させ、得られたエステル化反応生成物(オリゴマー)を重縮合反応槽に移送し、単数若しくは複数の重縮合反応槽内で、重縮合反応触媒の存在下に、通常、210〜280℃、好ましくは220〜265℃の温度、及び、通常、200Torr(26664Pa)以下、好ましくは150Torr(19998Pa)以下の圧力、の条件で、攪拌しながら2〜5時間重縮合反応させることができる。反応形式は、連続式、半連続式あるいは回分式のいずれであってもよい。
また、重縮合反応により得られた樹脂は、通常、重縮合反応槽の底部からポリマー抜き出しダイに移送されてストランド状に抜き出され、水冷されながら、あるいは、水冷後、カッターで切断されてペレット状、チップ状等の粒状体とされる。
【0028】
尚、上記エステル化反応触媒としては、チタン化合物、錫化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、ジルコニウム化合物等が挙げられる。
【0029】
1−1−2.ポリカーボネート樹脂
このポリカーボネート樹脂は、主鎖にカーボネート結合を有するものであれば、特に限定されず、芳香族ポリカーボネートでよいし、脂肪族ポリカーボネートでもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。本発明においては、耐衝撃性、耐熱性等の観点から、芳香族ポリカーボネートが好ましい。尚、このポリカーボネート樹脂は、末端が、R−CO−基、R’−O−CO−基(R及びR’は、いずれも有機基を示す。)に変性されたものであってもよい。このポリカーボネート樹脂は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
上記芳香族ポリカーボネートとしては、芳香族ジヒドロキシ化合物及び炭酸ジエステルを溶融によりエステル交換(エステル交換反応)して得られたもの、ホスゲンを用いた界面重縮合法により得られたもの、ピリジンとホスゲンとの反応生成物を用いたピリジン法により得られたもの等を用いることができる。
【0031】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、分子内にヒドロキシル基を2つ有する化合物であればよく、ヒドロキノン、レゾルシノール等のジヒドロキシベンゼン、4,4’−ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、「ビスフェノールA」という。)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3、5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、9,9−ビス(p−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(p−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、ビス(p−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エステル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(p−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホキシド等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
上記芳香族ジヒドロキシ化合物のうち、2つのベンゼン環の間に炭化水素基を有する化合物が好ましい。尚、この化合物において、炭化水素基は、ハロゲン置換された炭化水素基であってもよい。また、ベンゼン環は、そのベンゼン環に含まれる水素原子がハロゲン原子に置換されたものであってもよい。従って、上記化合物としては、ビスフェノールA、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3、5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ブタン等が挙げられる。これらのうち、特に、ビスフェノールAが好ましい。
【0033】
芳香族ポリカーボネートをエステル交換反応により得るために用いる炭酸ジエステルとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−tert−ブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
上記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、溶媒として塩化メチレンを用い、温度20℃で測定された溶液粘度より換算した場合、好ましくは12,000〜40,000、より好ましくは14,000〜30,000、特に好ましくは16,000〜26,000である。この粘度平均分子量が高すぎると、流動性が十分でなく、成形加工性が低下する場合がある。一方、低すぎると、耐衝撃性、靭性及び耐薬品性が十分でない場合がある。
上記ポリカーボネート樹脂は、全体としての粘度平均分子量が上記範囲に入るものであれば、異なる粘度平均分子量を有するポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
上記ポリカーボネート樹脂は、上述のように、ポリエステル樹脂及び/又はゴム強化樹脂と組み合わせて、アロイとして用いることもできる。
【0036】
1−1−3.ポリアミド系重合体
このポリアミド系重合体としては、主鎖に酸アミド結合(−CO−NH−)を有するものであれば、特に限定されず、ポリアミド系樹脂及びポリアミド系エラストマーのいずれでもよい。これらを組み合わせてもよい。
【0037】
上記ポリアミド系樹脂としては、ナイロン4、6、7、8、11、12、4.6、6.6、6.9、6.10、6.11、6.12、6T、6/6.6、6/12、6/6T、6T/6I等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、ポリアミド系樹脂の末端は、カルボン酸、アミン等で封止されていてもよい。カルボン酸としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。また、アミンとしては、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、ベヘニルアミン等の脂肪族第1級アミン等が挙げられる。
【0038】
上記ポリアミド系エラストマーとしては、ハードセグメントとして、炭素数が6以上のアミノカルボン酸もしくはラクタム、又は、m+n≧12のナイロンmn塩(X)と、ソフトセグメントとして、ポリ(アルキレンオキシド)グリコール等のポリオール(Y)とを含み、且つ、エラストマー中に占める成分(X)の比率が、好ましくは10〜95質量%、より好ましくは20〜90質量%、特に好ましくは30〜80重量%のものである。
【0039】
1−1−4.ゴム強化樹脂
このゴム強化樹脂は、ゴム質重合体(以下、「ゴム質重合体(a)」という。)の存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体(以下、「ビニル系単量体(b)」という。)を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂(以下、「ゴム強化ビニル系樹脂(A1)」という。)、又は、該ゴム強化ビニル系樹脂(A1)及びビニル系単量体の(共)重合体(以下、「(共)重合体(A2)」という。)の混合物、からなるものである。
【0040】
上記ゴム質重合体(a)は、単独重合体であってよいし、共重合体であってもよいが、ジエン系重合体及び非ジエン系重合体が挙げられる。また、これらは、単独で用いてよいし、組み合わせて用いてもよい。更に、このゴム質重合体(a)は、非架橋重合体であってよいし、架橋重合体であってもよい。
【0041】
上記ジエン系重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の単独重合体;スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合体等のスチレン・ブタジエン系共重合体;スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・イソプレン共重合体等のスチレン・イソプレン系共重合体;上記各(共)重合体の水素化物等が挙げられる。
また、上記非ジエン系重合体としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン−1共重合体等のエチレン・α−オレフィン共重合体;エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、エチレン・ブテン−1・5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体、エチレン・プロピレン・ジシクロペンタジエン共重合体、エチレン・ブテン−1・ジシクロペンタジエン共重合体等のエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体;ウレタン系ゴム;アクリル系ゴム;シリコーンゴム;シリコーン・アクリル系IPNゴム等が挙げられる。
尚、上記各共重合体は、ブロック共重合体でもよいし、ランダム共重合体でもよい。
【0042】
上記ゴム質重合体(a)の大きさ及び形状は、特に限定されないが、粒子状であることが好ましく、その重量平均粒子径は、好ましくは30〜2000nmであり、より好ましくは100〜1500nm、更に好ましくは200〜1000nmである。重量平均粒子径が30nm未満では、成形品の耐衝撃性が劣る傾向にあり、2000nmを超えると、成形加工性、及び、成形品の表面外観性が劣る傾向にある。上記重量平均粒子径は、レーザー回折散乱法、動的光散乱法等により測定することができる。
【0043】
上記ゴム質重合体(a)は、その重量平均粒子径が上記範囲内にあるものであれば、例えば、特開昭61−233010号公報、特開昭59−93701号公報、特開昭56−167704号公報等に記載されている方法等の公知の方法により肥大化したものを用いることもできる。
【0044】
上記ゴム質重合体(a)を製造する方法としては、乳化重合、溶液重合等が挙げられる。これらのうち、平均粒子径の調整等が容易であることから、乳化重合が好ましい。この場合、平均粒子径は、乳化剤の種類及びその使用量、開始剤の種類及びその使用量、重合時間、重合温度、攪拌条件等の製造条件を選択することにより調整することができる。上記平均粒子径(粒子径分布)の他の調整方法としては、異なる粒子径を有するゴム質重合体(a)の2種類以上をブレンドする方法でもよい。乳化重合により製造して得られたゴム質重合体(a)は、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を乳化重合により製造するのに好適である。
また、溶液重合等によりゴム質重合体(a)を製造した場合には、再乳化等の方法により、所定の平均粒子径を有する重合体とさせることができる。再乳化により得られたゴム質重合体(a)の分散液も、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を乳化重合により製造するのに好適である。
【0045】
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いられるビニル系単量体(b)は、芳香族ビニル化合物(以下、「芳香族ビニル化合物(b1)」ともいう。)のみでもよいし、該芳香族ビニル化合物(b1)と、例えば、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、酸無水物等の該芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物とを、それぞれ、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
従って、上記ビニル系単量体(b)としては、芳香族ビニル化合物(b1)の1種以上、あるいは、芳香族ビニル化合物の1種以上と、該芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物の1種以上とを組み合わせた単量体を用いることができる。
【0046】
上記芳香族ビニル化合物(b1)としては、少なくとも1つのビニル結合と、少なくとも1つの芳香族環とを有する化合物であれば、特に限定されることなく用いることができる。その例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、β−メチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらのうち、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。
【0047】
上記シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。また、これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
上記マレイミド系化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、マレイミド系化合物からなる単位を導入する他の方法としては、例えば、無水マレイン酸を共重合し、その後イミド化する方法でもよい。
上記酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
また、上記化合物以外に、必要に応じて、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、アミド基、カルボキシル基、オキサゾリン基等の官能基を有するビニル系化合物を用いることができる。例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ヒドロキシスチレン、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、N,N−ジエチル−p−アミノメチルスチレン、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸3,4−オキシシクロヘキシル、アクリル酸3,4−オキシシクロヘキシル、ビニルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、メタクリルアミド、アクリルアミド、メタクリル酸、アクリル酸、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いるビニル系単量体(b)としては、下記の組み合わせで用いることが好ましい。シアン化ビニル化合物を用いることにより、耐薬品性及び耐変色性の物性バランスが向上する。
(1)芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物。
(2)芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び他の化合物。
【0051】
上記ビニル系単量体(b)として、芳香族ビニル化合物(b1)と他のビニル系単量体(以下、「ビニル系単量体(b2)」ともいう。)とを併用する場合、芳香族ビニル化合物(b1)と、ビニル系単量体(b2)との重合割合(b1)/(b2)は、これらの合計を100質量%とした場合、好ましくは(2〜95)質量%/(98〜5)質量%、より好ましくは(10〜90)質量%/(90〜10)質量%である。芳香族ビニル化合物(b1)の使用量が少なすぎると、成形加工性が劣る傾向にあり、多すぎると、本発明の放熱性樹脂組成物及びそれを含む成形品の耐薬品性、耐熱性等が十分でない場合がある。
【0052】
尚、前述のように、上記熱可塑性樹脂としてゴム強化樹脂を用いる場合には、該ゴム強化樹脂が、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のみであってもよく、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)と、ビニル系単量体の重合によって得られた(共)重合体(A2)とからなる混合物であってもよい。このビニル系単量体としては、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いた化合物、即ち、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド系化合物、酸無水物及び官能基を有する化合物から選ばれる1種以上を用いることができる。従って、上記(共)重合体(A2)は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の形成に用いたビニル系単量体(b)と全く同じ組成の成分を重合して得られる重合体であってもよいし、異なる組成で同じ種類の単量体を重合して得られる重合体であってもよいし、更には、異なる組成で異なる種類の単量体を重合して得られる重合体であってもよい。これらの各重合体が2種以上含まれるものであってもよい。
【0053】
上記(共)重合体(A2)としては、芳香族ビニル化合物からなる単位と、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物及びマレイミド系化合物から選ばれた少なくとも1種のビニル系単量体からなる単位、とよりなる共重合体が好ましい。これらの構成割合は、合計を100質量%とした場合、それぞれ、好ましくは2〜95質量%及び5〜98質量%、より好ましくは10〜90質量%及び10〜90質量%である。
【0054】
従って、上記(共)重合体(A2)の具体例としては、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・α−メチルスチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・メタクリル酸メチル共重合体、スチレン・メタクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル・スチレン・N−フェニルマレイミド共重合体等が挙げられる。
【0055】
次に、上記のゴム強化ビニル系樹脂(A1)及び(共)重合体(A2)の製造方法について説明する。
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)は、ゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体(b)を、好ましくは乳化重合、溶液重合、塊状重合することにより、製造することができる。
尚、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の製造の際には、ゴム質重合体(a)及びビニル系単量体(b)は、反応系において、ゴム質重合体(a)全量の存在下に、ビニル系単量体(b)を一括添加してもよいし、分割又は連続添加してもよい。また、これらを組み合わせた方法でもよい。更に、ゴム質重合体(a)の全量又は一部を、重合途中で添加して重合してもよい。
ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を100質量部製造する場合、ゴム質重合体(a)の使用量は、好ましくは5〜80質量部、より好ましくは10〜70質量部、更に好ましくは15〜60質量部である。
【0056】
乳化重合によりゴム強化ビニル系樹脂(A1)を製造する場合には、重合開始剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、乳化剤、水等が用いられる。
上記重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物と、含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方等の還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤;過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレイト、tert−ブチルパーオキシモノカーボネート等の過酸化物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。更に、上記重合開始剤は、反応系に一括して又は連続的に添加することができる。また、上記重合開始剤の使用量は、上記ビニル系単量体(b)全量に対し、通常、0.1〜1.5質量%である。
【0057】
上記連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、tert−テトラデシルメルカプタン等のメルカプタン類;ターピノーレン、α−メチルスチレンのダイマー等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記連鎖移動剤の使用量は、上記ビニル系単量体(b)全量に対して、通常、0.05〜2.0質量%である。
【0058】
乳化重合の場合に使用する乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩、高級脂肪族カルボン酸塩、リン酸系等のアニオン性界面活性剤;ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型等のノニオン系界面活性剤等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記乳化剤の使用量は、上記ビニル系単量体(b)全量に対して、通常、0.3〜5.0質量%である。
【0059】
乳化重合により得られたラテックスは、通常、凝固剤により凝固させ、重合体成分を粉末状とし、その後、これを水洗、乾燥することによって精製される。この凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム等の無機塩;硫酸、塩酸等の無機酸;酢酸、乳酸等の有機酸等が用いられる。
尚、複数のゴム強化ビニル系樹脂(A1)を併用する場合には、単離した後、混合してもよいが、他の方法として、各樹脂を各々含むラテックスを製造してから混合し、その後、凝固する等により、混合されたゴム強化ビニル系樹脂(A1)とすることができる。
【0060】
溶液重合及び塊状重合によるゴム強化ビニル系樹脂(A1)の製造方法は、公知の方法を適用することができる。溶液重合及び塊状重合によりゴム強化ビニル系樹脂(A1)を製造する場合には、どの方法により得られたゴム質重合体(a)を用いてもよい。即ち、乳化重合により得られたラテックス(ゴム質重合体(a)の粒子を含む)をそのまま用いてよいし、その媒体を除去してなるゴム質重合体(a)を用いてもよい。また、溶液重合により得られたゴム質重合体(a)をそのまま用いてよいし、その再乳化液を用いてもよい。
【0061】
上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のグラフト率は、好ましくは10〜200質量%、より好ましくは15〜150質量%、更に好ましくは20〜150質量%である。上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のグラフト率が10質量%未満では、本発明の放熱性樹脂組成物及びそれを含む成形品の表面外観性及び耐衝撃性が低下することがある。また、200%を超えると、成形加工性が劣る。
ここで、グラフト率とは、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)1グラム中のゴム成分をxグラム、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)1グラムをアセトン(但し、ゴム質重合体(a)がアクリル系ゴムである場合には、アセトニトリルを使用。)に溶解させた際の不溶分をyグラムとしたときに、次式により求められる値である。
グラフト率(質量%)={(y−x)/x}×100
【0062】
また、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)のアセトン(但し、ゴム質重合体(a)がアクリル系ゴムである場合には、アセトニトリルを使用。)による可溶成分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.1〜1.0dl/g、より好ましくは0.2〜0.9dl/g、更に好ましくは0.3〜0.8dl/gである。この範囲とすることにより、本発明の放熱性樹脂組成物の成形加工性に優れ、本発明の放熱性樹脂組成物及びそれを含む成形品の耐衝撃性にも優れる。
尚、上記グラフト率及び極限粘度[η]は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)を製造するときの、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶剤等の種類や量、更には重合時間、重合温度等を変えることにより、容易に制御することができる。
【0063】
上記(共)重合体(A2)は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の製造に適用される重合開始剤等を用いて、単量体成分を、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等で重合することにより、あるいは、重合開始剤を用いない熱重合により、製造することができる。また、これらの重合方法を組み合わせてもよい。
【0064】
上記(共)重合体(A2)の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.1〜1.0dl/g、より好ましくは0.15〜0.8dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲内であると、成形加工性及び耐衝撃性の物性バランスに優れる。尚、この(共)重合体(A2)の極限粘度[η]は、上記ゴム強化ビニル系樹脂(A1)の場合と同様、製造条件を調整することにより制御することができる。
【0065】
上記ゴム強化樹脂のアセトン(但し、ゴム質重合体(a)がアクリル系ゴムである場合には、アセトニトリルを使用。)による可溶成分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.2〜0.8dl/g、より好ましくは0.25〜0.7dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲内であると、成形加工性と耐衝撃性との物性バランスに優れる。
【0066】
ここで、上記ゴム強化樹脂が、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)である場合、及び、ゴム強化ビニル系樹脂(A1)と、ビニル系単量体の重合によって得られた(共)重合体(A2)とよりなる混合物である場合のいずれにおいても、本発明の放熱性樹脂組成物中のゴム質重合体(a)の含有量は、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜35質量%、更に好ましくは5〜30質量%である。上記ゴム質重合体(a)の含有量が少なすぎると、本発明の放熱性樹脂組成物及びそれを含む成形品の耐衝撃性が劣る傾向にあり、多すぎると、成形加工性、成形品の表面外観性、剛性、耐熱性等が劣る傾向にある。
【0067】
本発明において、上記熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂を含むことが好ましく、その含有割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。ポリエステル樹脂と、他の樹脂とを組み合わせる場合、他の樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ゴム強化樹脂等が好ましい。
尚、上記ポリエステル樹脂としては、耐熱性に優れるホモ型ポリエステル、並びに、耐熱性及び機械強度(シャルピー衝撃強度、曲げ歪み等)に優れる共重合ポリエステルのいずれでも、又は、両方の組合せでもよいが、共重合ポリエステルを含むことが好ましく、特に、共重合型ポリブチレンテレフタレートを含むことが好ましい。
従って、上記ポリエステル樹脂の種類及び含有割合を選択又は調整することにより、目標とする物性バランスを有する放熱性樹脂組成物を得ることができる。
【0068】
1−2.熱伝導性フィラー
この熱伝導性フィラーとしては、25℃における熱伝導率が、好ましくは30W/(m・K)以上、より好ましくは80W/(m・K)以上、更に好ましくは100W/(m・K)以上、特に好ましくは150W/(m・K)以上である物質からなるものである。尚、熱伝導率の上限値は、通常、1,000W/(m・K)である。本発明に係る熱伝導性フィラーとしては、絶縁性に優れることから、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、チタン酸カルシウム等が挙げられる。また、上記以外の物質からなる無機系粒子又は有機系粒子をコアとして、上記化合物を被覆させてシェルを形成してなる複合型フィラーを用いることもできる。また、絶縁性の熱伝導性フィラーを用いることにより、絶縁性の放熱性樹脂組成物を得ることができ、この組成物を含む成形品の表面固有抵抗(絶縁性の指標、値が高いほど絶縁性に優れる)は、好ましくは1×1013Ω以上、更に好ましくは1×1014Ω以上である。この範囲にあると、絶縁性に優れる。
更に、上記熱伝導性フィラーは、光に対する反射特性の点から、白色系物質であることが好ましく、上記のうち、窒化ホウ素及び酸化亜鉛が好ましく、窒化ホウ素が特に好ましい。上記熱伝導性フィラーとして、窒化ホウ素からなるものを用いると、絶縁性、放熱性、耐熱性、及び、光に対する反射特性の物性バランスが高水準である放熱性樹脂組成物を得ることができる。
【0069】
窒化ホウ素としては、c−BN(閃亜鉛鉱構造)、w−BN(ウルツ鉱構造)、h−BN(六方晶構造)、r−BN(菱面体晶構造)等の複数の安定構造が知られている。本発明においては、いずれの窒化ホウ素も用いることができるが、六方晶構造の窒化ホウ素が好ましい。六方晶構造の窒化ホウ素を用いることにより、成形品を得る際に用いる成形機、及び、金型の摩耗が低減できる。
六方晶構造の窒化ホウ素は、層状の結晶構造を有しており、その形状は、平板状(鱗片状)である。この層状構造を有する窒化ホウ素において、層に平行な方向(a軸方向)の熱伝導性は、層に垂直な方向(c軸方向)のそれの約30倍程度といわれている。
【0070】
また、酸化亜鉛としては、公知のものを用いることができ、シリコーン系樹脂で被覆されたものを用いてもよい。
上記熱伝導性フィラーとして、窒化ホウ素及び酸化亜鉛を組み合わせて用いる場合、両者の合計を100質量%としたときに、窒化ホウ素の好ましい含有割合は、60〜95質量%、より好ましくは70〜90質量%である。窒化ホウ素の使用量が上記範囲であると、反射特性及び放熱性に優れる。
【0071】
上記熱伝導性フィラーの形状は、特に限定されず、球状、線状(繊維状)、平板状(鱗片状)、曲板状等とすることができ、単粒タイプでも、顆粒タイプ(単粒の凝集品)でもよい。鱗片状のものを用いると、熱伝導性に優れた成形品が得られるとともに、機械的特性が良好となるので好ましい。特に、上記熱伝導性フィラーが鱗片状の窒化ホウ素からなる場合には、絶縁性に優れ、窒化ホウ素自体白色性に優れることから、白色度の高い成形品を得やすく、光に対する反射特性に優れ、リフレクターとした場合、及び、リフレクター部を備えるLED実装用基板とした場合、のいずれにおいても、LED素子が発光しているときの光に対する反射特性にも優れる。
上記熱伝導性フィラーの平均粒径(又は最大長さの平均値)は、好ましくは1〜350μm、より好ましくは2〜200μmである。また、アスペクト比は、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは6〜20である。更に、純度は、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。上記の範囲とすることにより、放熱性及び白色性に優れる。また、嵩密度は、好ましくは0.8g/cm以下、より好ましくは0.7g/cm以下である。上記の各範囲とすることにより、放熱性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
また、上記熱伝導性フィラーが窒化ホウ素からなる場合、その大きさは、LED実装用基板及びリフレクター(リフレクター部)の目的とする性能、生産性、コスト等に応じて選択される。その平均粒径は、通常、1〜350μmの範囲であり、好ましくは2〜200μmの範囲である。平均粒径が上記範囲にあれば、放熱性、絶縁性、及び、光に対する反射特性に優れた成形品を得ることができる。上記範囲の平均粒径であれば、異なる粒径の窒化ホウ素を組み合わせて用いてもよい。尚、比表面積は、特に限定されない。
【0072】
上記熱伝導性フィラー中の酸化鉄の含有量は、好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下である。この含有量が多すぎると、成形品の白色性が劣る傾向にある。
【0073】
本発明の放熱性樹脂組成物中の熱伝導性フィラーの含有割合は、上記熱可塑性樹脂及び上記熱伝導性フィラーの合計量を100質量%とした場合、好ましくは20〜90質量%であり、より好ましくは25〜90質量%、更に好ましくは30〜70質量%、特に好ましくは31〜60質量%である。上記熱伝導性フィラーの含有量が多すぎると、成形加工性、耐衝撃性及び曲げ歪み特性が劣る傾向にあり、一方、少なすぎると、放熱性が劣る傾向にある。
【0074】
1−3.添加剤
本発明の放熱性樹脂組成物は、目的、用途等に応じて、添加剤を含有したものとすることができる。この添加剤としては、充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、離型剤、抗菌剤、着色剤、結晶核剤、流動改質剤、衝撃改質剤、エステル交換抑制剤等が挙げられる。尚、本発明の放熱性樹脂組成物を、リフレクターの形成、及び、リフレクター部を備えるLED実装用基板の形成に用いる場合は、組成物が白色系の色を維持できるように、添加剤を選択することが好ましい。また、本発明の放熱性樹脂組成物を、リフレクター部を備えないLED実装用基板の形成に用いる場合は、添加剤によって着色されたものであってもよい。
【0075】
上記充填剤としては、タルク、マイカ、クレー、ワラストナイト、シリカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ミルドファイバー、ガラスフレーク、アラミド繊維、ポリアリレート繊維等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記充填剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂の量を100質量部とした場合に、通常、3〜30質量部である。
【0076】
上記熱安定剤としては、ホスファイト類、ヒンダードフェノール類、チオエーテル類等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記熱安定剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂の量を100質量部とした場合に、通常、0.1〜5質量部である。
【0077】
上記酸化防止剤としては、ヒンダードアミン類、ハイドロキノン類、ヒンダードフェノール類、硫黄含有化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記酸化防止剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂の量を100質量部とした場合に、通常、0.1〜5質量部である。
【0078】
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、サリシレート系化合物、シアノアクリレート系化合物、安息香酸系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、ニッケル化合物の金属錯塩等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
ベンゾフェノン系化合物としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノンと他の4置換ベンゾフェノンとの混合物、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン3水和物、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸等が挙げられる。
【0080】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−(3",4",5",6"−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、ベンゾトリアゾール誘導体等が挙げられる。
【0081】
トリアジン系化合物としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソオクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−6−(2,4−ビスブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(1−オクチルオキシカルボニルエトキシ)フェニル]−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、これらのうちの1種以上を用いてなる変性物、重合物、誘導体等が挙げられる。
変性物としては、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルと、オキシラン(例えば、炭素数10〜16のアルキルオキシメチルオキシラン)との反応生成物、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと、(2−エチルヘキシル)グリシド酸エステルとの反応生成物等が挙げられる。
【0082】
サリシレート系化合物としては、サリチル酸フェニル、サリチル酸p−tert−ブチルフェニル、サリチル酸p−オクチルフェニル等が挙げられる。
シアノアクリレート系化合物としては、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリル酸エチル、α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリル酸イソオクチル等が挙げられる。
安息香酸系化合物としては、o−ベンゾイル安息香酸メチル、レゾルシノール−モノベンゾエート、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸モノグリセリンエステル、N,N−ジプロポキシパラアミノ安息香酸エチル、N,N−ジエトキシパラアミノ安息香酸エチル、N,N−ジメチルパラアミノ安息香酸メチル、N,N−ジメチルパラアミノ安息香酸エチル、N,N−ジメチルパラアミノ安息香酸ブチル等が挙げられる。
シュウ酸アニリド系化合物としては、2−エトキシ−5−第三ブチル−2’−エチルシュウ酸ビスアニリド、2−エトキシ−2−エチルシュウ酸ビスアニリド等が挙げられる。
【0083】
金属錯塩としては、ニッケルビス−オクチルフェニルサルファミド、[2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェノレート)]−n−ブチルアミンニッケル、[2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェノレート)]−2−エチルヘキシルアミンニッケル、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、エチル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ハイドロオキシベンジルリン酸のニッケル塩、ニッケルチオビスフェノール複合体等のニッケル化合物等が挙げられる。
他の紫外線吸収剤としては、1,3−ビス−(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロピルアクリレート、1,3−ビス−(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロピルメタクリレート等が挙げられる。
【0084】
また、上記光安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物、セミカルバゾン系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0085】
ヒンダードアミン系化合物としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−〔2−{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−4−{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,2,3−トリアザスピロ〔4,5〕ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ〔〔6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕〔(2,2,6,6‐テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕〕、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチル−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)マロネート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと、トリデシルアルコールとの縮合物、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールと、トリデシルアルコールとの縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと、β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールと、β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−n−ブチル−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−n−ブチル−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)マロネート、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチル−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,2‐ビス(3−オキソ−2,2,6,6‐テトラメチル−4−ピペリジル)エタン、1−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニル)ペンタン、ポリ〔1−オキシエチレン(2,2,6,6−テトラメチル−1,4−ピペリジル)オキシスクシニル〕、ポリ〔2−(1,1,4−トリメチルブチルイミノ)−4,6−トリアジンジイル−(2,2,6,6‐テトラメチル−4−ピペリジル)イミノヘキサメチレン−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス〔N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物等が挙げられる。
【0086】
上記光安定剤として、好ましい化合物は、下記構造を含むヒンダードアミン系化合物である。
【化2】

〔式中、R、R、R、R及びRは、互いに、同一又は異なって、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は、炭素数7〜20のアラルキル基である。〕
上記構造を含むヒンダードアミン系化合物としては、Rがメチル基である、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−n−ブチル−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)マロネート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチル−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)マロネート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと、トリデシルアルコールとの縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと、β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物等が特に好ましい。
【0087】
上記ヒンダードアミン系化合物は、酸化防止剤等の他の機能性添加剤としても用いられる。従って、光安定剤以外の他の添加剤としてヒンダードアミン系化合物が含有されていても、光安定剤として含有されるものとし、そして、他の添加剤として用いられたヒンダードアミン系化合物は、上記特定構造を有するヒンダードアミン系化合物であることが好ましい。
【0088】
また、セミカルバゾン系化合物としては、1,6−ヘキサメチレンビス−(N,N−ジメチルセミカルバジド)、1,1,1’,1’−テトラメチル−4,4’−(メチレンジ−p−フェニレン)ジセミカルバジド等が挙げられる。
【0089】
上記の紫外線吸収剤及び/又は光安定剤を用いると、LED素子からの光を長時間受けたときの、成形品表面の色調の低下、光に対する反射特性の低下等の不良現象を抑制することができる。
上記の紫外線吸収剤及び/又は光安定剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂及び上記熱伝導性フィラーの合計を100質量部とした場合に、好ましくは0.05〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部、更に好ましくは0.2〜5質量部である。尚、上記の紫外線吸収剤及び光安定剤を併用することにより、上記不良現象の改良効果が顕著となり、その場合の質量割合は、両者の合計を100質量部とした場合に、それぞれ、好ましくは5〜95質量部及び95〜5質量部、より好ましくは10〜90質量部及び90〜10質量部、更に好ましくは15〜85質量部及び85〜15質量部、特に好ましくは40〜60質量部及び60〜40質量部である。
【0090】
上記老化防止剤としては、例えば、ナフチルアミン系化合物、ジフェニルアミン系化合物、p−フェニレンジアミン系化合物、キノリン系化合物、ヒドロキノン誘導体系化合物、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、トリスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物、チオビスフェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、亜リン酸エステル系化合物、イミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸ニッケル塩系化合物、リン酸系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記老化防止剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂の量を100質量部とした場合に、通常、0.1〜5質量部である。
【0091】
上記可塑剤としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、オクチルデシルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソブチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、ジイソオクチルセバケート等の脂肪酸エステル類;トリメリット酸イソデシルエステル、トリメリット酸オクチルエステル、トリメリット酸n−オクチルエステル、トリメリット酸系イソノニルエステル等のトリメリット酸エステル類;ジ−(2−エチルヘキシル)フマレート、ジエチレングリコールモノオレート、グリセリルモノリシノレート、トリラウリルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、エポキシ化大豆油、ポリエーテルエステル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記可塑剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂の量を100質量部とした場合に、通常、0.1〜15質量部である。
【0092】
上記滑剤としては、脂肪酸エステル、炭化水素樹脂、パラフィン、高級脂肪酸、オキシ脂肪酸、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、脂肪族アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、ポリグリセロール、金属石鹸、シリコーン、変性シリコーン等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記滑剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂の量を100質量部とした場合に、通常、0.1〜5質量部である。
【0093】
上記難燃剤としては、有機系難燃剤、無機系難燃剤、反応系難燃剤等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
有機系難燃剤としては、臭素化エポキシ系化合物、臭素化アルキルトリアジン化合物、臭素化ビスフェノール系エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノール系フェノキシ樹脂、臭素化ビスフェノール系ポリカーボネート樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化架橋ポリスチレン樹脂、臭素化ビスフェノールシアヌレート樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル、デカブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノールA及びそのオリゴマー等のハロゲン系難燃剤;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トキヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート等のリン酸エステルやこれらを各種置換基で変性した化合物、各種の縮合型のリン酸エステル化合物、リン元素及び窒素元素を含むホスファゼン誘導体等のリン系難燃剤;ポリテトラフルオロエチレン、グアニジン塩、シリコーン系化合物、ホスファゼン系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0094】
無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ジルコニウム系化合物、モリブデン系化合物、スズ酸亜鉛等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
反応系難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモフェノールグリシジルエーテル、臭素化芳香族トリアジン、トリブロモフェノール、テトラブロモフタレート、テトラクロロ無水フタル酸、ジブロモネオペンチルグリコール、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、クロレンド酸(ヘット酸)、無水クロレンド酸(無水ヘット酸)、臭素化フェノールグリシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0095】
上記難燃剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂の量を100質量部とした場合に、通常、5〜30質量部、好ましくは5〜20質量部である。
尚、本発明の放熱性樹脂組成物に難燃剤を含有させる場合には、難燃助剤を用いることが好ましい。この難燃助剤としては、三酸化二アンチモン、四酸化二アンチモン、五酸化二アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、酒石酸アンチモン等のアンチモン化合物や、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、水和アルミナ、酸化ジルコニウム、ポリリン酸アンモニウム、酸化スズ等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0096】
上記抗菌剤としては、銀系ゼオライト、銀−亜鉛系ゼオライト等のゼオライト系抗菌剤、錯体化銀−シリカゲル等のシリカゲル系抗菌剤、ガラス系抗菌剤、リン酸カルシウム系抗菌剤、リン酸ジルコニウム系抗菌剤、銀−ケイ酸アルミン酸マグネシウム等のケイ酸塩系抗菌剤、酸化チタン系抗菌剤、セラミック系抗菌剤、ウィスカー系抗菌剤等の無機系抗菌剤;ホルムアルデヒド放出剤、ハロゲン化芳香族化合物、ロードプロパルギル誘導体、チオシアナト化合物、イソチアゾリノン誘導体、トリハロメチルチオ化合物、第四アンモニウム塩、ビグアニド化合物、アルデヒド類、フェノール類、ピリジンオキシド、カルバニリド、ジフェニルエーテル、カルボン酸、有機金属化合物等の有機系抗菌剤;無機・有機ハイブリッド抗菌剤;天然抗菌剤等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記抗菌剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂の量を100質量部とした場合に、通常、0.05〜5質量部である。
【0097】
上記着色剤としては、TiO等の無機顔料、有機顔料及び染料のいずれを用いてもよい。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
上記着色剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂の量を100質量部とした場合に、好ましくは0.05〜30質量部、より好ましくは0.1〜15質量部、更に好ましくは0.1〜10質量部である。
上記衝撃改質剤としては、グラフトゴム等が挙げられる。
【0098】
上記エステル交換抑制剤は、熱可塑性樹脂としてポリエステル樹脂が用いられる場合に含有させることができる。このエステル交換抑制剤としては、特に限定されないが、P−O結合を有するリン酸系化合物が好ましく用いられる。その具体例としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、次亜リン酸及びピロリン酸並びにこれらの誘導体、シリルホスフェート等が挙げられる。
上記エステル交換抑制剤の含有量は、上記熱可塑性樹脂の量を100質量部とした場合に、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.02〜3質量部、更に好ましくは0.03〜1質量部である。エステル交換抑制剤をこの範囲で用いると、成形加工時の熱による劣化が抑制され、耐衝撃性、白色度及び光沢性に優れた成形品を得ることができる。
【0099】
1−4.組成物の製造方法
本発明の放熱性樹脂組成物は、上記所定の含有量となるように秤量した原料成分を、押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、フィーダールーダー等に供給し、混練することにより製造することができる。原料成分の供給方法は特に限定されず、各々の成分を一括配合して混練してもよく、多段、分割配合して混練してもよい。
尚、混練温度は、上記熱可塑性樹脂の種類、及び、上記熱伝導性フィラーの含有量により選択されるが、通常、200〜300℃である。
【0100】
1−5.組成物の性質
本発明の放熱性樹脂組成物は、上記熱可塑性樹脂をマトリックスとして、上記熱伝導性フィラーが均一に分散しており、熱伝導性フィラーの含有割合によらず、成形加工性に優れ、耐衝撃性に優れた成形品を得ることができる。また、本発明の放熱性樹脂組成物を含む成形品は、放熱性、絶縁性、耐熱性及び耐光性に優れる。尚、上記熱伝導性フィラーが窒化ホウ素からなるものである場合には、絶縁性及び光に対する反射特性に特に優れる。
本発明の放熱性樹脂組成物において、ISO75に準ずる熱変形温度(荷重1.80MPa)は、120℃以上であり、好ましくは130〜300℃、より好ましくは130〜280℃である。この温度が120℃未満であると、LED発光の発熱による変形が生じる傾向にある。
この熱変形温度は、熱可塑性樹脂の種類及びその含有量、熱伝導性フィラーの種類、形状及びその含有量等を適宜、選択することにより調整することができる。
また、25℃における熱伝導率は、2.0W/(m・K)以上であり、好ましくは3.0〜10.0W/(m・K)、より好ましくは4.0〜5.0W/(m・K)である。上記熱伝導率が、上記範囲であれば、放熱性及び機械的強度の物性バランスに優れる。この熱伝導率が2.0W/(m・K)未満であると、放熱性が劣る傾向にある。尚、上記熱伝導率は、成形品を製造したときの組成物の流動方向に対して測定した値であり、測定方法は、後述の〔実施例〕において説明する。
この熱伝導率は、熱伝導性フィラーの種類、形状及びその含有量等を、適宜、選択することにより調整することができる。
更に、熱放射率は、0.7以上であり、好ましくは0.75以上、より好ましくは0.8以上である。この熱放射率が0.7未満であると、放熱性が十分でない。尚、熱放射率の測定方法は、後述の〔実施例〕において説明する。
この熱放射率は、熱伝導性フィラーの種類及びその含有量等を、適宜、選択することにより調整することができる。
また、本発明の放熱性樹脂組成物において、ISO178に準ずる曲げ歪みは、好ましくは1.0%以上であり、より好ましくは1.2〜8%、更に好ましくは1.5〜8%である。上記曲げ歪みが、上記範囲であれば、曲げ歪み特性及び剛性の物性バランスが高水準にあり、好ましい。この曲げ歪みが1.0%未満であると、本発明の放熱性樹脂組成物を含む成形品である各種部材を組み付け、組み込み等の作業を行う場合に、割れが発生する傾向にある。
この曲げ歪みは、熱可塑性樹脂の種類及びその含有量、熱伝導性フィラーの種類、形状及びその含有量等を、適宜、選択することにより調整することができる。
更に、白色度は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85〜100%、更に好ましくは87〜100%である。この白色度が高いほど、LED素子からの光の反射特性に優れる。尚、白色度は、ハンター式測色色差計により測定することができる。
この白色度は、熱可塑性樹脂の種類及びその含有量、熱伝導性フィラーの種類及びその含有量、着色剤の種類及びその含有量等を、適宜、選択することにより調整することができる。
また、本発明の放熱性樹脂組成物において、光線反射率は、好ましくは50%以上であり、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上である。尚、光線反射率の測定方法は、後述の〔実施例〕において説明する。
放熱性樹脂組成物の絶縁性について、本発明の放熱性樹脂組成物を含む成形品の表面固有抵抗(絶縁性の指標であり、値が高いほど絶縁性に優れる。)は、好ましくは1×1013Ω以上、更に好ましくは1×1014Ω以上である。この範囲にあると、絶縁性に優れる。
本発明の放熱性樹脂組成物は、以上のような優れた性質を有することから、LED実装用基板、又は、このLED実装用基板に配設されるリフレクターの形成に好適である。
【0101】
本発明の放熱性樹脂組成物を含む成形品は、接着剤等を用いたときの、他の部材との接着性に優れる。また、上記成形品どうしの隙間、又は、上記成形品と、他の部材との隙間に封止剤等を充填し、硬化させることによって、機械的強度に優れた複合体とすることができる。この複合体としては、LED実装用基板を含む照明装置又は発光装置、リフレクターを含む照明装置又は発光装置、LED実装用基板及びリフレクターを含む照明装置又は発光装置等が挙げられる。
【0102】
2.成形品
本発明のLED実装用基板は、上記本発明の放熱性樹脂組成物を含むことを特徴とする。また、本発明のリフレクターは、上記本発明の放熱性樹脂組成物を含むことを特徴とする。
本発明のLED実装用基板及びリフレクターは、表面実装型LEDパッケージの構成要素であり、ワイヤーボンディング実装の形態の場合の概略断面図(図1〜図3)を用いて説明することができる。
図1及び図2の表面実装型LEDパッケージ1は、LED実装用基板11aと、リフレクター12と、LED素子13と、電極14と、LED素子13及び電極14を接続するリード線15と、透明封止部(又は空隙部)16と、レンズ17とを備える。
【0103】
2−1.LED実装用基板
本発明のLED実装用基板の形状は、通常、角形、円形等の平板状である。断面形状は、一様に平坦であってよいし、LED素子を配設する側の面には、目的、用途等に応じて凹部、凸部、貫通孔等を備えてもよい。例えば、図1によると、基板11aの一方の面に凹部を備え、この凹部の底面にLED素子13を配設している。
また、上記基板11aの、LED素子13が配設されていない側の面には、表面積を大きくすることにより放熱性を改良する等のために、溝等が設けられていてもよい。
【0104】
本発明のLED実装用基板は、複数のLED素子を備えることができる大型の基板であってもよいが、1つのLED素子を備えることができる小型の基板であってもよい。従って、本発明のLED実装用基板の大きさは、目的、用途等に応じて選択される。
また、本発明のLED実装用基板の厚さ(凹部、凸部等を備えない部分の厚さ)は、目的、用途等に応じて選択される。
【0105】
図1及び図2の表面実装型LEDパッケージ1は、LED実装用基板11aと、発光したLED素子13の周りに光を所定方向に反射させるリフレクター12とを別々に準備し、組み付けた態様である。図3に示すような表面実装型LEDパッケージとすることもできる。即ち、図3の表面実装型LEDパッケージ1は、リフレクター部12bを備えるLED実装用基板11bと、LED素子13と、電極14と、LED素子13及び電極14を接続するリード線15と、透明封止部(又は空隙部)16と、レンズ17とを備える態様である。尚、リフレクター部12bの形状等については、図1及び図2におけるリフレクター12と同様であり、後述の「2−2.リフレクター」において説明する。
図3から明らかなように、本発明のLED実装用基板は、図1でいうLED実装用基板11a及びリフレクター12が連続相となっているLED実装用基板(リフレクター部12bを備えるLED実装用基板)11bとすることもできる。このリフレクター部を備えるLED実装用基板11bであれば、従来の製造方法に比べ、少ない部品点数、少ない製造工程により表面実装型LEDパッケージを得ることができ、性能面及びコスト面において優れる。即ち、従来の表面実装型LEDパッケージ3の一例である図5は、金属アルミニウム等の金属製基板11cにLED素子配設用の絶縁性台座18を積層し、その台座18上にLED素子13を配設後、更に、LED素子13の周りにポリフタルアミド等を含むリフレクター12を配設することにより製造されていた。しかしながら、上記LED実装用基板11bによると、加工が必要な金属と異なり、上記本発明の放熱性樹脂組成物により容易に所定形状とすることができ、絶縁性台座18を配設する必要がなく、また、リフレクターを配設する必要もない。
【0106】
2−2.リフレクター(リフレクター部)
本発明のリフレクター12は、本発明のLED実装用基板11aと組み合わせて用いてよいし、他の材料からなるLED実装用基板と組み合わせて用いてもよい。
本発明のリフレクター12、及び、上記LED実装用基板11bにおけるリフレクター部12bは、主として、その内面において、LED素子13からの光をレンズ17の方へ反射させる作用を有する。
これらの形状は、通常、レンズ17の端部(接合部)の形状に準じており、通常、角形、円形、楕円形等の筒状又は輪状である。図1及び図2の概略断面図においては、リフレクター12は、いずれも、筒状体(輪状体)であり、図1においては、リフレクター12の端部122(図面の右側)がLED実装用基板11aに接触、固定されており、リフレクター12の端部121(図面の左側)がLED実装用基板11aの側面に接触、固定されている。一方、図2においては、リフレクター12のすべての端面がLED実装用基板11aの表面に接触、固定されている。尚、本発明のリフレクター12、及び、上記LED実装用基板11bにおけるリフレクター部12bの内面は、LED素子13からの光の指向性を高めるために、テーパー状に上方に広げられていてもよい(図2参照)。
また、本発明のリフレクター12、及び、上記LED実装用基板11bにおけるリフレクター部12bは、レンズ17側の端部を、レンズ17の形状に応じた形に加工された場合には、レンズホルダーとしても機能させることができる。
【0107】
本発明のリフレクター12、及び、上記LED実装用基板11bにおけるリフレクター部12bは、目的、用途等に応じて凹部、凸部、貫通孔等を備えてもよい。例えば、図1によると、リフレクター121には貫通孔を備え、この貫通孔を通じて電極14を配設している。
また、本発明のリフレクター12、及び、上記LED実装用基板11bにおけるリフレクター部12bは、上記本発明の放熱性樹脂組成物が高い白色度を有する場合には、発光したLED素子の光に対する高い反射特性を得ることができるが、更に高い反射特性を得るために、内壁面に、光反射層を形成したものであってもよい。上記光反射層の厚さは、熱抵抗を低くする等の観点から、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下である。
【0108】
2−3.表面実装型LEDパッケージ
本発明のLED実装用基板及びリフレクターを用いて、図1〜図3のような、ワイヤーボンディング実装形態の表面実装型LEDパッケージを容易に得ることができる。
LED素子13は、放射光(一般に、白色光LEDにおいてはUV又は青色光)を放出する、例えば、AlGaAs、AlGaInP、GaP又はGaNからなる活性層を、n型及びp型のクラッド層により挟んだダブルヘテロ構造を有する半導体チップ(発光体)であり、例えば、一辺の長さが0.5mm程度の六面体の形状をしている。尚、上記のように、ワイヤーボンディング実装の形態でない場合には、リード線15を用いず、バンプを介して、LED素子13の近くに配設された配線パターンにフリップチップ実装される形態とすることができる。
電極14は、駆動電圧を供給する接続端子であり、本発明のリフレクター12、又は、上記LED実装用基板11bにおけるリフレクター部12bに設けられた貫通孔等を通して配設されている。
リード線15は、LED素子13と電極14とを電気的に接続するものであり、透明封止部16を有する場合には、この透明封止部16中に埋設されている。
レンズ17は、通常、樹脂製であり、目的、用途等により様々な構造とすることができ、着色されていてもよい。
【0109】
また、図1〜図3における符号16で表される部分は、透明封止部であってよいし、必要により空隙部であってもよい。この部分は、通常、透光性及び絶縁性を与える材料等が充填された透明封止部であり、ワイヤーボンディング実装において、リード線15に直接接触することにより加わる力、及び、間接的に加わる振動、衝撃等により、LED素子13との接続部、及び/又は、電極14との接続部からリード線15が外れたり、切断したり、短絡したりすることによって生じる電気的な不具合を防止することができる。また、同時に、湿気、塵埃等からLED素子13を保護し、長期間に渡って信頼性を維持することができる。
尚、上記透明封止部は、必要に応じて、LED素子から発せられた光の波長を所定の波長に変換する、無機系及び/又は有機系の蛍光物質を含んでもよい。
【0110】
この透光性及び絶縁性を与える材料(透明封止剤組成物)は、通常、シリコーン、エポキシシリコーン、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂等を含む。これらのうち、耐熱性、耐候性、低収縮性及び耐変色性の観点から、シリコーンが特に好ましい。また、これらの成分は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。この透明封止剤組成物は、上記成分のうちの硬化可能な成分と、該成分を硬化させる硬化剤と、必要に応じて、硬化触媒等を配合した組成物であることが好ましい。
また、上記透明封止剤組成物は、蛍光物質、反応抑制剤、酸化防止剤、光安定剤、変色防止剤等を含有してもよい。
【0111】
シリコーンを含有する透明封止剤組成物について説明する。シリコーンは、ゴム及び樹脂のいずれでもよい。また、組成物は、付加反応硬化型、縮合反応硬化型、UV硬化型等のいずれでもよいが、速やかに硬化させることができる点で、付加反応硬化型組成物が好ましい。なかでも、室温硬化型又は加熱硬化型の組成物が好ましい。
付加反応硬化型組成物は、シリコーンと、該シリコーンを硬化させる硬化剤と、必要に応じて、硬化触媒等を配合した組成物であることが好ましい。この組成物は、通常、ビニル基等の官能基を有するシリコーンと、分子中にSi−H結合を有する重合体と、硬化触媒(白金系触媒、パラジウム系触媒等)とからなる組成物である。例えば、東レ・ダウコーニング社等の製品を用いることができる。
【0112】
上記のシリコーンを含有する透明封止剤組成物において、必要に応じて配合される他の成分は、上記のとおりであるが、組成物は、硬化阻害物質を含有しないように調製される。また、上記本発明の放熱性樹脂組成物からなる成形品に、硬化阻害物質が含まれると、透明封止剤組成物を用いたときに、付加反応が進行しない場合、又は、進行しにくい場合がある。その結果、上記成形品との接着性が低下することとなる。例えば、上記本発明の放熱性樹脂組成物がリン系難燃剤を含有する場合、又は、該組成物が下記構造を含むヒンダードアミン系光安定剤を含有する場合には、透明封止剤組成物の硬化が十分でないことがある。
【化3】

〔式中、R、R、R及びRは、互いに、同一又は異なって、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は、炭素数7〜20のアラルキル基である。〕
従って、放熱性樹脂組成物に、添加剤を配合する場合には、硬化阻害物質ではない添加剤が選択される。尚、硬化阻害物質は、通常、硬化触媒の種類に依存するものであり、例えば、アミン化合物、アミド化合物、ニトリル化合物、シアナート化合物、オキシモ化合物、ニトロソ化合物、ヒドラゾ化合物、アゾ化合物、キレート化合物等の窒素元素を含む有機化合物;ホスフィン化合物、亜リン酸エステル等のリン元素を含む有機化合物;硫化物、チオ化合物等の硫黄元素を含む有機化合物;錫元素、ヒ素元素、アンチモン元素、セレン元素、テルル元素、鉛元素等を含むイオン性化合物;アセチレン等の多重結合を有する有機化合物等が知られている。
【0113】
以下に、ワイヤーボンディング実装形態の表面実装型LEDパッケージ(図1)の製造方法の一例について説明する。
まず、上記本発明の放熱性樹脂組成物を、所定形状のキャビティ空間を備える金型を用いた射出成形等により、凹部を有する平板状のLED実装用基板11a、及び、筒状(輪状)であり且つ電極14を内面から外面に嵌挿可能な貫通孔を有するリフレクター12を成形する。その後、別途、準備したLED素子13、電極14及びリード線を、接着剤又は接合部材によりLED実装用基板11a及びリフレクター12に固定する。次いで、LED実装用基板11a及びリフレクター12により形成された凹部に、シリコーン等を含む透明封止剤組成物を注入し、加熱、乾燥等により硬化させて透明封止部16とする。その後、透明封止部16の上にレンズ17を配設して、図1に示す表面実装型LEDパッケージが得られる。また、透明封止剤組成物が未硬化の状態でレンズ17を載置してから、組成物を硬化させてもよい。
【0114】
2−4.LED照明装置
本発明のLED実装用基板を有する表面実装型LEDパッケージ、本発明のリフレクターを有する表面実装型LEDパッケージ、又は、本発明の、リフレクター部を備えるLED実装用基板を有する表面実装型LEDパッケージを用いて、LED照明装置とすることができる。図1の表面実装型LEDパッケージを用いたLED照明装置の概略断面図を図4に示す。
図4のLED照明装置2は、2つの表面実装型LEDパッケージを備える態様であり、図1の表面実装型LEDパッケージと、このパッケージを構成する電極14と、LED素子を発光させるためのバイアス電圧印加用電源(図示せず)とを接続する配線パターン22と、この配線パターン22を含む照明装置用基板21と、を備える。更に、これらの表面実装型LEDパッケージ及び照明装置用基板21を覆うためのハウジングを備えてもよい。
【0115】
照明装置用基板21の構成は、特に限定されないが、例えば、図4のように、基板211(好ましくは樹脂製絶縁放熱板)及び基板212(好ましくは樹脂製絶縁放熱板)の2層型とし、基板211が配線パターンを含む態様とすることができる。尚、図4においては、(図1の)表面実装型LEDパッケージが、放熱性及び絶縁性に優れたLED実装用基板11aを備えることから、基板211及び基板212における、上記LED実装用基板11aの下方の部分は、貫通孔とする等開口させている。
【実施例】
【0116】
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない、尚、下記において、部及び%は、特に断らない限り、質量基準である。
【0117】
1.放熱性樹脂組成物の製造及び評価
以下の実施例及び比較例で用いた組成物の原料成分を示す。
1−1.熱可塑性樹脂
(1)A1;共重合型ポリブチレンテレフタレート(可撓性を付与した変性PBT;ジメチルテレフタレート、1,4−ブタンジオール及びポリテトラメチレングリコールの共重合体)
三菱エンジニアリングプラスチックス社製「NOVADURAN 5505S」(商品名)を用いた。ガラス転移温度は27℃である。
(2)A2;ホモ型ポリブチレンテレフタレート
三菱エンジニアリングプラスチックス社製「NOVADURAN 5007」(商品名)を用いた。ガラス転移温度は30℃である。
(3)A3;ホモ型ポリエチレンテレフタレート
三菱化学社製「NOVAPEX GM700Z」(商品名)を用いた。重量平均分子量は18,000である。ガラス転移温度は67℃である。
(4)A4;ポリカーボネート
三菱エンジニアリングプラスチックス社製「NOVAREX 7022PJ−LH1」(商品名)を用いた。重量平均分子量は18,000である。
(5)A5;ゴム強化樹脂
テクノポリマー社製「TECHNO ABS170」(商品名)を用いた。
【0118】
1−2.熱伝導性フィラー
(1)B1;窒化ホウ素
GEスペシャルティ・マテリアルズ・ジャパン社製「PT350」(商品名)を用いた。六方晶構造であり、平均粒径は130μm(ふるい分け法)であり、酸化鉄量は0%である。
(2)B2;窒化ホウ素
GEスペシャルティ・マテリアルズ・ジャパン社製「PT120」(商品名)を用いた。六方晶構造であり、平均粒径は12μm(液相沈降法(光透過法))であり、酸化鉄量は0%である。
(3)B3;窒化ホウ素
昭和電工社製「UHP−EX」(商品名)を用いた。六方晶構造であり、平均粒径は30〜40μm(液相沈降法(光透過法))であり、酸化鉄量は0%である。
(4)B4;窒化ホウ素
昭和電工社製「UHP−2」(商品名)を用いた。六方晶構造であり、平均粒径は8μm(液相沈降法(光透過法))であり、酸化鉄量は0%である。
(5)B5;酸化亜鉛
堺化学工業社製「ZINC OXIDE No.2」(商品名)を用いた。平均粒径は3μm(レーザー回折法)であり、酸化鉄量は0.0007%である。
(6)B6;黒鉛粒子
中越黒鉛工業所社製「HF−150A」(商品名)を用いた。形状は鱗片状であり、アスペクト比は16、重量平均粒子径161μm(電子顕微鏡法)である。
(7)B7;窒化ホウ素
電気化学工業社製「デンカボロンナイトライド粉末SGP」(商品名)を用いた。六方晶構造であり、平均粒径は18.0μmであり、酸化鉄量は0%である。
【0119】
1−3.難燃剤
(1)C1;ハロゲン系難燃剤
東都化成社製「エピコート5203」(商品名)を用いた。
(2)C2;芳香族縮合リン酸エステル
1,3−フェニレンビスジキシレニルホスフェート(商品名「PX−200」、大八化学社製)を用いた。
【0120】
1−4.紫外線吸収剤(D1)
2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(商品名「TINUVIN P」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を用いた。
【0121】
1−5.光安定剤
(1)E1;ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート
アデカ社製「アデカスタブ LA−77」(商品名)を用いた。
(2)E2;テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート
アデカ社製「アデカスタブ LA−52」(商品名)を用いた。
【0122】
1−6.無機白色顔料(F1)
酸化チタン(商品名「タイペークPF691」、石原産業社製)を用いた。
【0123】
1−7.放熱性樹脂組成物の製造及び評価(I)
実施例1〜15及び比較例1〜3
(1)放熱性樹脂組成物の製造方法
熱可塑性樹脂と、熱伝導性フィラー等とを、表1及び表2に示す割合でミキサーに投入して5分間混合した後、押出機(「BT−40−S2−30−L型」、プラスチック工学研究所製)を用い、弱練りタイプのスクリューを用い、スクリュー回転数100rpm及びシリンダー温度260℃で溶融混練押出し、ペレット(放熱性樹脂組成物)を得た。
【0124】
(2)評価方法
上記で得られたペレットを用い、下記評価項目に関する試験を行った。その結果を表1及び表2に示した。
[1]熱放射率
放熱性樹脂組成物からなるペレットを用い、射出成形(金型温度;50〜80℃)にて大きさ150×150×3mmの試験片を作製し、サーモスポットセンサー(「TSS−5X型」、ジャパンセンサー社製)を用い、赤外線検出による反射エネルギー測定方式により、雰囲気温度25℃で測定した。
【0125】
[2]熱伝導率(単位;W/(m・K))
放熱性樹脂組成物からなるペレットを用い、その溶融物を、直径10mm及び長さ50mmのキャビティ空間を有する金型(金型温度;50〜80℃)の下方から射出して、直径10mm及び長さ50mmの円柱体を作製した。その後、ほぼ中央部において、厚さが1.5mmの円板となるように切り出し、これを試験片(直径10mm及び厚さ1.5mm)とした。熱伝導率を放熱性樹脂組成物の流動方向に対して測定するために、この試験片における、上面及び下面の各表面にプローブを当て、レーザーフラッシュ法熱定数測定装置(「TR−7000R型」、アルバック理工社製)を用い、25℃で測定した。
【0126】
[3]熱変形温度(単位;℃)
ISO75に準じて、荷重1.80MPaの条件にて測定した。
[4]曲げ歪み(単位;%)
放熱性樹脂組成物からなるペレットを用い、射出成形(金型温度;50〜80℃)にて大きさ150×150×3mmの試験片を作製し、ISO178に準じて、精密万能試験機(「オートグラフAG−10KNI型」、島津製作所社製)を用い、3点曲げ強度測定法により測定した。測定条件は、試験片のスパン間隔64mm、曲げ速度1mm/分である。
【0127】
[5]シャルピー衝撃強度(単位;kJ/m
ISO179に準じて、室温におけるシャルピー衝撃強さ(Edgewise Impact、ノッチ付き)を測定した。測定条件は、以下の通りである。
試験片タイプ : Type 1
ノッチタイプ : Type A
荷重 : 2J
【0128】
[6]表面固有抵抗(単位;Ω)
放熱性樹脂組成物からなるペレットを用い、射出成形(金型温度;50〜80℃)にて直径200mm及び厚さ2mmの円形の試験片を作製し、ハイ・レジスタンス・メータ(「4339B型」、Agilent Technologies社製)を用いて測定した。
【0129】
[7]白色度(単位;%)
上記[1]と同じ試験片について、耐光試験前後の白色度を、ハンター式測定色差計によりLab(L;明度、a;赤色度、b;黄色度)を測定し、次式により算出した。
W=100−√{(100−L)+a+b
耐光試験は、耐候光試験機「サンシャインウェザーメーター」(スガ試験機社製)を用い、雨無し及び温度63℃の条件で1000時間連続点灯した。
尚、比較例3については、試験片の色は目視により評価した。
【0130】
[8]MFR(単位;g/10分)
放熱性樹脂組成物のMFRを、温度250℃及び荷重2kgの条件で、ISO1133に準じて測定した。
[9]光線反射率(単位;%)
上記[2]と同じ試験片について、上記[7]と同じ条件による耐光試験前後の紫外線(波長460nm)に対する反射率を、紫外可視近赤外分光光度計(「V−670型」、日本分光社製)により、入射角60度で測定した。
【0131】
[10]透明封止剤組成物の硬化性
シリコーンを含む2液エラストマー(商品名「JCR6115」、東レ・ダウコーニング社製)を、質量比1:1で混合し、付加反応硬化型組成物を得た。その後、この組成物を脱泡し、その3グラム程度を、上記[1]と同じ試験片の片面に塗布し、均一厚さの塗膜を形成した。次いで、ギヤオーブン中、温度150℃で1時間加熱し、硬化状態を目視及び触診により評価した。
○:塗膜の75%を超える面積に相当する領域が硬化した。
△:塗膜の25〜75%に相当する領域が硬化した。
×:塗膜の25%未満の面積に相当する領域が硬化した。
【0132】
比較例4
金属アルミニウム板について、熱放射率及び熱伝導率を測定した。その結果を表2に示した。
【0133】
【表1】

【0134】
【表2】

【0135】
表2から明らかなように、比較例1は、熱伝導性フィラーの含有量が少ないため、熱伝導率が本発明の範囲未満の例であり、本発明の目的とするLED実装用基板、リフレクターの成形材料として適さない。比較例2は、熱変形温度の低い熱可塑性樹脂を用いた例であり、熱変形温度が本発明の範囲未満に低く、本発明の目的とするLED実装用基板、リフレクターの成形材料として適さない。
また、比較例3は、熱伝導性フィラーとして黒鉛粒子を用いた例であり、黒色を呈し、電気絶縁性に劣ることから、本発明の目的とするLED実装用基板、リフレクターの成形材料として適さない。
【0136】
1−8.放熱性樹脂組成物の製造及び評価(II)
実施例16〜22
(1)放熱性樹脂組成物の製造方法
熱可塑性樹脂、熱伝導性フィラー、紫外線吸収剤、光安定剤及び無機白色顔料を、表3に示す割合でミキサーに投入して5分間混合した後、押出機(「BT−40−S2−30−L型」、プラスチック工学研究所製)を用い、弱練りタイプのスクリューを用い、スクリュー回転数100rpm及びシリンダー温度260℃で溶融混練押出し、ペレット(放熱性樹脂組成物)を得た。
【0137】
(2)評価方法
上記で得られたペレットを用い、上記評価項目[1]〜[10]に関する試験を行った。その結果を表3に示した。
【0138】
【表3】

【0139】
1−9.放熱性樹脂組成物の評価(III)
実施例23
実施例1の放熱性樹脂組成物を用いて、上記[1]にて作製した試験片4の表面の中央部に、円形のシリコーンラバーヒーター(直径40mm)5を載置し、印加電圧10V及びワット密度0.5W/cmの条件で一定の電流を流し、加熱した(図6参照)。10分後に温度を測定したところ、シリコーンラバー表面の温度は55℃であった。また、同時に、図6における左上の「X」の位置にて温度を測定したところ、48℃であった。
上記放熱性樹脂組成物は、樹脂のみに比べて、熱伝導率が高く、金属より熱放射率が高いため、温度が低下し、放熱しやすいことが分かる。
【0140】
比較例5
比較例4の金属アルミニウム板を用いて、実施例23と同様にして加熱した。10分後に温度を測定したところ、シリコーンラバー表面の温度は64℃であった。また、同時に、図6における左上の「X」の位置にて温度を測定したところ、60℃であった。
金属は、熱伝導率が高いが、熱放射率が小さく、熱が蓄積されるため、温度が高くなり、放熱しにくいことが分かる。
【0141】
2.LED実装用基板の製造
実施例24
実施例1の放熱性樹脂組成物からなるペレットを260℃で溶融させ、この溶融物を、長方形であって、中央部に円形の凹部を形成するようなキャビティ空間を有する金型に射出(金型温度;50〜80℃)し、図2に示すようなLED実装用基板11a(縦約7mm、横約4mm、厚さ約1mm)を得た。
【0142】
実施例25
実施例1の放熱性樹脂組成物からなるペレットを260℃で溶融させ、この溶融物を、円筒状に張り出しており、張り出した内壁にLED素子に接続する電極を嵌挿させるための貫通孔を形成させ、更に、長方形であって、中央部より端側に、円形の凹部を形成するようなキャビティ空間を有する金型に射出(金型温度;50〜80℃)し、図3に示すような、リフレクター部を備えるLED実装用基板11b(縦約10mm、横約4mm、リフレクター部における最大高さ約2mm)を得た。
【0143】
実施例26
実施例1の放熱性樹脂組成物に代えて、実施例18の放熱性樹脂組成物を用いた以外は、実施例24と同様にして、図2に示すようなLED実装用基板11aを得た。
【0144】
実施例27
実施例1の放熱性樹脂組成物に代えて、実施例18の放熱性樹脂組成物を用いた以外は、実施例25と同様にして、図3に示すようなリフレクター部を備えるLED実装用基板11bを得た。
【0145】
実施例28
実施例1の放熱性樹脂組成物に代えて、実施例21の放熱性樹脂組成物を用いた以外は、実施例24と同様にして、図2に示すようなLED実装用基板11aを得た。
【0146】
実施例29
実施例1の放熱性樹脂組成物に代えて、実施例21の放熱性樹脂組成物を用いた以外は、実施例25と同様にして、図3に示すようなリフレクター部を備えるLED実装用基板11bを得た。
【0147】
実施例30
実施例1の放熱性樹脂組成物に代えて、実施例22の放熱性樹脂組成物を用いた以外は、実施例24と同様にして、図2に示すようなLED実装用基板11aを得た。
【0148】
実施例31
実施例1の放熱性樹脂組成物に代えて、実施例22の放熱性樹脂組成物を用いた以外は、実施例25と同様にして、図3に示すようなリフレクター部を備えるLED実装用基板11bを得た。
【0149】
3.リフレクターの製造
実施例32
実施例1の放熱性樹脂組成物からなるペレットを260℃で溶融させ、この溶融物を、円筒状であって、一方の開口部に向かって内面がテーパー状となり、LED素子に接続する電極を嵌挿させるための貫通孔を形成するようなキャビティ空間を有する金型に射出(金型温度;50〜80℃)し、図2に示すような略円筒状リフレクター12(直径約3mm、肉厚約0.5mm)を得た。
【0150】
実施例33
実施例1の放熱性樹脂組成物からなるペレットに代えて、実施例18の放熱性樹脂組成物からなるペレットを用いた以外は、実施例32と同様にして、図2に示すような略円筒状リフレクター12を得た。
【0151】
実施例34
実施例1の放熱性樹脂組成物からなるペレットに代えて、実施例21の放熱性樹脂組成物からなるペレットを用いた以外は、実施例32と同様にして、図2に示すような略円筒状リフレクター12を得た。
【0152】
実施例35
実施例1の放熱性樹脂組成物からなるペレットに代えて、実施例22の放熱性樹脂組成物からなるペレットを用いた以外は、実施例32と同様にして、図2に示すような略円筒状リフレクター12を得た。
【0153】
4.表面実装型LEDパッケージ及びLED照明装置の製造
実施例36
実施例24で製造された、凹部を有する平板状のLED実装用基板と、実施例32で製造された略円筒状リフレクターとを用い、以下の要領で表面実装型LEDパッケージを作製し、この表面実装型LEDパッケージを縦横5個ずつ等間隔に配置させてなるLED照明装置を得た。
まず、上記LED実装用基板11aの凹部の中央に、GaN系半導体を用いた青色LED素子13を配設した。その後、このLED素子13及びLED実装用基板11aの凹部を取り巻くように、上記リフレクター12を配設した。次いで、リフレクター12が有する貫通孔に、電極14を嵌挿させ、LED素子13及び電極14を、導電性接着剤を介してリード線15により接続した。その後、LED素子13、電極14及びリード線15を包埋するために、2液エラストマー(商品名「JCR6115」、東レ・ダウコーニング社製)の1:1(質量比)混合物と、YAG系蛍光体とを含む透明封止剤組成物を凹部に充填し、150℃に加熱して硬化させて透明封止部16とした。次いで、透明封止部16の上にレンズ17を配設して、図2に示す表面実装型LEDパッケージ1を得た。
【0154】
その後、この表面実装型LEDパッケージ1(図2)を、絶縁性樹脂からなる照明装置用基板上に、縦横5個ずつ等間隔に配置させてLED照明装置を得た。部分構造を示す断面図を図4に示す。このとき、表面実装型LEDパッケージ1の電極14が、バイアス電圧印加用電源と通電する配線パターン22に接続可能な位置となるように、且つ、LED実装用基板11aの底面が、上記照明装置用基板に設けられた貫通孔(開口部)に面するように、各表面実装型LEDパッケージ1を配設した。
【0155】
実施例37
実施例26で製造された、凹部を有する平板状のLED実装用基板と、実施例32で製造された略円筒状リフレクターとを用い、実施例36と同様にして、図2に示す表面実装型LEDパッケージ1を作製した後、LED照明装置を得た。
【0156】
実施例38
実施例26で製造された、凹部を有する平板状のLED実装用基板と、実施例33で製造された略円筒状リフレクターとを用い、実施例36と同様にして、図2に示す表面実装型LEDパッケージ1を作製した後、LED照明装置を得た。
【0157】
実施例39
実施例28で製造された、凹部を有する平板状のLED実装用基板と、実施例34で製造された略円筒状リフレクターとを用い、実施例36と同様にして、図2に示す表面実装型LEDパッケージ1を作製した後、LED照明装置を得た。
【0158】
実施例40
実施例30で製造された、凹部を有する平板状のLED実装用基板と、実施例35で製造された略円筒状リフレクターとを用い、実施例36と同様にして、図2に示す表面実装型LEDパッケージ1を作製した後、LED照明装置を得た。
【0159】
実施例41
実施例25で製造された、リフレクター部を備えるLED実装用基板11bを用い、以下の要領で表面実装型LEDパッケージを作製し、この表面実装型LEDパッケージを縦横5個ずつ等間隔に配置させてなるLED照明装置を得た。
まず、上記LED実装用基板11bの凹部の中央に、GaN系半導体を用いた青色LED素子13を配設した。その後、リフレクター部12bが有する貫通孔に、電極14を嵌挿させ、LED素子13及び電極14を、導電性接着剤を介してリード線15により接続した。次いで、LED素子13、電極14及びリード線15を包埋するために、実施例36で用いた透明封止剤組成物を凹部に充填し、150℃に加熱して硬化させて透明封止部16とした。その後、透明封止部16の上にレンズ17を配設して、図3に示す表面実装型LEDパッケージ1を得た。
【0160】
次いで、この表面実装型LEDパッケージ1(図3)を、実施例36と同様にして、絶縁性樹脂からなる照明装置用基板上に、縦横5個ずつ等間隔に配置させてLED照明装置を得た。
【0161】
実施例42
実施例27で製造された、リフレクター部を備えるLED実装用基板11bを用い、実施例41と同様にして、絶縁性樹脂からなる照明装置用基板上に、縦横5個ずつ等間隔に配置させてLED照明装置を得た。
【0162】
実施例43
実施例29で製造された、リフレクター部を備えるLED実装用基板11bを用い、実施例41と同様にして、絶縁性樹脂からなる照明装置用基板上に、縦横5個ずつ等間隔に配置させてLED照明装置を得た。
【0163】
実施例44
実施例31で製造された、リフレクター部を備えるLED実装用基板11bを用い、実施例41と同様にして、絶縁性樹脂からなる照明装置用基板上に、縦横5個ずつ等間隔に配置させてLED照明装置を得た。
【0164】
実施例36〜44により作製された、LED照明装置は、熱伝導性に優れたLED実装用基板によって、放熱性が改良されていることから、また、絶縁性及び耐熱性にも優れることから、発光中のLED素子の温度上昇を抑制することができる。従って、発光効率に優れ、LEDの長寿命化を図ることができる。特に、実施例37〜40及び42〜44により作製されたLED照明装置は、リフレクターの内壁面において、光に対する反射率が高く、耐光性に優れるため、長期に渡って、安定した輝度を得ることができる。また、実施例39、40、43及び44により作製されたLED照明装置は、LED素子等の封止に用いた組成物の硬化性に優れるため、その機械的強度に優れる。そして、LED素子等の保護性能に優れ、LED照明装置等の生産性にも優れる。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明の放熱性樹脂組成物は、LED照明装置の構成部材であって、放熱性、絶縁性又は耐熱性を要求される部材の形成に好適である。従って、LED実装用基板、リフレクター等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】本発明のLED実装用基板及びリフレクターを備える表面実装型LEDパッケージの断面構造の一例を示す概略図である。
【図2】本発明のLED実装用基板及びリフレクターを備える表面実装型LEDパッケージの断面構造の他の例を示す概略図である。
【図3】本発明のLED実装用基板(リフレクター部を備えるLED実装用基板)を備える表面実装型LEDパッケージの断面構造の他の例を示す概略図である。
【図4】表面実装型LEDパッケージを備えるLED照明装置の断面構造の一例を示す概略図である。
【図5】従来の表面実装型LEDパッケージの断面構造の一例を示す概略図である。
【図6】実施例23及び比較例5における試験方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0167】
1;表面実装型LEDパッケージ
11a;LED実装用基板
11b;リフレクター部を備えるLED実装用基板
11c;金属製LED実装用基板
12;リフレクター
12b;リフレクター部
13;LED素子
14;電極
15;リード線
16;透明封止部(又は空隙部)
17;レンズ
18;絶縁性台座
2;LED照明装置
21;照明装置用基板
22;配線パターン
3;従来の表面実装型LEDパッケージ
4;放熱性評価用試験片
5;シリコーンラバーヒーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED実装用基板、又は、該LED実装用基板に配設されるリフレクターの形成に用いられる放熱性樹脂組成物であって、熱可塑性樹脂と、熱伝導性フィラーとを含有し、熱変形温度が120℃以上であり、熱伝導率が2.0W/(m・K)以上であり、且つ、熱放射率が0.7以上であることを特徴とする放熱性樹脂組成物。
【請求項2】
上記熱伝導性フィラーの含有割合は、上記熱可塑性樹脂及び上記熱伝導性フィラーの合計を100質量%とした場合、20〜90質量%である請求項1に記載の放熱性樹脂組成物。
【請求項3】
電気絶縁性である請求項1又は2に記載の放熱性樹脂組成物。
【請求項4】
上記熱伝導性フィラー中の酸化鉄含有量が0.01質量%以下である請求項1乃至3のいずれかに記載の放熱性樹脂組成物。
【請求項5】
上記熱伝導性フィラーが、鱗片状である請求項1乃至4のいずれかに記載の放熱性樹脂組成物。
【請求項6】
上記熱伝導性フィラーが、窒化ホウ素である請求項1乃至5のいずれかに記載の放熱性樹脂組成物。
【請求項7】
上記熱可塑性樹脂が、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂若しくはポリアミド系重合体、又は、ゴム強化樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂及びポリアミド系重合体から選ばれた少なくとも2種の混合物、である請求項1乃至6のいずれかに記載の放熱性樹脂組成物。
【請求項8】
上記ポリエステル樹脂が、共重合ポリエステルを含む請求項7に記載の放熱性樹脂組成物。
【請求項9】
上記共重合ポリエステルが、共重合ポリブチレンテレフタレートを含む請求項8に記載の放熱性樹脂組成物。
【請求項10】
更に、難燃剤を含有する請求項1乃至9のいずれかに記載の放熱性樹脂組成物。
【請求項11】
更に、紫外線吸収剤及び/又は光安定剤を、上記熱可塑性樹脂及び上記熱伝導性フィラーの合計を100質量部とした場合に、0.05〜10質量部含有する請求項1乃至10のいずれかに記載の放熱性樹脂組成物。
【請求項12】
上記光安定剤が、下記構造を含むヒンダードアミン系化合物である請求項11に記載の放熱性樹脂組成物。
【化1】

〔式中、R、R、R、R及びRは、互いに、同一又は異なって、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は、炭素数7〜20のアラルキル基である。〕
【請求項13】
曲げ歪みが1.5%以上であり、且つ、白色度が80%以上である請求項1乃至12のいずれかに記載の放熱性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれかに記載の放熱性樹脂組成物を含むことを特徴とするLED実装用基板。
【請求項15】
請求項1乃至13のいずれかに記載の放熱性樹脂組成物を含むことを特徴とするリフレクター。
【請求項16】
請求項1乃至13のいずれかに記載の放熱性樹脂組成物を含むことを特徴とする、リフレクター部を備えるLED実装用基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−270709(P2008−270709A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275773(P2007−275773)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】